説明

パケットフローに基づくセッションサービスの適用

【課題】セッションサービスを使用して、ネットワークコンピューティング環境で特定の処理をプロセス間のデータの交換に適用すること。
【解決手段】無線リンク(28)を介して送られるパケットは、それに応じて、フロー(F1〜F3)を構成する所期のパケットについてセッションサービスを開始および使用するために、信号を受け、またタグ付けされることを必要とする。セッションサービスを識別し、無線リンク(28)に適用する方法は、フロー識別子と伝送プロフィルフィルタを使用することによって、受信されたメッセージに対応する、無線リンク(28)を介したパケットフロー(F1〜F3)を識別することを含む。パケットフロー(F1〜F3)はセッションに対応し、少なくとも1つのセッションサービス(30')にマップされる。次いで、マップされたセッションサービスは、受信されたメッセージに適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、データパケットに適用する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークコンピューティング環境では、プロセス間のデータの交換によって特定の処理行うため、しばしばセッションサービスが使用される。そのような交換、またはセッションは、通常、パケットフローとも呼ばれるパケットのシーケンスを含むが、このパケットは、共通のコンテキストを共用し、あわせて1つまたは複数のセッションサービスに適用することにより有用なものとなる。一般に、パケットフローは、ネットワークを介し、多くはクライアント/サーバ構成において通信されるプロセス間で使用される。セッションサービスは、たとえばプロキシサービスやヘッダ圧縮など様々なプロトコル変換またはプロトコル最適化を含むことができ、エンドユーザにとって透過とすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しばしば、ダイヤルアップモデム回線などの単一の物理接続で、複数のパケットフローに対応する多数のパケットが搬送される。しかし、一般にはセッションサービス全体として、その物理接続に適用される。したがって、特定のセッションサービスは、その物理接続を介して伝送されるパケットすべてに適用される。セッションサービスは、その接続を介して搬送される様々なパケットフローの間において区別をつけずに適用されるのである。したがって、個々のフローとその関連プロセスは、特定のセッションサービスがそのパケットフローにとって必要とされ、または望まれているかどうかに関わらず、そのセッションサービスに関連する処理のオーバーヘッドの影響を受ける可能性がある。
【0004】
無線通信ネットワークでは、一般に、無線リンクが無線チャネルを介して複数のユーザ間で共用され、無線チャネルは、要求ごとにスケジューラによってユーザ間で割り振られ、切り換えられる。無線リンクを介して送られるパケットは、それに応じて、パケットフローを構成する所期のパケットについてセッションサービスを開始および使用するために、信号を受け、またタグ付けされることが必要である。
【0005】
したがって、無線リンクを介して、送り手および受け手によって特定のセッションサービスの開始をシグナリングするための、また、どのセッションサービスを各パケットに適用するかを示すために、影響を受けたパケットにタグを付けるための機構を提供することは、有益となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
無線通信システムにおいて、セッションサービスを識別し、無線リンクに適用する方法は、その無線リンクを含む接続を確立するステップ、およびその接続を介して、伝送のためのメッセージを受信するステップを備える。受信されたメッセージに対応するパケットフローは、フロー識別子と伝送プロフィルフィルタを使用することによって、無線リンクを介して識別され、または確立される。このパケットフローは、セッションに対応し、少なくとも1つのセッションサービスにマップされる。次いで、マップされたセッションサービスは、受信されたメッセージに適用される。このようにして、やはり同じ無線リンクを介して伝送することができる他のパケットフローとは関わりなく、その無線リンクを介して、セッションサービスをパケットフローに透過的に適用することができる。
【0007】
