説明

パターン付樹脂シートの製造方法

【課題】効率よく精度の高いパターン形成を実施させ得るパターン付樹脂シート製造方法の提供を課題としている。
【解決手段】軸周りに回転可能なローラを有し、凹凸形状によってパターン形成されたパターン形成部が前記ローラの外周部に設けられている型材を用いて、レーザービームにより前記外周部が加熱された状態で樹脂シートの表面に前記外周部を圧接させることにより前記パターン形成部と凹凸方向が逆転されたパターンを前記樹脂シートの表面に形成させ、しかも、前記ローラを回転させて前記外周部により圧接される箇所を移動させることにより前記樹脂シートの表面に前記パターンを連続的に形成させることを特徴とするパターン付樹脂シート製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸形状が形成されたパターン付樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装飾性や機能性を付与すべく微細な凹凸により樹脂シートの表面に種々のパターンを形成させることが行われており、この表面パターンが形成された樹脂シート(パターン付樹脂シート)は、型材を用いて作製されたりしている。
例えば、樹脂シートを構成している樹脂よりも高融点の樹脂や金属などによって形成され、パターン付樹脂シートに形成されるパターンとは逆の凹凸形状が表面に形成された型材を用いて作製されたりしている。
そして、樹脂シートを構成している樹脂の、例えば、ガラス転移点以上の温度に金型などの型材を加熱して樹脂シートに圧接させることにより型材表面の突出部分を樹脂シートに侵入させて樹脂シートの表面に凹部を形成させるとともに型材の凹入部分に相当する箇所に凸部を形成させて、表面に金型表面とは逆形状となる凹凸形状によってパターンが形成されたパターン付樹脂シートを製造することが行われている。
【0003】
また、微細な凹凸形状によるパターン形成が略全面に施された、いわゆる“エンボスシート”の形成においてもこのような方法が採用されており、該エンボスシートの製造においては、片面にのみパターンを形成させたり、両面にパターン形成させたりして金型からのパターン転写が実施されたりしている。
例えば、両面にパターン形成がされたエンボスシートを作製する際には、柔軟な部材で樹脂シートの裏面側を支持させることにより、加熱された型材の表面の突出部分を樹脂シートに侵入させて樹脂シートの表面に凹部を形成させるとともに該凹部の裏面側を突出させ、型材の凹入部分に相当する表面箇所に凸部を形成させるとともに該凸部の裏面側に凹部を形成させる方法が採用されている。
【0004】
このエンボスシートのようなパターン付樹脂シートの製造における型材の加熱は、金型内に配置した電熱線を発熱させたり、加熱された蒸気や油などの熱媒を金型内に流通させたりすることにより実施されている。
したがって、型材の表面温度を精度良く調整することが困難でパターン形成の精度を向上させることが困難であるという問題を有している。
また、樹脂型を用いる場合においては型全体を加熱することで型の劣化が加速されてしまい耐用期間が短縮されるという問題も有する。
【0005】
このことに対し、特許文献1には、転写するパターンが形成されたパターン形成部が表面部に備えられた平板状金型の上に樹脂シートを載置してガラス板などの透明部材で樹脂シートを押圧することにより金型の表面部を樹脂シートに圧接させつつ、前記透明部材ならびに樹脂シートを透過させてレーザービームを金型の表面部に照射して加熱を実施し、しかも、このレーザービームの照射位置を金型全面にかけて走査させることで樹脂シートの表面にパターンを形成させることが記載されている。
【0006】
この特許文献1に記載のパターン形成方法によるパターン付樹脂シートの製造においては、レーザー光を使用することで平板状金型の内の主として表面部を加熱することが出来、金型全体を加熱する場合に比べて表面部の温度調整が容易で、精度よくパターン形成を実施させ得る。
一方で特許文献1に記載のパターン形成方法によるパターン付樹脂シートの製造においては、平板状金型よりも大きな樹脂シートにパターンを形成させようとするとバッチ式のパターン形成工程を複数回実施させることとなり生産性を低下させるおそれを有する。
