パケット伝送システムおよびパケット伝送方法
【課題】IMS/MMDネットワーク内のトロンボーンルーティングの問題を解決する。
【解決手段】IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送システムであって、ホームエージェントに属するモバイルノードの移動先のフォーリンエージェントを備え、フォーリンエージェントは、モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェントに送信し、モバイルノードからカプセル化されていない直接伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェント非経由で転送する、ことを特徴とする。
【解決手段】IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送システムであって、ホームエージェントに属するモバイルノードの移動先のフォーリンエージェントを備え、フォーリンエージェントは、モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェントに送信し、モバイルノードからカプセル化されていない直接伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェント非経由で転送する、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IMS/MMD(IP Multimedia Subsystem/Multimedia Domain)ネットワークにおけるトロンボーンルーティング(trombone routing)の軽減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トロンボーンルーティングは、訪問先ネットワークにおける移動局のブートストラップの間、および、1つのサブネットからもう1つのサブネットへの移動の間、の両方において、有効性に影響を及ぼす。トロンボーンルーティングは、REGISTERおよびINVITEメソッドの両方に影響を及ぼすので、移動局が1つの訪問先サブネットからもう1つの訪問先サブネットに移動するときに、初期の呼設定の遅延およびハンドオフの遅延の両方に影響を及ぼす。移動局の移動の間に登録の一部としてAKA(Authentication and Key Agreement)が実行され、従って、高速な登録は迅速なセキュリティアソシエーションの確立に役立ち、従って、ハンドオフの遅延を削減する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP2 X.S0013-002-A v1.0: “All-IP Core Network Multimedia Domain; IP Multimedia Subsystem - Stage 2,” November 2005
【非特許文献2】3GPP2 X.S0013-004-A v1.0: “All-IP Core Network Multimedia Domain: IP Multimedia Call Control based on SIP and SDP - Stage 3,” November 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、IMS/MMDネットワーク内のトロンボーンルーティングの問題を解決するためのいくつかの方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係るパケット伝送システムは、IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送システムであって、ホームエージェントに属するモバイルノードの移動先のフォーリンエージェントを備え、フォーリンエージェントは、モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェントに送信し、モバイルノードからカプセル化されていない直接伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェント非経由で転送することを特徴とする。
【0006】
本発明に係るパケット伝送方法は、IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送方法であって、ホームエージェントに属するモバイルノードが、移動先のフォーリンエージェントにカプセル化された伝送形式を用いてパケットを送信するステップと、フォーリンエージェントが、モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送られてきたパケットをホームエージェントに送信するステップと、ホームエージェントに属するモバイルノードが、カプセル化せずに直接伝送形式を用いてパケットを送信するステップと、フォーリンエージェントが、モバイルノードから直接伝送形式を用いて送られてきたパケットをホームエージェント非経由で転送するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トロンボーンルーティングを防止し、シグナリングの有効性およびIMSネットワークの全体の性能を増加させることに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】MIPv4(FA−CoA)についてのトロンボーンルーティングを表わす。
【図2】MIPv6の登録および呼設定におけるトロンボーンルーティングを表わす。
【図3】メディアのMIPv4およびMIPv6についてのトロンボーンルーティングを表わす。
【図4】1つのFAからもう1つのFAへの移動ホストの移動を表わす。
【図5】ハンドオフにおける動作シーケンスを表わす。
【図6】MNからP−CSCFへ、または、P−CSCFからMNへのトロンボーンルーティング経路を表わす。
【図7】制御プレーンにおけるMIPおよびSIP統合を表わす。
【図8】SIPおよびMIPメッセージ経路を表わす。
【図9】ネットワークにおける典型的な配置シナリオを表わす。
【図10】選択的な逆トンネルを表わす。
【図11】SIPモビリティ(SIP Mobility)がトロンボーンルーティングを防止することを表わす。
【図12】MIPv6のための選択的な逆トンネルおよびCoAアプローチを表わす。
【図13】MIPv4 FA−CoAについてのトロンボーンルーティングを表わす。
【図14】MAを有するMIPv4−CoAを用いたトロンボーンルーティングを表わす。
【図15】動的なホームエージェントの割り当てを表わす。
【図16】SIP INVITEにおけるトロンボーンルーティングの軽減の実現を表わす。
【図17】SIP登録メッセージについてのトロンボーンルーティングの軽減を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0009】
トロンボーンルーティングがMIPv4(Mobile IP version 4)についての呼設定および登録手順の両方にどのように影響するか説明する。
【0010】
図1は、MIPv4 FA(Foreign Agent(フォーリンエージェント))−CoA(Care of Address(気付アドレス))の場合におけるトロンボーンルーティングに関する非効率の例を表わす。P−CSCF(Proxy Call Session Control Function)がMN(Mobile Node)と同じ訪問先ネットワークに位置する場合でも、シグナリングは、P−CSCFにルーティングされる前にホームネットワークにおけるHA(Home Agent)までの全ての経路を移動しなければならない。この非効率は、一部分、FA−CoAの場合に関係する逆トンネルによるものである。同様に、CN(Core Network)から入ってくる呼(INVITE)はP−CSCFを介して移動し、訪問先ネットワークにおける移動局に送達される前にホームネットワークにおけるホームエージェントに行く。これは呼設定の遅延を増加させる。トロンボーンルーティングのために登録(REGISTRATION)が遅延するので、移動局が新たなネットワークに移動し、新たなセキュリティアソシエーションを設定するとハンドオフの遅延に影響を与える。
【0011】
MIPv6(Mobile IP version 6)が用いられるときにトロンボーンルーティングが効率性にどのように影響を与えるかを説明する。MIPv4の場合と異なり、この場合においてフォーリンエージェントは存在しない。図2は、MIPv6の場合においてトロンボーンルーティングがどのように発生するかを表わす。IPv6を用いるとき、ネットワークオペレータは、各々のハンドオフの間にアクセスルータから新たなCoAを取得する場合でも、習慣的に常にSIP(Session Initiation Protocol)登録および再登録処理の間にコンタクトフィールド内のMNホームアドレスを用いる。従って、再登録処理の間に新たなP−CSCFのアドレスのみS−CSCF(Serving Call Session Control Function)/HSS(Home Subscriber Server)に提供され、移動局のコンタクトアドレスは同じままである。経路のHAは、MIP登録によって、MNホームアドレスのマッピングおよびその最新のCoAを保持する。