特定のパケットフロー(フロー)が、そのフローを介して送られるパケット(メッセージ)に適用される1つまたは複数のセッションサービスに関連付けられる。フローは、メッセージそれ自体の中のフローIDによって、またはそのメッセージを、フローの特徴を示す伝送プロフィルに合致させることによって識別される。このフローの特徴により、そのフローを含むパケットのパケットストリーム文脈(context)、または共通の基準(common denominator)が確立される。たとえば、ストリーミングオーディオ情報を含むパケットは一般にサイズが大きく、一方、ACK(肯定応答)通知を含むhttpパケットは、比較的サイズが小さい。パケットフローを識別することにより、無線リンクの各端点部で、補完するセッションサービスを適用することが可能になる。すなわち、無線リンクを介して送るときヘッダを圧縮された場合、受け取ったときに伸長しなければならないわけである。
【0008】
トラフィックフローマップ処理メッセージを使用して、フローを開始し、セッションサービスのフローへの関連付けが行なわれる。したがって、無線リンクの両端点(endpoint)、通常は基地局プロセッサ(基地局)と加入者装置アクセスユニット(加入者装置)とにおいて、フローと関連セッションサービスが識別されるのである。
【0009】
セッションサービスは、適用可能なセッションサービスのテーブルを参照することによって識別することができる。一度確立されたならば、セッションサービスは、フロー内のパケットすべてに適用される。代替の実施形態において、そのようなテーブルは、共通の貯蔵部(repository)内に記憶され、したがって、遠隔の送信元から標準化された形態でダウンロードすることができる。セッションサービステーブルの標準化により、セッションサービス識別子を広範に配信し、認識することが可能となる。
【0010】
本発明の上述の、また他の目的、特徴、利点は、添付図面に示す以下本発明の好ましい実施形態のより具体的な説明から明らかになるが、図面全体で類似の符号は同様の部分を指しているものとする。図面は必ずしも原寸に比例しておらず、むしろ本発明の原理を例示することに重きが置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の好ましい実施形態について述べる。
【0012】
無線通信ネットワークでは、無線リンクにより、送信プロセスと受信プロセスとの間の接続が可能となる。一般に、無線リンクは、送信プロセスと受信プロセスとの間の接続全体からすると一部分であり、接続全体としては無線リンクの各側の有線リンクをも備える。送信プロセスと受信プロセスとの間の接続は、パケットフローを含む。各パケットフローは、インターネットのウェブページやストリーミングオーディオなど、プロセス間で搬送されるデータの種類を示す特定のパケットフロー文脈(context)を表示する。送信プロセスと受信プロセスとの間には、複数の接続、したがって複数のパケットフローが存在する可能性がある。さらに、各フローは、複数のピアプロセス間の異なるセッションのパケットを含む可能性がある。各フローは、搬送されるデータの種類の実質的な特徴を示す特定のパケットフロー文脈を有するので、各フローに特定のセッションサービスを適用するのは有益な場合がある。
【0013】
セッションサービスは、既存のユーザデータセッションに機能を追加し、または新しいアプリケーションの対応を可能にするデュアルエンド型またはピアツーピア型の機構である。したがって、セッションサービスにより、追加の処理ステップがパケットに適用され、またはパケットに対して実行される。セッションサービスにより、ヘッダ圧縮などプロトコル最適化、TCPプロキシサービスなどプロトコル変換、またはQOS(サービス品質)処理/検証若しくは暗号化など追加処理のための別個のアプリケーションが可能となる。本発明に従って、他のセッションサービスが適用されることもある。特定の実施形態において、TCPプロキシサービスは、参照により本明細書に組み込む「Dual Split Proxy Gateway for Improving Throughput Performance Over a Wireless Interface」という名称の、2001年5月7日に出願された同時係属の米国特許出願に定義されている通りである(特許文献1参照)。無線通信ネットワークでは、セッションサービスは、無線リンクを介したフローだけに適用可能とすることができ、あるいは、接続全体に適用可能として無線リンクを介し有線リンクから(連続的に)一貫して搬送することができる。
【0014】
図1は、本発明と共に使用するための無線通信リンクを使用する無線通信システム10を示す。図1を参照すると、複数の加入者装置アクセスユニット14a〜14cが、無線リンク22を介して基地局プロセッサ16(基地局)と無線通信を行なっている。また、基地局16は、有線リンク20を介してインターネット18などデータネットワークと通信を行なっている。加入者装置(subscriber)14によって、有線リンク24を介し、デスクトップPC32a、32c、携帯情報端末(PDA)32b、無線電話32dなど、顧客宅内機器(CPE)32は全体として無線インターネットアクセスの提供うける。加入者アクセスユニット14によって提供される無線機能は、独立デバイス内に置くことも、ユーザ32’によって呼び出されるCPE32ユニット内に埋め込むこともできることに留意されたい。どちらの場合にも、CPE32は、有線リンク20、24および無線リンク22を使用することによって、基地局16を介して、インターネット18、したがって遠隔ノード26と通信するようにすることができるのである。
【0015】
図2は、加入者装置14と基地局16の間の通信リンクを介した無線パケットフローを示す図である。図2および図1を参照すると、加入者装置14と基地局16の間の無線リンク22は、パケットフロー28をさらに含んでいる。パケットフロー28は、無線リンク22を介した1つまたは複数のセッションに対応し、有線リンク20、24を含むプロセス間接続(セッション)の一部である。パケットフロー28内のセッションの各々は、加入者装置14部でプロセスP1、P2、またはP3に対応する。送り手または受け手である補足的プロセスP1’、P2’、P3’は、1つの遠隔ノード26上の接続の遠隔端部に存在する。フローマップ処理器(flow mapper)30は、無線リンク22の各端点部で、加入者装置14内および基地局16内に存在し、各メッセージパケットに対応するパケットフローを割り当て、決定し、および、それぞれのセッションサービスを適用する。いずれについても下記でさらに述べる。
【0016】
パケットフローは、特定の種類の内容など共通の基準を共有することにより関連するパケットを含むことに留意されたい。したがって、上述のように、パケットフローは、ピアプロセス間の1つまたは複数のセッションに対応するパケットを含むことができる。「セッション」という用語は、2つのアプリケーションプロセス間の接続を示し、それらの間では、共通の送信元および宛先のためパケット同士が関連している。セッションとパケットフローとの間の対応は、一般に通信するためのプロトコルとプロセスとによって決まり、たとえば(5タプルと呼ばれることがある)送信元アドレス、宛先アドレス、送信元ポート、宛先ポート、およびTCP接続におけるプロトコルなど、パラメータ群を含む。当業者においては、他のパケットフロー/セッションマップ処理も知られているかもしれない。したがって、セッションに関連して送られたパケットは、セッションサービスをフローに適用することに関連して下記でさらに述べるように、1つまたは複数のパケットフローに入れられる可能性がある。
【0017】
したがって、有線リンク20、24および無線リンク22を使用して、プロセスの各々と、その補完する対応プロセスとの間、すなわち、P1−P1’、P2−P2’、P3−P3’において接続が確立される。あるプロセスから別のプロセスに無線リンク22を介して送られたメッセージパケットは、無線リンク22の送信側のフローマップ処理器30によってフロー28に割り当てられ、受信側のフローマップ処理器30’によって、そのフロー28に属すると識別される。送信側のフローマップ処理器30は、割り当てられた(決定された)フローに関連付けられたセッションサービス(群)を適用し、受信側のフローマップ処理器30’もまた、決定されたフローに関連付けられたセッションサービス(群)を適用する。
【0018】
上述のように、フローマップ処理器30、30’は、無線リンクの両端点上、すなわち加入者装置14および基地局16上に存在し、有線リンク20、24または無線リンク22からパケットを受信し、識別を行なう。パケットが無線リンク22から受信されると、そのパケットには、送り手、すなわち加入者装置14または基地局16によってすでにフローIDが添付されている。受信したフローIDは、フローを決定するために既知のフローIDのリストにマップされ、これにより、そのフローに関連付けられたセッションサービスが決定される。
【0019】
パケットを有線側から受信する場合、対応するフローの決定が必要である。フィルタを使用してメッセージの特徴をパケットフローの既知のプロフィルに合致させるため、下記でさらに述べるフロープロフィルテーブルを使用する。発信者IPアドレス、宛先IPアドレス、TCP/IPポート番号、プロキシIDなど要素を使用し、フィルタを介してパケットをフローに合致させることができる。フローが判定された場合、フローに関連付けられたセッションサービスを適用し、さらに対応するフローIDをパケットに添付する。
【0020】
