パターン欠陥検査装置および方法
【課題】 ウェハ上の多様な欠陥を高速、高感度に検出するパターン欠陥検査装置および方法を提供する。
【解決手段】 パターン欠陥検査装置において、複数の波長を出力可能な照明光源3から射出された光を、照明光学系4で線状に照明する。ウェハ1上の回路パターンや欠陥により回折、散乱された光は、結像光学系5でラインセンサ6に集光され、ディジタル信号に変換され、信号処理部7で欠陥が検出される。このとき、照明光学系4の光軸101と結像光学系5の光軸102でなす面と配線パターンの方向をほぼ平行にし、さらに、結像光学系5の光軸102とウェハ1とのなす角度を、パターンからの回折光が少なくなる角度に設定することにより、高感度に欠陥を検出する。
【解決手段】 パターン欠陥検査装置において、複数の波長を出力可能な照明光源3から射出された光を、照明光学系4で線状に照明する。ウェハ1上の回路パターンや欠陥により回折、散乱された光は、結像光学系5でラインセンサ6に集光され、ディジタル信号に変換され、信号処理部7で欠陥が検出される。このとき、照明光学系4の光軸101と結像光学系5の光軸102でなす面と配線パターンの方向をほぼ平行にし、さらに、結像光学系5の光軸102とウェハ1とのなす角度を、パターンからの回折光が少なくなる角度に設定することにより、高感度に欠陥を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料上の回路パターンの欠陥や異物を検出するパターン欠陥検査・異物検査技術に係り、特に、半導体ウェハや液晶ディスプレイ、ホトマスクなどの回路パターンにおける欠陥・異物を高感度で高速に検査するパターン欠陥検査装置および方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料上の回路パターンの欠陥や異物を検出する欠陥検査装置は、試料を移動させつつ、イメージセンサ等の撮像素子により試料を撮像し、検出した画像信号と一定時間遅らせた画像信号の濃淡を比較することにより不一致部を欠陥として認識するものがある(特許文献1)。
【0003】
また、試料の欠陥検査に関する他の技術としては、メモリマット部等のパターン密度が高い領域と周辺回路等のパターン密度が低い領域とが同一ダイ内に混在する半導体ウェハなどにおいて、高精度に欠陥を検出する技術がある。これは、被検査パターンの高密度領域と低密度領域の明るさ或いはコントラストを算出し、事前に定めた関係になるように画像信号を補正し、補正された画像信号を元に、画像比較を行うものである(特許文献2)。
【0004】
また、ホトマスクの回路パターンを検査する技術としては、光源にエキシマレーザ等のUV(Ultra Violet:紫外)レーザ光を用い、光路上に挿入した拡散板を回転させて可干渉性を低減させた光をマスクに均一照明し、得られるマスクの画像データから特徴量を計算してホトマスクの良否を判定する技術がある(特許文献3)。
【0005】
また、試料の表面を検査するシステムとしては、斜角の入射角で線を照明し、線に対応する部分からの光を検出する技術がある(特許文献4)。
【0006】
また、半導体ウェハ及びレチクルの検査システムとしては、ウェハの縦横軸に45度の角度を補償するように照明する技術がある(特許文献5)。
【特許文献1】特開昭61−212708号公報
【特許文献2】特開平8−320294号公報
【特許文献3】特開平10−78668号公報
【特許文献4】特表2001−512237号公報
【特許文献5】特表2002−544477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年のLSI製造においては、高集積化のニーズに対応した回路パターンの微細化により、ウェハ上に形成される配線パターンの幅は縮小の一途を辿っている。一方、配線の導電率を確保するために、配線パターンの高さは高くなっており、高さ/幅のアスペクト比は3〜4に達している。これに対応して、欠陥検出装置も検出すべき欠陥の寸法も微細化が求められている。
【0008】
このような中、欠陥検査装置では、検査用対物レンズの高NA(Numerical Aperture:開口数)化や光学的な超解像技術の開発が進められているが、検査用対物レンズの高NA化は物理的限界に達しているため、検査に用いる光の波長をUV光やDUV(Deep UV:深紫外)光の領域へ短波長化していくのが本質的なアプローチである。
【0009】
しかし、LSIデバイスには主に高密度の繰返しパターンで形成されるメモリ製品や、主に非繰返しパターンで形成されるロジック製品などがあり、検査対象となるパターンの構造が複雑かつ多様化している。このため、LSIデバイス製造時に管理が必要な欠陥(ターゲット欠陥)を確実に見つけ出すことが困難となっている。検出が望まれているターゲット欠陥としては、各製造プロセス中に発生する異物やエッチング後の回路パターンの形状不良に加え、CMP工程ではボイドやスクラッチがある。さらに、ゲート配線やアルミニウム等の金属配線部では配線パターン間のショート(ブリッジとも言う)がある。特に、配線パターン間のショートは、配線パターンに比べて高さが低いものが多く、検出が困難であるという課題がある。
【0010】
また、多層配線のLSIデバイスにおいては、前記のターゲット欠陥の微細化に加え、欠陥が発生している場所の下地パターンも多様化しているため、さらに検出が困難となっている。特に、絶縁膜等の透明膜(ここでは、照明波長に対して透明という意味)が最表面に露出している工程では、透明膜の微小な膜厚差による干渉光の強度ムラが光学ノイズとなる。そのため、干渉光の強度ムラの影響を低減しつつ、ターゲット欠陥を顕在化するという課題がある。
【0011】
また、LSIを安定に製造するためには、LSIデバイスの不良状況を正確に管理する必要があり、そのためにはLSI基板を全数検査することが望ましい。従って、前記ターゲット欠陥を短時間で検出するという課題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、ウェハ上の多様な欠陥を高速、高感度に検出するパターン欠陥検査装置および方法を提供することにある。
【0013】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、試料を照明する照明手段と、照明手段により照明された試料からの散乱光を結像する結像手段と、結像手段により形成された試料の像を光電変換する検出手段と、検出手段から出力された信号を処理し、試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えたパターン欠陥検査装置において、試料を照明手段により照明し、照明手段により照明された試料からの散乱光を結像手段により結像し、結像手段により形成された試料の像を検出手段により光電変換し、検出手段から出力された信号を信号処理手段により処理し、試料上の欠陥を検出するパターン欠陥検査方法を実現し、照明手段の光軸と結像手段の光軸とがなす面が試料上の配線パターンとほぼ平行であることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明では、照明手段は複数の波長を射出可能であり、照明手段による照明形状は線状であることを特徴とする。また、結像手段は試料の法線方向に移動可能であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、試料を照明する照明手段と、照明手段により照明された試料からの散乱光を結像する結像手段と、結像手段の光路中で光束を制限するフィルタリング手段と、フィルタリング手段を通過した光束により形成された試料の像を光電変換する検出手段と、検出手段から出力された信号を処理し、試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えたパターン欠陥検査装置において、試料を照明手段により照明し、照明手段により照明された試料からの散乱光を結像手段により結像し、結像手段の光路中で光束をフィルタリング手段により制限し、フィルタリング手段を通過した光束により形成された試料の像を検出手段により光電変換し、検出手段から出力された信号を信号処理手段により処理し、試料上の欠陥を検出するパターン欠陥検査方法を実現し、フィルタリング手段は、配線パターンからの回折光が少ない領域を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
本発明によれば、ウェハ上の多様な欠陥を高速、高感度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るパターン欠陥検査装置の一例を図1に示す。本発明の実施の形態1に係るパターン欠陥検査装置は、検査対象であるウェハ1を載置および移動させる搬送系2、複数の波長を射出可能な照明光源3、ウェハ1を照明する照明手段である照明光学系4、照明光学系4により照明されたウェハ1からの散乱光を結像する結像手段である結像光学系5、結像光学系5により形成されたウェハ1の像を光電変換する検出手段であるラインセンサ6、ラインセンサ6から出力された信号を処理し、ウェハ1上の欠陥を検出する信号処理手段である信号処理部7から構成されており、照明光学系4は、リレーレンズ41、シリンドリカルレンズ42で構成されている。
【0022】
照明光源3から射出された光は、リレーレンズ41で平行光にされ、シリンドリカルレンズ42でウェハ1上に線状で集光される。シリンドリカルレンズ42により照射された光は、ウェハ1上の回路パターンや欠陥により回折、散乱される。欠陥からの散乱光は、結像光学系5でラインセンサ6の受光面に集光され、ディジタル信号に変換された後、信号処理部7で欠陥が検出される。
【0023】