【0012】
しかし、MIPv6の場合において、訪問先ネットワークにFAが存在せず、移動局はステートレス自動設定を用いて新たな気付アドレスを取得する。移動局がホームネットワークにおいてS−CSCFを用いて登録するとき、そのコンタクトアドレスとしてそのホームアドレスを提供する。移動局とHAとの間の逆トンネルが存在するので、呼設定および登録(再登録)処理の両方はトロンボーンルーティングを免れない。従って、MIPv4の場合のように、性能に影響を与える。
【0013】
これら両方の場合から明らかに、トロンボーンルーティングは望まれず、従って、それを除去する解決策を工夫する必要がある。次に、トロンボーンルーティングを防止するいくつかの例を説明する。
【0014】
同様に、データに固有のトロンボーンルーティング問題が存在し、デフォルトで逆トンネルが存在する。図3は、経路の最適化なしのMIPv6およびMIPv4 FA CoAに基づくアプローチの両方についてのメディア伝送に関するトロンボーンルーティングを表わす。逆トンネルは効果を有するが、このトロンボーンルーティングは、ホームネットワークを介して移動する長い経路のためにハンドオフの遅延を引き起こすもととなる。
【0015】
次に、トロンボーンルーティングが現在のテストベッドにどのように影響を与えるかを説明する。図4に表わされているように、IMS移動ノードであるMNがネットワークAからネットワークBに移動すると、MIP登録およびSIP再登録はネットワークBにおいて遂行されなければならない。まず、MNはネットワークBにおいてFAからFAアドバタイズメントを通してその移動を検出する。移動を検出すると、FAを通してMIP登録を実行し、かつネットワークBにおける新たなP−CSCFのIPアドレスを取得するためにDHCPクライアントの動作を実行する。この時点で、MNのルーティングテーブルはMIP動作を通して更新され、MNがネットワークにおける任意のノードから到達可能であるようにFAとHAとの間のトンネルが確立される。ネットワークBにおけるDHCPサーバからP−CSCFのIPアドレスを取得した後、新たなP−CSCFにSIP登録メッセージを送信することによってSIP再登録を実行する。P−CSCFはSIPメッセージをS−CSCFに転送すると、SIP応答メッセージを用いてP−CSCFに応答する。従って、MNはSIP応答メッセージを受信し、SIP再登録が完了する。
【0016】
このハンドオフ処理において2つの課題が存在する。
<遅いハンドオフ>
図5に表わされているように、FAアドバタイズメント検出、MIP登録、DHCP動作、SIP登録の順次的な動作はハンドオフの遅延を増大させる。
<非効率なルーティング>
FAとHAとの間のトンネルの逆モードのために、MNとP−CSCFとの間のSIPメッセージは図6に表わされているようにトロンボーンルーティング経路を取って進む。
【0017】
<MNからP−CSCFへのSIPメッセージの経路>
MN→FA→ネットワークBにおけるゲートウェイ→ホームネットワークにおけるゲートウェイ→HA→ホームネットワークにおけるゲートウェイ→ネットワークBにおけるゲートウェイ→P−CSCF
P−CSCFからMNへのSIPメッセージは逆経路を取って進む。
【0018】
ハンドオフを高速化し、かつトロンボーンルーティングを防止するために、トロンボーンルーティングの影響の軽減に役立ついくつかの解決策を提案する。これらは、概して次に区分される。
a)MIPの上にSIP登録を載せる(FAにおいて分配する)
b)FAとP−CSCFとの間の選択的逆トンネルおよびトンネルの使用
c)IPv4およびIPv6の両方についてのSIPに基づく移動の使用
d)SIP登録および選択的逆トンネルの間でMIPv6の場合におけるCoAの使用
e)MIPバインディング(HAおよびS−CSCF)共存の一部としてSIP登録を送信する
【0019】
このアプローチにおいて、SIPメッセージがFA−HAトンネルをバイパスするMIP制御メッセージの一部として伝送される点で、MIPおよびSIPシグナリング(すなわち、制御プレーン)は統合される。MNはP−CSCFのIPアドレスを必要としないので、DHCP動作は取り止めとなる。その代わり、FAは、対応するP−CSCFのIPアドレスを前もって知っている必要がある。FAおよびP−CSCFは固定されているので、P−CSCFのIPアドレスはFAにおいて予め設定することが可能である。従って、MIPおよびSIP登録は独立とすることが可能であり、それらの動作は並行して同時に実行することが可能である。特に、SIP登録は、SIPメッセージのためのルーティング経路がMIPを通して完全に確立されるまで待つ必要がない。
【0020】
図7および図8に、MIPおよびSIP統合のシステム(S100)が示されている。
動作手順(図7):
1.MNは、新たなFAから新たなP−CSCFアドレスとともにFAアドバタイズメントを受信する。
2.MN上のMIP処理(MIP−MN)は、新たなP−CSCFの検出をMN上のSIPユーザエージェント(UA−SIP)に通知する。
3.UA−SIPは、MIP−MNにシグナリング(例えば、sip_ua[p-cscf])を与えることによってSIP登録を開始する。
4.MIP−MNは、MIP固有メッセージング動作を通してMIP/SIP登録を実行する。
5.FAは、MIPおよびSIP登録の両方、P−CSCFへのSIP登録メッセージおよびHAへのMIP登録メッセージを並行して実行する。ここで、FAはIPレイヤの転送ノードではなく、その代わりに、アプリケーション固有の中継ノードの役割を果たすことに留意すべきである。
6.SIP登録メッセージがS−CSCFに伝送される。
7.SIP応答メッセージがP−CSCFに伝送される。
8.P−CSCFはFAにSIP応答メッセージを送信する。ここで、SIPメッセージは、MIPメッセージ、UDPメッセージ、またはFAのSIPメッセージそれ自体として送信することが可能であり、SIPスタックを実現する。
9.FAは、MIP動作を通してMNにSIP応答を引き渡す。
10.最後に、MIP−MNは、UA−SIPにSIP応答の通知を与え、SIP登録が完了する。
【0021】
従って、MNからP−CSCFへ、または、P−CSCFからMNへのSIPメッセージは、MIPによってではなく、通常のIPルーティングによって設定される経路に従って移動する。FA−HAトンネルはメッセージを転送するために使用されない。図8はSIPおよびMIP登録メッセージの両方についてのルーティング経路を表わす。
【0022】
図9、図10に、選択的逆トンネルおよびFAとP−CSCFとの間のカプセル化技術を用いたパケット伝送システム(S200)が示されている。
図9はSIPおよびMIPの統合を用いることによってトロンボーンルーティングを防止する典型的な配置シナリオを表わす。図10は選択的な逆トンネルを表わす。
【0023】
このアプローチは、選択的逆トンネルおよびFAとP−CSCFとの間のカプセル化技術を用いるメカニズムを提供する。
【0024】
トロンボーンルーティング問題の根本原因は、FAにおける逆トンネルの使用である。しかし、MNがFAへのトンネルを設定し、MNとFAとの間でカプセル化された伝送形式(Encapsulated Delivery style)のパケットを用いる。このトンネルの主な目的は、MNからのブロードキャストパケットを逆トンネルを介してホームネットワークに送信することを可能とすることである。FAにおいてMN−FAトンネルを介して受信されるパケットについてのIPヘッダフィールドは次の通りである。
・外部IPヘッダ:送信元=MNのホームアドレス、宛先=FAのアドレス
・内部IPヘッダ:送信元=MNのホームアドレス、宛先=CNのアドレス
【0025】
また、カプセル化された伝送形式で選択的逆トンネルを実行するための手段を説明する。これは、ローカルリソースへのパケット伝送を提供することを意図し、かつ訪問先ネットワークにおいてP−CSCFへの伝送を最適化するために使用することが可能である。この場合において、MNは、FAに、次のように選択的逆トンネルの実行を要求することが可能である。
・逆トンネルに向けられたパケット:(MN−FAトンネルを介して)カプセル化された伝送形式を用いて送信され、FAはこれらをHAに逆トンネルしなければならない。MNは、HAを介したCNへの伝送を保証するためにカプセル化された伝送形式を用いて全てのメディアパケットを送信することが可能である。
・逆トンネルに向けられていないパケット:(カプセル化されていない)直接伝送形式(Direct Delivery style)を用いて送信され、FAはこれらを転送し、これらをHAに逆トンネルしない。MNは、通常のIPルーティングを用いてP−CSCFに向けられた全てのパケットを送信することが可能であり、FAは通常のパケットとしてそれらを転送する。
【0026】
カプセル化された伝送形式を用いた選択的逆トンネルは、MNからP−CSCFへの経路を最適化することによって、トロンボーンルーティング問題の一部を解決する。しかし、P−CSCFからMNへのパケットは、いまだHAを介してルーティングされる。この問題はP−CSCFからMNに向けられた全てのパケットについてP−CSCFとFAとの間のIP−IPトンネルを確立することによって軽減することが可能である。P−CSCFからFAにおいて受信されたパケットについてのIPヘッダフィールドは次の通りである。
