説明

パターン化されためっき物の製造方法及びそれに用いる下地塗料

【課題】パターン化されためっき物の製造方法及びそれに用いる下地塗料を提供する。
【解決手段】基材上に無電解めっき法によりパターン化された金属膜を形成するための下地塗料であって、
前記下地塗料は、導電性又は還元性の高分子微粒子、バインダー及び無機系フィラーを含み、前記導電性又は還元性の高分子微粒子と前記バインダーとの質量比は、1:11ないし1:60の範囲であり且つ50cps以上の粘度を有する
下地塗料及びそれを用いるパターン化されためっき物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に細線パターンが精度良く形成されためっき物の製造方法及び
該めっき物を無電解めっき法により簡便に且つ効率的に製造するための、パターン印刷により細線パターンを精度良く形成し得る下地塗料に関するものであり、特に、パターン印刷として、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、ドライオフセット印刷、パッド印刷等の工業的に有利な印刷方法に使用し得る下地塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2007−270180号公報には、無電解めっき法を用いる、簡便な方法で基材フィルム上にパターン化された金属膜が形成されためっきフィルムの製造方法が記載されている。
この方法は、無電解めっき法により金属膜を形成するためのパターン化されたポリマー層に、還元性の高分子微粒子(導電率0.01S/cm未満のポリマー微粒子)を用いることにより、該高分子微粒子が有する還元性により触媒金属を脱ドープ処理を用いることなく吸着することができ、即ち、アルカリ条件下による長時間の処理を要する脱ドープ処理を回避することができ、これにより、該脱ドープ処理よる密着性の低下を防止でき、更に、既に重合した高分子微粒子を用いることにより、基材上で酸化重合を行うことに由来する問題、即ち、残留した酸化剤による金属めっき膜の腐食の問題、重合触媒層を含む多層構造による密着性不足による易剥離性の問題及びモノマーを重合する際に、専用の装置を必要とするという問題を回避することができるという点で優れた方法といえる。
【0003】
しかし、特開2007−270180号公報に記載されためっきフィルムの製造方法は、インクジェット方式の印刷を用いるものであり、必ずしも、工業的に有利な印刷方法である、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、ドライオフセット印刷、パッド印刷等に適した方法といえるものではなかった。
【特許文献1】特開2007−270180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において採用されているインクジェット印刷法は、一般的な印刷法、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、ドライオフセット印刷、パッド印刷等と較べると、描画スピードにおいて劣るものであり、従って、小量生産を行う場合には問題とはならないものの、大量生産を行う工業的な方法としては不利なものであった。
そこで、特許文献1で使用されている、高分子微粒子を分散させた塗料を用い、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、パッド印刷等の工業的に有利な方法で印刷したところ、パターン印刷することはできるものの、線幅が1.0mm以下の細線のパターンを精度良く印刷することはできなかった。
上記の理由としては、特許文献1に記載の塗料は、その溶液粘度が高いものでも50cps未満であり、汎用の印刷機に使用される塗料の粘度に比して低い(以下の記載参照)ことによるものと考えられた。
汎用の印刷機で使用される塗料の粘度
グラビア印刷:50〜200cps
スクリーン印刷:500〜50000cps
フレキソ印刷:50〜500cps
パッド印刷:500〜50000cps
【0005】
そこで、高分子微粒子を分散させた塗料におけるバインダー量を増加させることにより、例えば、高分子微粒子1質量部に対して10質量部を超えるバインダーを添加して溶液粘度を上げる検討を行ったところ、無電解めっき法によるめっき析出が不十分となり易い傾向にあることが観察された。
上記傾向は、バインダー比率の増加により、ポリマー層の表面に存在する高分子微粒子の比率が減少し、それにより、触媒金属の吸着が不十分となったことに起因していると考えられた。
【0006】
溶液粘度を上げる別の方法として、高分子微粒子分散液中における高分子微粒子の量(即ち、固形分(%))を多くする検討を行った。しかし、上記分散液中の高分子微粒子の量(即ち、固形分(%))を多くし、例えば、5質量%を超える量とすると、高分子微粒子同士で凝集が起こり易くなり、これにより分散性が悪化し、結果として均一な分散液として保存することができず、実用に供し得ないものとなることが判った。
【0007】
