説明

パケット通信システム及びパケット通信装置制御方法

【課題】
パケット網における切替え時のフレーム保護は非常に困難である。パケット網における両系伝送性能の差異があること、すなわち、プロテクション区間が不特定多数の中継装置を通過することがその原因である。
【解決手段】
保守管理の対象となる経路に対して、その両端に位置する送信側ノードと受信側ノードの間に現用系と予備系の両系から構成される通信経路を設定する。通信経路には、標準化勧告に従い、現用、予備の各経路状態を監視するための監視フレームを定期的に送信する。受信側では監視フレームの到着時刻差を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム及び通信装置に係り、特に、現用系通信経路と予備系通信経路とで構成される冗長経路構成における経路切替え処理に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットのような通信網は生活及び企業活動における不可欠なインフラとして位置づけられる。インターネットを大まかに分類すると、各ユーザが家庭内や企業内で構築するユーザ網、通信事業者が提供する大規模・高速ネットワークであり、複数のユーザ網を相互接続するキャリアサービス網、ユーザ網をキャリアサービス網に接続するアクセス網の3種類に大別できる。
【0003】
例えば、ユーザ向けアクセス網ではDSL(Digital Subscriber Line)などの電話回線をベースとするアクセス技術に代わり、光ファイバを用いたMC(Media Converter)又はPON(Passive Optical Network)と呼ばれる大容量アクセス回線への移行が進められている。
【0004】
家庭及び企業内等のユーザ網においては、その取り扱いの簡便さからEthernet(登録商標)が広く用いられている。従来の網ではEthernetの伝送速度は10Mbpsや100Mbpsが主流であったが、現在は1Gbps伝送規格に従う製品が一般に普及している。
【0005】
現在、Ethernet上で用いられているパケット通信技術を、高い信頼性及び通信品質が要求されるキャリアサービス網あるいは企業インフラにおける通信技術として採用する動きがある。その理由は第一に高性能な通信装置の開発コスト及び導入・運用コストを削減することである。パケット通信技術がコスト低減につながる理由は、パケット通信技術の基本はベストエフォート方式もしくはコネクションレス通信方式であり、装置自律動作により通信経路を自動構築するため、高度な網同期技術が不要であることが挙げられる。また、ユーザ網(LAN)を中心に発展してきたため、構成部品も安価に大量生産が可能である。このように管理、運用コストが安いこと、装置単体の管理機能を簡略化でき、技術普及が進み量産可能であるため装置開発コストを抑制できること、などが具体的な理由である。
【0006】
パケット通信技術の採用において重要とされるのが、ITU−T(International Telecommunication Union‐Telecommunication Standardization Sector)標準をベースに規格化された、既存のキャリアサービス網等と同等以上のパケット網保守管理機能、伝送性能の具備である。このような保守管理技術であるOAM(Operation, Administration and Maintenance)機能を導入することは、コネクションレス方式において通信の信頼性を高めるための新機能を追加することを意味する。そのためOAM機能を具備しない装置に比べ若干のコストがかかることは否めない。しかし、ベストエフォート方式の普及度と利便性から、キャリアにとって、ネットワークインフラの基本概念を同期網からパケット網へ移行することは不可避な流れとなっている。
【0007】
標準化団体の一つであるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)やITU‐TではEthernetに障害対応機能を付与したEthernet通信網の保守管理技術が標準化されている(非特許文献1)。更にITU-Tでは、Ethernet技術を用いたパケット網構成方法が規定されている。特にEthernetの標準的なパケットデータ伝送機能に保守管理技術を付与する規格であるイーサOAMは、IEEEとITU‐Tの双方で互換性を確保するよう考慮されており、今後のパケット伝送網において最も重要な技術の一つとして認識されている(非特許文献1、2)。
【0008】
また、別の標準化団体IETF(Internet Engineering Task Force)では、MPLS(Multiprotocol Label Switching)技術を用いたパケット通信方式を規定している。特に、MPLS‐TP(MPLS Transfer Profile)と称される伝送網向けMPLS網構築に関する規格について議論が進められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ITU‐T Recommendation Y.1731
【非特許文献2】ITU‐T Recommendation G.8031/Y.1342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の同期伝送技術では、通信継続中の使用帯域及び伝送所要時間が常に一定であるが故に、障害の主な要因は伝送装置自体の故障であり、監視機能としてのOAMと、通信救済のための切替えメカニズムを規定することで十分な保守管理が可能であった。
【0011】
しかしパケット通信技術を利用したコネクションレス通信方式では、ある装置から送信されたパケットもしくはフレームが、経路によって異なる不特定数の中継装置を経て宛先装置に到着するまでの時間は一定ではなく、通過経路上の回線状況や装置負荷によってはフレーム廃棄あるいは大幅な遅延が生じる可能性がある。その理由は、送信装置から宛先装置までの経路を構成する中継装置のハードウエア性能、及び当該中継装置に対するフレーム集中率によりパケット処理効率が変化するためである。
【0012】
