バンド型クランプ
【課題】クランプの突出高さを低減できるワイヤハーネス用のバンド型クランプを提供する。
【解決手段】ボックス状の本体2と、該本体の外面から突出する車体係止部4と、前記本体に設けた貫通穴6の一側開口の端縁から延在するバンド3を備え、バンドは幅方向の両側縁に長さ方向に沿って係止溝7A、7Bを連続して設ける一方、本体2の幅方向の両側壁の前記貫通孔に面する内面に係止片12A、12Bを設けてサイドロックとし、かつ、バンドの幅方向の中間位置に長さ方向に延在する凸部10A、10Bまたは凹部を設ける一方、前記バンド挿入側開口を囲む上壁あるいは下壁に前記凸部と嵌合するガイド用凹部14A、14Bまたは前記凹部と嵌合するガイド用凸部を設け、前記バンド貫通孔に挿通するバンドの幅方向中心位置と前記本体の幅方向中心位置とを位置合わせして保持できる構成としている。
【解決手段】ボックス状の本体2と、該本体の外面から突出する車体係止部4と、前記本体に設けた貫通穴6の一側開口の端縁から延在するバンド3を備え、バンドは幅方向の両側縁に長さ方向に沿って係止溝7A、7Bを連続して設ける一方、本体2の幅方向の両側壁の前記貫通孔に面する内面に係止片12A、12Bを設けてサイドロックとし、かつ、バンドの幅方向の中間位置に長さ方向に延在する凸部10A、10Bまたは凹部を設ける一方、前記バンド挿入側開口を囲む上壁あるいは下壁に前記凸部と嵌合するガイド用凹部14A、14Bまたは前記凹部と嵌合するガイド用凸部を設け、前記バンド貫通孔に挿通するバンドの幅方向中心位置と前記本体の幅方向中心位置とを位置合わせして保持できる構成としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバンド型クランプに関し、詳しくは、自動車に配索するワイヤハーネスの電線群を結束して車体パネルに固定するために用いるものであり、特に、狭いワイヤハーネスの配索スペースに配索するワイヤハーネスに好適に取り付けられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線群の集束体からなるワイヤハーネスを自動車に配索し、所要位置でワイヤハーネスを車体パネル等に固定するためバンド型クランプがワイヤハーネスに取り付けられている。
汎用されているバンド型クランプCは図10(A)(B)(C)に示す形状であり、バンド100を突設したボックス状の本体101の上壁外面から皿部102aを介して羽根状の車体係止部102を突設している。該車体係止部102は支持部102bの先端より羽根部102cを折り返し状に突設し、羽根部102cの先端に係止段部102dを設けている。バンド100は幅方向の一面に係止溝103を連続的に設ける一方、本体101にバンド貫通孔105を設け、該バンド貫通孔105を囲む本体101の上壁101aの内面(または下壁内面)から上下方向に係止片106を突設し、バンド100の係止溝103に係止して締結させている。
【0003】
図10(C)に示すように、車体パネルPへバンド型クランプを取り付けた状態において、車体パネルPからワイヤハーネス120の中心Oまでの距離aは、皿部102aの軸線方向の寸法、本体101の上壁肉厚、係止片106の突出寸法、バンド100の厚さ、本体101の下壁肉厚にワイヤハーネスの半径が合計された寸法となり、前記距離aが比較的大きくなる。よって、この距離aを確保できるワイヤハーネスの配索スペースを車体パネルに沿って設けておく必要がある。
【0004】
図11(A)(B)に示すように、ワイヤハーネスW/HがドアDのインナーパネル200とトリム201の間の空間Sに配索されるドアハーネスである場合、該空間Sの幅が非常に狭いため、前記バンド型クランプが必要とする配索スペースとならず、バンド型クランプを取り付けたドアハーネスを配索できなくなる。
【0005】
バンド型クランプの高さを低減できるものとして、本出願人は特開平11−79233号公報等でサイドロック型のバンドクランプを提案している。
該サイドロック型のバンドクランプは図12(A)(B)に示すように、本体210の貫通穴211の両側内面からロック片212を突設する一方、バンド215の両側端面に係止溝216を設けており、本体210の高さを低減している。
【0006】