本発明は、上記問題を解決し得る、即ち、汎用の印刷法においても細線パターンを精度良く印刷することができる粘度を有する下地塗料であって、該下地塗料によりパターン形成された塗膜層上における、無電解めっき法による金属めっき膜形成においてめっき析出性に優れ、即ち、塗膜層のパターンに従った忠実な金属めっき膜を形成し、且つ密着性に優れるめっき物の製造を可能とする下地塗料の提供及び該下地塗料を用いるめっき物の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、高分子微粒子分散液中に無機系フィラーを添加すると、バインダー量を増加させても、即ち、10質量部を超えるバインダーを添加したとしても、無電解めっき法において優れためっき析出性が維持されることを見出し、これにより、優れためっき析出性を維持したままバインダーの比率を上げて、溶液粘度を上げられ得ることが判った。また、調製された塗料は多量のバインダーを含むため、基材との密着性に優れていた。
【0009】
結果として、高分子微粒子、無機系フィラー及び増加された特定量のバインダーを含むことにより特定以上の粘度を有する下地塗料が、汎用の印刷法においても細線パターンを精度良く印刷することができる下地塗料となり得、また、該下地塗料によりパターン形成された塗膜層上における、無電解めっき法による金属めっき膜形成においてめっき析出性に優れ、即ち、塗膜層のパターンに従った忠実な金属めっき膜を形成し、且つ密着性に優れるめっき物の製造を可能とする下地塗料となり得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)基材上に無電解めっき法によりパターン化された金属膜を形成するための下地塗料であって、
前記下地塗料は、導電性又は還元性の高分子微粒子、バインダー及び無機系フィラーを含み、前記導電性又は還元性の高分子微粒子と前記バインダーとの質量比は、1:11ないし1:60の範囲であり且つ50cps以上の粘度を有する
下地塗料、
(2)導電性又は還元性の高分子微粒子の固形分比が5質量%以下となる該微粒子の分散液に、前記導電性又は還元性の高分子微粒子1質量部に対して11ないし60質量部のバインダーを添加することにより製造される、50cps以上の粘度を有する前記(1)記載の下地塗料、
(3)前記無機系フィラーは、カーボンブラック、酸化チタン又はシリカ粒子である前記
(1)又は(2)記載の下地塗料、
(4)前記バインダーと前記無機系フィラーとの質量比は、1:0.1ないし1:1.5の範囲である前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載の下地塗料。
(5)前記高分子微粒子が還元性高分子微粒子である前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載の下地塗料、
(6)前記高分子微粒子が導電性高分子微粒子である前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載の下地塗料、
(7)基材上に、前記(5)に記載の下地塗料をパターン印刷し、これにより形成された塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることによるパターン化されためっき物の製造方法、
(8)基材上に、前記(6)に記載の下地塗料をパターン印刷し、これにより形成された塗膜層中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性とした後、該塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることによるパターン化されためっき物の製造方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、汎用の印刷法においても細線パターンを精度良く印刷することができる下地塗料であって、該下地塗料によりパターン形成された塗膜層上における、無電解めっき法による金属めっき膜形成においてめっき析出性に優れ、即ち、塗膜層のパターンに従った忠実な金属めっき膜を形成し、且つ密着性に優れるめっき物の製造を可能とする下地塗料が提供される。
本発明は、無機系フィラーを高分子微粒子分散液中に添加すると、多量のバインダーを添加しても、無電解めっき法において優れためっき析出性が維持される下地塗料となり得ることを見出したことによるものである。
しかし、上記のように無機系フィラーの添加により、多量のバインダーを添加しても、無電解めっき法において優れためっき析出性が維持される理由に付いては、今のところ不明である。
【0012】
本発明はまた、上記下地塗料を使用することにより、汎用の印刷法を用いても、細線パターンの金属めっき膜を精度良く且つ優れた密着性を伴って無電解めっき法により形成することができるめっき物の製造方法にも関する。
上記方法は、工業的に有利な汎用の印刷法を用いることができ、且つ非常に簡易な方法で、密着性に優れ且つ精度良く細線パターンの金属めっき膜が形成されためっき物を製造できるため、非常に優れた方法といえる。
本発明のめっき物の製造方法においては、還元性高分子微粒子だけでなく、導電性高分子微粒子を用いた下地塗料を用いても同様に行うことができる。この場合、無電解めっきを行う前に、導電性高分子微粒子を脱ドープして還元性にしておく必要があるが、得られるめっき物においては、薄い層(導電性高分子微粒子層)においても優れた密着性及び均一性を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の下地塗料は、導電性又は還元性の高分子微粒子、バインダー及び無機系フィラーを含み、前記導電性又は還元性の高分子微粒子と前記バインダーとの質量比は、1:11ないし1:60の範囲であり且つ50cps以上の粘度を有するものである。
【0014】
本発明に使用する還元性高分子微粒子は、0.01S/cm未満の導電率を有するπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが
挙げられる。
また、還元性高分子微粒子としては、0.005S/cm以下の導電率を有する高分子微粒子が好ましい。
還元性高分子微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる還元性高分子微粒子を使用することもできる。
還元性高分子微粒子は、有機溶媒に分散された分散液として使用されるが、該還元性高分子微粒子は、分散液中における分散安定性を維持するために、固形分として該分散液の質量の5質量%以下(固形分比)となるようにする。
還元性高分子微粒子を分散する有機溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0015】
本発明に使用する導電性高分子微粒子としては、導電性を有するπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。
導電性高分子微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる導電性高分子微粒子を使用することもできる。
導電性高分子微粒子は、有機溶媒に分散された分散液として使用されるが、該導電性高分子微粒子は、分散液中における分散安定性を維持するために、固形分として該分散液の質量の5質量%以下(固形分比)となるようにする。
導電性高分子微粒子を分散する有機溶媒としては、還元性高分子微粒子を分散する有機溶媒と同様のものを用いることができる。
【0016】
本発明に使用するバインダーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、
酢酸ビニル、ABS樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステ
ル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
使用するバインダー量は、導電性又は還元性の高分子微粒子1質量部に対して11質量部以上使用することができ、具体的には、導電性又は還元性の高分子微粒子1質量部に対して11質量部ないし60質量部の範囲である。バインダーが60質量部を超えると金属めっきが析出しにくくなる場合があり、バインダーが11質量部未満であると、塗料の粘度を上げ難くなる。
【0017】
本発明に使用する無機系フィラーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、酸化チタン及びシリカ粒子等が挙げられる。
無機フィラーの使用量は、特に、限定されるものではないが、バインダー1質量部に対して0.1ないし1.5質量部の範囲であるのが好ましい。
無機フィラーの使用量が、バインダー1質量部に対して1.5質量部を超える場合、基材と塗膜層間での剥離が起こり易くなり、良好な密着性が得られ難くなることがあり、また、0.1質量部未満となる場合、金属めっきが析出しにくくなることがある。
【0018】
本発明の下地塗料は、上記成分に加えて溶媒を含み得る。
溶媒としては、特に限定されるものではないが、具体的には、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n−オクタン等の鎖状飽和炭
化水素類、メタノール、エタノール、n−オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、メチルセルソルブ等の多価アルコール誘導体溶媒、ミネラルスピリット等の炭化水素溶媒、ジヒドロターピネオール、D−リモネン等のテルペン類に分類される溶媒を用いることもできる。
【0019】
更に、前記塗料は用途や塗布対象物等の必要に応じて、分散安定剤、増粘剤、インキバインダ等の樹脂を加えることも可能である。
本発明の下地塗料は、上述の成分を含むことにより、その溶液の粘度を50cps以上とする。
上記粘度が50cps未満となる場合、汎用の印刷機、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、ドライオフセット印刷、パッド印刷等により、線幅が1.0mm以下の細線のパターンを精度良く印刷することができなくなる。
【0020】
本発明はまた、基材上に、上記で製造される還元性高分子微粒子を用いた下地塗料をパターン印刷し、これにより形成された塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることによるパターン化されためっき物の製造方法に関する。
【0021】
本発明に使用することができる基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ガラス、金属等が挙げられる。
また、基材の形状は特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状が挙げられる。
他にも、基材として、例えば、射出成形などにより樹脂を成形した樹脂成形品が挙げられる。そして、この樹脂成形品に本発明のめっき物を設けることにより、例えば、自動車向けの装飾めっき品を作成することができたり、或いは、ポリイミド樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂からなるフィルム上に本発明のめっき物をパターン状で設けることにより、例えば、電気回路品を作成することができる。
【0022】
還元性高分子微粒子を用いた下地塗料を用いるパターン印刷としては、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、ドライオフセット印刷、パッド印刷等が挙げられる。