例えば非特許文献2に記載されたイーサ網リニアプロテクション切替え技術では、送信元の装置と宛先装置の間に設定される現用系通信経路と予備系通信経路は、互いの独立性を保つためそれぞれ異なる経路を構成することを前提とし、互いに重複せずに台数も異なる中継装置を通過する。更に、各中継装置はある一組の送信装置と宛先装置を接続するためだけにあるのでなく、複数の送受信装置の組をつなぐ経路を構成するために使用される。多くの場合に、各中継装置を通過するフロー数は一つに限られず、パケット通信網では送信元と宛先の組合せが異なる複数のフローを中継装置が収容又は中継する構成が通常である。このため、各中継装置が備える個々のインタフェースや中継装置内CPUにおけるフレーム処理の負荷は、運用中に随時変化する。
【0013】
このように、あるフローの送信装置とその宛先装置とを接続する一組の経路情報だけに依存しない、例えば経路上の中継装置における他フロー処理に起因する処理負荷の増大などの多様な要因により伝送性能が常時変化する。そこで、現用系から予備系への経路切替えにおいても、パケット通信網を構成する中継装置の処理負荷や輻輳を考慮することが求められる。一方、個々の経路における通信継続性の観点からは、通信障害時や通信品質低下時に、通信途絶時間を出来る限り低減する経路切替え技術が求められる。
【0014】
以上より、個々の中継装置において処理するパケット量やフレーム量を事前に予測、調整することは困難であるにも関わらず、通信品質を確保するための経路切り替えを行う上で、網の通信状況を監視し、効果的な切り替え手段を構築することが求められる。
【0015】
本発明では、以上の点に鑑み、障害や輻輳が発生した場合に、動的に現用系経路と予備系経路との間で経路を切り換える方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、現用系経路と予備系経路とで構成される冗長系を構成し、両経路におけるパケットもしくはフレームの送信所要時間の時間差を、通信サービス提供中にも継続的に監視する。具体的には収容するフロー毎に、現用系と予備系の経路間で許容可能な通信時間差を予め設定する。そして定期的な通信時間差の測定結果と閾値とに基づいて、フローごとに経路切り替えの要否を判断して、必要であれば現用系から予備系経路へ切り替える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、経路上の通信状況の変化に伴って発生し得るパケット中継装置や回線負荷に起因するパケットロスや到達時間のゆらぎ、及び経路切替えに伴うパケットロス状況を監視し、必要に応じて現用系から予備系に経路を切り換える。これにより、パケット通信網における通信品質の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】現用系と予備系の通信路を備えた通信システムの一構成例を示すネットワーク図である。
【図2】OAM対応装置200の機能ブロック構成例である。
【図3】通信時間差を測定する通信シーケンス図の一例である。
【図4】通信時間測定用のCCMフレームの構成例である。
【図5】現用系、予備系経路間の通信時間差を測定する処理フローの一例である。
【図6】遅延DB3020の一例である。
【図7】経路切替えに関する基本的な処理手順の一実施例を示すシーケンス図である。
【図8】切替え要求フレームの構成例を示す図である。
【図9】OAM対応装置200の一連の処理フローの一例である。
【図10】OAM対応装置がユーザデータを中継する場合の処理フローの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態では、ヘッダ部とペイロード部とから構成されるパケットを用いた情報転送を行うパケット通信網を想定する。なお、このパケット通信網内には、ヘッダ部とペイロード部とから構成されるパケット形式のデータフォーマットを有するフレームも転送される。
【0020】
また、本実施の形態の説明において現在一般的に普及しているEthernetを用いるが、これを他のプロトコルに置き換えても構わない。通信経路の保守管理及び送信制御方法に同様の機能を備えていれば、他のパケット伝送用プロトコルを適用することもできる。
【0021】
本発明では、パケット中継網における網全体のリソースを有効活用するため、パケット通信網における1:1冗長系、つまり一方の経路を利用している間は、他方の経路は予備系経路として同一のデータ転送には使用せずに確保しておく冗長系構成手段を基本構成とする。
【0022】
図1は、パケット中継網100において1:1冗長系を構成し、プロテクション切替えを行う場合の、一般的な通信システム構成例を示すネットワーク図である。なお、図1において図面の左から右へ向かう信号の流れ、つまりOAM対応装置200‐Aから200‐Zへ向かう通信を順方向通信、反対方法を逆方向通信と呼ぶ。以降の説明では、順方向通信を例として説明するが、逆方向通信についても全く同様の処理となる。
【0023】
図1は、パケット中継網100に複数のユーザ端末101‐A1、101‐B1、101‐A2、101‐B2が接続される状態を示す。ユーザ端末101‐A1はユーザ端末101‐B1と、ユーザ端末101‐A2はユーザ端末101‐B2と通信している状態を示す。
【0024】
ユーザ端末101を含むユーザ網(図示せず)の例としては、一般ユーザの家庭内LAN(Local Area Network)や、企業ユーザが所有する事業所サイト内LANなどが含まれる。インターネットデータセンタ(IDC;Internet Data Center)や、コンテンツプロバイダなどの商用Webサーバが設置されるデータ配信サイトが接続されることもある。このように、情報提供サービスや企業サイト等を含むユーザ網が互いにパケット中継網100で接続される。
【0025】