ここで、線状とは、照明領域の縦横比が概ね2以上(照明領域の短手方向の長さに対して、長手方向の長さが2倍以上)の形状を指しており、ラインセンサ6の有効画素で検出される範囲を照明できる大きさであれば良い。照明光を線状で照射する利点は、一度に広範囲の光学情報を取得可能であり、高速に検査が可能となるためである。
【0024】
また、結像光学系5は回路パターンからの回折光を受光しない、または、受光量の少ない位置に配置しておくことが重要である。回路パターンからの回折光は、照明光学系4の光軸101に対して正反射方向が最も強く、回折光の次数が高くになるにしたがって正反射光に対する回折角度が大きくなり、光量が減少する傾向がある。つまり、ウェハ1の垂直上方から落射照明した場合は、正反射光が垂直上方へ向かうため、水平面に近い方が回路パターンの回折光が少なくなる。従って、結像光学系5の光軸102がウェハ1の面から上方に角度αの位置に設置されている場合、角度αは概ね2〜10度の角度が望ましい。この時、回路パターンに対して角度αを適正化したい場合は、後述する方法で回路パターンからの受光量が最も少ない位置に決定すれば良い。
【0025】
以下、本実施の形態に係るパターン欠陥検査装置の各部分の詳細を述べる。
【0026】
まず、搬送系2は、ウェハ1を保持し、XYZθ軸方向に動かすことにより、ウェハ1の各領域を照明領域に順次移動させる機能を持つ。搬送系2は、例えば、X軸ステージ、Y軸ステージ、Z軸ステージ、θ軸ステージ、ウェハチャックで構成されている。X軸ステージは定速走行が可能であり、Y軸ステージはステップ移動が可能な構成である。Z軸ステージはウェハチャックを上下させる機能を有し、θ軸ステージはウェハチャックを回転させ、X軸ステージ、Y軸ステージの進行方向に対し、ウェハ1を所定の角度に回転する機能を有する。さらに、ウェハチャックは真空等で吸引することによりウェハ1を保持する機能を有する。
【0027】
照明光源3は、レーザ発振器やランプである。例えば、複数の波長を射出することが可能な多波長レーザが使用可能である。また、ランプとしては、Xeランプ、Hg―Xeランプ、Hgランプ、超高圧Hgランプ、高圧HgランプやElectron−Beam−Gas−Emission−Lamp(出力波長は、例えば、351nm、248nm、193nm、172nm、157nm、147nm、126nm、121nm)等が使用可能であり、所望の波長を出力することができれば良い。ランプの選択方法は、例えば、所望の波長の出力が高いランプを選択すれば良く、ランプのアーク長は短い方が望ましい。
【0028】
多波長の光を用いる利点を図16で説明する。図16は透明膜の膜厚とこの透明膜による反射光の干渉光強度の関係を示している。単一波長で照明した場合、干渉光強度は膜厚に応じて正弦波状に変化し(図16のλ1またはλ2のグラフ)、膜厚tが(式1)の時に強度が強くなり、(式2)の時に強度が弱くなる。なお、(式1)(式2)では、照明光の波長をλとしており、nは整数である。
【0029】
t=λ×n、または、t=λ×n+λ/2 (式1)
t=λ×n+λ/4、または、t=λ×n+λ×3/4 (式2)
(式1)(式2)からわかるように、単一波長では波長λが短くなるにつれ、干渉強度の変化は膜厚の変化に対して敏感になる。
【0030】
そこで、波長毎に干渉強度の変化の位相が違うことを利用し、波長λ1と異なる波長λ2を加えた場合の干渉光強度が図16の(λ1+λ2)のグラフである。2波長にすることにより干渉強度が平均化され、膜厚変化に対して干渉強度の変化が少ない範囲を作ることができる。LSIにおける膜厚の製造範囲に対し、この干渉強度の変化が少なくなるような波長を選択することにより、干渉に影響されない検査装置を提供することができる。本例では、2つの波長で説明したが、3つ以上の波長を組み合わせても良い。波長を増やすことの利点は、干渉光強度の平均化効果が増大することである。
【0031】
次に、照明光学系4の光軸101と結像光学系5の光軸102との関係を図2で説明する。図2は配線パターン201と配線間のショート欠陥202と検出方向の位置関係を示しており、図2(a)が斜視図、図2(b)がy軸断面図(断面表記省略、図2(c)が平面図である。本実施の形態では、配線パターンに対する高さが低いショート欠陥を例にして説明するが、高さが高いショート欠陥、例えば配線と同じ高さのショート欠陥や他の異物、欠陥にも適用できる。
【0032】
まず、図2(b)で従来の斜方照明または斜方検出の課題を説明する。配線パターン201に対して、斜方照明204を行った場合、ショート欠陥202は配線パターン201の影になるため、照明光が欠陥に届かず、ショート欠陥202からの散乱光が発生しない。また、斜方検出205を行った場合、ショート欠陥202からの散乱光は配線パターン201に遮られ、検出器で検出することができない。従って、これらのどちらかで構成される光学系では、ショート欠陥202を検出することは困難である。
【0033】
そこで、本実施の形態では、図2(a)において、x軸を含む面203で照明および検出を行うことを特徴とする。ここで、x軸は配線パターン201の長手方向にほぼ平行な方向である。ほぼ平行というのは、図2(c)に示すように、配線パターン201間の距離と、配線パターン201の長さからなる角度φの範囲内であれば良いことを含む。
【0034】
次に、結像光学系5のz方向の位置について説明する。本実施の形態では結像光学系5をウェハ1の法線方向に移動可能なことを特徴としている。つまり、図3に示す角度αを変える機構を有する。ここで、角度αは照明光学系4の光軸101とウェハ1との交点を頂点とし、結像光学系5の光軸102とウェハ1の表面が為す角度である。なお、移動機構は図示していないが、例えば、ベース板上に結像光学系5とラインセンサ6を配置し、前記交点を中心にしてベース板を上下すれば良い。
【0035】
結像光学系5の光軸102とウェハ1の表面が為す角度を変える目的は、配線パターンからの回折光を最小にする角度で検出するためである。図4に配線パターンの回折光分布(波線部)の一例を示す。図4(a)は配線パターンの長手方向の断面から見た回折光の強度分布であり、図4(b)は配線パターンが繰返している方向から見た回折光の強度分布である。図4(a)のように回折光が分布する場合は、ウェハ1の表面に近い角度、つまり、αが小さい値であるのが望ましい。また、図4(b)のように、複数の回折光が発生する場合は、回折光の検出量が少ない角度αに設定するのが望ましい。ただし、図4(a)(b)が同じ照明領域に混在する場合は、αは小さい値が望ましい。
【0036】
なお、角度αの値は、シミュレーション等で算出して決めても良く、または実測して決めても良い。実測する場合の結像光学系5の角度の決定方法のシーケンスを図5に示す。まず、ウェハ1上の検査したい回路パターンを照明光学系4の照明領域に移動する(S501)。この時、欠陥を含まない回路パターンを指定するのが望ましい。次に、この領域からの回折、散乱光をラインセンサ6で検出し、ラインセンサ6の出力を合算する(S502)。次に、角度αにΔαを加算する(S503)。ここで、Δαは測定分解能であり2度〜5度程度の値でよい。次に、角度αの値が可動範囲内かどうかを判定する(S504)。この判定で可動範囲内であれば(Yesの場合)角度αを変えて結像光学系5とラインセンサ6を設定し(S505)、前記S502の動作を行う。もし、この判定でNoの場合は、検出光量のグラフを作成する(S506)。最後に、このグラフから検出光量が最小値となる角度α0を計算し、この角度α0を装置に設定する(S507)。ここで、この結像光学系5の角度決定時に表示するグラフの例を図6に示す。図6は、横軸に角度αの値、縦軸にラインセンサ6の出力の合算値をプロットしたものである。適切な角度αは、図6のグラフにて検出光量が最低値になる値α0を最適値とすれば良い。
【0037】
ここで、結像光学系5は、照明領域からの回折、散乱光を受光し、ラインセンサ6の受光面に結像する機能を有するものである。
【0038】
次に、ラインセンサ6について説明する。ラインセンサ6は、結像光学系5で集光した光を光電変換し、A/D(アナログ/ディジタル)変換する機能を有するものである。光電変換素子は、例えばイメージセンサであり、1次元のCCDセンサやCMOS型のセンサやフォトマルチプライヤ(光電子倍増管)を直列に並べたものである。また、TDI(Time Delay Integration)型のイメージセンサでも良く、TVカメラのような2次元CCDセンサを用いても良い。なお、イメージセンサは表面入射型でも良く、裏面入射型でも良いが、紫外光領域の波長を受光する場合は、裏面入射型が望ましい。また、1次元のCCDセンサやTDIイメージセンサは、マルチタップのものが良い。ここで、マルチタップとは、CCDセンサの有効画素数に対して、データの出力端が複数存在することを示している。例えば、有効画素が1024画素のCCDセンサに対して、64画素毎に出力端を設けることにより、電荷読出し時間が64/1024=1/16倍となり、出力端が1個のCCDセンサに比べて16倍の動作速度で使うことができる。このマルチタップのラインセンサを用いた構成を図11に示す。図11では、ラインセンサ6の受光面に対して、8個のタップに分かれている例である。この8個のタップ(出力端)に対して、それぞれ信号処理部7を接続することにより、並列で信号処理することが可能となり、高速な検査が可能となる。
【0039】
次に、信号処理部7を説明する。信号処理部7は、ラインセンサ6から出力された信号を処理し、欠陥を検出する機能を持つ。欠陥を検出する方法としては、例えば、ラインセンサ6から出力された信号に対し、事前に決めたしきい値を越えた信号を欠陥とする方法である。この時、欠陥の座標は搬送系2の位置から決めれば良い。例えば、搬送系2にエンコーダを取付け、予め決めた原点からの相対距離を欠陥の座標とすれば良い。
【0040】