印刷方法は、各印刷機を用いる通常の印刷法によって行うことができる。
上記の印刷を行うことにより、下地塗料を精度良く線幅が1.0mm以下の細線パターンの塗膜層として形成することができる。
【0023】
上記のようにして製造された、パターン化された塗膜層が形成された基材を無電解めっき法によりめっき物とするが、該無電解めっき法は、通常知られた方法に従って行うことができる。
即ち、前記基材を塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬することによりめっき物を得ることができる。
【0024】
触媒液は、無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属(触媒金属)を含む溶液であり、触媒金属としては、パラジウム、金、白金、ロジウム等が挙げられ、これら金属は単体でも化合物でもよく、触媒金属を含む安定性の点からパラジウム化合物が好ましく、その中でも塩化パラジウムが特に好ましい。
好ましい、具体的な触媒液としては、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0
.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
上記の操作により、塗膜中の還元性高分子微粒子は、結果的に、導電性高分子微粒子となる。
【0025】
上記で処理された基材は、金属を析出させるためのめっき液に浸され、これにより無電解めっき膜が形成される。
めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。
即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル等、全て適用することができるが、銅が好ましい。
無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)等が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、1ないし30分、好ましくは、5ないし15分である。
得られためっき物は、使用した基材のTgより低い温度範囲において、数時間以上、例えば、2時間以上養生するのが好ましい。
【0026】
本発明はまた、基材上に、上記で製造される導電性高分子微粒子を用いた下地塗料をパターン印刷し、これにより形成された塗膜層中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性とした後、該塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることによるパターン化されためっき物の製造方法にも関する。
【0027】
上記の方法において、パターン印刷による塗膜層の形成及び無電解めっき法による金属めっき膜の形成は、上述の還元性高分子微粒子を用いるめっき物の製造方法と同様に行うことができる。
【0028】
上記製造方法における脱ドープ処理としては、還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン等のアルキルアミンボラン、及び、ヒドラジン等を含む溶液で処理して還元する方法、又は、アルカリ性溶液で処理する方法が挙げられる。
【0029】
操作性及び経済性の観点からアルカリ性溶液で処理するのが好ましい。
特に、導電性高分子微粒子を含む塗膜層は薄くできるため、緩和な条件下で短時間のアルカリ処理により脱ドープを達成することが可能である。
例えば、1M 水酸化ナトリウム水溶液中で、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃の温度で、1ないし30分間、好ましくは3ないし10分間処理される。
【0030】
以上の様に、本発明の方法により、還元性高分子微粒子又は導電性高分子微粒子を含む下地塗料を用いてパターン化されためっき物を製造することができる。
上記製造方法により製造されためっき物は優れた密着性を有する。
尚、上記めっき物は、形成された無電解めっき膜上に、電解めっきにより、同一又は異なる金属を更にめっきすることもできる。
また、金属めっき膜は、基材の両面に形成されてもよい。
【0031】
以下に、塗膜層を形成するために使用され得る導電性又は還元性の高分子微粒子を製造するための具体的な方法を記載する。
【0032】
(1)還元性高分子微粒子の製造方法
還元性高分子微粒子は、有機溶媒と水とアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性
剤とを混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、π−共役二重結合を有するモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより製造することができる。
【0033】
π−共役二重結合を有するモノマーとしては、還元性高分子を製造するために使用されるモノマーであれば特に限定されないが、例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール及び3−フェニルナフチルアミノピロール等のピロール誘導体、アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン及びp−メチルアニリン等のアニリン誘導体、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体が挙げられ、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくはピロールが挙げられる。