該サイドロック型のバンドクラプでは図13(A)(B)(C)に示すように、バンド215を貫通穴211に矢印方向に引っ張って通す際にロック片212を外方へ撓ませるため、ロック片212は比較的外方へ撓み易くなっている。図13(C)に示すように、バンドの引っ張り方向が少しでも斜め方向となって「こじり」が発生すると、バンド215の係止溝216に挿入係止するロック片212が外方へ撓み、外れやすい状態でロックされる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−79233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、クランプの突出高さを低減して狭いスペースにワイヤハーネスを配索可能とするためにサイドロックのバンド型クランプを用い、該サイドロックのバンド型クランプにおいて発生するバンドの引っ張り方向による「こじり」発生を無くすようにし、ロックを外れにくくすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、複数本の電線の外周に巻き付けて電線群として結束すると共に該電線群を車体に固定する樹脂成形品からなるバンド型クランプであって、 ボックス状の本体と、該本体の外面から突出する車体係止部と、前記本体に設けたバンド貫通孔の一側開口の端縁から延在するバンドを備え、
前記バンドは幅方向の両側縁に長さ方向に沿って係止溝を連続して設ける一方、前記本体の幅方向の両側壁の前記バンド貫通孔に面する内面に係止片を設け、前記バンドの係止溝と係止するバンドをサイドロックする構成とし、
かつ、前記バンドの幅方向の中間位置に長さ方向に延在する凸部または凹部を設ける一方、前記バンド挿入側開口を囲む上壁あるいは下壁に前記凸部と嵌合するガイド用凹部または前記凹部と嵌合するガイド用凸部を設け、前記バンド貫通孔に挿通するバンドの幅方向中心位置と前記本体の幅方向中心位置とを位置合わせして保持できる構成としているバンド型クランプを提供している。
【0010】
前記のように、本発明のバンド型クランプでは、バンドを本体の貫通穴に挿通する際に斜め方向となって「こじり」が発生するのを防止するため、バンド側に長さ方向に延在する凸部または凹部を設ける一方、該凸部または凹部と嵌合するガイド用凹部または凸部を本体側に設けている。本体の貫通穴にバンドを通す際に、バンドの凸部をガイド用凹部に挿入し(または、バンドの凹部にガイド用凸部を挿入し)、バンドの幅方向中心と本体の幅方向中心とを位置あわせした状態でバンドを貫通穴に通して引っ張ることにより、バンドの斜め方向の引っ張りにより生じる「こじり」の発生を確実に防止することができる。
【0011】
具体的には、前記電線群に前記バンドを巻き付けた時に外周面となる面に前記凸部を幅方向に隙間をあけて2個以上設ける一方、前記本体の上壁の下面に前記各凸部と嵌合する複数の凹部を設けたガイド壁部を突設し、かつ、該本体の上壁の上面に前記車体係止部を突設していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
前記のように、本発明ではバンド型クランプをサイドロックとしていることによりクランプの突出高さを低くでき、配索スペースの幅が狭いドアハーネスに適用できると共に、該サイドロックとした場合に発生しやすい「こじり」によりロックが外れ易くなる問題を、バンドと本体とに互いに嵌合する凹凸部を設けてバンドが斜めに引っ張れないようにしていることで解消している。よって、ワイヤハーネスへの取付信頼性が高いサイドロックのバンド型クランプとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態のバンド型クランプの斜視図である。
【図2】(A)は前記バンド型クランプの正面図、(B)は(A)の要部拡大図、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【図3】バンド型クランプの本体の断面図である。
【図4】ワイヤハーネスの電線群にバンドを巻き付けた状態の断面図である。
【図5】バンドを本体の貫通穴に挿入した状態の正面図である。
【図6】バンドの係止溝を本体の係止片と係止した状態を示す図面である。
【図7】第一実施形態の第一変形例を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図8】第一実施形態の第二変形例を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図9】第二実施形態を示し、(A)は本体の正面図、(B)はワイヤハーネスへのバンドの巻き付け状態を示す断面図である。
【図10】(A)(B)(C)は従来例を示す図面である。
【図11】ドアハーネスにバンド型クランプを取り付けた場合の問題点を示し、(A)はドア全体の概略図、(B)は(A)のB矢視拡大断面図である。
【図12】(A)(B)はサイドロックタイプの他の従来例を示す図面である。