次に、信号処理部7の別の構成例を図7で説明する。前記の例は、回路パターンからの光量が欠陥部からの光量に比べて十分少ない場合に適用でき、本例は、回路パターンからの光量が多い場合に用いれば良い。
【0041】
信号処理部7は、階調変換部701、信号フィルタ702、遅延メモリ703、位置合わせ部704、局所階調変換部705、比較処理部706、CPU707、散布図作成部708、記憶手段709で構成されている。
【0042】
動作を説明する。まず、ラインセンサ6で得られた信号は信号処理部7に送られ、階調変換部701で特開平8−320294号公報に記載されたような階調変換を施される。この階調変換部701は、対数変換や指数変換・多項式変換等により信号を補正するものである。信号フィルタ702は、階調変換部701で階調変換された信号から、照明光源特有の信号ノイズを効率良く除去するフィルタである。遅延メモリ703は、後述する比較処理部706で比較するための参照信号を記憶する記憶部であり、信号フィルタ702から得られた出力信号を、ウェハ1に形成された回路パターンの1つ以上のセルまたは1つ以上のダイのデータを記憶して、後段への伝達を遅延させるものである。ここで、セルはダイ内の回路パターンの繰返し単位である。なお、信号フィルタ702は遅延メモリ703を通過した後でもよい。
【0043】
次に、位置合わせ部704は、階調変換部701から得られた出力信号(ウェハ1から得られる検査信号)720と、遅延メモリ703から得られる遅延信号(基準となる参照信号)721との位置ずれ量を正規化相関法等によって検出して画素単位に位置合わせを行う部分である。局所階調変換部705は、特徴量(明るさ、信号から画像を構成したときに算出される微分値や標準偏差やテクスチャ等)の異なる信号を特徴量が一致するように双方もしくは一方の信号について階調変換する部分である。また、比較処理部706は局所階調変換部705で階調変換された検出信号同士を比較して特徴量の相違に基づいて欠陥を検出する部分である。すなわち、比較処理部706は、遅延メモリ703から出力されるセルピッチ等に相当する量だけ遅延した参照信号と検出信号を比較する。なお、比較処理部706の詳細は特開昭61−212708号公報等に開示されている技術で良く、例えば、画像の位置合わせ回路や位置合わせされた画像の差画像検出回路、差画像を二値化して不一致を検出する回路、二値化された出力から面積や長さ(投影長)、座標などを算出する特徴抽出回路からなる。
【0044】
散布図作成部708は、検査信号の特徴量と参照信号の特徴量との散布図を作成する機能を有し、CPU707を介して入出力部(図示せず)に表示するものである。
【0045】
図8は信号処理部7の信号処理のシーケンスの一例を示している。まず、入力された検査・参照信号に対し、必要に応じてノイズ除去処理(S801)で画像信号のS/Nを向上させる。ノイズ除去には各種フィルタが用意され、対象物やノイズの質に応じて選択可能となっている。例えば、着目画素の近傍画素の値に重みをつけて平均化する方法やメディアン・フィルタ、また、フーリエ変換を利用し規則的に生じるノイズを除去する方法がある。
【0046】
次に、ノイズ除去により劣化した画像の復元処理(S802)を行う。例えば、ウィーナ・フィルタによる復元処理である。次に、比較する検査画像と参照画像間で画質に大きな違いがないかを調べる。評価指標は、コントラスト、明るさのばらつき(標準偏差)、ノイズ成分の周波数などがある。特徴量を演算する処理(S803)で画像の評価指標を演算し、演算した特徴量を比較する処理(S804)の結果を基に画像の合わせ込み処理(S805)を行う。もし、特徴量の合わせ込みができないレベルにあるときは、比較処理部706にて感度を低下させ虚報の発生を押さえるようにする。その後、欠陥検出判定(S806)を行う。なお、信号処理部7での詳細な欠陥算出方法については、例えば特開2001−194323号公報等に開示されているような方法がある。
【0047】
次に、結像光学系の部分の別の構成例を説明する。図9は角度αを変えてウェハ1からの散乱光を集光する方法の別の例である。図9においては、説明を容易にするため、結像光学系5とラインセンサ6を合わせて検出光学系9と記す。この検出光学系9は図示していない機構により、z軸方向に移動可能である。また、ミラー10は、z軸方向に移動可能であり、y軸中心に回転可能である。
【0048】
検出光学系9とミラー10の配置方法を説明する。例えば、結像光学系の光軸102とウェハ1の表面が為す角度をα[度]にする場合で説明する。ミラー10の平面とウェハ1の表面が為す角度をω[度]、照明光学系の光軸101と結像光学系の光軸102の距離をL、ミラー10の高さをHとすると、(式3)(式4)で算出される位置にミラー10を配置し、結像光学系5の物体側焦点位置が、照明光学系の光軸101と結像光学系の光軸102の交点に位置するように、検出光学系9のz方向位置を決めれば良い本方式の利点は、装置の幅を小さくできることである。
【0049】
ω=45+α/2 (式3)
H=L×tan(α) (式4)
図10に照明光学系と結像光学系の配置における別の例で、照明角度を変える場合を示す。図10は、照明光学系の光軸101aをウェハ1の法線に対して、x軸方向に角度γ傾けた例である。この時、照明光学系の光軸101aと結像光学系の光軸102が為す角度は90度以下である。本構成の利点は、ウェハ1の配線パターンからの正反射光と結像光学系の光軸102との角度ηが大きくなるため、ウェハ1の配線パターンからの回折光を低減できることにある。
【0050】
以上、本実施の形態1で述べたように構成すれば、複数の波長の照明光を線状でウェハに照射し、回路パターンからの回折光をほとんど検出しないで欠陥からの散乱光を受光し、各種のLSIパターンの欠陥を高速、高感度に検査できる。特に、配線間ショート欠陥の検出に有効である。
【0051】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るパターン欠陥検査装置の一例を図12に示す。本実施の形態のパターン欠陥検査装置は、検査対象であるウェハ1を載置および移動させる搬送系2、複数の波長を射出可能な照明光源3、照明光学系4、結像光学系5、ラインセンサ6、信号処理部7、観察光学系20から構成されている。この中で、照明光学系4はリレーレンズ41、シリンドリカルレンズ42で構成されており、結像光学系5はフーリエ変換レンズ51、結像光学系5の光路中で光束を制限するフィルタリング手段である開口制限フィルタ52、逆フーリエ変換レンズ53から構成されている。さらに、観察光学系20は、ミラー21、リレーレンズ22、TVカメラ23で構成されており、結像光学系5の光軸102に対して挿入および退避が可能な機構を有する。
【0052】
次に、本実施の形態に係るパターン欠陥検査装置の動作を説明する。照明光源3から射出された光は、リレーレンズ41で平行光にされ、シリンドリカルレンズ42でウェハ1上に線状で集光される。シリンドリカルレンズ42により照射された光は、ウェハ1上の回路パターンや欠陥により回折、散乱される。回路パターンや欠陥からの回折、散乱光は、フーリエ変換レンズ51で光学的なフーリエ変換を施され、開口制限フィルタ52で光束を制限する。開口制限フィルタ52を通過した光は、逆フーリエ変換レンズ53でラインセンサ6に集光され、ディジタル信号に変換され、信号処理部7で欠陥が検出される。
【0053】
開口制限フィルタ52の形状を図13に示す。図13において、外径はフーリエ変換面の外径であり、黒部が遮光部分、開口部が光束透過部分である。図13(a)は小さい開口を1個設けた例であり、図13(b)は大きい開口を設けた例である。また、図13(c)は開口を複数設けた例である。フーリエ変換像は、ウェハ1の回折、散乱光の角度成分を表しているため、どの位置にどのくらいの開口を設けるかを決めることによって、ウェハ1の回折、散乱光の取捨選択を行うことが可能となる。これは、前記実施の形態1において、結像光学系の光軸102の角度αを変えることに相当する(ただし、集光範囲は開口の大きさの範囲となる)。
【0054】
本実施の形態の構成は、結像光学系の光軸102の角度αを変えることなく、検出する散乱光の選択が可能であるため、前記実施の形態1に対して光軸調整が容易であるという利点がある。
【0055】
次に、開口制限フィルタ52の設定方法のシーケンスを図14で説明する。まず、ウェハ1上の所望の回路パターンを照明領域に移動する(S1401)。この時、欠陥を含まない領域を指定するのが望ましいが、欠陥を含んでいても適用可能である。その理由は、欠陥の散乱光量に比べ、回路パターンからの回折光量が極端に多く、回路パターンの回折光の位置は、欠陥からの散乱光に対して容易に区別できるためである。次に、観察光学系20を移動し、ミラー21を結像光学系の光軸102に挿入する(S1402)。この領域を照明し、フーリエ変換像をTVカメラ23で取得する(S1403)。ここで得られる像は、例えば、図15(a)に示す像である(説明を容易にするために、2次元のフーリエ変換像が得られた場合で、フィルタ形状を示している)。次に、回路パターンからの回折光を検出しない場所に開口を設けたフィルタを選択する(S1404)。例えば、図15(b)に示すフィルタである。このフィルタは、図15(a)における回路パターンの回折光をほとんど含まない位置に開口を設けたものである。最後に、観察光学系20を光軸102から退避して(S1405)、設定を終了する。
【0056】
以上、本実施の形態2で述べたように構成すれば、前記実施の形態1と同様に、複数の波長の照明光を線状でウェハに照射し、回路パターンからの回折光をほとんど検出しないで欠陥からの散乱光を受光し、各種のLSIパターンの欠陥を高速、高感度に検査できる。特に、配線間ショート欠陥の検出に有効である。
