説明

パラフィン蝋組成物

本発明はパラフィン蝋と共融可能な熱可塑性重合体包装材料中にパラフィン蝋を含有したパラフィン蝋組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体包装フィルム中でパラフィン蝋組成物を製造する方法に関する。更に本発明は、有限の大きさ及び形状を有する蝋材料をフィルムを用いて包装する方法、これにより形成された包装、及び該包装のビチューメンと蝋とのブレンドの製造方法への使用に関する。更に前記包装フィルム中のパラフィン蝋組成物、及び該組成物をビチューメン組成物中に混入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
殆どのパラフィン蝋の共通した特性は、周囲温度で固体又は半固体であり、高温で液体であることである。源地から最終用途地まで輸送するため、周囲温度で固体の高融点パラフィン蝋は、通常、固化され、固形粒子、例えば、多くの場合繊維と組合わせて、ペレット、塊又は板として取扱われている。
【0003】
固化には、通常、冷却ベルト又は造粒塔のような固化装置及びエネルギー強化法を必要とする。更に、得られた生成物は、例えば重力圧下で輸送中、ブロッキングの問題を起こすことが多い。或いは、充分な高沸点及び硬度を有する極めて高沸点の部分だけが使用されるように、蝋を蒸留し、処理しなければならない。このような方法は厄介な上、エネルギー消費工程を必要とする。
【0004】
低沸点パラフィン材料は、通常、ばら荷又は容器で輸送される。ばら荷で輸送する場合、容易にポンプ送りし搬送するのに充分低い粘度を維持するために、パラフィン材料は充分高温に維持しなければならない。容器、例えば金属ドラム缶又はibcで輸送する場合、蝋の温度は、通常、周囲温度まで低下し、生成物は固体又は半固体となる。次いで、容器は一般に周囲温度で輸送、貯蔵される。
【0005】
このような蝋組成物の輸送方法は、包装材料の費用及び処分に関連する問題を引き起こす。容器及びこれに含まれる材料は、使用前に、生成物を取扱いできるように、加熱しなければならない。加熱には特別の加熱装置、過剰量の熱を必要とし、熱点により材料や容器の損傷を生じるかも知れない。更に、高温では取扱いが厄介である。
【0006】
更に、実際に使用される量を均等に減らしながら、残存する蝋を容器から除去するのは困難である。また使用済み容器は、内側の残存蝋のため、廃棄しなければならない。更に容器には、適切な加熱設備がない場合、容器からこの接着物を抽出するために、接着物に多大の物理的力を加えなければならず、蝋の取扱いが困難かつ不便であると言う別の欠点が生じる。
【0007】
以上の欠点は、例えばEP−A−1534802に記載されるフィッシャー・トロプシュ誘導生成物のような、凝固点が95〜120℃の微結晶性蝋生成物を輸送する場合、更に高まる。溶融生成物には、凝固点より高温に維持することが要求されるが、これは困難で経済的に実行不可能なことが多いので、このような蝋生成物の柔軟性により、輸送中、高い周囲温度で固体材料として取扱うのは特に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、このような材料を冷却し、貯蔵し、輸送する好適な手段を工夫する必要性が残っている。しかも、前記開示された蝋生成物は、各種用途のビチューメン用添加剤として非常に好適である。したがって、輸送可能で、かつ効率的な方法でビチューメンとブレンドできる包装パラフィン蝋を得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明方法及び生成物に従って、蝋組成物を封入し、かつ蝋と共融できる包装を設計することにより、達成された。したがって、本発明は、パラフィン蝋と共融可能な熱可塑性重合体包装材料中に該パラフィン蝋を含有してなるパラフィン蝋組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この熱可塑性重合体包装材料は、融点が55〜240℃の範囲の重合体フィルムであることが好ましい。