【図13】(A)(B)(C)はサイドロックタイプの問題点を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図6に第一実施形態のバンド型クランプを示す。
バンド型クランプ1は樹脂成形品からなり、バンド係止用の本体2と、該本体2から突出するバンド3および車体係止部4を一体的に備えている。
【0015】
前記バンド係止用の本体2はバンド3の突出方向である図中前後方向Xの貫通穴6を備えたボックス形状であり、左右側壁2a、2b、底壁2cおよび上壁2dとで貫通穴6を囲むボックスに形成している。貫通穴6の他側開口をバンド入口6a、一側開口をバンド出口6bとしている。前記バンド出口6b側の底壁からバンド3を突設している。
【0016】
前記バンド3には幅方向の両側の端面に長さ方向に連続した係止溝7A、7Bを設けている。
また、ワイヤハーネスへのバンド巻き付け時にワイヤハーネスと非接触の外周面となるバンド3の一面3aに、長さ方向に連続するガイド用の凸部10Aと10Bを幅方向に間隔をあけて突設している。ワイヤハーネスと接触する内周面には、長さ方向に間隔をあけて滑り止め用の突起11を設けている。
【0017】
一方、前記本体2の左右両側壁2a、2bの内面からは貫通穴6に突出する係止片12A、12Bを突設し、前記バンド3の幅方向両端面の係止溝7A、7Bにそれぞれ係止してバンド3をサイドロックするようにしている。
前記係止片12A、12Bの突設位置は左右両側壁2a、2bの前後方向の中間位置としている。
【0018】
また、本体2の貫通穴6のバンド入口6a側には、上壁2dから下方へ突出したガイド壁13を突設し、該ガイド壁13の下端から幅方向に間隔をあけて一対のガイド用凹部14A、14Bを設けている。該ガイド用凹部14A、14Bには貫通穴6に挿入するバンド3に設けた凸部10A、10Bが丁度嵌合するように設け、嵌合状態でバンド3の幅方向の中心が本体2の幅方向の中心と一致するように設定している。
【0019】
本体2の上壁2dから前記車体係止部4を突設している。具体的には、上壁2dに皿部5を突設し、該皿部5の底部5aの長軸側の両側から突設した支持軸部4a、4bと、該支持軸部4aと4bの先端を連結する連結部4cと、該連結部4cの下面から突設した一対の羽根部4d、4eを備え、各羽根部4d、4eの先端に係止段部4f、4gを設けている。一対の羽根部4d、4eは反対方向へと傾斜して突出し、これら羽根部4d、4eに設けた係止段部4f、4gにより、楕円形状とした車体パネルの貫通穴の短軸側で対向する周縁に係止するようにしている。
【0020】
前記形状としたサイドロックのバンド型クランプ1は、図4に示すように、ワイヤハーネス20を構成する複数の電線群21にバンド3を巻き付けた状態で、バンド3を本体2の貫通穴6に入口6aより挿入し、出口6bより引き出す。バンド3を電線群21に巻き付けた状態で、ガイド用の凸部10A、10Bを設けた面は外周面となっている。
前記貫通穴6から引き出されたバンド3に締付兼切断用の治具(図示せず)を取り付け、該治具でバンド3を強く引っ張ってバンド3の係止溝7A、7Bに本体2から突設した係止片12A、12Bを係止させると共に、出口6bより引き出されたバンド3を切断している。
【0021】
前記貫通穴6内にバンド3が挿入する時、図5に示すように、バンド3の幅は貫通穴6の幅と略同等としているため、バンド3のガイド用の凸部10A、10Bを本体2の入口側に設けたガイド用凹部14A、14Bにそれぞれ挿入した状態で貫通穴6内に侵入していく。バンド3の凸部10A、10Bは長さ方向に連続しているため、凸部10A、10Bが本体2のガイド用凹部14A、14Bにはめ込まれた状態でバンド3が引っ張られるためバンド3が斜め方向に引っ張られて「こじり」が発生することは防止できる。
よって、図6に示すように、バンド3の幅方向両側の係止溝7A、7Bに本体2から突設した係止片12A、12Bを正確に係止でき、ロックが外れるのを防止できる。
【0022】
また、前記のサイドロックのバンド型クランプ1を取り付けたワイヤハーネスを、前記図11に示すドアDの狭い空間Sからなる配索スペースに配索した際に、バンド型クランプ1のワイヤハーネスからの突出量を低くできるため、前記空間Sに配索可能となる。
【0023】
図7(A)(B)に第一変形例を示す。
該変形例では、バンド3に設けるガイド用の凸部を3個の凸部10A、10B、10Cとし、本体2に設けるガイド用凹部も3個の14A、14B、14Cとしている点である。他の構成及び作用効果は第一実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