・外部IPヘッダ:送信元=P−CSCFのアドレス、宛先=FAの気付アドレス
・内部IPヘッダ:送信元=P−CSCFのアドレス、宛先=MNのアドレス
P−CSCF−FAトンネルを介してFAにおいて受信されたパケットはFAにおいてカプセルから出され、MNに転送される。これはHA−FAトンネルを介してFAにおいて受信されたカプセル化されたパケットが処理される方法と同じである。
【0027】
選択的逆トンネルの使用は次のような向上を要求する。
1)カプセル化された伝送形式のためのMN−FAトンネルの確立:これはMNがFAを用いて登録した後に行うことが可能である。トンネル確立機能はRFC3024準拠のMNにおいて利用可能であるべきである。
2)MNにおけるP−CSCFを目標とするパケットのための直接伝送形式:これはRFC3024準拠の機能であり、MNがFAを用いて登録し、かつDHCPを介してP−CSCFのアドレスを受信した後に設定することが可能である。これはMN−FAトンネルをバイパスするMNにおけるP−CSCF固有経路の確立を要求する。
3)FAにおける選択的逆トンネル:この機能はRFC3024準拠であり、MNがFAを用いて登録した後に活性化されるべきである。
4)P−CSCF−FAトンネル:これはP−CSCF機能に拡張を要求する。SIP登録メッセージがFAを介してP−CSCFにおいて受信された後に、トンネルが確立されるべきである。さらに、ルーティングテーブルのエントリは、このトンネルを介してMNに全てのパケットを方向づけるべきである。これは、トンネルを介してSIP応答の伝送を保証する。
【0028】
トロンボーンルーティングを防止する第3のアプローチは、IPv4およびIPv6ネットワークの両方についてSIPに基づく移動を用いることである。SIPに基づく移動がどのように上記2つの例に関するトロンボーンルーティングを処理するかの例を提供する。SIPに基づく移動の場合において、移動局は移動バインディング(mobility binding)を提供するためにMIPv4またはMIPv6を使用しない。従って、ホームエージェントあるいはフォーリンエージェントの概念は全く存在しない。訪問先ネットワークにおいて移動局がブートストラップするとき、IPv4の場合においては状態を有するDHCPサーバから、IPv6の場合においてはステートレス自動設定によって、IPアドレスを取得する。IPアドレスの設定の間に、P−CSCFのアドレスを含む他のサーバ設定も取得する。移動局がS−CSCFに登録メッセージを送信すると、新たなコンタクトアドレスおよびサブネットにおけるP−CSCFのアドレスとして新たなCoAアドレスを送信する。従って、任意の時点においてHSSは移動局の新たなコンタクトアドレスおよび対応するP−CSCFのアドレスを知っている。HAあるいはMIPは存在しないので、登録メッセージおよび応答は標準のルーティング経路を進んで行き、トロンボーンルーティングには全く従わない。同様に、移動局への新たな呼(INVITE)が発呼側によって生成されると、移動局のURI(Uniform Resource Identifier)を用いてS−CSCFにルーティングされる。S−CSCFがこの呼を取得すると、登録データベースを調べ、その移動局に責任を負うP−CSCFに呼をルーティングする。しかし、移動局のコンタクトアドレスは、いまだ、新たなネットワークにおいて取得された新たなCoAである。P−CSCFはコンタクトアドレスを調べ、標準のルーティング処理を用いて移動局に呼を転送する。従って、トロンボーンルーティングは呼設定および登録処理の両方において防止される。再登録手順の間の遅延における削減は、1つのサブネットからもう1つのサブネットに移動局が移動する間のハンドオフの遅延を削減するのに役立つ。
【0029】
図11は、SIP登録およびSIP呼設定の両方についてトロンボーンルーティングがどのように防止されるかを表わす。
【0030】
次に、コンタクトアドレスとしてホームアドレスの代わりに移動局の登録メッセージにおけるCoAを用いることによって、かつ選択的逆トンネルの使用によって、どのようにトロンボーンルーティングを防止することができるかを説明する。CNとMNとの間のメディアがホームエージェントを介して移動しなければならないことは必須であるが、避けることができるならば、シグナリングをホームエージェントを通して移動させることは必ずしも必要ではない。従って、S−CSCFにおけるコンタクトアドレスとしてCoAを用いた選択的逆トンネルおよび登録の組み合わせは、通常のMIPv6の場合においてよく見られるトロンボーンルーティング問題をいくらか軽減するために役立ちうる。
図12は、上述したメカニズムを用いてトロンボーンルーティングをどのように防止することができるかの例を表わす。
【0031】
HAおよびS−CSCFが実際に共存し、かつSIP登録URIおよびP−CSCFアドレスがMIP更新の一部として送信されるいくつかの概念を取り込む。この場合において、HAはバインディングキャッシュを有する。全てのSIP関連登録情報はMIPバインディング更新の一部として送信されるが、フォーリンエージェントにおいて分配されない。HAは全ての登録情報をHAにおけるバインディングキャッシュの一部として保持する。
【0032】
<動的ホームエージェント(DHA)の使用>
トロンボーンルーティング問題の根本原因は、全てのパケットがMIPv4の経路の最適化なくHAを通して移動する必要があるという事実による。そのような追加のルーティングの問題は、移動ノードの訪問先ネットワークに近いホームエージェントを導入することによって軽減することが可能である。これらのHAは、一般に、動的ホームエージェント(DHA)として知られる。動的ホームエージェントの割り当ては、MIPv4に基づくプロトコルによってサポートされる。ホームエージェントをフォーリンエージェントの近くに配置することによって、ルーティング経路をかなりの範囲まで最小化することができる。図13および図14は、移動エージェント(Mobility Agent(MA))(DHAとしても知られる)が各々の訪問先ネットワークにおいて配置され、それによってシグナリングおよびメディアの両方について移動する経路を削減するシナリオを表わす。各々のサブネットにおいてMAを配置する必要がないことに留意することが重要である。訪問先ネットワークのトポロジーおよびサイズに応じて、複数のMAを配置することが可能である。しかし、通常、MAはサブネットのレベルより1つ高いレベルに配置されるので、1つのMAは複数のFAを扱うことができる。発行された文献におけるいくつかの移動最適化プロトコルは、同じ動的ホームエージェントの概念を用いる。以下、簡単に動的ホームエージェントの割り当て手順、移動エージェントの機能、元のHAを用いた登録手順、MAにおけるパケット処理手順、および動的DNS更新を説明する。
【0033】
<動的ホームエージェントの割り当て>
訪問先ネットワークにおけるフォーリンエージェント(FA)は、エージェントアドバタイズメントメッセージ内に‘D’フラグを含まなければならない。‘D’ビットは、RFC3220において規定された他のフラグビットの後の最初の予約ビットを占める。また、FAは、エージェントアドバタイズメントメッセージ内にネットワークアクセス識別子(NAI)を含まなければならない。アドバタイズメントされているFAのNAIをそれ自身のNAIと比較することによって、MNはホームドメイン内に存在するか否かを判断することができる。シグナリング手順およびメッセージ交換は図15に表わされている。それは次のように動作する。移動ノードが訪問先ネットワークに到達すると、FAに動的HAハンドオーバ要求(HHR)メッセージを送信する。このメッセージを受信した後、FAは[MIP−Diameterアプリケーション]において定義されているように、AA−Mobile−Node−Request(AMR)メッセージを構成し、サービングAAA(Authentication, Authorization, and Accounting)サーバに送信する。AAAサーバはMNを認証し、MNに移動エージェント(MA)を割り当てる。そして、割り当てられたMAにHome−Agent−MIP−Request(HAR)メッセージを送信する。そして、MAは、MNに新たなホームアドレスを割り当て、Home−Agent−MIP−Answer(HAA)メッセージにおいてAAAサーバに返却する。そして、AAAサーバは、FAにAA−Mobile−Node−Answer(AMA)メッセージを送信する。続いて、MNは、FAからの動的HAハンドオーバ応答(HHA)メッセージを受信する。シグナリングメッセージシーケンスは→AMR→HAR→HAA→AMA→HHAである。図15は詳細な呼の流れを表わす。
【0034】
HHRメッセージは、RFC2002における登録要求メッセージとして定義されているが、次の変更を有する。
タイプ 4(動的HAハンドオーバ要求)
ホームアドレス 同時HAバインディングのための現在のアドレス、それ以外はヌルアドレス(0.0.0.0)
HAアドレス ヌルアドレス(0.0.0.0)
CoA FAの気付アドレス
拡張 MN NAI 拡張