パケット中継網100は、網全体の管理を行うOpS1と、中継網100のエッジに設置され、ユーザ端末101と中継網100とのパケット伝送を仲介するOAM対応装置200と、中継網100内部の経路を提供する中継装置2101〜2109により構成する。OpS1は、中継網100全体を監視して制御する管理装置である。OpS1は、中継網100内のどのOAM対応装置200間で現用系・予備系の経路を設定するか等、OAM対応装置200間の経路情報を管理する。本実施例でOpS1は、OAM対応装置200‐A1と200‐Z1とを接続する通信経路として、中継装置2101、2102、2103を通過する現用系経路110‐1と、中継装置2104、2105、2106、2107を通過する予備系経路120‐1とを設定する。同様にOpS1は、OAM対応装置200‐A2と200‐Z2間には、中継装置2106、2107を通過する現用系経路110‐2と、中継装置2108、2109を通過する予備系経路120‐2を設定する。
【0026】
なお本実施の形態では、中継装置2106、2107は、現用系経路110‐1と現用系経路110‐2とで共有されている。そのためこれらの装置には、トラフィック状況によっては負荷が集中する可能性がある。図1の経路構成において、処理負荷の増大及びそれに伴う輻輳によって障害が観測される可能性が高い個所は、中継装置2106、2107の送受信インタフェース部及び中継装置2106と2107を接続するリンク5001である。障害によって、現用系経路110‐1と現用系経路110‐2を用いる通信はそれぞれ遅延(ジッタ)やパケットロス(情報一部欠落)などの影響を受ける。
【0027】
中継装置2101〜2109は、それぞれの装置に備えられる回線インタフェースにより相互に接続されている。これによってOAM対応装置200‐A1と200‐Z1、OAM対応装置200‐A2と200‐Z2をそれぞれ接続する通信経路を提供できるようにする。
【0028】
OAM対応装置200は、OpS1が設定した現用系ならびに予備系の経路の両端に位置する。この実施例ではパケット通信のためのプロトコルとしてEthernetを適用し、中継網100は、非特許文献1やIEEE 802.1agに記載されているようなイーサ網用OAMならびに、非特許文献2に記載されているようなイーサ網切替え技術を適用可能なシステム構成とする。OAM対応装置200はイーサ網用OAM機能を備えた装置であり、対向するOAM対応装置200との間においてイーサOAM機能により通信状況を監視する機能を備える装置である。本実施例ではイーサ網用OAMが適用されるため、通信状況を監視するために非特許文献1で規定されたCCM(Continuity Check Message)フレームを利用する。OAM対応装置200は現用系と予備系の経路それぞれにCCMフレームを送出し、両経路間のフレームの転送時間差を測定し、経路の切り替えの要否を判断する。
【0029】
図2は、OAM対応装置200の機能ブロック構成例を示す。OAM対応装置200をプロテクション区間の両端に設置することにより、通信保守管理区間(プロテクション区間)を定義する。なお、中継装置2101〜2109においてもOAM対応装置200と同様の装置構成を採用することができる。
【0030】
インタフェース1810‐1〜1810‐xは、ユーザ網との間でフレームの送受信を行うネットワーク・インタフェースである。入出力処理部1830は、ユーザ網から受信した、もしくはユーザ網へ送信するフレームの各種処理を行う。スイッチ部1850は、ユーザ網と中継網100との間で、フレームを宛先に届けるための経路を設定する。入出力処理部1840は、中継網100から受信した、もしくは中継網100へ送信するフレームの各種処理を行う。インタフェース1820‐1〜1820‐xは、中継網100との間でフレームの送受信を行うネットワーク・インタフェースである。CPU1880は、装置全体を制御するとともに、メモリ1890に格納されたプログラムを用いて様々な機能を実行する。メモリ1890は、本実施例の処理に必要な機能を実行するためのプログラムや、データベースを記憶する。バス1870は、装置内機能ブロック間で信号を送受信するための通信路である。
【0031】
OAM制御1891は、イーサ網用OAMの種々の機能を実行するために必要なプログラムである。遅延制御18911は、現用系経路と予備系経路の双方に送出するCCMフレームの転送に要する時間の差を算出等するプログラムである。CCDB(Continuity Check DataBase)1893は、CCMフレーム等のOAM機能をサポートするフレームを送受信する装置同士が正しく接続されていることを検証するための情報である。CCDB1893は、例えばIEEE 802.1agに記載されているCCDBのように、CCMフレームの設定・運用状況を記録するデータベースである。
【0032】
OAM制御1891はCCMフレームを受信すると、CCDB1893を参照して受信したCCMフレームが正しく送信されてきた、自身のOAM対応装置200で処理をして良いCCMフレームであるか否かを検証する。OpS1が、2台のOAM対応装置200の間に現用系経路と予備系経路を設定するときにCCDB1893を作成して、これら2台のOAM対応装置200に配布する。CCDB1893には、例えばCCMフレームの宛先や送信元の情報や、CCMフレームを一定時間間隔でやりとりするための送信時間間隔の情報等が格納される。
【0033】
これらのイーサOAM情報(イーサOAM設定情報)とは別に、フレーム毎のヘッダ処理方法に関する設定、すなわち受信フレームのヘッダ情報と、それに対するヘッダ処理内容(タグ処理、その他情報挿入/削除/書換えなど)及び送信方路を含むフレーム転送に要する所謂経路情報が経路情報1894に保持される。データベースの設定手順としては、経路情報1894を設定した後、それを反映してCCDB1893が構成される。遅延DB3020は、現用系経路、予備系経路の通信時間差を格納するデータベースであり、後述する。
【0034】
装置内におけるデータフレームの処理の流れを説明する。インタフェース1810‐1〜1810‐xで受信されたユーザ網からのデータフレームは、入出力処理部1830に転送される。入出力処理部1830では、ヘッダ処理、優先度付けなどのパケット送信制御のため、一時的にフレームバッファ1832に格納される。この待ち時間を利用して、フレーム解析・生成部1831は、ヘッダ情報の確認や、ヘッダに含まれるパラメータをトリガとしたヘッダ情報の処理、例えば変換、透過、付与、削除を経路情報DB1894を参照しながら行う。スイッチ部はヘッダ解析・生成部1831によって転送先に送出するための適切なヘッダ情報を含むよう処理された入力フレームを、該フレームの宛先へ向かう経路へ送出するようスイッチ内部の経路を設定する。
