説明

パネル取付構造

【課題】組み立て作業が不要なファスナを用いて、2枚のパネルを手早くかつ簡単に接合可能とするパネル取付構造の提供。
【解決手段】取付孔部21を形成した取付パネル2を係止孔部31を形成した本体パネル3にファスナ1により固定させるパネル取付構造において、
該ファスナ1は、中心回転軸11と、該中心回転軸11のパネル挿入方向の先端部に設けた鎖錠片12と、該中心回転軸のパネル挿入方向末端部に設けたファスナ回転操作部13と、該ファスナ1を取付パネル2に挿入後回転して保持する保持機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファスナを用いたパネル取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器収納用キャビネットの多くは、内部機器のメンテナンスを容易にするために、本体パネルに、側面パネル等の取付パネルを着脱可能に取り付ける構造を採用している。
【0003】
本体パネルと取付パネルの2枚のパネルを手早くかつ簡単に接合する手段として、各種のファスナが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、トップ側保持具と、一体成形したノブをもつ貫通ピンと、ゴムスリーブと、端部キャップとから構成された組み立て式ファスナが開示されている。
【0005】
このように、従来のファスナは、何れも複数の部品で構成されるものであり、パネル取り付け作業が煩雑になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−532378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記の問題を解決し、組み立て作業が不要なファスナによって、本体パネルと取付パネルの2枚のパネルを、手早くかつ簡単に接合するパネル取付構造を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパネル取付構造は、取付孔部を形成した取付パネルを係止孔部を形成した本体パネルにファスナにより固定させるパネル取付構造において、該ファスナは、中心回転軸と、該中心回転軸のパネル挿入方向の先端部に設けた鎖錠片と、該中心回転軸のパネル挿入方向末端部に設けたファスナ回転操作部と、該ファスナを取付パネルに挿入後回転して保持する保持機構を備えることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のパネル取付構造において、該保持機構が、該ファスナの中心回転軸に直交して延設された腕部であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2パネル取付構造において、取付パネルまたは本体パネルの何れかに、該ファスナの回転角度を規制する回転規制部を備え、該ファスナに、該回転規制部に当接する係止部を備えることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載のパネル取付構造において、該保持機構として、係止部を兼用することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載のパネル取付構造において、取付孔部の貫通部が、係止孔部の鎖錠片貫通部に対して略45度の角度をなすように形成したことを特徴とするものである。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載のパネル取付構造において、取付孔部は、ファスナの中心回転軸を保持する一対の張出部からなることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1〜4に記載のパネル取付構造において、ファスナは、該係止部が、中心回転軸のファスナ回転操作部側の基端に形成され、該係止部と腕部を軸部を中心に略90度の角度をなして形成したとするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るパネル取付構造では、取付パネルに形成された取付孔部にファスナを挿入後に回転して保持する保持機構と、本体パネルに固定させる鎖錠片をとを備える構造体として一体形成されたファスナを使用することにより、ファスナの部品点数が多いという問題を回避した。また、取付パネルに形成された取付孔部に、該ファスナを挿入後回転して、該ファスナを保持し、該取付パネルの裏面側を本体パネルに当接させて、本体パネルに形成された係止孔部に該ファスナの先端部を挿入後回転して、取付パネルを本体パネルに固定させる構成により、2枚のパネルを手早くかつ簡単に接合可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1におけるファスナと、取付パネルと、本体パネルの全体説明図である。
