説明

パチョリ着香剤

本発明は、式(I)
【化1】


(式中、特に、Rはそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R及びRはメチル基又はエチル基を表し、そしてRは水素原子又は低級アシル基を表す)のパーヒドロ−1−ナフタレノールのいくつかの誘導体の芳香成分としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は香料の分野に関する。更に詳細には、本発明は更に以下に規定されたいくつかのパーヒドロ−1−ナフタレンオールの誘導体及びパチョリ調の香りを付与する香料における該誘導体の使用に関する。本発明はまた当該化合物を含有する組成物又は物品にも関する。
【0002】
従来技術
本発明者らの知る限り、本発明の化合物は全く知られていない。
【0003】
類似の構造を有する、一部の不飽和アルコール又はケトンは、香料における有用な成分として知られている(欧州特許第1605035号、及び以下の詳述を参照のこと)。しかしながら、先行技術のどこにも、目下の飽和アルコール/エステルが芳香成分として使用され得ること、特にそれらの特定のフレグランスを付与することは示唆又は予期されていない。
【0004】
発明の説明
本発明者らは驚くことにここで、式
【化1】

(式中、Rはそれぞれ、同時に又は独立して、水素原子又はメチル基を表し;
はメチル基又はエチル基を表し;
は水素原子又はホルミル基又はアセチル基を表し;そして
はC1−3アルキル基を表す)の化合物を、それらのいずれか1つの立体異性体又はそれらの混合物の形で;
例えば、特にパチョリ及び/又はアンバリー(ambery)を内包する、ウッディ調の香りを与えるための芳香成分として使用できることを発見した。
【0005】
本発明の特定の態様によれば、式(I)の当該化合物は、式
【化2】

(式中、Rはそれぞれ、同時に又は独立して、水素原子又はメチル基を表し;
は水素原子又はメチル基を表し;そして
は水素原子又はメチル基又はエチル基を表す)の、即ち、6位又は7位にR基を有する化合物である。
【0006】
本発明の別の特定の態様によれば、式(I)の当該化合物は、式
【化3】

(式中、R、R及びRは、同時に又は独立して、水素原子又はメチル基を表す)の化合物である。
【0007】
特に当該式(III)の場合、R、R及びRが全て水素原子である化合物又はRがメチル基であり且つR及びRの1つが水素原子及び他のメチル基である化合物を挙げることができる。
【0008】
本発明の化合物の中では、調香師に最も評価される化合物の1つである、パーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノールを挙げることができる。この化合物は、強いパチョリの特性を備えたウッディ調の香りをもつ。事実、この化合物の嗅覚ノートはパチョリ油のノートと同じ系統に属し且つパチョリ油のノートに近く、合成パチョリにおいて公知成分2,6,10,10−テトラメチル−1−オキサスピロール[4.5]デカン−6−オールの代わりとして使用できる。これら全てのフレグランスは、ルーティ(rooty)及びアンバリーの特性をもつパチョリ調のフレグランスであると記載できる。
【0009】
他の式(I)の化合物もまた、それらの香りと共に以下の表(I)に記載されている:
【表1】

【0010】
これらの化合物の香りは、先行技術の化合物の特性である、顕著な、シトラス−グレープフルーツノート及び/又はシーダー、革、オゾン及び/又はアガーウッドノートを欠くこと又はそれらをもたないことによって先行技術の構造類似体の香り(及び特に欧州特許第1605035号に開示された香り)とは区別される。当該の差異は、本発明の化合物及び先行技術の化合物がそれぞれ異なる使用に適すために、即ち、異なる感覚刺激的な印象を与えるために役立つ。
【0011】
例えば、パーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノールは、当該先行技術の化合物の典型的なグレープフルーツノートがないことからパーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノン、即ち、欧州特許第1605035号に開示された構造的に最も近い類似体とは異なる。同様に、パーヒドロ−4,6,8,8a−テトラメチル−1−ナフタレノールは、シトラス−グレープフルーツがないことから先行技術の化合物とは区別される。
【0012】
