パターン形成体およびその製造方法
【課題】 本発明は、プラズマ照射を利用して、親液性および撥液性のパターンを形成する際、目的とする領域のみ、高精細に撥液性とされた、高品質なパターン形成体、およびその製造方法を提供することを主目的としている。
【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明は、基材と、前記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、前記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明は、基材と、前記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、前記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液性を有する領域および親液性を有する領域が高精細に形成されたパターン形成体、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の種々のパターンを形成するパターン形成体の製造方法としては、各種のものが製造されている。
【0003】
高精細なパターンを形成する方法として、基材上に塗布したフォトレジスト層にパターン露光を行い、露光後、フォトレジストを現像し、さらにエッチングを行ったり、フォトレジストに機能性を有する物質を用いて、フォトレジストの露光によって目的とするパターンを直接形成する等のフォトリソグラフィーによるパターン形成体の製造方法が知られている。
【0004】
フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成は、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタの着色パターンの形成、マイクロレンズの形成、精細な電気回路基板の製造、パターンの露光に使用するクロムマスクの製造等に用いられているが、これらの方法によっては、フォトレジストを用いると共に、露光後に液体現像液によって現像を行ったり、エッチングを行う必要があるので、廃液を処理する必要が生じる等の問題点があり、またフォトレジストとして機能性の物質を用いた場合には、現像の際に使用されるアルカリ液等によって劣化する等の問題点もあった。
【0005】
また、カラーフィルタ等の高精細なパターンを印刷等によって形成することも行われているが、印刷で形成されるパターンには、位置精度等の問題があり、高精度なパターンの形成は困難であった。
【0006】
そこで、基材上に着色層を形成する着色層形成用塗工液を留めるためのバンクを形成し、このバンクにフッ素化合物を導入ガスとしてプラズマ処理をし、バンクを撥液性としてインクジェット法等により着色層等の機能性部を形成する方法が提案されている(特許文献1)。この方法によれば、上記プラズマ処理によって、有機物であるバンクのみにフッ素を導入することができ、また無機物からなる基材上にはフッ素を導入しないものとすることができる。これにより、バンクが形成されていない開口部にのみ、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を塗布等して、機能性部を形成することができるのである。
【0007】
しかしながらこの方法において、上記開口部にバンクを形成した際の残渣等の不純物が付着している場合、上記プラズマ処理によってこの不純物にフッ素が導入されてしまうこととなる。これにより、上記機能性部形成用塗工液を塗布した際、開口部上で機能性部形成用塗工液が濡れ広がることが阻害され、例えば機能性部として着色層を形成した場合、着色層に白抜け等の問題が生じる場合があった。
【0008】
【特許文献1】特開2000−187111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、プラズマ照射を利用して、親液性および撥液性のパターンを形成する際、目的とする領域のみ、高精細に撥液性とされた、高品質なパターン形成体、およびその製造方法の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記プラズマ照射工程により、上記樹脂層にフッ素を導入することが可能であり、上記樹脂層表面を撥液性とすることができる。また本発明によれば、プラズマ照射の際に発生する光によって、光触媒含有層中の光触媒を励起させることができることから、樹脂層を形成した際の残渣等、樹脂層により区画された開口部に存在する撥液性物質を除去することができる。したがって、上記樹脂層が撥液性を有するものとすることができ、樹脂層と、上記開口部との濡れ性の差を利用して高精細な機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができる。
【0012】
上記発明においては、上記光触媒含有層上に、シランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層が形成され、上記中間層上に上記樹脂層がパターン状に形成されていてもよい。この場合、上記中間層が露出している領域では、プラズマ照射によってシランカップリング剤またはその重合体のSi−C結合が切断されてSi元素に結合していた有機基が除去され、その部分にOH基等が導入されることとなる。したがって、上記樹脂層表面と、中間層が露出した領域との濡れ性の差を大きなものとすることができ、この濡れ性の差を利用して、上記中間層が露出した領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。またさらにこの場合、上記中間層によって、樹脂層やこのパターン形成体上に形成される機能性部と、光触媒含有層との密着性を良好なものとすることができるという利点も有している。
【0013】
また、上記発明においては、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程を有することが好ましい。これにより、上記樹脂層により区画された開口部に存在する樹脂層を形成した際の残渣や、上記プラズマ照射工程によりその残渣に導入されたフッ素等の撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用によって除去することができる。したがって、親液性領域と撥液性領域との濡れ性の差をより大きなものとすることができ、このような濡れ性の差を利用して、上記親液性領域にのみに、より高精細な機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができるからである。
【0014】
さらに、上記発明においては、上記樹脂層が、少なくとも遮光材料を含有する遮光部であってもよい。これにより、例えば本発明により製造されたパターン形成体の親液性領域上に着色層を形成してカラーフィルタを製造する際、上記樹脂層をブラックマトリクスとして用いることができ、効率よくカラーフィルタを製造すること等が可能となるからである。
【0015】
本発明は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、上記光触媒含有層の上記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面にフッ素原子を含有しない親液性領域とされていることを特徴とするパターン形成体を提供する。
【0016】
本発明によれば、上記撥液性樹脂層の表面にフッ素が含有されており、また上記光触媒が露出している領域においては、フッ素が含有されていないものとされている。そのため、上記撥液性樹脂層表面と、光触媒が露出している領域、すなわち親液性領域との濡れ性の差が大きく、これらの表面の濡れ性の差を利用して、上記光触媒含有層が露出している領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。また、本発明においては、パターン形成体の開口部に着色層等の機能性部が形成されてカラーフィルタ等の機能性素子とされた場合に、光触媒含有層の表面がフッ素原子を含有しないものであるので、その後の工程等において、光触媒含有層の表面のフッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることを防止することができるといった利点を有する。
【0017】
また本発明は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、シランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、上記中間層上にパターン状に形成され、表面にフッ素が含有されている撥液性樹脂層とを有し、上記中間層の上記撥液性樹脂層が形成されていない領域が親液性領域であることを特徴とするパターン形成体を提供する。
【0018】
本発明によれば、上記撥液性樹脂層の表面にフッ素が含有されていることから、上記撥液性樹脂層表面と、中間層が露出している領域、すなわち親液性領域との濡れ性の差を利用して、上記中間層が露出している領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。
【0019】
上記発明においては、上記中間層の上記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面の水との接触角が60°以下である親液性領域とされていることが好ましい。これにより、上記撥液性樹脂層上と、上記中間層が露出した領域との濡れ性の差を大きなものとすることができ、より高精細なパターン状に機能性部を形成することが可能となるからである。
【0020】
上記発明においては、上記撥液性樹脂層が、少なくとも遮光材料を含有する遮光部であってもよい。これにより、例えば本発明のパターン形成体の親液性領域上に着色層を形成してカラーフィルタを製造する際、上記樹脂層をブラックマトリクスとして用いること等が可能となるからである。
【0021】
また本発明は、上述したパターン形成体の上記親液性領域上に、着色層が形成されていることを特徴とするカラーフィルタ、上述したパターン形成体の上記親液性領域上に、有機エレクトロルミネッセント(以下有機ELともいう。)層が形成されていることを特徴とする有機EL素子、および上述したパターン形成体の上記親液性領域上に、レンズが形成されていることを特徴とするマイクロレンズを提供する。上述したパターン形成体には、撥液性樹脂層が形成された領域、すなわち撥液性領域と、上記親液性領域とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、上記親液性領域のみに高精細に各種機能性部が形成された機能性素子とすることができる。
【0022】
さらに本発明は、上述したパターン形成体の上記親液性領域上が、細胞を培養するために用いられることを特徴とする細胞培養用基板を提供する。本発明によれば、上記パターン形成体には、撥液性領域と親液性領域とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、上記親液性領域のみに高精細なパターン状に細胞を培養する細胞培養用基板とすることができるのである。
【0023】
本発明は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記遮光部上を撥液性とするプラズマ照射工程と、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記遮光部により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程とを有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0024】
本発明によれば、上記プラズマ照射工程により、有機物にフッ素を導入することが可能であることから、上記遮光部上を撥液性領域とすることができる。また、上記プラズマ照射工程後、撥液性物質除去工程を行うことにより、上記遮光部により区画された開口部に存在する遮光部を形成した際の残渣や、上記プラズマ照射工程によりその残渣に導入されたフッ素等の撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用によって除去することができる。これにより、上記遮光部のみが撥液性領域とされたものとすることができ、高精細な機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができる。
【0025】
上記発明においては、上記撥液性物質除去工程が、基体および、上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層を有する光触媒処理層側基板の上記光触媒処理層と、上記開口部とを間隙をおいて配置した後、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射する工程としてもよい。これにより、上記撥液性物質除去工程で、光触媒含有層中に含有される光触媒の作用だけでなく、光触媒処理層中に含有される光触媒の作用によっても、上記遮光部により区画された開口部に存在する撥液性物質を除去することができる。したがって、より効率よく撥液性物質除去工程を行うことができるからである。
【0026】
また、上記発明においては、上記撥液性物質除去工程が、上記基材側からエネルギーの照射が行われるものであってもよい。この場合、基材側から全面にエネルギーを照射した場合であっても、上記遮光部が形成されていることから、遮光部により区画された開口部のみにエネルギーを照射することができる。
【0027】
またさらに、上記発明においては、上記撥液性物質除去工程が、上記遮光部側からエネルギーの照射が行われるものであってもよい。この場合、基材や光触媒含有層が上記エネルギーを透過させないものであっても、上記開口部の撥液性物質を除去することができる。
【0028】
本発明はまた、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有し、上記光触媒含有層がフッ素原子を含有しないものであることを特徴とするパターン形成体を提供する。
【0029】
本発明によれば、パターン形成体の開口部に着色層等の機能性部が形成されてカラーフィルタ等の機能性素子とされた場合に、光触媒含有層がフッ素原子を含有しないものであるので、その後の工程等において、光触媒含有層中のフッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることを防止することができるといった利点を有する。
【0030】
上記発明においては、上記光触媒含有層の膜厚が10nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。これにより、パターン形成体自体の光透過性を良好とすることができ、さらにヘイズ値を低下させることができるので、例えば本発明のパターン形成体を用いてカラーフィルタ等の表示素子とした場合に利点を有するからである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、上記樹脂層が撥液性とされたものとすることができ、樹脂層および開口部の液体との接触角の差を利用して、高精細な機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、撥液性を有する領域および親液性を有する領域が高精細に形成されたパターン形成体の製造方法、およびパターン形成体に関するものである。以下、それぞれ詳しく説明する。
【0033】
A.パターン形成体の製造方法
まず、本発明のパターン形成体の製造方法について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法には、以下の2つの態様がある。以下、それぞれについてわけて説明する。
【0034】
1.第1の態様
まず、本発明のパターン形成体の製造方法の第1の態様について説明する。本態様におけるパターン形成体の製造方法は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするものである。
【0035】
本態様のパターン形成体の製造方法は、例えば図1に示すように、基材1とその基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上にパターン状に形成された樹脂層3とを有するパターニング用基板4に、プラズマ5を照射するプラズマ照射工程を行って、パターン形成体を製造する方法である。この際、プラズマ照射は、樹脂層3側からフッ素化合物を導入ガスとして行われる。
【0036】
フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射した場合、有機物にフッ素を導入することができ、表面を撥液性とすることができる。したがって、本態様によれば上記プラズマ照射工程においてプラズマ照射を行うことにより、樹脂層上を撥液性領域とすることができる。しかしながら、一般的には上記開口部に、上記樹脂層を形成した際の残渣等が存在しており、上記プラズマ照射工程でこの残渣等にもフッ素が導入されてしまうことから、樹脂層だけでなく、開口部上にも撥液性の領域が形成されてしまう場合があった。
【0037】
本態様においては、上記光触媒含有層が形成されていることから、プラズマ照射の際に発生する光によって、上記開口部(例えば図1においてaで示される部分)に露出している光触媒含有層中の光触媒を励起させることが可能である。したがって、プラズマ照射により樹脂層表面にフッ素を導入するのと同時に、光触媒の作用によって、上記開口部表面に付着した残渣や、この残渣に導入されたフッ素等、開口部に存在する撥液性物質を除去することができる。これにより、上記樹脂層上を撥液性、上記開口部上を親液性として用いることが可能となり、上記樹脂層上および開口部上の濡れ性の差を利用して、種々の機能性部を高精細に形成可能なパターン形成体とすることができるのである。以下、本態様のパターン形成体の製造方法プラズマ照射工程、およびその他の工程について詳しく説明する。
【0038】
a.プラズマ照射工程
まず、本態様におけるプラズマ照射工程について説明する。本態様におけるプラズマ照射工程は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とする工程である。
【0039】
本態様においては、後述するように、パターニング用基板の樹脂層として、少なくとも樹脂を含有するものが用いられることから、本工程によりプラズマ照射をした場合、上記樹脂層上にフッ素を導入することができ、樹脂層上を撥液性を有する領域として用いることが可能となるのである。また、本工程によりプラズマ照射をした場合、プラズマ照射の際に発生する光によって、樹脂層により区画された開口部における光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記開口部に存在する撥液性物質を効率的に除去することが可能である。以下、本工程に用いられるパターニング用基板、およびプラズマの照射方法についてそれぞれ説明する。
【0040】
(パターニング用基板)
まず、本工程に用いられるパターニング用基板について説明する。本工程に用いられるパターニング用基板は、基材と、その基材上に形成された光触媒含有層と、その光触媒含有層上にパターン状に形成された樹脂層とを有するものであり、上記樹脂層上に後述するプラズマ照射によってフッ素を導入することが可能なものであれば特に限定されるものではない。このようなパターニング用基板として、例えば基材と光触媒含有層との間に、密着性を向上させるためのアンカー層等が形成されていてもよく、また例えば光触媒含有層と樹脂層との間に密着性を良好なものとするためのプライマー層等が形成されていてもよい。以下、本工程に用いられるパターニング用基板の各構成ごとに説明する。
【0041】
(1)樹脂層
本態様に用いられる樹脂層としては、樹脂を含有するものであり、その形状や膜厚等については、パターン形成体の用途や樹脂層の種類等によって、適宜選択される。
【0042】
このような樹脂層は、パターン形成体の用途に応じて適宜選択され、例えば透明性を有するものであってもよく、また遮光性を有するものであってもよい。また着色されているもの等であってもよい。また本態様においては、上記樹脂層の幅が、1μm以上、中でも5μm以上の幅を有することが好ましい。これにより、樹脂層を挟んで隣接する領域に機能性部を形成した場合であっても、これらの機能性部どうしがつながってしまうことを防止することができるからである。
【0043】
また、上記樹脂層の膜厚についても、本工程によりフッ素が導入されて撥液性を発現することが可能な膜厚であれば、特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途等に応じて適宜選択される。通常、このような膜厚としては、0.01μm〜1mm程度、中でも0.1μm〜0.1mm程度とすることができる。
【0044】
また、上記樹脂層の形成に用いられる材料としては、上述したような樹脂層を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。
【0045】
また、上記樹脂層の形成方法としては、上記材料からなる層をパターン状に形成する一般的な方法と同様とすることができ、例えば印刷法やフォトリソグラフィー法等を用いることができる。また、後述する光触媒含有層中にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料が含有されている場合には、樹脂層を形成するパターン状にエネルギーを照射することにより、上記光触媒含有層の液体との接触角をパターン状に変化させ、この濡れ性の差を利用して上記樹脂層を形成する方法等であってもよい。このような光触媒含有層を用いたパターニング方法としては、例えば特開2002−40230号公報に記載されている方法と同様とすることができる。
【0046】
ここで、本態様に用いられる樹脂層は、遮光材料を含有する遮光部であってもよい。この場合、例えば、本態様により製造されたパターン形成体を用いてカラーフィルタを製造する際、上記樹脂層をブラックマトリクスとして用いること等が可能となるという利点を有している。
【0047】
本態様において、このような遮光部を形成する方法としては、例えば、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法等が挙げられる。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0048】
また本態様においては、上記遮光部が熱転写法により形成されたものとすることもできる。遮光部を形成する熱転写法とは、通常、透明なフィルム基材の片面に光熱変換層と遮光部転写層を設けた熱転写シートを基材上に配置し、遮光部を形成する領域にエネルギーを照射することによって、遮光部転写層が基材上に転写されて遮光部が形成されることとなるものである。
【0049】
熱転写法により転写される遮光部は、通常、遮光材料と結着剤により構成されるものであり、遮光材料としては、カーボンブラック、チタンブラック等の無機粒子等を用いることができる。このような遮光材料の粒子径としては、0.01μm〜1.0μm、中でも0.03μm〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。
【0050】
また、結着剤としては、熱可塑性と熱硬化性とを有する樹脂組成とすることが好ましく、熱硬化性官能基を有し、かつ軟化点が50℃〜150℃の範囲内、中でも60℃〜120℃の範囲内である樹脂材料および硬化剤等により構成されることが好ましい。このような材料として具体的には、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物またはエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤との組み合わせ等が挙げられる。またエポキシ樹脂の潜在性硬化剤としては、ある一定の温度まではエポキシ基との反応性を有さないが、加熱により活性化温度に達するとエポキシ基との反応性を有する分子構造に変化する硬化剤を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂との反応性を有する酸性または塩基性化合物の中性塩や錯体、ブロック化合物、高融点体、マイクロカプセル封入物が挙げられる。また、上記遮光部中に、上記の材料の他に、離型剤、接着補助剤、酸化防止剤、分散剤等を含有させることもできる。
【0051】
(2)光触媒含有層
次に、本工程に用いられるパターニング用基板の光触媒含有層について説明する。本工程に用いられる光触媒含有層は、少なくとも光触媒を含有する層であり、本工程において、上記樹脂層により区画された開口部、すなわち光触媒含有層表面に存在する撥液性物質をプラズマ照射の際に発生する光に伴う光触媒の作用により除去することが可能なものであれば、特に限定されるものではない。また、後述する撥液性物質除去工程において、上記樹脂層により区画された開口部、すなわち光触媒含有層上に存在する撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することが可能なものであることが好ましい。これにより、エネルギー照射により、光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記光触媒含有層表面に付着した残渣や導入されたフッ素等の撥液性物質を効率的に除去することが可能となるからである。
【0052】
このような光触媒含有層としては、例えば光触媒のみからなる層であってもよく、また光触媒とバインダとを含有する層であってもよい。上記光触媒含有層がバインダを含有する場合、後述するプラズマ照射によりフッ素が導入される場合もあるが、後述する撥液性物質除去工程等により、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、上記フッ素等を除去することができるからである。また本態様においては、プラズマ照射の際に発生する光によって励起された光触媒の作用によっても、上記フッ素等を除去することも可能である。
【0053】
なお、上記光触媒含有層が光触媒のみからなる場合には、基材上の開口部に存在する撥液性物質等を除去する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。また、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。また、例えばバインダまたは添加剤としてシランカップリング剤、またはその重合体が用いられている場合には、本工程におけるプラズマ照射により、シランカップリング剤またはその重合体のSi−C結合が切断されて、その部分にOH基が導入されるものとすることができる。これにより、光触媒含有層が露出している領域、すなわち開口部の親液性を高いものとすることができ、樹脂層表面と開口部表面との濡れ性の差を大きなものとすることができる。
【0054】
光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本態様においては、このキャリアが上記残渣等の撥液性物質や、バインダ等の有機物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0055】
本態様に用いられる光触媒含有層中に含有される光触媒としては、半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができる。また半導体以外としては、金属錯体や銀なども用いることができる。本態様においては、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
本態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0057】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0058】
また、上記酸化チタンとして可視光応答型のものを用いてもよい。可視光応答型の酸化チタンとは、可視光のエネルギーによっても励起されるものであり、このような可視光応答化の方法としては、酸化チタンを窒化処理する方法等が挙げられる。
【0059】
酸化チタン(TiO2)は、窒化処理をすることにより、酸化チタン(TiO2)のバンドギャップの内側に新しいエネルギー準位が形成され、バンドギャップが狭くなる。その結果、通常酸化チタン(TiO2)の励起波長は380nmであるが、その励起波長より長波長の可視光によっても、励起されることが可能となるのである。これにより、種々の光源によるエネルギー照射の可視光領域の波長も酸化チタン(TiO2)の励起に寄与させることが可能となることから、さらに酸化チタンを高感度化させることが可能となるのである。
【0060】
ここで、本態様でいう酸化チタンの窒化処理とは、酸化チタン(TiO2)の結晶の酸素サイトの一部を窒素原子での置換する処理や、酸化チタン(TiO2)結晶の格子間に窒素原子をドーピングする処理、または酸化チタン(TiO2)結晶の多結晶集合体の粒界に窒素原子を配する処理等をいう。
【0061】
酸化チタン(TiO2)の窒化処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、結晶性酸化チタンの微粒子をアンモニア雰囲気下で700℃の熱処理により、窒素をドーピングし、この窒素のドーピングされた微粒子と、無機バインダや溶媒等を用いて、分散液とする方法等が挙げられる。
【0062】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0063】
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより本工程や後述する撥液性物質除去工程において、樹脂層により区画された開口部に存在する撥液性物質等を分解除去することが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に撥液性物質等を効率よく分解除去することが可能となる。
【0064】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0065】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起、およびプラズマの照射により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、シランカップリング剤またはその重合体であるものが好ましく、具体的には、特開2000−249821号公報に記載されているもの等と同様のものとすることができる。
【0066】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
【0067】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0068】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0069】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0070】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤や添加剤等を用いることができ、例えば特開2001−074928に記載されているようなものを用いることができる。
【0071】
(3)基材
次に、本態様に用いられる基材について説明する。本態様に用いられる基材は、上記光触媒含有層を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途等に応じてその種類や可撓性や透明性等は適宜選択される。本態様において上記基材は、有機材料からなるものであってもよく、また無機材料からなるものであってもよい。具体的には、樹脂製フィルム、ガラス、セラミック、金属からなるもの等を用いることができ、板状のものであることが好ましい。
【0072】
また基材のエネルギー透過性については、パターン形成体の用途や種類、後述する撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向等により適宜選択される。例えば、後述する撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向が、基材側からである場合には、上記基材がそのエネルギーに対して透過性を有することが必要とされる。一方、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向が樹脂層側からである場合には、上記基材には特にエネルギー透過性は必要とされない。
【0073】
なお、本態様において、上記基材の表面は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施されたものであってもよい。また、例えば上記光触媒含有層との密着性を向上させるために、アンカー層等が形成されたものであってもよい。
【0074】
(プラズマの照射方法)
次に、本工程におけるプラズマの照射方法について説明する。本工程におけるプラズマの照射方法は、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、上記樹脂層上を撥液性とすることが可能であれば、特に限定されるものではなく、減圧下でプラズマ照射してもよく、また大気圧下でプラズマ照射してもよい。
【0075】
このようなプラズマの照射の際、導入ガスとして用いられるフッ素化合物としては、例えばフッ化炭素(CF4)、窒化フッ素(NF3)、フッ化硫黄(SF6)、CHF3、C2F6、C3F8、C5F8等が挙げられる。また、照射されるプラズマの照射条件としては、照射装置等により適宜選択される。
【0076】
ここで、本態様においては、上記プラズマ照射が大気圧中でのプラズマ照射であることが好ましい。これにより、減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面から好ましいものとすることができるからである。このような大気圧プラズマの照射条件としては、以下のようなものとすることができる。例えば、電源出力としては、一般的なプラズマの照射装置に用いられるものと同様とすることができる。また、この際、照射されるプラズマの電極と、上記樹脂層との距離は、0.2mm〜20mm程度、中でも1mm〜5mm程度とされることが好ましい。またさらに、上記導入ガスとして用いられるフッ素化合物の流量は1L/min〜20L/min程度、上記フッ素化合物と同時に流す窒素ガスの流量は1L/min〜50L/min程度であることが好ましい。また、この際の基板搬送速度としては、0.5m/min〜2m/min程度とすることが好ましい。
【0077】
本工程において、上記樹脂層に導入されたフッ素の存在は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)に用いられるX線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i-XL)による分析において、樹脂層の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。また、この際樹脂層に導入されるフッ素の割合としては、樹脂層の表面より検出される全元素のうち10%以上とされることが好ましい。
【0078】
