説明

パラレルメカニズム

【課題】 メンテナンス性を悪化させることなく、アーム等を揺動可能に連結するボールジョイントの外れを抑制することが可能なパラレルメカニズムを提供する。
【解決手段】 パラレルメカニズム1の第2アーム8を構成するロッド9の遊端部と、ブラケット14とを揺動可能に連結するボールジョイント16は、ボールスタッド30と、ソケット部材としてのロッド33とを備えている。ボールスタッド30は、球状外周面を有する球状頭部31と、軸部32とを有している。一方、ロッド33は、球状頭部31の球状外周面に略対応した内周面を有する半球状凹部34及び、該半球状凹部34から滑らかに連続する延長部35が形成されたソケット36を有している。延長部35は、略円筒状に形成されており、かつ、球状頭部31の赤道38から軸部32側に該軸部32の軸線に沿って延びるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルメカニズムに関し、特に、ボールジョイントを介して連結されるアームを備えたパラレルメカニズムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、支持基盤であるベース部とエンドエフェクタが取り付けられるブラケットとが複数のアームにより並列に結合されたパラレルメカニズムが知られている(例えば、特許文献1参照)。ちすなわ、パラレルメカニズムでは、電動モータが並列に配置されるとともに、各電動モータに連結された複数のアームが最終的に1つのブラケットを操るように構成されている。
【0003】
特許文献1記載のパラレルメカニズムでは、各アームがリンクとロッドから構成されている。リンク及びロッドは、それぞれボールジョイントにより連結され、これらのボールジョイントを支点としてロッドはリンクに対して3次元方向に揺動可能となっている。ロッドの先端は、それぞれボールジョイントを介してブラケットに連結されている。この構造によってリンクはブラケットに対してボールジョイントを支点とし、3次元的な方向に揺動することができる。また、特許文献1記載のパラレルメカニズムでは、ボールジョイントの球体の片側半面をソケットから露出した状態で回転可能に保持するとともに、2本のロッドをバネによって連結する構成とすることにより、アームが揺動する際にボールジョイントの球体がソケットから抜け落ちることを防止しつつ、アームの揺動角度(可動範囲)を増大している。
【特許文献1】実開平8−403
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のパラレルメカニズムでは、ボールジョイントの球体とソケットとはバネによる引っ張り力によって保持されているが、ボールジョイントの球体の片側半面がソケットから露出されているため、バネの引っ張り力を超える負荷を受けた場合、球体がソケットから外れてしまうおそれがある。このような問題は、パラレルメカニズムの動作範囲の外縁に近づくほど顕著になる。これに対して、バネの引っ張り力をより強くすると、ボールジョイントの摺動抵抗が増大するため、高速動作時の負荷が増大したり、ボールジョイント部の磨耗が増大したりする。一方、ボールジョイントの球体を球面に沿って基端部側までソケットで覆うとすると、分解整備等を行う際のメンテナンス性が悪化する。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、メンテナンス性を悪化させることなく、アーム等を揺動可能に連結するボールジョイントの外れを抑制することが可能なパラレルメカニズムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者達は、上記の問題点につき鋭意検討を重ねた結果、次のような知見を得た。すなわち、パラレルメカニズムの動作中にエンドエフェクタ(ブラケット)に生じる外力は、分解されて各ロッドに対しては軸方向の負荷として働く。このロッドの軸方向の負荷に対して、ソケットの縁部分が球体の赤道より先端側の位置までしか係っていないと、ソケットにはバネの引っ張り力と逆の向きに斥力が働く。そして、この斥力がバネの引っ張り力より大きければ、ボールジョイントの球体はソケットから外れてしまう。
【0007】
そこで、本発明に係るパラレルメカニズムは、複数のアームを介してベース部とブラケットとが並列に連結されるパラレルメカニズムにおいて、複数のアームを構成する各アームが、ベース部に取り付けられたアクチュエータにその一端が連結される第1リンクと、一対のロッドを有し、第1リンクの他端とブラケットとを連結する第2リンクと、第2リンクを構成する一対のロッドの一端と第1リンクの他端とを揺動可能に連結する第1のボールジョイントと、一対のロッドの他端とブラケットとを揺動可能に連結する第2のボールジョイントと、一対のロッドを互いに引っ張る方向に付勢する引張部材とを備え、第1のボールジョイント及び第2のボールジョイントの内、少なくともいずれかのボールジョイントが、軸部と球状頭部とを含むボールスタッドと、該ボールスタッドの球状頭部を揺動回動自在に保持するソケットとを有し、ソケットが、球状頭部の先端部から赤道までを保持する半球状凹部と、該半球状凹部から滑らかに連続し、球状頭部の赤道から軸部側へ延びる延長部とを含み、延長部の開口部の内径が、球状頭部の直径と同じか該直径よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るパラレルメカニズムによれば、第1のボールジョイント及び/又は第2のボールジョイントを構成するソケットに半球状凹部から滑らかに連続する延長部が形成されているため、ソケットに作用する反力(ロッドの軸方向に働く負荷に対する反力)を垂直に受け止めることができ、ソケットを外す方向に作用する斥力(軸部の軸線方向に対する反力の分力)の発生を抑えることができる。そのため、ボールジョイントを構成するボールスタッドの球状頭部がソケットから外れることを抑制することが可能となる。一方、延長部の開口部の内径が、球状頭部の直径と同じか該直径よりも大きく形成されているため、例えば分解整備等を行う際には、ソケットをボールスタッドの軸部の軸線方向に沿って外側に、引張部材の引張力よりも大きい力で引っ張ることにより、ボールスタッドをソケットから外すことができる。その結果、メンテナンス性を悪化させることなく、ボールジョイントの外れを抑制することが可能となる。
【0009】
ここで、上記一対のロッドは、それぞれの中心軸が互いに平行となるように配置されており、上記延長部は、略円筒状に形成されており、該延長部の中心軸が、一対のロッドそれぞれの中心軸により定義される平面に対して平行に、かつ、一対のロッドそれぞれの中心軸に対して略垂直に延びていることが好ましい。
【0010】
このようにすれば、パラレルメカニズムの動きに伴い、ロッドの中心軸方向に過大な負荷がかかったとしても、ボールジョイントの外れを確実に抑制することが可能となる。
【0011】
本発明に係るパラレルメカニズムでは、上記延長部の長さが、球状頭部の直径に応じて設定されることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、延長部の長さを適切に設定することができるので、パラレルメカニズムのメンテナンス性、及び可動範囲を確保しつつ、ボールジョイントの外れを適切に抑制することが可能となる。
【0013】
また、上記延長部の長さは、引張部材の全長に応じて設定されることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、延長部の長さを適切に設定することができるので、パラレルメカニズムのメンテナンス性を確保しつつ、ボールジョイントの外れを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボールジョイントを構成するソケットが、球状頭部の先端部から赤道までを保持する半球状凹部と、該半球状凹部から滑らかに連続し、球状頭部の赤道から軸部側へ延びる延長部とを含み、該延長部の開口部の内径が、球状頭部の直径と同じか該直径よりも大きく形成されているため、メンテナンス性を悪化させることなく、パラレルメカニズムのアーム等を揺動可能に連結するボールジョイントの外れを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0017】
まず、図1及び図2を併せて用いて、実施形態に係るパラレルメカニズムの全体構成について説明する。図1は、実施形態に係るパラレルメカニズム1の全体構成を示す斜視図である。また、図2は、図1中の矢印A1方向から見たパラレルメカニズム1を示す図である。
【0018】
パラレルメカニズム1は、上部にベース部2を有している。パラレルメカニズム1は、ベース部2の下面側に形成された平らな取付面2aが例えば水平な天井等に固定されることによって支持される。一方、ベース部2の下面側には、3つの支持部材3が設けられている。各支持部材3には、それぞれ電動モータ4が支持されている。電動モータ4は、モータ軸の軸線C2がベース部2の取付面2aに対して平行(すなわち水平)となるように支持されている。それぞれの支持部材3は、ベース部2の鉛直方向軸線C1を中心として等しい角度(120度)を開けて配置されており、各電動モータ4もまた、ベース部2の鉛直方向軸線C1を中心として等しい角度(120度)を開けて配置される(図2参照)。
【0019】
各電動モータ4の出力軸には、軸線C2に対して同軸に略六角柱形状のアーム支持部材5が固定されている。アーム支持部材5は、電動モータ4が駆動されることにより軸線C2を中心として回転する。なお、各電動モータ4は、モータドライバを含む電子制御装置(図示省略)に接続されており、電動モータ4の出力軸の回転がこの電子制御装置によって制御される。
【0020】