上述のように、本発明は式(I)の化合物の芳香成分としての使用に関し、特にウッディ−パチョリ及び/又はアンバリー調の香りを付与することに関する。換言すれば、本発明は芳香組成物の又は着香物品の香気性を付与、強化、改良又は改質する方法であって、当該化合物又は物品に有効量の少なくとも1種の式(I)の化合物を添加することを含む方法に関する。「式(I)の化合物の使用」とは、本明細書中では、これも化合物(I)を含有する任意の組成物の使用であると解されるべきであり、該組成物は活性成分として香料産業で有利に利用できる。
【0013】
当該化合物は、事実、芳香成分として有利に利用でき、本発明の対象でもある。
【0014】
従って、本発明の別の対象は、芳香組成物であって:
i)芳香成分として、上記で規定された少なくとも1種の本発明の化合物;
ii)香料担体及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分;及び
iii)任意に少なくとも1種の香料アジュバント
を含む芳香組成物である。
【0015】
「香料担体」とは、本明細書中では、香料の点から見ると実質的にニュートラルな材料、即ち芳香成分の感覚刺激的な特性を有意に変えない材料を意味する。当該担体は、液体又は固体であってよい。
【0016】
液体担体としては、乳化システム、即ち、溶媒と界面活性剤のシステム、又は通常香料に使用される溶媒が非限定の例として挙げられる。通常香料に使用される溶媒の特性及び種類の詳細な説明は網羅され得ない。しかしながら、通常最も使用される、ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノール又はエチルシトレートなどの溶媒が非限定の例として挙げられる。
【0017】
固体担体としては、吸着ガム又はポリマー、又は更に封入材料が、非限定の例として挙げられる。かかる材料の例は、壁形成材料及び可塑化材料、例えば、モノ、ジ−又はトリサッカリド、天然又は改質スターチ、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、プロテイン又はペクチン、又は更に参考テキスト、例えばH. Scherz, Hydrokolloids: Stabilisatoren, Dickungs- und Gehermittel in Lebensmittel, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr's VerlagGmbH & Co., Hamburg, 1996に引用された材料を含み得る。カプセル化は当業者に公知の方法であり、例えば、噴霧乾燥、アグロメレーション又は更に押出し成形などの技術を使用して行われ得るか;あるいはコアセルベーション及び複合コアセルベーション技術を含む、コーティングカプセル化からなる。
【0018】
一般に、「香料ベース」とは、本明細書中では、少なくとも1種の芳香共成分を含む組成物を意味する。
【0019】
当該芳香共成分は式(I)のものではない。更に、「芳香共成分」とは、本明細書中では、快楽効果を与えるために芳香調製物又は組成物中に使用される化合物を意味する。換言すれば、芳香成分であると考えられるが、このような共成分は、当業者によって、単に香りを有するだけでなく、プラスに又は快適に組成物の香りを付与するか又は改質することができるものと解されなければならない。
【0020】
ベース中に存在する芳香共成分の特性と種類は、本発明の更なる詳細な説明を保証するものでなく、いずれの場合にも網羅されないであろうが、当業者は一般的な知見を基にして且つ意図される使用又は用途及び所望の感覚刺激的な効果に応じてそれらを選択することが可能である。一般的には、これらの芳香共成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、窒素又は硫黄複素環化合物及び精油のような種々の化学的種類に属し、当該芳香共成分は天然又は合成の源の成分であってよい。これらの共成分の多くは、いずれの場合も、例えば、S. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA又はその最新版のような参考教本中に、又は類似のその他の論文中に、並びに香料分野の多数の特許文献中に列挙されている。当該共成分はまた、様々な種類の芳香化合物を制御された方式で放出することで知られた化合物でもあり得ることも理解されている。
【0021】