したがって、セッションサービスによって提供される特別な処理を必要とするフローがフローテーブル内に列挙される。特定のフローに合致しないパケットは、特別な処理が不要なものとみなされ、セッションサービスの適用を開始しない。しかし、そのようなパケットは、本明細書に定められているセッションサービスの適用とは異なるパケット経路指定によって適正な宛先に送達されることになる。またはこれに替えてとして、ワイルドカードまたは「包括的(catch all)」エントリ(フィルタ)を伝送プロフィルテーブルに追加し、他のエントリを起動しないパケットにも対応することができる。
【0021】
様々な方法によって新しいフローをインスタンス化することができる。特定のアプリケーションが特定の種類の処理を必要とする場合もある。セッションサービステーブルと、対応する伝送プロフィルテーブルエントリとは、下記でさらに述べる外部送信元からダウンロードすることができる。あるいは、伝送プロフィルテーブル内で合致を見つけられなかったことをきっかけに、新しい伝送プロフィルエントリの作成が開始されることもある。新しいフローがインスタンス化された場合、その新しいフローからフローIDが決定され、トラフィックフローシグナリングメッセージを使用して無線リンク22を介し受信用フローマップ処理器30’に新しいフロー情報が伝送される。
【0022】
図3は、フローマップ処理器30におけるセッションサービスに対するパケットフローのマップ処理を示す。図3に、フローマップ処理器内に含まれるテーブルを示す。フローマップ処理器30は、フローテーブル200、伝送プロフィルテーブル202、セッションサービステーブル204を備える。フローテーブル200は、フローID206によってパケットフローを識別する。プロセスフィールド208を使用し、対応するローカルプロセスまたはローカルプロセス群を識別することができるが、送達のためには、ポート番号などパケット経路識別情報が実際に使用される。また、同様にパケットフローを説明するフィルタ210も示す。伝送プロフィルテーブル202は、各パケットフローを説明する伝送パラメータ212を有する。伝送パラメータ212には、フロー内のパケットを内容によって識別することができるように各パケットフローのプロフィルが記述され、各パケットフローについてプロフィルエントリ216が含まれる。例示する伝送パラメータには、フィルタID(FID)214a、種類214b、送信元IPアドレス214c、宛先IPアドレス214d、ポートID214e、TCP/IP伝送フラグ214f、フロー方向214gが含まれる。示された伝送パラメータは例示的なものであり、代替の実施形態は、代替のフィールドおよび/または情報を有するフィルタを使用することができる。また、各プロフィルエントリ216には、フロー206に適用されるセッションサービスのリスト218が含まれる。リスト218内の各要素は、セッションサービステーブル204内に入るセッションサービスインデックス220を有し、セッションサービスインデックス220は、適用可能なセッションサービス222を示している。セッションサービステーブル204には、下記でさらに述べるセッションサービスインデックス220によって参照されるセッションサービスエントリ224が含まれる。セッションサービスリスト218内のセッションサービスインデックス220は、例示的なものとして示すことに留意されたい。セッションサービス222をプロフィルエントリ216に関連付けるための他の機構、例えば特定の実施形態に対応して、セッションサービス222を伝送プロフィルテーブル202内に直接含めること、または代替のポインタもしくは配列参照などを実装することができることも当業者には明らかであろう。
【0023】
したがって、フローマップ処理器30は、フローID206またはプロフィルエントリ216を介してフローを識別し、そのプロフィルエントリ216から、適用すべきセッションサービス(群)222を示す対応するセッションサービスエントリ224にマップすることによって、特定のメッセージパケットに適用すべき適用可能なセッションサービス222を決定する。上記で示したように、フローマップ処理器30によってマップされたメッセージパケットには、着信メッセージパケットと発信メッセージパケットとが含まれる。無線リンク22(図2)を介して遠隔フローマップ処理器30から受信したメッセージパケットは、識別されメッセージパケットに添付されたフローID206を有し、これによりフローテーブル200内での探索(look up)が可能になる。無線リンク22を介して伝送するために有線リンク20、24から受信したメッセージパケットは、伝送プロフィルテーブル202内のプロフィルエントリ216を合致させることによって識別される。例示すフローマップ処理器30は、例示のために加入者装置14との関連において示しているが、無線リンク22のどちらの端点にも等しく適用可能である。
【0024】