MNは認証の目的のために拡張においてNAIまたはFQDN(Fully Qualified Domain Name)を含まなければならない。MNは、同時HAバインディングを要求するならばHHRメッセージにおいて‘S’ビットを設定しなければならない。
【0035】
一方、MNが、HAの割り当て前にDHCPまたはPPPのいずれかから一時的なアドレスを取得し、新たなホームアドレスとしてこのアドレスを用いることを望むならば、この動的に割り当てられたアドレスを用いて、HHRメッセージ内のホームアドレスフィールドを設定しなければならない。FAがAAAサーバにAMRメッセージを送信すると、MIP−Feature−Vector AVPにおけるMobile−Node−Home−Address−Requestedフラグは、もはやホームアドレスがMNに割り当てられる必要がないことを示すためにゼロに設定されなければならない。
【0036】
<元のHAを用いた登録>
シームレスなハンドオーバのために、MNは元のHAに登録要求メッセージを送信しなければならない。登録は次のように指定されたフィールドを用いて元のHAに直接に送信される。
ホームアドレス : 元のホームアドレス
HAアドレス : 元のHAアドレス
CoA : 新たなホームアドレス(例えば、MAアドレス)
元のホームアドレスのCoAが新たなホームアドレスに設定されるので、元のホームアドレスに向けられた全てのパケットは、登録が成功した後、元のアドレスによってMNの新たなホームアドレスにリダイレクトされる。そして、MAはMNに向けられた全てのパケットを横取りし、かつそれらをMNの現在の位置に転送する。
【0037】
<移動エージェント>
前述のように、移動エージェント(MA)は、動的に割り当てられ、HAのような類似の機能を有するホームエージェントに他ならない。例えば、MAは元のHAを用いてMNからのホーム登録要求(home registration request)を受け取る。それはFAのような動作をする。例えば、ホーム登録要求を受信した後、それを元のHAに中継する。しかし、MAはFAアドバタイズメントをブロードキャストせず、また、MNにCoAアドレスを提供しない。通常、MAはFAより1つ高いレベルに配置される。
【0038】
MAは、2つのユーザリストを維持しなければならない。1つは通常のHA機能のためのリストであり、もう1つはシームレスなHAハンドオーバの目的のためのリストである。シームレスなハンドオーバの目的のため、MAは<MN_Old_Home_Addr,MN_New_Home_Addr>の情報を有するバインディングリストを保持する。シームレスなセッションのため、MAは元のHAによってカプセル化されたパケットを受信する。カプセル化されたパケットについて、MAはそのバインディングリストと比較し、合致したならば、その内部宛先アドレスが元のホームアドレスであるパケットを受信したと判断する。そして、MAはデータグラムをカプセルから取り出さなければならず、それをMNの現在の位置にトンネルする(すなわち、MNの現在のCoAを用いてデータグラムを再カプセル化する)。MNの新たなホームアドレスに向けられたカプセル化されていないパケットについて、MAはMNの通常のHAのように機能しなければならない。
【0039】
セキュリティアソシエーションの場合において、MAは2つのSA(Security Association)を維持する必要がある。(1)1つはMN−HA登録鍵を用いるMN(MA−MNとしても知られる)を有し、(2)もう1つはFA−HA登録鍵を用いる元のHA(MA−OHAとしても知られる)を有する。
【0040】
続く移動の間に(すなわち、MNがFAを変更するが、MAを変更しないときに)、MNは新たなCoAを有するMAに登録要求を送信しなければならない。MAがそのような登録要求を受信すると、そのHAバインディングリストにおける以前のホームアドレスを検証し、それに従って登録応答を応答しなければならない。
【0041】
<動的DNS更新>
MNは、新たなホームアドレスを取得した後、その名前バインディングを更新するために正当な権限を持ったドメインネームサーバ(Authoritative Domain name Server(ADS))を用いて安全な動的DNS更新を実行すべきである。代わりのアプローチは、MNがDHCPサーバによって割り当てられた新たなホームアドレスを用いるならば、DHCPサーバはDNSを更新することが可能であることである。DHCP_REQUESTにおいて‘S’ビットを設定することによって、MNはDHCPサーバにDNS更新を委任することが可能である。これはDNSを更新するMNについてセキュリティが重要である多くの場合によりよいアプローチである。
【0042】
<MIP更新の一部としてSIP登録を載せる(S−CSCFおよびHAの共存)>
HAおよびS−CSCFが実際に共存し、かつSIP登録URIおよびP−CSCFのアドレスがMIP更新の一部として送信されるいくつかの概念を取り込む。この場合において、HAはバインディングキャッシュを有する。全てのSIP関連登録情報はMIPバインディング更新の一部として送信されるが、フォーリンエージェントにおいて分配されない。HAは全ての登録情報をHAにおけるバインディングキャッシュの一部として保持する。
【0043】
<横取りキャッシュアプローチのための設計原理>
ここでは、テストベッドにおいて実現することを計画しているトロンボーンルーティングの軽減に関する設計原理を説明する。上述した各々のアプローチは賛否両論あるが、FAおよび移動局への変更が最小であるアプローチを採用した。逆トンネルはネットワークに必須であるので、それぞれのFAにおいてポリシーエージェントを付加する。このポリシーエージェントは、入ってくるトラフィックを検査し、ポート番号に基づいてカプセル化エージェントに送信するかP−CSCFに直接にルーティングするかを決定する。例えば、SIPシグナリングは通常、ポート5060で伝送され、そしてこのエージェントはパケットを捕捉し、検査し、選択的に、これらのパケットをホームエージェントにトンネルするためにカプセル化エージェントに送信するか、あるいは、P−CSCFに直接に送信する。従って、SIPトラフィック以外のトラフィックは、逆トンネルを介してHAに返却される。これはメディアトラフィックも含む。従って、REGISTERおよびINVITEメッセージのようなSIP関連シグナリングはホームエージェントを介してトンネルされることなくP−CSCFに移動する。メディアトラフィックについてのトロンボーンルーティングを防止することは別個の問題であり、将来の作業の一部として扱われる必要がある。
【0044】
同様に、逆トンネルのおかげで、移動局に向けられたトラフィックはホームエージェントに行き、P−CSCFに伝送される前にフォーリンエージェントにトンネルされる。この場合において、P−CSCFを介して移動ノードに行くように向けられたSIP REGISTERおよびSIP INVITEについての応答メッセージは、FAによって横取りされる前に、ホームエージェントに移動する必要がある。前述のように、P−CSCFとHAとの間の追加の移動を付加する。この問題を軽減するために、P−CSCFにおいてキャッシュ機能を導入することを計画している。それはFAを用いて移動局のホームアドレスをマッピングすることが可能であり、移動局のホームアドレスに向けられたあるポート番号(5060)を有するメッセージを代わりにFAにルーティングする。FAにおけるキャッシュ機能および動的ルーティング機能は、通常のようにホームエージェントに送信する代わりにFAを介してMNに向けられたあるタイプのパケットをルーディングするために役立つ。図16、図17はFAおよびP−CSCFにおいて設けることが必要ないくつかの付加モジュール、および、FAとP−CSCFとの間のプロトコルの相互作用を表わす。
【符号の説明】
【0045】
S100…MIPおよびSIP統合のシステム、S200…パケット伝送システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、IMS/MMD(IP Multimedia Subsystem/Multimedia Domain)ネットワークにおけるトロンボーンルーティング(trombone routing)の軽減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トロンボーンルーティングは、訪問先ネットワークにおける移動局のブートストラップの間、および、1つのサブネットからもう1つのサブネットへの移動の間、の両方において、有効性に影響を及ぼす。トロンボーンルーティングは、REGISTERおよびINVITEメソッドの両方に影響を及ぼすので、移動局が1つの訪問先サブネットからもう1つの訪問先サブネットに移動するときに、初期の呼設定の遅延およびハンドオフの遅延の両方に影響を及ぼす。移動局の移動の間に登録の一部としてAKA(Authentication and Key Agreement)が実行され、従って、高速な登録は迅速なセキュリティアソシエーションの確立に役立ち、従って、ハンドオフの遅延を削減する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP2 X.S0013-002-A v1.0: “All-IP Core Network Multimedia Domain; IP Multimedia Subsystem - Stage 2,” November 2005