香料担体及び香料ベースの両方を含む組成物の場合、前述の担体以外の他の好適な香料担体は更に、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン又は他のテルペン類、イソパラフィン類、例えば、アイソパー(Isopar)(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)の商標名で知られたもの又はグリコールエーテル及びグリコールエーテルエステル、例えば、ドワノール(Dowanol)(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)の商標名で知られたものである。
【0022】
一般に、「香料アジュバント」とは、本明細書中では追加の付加的な利益、例えば、色、特に耐光性、化学安定性等を付与することが可能な成分を意味する。芳香ベースに通常使用されるアジュバントの特性と種類の詳細な説明は網羅され得ないが、当該成分が当業者に公知であることは言及されなければならない。
【0023】
少なくとも1種の式(I)の化合物と少なくとも1種の香料担体からなる本発明の組成物は、少なくとも1種の式(I)の化合物、少なくとも1種の香料担体、少なくとも1種の香料ベース、及び任意に少なくとも1種の香料アジュバントを含む芳香組成物と同様に本発明の特定の実施態様である。
【0024】
ここで、上述の組成物中に2種以上の式(I)の化合物を有し得ることが重要であると言及することは有用である。それによって、調香師が、本発明の種々の化合物の香調を有するアコード(accord)又は香水を製造することができ、従って調香師の仕事に新しい道具を創り出すことができるからである。
【0025】
有利には、例えば適切な精製なくして化学合成から直接得られた任意の混合物(本発明の化合物は出発物質、中間生成物又は最終生成物として含まれる)は本発明による芳香組成物と見なされない。
【0026】
更に、当該化合物(I)が添加される消費者製品の香りをプラスに付与又は改質するために、本発明の化合物もまた、現代の全ての香料分野において有利に使用できる。結果的に、着香物品であって:
i)芳香成分として、上述の少なくとも1種の式(I)の化合物、又は本発明の芳香組成物;及び
ii)消費者製品ベース;
を含む着香物品もまた本発明の対象である。
【0027】
明確にするために、「消費者製品ベース」とは、本明細書中では、芳香成分と相溶性のある消費者製品を意味することは言及されなければならない。換言すれば、本発明による着香物品は、機能的配合剤並びに例えば洗剤又は空気清浄剤などの消費者製品に相当する任意に追加された有益物質、及び嗅覚的に有効量の少なくとも1種の本発明の化合物を含む。
【0028】
消費者製品の成分の特性と種類は、本発明の更なる詳細な説明を保証するものでなく、いずれの場合にも網羅されないであろうが、当業者は一般的な知見を基にして且つ当該製品の特性及び所望の効果に応じてそれらを選択することが可能である。
【0029】
好適な消費者製品ベースの例として、固体又は液体の洗剤及び織物柔軟剤並びに香料において一般的な他の全ての物品、即ち香水、コロン又はアフターシェーブローション、着香石けん、シャワーソルト又はバスソルト、ムース、オイル又はジェル、衛生製品又はヘアケア製品、例えば、シャンプー、ボディケア製品、消臭剤又は発汗抑制剤、空気清浄剤及び更に化粧品が挙げられる。洗剤として、これらが家庭用又は工業用であろうと、例えば、織物、皿又は硬質表面の処理を目的とした、種々の表面を洗浄又は清浄化するための洗剤組成物又は清浄化製品などへの適用が意図されている。他の着香物品は、ファブリックリフレッシュナー、アイロン掛け用の水(ironing waters)、紙、ワイプ(wipes)又は漂白剤である。
【0030】
一部の上述の消費者製品ベースは、本発明の化合物に対して攻撃的な媒体であり得るので、例えば、カプセル化によって早期の分解から該化合物を保護することが必要な場合がある。
【0031】
本発明による化合物を種々の前述の物品又は組成物中に組み込める割合は、広い数値範囲内で変化する。これらの値は、本発明による化合物が当該技術分野で通常使用される芳香共成分、溶媒又は添加剤と混合される時に、着香物品の特性及び所望の感覚刺激的な効果並びに所与のベース中の共成分の特性に依存する。
【0032】
例えば、芳香組成物の場合、本発明の化合物の典型的な濃度は、化合物が組み込まれた組成物の質量を基準として0.001〜15質量%のオーダー、又は更に大きいオーダーである。これらの化合物を着香物品中に組み込む場合は、これよりも低い濃度、例えば、0.01質量%〜10質量%のオーダーで使用できる。パーセンテージは該物品の質量を基準とする。