【0034】
また前記製造に用いるアニオン系界面活性剤としては、種々のものが使用できるが、疎水性末端を複数有するもの(例えば、疎水基に分岐構造を有するものや、疎水基を複数有するもの)が好ましい。このような疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、安定したミセルを形成させることができ、重合後において水相と有機溶媒相との分離がスムーズであり、有機溶媒相に分散した還元性高分子微粒子が入手し易い。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
【0035】
反応系中でのアニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対し0.05mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.005mol〜0.03molである。0.05mol以上では添加したアニオン性界面活性剤がドーパントとして作用し、得られる微粒子は導電性を発現するため、これを用いて無電解めっきを行うためには脱ドープの工程が必要となる。
【0036】
ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキルグルコシド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビダン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が挙げられる。これらを一種類または複数混ぜて使用してもよい。特に安定的にO/W型エマルションを形成するものが好ましい。
【0037】
反応系中でのノニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1mo
lに対し、アニオン系界面活性剤と足して0.2mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.15molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では重合後において、水相と有機溶媒相との分離が困難になり、有機溶媒相にある還元性高分子微粒子を得る事ができなくなる事から好ましくない。
【0038】
前記製造において乳化液の有機相を形成する有機溶媒は疎水性であることが好ましい。なかでも、芳香族系の有機溶媒であるトルエンやキシレンは、O/W型エマルションの安定性およびπ−共役二重結合を有するモノマーとの親和性の観点から好ましい。両性溶媒でもπ−共役二重結合を有するモノマーの重合を行うことはできるが、生成した還元性高分子微粒子を回収する際の有機相と水相との分離が困難になる。
【0039】
乳化液における有機相と水相との割合は、水相が75体積%以上であることが好ましい。水相が20体積%以下ではπ−共役二重結合を有するモノマーの溶解量が少なくなり、生産効率が悪くなる。
【0040】
前記製造で使用する酸化剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸およびクロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素のような過酸化物が使用できる。これらは単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。塩化第二鉄等のルイス酸でもπ−共役二重結合を有するモノマーを重合できるが、生成した粒子が凝集し、微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
【0041】
反応系中での酸化剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、ポリマー微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上では凝集してポリマー微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
【0042】
前記ポリマー微粒子の製造方法は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)π−共役二重結合を有するモノマーを乳化液中に分散させる工程、
(c)モノマーを酸化重合させる工程、
(d)有機相を分液しポリマー微粒子を回収する工程。
【0043】
前記各工程は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。例えば、乳化液の調製時に行う混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃で、好ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
【0044】
酸化重合反応が停止されると、反応系は有機相と水相の二相に分かれるが、この際に未反応のモノマー、酸化剤および塩は水相中に溶解して残存する。ここで有機相を分液回収し、イオン交換水で数回洗浄すると、有機溶媒に分散した還元性高分子微粒子を入手することができる。
【0045】