【0035】
フレーム解析・生成部1841及びフレームバッファ1842は、スイッチ部1850から出力される各フレームを、その優先度や各方路の経路情報に従い帯域制御(キュ‐イング)したり、必要ならばヘッダ情報の再確認及び変更処理を行う。入出力処理部1840で読み出されたフレームは、インタフェース1820‐1〜1820‐yを介して中継網100へ送出される。このように、OAM対応装置200‐A1はOAM対応装置200‐Z1へ向け、ユーザ端末101―A1から受信したデータフレームを転送する。
【0036】
次に、図1の中継網100において、OAM対応装置200‐A1とOAM対応装置200‐Z1の間でデータフレームを中継するのに先立って、これらOAM対応装置200間における現用系経路110−1および予備系経路120−1それぞれの通信所要時間差を測定する方法を説明する。
【0037】
図3は、初期設定時に、現用系経路110−1および予備系経路120−1それぞれの通信所要時間差を測定するための通信シーケンス図である。なお、この通信シーケンス図は、OpS1がOAM対応装置200−A1とOAM対応装置200−Z1の間に経路を設定した状態から始まっている。まず、OAM対応装置200−A1の遅延制御18911は、通信時間測定用のCCMフレーム110−1−1と120−1−1を作成し(300)、CCM110−1−1を現用系経路110−1に、CCMフレーム120−1−1を予備系経路120−1にそれぞれ同時に送出する。
【0038】
図4は、送信側OAM対応装置200‐A1から送信側OAM対応装置200‐Z1、へ送信する、通信所要時間測定用のCCMフレームの構成例である。本構成例は、ITU‐T Y.1731(非特許文献2)で定義されるCCMフレームフォーマットをベースとしている。本図のフレーム構成には、L2情報として宛先アドレス(DA;Destination Address)1710、送信元アドレス(SA;Source Address)1720、フレームタイプ(EtherType)1730、ペイロード1740が含まれる。
【0039】
CCMフレームが通知すべき情報は、ペイロード1740部分に格納される。具体的には、MEGレベル(Maintenance Entity Group Level)1741と呼ばれる、監視対象経路の中に設定される論理接続関係を示すための識別情報、OAMバージョン情報1742、CCMフレームであることを示すコード番号OpCode1733、CCMフレームの送信周期及びその他付加機能情報を示すFlags1734、シーケンス番号フィールド(※現勧告ではall “0”固定とされているが、今後変更される可能性がある)1745、当該CCMフレームを送出した装置IDを示すMEP ID1746、イーサOAMにおける監視対象経路の論理識別情報MEG ID1747、及びその他制御情報用フィールド1748を含む。これらCCMフレームの既定フィールドに関する詳細説明は非特許文献1に記載されているため、ここでは詳細な説明は割愛する。
【0040】
本実施の形態では、制御情報用フィールド1748の一部を遅延の測定に使用する。ここに、通信時間を比較する対象として組で送出されたCCMフレームを識別するためのペア識別ID17480、現用系経路向けか予備系経路向けかを示す経路ID17481、OAM対応装置200がCCMフレームを送出した時刻が格納される送信タイミングID17482が挿入される。CCMフレームは定期的に送出されるため、遅延制御18911は、同じタイミングで現用系と予備系それぞれの経路に送出するCCMフレームのペア識別ID17480に、例えば同じ情報を挿入する。そして遅延制御18911は、異なるタイミングで送出するCCMフレームのペア識別ID17480を異なる情報とし、受信側のOAM対応装置200が比較対象となるCCMフレームの組を混同しないようにする。
【0041】
受信側OAM対応装置200‐Z1における経路判断には、本経路ID17481を用いる他に、CCMフレームに含まれるMEP ID1746、MEG ID1747を組み合わせて判断することも可能である。但し、この場合は、OAM対応装置200―A1及び200−Z1内に記録する経路情報1894と照合する処理が必要となる。
【0042】
このように送信側OAM対応装置200‐A1の遅延制御18911およびOAM制御1891は、通信時間測定用のペアとなるCCMフレーム110−1−1、120−1−1を作成し、入出力制御部1840、インタフェース1820を介して現用系経路110‐1と予備系経路120‐1にそれぞれ送信する。
【0043】
図3の実施例では、受信側OAM対応装置200‐Z1は、予備系経路120−1を介してCCMフレーム120−1−1を時刻Tに受信し、現用系経路110−1を介してCCMフレーム110−1−1を時刻T+Aに受信する。組となる2つのCCMフレームを受信する処理を図5に示す。
【0044】
OAM対応装置200‐Z1のフレーム解析・生成部1841は、CCMフレームを受信すると(401)、Ether Type1730を参照して受信したフレームがOAMのフレームかどうか確認し、OAMのフレームであればさらにOpCode1753を参照して、受け渡されたフレームが通信時間測定用のCCMフレームであるか否かを判断する(402)。受信したフレームがCCMフレームでない場合、即ち他のOAMフレームである場合は、フレーム解析・性西部1841はOAM制御1891に対し、当該フレームに対して各OAM機能に従う処理の実行を依頼する(403)。
【0045】
受信したフレームがCCMフレームであった場合、OAM制御1891は当該フレームが対象経路を通過してきた正規のフレームか否かを判定するため、CCMフレームのヘッダに含まれる情報とCCDB1893に保持されるCCMフレーム用の設定情報とを比較する(404)。
【0046】