また、本工程においては、上記樹脂層の液体との接触角が、その樹脂層に区画された開口部の水との接触角より1°以上高くなるように上記プラズマ照射が行われることが好ましい。これにより、上記樹脂層および上記樹脂層に区画された開口部の液体との接触角の差を利用して、本態様により製造されたパターン形成体上に、例えばカラーフィルタの着色層等の機能性部を形成することが可能となるからである。
【0079】
また本態様においては特に、上記樹脂層の水との接触角が61°以上、中でも80°以上、特に100°以上となるようにプラズマ照射されることが好ましい。これは、上記樹脂層において上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、本態様により製造されたパターン形成体の開口部上に、例えばカラーフィルタの着色層等の機能性部を形成する際、樹脂層上にも機能性部を形成するための機能性部形成用塗工液等が付着する可能性があるからである。
【0080】
なお、ここでいう水との接触角は、水または水と同等の接触角を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。
【0081】
b.その他の工程
ここで、本態様のパターン形成体の製造方法は、上述したプラズマ照射工程以外にも、必要に応じて他の工程を有していてもよく、本態様においては、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記樹脂層により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程を有することが好ましい。すなわち、基材と、前記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記基材上に形成され、すくなくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとしてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程と、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記樹脂層により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程とを有するパターン形成体の製造方法とすることができる。
【0082】
本態様においては、上記光触媒含有層が形成されていることから、上記エネルギー照射により、光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記光触媒含有層表面に付着した残渣や導入されたフッ素等の撥液性物質を効率的に除去することが可能となる。
以下、撥液性物質除去工程について詳しく説明する。
【0083】
(撥液性物質除去工程)
本態様における撥液性物質除去工程は、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記樹脂層により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する工程である。上記撥液性物質とは、上記樹脂層により区画された開口部に存在し、機能性部を形成するために用いられる機能性部形成用塗工液と上記開口部との接触角を上昇させる物質をいうこととし、例えば開口部表面に付着している樹脂層形成時の残渣等の有機物や、その残渣に上記プラズマ照射工程により導入されたフッ素、または上記光触媒含有層中に導入されたフッ素等が挙げられる。本工程において、上記撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することにより、樹脂層上が撥液性を有するものとすることができ、樹脂層により区画された開口部に、上記機能性部形成用塗工液を高精細に塗布することが可能となるのである。
【0084】
ここで本工程においては、上記樹脂層により区画された開口部の撥液性物質が除去されて、開口部の表面の水との接触角が60°以下、好ましくは40°以下、特に20°以下となるように上記エネルギー照射が行われることが好ましい。上記開口部における液体との接触角が高い場合は、本態様により製造されたパターン形成体の上記開口部上においても、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、高精細に機能性部を形成することが困難となるからである。なお、上記水との接触角は、上述した方法により測定される値である。
【0085】
なお、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方法については、エネルギーの照射方向等によって以下の4つの実施態様にわけられる。以下、それぞれの実施態様ごとにわけて説明する。
【0086】
(1)第1実施態様
まず、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第1実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第1実施態様としては、例えば図2に示すように、上記プラズマ照射工程終了後、基材1側から全面にエネルギーを照射することにより、上記樹脂層3により区画された開口部7にエネルギー8を照射し、上記開口部7上の撥液性物質を除去するものである。
【0087】
本実施態様によれば上記光触媒含有層上に樹脂層が形成されていることから、基材側からフォトマスク等を用いることなく全面にエネルギーを照射した場合であっても、上記樹脂層により区画された開口部にのみエネルギーを照射することができ、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、効率よく上記開口部上の撥液性物質等を除去することができる。またこの際、上記開口部においては、光触媒を含有する光触媒含有層が露出しており、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、効率よく上記開口部上の撥液性物質等を除去することができるのである。なお、上記エネルギー照射は、基材側から全面に行ってもよいが、例えばフォトマスク等を用いて行ってもよい。
【0088】
なお、本実施態様でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層により開口部の撥液性物質を除去することが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0089】
本実施態様に用いられるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中の光触媒を励起させることが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0090】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0091】
また、上述したような光源を用いてエネルギーを照射する方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0092】
ここで、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、樹脂層により区画された開口部が光触媒含有層中の光触媒の作用等により撥液性物質が分解除去されるのに必要な照射量とする。
【0093】
またこの際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な撥液性物質の除去を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0094】
(2)第2実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第2実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第2実施態様としては、例えば図3に示すように、基体11と、その基体11上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層12とを有する光触媒処理層側基板13を準備し、その光触媒処理層12と上記開口部7とを対向させて配置し、基材1側から全面にエネルギー8を照射し、樹脂層3により区画された開口部7の表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0095】
本実施態様によれば、上記光触媒処理層と上記開口部とを対向させてエネルギー照射を行うことから、上記基材側に形成されている光触媒含有層の光触媒の作用だけでなく、エネルギー照射に伴う上記光触媒処理層中の光触媒の作用によっても上記開口部表面に存在する撥液性物質を除去することができる。また本実施態様においては、上記樹脂層が遮光性を有する遮光部とされていることが好ましい。この場合、上記基材上には遮光部が形成されており、基材側からエネルギー照射が行われることから、全面にエネルギー照射した場合であっても、上記樹脂層により区画された開口部にのみエネルギー照射を行うことができる。したがって、本実施態様によれば、効率よく撥液性物質除去工程を行うことができる、という利点を有する。なお、本実施態様においては、上記樹脂層が遮光性を有していない場合、例えばフォトマスク等を用い、上記開口部にのみ光触媒の作用が及ぶものとすることが好ましい。以下、本工程に用いられる光触媒処理層側基板、および照射されるエネルギーについて説明する。
【0096】
(光触媒処理層側基板)
まず、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板について説明する。本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板は、基体と、その基体上に形成された光触媒処理層とを有するものであれば特に限定されるものではない。
【0097】
このような光触媒処理層側基板に用いられる基体としては、上記光触媒処理層を形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば可撓性を有する樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。
【0098】
なお、基体表面と上記光触媒処理層との密着性を向上させるため、また光触媒の作用による基体の劣化を防ぐために基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、シラン系、チタン系のカップリング剤や、反応性スパッタ法やCVD法等により作製したシリカ膜等が挙げられる。
【0099】
ここで、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板の光触媒処理層については、上述した光触媒含有層と同様のものを用いることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0100】
(エネルギー照射)
次に、本実施態様におけるエネルギー照射について説明する。本実施態様においては、上記樹脂層により区画された開口部と、上記光触媒処理層側基板の光触媒処理層とを、所定の間隙をおいて配置し、基材側からエネルギーを照射する。本実施態様においては、上述したように、上記樹脂層が遮光材料を含有する遮光部とされていることが好ましい。この場合、上記樹脂層が形成された領域においては、エネルギーが遮蔽されることから、樹脂層が形成されていない領域である開口部のみにエネルギーを照射することができ、エネルギー照射に伴う光触媒含有層および光触媒処理層の作用によって、開口部に存在する撥液性物質等を除去することができるからである。
【0101】
ここで、上記の配置とは、実質的に光触媒処理層の光触媒の作用が上記開口部に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、上記光触媒処理層と上記樹脂層とが密着している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒処理層と上記開口部とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
【0102】
本実施態様において上記間隙は、光触媒の感度も高く、したがって開口部の撥液性物質除去の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の開口部に対して特に有効である。
【0103】
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積の開口部に対して処理を行う場合は、上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板と上記開口部との間に形成することは極めて困難である。したがって、開口部が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンの精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して撥液性物質を除去する効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに開口部の撥液性物質除去にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0104】
このように比較的大面積の開口部にエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板と上記開口部との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく配置することが可能となるからである。
【0105】
このように光触媒処理層と開口部表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなるからである。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と開口部との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に撥液性物質を除去する速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が開口部に届き難くなり、この場合も撥液性物質等を除去する速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0106】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と開口部とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができるからである。また、このようなスペーサを用いることにより、光触媒の作用により生じた活性酸素種が拡散することなく、高濃度で基材表面に到達することから、効率よく開口部の撥液性物質除去を行うことができる。
【0107】
なお、上記光触媒処理層が可撓性を有する樹脂フィルム等の可撓性を有する基体上に形成された光触媒処理層側基板を用いる場合においては、上述したような間隙を設けることが難しく、製造効率等の面から、上記光触媒処理層と樹脂層とが接触するように配置されていることが好ましい。
【0108】
本実施態様においては、このような光触媒処理層側基板の配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0109】
本実施態様に用いられるエネルギーとしては、上記光触媒含有層および上記光触媒処理層中の光触媒を励起させることが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなものを用いることができる。また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、樹脂層により区画された開口部に存在する撥液性物質が光触媒含有層および光触媒処理層中の光触媒の作用等により分解等されるのに必要な照射量とする。
【0110】
また本実施態様においても、光触媒含有層または光触媒処理層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な撥液性物質の除去を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0111】
(3)第3実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第3実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第3実施態様としては、例えば図4に示すように、上記樹脂層3が形成された基材1の樹脂層3側から、上記樹脂層3により区画された開口部7に例えばフォトマスク9等を用いてエネルギー8を照射し、上記開口部7表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0112】
本実施態様によれば、上記樹脂層側から、樹脂層により区画された開口部に対してエネルギーを照射することにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により上記開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能となるのである。また、本実施態様においては、基材がエネルギーを透過させないものであっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することができる、という利点も有する。
【0113】
本実施態様により照射されるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記樹脂層により区画された開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなエネルギーを用いることができる。また本実施態様においては、例えばフォトマスク等用いてエネルギー照射したり、描画照射を行うこと等により、上記開口部のみにエネルギーを照射することができる。
【0114】
(4)第4実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第4実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第4実施態様としては、例えば図5に示すように、基体11と、その基体11上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層12とを有する光触媒処理層側基板13を準備し、その光触媒処理層12と上記樹脂層3とを対向させて配置し、光触媒処理層側基板13側から、例えばフォトマスク9等を用いてエネルギー8を照射し、樹脂層3により区画された開口部7の表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0115】
本実施態様によれば、上記樹脂層側に形成されている光触媒含有層中の光触媒の作用だけでなく、上記光触媒処理層中の光触媒の作用によっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することが可能となり、効率的に本工程を行うことができる。また、上記基材がエネルギーを透過させないものであっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することができる、という利点も有する。
【0116】
本実施態様により照射されるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中および光触媒処理層中の光触媒を励起させることができ、この光触媒の作用により上記樹脂層により区画された開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなエネルギーを用いることができる。なお、本実施態様においては、エネルギー照射の際、フォトマスク等を用いたり、上記光触媒処理層側基板に光触媒処理層側遮光部を形成すること等によりパターン状にエネルギーを照射する方法や、また第1実施態様で説明したようなレーザを用いて描画照射する方法を用いることにより、上記開口部のみにエネルギーを照射することができる。上記光触媒処理層側基板に設けることが可能な光触媒処理層側遮光部としては、上記基材上に設けられる遮光材料を含有する樹脂層と同様の方法や材料により形成することができる。また、上記光触媒処理層側遮光部としては、上記光触媒処理層上に形成してもよく、基体と光触媒処理層との間に形成してもよい。またさらに、上記光触媒処理層が形成される側と反対側の基体上に形成してもよい。
【0117】
ここで、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板や、光触媒処理層側基板の配置方法等については、上述した第2態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0118】
c.パターン形成体の用途
本態様において得られるパターン形成体は、種々の用途に用いることが可能であるが、開口部に着色層が形成されてなるカラーフィルタの形成に用いられることが好ましい。着色層をインクジェット法等の吐出法により形成することにより、工程上効率よくカラーフィルタを得ることができるからである。この場合、基材は可視光域で透明な透明基材が用いられ、具体的にはガラス等の無機材料、透明樹脂等の有機材料を挙げることができる。また上記樹脂層は遮光材料を含有する遮光部とされることが好ましい。
【0119】
また、本態様において得られるパターン形成体は、例えば開口部に有機EL層が形成されてなる有機EL素子の形成、または開口部にレンズが形成されてなるマイクロレンズの形成に用いられることが好ましい。本態様によれば、上記濡れ性の差を利用して、高精細に有機EL層やレンズを形成することが可能となり、高品質なものとすることができるからである。またさらに、上記開口部が細胞を培養するために用いられる細胞培養基板としてもよい。
【0120】
2.第2の態様
次に、本発明のパターン形成体の製造方法の第2の態様について説明する。本態様におけるパターン形成体の製造方法は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成されたシランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、上記中間層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするものである。
【0121】
本態様のパターン形成体の製造方法は、例えば図6に示すように、基材1とその基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上に形成された中間層10と、その中間層10上にパターン状に形成された樹脂層3とを有するパターニング用基板4に、樹脂層3側からフッ素化合物を導入ガスとして、プラズマ5を照射するプラズマ照射工程を行って、パターン形成体を製造する方法である。
【0122】
本態様によれば、上記プラズマ照射により、樹脂層にフッ素を導入することができ、樹脂層上を撥液性領域とすることができる。また上記樹脂層が形成されていない領域、すなわち開口部に中間層が露出している領域においては、上記プラズマ照射により、この開口部に露出している中間層のSi−C結合を切断し、その部分にOH基を導入すること等ができる。したがって、樹脂層表面と開口部表面との濡れ性の差を大きなものとすることができ、この濡れ性の差を利用して、開口部のみに高精細に機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができるのである。
【0123】
また本態様においては、上記中間層が形成されていることから、上記光触媒含有層と樹脂層との密着性や、光触媒含有層と、上記開口部上に形成されることとなる機能性部との密着性等を良好なものとすることができるという利点も有している。以下、本態様のパターン形成体の製造方法プラズマ照射工程、およびその他の工程について詳しく説明する。
【0124】
(1)プラズマ照射工程
本態様におけるプラズマ照射工程は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成されたシランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、上記中間層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とする工程である。以下、本態様に用いられるパターニング用基板、およびプラズマの照射方法について説明する。
【0125】
(パターニング用基板)
本工程に用いられるパターニング用基板について説明する。本工程に用いられるパターニング用基板は、基材と、その基材上に形成された光触媒含有層と、その光触媒含有層上に形成された中間層と、上記中間層上にパターン状に形成された樹脂層とを有するものであり、上記樹脂層上に後述するプラズマ照射によってフッ素を導入することが可能なものであれば特に限定されるものではない。このようなパターニング用基板として、例えば基材と光触媒含有層との間に、密着性を向上させるためのアンカー層等が形成されていてもよく、また例えば中間層と樹脂層との間に密着性を良好なものとするためのプライマー層等が形成されていてもよい。なお、上記基材、光触媒含有層、および樹脂層については、上述した第1の態様に用いられるパターニング用基板の項で説明したものと同様とすることができるので、以下、中間層について説明する。
【0126】
本態様に用いられる中間層としては、シランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有するものである。本態様においては、本工程におけるプラズマ照射によってシランカップリング剤またはその重合体中のSi−C結合が切断されて有機基が除去され、その部分に、雰囲気中の水分や酸素等によってOH基等が導入されることとなる。
【0127】
上記中間層に含有されるシランカップリング剤またはその重合体として具体的には、下記の化学式
YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基、クロロアルキル基、イソシアネート基、もしくはエポキシ基、またはこれらを含む有機基であり、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるシランカップリング剤、またはこれらの1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物である重合体であることが好ましい。なお、ここでXで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。また、Yで示される有機基全体の炭素数は1〜20の範囲内、中でも5〜10の範囲内であることが好ましい。
【0128】
上記シランカップリング剤として具体的には、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;及び、それらの部分加水分解物;及びそれらの混合物を使用することができる。
【0129】
またフルオロアルキル基を含有する化合物としては、下記の化合物を挙げることができ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られているものを使用しても良い。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3
【0130】
ここで上記中間層の形成は、上記中間層がシランカップリング剤またはその重合体のみからなる層である場合には、上記材料を必要に応じて溶媒等に分散させて、例えばスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法によって基材上に塗布することにより行うことができる。この際、上記シランカップリング剤を空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させ、その後脱水縮重合させることにより、上記重合体からなる中間層を形成してもよい。なお、上記脱水縮重合は、常温で行ってもよいが、100℃以上で行うことにより、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。
【0131】
また、上記中間層がバインダを含有する場合、中間層にバインダとして用いられる材料としては、プラズマ照射により分解等されないものであることが好ましく、例えば無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xがハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0132】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合、例えば無定形シリカの前駆体と上記シランカップリング剤またはこれらの重合体とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に塗布し、上記と同様に、空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、脱水縮重合することにより中間層を形成できる。なお、これらのバインダは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0133】
ここで本態様においては、上記中間層の膜厚は、上記中間層の種類によって適宜選択されるものであるが、通常、中間層の膜厚は、1μm以下、中でも0.1μm以下とされる。また上記中間層の膜厚の下限としては、上記材料を含有する層が均一に形成されていればよく、例えば上述した材料からなる単分子膜等とされていてもよい。
【0134】
(プラズマの照射方法)
本工程におけるプラズマの照射方法は、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、上記樹脂層上を撥液性とし、上記中間層が露出した領域を親液性領域とすることが可能であれば、特に限定されるものではなく、減圧下でプラズマ照射してもよく、また大気圧下でプラズマ照射してもよい。このようなプラズマの照射方法としては、上述した第1の態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0135】
本工程において、上記樹脂層に導入されたフッ素の存在は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)に用いられるX線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i-XL)による分析において、樹脂層の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。また、この際樹脂層に導入されるフッ素の割合としては、樹脂層の表面より検出される全元素のうち10%以上とされることが好ましい。
【0136】
ここで、本工程においては、上記樹脂層の液体との接触角が、水との接触角が61°以上、中でも80°以上、特に100°以上となるようにフッ素が導入されることが好ましい。これは、上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、本態様のパターン形成体を用いて機能性素子を形成する際に、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液が樹脂層上にも付着する可能性があるからである。
【0137】
また、上記中間層が露出している領域の液体との接触角として具体的には、水との接触角が60°以下、中でも40°以下、特に20°以下とされていることが好ましい。上記中間層が露出している領域の液体との接触角が高い場合には、本態様のパターン形成体上に機能性部を形成する際、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、機能性部を高精細に形成することが困難となる場合があるからである。なお、上記液体との接触角は、上述した方法により測定される。
【0138】
b.その他の工程
ここで、本態様のパターン形成体の製造方法は、上述したプラズマ照射工程以外にも、必要に応じて他の工程を有していてもよく、本態様においては、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記樹脂層により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程を有していてもよい。上述した開口部表面に、例えば樹脂層を形成した際の残渣等が付着している場合には、上記樹脂層と開口部との濡れ性の差が小さく、上記濡れ性の差を利用して、高精細に機能性部を形成することが困難となる。そこで、上記開口部にエネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼし、上記開口部表面に存在する残渣等の撥液性物質を除去することにより、より開口部と樹脂層との濡れ性の差を大きなものとすることができるのである。また、上記プラズマ照射工程後、上記中間層に有機基が残存している場合であっても、上記エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、これらを除去することができ、より開口部表面を親液性の高いものとすることができるという利点も有している。
なお、本態様における撥液性物質除去工程については、上述した第1の態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0139】
3.その他の態様
また、本発明のパターン形成体の製造方法には、以下の態様も含まれる。
パターン形成体の製造方法の他の態様としては、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記遮光部上を撥液性とするプラズマ照射工程と、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記遮光部により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程とを有することを特徴とするものである。
【0140】
本態様のパターン形成体の製造方法は、例えば図7に示すように、基材1とその基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上に形成された遮光部6とを有するパターニング用基板4に、プラズマ5を照射するプラズマ照射工程(図7(a))と、上記遮光部6により区画された開口部7にエネルギー8を照射し、遮光部6により区画された開口部7表面に存在する撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程(図7(b))とを有するものである。
【0141】
フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射した場合、有機物にフッ素を導入することができ、表面を撥液性とすることができる。したがって、本態様によれば上記プラズマ照射工程においてプラズマ照射を行うことにより、遮光部上を撥液性領域とすることができる。しかしながら、一般的には上記開口部に、上記遮光部を形成した際の残渣等が存在しており、上記プラズマ照射工程でこの残渣等にもフッ素が導入されてしまうことから、遮光部だけでなく、開口部上にも撥液性の領域が形成されてしまう場合があった。
【0142】
そこで本態様においては、上記プラズマ照射工程終了後、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射して、上記開口部に付着している残渣や導入されたフッ素等を除去する撥液性物質除去工程を行う。本態様においては、上記光触媒含有層が形成されていることから、上記エネルギー照射により、光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記光触媒含有層表面に付着した残渣や導入されたフッ素等の撥液性物質を効率的に除去することが可能となる。したがって、上記遮光部上を撥液性、上記開口部上を親液性として用いることが可能となり、上記遮光部上および開口部上の濡れ性の差を利用して、種々の機能性部を高精細に形成可能なパターン形成体とすることができるのである。以下、本態様のパターン形成体の製造方法の各工程ごとに詳しく説明する。
【0143】
a.プラズマ照射工程
まず、本態様におけるプラズマ照射工程について説明する。本態様におけるプラズマ照射工程は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記遮光部上を撥液性とする工程である。
【0144】
本態様においては、後述するように、パターニング用基板の遮光部として、遮光材料および樹脂を含有するものが用いられることから、本工程によりプラズマ照射をした場合、上記遮光部上にフッ素を導入することができ、遮光部上を撥液性を有する領域として用いることが可能となるのである。以下、本工程に用いられるパターニング用基板、およびプラズマの照射方法についてそれぞれ説明する。
【0145】
(パターニング用基板)
まず、本工程に用いられるパターニング用基板について説明する。本工程に用いられるパターニング用基板は、基材と、その基材上に形成された光触媒含有層と、その光触媒含有層上に形成された遮光部とを有するものであり、上記遮光部上に後述するプラズマ照射によってフッ素を導入することが可能なものであれば特に限定されるものではない。このようなパターニング用基板として、例えば基材と光触媒含有層との間に、密着性を向上させるためのアンカー層等が形成されていてもよく、また例えば光触媒含有層と遮光部との間に密着性を良好なものとするためのプライマー層等が形成されていてもよい。以下、本工程に用いられるパターニング用基板の各構成ごとに説明する。
【0146】
(1)遮光部
本態様に用いられる遮光部としては、遮光材料および樹脂を含有するものであり、その形状や膜厚等については、パターン形成体の用途や遮光部の種類等によって、適宜選択される。
【0147】
本態様において、このような遮光部を形成する方法としては、例えば、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法等が挙げられる。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0148】
またさらに本態様においては、遮光部が熱転写法により形成されたものとすることもできる。遮光部を形成する熱転写法とは、通常、透明なフィルム基材の片面に光熱変換層と遮光部転写層を設けた熱転写シートを基材上に配置し、遮光部を形成する領域にエネルギーを照射することによって、遮光部転写層が基材上に転写されて遮光部が形成されることとなるものである。
【0149】
熱転写法により転写される遮光部は、通常、遮光材料と結着剤により構成されるものであり、遮光性材料としては、カーボンブラック、チタンブラック等の無機粒子等を用いることができる。このような遮光性材料の粒子径としては、0.01μm〜1.0μm、中でも0.03μm〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。
【0150】
また、結着剤としては、熱可塑性と熱硬化性とを有する樹脂組成とすることが好ましく、熱硬化性官能基を有し、かつ軟化点が50℃〜150℃の範囲内、中でも60℃〜120℃の範囲内である樹脂材料および硬化剤等により構成されることが好ましい。このような材料として具体的には、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物またはエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤との組み合わせ等が挙げられる。またエポキシ樹脂の潜在性硬化剤としては、ある一定の温度まではエポキシ基との反応性を有さないが、加熱により活性化温度に達するとエポキシ基との反応性を有する分子構造に変化する硬化剤を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂との反応性を有する酸性または塩基性化合物の中性塩や錯体、ブロック化合物、高融点体、マイクロカプセル封入物が挙げられる。また、上記遮光部中に、上記の材料の他に、離型剤、接着補助剤、酸化防止剤、分散剤等を含有させることもできる。
【0151】
(2)光触媒含有層
次に、本工程に用いられるパターニング用基板の光触媒含有層について説明する。本工程に用いられる光触媒含有層は、少なくとも光触媒を含有する層であり、後述する撥液性物質除去工程において、上記遮光部により区画された開口部、すなわち光触媒含有層上に存在する撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することが可能なものであれば特に限定されるものではない。このような光触媒含有層としては、例えば光触媒のみからなる層であってもよく、また光触媒とバインダとを含有する層であってもよい。上記光触媒含有層がバインダを含有する場合、後述するプラズマ照射によりフッ素が導入される場合もあるが、後述する撥液性物質除去工程により、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、上記フッ素等を除去することができるからである。
【0152】
なお、上記光触媒含有層が光触媒のみからなる場合には、基材上の開口部に存在する撥液性物質等を除去する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0153】
光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本態様においては、このキャリアが上記残渣等の撥液性物質や、バインダ等の有機物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0154】
本態様で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0155】
本態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0156】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0157】
また、上記酸化チタンとして可視光応答型のものを用いてもよい。可視光応答型の酸化チタンとは、可視光のエネルギーによっても励起されるものであり、このような可視光応答化の方法としては、酸化チタンを窒化処理する方法等が挙げられる。
【0158】
酸化チタン(TiO2)は、窒化処理をすることにより、酸化チタン(TiO2)のバンドギャップの内側に新しいエネルギー準位が形成され、バンドギャップが狭くなる。その結果、通常酸化チタン(TiO2)の励起波長は380nmであるが、その励起波長より長波長の可視光によっても、励起されることが可能となるのである。これにより、種々の光源によるエネルギー照射の可視光領域の波長も酸化チタン(TiO2)の励起に寄与させることが可能となることから、さらに酸化チタンを高感度化させることが可能となるのである。
【0159】
ここで、本態様でいう酸化チタンの窒化処理とは、酸化チタン(TiO2)の結晶の酸素サイトの一部を窒素原子での置換する処理や、酸化チタン(TiO2)結晶の格子間に窒素原子をドーピングする処理、または酸化チタン(TiO2)結晶の多結晶集合体の粒界に窒素原子を配する処理等をいう。
【0160】
酸化チタン(TiO2)の窒化処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、結晶性酸化チタンの微粒子をアンモニア雰囲気下で700℃の熱処理により、窒素をドーピングし、この窒素のドーピングされた微粒子と、無機バインダや溶媒等を用いて、分散液とする方法等が挙げられる。
【0161】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0162】
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより後述する撥液性物質除去工程において、遮光部により区画された開口部に存在する撥液性物質等を分解除去することが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に撥液性物質等を効率よく分解除去することが可能となる。
【0163】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0164】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起、およびプラズマの照射により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0165】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
【0166】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0167】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0168】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0169】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤や添加剤等を用いることができ、例えば特開2001−074928に記載されているようなものを用いることができる。
【0170】
(3)基材
次に、本態様に用いられる基材について説明する。本態様に用いられる基材は、上記光触媒含有層を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途等に応じてその種類や可撓性や透明性等は適宜選択される。具体的には、樹脂製フィルム、ガラス、セラミック、金属からなるもの等を用いることができ、板状のものであることが好ましい。
【0171】
また基材のエネルギー透過性については、パターン形成体の用途や種類、後述する撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向等により適宜選択される。例えば、後述する撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向が、基材側からである場合には、上記基材がそのエネルギーに対して透過性を有することが必要とされる。一方、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向が遮光部側からである場合には、上記基材には特にエネルギー透過性は必要とされない。
【0172】
なお、本態様において、上記基材の表面は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施されたものであってもよい。また、例えば上記光触媒含有層との密着性を向上させるために、アンカー層等が形成されたものであってもよい。
【0173】
(プラズマの照射方法)
次に、本工程におけるプラズマの照射方法について説明する。本工程におけるプラズマの照射方法は、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、上記遮光部上を撥液性とすることが可能であれば、特に限定されるものではなく、減圧下でプラズマ照射してもよく、また大気圧下でプラズマ照射してもよい。
【0174】
このようなプラズマの照射の際、導入ガスとして用いられるフッ素化合物としては、、例えばフッ化炭素(CF4)、窒化フッ素(NF3)、フッ化硫黄(SF6)、CHF3、C2F6、C3F8、C5F8等が挙げられる。また、照射されるプラズマの照射条件としては、照射装置等により適宜選択される。
【0175】
ここで、本態様においては、上記プラズマ照射が大気圧中でのプラズマ照射であることが好ましい。これにより、減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面から好ましいものとすることができるからである。このような大気圧プラズマの照射条件としては、以下のようなものとすることができる。例えば、電源出力としては、一般的なプラズマの照射装置に用いられるものと同様とすることができる。また、この際、照射されるプラズマの電極と、上記遮光部との距離は、0.2mm〜20mm程度、中でも1mm〜5mm程度とされることが好ましい。またさらに、上記導入ガスとして用いられるフッ素化合物の流量は1L/min〜20L/min程度、上記フッ素化合物と同時に流す窒素ガスの流量は1L/min〜50L/min程度であることが好ましい。また、この際の基板搬送速度としては、0.5m/min〜2m/min程度とすることが好ましい。
【0176】
また、本工程においては、上記遮光部の液体との接触角が、その遮光部に区画された開口部の液体との接触角より1°以上高くなるように上記プラズマ照射が行われることが好ましい。これにより、上記遮光部および上記遮光部に区画された開口部の液体との接触角の差を利用して、本態様により製造されたパターン形成体上に、例えばカラーフィルタの着色層等の機能性部を形成することが可能となるからである。
【0177】
また本態様においては特に、上記遮光部の液体との接触角が40mN/mの液体との接触角が、10°以上、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上となるようにプラズマ照射されることが好ましい。また、純水との接触角が11°以上であることが好ましい。これは、上記遮光部において上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、本態様により製造されたパターン形成体の開口部上に、例えばカラーフィルタの着色層等の機能性部を形成する際、遮光部上にも機能性部を形成するための機能性部形成用塗工液等が付着する可能性があるからである。
【0178】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0179】
b.撥液性物質除去工程
次に、本態様における撥液性物質除去工程について説明する。本態様における撥液性物質除去工程は、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記遮光部により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する工程である。上記撥液性物質とは、上記遮光部により区画された開口部に存在し、機能性部を形成するために用いられる機能性部形成用塗工液と上記開口部との接触角を上昇させる物質をいうこととし、例えば開口部表面に付着している遮光部形成時の残渣等の有機物や、その残渣に上記プラズマ照射工程により導入されたフッ素、または上記光触媒含有層中に導入されたフッ素等が挙げられる。本工程において、上記撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することにより、遮光部上のみが撥液性を有するものとすることができ、遮光部により区画された開口部に、上記機能性部形成用塗工液を高精細に塗布することが可能となるのである。
【0180】
ここで本工程においては、上記遮光部により区画された開口部の撥液性物質が除去されて、開口部の表面の40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるように上記エネルギー照射が行われることが好ましい。また、純水との接触角が10°以下となるように、エネルギー照射が行われることが好ましい。上記開口部における液体との接触角が高い場合は、本態様により製造されたパターン形成体の上記開口部上においても、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、高精細に機能性部を形成することが困難となるからである。なお、上記液体との接触角は、上述した方法により測定される値である。
【0181】
なお、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方法については、エネルギーの照射方向等によって以下の4つの実施態様にわけられる。以下、それぞれの実施態様ごとにわけて説明する。
【0182】
(1)第1実施態様
まず、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第1実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第1実施態様としては、例えば図7(b)に示すように、上記プラズマ照射工程終了後、基材1側から全面にエネルギーを照射することにより、上記遮光部6により区画された開口部7にエネルギー8を照射し、上記開口部7上の撥液性物質を除去するものである。
【0183】
本実施態様によれば、上記遮光部が形成されていることから、基材側からフォトマスク等を用いることなく全面にエネルギーを照射した場合であっても、上記遮光部により区画された開口部にのみエネルギーを照射することができ、上記開口部上の撥液性物質を効率よく除去することができる。またこの際、上記開口部においては、光触媒を含有する光触媒含有層が露出しており、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、効率よく上記開口部上の撥液性物質等を除去することができるのである。
【0184】
なお、本実施態様でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層により開口部の撥液性物質を除去することが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0185】
本実施態様に用いられるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中の光触媒を励起させることが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0186】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0187】
また、上述したような光源を用いてエネルギーを照射する方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0188】
ここで、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、遮光部により区画された開口部が光触媒含有層中の光触媒の作用等により撥液性物質が分解除去されるのに必要な照射量とする。
【0189】
またこの際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な撥液性物質の除去を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0190】
(2)第2実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第2実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第2実施態様としては、例えば図8に示すように、基体11と、その基体11上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層12とを有する光触媒処理層側基板13を準備し、その光触媒処理層12と上記開口部7とを対向させて配置し、基材1側から全面にエネルギー8を照射し、遮光部6により区画された開口部7の表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0191】
本実施態様によれば、上記光触媒処理層と上記開口部とを対向させてエネルギー照射を行うことから、上記基材側に形成されている光触媒含有層の光触媒の作用だけでなく、エネルギー照射に伴う上記光触媒処理層中の光触媒の作用によっても上記開口部表面に存在する撥液性物質を除去することができる。また、上記基材上には遮光部が形成されており、基材側からエネルギー照射が行われることから、全面にエネルギー照射した場合であっても、上記遮光部により区画された開口部にのみエネルギー照射を行うことができる。したがって、本実施態様によれば、効率よく撥液性物質除去工程を行うことができる、という利点を有する。以下、本工程に用いられる光触媒処理層側基板、および照射されるエネルギーについて説明する。
【0192】
(光触媒処理層側基板)
まず、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板について説明する。本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板は、基体と、その基体上に形成された光触媒処理層とを有するものであれば特に限定されるものではない。
【0193】
このような光触媒処理層側基板に用いられる基体としては、上記光触媒処理層を形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば可撓性を有する樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。
【0194】
なお、基体表面と上記光触媒処理層との密着性を向上させるため、また光触媒の作用による基体の劣化を防ぐために基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、シラン系、チタン系のカップリング剤や、反応性スパッタ法やCVD法等により作製したシリカ膜等が挙げられる。
【0195】
ここで、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板の光触媒処理層については、上述した光触媒含有層と同様のものを用いることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0196】
(エネルギー照射)
次に、本実施態様におけるエネルギー照射について説明する。本実施態様においては、上記遮光部により区画された開口部と、上記光触媒処理層側基板の光触媒処理層とを、所定の間隙をおいて配置し、基材側からエネルギーを照射する。この際、上記遮光部が形成された領域においては、エネルギーが遮蔽されることから、遮光部が形成されていない領域である開口部のみにエネルギーを照射することができ、エネルギー照射に伴う光触媒含有層および光触媒処理層の作用によって、開口部に存在する撥液性物質等を除去することができるのである。
【0197】
ここで、上記の配置とは、実質的に光触媒処理層の光触媒の作用が上記開口部に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、上記光触媒処理層と上記遮光部が密着している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒処理層と上記開口部とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
【0198】
本実施態様において上記間隙は、光触媒の感度も高く、したがって開口部の撥液性物質除去の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の開口部に対して特に有効である。
【0199】
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積の開口部に対して処理を行う場合は、上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板と上記開口部との間に形成することは極めて困難である。したがって、開口部が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンの精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して撥液性物質を除去する効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに開口部の撥液性物質除去にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0200】
このように比較的大面積の開口部にエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板と上記開口部との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく配置することが可能となるからである。
【0201】
このように光触媒処理層と開口部表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなるからである。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と基材における開口部との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に撥液性物質を除去する速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が開口部に届き難くなり、この場合も撥液性物質等を除去する速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0202】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と開口部とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができるからである。また、このようなスペーサを用いることにより、光触媒の作用により生じた活性酸素種が拡散することなく、高濃度で基材表面に到達することから、効率よく開口部の撥液性物質除去を行うことができる。
【0203】
なお、上記光触媒処理層が可撓性を有する樹脂フィルム等の可撓性を有する基体上に形成された光触媒処理層側基板を用いる場合においては、上述したような間隙を設けることが難しく、製造効率等の面から、上記光触媒処理層と遮光部とが接触するように配置されていることが好ましい。
【0204】
本実施態様においては、このような光触媒処理層側基板の配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0205】
本実施態様に用いられるエネルギーとしては、上記光触媒処理層および上記光触媒処理層中の光触媒を励起させることが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなものを用いることができる。また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、遮光部により区画された開口部が光触媒処理層中の光触媒の作用等により撥液性物質が分解除去されるのに必要な照射量とする。
【0206】
また本実施態様においても、光触媒処理層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な撥液性物質の除去を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0207】
(3)第3実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第3実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第3実施態様としては、例えば図9に示すように、上記遮光部6が形成された基材1の遮光部6側から、上記遮光部6により区画された開口部7に例えばフォトマスク9等を用いてエネルギー8を照射し、上記開口部7表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0208】
本実施態様によれば、上記遮光部側から、遮光部により区画された開口部に対してエネルギーを照射することにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により上記開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能となるのである。また、本実施態様においては、基材がエネルギーを透過させないものであっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することができる、という利点も有する。
【0209】
本実施態様により照射されるエネルギーとしては、上記光触媒処理層中の光触媒を励起させることができ、上記遮光部により区画された開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなエネルギーを用いることができる。また本実施態様においては、例えばフォトマスク等用いてエネルギー照射したり、描画照射を行うこと等により、上記開口部のみにエネルギーを照射することができる。
【0210】
(4)第4実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第4実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第4実施態様としては、例えば図10に示すように、基体11と、その基体11上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層12とを有する光触媒処理層側基板13を準備し、その光触媒処理層12と上記遮光部6とを対向させて配置し、光触媒処理層側基板13側から、例えばフォトマスク9等を用いてエネルギー8を照射し、遮光部6により区画された開口部7の表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0211】
本実施態様によれば、上記遮光部側に形成されている光触媒含有層中の光触媒の作用だけでなく、上記光触媒処理層中の光触媒の作用によっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することが可能となり、効率的に本工程を行うことができる。また、上記基材がエネルギーを透過させないものであっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することができる、という利点も有する。
【0212】
本実施態様により照射されるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中および光触媒処理層中の光触媒を励起させることができ、この光触媒の作用により上記遮光部により区画された開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなエネルギーを用いることができる。なお、本実施態様においては、エネルギー照射の際、フォトマスク等を用いたり、上記光触媒処理層側基板に光触媒処理層側遮光部を形成すること等によりパターン状にエネルギーを照射する方法や、また第1実施態様で説明したようなレーザを用いて描画照射する方法を用いることにより、上記開口部のみにエネルギーを照射することができる。上記光触媒処理層側基板に設けることが可能な光触媒処理層側遮光部としては、上記基材上に設けられる遮光部と同様の方法や材料により形成することができる。また、上記光触媒処理層側遮光部としては、上記光触媒処理層上に形成してもよく、基体と光触媒処理層との間に形成してもよい。またさらに、上記光触媒処理層が形成される側と反対側の基体上に形成してもよい。
【0213】
ここで、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板や、光触媒処理層側基板の配置方法等については、上述した第2態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0214】
c.その他
本態様において得られるパターン形成体は、種々の用途に用いることが可能であるが、開口部に着色層が形成されてなるカラーフィルタとして用いられることが好ましい。着色層をインクジェット法等の吐出法により形成することにより、工程上効率よくカラーフィルタを得ることができるからである。この場合、基材は可視光域で透明な透明基材が用いられ、具体的にはガラス等の無機材料、透明樹脂等の有機材料を挙げることができる。
なお、例えば上記パターン形成体の製造方法の説明においては、プラズマ照射工程を行った後に撥液性物質除去工程を行う場合を中心に説明したが、本態様はこれに限定されるものではなく、先に撥液性物質除去工程を行った後にプラズマ照射工程を行う場合も含むものである。またこの場合、不純物除去工程を、上記プラズマ照射工程前に行う場合には、上記不純物除去工程におけるエネルギー照射を、上記遮光部側から全面に行うこともできる。
【0215】
B.パターン形成体
次に、本態様のパターン形成体について説明する。本態様のパターン形成体は、層構成等により以下の2つの実施態様にわけられる。以下、それぞれの実施態様ごとにわけて説明する。
【0216】
(1)第1実施態様
まず、本態様のパターン形成体の第1実施態様について説明する。本実施態様におけるパターン形成体は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、上記光触媒含有層の上記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面にフッ素原子を含有しない親液性領域とされていることを特徴とするものである。
【0217】
このような本実施態様のパターン形成体の一例としては、図11に示すように、基材1上に光触媒含有層2が形成され、さらにその上にパターン状に撥液性樹脂層20が形成された例を挙げることができる。本実施態様においては上記撥液性樹脂層20の表面に、フッ素原子が含有されているものとされ、また上記光触媒含有層2が露出している領域(図中、aで示される領域)の表面は、フッ素原子を含有しない親液性領域とされる。
【0218】
本実施態様におけるパターン形成体は、上記撥液性樹脂層上と上記光触媒含有層が露出している領域との濡れ性の差を利用して、上記光触媒含有層が露出している領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。
【0219】
また、本実施態様におけるパターン形成体は、パターン形成体の開口部に着色層等の機能性部が形成され、カラーフィルタ等の機能性素子とされた場合に、光触媒含有層が、表面にフッ素原子を含有しないものであるので、その後の工程等において、光触媒含有層表面のフッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることを防止することができるといった利点を有する。
【0220】