【非特許文献2】3GPP2 X.S0013-004-A v1.0: “All-IP Core Network Multimedia Domain: IP Multimedia Call Control based on SIP and SDP - Stage 3,” November 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、IMS/MMDネットワーク内のトロンボーンルーティングの問題を解決するためのいくつかの方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係るパケット伝送システムは、IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送システムであって、ホームエージェントに属するモバイルノードの移動先のフォーリンエージェントを備え、フォーリンエージェントは、モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェントに送信し、モバイルノードからカプセル化されていない直接伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェント非経由で転送することを特徴とする。
【0006】
本発明に係るパケット伝送方法は、IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送方法であって、ホームエージェントに属するモバイルノードが、移動先のフォーリンエージェントにカプセル化された伝送形式を用いてパケットを送信するステップと、フォーリンエージェントが、モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送られてきたパケットをホームエージェントに送信するステップと、ホームエージェントに属するモバイルノードが、カプセル化せずに直接伝送形式を用いてパケットを送信するステップと、フォーリンエージェントが、モバイルノードから直接伝送形式を用いて送られてきたパケットをホームエージェント非経由で転送するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トロンボーンルーティングを防止し、シグナリングの有効性およびIMSネットワークの全体の性能を増加させることに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】MIPv4(FA−CoA)についてのトロンボーンルーティングを表わす。
【図2】MIPv6の登録および呼設定におけるトロンボーンルーティングを表わす。
【図3】メディアのMIPv4およびMIPv6についてのトロンボーンルーティングを表わす。
【図4】1つのFAからもう1つのFAへの移動ホストの移動を表わす。
【図5】ハンドオフにおける動作シーケンスを表わす。
【図6】MNからP−CSCFへ、または、P−CSCFからMNへのトロンボーンルーティング経路を表わす。
【図7】制御プレーンにおけるMIPおよびSIP統合を表わす。
【図8】SIPおよびMIPメッセージ経路を表わす。
【図9】ネットワークにおける典型的な配置シナリオを表わす。
【図10】選択的な逆トンネルを表わす。
【図11】SIPモビリティ(SIP Mobility)がトロンボーンルーティングを防止することを表わす。
【図12】MIPv6のための選択的な逆トンネルおよびCoAアプローチを表わす。
【図13】MIPv4 FA−CoAについてのトロンボーンルーティングを表わす。
【図14】MAを有するMIPv4−CoAを用いたトロンボーンルーティングを表わす。
【図15】動的なホームエージェントの割り当てを表わす。
【図16】SIP INVITEにおけるトロンボーンルーティングの軽減の実現を表わす。
【図17】SIP登録メッセージについてのトロンボーンルーティングの軽減を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0009】
トロンボーンルーティングがMIPv4(Mobile IP version 4)についての呼設定および登録手順の両方にどのように影響するか説明する。
【0010】
図1は、MIPv4 FA(Foreign Agent(フォーリンエージェント))−CoA(Care of Address(気付アドレス))の場合におけるトロンボーンルーティングに関する非効率の例を表わす。P−CSCF(Proxy Call Session Control Function)がMN(Mobile Node)と同じ訪問先ネットワークに位置する場合でも、シグナリングは、P−CSCFにルーティングされる前にホームネットワークにおけるHA(Home Agent)までの全ての経路を移動しなければならない。この非効率は、一部分、FA−CoAの場合に関係する逆トンネルによるものである。同様に、CN(Core Network)から入ってくる呼(INVITE)はP−CSCFを介して移動し、訪問先ネットワークにおける移動局に送達される前にホームネットワークにおけるホームエージェントに行く。これは呼設定の遅延を増加させる。トロンボーンルーティングのために登録(REGISTRATION)が遅延するので、移動局が新たなネットワークに移動し、新たなセキュリティアソシエーションを設定するとハンドオフの遅延に影響を与える。
【0011】
MIPv6(Mobile IP version 6)が用いられるときにトロンボーンルーティングが効率性にどのように影響を与えるかを説明する。MIPv4の場合と異なり、この場合においてフォーリンエージェントは存在しない。図2は、MIPv6の場合においてトロンボーンルーティングがどのように発生するかを表わす。IPv6を用いるとき、ネットワークオペレータは、各々のハンドオフの間にアクセスルータから新たなCoAを取得する場合でも、習慣的に常にSIP(Session Initiation Protocol)登録および再登録処理の間にコンタクトフィールド内のMNホームアドレスを用いる。従って、再登録処理の間に新たなP−CSCFのアドレスのみS−CSCF(Serving Call Session Control Function)/HSS(Home Subscriber Server)に提供され、移動局のコンタクトアドレスは同じままである。経路のHAは、MIP登録によって、MNホームアドレスのマッピングおよびその最新のCoAを保持する。
【0012】
しかし、MIPv6の場合において、訪問先ネットワークにFAが存在せず、移動局はステートレス自動設定を用いて新たな気付アドレスを取得する。移動局がホームネットワークにおいてS−CSCFを用いて登録するとき、そのコンタクトアドレスとしてそのホームアドレスを提供する。移動局とHAとの間の逆トンネルが存在するので、呼設定および登録(再登録)処理の両方はトロンボーンルーティングを免れない。従って、MIPv4の場合のように、性能に影響を与える。
【0013】
これら両方の場合から明らかに、トロンボーンルーティングは望まれず、従って、それを除去する解決策を工夫する必要がある。次に、トロンボーンルーティングを防止するいくつかの例を説明する。
【0014】
同様に、データに固有のトロンボーンルーティング問題が存在し、デフォルトで逆トンネルが存在する。図3は、経路の最適化なしのMIPv6およびMIPv4 FA CoAに基づくアプローチの両方についてのメディア伝送に関するトロンボーンルーティングを表わす。逆トンネルは効果を有するが、このトロンボーンルーティングは、ホームネットワークを介して移動する長い経路のためにハンドオフの遅延を引き起こすもととなる。
【0015】
次に、トロンボーンルーティングが現在のテストベッドにどのように影響を与えるかを説明する。図4に表わされているように、IMS移動ノードであるMNがネットワークAからネットワークBに移動すると、MIP登録およびSIP再登録はネットワークBにおいて遂行されなければならない。まず、MNはネットワークBにおいてFAからFAアドバタイズメントを通してその移動を検出する。移動を検出すると、FAを通してMIP登録を実行し、かつネットワークBにおける新たなP−CSCFのIPアドレスを取得するためにDHCPクライアントの動作を実行する。この時点で、MNのルーティングテーブルはMIP動作を通して更新され、MNがネットワークにおける任意のノードから到達可能であるようにFAとHAとの間のトンネルが確立される。ネットワークBにおけるDHCPサーバからP−CSCFのIPアドレスを取得した後、新たなP−CSCFにSIP登録メッセージを送信することによってSIP再登録を実行する。P−CSCFはSIPメッセージをS−CSCFに転送すると、SIP応答メッセージを用いてP−CSCFに応答する。従って、MNはSIP応答メッセージを受信し、SIP再登録が完了する。
【0016】
このハンドオフ処理において2つの課題が存在する。
<遅いハンドオフ>
図5に表わされているように、FAアドバタイズメント検出、MIP登録、DHCP動作、SIP登録の順次的な動作はハンドオフの遅延を増大させる。
<非効率なルーティング>