融点及び軟化点は、当業者により所望の用途に応じて決定できる。通常、このような包装材料は、溶融蝋中に流すため、95℃以上の軟化点を有し、また液体ビチューメンとブレンドする際、液体ビチューメン中に熱可塑性材料を溶融させる融点を有する。熱可塑性重合体材料のリング・ボール軟化点(“軟化点”)は、好ましくは90℃を超え、更に好ましくは約100℃を超え、なお更に好ましくは約120℃を超える。熱可塑性重合体材料は、溶融蝋の温度に耐えるのに充分高い軟化点を持っていなければならない。リング・ボール軟化点はASTM D36により測定できる。
【0011】
熱可塑性重合体包装材料は、IS:2508試験法で測定して900gm以上の落槍衝撃強度を有することが好ましい。この試験法は、プラスチックフィルムの衝撃抵抗を自由落下槍法で測定する方法である。
【0012】
本発明で包装材料として使用される熱可塑性重合体材料の例としては、限定されるものではないが、エチレン、プロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、及びブチレン共重合体が挙げられる。或いはブチル、プロピル、エチル又はメチルアクリレート又はメタクリレートのようなアクリレート及びメタクリレートと、エチレン、プロピレン又はブチレンとを共重合した共重合体も使用できる。エチレンとブチルアクリレートとグリシジルメタクリレートとの三元共重合体のようなエポキシ官能化共重合体も該共重合体で作った包装材料の衝撃抵抗及び可撓性を改良するのに使用できる。天然又は合成ゴムも使用でき、非限定的な例としては、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、又はエチレン−プロピレン ジエンモノマーから作った三元共重合体(EPDM)が挙げられる。本発明で使用するのに特に好ましいプラスチック又は重合体材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−ブタジエン、スチレン−インデン−スチレン、アクリレート及びメタクリレートの共重合体、エチレン−酢酸ビニル、アタクチックポリプロピレン、無機又は天然又は合成繊維、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの材料は、織布又は不織布のシート又は袋の形態であってよい。
【0013】
本発明の蝋組成物と同様な包装ホットメルト感圧接着剤が米国特許第5,373,682号、米国特許第6,430,898号、米国特許第5,527,491号、WO−A−2006/050108に開示されている。これらの文献に開示された包装フィルムは、全て高分子量の重合体をベースとしている。このような重合体は、ホットメルト接着剤の用途では、溶融後、高粘度の重合体材料のため、溶融接着剤と均質にブレンドできず、ゲル化したり、塊を形成し、一般に不均質な組成物になる。
【0014】
出願人は、パラフィン蝋、特に高分子量のフィッシャー・トロプシュ蝋を、ビチューメンの利用中、パラフィン蝋と共融可能な熱可塑性重合体包装材料に使用すると、意外にもゲル化や塊が生じないことを見出した。
【0015】
熱可塑性重合体包装材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びエチレンの共重合体、三元共重合体及びエチレン/酢酸ビニル、エチレン アクリレート、エチレン メタクリレート、エチレン メチルアクリレート、エチレン メチルメタクリレート、エチレンと1,6−モノ−又はジ−不飽和モノマーとの共重合体、ポリアミド、ポリブタジエンゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリカーボネート、アタクチックポリプロピレンを含むアタクチックポリα−オレフィン、熱可塑性ポリアクリルアミド、ポロアクリロニトリル、アクリロニトリルとブタジエン、スチレンのような他のモノマーとの共重合体、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリウレタン;スチレン−アクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンエラストマー、またA−B、A−B−A、A−(B−A)−B、(A−B)−Yブロック共重合体(但し、Aブロックはポリビニル芳香族ブロックを含み、Bブロックは、部分的に水素化可能なゴム状中間ブロックを含む)よりなる群から選ぶことが好ましい。
【0016】
更に好ましくは熱可塑性重合体包装材料は、ポリオレフィン、更に好ましくはポリエチレン及び/又はポリプロピレンである。