本実施態様においては、光触媒含有層表面にフッ素原子が含有されていないものであるので、上述したような不具合が生じる可能性が無く、本実施態様のパターン形成体を用いて得られる機能性素子の品質を良好なものとすることができるといった利点を有するものである。
以下、このような本実施態様におけるパターン形成体について、各構成毎に説明する。
【0221】
(光触媒含有層)
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、光触媒を含有し、かつ後述する撥液性樹脂層が形成されていない領域の表面に、フッ素原子が含有されていないものであれば特に限定されるものではない。本実施態様において表面にフッ素原子が含有されていないとは、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)による測定において、光触媒含有層表面に含有される光触媒の金属原子を100とした場合、10以下、好ましくは5以下である場合をいう。なお、本実施態様でいう光触媒含有層表面とは、光触媒含有層の最表面から5nm以内の領域のことをいうこととする。
【0222】
ここで、後述する撥液性樹脂層が形成されていない領域の光触媒含有層の表面に、フッ素原子が含有されていないものとする方法としては、上述した「A.パターン形成体の製造方法」の第1実施態様と同様の方法によりパターン形成体を製造する方法が挙げられる。上述した方法によれば、プラズマ照射の際に発生する光によって光触媒が励起され、樹脂層が形成されていない領域の光触媒含有層表面に存在する有機基等が分解されるものとすることができる。これにより、例えば光触媒含有層中に、フッ素を有する有機基等が含有されている場合であっても、上記プラズマ照射工程により、フッ素原子を除去することが可能となるからである。
【0223】
なお、本実施態様に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層全体にフッ素原子が含有されていないものであることが好ましい。これにより、上記親液性領域に着色層等の機能性部が形成された場合、フッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることをさらに防止することができるからである。
【0224】
この場合、通常光触媒含有層は無機材料からなるものとされる。具体的には、光触媒から光触媒含有層が形成されている場合、光触媒およびフッ素原子を含有しないバインダから光触媒含有層が形成されている場合等が光触媒含有層が無機材料からなる場合に該当するといえる。
【0225】
本実施態様においては、上記光触媒含有層の膜厚が0.05μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。これにより、パターン形成体の光透過性を良好とすることができ、さらにヘイズ値を低下させることができるので、例えばパターン形成体をカラーフィルタ等の表示素子用に用いた場合に利点を有するからである。
【0226】
なお、本実施態様においては、光触媒含有層のうち、後述する撥液性樹脂層が形成されていない領域が、親液性領域とされる。親液性領域とは、隣接する領域より液体との接触角が1°以上低い領域をいうこととする。本実施態様においては、上記光触媒含有層が露出している領域においては、水との接触角が60°以下、好ましくは40°以下、特に20°以下とされることが好ましい。上記光触媒含有層が露出している領域の液体との接触角が高い場合には、本実施態様のパターン形成体上に機能性部を形成する際、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、機能性部を高精細に形成することが困難となる場合があるからである。なお、上記水との接触角は、上述した方法により測定される。
【0227】
本実施態様に用いられる光触媒含有層のその他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0228】
また、本実施態様に用いられるフッ素原子を含有しないバインダ材料としては、例えばフルオロアルキル基等のフッ素原子を有する置換基を有さないポリシロキサン等を挙げることができる。
【0229】
その他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0230】
(撥液性樹脂層)
次に、本実施態様における撥液性樹脂層について説明する。本実施態様における撥液性樹脂層は、上述した光触媒含有層上にパターン状に形成されたものであり、表面にフッ素原子を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0231】
このような撥液性樹脂層は、パターン形成体の用途に応じて適宜選択され、例えば、遮光性を有するものであってもよい。このような遮光性を有する撥液性樹脂層は、例えば本実施態様のパターン形成体をカラーフィルタに用いる場合、カラーフィルタの遮光部であるブラックマトリクス層として用いることができるという利点を有する。
【0232】
なお、ここで撥液性樹脂層表面にフッ素が含有されているか否かは、X線光電子分光法により測定した場合、表面にのみフッ素原子が存在する場合を示すものである。撥液性樹脂層表面にのみにフッ素原子が存在するとは、通常、撥液性樹脂層の最表面から5nm以内の領域にフッ素原子が含有されていることをいうこととする。また、この際上記フッ素原子の割合としては、撥液性樹脂層の表面に存在する全元素中のうち、10%以上とされることが好ましい。
【0233】
また、上記撥液性樹脂層の膜厚としては、0.01μm〜1mm程度、中でも0.1μm〜0.1mm程度とすることができる。
【0234】
また、上記撥液性樹脂層表面の液体との接触角としては、水との接触角が61°以上、中でも80°以上、特に100°以上であることが好ましい。これにより、本実施態様におけるパターン形成体を用いて機能性素子を形成する際、撥液性樹脂層上に機能性部を形成する機能性部形成用塗工液が付着してしまうこと等のないものとすることができ、撥液性樹脂層が形成されていない領域のみに高精細に機能性部を形成することができるからである。上記液体との接触角は、上述した方法により測定される。
【0235】
(基材)
本実施態様に用いられる基材に関しては、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0236】
(用途)
本実施態様のパターン形成体は、開口部等に機能部が形成されてなる機能性素子として通常用いられるものであり、具体的には、開口部に機能部として着色層が形成されたカラーフィルタ等として用いることができる。また、後述するように、親液性領域に有機EL層を形成する有機EL素子や、親液性領域にレンズを形成するマイクロレンズ、また親液性領域を細胞培養領域として用いる細胞培養用基板等に用いられる。
【0237】
(2)第2実施態様
次に、本態様のパターン形成体の第2実施態様について説明する。本実施態様におけるパターン形成体は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、シランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、上記中間層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、上記中間層の撥液性樹脂層が形成されていない領域が親液性領域であることを特徴とするものである。
【0238】
このような本実施態様のパターン形成体は、例えば図12に示すように、基材1と、その基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上に形成された中間層10と、その中間層10上にパターン状に撥液性樹脂層20とを有するものであって、上記撥液性樹脂層20の表面にはフッ素原子が含有されているものである。また上記中間層10が露出している領域(図中、aで示される領域)は親液性領域とされ、表面の水との接触角は所定の値以下とされていることが好ましい。親液性領域とは、隣接する領域より液体との接触角が1°以上低い領域をいうこととする。
【0239】
本実施態様におけるパターン形成体は、上記撥液性樹脂層上と上記中間層が露出している領域との濡れ性の差を利用して、上記中間層が露出している領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。また本実施態様においては、上記中間層が形成されていることから、上記光触媒含有層と撥液性樹脂層との密着性や、光触媒含有層と、開口部に形成される機能性部等との密着性を良好なものとすることができるという利点も有する。
以下、このような本実施態様におけるパターン形成体について、各構成毎に説明する。
【0240】
(中間層)
まず、本実施態様に用いられる中間層について説明する。本実施態様に用いられる中間層は、後述する基材上に形成されており、かつシランカップリング剤またはその重合体を含有するものである。上記撥液性樹脂層が形成されていない領域においては、親液性領域とされており、表面の水との接触角が所定の値以下とされていることが好ましい。
【0241】
上記親液性領域の液体との接触角として具体的には、水との接触角が60°以下、中でも40°以下、特に20°以下とされていることが好ましい。上記領域の液体との接触角が高い場合には、本実施態様におけるパターン形成体の親液性領域上に機能性部を形成する際、この領域においても機能性部を形成するための機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、機能性部形成用塗工液が十分に濡れ広がらない等、機能性部を形成することが難しくなる可能性があるからである。
【0242】
ここで、本実施態様に用いられる中間層は、シランカップリング剤またはその重合体のみからなるものであってもよく、またバインダを含有するもの等であってもよい。このような中間層中に含有されるシランカップリング剤またはその重合体、バインダとしては、上述した「A.パターン形成体の製造方法」の第2実施態様で説明したものと同様とすることができる。また、上記親液性領域を形成する方法としては、上述した「A.パターン形成体の製造方法」で説明したように、上記中間層が露出した領域に、プラズマ照射する方法が挙げられる。
【0243】
(撥液性樹脂層)
次に、本実施態様における撥液性樹脂層について説明する。本実施態様における撥液性樹脂層は、上記中間層上にパターン状に形成されたものであり、表面にフッ素を含有するものであれば特に限定されるものではない。なお、本実施態様に用いられる撥液性樹脂層は、上述した第1実施態様で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0244】
(光触媒含有層)
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、後述する基材上に形成され、光触媒を含有しているものであれば特に限定されるものではない。なお、本実施態様に用いられる光触媒含有層のその他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0245】
(基材)
本実施態様に用いられる基材に関しては、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0246】
(用途)
本実施態様のパターン形成体についても、開口部等に機能部が形成されてなる機能性素子として通常用いられるものであり、具体的には、開口部に機能部として着色層が形成されたカラーフィルタ等として用いることができる。また、後述するように、親液性領域に有機EL層を形成する有機EL素子や、親液性領域にレンズを形成するマイクロレンズ、また親液性領域を細胞培養領域として用いる細胞培養用基板等に用いられる。
【0247】
(3)その他の実施態様
また本発明のパターン形成体には、下記の実施態様も含まれる。本態様に含まれるパターン形成体は、基材と、前記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有し、前記光触媒含有層がフッ素原子を含有しないものであることを特徴とするものである。
【0248】
このような本実施態様のパターン形成体の一例としては、図7(b)に示すように、基材1上に光触媒含有層2が形成され、さらにその上にパターン状に遮光部6が形成された例を挙げることができる。
【0249】
本実施態様のパターン形成体は、パターン形成体の開口部に着色層等の機能性部が形成され、カラーフィルタ等の機能性素子とされた場合に、光触媒含有層が、フッ素原子を含有するものであるので、その後の工程等において、光触媒含有層中のフッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることを防止することができるといった利点を有する。
【0250】
具体的には、例えば、光触媒含有層中にバインダとして例えばフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンを用いた場合、光触媒含有層中にフッ素原子が残存する状態で開口部に着色層が形成されてカラーフィルタとされる場合があるが、その後の工程によっては、上記光触媒含有層中のフッ素原子が溶出して着色層中に存在してしまう可能性がある。このようなカラーフィルタを液晶表示素子として用いた場合は、上記着色層中のフッ素原子が液晶層中にイオン性不純物として溶出する可能性が残されており、このようなイオン性不純物が液晶層中に存在することは、液晶表示素子の表示等に悪影響を及ぼすものであることが知られている。
【0251】
本実施態様においては、光触媒含有層にフッ素原子が含有されていないものであるので、上述したような不具合が生じる可能性が無く、本実施態様のパターン形成体を用いて得られる機能性素子の品質を良好なものとすることができるといった利点を有するものである。
以下、このような本実施態様のパターン形成体について、各構成毎に説明する。
【0252】
(光触媒含有層)
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、光触媒を含有し、かつフッ素原子が含有されていないものであれば特に限定されるものではない。本実施態様においてフッ素原子が含有されていないとは、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)による測定において、含有される光触媒の金属原子を100とした場合、10以下、好ましくは5以下である場合をいう。したがって、光触媒から光触媒含有層が形成されている場合、光触媒およびフッ素原子を含有しないバインダから光触媒含有層が形成されている場合等が光触媒含有層が無機材料からなる場合に該当するといえる。
【0253】
本実施態様においては、上記光触媒含有層の膜厚が10nm〜200nmの範囲内、中でも10nm〜120nmの範囲内、特に15nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。これにより、パターン形成体の光透過性を良好とすることができ、さらにヘイズ値を低下させることができるので、例えばパターン形成体をカラーフィルタ等の表示素子用に用いた場合に利点を有するからである。
【0254】
本実施態様に用いられる光触媒含有層のその他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0255】
また、本実施態様に用いられるフッ素原子を含有しないバインダ材料としては、例えばフルオロアルキル基等のフッ素原子を有する置換基を有さないポリシロキサン等を挙げることができる。
【0256】
その他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0257】
(遮光部)
次に、本実施態様における遮光部について説明する。本実施態様における遮光部は、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるが、中でも表面にフッ素を含有するものであることが好ましい。
【0258】
なお、ここで遮光部表面にフッ素が含有されているか否かは、X線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i-XL)により測定した場合、表面にのみフッ素原子が存在する場合を示すものである。
【0259】
(基材)
本実施態様に用いられる基材に関しては、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0260】
(用途)
本実施態様のパターン形成体は、開口部等に機能部が形成されてなる機能性素子として通常用いられるものであり、具体的には、開口部に機能部として着色層が形成されたカラーフィルタとして好適に用いられる。
【0261】
C.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述したパターン形成体の親液性領域上に着色層が形成されたものである。上述したパターン形成体上には、光触媒含有層または中間層が露出した親液性領域と、撥液性の高い撥液性樹脂層とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、高精細に上記親液性領域のみに着色層が形成されたものとすることができる。
【0262】
ここで、上述した「B.パターン形成体」のうち、第1実施態様におけるパターン形成体を用いてカラーフィルタが形成されている場合、上記親液性領域表面にフッ素が含有されていないものとされている。そのため、着色層中に光触媒含有層からフッ素原子が溶出等することのない、高品質なカラーフィルタとすることができるという利点を有する。
【0263】
また、上述した「B.パターン形成体」のうち、第2実施態様におけるパターン形成体を用いてカラーフィルタが形成されている場合、上記中間層が形成されていることから、親液性領域に形成された着色層と光触媒含有層等との密着性を良好なものとすることができるという利点を有する。
【0264】
なお、本発明においては、上記パターン形成体の撥液性樹脂層として、遮光性を有するものが用いられていることが好ましい。これにより、別途ブラックマトリクスを形成することなく、製造効率よくカラーフィルタが製造されたものとすることができるからである。なお、本発明におけるカラーフィルタの各部材の材料や製造方法等については、一般的なカラーフィルタにおけるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0265】
D.有機EL素子
次に、本発明の有機EL素子について説明する。本発明の有機EL素子は、上記親液性領域上に有機EL層が形成されたものである。上述したパターン形成体上には、光触媒含有層または中間層が露出した親液性領域と、撥液性の高い撥液性樹脂層とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、高精細に上記親液性領域のみに有機EL層が形成されたものとすることができる。
【0266】
なお、上記有機EL層とは、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布によるウェットプロセスで有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で形成される場合が多いが、有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
【0267】
なお、本発明における有機EL素子の各部材の材料や製造方法等については、一般的な有機EL素子におけるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0268】
E.マイクロレンズ
次に、本発明におけるマイクロレンズについて説明する。本発明のマイクロレンズは、上記親液性領域にレンズが形成されたことを特徴とするものである。上述したパターン形成体上には、光触媒含有層または中間層が露出した親液性領域と、撥液性の高い撥液性樹脂層とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、高精細に上記親液性領域のみにレンズが形成されたものとすることができる。
【0269】
なお、本発明におけるマイクロレンズの各部材の材料や製造方法等については、一般的なマイクロレンズに用いられるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0270】
F.細胞培養用基板
次に、本発明における細胞培養用基板について説明する。本発明に用いられる細胞培養用基板は、上記親液性領域上が、細胞を培養するために用いられることを特徴とするものである。本発明によれば、上記撥液性樹脂層上の撥液性によって、上記撥液性樹脂層上には細胞が接着しないものとすること等ができる。これにより、上記親液性領域上でのみ、細胞を培養することが可能となり、高精細なパターン状に細胞を培養することが可能なものとすることができるのである。
【0271】
なお、本発明の細胞培養用基板に用いられる他の部材や、培養する細胞等については、一般的な細胞培養用基板に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0272】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0273】
(実施例1)
1.光触媒含有層の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.7mmガラス基板(基材)上に均一にスピンコーターにて塗布し、0.10μmの膜厚の光触媒含有層付基板を得た。
【0274】
2.遮光部形成
上記光触媒含有層上にカーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鉄化学製V−259BKレジスト)を塗布し、露光を行った後、現像、ポストベーク処理を行って、膜厚1.0μm、幅20μm、開口部が280μm×280μmの遮光部を形成し、パターニング用基板とした。
【0275】
3.大気圧フッ素プラズマ処理
上記パターニング用基板に対し、CF4を12L/min、N2を20L/min流し、搬送速度0.5m/minで2回処理した。電源出力190V−4.8Aとした。
【0276】
4.エネルギー照射
上記パターニング用基板の上記光触媒含有層側から幅10μmの遮光部と幅290μmのライン&スペースを有するフォトマスクを用いて、上記開口部に高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にて300秒間エネルギーを照射し、撥液性物質を分解除去し、開口部の親液化を行い、パターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上記開口部の中心部の50μm四方の領域に、直径20μmの純水を滴下し、極小接触角計(協和界面科学(株)社製 極小接触角計MCA−1)で測定した値である。
【0277】
5.着色層形成
親液化を行い濡れ性が変化した開口部に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。上記パターニング用基板上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0278】
(実施例2)
1.光触媒含有層の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.7mmガラス基板上(基材)に均一にスピンコーターにて塗布し、0.10μmの膜厚の光触媒含有層付基板を得た。
【0279】
2.遮光部形成
上記光触媒含有層上にカーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鉄化学製V−259BKレジスト)を塗布し、露光を行った後、現像、ポストベーク処理を行って、膜厚1.0μm、幅20μm、開口部が280μm×280μmの遮光部を形成してパターニング用基板とした。
【0280】
3.大気圧フッ素プラズマ処理
上記パターニング用基板に対し、CF4を12L/min、N2を20L/min流し、搬送速度0.5m/minで2回処理した。電源出力190V−4.8Aとした。
【0281】
4.エネルギー照射
高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にて上記パターニング用基板の基材側から300秒間照射し、撥液性物質を分解除去し、開口部の親液化を行い、パターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0282】
5.着色層形成
親液化を行い濡れ性が変化した部位に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。パターン形成体上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0283】
(実施例3)
1.光触媒処理層側基板の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.5mm石英基板上(基体)に均一にスピンコーターにて塗布し、0.15μmの膜厚の光触媒処理層が形成された光触媒処理層側基板を得た。
このとき、上記光触媒処理層側基板においては、光触媒処理層と上記石英基板(基体)との間に幅10μmの遮光層と幅290μmの開口部とが複数本ストライプ状に形成されたものを用いた。
【0284】
2.エネルギー照射
実施例1と同様の方法により「3.大気圧フッ素プラズマ処理」までの工程で得たフッ素プラズマ処理済みのパターニング用基板に対し、上記光触媒処理層側基板を光触媒処理層側を内側にして対向させ、50μmの間隔を開けて光触媒処理層側基板側から高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にてアライメント露光を300秒間し、開口部および遮光部端部から5μmの部分に対しても親液化させたパターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0285】
3.着色層形成
親液化を行い濡れ性が変化した部位に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。パターン形成体上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0286】
(実施例4)
1.光触媒含有層基板の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.5mm石英基板上に均一にスピンコーターにて塗布し、0.15μmの膜厚の光触媒処理層を有する光触媒処理層側基板を得た。
【0287】
2.エネルギー照射
実施例1と同様の方法により「3.大気圧フッ素プラズマ処理」までの工程で得たフッ素プラズマ処理済みのパターニング用基板に対し、上記光触媒処理層側基板を光触媒処理層と上記遮光部とが密着するように配置した後、上記パターニング用基板の基材側から高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にて400秒間露光し、パターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0288】
3.着色層形成
エネルギー照射後、親液化した部位に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行い、パターン形成体上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0289】
(実施例5)
1.光触媒処理層側基板の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.5mm石英基板上に均一にスピンコーターにて塗布し、0.15μmの膜厚の光触媒処理層を有する光触媒処理層側基板を得た。
【0290】
2.エネルギー照射
実施例1と同様の方法により「3.大気圧フッ素プラズマ処理」までの工程で得たフッ素プラズマ処理済みのパターニング用基板に対し、光触媒処理層側基板の光触媒処理層を内側にして対向させ、50μmの間隔を開けてパターニング用基板の基材側から高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にて300秒間露光してパターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0291】
3.着色層形成
親水化を行い濡れ性が変化した部位に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。パターン形成体上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0292】
(実施例6)
1.光触媒含有層の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍に希釈し、370mm×470mm×0.7mmガラス基板上に均一にスピンコータにて塗布し、約0.15μmの膜厚の光触媒含有層付基板を得た。
【0293】
2.中間層の形成
デシルトリメトキシシラン1.5gとテトラメトキシシラン5gと0.1規定塩酸2gとを混合し、5時間攪拌した。これをイソプロパノールで10倍希釈し、先の光触媒含有層付基板上に均一にスピンコータにて塗布し、膜厚0.1μmの中間層を得た。
【0294】
3.樹脂層の形成
上記中間層が形成されたガラス基板に対しカーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鉄化学製V−259BKレジスト)を塗布し、露光を行った。その後、現像、ポストベーク処理を行って、膜厚1.0μm、幅20μm、開口部が280μm×280μmの遮光性を有する樹脂層を形成した。
【0295】
4.大気圧フッ素プラズマ工程
前記基板に対し、CF4を12L/min、N2を20L/min流し、搬送速度0.5m/minで2回処理した。電源出力190V−4.8Aとした。その後、水の接触角を測定したところ、樹脂層上は104°、開口部(中間層)は6°であった。
【0296】
5.着色層形成
親水化された開口部に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。上記樹脂層を有するガラス基板上に赤色の着色層(1.5μm)が形成された。上記着色層は樹脂層壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。次いで青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【図面の簡単な説明】
【0297】
【図1】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図3】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図4】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図5】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図6】本発明のパターン形成体の製造方法に用いられるパターニング用基板の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図8】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図9】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図10】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図11】本発明のパターン形成体の一例を示す概略断面図である。
【図12】本発明のパターン形成体の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0298】
1 …基材
2 …光触媒含有層
3 …樹脂層
4 …パターニング用基板
5 …プラズマ
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液性を有する領域および親液性を有する領域が高精細に形成されたパターン形成体、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の種々のパターンを形成するパターン形成体の製造方法としては、各種のものが製造されている。
【0003】
高精細なパターンを形成する方法として、基材上に塗布したフォトレジスト層にパターン露光を行い、露光後、フォトレジストを現像し、さらにエッチングを行ったり、フォトレジストに機能性を有する物質を用いて、フォトレジストの露光によって目的とするパターンを直接形成する等のフォトリソグラフィーによるパターン形成体の製造方法が知られている。
【0004】
フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成は、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタの着色パターンの形成、マイクロレンズの形成、精細な電気回路基板の製造、パターンの露光に使用するクロムマスクの製造等に用いられているが、これらの方法によっては、フォトレジストを用いると共に、露光後に液体現像液によって現像を行ったり、エッチングを行う必要があるので、廃液を処理する必要が生じる等の問題点があり、またフォトレジストとして機能性の物質を用いた場合には、現像の際に使用されるアルカリ液等によって劣化する等の問題点もあった。
【0005】
また、カラーフィルタ等の高精細なパターンを印刷等によって形成することも行われているが、印刷で形成されるパターンには、位置精度等の問題があり、高精度なパターンの形成は困難であった。
【0006】
そこで、基材上に着色層を形成する着色層形成用塗工液を留めるためのバンクを形成し、このバンクにフッ素化合物を導入ガスとしてプラズマ処理をし、バンクを撥液性としてインクジェット法等により着色層等の機能性部を形成する方法が提案されている(特許文献1)。この方法によれば、上記プラズマ処理によって、有機物であるバンクのみにフッ素を導入することができ、また無機物からなる基材上にはフッ素を導入しないものとすることができる。これにより、バンクが形成されていない開口部にのみ、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液を塗布等して、機能性部を形成することができるのである。
【0007】
しかしながらこの方法において、上記開口部にバンクを形成した際の残渣等の不純物が付着している場合、上記プラズマ処理によってこの不純物にフッ素が導入されてしまうこととなる。これにより、上記機能性部形成用塗工液を塗布した際、開口部上で機能性部形成用塗工液が濡れ広がることが阻害され、例えば機能性部として着色層を形成した場合、着色層に白抜け等の問題が生じる場合があった。
【0008】
