説明

パターン形成装置

【課題】基板上に塗布した塗布液を光により硬化させて電極などのパターンを形成するパターン形成装置において、アスペクト比の高いパターンを短時間で形成する。
【解決手段】吐出ノズル部52下面の吐出口521から基板W上に塗布された塗布液Pに対し、ノズル走査移動方向(X方向)における左右両側から吐出ノズル部52を挟むように設けた1対のライトガイド551,552からUV光を照射する。ライトガイド551,552の光出射面551a,552aが吐出口521から基板Wに鉛直方向に下ろした垂線の足Qを向く方向とされているので、光L1,L2は塗布液Pの側面にも照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上に電極などのパターンを形成する装置に関するものであり、例えば太陽電池基板などの光電変換素子の光電変換面に電極パターンを形成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に所定のパターンを形成する技術としては、パターン材料を含む塗布液をノズルから連続的に吐出させて基板にパターンを描画する方法がある。例えば、本願出願人が先に開示した特許文献1に記載の技術では、基板に対し一方向に相対移動するノズルから光硬化性樹脂を含むペースト状のパターン形成材料を吐出させて基板に塗布し、光照射部から紫外線を照射することによって樹脂を硬化させて基板上にパターン形成を行っている。このように、ノズルから吐出された直後の塗布液を光照射によって硬化させることで、幅が細く高さのあるパターンを形成することが可能である。
【0003】
上記した特許文献1に記載の技術を、例えば太陽電池などの光電変換素子の電極形成に応用することが考えられる。例えば特許文献2に記載の技術においては、太陽電池の光電変換面に、フィンガー電極とも称される多数の細い電極と、これらを横断するバス電極とも称される幅広の電極とが形成される。このような電極の形成に上記技術を適用することで、アスペクト比の高い電極を得ることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−204139号公報(例えば、図2)
【特許文献2】特開2005−353851号公報(例えば、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載の装置では、基板に塗布された塗布液の上から光を照射することで塗布液を硬化させている。しかしながら、パターン形成処理の高速化の要求に伴って、塗布液を硬化させるのに十分な照射時間を確保することが難しくなってきている。特に、太陽電池などの光電変換素子に形成される電極を形成するには導電性粒子を含む塗布液が用いられるが、この種の塗布液は光透過性が低いため、上部からの照射で塗布液の内部まで光が入射することはほとんど期待できない。このため、短時間の光照射では塗布液が十分に硬化せず、塗布直後の形状を維持することができないことから高いアスペクト比を有するパターンを形成することが難しい。このように、高いアスペクト比を得ながらも処理をさらに高速化するという目的から、上記従来技術にはさらなる改善の余地が残されていた。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板上に塗布した塗布液を光により硬化させて電極などのパターンを形成するパターン形成装置において、アスペクト比の高いパターンを短時間で形成することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかるパターン形成装置の一の態様は、上記目的を達成するため、基板を略水平状態に保持する基板保持手段と、前記基板の上方を前記基板に対して相対移動しながら、下面に設けられた吐出口から塗布液を連続的に吐出して前記基板表面に前記塗布液を塗布するノズルと、前記基板に塗布された前記塗布液に対し光を照射する光照射手段とを備え、前記光照射手段は、前記基板に対し前記ノズルと一体的に相対移動するとともに下面が前記塗布液に向けて光を出射する光出射面となった導光部を有しており、前記基板に対する移動により前記吐出口が描く軌跡を含む鉛直平面内とは異なる位置において、前記光出射面の法線ベクトルが、前記吐出口の中心から前記基板に下ろした垂線の足に向かう成分を有していることを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかるパターン形成装置の他の態様は、上記目的を達成するため、基板を略水平状態に保持する基板保持手段と、前記基板の上方を前記基板に対して相対移動しながら、下面に設けられた吐出口から塗布液を連続的に吐出して前記基板表面に前記塗布液を塗布するノズルと、前記基板に塗布された前記塗布液に対し光を照射する光照射手段とを備え、前記光照射手段は、前記基板に対し前記ノズルと一体的に相対移動するとともに下面が前記塗布液に向けて光を出射する光出射面となった導光部を有しており、前記光出射面が凹面であることを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかるパターン形成装置の他の態様は、上記目的を達成するため、基板を略水平状態に保持する基板保持手段と、前記基板の上方を前記基板に対して一の軸方向に相対移動しながら、下面に設けられた吐出口から塗布液を連続的に吐出して前記基板表面に前記塗布液を塗布するノズルと、前記基板に塗布された前記塗布液に対し光を照射する光照射手段とを備え、前記光照射手段は、前記基板に対し前記ノズルと一体的に相対移動するとともに下面が前記塗布液に向けて光を出射する光出射面となった導光部を有しており、前記軸方向に直交する平面と前記光出射面との交線が上に凸であることを特徴としている。
【0010】
これらの発明ではいずれも、導光部の光出射面から出射される光は、吐出口の中心から吐出されて基板に塗布された塗布液の周囲から該塗布液の方向に向かって進む。このため、基板に塗布された塗布液の上部だけでなく側部にも光が照射される。こうして塗布液の上面および側面に光を照射することで、光硬化性を有する塗布液を、塗布直後における幅が狭く高さのある塗布液の形状を維持したまま短時間で硬化させることができる。したがって、これらの発明によれば、アスペクト比の高いパターンを短時間で形成することができる。
【0011】
塗布液の側面に光を照射する方法としては、光源から発せられる光を拡散させることで塗布液の側面にも光を回り込ませることも考えられるが、この場合、光のエネルギーも分散してしまい塗布液の硬化に対するエネルギー効率が低くなる。本発明では、塗布液の側面に向けて光が照射されるように導光部の形状を設定しているので、光エネルギーの利用効率も改善される。
【0012】
これらの発明においては、例えば、光を発生する光源と、該光を導光部に案内する光ファイバとを備えてもよい。このようにすると、ノズルから離れた位置に光源を設置することができ、光源の構成と、ノズルの構成とを個別に最適化することができる。
【0013】
また、これらの発明においては、光出射面から出射されてノズルの吐出口に向かって進む光を遮光する遮光部材を備えてもよい。ノズルの吐出口に光が当たると塗布液が硬化してノズルの目詰まりを起こすことがある。これを防止するために、導光部からの光を遮光部材によって遮光することが望ましい。
【0014】
また、基板に対するノズルの移動方向における光出射面の中心が、基板に対するノズルの移動方向における吐出口の中心よりも基板に対するノズルの移動方向と反対方向の位置にあるようにしてもよい。このようにすると、導光部から出射される光は吐出口の直下の塗布液ではなく塗布された後の塗布液に重点的に照射されることになる。これにより、塗布後の塗布液に対する光の照射時間を最大化して、塗布液をより確実に硬化させてその形状の崩れを防止することができる。
【0015】
また、導光部の光出射面は、基板に対する移動により吐出口の中心が描く軌跡を含む鉛直平面に対して対称な形状を有するようにしてもよい。このようにすると、硬化後の塗布液の形状を該鉛直平面に対して対称にすることができる。
【0016】
また、基板に塗布された塗布液に対する露光量が、吐出口の中心が描く軌跡を含む鉛直平面を挟んだ一方側とこれと反対の他方側との間で互いに異なっていてもよい。このようにすると、露光量の差異に起因して塗布液の両側面で硬化の進行度合いが異なる。このようにした場合には次のような利点がある。このような塗布によるパターン形成では、塗布液の塗布および光照射による硬化後に、塗布液の乾燥または焼成が行われることがある。このとき塗布液内部に残留している溶剤成分が徐々に外部に放出されるが、塗布液表面が硬化していると内部での界面張力によって塗布液中の固体成分が凝集して偏り、結果としてパターン内部に空洞を生じる可能性がある。上記のように塗布液の両側面で露光量を異ならせると、表面の硬化の度合いが異なるため、溶剤成分は硬化の進んでいない側の側面から短時間で揮発し、内部に空洞ができるのを抑制することができる。一方、塗布液の一方の側面ではより硬化が進んでいるので、塗布液の形状は保持される。