熱可塑性重合体包装材料は、連続フィルム、織布又は不織布材料を形成してよい。
【0017】
前記包装材料は連続フィルムを形成していることが好ましい。このフィルムは、単層であっても多層であってもよい。耐ブロッキング性及び機械的安定性を向上するには、熱可塑性重合体包装材料は、多層フィルムを形成していることが好ましい。或いは、コストを低下させる単層は満足してよい。フィルムの厚さは、袋で使用するかフィルムで使用するかの利用に応じて当業者が容易に決定できる。全体のフィルム厚は、好ましくは50〜500μm、更に好ましくは65〜95μm、更に好ましくは75〜85μmの範囲である。
【0018】
熱可塑性重合体材料は、US−A−5,452,800に記載されるような封止可能な包装用袋又はフィルムに成形できる。極めて好適な熱可塑性重合体材料は、例えば材料によりビチューメンに供給されるいわゆるポリ袋である。このようなポリ袋は、厚さが75〜85μmの範囲のポリエチレン及びポリプロピレンフィルムを含有し、各種形状で入手できる。この袋材料の融点は、好ましくは60〜240℃、更に好ましくは100〜200℃の範囲であり、軟化前の熱抵抗は120℃を超え、また最終利用で包装パラフィン蝋材料をビチューメンに添加しても、ビチューメンの品質に悪影響を与えない。
【0019】
パラフィン蝋の凝固点は、好ましくは85〜150℃、更に好ましくは90〜135℃、更に好ましくは95〜125℃、なお更に好ましくは100〜120℃である。
パラフィン蝋の43℃でのPENは、IP 376で測定し、0.1mmで表して、好ましくは5を超える。パラフィン蝋の43℃でのPENは、IP 376で測定して、更に好ましくは7を超える。パラフィン蝋の43℃でのPENは、IP 376で測定して、好ましくは350未満である。なお更に好ましくは、パラフィン蝋の凝固点は85〜120℃でありパラフィン蝋の43℃でのPENは、IP 376で測定し、0.1mmで表して、5を超える。
【0020】
パラフィン蝋は、フィッシャー・トロプシュ法で得られたほぼ線状のパラフィン蝋を水素化異性化して得ることが好ましい。所要の凝固点を有する蝋は、水素化異性化生成物から蒸留により単離してもよいし、或いは軟質パラフィン蝋が直接、水素化異性化生成物から得られるように、水素化異性化用の原料を選択する。
【0021】
前記水素化異性化で得られるパラフィン蝋の特性は、該蝋を、n−アルカンを90%より多く含有するFTパラフィンとブレンドすれば、改質できる。FTパラフィンの例は、例えば市販製品のSASOBIT,Paraflint H1、Sarawax SX100及びSarawax SX105である。Paraflint H1は、Sazol−Moore and Mungerから得られる。Sarawax製品は、Shell MDS Malasia Sdn Bhdから得られる。
この軟質蝋(ビチューメン)添加物のフィッシャー・トロプシュ合成及び経路は、WO−A−02102941、EP−A−1498469、WO−A−2004009739及びEP−A−1268712に記載されている。
【0022】
出願人は、極めて好適なパラフィン蝋は、フィッシャー・トロプシュ蝋から中間蒸留物を製造する下記方法の副生物として得られることを見出した。この方法は、(a)フィッシャー・トロプシュ生成物を水素化分解/水素化異性化する工程、(b)工程(a)の流出流に対し1回以上の蒸留物分離を行って中間蒸留物燃料フラクション及び初期沸点が500〜600℃の軟質パラフィン蝋添加剤を得る工程を含む。この添加剤は、真空蒸留工程で残留フラクションとして得られる。この方法で得られる蝋の43℃でのPEN値は、必要ならば、この蝋を、出発フィッシャー・トロプシュ生成物から蒸留により単離された蝋とブレンドすることにより低下できる。このフラクション、好ましくは酸素化物及びオレフィンを除去するために水素化した、凝固点が90〜120℃のフラクションは、43℃でのPENが低い、ほぼノーマルのパラフィン蝋である。この成分を更に軟質の蝋とブレンドすれば、制御された43℃でのPEN値が得られる。
【0023】
中間蒸留物主生成物の工業的に魅力的な収率と組合わせて、所望のPEN及び凝固点を有する蝋添加剤生成物を得るには、比較的重質のフィッシャー・トロプシュ生成物から出発すると、有利であることが見出された。比較的重質のフィッシャー・トロプシュ生成物は、炭素原子数が30以上の化合物を好適には30重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは55重量%以上有する。更に、フィッシャー・トロプシュ生成物中の炭素原子数60以上の化合物と炭素原子数30以上の化合物との重量比は、好適には少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.4、更に好ましくは少なくとも0.55である。フィッシャー・トロプシュ生成物は、ASF−α値(Anderson−Schulz−Flory連鎖成長ファクター)が少なくとも0.925、好ましくは少なくとも0.935、更に好ましくは少なくとも0.945、なお更に好ましくは少なくとも0.955のC20+フラクションを含むことが好ましい。
【0024】
工程(a)の原料であるフィッシャー・トロプシュ生成物の初期沸点は、400℃まででよいが、好ましくは200℃未満である。炭素原子数4以下の化合物及びその沸点範囲の化合物はいずれも、工程(a)でフィッシャー・トロプシュ合成生成物を使用する前に、フィッシャー・トロプシュ合成生成物から分離することが好ましい。フィッシャー・トロプシュ生成物以外の他のフラクションも工程(a)で追加処理してもよい。他のフラクションは、好適には工程(b)で得られるような過剰の微結晶蝋であってよい。
【0025】
このようなフィッシャー・トロプシュ生成物は、比較的重質のフィッシャー・トロプシュ生成物を生成するいずれの方法によっても得られる。全てのフィッシャー・トロプシュ法がこのような重質生成物を生じるのではない。好ましい方法はコバルトを触媒としたフィッシャー・トロプシュ法である。好適なフィッシャー・トロプシュ法の一例は、WO−A−9934917に記載されている。これらの方法は前述のようなフィッシャー・トロプシュ生成物を生成する。
【0026】
フィッシャー・トロプシュ生成物は、硫黄及び窒素を含有する化合物を全く又は微量しか含有しない。これは不純物を全く又は殆ど含有しない、フィッシャー・トロプシュ反応の誘導生成物には普通のことである。一般に硫黄及び窒素水準は、現在、硫黄については5ppm、窒素については1ppmという検出限界未満である。したがって、パラフィン蝋もこのような低い硫黄及び窒素レベルである。上記方法を実施するためのプロセス条件及び指針は、出願人の先願であるWO−A−2004009739に記載されている。
【0027】
本発明は更に、組成物中のパラフィン蝋がフィッシャー・トロプシュ法から誘導される包装蝋組成物に関する。
このパラフィン蝋は、(a)フィッシャー・トロプシュ生成物を水素化分解/水素化異性化する工程、(b)工程(a)の流出流に対し1回以上の蒸留物分離を行って中間蒸留物燃料フラクション及び初期沸点が500〜600℃の軟質パラフィン蝋添加剤を得る工程を含む方法により得られる。
【0028】
本発明のパラフィン蝋組成物はパラフィン蝋を含有する。このパラフィン蝋は、パラフィン蝋自体(即ち、n−及びイソ−パラフィンのようなパラフィンを主成分とし、例えば98重量%含有し、シクロパラフィン及び/又はオレフィンを小割合しか含有しない)、又はパラフィン蝋及び1種以上の添加剤からなる組成物であってよい。パラフィン蝋及び1種以上の添加剤からなる組成物は、パラフィンを好ましくは85重量%以上、好ましくは85重量%より多く、更に好ましくは90重量%より多く、更に好ましくは95重量%より多く、更に好ましくは98重量%より多く、なお更に好ましくは98.5重量%より多く、なお更に好ましくは99重量%より多く含有する。パラフィン蝋及び1種以上の添加剤からなる組成物中の添加剤は、利用時の蝋組成物の取扱い特性及び/又は蝋組成物とのビチューメンブレンドの特性を改良するような添加剤であってよい。
【0029】
本発明は更に、熱可塑性重合体包装材料中に前記液体蝋を入れる(encase)ことを特徴とする前述した包装蝋組成物の製造方法に関する。有限の大きさ及び形状を有する蝋材料をフィルムを用いて包装するいかなる方法も原則的に好適である。
【0030】
この方法は、同時押出法、該方法により形成された包装、及び該包装をビチューメンと蝋とをブレンドする方法を用いて蝋生成物を包装する工程を含むことが好ましい。