CCMフレームとCCDBとの比較は、具体的には、上記で得たCCMフレーム内パラメータ、例えばMEG ID1747、送信元MEP ID1746、MEGレベル等と、CCDB1893に格納されているフレームID、経路IDを含むパラメータとを比較し、CCMフレームを正しい経路から受信しているか否かを確認することを含む。OAM対応装置200‐A1のCCDB1893には、順方向通信用にOpS1により設定されたCCMフレーム送信条件が保存されている。OAM対応装置200‐A1はその送信用CCM設定パラメータを格納したCCDB1893を参照してCCMフレームを生成・送出し、OAM対応装置200‐Z1は、受信したCCMフレームからこれらの情報を抽出してCCDB1893と照合し、受信したCCMフレームが正しい情報を含んでいるかどうかを判定する。
【0047】
ここで経路設定状況と異なるフレームを受信した場合には、OAM制御1891はその旨を示すエラー信号を発行する等して、受信したCCMフレームを廃棄する(405)。
【0048】
正規のCCMフレームを受信した場合、フレーム解析・生成部1841は、当該フレームに含まれるペア識別ID17480、経路ID17481および送出タイミングID17482とを抽出し、それらの情報をOAM制御1891へ通知する。するとOAM制御1891中の遅延制御18911は、経路ID17481およびペア識別ID17480に対応付けて、フレームの受信時刻をレジスタやメモリ等に一時的に記憶しておく(406)。
【0049】
そして遅延制御18911は、同じペア識別IDを持つCCMフレームを受信したかどうかを確認し(407)、受信していなければ所定時間が経過していないことを確認して(408)、フレームの受信処理に戻る。もし所定時間が経過している場合は、通信路もしくは対向のOAM対応装置200−A1に何らかの障害が発生した可能性があるため、エラー処理を行う(409)。
【0050】
フレームの受信処理(401)に戻ってから、もう一方の経路のCCMフレームを受信すると、図5の処理401、402、404、406により通信時間を算出する。そして両経路から同じペア識別IDのCCMフレームを受信しているため、これら両経路からのCCMフレームの受信時刻の差を算出する(410)。送信側のOAM対応装置200−A1は同時に組となるCCMフレームを送出しているため、受信側OAM対応装置200−Z1における受信時刻の差がそのままフレームの転送時間の差となる。図3の実施例の場合、両経路間の通信時刻差は(T1+A−T1)=Aとなる。
【0051】
このように、一回の測定で両経路間の時刻差を決定しても良いが、図3に示すようにCCMフレームによる測定を複数回行い、そのつど両経路間の通信時間差を記録しておき、複数得られた通信時間差の値を用いて、例えば複数回の平均値を求めるなどして通信時間差を決定しても良い。例えば図3の例では通信時刻差として前述のAと、(T2+B−T2)=Bの2つの値を得て、これらの平均値(A+B)/2を通信時間差としても良い。
【0052】
そしてOAM対応装置200−Z1の遅延制御18911は、算出した通信時間差を遅延DB3020に格納する。図5は、本実施の形態における、冗長系を構成する経路間の通信時間差を記憶する遅延DB3020の一構成例を示すテーブルである。冗長系ID1000には、現用系経路と予備系経路とで構成される冗長系を一意に識別するための識別子が格納される。現用系経路ID1010および予備系経路ID1020には、各経路を識別するための識別子がそれぞれ格納される。許容通信時間差1030には、その冗長系において現用系経路と予備系経路の間の通信時間差の許容値が格納され、実測した両経路間の通信時間差がこの許容通信時間差1030を超えると、経路の切替えが行われる。現用系経路通信時間1040および予備系経路通信時間1050には、各経路におけるCCMフレームの転送時間が格納される。遅延制御18911は、CCMフレームを受信すると、受信時刻と送信タイミングID17482に格納された時刻との差を算出し、各経路の通信時間をそれぞれ本テーブルに格納する。通信時間差1060は、図3の初期設定シーケンスにおいて算出した両経路間のフレームの通信時間差を格納する。
【0053】
遅延制御18911は算出した通信時間差を通信時間差1060に格納すると、この通信時間差を対向のOAM対応装置200−A1に通知する(100−1−1)。OAM対応装置200−A1の遅延制御18911はこの通知を受信すると、自身の遅延DB3020の通信時間差1060に通知された通信時間差を格納する。これ以後、OAM対応装置200−A1は、通信時間差1060に設定された時間だけ、CCMフレームを送出する時刻をずらして現用系、予備系それぞれの経路にCCMフレームを送出する。
【0054】
なお、現用系経路と予備系経路それぞれの通信時間差は相対的なものであり、これらの値は一方を基準値として他方の修正値を設定する形となる。例えば図6の例では、予備系経路通信時間1050を基準として、実測通信時間差1060を登録している。図6の例では、現用系経路の方が予備系経路より14ms通信時間がかかるため、予備系経路に対するCCMフレームの送出時刻を、現用系経路のそれよりも14ms遅らせれば良い。こうすることで、両系の通信路に障害や異常な輻輳が無ければ、OAM対応装置200‐Z1が両系からCCMフレームを近い時刻で受信することが期待される。
【0055】
このように本実施例では、OAM対応装置200‐Z1が現用系と予備系それぞれを介して通信時間測定用のCCMフレームを受信する時刻が同じになるよう、OAM対応装置200‐A1がCCMフレームをそれぞれの系に送出する時刻を調整する。つまり、OAM対応装置200‐A1およびOAM対応装置200‐Z1は、両系のフレーム転送の時間差をあらかじめ測定・記憶しておき、OAM対応装置200‐A1はフレームの転送により多くの時間を要する系へCCMフレームを送出する時刻を、少ない時間で転送できる系よりも早めて送信する。
【0056】
以上の両系のフレーム転送の時間差を測定・記録する処理は、通信サービス提供前の準備段階で実施し、オペレータにより設定される送信側OAM対応装置200−AとOAM対応装置200−Zを接続する経路を構成するための処理に含まれる。
