パターン膜形成部材の製造方法、パターン膜形成部材、電気光学装置、電子機器
【課題】基材の表面処理を簡略化させるとともに、高精細なパターン膜を形成することができるパターン膜形成部材の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス質材料層上の一部に導電膜が形成された基材のうち、前記ガラス質材料層の表面に撥水化処理を施すとともに、前記導電膜の表面に、前記ガラス質材料層における撥水力よりも弱い撥水化処理を施す表面処理工程と、前記導電膜上に、金属膜の材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する塗布工程と、塗布された前記機能液を固化して、前記導電膜上に前記金属膜を形成する固化工程と、を含む。
【解決手段】ガラス質材料層上の一部に導電膜が形成された基材のうち、前記ガラス質材料層の表面に撥水化処理を施すとともに、前記導電膜の表面に、前記ガラス質材料層における撥水力よりも弱い撥水化処理を施す表面処理工程と、前記導電膜上に、金属膜の材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する塗布工程と、塗布された前記機能液を固化して、前記導電膜上に前記金属膜を形成する固化工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン膜形成部材の製造方法、パターン膜形成部材、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン膜形成部材として、例えば、タッチパネルは、ガラス基板上に電極配線が形成されている。電極配線は、ガラス基板上に可視光の透過率が高い導電膜としての透明電極膜で形成されている。当該透明導電膜は、導電性を有するものの、タッチパネルの機能性向上のため、さらに、電気抵抗を下げるべく、透明導電膜上に電気抵抗率が低い金属膜を形成する場合がある。その際、透明導電膜上に、金属膜の材料となる液体材料を塗布する場合には、透明導電膜の表面には、金属膜の液体材料が濡れ広がるように親液化領域を形成し、透明導電膜以外の領域となるガラス基板の表面は、金属膜の液体材料をはじく撥液化領域を形成する必要がある。そこで、親液化領域と撥液化領域を形成する方法としては、例えば、基板上に撥液性を有する光触媒含有層を形成した後、所定のパターンが形成されたマスクを用いて、当該マスクを介して、光触媒含有層に活性光を照射することにより、活性光が照射された部分のみが反応し、親液化領域が形成される。こうして、一の基材において、親液化領域と撥液化領域を選択的に形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−209339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、撥液化領域を形成する工程と、親液化領域を形成する工程の複数の工程を必要とするとともに、マスクを用いて、所定領域を選択的に表面処理する必要があるため、製造工程が複雑化してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法は、ガラス質材料層上の一部に導電膜が形成された基材のうち、前記ガラス質材料層の表面に撥水化処理を施すとともに、前記導電膜の表面に、前記ガラス質材料層における撥水力よりも弱い撥水化処理を施す表面処理工程と、前記導電膜上に、金属膜の材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する塗布工程と、塗布された前記機能液を固化して、前記導電膜上に前記金属膜を形成する固化工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ガラス質材料層の表面には、撥水化領域が形成され、導電膜の表面には、ガラス質材料層の表面における撥水力よりも弱い撥水化領域が形成される。すなわち、本表面処理工程では、撥水力の強い領域と撥水力の弱い領域とのコントラストを同時期に形成することが可能となる。さらに、換言すれば、ガラス質材料層の表面を撥水化し、導電膜の表面の親水力を保持することが可能となる。そして、導電膜上に、水系の機能液を塗布すると、塗布された機能液は、親水性を有する導電膜の表面に濡れ広がる。また、ガラス質材料層と導電膜との境界部分では、ガラス質材料層の表面が撥水性であるため、ガラス質材料層の表面に接する機能液は、ガラス質材料層に対して反発し、導電膜のパターン形状に倣って自己整合的に移動する。そして、塗布された機能液を固化することにより、導電膜上に金属膜が形成される。従って、従来のようにマスク等を用いて複数回の表面処理工程を実施する必要がなく、一の表面処理工程で、同時期に、かつ、選択的に撥水化領域と親水化領域を形成することができる。これにより、製造工程を簡略化させることができ、高精細なパターン膜を形成することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、シラン化合物を含む表面処理剤を用いることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、シラン化合物とガラス質材料層の表面の水分とが反応し、ガラス質材料層の表面がトリメチルシリル化され、ガラス質材料層の表面を強撥水化させることができる。一方、導電膜の表面との反応は低い。つまり、親水力が保持される。これにより、基材において、撥水力の強い領域(ガラス質材料層)と撥水力の弱い領域(導電膜)とのコントラストを同時期に形成することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を用いることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ヘキサメチルジシラザンを用いて基材の表面処理を行う。すなわち、HMDS処理を行う。ヘキサメチルジシラザンとガラス質材料層の表面の水分(−OH)とが反応してアンモニア(NH3)を発生させるとともに、ガラス質材料層の表面はトリメチルシリル化(−Si(CH3)3)される。つまり、ガラス質材料層の表面が撥水化処理される。一方、導電膜の表面との反応は低いため、親水力が保持される。これにより、基材において、撥水力の強い領域(ガラス質材料層)と撥水力の弱い領域(導電膜)とのコントラストを同時期に形成することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、前記基材と前記ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を密閉された環境下に放置し、前記ヘキサメチルジシラザンを常温で気化させたガス雰囲気内において、前記基材を3〜15分間曝露することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、容易に、撥水力の強い領域(ガラス質材料層)と撥水力の弱い領域(導電膜)を同時期に形成することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、前記ガラス質材料層の表面の、水に対する接触角が50°以上となる撥水化処理を施し、前記導電膜の表面の、水に対する接触角が25°以下となる撥水化処理を施すことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ガラス質材料層上では、水系機能液をはじかせ、導電膜上では、水系機能液を濡れ広がらせることができる。これにより、導電膜のパターン形状に倣った機能液の液体状態を形成することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、前記ガラス質材料層の表面の、前記機能液に対する接触角が40°以上となる撥水化処理を施し、前記導電膜の表面の、前記機能液に対する接触角が30°以下となる撥水化処理を施すことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ガラス質材料層上では、水系機能液をはじかせ、導電膜上では、水系機能液を濡れ広がらせることができる。これにより、導電膜のパターン形状に倣った機能液の液体状態を形成することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記塗布工程では、前記機能液を液滴として吐出して、前記導電膜上に前記機能液を塗布することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、所望の位置に効率良く機能液を塗布することができ、高精細なパターンを形成することができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記塗布工程では、前記導電膜上に塗布された液滴ドットが、隣接する他の液滴ドットと接触するように、前記機能液を塗布することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、塗布された液滴ドットが数珠状に繋がるため、導電膜のパターン形状に倣って機能液を容易に自己整合的に移動させることができる。
【0022】
[適用例9]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記塗布工程と前記固化工程との間に、前記機能液が塗布された前記基材を放置する放置工程を有することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、機能液が塗布された基材を放置することにより、導電膜のパターン形状に倣って機能液が自己整合的に移動する期間を確保することができる。また、機能液を液滴として吐出した場合には、隣接する液滴ドット同士が相溶する期間が確保され、導電膜のパターン形状に倣った液状態を形成することができる。
【0024】
[適用例10]本適用例にかかるパターン膜形成部材は、上記パターン膜形成部材の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、高精細で高品位のパターン膜形成部材を提供することができる。この場合、パターン膜形成部材は、例えば、タッチパネル、カラーフィルター、PDP部材、有機EL部材、FED(電界放出ディスプレイ)部材等がこれに該当する。
【0026】
[適用例11]本適用例にかかる電気光学装置は、上記パターン膜形成部材を備えたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、信頼性の高いパターン膜形成部材を備えた電気光学装置を提供することができる。この場合、電気光学装置は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等がこれに該当する。
【0028】
[適用例12]本適用例にかかる電子機器は、上記電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、信頼性の高い電気光学装置を搭載した電子機器を提供することができる。この場合、電子機器は、例えば、カラーフィルター、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)を搭載したテレビ受像機、パーソナルコンピューター、携帯電子機器、その他、各種の電子製品がこれに該当する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】パターン膜形成部材としてのタッチパネルの構成を示す平面図。
【図2】パターン膜形成部材としてのタッチパネルの構成を示す断面図。
【図3】タッチパネルの製造方法を示すフローチャート。
【図4】タッチパネルの製造方法の一部を示すフローチャート。
【図5】表面処理装置の構成を示す模式図。
【図6】液滴吐出装置の構成を示す斜視図。
【図7】吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【図8】タッチパネルの製造方法を示す工程図。
【図9】タッチパネルの製造方法を示す工程図。
【図10】基材における接触角の測定データ。
【図11】基材の表面処理状態を示す模式図。
【図12】機能液の塗布状態を示す模式図。
【図13】電気光学装置としての液晶表示装置の構成を示す平面図及び断面図。
【図14】電子機器としてのパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮尺や数等を異ならせて図示している。
【0032】
(パターン膜形成部材の構成)
まず、パターン膜形成部材の構成について説明する。なお、本実施形態では、パターン膜形成部材としてのタッチパネルを例に挙げて説明する。図1は、タッチパネルの構成を示す平面図である。図2は、図1に示したタッチパネルのA−A’断面図である。
【0033】
タッチパネル100は、ガラス基板1、入力領域2、及び引き回し配線60を有する。ガラス基板1は、透明性を有し、平面視で矩形状に成形されたガラス質材料層で構成されている。
【0034】
入力領域2は、図1において二点鎖線で囲まれた領域であり、タッチパネル100に入力される指の位置情報を検出する領域である。入力領域2には、複数のX電極(第1電極)10及び複数のY電極(第2電極)20がそれぞれ配置されている。X電極10は、図示でX軸方向に沿って延在し、且つX電極10は、Y軸方向に互いに間隔をあけて複数配列されている。Y電極20は図示でY軸方向に沿って延在し、それぞれのY電極20は、X軸方向に互いに間隔をあけて配列されている。X電極10及びY電極20は、互いのブリッジ配線を交差させることによって入力領域2内の交差部Kで交差している。
【0035】
X電極10は、X軸方向に配列された複数の島状電極部12と、隣り合う島状電極部12同士を接続するブリッジ配線11とを備えている。島状電極部12は平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がX軸に沿うように配置されている。
【0036】