図4は、パケットフローをセッションサービスにマップするためのフローチャートを示す図である。図4および図2を参照すると、ステップ100に示すように、着信パケットがフローマップ処理器30によって検出されている。ステップ102に示すように、その着信パケットが無線リンク22から送信されたのか、それとも有線リンク20、24からのものかを判定するため検査が行われる。上述のように、フローマップ処理器30は、無線リンク22の両端点上に存在する。パケットが無線リンク22から送信された場合には、伝送の前にフローIDがメッセージに添付される。ステップ104に示すように、そのパケットをパケットフローに合致させるため、フローテーブル内で探索が行われる。ステップ120に示すように、フローIDは、セッションサービステーブル内で索引により管理される(indexed)。ステップ122に示すように、対応するセッションサービスが決定され、ステップ124に示すように、メッセージパケットに適用される。次いで、ステップ126に示すように、パケットは有線リンク24を介して対応するプロセスP1〜P3に送られる。
【0025】
パケットが有線リンク20、24から送信された場合、ステップ106に示すように、やはり下記でさらに述べる伝送プロフィルテーブル内のメッセージパケット特徴群を用いて比較が行われる。ステップ108に示すように、伝送プロフィルテーブル内で合致が見つけられたかどうか判定するために検査が行われる。合致が見つけられなかった場合には、このパケットにはセッションサービスが必要とされない、あるいはステップ110で示され、および図3に関連して上述したように、トラフィックフローシグナリングメッセージを交換することによって新しいフローエントリが作成される。合致が見つけられた場合、ステップ111に示すように、フローIDが伝送プロフィルテーブルから読み取られる。いずれの場合も、ステップ112に示すように、新しく作成され、または見つけられたフローIDがメッセージに添付される。ステップ114に示すように、対応するセッションサービスがセッションサービステーブル内で索引により管理され、ステップ116に示すように、メッセージパケットに適用される。次いで、メッセージは、ステップ118に示すように、決定されたフローのパケットとして無線リンク22を介して送られ、遠隔フローマップ処理器30によって受信される。
【0026】
無線伝送を送る前に決定されるフローIDは、上述のように決定され、伝送の前にメッセージに添付されることに留意されたい。フローIDは、当業者に周知の様々な方法で添付することができる。特定の実施形態において、フローIDは、フローIDを含む追加のパケットヘッダ内にカプセル化される。他の実施形態のプロトコルを使用することもできる。無線伝送による受信の際に、フローIDは外され、無線伝送前の元の形態でパケットが生成される。このようにして、他の送達や、パケット内のデータフィールドと干渉することなしに、フローIDを添付し、メッセージパケットから取り除くことができる。
【0027】
図5aおよび図5bは、新しいパケットフローをインスタンス化するプロセスの例を示す。図5a、5bを、また図2を参照すると、プロセスP1は、ストリーミングビデオ要求を開始しようとしているところである。プロセスP1は、その要求を示すメッセージパケット300を生成し、有線リンク24を介して加入者装置14に転送する。フローマップ処理器30はメッセージパケット300を受信し、伝送プロフィルテーブル202内で対応するプロフィルエントリ216を見つけようと試みる。合致が見つからず、その結果フローマップ処理器30は、フローマップ処理器30内で新しいパケットフローをインスタンス化することを決定する。ストリーミングビデオ要求のために、フィールド214d’内で遠隔宛先を示す新しいフロープロフィルエントリ226が生成され、フィルタFID106が割り当てられる。これらの要求は比較的小さいと見なされるため、ヘッダ圧縮システムサービスが選択される。システムサービスインデックス218 SS3によって示すように、システムサービスインデックス218aが作成され、ヘッダ圧縮のためのシステムサービス222を示す。
【0028】
また、受信予定の戻りストリーミングビデオメッセージパケットのため、ストリーミングビデオ送信元合致214d’の送信元IDフィールド214c’を有するフィルタFID107を有する新しいフロープロフィルエントリ228が作成される。RT QOS(サービス品質)処理のためのシステムサービスが選択される。まだRT QOSのためのシステムサービス222エントリがないため、SS4用のシステムサービスインデックス218bについて新しいエントリ224が作成され、フロープロフィルエントリ228と関連付けられる。このRT QOSシステムサービスは例示的なものであり、フロー特有の処理またはオペレーションを適用するための代替のシステムサービスを、同様に使用することができるであろう。