【0057】
なお、遅延DB3020は、OpS1が現用系、予備系の経路を設定したときに、CCDBの作成と合わせて遅延制御18911が作成しても良い。もしくは図3の初期設定時に、同じペア識別ID17480を持つCCMフレームの組を現用系および予備系の経路から受信したタイミングで、遅延制御18911がそれらCCMフレームに含まれる経路ID17481を現用系経路ID1010、予備系経路ID1020に設定してエントリを作成しても良い。
【0058】
また、遅延DB3020の許容通信時間差1030は、OpS1がOAM対応装置200−Z1に通知するようにしても良いし、管理者がOAM対応装置200−Z1に直接設定しても良い。許容通信時間差1030の値の決定は、その冗長系により中継されるデータの重要度により決定すれば良い。例えば経路が動画の配信に利用されるような、フレームが一定時間内に送信されることが要求される場合は、許容通信時間差を小さく設定し、メールやWebアクセス等に専ら利用される場合は、通信のリアルタイム性が低いため許容通信時間差1030は比較的大きな値でもサービスに大きな支障は生じないと考えられる。
【0059】
図7は、図1のネットワークにおける経路切替えに関する処理手順を示すシーケンス図である。なお、この図においては、図3の初期設定処理は終了しており、OAM対応装置200−A1は遅延DB3020の通信時間差1060に登録された時間差で両系にCCMフレームを送出し得る状態になっている。本図では、OAM対応装置200−A1と200−Z1との間に設定された、現用系経路110−1及び予備系経路120−1の組において輻輳5000が発生した場合に、該輻輳5000を検出する方法を示す。なお、図示していないが、OAM対応装置200はユーザのデータフレームを随時中継処理している。
【0060】
ユーザデータの中継を開始した後も初期設定時と同様に、OAM対応装置200−A1はOAM対応装置200−Z1へ向けて、現用系経路110−1と予備系経路120−1の双方を経由して、CCDB1893に登録された時間間隔でCCMフレームを送信し続ける。予備系経路120−1についても経路状態を監視しておくことで、輻輳や障害が発生したような非常時における該経路の可用性を経路の切り替え前にあらかじめ確認する意味がある。
【0061】
OAM対応装置200−A−1の遅延制御18911は、CCDB1893に登録された時間毎に、通信時間測定用のCCMフレームを現用系経路と予備系経路それぞれに1つずつ、1組作成する。これらCCMフレームのペア識別ID17480には同じ値が格納され、経路ID17481にはそれぞれの経路のIDが格納される。なお、ペア識別ID17480には、CCDB1893に登録された時間間隔ごとに異なるタイミングで送出されるCCMフレーム間で、異なる値が格納される。
【0062】
OAM対応装置200−A−1はCCMフレームを送出すべき時刻T0になると、T0を送信タイミングID17482に格納して、CCMフレーム110−1−3を現用系経路110−1に送出する。続いてOAM対応装置200−A−1は、遅延DB3020に登録された通信時間差1060の値である14ms後に、時刻(T0+14)を送信タイミングID17482に格納したCCMフレーム120−1−3を予備系経路120−1に送出する。このようにOAM対応装置200−A1は、受信側OAM対応装置200−Z1への両経路を介したCCMフレーム到着時刻が等しくなるように、両経路へのCCMフレームの送出時刻をずらす。
【0063】
現用系経路110−1上で輻輳5000が発生した場合、CCMフレーム110−1−3は輻輳5000の地点で遅延するため、OAM対応装置200‐Z1が予備系経路120−1からCCMフレーム120−1−3を時刻T3で受信するのに対し、現用系経路11−1−からはCCMフレーム11−1−3を時刻(T3+25)と、25ms遅く受信する。そしてOAM対応装置200‐Z1の遅延制御18911は、CCMフレーム120−1−3および110−1−3を受信した時刻の差を算出する。OAM対応装置200−A1が、同じタイミングでOAM対応装置200−Z1がCCMフレームを受信するよう送出時刻を調整しているため、受信時刻の差がそのまま通信時間の差となる。OAM対応装置200−Z1は算出した受信時刻差を遅延DBの許容通信時間差1030の値と比較して、経路切替えの必要性を判断する(221)。
【0064】
この場合、通信許容時間差1030が20msと設定されているのに対し、実測の通信時間差が(T3+25−T3)=25msであるため、遅延制御18911は経路の切替えが必要と判断する。するとOAM制御1891はイーサOAMの規定に従って切替え要求メッセージを作成し(222)、正常と判断されている予備系経路120−1を介して少なくとも1つ以上の切替え要求メッセージ120−1−4、120−1−5を送信する。
【0065】
図8は、受信側OAM対応装置200‐Z1からOAM対応装置200−A1へ送信する切替え要求メッセージ120−1−4、120−1−5の構成例を示す。本構成例では、非特許文献2で定義されるVSM(Vendor Specific Message)フレームフォーマットをベースとした構成とした。別の方法として、非特許文献2に記載されるAPS(Automatic Protection Switching)を用いても同様の動作が可能である。
【0066】
本図のフレーム構成のL2情報(1710、1720、1730)は、図4と同様である。また、OAMフレームの基本ペイロード情報であるMEL1741、OAMバージョン情報1742、VSMフレームであることを示すコード番号OpCode1753についても、各フィールドの設定パラメータは図3のフレーム構成例と略同様である。また、OUI(Operatally Unique Parameters)1750とSubOpCode(1751)については、非特許文献2に記載されている。
【0067】