Y電極20は、Y軸方向に配列された複数の島状電極部22と、隣り合う島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21とを備えている。島状電極部22は、平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がY軸に沿うように配置されている。島状電極部12と島状電極部22とは、X軸方向及びY軸方向において互い違いに配置(市松状配置)されており、入力領域2では、矩形状の島状電極部12,22が平面視マトリクス状に配置されている。
【0037】
X電極10及びY電極20を構成する材質としては、ITO(インジウムスズ酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物;登録商標)、ZnOなどの透光性を有する抵抗体を採用することができる。
【0038】
引き回し配線60は、X電極10及びY電極20と接続されており、タッチパネル100の内部あるいは外部装置に設けられた駆動部及び電気信号変換/演算部(いずれも図示は省略)と接続されている。
【0039】
次に、図2の断面図について説明する。ガラス基板1の機能面1aに、島状電極部12(図示は省略)、島状電極部22、及びブリッジ配線11が設けられている。ブリッジ配線11上には、絶縁膜30が島状電極部22と略面一となる高さで形成されている。そして、絶縁膜30上にブリッジ配線21が配置されている。X電極10のブリッジ配線11は、島状電極部22よりも薄く、例えば1/2程度の厚さに形成されている。また、ガラス基板1の機能面1aに、引き回し配線60が配置されている。引き回し配線60は、ガラス基板1の機能面1aに配置された導電膜としての第1層60aと第1層60aに積層された金属膜としての第2層60bを有している。そして、引き回し配線60を覆うように配線保護膜62が形成されている。
【0040】
これらの電極及び配線を覆うように平坦化膜40が形成されている。平坦化膜40上には、接着層51を介して保護基板50が配置されている。また、ガラス基板1の裏面1bには、シールド層70が設けられている。
【0041】
絶縁膜30は、立体的に交差するブリッジ配線11とブリッジ配線21とを絶縁する。絶縁膜30は、ポリシロキサン、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを印刷法を用いて塗布し、それを乾燥固化して形成することができる。ポリシロキサンを用いて形成した場合には、絶縁膜30はシリコン酸化物からなる無機絶縁膜となる。一方、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーを採用した場合には、絶縁膜30は樹脂材料からなる有機絶縁膜となる。ここでは、JSR NN525E と、EDM(ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)とを4:1(重量比)で混合した樹脂溶液を用いている。
【0042】
絶縁膜30の構成材料には、比誘電率が4.0以下、望ましくは3.5以下である材料を採用することが好ましい。これにより、ブリッジ配線の交差部における寄生容量を低減して、タッチパネルの位置検出性能を保持することができる。また絶縁膜30の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、ガラス基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、使用者に絶縁膜30のパターンが見えてしまうのを防止できる。
【0043】
引き回し配線60の第1層60aは、X電極10又はY電極20を入力領域2の外側の領域まで延出した導電膜であり、例えば、透明性を有する透明導電膜である。当該透明導電膜は、ITOやIZOなどの抵抗体によって形成されている。第2層60bは、第1層60a上に積層形成され、引き回し配線60の配線抵抗を低減する。第2層60bは、Au、Ag、Al、Cu、Pdなどの金属、及びカーボン(グラファイト、カーボンナノチューブなどのナノカーボン)のうち1種類以上を成分とする、有機化合物、ナノ粒子、ナノワイヤーなどを用いて形成することができる。第2層60bの構成材料は、第1層60aよりもシート抵抗を小さくすることができるものであれば特に限定されない。
【0044】
引き回し配線60を覆う配線保護膜62は、絶縁膜30と同様に、ポリシロキサン、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを形成材料に用いた印刷法によって形成することができる。したがって、配線保護膜62は絶縁膜30を形成する工程で同時に形成することができる。
【0045】
平坦化膜40は、ガラス基板1の機能面1aの少なくとも入力領域2を覆って形成され、X電極10やY電極20による機能面1aの凹凸を平坦化している。平坦化膜40は、図示のように、機能面1aの略全面(外部接続端子部を除く)を覆って形成されていることが好ましい。平坦化膜40によりガラス基板1の機能面1a側が平坦化されていることで、ガラス基板1と保護基板50とをほぼ全面にわたって均一に接合することができる。また平坦化膜40の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、ガラス基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、X電極10やY電極20の配線パターンを見えにくくすることができる。
【0046】
保護基板50は、ガラスやプラスチックなどの透明基板である。あるいは、本実施形態のタッチパネル100が液晶パネルや有機ELパネルなどの表示装置の前面に配置される場合には、保護基板50として、表示装置の一部として用いられる光学素子基板(偏光板や位相差板など)を用いることもできる。
【0047】
シールド層70は、ITOやIZO(登録商標)などの透明導電材料をガラス基板1の裏面1bに成膜することで形成される。あるいは、シールド層となる透明導電膜が形成されたフィルムを用意し、かかるフィルムをガラス基板1の裏面1bに接着した構成としてもよい。シールド層70が設けられていることで、ガラス基板1の裏面1b側において電界を遮断する。これにより、タッチパネル100の電界が表示装置等に作用したり、表示装置等の外部機器の電界がタッチパネル100に作用したりするのを防止することができる。なお、本実施形態では、ガラス基板1の裏面1bにシールド層70を形成しているが、シールド層70をガラス基板1の機能面1a側に形成してもよい。
【0048】
ここで、タッチパネル100の動作原理について簡単に説明する。まず、図示は省略の駆動部から、引き回し配線60を介してX電極10及びY電極20に所定の電位を供給する。なお、シールド層70には、例えばグランドの電位(接地電位)を入力する。
【0049】
上記のように電位が供給された状態で、保護基板50側から入力領域2に向けて手指を近づけると、保護基板50に近づけた手指と、接近位置付近のX電極10及びY電極20のそれぞれとの間に寄生容量が形成される。すると、寄生容量が形成されたX電極10及びY電極20では、この寄生容量を充電するために一時的な電位低下が引き起こされる。
【0050】
駆動部では、各電極の電位をセンシングしており、上述の電位低下が発生したX電極10及びY電極20を即座に検出する。そして、検出された電極の位置を電気信号変換/演算部によって解析することによって、入力領域2における指の位置情報が検出される。具体的には、X軸方向に延在するX電極10によって、手指が接近した位置の入力領域2におけるY座標が検出され、Y軸方向に延在するY電極20によって、入力領域2におけるX座標が検出される。
【0051】
(パターン膜形成部材の製造方法)
次に、パターン膜形成部材の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、パターン膜形成部材としてのタッチパネルの製造方法について説明する。図3は、タッチパネルの製造方法を示すフローチャートである。
【0052】
本実施形態のタッチパネルの製造工程は、ガラス基板1の機能面1aに、島状電極部12,22、ブリッジ配線11、及び引き回し配線60の導電膜としての第1層60aを形成する電極成膜工程S10と、引き回し配線60の第1層60a上に金属膜としての第2層60bを積層する補助配線形成工程S20と、ブリッジ配線11上に絶縁膜30を形成するとともに、引き回し配線60を覆って配線保護膜62を形成する絶縁膜形成工程S30と、絶縁膜30上を経由して隣り合った島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21を形成するブリッジ配線形成工程S40と、ガラス基板1の機能面1a側を平坦化する平坦化膜40を形成する平坦化膜形成工程(保護膜形成工程)S50と、接着層51を介して保護基板50を平坦化膜40と接合する保護基板接合工程(接着層形成工程)S60と、ガラス基板1の裏面1bにシールド層70を形成するシールド層形成工程(導電膜形成工程)S70とを有している。
【0053】
また、図4は、タッチパネルの製造方法の一部を示すフローチャートである。すなわち、タッチパネルの製造方法における補助配線形成工程S20をさらに詳細に説明するためのフローチャートである。
【0054】
図4に示すように、補助配線形成工程S20は、ガラス基板1の機能面1aに導電膜としての第1層60aが形成された基材1’の表面を洗浄する洗浄工程S20aと、基材1’の表面を表面処理する表面処理工程S20bと、第1層60a上に、金属膜としての第2層60bの材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する塗布工程S20cと、機能液が付着した基材1’を放置する放置工程S20dと、塗布された機能液を固化して、第1層60a上に第2層60bを形成する固化工程S20eを有している。
【0055】
なお、本実施形態では、上記表面処理工程S20bにおいて表面処理装置を用い、また、塗布工程S20c等において液滴吐出装置を用いている。そこで、タッチパネルの製造方法の説明に先立ち、表面処理装置および液滴吐出装置について説明する。
【0056】
まず、表面処理装置について説明する。図5は、表面処理装置の構成を示す模式図である。表面処理装置900は、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザンを用いて基材の表面処理を行う装置であり、一般的にHMDS処理を行う装置である。なお、本実施形態では、ガス拡散法による表面処理装置900の構成を示している。表面処理装置900は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)910と、ヘキサメチルジシラザン910が入れられる皿容器920と、皿容器920と基材1’を密閉可能に収容する収容容器930とを有している。そして、表面処理を行う場合には、収容容器930の中に、ヘキサメチルジシラザン910が入れられた皿容器920と、皿容器920の上方に基材1’をそれぞれ設置して、収容容器930を密閉状態とする。そして、ヘキサメチルジシラザン910を気化させ、収容容器930内をヘキサメチルジシラザン910のガス雰囲気下とする。これにより、基材1’とヘキサメチルジシラザン910とが反応し、基材1’の表面処理が行われる。
【0057】
次に、液滴吐出装置について説明する。図6は、液滴吐出装置の構成を示す斜視図である。液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001と、X軸方向駆動軸1004と、Y軸方向ガイド軸1005と、制御装置CONTと、ステージ1007と、クリーニング機構1008と、基台1009と、ヒーター1015を備えている。
【0058】
ステージ1007は、機能液が塗布されるワークWを支持するものであって、ワークWを基準位置に固定する図示は省略の固定機構を備えている。
【0059】
液滴吐出ヘッド1001は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1001の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1001の吐出ノズルからは、ステージ1007に支持されているワークWに対して、機能液を液滴として吐出して、ワークW上に機能液を塗布するように構成されている。
【0060】
X軸方向駆動軸1004には、X軸方向駆動モーター1002が接続されている。このX軸方向駆動モーター1002は、ステッピングモーター等からなるもので、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸1004を回転させる。X軸方向駆動軸1004が回転すると、液滴吐出ヘッド1001はX軸方向に移動する。
【0061】
Y軸方向ガイド軸1005は、基台1009に対して動かないように固定されている。ステージ1007は、Y軸方向駆動モーター1003を備えている。Y軸方向駆動モーター1003はステッピングモーター等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ1007をY軸方向に移動する。
【0062】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1001に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モーター1002に液滴吐出ヘッド1001のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モーター1003にステージ1007のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0063】
クリーニング機構1008は、液滴吐出ヘッド1001をクリーニングするものである。クリーニング機構1008には、図示は省略のY軸方向の駆動モーターが備えられている。このY軸方向の駆動モーターの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸1005に沿って移動する。クリーニング機構1008の移動も制御装置CONTにより制御される。
【0064】