【0057】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0058】
例えば、前記実施の形態では、シリンドリカルレンズ42を用いて線状照明を実現したが、必ずしもシリンドリカルレンズを用いる必要はなく、他の光学レンズを用いて線状照明を実現しても良いし、照明光学系4の光路中に絞りを設置して線状照明を実現しても良いし、照度が十分で有れば矩形照明でも良い。
【0059】
また、前記実施の形態では、複数の波長による照明光学系で説明したが、試料の絶縁膜の膜厚が安定していて、薄膜干渉光の影響が少ない場合は、複数の波長から1つの波長を選択しても良いし、単一波長の光源を用いても良い。本発明の内容は、配線パターンが存在する試料であれば適用できるため、縦長のパターン(ダイの長辺にほぼ平行)と横長のパターン(ダイの短辺にほぼ平行)が混在する試料に対しても適用可能である。
【0060】
また、45度や30度の方向、つまり、ダイの長辺と短辺が為す角度を2分するあらゆる方向の配線パターンにも適用できる。例えば、45度方向の配線パターンに適用する場合は、試料を45度方向に回転させ、配線パターンの長手方向と搬送系2のx軸方向がほぼ平行になるようにし、本発明を適用すれば高感度に検査ができる。試料を回転させた場合、ダイの繰返し方向がx軸方向に対して所定の角度を有することになる。このとき,ダイ比較処理を行う必要がある場合は、比較処理を行うためのピッチとして、ダイのピッチを所定の角度分だけ伸縮させた値を用いれば良い。
【0061】
また、本発明のパターン欠陥検査装置では、多方向照明、多方向検出を行う構成とすることも可能である。多方向照明の構成では、例えば図10のように照明角度を変える構成ではなく、角度を変えた位置にそれぞれ照明光学系を配置し、最適な位置に配置された照明光学系で照明を行うことで可能となる。この場合に、各照明光学系で波長が可変できればさらに好適である。また、多方向検出では、例えば図4(b)のように結像光学系の角度を変える構成ではなく、角度を変えた位置にそれぞれ結像光学系を配置し、最適な位置に配置された結像光学系で検出することで可能となる。
【0062】
また、検査対象の試料としては、半導体ウェハに限らず、液晶ディスプレイ、ホトマスクなどの回路パターンにおける欠陥・異物を検査する場合などについても広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、試料上の回路パターンの欠陥や異物を検出するパターン欠陥検査・異物検査技術に係り、特に、半導体ウェハや液晶ディスプレイ、ホトマスクなどの回路パターンにおける欠陥・異物を高感度で高速に検査するパターン欠陥検査装置および方法に適用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係るパターン欠陥検査装置を説明する図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の実施の形態1において、配線パターンと配線間のショート欠陥と検出方向の位置関係を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態1において、結像光学系の角度を変える機構を説明する図である。
【図4】(a),(b)は本発明の実施の形態1において、配線パターンの回折光分布を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態1において、結像光学系の角度の決定方法のシーケンスを説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態1において、結像光学系の角度決定時に表示するグラフを説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態1において、信号処理部の別の構成例を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態1において、信号処理部の信号処理のシーケンスを説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態1において、角度を変える場合の結像光学系の部分の別の構成例を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態1において、照明光学系と結像光学系の配置における別の例で、照明角度を変える場合を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態1において、マルチタップのラインセンサを用いた構成を説明する図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るパターン欠陥検査装置を説明する図である。
【図13】(a)〜(c)は本発明の実施の形態2において、開口制限フィルタの形状を説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態2において、開口制限フィルタの設定方法のシーケンスを説明する図である。
【図15】(a),(b)は本発明の実施の形態2において、2次元のフーリエ変換像とフィルタ形状を説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態1において、透明膜の膜厚とこの透明膜による反射光の干渉光強度の関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
1…ウェハ、2…搬送系、3…照明光源、4…照明光学系、5…結像光学系、6…ラインセンサ、7…信号処理部、9…検出光学系、10…ミラー、20…観察光学系、21…ミラー、22…リレーレンズ、23…TVカメラ、41…リレーレンズ、42…シリンドリカルレンズ、51…フーリエ変換レンズ、52…開口制限フィルタ、53…逆フーリエ変換レンズ、101…光軸、102…光軸、201…配線パターン、202…ショート欠陥、203…面、204…斜方照明、205…斜方検出、701…階調変換部、702…信号フィルタ、703…遅延メモリ、704…位置合わせ部、705…局所階調変換部、706…比較処理部、707…CPU、708…散布図作成部、709…記憶手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料上の回路パターンの欠陥や異物を検出するパターン欠陥検査・異物検査技術に係り、特に、半導体ウェハや液晶ディスプレイ、ホトマスクなどの回路パターンにおける欠陥・異物を高感度で高速に検査するパターン欠陥検査装置および方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料上の回路パターンの欠陥や異物を検出する欠陥検査装置は、試料を移動させつつ、イメージセンサ等の撮像素子により試料を撮像し、検出した画像信号と一定時間遅らせた画像信号の濃淡を比較することにより不一致部を欠陥として認識するものがある(特許文献1)。
【0003】
また、試料の欠陥検査に関する他の技術としては、メモリマット部等のパターン密度が高い領域と周辺回路等のパターン密度が低い領域とが同一ダイ内に混在する半導体ウェハなどにおいて、高精度に欠陥を検出する技術がある。これは、被検査パターンの高密度領域と低密度領域の明るさ或いはコントラストを算出し、事前に定めた関係になるように画像信号を補正し、補正された画像信号を元に、画像比較を行うものである(特許文献2)。
【0004】
また、ホトマスクの回路パターンを検査する技術としては、光源にエキシマレーザ等のUV(Ultra Violet:紫外)レーザ光を用い、光路上に挿入した拡散板を回転させて可干渉性を低減させた光をマスクに均一照明し、得られるマスクの画像データから特徴量を計算してホトマスクの良否を判定する技術がある(特許文献3)。
【0005】
また、試料の表面を検査するシステムとしては、斜角の入射角で線を照明し、線に対応する部分からの光を検出する技術がある(特許文献4)。
【0006】
また、半導体ウェハ及びレチクルの検査システムとしては、ウェハの縦横軸に45度の角度を補償するように照明する技術がある(特許文献5)。
【特許文献1】特開昭61−212708号公報
【特許文献2】特開平8−320294号公報
【特許文献3】特開平10−78668号公報
【特許文献4】特表2001−512237号公報
【特許文献5】特表2002−544477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年のLSI製造においては、高集積化のニーズに対応した回路パターンの微細化により、ウェハ上に形成される配線パターンの幅は縮小の一途を辿っている。一方、配線の導電率を確保するために、配線パターンの高さは高くなっており、高さ/幅のアスペクト比は3〜4に達している。これに対応して、欠陥検出装置も検出すべき欠陥の寸法も微細化が求められている。
【0008】
このような中、欠陥検査装置では、検査用対物レンズの高NA(Numerical Aperture:開口数)化や光学的な超解像技術の開発が進められているが、検査用対物レンズの高NA化は物理的限界に達しているため、検査に用いる光の波長をUV光やDUV(Deep UV:深紫外)光の領域へ短波長化していくのが本質的なアプローチである。
【0009】
しかし、LSIデバイスには主に高密度の繰返しパターンで形成されるメモリ製品や、主に非繰返しパターンで形成されるロジック製品などがあり、検査対象となるパターンの構造が複雑かつ多様化している。このため、LSIデバイス製造時に管理が必要な欠陥(ターゲット欠陥)を確実に見つけ出すことが困難となっている。検出が望まれているターゲット欠陥としては、各製造プロセス中に発生する異物やエッチング後の回路パターンの形状不良に加え、CMP工程ではボイドやスクラッチがある。さらに、ゲート配線やアルミニウム等の金属配線部では配線パターン間のショート(ブリッジとも言う)がある。特に、配線パターン間のショートは、配線パターンに比べて高さが低いものが多く、検出が困難であるという課題がある。