パラレルメカニズム1は、3本のアーム本体6を有しており、各アーム本体6は、第1アーム7及び第2アーム8を含んで構成される。ここで、第1アーム7は特許請求の範囲に記載の第1リンクに相当し、第2アーム8は特許請求の範囲に記載の第2リンクに相当する。第1アーム7は、例えばカーボンファイバー等で形成された長尺の中空円筒部材である。第1アーム7の基端部は、アーム支持部材5の側面に取り付けられている。第1アーム7は、その軸線が上述した軸線C2と直交するように固定される。
【0021】
第1アーム7の遊端部には、第2アーム8の基端部が連結され、第2アーム8が、第1アーム7の遊端部を中心として揺動できるように構成されている。第2アーム8は、一対の長尺のロッド9,9を含んで構成されており、一対のロッド9,9は、その長手方向において互いに平行となるように配置されている。ロッド9も、例えばカーボンファイバー等で形成された長尺の中空円筒部材である。各ロッド9の基端部は、第1アーム7の遊端部に、一対のボールジョイント10,10(特許請求の範囲に記載の第1のボールジョイントに相当)によって回転自在に連結されている。なお、各ロッド9の基端部における各ボールジョイント10,10の回転中心間を結ぶ軸線C3が、電動モータ4の軸線C2に対して平行となるよう配置されている。
【0022】
また、第2アーム8の基端部において一方のロッド9と他方のロッド9とが連結部材11で互いに連結されており、第2アーム8の遊端部において一方のロッド9と他方のロッド9とが連結部材12で互いに連結されている。連結部材11、及び連結部材12は、例えば、付勢部材としての引張コイルバネを有しており、一対のロッド9,9を互いに引き合う方向に付勢する。すなわち、連結部材11,12は、特許請求の範囲に記載の引張部材として機能する。なお、連結部材11と連結部材12とは、異なる構造であっても構わないが同一構造であることが低コストの観点から好ましい。いずれの連結部材11,12も、各ロッド9が自身の長手方向に平行な軸線まわりに回転することを防止する機能を有する。
【0023】
また、パラレルメカニズム1は、エンドエフェクタ部(手先)13を回動可能に取り付けるためのブラケット14を有している。ブラケット14は、略正三角形状をした板状部材である。このブラケット14は、3本のアーム本体6によって、ブラケット14のエンドエフェクタ部13の取付面14a(図1におけるブラケット14の下面)がベース部2の取付面2aと平行(すなわち水平)になるように保持される。
【0024】
ブラケット14の各辺には取付片15が形成されている。各取付片15がそれぞれのアーム本体6の遊端部(第2アーム8を構成する一対のロッド9,9の遊端部)に連結されることで、ブラケット14は、各アーム本体6に対して、各アーム本体6の遊端部を中心として揺動する。詳しくは、ブラケット14の各取付片15の各端部が、対応する各ロッド9,9の遊端部に各ボールジョイント16,16(特許請求の範囲に記載の第2のボールジョイントに相当)によって連結される。なお、一対のボールジョイント16,16を結ぶ軸線C4(図2参照)も、電動モータ4の軸線C2に対して平行となる。このため、ブラケット14は、水平な軸線C4を中心として各アーム本体6に対して揺動することができる。そして、略正三角形状のブラケット14のすべての辺において、水平な軸線C4を中心として揺動できるように、ブラケット14が3本のアーム本体6によって支持されている。
【0025】
第1アーム7と第2アーム8との連結部における一対のボールジョイント10,10間の距離と、第2アーム8の各ロッド9とブラケット14との連結部における一対のボールジョイント16,16間の距離とは等しく設定されている。そのため、上述したように、第2アームを構成する一対のロッド9は、その長手方向の全長において互いに平行に配置される。軸線C2,C3,C4のいずれもが、ベース部2の取付面2aに平行であるから、第1アーム7、第2アーム8及びブラケット14がそれぞれ軸線C2,C3,C4を中心にどのように揺動したとしても、ブラケット14のエンドエフェクタ部13の取付面14aとベース部2の取付面2aとの平行関係が維持される。
【0026】
そして、電子制御装置からの指令に応じて、各電動モータ4の出力軸に固定されたアーム支持部材5の回転位置が制御されることで、各第1アーム7の遊端部の位置が制御される。この制御された各第1アーム7の遊端部の位置に、各第2アーム8の遊端部の位置が追従し、その結果、ブラケット14のエンドエフェクタ部13の取付面14aの位置が決まる。このとき、上述したように、ブラケット14は、水平姿勢を維持したまま移動する。
【0027】