この蝋包装は,WO−A−02/061009、WO−A−04/037671、US−A−6,230,890、US−A−5,806,285、US−A−5,401,455、US−A−5,715,654、US−A−4,039,485、US−A−5,373,682、US−A−5,401,455、US−A−6,155,029、US−A−6,138,441、US−A−5,669,207及びUS−A−5,942,082に記載されるように、包装ホットメルト接着剤の製造法と同様にして製造できる。
【0031】
本発明は更に、前述のような熱可塑性重合体包装材料中に含まれるパラフィン蝋を液体ビチューメンに添加して、液体ビチューメンとパラフィン蝋とをブレンドする方法に関する。この場合、熱可塑性重合体材料の融点を液体ビチューメンの温度以下にする必要がある。
【0032】
本発明は更に、ビチューメン組成物への包装パラフィン蝋の使用法及び該方法で製造されたビチューメン組成物に関する。
ビチューメン組成物は、自動車や航空機用の道路表面として広く使用されている。これらの組成物はアスファルトとも言われ、ビチューメン及び砂、砂利、小石等の骨材を含有する。道路表面として使用されるビチューメン組成物の特定の特性を改良するため、添加剤が広く利用されている。
【0033】
US−A−658974、WO−A−0216499及びAU−B−200137219は、添加剤としてフィッシャー・トロプシュパラフィン(FTパラフィン)を含有するビチューメン組成物を開示している。US−A−658974によれば、フィッシャー・トロプシュパラフィン添加剤は、n−アルカン90%とイソアルカン残部との混合物である。FTパラフィンを添加する利点は、ビチューメン組成物の高温、例えば135℃、180℃での粘度を低下させることである。このビチューメン混合物は、道路表面を作る際、この温度で使用されるので有利である。換言すれば、この添加剤はビチューメン組成物の作業性を向上する。
【0034】
これらの文献によれば、FTパラフィンは、30〜100炭素原子の鎖長を有する。AU−B−200137219は、SASOBIT(登録商標)のような市販のフィッシャー・トロプシュパラフィン添加剤を例示している。SASOBITの2003年11月11日付けSasol Wax GmbH(ハンブルク)の製品仕様によれば、DIN−ISO 02207による凝固点範囲は99℃以下である。
【0035】
硬質高融点FTパラフィン蝋添加剤の添加により生じる問題は、添加量を増やしても、フラース(Fraas)点は同じのままか又は更に増加することである。フラース点(EN12593)は、低温でのビチューメン混合物の脆性を表示する。この試験でビチューメンバインダーのサンプルは、金属板上に塗布される。この金属板は、一定の冷却速度を受け、バインダー層が破壊するまで繰り返し曲げられる。最初のクラックが現れた温度をフラース破壊点として報告する。例えば低いフラース点は、低温天候地域で道路表面を作る際、望ましい。
【0036】
出願人は、高度にノーマルなパラフィン蝋の代りに、僅かに異性化したバラフィン蝋を使用すると、フラース点を低下できることを見出した。出願人は、更に高温での粘度は、従来のノーマルパラフィンFTパラフィン添加剤を使用した場合と同等に低下することを見出した。
このようなブレンド蝋の凝固点及び43℃でのPENは、前述のような特性を有する。
【0037】
この蝋を前述のような熱可塑性重合体材料中に包装すると、特別な加熱設備を必要とせずに輸送でき、ビチューメンの利用地で利用できることを見出した。
ビチューメン組成物は、針入度が1〜450mm/10の範囲であり、軟化点が30〜130℃であり、60℃での粘度が10〜20,000Pasであるビチューメン成分を含有することが好ましい。
ビチューメン組成物中のパラフィン蝋含有量は、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0038】
蝋は、フィッシャー・トロプシュ生成物から蒸留により単離された凝固点が90〜120℃のノーマルパラフィン蝋フラクションとブレンドしてよい。ビチューメン組成物は更に、凝固点が85〜120℃で、43℃でのPENがIP 376で測定し、0.1mmで表して5を超えるパラフィン蝋を含有することが好ましい。
【0039】
本発明の特に好ましい実施態様は、凝固点が85〜120℃で、43℃でのPENがIP 376で測定し、0.1mmで表して5を超えるパラフィン蝋を、前述のように熱可塑性重合体材料中に入れられ、ビチューメン添加剤として使用するのに好適な形態のパラフィン蝋である。この包装添加剤は、明細書では軟質パラフィン蝋添加剤とも言う。