【特許文献1】特開2000−187111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、プラズマ照射を利用して、親液性および撥液性のパターンを形成する際、目的とする領域のみ、高精細に撥液性とされた、高品質なパターン形成体、およびその製造方法の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記プラズマ照射工程により、上記樹脂層にフッ素を導入することが可能であり、上記樹脂層表面を撥液性とすることができる。また本発明によれば、プラズマ照射の際に発生する光によって、光触媒含有層中の光触媒を励起させることができることから、樹脂層を形成した際の残渣等、樹脂層により区画された開口部に存在する撥液性物質を除去することができる。したがって、上記樹脂層が撥液性を有するものとすることができ、樹脂層と、上記開口部との濡れ性の差を利用して高精細な機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができる。
【0012】
上記発明においては、上記光触媒含有層上に、シランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層が形成され、上記中間層上に上記樹脂層がパターン状に形成されていてもよい。この場合、上記中間層が露出している領域では、プラズマ照射によってシランカップリング剤またはその重合体のSi−C結合が切断されてSi元素に結合していた有機基が除去され、その部分にOH基等が導入されることとなる。したがって、上記樹脂層表面と、中間層が露出した領域との濡れ性の差を大きなものとすることができ、この濡れ性の差を利用して、上記中間層が露出した領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。またさらにこの場合、上記中間層によって、樹脂層やこのパターン形成体上に形成される機能性部と、光触媒含有層との密着性を良好なものとすることができるという利点も有している。
【0013】
また、上記発明においては、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程を有することが好ましい。これにより、上記樹脂層により区画された開口部に存在する樹脂層を形成した際の残渣や、上記プラズマ照射工程によりその残渣に導入されたフッ素等の撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用によって除去することができる。したがって、親液性領域と撥液性領域との濡れ性の差をより大きなものとすることができ、このような濡れ性の差を利用して、上記親液性領域にのみに、より高精細な機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができるからである。
【0014】
さらに、上記発明においては、上記樹脂層が、少なくとも遮光材料を含有する遮光部であってもよい。これにより、例えば本発明により製造されたパターン形成体の親液性領域上に着色層を形成してカラーフィルタを製造する際、上記樹脂層をブラックマトリクスとして用いることができ、効率よくカラーフィルタを製造すること等が可能となるからである。
【0015】
本発明は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、上記光触媒含有層の上記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面にフッ素原子を含有しない親液性領域とされていることを特徴とするパターン形成体を提供する。
【0016】
本発明によれば、上記撥液性樹脂層の表面にフッ素が含有されており、また上記光触媒が露出している領域においては、フッ素が含有されていないものとされている。そのため、上記撥液性樹脂層表面と、光触媒が露出している領域、すなわち親液性領域との濡れ性の差が大きく、これらの表面の濡れ性の差を利用して、上記光触媒含有層が露出している領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。また、本発明においては、パターン形成体の開口部に着色層等の機能性部が形成されてカラーフィルタ等の機能性素子とされた場合に、光触媒含有層の表面がフッ素原子を含有しないものであるので、その後の工程等において、光触媒含有層の表面のフッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることを防止することができるといった利点を有する。
【0017】
また本発明は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、シランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、上記中間層上にパターン状に形成され、表面にフッ素が含有されている撥液性樹脂層とを有し、上記中間層の上記撥液性樹脂層が形成されていない領域が親液性領域であることを特徴とするパターン形成体を提供する。
【0018】
本発明によれば、上記撥液性樹脂層の表面にフッ素が含有されていることから、上記撥液性樹脂層表面と、中間層が露出している領域、すなわち親液性領域との濡れ性の差を利用して、上記中間層が露出している領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。
【0019】
上記発明においては、上記中間層の上記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面の水との接触角が60°以下である親液性領域とされていることが好ましい。これにより、上記撥液性樹脂層上と、上記中間層が露出した領域との濡れ性の差を大きなものとすることができ、より高精細なパターン状に機能性部を形成することが可能となるからである。
【0020】
上記発明においては、上記撥液性樹脂層が、少なくとも遮光材料を含有する遮光部であってもよい。これにより、例えば本発明のパターン形成体の親液性領域上に着色層を形成してカラーフィルタを製造する際、上記樹脂層をブラックマトリクスとして用いること等が可能となるからである。
【0021】
また本発明は、上述したパターン形成体の上記親液性領域上に、着色層が形成されていることを特徴とするカラーフィルタ、上述したパターン形成体の上記親液性領域上に、有機エレクトロルミネッセント(以下有機ELともいう。)層が形成されていることを特徴とする有機EL素子、および上述したパターン形成体の上記親液性領域上に、レンズが形成されていることを特徴とするマイクロレンズを提供する。上述したパターン形成体には、撥液性樹脂層が形成された領域、すなわち撥液性領域と、上記親液性領域とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、上記親液性領域のみに高精細に各種機能性部が形成された機能性素子とすることができる。
【0022】
さらに本発明は、上述したパターン形成体の上記親液性領域上が、細胞を培養するために用いられることを特徴とする細胞培養用基板を提供する。本発明によれば、上記パターン形成体には、撥液性領域と親液性領域とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、上記親液性領域のみに高精細なパターン状に細胞を培養する細胞培養用基板とすることができるのである。
【0023】
本発明は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記遮光部上を撥液性とするプラズマ照射工程と、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記遮光部により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程とを有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0024】
本発明によれば、上記プラズマ照射工程により、有機物にフッ素を導入することが可能であることから、上記遮光部上を撥液性領域とすることができる。また、上記プラズマ照射工程後、撥液性物質除去工程を行うことにより、上記遮光部により区画された開口部に存在する遮光部を形成した際の残渣や、上記プラズマ照射工程によりその残渣に導入されたフッ素等の撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用によって除去することができる。これにより、上記遮光部のみが撥液性領域とされたものとすることができ、高精細な機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができる。
【0025】
上記発明においては、上記撥液性物質除去工程が、基体および、上記基体上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層を有する光触媒処理層側基板の上記光触媒処理層と、上記開口部とを間隙をおいて配置した後、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射する工程としてもよい。これにより、上記撥液性物質除去工程で、光触媒含有層中に含有される光触媒の作用だけでなく、光触媒処理層中に含有される光触媒の作用によっても、上記遮光部により区画された開口部に存在する撥液性物質を除去することができる。したがって、より効率よく撥液性物質除去工程を行うことができるからである。
【0026】
また、上記発明においては、上記撥液性物質除去工程が、上記基材側からエネルギーの照射が行われるものであってもよい。この場合、基材側から全面にエネルギーを照射した場合であっても、上記遮光部が形成されていることから、遮光部により区画された開口部のみにエネルギーを照射することができる。
【0027】
またさらに、上記発明においては、上記撥液性物質除去工程が、上記遮光部側からエネルギーの照射が行われるものであってもよい。この場合、基材や光触媒含有層が上記エネルギーを透過させないものであっても、上記開口部の撥液性物質を除去することができる。
【0028】
本発明はまた、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有し、上記光触媒含有層がフッ素原子を含有しないものであることを特徴とするパターン形成体を提供する。
【0029】
本発明によれば、パターン形成体の開口部に着色層等の機能性部が形成されてカラーフィルタ等の機能性素子とされた場合に、光触媒含有層がフッ素原子を含有しないものであるので、その後の工程等において、光触媒含有層中のフッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることを防止することができるといった利点を有する。
【0030】
上記発明においては、上記光触媒含有層の膜厚が10nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。これにより、パターン形成体自体の光透過性を良好とすることができ、さらにヘイズ値を低下させることができるので、例えば本発明のパターン形成体を用いてカラーフィルタ等の表示素子とした場合に利点を有するからである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、上記樹脂層が撥液性とされたものとすることができ、樹脂層および開口部の液体との接触角の差を利用して、高精細な機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、撥液性を有する領域および親液性を有する領域が高精細に形成されたパターン形成体の製造方法、およびパターン形成体に関するものである。以下、それぞれ詳しく説明する。
【0033】
A.パターン形成体の製造方法
まず、本発明のパターン形成体の製造方法について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法には、以下の2つの態様がある。以下、それぞれについてわけて説明する。
【0034】
1.第1の態様
まず、本発明のパターン形成体の製造方法の第1の態様について説明する。本態様におけるパターン形成体の製造方法は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするものである。
【0035】
本態様のパターン形成体の製造方法は、例えば図1に示すように、基材1とその基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上にパターン状に形成された樹脂層3とを有するパターニング用基板4に、プラズマ5を照射するプラズマ照射工程を行って、パターン形成体を製造する方法である。この際、プラズマ照射は、樹脂層3側からフッ素化合物を導入ガスとして行われる。
【0036】
フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射した場合、有機物にフッ素を導入することができ、表面を撥液性とすることができる。したがって、本態様によれば上記プラズマ照射工程においてプラズマ照射を行うことにより、樹脂層上を撥液性領域とすることができる。しかしながら、一般的には上記開口部に、上記樹脂層を形成した際の残渣等が存在しており、上記プラズマ照射工程でこの残渣等にもフッ素が導入されてしまうことから、樹脂層だけでなく、開口部上にも撥液性の領域が形成されてしまう場合があった。
【0037】
本態様においては、上記光触媒含有層が形成されていることから、プラズマ照射の際に発生する光によって、上記開口部(例えば図1においてaで示される部分)に露出している光触媒含有層中の光触媒を励起させることが可能である。したがって、プラズマ照射により樹脂層表面にフッ素を導入するのと同時に、光触媒の作用によって、上記開口部表面に付着した残渣や、この残渣に導入されたフッ素等、開口部に存在する撥液性物質を除去することができる。これにより、上記樹脂層上を撥液性、上記開口部上を親液性として用いることが可能となり、上記樹脂層上および開口部上の濡れ性の差を利用して、種々の機能性部を高精細に形成可能なパターン形成体とすることができるのである。以下、本態様のパターン形成体の製造方法プラズマ照射工程、およびその他の工程について詳しく説明する。
【0038】
a.プラズマ照射工程
まず、本態様におけるプラズマ照射工程について説明する。本態様におけるプラズマ照射工程は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とする工程である。
【0039】
本態様においては、後述するように、パターニング用基板の樹脂層として、少なくとも樹脂を含有するものが用いられることから、本工程によりプラズマ照射をした場合、上記樹脂層上にフッ素を導入することができ、樹脂層上を撥液性を有する領域として用いることが可能となるのである。また、本工程によりプラズマ照射をした場合、プラズマ照射の際に発生する光によって、樹脂層により区画された開口部における光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記開口部に存在する撥液性物質を効率的に除去することが可能である。以下、本工程に用いられるパターニング用基板、およびプラズマの照射方法についてそれぞれ説明する。
【0040】
(パターニング用基板)
まず、本工程に用いられるパターニング用基板について説明する。本工程に用いられるパターニング用基板は、基材と、その基材上に形成された光触媒含有層と、その光触媒含有層上にパターン状に形成された樹脂層とを有するものであり、上記樹脂層上に後述するプラズマ照射によってフッ素を導入することが可能なものであれば特に限定されるものではない。このようなパターニング用基板として、例えば基材と光触媒含有層との間に、密着性を向上させるためのアンカー層等が形成されていてもよく、また例えば光触媒含有層と樹脂層との間に密着性を良好なものとするためのプライマー層等が形成されていてもよい。以下、本工程に用いられるパターニング用基板の各構成ごとに説明する。
【0041】
(1)樹脂層
本態様に用いられる樹脂層としては、樹脂を含有するものであり、その形状や膜厚等については、パターン形成体の用途や樹脂層の種類等によって、適宜選択される。
【0042】
このような樹脂層は、パターン形成体の用途に応じて適宜選択され、例えば透明性を有するものであってもよく、また遮光性を有するものであってもよい。また着色されているもの等であってもよい。また本態様においては、上記樹脂層の幅が、1μm以上、中でも5μm以上の幅を有することが好ましい。これにより、樹脂層を挟んで隣接する領域に機能性部を形成した場合であっても、これらの機能性部どうしがつながってしまうことを防止することができるからである。
【0043】
また、上記樹脂層の膜厚についても、本工程によりフッ素が導入されて撥液性を発現することが可能な膜厚であれば、特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途等に応じて適宜選択される。通常、このような膜厚としては、0.01μm〜1mm程度、中でも0.1μm〜0.1mm程度とすることができる。
【0044】
また、上記樹脂層の形成に用いられる材料としては、上述したような樹脂層を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。
【0045】
また、上記樹脂層の形成方法としては、上記材料からなる層をパターン状に形成する一般的な方法と同様とすることができ、例えば印刷法やフォトリソグラフィー法等を用いることができる。また、後述する光触媒含有層中にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する材料が含有されている場合には、樹脂層を形成するパターン状にエネルギーを照射することにより、上記光触媒含有層の液体との接触角をパターン状に変化させ、この濡れ性の差を利用して上記樹脂層を形成する方法等であってもよい。このような光触媒含有層を用いたパターニング方法としては、例えば特開2002−40230号公報に記載されている方法と同様とすることができる。
【0046】
ここで、本態様に用いられる樹脂層は、遮光材料を含有する遮光部であってもよい。この場合、例えば、本態様により製造されたパターン形成体を用いてカラーフィルタを製造する際、上記樹脂層をブラックマトリクスとして用いること等が可能となるという利点を有している。
【0047】
本態様において、このような遮光部を形成する方法としては、例えば、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法等が挙げられる。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0048】
また本態様においては、上記遮光部が熱転写法により形成されたものとすることもできる。遮光部を形成する熱転写法とは、通常、透明なフィルム基材の片面に光熱変換層と遮光部転写層を設けた熱転写シートを基材上に配置し、遮光部を形成する領域にエネルギーを照射することによって、遮光部転写層が基材上に転写されて遮光部が形成されることとなるものである。
【0049】
熱転写法により転写される遮光部は、通常、遮光材料と結着剤により構成されるものであり、遮光材料としては、カーボンブラック、チタンブラック等の無機粒子等を用いることができる。このような遮光材料の粒子径としては、0.01μm〜1.0μm、中でも0.03μm〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。
【0050】
また、結着剤としては、熱可塑性と熱硬化性とを有する樹脂組成とすることが好ましく、熱硬化性官能基を有し、かつ軟化点が50℃〜150℃の範囲内、中でも60℃〜120℃の範囲内である樹脂材料および硬化剤等により構成されることが好ましい。このような材料として具体的には、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物またはエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤との組み合わせ等が挙げられる。またエポキシ樹脂の潜在性硬化剤としては、ある一定の温度まではエポキシ基との反応性を有さないが、加熱により活性化温度に達するとエポキシ基との反応性を有する分子構造に変化する硬化剤を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂との反応性を有する酸性または塩基性化合物の中性塩や錯体、ブロック化合物、高融点体、マイクロカプセル封入物が挙げられる。また、上記遮光部中に、上記の材料の他に、離型剤、接着補助剤、酸化防止剤、分散剤等を含有させることもできる。
【0051】
(2)光触媒含有層
次に、本工程に用いられるパターニング用基板の光触媒含有層について説明する。本工程に用いられる光触媒含有層は、少なくとも光触媒を含有する層であり、本工程において、上記樹脂層により区画された開口部、すなわち光触媒含有層表面に存在する撥液性物質をプラズマ照射の際に発生する光に伴う光触媒の作用により除去することが可能なものであれば、特に限定されるものではない。また、後述する撥液性物質除去工程において、上記樹脂層により区画された開口部、すなわち光触媒含有層上に存在する撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することが可能なものであることが好ましい。これにより、エネルギー照射により、光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記光触媒含有層表面に付着した残渣や導入されたフッ素等の撥液性物質を効率的に除去することが可能となるからである。
【0052】
このような光触媒含有層としては、例えば光触媒のみからなる層であってもよく、また光触媒とバインダとを含有する層であってもよい。上記光触媒含有層がバインダを含有する場合、後述するプラズマ照射によりフッ素が導入される場合もあるが、後述する撥液性物質除去工程等により、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、上記フッ素等を除去することができるからである。また本態様においては、プラズマ照射の際に発生する光によって励起された光触媒の作用によっても、上記フッ素等を除去することも可能である。
【0053】
なお、上記光触媒含有層が光触媒のみからなる場合には、基材上の開口部に存在する撥液性物質等を除去する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。また、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。また、例えばバインダまたは添加剤としてシランカップリング剤、またはその重合体が用いられている場合には、本工程におけるプラズマ照射により、シランカップリング剤またはその重合体のSi−C結合が切断されて、その部分にOH基が導入されるものとすることができる。これにより、光触媒含有層が露出している領域、すなわち開口部の親液性を高いものとすることができ、樹脂層表面と開口部表面との濡れ性の差を大きなものとすることができる。
【0054】
光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本態様においては、このキャリアが上記残渣等の撥液性物質や、バインダ等の有機物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0055】
本態様に用いられる光触媒含有層中に含有される光触媒としては、半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができる。また半導体以外としては、金属錯体や銀なども用いることができる。本態様においては、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
本態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0057】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0058】
また、上記酸化チタンとして可視光応答型のものを用いてもよい。可視光応答型の酸化チタンとは、可視光のエネルギーによっても励起されるものであり、このような可視光応答化の方法としては、酸化チタンを窒化処理する方法等が挙げられる。
【0059】
酸化チタン(TiO2)は、窒化処理をすることにより、酸化チタン(TiO2)のバンドギャップの内側に新しいエネルギー準位が形成され、バンドギャップが狭くなる。その結果、通常酸化チタン(TiO2)の励起波長は380nmであるが、その励起波長より長波長の可視光によっても、励起されることが可能となるのである。これにより、種々の光源によるエネルギー照射の可視光領域の波長も酸化チタン(TiO2)の励起に寄与させることが可能となることから、さらに酸化チタンを高感度化させることが可能となるのである。
【0060】
ここで、本態様でいう酸化チタンの窒化処理とは、酸化チタン(TiO2)の結晶の酸素サイトの一部を窒素原子での置換する処理や、酸化チタン(TiO2)結晶の格子間に窒素原子をドーピングする処理、または酸化チタン(TiO2)結晶の多結晶集合体の粒界に窒素原子を配する処理等をいう。
【0061】
酸化チタン(TiO2)の窒化処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、結晶性酸化チタンの微粒子をアンモニア雰囲気下で700℃の熱処理により、窒素をドーピングし、この窒素のドーピングされた微粒子と、無機バインダや溶媒等を用いて、分散液とする方法等が挙げられる。
【0062】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0063】
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより本工程や後述する撥液性物質除去工程において、樹脂層により区画された開口部に存在する撥液性物質等を分解除去することが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に撥液性物質等を効率よく分解除去することが可能となる。
【0064】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0065】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起、およびプラズマの照射により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、シランカップリング剤またはその重合体であるものが好ましく、具体的には、特開2000−249821号公報に記載されているもの等と同様のものとすることができる。
【0066】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
【0067】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0068】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0069】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0070】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤や添加剤等を用いることができ、例えば特開2001−074928に記載されているようなものを用いることができる。
【0071】
(3)基材
次に、本態様に用いられる基材について説明する。本態様に用いられる基材は、上記光触媒含有層を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途等に応じてその種類や可撓性や透明性等は適宜選択される。本態様において上記基材は、有機材料からなるものであってもよく、また無機材料からなるものであってもよい。具体的には、樹脂製フィルム、ガラス、セラミック、金属からなるもの等を用いることができ、板状のものであることが好ましい。
【0072】
また基材のエネルギー透過性については、パターン形成体の用途や種類、後述する撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向等により適宜選択される。例えば、後述する撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向が、基材側からである場合には、上記基材がそのエネルギーに対して透過性を有することが必要とされる。一方、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向が樹脂層側からである場合には、上記基材には特にエネルギー透過性は必要とされない。
【0073】
なお、本態様において、上記基材の表面は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施されたものであってもよい。また、例えば上記光触媒含有層との密着性を向上させるために、アンカー層等が形成されたものであってもよい。
【0074】
(プラズマの照射方法)
次に、本工程におけるプラズマの照射方法について説明する。本工程におけるプラズマの照射方法は、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、上記樹脂層上を撥液性とすることが可能であれば、特に限定されるものではなく、減圧下でプラズマ照射してもよく、また大気圧下でプラズマ照射してもよい。
【0075】
このようなプラズマの照射の際、導入ガスとして用いられるフッ素化合物としては、例えばフッ化炭素(CF4)、窒化フッ素(NF3)、フッ化硫黄(SF6)、CHF3、C2F6、C3F8、C5F8等が挙げられる。また、照射されるプラズマの照射条件としては、照射装置等により適宜選択される。
【0076】
ここで、本態様においては、上記プラズマ照射が大気圧中でのプラズマ照射であることが好ましい。これにより、減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面から好ましいものとすることができるからである。このような大気圧プラズマの照射条件としては、以下のようなものとすることができる。例えば、電源出力としては、一般的なプラズマの照射装置に用いられるものと同様とすることができる。また、この際、照射されるプラズマの電極と、上記樹脂層との距離は、0.2mm〜20mm程度、中でも1mm〜5mm程度とされることが好ましい。またさらに、上記導入ガスとして用いられるフッ素化合物の流量は1L/min〜20L/min程度、上記フッ素化合物と同時に流す窒素ガスの流量は1L/min〜50L/min程度であることが好ましい。また、この際の基板搬送速度としては、0.5m/min〜2m/min程度とすることが好ましい。
【0077】
本工程において、上記樹脂層に導入されたフッ素の存在は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)に用いられるX線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i-XL)による分析において、樹脂層の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。また、この際樹脂層に導入されるフッ素の割合としては、樹脂層の表面より検出される全元素のうち10%以上とされることが好ましい。
【0078】
また、本工程においては、上記樹脂層の液体との接触角が、その樹脂層に区画された開口部の水との接触角より1°以上高くなるように上記プラズマ照射が行われることが好ましい。これにより、上記樹脂層および上記樹脂層に区画された開口部の液体との接触角の差を利用して、本態様により製造されたパターン形成体上に、例えばカラーフィルタの着色層等の機能性部を形成することが可能となるからである。
【0079】
また本態様においては特に、上記樹脂層の水との接触角が61°以上、中でも80°以上、特に100°以上となるようにプラズマ照射されることが好ましい。これは、上記樹脂層において上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、本態様により製造されたパターン形成体の開口部上に、例えばカラーフィルタの着色層等の機能性部を形成する際、樹脂層上にも機能性部を形成するための機能性部形成用塗工液等が付着する可能性があるからである。
【0080】
なお、ここでいう水との接触角は、水または水と同等の接触角を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。
【0081】
b.その他の工程
ここで、本態様のパターン形成体の製造方法は、上述したプラズマ照射工程以外にも、必要に応じて他の工程を有していてもよく、本態様においては、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記樹脂層により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程を有することが好ましい。すなわち、基材と、前記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記基材上に形成され、すくなくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとしてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程と、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記樹脂層により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程とを有するパターン形成体の製造方法とすることができる。
【0082】
本態様においては、上記光触媒含有層が形成されていることから、上記エネルギー照射により、光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記光触媒含有層表面に付着した残渣や導入されたフッ素等の撥液性物質を効率的に除去することが可能となる。
以下、撥液性物質除去工程について詳しく説明する。
【0083】
(撥液性物質除去工程)
本態様における撥液性物質除去工程は、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記樹脂層により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する工程である。上記撥液性物質とは、上記樹脂層により区画された開口部に存在し、機能性部を形成するために用いられる機能性部形成用塗工液と上記開口部との接触角を上昇させる物質をいうこととし、例えば開口部表面に付着している樹脂層形成時の残渣等の有機物や、その残渣に上記プラズマ照射工程により導入されたフッ素、または上記光触媒含有層中に導入されたフッ素等が挙げられる。本工程において、上記撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することにより、樹脂層上が撥液性を有するものとすることができ、樹脂層により区画された開口部に、上記機能性部形成用塗工液を高精細に塗布することが可能となるのである。
【0084】
ここで本工程においては、上記樹脂層により区画された開口部の撥液性物質が除去されて、開口部の表面の水との接触角が60°以下、好ましくは40°以下、特に20°以下となるように上記エネルギー照射が行われることが好ましい。上記開口部における液体との接触角が高い場合は、本態様により製造されたパターン形成体の上記開口部上においても、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、高精細に機能性部を形成することが困難となるからである。なお、上記水との接触角は、上述した方法により測定される値である。