図8(A)(B)に第二変形例を示す
該変形例ではバンド3にガイド用の凹部20A、20Bを設ける一方、本体2側に前記凹部20A、20Bに挿入するガイド凸部21A、21Bを突設している。
なお、バンド3の肉厚との関係から凹部20A、20Bの深さを大とできないため、前記第一実施形態のように、バンド3にガイド用の凸部10A、10Bを設けた方が好ましい。
【0025】
図9(A)(B)に第二実施形態を示す。
第二実施形態では、バンド3をワイヤハーネスに巻き付けた時にワイヤハーネスと接触する内面側にガイド用の凸部10A、10Bを設けている。よって、該凸部10A、10Bはワイヤハーネスとの滑り防止機能も兼ねたものとなる。
一方、本体2側には底壁2cの上面から前記凸部10A、10Bが挿入するガイド用凹部14A、14Bを設けたガイド台15を突出している。
【0026】
貫通穴6に挿入するバンド3の先端側にはワイヤハーネスの電線群は位置していないため、バンド3の凸部10A、10Bを本体2側のガイド用凹部14A、14Bに挿入しながら貫通穴6を貫通させて、バンド3を引っ張ることができる。よって、この場合も、バンド3を斜め引っ張りすることが抑制防止される。
【符号の説明】
【0027】
1 バンド型クランプ
2 本体
2a、2b 左右側壁
3 バンド
4 車体係止部
5 皿部
6 貫通穴
6a 入口
6b 出口
7A、7B 係止溝
12A、12B 係止片
10A、10B ガイド用の凸部
14A、14B ガイド用凹部
20 ワイヤハーネス
21 電線群
P 車体パネル
H 貫通穴
【技術分野】
【0001】
本発明はバンド型クランプに関し、詳しくは、自動車に配索するワイヤハーネスの電線群を結束して車体パネルに固定するために用いるものであり、特に、狭いワイヤハーネスの配索スペースに配索するワイヤハーネスに好適に取り付けられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線群の集束体からなるワイヤハーネスを自動車に配索し、所要位置でワイヤハーネスを車体パネル等に固定するためバンド型クランプがワイヤハーネスに取り付けられている。
汎用されているバンド型クランプCは図10(A)(B)(C)に示す形状であり、バンド100を突設したボックス状の本体101の上壁外面から皿部102aを介して羽根状の車体係止部102を突設している。該車体係止部102は支持部102bの先端より羽根部102cを折り返し状に突設し、羽根部102cの先端に係止段部102dを設けている。バンド100は幅方向の一面に係止溝103を連続的に設ける一方、本体101にバンド貫通孔105を設け、該バンド貫通孔105を囲む本体101の上壁101aの内面(または下壁内面)から上下方向に係止片106を突設し、バンド100の係止溝103に係止して締結させている。
【0003】
図10(C)に示すように、車体パネルPへバンド型クランプを取り付けた状態において、車体パネルPからワイヤハーネス120の中心Oまでの距離aは、皿部102aの軸線方向の寸法、本体101の上壁肉厚、係止片106の突出寸法、バンド100の厚さ、本体101の下壁肉厚にワイヤハーネスの半径が合計された寸法となり、前記距離aが比較的大きくなる。よって、この距離aを確保できるワイヤハーネスの配索スペースを車体パネルに沿って設けておく必要がある。
【0004】
図11(A)(B)に示すように、ワイヤハーネスW/HがドアDのインナーパネル200とトリム201の間の空間Sに配索されるドアハーネスである場合、該空間Sの幅が非常に狭いため、前記バンド型クランプが必要とする配索スペースとならず、バンド型クランプを取り付けたドアハーネスを配索できなくなる。
【0005】
バンド型クランプの高さを低減できるものとして、本出願人は特開平11−79233号公報等でサイドロック型のバンドクランプを提案している。
該サイドロック型のバンドクランプは図12(A)(B)に示すように、本体210の貫通穴211の両側内面からロック片212を突設する一方、バンド215の両側端面に係止溝216を設けており、本体210の高さを低減している。
【0006】