【0017】
また、光出射面から出射される光が、鉛直平面と基板上面との交線に収束するようにしてもよい。このようにすると、塗布液の表面に照射される光量を最大にすることができ、発生された光の利用効率を向上させることができる。
【0018】
また、基板に対する移動方向に直交する方向にノズルが複数設けられるとともに、該複数のノズルの各々に対応する導光部が一体に形成されてもよい。このようにすると、基板とノズルとの1回の相対移動で複数本のパターンを形成することができる。また、導光部を一体構造とすることで、省スペース化を図ることができ、複数のノズル間の間隔を小さくして微細な構造のパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明にかかるパターン形成装置によれば、導光部の光出射面から出射される光は基板に塗布された塗布液の周囲から該塗布液の方向に向かって進むので、基板に塗布された塗布液の上面および側面に光を照射することができ、光硬化性を有する塗布液を短時間で硬化させることができる。したがって、これらの発明によれば、アスペクト比の高いパターンを短時間で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明にかかるパターン形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】塗布ヘッド部の詳細な構造を示す図である。
【図3】ライトガイドの変形例を示す図である。
【図4】ライトガイドの形状の他の例を示す図である。
【図5】複数の吐出ノズル部に対応させたライトガイドの例を示す図である。
【図6】ライトガイドの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1はこの発明にかかるパターン形成装置の一実施形態を示す図である。このパターン形成装置1は、例えば表面に光電変換層を形成された単結晶シリコンウエハなどの基板W上に導電性を有する電極配線パターンを形成し、例えば太陽電池として利用される光電変換デバイスを製造する装置である。この装置1は、例えば光電変換デバイスの光入射面に集電電極を形成するという用途に好適に使用することができる。ここで想定している電極配線パターンの断面寸法は、幅、高さいずれも40〜70μm程度のものであるが、これらの数値に限定されるものではない。
【0022】
このパターン形成装置1では、基台11上にステージ移動機構2が設けられ、基板Wを保持するステージ3がステージ移動機構2により図1に示すX−Y平面(水平面)内で移動可能となっている。基台11にはステージ3を跨ぐようにしてフレーム121が固定され、フレーム121には塗布ヘッド部5が取り付けられる。塗布ヘッド部5の構造については後で詳しく説明する。
【0023】
ステージ移動機構2は、下段からステージ3をX方向に移動させるX方向移動機構21、Y方向に移動させるY方向移動機構22、および、Z方向(鉛直方向)を向く軸を中心に回転させるθ回転機構23を有する。X方向移動機構21は、モータ211にボールねじ212が接続され、さらに、Y方向移動機構22に固定されたナット213がボールねじ212に取り付けられた構造となっている。ボールねじ212の上方にはガイドレール214が固定され、モータ211が回転すると、ナット213とともにY方向移動機構22がガイドレール214に沿ってX方向に滑らかに移動する。
【0024】
Y方向移動機構22もモータ221、ボールねじ機構およびガイドレール224を有し、モータ221が回転するとボールねじ機構によりθ回転機構23がガイドレール224に沿ってY方向に移動する。θ回転機構23はモータ231によりステージ3をZ方向を向く軸を中心に回転させる。以上の構成により、塗布ヘッド部5の基板Wに対する相対的な移動方向および向きが変更可能とされる。ステージ移動機構2の各モータは制御部6により制御される。