【0007】
すなわち、従来のパターン付樹脂シート製造方法においては、効率よく精度の高いパターン形成を実施することが困難であるという問題を有している。
【0008】
【特許文献1】特開2003−311831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、効率よく精度の高いパターン形成を実施させ得るパターン付樹脂シート製造方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決すべく、軸周りに回転可能なローラを有し、凹凸形状によってパターン形成されたパターン形成部が前記ローラの外周部に設けられている型材を用いて、レーザービームにより前記外周部が加熱された状態で樹脂シートの表面に前記外周部を圧接させることにより前記パターン形成部と凹凸方向が逆転されたパターンを前記樹脂シートの表面に形成させ、しかも、前記ローラを回転させて前記外周部により圧接される箇所を移動させることにより前記樹脂シートの表面に前記パターンを連続的に形成させることを特徴とするパターン付樹脂シート製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターン形成部が設けられたローラの外周部がレーザービームにより加熱されることから、樹脂シートに圧接される際の表面温度を精度良く制御させ得る。
しかも、ローラを回転させて外周部により圧接される箇所を移動させることにより樹脂シートの表面にパターンを連続的に形成させることから生産効率の向上を図ることができる。
すなわち、効率よく精度の高いパターン形成を実施させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について、外周部に凹凸形状によりパターン形成がされているローラによって樹脂シートにパターン形成させてエンボスシート(パターン付樹脂シート)を作製する場合を例に説明する。
【0013】
まず、本実施形態のエンボスシート製造方法に用いるパターン形成装置ならびに樹脂シートなどについて説明する。
図1は、エンボスシート製造方法に用いる第一のパターン形成装置を示す側面図である。
図1中の1は、本実施形態のエンボスシート製造方法において、型材として用いられるエンボスローラであり、該エンボスローラ1は、全体的な形状が略円柱状となるように形成されており、その回転軸を水平方向に延在させて駆動装置(図示せず)により前記回転軸周りに回転可能な状態でパターン形成装置に備えられている。
図1中の1aは、凹凸形状が形成されており前記エンボスローラ1の外周部に設けられたパターン形成部を表しており、前記エンボスローラ1は、外周部全体に凹凸形状が設けられており、該凹凸形状によりパターン形成がされている。
すなわち、前記エンボスローラ1は、パターン形成部1aが外周部全体に設けられている。
【0014】
前記エンボスローラ1を形成する材質については、特に限定されるものではないが、表面にレーザービームが照射された際に効率よく表面温度を上昇させ得るようにレーザービームの透過率ならびに反射率が低い(吸収率が高い)材質により形成されていることが好ましく、金属や樹脂組成物が例示される。
例えば、レーザービームの吸収性を高めるべく表面処理された金属ローラや、ポリイミド樹脂や芳香族ポリアミド樹脂などにより半透明あるいは不透明に形成された樹脂ローラなどを採用することができる。
【0015】
前記エンボスローラ1の表面の凹凸形状や、該凹凸形状によって形成される全体のパターンについては特に限定されるものではなく、所望の凹凸形状、所望のパターンを形成させうる。
例えば、作製するエンボスシートの厚みにもよるが、高さが数十nmから数mmのいずれかとなる、レンズ形状、ピラミッド形状、ストライプ形状、ピラー形状の凹凸が形成されたエンボスローラ1を採用することができる。
本発明によれば、その形状を忠実にパターン付樹脂シートに反映させることができることから、特に高さが10μm以下の微細なパターンが設けられたエンボスローラを用いるような場合において、その効果をより顕著に発揮させることができる。
【0016】
図1中の2は、前記エンボスローラ1によって、該エンボスローラ1の外周部に設けられたパターン形成部1aに形成されているパターンと凹凸方向が逆転されたパターンが形成される樹脂シートを表している。