また、パラレルメカニズム1は、その中央に鉛直方向に延びる旋回軸ロッド20と、この旋回軸ロッド20を回転するための電動モータ21とを有する。電動モータ21は、その軸出力を鉛直下方に向けた状態でベース部2に固定されている。旋回軸ロッド20の一端部は、自在継手(以下「ユニバーサルジョイント」という)22を介して電動モータ21の出力軸に連結されている。一方、旋回軸ロッド20の他端部は、ユニバーサルジョイント23を介してエンドエフェクタ部13に接続されている。旋回軸ロッド20は、ロッド20aとシリンダ20bとにより実現され、伸縮自在に構成されている。さらに、旋回軸ロッド20はボールスプラインであるため、ロッド20aの回転をシリンダ20bに伝達することが可能である。旋回軸ロッド20の両端部にユニバーサルジョイント22,23が採用されているため、ブラケット14が3つの電動モータ4の駆動により上下、前後左右の所定の位置に移動したとしても、旋回軸ロッド20は、その所定位置に追従して移動することができる。なお、電動モータ21も、上述した電子制御装置に接続されており、電動モータ21の出力軸の回転がこの電子制御装置により制御されることにより、エンドエフェクタ部13の回転位置が制御される。
【0028】
続いて、図3を参照して、ロッド9の遊端部と、ブラケット14とを揺動可能に連結するボールジョイント16の構造について説明する。ここで、図3は、ボールジョイント16の断面図である。なお、このボールジョイント16の構造と、ロッド9の基端部と第1アーム7の遊端部とを連結するボールジョイント10の構造とは同一又は同様であるので、ここでは、ボールジョイント10の構造についての説明を省略する。
【0029】
ボールジョイント16は、例えば鋼鉄製のボールスタッド30と、ソケット部材としてのロッド33と、受け部としての樹脂カップ37とを有して構成されている。
【0030】
ボールスタッド30は、その先端部において、一体的に設けられた球状外周面を有する球状頭部31を有している。また、ボールスタッド30の球状頭部31には、軸部32が一体的に突設されている。
【0031】
ロッド33は、その一端部において、球状頭部31の球状外周面に略対応した内周面を有する半球状凹部34及び、該半球状凹部34から滑らかに連続するリング形状の延長部35が形成されたソケット36を備えている。ソケット36に形成された半球状凹部34は、図3に示された静止状態において、球状頭部31の先端部から赤道38までを保持するように形成されている。なお、球状頭部31の赤道38とは、ボールスタッド30の中心軸に直交する平面が、球状頭部31の直径が最大となる位置にある時の平面と球状頭部31との交線をいう。
【0032】
延長部35は、略円筒状に形成されており、延長部35の中心軸が、一対のロッド9,9(ロッド33,33)それぞれの中心軸により定義される平面に対して平行に、かつ、一対のロッド9,9(ロッド33,33)それぞれの中心軸に対して垂直に延びるように形成されている。延長部35は、その内径が球状頭部31の直径と同じかわずかに大きく形成されている。また、本実施形態では、球状頭部31の直径16mmに対して、延長部35の長さδを0.5mmに設定した。なお、延長部35の長さδは、例えば、球状頭部31の直径、連結部材12の全長(或いは、連結部材12が含む引張コイルバネの密着長)、負荷などの使用条件等を考慮して設定することが好ましい。
【0033】
ソケット36に形成された半球状凹部34及び延長部35と、そこに保持されたボールスタッド30の球状頭部31との間には、樹脂カップ37が介装されている。樹脂カップ37は、半球状凹部34及び延長部35の内面に密着するように装着されている。なお、樹脂カップ37を形成する樹脂材料としては、例えばフッ素樹脂などの低摩擦性のものが好適に用いられる。
【0034】
上述したソケット36内に、球状頭部31が収容、保持されることによって、ボールスタッド30が揺動自在かつ回動自在に連結される。また、ボールスタッド30の軸部32には、ブラケット14の取付片15が固定されている。一方、ロッド33には、ロッド9の先端部が挿入され、ロッド33とロッド9とが互いに回り止めされた状態で固定される。さらに、対となって第2アーム8を構成する他方のロッド9も同様に、ボールジョイント16を介してブラケット14の取付片15に連結される。これにより、第2アーム8とブラケット14とが揺動可能に連結される。
【0035】
ここで、パラレルメカニズム1の動作中にエンドエフェクタ部13(ブラケット14)に生じる外力は、分解されて各ロッド9に対しては軸方向の負荷として働く。以上の構成において、ロッド9の軸方向に負荷が加えられた場合、ソケット36に形成された半球状凹部34及び該半球状凹部34から滑らかに連続する延長部35によって、ソケット36に作用する反力(ロッド9の軸方向に働く負荷に対する反力)が垂直に受け止められる。そのため、ソケット36を外す方向に作用する斥力(軸部32の軸線方向に対する反力の分力)の発生が抑えられる。
【0036】
本実施形態によれば、ボールジョイント16を構成するソケット36に半球状凹部34から滑らかに連続する延長部35が形成されているため、ソケット36に作用する反力を垂直に受け止めることができ、ソケット36を外す方向に作用する斥力の発生を抑えることができる。そのため、ボールスタッド30の球状頭部31がソケット36から外れることを抑制することが可能となる。一方、延長部35の開口部の内径が、球状頭部31の直径と同じかわずかに大きく形成されているため、例えば分解整備等を行う際には、ソケット36をボールスタッド30の軸部の軸線方向に沿って外側に、連結部材12の引張力よりも大きい力で引っ張ることにより、ボールスタッド30をソケット36から外すことができる。その結果、メンテナンス性を悪化させることなく、ボールジョイント16の外れを抑制することが可能となる。