【0025】
塗布ヘッド部5は、ベース51の下面に基板W上に液状の塗布液を吐出する吐出ノズル部52、および、基板Wに向けてUV光(紫外線)を照射する光照射部55を有している。吐出ノズル部52は筒型でその内部に後述する塗布液を貯留するシリンジポンプとなっており、下端に吐出口521が下向きに開口するとともに上部の開口にはプランジャ522が挿入されている。制御部6からの制御指令に応じてプランジャ522が上下方向に移動することで、吐出口521からの塗布液吐出が制御される。
【0026】
塗布液としては、導電性および光硬化性を有し、例えば導電性粒子、有機ビヒクル(溶剤、樹脂、増粘剤等の混合物)および光重合開始剤を含むペースト状の混合液を用いることができる。導電性粒子は電極の材料たる例えば銀粉末であり、有機ビヒクルは樹脂材料としてのエチルセルロースと有機溶剤を含む。また、塗布液の粘度は、光照射による硬化処理を実行する前において例えば50Pa・s(パスカル秒)以下で、硬化処理を実行した後は350Pa・s以上になることが好ましい。
【0027】
この装置1では、ステージ移動機構2により基板Wを図1の矢印方向Dsに移動させながら、上記した塗布液を塗布ヘッド部5の吐出口521から吐出させることで、基板Wに塗布液を塗布することができる。この例では、基板Wの移動方向DsはX方向である。
【0028】
光照射部55は、光ファイバ531を介して紫外線を発生する光源ユニット532に接続される。図示を省略しているが、光源ユニット532はその光出射部に開閉自在のシャッターを有しており、その開閉および開度によって出射光のオン・オフおよび光量を制御することができる。光源ユニット532は制御部6により制御されている。
【0029】
図2は塗布ヘッド部の詳細な構造を示す図である。より具体的には、図2(a)は塗布ヘッド部5をX方向から見た図である。また、図2(b)は塗布ヘッド部5をY方向から見た図である。塗布ヘッド部5では、ベース51に吐出ノズル部52が取り付けられており、その下端に下向きに開口する吐出口521からは、基板Wに向けて塗布液Pが吐出される。また、光照射部55では、Y方向の両側から吐出ノズル部52を挟むように、UV光を透過する例えば石英ガラスや樹脂材料からなる1対のライトガイド551,552が設けられている。光ファイバ531は複数の芯線からなっており、そのうち半分の芯線5311がライトガイド551に、もう半分の芯線5312がライトガイド552に接続されている。光源ユニット532から発せられるUV光は、ライトガイド551,552の下面から主に当該面の法線方向に向けて出射される。
【0030】
ここで、ライトガイド551の下面551aおよびライトガイド552の下面552aは、図2(a)に示すように斜め下向きとなっており、その法線ベクトルが、吐出ノズル部52の吐出口521の中心から基板W表面に向けて下ろした垂線PLの足Qに向かう成分を有している。この垂線PLは吐出口521の中心を通る鉛直線と略一致する。このため、ライトガイド551から出射される光L1およびライトガイド552から出射される光L2はいずれも、真下ではなく吐出ノズル部52から基板Wに向けて吐出される塗布液Pの基板上における着液位置に向かって出射される。そのため、基板Wに塗布された塗布液Pに対しては、その上面だけでなく側面からも光が照射されることになる。これにより、短時間の光照射でも塗布液の硬化が進むので、塗布直後のアスペクト比の高い状態を維持して硬化させることができる。
【0031】
また、図2(b)に示すように、ライトガイド551,552は、吐出ノズル部52の吐出口521よりも(+X)方向に大きく延びており、X方向においてライトガイドから光が照射される照射領域Rxは主に、塗布液の着液位置よりも基板移動方向Dsにおける下流側に広がっている。つまりX方向において、照射領域Rxの中心は、吐出口521の中心よりも基板移動方向Dsの下流側(基板から見ればノズル移動方向とは反対側)に位置することになる。このため、基板Wに塗布された塗布液Pが基板Wの移動によりその移動方向Dsの下流側へ移動してゆくとき、塗布直後からライトガイド551,552による照射領域Rxを通過する間、光照射が継続される。こうすることで、塗布液Pに対する光照射時間を長くして、塗布液Pをより確実に硬化させることができる。