【0029】
フローマップ処理器30は、基地局16に送るために、新しいフローF4およびF5を示すトラフィックフローシグナリングメッセージ302を生成する。遠隔フローマップ処理器30’部で補完するシステムサービス処理を確立するトラフィックフローシグナリングメッセージの後に、ストリーミングビデオ要求メッセージ300が、無線リンクを介して伝送304するためフレーム化される。遠隔宛先214d’を介した処理の後で、ストリーミングビデオパケット306が基地局16によって受信される。基地局は、トラフィックフローシグナリングと密接に結び付いて、メッセージの送信元をフロープロフィルエントリ228と合致させる。フローマップ処理器30’は、フローID F5をメッセージ308に添付し、無線リンク22を介して加入者装置14に送る。加入者装置14内のフローマップ処理器30は、フローID F5を読み取り、フローテーブル200内で対応するフローID206を見つけ、RT QOS処理のためにシステムサービスインデックスSS5にマップする。
【0030】
別のストリーミングビデオ要求310がプロセスP1から送られ、伝送プロフィルテーブル内でFID106について対応する合致が見つけられる。したがって、システムサービスインデックス218aは、ヘッダ圧縮を示すために探索され、その要求に添付され、およびフローF4を介してメッセージパケット312として送られる。システムサービスフローマップ処理は、フローがもはや必要とされなくなり、対応するエントリがトラフィックフローシグナリングメッセージの別のシーケンスで更新されるまで、このようにして続けられる。
【0031】
図6に示す代替の実施形態において、システムサービスインデックス220は、共通貯蔵部230内に記憶されたシステムサービステーブル204内で標準化される。共通貯蔵部は、インターネット18を介してアクセス可能であり、現行バージョンのシステムサービステーブル204、およびシステムサービスそれ自体の諸バージョンを定期的にダウンロードするために使用される。共通貯蔵部は、無線インターネットファシリティ(WIF)、LDAPディレクトリ、または加入者装置14および基地局16によってアクセス可能な他のウェブサービスとすることができる。複数の基地局16a〜16nにより、システムサービステーブル204は、アクセスされて共通貯蔵部230からダウンロードされる。基地局16a〜16nは各々、通信している加入者装置14a〜14nの各々に、ダウンロードされたシステムサービステーブル204と関連ファイルを伝送する。このようにして、適用可能なシステムサービスの各々について標準化されたインデックスが、無線通信システム10全体にわたって維持される。
【0032】
実施形態により、システムサービスの複雑さと深さが異なる可能性がある。したがって、実行可能ファイルや他の実施形態の詳細は、同じセッションサービスについて訂正および修正を受ける可能性がある。システムサービスをアップグレードおよび/または追加するための、共通貯蔵部からの定期的なダウンロードが行われる可能性がある。さらに、新しいセッションサービス、またはセッションサービスの新しい必要に対応する、あるいはそれらを識別するため、別のフロープロフィルエントリ(フィルタ)を追加することもできる。この場合、フロープロフィルテーブルもまた、共通貯蔵部からダウンロードすることができる。大規模なサービスプロバイダの場合、多数のフローマップ処理器30、30’が各実施態様で多数のサイトの間に展開される可能性がある。したがって、現行状態のシステムサービスを自動的、定期的にダウンロードすることにより、システムサービスを使用する多数のフローマップ処理器30、30’の間では、適時に一貫性が保持される。
【0033】
本明細書で述べられているシステムサービスを適用する方法は、着信パケットをパケットフローに関連付ける。フロープロフィルにメッセージパケットを合致させることは、フローを中断することを回避するため、フロー内のあらゆるパケットに正確に合致させる必要はない。他の機構により、所期の受信者に対するメッセージパケットの送達が確実になされる。セッションサービスの適用は、オーバーヘッドを削減し、パケットの経路指定を速めるようなオペレーションを適用することによって、スループットを改善することが意図されている。たとえば、ヘッダ圧縮のためのプロフィルを起動すべきであった2つのプロセス間のパケットがそのプロフィルに一致しなかった場合、ヘッダ圧縮の意味はないが、そのメッセージパケットは、なお送達されてしまう。