ヒーター1015は、ここではランプアニールによりワークWを熱処理する手段であり、ワークW上に配置された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒーター1015の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0065】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001とワークWを支持するステージ1007とを相対的に走査しつつ、ワークWに対して、液滴吐出ヘッド1001の下面にX軸方向に配列された複数の吐出ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0066】
図7は、ピエゾ方式による機能液の吐出原理を説明する図である。図7において、機能液を収容する液体室1021に隣接してピエゾ素子1022が設置されている。液体室1021には、機能液を収容する材料タンクを含む液体材料供給系1023を介して機能液が供給される。ピエゾ素子1022は駆動回路1024に接続されており、この駆動回路1024を介してピエゾ素子1022に電圧を印加し、ピエゾ素子1022を変形させることにより、液体室1021が変形し、吐出ノズル1025から機能液が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0067】
ここで、タッチパネルの製造方法の説明に戻る。図8〜9は、タッチパネルの製造方法を示す工程図である。
【0068】
まず、電極成膜工程S10について説明する。電極成膜工程S10では、ガラス基板1上に、図6に示した液滴吐出装置IJを用いて、例えば、ITO粒子を含む機能液の液滴を選択的に配置する。具体的には、ガラス基板1上に、島状電極部12とブリッジ配線11とからなるX電極10を形成し(第1電極形成工程)、また、Y電極20の一部である島状電極部22を形成し(第2電極形成工程)、そして、島状電極部12及び島状電極部22から延出された引き回し配線60の第1層60aとからなる機能液のパターンを形成する。その後、ガラス基板1上に配置された機能液(液滴)を乾燥させる。これにより、図8(a)に示すように、ガラス基板1上に、ITO粒子の集合体からなるX電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の第1層60aが形成される。
【0069】
このとき、ブリッジ配線11については、島状電極部22よりも薄くなるように、例えば吐出する液滴量を調整する。また、液滴吐出及び乾燥を複数回繰り返して行う場合には、これらの実施回数を減らす手順を採ることにより、ブリッジ配線11の厚さを島状電極部22よりも薄く形成する。また、Y電極20については、交差部Kで分断されて島状電極部22が離間するように形成される。
【0070】
本実施形態の電極成膜工程S10においては、ITO粒子を含有する液滴を吐出することによって、ITO膜を形成しているが、この他にも、IZO(登録商標)の粒子を含有する液滴を用いてIZO(登録商標)からなる透明導電膜を形成してもよい。また、電極成膜工程S10では、液滴吐出法ではなく、フォトリソグラフィー法を用いたパターン形成方法も用いることができる。すなわち、スパッタ法などによりガラス基板1の機能面1aのほぼ全面にITO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてITO膜をパターニングすることで、X電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の第1層60aを形成するようにしてもよい。
【0071】
次に、補助配線形成工程S20に移行する。まず、補助配線形成工程S20の洗浄工程S20aでは、ガラス基板1上に第1層60aが形成された基材1’を洗浄する。洗浄方法としては、例えば、UV洗浄、プラズマ洗浄、HF(フッ化水素酸)洗浄等で行うことができる。ここで、基材1’の洗浄後におけるガラス基板1の、水に対する接触角は、およそ10°以下であり、第1層60aの、水に対する接触角も、およそ10°以下である。すなわち、基材1’の表面全域が親水化領域となる。
【0072】
次に、表面処理工程S20bでは、表面処理装置900を用いて、ガス拡散法によるHMDS処理により基材1’の表面を表面処理する。なお、本実施形態では、表面処理剤としてのヘキサメチルジシラザン((CH3)3SiNHSi(CH3)3)910を用いる。具体的には、収容容器930の内部に、ヘキサメチルジシラザン910を貯留した皿容器920を設置するとともに、皿容器920の上方に基材1’を設置する。そして、収容容器930を密閉状態に維持し、ヘキサメチルジシラザン910を気化させたガス雰囲気内に基材1’を曝露させる。
【0073】
基材1’の表面処理条件は、基材1’の構成や、後に塗布される機能液の性質等を考慮し、適宜設定することができる。ここで、表面処理条件について具体例を挙げて説明する。図10は、基材における接触角の測定データである。同図(a)は、横軸に表面処理時間hをとり、縦軸に接触角θをとり、ガラス基板1の表面の、水に対する接触角θ、および、第1層60aの表面の、水に対する接触角θを示した測定データである。同図(b)は、横軸に表面処理時間hをとり、縦軸に接触角θをとり、ガラス基板1の表面の、機能液に対する接触角θ、および、第1層60aの表面の、機能液に対する接触角θを示した測定データである。ここで、表面処理におけるヘキサメチルジシラザン910は、常温(およそ20〜25℃)で気化させた状態である。また、機能液は、銀粒子が分散された水系分散媒を含む液状材料である。図10(a)に示すように、ガラス基板1の表面の、水に対する接触角θは、表面処理開始から20分程度で急激に大きくなり、表面処理時間が3分時点で50℃以上となる。そして、表面処理時間が20分以降になると徐々に大きくなっていく。一方、第1層60aの表面の、水に対する接触角θは、表面処理開始から10分程度で急激に大きくなるものの、およそ25°以下に抑えられている。従って、同図(a)から、表面処理(HMDS処理)により、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面)と撥水力の弱い領域(第1層60a)のコントラストが同時期に形成されることが分かる。
【0074】
また、図10(b)に示すように、ガラス基板1の表面の、機能液に対する接触角θは、表面処理開始から10分程度で急激に大きくなり、表面処理時間が3分時点で40℃以上となる。そして、表面処理時間が10分以降になると徐々に大きくなっていく。一方、第1層60aの表面の、機能液に対する接触角θは、表面処理開始から10分程度で急激に大きくなるものの、およそ30°以下に抑えられている。従って、同図(b)からも、表面処理(HMDS処理)により、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面)と撥水力の弱い領域(第1層60a)が同時期に形成されることが分かる。
【0075】
以上、図10に示した測定でデータを参考にし、本実施形態における基材1’の表面処理条件は、ヘキサメチルジシラザン910を常温で気化させ、基材1’の曝露時間は、3〜15分程度とした。なお、加工状況に合わせ、例えば、表面処理条件の基材1’の曝露時間を3分以内としてもよいし、15分以上(60分以内)としてもよい。
【0076】
次に、表面処理における基材1’の表面状態について、さらに詳細に説明する。図11は、基材の表面処理状態を示す模式図である。同図(a)は、表面処理前(洗浄工程S20a後)のガラス基板1の表面の状態を示している。この状態において、ガラス基板1の表面は水酸基(−OH)が多数存在しており、水に対して親水性を有している。従って、同図(b)に示すように、ガラス基板1の、水に対する接触角θは、概ね10°以下となる。また、第1層60aの表面に関しても、ガラス基板1の表面状態と同様に、親水性を有し、第1層60aの、水に対する接触角は、概ね10°以下となる。ここで、接触角θは、気中(空気中)において、固体表面(本実施形態では、ガラス基板1の表面、第1層60aの表面)にある液体(本実施形態では、水滴)に対し、気体相・液体相・固体相の3相の接点から引いた液体の接線と、固体表面の成す液体側の角度を、この固体に対する、この液体の接触角θと定義する。従って、接触角が小さいほど、水滴はガラス基板1の面に濡れ広がり、つまり、親水性を示し、接触角が大きいほど、水滴はガラス基板1の面をはじく、つまり、撥水性を示すことになる。
【0077】
図11(c)は、表面処理後のガラス基板1の表面の状態を示している。同図(c)に示すように、ヘキサメチルジシラザン910は、ガラス基板1の表面の水分(−OH)と反応し、アンモニア(NH3)を発生させる。そして、ガラス基板1の表面は、トリメチルシリル化(−Si(CH3)3)される。すなわち、ガラス基板1の表面が撥水化処理される。従って、同図(d)に示すように、表面処理前に比べ、ガラス基板1の、水に対する接触角θは大きくなり、概ね50°以上となる。一方、第1層60aの表面との反応は遅いため、ガラス基板1における撥水力よりも弱い撥水化処理が施される。すなわち、弱撥水化処理が施される(親水力が保持される)。具体的には、第1層60aの、水に対する接触角は、概ね25°以下となる。このように、当該表面処理工程S20bにより、一の基材1’において、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面領域)と撥水力の弱い領域(第1層60aの表面領域)とを同時期に形成することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン910を用いたが、他に、例えば、トリメチルメトキシシラン(CH3Si(OCH3)3)、トリメチルクロロシラン((CH3)3SiCl)等のシラン化合物を用いることもできる。また、本実施形態では、HMDS処理としてガス拡散法を用いたが、他に、例えば、液体状のHMDSを貯留するビンに窒素ガスを吹き込んでバブリングさせ、HMDS蒸気を生じさせ、このHMDS蒸気を基材に噴射するバブリング法を用いてもよい。
【0079】
次に、塗布工程S20cでは、引き回し配線60の第1層60a上に、金属膜としての第2層60bの材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する。第2層60bの金属材料としては、第1層60aよりも電気抵抗率が低い材料を用いる。例えば、銀粒子を含む金属材料を用いることができる。なお、第2層60bを形成する他の材料としては、銀粒子を含む材料のほか、例えば、Au、Al、Cu、Pdなどの金属粒子を含む材料や、グラファイトやカーボンナノチューブを含む材料を用いることができる。金属粒子やカーボン粒子は、ナノ粒子やナノワイヤーの形態で機能液中に分散される。
【0080】
図12は、塗布工程S20cにおける機能液の塗布状態を示す模式図である。同図(a)に示すように、本実施形態では、液滴吐出装置IJを用いて、機能液を液滴Dとして吐出し、第1層60a上に機能液を塗布する。具体的には、ステージ1007と液滴吐出ヘッド1001を相対的に移動させつつ、液滴吐出ヘッド1001を吐出駆動させることにより、液滴Dを吐出させ、液滴Dを第1層60a上に付着させる。このとき、第1層60aの配線幅、或いは、第1層60aの表面状態を考慮して、液滴Dの液滴量を適宜設定する。なお、基材1’に対する機能液の接触角は、図10に示したように、ガラス基板1の、機能液(液滴D)に対する接触角θは、概ね40°以上である。一方、第1層60aの、機能液(液滴D)に対する接触角θは、概ね30°以下である。水に対する接触角と同様に、機能液に対しても、表面処理工程S20bにより、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面領域)と撥水力の弱い領域(第1層60aの表面領域)とのコントラスが保持される。
【0081】
同図(b)は、液滴Dが第1層60a上に着弾された液滴ドットDaの状態を平面視した模式図である。液滴吐出ヘッド1001から吐出された液滴Dは、第1層60a上に着弾され、着弾した液滴ドットDaは、第1層60a上で濡れ広がる。また、塗布工程S20cでは、第1層60a上に塗布された液滴ドットDaが、隣接する他の液滴ドットDaと接触するように、液滴Dを複数回に渡って吐出する。液滴ドットDaは、同図(b)に示すように、隣接する液滴ドットDa同士が数珠状に連なり、第1層60a上に塗布された液体状態の液面が平面視において凸凹形状を有する。なお、塗布された液滴ドットDaは、第1層60a上において濡れ広がるが、ガラス基板1の表面にまでは濡れ広がらない。ガラス基板1の表面は、撥水化処理されているため、第1層60aとの境界部分において液滴ドットDaの濡れ広がりが規制されるからである。
【0082】
次に、放置工程S20dでは、機能液が塗布された基材1’を放置する。例えば、常温で1〜10分程度放置する。図12(c)は、放置後の液体状態を示す模式図である。同図(c)に示すように、第1層60a上に塗布された機能液は、第1層60aのパターン形状に倣った液体状態となる。すなわち、同図12(b)に示す凹凸形状を有する液状態から、第1層60aのパターン形状に倣った液体状態に変化する。本実施形態では、第1層60aの直線的なパターン形状に倣った液体状態に変化する。これは、同図12(b)に示す凹凸形状を有する液体状態において、液滴ドットDa同士が接続される凹部は、第1層60aの表面が弱撥水化(親液化)されているため、第1層60aの配線幅方向に濡れ広がる。一方、凸部は、ガラス基板1の表面が強撥水化処理されているため、第1層60aとガラス基板1との境界部分で機能液がはじかれ、はじかれた機能液は第1層60a側に移動する。こうして放置することにより、機能液が自己整合的に移動して、第1層60aのパターン形状に倣った液体状態を形成する。なお、本放置工程S20dは、第1層60a上に塗布された機能液の自己整合的移動時間を考慮したのであるため、例えば、素早く自己整合的移動が完了する場合等では、省略することも可能である。
【0083】
次に、固化工程S20eでは、塗布された機能液を固化して、第2層60bを形成する。例えば、基材1’を230℃、1時間で加熱し、焼成する。これにより、図8(b)に示すように、第1層60a上に低抵抗の第2層60bが形成され、2層構造の引き回し配線60が形成される。