【0033】
本発明の化合物は、欧州特許第1605035号に記載された、対応する不飽和アルコールの、又は対応するケトンの水素化/還元によって製造できる。本発明の化合物を製造するための係る方法の典型的な例は以下に示される。
【0034】
本発明は、ここで次の実施例により更に詳細に記載される。その際、略符号は当業界での通常の意味を有する。温度は摂氏度(℃)で示され;NMRスペクトルデータは(別記しない限り)CDCl中でH及び13Cについて360MHz又は400MHzの機械で記録され、化学シフトδは標準としてのTMSに対してppmで示され、結合定数JはHzで表わされる。NMRスペクトルは別記しない限り異性体の混合物の場合である。
【0035】
実施例1
α−ダマスコンのアルドール誘導体を出発材料として使用することによる式(I)の化合物の合成
一般的な手順:
I)ディールス−アルダーカップリングの一般的な手順
AlEtCl、又はAlCl、0.1gのBHT及びトルエン、又はCHClを500mlの反応器に導入した。次に、激しく攪拌しながら、30℃未満に温度を維持するように適切なシクロヘキセノンを滴下した。その後ジエンを滴下し、反応の終了時に反応混合物を5%のHCl水溶液で加水分解し、EtOで2回抽出した。次に有機層を飽和NaHCO水溶液、水、ブラインで洗い、次いでNaSOで乾燥させた。溶媒の蒸発、クロマトグラフィ(SiO、溶出ヘプタン/AcOEt 98:2)及び蒸留によって最終生成物が得られた。
【0036】
II)ケトンのアルコール中での還元の一般的な手順
Ar雰囲気下に維持された100mlのフラスコ中に、ケトンに対して2モル当量のEtO中のLiAlHを導入した。次に、還流を維持するように、適切なナフタレノンを滴下した。反応の完了後に混合物を還流で30分間攪拌した。その後、反応混合物を化学量論量のNaOH水溶液で加水分解し有機層をNaSOで乾燥させた。溶媒の蒸発と蒸留によって最終生成物が得られた。
【0037】
III)ナフタレノンのパーヒドロナフタレノン中での加水分解の一般的な手順
適切なナフタレノン、エチルアセテート、及びナフタレノンに対して10%w/wのPd/C(5%)を100mlのフラスコに導入した。次に室温においてH下で、理論量の水素が消費されるまで混合物を攪拌した。その後、反応混合物をナイロン6/6で濾過した。溶媒の蒸発と蒸留によって最終生成物が得られた。
【0038】
IV)アルコールのエステル化の一般的な手順
適切なアルコール、CHCl、ジメチルアミノピリジン、ピリジン及び適切な無水カルボン酸を250mlのフラスコに導入した。次に混合物を24時間室温で攪拌した。反応の完了時に反応混合物を5%のHCl水溶液で加水分解し、EtOで2回抽出した。次に有機層をCuSO水溶液、飽和NaHCO水溶液、水、ブラインで洗い、次いでNaSOで乾燥させた。溶媒の蒸発によって最終生成物が得られた。
【0039】
パーヒドロ−4,6,8a−トリメチル−1−ナフタレノール
段階1:4,6,8a−トリメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順#Iに従い製造した:
2,4−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン(40g、0.32ミリモル)、アルミニウムトリクロリド(10.7g、0.08ミリモル)、イソプレン(326g、4.8モル)、トルエン(500ml)
化合物は異性体の混合物(87/4/9)として83%の収率で得られた。
B.p.=78℃/0.003ミリバール
13C−NMR(主な異性体):215.68;130.73;117.13;47.83;46.86;37.29;35.02;32.14;29.76;28.82;23.84;20.15;20.04。
H−NMR(主な異性体):0.93(d,J=7Hz,3H);1.07(s,3H);1.27−1.43(m,2H);1.60−1.86(m,2H);1.68(ブロード s,3H);1.92−2.15(m,3H);2.22−2.45(m,2H);2.70−2.80(m,1H);5.32(ブロード s,1H)。
【0040】
段階2:パーヒドロ−4,6,8a−トリメチル−1−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順#IIIに従い製造した:
段階1で得られたナフタレノン(10g;0.052モル)、5%Pd−C(1g)、EtOAc(200ml)、H(1.16l)