【0032】
図3はライトガイドの変形例を示す図である。上記の例ではライトガイド551,552がUV光を透過する材料で構成されており、光はライトガイドの内部を通って下面から出射されていた。一方、図3(a)に示す第1の変形例では、光ファイバの芯線5311,5312がそれぞれライトガイド553,554の内部を貫通してその端部がライトガイド下面553a,554aに露出している。このような構造では、光ファイバの芯線5311,5312の端面から直接光が出射されて基板W上の塗布液Pに照射される。このような構造でも、上記と同様な効果を得ることができる。この場合、ライトガイド自体には光透過性を必要とされない。なお、光ファイバ531の芯線をさらに分散させてライトガイド内に分散配置してもよい。
【0033】
また、図3(b)に示す第2の変形例では、ライトガイド551の下面551aと吐出口521との間に遮光カバー528が、またライトガイド552の下面552aと吐出口521との間に遮光カバー529がそれぞれ設けられ、ライトガイドから出射されて吐出口521に向かう光が遮られて、光が吐出口521に当たることが防止されている。このようにすると、吐出口521から吐出された直後の塗布液に光が当たって硬化し吐出口521の周囲に付着したり詰まらせてしまうのを効果的に防止することができる。このような遮光カバーについては、以下に説明する各変形例にも好適に適用可能である。
【0034】
図4はライトガイドの形状の他の例を示す図である。上記した光照射部55は、Y方向における両側から吐出ノズル部52を挟むように1対のライトガイド551,552が設けられて塗布液Pの側面2方向から光を照射している。これに対し、図4(a)に示す第3の変形例では、一体のライトガイド555によって、上記と同様の2方向からの光照射を可能としている。すなわち、ライトガイド555の下面555aを上下逆向きのV字型として、その2つの斜面を光出射面として作用させることで、上記と同様に塗布液Pの側面にも光を照射することができる。
【0035】
このとき、Y−Z平面、つまり基板移動方向Dsに直交する平面でライトガイド555を切断した切断面における光出射面555aの形状は上に凸となっている。また、光出射面555aを下方から見たときの形状は2平面が所定の角度を持って交わる凹面である。本願発明者らの知見によれば、この2面の交わる角度θの好ましい範囲は、30ないし170度程度である。また、ライトガイドの底面から基板W表面までの距離Gとしては、形成する電極のサイズにもよるが、概ね50μmないし10mm程度である。
【0036】
この場合にも、図4(b)に示すように、基板移動方向Dsにおける下流方向へライトガイド555を延ばすことにより、塗布液Pに対する光照射時間を長くすることができる。また、塗布直後の塗布液にも光を照射して塗布液の形状の崩れを防止することができるように、ライトガイド555の端部を基板移動方向Dsにおける上流側へも延長して、吐出口521の周囲を光出射面555aが取り囲むような形状とすることが望ましい。
【0037】
また、図4(c)に示す第4の変形例のライトガイド556では、Y−Z平面でライトガイド556を切断したときの光出射面556aの断面形状が上に凸の曲面となっている。したがって、光出射面556aを下方から見ると略半円筒形の凹面となっている。このような形状とすれば、光出射面556aからの光は基板W上の塗布液Pに向かって収束するように出射されるので、塗布液Pへの照射光量をさらに高めて光エネルギーの利用効率を向上させることができる。この場合、例えば、光出射面556aの各位置における法線が、吐出口521の中心から基板W表面に下ろした垂線の足Qを通るようにすれば、点Qに収束するように光を出射させることができる。
【0038】
この場合、光出射面556aの曲率半径の好ましい範囲は、本願発明者らの知見によれば0.1ないし1.5mm程度である。また、基板Wとの間隔Gについては上記と同様である。
【0039】
以上の例は、いずれも塗布ヘッド部5に1つの吐出ノズル部52が取り付けられている場合の例である。しかしながら、この種の装置では、Y方向に複数の吐出ノズル部を設けることで、1回の走査移動で複数本のパターンを形成するように構成される場合がある。ここで、複数の吐出ノズル部のY方向における間隔が十分にある場合には上記のような吐出ノズル部と光照射部55との組を複数設ければよいが、吐出ノズル部を互いに近接させて配置したい場合がある。このような場合には、例えば次のようにすることができる。