該サイドロック型のバンドクラプでは図13(A)(B)(C)に示すように、バンド215を貫通穴211に矢印方向に引っ張って通す際にロック片212を外方へ撓ませるため、ロック片212は比較的外方へ撓み易くなっている。図13(C)に示すように、バンドの引っ張り方向が少しでも斜め方向となって「こじり」が発生すると、バンド215の係止溝216に挿入係止するロック片212が外方へ撓み、外れやすい状態でロックされる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−79233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、クランプの突出高さを低減して狭いスペースにワイヤハーネスを配索可能とするためにサイドロックのバンド型クランプを用い、該サイドロックのバンド型クランプにおいて発生するバンドの引っ張り方向による「こじり」発生を無くすようにし、ロックを外れにくくすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、複数本の電線の外周に巻き付けて電線群として結束すると共に該電線群を車体に固定する樹脂成形品からなるバンド型クランプであって、 ボックス状の本体と、該本体の外面から突出する車体係止部と、前記本体に設けたバンド貫通孔の一側開口の端縁から延在するバンドを備え、
前記バンドは幅方向の両側縁に長さ方向に沿って係止溝を連続して設ける一方、前記本体の幅方向の両側壁の前記バンド貫通孔に面する内面に係止片を設け、前記バンドの係止溝と係止するバンドをサイドロックする構成とし、
かつ、前記バンドの幅方向の中間位置に長さ方向に延在する凸部または凹部を設ける一方、前記バンド挿入側開口を囲む上壁あるいは下壁に前記凸部と嵌合するガイド用凹部または前記凹部と嵌合するガイド用凸部を設け、前記バンド貫通孔に挿通するバンドの幅方向中心位置と前記本体の幅方向中心位置とを位置合わせして保持できる構成としているバンド型クランプを提供している。
【0010】
前記のように、本発明のバンド型クランプでは、バンドを本体の貫通穴に挿通する際に斜め方向となって「こじり」が発生するのを防止するため、バンド側に長さ方向に延在する凸部または凹部を設ける一方、該凸部または凹部と嵌合するガイド用凹部または凸部を本体側に設けている。本体の貫通穴にバンドを通す際に、バンドの凸部をガイド用凹部に挿入し(または、バンドの凹部にガイド用凸部を挿入し)、バンドの幅方向中心と本体の幅方向中心とを位置あわせした状態でバンドを貫通穴に通して引っ張ることにより、バンドの斜め方向の引っ張りにより生じる「こじり」の発生を確実に防止することができる。
【0011】
具体的には、前記電線群に前記バンドを巻き付けた時に外周面となる面に前記凸部を幅方向に隙間をあけて2個以上設ける一方、前記本体の上壁の下面に前記各凸部と嵌合する複数の凹部を設けたガイド壁部を突設し、かつ、該本体の上壁の上面に前記車体係止部を突設していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
前記のように、本発明ではバンド型クランプをサイドロックとしていることによりクランプの突出高さを低くでき、配索スペースの幅が狭いドアハーネスに適用できると共に、該サイドロックとした場合に発生しやすい「こじり」によりロックが外れ易くなる問題を、バンドと本体とに互いに嵌合する凹凸部を設けてバンドが斜めに引っ張れないようにしていることで解消している。よって、ワイヤハーネスへの取付信頼性が高いサイドロックのバンド型クランプとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態のバンド型クランプの斜視図である。
【図2】(A)は前記バンド型クランプの正面図、(B)は(A)の要部拡大図、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【図3】バンド型クランプの本体の断面図である。
【図4】ワイヤハーネスの電線群にバンドを巻き付けた状態の断面図である。
【図5】バンドを本体の貫通穴に挿入した状態の正面図である。
【図6】バンドの係止溝を本体の係止片と係止した状態を示す図面である。
【図7】第一実施形態の第一変形例を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図8】第一実施形態の第二変形例を示し、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図9】第二実施形態を示し、(A)は本体の正面図、(B)はワイヤハーネスへのバンドの巻き付け状態を示す断面図である。
【図10】(A)(B)(C)は従来例を示す図面である。
【図11】ドアハーネスにバンド型クランプを取り付けた場合の問題点を示し、(A)はドア全体の概略図、(B)は(A)のB矢視拡大断面図である。
【図12】(A)(B)はサイドロックタイプの他の従来例を示す図面である。