しかし、セッションサービスが無線リンクの送信側で適用される場合、フローIDが添付され、ヘッダ伸長などの補完するセッションサービスが適用されることになる。したがって、2つのプロセス間のパケットすべてが、無線リンクを介して送るために特定のフロープロフィルに常に合致するわけではない場合もあるが、合致し、したがって無線リンクの送信側でシステムサービスに従って処理されたパケットは、無線リンクの受信側でこれを補完する処理を受けることになる。したがって、本明細書に定義されているセッションサービスは、無線リンクの両端点部のいずれでも適用される。さらに、そのようなサービスは、一方的なものとし、無線リンクに沿って1点で実行することも、または双方的なものとし、無線リンクの両端点部で補完的に適用することもできる。
【0034】
本明細書に定義されているシステムサービスを適用するためのシステムおよび方法は、それだけには限らないが、a)ROMデバイスなど、非書込み可能記憶媒体に恒久的に記憶された情報、b)フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、CD、RAMデバイス、ならびに他の磁気および光媒体など、書込み可能記憶媒体に変更可能に記憶された情報、またはc)たとえば、インターネットまたは電話モデム回線など電子ネットワーク内のように、ベースバンドシグナリングまたはブロードバンドシグナリング技法を使用して、通信媒体を介してコンピュータに搬送される情報を含めて、多数の形態で無線デバイスに送達可能であることを、当業者なら容易に理解するはずである。本オペレーションおよび方法は、プロセッサによって実行可能なソフトウェア内で、または、搬送波に埋め込まれた1組の命令として実施することができる。またはこれに替えて、本オペレーションおよび方法は、専用集積回路(ASIC)、状態機械、制御装置または他のハードウェア構成要素もしくはデバイスなどハードウェア構成要素、あるいは、ハードウェア構成要素とソフトウェア構成要素とファームウェア構成要素との組合せを使用して、全体的に、または部分的に実施することができる。
【0035】
以上、本発明について、その好ましい実施形態を参照して具体的に示し、述べたが、当業者なら、特許請求の範囲によって包含された本発明の範囲から逸脱することなしに、形態および詳細における様々な変更を本発明に加えることができることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明と共に使用するために動作可能な無線通信リンクを使用する無線通信システムを示す図である。
【図2】加入者装置アクセスユニットと基地局プロセッサの間の無線リンクを介した無線パケットフローを示す図である。
【図3】フローマップ処理器におけるセッションサービスに対するパケットフローのマップ処理を示す図である。
【図4】パケットフローをセッションサービスにマップするためのフローチャートである。
【図5a】新しいパケットフローをインスタンス化するプロセスの例を示す図である。
【図5b】新しいパケットフローをインスタンス化するプロセスの例を示す図である。
【図6】共通グローバル貯蔵部からのセッションサービス識別子のダウンロードを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セッションサービスを識別し、データパケットに適用する方法であって、
第1の組のセッションサービスと、無線リンクに伝送するデータパケットとをマップする情報を含む第1の伝送プロフィルを生成するステップと、
第2の組のセッションサービスと、前記無線リンクで受信するデータパケットとをマップする情報を含む第2の伝送プロフィルを生成するステップと、
前記第2の伝送プロフィルを含むトラフィックフローマップ処理メッセージを前記無線リンクの反対側の端部へ送信するステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記無線パケット上の新たなパケットフローを識別するフローIDを確立するステップと、
前記フローIDを前記トラフィックフローマップ処理メッセージ内に置くステップと
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接続を介する伝送についてのメッセージを受信するステップと、
前記受信したメッセージに関連付けられる伝送プロフィルを識別するステップと
をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記識別した伝送プロフィルを用いて、前記受信したメッセージに関連付けられるセッションサービスを識別するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記セッションサービスに前記受信したメッセージを適用するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