本実施の形態において、VSMフレームによりOAM対応装置200−A1へ通知すべき情報は、ペイロード1740部分に格納する。本実施の形態で使用する経路切替え要求フレーム120−1−4、120−1−5では、制御情報用フィールド1760の一部を使用する。ここに切替え処理をOAM対応装置200−A1へ要求するための指示フィールド1761、その他フラグ等を挿入するためのリザーブフィールド1762を含む。尚、リザーブフィールド1762はオプションである。
【0068】
切替え要求メッセージ120−1−1、120−1−2を受信した後、OAM対応装置200−A1のOAM制御プログラム1891は、切替え対象とするフローについて、切替え処理中の通信途絶を回避するため、現用系経路110−1を用いたデータ通信を継続しつつ、予備系経路120−1においても同一データフレームの送出を開始する(1211)。即ち、OAM対応装置200−A1では端末装置101−A1から受信するデータフレームをコピーし、データフレーム110−1−201を現用系経路110−1に、同じユーザデータを含むデータフレーム120−1−201を予備系経路120−1に、それぞれ送出する。
【0069】
図9は、図1のネットワークにおける、OAM対応装置200‐A1でのデータフレーム送出時の処理の流れを説明するフローチャートである。OAM対応装置200‐A1は、ユーザ網10‐1からデータを受信すると(3001)、当該データが、冗長系へのコピー転送を必要とするデータか否か、つまり経路の切り替えを要求され、完全に経路を切り換えるまでの間、現用系と予備系の両経路にデータを送出する状態にあるかどうかを判定する(3002)。この判定は、例えば遅延DBにその冗長系が経路を切替え中か否かを示す項目を加え、遅延制御18911が経路切替えを決定したときにその項目にフラグを立てて経路切替え中であることが分かるようにし、ユーザのデータフレーム転送時に例えば入出力処理部1830もしくは1840の依頼に応じて遅延制御18911が遅延DB3020を参照し、フレームのコピーが必要か否かを調べるようにしても良い。
【0070】
判定の結果、現用系のみへの送信が必要な場合、つまり経路の切替え中では無い場合は、OAM対応装置200−A1は現用系経路へ受信したデータフレームを転送する(3005)。一方、経路の切替え中で現用系と冗長系のそれぞれの経路にデータフレームを転送する必要がある場合は、OAM対応装置200−A1の入出力処理部1830もしくは1840は、当該データフレームをコピーして両系に送信する(3003)。
【0071】
OAM対応装置200‐Z1は、OAM対応装置200−A1からのデータフレームを受信すると宛先情報を参照し、例えばユーザ端末101‐B1へ当該フレームを転送する。なお、経路切替え中にOAM対応装置200−Z1は両系から同じデータフレームを受信し、それら同じデータフレームをそのままユーザ端末に転送しても良い。この場合、ユーザ端末が重複するデータのいずれか一方を採用し、もう一方を廃棄する。もしくはOAM対応装置200−A1が重複するユーザのデータフレームに、CCMフレームのペア識別ID17480のような重複することを示す識別情報を付与し、対向のOAM対応装置200−Z1が当該識別情報を参照して重複するユーザフレームの一方をユーザ端末に転送し、もう一方のユーザフレームを廃棄しても良い。
【0072】
通信経路切替え時、OAM対応装置200−A1は予備系経路120−1にCCMフレーム120−1−5を送出し、受信側OAM対応装置200−Z1は、CCDB1893を用いてCCMフレーム120−1−5のパラメータを確認し、正規のCCMフレームであるか否かを確認する(223)。正規のCCMフレーム120−1−5を受信でき、かつ予備系経路120−1からデータフレームを受信できた場合、OAM対応装置200−Z1は予備系によるデータを正常に受信できたと判断する(224)。
【0073】
正常通信確認後には予備系経路120−1から受信するデータフレームを用いて該サービスは継続されるため、現用系経路110−1での該サービス用フレーム送信は不要となる。そこでOAM対応装置200−Z1のOAM制御プログラム1891は、確認通知フレーム120−1−6をOAM対応装置200−A1へ通知し、これを受信したOAM対応装置200−A1のOAM制御プログラム1891は、該サービスフレームの送出先を予備系経路120−1のみに限定する(1212)。これにより通信サービスの継続性を確保しつつ、そのために必要な帯域リソースの消費を最小限に抑える。尚、確認通知フレーム120‐1‐6は、図8(B)の構成に示すように、フィールド1760の一部を書き換えたフレーム1763を適用することができる。
【0074】
図10は、本実施例の一連の処理を説明する図である。OAM対応装置200‐A1、200−Z1、中継装置2106、2107の装置立上げに続き、装置IDやインタフェース種別及びインタフェースIDの登録を含む装置設定(構成定義とも称する)を管理者が行う(901)。次にOpS1が、OAM対応装置200‐A1からOAM対応装置200‐Z1へ至る現用系及び予備系経路設定を行う(902)。ここまではOAM対応装置200や中継装置2101〜2109を立ち上げるための処理である。
【0075】
次に、図3で説明した手順に従い、現用系経路110−1および予備系経路120−1の通信時間差を計測し、OAM対応装置200−A1、200−Z1双方の遅延DBに通信時間差1060と許容通信時間差1030を登録する初期設定処理を行う(903)。ここまでの一連の処理が初期設定動作であり、サービス収容準備である。
【0076】
初期設定動作の後、図5や図7で説明した手順に従い、OAM対応装置200は両系の通信所要時間差を算出し(904)、現用系および予備系に異常が無いかどうか監視する(905)。異常を認めた場合、OAM対応装置200は図7で説明した手順により経路切替えを実施する(906)。異常が無い場合、監視を継続するか否かの判断に移行する(907)。ユーザデータフレームを転送するサービスが終了したような場合、現用系および予備系パスは使用されなくなるため、これら経路の監視は必要なくなる。このような場合は処理を終了する。
【0077】
監視を継続する場合、次の測定までの待機時間を測定するため、タイマーをCCDBに登録されたCCMフレームの送信時間間隔に設定する(908)。以降、タイマーを定期的に監視(設定/リセット)しておき(909)、タイマーが所定のカウントに達した時には、再度ステップ904から始まる通信時間差測定処理を開始する。