本実施形態における樹脂シート2は、例えば、長さ数百mに及ぶ長尺の帯状に形成されており、2aは、前記長尺帯状の樹脂シート2が巻回されて形成されてなる樹脂シートロールを表している。
該樹脂シートロール2aは、前記エンボスローラ1に向けて送り出されてエンボスシートの製造に供されるべく、前記エンボスローラ1の回転軸と平行となる方向に延在された回転軸に装着されて用いられる。
前記樹脂シート2は、その材質や厚みを特に限定するものではないが、本実施形態のパターン付樹脂シートの製造方法においては、通常、前記エンボスローラ1の長さよりも狭幅に形成されたものが用いられ、前記エンボスローラ1に樹脂ローラが用いられている際には、該エンボスローラ1を構成する樹脂材料の融点よりも低融点の樹脂により形成されたものが通常用いられる。
例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂により、数μm〜数mmの厚みに形成された樹脂シートを採用することができる。
【0017】
図1中の3は、前記エンボスローラ1とともに前記樹脂シート2を挟持して、前記エンボスローラ1の表面を前記樹脂シート2の表面に圧接させるためのニップローラを表しており、該ニップローラ3は、前記エンボスローラ1と略同一形状の円柱状に形成されており、前記エンボスローラ1の下方にエンボスローラ1の回転軸とその回転軸を平行させてパターン形成装置に配されている。
すなわち、該ニップローラ3を前記エンボスローラ1に当接させた際には、ローラの長さ方向全長にわたる線状の接触箇所が形成されるようにパターン形成装置に配置されている。
また、前記ニップローラ3は、エンボスローラ1に圧接させることによりエンボスローラ1との線状の接触領域に適度なニップ幅が形成されるように構成されており、表面がゴムなどの弾性体や金属材料により形成されている。
さらに、前記ニップローラ3は、レーザービームを透過させ、しかも、そのエネルギーが減衰されることを抑制しつつレーザービームを透過させ得るように形成されており、全体が透明に形成されている。
【0018】
図1中の4は、レーザー光源を表しており、4aは前記レーザー光源4から照射されるレーザービームを模式的に表したものである。
前記レーザー光源4は、前記ニップローラ3の下方に配され、前記レーザービーム4aを上方に向けて照射し得るようにパターン形成装置に備えられている。
すなわち、前記樹脂シート2を、前記エンボスローラ1と前記ニップローラ3との間に挟持させた状態でラインビームを照射することにより、レーザービーム4aをニップローラ3と樹脂シート2とを透過させてエンボスローラ1の表面に照射し得るように前記レーザー光源4がパターン形成装置に備えられている。
しかも、前記レーザー光源4は、前記レーザービーム4aとして、照射部が線状となるラインビームの状態でレーザービーム4aを照射し得るように形成されており、前記エンボスローラ1と前記ニップローラ3との線状の接触領域上に前記ラインビームの照射箇所を延在させて前記レーザービーム4aを照射し得るようにパターン形成装置に配置されている。
【0019】
該レーザー光源4から照射されるレーザー光については、特に限定されず、例えば、赤外線レーザー、紫外線レーザー、可視光レーザーなどをパターン形成(エンボス加工)する樹脂シートの材質などによって適宜選択して用いることができる。
なお、上述したようにレーザービームをニップローラ3と樹脂シート2とを透過させてエンボスローラ1の表面に照射する場合においては、レーザービームが樹脂シート2やニップローラ3に吸収されないことが好ましく、通常、主たる光の波長が0.7μm〜2.5μmのいずれかとなる近赤外線レーザーを好適に採用し得る。
なお、照射するレーザー光の主ピーク波長に対するエンボスローラ1の吸収率が樹脂シート2やニップローラ3に比べて高くなるように、レーザー光の波長やニップローラ3の材質などを適宜選択することが好ましい。
【0020】
また、ラインビームを形成させやすい点において、半導体レーザー光源を前記レーザー光源4に用いることが好適である。
【0021】