FAとHAとの間のトンネルの逆モードのために、MNとP−CSCFとの間のSIPメッセージは図6に表わされているようにトロンボーンルーティング経路を取って進む。
【0017】
<MNからP−CSCFへのSIPメッセージの経路>
MN→FA→ネットワークBにおけるゲートウェイ→ホームネットワークにおけるゲートウェイ→HA→ホームネットワークにおけるゲートウェイ→ネットワークBにおけるゲートウェイ→P−CSCF
P−CSCFからMNへのSIPメッセージは逆経路を取って進む。
【0018】
ハンドオフを高速化し、かつトロンボーンルーティングを防止するために、トロンボーンルーティングの影響の軽減に役立ついくつかの解決策を提案する。これらは、概して次に区分される。
a)MIPの上にSIP登録を載せる(FAにおいて分配する)
b)FAとP−CSCFとの間の選択的逆トンネルおよびトンネルの使用
c)IPv4およびIPv6の両方についてのSIPに基づく移動の使用
d)SIP登録および選択的逆トンネルの間でMIPv6の場合におけるCoAの使用
e)MIPバインディング(HAおよびS−CSCF)共存の一部としてSIP登録を送信する
【0019】
このアプローチにおいて、SIPメッセージがFA−HAトンネルをバイパスするMIP制御メッセージの一部として伝送される点で、MIPおよびSIPシグナリング(すなわち、制御プレーン)は統合される。MNはP−CSCFのIPアドレスを必要としないので、DHCP動作は取り止めとなる。その代わり、FAは、対応するP−CSCFのIPアドレスを前もって知っている必要がある。FAおよびP−CSCFは固定されているので、P−CSCFのIPアドレスはFAにおいて予め設定することが可能である。従って、MIPおよびSIP登録は独立とすることが可能であり、それらの動作は並行して同時に実行することが可能である。特に、SIP登録は、SIPメッセージのためのルーティング経路がMIPを通して完全に確立されるまで待つ必要がない。
【0020】
図7および図8に、MIPおよびSIP統合のシステム(S100)が示されている。
動作手順(図7):
1.MNは、新たなFAから新たなP−CSCFアドレスとともにFAアドバタイズメントを受信する。
2.MN上のMIP処理(MIP−MN)は、新たなP−CSCFの検出をMN上のSIPユーザエージェント(UA−SIP)に通知する。
3.UA−SIPは、MIP−MNにシグナリング(例えば、sip_ua[p-cscf])を与えることによってSIP登録を開始する。
4.MIP−MNは、MIP固有メッセージング動作を通してMIP/SIP登録を実行する。
5.FAは、MIPおよびSIP登録の両方、P−CSCFへのSIP登録メッセージおよびHAへのMIP登録メッセージを並行して実行する。ここで、FAはIPレイヤの転送ノードではなく、その代わりに、アプリケーション固有の中継ノードの役割を果たすことに留意すべきである。
6.SIP登録メッセージがS−CSCFに伝送される。
7.SIP応答メッセージがP−CSCFに伝送される。
8.P−CSCFはFAにSIP応答メッセージを送信する。ここで、SIPメッセージは、MIPメッセージ、UDPメッセージ、またはFAのSIPメッセージそれ自体として送信することが可能であり、SIPスタックを実現する。
9.FAは、MIP動作を通してMNにSIP応答を引き渡す。
10.最後に、MIP−MNは、UA−SIPにSIP応答の通知を与え、SIP登録が完了する。
【0021】
従って、MNからP−CSCFへ、または、P−CSCFからMNへのSIPメッセージは、MIPによってではなく、通常のIPルーティングによって設定される経路に従って移動する。FA−HAトンネルはメッセージを転送するために使用されない。図8はSIPおよびMIP登録メッセージの両方についてのルーティング経路を表わす。
【0022】
図9、図10に、選択的逆トンネルおよびFAとP−CSCFとの間のカプセル化技術を用いたパケット伝送システム(S200)が示されている。
図9はSIPおよびMIPの統合を用いることによってトロンボーンルーティングを防止する典型的な配置シナリオを表わす。図10は選択的な逆トンネルを表わす。
【0023】
このアプローチは、選択的逆トンネルおよびFAとP−CSCFとの間のカプセル化技術を用いるメカニズムを提供する。
【0024】
トロンボーンルーティング問題の根本原因は、FAにおける逆トンネルの使用である。しかし、MNがFAへのトンネルを設定し、MNとFAとの間でカプセル化された伝送形式(Encapsulated Delivery style)のパケットを用いる。このトンネルの主な目的は、MNからのブロードキャストパケットを逆トンネルを介してホームネットワークに送信することを可能とすることである。FAにおいてMN−FAトンネルを介して受信されるパケットについてのIPヘッダフィールドは次の通りである。
・外部IPヘッダ:送信元=MNのホームアドレス、宛先=FAのアドレス
・内部IPヘッダ:送信元=MNのホームアドレス、宛先=CNのアドレス
【0025】
また、カプセル化された伝送形式で選択的逆トンネルを実行するための手段を説明する。これは、ローカルリソースへのパケット伝送を提供することを意図し、かつ訪問先ネットワークにおいてP−CSCFへの伝送を最適化するために使用することが可能である。この場合において、MNは、FAに、次のように選択的逆トンネルの実行を要求することが可能である。
・逆トンネルに向けられたパケット:(MN−FAトンネルを介して)カプセル化された伝送形式を用いて送信され、FAはこれらをHAに逆トンネルしなければならない。MNは、HAを介したCNへの伝送を保証するためにカプセル化された伝送形式を用いて全てのメディアパケットを送信することが可能である。
・逆トンネルに向けられていないパケット:(カプセル化されていない)直接伝送形式(Direct Delivery style)を用いて送信され、FAはこれらを転送し、これらをHAに逆トンネルしない。MNは、通常のIPルーティングを用いてP−CSCFに向けられた全てのパケットを送信することが可能であり、FAは通常のパケットとしてそれらを転送する。
【0026】
カプセル化された伝送形式を用いた選択的逆トンネルは、MNからP−CSCFへの経路を最適化することによって、トロンボーンルーティング問題の一部を解決する。しかし、P−CSCFからMNへのパケットは、いまだHAを介してルーティングされる。この問題はP−CSCFからMNに向けられた全てのパケットについてP−CSCFとFAとの間のIP−IPトンネルを確立することによって軽減することが可能である。P−CSCFからFAにおいて受信されたパケットについてのIPヘッダフィールドは次の通りである。
・外部IPヘッダ:送信元=P−CSCFのアドレス、宛先=FAの気付アドレス
・内部IPヘッダ:送信元=P−CSCFのアドレス、宛先=MNのアドレス
P−CSCF−FAトンネルを介してFAにおいて受信されたパケットはFAにおいてカプセルから出され、MNに転送される。これはHA−FAトンネルを介してFAにおいて受信されたカプセル化されたパケットが処理される方法と同じである。
【0027】
選択的逆トンネルの使用は次のような向上を要求する。
1)カプセル化された伝送形式のためのMN−FAトンネルの確立:これはMNがFAを用いて登録した後に行うことが可能である。トンネル確立機能はRFC3024準拠のMNにおいて利用可能であるべきである。
2)MNにおけるP−CSCFを目標とするパケットのための直接伝送形式:これはRFC3024準拠の機能であり、MNがFAを用いて登録し、かつDHCPを介してP−CSCFのアドレスを受信した後に設定することが可能である。これはMN−FAトンネルをバイパスするMNにおけるP−CSCF固有経路の確立を要求する。
3)FAにおける選択的逆トンネル:この機能はRFC3024準拠であり、MNがFAを用いて登録した後に活性化されるべきである。
4)P−CSCF−FAトンネル:これはP−CSCF機能に拡張を要求する。SIP登録メッセージがFAを介してP−CSCFにおいて受信された後に、トンネルが確立されるべきである。さらに、ルーティングテーブルのエントリは、このトンネルを介してMNに全てのパケットを方向づけるべきである。これは、トンネルを介してSIP応答の伝送を保証する。
【0028】