【0010】
また、多層配線のLSIデバイスにおいては、前記のターゲット欠陥の微細化に加え、欠陥が発生している場所の下地パターンも多様化しているため、さらに検出が困難となっている。特に、絶縁膜等の透明膜(ここでは、照明波長に対して透明という意味)が最表面に露出している工程では、透明膜の微小な膜厚差による干渉光の強度ムラが光学ノイズとなる。そのため、干渉光の強度ムラの影響を低減しつつ、ターゲット欠陥を顕在化するという課題がある。
【0011】
また、LSIを安定に製造するためには、LSIデバイスの不良状況を正確に管理する必要があり、そのためにはLSI基板を全数検査することが望ましい。従って、前記ターゲット欠陥を短時間で検出するという課題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、ウェハ上の多様な欠陥を高速、高感度に検出するパターン欠陥検査装置および方法を提供することにある。
【0013】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、試料を照明する照明手段と、照明手段により照明された試料からの散乱光を結像する結像手段と、結像手段により形成された試料の像を光電変換する検出手段と、検出手段から出力された信号を処理し、試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えたパターン欠陥検査装置において、試料を照明手段により照明し、照明手段により照明された試料からの散乱光を結像手段により結像し、結像手段により形成された試料の像を検出手段により光電変換し、検出手段から出力された信号を信号処理手段により処理し、試料上の欠陥を検出するパターン欠陥検査方法を実現し、照明手段の光軸と結像手段の光軸とがなす面が試料上の配線パターンとほぼ平行であることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明では、照明手段は複数の波長を射出可能であり、照明手段による照明形状は線状であることを特徴とする。また、結像手段は試料の法線方向に移動可能であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、試料を照明する照明手段と、照明手段により照明された試料からの散乱光を結像する結像手段と、結像手段の光路中で光束を制限するフィルタリング手段と、フィルタリング手段を通過した光束により形成された試料の像を光電変換する検出手段と、検出手段から出力された信号を処理し、試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えたパターン欠陥検査装置において、試料を照明手段により照明し、照明手段により照明された試料からの散乱光を結像手段により結像し、結像手段の光路中で光束をフィルタリング手段により制限し、フィルタリング手段を通過した光束により形成された試料の像を検出手段により光電変換し、検出手段から出力された信号を信号処理手段により処理し、試料上の欠陥を検出するパターン欠陥検査方法を実現し、フィルタリング手段は、配線パターンからの回折光が少ない領域を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
本発明によれば、ウェハ上の多様な欠陥を高速、高感度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るパターン欠陥検査装置の一例を図1に示す。本発明の実施の形態1に係るパターン欠陥検査装置は、検査対象であるウェハ1を載置および移動させる搬送系2、複数の波長を射出可能な照明光源3、ウェハ1を照明する照明手段である照明光学系4、照明光学系4により照明されたウェハ1からの散乱光を結像する結像手段である結像光学系5、結像光学系5により形成されたウェハ1の像を光電変換する検出手段であるラインセンサ6、ラインセンサ6から出力された信号を処理し、ウェハ1上の欠陥を検出する信号処理手段である信号処理部7から構成されており、照明光学系4は、リレーレンズ41、シリンドリカルレンズ42で構成されている。
【0022】
照明光源3から射出された光は、リレーレンズ41で平行光にされ、シリンドリカルレンズ42でウェハ1上に線状で集光される。シリンドリカルレンズ42により照射された光は、ウェハ1上の回路パターンや欠陥により回折、散乱される。欠陥からの散乱光は、結像光学系5でラインセンサ6の受光面に集光され、ディジタル信号に変換された後、信号処理部7で欠陥が検出される。
【0023】
ここで、線状とは、照明領域の縦横比が概ね2以上(照明領域の短手方向の長さに対して、長手方向の長さが2倍以上)の形状を指しており、ラインセンサ6の有効画素で検出される範囲を照明できる大きさであれば良い。照明光を線状で照射する利点は、一度に広範囲の光学情報を取得可能であり、高速に検査が可能となるためである。
【0024】
また、結像光学系5は回路パターンからの回折光を受光しない、または、受光量の少ない位置に配置しておくことが重要である。回路パターンからの回折光は、照明光学系4の光軸101に対して正反射方向が最も強く、回折光の次数が高くになるにしたがって正反射光に対する回折角度が大きくなり、光量が減少する傾向がある。つまり、ウェハ1の垂直上方から落射照明した場合は、正反射光が垂直上方へ向かうため、水平面に近い方が回路パターンの回折光が少なくなる。従って、結像光学系5の光軸102がウェハ1の面から上方に角度αの位置に設置されている場合、角度αは概ね2〜10度の角度が望ましい。この時、回路パターンに対して角度αを適正化したい場合は、後述する方法で回路パターンからの受光量が最も少ない位置に決定すれば良い。
【0025】
以下、本実施の形態に係るパターン欠陥検査装置の各部分の詳細を述べる。
【0026】
まず、搬送系2は、ウェハ1を保持し、XYZθ軸方向に動かすことにより、ウェハ1の各領域を照明領域に順次移動させる機能を持つ。搬送系2は、例えば、X軸ステージ、Y軸ステージ、Z軸ステージ、θ軸ステージ、ウェハチャックで構成されている。X軸ステージは定速走行が可能であり、Y軸ステージはステップ移動が可能な構成である。Z軸ステージはウェハチャックを上下させる機能を有し、θ軸ステージはウェハチャックを回転させ、X軸ステージ、Y軸ステージの進行方向に対し、ウェハ1を所定の角度に回転する機能を有する。さらに、ウェハチャックは真空等で吸引することによりウェハ1を保持する機能を有する。
【0027】
照明光源3は、レーザ発振器やランプである。例えば、複数の波長を射出することが可能な多波長レーザが使用可能である。また、ランプとしては、Xeランプ、Hg―Xeランプ、Hgランプ、超高圧Hgランプ、高圧HgランプやElectron−Beam−Gas−Emission−Lamp(出力波長は、例えば、351nm、248nm、193nm、172nm、157nm、147nm、126nm、121nm)等が使用可能であり、所望の波長を出力することができれば良い。ランプの選択方法は、例えば、所望の波長の出力が高いランプを選択すれば良く、ランプのアーク長は短い方が望ましい。
【0028】
多波長の光を用いる利点を図16で説明する。図16は透明膜の膜厚とこの透明膜による反射光の干渉光強度の関係を示している。単一波長で照明した場合、干渉光強度は膜厚に応じて正弦波状に変化し(図16のλ1またはλ2のグラフ)、膜厚tが(式1)の時に強度が強くなり、(式2)の時に強度が弱くなる。なお、(式1)(式2)では、照明光の波長をλとしており、nは整数である。
【0029】
t=λ×n、または、t=λ×n+λ/2 (式1)
t=λ×n+λ/4、または、t=λ×n+λ×3/4 (式2)
(式1)(式2)からわかるように、単一波長では波長λが短くなるにつれ、干渉強度の変化は膜厚の変化に対して敏感になる。
【0030】
そこで、波長毎に干渉強度の変化の位相が違うことを利用し、波長λ1と異なる波長λ2を加えた場合の干渉光強度が図16の(λ1+λ2)のグラフである。2波長にすることにより干渉強度が平均化され、膜厚変化に対して干渉強度の変化が少ない範囲を作ることができる。LSIにおける膜厚の製造範囲に対し、この干渉強度の変化が少なくなるような波長を選択することにより、干渉に影響されない検査装置を提供することができる。本例では、2つの波長で説明したが、3つ以上の波長を組み合わせても良い。波長を増やすことの利点は、干渉光強度の平均化効果が増大することである。
【0031】
次に、照明光学系4の光軸101と結像光学系5の光軸102との関係を図2で説明する。図2は配線パターン201と配線間のショート欠陥202と検出方向の位置関係を示しており、図2(a)が斜視図、図2(b)がy軸断面図(断面表記省略、図2(c)が平面図である。本実施の形態では、配線パターンに対する高さが低いショート欠陥を例にして説明するが、高さが高いショート欠陥、例えば配線と同じ高さのショート欠陥や他の異物、欠陥にも適用できる。
【0032】
まず、図2(b)で従来の斜方照明または斜方検出の課題を説明する。配線パターン201に対して、斜方照明204を行った場合、ショート欠陥202は配線パターン201の影になるため、照明光が欠陥に届かず、ショート欠陥202からの散乱光が発生しない。また、斜方検出205を行った場合、ショート欠陥202からの散乱光は配線パターン201に遮られ、検出器で検出することができない。従って、これらのどちらかで構成される光学系では、ショート欠陥202を検出することは困難である。
【0033】