図1中の5は、前記エンボスローラ1と前記ニップローラ3との間を通過して表面にパターンが形成されたエンボスシート(パターン付樹脂シート)であり、5sは、前記エンボスローラ1が圧接されたエンボスシート5の表面を表しており、5bは、前記ニップローラ3が圧接された裏面を表している。
前記エンボスシート5の表面5sには、エンボスローラ1と凹凸方向が逆転されたパターンが形成されており、前記エンボスシート5の裏面5bには、エンボスローラ1の表面に形成されている凹凸形状と同じ凹凸方向となるパターンが形成されている。
図1中の5aは、該エンボスシート5が巻き取られてなるエンボスシートロールであり、該エンボスシートロール5aは、前記エンボスローラ1から送り出されてエンボスシート5を巻き取るべく前記エンボスローラ1の回転軸と平行となる方向に延在された回転軸に装着されている。
【0022】
なお、ここでは詳述しないが、上記のような両面に凹凸の形成された両面エンボスシートのみならず、片面にのみ凹凸が形成され裏面側を平坦に形成させた片面エンボスも本発明の意図する範囲であり、本発明においては、エンボスローラとの界面付近のみを効率よく加熱することができることから、歪の少ない片面エンボスシートを得ることができる。
また、本実施形態のパターン付樹脂シート製造方法に用いるパターン形成装置の上記以外の構成部分については、従来公知のパターン形成装置に採用されている構成を採用することができる。
また、従来公知のパターン形成装置に採用されている構成を、本発明の効果を損ねない範囲において上記構成に代えて採用する事も可能である。
例えば、上記パターン形成装置においては、ニップ部に一度にレーザービームを照射することができ、ニップ部の温度バラツキを抑制させて、より精度の高いパターン形成を実施させ得る点においてラインビームを採用しているが、ニップ部に沿ってレーザー光の照射箇所を走査させるべく、前記ラインビームに代えてスポットレーザー、あるいは、集光レーザーを採用する事も可能である。
【0023】
次いで、このようなパターン形成装置ならびに樹脂シート2によりエンボスシート5を製造する製造方法(パターン付樹脂シート製造方法)について説明する。
まず、前記エンボスローラ1と前記ニップローラ3との回転軸間隔を調整することにより適度なニップ圧力をエンボスローラ1とニップローラ3との接触箇所に発生させて前記駆動装置によりエンボスローラ1を回転させる。
そしてエンボスローラ1を駆動装置で回転させることにより該エンボスローラ1に圧接されている前記ニップローラ3を、その表面の移動方向ならびに移動速度が前記接触箇所において前記エンボスローラ1と同一となるように回転させる。
さらに、前記樹脂シートロール2aから樹脂シート2を送り出して、前記回転しているエンボスローラ1とニップローラ3との間を通過させる。
しかも、前記レーザー光源4からエンボスローラ1とニップローラ3との接触箇所に向けてラインビームを照射しつつ前記樹脂シート2をエンボスローラ1とニップローラ3との間を通過させる。
【0024】
このとき前記樹脂シート2は、エンボスローラ1とニップローラ3との間を通過する際に前記ラインビームにより加熱されたエンボスローラ1の外周部が圧接されることにより、エンボスローラ1のパターン形成部1aの凹凸形状における突出部分が侵入されて表面に凹部が形成される。
また、前記ニップローラ3が前記凹部の裏面で弾性変形することにより、樹脂シート2の表面に形成された凹入箇所の裏面側にはその表面が突出された凸部が形成される。
また、エンボスローラ1の外周部の凹凸形状における凹入部分に圧接される樹脂シート2表面には凸部が形成され、該凸部の裏面にはニップローラ3の圧接により凹部が形成される。
【0025】
このようにして表裏に凹凸形状が形成されたエンボスシート5を連続的に作製する。
なお、連続的に作製されるエンボスシート5については、前記エンボスシートロール5aが装着されている回転軸を回転させて当該エンボスシートロール5aに巻き取ることとなる。
【0026】
本実施形態のエンボスシート製造方法においては、レーザー光源4から照射されたラインビームは、ニップローラ3と樹脂シート2とを透過してエンボスローラ1の外周部に照射されることから、エンボスローラ1の表面近傍のみを効率よく加熱することができ表面温度の調整が容易となる。