【図2】実施形態1におけるファスナの全体説明図である。
【図3】実施形態1におけるファスナの側面図である。
【図4】実施形態1における取付孔部の正面図である。
【図5】実施形態1におけるパネル取付構造の説明図である。
【図6】実施形態2におけるファスナの側面図である。
【図7】実施形態2における取付孔部の正面図である。
【図8】実施形態3におけるファスナの側面図である。
【図9】実施形態3における取付孔部の正面図である。
【図10】実施形態4におけるファスナの全体説明図である。
【図11】実施形態4におけるファスナの側面図である。
【図12】実施形態4における取付孔部の正面図である。
【図13】本発明を使用するキャビネットの取付パネル着脱状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
【0018】
(実施形態1)
図1には、本実施形態のファスナ1と、取付パネル2と、本体パネル3の全体説明図を示している。図1に示すファスナ1は、取付パネル2に形成された取付孔部21に挿入後、該ファスナの回転操作によって、該ファスナ1を取付パネル2に保持し、その後、該取り付けパネ2に保持されたファスナ1を、本体パネル3に形成された係止孔部31に挿入後、該ファスナの回転操作によって、本体パネル3と取付パネル2を接合固定するものである。
【0019】
本実施形態のパネル取付構造において、ファスナ1は図13に示すような電気電子機器収納用キャビネット筐体の側面の前後に渡される細長のフレーム形状を有した本体パネル3に、取付パネル2としての側板を固定する場合に使用されるものとして最適なものである。この場合にファスナ1は取付パネル2の端部に設けることが好ましく、対応する位置に取付孔部21及び本体パネル3の係止孔部31を形成しておくものとする。
【0020】
また、本実施形態のパネル取付構造は側板の固定に限定されるものではなく、例えばキャビネット内部のブランクパネル等を取付レール等に固定する場合にも使用できるものである。なお、取付パネル2の素材は特に限定されず、例えば、樹脂(植物性プラスチック)製パネルや金属製パネルを用いることができる。
【0021】
図2には、実施形態1のファスナ1の全体説明図を示し、図3には、ファスナ1の側面図を示している。
【0022】
図2および図3に示すように、本実施形態のファスナ1は、中心回転軸11と、該中心回転軸のパネル挿入方向の先端部に設けた鎖錠片12と、該中心回転軸のパネル挿入方向末端部に設けたファスナ回転操作部13と、中心回転軸11より鎖錠片12と同方向に延出して形成され、該ファスナ1を取付パネル2に固定する保持機構と、該ファスナ1の回転を規制する係止部14とを備えている。
【0023】
ファスナ回転操作部13の表面側には、コインやマイナスドライバで操作可能な溝部13aが形成されている。ファスナ回転操作部13の頭形状は特に限定されず、取付パネル2に形成された取付孔部21を完全に覆うことが可能な形状であればよい。
【0024】
該ファスナ1を取付パネル2に保持する保持機構として、本実施形態では、中心回転軸11に直交して延設された腕部15を形成している。該腕部15のは、該腕部15とファスナ回転操作部13との間に挟み込む取付パネル2の厚みに対応する位置に形成している。また、該腕部15には、取付パネル2を押圧する凸部16をファスナ回転操作部13側に向けて形成している。
【0025】
図4には、取付孔部21の正面図を示している。図4に示すように、取付パネル2のファスナ1取り付け位置には、取付孔部21が形成されている。
【0026】
取付孔部21は、ファスナ1の中心回転軸11を保持する一対の張出部からなる回転軸支持部21aと、鎖錠片12および腕部15が通り抜け可能な貫通部21bと、ファスナ1に形成された係止部14を係止する回転規制部21c、21dと、回転軸支持部21aの張出部にファスナの該腕部15に形成した凸部16が当接する受部21eを有している。回転軸支持部21aの一対の張出部は、中心回転軸11を保持するために細径の孔部を形成している。回転規制部21cは、ファスナ1の回転を反時計方向で規制し、回転規制部21dは、ファスナ1の回転を時計方向で規制し、該ファスナ1の最大回転角度を90度に規制している。
【0027】