【0040】
一般に前記凝固点とPEN値との組合わせを有するこの包装軟質パラフィン蝋添加剤は、大部分イソパラフィンで構成される。しかし、イソパラフィンの量は、この沸点範囲で定量することは困難である。このため、一層容易に定量できるこれらの特性が使用される。軟質パラフィン蝋添加剤は、凝固点が85〜120℃で、43℃でのPENがIP 376で測定し、0.1mmで表して5を超える。この蝋の凝固点は、好ましくは90℃を超える。
【0041】
フラース温度を顕著に低下させるには、43℃でのPENが0.1mmで表して、好ましくは7を超え、更に好ましくは8を超え、なお更に好ましくは10を超える軟質蝋を使用する。43℃でのPENは、好ましくは350未満である。EN1427による軟化点の増大及びフラース温度の低下の両方を達成したいならば、43℃でのPENは、好ましくは5〜70、更に好ましくは7〜70である。450℃でのTBC−GLC回収率は、好ましくは2重量%未満、更に好ましくは1重量%未満である。蝋の柔軟性は、製造方法のプロセス条件を調節することにより、及び/又は軟質蝋と硬質蝋とをブレンドすることにより、影響を受ける可能性がある。ここで硬質蝋は、例えばSASOBIT、又はShell MDS Malasia Sdn Bhdから得られるSarawax SX100又はSX105型蝋のような一層ノーマルなパラフィン蝋であってよい。
【0042】
本発明に有用なビチューメングレードとしては、EN 1426に従って測定して、1〜450mm/10の範囲の針入度を有するものが挙げられる。好適なビチューメンの軟化点は、EN 1427に従って測定して、30〜130℃、好ましくは40〜100℃の範囲であってよい。好適なビチューメンの針入度指数は、+9〜 −3の範囲であってよい。60℃での粘度は、10〜20,000Pasであってよい。
【0043】
本発明のビチューメン組成物中の軟質パラフィン蝋添加剤の含有量は、20重量%以下、更に好ましくは0.1〜20重量%、なお更に好ましくは0.5〜10重量%、なお更に好ましくは3重量%を超える。出願人は、部分異性化パラフィン蝋を用いると、この部分異性化パラフィン蝋の含有量が多くても、フラース温度が低下することを見出した。その代わりに、例えば市販のSASOBIT製品のようなほぼノーマルなパラフィン蝋を高含有量で用いると、フラース温度は出発ビチューメンに関して向上しない。
【0044】
この包装軟質パラフィン蝋添加剤は、いかなる好適な方法で用いてもビチューメンとブレンドできる。例えばこの添加剤は溶融状態でビチューメンに添加できる。けれども、好ましくはビチューメンは添加剤及び熱可塑性重合体材料を溶解又は分散するのに充分な温度の溶融状態であってよい。好適な温度は120〜230℃、好ましくは130〜190℃の範囲である。
【0045】
所望の最終濃度の濃厚ブレンドを製造するため、ビチューメンには充分な添加剤を添加できるかも知れない。しかし特定の利用では、所望の最終組成のブレンドを製造するため、添加剤濃度の低い添加剤を含まないビチューメンと混合できる濃厚ブレンド、又は添加剤とビチューメンとの“マスターバッチ”を製造することが望ましいかも知れない。このマスターバッチは、添加剤を好適には10〜30重量%の濃度で含有してよい。
【0046】
本発明のビチューメン組成物は、アスファルト組成物を形成するための骨材用バインダーとして使用できる。このような組成物に使用される骨材としては、花崗岩のような従来の骨材が挙げられる。ビチューメン組成物には、任意に例えば石灰岩やセルロースの充填剤を含有してもよい。砂及びダストも存在してよい。
【0047】
パラフィン蝋添加剤に次いで、他の添加剤も存在してよい。可能な他の添加剤の例は、エラストマー、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等の重合体;プラストマー、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン及び前記重合体の組合わせ、反応性重合体、例えば反応性エチレン三元共重合体、アクリレート共重合体、架橋剤、例えば硫黄及び硫黄含有化合物、接着ドープ、及びIPブースター、例えばポリ燐酸である。
【0048】