そこで、本実施の形態では、図2(a)において、x軸を含む面203で照明および検出を行うことを特徴とする。ここで、x軸は配線パターン201の長手方向にほぼ平行な方向である。ほぼ平行というのは、図2(c)に示すように、配線パターン201間の距離と、配線パターン201の長さからなる角度φの範囲内であれば良いことを含む。
【0034】
次に、結像光学系5のz方向の位置について説明する。本実施の形態では結像光学系5をウェハ1の法線方向に移動可能なことを特徴としている。つまり、図3に示す角度αを変える機構を有する。ここで、角度αは照明光学系4の光軸101とウェハ1との交点を頂点とし、結像光学系5の光軸102とウェハ1の表面が為す角度である。なお、移動機構は図示していないが、例えば、ベース板上に結像光学系5とラインセンサ6を配置し、前記交点を中心にしてベース板を上下すれば良い。
【0035】
結像光学系5の光軸102とウェハ1の表面が為す角度を変える目的は、配線パターンからの回折光を最小にする角度で検出するためである。図4に配線パターンの回折光分布(波線部)の一例を示す。図4(a)は配線パターンの長手方向の断面から見た回折光の強度分布であり、図4(b)は配線パターンが繰返している方向から見た回折光の強度分布である。図4(a)のように回折光が分布する場合は、ウェハ1の表面に近い角度、つまり、αが小さい値であるのが望ましい。また、図4(b)のように、複数の回折光が発生する場合は、回折光の検出量が少ない角度αに設定するのが望ましい。ただし、図4(a)(b)が同じ照明領域に混在する場合は、αは小さい値が望ましい。
【0036】
なお、角度αの値は、シミュレーション等で算出して決めても良く、または実測して決めても良い。実測する場合の結像光学系5の角度の決定方法のシーケンスを図5に示す。まず、ウェハ1上の検査したい回路パターンを照明光学系4の照明領域に移動する(S501)。この時、欠陥を含まない回路パターンを指定するのが望ましい。次に、この領域からの回折、散乱光をラインセンサ6で検出し、ラインセンサ6の出力を合算する(S502)。次に、角度αにΔαを加算する(S503)。ここで、Δαは測定分解能であり2度〜5度程度の値でよい。次に、角度αの値が可動範囲内かどうかを判定する(S504)。この判定で可動範囲内であれば(Yesの場合)角度αを変えて結像光学系5とラインセンサ6を設定し(S505)、前記S502の動作を行う。もし、この判定でNoの場合は、検出光量のグラフを作成する(S506)。最後に、このグラフから検出光量が最小値となる角度α0を計算し、この角度α0を装置に設定する(S507)。ここで、この結像光学系5の角度決定時に表示するグラフの例を図6に示す。図6は、横軸に角度αの値、縦軸にラインセンサ6の出力の合算値をプロットしたものである。適切な角度αは、図6のグラフにて検出光量が最低値になる値α0を最適値とすれば良い。
【0037】
ここで、結像光学系5は、照明領域からの回折、散乱光を受光し、ラインセンサ6の受光面に結像する機能を有するものである。
【0038】
次に、ラインセンサ6について説明する。ラインセンサ6は、結像光学系5で集光した光を光電変換し、A/D(アナログ/ディジタル)変換する機能を有するものである。光電変換素子は、例えばイメージセンサであり、1次元のCCDセンサやCMOS型のセンサやフォトマルチプライヤ(光電子倍増管)を直列に並べたものである。また、TDI(Time Delay Integration)型のイメージセンサでも良く、TVカメラのような2次元CCDセンサを用いても良い。なお、イメージセンサは表面入射型でも良く、裏面入射型でも良いが、紫外光領域の波長を受光する場合は、裏面入射型が望ましい。また、1次元のCCDセンサやTDIイメージセンサは、マルチタップのものが良い。ここで、マルチタップとは、CCDセンサの有効画素数に対して、データの出力端が複数存在することを示している。例えば、有効画素が1024画素のCCDセンサに対して、64画素毎に出力端を設けることにより、電荷読出し時間が64/1024=1/16倍となり、出力端が1個のCCDセンサに比べて16倍の動作速度で使うことができる。このマルチタップのラインセンサを用いた構成を図11に示す。図11では、ラインセンサ6の受光面に対して、8個のタップに分かれている例である。この8個のタップ(出力端)に対して、それぞれ信号処理部7を接続することにより、並列で信号処理することが可能となり、高速な検査が可能となる。
【0039】
次に、信号処理部7を説明する。信号処理部7は、ラインセンサ6から出力された信号を処理し、欠陥を検出する機能を持つ。欠陥を検出する方法としては、例えば、ラインセンサ6から出力された信号に対し、事前に決めたしきい値を越えた信号を欠陥とする方法である。この時、欠陥の座標は搬送系2の位置から決めれば良い。例えば、搬送系2にエンコーダを取付け、予め決めた原点からの相対距離を欠陥の座標とすれば良い。
【0040】
次に、信号処理部7の別の構成例を図7で説明する。前記の例は、回路パターンからの光量が欠陥部からの光量に比べて十分少ない場合に適用でき、本例は、回路パターンからの光量が多い場合に用いれば良い。
【0041】
信号処理部7は、階調変換部701、信号フィルタ702、遅延メモリ703、位置合わせ部704、局所階調変換部705、比較処理部706、CPU707、散布図作成部708、記憶手段709で構成されている。
【0042】
動作を説明する。まず、ラインセンサ6で得られた信号は信号処理部7に送られ、階調変換部701で特開平8−320294号公報に記載されたような階調変換を施される。この階調変換部701は、対数変換や指数変換・多項式変換等により信号を補正するものである。信号フィルタ702は、階調変換部701で階調変換された信号から、照明光源特有の信号ノイズを効率良く除去するフィルタである。遅延メモリ703は、後述する比較処理部706で比較するための参照信号を記憶する記憶部であり、信号フィルタ702から得られた出力信号を、ウェハ1に形成された回路パターンの1つ以上のセルまたは1つ以上のダイのデータを記憶して、後段への伝達を遅延させるものである。ここで、セルはダイ内の回路パターンの繰返し単位である。なお、信号フィルタ702は遅延メモリ703を通過した後でもよい。
【0043】
次に、位置合わせ部704は、階調変換部701から得られた出力信号(ウェハ1から得られる検査信号)720と、遅延メモリ703から得られる遅延信号(基準となる参照信号)721との位置ずれ量を正規化相関法等によって検出して画素単位に位置合わせを行う部分である。局所階調変換部705は、特徴量(明るさ、信号から画像を構成したときに算出される微分値や標準偏差やテクスチャ等)の異なる信号を特徴量が一致するように双方もしくは一方の信号について階調変換する部分である。また、比較処理部706は局所階調変換部705で階調変換された検出信号同士を比較して特徴量の相違に基づいて欠陥を検出する部分である。すなわち、比較処理部706は、遅延メモリ703から出力されるセルピッチ等に相当する量だけ遅延した参照信号と検出信号を比較する。なお、比較処理部706の詳細は特開昭61−212708号公報等に開示されている技術で良く、例えば、画像の位置合わせ回路や位置合わせされた画像の差画像検出回路、差画像を二値化して不一致を検出する回路、二値化された出力から面積や長さ(投影長)、座標などを算出する特徴抽出回路からなる。
【0044】
散布図作成部708は、検査信号の特徴量と参照信号の特徴量との散布図を作成する機能を有し、CPU707を介して入出力部(図示せず)に表示するものである。
【0045】
図8は信号処理部7の信号処理のシーケンスの一例を示している。まず、入力された検査・参照信号に対し、必要に応じてノイズ除去処理(S801)で画像信号のS/Nを向上させる。ノイズ除去には各種フィルタが用意され、対象物やノイズの質に応じて選択可能となっている。例えば、着目画素の近傍画素の値に重みをつけて平均化する方法やメディアン・フィルタ、また、フーリエ変換を利用し規則的に生じるノイズを除去する方法がある。
【0046】
次に、ノイズ除去により劣化した画像の復元処理(S802)を行う。例えば、ウィーナ・フィルタによる復元処理である。次に、比較する検査画像と参照画像間で画質に大きな違いがないかを調べる。評価指標は、コントラスト、明るさのばらつき(標準偏差)、ノイズ成分の周波数などがある。特徴量を演算する処理(S803)で画像の評価指標を演算し、演算した特徴量を比較する処理(S804)の結果を基に画像の合わせ込み処理(S805)を行う。もし、特徴量の合わせ込みができないレベルにあるときは、比較処理部706にて感度を低下させ虚報の発生を押さえるようにする。その後、欠陥検出判定(S806)を行う。なお、信号処理部7での詳細な欠陥算出方法については、例えば特開2001−194323号公報等に開示されているような方法がある。
【0047】
次に、結像光学系の部分の別の構成例を説明する。図9は角度αを変えてウェハ1からの散乱光を集光する方法の別の例である。図9においては、説明を容易にするため、結像光学系5とラインセンサ6を合わせて検出光学系9と記す。この検出光学系9は図示していない機構により、z軸方向に移動可能である。また、ミラー10は、z軸方向に移動可能であり、y軸中心に回転可能である。
【0048】
検出光学系9とミラー10の配置方法を説明する。例えば、結像光学系の光軸102とウェハ1の表面が為す角度をα[度]にする場合で説明する。ミラー10の平面とウェハ1の表面が為す角度をω[度]、照明光学系の光軸101と結像光学系の光軸102の距離をL、ミラー10の高さをHとすると、(式3)(式4)で算出される位置にミラー10を配置し、結像光学系5の物体側焦点位置が、照明光学系の光軸101と結像光学系の光軸102の交点に位置するように、検出光学系9のz方向位置を決めれば良い本方式の利点は、装置の幅を小さくできることである。