本体パネル3のファスナ1取り付け位置には、図1に示すように、係止孔部31が形成されている。係止孔部31は、ファスナの中心回転軸11が通り抜け可能な回転軸貫通部31aと、鎖錠片12が通り抜け可能な鎖錠片貫通部31bを有している。また、本体パネル3の両端には折曲部32を形成し、取付パネル2との間に形成される空間部でファスナ1の腕部15の厚みを吸収する構造としている。
【0028】
なお、鎖錠片12および腕部15が通り抜け可能な取付孔部21の貫通部21bは、ファスナの中心回転軸11が通り抜け可能な係止孔部31の鎖錠片貫通部31bに対して、略45度の角度をなすように形成されている。
【0029】
図5には、本実施形態のパネル取付構造の説明図を示している。本実施形態のパネル取付構造は、取付パネル2に形成された取付孔部21に、取付パネル2の表面側からファスナ1を挿入後反時計方向に回転して、ファスナ1を保持した後、該取付パネル2の裏面側を本体パネル3に当接させて、本体パネル3に形成された係止孔部31に該ファスナ1の先端部を挿入後時計方向に回転して、取付パネル2を本体パネル3に固定させたものである。
【0030】
ファスナ1を取付パネル2に保持するためには、取付パネル2に形成された取付孔部21へのファスナ1の挿入は、ファスナ1の鎖錠片12を略45度に傾斜させて行う(図5−(a))。その後、ファスナ1を反時計回りに回転させ(図5−(b))、ファスナ1の係止部14を取付パネルの回転規制部21dに当接させる(図5−(c))。このとき、ファスナ1の該腕部15に形成した凸部16が、取付パネル2に形成した受部21e押圧して、ファスナ1を取付パネル2に保持している。なお、受部21eに突起16に対応する孔部を形成することもできる。
【0031】
ファスナ1を保持した取付パネル2を本体パネル3に固定するためには、該保持状態の取付パネル2とファスナ1を本体パネル3に当接させ、ファスナ1の鎖錠片12を、本体パネル3に形成された係止孔部31に挿入する(図5−(e))。その後、ファスナ1を時計回りに90度回転させて、鎖錠片12を本体パネル3の裏面に係合させる(図5−(f))。このときも、ファスナ1の係止部14を取付パネルの回転規制部21cに当接させ、ファスナ1の回転運動を規制している。
【0032】
(実施形態2)
図6には、実施形態2のファスナ1の側面図を示し、図7には、実施形態2の取付パネル2の取付孔部21の正面図を示している。
【0033】
本実施形態に用いるファスナ1は、中心回転軸11と、該中心回転軸のパネル挿入方向の先端部に設けた鎖錠片12と、該中心回転軸11のパネル挿入方向末端部に設けたファスナ回転操作部13と、該ファスナ1の回転を規制する係止部14と、該ファスナを取付パネルに保持する保持機構15を備えることを特徴とするが、本実施形態では、係止部14を兼用して、保持機構15としている。
【0034】
また、取付パネル2の回転規制部21c、21dは保持機構15を挟持可能なように幅狭に形成されており、ファスナ1を反時計回りに回転させて保持機構15を回転規制部21dで挟持することにより、ファスナ1を取付パネル2に保持するものとし、取付パネル2とファスナ1を本体パネル3に当接させた後に、ファスナ1を時計回りに90度回転させて鎖錠片12を本体パネル3の裏面に係合させる。また同時に、保持機構15を回転規制部21cで挟持することにより、ファスナ1の回転運動を規制している構造としている。なお、その他の構造及び取付パネル3の形状は実施形態1と同様である。
【0035】
(実施形態3)
図8には、実施形態3のファスナ1の側面図を示し、図9には、実施形態2の取付パネル2取付孔部21の裏面図を示している。
【0036】
本実施形態では、取付パネル2の回転規制部21c、21dを、裏面側の取付パネル上に突起部として形成している。また、ファスナ1の保持機構と回転を規制する係止部を兼ねた腕部15が、ファスナ1を取付パネル2に保持すると共に取付パネル2の回転規制部21c、21dと当接し位置規制する構造としている。
なお、取付パネル3の形状は実施形態1と同様である。
【0037】
(実施形態4)
図10には、実施形態4のファスナ1の全体図を示し、図11には、ファスナ1の側面図を示し、図12には、実施形態4の取付パネル2の取付孔部21の正面図を示している。
【0038】
本実施形態に用いるファスナ1は、中心回転軸11と、該中心回転軸のパネル挿入方向の先端部に設けた鎖錠片12と、該中心回転軸のパネル挿入方向末端部に設けたファスナ回転操作部13と、該ファスナ1の回転を規制する係止部14と、該ファスナを取付パネルに保持する保持機構を備えることを特徴とするが、本実施形態のファスナ1は、該保持機構が、中心回転軸に直交して延設された腕部15であって、該腕部15と鎖錠片12は平行配置され、係止部14が、中心回転軸11のファスナ回転操作部13側の基端に形成され、該係止部14と腕部15を軸部を中心に略90度の角度をなして形成したものである。該腕部15には、取付パネルを押圧する凸部16を有している。