【0078】
以上の実施例では、経路上に輻輳や障害を発見した後で、非特許文献1や非特許文献2、およびIEEEの802.1agに記載された技術を用いて経路の切り換えを実施している。しかし本願発明はこれらイーサOAM技術に限って実施し得るものではなく、この他の技術を用いて現用系と予備系の間で経路を切り換えても実施できる。従って、通信プロトコルもイーサネット(登録商標)に限られるものではない。現用系と予備系の経路に監視用パケットを送出してパケットの通信時間を測定し、両経路の通信時間差に基づいて経路上の異常を検知し、経路間の切り替えを実行するという一連の処理は、その他のプロトコルやOAM技術でも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 OpS
100 パケット中継網
110 現用系経路
120 予備系経路
200 OAM対応装置
1891 OAM制御プログラム
18911 遅延制御プログラム
3020 遅延DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットの中継を行う複数の中継装置と、通信端末から受信したパケットを前記中継装置に送信する、又は前記中継装置から受信したパケットを前記通信端末に送信する、複数のネットワーク装置と、を有し、任意の前記通信端末間でパケットを中継するときに、前記任意の通信端末の一方とパケットを送受信する第1の前記ネットワーク装置と、前記任意の通信端末のもう一方とパケットを送受信する第2の前記ネットワーク装置との間で、複数の前記中継装置を介した経路を設定するパケット中継システムにおいて、
前記第1のネットワーク装置と前記第2のネットワーク装置との間に、前記任意の通信端末間で送受信するパケットを中継するための、それぞれ異なる前記中継装置を経由する第1の経路および第2の経路が設定され、前記第1の経路を用いて通信端末からのパケットを送信し、
前記第1のネットワーク装置が前記第2のネットワーク装置へ、パケットを転送するのに要する時間を計測するための計測用パケットを、前記第1の経路および前記第2の経路向けに組にしてそれぞれ定期的に送信し、
前記第2のネットワーク装置が、前記計測用パケットの組を前記第1および第2の経路からそれぞれ受信し、前記第1および前記第2の経路のパケットの転送時間に基づいて、前記第2の経路を使用する必要があるか否かを判断し、
前記第2のネットワーク装置が、前記第2の経路を使用する必要があると判断した場合、前記第1のネットワーク装置に対し、前記第2の経路を用いて前記通信端末からのパケットを送信するよう要求し、
前記第1のネットワーク装置が、前記第2のネットワーク装置から、前記第2の経路の使用の要求を受信すると、前記通信端末からのパケットを、前記第1の経路および前記第2の経路に送信することを特徴とするパケット中継システム。
【請求項2】
請求項1に記載のパケット中継システムにおいて、
前記第1のネットワーク装置が、前記第1および前記第2の経路を介して送信する前記計測用パケットの組それぞれに、同じ組であることを示す第1の識別情報として同じ情報と、前記第1および第2のいずれの経路を介して送信されるかを示す第2の識別情報として互いに異なる情報を挿入し、
前記第2のネットワーク装置が、同じ前記第1の識別情報を有し、かつ異なる前記第2の識別情報を有する前記計測用パケットを用いて、前記第1および前記第2の経路のパケットの転送時間に基づいて、前記第2の経路を使用する必要があるか否かを判断することを特徴とするパケット中継システム。
【請求項3】
請求項2に記載のパケット中継システムにおいて、
前記任意の通信端末からのパケットを中継する前に、前記第1のネットワーク装置から前記第2のネットワーク装置へ前記第1および前記第2の経路をそれぞれ介して前記計測用パケットの組を送信することで、前記第2のネットワーク装置が、前記第1の経路を介して受信した前記計測用パケットの到達時刻と、前記第2の経路を介して受信した前記計測用パケットの到達時刻との差を算出して前記第1のネットワーク装置に通知し、
前記第1のネットワーク装置が、前記第2のネットワーク装置から通知された前記計測用パケットの到達時刻の差を記憶し、前記第1の経路を通る前記計測用パケットと前記第2の経路を通る前記計測用パケットとの前記第2のネットワーク装置への到達時刻の差が小さくなるよう、前記記憶した到達時刻の差の分だけ時間をずらして前記第1の経路および前記第2の経路に前記計測用パケットの組を送信することを特徴とするパケット中継システム。
【請求項4】
請求項3に記載のパケット中継システムにおいて、
前記任意の通信端末からのパケットの中継を始めた後で、前記第2のネットワーク装置が、受信した前記計測用パケットの組の到達時刻差を算出し、当該算出した到達時刻差があらかじめ定められた時刻差よりも大きい場合に、前記第2の経路を使用する必要があると判断することを特徴とするパケット中継システム。
【請求項5】
請求項4に記載のパケット中継システムにおいて、
前記任意の通信端末からのパケットの中継を始めた後で、前記第2のネットワーク装置が、受信した前記計測用パケットの組の到達時刻差を算出し、当該算出した到達時刻差があらかじめ定められた時刻差よりも小さい場合に、当該算出した到達時刻差を前記第1のネットワーク装置に通知し、
前記第1のネットワーク装置が、当該通知された到達時刻差を以前に記憶した到達時刻差に上書きして記憶し、当該記憶した到達時刻差の分だけ時間をずらして前記第1の経路および前記第2の経路に前記計測用パケットの組を送信することを特徴とするパケット中継システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−188046(P2011−188046A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48567(P2010−48567)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】