【0049】
ω=45+α/2 (式3)
H=L×tan(α) (式4)
図10に照明光学系と結像光学系の配置における別の例で、照明角度を変える場合を示す。図10は、照明光学系の光軸101aをウェハ1の法線に対して、x軸方向に角度γ傾けた例である。この時、照明光学系の光軸101aと結像光学系の光軸102が為す角度は90度以下である。本構成の利点は、ウェハ1の配線パターンからの正反射光と結像光学系の光軸102との角度ηが大きくなるため、ウェハ1の配線パターンからの回折光を低減できることにある。
【0050】
以上、本実施の形態1で述べたように構成すれば、複数の波長の照明光を線状でウェハに照射し、回路パターンからの回折光をほとんど検出しないで欠陥からの散乱光を受光し、各種のLSIパターンの欠陥を高速、高感度に検査できる。特に、配線間ショート欠陥の検出に有効である。
【0051】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るパターン欠陥検査装置の一例を図12に示す。本実施の形態のパターン欠陥検査装置は、検査対象であるウェハ1を載置および移動させる搬送系2、複数の波長を射出可能な照明光源3、照明光学系4、結像光学系5、ラインセンサ6、信号処理部7、観察光学系20から構成されている。この中で、照明光学系4はリレーレンズ41、シリンドリカルレンズ42で構成されており、結像光学系5はフーリエ変換レンズ51、結像光学系5の光路中で光束を制限するフィルタリング手段である開口制限フィルタ52、逆フーリエ変換レンズ53から構成されている。さらに、観察光学系20は、ミラー21、リレーレンズ22、TVカメラ23で構成されており、結像光学系5の光軸102に対して挿入および退避が可能な機構を有する。
【0052】
次に、本実施の形態に係るパターン欠陥検査装置の動作を説明する。照明光源3から射出された光は、リレーレンズ41で平行光にされ、シリンドリカルレンズ42でウェハ1上に線状で集光される。シリンドリカルレンズ42により照射された光は、ウェハ1上の回路パターンや欠陥により回折、散乱される。回路パターンや欠陥からの回折、散乱光は、フーリエ変換レンズ51で光学的なフーリエ変換を施され、開口制限フィルタ52で光束を制限する。開口制限フィルタ52を通過した光は、逆フーリエ変換レンズ53でラインセンサ6に集光され、ディジタル信号に変換され、信号処理部7で欠陥が検出される。
【0053】
開口制限フィルタ52の形状を図13に示す。図13において、外径はフーリエ変換面の外径であり、黒部が遮光部分、開口部が光束透過部分である。図13(a)は小さい開口を1個設けた例であり、図13(b)は大きい開口を設けた例である。また、図13(c)は開口を複数設けた例である。フーリエ変換像は、ウェハ1の回折、散乱光の角度成分を表しているため、どの位置にどのくらいの開口を設けるかを決めることによって、ウェハ1の回折、散乱光の取捨選択を行うことが可能となる。これは、前記実施の形態1において、結像光学系の光軸102の角度αを変えることに相当する(ただし、集光範囲は開口の大きさの範囲となる)。
【0054】
本実施の形態の構成は、結像光学系の光軸102の角度αを変えることなく、検出する散乱光の選択が可能であるため、前記実施の形態1に対して光軸調整が容易であるという利点がある。
【0055】
次に、開口制限フィルタ52の設定方法のシーケンスを図14で説明する。まず、ウェハ1上の所望の回路パターンを照明領域に移動する(S1401)。この時、欠陥を含まない領域を指定するのが望ましいが、欠陥を含んでいても適用可能である。その理由は、欠陥の散乱光量に比べ、回路パターンからの回折光量が極端に多く、回路パターンの回折光の位置は、欠陥からの散乱光に対して容易に区別できるためである。次に、観察光学系20を移動し、ミラー21を結像光学系の光軸102に挿入する(S1402)。この領域を照明し、フーリエ変換像をTVカメラ23で取得する(S1403)。ここで得られる像は、例えば、図15(a)に示す像である(説明を容易にするために、2次元のフーリエ変換像が得られた場合で、フィルタ形状を示している)。次に、回路パターンからの回折光を検出しない場所に開口を設けたフィルタを選択する(S1404)。例えば、図15(b)に示すフィルタである。このフィルタは、図15(a)における回路パターンの回折光をほとんど含まない位置に開口を設けたものである。最後に、観察光学系20を光軸102から退避して(S1405)、設定を終了する。
【0056】
以上、本実施の形態2で述べたように構成すれば、前記実施の形態1と同様に、複数の波長の照明光を線状でウェハに照射し、回路パターンからの回折光をほとんど検出しないで欠陥からの散乱光を受光し、各種のLSIパターンの欠陥を高速、高感度に検査できる。特に、配線間ショート欠陥の検出に有効である。
【0057】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0058】
例えば、前記実施の形態では、シリンドリカルレンズ42を用いて線状照明を実現したが、必ずしもシリンドリカルレンズを用いる必要はなく、他の光学レンズを用いて線状照明を実現しても良いし、照明光学系4の光路中に絞りを設置して線状照明を実現しても良いし、照度が十分で有れば矩形照明でも良い。
【0059】
また、前記実施の形態では、複数の波長による照明光学系で説明したが、試料の絶縁膜の膜厚が安定していて、薄膜干渉光の影響が少ない場合は、複数の波長から1つの波長を選択しても良いし、単一波長の光源を用いても良い。本発明の内容は、配線パターンが存在する試料であれば適用できるため、縦長のパターン(ダイの長辺にほぼ平行)と横長のパターン(ダイの短辺にほぼ平行)が混在する試料に対しても適用可能である。
【0060】
また、45度や30度の方向、つまり、ダイの長辺と短辺が為す角度を2分するあらゆる方向の配線パターンにも適用できる。例えば、45度方向の配線パターンに適用する場合は、試料を45度方向に回転させ、配線パターンの長手方向と搬送系2のx軸方向がほぼ平行になるようにし、本発明を適用すれば高感度に検査ができる。試料を回転させた場合、ダイの繰返し方向がx軸方向に対して所定の角度を有することになる。このとき,ダイ比較処理を行う必要がある場合は、比較処理を行うためのピッチとして、ダイのピッチを所定の角度分だけ伸縮させた値を用いれば良い。
【0061】
また、本発明のパターン欠陥検査装置では、多方向照明、多方向検出を行う構成とすることも可能である。多方向照明の構成では、例えば図10のように照明角度を変える構成ではなく、角度を変えた位置にそれぞれ照明光学系を配置し、最適な位置に配置された照明光学系で照明を行うことで可能となる。この場合に、各照明光学系で波長が可変できればさらに好適である。また、多方向検出では、例えば図4(b)のように結像光学系の角度を変える構成ではなく、角度を変えた位置にそれぞれ結像光学系を配置し、最適な位置に配置された結像光学系で検出することで可能となる。
【0062】
また、検査対象の試料としては、半導体ウェハに限らず、液晶ディスプレイ、ホトマスクなどの回路パターンにおける欠陥・異物を検査する場合などについても広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、試料上の回路パターンの欠陥や異物を検出するパターン欠陥検査・異物検査技術に係り、特に、半導体ウェハや液晶ディスプレイ、ホトマスクなどの回路パターンにおける欠陥・異物を高感度で高速に検査するパターン欠陥検査装置および方法に適用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係るパターン欠陥検査装置を説明する図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の実施の形態1において、配線パターンと配線間のショート欠陥と検出方向の位置関係を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態1において、結像光学系の角度を変える機構を説明する図である。
【図4】(a),(b)は本発明の実施の形態1において、配線パターンの回折光分布を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態1において、結像光学系の角度の決定方法のシーケンスを説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態1において、結像光学系の角度決定時に表示するグラフを説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態1において、信号処理部の別の構成例を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態1において、信号処理部の信号処理のシーケンスを説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態1において、角度を変える場合の結像光学系の部分の別の構成例を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態1において、照明光学系と結像光学系の配置における別の例で、照明角度を変える場合を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態1において、マルチタップのラインセンサを用いた構成を説明する図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るパターン欠陥検査装置を説明する図である。