したがって、例えば、前記エンボスローラ1の表面温度が樹脂シート2に用いられている樹脂材料のガラス転移温度以上、融点以下となるように出力を調整しつつ前記ラインビームの照射を実施することで、樹脂シート2が軟化しすぎて所定の厚みの確保が困難となったり、樹脂シート2の軟化が不十分で凹凸形成が不十分となったりするおそれを抑制しつつエンボスシート5を作製しうる。
すなわち、エンボスローラ1の表面に形成されているパターンを高い精度でエンボスシート5の表面5sに反映させることができる。
【0027】
なお、このようにニップローラ3の背面側からレーザーを照射する場合に、ガラス製のニップローラを用いることで、レーザー光の照射方向にブレが生じたとしても、屈折等によって矯正されうる。
例えば、ニップ部とニップローラの中心軸と通る直線の延長線上にレーザー光源4を配置すると、レーザー光は、通常、ニップローラの外周の接線方向に対して直角にニップローラに入射されてニップ部に照射されることになるが、振動等によって、ニップ部に向けた方向からずれた照射方向となって角度をもってニップローラに入射されることになっても屈折によってその照射位置がニップ部方向に矯正されうる。
【0028】
また、例えば、平板状の金型を用いる従来の方法においては、局所的に圧力を加えることが困難であり、パターン形成のためには樹脂シート全体を軟化させる必要があることからレーザービームを金型全面にわたって走査させて金型全面を加熱することを必要としていた。したがって、パターンを形成する樹脂シートの面積が大きくなると、最初に加熱した箇所の表面温度が、レーザービームの走査中に低下してしまい、高い精度で凹凸形状を形成させることが困難であった。
【0029】
なお、一箇所あたりのレーザー照射時間を長くしたり、レーザービームを複数回走査させたりして全体を加熱することで樹脂シートに高い精度で凹凸形状を形成させることができるものの、その場合には、金型面側のみならず背面側まで樹脂シートが軟化されてしまいやすく、パターン形成された樹脂シートの温度が低下するまで金型から取り外すことができなくなり、生産性を大きく低下させることになる。
特に、結晶性の高い樹脂では、融点近傍での相変化が急峻で、固体状態から、一気に低粘度な溶融状態へと変化することから、従来の平板状金型を用いたものでは、結晶性の高い樹脂が用いられてなり、厚みの薄い(全体的な熱容量の小さい)樹脂シートへのパターン形成が困難であった。
【0030】
また、特に、高さ10μm以下の微細パターンなどを広い面積に形成しようとすると、平板状の金型を用いる方法では、パターン付樹脂シートがアンカー効果等によって金型表面に強固に接着してしまうおそれがあり、金型から取り外すことができなくなるおそれを有する。
【0031】
このことに対し、本実施形態のエンボスシート製造方法においては、型材としてローラ(エンボスローラ1)を用いることから、圧接箇所(ニップ部)が線状となり、僅かな領域を加熱することでパターン形成させうるとともに型離れにおける問題を発生させにくいという効果が発揮される。
したがって、エンボスローラ1の外周部に形成されたパターン形成部の凹凸形状を高い精度で樹脂シート2に転写してエンボスシート5を作製することができる。
しかも、連続的な製造を実施可能であることから優れた生産効率でエンボスシート5を作製しうる。
【0032】
また、例えば、平板状の金型を用いる従来の方法においては、金型に接触する側には金型の凹凸形状をある程度反映させることができるもののガラス板などの透明部材が当接される裏面側に金型の表面に形成されている凹凸形状と同じ凹凸方向となるパターンを形成させることは実質困難であった。
一方で、本実施形態のエンボスシート製造方法においては、エンボスローラ1とニップローラ3とを用い、ニップ部のみにレーザービームを照射してエンボスローラ1の加熱を実施することから、ニップ圧力やレーザービームの出力などの調整を図ることができエンボスシート5の裏面5bの凹凸形状に、エンボスローラ1の表面形状を反映させやすいという効果を奏する。
すなわち、本実施形態のエンボスシート製造方法は、このような裏面にパターン形成部と同じ凹凸方向のパターンが形成されているエンボスシートの作製に適した方法であると言える。
【0033】