セッションサービスを、データパケットフローに関連付ける方法であって、
前記データパケットフロー、および該データパケットフローに関連付けられるパケットに適用するためのn個の関連付けられるセッションサービスを識別する情報を含むトラフィックフローマップ処理メッセージを受信するステップと、
前記データパケット、および前記トラフィックフローマップ処理メッセージに含まれる関連付けられたセッションサービスの情報により、前記データパケットフローと前記セッションサービスとを関連付けるフローテーブルを更新するステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項7】
セッションサービスを識別し、データパケットに適用する装置であって、
フローマップ処理器であって、
(a)第1の組のセッションサービスと、無線リンクに伝送するデータパケットとをマップする情報を含む第1の伝送プロフィルを生成し、
(b)第2の組のセッションサービスと、前記無線リンクで受信するデータパケットとをマップする情報を含む第2の伝送プロフィルを生成し、
(c)前記第2の伝送プロフィルを含むトラフィックフローマップ処理メッセージを前記無線リンクの反対側の端部へ送信するよう構成されたフローマップ処理器と
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項8】
前記フローマップ処理器は、
(d)前記無線パケット上の新たなパケットフローを識別するフローIDを確立し、
(e)前記フローIDを前記トラフィックフローマップ処理メッセージ内に置くようさらに構成されたことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記無線リンクは、前記反対側の端部との間の接続に含まれることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記フローマップ処理器は、
(f)接続を介する伝送についてのメッセージを受信し、
(g)前記受信したメッセージに関連付けられる伝送プロフィルを識別するようさらに構成されたことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記フローマップ処理器は、前記識別した伝送プロフィルを用いて、前記受信したメッセージに関連付けられるセッションサービスを識別するようさらに構成されたことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記フローマップ処理器は、前記セッションサービスに前記受信したメッセージを適用するようさらに構成されたことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
コンピュータ実行可能命令を格納するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、該命令で実行される方法は、
第1の組のセッションサービスと、無線リンクに伝送するデータパケットとをマップする情報を含む第1の伝送プロフィルを生成するステップと、
第2の組のセッションサービスと、前記無線リンクで受信するデータパケットとをマップする情報を含む第2の伝送プロフィルを生成するステップと、
前記第2の伝送プロフィルを含むトラフィックフローマップ処理メッセージを前記無線リンクの反対側の端部へ送信するステップと
を備えたことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項14】
前記方法は、
前記無線パケット上の新たなパケットフローを識別するフローIDを確立するステップと、
前記フローIDを前記トラフィックフローマップ処理メッセージ内に置くステップと
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−105903(P2009−105903A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288212(P2008−288212)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【分割の表示】特願2004−512333(P2004−512333)の分割
【原出願日】平成15年6月9日(2003.6.9)
【出願人】(504407103)アイピーアール ライセンシング インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】