【0039】
本実施形態の取付パネル2の取付孔部21は、ファスナの中心回転軸11を保持する細径の孔部を形成する一対の回転軸支持部21aと、鎖錠片12および腕部15が通り抜け可能な貫通部21bと、ファスナに形成された係止部14を係止する回転規制部21c、21dと、回転軸支持部21aの基端部周辺にファスナの該腕部15に形成した凸部16が当接する受部21eの他に、該係止部14が挿入され回動する挿入部21fを有している。回転規制部21cは、ファスナ1の回転を反時計方向で規制し、回転規制部21dは、ファスナの回転を時計方向で規制し、該ファスナ1の最大回転角度を90度に規制している。なお、取付パネル3の形状は実施形態1と同様である。
【0040】
本実施形態において、ファスナ1を取付パネル2に保持するためには、取付パネル2に形成された取付孔部21へのファスナ1の挿入は、ファスナ1の鎖錠片12を水平方向に位置させる。その後、ファスナ1を反時計回りに回転させ、ファスナ1の係止部14を取付パネルの回転規制部21cに当接させる。このとき、ファスナ1の該腕部15に形成した凸部16が、取付パネル2に形成した受部21eを押圧して、ファスナ1を取付パネル2に保持している。
【0041】
ファスナ1を保持した取付パネル2を本体パネル3に固定するためには、該保持状態の取付パネル2とファスナ1を本体パネル3に当接させ、ファスナ1の鎖錠片12を、本体パネル3に形成された係止孔部31に挿入する。その後、ファスナ1を時計回りに90度回転させて、鎖錠片12を本体パネル3の裏面に係合させる。このときも、ファスナ1の係止部14を取付パネルの回転規制部21dに当接させ、ファスナ1の回転運動を規制している。
【符号の説明】
【0042】
1 ファスナ
11 中心回転軸
12 鎖錠片
13 ファスナ回転操作部
13a 溝部
14 係止部
15 腕部
16 凸部
2 取付パネル
21 取付孔部
21a 回転軸支持部
21b 貫通部
21c 回転規制部
21d 回転規制部
21e 受部
21f 挿入部
3 本体パネル
31 係止孔部
31a 回転軸貫通部
31b 鎖錠片貫通部
32 折曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔部を形成した取付パネルを係止孔部を形成した本体パネルにファスナにより固定させるパネル取付構造において、
該ファスナは、中心回転軸と、該中心回転軸のパネル挿入方向の先端部に設けた鎖錠片と、該中心回転軸のパネル挿入方向末端部に設けたファスナ回転操作部と、該ファスナを取付パネルに挿入後回転して保持する保持機構を備えることを特徴とするパネル取付構造。
【請求項2】
該保持機構が、該ファスナの中心回転軸に直交して延設された腕部であることを特徴とする請求項1に記載のパネル取付構造。
【請求項3】
取付パネルまたは本体パネルの何れかに、該ファスナの回転角度を規制する回転規制部を備え、該ファスナに、該回転規制部に当接する係止部を備えることを特徴とする請求項1又は2パネル取付構造。
【請求項4】
該保持機構として、
係止部を兼用することを特徴とする請求項3に記載のパネル取付構造。
該係止部と腕部を軸部を中心に略90度の角度をなして形成したとする請求項1〜4の何れかに記載のパネル取付構造。
【請求項5】
取付孔部の貫通部が、係止孔部の鎖錠片貫通部に対して略45度の角度をなすように形成したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のパネル取付構造。
【請求項6】
取付孔部は、ファスナの中心回転軸を保持する一対の張出部からなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のパネル取付構造。
【請求項7】
ファスナは、該係止部が、中心回転軸のファスナ回転操作部側の基端に形成され、
該係止部と腕部を軸部を中心に略90度の角度をなして形成したとする請求項1〜4に記載のパネル取付構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−270770(P2010−270770A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120608(P2009−120608)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】