さらには、例えば、平板状の金型を用いる従来の方法においては、金型の面積よりも大きなエンボスシートを作製する場合には、継ぎ目を発生させやすく、該継ぎ目部においてパターンの乱れを発生させるおそれを有していたが、本実施形態のエンボスシート製造方法においては、このようなパターンの乱れを抑制させることができ、優れた美観のエンボスシートを作製させうる。
【0034】
なお、本発明においては、上記のようなパターン形成装置を用いたパターン付樹脂シート製造方法に限定されるものではない。
例えば、図2乃至図8に例示のパターン形成装置などをも、本発明のパターン付樹脂シート製造方法に用いうる。
この図2乃至図8は、図1と同様にパターン形成装置の側面図であり、図1と同様の構成については図1と同じ符号を設けて表している。
【0035】
図2に例示のパターン形成装置は、中空円筒形状のニップローラ32が設けられており、該ニップローラ32の中空部分にレーザー光源4が配されている点を除き、図1に例示のパターン形成装置と同様に構成されている。
この図2に例示のパターン形成装置は、レーザー光源4から照射されるラインビームがニップローラを透過する区間を短縮させることができレーザー光のエネルギーがニップローラ32に吸収されて減衰されてしまうおそれを抑制させ得る。
そのことにより、ニップローラ32を構成する材質の選択域を拡大させうるという効果も奏する。
【0036】
図3に例示のパターン形成装置は、中空円筒形状のニップローラ32に代えて無端状のベルト6が用いられている点において図2に例示のパターン形成装置と同様に形成されている。
前記ベルト6は、通常、ニップローラ3、32などに比べて厚みを薄く構成させることが可能であり、この図3に例示のパターン形成装置は、レーザー光源4から照射されるラインビームのエネルギーがエンボスローラ1の外周部(パターン形成部1a)に到達する前に減衰されるおそれをよりいっそう低減させ得る。
【0037】
図4に例示のパターン形成装置は、エンボスローラ14が、その内周部分を構成する内部ローラ部1x4と、パターン形成部1aが設けられた外周部を形成させるための外筒部1y4とにより構成されている点、ならびに、前記外筒部1y4が前記内部ローラ部1x4に対して脱着自在である点において、図1に例示のパターン形成装置と異なっている。
したがって、図4に例示のパターン形成装置は、エンボスローラ14全体を取り替えることなく、この外筒部1y4のみを交換することにより、異なるパターンのエンボスシート1を作製しうるという効果を奏する。
【0038】
この図4の態様のごとく、例えば、前記エンボスローラ14を、パターン形成部1aを構成するシート状の部材と、該シート状の部材が巻き掛けられる円筒状の内部ローラ部1x4とに分離可能に構成し、前記シート状のパターン形成部1aの表面に凹凸形状を形成させることにより、例えば、パターンの切り替えをすばやく行うことができるとともにパターン形成部1aに傷などが形成された場合でも、エンボスローラ全体を取り替えることなく、パターン形成部のみを取り替えればよく、経済的である。
特に、このパターン形成部1aをパターン形成される樹脂シートよりも高融点の樹脂組成物などによって形成させる場合には、金属製のローラの表面に凹凸形状を形成させてエンボスローラを作製する場合などに比べて、このパターン形成部1aを構成する高融点の樹脂シートを容易に作製することができることから、前記エンボスローラ14を安価に形成させ得る。
しかも、表面に傷が付いても容易に修理可能であることから、エンボスローラの取り扱う際に慎重な作業を伴うことを防止することができる。
【0039】
なお、図5に例示のパターン形成装置のごとく、図4の外筒部1y4に代えて、レーザー光の吸収性に優れた部材で形成され、表面にパターン形成部が備えられたブランケット1y5を用いて、該ブランケット1y5の両端部を挿入させて係合片にて固定可能なスリット1z5が形成された内部ローラ部1x5の外周に巻き掛けてエンボスローラ15を構成させることも可能である。
さらには、図6に示すように、図4の外筒部1y4に代えて、内部ローラ部1x6に対して遊嵌可能な内径を有し、レーザー光の吸収性に優れた部材で形成され、外表面に凹凸形状によるパターン形成がされている弾性体スリーブ1y6をテンションローラ7にて内部ローラ部1x6の外周側に密着させて、凹凸形状によってパターン形成されたパターン形成部1aが外周部に設けられているエンボスローラ16として用いる場合も本発明の意図する範囲である。