【0084】
次に、絶縁膜形成工程S30及びブリッジ配線形成工程S40が順次実行される。絶縁膜形成工程S30では、液滴吐出装置IJによって、図8(c)に示すように、X電極10のブリッジ配線11を埋めるように島状電極部12,22の間の隙間に液滴を選択的に配置する。このとき、交差部Kにおいては、図8(c)に示すように、島状電極部22が隔壁として絶縁膜30のY軸方向の両端部を区画して絶縁膜30の輪郭形状を規定することになる(本実施形態では、Y軸方向のみならず、他の方向についても絶縁膜30の輪郭形状を規定している)。その後、ガラス基板1上の液体材料を加熱し、乾燥固化することで、ブリッジ配線11上を含んで絶縁膜30が形成される。
【0085】
なお、絶縁膜30を形成するに際しては、少なくともブリッジ配線11上の領域において液滴を隙間無く配置することが好ましい。これにより、ブリッジ配線11に達する孔やクラックのない絶縁膜30を形成することができ、絶縁膜30における絶縁不良やブリッジ配線21の断線が防止される。
【0086】
このとき、交差部Kにおける絶縁膜30は、隔壁としての島状電極部22と接していることから表面張力が作用し、両端側が盛り上がる、所謂滲み上がりが抑制された状態で島状電極部22の上面と略面一に成膜される。
【0087】
続いて、図8(c)に示すように、引き回し配線60上の領域に対しても液滴を選択的に配置する。その後、ガラス基板1上の液体材料を加熱し、乾燥固化することで、引き回し配線60を覆う配線保護膜62が形成される。上記液体材料としては、例えば、ポリシロキサンを含む液体材料や、アクリル系樹脂、又はアクリルモノマーを含む液体材料を用いることができる。
【0088】
次に、ブリッジ配線形成工程S40に移行する。ブリッジ配線形成工程S40では、図8(d)に示すように、隣り合って配置された島状電極部22上と絶縁膜30上とにわたって、ITO粒子を含む液体材料の液滴を配線形状に配置する。その後、ガラス基板1上の液体材料を乾燥固化する。これにより、島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21が形成される。ブリッジ配線21の形成時には、上述したように、下地となる交差部Kの絶縁膜30が隔壁(島状電極部22)により輪郭が区画されることで略面一となっているため、ブリッジ配線21は、下地に滲み上がりが生じている場合のように屈曲することなく、直線状に形成される。なお、ブリッジ配線21の形成に用いる液体材料としては、上記したITO粒子を含む液体材料のほか、IZO(登録商標)粒子や、ZnO粒子を含む液体材料を用いて形成することもできる。
【0089】
ブリッジ配線形成工程S40では、電極成膜工程S10と同一の液体材料を用いてブリッジ配線21を形成することが好ましい。すなわち、ブリッジ配線21の構成材料には、X電極10や島状電極部22の構成材料と同一の材料を用いることが好ましい。
【0090】
次に、平坦化膜形成工程S50に移行する。平坦化膜形成工程S50では、図9(a)に示すように、ガラス基板1の機能面1aを平坦化させる目的で、絶縁材料からなる平坦化膜40を機能面1aのほぼ全面に形成する。平坦化膜40は、絶縁膜形成工程S30で用いた絶縁膜30形成用の液体材料と同様の液体材料を用いて形成することができるが、ガラス基板1表面の平坦化を目的としているため、樹脂材料を用いて形成することが好ましい。
【0091】
次に、保護基板接合工程S60に移行する。保護基板接合工程S60では、図9(b)に示すように、別途用意した保護基板50と平坦化膜40との間に接着剤を配置し、かかる接着剤からなる接着層51を介して保護基板50と平坦化膜40とを貼り合わせる。保護基板50は、ガラスやプラスチック等からなる透明基板のほか、偏光板や位相差板などの光学素子基板であってもよい。接着層51を構成する接着剤としては、透明な樹脂材料などを用いることができる。
【0092】
次に、シールド層形成工程S70に移行する。シールド層形成工程S70では、図9(c)に示すように、ガラス基板1の裏面1b(機能面1aとは反対側の面)に導電膜で構成されたシールド層70を形成する。シールド層70は、真空成膜法、スクリーン印刷法、オフセット法、液滴吐出法などの公知の成膜法を用いて形成することができる。例えばシールド層70を液滴吐出法などの印刷法を用いて形成する場合には、電極成膜工程S10、及びブリッジ配線形成工程S40で使用されるITO粒子等を含む液体材料を用いることができる。また、ガラス基板1に対する成膜によりシールド層70を形成する方法のほかにも、一面又は両面に導電膜が成膜されたフィルムを別途用意し、かかるフィルムをガラス基板1の裏面1bに貼り合わせることでフィルム上の導電膜をシールド層70としてもよい。
【0093】
なお、本実施形態では、シールド層70をタッチパネル製造工程の最後に実施することとしているが、シールド層70は任意のタイミングで形成することができる。例えば、予めシールド層70が形成されたガラス基板1を電極成膜工程S10以降の工程に供することもできる。また、電極成膜工程S10〜保護基板接合工程S60までの任意の工程の間にシールド層形成工程を配してもよい。
【0094】
また、本実施形態においては、ガラス基板1の裏面1bにシールド層70を形成しているが、ガラス基板1の機能面1a側にシールド層70Aを形成する場合には、電極成膜工程S10に先立って、シールド層70Aを形成する工程と、絶縁膜80Aを形成する工程とを実行する。この場合にも、シールド層70Aは、シールド層形成工程S70と同様の手法によって形成することができる。また、絶縁膜80Aの形成工程は、例えば絶縁膜形成工程S30と同様とすることができる。
【0095】
(電気光学装置の構成)
次に、電気光学装置の構成について説明する。なお、本実施形態では、電気光学装置としての液晶表示装置であり、上記のタッチパネルを備えた液晶表示装置の構成について説明する。図13は、液晶表示装置の構成を示し、同図(a)は、平面図であり、同図(b)は、(a)の平面図におけるH−H’断面図である。
【0096】
図13(a)に示すように、液晶表示装置500は、素子基板410、対向基板420、及び画像表示領域410aを有している。素子基板410は対向基板420に比して広い平面領域を有した矩形状の基板である。対向基板420は液晶表示装置500における画像表示側であり、ガラスやアクリル樹脂などで形成された透明な基板である。対向基板420は、シール材452を介して素子基板410の中央部に接合されている。画像表示領域410aは、対向基板420の平面領域であって、シール材452の内周に沿って設けられた周辺見切り453の内側領域である。
【0097】
素子基板410における対向基板420の周辺には、データ線駆動回路401、走査線駆動回路404、データ線駆動回路401及び走査線駆動回路404と接続された接続端子402、及び対向基板420に対して対向して配置された走査線駆動回路404同士を接続する配線405などが配置されている。
【0098】
次に、液晶表示装置500の断面について説明する。素子基板410の液晶層450側の面には、画素電極409及び配向膜418などが積層されている。対向基板420の液晶層450側の面には、遮光膜(ブラックマトリクス)423、カラーフィルター422、共通電極425、及び配向膜429などが積層されている。液晶層450が、素子基板410及び対向基板420によって挟持されている。そして、対向基板420の外側(液晶層450反対側)の面には、接着層101を挟んで本発明のタッチパネル100が配置されている。
【0099】
(電子機器の構成)
次に、電子機器の構成について説明する。なお、本実施形態では、電子機器としてのモバイル型パーソナルコンピューターであり、上記のタッチパネル又はタッチパネルを備えた液晶表示装置を搭載したモバイル型パーソナルコンピューターの構成について説明する。図14は、モバイル型パーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。モバイル型パーソナルコンピューター1100は、表示部1101と、キーボード1102を有する本体部1103とを備えている。モバイル型パーソナルコンピューター1100は、上記実施形態の液晶表示装置500を表示部1101に備えている。このような構成を備えたモバイル型パーソナルコンピューター1100によれば、本発明のタッチパネルが表示部に用いられているので、製造コストを抑えた電子機器とすることができる。
【0100】
なお、上記の電子機器は、本発明の電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)などの表示部にも本発明に係るタッチパネルを好適に用いることができる。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0102】
従って、上記の実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0103】
(1)ヘキサメチルジシラザン910を用いて、ガラス基板1上に第1層60aが形成された基材1’の表面処理を行った。そうすると、ヘキサメチルジシラザン910とガラス基板1の表面の水分とが反応し、ガラス基板1の表面がトリメチルシリル化される。すなわち、ガラス基板1の表面が撥水化処理される。一方、第1層60aの表面との反応は遅いため、撥水力は弱い。すなわち、第1層60aの表面は、親水力が保持される。従って、上記表面処理を行うことにより、同時期に、かつ、選択的に撥水化領域と親水化領域を形成することができる。これにより、製造工程を簡略化させることができる。
【0104】
(2)第1層60a上に向けて、第2層60bの材料が分散された水系分散媒を含む機能液を液滴として吐出し、第1層60a上に機能液を塗布させた。第1層60aの表面は、弱撥水性(親水性)を有するため、塗布された機能液は、第1層60a上に濡れ広がる。一方、ガラス基板1の表面は、撥水性を有するため、機能液のガラス基板1側への濡れ広がりが規制される。従って、第1層60aのパターン形状に倣って、機能液を濡れ広がらせることができる。そして、機能液を固化させることにより、第1層60a上に、第1層60aのパターン形状に倣った形状の第2層60bを形成することができる。
【0105】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0106】
(変形例1)上記実施形態では、パターン膜形成部材としてタッチパネルを例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば、他に、プラズマディスプレイ等に適用してもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。また、上記実施形態では、第1層60aはITO等の透明導電材料を用いて導電膜を形成したが、これに限定されず、他の金属材料を用いて導電膜を形成してもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
(変形例2)上記実施例のガラス基板1としては、表面にガラス質材料層を有するものであればよく、ガラス質材料層で形成されたフィルム状態の基板や、透明樹脂などで形成された透明材料の表面にガラス質材料層がコーティング等で形成された基板であってもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0107】
1…ガラス基板、1’…基材、60…引き回し配線、60a…導電膜としての第1層、60b…金属膜としての第2層、100…パターン膜形成部材としてのタッチパネル、500…電気光学装置としての液晶表示装置、900…表面処理装置、910…表面処理剤としてのヘキサメチルジシラザン、920…皿容器、930…収容容器、1001…液滴吐出ヘッド、1100…電子機器としてのモバイル型パーソナルコンピューター、IJ…液滴吐出装置、D…液滴、Da…液滴ドット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン膜形成部材の製造方法、パターン膜形成部材、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン膜形成部材として、例えば、タッチパネルは、ガラス基板上に電極配線が形成されている。電極配線は、ガラス基板上に可視光の透過率が高い導電膜としての透明電極膜で形成されている。当該透明導電膜は、導電性を有するものの、タッチパネルの機能性向上のため、さらに、電気抵抗を下げるべく、透明導電膜上に電気抵抗率が低い金属膜を形成する場合がある。その際、透明導電膜上に、金属膜の材料となる液体材料を塗布する場合には、透明導電膜の表面には、金属膜の液体材料が濡れ広がるように親液化領域を形成し、透明導電膜以外の領域となるガラス基板の表面は、金属膜の液体材料をはじく撥液化領域を形成する必要がある。そこで、親液化領域と撥液化領域を形成する方法としては、例えば、基板上に撥液性を有する光触媒含有層を形成した後、所定のパターンが形成されたマスクを用いて、当該マスクを介して、光触媒含有層に活性光を照射することにより、活性光が照射された部分のみが反応し、親液化領域が形成される。こうして、一の基材において、親液化領域と撥液化領域を選択的に形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−209339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、撥液化領域を形成する工程と、親液化領域を形成する工程の複数の工程を必要とするとともに、マスクを用いて、所定領域を選択的に表面処理する必要があるため、製造工程が複雑化してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法は、ガラス質材料層上の一部に導電膜が形成された基材のうち、前記ガラス質材料層の表面に撥水化処理を施すとともに、前記導電膜の表面に、前記ガラス質材料層における撥水力よりも弱い撥水化処理を施す表面処理工程と、前記導電膜上に、金属膜の材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する塗布工程と、塗布された前記機能液を固化して、前記導電膜上に前記金属膜を形成する固化工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ガラス質材料層の表面には、撥水化領域が形成され、導電膜の表面には、ガラス質材料層の表面における撥水力よりも弱い撥水化領域が形成される。