上記の製造法により得られるポリマー微粒子は、主としてπ−共役二重結合を有するモノマー誘導体のポリマーよりなり、そしてアニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性
剤を含む微粒子である。そしてその特徴は、微細な粒径を有し、有機溶媒中で分散可能であることである。
ポリマー微粒子は球形の微粒子となるが、その平均粒径は、10〜100nmとするのが好ましい。
上記のように平均粒径の小さな微粒子にすることで、微粒子の表面積が極めて大きくなり、同一質量の微粒子でも、より多くの触媒金属を吸着できるようになり、それにより塗膜層の薄膜化が可能となる。
得られたポリマー微粒子の導電率は0.01S/cm未満であり、好ましくは、0.005S/cm以下である。
【0046】
こうして得られた有機溶媒に分散した還元性高分子微粒子は、そのままで、下地塗料の還元性高分子微粒子成分として使用することができる。
【0047】
(2)導電性高分子微粒子の製造方法
使用する導電性高分子微粒子は、例えば、有機溶媒と水とアニオン系界面活性剤とを混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、π−共役二重結合を有するモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより製造することができる。
【0048】
π−共役二重結合を有するモノマー及びアニオン系界面活性剤としては還元性微粒子の製造の際に例示したものと同様のものが挙げられるが、好ましくは、ピロール、アニリン、チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくはピロールが挙げられる。
【0049】
反応系中でのアニオン系界面活性剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対し0.2mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.05mol〜0.15molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では得られた導電性高分子微粒子に導電性の湿度依存性が生じてしまう場合がある。
【0050】
前記製造において乳化液の有機相を形成する有機溶媒は疎水性であることが好ましい。なかでも、芳香族系の有機溶媒であるトルエンやキシレンは、O/W型エマルションの安定性およびモノマーとの親和性の観点から好ましい。両性溶媒でもπ−共役二重結合を有するモノマーの重合を行うことはできるが、生成した導電性高分子微粒子を回収する際の有機相と水相との分離が困難になる。
【0051】
乳化液における有機相と水相との割合は、水相が75体積%以上であることが好ましい。水相が20体積%以下ではπ−共役二重結合を有するモノマーの溶解量が少なくなり、生産効率が悪くなる。
【0052】
前記製造で使用する酸化剤としては、還元性微粒子の製造の際に例示したものと同様のものが挙げられるが、特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
反応系中での酸化剤の量は、π−共役二重結合を有するモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、導電性高分子微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上では凝集して導電性高分子微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化する。
【0053】
前記導電性高分子微粒子の製造方法は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)アニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)π−共役二重結合を有するモノマーを乳化液中に分散させる工程、
(c)モノマーを酸化重合しアニオン系界面活性剤にポリマー微粒子を接触吸着させる工程、
(d)有機相を分液し導電性高分子微粒子を回収する工程。
【0054】
前記各工程は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。例えば、乳化液の調製時に行う混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃で、好ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
【0055】
酸化重合反応が停止されると、反応系は有機相と水相の二相に分かれるが、この際に未反応のモノマー、酸化剤および塩は水相中に溶解して残存する。ここで有機相を分液回収し、イオン交換水で数回洗浄すると、有機溶媒に分散した導電性高分子微粒子を入手することができる。
【0056】
上記の製造法により得られる導電性高分子微粒子は、主としてπ−共役二重結合を有するモノマー誘導体よりなり、そしてアニオン系界面活性剤を含む微粒子である。そしてその特徴は、微細な粒径と、有機溶媒中で分散可能であることである。
ポリマー微粒子は球形の微粒子となるが、その平均粒径は、10〜100nmとするのが好ましい。
上記のように平均粒径の小さな微粒子にすることで、微粒子の表面積が極めて大きくなり、同一質量の微粒子でも、脱ドープ処理して還元性とした際に、より多くの触媒金属を吸着できるようになり、それにより塗膜層の薄膜化が可能となる。