生成物は異性体の混合物(4/16/80)として98%の収率で得られた。
B.p.=85℃/0.017ミリバール
H−NMR:0.81−0.98(m,6H);1.12−1.78(m,11H);1.85−2.30(m,4H);2.52−2.72(m,1H)。
【0041】
段階3:パーヒドロ−4,6,8a−トリメチル−1−ナフタレノール
次の数量を用いて、一般的な手順#IIに従い製造した:
段階2で得られたナフタレノン(4.0g;0.0206モル)、水素化アルミニウムリチウム(0.39g;0.0103モル)、エーテル(40ml)
表題の化合物は異性体の混合物(8/67/6/15)として91%の収率で得られた。
B.p.=79℃/0.004ミリバール
H−NMR:0.80−0.92(m;7H);0.94−1.15(m,6H);1.20−2.05(m,10H);3.22−3.56(m,1H)。
【0042】
パーヒドロ−4,6,8a−トリメチル−1−ナフタレニルアセテート
次の数量を用いて、一般的な手順IVに従い表題の化合物が得られた:
パーヒドロ−4,6,8a−トリメチル−1−ナフタレノール(1.8g、0.0094モル)、無水酢酸(1.43g、0.014モル)、ピリジン(1.26g、0.016モル)、ジメチルアミノピリジン(0.11g、0.54ミリモル)、ジクロロメタン(20ml)。
表題の化合物は異性体の混合物(10/70/15)として72%の収率で得られた。
B.p.=72℃/0.004ミリバール
H−NMR:0.80−1.18(m,12H);1.20−1.90(m,10H);2.00−2.07(m,3H);4.57(m,1H)
【0043】
パーヒドロ−4,6,8a−トリメチル−1−ナフタレニルホルメート
次の数量を用いて、一般的な手順IVに従い製造した:
55℃で2時間一緒に加熱したパーヒドロ−4,6,8a−トリメチル−1−ナフタレノール(2.0g、0.01モル)、無水酢酸(3.06g、0.03モル)、及びギ酸(1.66g、0.036モル)、ジクロロメタン(20ml)
表題の化合物は異性体の混合物(15/56/8/3/18)として93%の収率で得られた。
B.p.=64℃/0.002ミリバール
H−NMR:0.80−1.20(m,11H);1.23−2.10(m,11H);4.65−4.72(m,1H);8.09(m,1H)。
【0044】
パーヒドロ−4,6,8,8a−テトラメチル−1−ナフタレノール
段階1:4,6,8,8a−テトラメチル−3,4,44,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順#Iに従い製造した:
2,4−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン(7.25g、0.0585モル)、エチルアルミニウムジクロリド(ヘキサン中の1モルの溶液、29.2ml、0.0292モル)、メチルペンタジエン(70%の化学純度、16.7g、0.117モル)、ジクロロメタン(150ml)
化合物は異性体の混合物(89/11)として90%の収率で得られた。
B.p.=85℃/0.065ミリバール
H−NMR:0.72−1.02(m,6H);1.15−1.47(m,4H);1.58−2.78(m,11H);5.08−5.38(m,1H)。
【0045】
段階2:パーヒドロ−4,6,8,8a−テトラメチル−1−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順#IIIに従い製造した:
段階1で得られた不飽和ケトン(4.5g、0.022モル)、5%Pd−C(0.45g)、EtOAc(40ml)、H(0.55l)
化合物は異性体の混合物(2/3/63/18/7/3/2/3)として95%の収率で得られた。
B.p.=74℃/0.008ミリバール
H−NMR:0.60−1.10(m,7H);1.10−1.80(m;13H);1.90−2.70(m,4H)。
【0046】
段階3:パーヒドロ−4,6,8,8a−テトラメチル−1−ナフタレノール
次の数量を用いて、一般的な手順#IIIに従い製造した:
段階2で得られたケトン(3.05g;0.0147モル)、水素化アルミニウムリチウム(0.28g、0.0073モル)、ジエチルエーテル(20ml)
表題の化合物は異性体の混合物(4/2/77/10/2/3)として92%の収率で得られた。
B.p.=74℃/0.034ミリバール