【図13】(A)(B)(C)はサイドロックタイプの問題点を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図6に第一実施形態のバンド型クランプを示す。
バンド型クランプ1は樹脂成形品からなり、バンド係止用の本体2と、該本体2から突出するバンド3および車体係止部4を一体的に備えている。
【0015】
前記バンド係止用の本体2はバンド3の突出方向である図中前後方向Xの貫通穴6を備えたボックス形状であり、左右側壁2a、2b、底壁2cおよび上壁2dとで貫通穴6を囲むボックスに形成している。貫通穴6の他側開口をバンド入口6a、一側開口をバンド出口6bとしている。前記バンド出口6b側の底壁からバンド3を突設している。
【0016】
前記バンド3には幅方向の両側の端面に長さ方向に連続した係止溝7A、7Bを設けている。
また、ワイヤハーネスへのバンド巻き付け時にワイヤハーネスと非接触の外周面となるバンド3の一面3aに、長さ方向に連続するガイド用の凸部10Aと10Bを幅方向に間隔をあけて突設している。ワイヤハーネスと接触する内周面には、長さ方向に間隔をあけて滑り止め用の突起11を設けている。
【0017】
一方、前記本体2の左右両側壁2a、2bの内面からは貫通穴6に突出する係止片12A、12Bを突設し、前記バンド3の幅方向両端面の係止溝7A、7Bにそれぞれ係止してバンド3をサイドロックするようにしている。
前記係止片12A、12Bの突設位置は左右両側壁2a、2bの前後方向の中間位置としている。
【0018】
また、本体2の貫通穴6のバンド入口6a側には、上壁2dから下方へ突出したガイド壁13を突設し、該ガイド壁13の下端から幅方向に間隔をあけて一対のガイド用凹部14A、14Bを設けている。該ガイド用凹部14A、14Bには貫通穴6に挿入するバンド3に設けた凸部10A、10Bが丁度嵌合するように設け、嵌合状態でバンド3の幅方向の中心が本体2の幅方向の中心と一致するように設定している。
【0019】
本体2の上壁2dから前記車体係止部4を突設している。具体的には、上壁2dに皿部5を突設し、該皿部5の底部5aの長軸側の両側から突設した支持軸部4a、4bと、該支持軸部4aと4bの先端を連結する連結部4cと、該連結部4cの下面から突設した一対の羽根部4d、4eを備え、各羽根部4d、4eの先端に係止段部4f、4gを設けている。一対の羽根部4d、4eは反対方向へと傾斜して突出し、これら羽根部4d、4eに設けた係止段部4f、4gにより、楕円形状とした車体パネルの貫通穴の短軸側で対向する周縁に係止するようにしている。
【0020】
前記形状としたサイドロックのバンド型クランプ1は、図4に示すように、ワイヤハーネス20を構成する複数の電線群21にバンド3を巻き付けた状態で、バンド3を本体2の貫通穴6に入口6aより挿入し、出口6bより引き出す。バンド3を電線群21に巻き付けた状態で、ガイド用の凸部10A、10Bを設けた面は外周面となっている。
前記貫通穴6から引き出されたバンド3に締付兼切断用の治具(図示せず)を取り付け、該治具でバンド3を強く引っ張ってバンド3の係止溝7A、7Bに本体2から突設した係止片12A、12Bを係止させると共に、出口6bより引き出されたバンド3を切断している。
【0021】
前記貫通穴6内にバンド3が挿入する時、図5に示すように、バンド3の幅は貫通穴6の幅と略同等としているため、バンド3のガイド用の凸部10A、10Bを本体2の入口側に設けたガイド用凹部14A、14Bにそれぞれ挿入した状態で貫通穴6内に侵入していく。バンド3の凸部10A、10Bは長さ方向に連続しているため、凸部10A、10Bが本体2のガイド用凹部14A、14Bにはめ込まれた状態でバンド3が引っ張られるためバンド3が斜め方向に引っ張られて「こじり」が発生することは防止できる。
よって、図6に示すように、バンド3の幅方向両側の係止溝7A、7Bに本体2から突設した係止片12A、12Bを正確に係止でき、ロックが外れるのを防止できる。
【0022】
また、前記のサイドロックのバンド型クランプ1を取り付けたワイヤハーネスを、前記図11に示すドアDの狭い空間Sからなる配索スペースに配索した際に、バンド型クランプ1のワイヤハーネスからの突出量を低くできるため、前記空間Sに配索可能となる。
【0023】
図7(A)(B)に第一変形例を示す。
該変形例では、バンド3に設けるガイド用の凸部を3個の凸部10A、10B、10Cとし、本体2に設けるガイド用凹部も3個の14A、14B、14Cとしている点である。他の構成及び作用効果は第一実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
図8(A)(B)に第二変形例を示す