すなわち、本表面処理工程では、撥水力の強い領域と撥水力の弱い領域とのコントラストを同時期に形成することが可能となる。さらに、換言すれば、ガラス質材料層の表面を撥水化し、導電膜の表面の親水力を保持することが可能となる。そして、導電膜上に、水系の機能液を塗布すると、塗布された機能液は、親水性を有する導電膜の表面に濡れ広がる。また、ガラス質材料層と導電膜との境界部分では、ガラス質材料層の表面が撥水性であるため、ガラス質材料層の表面に接する機能液は、ガラス質材料層に対して反発し、導電膜のパターン形状に倣って自己整合的に移動する。そして、塗布された機能液を固化することにより、導電膜上に金属膜が形成される。従って、従来のようにマスク等を用いて複数回の表面処理工程を実施する必要がなく、一の表面処理工程で、同時期に、かつ、選択的に撥水化領域と親水化領域を形成することができる。これにより、製造工程を簡略化させることができ、高精細なパターン膜を形成することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、シラン化合物を含む表面処理剤を用いることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、シラン化合物とガラス質材料層の表面の水分とが反応し、ガラス質材料層の表面がトリメチルシリル化され、ガラス質材料層の表面を強撥水化させることができる。一方、導電膜の表面との反応は低い。つまり、親水力が保持される。これにより、基材において、撥水力の強い領域(ガラス質材料層)と撥水力の弱い領域(導電膜)とのコントラストを同時期に形成することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を用いることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ヘキサメチルジシラザンを用いて基材の表面処理を行う。すなわち、HMDS処理を行う。ヘキサメチルジシラザンとガラス質材料層の表面の水分(−OH)とが反応してアンモニア(NH3)を発生させるとともに、ガラス質材料層の表面はトリメチルシリル化(−Si(CH3)3)される。つまり、ガラス質材料層の表面が撥水化処理される。一方、導電膜の表面との反応は低いため、親水力が保持される。これにより、基材において、撥水力の強い領域(ガラス質材料層)と撥水力の弱い領域(導電膜)とのコントラストを同時期に形成することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、前記基材と前記ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を密閉された環境下に放置し、前記ヘキサメチルジシラザンを常温で気化させたガス雰囲気内において、前記基材を3〜15分間曝露することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、容易に、撥水力の強い領域(ガラス質材料層)と撥水力の弱い領域(導電膜)を同時期に形成することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、前記ガラス質材料層の表面の、水に対する接触角が50°以上となる撥水化処理を施し、前記導電膜の表面の、水に対する接触角が25°以下となる撥水化処理を施すことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ガラス質材料層上では、水系機能液をはじかせ、導電膜上では、水系機能液を濡れ広がらせることができる。これにより、導電膜のパターン形状に倣った機能液の液体状態を形成することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記表面処理工程では、前記ガラス質材料層の表面の、前記機能液に対する接触角が40°以上となる撥水化処理を施し、前記導電膜の表面の、前記機能液に対する接触角が30°以下となる撥水化処理を施すことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ガラス質材料層上では、水系機能液をはじかせ、導電膜上では、水系機能液を濡れ広がらせることができる。これにより、導電膜のパターン形状に倣った機能液の液体状態を形成することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記塗布工程では、前記機能液を液滴として吐出して、前記導電膜上に前記機能液を塗布することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、所望の位置に効率良く機能液を塗布することができ、高精細なパターンを形成することができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記塗布工程では、前記導電膜上に塗布された液滴ドットが、隣接する他の液滴ドットと接触するように、前記機能液を塗布することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、塗布された液滴ドットが数珠状に繋がるため、導電膜のパターン形状に倣って機能液を容易に自己整合的に移動させることができる。
【0022】
[適用例9]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法の前記塗布工程と前記固化工程との間に、前記機能液が塗布された前記基材を放置する放置工程を有することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、機能液が塗布された基材を放置することにより、導電膜のパターン形状に倣って機能液が自己整合的に移動する期間を確保することができる。また、機能液を液滴として吐出した場合には、隣接する液滴ドット同士が相溶する期間が確保され、導電膜のパターン形状に倣った液状態を形成することができる。
【0024】
[適用例10]本適用例にかかるパターン膜形成部材は、上記パターン膜形成部材の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、高精細で高品位のパターン膜形成部材を提供することができる。この場合、パターン膜形成部材は、例えば、タッチパネル、カラーフィルター、PDP部材、有機EL部材、FED(電界放出ディスプレイ)部材等がこれに該当する。
【0026】
[適用例11]本適用例にかかる電気光学装置は、上記パターン膜形成部材を備えたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、信頼性の高いパターン膜形成部材を備えた電気光学装置を提供することができる。この場合、電気光学装置は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等がこれに該当する。
【0028】
[適用例12]本適用例にかかる電子機器は、上記電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、信頼性の高い電気光学装置を搭載した電子機器を提供することができる。この場合、電子機器は、例えば、カラーフィルター、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)を搭載したテレビ受像機、パーソナルコンピューター、携帯電子機器、その他、各種の電子製品がこれに該当する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】パターン膜形成部材としてのタッチパネルの構成を示す平面図。
【図2】パターン膜形成部材としてのタッチパネルの構成を示す断面図。
【図3】タッチパネルの製造方法を示すフローチャート。
【図4】タッチパネルの製造方法の一部を示すフローチャート。
【図5】表面処理装置の構成を示す模式図。
【図6】液滴吐出装置の構成を示す斜視図。
【図7】吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【図8】タッチパネルの製造方法を示す工程図。
【図9】タッチパネルの製造方法を示す工程図。
【図10】基材における接触角の測定データ。
【図11】基材の表面処理状態を示す模式図。
【図12】機能液の塗布状態を示す模式図。
【図13】電気光学装置としての液晶表示装置の構成を示す平面図及び断面図。
【図14】電子機器としてのパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮尺や数等を異ならせて図示している。
【0032】
(パターン膜形成部材の構成)
まず、パターン膜形成部材の構成について説明する。なお、本実施形態では、パターン膜形成部材としてのタッチパネルを例に挙げて説明する。図1は、タッチパネルの構成を示す平面図である。図2は、図1に示したタッチパネルのA−A’断面図である。
【0033】
タッチパネル100は、ガラス基板1、入力領域2、及び引き回し配線60を有する。ガラス基板1は、透明性を有し、平面視で矩形状に成形されたガラス質材料層で構成されている。
【0034】
入力領域2は、図1において二点鎖線で囲まれた領域であり、タッチパネル100に入力される指の位置情報を検出する領域である。入力領域2には、複数のX電極(第1電極)10及び複数のY電極(第2電極)20がそれぞれ配置されている。X電極10は、図示でX軸方向に沿って延在し、且つX電極10は、Y軸方向に互いに間隔をあけて複数配列されている。Y電極20は図示でY軸方向に沿って延在し、それぞれのY電極20は、X軸方向に互いに間隔をあけて配列されている。X電極10及びY電極20は、互いのブリッジ配線を交差させることによって入力領域2内の交差部Kで交差している。
【0035】
X電極10は、X軸方向に配列された複数の島状電極部12と、隣り合う島状電極部12同士を接続するブリッジ配線11とを備えている。島状電極部12は平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がX軸に沿うように配置されている。
【0036】
Y電極20は、Y軸方向に配列された複数の島状電極部22と、隣り合う島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21とを備えている。島状電極部22は、平面視で矩形状に形成され、一方の対角線がY軸に沿うように配置されている。島状電極部12と島状電極部22とは、X軸方向及びY軸方向において互い違いに配置(市松状配置)されており、入力領域2では、矩形状の島状電極部12,22が平面視マトリクス状に配置されている。
【0037】
X電極10及びY電極20を構成する材質としては、ITO(インジウムスズ酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物;登録商標)、ZnOなどの透光性を有する抵抗体を採用することができる。
【0038】
引き回し配線60は、X電極10及びY電極20と接続されており、タッチパネル100の内部あるいは外部装置に設けられた駆動部及び電気信号変換/演算部(いずれも図示は省略)と接続されている。
【0039】
次に、図2の断面図について説明する。ガラス基板1の機能面1aに、島状電極部12(図示は省略)、島状電極部22、及びブリッジ配線11が設けられている。ブリッジ配線11上には、絶縁膜30が島状電極部22と略面一となる高さで形成されている。そして、絶縁膜30上にブリッジ配線21が配置されている。X電極10のブリッジ配線11は、島状電極部22よりも薄く、例えば1/2程度の厚さに形成されている。また、ガラス基板1の機能面1aに、引き回し配線60が配置されている。引き回し配線60は、ガラス基板1の機能面1aに配置された導電膜としての第1層60aと第1層60aに積層された金属膜としての第2層60bを有している。そして、引き回し配線60を覆うように配線保護膜62が形成されている。
【0040】
これらの電極及び配線を覆うように平坦化膜40が形成されている。平坦化膜40上には、接着層51を介して保護基板50が配置されている。また、ガラス基板1の裏面1bには、シールド層70が設けられている。
【0041】
絶縁膜30は、立体的に交差するブリッジ配線11とブリッジ配線21とを絶縁する。絶縁膜30は、ポリシロキサン、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを印刷法を用いて塗布し、それを乾燥固化して形成することができる。ポリシロキサンを用いて形成した場合には、絶縁膜30はシリコン酸化物からなる無機絶縁膜となる。一方、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーを採用した場合には、絶縁膜30は樹脂材料からなる有機絶縁膜となる。ここでは、JSR NN525E と、EDM(ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)とを4:1(重量比)で混合した樹脂溶液を用いている。
【0042】
絶縁膜30の構成材料には、比誘電率が4.0以下、望ましくは3.5以下である材料を採用することが好ましい。これにより、ブリッジ配線の交差部における寄生容量を低減して、タッチパネルの位置検出性能を保持することができる。また絶縁膜30の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、ガラス基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、使用者に絶縁膜30のパターンが見えてしまうのを防止できる。
【0043】