H−NMR:0.78−1.10(m,10H);1.12−1.50(m,9H);1.50−2.12(m,6H);3.30−3.80(m,1H)。
【0047】
パーヒドロ−4,6,8,8a−テトラメチル−1−ナフタレニルアセテート
次の数量を用いて、一般的な手順#IVに従い製造した:
パーヒドロ−4,6,8,8a−テトラメチル−1−ナフタレノール(0.90g、0.0043モル)、無水酢酸(0.66g、0.0064モル)、ピリジン(0.58g、0.0073モル)、ジメチルアミノピリジン(0.052g、0.43ミリモル)、ジクロロメタン(20ml)
表題の化合物は異性体の混合物(2/4/53/30/6)として76%の収率で得られた。
B.p.=78℃/0.034ミリバール
H−NMR:0.80−0.98(m,9H);1.90−1.95(m,16H);2.00−2.20(m,3H)。
【0048】
パーヒドロ−4,8a−ジメチル−1−ナフタレノール
段階1:4,8a−ジメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順#Iに従い製造した:
2,4−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン(10.0g、0.081モル)、ブタジエン(8.75g、0.162モル)、エチルアルミニウムジクロリド(1モルのヘキサン溶液、40ml、0.040モル)、ジクロロメタン(100ml)
化合物は異性体の混合物(55/45)として43%の収率で得られた。
B.p.=85℃/1.1ミリバール
H−NMR:0.95(m,3H);1.12−1.45(m,4H);1.60−2.45(m,7H);2.60−2.80(m,2H);5.55−5.68(m,2H)。
【0049】
段階2:パーヒドロ−4,8a−ジメチル−1−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順#IIIに従い製造した:
段階1で得られた不飽和ケトン(3.0g、0.017モル)、5%Pd−C(0.3g)、EtOAc(30ml)、H(0.38l)
化合物は異性体の混合物(44.4/55.6)として89%の収率で得られた。
B.p.=85℃/0.017ミリバール
H−NMR:0.80−0.98(m,4H);1.10−2.00(m,12H);2.07−2.30(m,2H);2.45−2.70(m,2H)。
【0050】
段階3:パーヒドロ−4,8a−ジメチル−1−ナフタレノール
次の数量を用いて、一般的な手順#IIに従い製造した:
段階2で得られたケトン(2.0g、0.011モル)、水素化アルミニウムリチウム(0.21g、0.0055モル)、ジエチルエーテル(20ml)
表題の化合物は異性体の混合物(23/50/26)として83%の収率で得られた。
B.p.=93℃/0.97ミリバール
H−NMR:0.78−1.12(m,8H);1.14−2.08(m,13H);3.22−4.02(m,1H)。
【0051】
パーヒドロ−4−エチル−8a−メチル−1−ナフタレノール
段階1:4−エチル−8a−メチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順#Iに従い製造した:
4−エチル−2−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン(27.6g、0.20モル)、ブタジエン(21.6g、0.040モル)、エチルアルミニウムジクロリド(1モルのヘキサン溶液、100ml、0.10モル)、ジクロロメタン(300ml)
化合物は異性体の混合物(61/39)として42%の収率で得られた。
B.p.=76℃/0.021ミリバール
H−NMR:0.82−0.98(m,3H);1.10−1.45(m,5H);1.55−1.80(m,3H);1.90−2.46(m,5H);2.62−2.77(m,2H);5.52−5.68(m,2H)。
【0052】
段階2:パーヒドロ−4−エチル−8a−メチル−1−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順#IIIに従い製造した:
段階1で得られた不飽和ケトン(5.0g、0.026モル)、5%Pd−C(0.5g)、EtOAc(50ml)、H(0.6l)
化合物は異性体の混合物(40/60)として97%の収率で得られた。
B.p.=84℃/0.048ミリバール