【0040】
図5は複数の吐出ノズル部に対応させたライトガイドの例を示す図である。ここでは、ベース511に4組の吐出ノズル部52がY方向に等間隔に配列される場合を例示するが、吐出ノズル部の個数はこれに限定されず、またその間隔も任意である。Y方向における吐出ノズル部52の配列ピッチは、例えば1.5ないし2.5mm程度とすることができる。図5(a)に示す第5の変形例のライトガイド557は、図4(a)に示したV字形状の光出射面をY方向に多数組設け、これを一体的に形成したものである。
【0041】
このような構成では、全体として断面形状が鋸歯状となる光出射面557aの各面がそれぞれの吐出ノズル部52から基板Wに塗布される塗布液Pと対向するように配置されるので、塗布液Pの側面にも効率よく光を照射することができる。この場合、光を均等に照射するために、光ファイバ531の芯線をY方向の各部に適宜分散させて接続することが望ましい。2つの光出射面のなす角およびライトガイドと基板との距離については、図4(a)の例と同様とするのが好ましい。
【0042】
また、図5(b)に示す第6の変形例のライトガイド558は、図4(c)に示した凹面の光出射面をY方向に多数組設け、これを一体的に形成したものである。このようにしても、各吐出ノズル部52から基板Wに塗布される塗布液Pの側面に対し、効率よく光を照射することができる。光出射面558aの曲率半径およびライトガイドと基板との距離についても、図4(c)の例と同様とするのが好ましい。
【0043】
上記した各ライトガイドの光出射面は吐出ノズル部52の移動方向において左右対称となっている。より詳しくは、吐出口521の中心を含むX−Z平面、つまり基板Wとの相対移動によって吐出口521の中心が描く軌跡(X軸方向の線分)を含む鉛直平面に対して光出射面が対称な形状を有している。このことは必須の構成ではないが、このようにすることで、基板W上の塗布液Pの両側面からの光照射量が等しくなり、塗布液の硬化後に得られる電極の断面形状を中心軸に対して対称とすることができる。一方、以下に示すように、基板W上の塗布液Pの両側面からの光照射量を互いに異ならせるようにすると、さらに他の作用効果を得ることができる。
【0044】
図6はライトガイドの他の例を示す図である。図6(a)の例では、ライトガイド551およびこれに付随する構成を省き、基板W上の塗布液Pに対しては、吐出ノズル部52と基板Wとの相対移動方向(X方向)から見て片側のみから光L2を照射する。このような構成では、塗布液Pの表面のうち光が照射された面(図6(a)において右側)の硬化が進む一方、反対側の面(同左側)では硬化が遅れる。このようにすることで次のような利点が生まれる。
【0045】
パターン材料を含む塗布液の塗布および光照射によりパターン形成する技術においては、パターンをより強固なものとするために、光照射の後に塗布液を乾燥および/または焼成するプロセスが付加される場合がある。このとき、内部に溶剤成分が残留したまま塗布液の表面のみ硬化が進んでいる状態では、内部の溶剤成分が揮発するのに時間がかかり、内部での界面張力によって塗布液中の固体成分が凝集して偏り、結果としてパターン内部に空洞を生じる可能性がある。
【0046】
図6(a)に示すように、塗布液の一方側のみから光を照射し両側面での露光量(照射光の強度の時間積分値)を異ならせるようにすると、塗布液表面の硬化の進行に差が生じ、乾燥・焼成プロセスでは硬化の進んでいない表面からは溶剤成分が阻害されることなく揮発するので、上記のような空洞が生じるのを未然に防止することができる。また、塗布液の片側では硬化が進んでいるため、乾燥・焼成が完了するまでにパターンの形状が崩れることは回避される。
【0047】
図6(b)に示す例では、塗布液Pの両側に照射する光の照射光量を異ならせることで露光量を異ならせている。すなわち、図において左上から塗布液Pに照射する光L1による塗布液Pの露光量と、右上から照射する光L2による塗布液Pの露光量とを互いに異ならせる。このようにしても同様の効果を得ることが可能である。露光量を互いに異ならせるための具体的な構成としては、例えば、多数の芯線からなる光ファイバ531の芯線を2組に分ける際にそれぞれの芯線の本数を異ならせることができる。これにより、照射光の強度に差異を設けることができる。また、例えばX方向におけるライトガイド551,552の長さを互いに異ならせ光照射時間に差を付けることによっても、露光量に差異を設けることが可能である。