本発明のビチューメン組成物を骨材と一緒にバインダーとして使用する場合、ビチューメン組成物は、全アスファルト組成物の1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、更に好ましくは4〜10重量%、最も好ましくは4〜7重量%を形成してよい。全アスファルト組成物中の骨材含有量は、50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、更に好ましくは70重量%を超え、例えば75〜90重量%であってよい。アスファルト組成物の残部は、砂、セルロース及び/又は石灰岩を含有してよい。
【0049】
アスファルト組成物を製造する際、パラフィン蝋包装は、骨材及び/又は充填剤の存在下でビチューメンに添加することが好ましい。骨材及び/又は充填剤に添加する前に、添加剤をビチューメンと混合することも可能かも知れない。
前述のようなアスファルト組成物は、各種表面、特に例えばトラックの駐車場、高速道路表面仕上げ、飛行場、住宅街道路、ガソリンスタンド前庭、自動車駐車場、誘導路及び車道の舗装及び被覆として使用できる。
【0050】
このビチューメン組成物は、US−A−6588974(この文献は、ここに援用する)の教示に従って、ノーマルパラフィン蝋含有ビチューメン組成物用のいわゆる上層及び下層にも便利に使用できる。
本発明のビチューメン組成物は、例えば空港表面にコンクリート部品を固定するのに使用される、いわゆる目地シーラントの一部として、或いは屋根フェルト材組成物の一部としても使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】EP−A−1534802
【特許文献2】米国特許第5,373,682号
【特許文献3】米国特許第6,430,898号
【特許文献4】米国特許第5,527,491号
【特許文献5】WO−A−2006/050108
【特許文献6】US−A−5,452,800
【特許文献7】WO−A−02102941
【特許文献8】EP−A−1498469
【特許文献9】WO−A−2004009739
【特許文献10】EP−A−1268712
【特許文献11】WO−A−9934917
【特許文献12】WO−A−02/061009
【特許文献13】WO−A−04/037671
【特許文献14】US−A−6,230,890
【特許文献15】US−A−5,806,285
【特許文献16】US−A−5,401,455
【特許文献17】US−A−5,715,654
【特許文献18】US−A−4,039,485
【特許文献19】US−A−5,401,455
【特許文献20】US−A−6,155,029
【特許文献21】US−A−6,138,441
【特許文献22】US−A−5,669,207
【特許文献23】US−A−5,942,082
【特許文献24】US−A−658974
【特許文献25】WO−A−0216499
【特許文献26】AU−B−200137219
【特許文献27】US−A−6588974

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィン蝋と共融可能な熱可塑性重合体包装材料中に該パラフィン蝋を含有してなるパラフィン蝋組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性重合体包装材料が、65〜240°の範囲の融点を有する重合体フィルムである請求項1に記載の包装蝋組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性重合体包装材料が、IS:2508試験法で測定した機械的強度(落槍衝撃強度>900gm)を有する請求項1〜2に記載の包装蝋組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性重合体包装材料が、ポリプロピレン、ポリエチレン及びエチレンの共重合体、三元共重合体及びエチレン/酢酸ビニル、エチレン アクリレート、エチレン メタクリレート、エチレン メチルアクリレート、エチレン