H−NMR:0.82−0.95(m,3H);1.08−1.75(m,14H);1.80−2.36(m,4H);2.52−2.63(m,1H)。
【0053】
段階3:パーヒドロ−4−エチル−8a−メチル−1−ナフタレノール
次の数量を用いて、一般的な手順#IIに従い製造した:
段階2で得られたケトン(3.40g、0.0175モル)、水素化アルミニウムリチウム(0.33g、0.00875モル)、ジエチルエーテル(30ml)
表題の化合物は異性体の混合物(11/21/4/64)として99%の収率で得られた。
B.p.=86℃/0.055ミリバール
H−NMR:0.78−1.10(m,6H);1.12−1.96(m,17H);3.22−4.03(m,1H)。
【0054】
パーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノール
段階1:4−エチル−8,8a−ジメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順Iに従い製造した:
4−エチル−2−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン(20.7g、0.15モル)、ピペリレン(50%の化学純度、40.8g、0.30モル)、エチルアルミニウムジクロリド(1モルのヘキサン溶液、30ml、0.03モル)、ジクロロメタン(200ml)
表題の化合物は異性体の混合物(63/37)として72%の収率で得られた。
B.p.=81℃/0.034ミリバール
H−NMR:0.76−1.30(m,9H);1.42−1.83(m,4H);1.90−2.37(m,6H);2.50−2.77(m,1H);5.37−5.62(m,2H)。
【0055】
段階2:パーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノン
次の数量を用いて、一般的な手順#IIIに従い製造した:
段階1で得られた不飽和ケトン(5.0g、0.025モル)、5%Pd−C(0.5g)、EtOAc(50ml)、H(0.625l)。
表題の化合物は異性体の混合物(42/38/18)として98%の収率で得られた。
B.p.=86℃/0.036ミリバール
H−NMR:0.60−1.20(m,7H);1.20−1.90(m,13H);1.95−2.40(m,3H);2.50−2.70(m,1H)。
【0056】
段階3:パーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノール
次の数量を用いて、一般的な手順#IIに従い製造した:
段階2で得られた出発物質のケトン(3.90g、0.018モル)、水素化アルミニウムリチウム(0.34g、0.009モル)、ジエチルエーテル(30ml)
表題の化合物は異性体の混合物(33/7/40/17)として99%の収率で得られた。
B.p.=90℃/0.032ミリバール
H−NMR:0.78−1.17(m,10H);1.20−2.12(m,15H);3.22−3.82(m,1H)。
【0057】
実施例2
芳香組成物の製造
芳香ベースを次の成分を混合することによって製造した:
【表2】

【0058】
80質量部のパーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノールを上述の芳香組成物へ添加することによって、該組成物にパチョリの特性に非常に近い優れたウッディ特性が付与された。更に樟脳様特性が開発され、これは新たなフレグランスにヘッド−ノートにおける快い新鮮味を付与する。芳香組成物の蒸発時に、本発明の化合物のアンバリーの特性が更に感知できるようになり、従って新たな快適な効果をパチョリの特質に付与する。
【0059】
上述の芳香ベースに同量のパチョリを添加した場合、新たなフレグランスは本発明の化合物を用いて得られたフレグランスよりも土臭くて上品ではなかった。
【0060】
上述の芳香ベースに同量の4−エチル−6,8−ジメチル−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレノール(先行技術からの芳香成分)を添加した場合、ベース香は別のウッディ特性を獲得し、これはベチバー調の特性であった。更にベース香は、フレグランス全体を強く変質させるグレープフルーツ特性(低オリエンタル型)をも獲得した。
【0061】
上述の芳香ベースに同量のパーヒドロ−4−エチル−8−メチル−1−ナフタレノン(先行技術からの芳香成分)を添加した場合、ベース香は、ベチバー(vetyver)系を内包する強力な甘い−粉末状のウッディノートを獲得した。