【0057】
こうして得られた有機溶媒に分散した導電性高分子微粒子は、そのままで、下地塗料の導電性高分子微粒子成分として使用することができる。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
製造例1:還元性ポリピロール微粒子分散液の調製
アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P(花王株式会社)0.42mmol、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤エマルゲン409P(花王株式会社)2.1mmol、トルエン10mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌した。得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、1時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム6mmolを加えて2時間重合反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した還元性能を有する還元性ポリピロール微粒子を得た。尚、得られたトルエン分散液中の還元性ポリピロール微粒子の固形分は、5.0%であった。
【0059】
製造例2:還元性ポリアニリン微粒子分散液の調製
アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P(花王株式会社)0.42mmol、ソルビタン脂肪酸エステル系ノニオン界面活性剤レオドールSP−030V(花王株式会社)0.424mmolとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名:レオドール
TW−0320V)2.12mmol、トルエン10mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌した。得られた乳化液にアニリンモノマー21.2mmolを加え、1時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム4mmolを加えて2時間重合反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した還元性能を有する還元性ポリアニリン微粒子を得た。尚、得られたトルエン分散液中の還元性ポリアニリン微粒子の固形分は、5.0%であった。
【0060】
実施例1:下地塗料の調製
バインダー:VYLON23CS:ポリエステル系(東洋紡績株式会社製)と無機系フィラー:ブラック#5500:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製)とを質量比がバインダー:無機系フィラー=11:1.1となるように配合し、ビーズ入りホモミキサーにて分散させた。
次に、製造例1で調製した還元性ポリピロール微粒子分散液(固形分5%)に、前記で調製したバインダー及び無機フィラーを含む分散液を、還元性微粒子:バインダーの質量比が1:11となるように加え、さらに最終固形分が25%となるように、シクロヘキサノンを混合することにより下地塗料を得た。
尚、得られた下地塗料の粘度をB型粘度計により、25℃の温度条件下で測定した。
【0061】
実施例2ないし6:下地塗料の調製
表1に示す配合比にて、バインダーと無機系フィラーとを添加した以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0062】
実施例7:下地塗料の調製
無機フィラー:TR−700:酸化チタン(富士チタン工業株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様な方法にて下地塗料を得た。
【0063】
実施例8:下地塗料の調製
無機フィラー:AEROSIL90:シリカ粒子(日本エアロジル株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様な方法にて下地塗料を得た。
【0064】
実施例9:下地塗料の調製
製造例2で調製した還元性アニリン微粒子分散液(固形分5%)を用いた以外は実施例2と同様な方法にて下地塗料を得た。
【0065】
実施例10−12:下地塗料の調製
表1に示す配合比にて、バインダーと無機系フィラーとを添加した以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0066】
比較例1、2、4:下地塗料の調製
無機系フィラーを用いず、且つ表1に示す使用量のバインダーを添加した以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0067】
比較例3、5、6:下地塗料の調製
表1に示す配合比にて、バインダーと無機系フィラーとを添加した以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0068】
1.グラビア印刷
基材として、厚み50μmの易接着処理ポリエステルフィルム A4100を用い、該基材上に、実施例1ないし4、9及び10並びに比較例1、2及び4ないし6で調製した下地塗料をグラビア校正機にてパターン印刷した。
尚、L/S=1.0mm/1.0mmのストレートラインを形成する版にて印刷を行い、100℃の熱風オーブンで10分間加熱乾燥を行った。
【0069】
2.スクリーン印刷