トロンボーンルーティングを防止する第3のアプローチは、IPv4およびIPv6ネットワークの両方についてSIPに基づく移動を用いることである。SIPに基づく移動がどのように上記2つの例に関するトロンボーンルーティングを処理するかの例を提供する。SIPに基づく移動の場合において、移動局は移動バインディング(mobility binding)を提供するためにMIPv4またはMIPv6を使用しない。従って、ホームエージェントあるいはフォーリンエージェントの概念は全く存在しない。訪問先ネットワークにおいて移動局がブートストラップするとき、IPv4の場合においては状態を有するDHCPサーバから、IPv6の場合においてはステートレス自動設定によって、IPアドレスを取得する。IPアドレスの設定の間に、P−CSCFのアドレスを含む他のサーバ設定も取得する。移動局がS−CSCFに登録メッセージを送信すると、新たなコンタクトアドレスおよびサブネットにおけるP−CSCFのアドレスとして新たなCoAアドレスを送信する。従って、任意の時点においてHSSは移動局の新たなコンタクトアドレスおよび対応するP−CSCFのアドレスを知っている。HAあるいはMIPは存在しないので、登録メッセージおよび応答は標準のルーティング経路を進んで行き、トロンボーンルーティングには全く従わない。同様に、移動局への新たな呼(INVITE)が発呼側によって生成されると、移動局のURI(Uniform Resource Identifier)を用いてS−CSCFにルーティングされる。S−CSCFがこの呼を取得すると、登録データベースを調べ、その移動局に責任を負うP−CSCFに呼をルーティングする。しかし、移動局のコンタクトアドレスは、いまだ、新たなネットワークにおいて取得された新たなCoAである。P−CSCFはコンタクトアドレスを調べ、標準のルーティング処理を用いて移動局に呼を転送する。従って、トロンボーンルーティングは呼設定および登録処理の両方において防止される。再登録手順の間の遅延における削減は、1つのサブネットからもう1つのサブネットに移動局が移動する間のハンドオフの遅延を削減するのに役立つ。
【0029】
図11は、SIP登録およびSIP呼設定の両方についてトロンボーンルーティングがどのように防止されるかを表わす。
【0030】
次に、コンタクトアドレスとしてホームアドレスの代わりに移動局の登録メッセージにおけるCoAを用いることによって、かつ選択的逆トンネルの使用によって、どのようにトロンボーンルーティングを防止することができるかを説明する。CNとMNとの間のメディアがホームエージェントを介して移動しなければならないことは必須であるが、避けることができるならば、シグナリングをホームエージェントを通して移動させることは必ずしも必要ではない。従って、S−CSCFにおけるコンタクトアドレスとしてCoAを用いた選択的逆トンネルおよび登録の組み合わせは、通常のMIPv6の場合においてよく見られるトロンボーンルーティング問題をいくらか軽減するために役立ちうる。
図12は、上述したメカニズムを用いてトロンボーンルーティングをどのように防止することができるかの例を表わす。
【0031】
HAおよびS−CSCFが実際に共存し、かつSIP登録URIおよびP−CSCFアドレスがMIP更新の一部として送信されるいくつかの概念を取り込む。この場合において、HAはバインディングキャッシュを有する。全てのSIP関連登録情報はMIPバインディング更新の一部として送信されるが、フォーリンエージェントにおいて分配されない。HAは全ての登録情報をHAにおけるバインディングキャッシュの一部として保持する。
【0032】
<動的ホームエージェント(DHA)の使用>
トロンボーンルーティング問題の根本原因は、全てのパケットがMIPv4の経路の最適化なくHAを通して移動する必要があるという事実による。そのような追加のルーティングの問題は、移動ノードの訪問先ネットワークに近いホームエージェントを導入することによって軽減することが可能である。これらのHAは、一般に、動的ホームエージェント(DHA)として知られる。動的ホームエージェントの割り当ては、MIPv4に基づくプロトコルによってサポートされる。ホームエージェントをフォーリンエージェントの近くに配置することによって、ルーティング経路をかなりの範囲まで最小化することができる。図13および図14は、移動エージェント(Mobility Agent(MA))(DHAとしても知られる)が各々の訪問先ネットワークにおいて配置され、それによってシグナリングおよびメディアの両方について移動する経路を削減するシナリオを表わす。各々のサブネットにおいてMAを配置する必要がないことに留意することが重要である。訪問先ネットワークのトポロジーおよびサイズに応じて、複数のMAを配置することが可能である。しかし、通常、MAはサブネットのレベルより1つ高いレベルに配置されるので、1つのMAは複数のFAを扱うことができる。発行された文献におけるいくつかの移動最適化プロトコルは、同じ動的ホームエージェントの概念を用いる。以下、簡単に動的ホームエージェントの割り当て手順、移動エージェントの機能、元のHAを用いた登録手順、MAにおけるパケット処理手順、および動的DNS更新を説明する。
【0033】
<動的ホームエージェントの割り当て>
訪問先ネットワークにおけるフォーリンエージェント(FA)は、エージェントアドバタイズメントメッセージ内に‘D’フラグを含まなければならない。‘D’ビットは、RFC3220において規定された他のフラグビットの後の最初の予約ビットを占める。また、FAは、エージェントアドバタイズメントメッセージ内にネットワークアクセス識別子(NAI)を含まなければならない。アドバタイズメントされているFAのNAIをそれ自身のNAIと比較することによって、MNはホームドメイン内に存在するか否かを判断することができる。シグナリング手順およびメッセージ交換は図15に表わされている。それは次のように動作する。移動ノードが訪問先ネットワークに到達すると、FAに動的HAハンドオーバ要求(HHR)メッセージを送信する。このメッセージを受信した後、FAは[MIP−Diameterアプリケーション]において定義されているように、AA−Mobile−Node−Request(AMR)メッセージを構成し、サービングAAA(Authentication, Authorization, and Accounting)サーバに送信する。AAAサーバはMNを認証し、MNに移動エージェント(MA)を割り当てる。そして、割り当てられたMAにHome−Agent−MIP−Request(HAR)メッセージを送信する。そして、MAは、MNに新たなホームアドレスを割り当て、Home−Agent−MIP−Answer(HAA)メッセージにおいてAAAサーバに返却する。そして、AAAサーバは、FAにAA−Mobile−Node−Answer(AMA)メッセージを送信する。続いて、MNは、FAからの動的HAハンドオーバ応答(HHA)メッセージを受信する。シグナリングメッセージシーケンスは→AMR→HAR→HAA→AMA→HHAである。図15は詳細な呼の流れを表わす。
【0034】
HHRメッセージは、RFC2002における登録要求メッセージとして定義されているが、次の変更を有する。
タイプ 4(動的HAハンドオーバ要求)
ホームアドレス 同時HAバインディングのための現在のアドレス、それ以外はヌルアドレス(0.0.0.0)
HAアドレス ヌルアドレス(0.0.0.0)
CoA FAの気付アドレス
拡張 MN NAI 拡張
MNは認証の目的のために拡張においてNAIまたはFQDN(Fully Qualified Domain Name)を含まなければならない。MNは、同時HAバインディングを要求するならばHHRメッセージにおいて‘S’ビットを設定しなければならない。
【0035】
一方、MNが、HAの割り当て前にDHCPまたはPPPのいずれかから一時的なアドレスを取得し、新たなホームアドレスとしてこのアドレスを用いることを望むならば、この動的に割り当てられたアドレスを用いて、HHRメッセージ内のホームアドレスフィールドを設定しなければならない。FAがAAAサーバにAMRメッセージを送信すると、MIP−Feature−Vector AVPにおけるMobile−Node−Home−Address−Requestedフラグは、もはやホームアドレスがMNに割り当てられる必要がないことを示すためにゼロに設定されなければならない。
【0036】
<元のHAを用いた登録>
シームレスなハンドオーバのために、MNは元のHAに登録要求メッセージを送信しなければならない。登録は次のように指定されたフィールドを用いて元のHAに直接に送信される。
ホームアドレス : 元のホームアドレス
HAアドレス : 元のHAアドレス
CoA : 新たなホームアドレス(例えば、MAアドレス)
元のホームアドレスのCoAが新たなホームアドレスに設定されるので、元のホームアドレスに向けられた全てのパケットは、登録が成功した後、元のアドレスによってMNの新たなホームアドレスにリダイレクトされる。そして、MAはMNに向けられた全てのパケットを横取りし、かつそれらをMNの現在の位置に転送する。
【0037】
<移動エージェント>
前述のように、移動エージェント(MA)は、動的に割り当てられ、HAのような類似の機能を有するホームエージェントに他ならない。例えば、MAは元のHAを用いてMNからのホーム登録要求(home registration request)を受け取る。それはFAのような動作をする。例えば、ホーム登録要求を受信した後、それを元のHAに中継する。しかし、MAはFAアドバタイズメントをブロードキャストせず、また、MNにCoAアドレスを提供しない。通常、MAはFAより1つ高いレベルに配置される。
【0038】
MAは、2つのユーザリストを維持しなければならない。1つは通常のHA機能のためのリストであり、もう1つはシームレスなHAハンドオーバの目的のためのリストである。シームレスなハンドオーバの目的のため、MAは<MN_Old_Home_Addr,MN_New_Home_Addr>の情報を有するバインディングリストを保持する。シームレスなセッションのため、MAは元のHAによってカプセル化されたパケットを受信する。カプセル化されたパケットについて、MAはそのバインディングリストと比較し、合致したならば、その内部宛先アドレスが元のホームアドレスであるパケットを受信したと判断する。そして、MAはデータグラムをカプセルから取り出さなければならず、それをMNの現在の位置にトンネルする(すなわち、MNの現在のCoAを用いてデータグラムを再カプセル化する)。MNの新たなホームアドレスに向けられたカプセル化されていないパケットについて、MAはMNの通常のHAのように機能しなければならない。