【0040】
また、図7に例示のパターン形成装置のごとく、エンボスローラ17の内部ローラ1x7を透明な部材で中空円筒構造に形成し、該内部ローラ1x7の内部(中空部)にレーザー光源4を配置して、エンボスローラ17のパターン形成部1aを構成する弾性体スリーブ1y7の裏面側からレーザービーム4aを照射してエンボスローラ17の外周部を加熱させ得るように構成されたパターン形成装置を採用する事も可能である。
【0041】
さらに、図8に例示のパターン形成装置は、エンボスローラとニップローラとにより形成されるニップ部よりもエンボスローラ1の回転方向手前側においてエンボスローラ1の外周部に直接レーザービーム4aを照射し得るようにレーザー光源4が備えられている点を除いて、図1に例示のパターン形成装置と同様に構成されている。
この図8に例示のパターン形成装置を用いたエンボスシート製造方法においては、ニップローラ3や樹脂シート2を透過させることなくエンボスローラ1の外周部にレーザービームを照射することできることから、ニップローラ3や樹脂シート2の材質が制約されることを防止しうるという効果を発揮させ得る。
【0042】
なお、これら図1乃至図8に例示のパターン形成装置については、それぞれの構成を組み合わせて採用したり、構成を一部入れ替えたりすることが可能であり、従来公知の各種構成をこれらに対してさらに追加して本発明のパターン付樹脂シート製造方法に用いることも可能である。
【0043】
また、上記には、パターン付樹脂シートとして微細な凹凸によるパターン形成されたエンボスシートを例に説明しているが、例えば、一辺が数cmに及ぶような大きな図柄がパターン形成されたようなパターン付樹脂シートの製造を実施する場合も本発明の意図する範囲である。
【実施例】
【0044】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
円筒状の金属製ローラの表面に、底辺10μm、深さ5μmのピラミッド型の凹部が正方配置された状態にパターン形成がされている125μm厚みのポリイミドシート(デュポン社製、商品名「カプトン」)を巻きつけてエンボスローラを作製した。
【0046】
前記エンボスローラを回転させ、該エンボスローラとガラス製のニップローラとの間を40μm厚みのポリプロピレンシートを通過させた。
また、このときニップローラとポリプロピレンシートとを透過させて、ビーム形状10mm×0.3mmのラインビーム状態で、波長940nm、出力20Wのレーザー光を記エンボスローラの外周部に照射しつつポリプロピレンシートを通過させることにより、加熱されたエンボスローラの外周部をポリプロピレンシート表面に圧接させてポリプロピレンシート表面に前記ポリイミドシートに形成されているピラミッド型とは逆方向の凹凸形状によるパターンを連続的に形成させた。
【0047】
得られたエンボスシートの表面を走査型電子顕微鏡にて撮影した画像を図9に示す。
この図9からもわかるように、本発明によれば精度の高いパターン形成を実施させ得ることがわかる。
【0048】
(実施例2)
樹脂シートを70μm厚みのポリビニルアルコールシートに変更したこと以外は、実施例1と同様にパターン形成を実施した。
得られたエンボスシートの表面を実施例1と同様に観察したところ、実施例1の場合と同様に精度の高いパターン形成がされていることが確認できた。
【0049】
(実施例3)
樹脂シートを50μm厚みのポリエチレンテレフタレートシートに変更したこと、ならびに、レーザー光の出力を35Wとしたこと以外は、実施例1と同様にパターン形成を実施した。
得られたエンボスシートの表面を実施例1と同様に観察したところ、実施例1の場合と同様に精度の高いパターン形成がされていることが確認できた。
【0050】
以上のように本発明によれば、レーザー光の出力を調整するなど簡便な手段によって種々の材質の樹脂シートにパターン形成させることが可能であり、しかも、電熱線などによって金型全体を加熱するような場合に比べて投入エネルギーをパターン形成に有効に活用させうることがわかる。