【図13】(a)〜(c)は本発明の実施の形態2において、開口制限フィルタの形状を説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態2において、開口制限フィルタの設定方法のシーケンスを説明する図である。
【図15】(a),(b)は本発明の実施の形態2において、2次元のフーリエ変換像とフィルタ形状を説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態1において、透明膜の膜厚とこの透明膜による反射光の干渉光強度の関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
1…ウェハ、2…搬送系、3…照明光源、4…照明光学系、5…結像光学系、6…ラインセンサ、7…信号処理部、9…検出光学系、10…ミラー、20…観察光学系、21…ミラー、22…リレーレンズ、23…TVカメラ、41…リレーレンズ、42…シリンドリカルレンズ、51…フーリエ変換レンズ、52…開口制限フィルタ、53…逆フーリエ変換レンズ、101…光軸、102…光軸、201…配線パターン、202…ショート欠陥、203…面、204…斜方照明、205…斜方検出、701…階調変換部、702…信号フィルタ、703…遅延メモリ、704…位置合わせ部、705…局所階調変換部、706…比較処理部、707…CPU、708…散布図作成部、709…記憶手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を照明する照明手段と、
前記照明手段により照明された前記試料からの散乱光を結像する結像手段と、
前記結像手段により形成された前記試料の像を光電変換する検出手段と、
前記検出手段から出力された信号を処理し、前記試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えたパターン欠陥検査装置であって、
前記照明手段の光軸と前記結像手段の光軸とがなす面が前記試料上の配線パターンとほぼ平行であることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のパターン欠陥検査装置において、
前記照明手段は、複数の波長を射出可能であることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のパターン欠陥検査装置において、
前記照明手段による照明形状は、線状であることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のパターン欠陥検査装置において、
前記結像手段は、前記試料の法線方向に移動可能であることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項5】
試料を照明する照明手段と、
前記照明手段により照明された前記試料からの散乱光を結像する結像手段と、
前記結像手段の光路中で光束を制限するフィルタリング手段と、
前記フィルタリング手段を通過した光束により形成された前記試料の像を光電変換する検出手段と、
前記検出手段から出力された信号を処理し、前記試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えたパターン欠陥検査装置であって、
前記フィルタリング手段は、配線パターンからの回折光が少ない領域を選択することを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項6】
試料を照明手段により照明し、
前記照明手段により照明された前記試料からの散乱光を結像手段により結像し、
前記結像手段により形成された前記試料の像を検出手段により光電変換し、
前記検出手段から出力された信号を信号処理手段により処理し、前記試料上の欠陥を検出するパターン欠陥検査方法であって、
前記照明手段の光軸と前記結像手段の光軸とがなす面が前記試料上の配線パターンとほぼ平行であることを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項7】
請求項6記載のパターン欠陥検査方法において、
前記照明手段は、複数の波長を射出可能であることを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項8】
請求項6または7記載のパターン欠陥検査方法において、
前記照明手段による照明形状は、線状であることを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載のパターン欠陥検査方法において、
前記結像手段は、前記試料の法線方向に移動可能であることを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項10】
試料を照明手段により照明し、
前記照明手段により照明された前記試料からの散乱光を結像手段により結像し、
前記結像手段の光路中で光束をフィルタリング手段により制限し、
前記フィルタリング手段を通過した光束により形成された前記試料の像を検出手段により光電変換し、
前記検出手段から出力された信号を信号処理手段により処理し、前記試料上の欠陥を検出するパターン欠陥検査方法であって、
前記フィルタリング手段は、配線パターンからの回折光が少ない領域を選択することを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項1】
試料を照明する照明手段と、
前記照明手段により照明された前記試料からの散乱光を結像する結像手段と、
前記結像手段により形成された前記試料の像を光電変換する検出手段と、
前記検出手段から出力された信号を処理し、前記試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えたパターン欠陥検査装置であって、
前記照明手段の光軸と前記結像手段の光軸とがなす面が前記試料上の配線パターンとほぼ平行であることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のパターン欠陥検査装置において、
前記照明手段は、複数の波長を射出可能であることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のパターン欠陥検査装置において、
前記照明手段による照明形状は、線状であることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のパターン欠陥検査装置において、
前記結像手段は、前記試料の法線方向に移動可能であることを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項5】
試料を照明する照明手段と、
前記照明手段により照明された前記試料からの散乱光を結像する結像手段と、
前記結像手段の光路中で光束を制限するフィルタリング手段と、
前記フィルタリング手段を通過した光束により形成された前記試料の像を光電変換する検出手段と、
前記検出手段から出力された信号を処理し、前記試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えたパターン欠陥検査装置であって、
前記フィルタリング手段は、配線パターンからの回折光が少ない領域を選択することを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項6】
試料を照明手段により照明し、
前記照明手段により照明された前記試料からの散乱光を結像手段により結像し、
前記結像手段により形成された前記試料の像を検出手段により光電変換し、
前記検出手段から出力された信号を信号処理手段により処理し、前記試料上の欠陥を検出するパターン欠陥検査方法であって、
前記照明手段の光軸と前記結像手段の光軸とがなす面が前記試料上の配線パターンとほぼ平行であることを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項7】
請求項6記載のパターン欠陥検査方法において、
前記照明手段は、複数の波長を射出可能であることを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項8】
請求項6または7記載のパターン欠陥検査方法において、
前記照明手段による照明形状は、線状であることを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載のパターン欠陥検査方法において、
前記結像手段は、前記試料の法線方向に移動可能であることを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項10】
試料を照明手段により照明し、
前記照明手段により照明された前記試料からの散乱光を結像手段により結像し、
前記結像手段の光路中で光束をフィルタリング手段により制限し、
前記フィルタリング手段を通過した光束により形成された前記試料の像を検出手段により光電変換し、
前記検出手段から出力された信号を信号処理手段により処理し、前記試料上の欠陥を検出するパターン欠陥検査方法であって、
前記フィルタリング手段は、配線パターンからの回折光が少ない領域を選択することを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図11】
【公開番号】特開2006−322766(P2006−322766A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144817(P2005−144817)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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