【0048】
以上のように、この実施形態では、吐出ノズル部52から基板Wに塗布された塗布液を光照射によって硬化させるのに際して、ノズル吐出口521を挟むように設けたライトガイドで案内した光を斜め方向から照射するようにしている。このような構成によれば、塗布液の上面だけでなく側面にも光が照射されるため、基板W上に塗布された塗布液の外面全体が短時間で硬化する。そのため、塗布直後のアスペクト比の高い形状を維持したパターンを形成することができる。また、光照射時間が短くて済むことから、処理時間を短縮することができる。
【0049】
特に、ノズルと基板との相対的な走査移動によって基板上に塗布された塗布液が移動する移動方向の下流側に延びるようにライトガイドを設けることにより、走査速度を落とすことなく、光照射時間を長くすることができる。逆に言えば、必要な光照射時間を確保しつつ走査速度を高めることができる。
【0050】
また、ライトガイドと塗布液の吐出口との間に遮光カバーを設けることで、ライトガイドから出射される光が吐出口に当たらないようにすることができ、吐出口の周辺で塗布液が固まってしまうことが防止される。
【0051】
以上説明したように、この実施形態では、ステージ3が本発明の「基板保持手段」として機能している。また、吐出ノズル部52が本発明の「ノズル」として機能している。また、本実施形態における光照射部55が本発明の「光照射手段」として機能し、特にライトガイド551,552等が本発明の「導光部」として機能している。また、光源ユニット532および光ファイバ531がそれぞれ本発明の「光源」および「光ファイバ」として機能している。
【0052】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態におけるライトガイドの形状や寸法は一部の例を開示したものにすぎず、これに限定されるものではない。
【0053】
また、上記実施形態では、光重合開始剤を含む塗布液にUV光を照射することによって塗布液を光により硬化させてパターンを形成しているが、照射する光はUV光に限定されない。例えば、炭酸ガスレーザを光源として赤外線を塗布液に照射し、塗布液を熱硬化させる構成においても本発明を適用することが可能である。この場合、塗布液には光硬化性を有することを要しない。
【0054】
また、上記実施形態では、固定された塗布ヘッド部5に対して基板Wを移動させることで塗布ヘッド部5と基板Wとの相対移動を実現しているが、逆に基板Wを固定して塗布ヘッド部5を移動させるようにしてもよい。また、X方向への相対移動とY方向への相対移動とを適宜組み合わせてもよい。
【0055】
また、上記実施形態ではシリコン基板上に電極配線を形成して太陽電池としての光電変換デバイスを製造しているが、基板はシリコンに限定されるものではない。例えば、ガラス基板上に形成された薄膜太陽電池や、例えばリチウムイオン全固体電池のような太陽電池以外のデバイスに電極を形成する際にも、本発明を適用することが可能である。さらに、プラズマディスプレイパネルやタッチパネルなどの隔壁(リブ)パターンや電極以外の配線パターンを形成する場合や、ペースト接着剤を所定のパターンに塗布する場合にも、本発明を好適に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明は、基板、例えば太陽電池基板上に電極などのパターンを形成する装置に適用可能であり、特にアスペクト比の高いパターンを必要とされる分野に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
2 ステージ移動機構
3 ステージ(基板保持手段)
5 塗布ヘッド部
6 制御部
52 吐出ノズル部(ノズル)
55 光照射部(光照射手段)
521 吐出口
531 光ファイバ
532 光源ユニット(光源)
551,552 ライトガイド(導光部)
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を略水平状態に保持する基板保持手段と、