基材として、厚み50μmの易接着処理ポリエステルフィルム A4100を用い、該基材上に、実施例5ないし8、11及び12並びに比較例3で調製した下地塗料をスクリ
ーン印刷機にてパターン印刷した。
尚、L/S=1.0mm/1.0mmのストレートラインを形成する版にて印刷を行い、100℃の熱風オーブンで10分間加熱乾燥を行った。
【0070】
2.パッド印刷
基材として、厚み50μmの易接着処理ポリエステルフィルム A4100を用い、該基材上に、実施例5ないし8、11及び12並びに比較例3で調製した下地塗料をパッド印刷機にてパターン印刷した。
尚、L/S=1.0mm/1.0mmのストレートラインを形成する版にて印刷を行い、100℃の熱風オーブンで10分間加熱乾燥を行った。
【0071】
無電解めっき
実施例1ないし12並びに比較例2、3及び6で作成された、パターン化された印刷膜が形成されたフィルムを0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、洗浄水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で20分間浸漬することにより、印刷膜が形成された部分にのみ銅めっきが施されたポリエステルフィルムが得られた。
尚、比較例1、4及び5で作成された、パターン化された印刷膜が形成されたフィルムは、印刷されたパターンが、L/S=1.0mm/1.0mm(±10%以内)の基準外であったため、無電解めっきを行わなかった。
【0072】
評価試験
実施例1〜12及び比較例1〜6で作成した、パターン化された印刷膜が形成されたフィルムの印刷特性、無電解めっきによるめっき析出性及びめっき物の密着性を評価して表1に示した。
尚、評価方法は以下に示した通りである。
また、表1中、aないしfは、以下に示すものを意味し、“比率A:B”は、高分子微粒子とバインダーの質量比を意味し、“比率B:C”は、バインダーと無機系フィラーの質量比を意味する。
a:還元性ポリピロール微粒子
b:還元性ポリアニリン微粒子
c:バインダー:VYLON23CS:ポリエステル系(東洋紡績株式会社製)
d:無機系フィラー:ブラック#5500:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製)
e:無機フィラー:TR−700:酸化チタン(富士チタン工業株式会社製)
f:無機フィラー:AEROSIL90:シリカ粒子(日本エアロジル株式会社製)
評価
<印刷特性>
グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷のいずれかにより印刷されたパターンが以下の基準内であれば○、基準外であれば×とした。
基準:L/S=1.0mm/1.0mm(±10%以内)
<めっき析出性>
完全に被覆され、基材露出なしのものを○、10%未満基材の露出有りのものを△、10%以上基材の露出有りのものを×とした。
<密着性>
無電解めっきが施されたパターン印刷基材にセロハンテープを貼り付け、剥離することによりめっき膜の密着性を評価した。テープで剥離しないものを○、10%未満剥離有りを△、10%以上剥離するものを×とした。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に無電解めっき法によりパターン化された金属膜を形成するための下地塗料であって、
前記下地塗料は、導電性又は還元性の高分子微粒子、バインダー及び無機系フィラーを含み、前記導電性又は還元性の高分子微粒子と前記バインダーとの質量比は、1:11ないし1:60の範囲であり且つ50cps以上の粘度を有する
下地塗料。
【請求項2】
導電性又は還元性の高分子微粒子の固形分比が5質量%以下となる該微粒子の分散液に、前記導電性又は還元性の高分子微粒子1質量部に対して11ないし60質量部のバインダーを添加することにより製造される、50cps以上の粘度を有する請求項1記載の下地塗料。
【請求項3】
前記無機系フィラーは、カーボンブラック、酸化チタン又はシリカ粒子である請求項1又は2記載の下地塗料。
【請求項4】
前記バインダーと前記無機系フィラーとの質量比は、1:0.1ないし1:1.5の範囲である請求項1ないし3の何れか1項に記載の下地塗料。
【請求項5】
前記高分子微粒子が還元性高分子微粒子である請求項1ないし4の何れか1項に記載の下地塗料。
【請求項6】
前記高分子微粒子が導電性高分子微粒子である請求項1ないし4の何れか1項に記載の下地塗料。
【請求項7】
基材上に、請求項5に記載の下地塗料をパターン印刷し、これにより形成された塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることによるパターン化されためっき物の製造方法。
【請求項8】
基材上に、請求項6に記載の下地塗料をパターン印刷し、これにより形成された塗膜層中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性とした後、該塗膜層に無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることによるパターン化されためっき物の製造方法。

【公開番号】特開2010−95776(P2010−95776A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269798(P2008−269798)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】