該変形例ではバンド3にガイド用の凹部20A、20Bを設ける一方、本体2側に前記凹部20A、20Bに挿入するガイド凸部21A、21Bを突設している。
なお、バンド3の肉厚との関係から凹部20A、20Bの深さを大とできないため、前記第一実施形態のように、バンド3にガイド用の凸部10A、10Bを設けた方が好ましい。
【0025】
図9(A)(B)に第二実施形態を示す。
第二実施形態では、バンド3をワイヤハーネスに巻き付けた時にワイヤハーネスと接触する内面側にガイド用の凸部10A、10Bを設けている。よって、該凸部10A、10Bはワイヤハーネスとの滑り防止機能も兼ねたものとなる。
一方、本体2側には底壁2cの上面から前記凸部10A、10Bが挿入するガイド用凹部14A、14Bを設けたガイド台15を突出している。
【0026】
貫通穴6に挿入するバンド3の先端側にはワイヤハーネスの電線群は位置していないため、バンド3の凸部10A、10Bを本体2側のガイド用凹部14A、14Bに挿入しながら貫通穴6を貫通させて、バンド3を引っ張ることができる。よって、この場合も、バンド3を斜め引っ張りすることが抑制防止される。
【符号の説明】
【0027】
1 バンド型クランプ
2 本体
2a、2b 左右側壁
3 バンド
4 車体係止部
5 皿部
6 貫通穴
6a 入口
6b 出口
7A、7B 係止溝
12A、12B 係止片
10A、10B ガイド用の凸部
14A、14B ガイド用凹部
20 ワイヤハーネス
21 電線群
P 車体パネル
H 貫通穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線の外周に巻き付けて電線群として結束すると共に該電線群を車体に固定する樹脂成形品からなるバンド型クランプであって、
ボックス状の本体と、該本体の外面から突出する車体係止部と、前記本体に設けた貫通穴の一側開口の端縁から延在するバンドを備え、
前記バンドは幅方向の両側縁に長さ方向に沿って係止溝を連続して設ける一方、前記本体の幅方向の両側壁の前記貫通孔に面する内面に係止片を設け、前記バンドの係止溝と係止するバンドをサイドロックする構成とし、
かつ、前記バンドの幅方向の中間位置に長さ方向に延在する凸部または凹部を設ける一方、前記バンド挿入側開口を囲む上壁あるいは下壁に前記凸部と嵌合するガイド用凹部または前記凹部と嵌合するガイド用凸部を設け、前記バンド貫通孔に挿通するバンドの幅方向中心位置と前記本体の幅方向中心位置とを位置合わせして保持できる構成としているバンド型クランプ。
【請求項2】
前記電線群に前記バンドを巻き付けた時に外周面となる面に前記凸部を幅方向に隙間をあけて2個以上設ける一方、前記本体の上壁の下面に前記各凸部と嵌合する複数の凹部を設けたガイド壁部を突設し、かつ、該本体の上壁の上面に前記車体係止部を突設している請求項1に記載のバンド型クランプ。
【請求項1】
複数本の電線の外周に巻き付けて電線群として結束すると共に該電線群を車体に固定する樹脂成形品からなるバンド型クランプであって、
ボックス状の本体と、該本体の外面から突出する車体係止部と、前記本体に設けた貫通穴の一側開口の端縁から延在するバンドを備え、
前記バンドは幅方向の両側縁に長さ方向に沿って係止溝を連続して設ける一方、前記本体の幅方向の両側壁の前記貫通孔に面する内面に係止片を設け、前記バンドの係止溝と係止するバンドをサイドロックする構成とし、
かつ、前記バンドの幅方向の中間位置に長さ方向に延在する凸部または凹部を設ける一方、前記バンド挿入側開口を囲む上壁あるいは下壁に前記凸部と嵌合するガイド用凹部または前記凹部と嵌合するガイド用凸部を設け、前記バンド貫通孔に挿通するバンドの幅方向中心位置と前記本体の幅方向中心位置とを位置合わせして保持できる構成としているバンド型クランプ。
【請求項2】
前記電線群に前記バンドを巻き付けた時に外周面となる面に前記凸部を幅方向に隙間をあけて2個以上設ける一方、前記本体の上壁の下面に前記各凸部と嵌合する複数の凹部を設けたガイド壁部を突設し、かつ、該本体の上壁の上面に前記車体係止部を突設している請求項1に記載のバンド型クランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−155819(P2011−155819A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17468(P2010−17468)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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