【0062】
上述の芳香ベースに同量のパーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノン(先行技術からの芳香成分)を添加した場合、ベース香はベチバー及びグレープフルーツの特性を獲得し、パチョリノートは感知できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、Rはそれぞれ、同時に又は独立して、水素原子又はメチル基を表し;
はメチル基又はエチル基を表し;
は水素原子又はホルミル基又はアセチル基を表し;そして
はC1−3アルキル基を表す)の化合物であって、それらのいずれか1つの立体異性体又はそれらの混合物の形であることを特徴とする、化合物。
【請求項2】
前記化合物が、式
【化2】

(式中、Rはそれぞれ、同時に又は独立して、水素原子又はメチル基を表し;
は水素原子又はメチル基を表し;そして
は水素原子又はメチル基又はエチル基を表す)の化合物であることを特徴とする、請求項2記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、式
【化3】

(式中、R、R及びRは、同時に又は独立して、水素原子又はメチル基を表す)の化合物であることを特徴とする、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物がパーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノール、パーヒドロ−4−エチル−8a−メチル−1−ナフタレノール、パーヒドロ−4,8a−ジメチル−1−ナフタレノール、パーヒドロ−4,6,8,8a−テトラメチル−1−ナフタレノール、パーヒドロ−4β,6β,8aβ−トリメチル−4aβH−1α−ナフタレノール、パーヒドロ−4,6,8,8a−テトラメチル−1−ナフタレニルアセテート、パーヒドロ−4β,6β,8aβ−トリメチル−4aαH−1α−ナフタレニルホルメート又はパーヒドロ−4,6,8a−トリメチル−1−ナフタレニルアセテートであることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物がパーヒドロ−4−エチル−8,8a−ジメチル−1−ナフタレノール、パーヒドロ−4−エチル−8a−メチル−1−ナフタレノール、パーヒドロ−4,8a−ジメチル−1−ナフタレノール、パーヒドロ−4,6,8,8a−テトラメチル−1−ナフタレノール、パーヒドロ−4β,6β,8aβ−トリメチル−4aβH−1α−ナフタレノールであることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
組成物の形の芳香成分であって、
i)請求項1から5までのいずれか1項に規定された少なくとも1種の本発明の化合物;
ii)香料担体及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分;及び
iii)任意に少なくとも1種の香料アジュバントを含むことを特徴とする、組成物の形の芳香成分。
【請求項7】
着香物品であって:
i)香料成分として、請求項1から5までのいずれか1項に規定された、少なくとも1種の式(I)の化合物;及び
ii)消費者製品ベース
を含むことを特徴とする、着香物品。
【請求項8】
前記消費者製品ベースが固体又は液体の洗剤、織物柔軟剤、香水、コロン又はアフターシェーブローション、着香石けん、シャワーソルト又はバスソルト、ムース、オイル又はジェル、衛生製品、ヘアケア製品、シャンプー、ボディケア製品、消臭剤又は発汗抑制剤、空気清浄剤、化粧品、ファブリックリフレッシュナー、アイロン掛け用の水、紙、ワイプ又は漂白剤であることを特徴とする、請求項7記載の着香物品。
【請求項9】
請求項1から5までのいずれか1項に規定された、式(I)の化合物の芳香成分としての使用。

【公表番号】特表2009−538291(P2009−538291A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511618(P2009−511618)
【出願日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051654
【国際公開番号】WO2007/135582
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】