引き回し配線60の第1層60aは、X電極10又はY電極20を入力領域2の外側の領域まで延出した導電膜であり、例えば、透明性を有する透明導電膜である。当該透明導電膜は、ITOやIZOなどの抵抗体によって形成されている。第2層60bは、第1層60a上に積層形成され、引き回し配線60の配線抵抗を低減する。第2層60bは、Au、Ag、Al、Cu、Pdなどの金属、及びカーボン(グラファイト、カーボンナノチューブなどのナノカーボン)のうち1種類以上を成分とする、有機化合物、ナノ粒子、ナノワイヤーなどを用いて形成することができる。第2層60bの構成材料は、第1層60aよりもシート抵抗を小さくすることができるものであれば特に限定されない。
【0044】
引き回し配線60を覆う配線保護膜62は、絶縁膜30と同様に、ポリシロキサン、アクリル系樹脂、及びアクリルモノマーなどを形成材料に用いた印刷法によって形成することができる。したがって、配線保護膜62は絶縁膜30を形成する工程で同時に形成することができる。
【0045】
平坦化膜40は、ガラス基板1の機能面1aの少なくとも入力領域2を覆って形成され、X電極10やY電極20による機能面1aの凹凸を平坦化している。平坦化膜40は、図示のように、機能面1aの略全面(外部接続端子部を除く)を覆って形成されていることが好ましい。平坦化膜40によりガラス基板1の機能面1a側が平坦化されていることで、ガラス基板1と保護基板50とをほぼ全面にわたって均一に接合することができる。また平坦化膜40の構成材料には、屈折率が2.0以下、望ましくは1.7以下である材料を用いることが好ましい。これにより、ガラス基板1やX電極10、Y電極20との屈折率差を小さくすることができ、X電極10やY電極20の配線パターンを見えにくくすることができる。
【0046】
保護基板50は、ガラスやプラスチックなどの透明基板である。あるいは、本実施形態のタッチパネル100が液晶パネルや有機ELパネルなどの表示装置の前面に配置される場合には、保護基板50として、表示装置の一部として用いられる光学素子基板(偏光板や位相差板など)を用いることもできる。
【0047】
シールド層70は、ITOやIZO(登録商標)などの透明導電材料をガラス基板1の裏面1bに成膜することで形成される。あるいは、シールド層となる透明導電膜が形成されたフィルムを用意し、かかるフィルムをガラス基板1の裏面1bに接着した構成としてもよい。シールド層70が設けられていることで、ガラス基板1の裏面1b側において電界を遮断する。これにより、タッチパネル100の電界が表示装置等に作用したり、表示装置等の外部機器の電界がタッチパネル100に作用したりするのを防止することができる。なお、本実施形態では、ガラス基板1の裏面1bにシールド層70を形成しているが、シールド層70をガラス基板1の機能面1a側に形成してもよい。
【0048】
ここで、タッチパネル100の動作原理について簡単に説明する。まず、図示は省略の駆動部から、引き回し配線60を介してX電極10及びY電極20に所定の電位を供給する。なお、シールド層70には、例えばグランドの電位(接地電位)を入力する。
【0049】
上記のように電位が供給された状態で、保護基板50側から入力領域2に向けて手指を近づけると、保護基板50に近づけた手指と、接近位置付近のX電極10及びY電極20のそれぞれとの間に寄生容量が形成される。すると、寄生容量が形成されたX電極10及びY電極20では、この寄生容量を充電するために一時的な電位低下が引き起こされる。
【0050】
駆動部では、各電極の電位をセンシングしており、上述の電位低下が発生したX電極10及びY電極20を即座に検出する。そして、検出された電極の位置を電気信号変換/演算部によって解析することによって、入力領域2における指の位置情報が検出される。具体的には、X軸方向に延在するX電極10によって、手指が接近した位置の入力領域2におけるY座標が検出され、Y軸方向に延在するY電極20によって、入力領域2におけるX座標が検出される。
【0051】
(パターン膜形成部材の製造方法)
次に、パターン膜形成部材の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、パターン膜形成部材としてのタッチパネルの製造方法について説明する。図3は、タッチパネルの製造方法を示すフローチャートである。
【0052】
本実施形態のタッチパネルの製造工程は、ガラス基板1の機能面1aに、島状電極部12,22、ブリッジ配線11、及び引き回し配線60の導電膜としての第1層60aを形成する電極成膜工程S10と、引き回し配線60の第1層60a上に金属膜としての第2層60bを積層する補助配線形成工程S20と、ブリッジ配線11上に絶縁膜30を形成するとともに、引き回し配線60を覆って配線保護膜62を形成する絶縁膜形成工程S30と、絶縁膜30上を経由して隣り合った島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21を形成するブリッジ配線形成工程S40と、ガラス基板1の機能面1a側を平坦化する平坦化膜40を形成する平坦化膜形成工程(保護膜形成工程)S50と、接着層51を介して保護基板50を平坦化膜40と接合する保護基板接合工程(接着層形成工程)S60と、ガラス基板1の裏面1bにシールド層70を形成するシールド層形成工程(導電膜形成工程)S70とを有している。
【0053】
また、図4は、タッチパネルの製造方法の一部を示すフローチャートである。すなわち、タッチパネルの製造方法における補助配線形成工程S20をさらに詳細に説明するためのフローチャートである。
【0054】
図4に示すように、補助配線形成工程S20は、ガラス基板1の機能面1aに導電膜としての第1層60aが形成された基材1’の表面を洗浄する洗浄工程S20aと、基材1’の表面を表面処理する表面処理工程S20bと、第1層60a上に、金属膜としての第2層60bの材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する塗布工程S20cと、機能液が付着した基材1’を放置する放置工程S20dと、塗布された機能液を固化して、第1層60a上に第2層60bを形成する固化工程S20eを有している。
【0055】
なお、本実施形態では、上記表面処理工程S20bにおいて表面処理装置を用い、また、塗布工程S20c等において液滴吐出装置を用いている。そこで、タッチパネルの製造方法の説明に先立ち、表面処理装置および液滴吐出装置について説明する。
【0056】
まず、表面処理装置について説明する。図5は、表面処理装置の構成を示す模式図である。表面処理装置900は、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザンを用いて基材の表面処理を行う装置であり、一般的にHMDS処理を行う装置である。なお、本実施形態では、ガス拡散法による表面処理装置900の構成を示している。表面処理装置900は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)910と、ヘキサメチルジシラザン910が入れられる皿容器920と、皿容器920と基材1’を密閉可能に収容する収容容器930とを有している。そして、表面処理を行う場合には、収容容器930の中に、ヘキサメチルジシラザン910が入れられた皿容器920と、皿容器920の上方に基材1’をそれぞれ設置して、収容容器930を密閉状態とする。そして、ヘキサメチルジシラザン910を気化させ、収容容器930内をヘキサメチルジシラザン910のガス雰囲気下とする。これにより、基材1’とヘキサメチルジシラザン910とが反応し、基材1’の表面処理が行われる。
【0057】
次に、液滴吐出装置について説明する。図6は、液滴吐出装置の構成を示す斜視図である。液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001と、X軸方向駆動軸1004と、Y軸方向ガイド軸1005と、制御装置CONTと、ステージ1007と、クリーニング機構1008と、基台1009と、ヒーター1015を備えている。
【0058】
ステージ1007は、機能液が塗布されるワークWを支持するものであって、ワークWを基準位置に固定する図示は省略の固定機構を備えている。
【0059】
液滴吐出ヘッド1001は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1001の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1001の吐出ノズルからは、ステージ1007に支持されているワークWに対して、機能液を液滴として吐出して、ワークW上に機能液を塗布するように構成されている。
【0060】
X軸方向駆動軸1004には、X軸方向駆動モーター1002が接続されている。このX軸方向駆動モーター1002は、ステッピングモーター等からなるもので、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸1004を回転させる。X軸方向駆動軸1004が回転すると、液滴吐出ヘッド1001はX軸方向に移動する。
【0061】
Y軸方向ガイド軸1005は、基台1009に対して動かないように固定されている。ステージ1007は、Y軸方向駆動モーター1003を備えている。Y軸方向駆動モーター1003はステッピングモーター等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ1007をY軸方向に移動する。
【0062】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1001に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モーター1002に液滴吐出ヘッド1001のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モーター1003にステージ1007のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0063】
クリーニング機構1008は、液滴吐出ヘッド1001をクリーニングするものである。クリーニング機構1008には、図示は省略のY軸方向の駆動モーターが備えられている。このY軸方向の駆動モーターの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸1005に沿って移動する。クリーニング機構1008の移動も制御装置CONTにより制御される。
【0064】
ヒーター1015は、ここではランプアニールによりワークWを熱処理する手段であり、ワークW上に配置された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒーター1015の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0065】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1001とワークWを支持するステージ1007とを相対的に走査しつつ、ワークWに対して、液滴吐出ヘッド1001の下面にX軸方向に配列された複数の吐出ノズルから液滴を吐出するようになっている。
【0066】
図7は、ピエゾ方式による機能液の吐出原理を説明する図である。図7において、機能液を収容する液体室1021に隣接してピエゾ素子1022が設置されている。液体室1021には、機能液を収容する材料タンクを含む液体材料供給系1023を介して機能液が供給される。ピエゾ素子1022は駆動回路1024に接続されており、この駆動回路1024を介してピエゾ素子1022に電圧を印加し、ピエゾ素子1022を変形させることにより、液体室1021が変形し、吐出ノズル1025から機能液が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子1022の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0067】
ここで、タッチパネルの製造方法の説明に戻る。図8〜9は、タッチパネルの製造方法を示す工程図である。
【0068】
まず、電極成膜工程S10について説明する。電極成膜工程S10では、ガラス基板1上に、図6に示した液滴吐出装置IJを用いて、例えば、ITO粒子を含む機能液の液滴を選択的に配置する。具体的には、ガラス基板1上に、島状電極部12とブリッジ配線11とからなるX電極10を形成し(第1電極形成工程)、また、Y電極20の一部である島状電極部22を形成し(第2電極形成工程)、そして、島状電極部12及び島状電極部22から延出された引き回し配線60の第1層60aとからなる機能液のパターンを形成する。その後、ガラス基板1上に配置された機能液(液滴)を乾燥させる。これにより、図8(a)に示すように、ガラス基板1上に、ITO粒子の集合体からなるX電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の第1層60aが形成される。
【0069】
このとき、ブリッジ配線11については、島状電極部22よりも薄くなるように、例えば吐出する液滴量を調整する。また、液滴吐出及び乾燥を複数回繰り返して行う場合には、これらの実施回数を減らす手順を採ることにより、ブリッジ配線11の厚さを島状電極部22よりも薄く形成する。また、Y電極20については、交差部Kで分断されて島状電極部22が離間するように形成される。
【0070】
本実施形態の電極成膜工程S10においては、ITO粒子を含有する液滴を吐出することによって、ITO膜を形成しているが、この他にも、IZO(登録商標)の粒子を含有する液滴を用いてIZO(登録商標)からなる透明導電膜を形成してもよい。また、電極成膜工程S10では、液滴吐出法ではなく、フォトリソグラフィー法を用いたパターン形成方法も用いることができる。すなわち、スパッタ法などによりガラス基板1の機能面1aのほぼ全面にITO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてITO膜をパターニングすることで、X電極10(島状電極部12、ブリッジ配線11)、島状電極部22、及び引き回し配線60の第1層60aを形成するようにしてもよい。
【0071】