【0085】
なお、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方法については、エネルギーの照射方向等によって以下の4つの実施態様にわけられる。以下、それぞれの実施態様ごとにわけて説明する。
【0086】
(1)第1実施態様
まず、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第1実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第1実施態様としては、例えば図2に示すように、上記プラズマ照射工程終了後、基材1側から全面にエネルギーを照射することにより、上記樹脂層3により区画された開口部7にエネルギー8を照射し、上記開口部7上の撥液性物質を除去するものである。
【0087】
本実施態様によれば上記光触媒含有層上に樹脂層が形成されていることから、基材側からフォトマスク等を用いることなく全面にエネルギーを照射した場合であっても、上記樹脂層により区画された開口部にのみエネルギーを照射することができ、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、効率よく上記開口部上の撥液性物質等を除去することができる。またこの際、上記開口部においては、光触媒を含有する光触媒含有層が露出しており、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、効率よく上記開口部上の撥液性物質等を除去することができるのである。なお、上記エネルギー照射は、基材側から全面に行ってもよいが、例えばフォトマスク等を用いて行ってもよい。
【0088】
なお、本実施態様でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層により開口部の撥液性物質を除去することが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0089】
本実施態様に用いられるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中の光触媒を励起させることが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0090】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0091】
また、上述したような光源を用いてエネルギーを照射する方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0092】
ここで、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、樹脂層により区画された開口部が光触媒含有層中の光触媒の作用等により撥液性物質が分解除去されるのに必要な照射量とする。
【0093】
またこの際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な撥液性物質の除去を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0094】
(2)第2実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第2実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第2実施態様としては、例えば図3に示すように、基体11と、その基体11上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層12とを有する光触媒処理層側基板13を準備し、その光触媒処理層12と上記開口部7とを対向させて配置し、基材1側から全面にエネルギー8を照射し、樹脂層3により区画された開口部7の表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0095】
本実施態様によれば、上記光触媒処理層と上記開口部とを対向させてエネルギー照射を行うことから、上記基材側に形成されている光触媒含有層の光触媒の作用だけでなく、エネルギー照射に伴う上記光触媒処理層中の光触媒の作用によっても上記開口部表面に存在する撥液性物質を除去することができる。また本実施態様においては、上記樹脂層が遮光性を有する遮光部とされていることが好ましい。この場合、上記基材上には遮光部が形成されており、基材側からエネルギー照射が行われることから、全面にエネルギー照射した場合であっても、上記樹脂層により区画された開口部にのみエネルギー照射を行うことができる。したがって、本実施態様によれば、効率よく撥液性物質除去工程を行うことができる、という利点を有する。なお、本実施態様においては、上記樹脂層が遮光性を有していない場合、例えばフォトマスク等を用い、上記開口部にのみ光触媒の作用が及ぶものとすることが好ましい。以下、本工程に用いられる光触媒処理層側基板、および照射されるエネルギーについて説明する。
【0096】
(光触媒処理層側基板)
まず、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板について説明する。本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板は、基体と、その基体上に形成された光触媒処理層とを有するものであれば特に限定されるものではない。
【0097】
このような光触媒処理層側基板に用いられる基体としては、上記光触媒処理層を形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば可撓性を有する樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。
【0098】
なお、基体表面と上記光触媒処理層との密着性を向上させるため、また光触媒の作用による基体の劣化を防ぐために基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、シラン系、チタン系のカップリング剤や、反応性スパッタ法やCVD法等により作製したシリカ膜等が挙げられる。
【0099】
ここで、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板の光触媒処理層については、上述した光触媒含有層と同様のものを用いることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0100】
(エネルギー照射)
次に、本実施態様におけるエネルギー照射について説明する。本実施態様においては、上記樹脂層により区画された開口部と、上記光触媒処理層側基板の光触媒処理層とを、所定の間隙をおいて配置し、基材側からエネルギーを照射する。本実施態様においては、上述したように、上記樹脂層が遮光材料を含有する遮光部とされていることが好ましい。この場合、上記樹脂層が形成された領域においては、エネルギーが遮蔽されることから、樹脂層が形成されていない領域である開口部のみにエネルギーを照射することができ、エネルギー照射に伴う光触媒含有層および光触媒処理層の作用によって、開口部に存在する撥液性物質等を除去することができるからである。
【0101】
ここで、上記の配置とは、実質的に光触媒処理層の光触媒の作用が上記開口部に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、上記光触媒処理層と上記樹脂層とが密着している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒処理層と上記開口部とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
【0102】
本実施態様において上記間隙は、光触媒の感度も高く、したがって開口部の撥液性物質除去の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の開口部に対して特に有効である。
【0103】
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積の開口部に対して処理を行う場合は、上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板と上記開口部との間に形成することは極めて困難である。したがって、開口部が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンの精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して撥液性物質を除去する効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに開口部の撥液性物質除去にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0104】
このように比較的大面積の開口部にエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板と上記開口部との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく配置することが可能となるからである。
【0105】
このように光触媒処理層と開口部表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなるからである。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と開口部との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に撥液性物質を除去する速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が開口部に届き難くなり、この場合も撥液性物質等を除去する速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0106】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と開口部とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができるからである。また、このようなスペーサを用いることにより、光触媒の作用により生じた活性酸素種が拡散することなく、高濃度で基材表面に到達することから、効率よく開口部の撥液性物質除去を行うことができる。
【0107】
なお、上記光触媒処理層が可撓性を有する樹脂フィルム等の可撓性を有する基体上に形成された光触媒処理層側基板を用いる場合においては、上述したような間隙を設けることが難しく、製造効率等の面から、上記光触媒処理層と樹脂層とが接触するように配置されていることが好ましい。
【0108】
本実施態様においては、このような光触媒処理層側基板の配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0109】
本実施態様に用いられるエネルギーとしては、上記光触媒含有層および上記光触媒処理層中の光触媒を励起させることが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなものを用いることができる。また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、樹脂層により区画された開口部に存在する撥液性物質が光触媒含有層および光触媒処理層中の光触媒の作用等により分解等されるのに必要な照射量とする。
【0110】
また本実施態様においても、光触媒含有層または光触媒処理層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な撥液性物質の除去を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0111】
(3)第3実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第3実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第3実施態様としては、例えば図4に示すように、上記樹脂層3が形成された基材1の樹脂層3側から、上記樹脂層3により区画された開口部7に例えばフォトマスク9等を用いてエネルギー8を照射し、上記開口部7表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0112】
本実施態様によれば、上記樹脂層側から、樹脂層により区画された開口部に対してエネルギーを照射することにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により上記開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能となるのである。また、本実施態様においては、基材がエネルギーを透過させないものであっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することができる、という利点も有する。
【0113】
本実施態様により照射されるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記樹脂層により区画された開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなエネルギーを用いることができる。また本実施態様においては、例えばフォトマスク等用いてエネルギー照射したり、描画照射を行うこと等により、上記開口部のみにエネルギーを照射することができる。
【0114】
(4)第4実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第4実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第4実施態様としては、例えば図5に示すように、基体11と、その基体11上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層12とを有する光触媒処理層側基板13を準備し、その光触媒処理層12と上記樹脂層3とを対向させて配置し、光触媒処理層側基板13側から、例えばフォトマスク9等を用いてエネルギー8を照射し、樹脂層3により区画された開口部7の表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0115】
本実施態様によれば、上記樹脂層側に形成されている光触媒含有層中の光触媒の作用だけでなく、上記光触媒処理層中の光触媒の作用によっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することが可能となり、効率的に本工程を行うことができる。また、上記基材がエネルギーを透過させないものであっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することができる、という利点も有する。
【0116】
本実施態様により照射されるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中および光触媒処理層中の光触媒を励起させることができ、この光触媒の作用により上記樹脂層により区画された開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなエネルギーを用いることができる。なお、本実施態様においては、エネルギー照射の際、フォトマスク等を用いたり、上記光触媒処理層側基板に光触媒処理層側遮光部を形成すること等によりパターン状にエネルギーを照射する方法や、また第1実施態様で説明したようなレーザを用いて描画照射する方法を用いることにより、上記開口部のみにエネルギーを照射することができる。上記光触媒処理層側基板に設けることが可能な光触媒処理層側遮光部としては、上記基材上に設けられる遮光材料を含有する樹脂層と同様の方法や材料により形成することができる。また、上記光触媒処理層側遮光部としては、上記光触媒処理層上に形成してもよく、基体と光触媒処理層との間に形成してもよい。またさらに、上記光触媒処理層が形成される側と反対側の基体上に形成してもよい。
【0117】
ここで、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板や、光触媒処理層側基板の配置方法等については、上述した第2態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0118】
c.パターン形成体の用途
本態様において得られるパターン形成体は、種々の用途に用いることが可能であるが、開口部に着色層が形成されてなるカラーフィルタの形成に用いられることが好ましい。着色層をインクジェット法等の吐出法により形成することにより、工程上効率よくカラーフィルタを得ることができるからである。この場合、基材は可視光域で透明な透明基材が用いられ、具体的にはガラス等の無機材料、透明樹脂等の有機材料を挙げることができる。また上記樹脂層は遮光材料を含有する遮光部とされることが好ましい。
【0119】
また、本態様において得られるパターン形成体は、例えば開口部に有機EL層が形成されてなる有機EL素子の形成、または開口部にレンズが形成されてなるマイクロレンズの形成に用いられることが好ましい。本態様によれば、上記濡れ性の差を利用して、高精細に有機EL層やレンズを形成することが可能となり、高品質なものとすることができるからである。またさらに、上記開口部が細胞を培養するために用いられる細胞培養基板としてもよい。
【0120】
2.第2の態様
次に、本発明のパターン形成体の製造方法の第2の態様について説明する。本態様におけるパターン形成体の製造方法は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成されたシランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、上記中間層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするものである。
【0121】
本態様のパターン形成体の製造方法は、例えば図6に示すように、基材1とその基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上に形成された中間層10と、その中間層10上にパターン状に形成された樹脂層3とを有するパターニング用基板4に、樹脂層3側からフッ素化合物を導入ガスとして、プラズマ5を照射するプラズマ照射工程を行って、パターン形成体を製造する方法である。
【0122】
本態様によれば、上記プラズマ照射により、樹脂層にフッ素を導入することができ、樹脂層上を撥液性領域とすることができる。また上記樹脂層が形成されていない領域、すなわち開口部に中間層が露出している領域においては、上記プラズマ照射により、この開口部に露出している中間層のSi−C結合を切断し、その部分にOH基を導入すること等ができる。したがって、樹脂層表面と開口部表面との濡れ性の差を大きなものとすることができ、この濡れ性の差を利用して、開口部のみに高精細に機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができるのである。
【0123】
また本態様においては、上記中間層が形成されていることから、上記光触媒含有層と樹脂層との密着性や、光触媒含有層と、上記開口部上に形成されることとなる機能性部との密着性等を良好なものとすることができるという利点も有している。以下、本態様のパターン形成体の製造方法プラズマ照射工程、およびその他の工程について詳しく説明する。
【0124】
(1)プラズマ照射工程
本態様におけるプラズマ照射工程は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成されたシランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、上記中間層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記樹脂層上を撥液性とする工程である。以下、本態様に用いられるパターニング用基板、およびプラズマの照射方法について説明する。
【0125】
(パターニング用基板)
本工程に用いられるパターニング用基板について説明する。本工程に用いられるパターニング用基板は、基材と、その基材上に形成された光触媒含有層と、その光触媒含有層上に形成された中間層と、上記中間層上にパターン状に形成された樹脂層とを有するものであり、上記樹脂層上に後述するプラズマ照射によってフッ素を導入することが可能なものであれば特に限定されるものではない。このようなパターニング用基板として、例えば基材と光触媒含有層との間に、密着性を向上させるためのアンカー層等が形成されていてもよく、また例えば中間層と樹脂層との間に密着性を良好なものとするためのプライマー層等が形成されていてもよい。なお、上記基材、光触媒含有層、および樹脂層については、上述した第1の態様に用いられるパターニング用基板の項で説明したものと同様とすることができるので、以下、中間層について説明する。
【0126】
本態様に用いられる中間層としては、シランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有するものである。本態様においては、本工程におけるプラズマ照射によってシランカップリング剤またはその重合体中のSi−C結合が切断されて有機基が除去され、その部分に、雰囲気中の水分や酸素等によってOH基等が導入されることとなる。
【0127】
上記中間層に含有されるシランカップリング剤またはその重合体として具体的には、下記の化学式
YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基、クロロアルキル基、イソシアネート基、もしくはエポキシ基、またはこれらを含む有機基であり、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示されるシランカップリング剤、またはこれらの1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物である重合体であることが好ましい。なお、ここでXで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。また、Yで示される有機基全体の炭素数は1〜20の範囲内、中でも5〜10の範囲内であることが好ましい。
【0128】
上記シランカップリング剤として具体的には、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリイソプロポキシシラン、n−ヘキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;及び、それらの部分加水分解物;及びそれらの混合物を使用することができる。
【0129】
またフルオロアルキル基を含有する化合物としては、下記の化合物を挙げることができ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られているものを使用しても良い。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3
【0130】
ここで上記中間層の形成は、上記中間層がシランカップリング剤またはその重合体のみからなる層である場合には、上記材料を必要に応じて溶媒等に分散させて、例えばスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法によって基材上に塗布することにより行うことができる。この際、上記シランカップリング剤を空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させ、その後脱水縮重合させることにより、上記重合体からなる中間層を形成してもよい。なお、上記脱水縮重合は、常温で行ってもよいが、100℃以上で行うことにより、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。
【0131】
また、上記中間層がバインダを含有する場合、中間層にバインダとして用いられる材料としては、プラズマ照射により分解等されないものであることが好ましく、例えば無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xがハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0132】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合、例えば無定形シリカの前駆体と上記シランカップリング剤またはこれらの重合体とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に塗布し、上記と同様に、空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、脱水縮重合することにより中間層を形成できる。なお、これらのバインダは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0133】
ここで本態様においては、上記中間層の膜厚は、上記中間層の種類によって適宜選択されるものであるが、通常、中間層の膜厚は、1μm以下、中でも0.1μm以下とされる。また上記中間層の膜厚の下限としては、上記材料を含有する層が均一に形成されていればよく、例えば上述した材料からなる単分子膜等とされていてもよい。
【0134】
(プラズマの照射方法)
本工程におけるプラズマの照射方法は、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、上記樹脂層上を撥液性とし、上記中間層が露出した領域を親液性領域とすることが可能であれば、特に限定されるものではなく、減圧下でプラズマ照射してもよく、また大気圧下でプラズマ照射してもよい。このようなプラズマの照射方法としては、上述した第1の態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0135】
本工程において、上記樹脂層に導入されたフッ素の存在は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)に用いられるX線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i-XL)による分析において、樹脂層の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。また、この際樹脂層に導入されるフッ素の割合としては、樹脂層の表面より検出される全元素のうち10%以上とされることが好ましい。
【0136】
ここで、本工程においては、上記樹脂層の液体との接触角が、水との接触角が61°以上、中でも80°以上、特に100°以上となるようにフッ素が導入されることが好ましい。これは、上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、本態様のパターン形成体を用いて機能性素子を形成する際に、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液が樹脂層上にも付着する可能性があるからである。
【0137】
また、上記中間層が露出している領域の液体との接触角として具体的には、水との接触角が60°以下、中でも40°以下、特に20°以下とされていることが好ましい。上記中間層が露出している領域の液体との接触角が高い場合には、本態様のパターン形成体上に機能性部を形成する際、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、機能性部を高精細に形成することが困難となる場合があるからである。なお、上記液体との接触角は、上述した方法により測定される。
【0138】
b.その他の工程
ここで、本態様のパターン形成体の製造方法は、上述したプラズマ照射工程以外にも、必要に応じて他の工程を有していてもよく、本態様においては、上記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記樹脂層により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程を有していてもよい。上述した開口部表面に、例えば樹脂層を形成した際の残渣等が付着している場合には、上記樹脂層と開口部との濡れ性の差が小さく、上記濡れ性の差を利用して、高精細に機能性部を形成することが困難となる。そこで、上記開口部にエネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼし、上記開口部表面に存在する残渣等の撥液性物質を除去することにより、より開口部と樹脂層との濡れ性の差を大きなものとすることができるのである。また、上記プラズマ照射工程後、上記中間層に有機基が残存している場合であっても、上記エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、これらを除去することができ、より開口部表面を親液性の高いものとすることができるという利点も有している。
なお、本態様における撥液性物質除去工程については、上述した第1の態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0139】
3.その他の態様
また、本発明のパターン形成体の製造方法には、以下の態様も含まれる。
パターン形成体の製造方法の他の態様としては、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記遮光部上を撥液性とするプラズマ照射工程と、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記遮光部により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程とを有することを特徴とするものである。
【0140】
本態様のパターン形成体の製造方法は、例えば図7に示すように、基材1とその基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上に形成された遮光部6とを有するパターニング用基板4に、プラズマ5を照射するプラズマ照射工程(図7(a))と、上記遮光部6により区画された開口部7にエネルギー8を照射し、遮光部6により区画された開口部7表面に存在する撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程(図7(b))とを有するものである。
【0141】
フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射した場合、有機物にフッ素を導入することができ、表面を撥液性とすることができる。したがって、本態様によれば上記プラズマ照射工程においてプラズマ照射を行うことにより、遮光部上を撥液性領域とすることができる。しかしながら、一般的には上記開口部に、上記遮光部を形成した際の残渣等が存在しており、上記プラズマ照射工程でこの残渣等にもフッ素が導入されてしまうことから、遮光部だけでなく、開口部上にも撥液性の領域が形成されてしまう場合があった。
【0142】
そこで本態様においては、上記プラズマ照射工程終了後、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射して、上記開口部に付着している残渣や導入されたフッ素等を除去する撥液性物質除去工程を行う。本態様においては、上記光触媒含有層が形成されていることから、上記エネルギー照射により、光触媒含有層中の光触媒を励起させることができ、上記光触媒含有層表面に付着した残渣や導入されたフッ素等の撥液性物質を効率的に除去することが可能となる。したがって、上記遮光部上を撥液性、上記開口部上を親液性として用いることが可能となり、上記遮光部上および開口部上の濡れ性の差を利用して、種々の機能性部を高精細に形成可能なパターン形成体とすることができるのである。以下、本態様のパターン形成体の製造方法の各工程ごとに詳しく説明する。
【0143】
a.プラズマ照射工程
まず、本態様におけるプラズマ照射工程について説明する。本態様におけるプラズマ照射工程は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、上記遮光部上を撥液性とする工程である。
【0144】
本態様においては、後述するように、パターニング用基板の遮光部として、遮光材料および樹脂を含有するものが用いられることから、本工程によりプラズマ照射をした場合、上記遮光部上にフッ素を導入することができ、遮光部上を撥液性を有する領域として用いることが可能となるのである。以下、本工程に用いられるパターニング用基板、およびプラズマの照射方法についてそれぞれ説明する。
【0145】
(パターニング用基板)
まず、本工程に用いられるパターニング用基板について説明する。本工程に用いられるパターニング用基板は、基材と、その基材上に形成された光触媒含有層と、その光触媒含有層上に形成された遮光部とを有するものであり、上記遮光部上に後述するプラズマ照射によってフッ素を導入することが可能なものであれば特に限定されるものではない。このようなパターニング用基板として、例えば基材と光触媒含有層との間に、密着性を向上させるためのアンカー層等が形成されていてもよく、また例えば光触媒含有層と遮光部との間に密着性を良好なものとするためのプライマー層等が形成されていてもよい。以下、本工程に用いられるパターニング用基板の各構成ごとに説明する。
【0146】
(1)遮光部
本態様に用いられる遮光部としては、遮光材料および樹脂を含有するものであり、その形状や膜厚等については、パターン形成体の用途や遮光部の種類等によって、適宜選択される。
【0147】
本態様において、このような遮光部を形成する方法としては、例えば、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法等が挙げられる。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0148】
またさらに本態様においては、遮光部が熱転写法により形成されたものとすることもできる。遮光部を形成する熱転写法とは、通常、透明なフィルム基材の片面に光熱変換層と遮光部転写層を設けた熱転写シートを基材上に配置し、遮光部を形成する領域にエネルギーを照射することによって、遮光部転写層が基材上に転写されて遮光部が形成されることとなるものである。
【0149】
熱転写法により転写される遮光部は、通常、遮光材料と結着剤により構成されるものであり、遮光性材料としては、カーボンブラック、チタンブラック等の無機粒子等を用いることができる。このような遮光性材料の粒子径としては、0.01μm〜1.0μm、中でも0.03μm〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。
【0150】