【0039】
セキュリティアソシエーションの場合において、MAは2つのSA(Security Association)を維持する必要がある。(1)1つはMN−HA登録鍵を用いるMN(MA−MNとしても知られる)を有し、(2)もう1つはFA−HA登録鍵を用いる元のHA(MA−OHAとしても知られる)を有する。
【0040】
続く移動の間に(すなわち、MNがFAを変更するが、MAを変更しないときに)、MNは新たなCoAを有するMAに登録要求を送信しなければならない。MAがそのような登録要求を受信すると、そのHAバインディングリストにおける以前のホームアドレスを検証し、それに従って登録応答を応答しなければならない。
【0041】
<動的DNS更新>
MNは、新たなホームアドレスを取得した後、その名前バインディングを更新するために正当な権限を持ったドメインネームサーバ(Authoritative Domain name Server(ADS))を用いて安全な動的DNS更新を実行すべきである。代わりのアプローチは、MNがDHCPサーバによって割り当てられた新たなホームアドレスを用いるならば、DHCPサーバはDNSを更新することが可能であることである。DHCP_REQUESTにおいて‘S’ビットを設定することによって、MNはDHCPサーバにDNS更新を委任することが可能である。これはDNSを更新するMNについてセキュリティが重要である多くの場合によりよいアプローチである。
【0042】
<MIP更新の一部としてSIP登録を載せる(S−CSCFおよびHAの共存)>
HAおよびS−CSCFが実際に共存し、かつSIP登録URIおよびP−CSCFのアドレスがMIP更新の一部として送信されるいくつかの概念を取り込む。この場合において、HAはバインディングキャッシュを有する。全てのSIP関連登録情報はMIPバインディング更新の一部として送信されるが、フォーリンエージェントにおいて分配されない。HAは全ての登録情報をHAにおけるバインディングキャッシュの一部として保持する。
【0043】
<横取りキャッシュアプローチのための設計原理>
ここでは、テストベッドにおいて実現することを計画しているトロンボーンルーティングの軽減に関する設計原理を説明する。上述した各々のアプローチは賛否両論あるが、FAおよび移動局への変更が最小であるアプローチを採用した。逆トンネルはネットワークに必須であるので、それぞれのFAにおいてポリシーエージェントを付加する。このポリシーエージェントは、入ってくるトラフィックを検査し、ポート番号に基づいてカプセル化エージェントに送信するかP−CSCFに直接にルーティングするかを決定する。例えば、SIPシグナリングは通常、ポート5060で伝送され、そしてこのエージェントはパケットを捕捉し、検査し、選択的に、これらのパケットをホームエージェントにトンネルするためにカプセル化エージェントに送信するか、あるいは、P−CSCFに直接に送信する。従って、SIPトラフィック以外のトラフィックは、逆トンネルを介してHAに返却される。これはメディアトラフィックも含む。従って、REGISTERおよびINVITEメッセージのようなSIP関連シグナリングはホームエージェントを介してトンネルされることなくP−CSCFに移動する。メディアトラフィックについてのトロンボーンルーティングを防止することは別個の問題であり、将来の作業の一部として扱われる必要がある。
【0044】
同様に、逆トンネルのおかげで、移動局に向けられたトラフィックはホームエージェントに行き、P−CSCFに伝送される前にフォーリンエージェントにトンネルされる。この場合において、P−CSCFを介して移動ノードに行くように向けられたSIP REGISTERおよびSIP INVITEについての応答メッセージは、FAによって横取りされる前に、ホームエージェントに移動する必要がある。前述のように、P−CSCFとHAとの間の追加の移動を付加する。この問題を軽減するために、P−CSCFにおいてキャッシュ機能を導入することを計画している。それはFAを用いて移動局のホームアドレスをマッピングすることが可能であり、移動局のホームアドレスに向けられたあるポート番号(5060)を有するメッセージを代わりにFAにルーティングする。FAにおけるキャッシュ機能および動的ルーティング機能は、通常のようにホームエージェントに送信する代わりにFAを介してMNに向けられたあるタイプのパケットをルーディングするために役立つ。図16、図17はFAおよびP−CSCFにおいて設けることが必要ないくつかの付加モジュール、および、FAとP−CSCFとの間のプロトコルの相互作用を表わす。
【符号の説明】
【0045】
S100…MIPおよびSIP統合のシステム、S200…パケット伝送システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送システムであって、
ホームエージェントに属するモバイルノードの移動先のフォーリンエージェントを備え、
フォーリンエージェントは、
モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェントに送信し、
モバイルノードからカプセル化されていない直接伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェント非経由で転送する、
ことを特徴とするパケット伝送システム。
【請求項2】
IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送方法であって、
ホームエージェントに属するモバイルノードが、移動先のフォーリンエージェントにカプセル化された伝送形式を用いてパケットを送信するステップと、
フォーリンエージェントが、モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送られてきたパケットをホームエージェントに送信するステップと、
ホームエージェントに属するモバイルノードが、カプセル化せずに直接伝送形式を用いてパケットを送信するステップと、
フォーリンエージェントが、モバイルノードから直接伝送形式を用いて送られてきたパケットをホームエージェント非経由で転送するステップと、
を含むことを特徴とするパケット伝送方法。
【請求項1】
IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送システムであって、
ホームエージェントに属するモバイルノードの移動先のフォーリンエージェントを備え、
フォーリンエージェントは、
モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェントに送信し、
モバイルノードからカプセル化されていない直接伝送形式を用いて送信されたパケットを受信し、当該パケットをホームエージェント非経由で転送する、
ことを特徴とするパケット伝送システム。
【請求項2】
IMS/MMDネットワークにおけるパケット伝送方法であって、
ホームエージェントに属するモバイルノードが、移動先のフォーリンエージェントにカプセル化された伝送形式を用いてパケットを送信するステップと、
フォーリンエージェントが、モバイルノードからカプセル化された伝送形式を用いて送られてきたパケットをホームエージェントに送信するステップと、
ホームエージェントに属するモバイルノードが、カプセル化せずに直接伝送形式を用いてパケットを送信するステップと、
フォーリンエージェントが、モバイルノードから直接伝送形式を用いて送られてきたパケットをホームエージェント非経由で転送するステップと、
を含むことを特徴とするパケット伝送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−239413(P2011−239413A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126499(P2011−126499)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【分割の表示】特願2007−95475(P2007−95475)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【出願人】(504473670)テルコーディア・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【分割の表示】特願2007−95475(P2007−95475)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【出願人】(504473670)テルコーディア・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (72)
【Fターム(参考)】
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