次に、補助配線形成工程S20に移行する。まず、補助配線形成工程S20の洗浄工程S20aでは、ガラス基板1上に第1層60aが形成された基材1’を洗浄する。洗浄方法としては、例えば、UV洗浄、プラズマ洗浄、HF(フッ化水素酸)洗浄等で行うことができる。ここで、基材1’の洗浄後におけるガラス基板1の、水に対する接触角は、およそ10°以下であり、第1層60aの、水に対する接触角も、およそ10°以下である。すなわち、基材1’の表面全域が親水化領域となる。
【0072】
次に、表面処理工程S20bでは、表面処理装置900を用いて、ガス拡散法によるHMDS処理により基材1’の表面を表面処理する。なお、本実施形態では、表面処理剤としてのヘキサメチルジシラザン((CH3)3SiNHSi(CH3)3)910を用いる。具体的には、収容容器930の内部に、ヘキサメチルジシラザン910を貯留した皿容器920を設置するとともに、皿容器920の上方に基材1’を設置する。そして、収容容器930を密閉状態に維持し、ヘキサメチルジシラザン910を気化させたガス雰囲気内に基材1’を曝露させる。
【0073】
基材1’の表面処理条件は、基材1’の構成や、後に塗布される機能液の性質等を考慮し、適宜設定することができる。ここで、表面処理条件について具体例を挙げて説明する。図10は、基材における接触角の測定データである。同図(a)は、横軸に表面処理時間hをとり、縦軸に接触角θをとり、ガラス基板1の表面の、水に対する接触角θ、および、第1層60aの表面の、水に対する接触角θを示した測定データである。同図(b)は、横軸に表面処理時間hをとり、縦軸に接触角θをとり、ガラス基板1の表面の、機能液に対する接触角θ、および、第1層60aの表面の、機能液に対する接触角θを示した測定データである。ここで、表面処理におけるヘキサメチルジシラザン910は、常温(およそ20〜25℃)で気化させた状態である。また、機能液は、銀粒子が分散された水系分散媒を含む液状材料である。図10(a)に示すように、ガラス基板1の表面の、水に対する接触角θは、表面処理開始から20分程度で急激に大きくなり、表面処理時間が3分時点で50℃以上となる。そして、表面処理時間が20分以降になると徐々に大きくなっていく。一方、第1層60aの表面の、水に対する接触角θは、表面処理開始から10分程度で急激に大きくなるものの、およそ25°以下に抑えられている。従って、同図(a)から、表面処理(HMDS処理)により、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面)と撥水力の弱い領域(第1層60a)のコントラストが同時期に形成されることが分かる。
【0074】
また、図10(b)に示すように、ガラス基板1の表面の、機能液に対する接触角θは、表面処理開始から10分程度で急激に大きくなり、表面処理時間が3分時点で40℃以上となる。そして、表面処理時間が10分以降になると徐々に大きくなっていく。一方、第1層60aの表面の、機能液に対する接触角θは、表面処理開始から10分程度で急激に大きくなるものの、およそ30°以下に抑えられている。従って、同図(b)からも、表面処理(HMDS処理)により、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面)と撥水力の弱い領域(第1層60a)が同時期に形成されることが分かる。
【0075】
以上、図10に示した測定でデータを参考にし、本実施形態における基材1’の表面処理条件は、ヘキサメチルジシラザン910を常温で気化させ、基材1’の曝露時間は、3〜15分程度とした。なお、加工状況に合わせ、例えば、表面処理条件の基材1’の曝露時間を3分以内としてもよいし、15分以上(60分以内)としてもよい。
【0076】
次に、表面処理における基材1’の表面状態について、さらに詳細に説明する。図11は、基材の表面処理状態を示す模式図である。同図(a)は、表面処理前(洗浄工程S20a後)のガラス基板1の表面の状態を示している。この状態において、ガラス基板1の表面は水酸基(−OH)が多数存在しており、水に対して親水性を有している。従って、同図(b)に示すように、ガラス基板1の、水に対する接触角θは、概ね10°以下となる。また、第1層60aの表面に関しても、ガラス基板1の表面状態と同様に、親水性を有し、第1層60aの、水に対する接触角は、概ね10°以下となる。ここで、接触角θは、気中(空気中)において、固体表面(本実施形態では、ガラス基板1の表面、第1層60aの表面)にある液体(本実施形態では、水滴)に対し、気体相・液体相・固体相の3相の接点から引いた液体の接線と、固体表面の成す液体側の角度を、この固体に対する、この液体の接触角θと定義する。従って、接触角が小さいほど、水滴はガラス基板1の面に濡れ広がり、つまり、親水性を示し、接触角が大きいほど、水滴はガラス基板1の面をはじく、つまり、撥水性を示すことになる。
【0077】
図11(c)は、表面処理後のガラス基板1の表面の状態を示している。同図(c)に示すように、ヘキサメチルジシラザン910は、ガラス基板1の表面の水分(−OH)と反応し、アンモニア(NH3)を発生させる。そして、ガラス基板1の表面は、トリメチルシリル化(−Si(CH3)3)される。すなわち、ガラス基板1の表面が撥水化処理される。従って、同図(d)に示すように、表面処理前に比べ、ガラス基板1の、水に対する接触角θは大きくなり、概ね50°以上となる。一方、第1層60aの表面との反応は遅いため、ガラス基板1における撥水力よりも弱い撥水化処理が施される。すなわち、弱撥水化処理が施される(親水力が保持される)。具体的には、第1層60aの、水に対する接触角は、概ね25°以下となる。このように、当該表面処理工程S20bにより、一の基材1’において、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面領域)と撥水力の弱い領域(第1層60aの表面領域)とを同時期に形成することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン910を用いたが、他に、例えば、トリメチルメトキシシラン(CH3Si(OCH3)3)、トリメチルクロロシラン((CH3)3SiCl)等のシラン化合物を用いることもできる。また、本実施形態では、HMDS処理としてガス拡散法を用いたが、他に、例えば、液体状のHMDSを貯留するビンに窒素ガスを吹き込んでバブリングさせ、HMDS蒸気を生じさせ、このHMDS蒸気を基材に噴射するバブリング法を用いてもよい。
【0079】
次に、塗布工程S20cでは、引き回し配線60の第1層60a上に、金属膜としての第2層60bの材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する。第2層60bの金属材料としては、第1層60aよりも電気抵抗率が低い材料を用いる。例えば、銀粒子を含む金属材料を用いることができる。なお、第2層60bを形成する他の材料としては、銀粒子を含む材料のほか、例えば、Au、Al、Cu、Pdなどの金属粒子を含む材料や、グラファイトやカーボンナノチューブを含む材料を用いることができる。金属粒子やカーボン粒子は、ナノ粒子やナノワイヤーの形態で機能液中に分散される。
【0080】
図12は、塗布工程S20cにおける機能液の塗布状態を示す模式図である。同図(a)に示すように、本実施形態では、液滴吐出装置IJを用いて、機能液を液滴Dとして吐出し、第1層60a上に機能液を塗布する。具体的には、ステージ1007と液滴吐出ヘッド1001を相対的に移動させつつ、液滴吐出ヘッド1001を吐出駆動させることにより、液滴Dを吐出させ、液滴Dを第1層60a上に付着させる。このとき、第1層60aの配線幅、或いは、第1層60aの表面状態を考慮して、液滴Dの液滴量を適宜設定する。なお、基材1’に対する機能液の接触角は、図10に示したように、ガラス基板1の、機能液(液滴D)に対する接触角θは、概ね40°以上である。一方、第1層60aの、機能液(液滴D)に対する接触角θは、概ね30°以下である。水に対する接触角と同様に、機能液に対しても、表面処理工程S20bにより、撥水力の強い領域(ガラス基板1の表面領域)と撥水力の弱い領域(第1層60aの表面領域)とのコントラスが保持される。
【0081】
同図(b)は、液滴Dが第1層60a上に着弾された液滴ドットDaの状態を平面視した模式図である。液滴吐出ヘッド1001から吐出された液滴Dは、第1層60a上に着弾され、着弾した液滴ドットDaは、第1層60a上で濡れ広がる。また、塗布工程S20cでは、第1層60a上に塗布された液滴ドットDaが、隣接する他の液滴ドットDaと接触するように、液滴Dを複数回に渡って吐出する。液滴ドットDaは、同図(b)に示すように、隣接する液滴ドットDa同士が数珠状に連なり、第1層60a上に塗布された液体状態の液面が平面視において凸凹形状を有する。なお、塗布された液滴ドットDaは、第1層60a上において濡れ広がるが、ガラス基板1の表面にまでは濡れ広がらない。ガラス基板1の表面は、撥水化処理されているため、第1層60aとの境界部分において液滴ドットDaの濡れ広がりが規制されるからである。
【0082】
次に、放置工程S20dでは、機能液が塗布された基材1’を放置する。例えば、常温で1〜10分程度放置する。図12(c)は、放置後の液体状態を示す模式図である。同図(c)に示すように、第1層60a上に塗布された機能液は、第1層60aのパターン形状に倣った液体状態となる。すなわち、同図12(b)に示す凹凸形状を有する液状態から、第1層60aのパターン形状に倣った液体状態に変化する。本実施形態では、第1層60aの直線的なパターン形状に倣った液体状態に変化する。これは、同図12(b)に示す凹凸形状を有する液体状態において、液滴ドットDa同士が接続される凹部は、第1層60aの表面が弱撥水化(親液化)されているため、第1層60aの配線幅方向に濡れ広がる。一方、凸部は、ガラス基板1の表面が強撥水化処理されているため、第1層60aとガラス基板1との境界部分で機能液がはじかれ、はじかれた機能液は第1層60a側に移動する。こうして放置することにより、機能液が自己整合的に移動して、第1層60aのパターン形状に倣った液体状態を形成する。なお、本放置工程S20dは、第1層60a上に塗布された機能液の自己整合的移動時間を考慮したのであるため、例えば、素早く自己整合的移動が完了する場合等では、省略することも可能である。
【0083】
次に、固化工程S20eでは、塗布された機能液を固化して、第2層60bを形成する。例えば、基材1’を230℃、1時間で加熱し、焼成する。これにより、図8(b)に示すように、第1層60a上に低抵抗の第2層60bが形成され、2層構造の引き回し配線60が形成される。
【0084】
次に、絶縁膜形成工程S30及びブリッジ配線形成工程S40が順次実行される。絶縁膜形成工程S30では、液滴吐出装置IJによって、図8(c)に示すように、X電極10のブリッジ配線11を埋めるように島状電極部12,22の間の隙間に液滴を選択的に配置する。このとき、交差部Kにおいては、図8(c)に示すように、島状電極部22が隔壁として絶縁膜30のY軸方向の両端部を区画して絶縁膜30の輪郭形状を規定することになる(本実施形態では、Y軸方向のみならず、他の方向についても絶縁膜30の輪郭形状を規定している)。その後、ガラス基板1上の液体材料を加熱し、乾燥固化することで、ブリッジ配線11上を含んで絶縁膜30が形成される。
【0085】
なお、絶縁膜30を形成するに際しては、少なくともブリッジ配線11上の領域において液滴を隙間無く配置することが好ましい。これにより、ブリッジ配線11に達する孔やクラックのない絶縁膜30を形成することができ、絶縁膜30における絶縁不良やブリッジ配線21の断線が防止される。
【0086】
このとき、交差部Kにおける絶縁膜30は、隔壁としての島状電極部22と接していることから表面張力が作用し、両端側が盛り上がる、所謂滲み上がりが抑制された状態で島状電極部22の上面と略面一に成膜される。
【0087】
続いて、図8(c)に示すように、引き回し配線60上の領域に対しても液滴を選択的に配置する。その後、ガラス基板1上の液体材料を加熱し、乾燥固化することで、引き回し配線60を覆う配線保護膜62が形成される。上記液体材料としては、例えば、ポリシロキサンを含む液体材料や、アクリル系樹脂、又はアクリルモノマーを含む液体材料を用いることができる。
【0088】
次に、ブリッジ配線形成工程S40に移行する。ブリッジ配線形成工程S40では、図8(d)に示すように、隣り合って配置された島状電極部22上と絶縁膜30上とにわたって、ITO粒子を含む液体材料の液滴を配線形状に配置する。その後、ガラス基板1上の液体材料を乾燥固化する。これにより、島状電極部22同士を接続するブリッジ配線21が形成される。ブリッジ配線21の形成時には、上述したように、下地となる交差部Kの絶縁膜30が隔壁(島状電極部22)により輪郭が区画されることで略面一となっているため、ブリッジ配線21は、下地に滲み上がりが生じている場合のように屈曲することなく、直線状に形成される。なお、ブリッジ配線21の形成に用いる液体材料としては、上記したITO粒子を含む液体材料のほか、IZO(登録商標)粒子や、ZnO粒子を含む液体材料を用いて形成することもできる。
【0089】
ブリッジ配線形成工程S40では、電極成膜工程S10と同一の液体材料を用いてブリッジ配線21を形成することが好ましい。すなわち、ブリッジ配線21の構成材料には、X電極10や島状電極部22の構成材料と同一の材料を用いることが好ましい。
【0090】
次に、平坦化膜形成工程S50に移行する。平坦化膜形成工程S50では、図9(a)に示すように、ガラス基板1の機能面1aを平坦化させる目的で、絶縁材料からなる平坦化膜40を機能面1aのほぼ全面に形成する。平坦化膜40は、絶縁膜形成工程S30で用いた絶縁膜30形成用の液体材料と同様の液体材料を用いて形成することができるが、ガラス基板1表面の平坦化を目的としているため、樹脂材料を用いて形成することが好ましい。
【0091】
次に、保護基板接合工程S60に移行する。保護基板接合工程S60では、図9(b)に示すように、別途用意した保護基板50と平坦化膜40との間に接着剤を配置し、かかる接着剤からなる接着層51を介して保護基板50と平坦化膜40とを貼り合わせる。保護基板50は、ガラスやプラスチック等からなる透明基板のほか、偏光板や位相差板などの光学素子基板であってもよい。接着層51を構成する接着剤としては、透明な樹脂材料などを用いることができる。
【0092】