また、結着剤としては、熱可塑性と熱硬化性とを有する樹脂組成とすることが好ましく、熱硬化性官能基を有し、かつ軟化点が50℃〜150℃の範囲内、中でも60℃〜120℃の範囲内である樹脂材料および硬化剤等により構成されることが好ましい。このような材料として具体的には、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物またはエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤との組み合わせ等が挙げられる。またエポキシ樹脂の潜在性硬化剤としては、ある一定の温度まではエポキシ基との反応性を有さないが、加熱により活性化温度に達するとエポキシ基との反応性を有する分子構造に変化する硬化剤を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂との反応性を有する酸性または塩基性化合物の中性塩や錯体、ブロック化合物、高融点体、マイクロカプセル封入物が挙げられる。また、上記遮光部中に、上記の材料の他に、離型剤、接着補助剤、酸化防止剤、分散剤等を含有させることもできる。
【0151】
(2)光触媒含有層
次に、本工程に用いられるパターニング用基板の光触媒含有層について説明する。本工程に用いられる光触媒含有層は、少なくとも光触媒を含有する層であり、後述する撥液性物質除去工程において、上記遮光部により区画された開口部、すなわち光触媒含有層上に存在する撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することが可能なものであれば特に限定されるものではない。このような光触媒含有層としては、例えば光触媒のみからなる層であってもよく、また光触媒とバインダとを含有する層であってもよい。上記光触媒含有層がバインダを含有する場合、後述するプラズマ照射によりフッ素が導入される場合もあるが、後述する撥液性物質除去工程により、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、上記フッ素等を除去することができるからである。
【0152】
なお、上記光触媒含有層が光触媒のみからなる場合には、基材上の開口部に存在する撥液性物質等を除去する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0153】
光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本態様においては、このキャリアが上記残渣等の撥液性物質や、バインダ等の有機物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0154】
本態様で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0155】
本態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0156】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0157】
また、上記酸化チタンとして可視光応答型のものを用いてもよい。可視光応答型の酸化チタンとは、可視光のエネルギーによっても励起されるものであり、このような可視光応答化の方法としては、酸化チタンを窒化処理する方法等が挙げられる。
【0158】
酸化チタン(TiO2)は、窒化処理をすることにより、酸化チタン(TiO2)のバンドギャップの内側に新しいエネルギー準位が形成され、バンドギャップが狭くなる。その結果、通常酸化チタン(TiO2)の励起波長は380nmであるが、その励起波長より長波長の可視光によっても、励起されることが可能となるのである。これにより、種々の光源によるエネルギー照射の可視光領域の波長も酸化チタン(TiO2)の励起に寄与させることが可能となることから、さらに酸化チタンを高感度化させることが可能となるのである。
【0159】
ここで、本態様でいう酸化チタンの窒化処理とは、酸化チタン(TiO2)の結晶の酸素サイトの一部を窒素原子での置換する処理や、酸化チタン(TiO2)結晶の格子間に窒素原子をドーピングする処理、または酸化チタン(TiO2)結晶の多結晶集合体の粒界に窒素原子を配する処理等をいう。
【0160】
酸化チタン(TiO2)の窒化処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば、結晶性酸化チタンの微粒子をアンモニア雰囲気下で700℃の熱処理により、窒素をドーピングし、この窒素のドーピングされた微粒子と、無機バインダや溶媒等を用いて、分散液とする方法等が挙げられる。
【0161】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0162】
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより後述する撥液性物質除去工程において、遮光部により区画された開口部に存在する撥液性物質等を分解除去することが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に撥液性物質等を効率よく分解除去することが可能となる。
【0163】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0164】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起、およびプラズマの照射により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0165】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することができる。
【0166】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0167】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0168】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0169】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤や添加剤等を用いることができ、例えば特開2001−074928に記載されているようなものを用いることができる。
【0170】
(3)基材
次に、本態様に用いられる基材について説明する。本態様に用いられる基材は、上記光触媒含有層を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途等に応じてその種類や可撓性や透明性等は適宜選択される。具体的には、樹脂製フィルム、ガラス、セラミック、金属からなるもの等を用いることができ、板状のものであることが好ましい。
【0171】
また基材のエネルギー透過性については、パターン形成体の用途や種類、後述する撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向等により適宜選択される。例えば、後述する撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向が、基材側からである場合には、上記基材がそのエネルギーに対して透過性を有することが必要とされる。一方、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方向が遮光部側からである場合には、上記基材には特にエネルギー透過性は必要とされない。
【0172】
なお、本態様において、上記基材の表面は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施されたものであってもよい。また、例えば上記光触媒含有層との密着性を向上させるために、アンカー層等が形成されたものであってもよい。
【0173】
(プラズマの照射方法)
次に、本工程におけるプラズマの照射方法について説明する。本工程におけるプラズマの照射方法は、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、上記遮光部上を撥液性とすることが可能であれば、特に限定されるものではなく、減圧下でプラズマ照射してもよく、また大気圧下でプラズマ照射してもよい。
【0174】
このようなプラズマの照射の際、導入ガスとして用いられるフッ素化合物としては、、例えばフッ化炭素(CF4)、窒化フッ素(NF3)、フッ化硫黄(SF6)、CHF3、C2F6、C3F8、C5F8等が挙げられる。また、照射されるプラズマの照射条件としては、照射装置等により適宜選択される。
【0175】
ここで、本態様においては、上記プラズマ照射が大気圧中でのプラズマ照射であることが好ましい。これにより、減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面から好ましいものとすることができるからである。このような大気圧プラズマの照射条件としては、以下のようなものとすることができる。例えば、電源出力としては、一般的なプラズマの照射装置に用いられるものと同様とすることができる。また、この際、照射されるプラズマの電極と、上記遮光部との距離は、0.2mm〜20mm程度、中でも1mm〜5mm程度とされることが好ましい。またさらに、上記導入ガスとして用いられるフッ素化合物の流量は1L/min〜20L/min程度、上記フッ素化合物と同時に流す窒素ガスの流量は1L/min〜50L/min程度であることが好ましい。また、この際の基板搬送速度としては、0.5m/min〜2m/min程度とすることが好ましい。
【0176】
また、本工程においては、上記遮光部の液体との接触角が、その遮光部に区画された開口部の液体との接触角より1°以上高くなるように上記プラズマ照射が行われることが好ましい。これにより、上記遮光部および上記遮光部に区画された開口部の液体との接触角の差を利用して、本態様により製造されたパターン形成体上に、例えばカラーフィルタの着色層等の機能性部を形成することが可能となるからである。
【0177】
また本態様においては特に、上記遮光部の液体との接触角が40mN/mの液体との接触角が、10°以上、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上となるようにプラズマ照射されることが好ましい。また、純水との接触角が11°以上であることが好ましい。これは、上記遮光部において上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、本態様により製造されたパターン形成体の開口部上に、例えばカラーフィルタの着色層等の機能性部を形成する際、遮光部上にも機能性部を形成するための機能性部形成用塗工液等が付着する可能性があるからである。
【0178】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0179】
b.撥液性物質除去工程
次に、本態様における撥液性物質除去工程について説明する。本態様における撥液性物質除去工程は、上記遮光部により区画された開口部にエネルギーを照射し、上記遮光部により区画された開口部表面の撥液性物質を除去する工程である。上記撥液性物質とは、上記遮光部により区画された開口部に存在し、機能性部を形成するために用いられる機能性部形成用塗工液と上記開口部との接触角を上昇させる物質をいうこととし、例えば開口部表面に付着している遮光部形成時の残渣等の有機物や、その残渣に上記プラズマ照射工程により導入されたフッ素、または上記光触媒含有層中に導入されたフッ素等が挙げられる。本工程において、上記撥液性物質をエネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することにより、遮光部上のみが撥液性を有するものとすることができ、遮光部により区画された開口部に、上記機能性部形成用塗工液を高精細に塗布することが可能となるのである。
【0180】
ここで本工程においては、上記遮光部により区画された開口部の撥液性物質が除去されて、開口部の表面の40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるように上記エネルギー照射が行われることが好ましい。また、純水との接触角が10°以下となるように、エネルギー照射が行われることが好ましい。上記開口部における液体との接触角が高い場合は、本態様により製造されたパターン形成体の上記開口部上においても、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、高精細に機能性部を形成することが困難となるからである。なお、上記液体との接触角は、上述した方法により測定される値である。
【0181】
なお、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギーの照射方法については、エネルギーの照射方向等によって以下の4つの実施態様にわけられる。以下、それぞれの実施態様ごとにわけて説明する。
【0182】
(1)第1実施態様
まず、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第1実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第1実施態様としては、例えば図7(b)に示すように、上記プラズマ照射工程終了後、基材1側から全面にエネルギーを照射することにより、上記遮光部6により区画された開口部7にエネルギー8を照射し、上記開口部7上の撥液性物質を除去するものである。
【0183】
本実施態様によれば、上記遮光部が形成されていることから、基材側からフォトマスク等を用いることなく全面にエネルギーを照射した場合であっても、上記遮光部により区画された開口部にのみエネルギーを照射することができ、上記開口部上の撥液性物質を効率よく除去することができる。またこの際、上記開口部においては、光触媒を含有する光触媒含有層が露出しており、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、効率よく上記開口部上の撥液性物質等を除去することができるのである。
【0184】
なお、本実施態様でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層により開口部の撥液性物質を除去することが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0185】
本実施態様に用いられるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中の光触媒を励起させることが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0186】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0187】
また、上述したような光源を用いてエネルギーを照射する方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0188】
ここで、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、遮光部により区画された開口部が光触媒含有層中の光触媒の作用等により撥液性物質が分解除去されるのに必要な照射量とする。
【0189】
またこの際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な撥液性物質の除去を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0190】
(2)第2実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第2実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第2実施態様としては、例えば図8に示すように、基体11と、その基体11上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層12とを有する光触媒処理層側基板13を準備し、その光触媒処理層12と上記開口部7とを対向させて配置し、基材1側から全面にエネルギー8を照射し、遮光部6により区画された開口部7の表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0191】
本実施態様によれば、上記光触媒処理層と上記開口部とを対向させてエネルギー照射を行うことから、上記基材側に形成されている光触媒含有層の光触媒の作用だけでなく、エネルギー照射に伴う上記光触媒処理層中の光触媒の作用によっても上記開口部表面に存在する撥液性物質を除去することができる。また、上記基材上には遮光部が形成されており、基材側からエネルギー照射が行われることから、全面にエネルギー照射した場合であっても、上記遮光部により区画された開口部にのみエネルギー照射を行うことができる。したがって、本実施態様によれば、効率よく撥液性物質除去工程を行うことができる、という利点を有する。以下、本工程に用いられる光触媒処理層側基板、および照射されるエネルギーについて説明する。
【0192】
(光触媒処理層側基板)
まず、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板について説明する。本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板は、基体と、その基体上に形成された光触媒処理層とを有するものであれば特に限定されるものではない。
【0193】
このような光触媒処理層側基板に用いられる基体としては、上記光触媒処理層を形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば可撓性を有する樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。
【0194】
なお、基体表面と上記光触媒処理層との密着性を向上させるため、また光触媒の作用による基体の劣化を防ぐために基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、シラン系、チタン系のカップリング剤や、反応性スパッタ法やCVD法等により作製したシリカ膜等が挙げられる。
【0195】
ここで、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板の光触媒処理層については、上述した光触媒含有層と同様のものを用いることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0196】
(エネルギー照射)
次に、本実施態様におけるエネルギー照射について説明する。本実施態様においては、上記遮光部により区画された開口部と、上記光触媒処理層側基板の光触媒処理層とを、所定の間隙をおいて配置し、基材側からエネルギーを照射する。この際、上記遮光部が形成された領域においては、エネルギーが遮蔽されることから、遮光部が形成されていない領域である開口部のみにエネルギーを照射することができ、エネルギー照射に伴う光触媒含有層および光触媒処理層の作用によって、開口部に存在する撥液性物質等を除去することができるのである。
【0197】
ここで、上記の配置とは、実質的に光触媒処理層の光触媒の作用が上記開口部に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、上記光触媒処理層と上記遮光部が密着している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒処理層と上記開口部とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
【0198】
本実施態様において上記間隙は、光触媒の感度も高く、したがって開口部の撥液性物質除去の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の開口部に対して特に有効である。
【0199】
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積の開口部に対して処理を行う場合は、上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板と上記開口部との間に形成することは極めて困難である。したがって、開口部が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンの精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して撥液性物質を除去する効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに開口部の撥液性物質除去にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0200】
このように比較的大面積の開口部にエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板と上記開口部との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく配置することが可能となるからである。
【0201】
このように光触媒処理層と開口部表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなるからである。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と基材における開口部との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に撥液性物質を除去する速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が開口部に届き難くなり、この場合も撥液性物質等を除去する速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0202】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と開口部とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができるからである。また、このようなスペーサを用いることにより、光触媒の作用により生じた活性酸素種が拡散することなく、高濃度で基材表面に到達することから、効率よく開口部の撥液性物質除去を行うことができる。
【0203】
なお、上記光触媒処理層が可撓性を有する樹脂フィルム等の可撓性を有する基体上に形成された光触媒処理層側基板を用いる場合においては、上述したような間隙を設けることが難しく、製造効率等の面から、上記光触媒処理層と遮光部とが接触するように配置されていることが好ましい。
【0204】
本実施態様においては、このような光触媒処理層側基板の配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0205】
本実施態様に用いられるエネルギーとしては、上記光触媒処理層および上記光触媒処理層中の光触媒を励起させることが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなものを用いることができる。また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、遮光部により区画された開口部が光触媒処理層中の光触媒の作用等により撥液性物質が分解除去されるのに必要な照射量とする。
【0206】
また本実施態様においても、光触媒処理層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な撥液性物質の除去を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0207】
(3)第3実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第3実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第3実施態様としては、例えば図9に示すように、上記遮光部6が形成された基材1の遮光部6側から、上記遮光部6により区画された開口部7に例えばフォトマスク9等を用いてエネルギー8を照射し、上記開口部7表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0208】
本実施態様によれば、上記遮光部側から、遮光部により区画された開口部に対してエネルギーを照射することにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により上記開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能となるのである。また、本実施態様においては、基材がエネルギーを透過させないものであっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することができる、という利点も有する。
【0209】
本実施態様により照射されるエネルギーとしては、上記光触媒処理層中の光触媒を励起させることができ、上記遮光部により区画された開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなエネルギーを用いることができる。また本実施態様においては、例えばフォトマスク等用いてエネルギー照射したり、描画照射を行うこと等により、上記開口部のみにエネルギーを照射することができる。
【0210】
(4)第4実施態様
次に、上記撥液性物質除去工程におけるエネルギー照射方法の第4実施態様について説明する。本工程におけるエネルギー照射方法の第4実施態様としては、例えば図10に示すように、基体11と、その基体11上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層12とを有する光触媒処理層側基板13を準備し、その光触媒処理層12と上記遮光部6とを対向させて配置し、光触媒処理層側基板13側から、例えばフォトマスク9等を用いてエネルギー8を照射し、遮光部6により区画された開口部7の表面に存在する撥液性物質を除去するものである。
【0211】
本実施態様によれば、上記遮光部側に形成されている光触媒含有層中の光触媒の作用だけでなく、上記光触媒処理層中の光触媒の作用によっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することが可能となり、効率的に本工程を行うことができる。また、上記基材がエネルギーを透過させないものであっても、上記開口部表面の撥液性物質を除去することができる、という利点も有する。
【0212】
本実施態様により照射されるエネルギーとしては、上記光触媒含有層中および光触媒処理層中の光触媒を励起させることができ、この光触媒の作用により上記遮光部により区画された開口部表面に存在する撥液性物質を除去することが可能なエネルギーであれば、特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様で説明したようなエネルギーを用いることができる。なお、本実施態様においては、エネルギー照射の際、フォトマスク等を用いたり、上記光触媒処理層側基板に光触媒処理層側遮光部を形成すること等によりパターン状にエネルギーを照射する方法や、また第1実施態様で説明したようなレーザを用いて描画照射する方法を用いることにより、上記開口部のみにエネルギーを照射することができる。上記光触媒処理層側基板に設けることが可能な光触媒処理層側遮光部としては、上記基材上に設けられる遮光部と同様の方法や材料により形成することができる。また、上記光触媒処理層側遮光部としては、上記光触媒処理層上に形成してもよく、基体と光触媒処理層との間に形成してもよい。またさらに、上記光触媒処理層が形成される側と反対側の基体上に形成してもよい。
【0213】
ここで、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板や、光触媒処理層側基板の配置方法等については、上述した第2態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0214】
c.その他
本態様において得られるパターン形成体は、種々の用途に用いることが可能であるが、開口部に着色層が形成されてなるカラーフィルタとして用いられることが好ましい。着色層をインクジェット法等の吐出法により形成することにより、工程上効率よくカラーフィルタを得ることができるからである。この場合、基材は可視光域で透明な透明基材が用いられ、具体的にはガラス等の無機材料、透明樹脂等の有機材料を挙げることができる。
なお、例えば上記パターン形成体の製造方法の説明においては、プラズマ照射工程を行った後に撥液性物質除去工程を行う場合を中心に説明したが、本態様はこれに限定されるものではなく、先に撥液性物質除去工程を行った後にプラズマ照射工程を行う場合も含むものである。またこの場合、不純物除去工程を、上記プラズマ照射工程前に行う場合には、上記不純物除去工程におけるエネルギー照射を、上記遮光部側から全面に行うこともできる。
【0215】
B.パターン形成体
次に、本態様のパターン形成体について説明する。本態様のパターン形成体は、層構成等により以下の2つの実施態様にわけられる。以下、それぞれの実施態様ごとにわけて説明する。
【0216】
(1)第1実施態様
まず、本態様のパターン形成体の第1実施態様について説明する。本実施態様におけるパターン形成体は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、上記光触媒含有層の上記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面にフッ素原子を含有しない親液性領域とされていることを特徴とするものである。
【0217】
このような本実施態様のパターン形成体の一例としては、図11に示すように、基材1上に光触媒含有層2が形成され、さらにその上にパターン状に撥液性樹脂層20が形成された例を挙げることができる。本実施態様においては上記撥液性樹脂層20の表面に、フッ素原子が含有されているものとされ、また上記光触媒含有層2が露出している領域(図中、aで示される領域)の表面は、フッ素原子を含有しない親液性領域とされる。
【0218】
本実施態様におけるパターン形成体は、上記撥液性樹脂層上と上記光触媒含有層が露出している領域との濡れ性の差を利用して、上記光触媒含有層が露出している領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。
【0219】
また、本実施態様におけるパターン形成体は、パターン形成体の開口部に着色層等の機能性部が形成され、カラーフィルタ等の機能性素子とされた場合に、光触媒含有層が、表面にフッ素原子を含有しないものであるので、その後の工程等において、光触媒含有層表面のフッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることを防止することができるといった利点を有する。
【0220】
本実施態様においては、光触媒含有層表面にフッ素原子が含有されていないものであるので、上述したような不具合が生じる可能性が無く、本実施態様のパターン形成体を用いて得られる機能性素子の品質を良好なものとすることができるといった利点を有するものである。
以下、このような本実施態様におけるパターン形成体について、各構成毎に説明する。
【0221】
(光触媒含有層)
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、光触媒を含有し、かつ後述する撥液性樹脂層が形成されていない領域の表面に、フッ素原子が含有されていないものであれば特に限定されるものではない。本実施態様において表面にフッ素原子が含有されていないとは、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)による測定において、光触媒含有層表面に含有される光触媒の金属原子を100とした場合、10以下、好ましくは5以下である場合をいう。なお、本実施態様でいう光触媒含有層表面とは、光触媒含有層の最表面から5nm以内の領域のことをいうこととする。
【0222】
ここで、後述する撥液性樹脂層が形成されていない領域の光触媒含有層の表面に、フッ素原子が含有されていないものとする方法としては、上述した「A.パターン形成体の製造方法」の第1実施態様と同様の方法によりパターン形成体を製造する方法が挙げられる。上述した方法によれば、プラズマ照射の際に発生する光によって光触媒が励起され、樹脂層が形成されていない領域の光触媒含有層表面に存在する有機基等が分解されるものとすることができる。これにより、例えば光触媒含有層中に、フッ素を有する有機基等が含有されている場合であっても、上記プラズマ照射工程により、フッ素原子を除去することが可能となるからである。
【0223】
なお、本実施態様に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層全体にフッ素原子が含有されていないものであることが好ましい。これにより、上記親液性領域に着色層等の機能性部が形成された場合、フッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることをさらに防止することができるからである。
【0224】
この場合、通常光触媒含有層は無機材料からなるものとされる。具体的には、光触媒から光触媒含有層が形成されている場合、光触媒およびフッ素原子を含有しないバインダから光触媒含有層が形成されている場合等が光触媒含有層が無機材料からなる場合に該当するといえる。
【0225】
本実施態様においては、上記光触媒含有層の膜厚が0.05μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。これにより、パターン形成体の光透過性を良好とすることができ、さらにヘイズ値を低下させることができるので、例えばパターン形成体をカラーフィルタ等の表示素子用に用いた場合に利点を有するからである。
【0226】
なお、本実施態様においては、光触媒含有層のうち、後述する撥液性樹脂層が形成されていない領域が、親液性領域とされる。親液性領域とは、隣接する領域より液体との接触角が1°以上低い領域をいうこととする。本実施態様においては、上記光触媒含有層が露出している領域においては、水との接触角が60°以下、好ましくは40°以下、特に20°以下とされることが好ましい。上記光触媒含有層が露出している領域の液体との接触角が高い場合には、本実施態様のパターン形成体上に機能性部を形成する際、機能性部を形成する機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、機能性部を高精細に形成することが困難となる場合があるからである。なお、上記水との接触角は、上述した方法により測定される。
【0227】
本実施態様に用いられる光触媒含有層のその他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0228】
また、本実施態様に用いられるフッ素原子を含有しないバインダ材料としては、例えばフルオロアルキル基等のフッ素原子を有する置換基を有さないポリシロキサン等を挙げることができる。
【0229】
その他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0230】
(撥液性樹脂層)