前記基板の上方を前記基板に対して相対移動しながら、下面に設けられた吐出口から塗布液を連続的に吐出して前記基板表面に前記塗布液を塗布するノズルと、
前記基板に塗布された前記塗布液に対し光を照射する光照射手段と
を備え、
前記光照射手段は、前記基板に対し前記ノズルと一体的に相対移動するとともに下面が前記塗布液に向けて光を出射する光出射面となった導光部を有しており、
前記基板に対する移動により前記吐出口が描く軌跡を含む鉛直平面内とは異なる位置において、前記光出射面の法線ベクトルが、前記吐出口の中心から前記基板に下ろした垂線の足に向かう成分を有していることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
基板を略水平状態に保持する基板保持手段と、
前記基板の上方を前記基板に対して相対移動しながら、下面に設けられた吐出口から塗布液を連続的に吐出して前記基板表面に前記塗布液を塗布するノズルと、
前記基板に塗布された前記塗布液に対し光を照射する光照射手段と
を備え、
前記光照射手段は、前記基板に対し前記ノズルと一体的に相対移動するとともに下面が前記塗布液に向けて光を出射する光出射面となった導光部を有しており、前記光出射面が凹面であることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項3】
基板を略水平状態に保持する基板保持手段と、
前記基板の上方を前記基板に対して一の軸方向に相対移動しながら、下面に設けられた吐出口から塗布液を連続的に吐出して前記基板表面に前記塗布液を塗布するノズルと、
前記基板に塗布された前記塗布液に対し光を照射する光照射手段と
を備え、
前記光照射手段は、前記基板に対し前記ノズルと一体的に相対移動するとともに下面が前記塗布液に向けて光を出射する光出射面となった導光部を有しており、前記軸方向に直交する平面と前記光出射面との交線が上に凸であることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項4】
光を発生する光源と、該光を前記導光部に案内する光ファイバとを備える請求項1ないし3のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項5】
前記光出射面から出射されて前記ノズルの吐出口に向かって進む光を遮光する遮光部材を備える請求項1ないし4のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項6】
前記基板に対する前記ノズルの移動方向における前記光出射面の中心が、前記基板に対する前記ノズルの移動方向における前記吐出口の中心よりも前記基板に対する前記ノズルの移動方向と反対方向の位置にある請求項1ないし5のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項7】
前記導光部の前記光出射面は、前記基板に対する移動により前記吐出口の中心が描く軌跡を含む鉛直平面に対して対称な形状を有する請求項1ないし6のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項8】
前記基板に塗布された前記塗布液に対する露光量が、前記吐出口の中心が描く軌跡を含む鉛直平面を挟んだ一方側とこれと反対の他方側との間で互いに異なっている請求項1ないし6のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項9】
前記光出射面から出射される光が、前記鉛直平面と前記基板上面との交線に収束する請求項7または8に記載のパターン形成装置。
【請求項10】
前記ノズルが、前記基板に対する移動方向に直交する方向に複数設けられるとともに、前記複数のノズルの各々に対応する前記導光部が一体に形成されている請求項1ないし9のいずれかに記載のパターン形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−204989(P2011−204989A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72448(P2010−72448)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】