次に、シールド層形成工程S70に移行する。シールド層形成工程S70では、図9(c)に示すように、ガラス基板1の裏面1b(機能面1aとは反対側の面)に導電膜で構成されたシールド層70を形成する。シールド層70は、真空成膜法、スクリーン印刷法、オフセット法、液滴吐出法などの公知の成膜法を用いて形成することができる。例えばシールド層70を液滴吐出法などの印刷法を用いて形成する場合には、電極成膜工程S10、及びブリッジ配線形成工程S40で使用されるITO粒子等を含む液体材料を用いることができる。また、ガラス基板1に対する成膜によりシールド層70を形成する方法のほかにも、一面又は両面に導電膜が成膜されたフィルムを別途用意し、かかるフィルムをガラス基板1の裏面1bに貼り合わせることでフィルム上の導電膜をシールド層70としてもよい。
【0093】
なお、本実施形態では、シールド層70をタッチパネル製造工程の最後に実施することとしているが、シールド層70は任意のタイミングで形成することができる。例えば、予めシールド層70が形成されたガラス基板1を電極成膜工程S10以降の工程に供することもできる。また、電極成膜工程S10〜保護基板接合工程S60までの任意の工程の間にシールド層形成工程を配してもよい。
【0094】
また、本実施形態においては、ガラス基板1の裏面1bにシールド層70を形成しているが、ガラス基板1の機能面1a側にシールド層70Aを形成する場合には、電極成膜工程S10に先立って、シールド層70Aを形成する工程と、絶縁膜80Aを形成する工程とを実行する。この場合にも、シールド層70Aは、シールド層形成工程S70と同様の手法によって形成することができる。また、絶縁膜80Aの形成工程は、例えば絶縁膜形成工程S30と同様とすることができる。
【0095】
(電気光学装置の構成)
次に、電気光学装置の構成について説明する。なお、本実施形態では、電気光学装置としての液晶表示装置であり、上記のタッチパネルを備えた液晶表示装置の構成について説明する。図13は、液晶表示装置の構成を示し、同図(a)は、平面図であり、同図(b)は、(a)の平面図におけるH−H’断面図である。
【0096】
図13(a)に示すように、液晶表示装置500は、素子基板410、対向基板420、及び画像表示領域410aを有している。素子基板410は対向基板420に比して広い平面領域を有した矩形状の基板である。対向基板420は液晶表示装置500における画像表示側であり、ガラスやアクリル樹脂などで形成された透明な基板である。対向基板420は、シール材452を介して素子基板410の中央部に接合されている。画像表示領域410aは、対向基板420の平面領域であって、シール材452の内周に沿って設けられた周辺見切り453の内側領域である。
【0097】
素子基板410における対向基板420の周辺には、データ線駆動回路401、走査線駆動回路404、データ線駆動回路401及び走査線駆動回路404と接続された接続端子402、及び対向基板420に対して対向して配置された走査線駆動回路404同士を接続する配線405などが配置されている。
【0098】
次に、液晶表示装置500の断面について説明する。素子基板410の液晶層450側の面には、画素電極409及び配向膜418などが積層されている。対向基板420の液晶層450側の面には、遮光膜(ブラックマトリクス)423、カラーフィルター422、共通電極425、及び配向膜429などが積層されている。液晶層450が、素子基板410及び対向基板420によって挟持されている。そして、対向基板420の外側(液晶層450反対側)の面には、接着層101を挟んで本発明のタッチパネル100が配置されている。
【0099】
(電子機器の構成)
次に、電子機器の構成について説明する。なお、本実施形態では、電子機器としてのモバイル型パーソナルコンピューターであり、上記のタッチパネル又はタッチパネルを備えた液晶表示装置を搭載したモバイル型パーソナルコンピューターの構成について説明する。図14は、モバイル型パーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。モバイル型パーソナルコンピューター1100は、表示部1101と、キーボード1102を有する本体部1103とを備えている。モバイル型パーソナルコンピューター1100は、上記実施形態の液晶表示装置500を表示部1101に備えている。このような構成を備えたモバイル型パーソナルコンピューター1100によれば、本発明のタッチパネルが表示部に用いられているので、製造コストを抑えた電子機器とすることができる。
【0100】
なお、上記の電子機器は、本発明の電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)などの表示部にも本発明に係るタッチパネルを好適に用いることができる。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0102】
従って、上記の実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0103】
(1)ヘキサメチルジシラザン910を用いて、ガラス基板1上に第1層60aが形成された基材1’の表面処理を行った。そうすると、ヘキサメチルジシラザン910とガラス基板1の表面の水分とが反応し、ガラス基板1の表面がトリメチルシリル化される。すなわち、ガラス基板1の表面が撥水化処理される。一方、第1層60aの表面との反応は遅いため、撥水力は弱い。すなわち、第1層60aの表面は、親水力が保持される。従って、上記表面処理を行うことにより、同時期に、かつ、選択的に撥水化領域と親水化領域を形成することができる。これにより、製造工程を簡略化させることができる。
【0104】
(2)第1層60a上に向けて、第2層60bの材料が分散された水系分散媒を含む機能液を液滴として吐出し、第1層60a上に機能液を塗布させた。第1層60aの表面は、弱撥水性(親水性)を有するため、塗布された機能液は、第1層60a上に濡れ広がる。一方、ガラス基板1の表面は、撥水性を有するため、機能液のガラス基板1側への濡れ広がりが規制される。従って、第1層60aのパターン形状に倣って、機能液を濡れ広がらせることができる。そして、機能液を固化させることにより、第1層60a上に、第1層60aのパターン形状に倣った形状の第2層60bを形成することができる。
【0105】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0106】
(変形例1)上記実施形態では、パターン膜形成部材としてタッチパネルを例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば、他に、プラズマディスプレイ等に適用してもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。また、上記実施形態では、第1層60aはITO等の透明導電材料を用いて導電膜を形成したが、これに限定されず、他の金属材料を用いて導電膜を形成してもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
(変形例2)上記実施例のガラス基板1としては、表面にガラス質材料層を有するものであればよく、ガラス質材料層で形成されたフィルム状態の基板や、透明樹脂などで形成された透明材料の表面にガラス質材料層がコーティング等で形成された基板であってもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0107】
1…ガラス基板、1’…基材、60…引き回し配線、60a…導電膜としての第1層、60b…金属膜としての第2層、100…パターン膜形成部材としてのタッチパネル、500…電気光学装置としての液晶表示装置、900…表面処理装置、910…表面処理剤としてのヘキサメチルジシラザン、920…皿容器、930…収容容器、1001…液滴吐出ヘッド、1100…電子機器としてのモバイル型パーソナルコンピューター、IJ…液滴吐出装置、D…液滴、Da…液滴ドット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス質材料層上の一部に導電膜が形成された基材のうち、前記ガラス質材料層の表面に撥水化処理を施すとともに、前記導電膜の表面に、前記ガラス質材料層における撥水力よりも弱い撥水化処理を施す表面処理工程と、
前記導電膜上に、金属膜の材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する塗布工程と、
塗布された前記機能液を固化して、前記導電膜上に前記金属膜を形成する固化工程と、を含むことを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
シラン化合物を含む表面処理剤を用いることを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を用いることを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
前記基材と前記ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を密閉された環境下に放置し、
前記ヘキサメチルジシラザンを常温で気化させたガス雰囲気内において、前記基材を3〜15分間曝露することを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
前記ガラス質材料層の表面の、水に対する接触角が50°以上となる撥水化処理を施し、
前記導電膜の表面の、水に対する接触角が25°以下となる撥水化処理を施すことを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
前記ガラス質材料層の表面の、前記機能液に対する接触角が40°以上となる撥水化処理を施し、
前記導電膜の表面の、前記機能液に対する接触角が30°以下となる撥水化処理を施すことを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記塗布工程では、
前記機能液を液滴として吐出して、前記導電膜上に前記機能液を塗布することを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記塗布工程では、
前記導電膜上に塗布された液滴ドットが、隣接する他の液滴ドットと接触するように、前記機能液を塗布することを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記塗布工程と前記固化工程との間に、
前記機能液が塗布された前記基材を放置する放置工程を有することを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法により製造されたことを特徴とするパターン膜形成部材。
【請求項11】
請求項10に記載のパターン膜形成部材を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
ガラス質材料層上の一部に導電膜が形成された基材のうち、前記ガラス質材料層の表面に撥水化処理を施すとともに、前記導電膜の表面に、前記ガラス質材料層における撥水力よりも弱い撥水化処理を施す表面処理工程と、
前記導電膜上に、金属膜の材料となる金属粒子が分散された水系分散媒を含む機能液を塗布する塗布工程と、
塗布された前記機能液を固化して、前記導電膜上に前記金属膜を形成する固化工程と、を含むことを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
シラン化合物を含む表面処理剤を用いることを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を用いることを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
前記基材と前記ヘキサメチルジシラザンを含む表面処理剤を密閉された環境下に放置し、
前記ヘキサメチルジシラザンを常温で気化させたガス雰囲気内において、前記基材を3〜15分間曝露することを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
前記ガラス質材料層の表面の、水に対する接触角が50°以上となる撥水化処理を施し、
前記導電膜の表面の、水に対する接触角が25°以下となる撥水化処理を施すことを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記表面処理工程では、
前記ガラス質材料層の表面の、前記機能液に対する接触角が40°以上となる撥水化処理を施し、
前記導電膜の表面の、前記機能液に対する接触角が30°以下となる撥水化処理を施すことを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記塗布工程では、
前記機能液を液滴として吐出して、前記導電膜上に前記機能液を塗布することを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記塗布工程では、
前記導電膜上に塗布された液滴ドットが、隣接する他の液滴ドットと接触するように、前記機能液を塗布することを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記塗布工程と前記固化工程との間に、
前記機能液が塗布された前記基材を放置する放置工程を有することを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法により製造されたことを特徴とするパターン膜形成部材。
【請求項11】
請求項10に記載のパターン膜形成部材を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−18885(P2011−18885A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112888(P2010−112888)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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