次に、本実施態様における撥液性樹脂層について説明する。本実施態様における撥液性樹脂層は、上述した光触媒含有層上にパターン状に形成されたものであり、表面にフッ素原子を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0231】
このような撥液性樹脂層は、パターン形成体の用途に応じて適宜選択され、例えば、遮光性を有するものであってもよい。このような遮光性を有する撥液性樹脂層は、例えば本実施態様のパターン形成体をカラーフィルタに用いる場合、カラーフィルタの遮光部であるブラックマトリクス層として用いることができるという利点を有する。
【0232】
なお、ここで撥液性樹脂層表面にフッ素が含有されているか否かは、X線光電子分光法により測定した場合、表面にのみフッ素原子が存在する場合を示すものである。撥液性樹脂層表面にのみにフッ素原子が存在するとは、通常、撥液性樹脂層の最表面から5nm以内の領域にフッ素原子が含有されていることをいうこととする。また、この際上記フッ素原子の割合としては、撥液性樹脂層の表面に存在する全元素中のうち、10%以上とされることが好ましい。
【0233】
また、上記撥液性樹脂層の膜厚としては、0.01μm〜1mm程度、中でも0.1μm〜0.1mm程度とすることができる。
【0234】
また、上記撥液性樹脂層表面の液体との接触角としては、水との接触角が61°以上、中でも80°以上、特に100°以上であることが好ましい。これにより、本実施態様におけるパターン形成体を用いて機能性素子を形成する際、撥液性樹脂層上に機能性部を形成する機能性部形成用塗工液が付着してしまうこと等のないものとすることができ、撥液性樹脂層が形成されていない領域のみに高精細に機能性部を形成することができるからである。上記液体との接触角は、上述した方法により測定される。
【0235】
(基材)
本実施態様に用いられる基材に関しては、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0236】
(用途)
本実施態様のパターン形成体は、開口部等に機能部が形成されてなる機能性素子として通常用いられるものであり、具体的には、開口部に機能部として着色層が形成されたカラーフィルタ等として用いることができる。また、後述するように、親液性領域に有機EL層を形成する有機EL素子や、親液性領域にレンズを形成するマイクロレンズ、また親液性領域を細胞培養領域として用いる細胞培養用基板等に用いられる。
【0237】
(2)第2実施態様
次に、本態様のパターン形成体の第2実施態様について説明する。本実施態様におけるパターン形成体は、基材と、上記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、上記光触媒含有層上に形成され、シランカップリング剤または上記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、上記中間層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、上記中間層の撥液性樹脂層が形成されていない領域が親液性領域であることを特徴とするものである。
【0238】
このような本実施態様のパターン形成体は、例えば図12に示すように、基材1と、その基材1上に形成された光触媒含有層2と、その光触媒含有層2上に形成された中間層10と、その中間層10上にパターン状に撥液性樹脂層20とを有するものであって、上記撥液性樹脂層20の表面にはフッ素原子が含有されているものである。また上記中間層10が露出している領域(図中、aで示される領域)は親液性領域とされ、表面の水との接触角は所定の値以下とされていることが好ましい。親液性領域とは、隣接する領域より液体との接触角が1°以上低い領域をいうこととする。
【0239】
本実施態様におけるパターン形成体は、上記撥液性樹脂層上と上記中間層が露出している領域との濡れ性の差を利用して、上記中間層が露出している領域のみに、高精細に機能性部を形成することが可能なパターン形成体とすることができる。また本実施態様においては、上記中間層が形成されていることから、上記光触媒含有層と撥液性樹脂層との密着性や、光触媒含有層と、開口部に形成される機能性部等との密着性を良好なものとすることができるという利点も有する。
以下、このような本実施態様におけるパターン形成体について、各構成毎に説明する。
【0240】
(中間層)
まず、本実施態様に用いられる中間層について説明する。本実施態様に用いられる中間層は、後述する基材上に形成されており、かつシランカップリング剤またはその重合体を含有するものである。上記撥液性樹脂層が形成されていない領域においては、親液性領域とされており、表面の水との接触角が所定の値以下とされていることが好ましい。
【0241】
上記親液性領域の液体との接触角として具体的には、水との接触角が60°以下、中でも40°以下、特に20°以下とされていることが好ましい。上記領域の液体との接触角が高い場合には、本実施態様におけるパターン形成体の親液性領域上に機能性部を形成する際、この領域においても機能性部を形成するための機能性部形成用塗工液をはじいてしまう可能性があり、機能性部形成用塗工液が十分に濡れ広がらない等、機能性部を形成することが難しくなる可能性があるからである。
【0242】
ここで、本実施態様に用いられる中間層は、シランカップリング剤またはその重合体のみからなるものであってもよく、またバインダを含有するもの等であってもよい。このような中間層中に含有されるシランカップリング剤またはその重合体、バインダとしては、上述した「A.パターン形成体の製造方法」の第2実施態様で説明したものと同様とすることができる。また、上記親液性領域を形成する方法としては、上述した「A.パターン形成体の製造方法」で説明したように、上記中間層が露出した領域に、プラズマ照射する方法が挙げられる。
【0243】
(撥液性樹脂層)
次に、本実施態様における撥液性樹脂層について説明する。本実施態様における撥液性樹脂層は、上記中間層上にパターン状に形成されたものであり、表面にフッ素を含有するものであれば特に限定されるものではない。なお、本実施態様に用いられる撥液性樹脂層は、上述した第1実施態様で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0244】
(光触媒含有層)
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、後述する基材上に形成され、光触媒を含有しているものであれば特に限定されるものではない。なお、本実施態様に用いられる光触媒含有層のその他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0245】
(基材)
本実施態様に用いられる基材に関しては、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0246】
(用途)
本実施態様のパターン形成体についても、開口部等に機能部が形成されてなる機能性素子として通常用いられるものであり、具体的には、開口部に機能部として着色層が形成されたカラーフィルタ等として用いることができる。また、後述するように、親液性領域に有機EL層を形成する有機EL素子や、親液性領域にレンズを形成するマイクロレンズ、また親液性領域を細胞培養領域として用いる細胞培養用基板等に用いられる。
【0247】
(3)その他の実施態様
また本発明のパターン形成体には、下記の実施態様も含まれる。本態様に含まれるパターン形成体は、基材と、前記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部とを有し、前記光触媒含有層がフッ素原子を含有しないものであることを特徴とするものである。
【0248】
このような本実施態様のパターン形成体の一例としては、図7(b)に示すように、基材1上に光触媒含有層2が形成され、さらにその上にパターン状に遮光部6が形成された例を挙げることができる。
【0249】
本実施態様のパターン形成体は、パターン形成体の開口部に着色層等の機能性部が形成され、カラーフィルタ等の機能性素子とされた場合に、光触媒含有層が、フッ素原子を含有するものであるので、その後の工程等において、光触媒含有層中のフッ素原子が溶出して機能性部に悪影響を与えることを防止することができるといった利点を有する。
【0250】
具体的には、例えば、光触媒含有層中にバインダとして例えばフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンを用いた場合、光触媒含有層中にフッ素原子が残存する状態で開口部に着色層が形成されてカラーフィルタとされる場合があるが、その後の工程によっては、上記光触媒含有層中のフッ素原子が溶出して着色層中に存在してしまう可能性がある。このようなカラーフィルタを液晶表示素子として用いた場合は、上記着色層中のフッ素原子が液晶層中にイオン性不純物として溶出する可能性が残されており、このようなイオン性不純物が液晶層中に存在することは、液晶表示素子の表示等に悪影響を及ぼすものであることが知られている。
【0251】
本実施態様においては、光触媒含有層にフッ素原子が含有されていないものであるので、上述したような不具合が生じる可能性が無く、本実施態様のパターン形成体を用いて得られる機能性素子の品質を良好なものとすることができるといった利点を有するものである。
以下、このような本実施態様のパターン形成体について、各構成毎に説明する。
【0252】
(光触媒含有層)
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、光触媒を含有し、かつフッ素原子が含有されていないものであれば特に限定されるものではない。本実施態様においてフッ素原子が含有されていないとは、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)による測定において、含有される光触媒の金属原子を100とした場合、10以下、好ましくは5以下である場合をいう。したがって、光触媒から光触媒含有層が形成されている場合、光触媒およびフッ素原子を含有しないバインダから光触媒含有層が形成されている場合等が光触媒含有層が無機材料からなる場合に該当するといえる。
【0253】
本実施態様においては、上記光触媒含有層の膜厚が10nm〜200nmの範囲内、中でも10nm〜120nmの範囲内、特に15nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。これにより、パターン形成体の光透過性を良好とすることができ、さらにヘイズ値を低下させることができるので、例えばパターン形成体をカラーフィルタ等の表示素子用に用いた場合に利点を有するからである。
【0254】
本実施態様に用いられる光触媒含有層のその他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0255】
また、本実施態様に用いられるフッ素原子を含有しないバインダ材料としては、例えばフルオロアルキル基等のフッ素原子を有する置換基を有さないポリシロキサン等を挙げることができる。
【0256】
その他の点については、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0257】
(遮光部)
次に、本実施態様における遮光部について説明する。本実施態様における遮光部は、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるが、中でも表面にフッ素を含有するものであることが好ましい。
【0258】
なお、ここで遮光部表面にフッ素が含有されているか否かは、X線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i-XL)により測定した場合、表面にのみフッ素原子が存在する場合を示すものである。
【0259】
(基材)
本実施態様に用いられる基材に関しては、上記「A.パターン形成体の製造方法」の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0260】
(用途)
本実施態様のパターン形成体は、開口部等に機能部が形成されてなる機能性素子として通常用いられるものであり、具体的には、開口部に機能部として着色層が形成されたカラーフィルタとして好適に用いられる。
【0261】
C.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述したパターン形成体の親液性領域上に着色層が形成されたものである。上述したパターン形成体上には、光触媒含有層または中間層が露出した親液性領域と、撥液性の高い撥液性樹脂層とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、高精細に上記親液性領域のみに着色層が形成されたものとすることができる。
【0262】
ここで、上述した「B.パターン形成体」のうち、第1実施態様におけるパターン形成体を用いてカラーフィルタが形成されている場合、上記親液性領域表面にフッ素が含有されていないものとされている。そのため、着色層中に光触媒含有層からフッ素原子が溶出等することのない、高品質なカラーフィルタとすることができるという利点を有する。
【0263】
また、上述した「B.パターン形成体」のうち、第2実施態様におけるパターン形成体を用いてカラーフィルタが形成されている場合、上記中間層が形成されていることから、親液性領域に形成された着色層と光触媒含有層等との密着性を良好なものとすることができるという利点を有する。
【0264】
なお、本発明においては、上記パターン形成体の撥液性樹脂層として、遮光性を有するものが用いられていることが好ましい。これにより、別途ブラックマトリクスを形成することなく、製造効率よくカラーフィルタが製造されたものとすることができるからである。なお、本発明におけるカラーフィルタの各部材の材料や製造方法等については、一般的なカラーフィルタにおけるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0265】
D.有機EL素子
次に、本発明の有機EL素子について説明する。本発明の有機EL素子は、上記親液性領域上に有機EL層が形成されたものである。上述したパターン形成体上には、光触媒含有層または中間層が露出した親液性領域と、撥液性の高い撥液性樹脂層とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、高精細に上記親液性領域のみに有機EL層が形成されたものとすることができる。
【0266】
なお、上記有機EL層とは、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布によるウェットプロセスで有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で形成される場合が多いが、有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
【0267】
なお、本発明における有機EL素子の各部材の材料や製造方法等については、一般的な有機EL素子におけるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0268】
E.マイクロレンズ
次に、本発明におけるマイクロレンズについて説明する。本発明のマイクロレンズは、上記親液性領域にレンズが形成されたことを特徴とするものである。上述したパターン形成体上には、光触媒含有層または中間層が露出した親液性領域と、撥液性の高い撥液性樹脂層とが形成されていることから、これらの濡れ性の差を利用して、高精細に上記親液性領域のみにレンズが形成されたものとすることができる。
【0269】
なお、本発明におけるマイクロレンズの各部材の材料や製造方法等については、一般的なマイクロレンズに用いられるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0270】
F.細胞培養用基板
次に、本発明における細胞培養用基板について説明する。本発明に用いられる細胞培養用基板は、上記親液性領域上が、細胞を培養するために用いられることを特徴とするものである。本発明によれば、上記撥液性樹脂層上の撥液性によって、上記撥液性樹脂層上には細胞が接着しないものとすること等ができる。これにより、上記親液性領域上でのみ、細胞を培養することが可能となり、高精細なパターン状に細胞を培養することが可能なものとすることができるのである。
【0271】
なお、本発明の細胞培養用基板に用いられる他の部材や、培養する細胞等については、一般的な細胞培養用基板に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0272】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0273】
(実施例1)
1.光触媒含有層の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.7mmガラス基板(基材)上に均一にスピンコーターにて塗布し、0.10μmの膜厚の光触媒含有層付基板を得た。
【0274】
2.遮光部形成
上記光触媒含有層上にカーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鉄化学製V−259BKレジスト)を塗布し、露光を行った後、現像、ポストベーク処理を行って、膜厚1.0μm、幅20μm、開口部が280μm×280μmの遮光部を形成し、パターニング用基板とした。
【0275】
3.大気圧フッ素プラズマ処理
上記パターニング用基板に対し、CF4を12L/min、N2を20L/min流し、搬送速度0.5m/minで2回処理した。電源出力190V−4.8Aとした。
【0276】
4.エネルギー照射
上記パターニング用基板の上記光触媒含有層側から幅10μmの遮光部と幅290μmのライン&スペースを有するフォトマスクを用いて、上記開口部に高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にて300秒間エネルギーを照射し、撥液性物質を分解除去し、開口部の親液化を行い、パターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上記開口部の中心部の50μm四方の領域に、直径20μmの純水を滴下し、極小接触角計(協和界面科学(株)社製 極小接触角計MCA−1)で測定した値である。
【0277】
5.着色層形成
親液化を行い濡れ性が変化した開口部に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。上記パターニング用基板上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0278】
(実施例2)
1.光触媒含有層の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.7mmガラス基板上(基材)に均一にスピンコーターにて塗布し、0.10μmの膜厚の光触媒含有層付基板を得た。
【0279】
2.遮光部形成
上記光触媒含有層上にカーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鉄化学製V−259BKレジスト)を塗布し、露光を行った後、現像、ポストベーク処理を行って、膜厚1.0μm、幅20μm、開口部が280μm×280μmの遮光部を形成してパターニング用基板とした。
【0280】
3.大気圧フッ素プラズマ処理
上記パターニング用基板に対し、CF4を12L/min、N2を20L/min流し、搬送速度0.5m/minで2回処理した。電源出力190V−4.8Aとした。
【0281】
4.エネルギー照射
高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にて上記パターニング用基板の基材側から300秒間照射し、撥液性物質を分解除去し、開口部の親液化を行い、パターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0282】
5.着色層形成
親液化を行い濡れ性が変化した部位に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。パターン形成体上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0283】
(実施例3)
1.光触媒処理層側基板の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.5mm石英基板上(基体)に均一にスピンコーターにて塗布し、0.15μmの膜厚の光触媒処理層が形成された光触媒処理層側基板を得た。
このとき、上記光触媒処理層側基板においては、光触媒処理層と上記石英基板(基体)との間に幅10μmの遮光層と幅290μmの開口部とが複数本ストライプ状に形成されたものを用いた。
【0284】
2.エネルギー照射
実施例1と同様の方法により「3.大気圧フッ素プラズマ処理」までの工程で得たフッ素プラズマ処理済みのパターニング用基板に対し、上記光触媒処理層側基板を光触媒処理層側を内側にして対向させ、50μmの間隔を開けて光触媒処理層側基板側から高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にてアライメント露光を300秒間し、開口部および遮光部端部から5μmの部分に対しても親液化させたパターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0285】
3.着色層形成
親液化を行い濡れ性が変化した部位に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。パターン形成体上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0286】
(実施例4)
1.光触媒含有層基板の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.5mm石英基板上に均一にスピンコーターにて塗布し、0.15μmの膜厚の光触媒処理層を有する光触媒処理層側基板を得た。
【0287】
2.エネルギー照射
実施例1と同様の方法により「3.大気圧フッ素プラズマ処理」までの工程で得たフッ素プラズマ処理済みのパターニング用基板に対し、上記光触媒処理層側基板を光触媒処理層と上記遮光部とが密着するように配置した後、上記パターニング用基板の基材側から高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にて400秒間露光し、パターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0288】
3.着色層形成
エネルギー照射後、親液化した部位に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行い、パターン形成体上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0289】
(実施例5)
1.光触媒処理層側基板の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍希釈し、370×470mm×0.5mm石英基板上に均一にスピンコーターにて塗布し、0.15μmの膜厚の光触媒処理層を有する光触媒処理層側基板を得た。
【0290】
2.エネルギー照射
実施例1と同様の方法により「3.大気圧フッ素プラズマ処理」までの工程で得たフッ素プラズマ処理済みのパターニング用基板に対し、光触媒処理層側基板の光触媒処理層を内側にして対向させ、50μmの間隔を開けてパターニング用基板の基材側から高圧水銀ランプ(照度:30mW/cm2、365nm)にて300秒間露光してパターン形成体とした。この際、エネルギー照射前の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角が90°であったのに対し、エネルギー照射後の上記開口部の中心部における光触媒含有層の純水との接触角は10°以下であった。上記液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0291】
3.着色層形成
親水化を行い濡れ性が変化した部位に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。パターン形成体上に赤色の着色層(1.5μm)を得た。上記着色層は遮光部壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は、粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。
次いで、青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【0292】
(実施例6)
1.光触媒含有層の形成
石原産業(株)製ST−K03をイソプロパノールで10倍に希釈し、370mm×470mm×0.7mmガラス基板上に均一にスピンコータにて塗布し、約0.15μmの膜厚の光触媒含有層付基板を得た。
【0293】
2.中間層の形成
デシルトリメトキシシラン1.5gとテトラメトキシシラン5gと0.1規定塩酸2gとを混合し、5時間攪拌した。これをイソプロパノールで10倍希釈し、先の光触媒含有層付基板上に均一にスピンコータにて塗布し、膜厚0.1μmの中間層を得た。
【0294】
3.樹脂層の形成
上記中間層が形成されたガラス基板に対しカーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鉄化学製V−259BKレジスト)を塗布し、露光を行った。その後、現像、ポストベーク処理を行って、膜厚1.0μm、幅20μm、開口部が280μm×280μmの遮光性を有する樹脂層を形成した。
【0295】
4.大気圧フッ素プラズマ工程
前記基板に対し、CF4を12L/min、N2を20L/min流し、搬送速度0.5m/minで2回処理した。電源出力190V−4.8Aとした。その後、水の接触角を測定したところ、樹脂層上は104°、開口部(中間層)は6°であった。
【0296】
5.着色層形成
親水化された開口部に対してピエゾ駆動式インクジェット装置にて赤の熱硬化型インク(粘度5cP)を吐出し加熱処理を行った。上記樹脂層を有するガラス基板上に赤色の着色層(1.5μm)が形成された。上記着色層は樹脂層壁面まで濡れ広がっており白抜けは起こらなかった。
なお、上記粘度は粘度測定器VIBROVISCOMETER CJV5000(A&D社製)を用いて温度20℃で測定した値である。次いで青、緑の着色層を同様に形成し、赤色と同様の白抜けのないカラーフィルタを形成した。
【図面の簡単な説明】
【0297】
【図1】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図3】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図4】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図5】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図6】本発明のパターン形成体の製造方法に用いられるパターニング用基板の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図8】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図9】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図10】本発明のパターン形成体の製造方法における撥液性物質除去工程を説明するための説明図である。
【図11】本発明のパターン形成体の一例を示す概略断面図である。
【図12】本発明のパターン形成体の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0298】
1 …基材
2 …光触媒含有層
3 …樹脂層
4 …パターニング用基板
5 …プラズマ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、前記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
【請求項2】
前記光触媒含有層上に、シランカップリング剤または前記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層が形成され、前記中間層上に前記樹脂層がパターン状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、前記開口部の表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層が、少なくとも遮光材料を含有する遮光部であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項5】
基材と、前記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、前記光触媒含有層の前記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面にフッ素を含有していない親液性領域とされていることを特徴とするパターン形成体。
【請求項6】
基材と、前記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上に形成され、シランカップリング剤または前記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、前記中間層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、前記中間層の前記撥液性樹脂層が形成されていない領域が親液性領域であることを特徴とするパターン形成体。
【請求項7】
前記中間層の前記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面の水との接触角が60°以下である親液性領域とされていることを特徴とする請求項6に記載のパターン形成体。
【請求項8】
前記撥液性樹脂層が、少なくとも遮光材料を含有する撥液性遮光部であることを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。
【請求項9】
請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の前記親液性領域上に、着色層が形成されていることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の前記親液性領域上に、有機エレクトロルミネッセント層が形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項11】
請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の前記親液性領域上に、レンズが形成されていることを特徴とするマイクロレンズ。
【請求項12】
請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の前記親液性領域上が、細胞を培養するために用いられることを特徴とする細胞培養用基板。
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上にパターン状に形成され、少なくとも樹脂を含有する樹脂層とを有するパターニング用基板に、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射することにより、前記樹脂層上を撥液性とするプラズマ照射工程を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
【請求項2】
前記光触媒含有層上に、シランカップリング剤または前記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層が形成され、前記中間層上に前記樹脂層がパターン状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層により区画された開口部にエネルギーを照射し、前記開口部の表面の撥液性物質を除去する撥液性物質除去工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層が、少なくとも遮光材料を含有する遮光部であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
【請求項5】
基材と、前記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、前記光触媒含有層の前記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面にフッ素を含有していない親液性領域とされていることを特徴とするパターン形成体。
【請求項6】
基材と、前記基材上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層と、前記光触媒含有層上に形成され、シランカップリング剤または前記シランカップリング剤の重合体を含有する中間層と、前記中間層上にパターン状に形成され、表面にフッ素原子が含有されている撥液性樹脂層とを有し、前記中間層の前記撥液性樹脂層が形成されていない領域が親液性領域であることを特徴とするパターン形成体。
【請求項7】
前記中間層の前記撥液性樹脂層が形成されていない領域が、表面の水との接触角が60°以下である親液性領域とされていることを特徴とする請求項6に記載のパターン形成体。
【請求項8】
前記撥液性樹脂層が、少なくとも遮光材料を含有する撥液性遮光部であることを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。
【請求項9】
請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の前記親液性領域上に、着色層が形成されていることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の前記親液性領域上に、有機エレクトロルミネッセント層が形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項11】
請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の前記親液性領域上に、レンズが形成されていることを特徴とするマイクロレンズ。
【請求項12】
請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の前記親液性領域上が、細胞を培養するために用いられることを特徴とする細胞培養用基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−126783(P2006−126783A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183750(P2005−183750)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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