すなわち、本発明によれば、効率よく精度の高いパターン形成を実施させ得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】パターン付樹脂シートの製造に用いる一装置を示す側面図。
【図2】パターン付樹脂シートの製造に用いる他装置を示す側面図。
【図3】パターン付樹脂シートの製造に用いる他装置を示す側面図。
【図4】パターン付樹脂シートの製造に用いる他装置を示す側面図。
【図5】パターン付樹脂シートの製造に用いる他装置を示す側面図。
【図6】パターン付樹脂シートの製造に用いる他装置を示す側面図。
【図7】パターン付樹脂シートの製造に用いる他装置を示す側面図。
【図8】パターン付樹脂シートの製造に用いる他装置を示す側面図。
【図9】実施例1の製造方法により形成されたパターン付樹脂シートの表面を観察した走査型電子顕微鏡写真。
【符号の説明】
【0052】
1、14、15、16、17:エンボスローラ(型材)、1a:パターン形成部、1x4、1x5、1x6、1x7:内部ローラ、1y4:外筒部、1y5:ブランケット、1y6、1y7:スリーブ、1z5:スリット、2:樹脂シート、2a:樹脂シートロール、3、32:ニップローラ、4:レーザー光源、4a:レーザービーム、5:エンボスシート(パターン付樹脂シート)、5a:エンボスシートロール、5s:表面、5b:裏面、6:ベルト、7:テンションローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸周りに回転可能なローラを有し、凹凸形状によってパターン形成されたパターン形成部が前記ローラの外周部に設けられている型材を用いて、レーザービームにより前記外周部が加熱された状態で樹脂シートの表面に前記外周部を圧接させることにより前記パターン形成部と凹凸方向が逆転されたパターンを前記樹脂シートの表面に形成させ、しかも、前記ローラを回転させて前記外周部によって圧接される箇所を移動させることにより前記樹脂シートの表面に前記パターンを連続的に形成させることを特徴とするパターン付樹脂シート製造方法。
【請求項2】
作製されるパターン付樹脂シートが、裏面にパターン形成部と同じ凹凸方向のパターンが形成されているエンボスシートである請求項1記載のパターン付樹脂シート製造方法。
【請求項3】
作製されるパターン付樹脂シートが、裏面側が平坦に形成されている片面エンボスシートである請求項1記載のパターン付樹脂シート製造方法。
【請求項4】
樹脂シートの表面に形成されるパターンが、高さ10μm以下の微細パターンである請求項3記載のパターン付樹脂シート製造方法。
【請求項5】
前記ローラが、パターン形成部を構成するシート状の部材と、該シート状の部材が巻き掛けられる円筒状の基体とに分離可能に構成されており、前記シート状の部材が、表面に前記凹凸形状を有し、パターン形成される樹脂シートよりも高融点の樹脂が用いられて形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパターン付樹脂シート製造方法。
【請求項6】
前記樹脂シートを透過させて前記ローラの外周部にレーザービームを照射すべく前記ローラと前記樹脂シートとの圧接箇所に前記樹脂シートの裏面側からレーザービームを照射して前記ローラの外周部の加熱を実施する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパターン付樹脂シート製造方法。
【請求項7】
前記レーザービームがラインビームであり、該ラインビームが照射される箇所が前記ローラの回転軸方向に沿って延在する状態となるようにローラの外周部に前記ラインビームを照射してローラの外周部の加熱を実施する請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパターン付樹脂シート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−184343(P2009−184343A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260488(P2008−260488)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】