メチルメタクリレート、エチレンと1,6−モノ−又はジ−不飽和モノマーとの共重合体、ポリアミド、ポリブタジエンゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリカーボネート、アタクチックポリプロピレンを含むアタクチックポリα−オレフィン、熱可塑性ポリアクリルアミド、ポロアクリロニトリル、アクリロニトリルとブタジエン、スチレンのような他のモノマーとの共重合体、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリウレタン;スチレン−アクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンエラストマー、またA−B、A−B−A、A−(B−A)−B、(A−B)−Yブロック共重合体(但し、Aブロックはポリビニル芳香族ブロックを含み、Bブロックは、部分的に水素化可能なゴム状中間ブロックを含む)よりなる群から選ばれる請求項1〜3に記載の包装蝋組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性重合体包装材料がポリオレフィンである請求項4に記載の包装蝋組成物。
【請求項6】
前記フィルムが多層化されている請求項1〜5に記載の包装蝋組成物。
【請求項7】
前記フィルムの厚さが50〜500μmの範囲である請求項3〜6に記載の包装蝋組成物。
【請求項8】
前記パラフィン蝋は、凝固点が85〜120℃の範囲であり、43℃でのPENがIP 376で測定し、0.1mmで表して5を超える請求項1〜7のいずれか1項に記載の包装蝋組成物。
【請求項9】
前記パラフィン蝋の43℃でのPENが、IP 376で測定して7を超える請求項1〜8のいずれか1項に記載の包装蝋組成物。
【請求項10】
前記パラフィン蝋の43℃でのPENが、IP 376で測定して350未満である請求項1〜9のいずれか1項に記載の包装蝋組成物。
【請求項11】
前記パラフィン蝋が、フィッシャー・トロプシュ法で誘導される請求項1〜10のいずれか1項に記載の包装蝋組成物。
【請求項12】
前記パラフィン蝋が、(a)フィッシャー・トロプシュ生成物を水素化分解/水素化異性化する工程、(b)工程(a)の流出流に対し1回以上の蒸留物分離を行って中間蒸留物燃料フラクション及び初期沸点が500〜600℃の軟質パラフィン蝋添加剤を得る工程を含む方法により得られる請求項11に記載の包装蝋組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性重合体包装材料中に前記液体蝋を入れることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の包装蝋組成物の製造方法。
【請求項14】
液体ビチューメンに請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体包装材料中に含まれるパラフィン蝋を液体ビチューメンに添加して、液体ビチューメンとパラフィン蝋とをブレンドする方法であって、熱可塑性重合体材料の融点が液体ビチューメンの温度以下である該方法。
【請求項15】
前記ビチューメン成分は、針入度が1〜450mm/10の範囲であり、軟化点が30〜130℃であり、針入度指数が+9〜 −3であり、60℃での粘度が10〜20,000Pasである請求項13に記載の方法により得られるビチューメン組成物。
【請求項16】
前記パラフィン蝋の含有量が0.5〜10重量%である請求項14に記載のビチューメン組成物。
【請求項17】
請求項12に記載の方法により得られた前記包装パラフィン蝋が、フィッシャー・トロプシュ生成物から蒸留により単離された凝固点90〜120℃のノーマルパラフィン蝋フラクションとブレンドされる請求項15又は16に記載のビチューメン組成物。
【請求項18】
骨材と、請求項14〜16のいずれか1項に記載のビチューメン組成物1〜20重量%とを含有するアスファルト組成物。
【請求項19】
請求項18に記載のアスファルトの道路表面としての使用法。
【請求項20】
請求項18に記載のアスファルトの屋根フェルト材としての使用法。





【公表番号】特表2010−526900(P2010−526900A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506938(P2010−506938)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055696
【国際公開番号】WO2008/138859
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】