【0037】
特に、本実施形態では、延長部35が、略円筒状に形成されるとともに、その中心軸が、一対のロッド9,9(ロッド33,33)それぞれの中心軸により定義される平面に対して平行に、かつ、一対のロッド9,9(ロッド33,33)それぞれの中心軸に対して垂直に延びるように形成されているため、パラレルメカニズム1の動きに伴い、ロッド9(ロッド33)の中心軸方向に過大な負荷がかかったとしても、ボールジョイント16の外れを確実に抑制することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態によれば、延長部35の長さδが、球状頭部31の直径、連結部材12の全長、負荷などの使用条件等を考慮して設定されるため、延長部35の長さδを適切に設定することができ、パラレルメカニズム1のメンテナンス性及び可動範囲を確保しつつ、ボールジョイント16の外れを抑制することが可能となる。
【0039】
ここで、本実施形態によって、ボールジョイントの外れを抑制することが可能であることを実施例及び比較例によって、具体的に示す。実施例及び比較例では、エンドエフェクタ部の座標(X,Y,Z)が(450,−260,860)(mm)の位置で−Y方向に加える負荷(N)を変化させ、ボールジョイントが外れる負荷(N)をロードセルを用いて測定した(図5、測定方法の欄を参照)。
【0040】
実施例では、上述したボールジョイント16と同じ構造のボールジョイントを用いた。一方、比較例では、延長部が形成されておらず、かつ、半球状凹部の開口端部が図4に示された静止状態において球状頭部の赤道から1mm先端側に位置するボールジョイント(図4参照)を用いた。
【0041】
測定結果を図5に示す。図5から分かるように、比較例では、150(N)の負荷(軸力換算では430(N))をかけたときに1軸のボールジョイントに外れが生じた。一方、実施例では、350(N)の負荷(軸力換算では1000(N))をかけた場合でもボールジョイントの外れは発生しなかった。以上のことから、本実施形態の有効性が確認された。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、延長部35が略円筒状に形成されていたが、延長部の形状は略円筒状には限られない。例えば、延長部は、側面方向から見た場合に台形状となるように形成されていてもよい。
【0043】
上記実施形態では、ロッド9の遊端部とブラケット14とを揺動可能に連結するボールジョイント16と、ロッド9の基端部と第1アーム7の遊端部とを連結するボールジョイント10とは同一の構造のものを用いたが、例えば、各ボールジョイントに加わる負荷等を考慮して、異なる構造のものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態に係るパラレルメカニズムの全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1中の矢印A1方向から見たパラレルメカニズムを示す図である。
【図3】実施形態に係るパラレルメカニズムに用いられるボールジョイントの断面図である。
【図4】比較例として用いたボールジョイントの断面図である。
【図5】実施例及び比較例の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 パラレルメカニズム
2 ベース部
3 支持部材
4,21 電動モータ
5 アーム支持部材
6 アーム本体
7 第1アーム
8 第2アーム
9 ロッド
10,16 ボールジョイント
11,12 連結部材
13 エンドエフェクタ部
14 ブラケット
15 取付片
20 旋回軸ロッド
22,23 ユニバーサルジョイント
30 ボールスタッド
31 球状頭部
32 軸部
33 ロッド
34 半球状凹部
35 延長部
36 ソケット
37 樹脂シート
38 赤道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアームを介してベース部とブラケットとが並列に連結されるパラレルメカニズムにおいて、
前記複数のアームを構成する各アームは、
前記ベース部に取り付けられたアクチュエータにその一端が連結される第1リンクと、
一対のロッドを有し、前記第1リンクの他端と前記ブラケットとを連結する第2リンクと、
前記第2リンクを構成する前記一対のロッドの一端と前記第1リンクの他端とを揺動可能に連結する第1のボールジョイントと、前記一対のロッドの他端と前記ブラケットとを揺動可能に連結する第2のボールジョイントと、
前記一対のロッドを互いに引っ張る方向に付勢する引張部材と、を備え、
前記第1のボールジョイント及び第2のボールジョイントの内、少なくともいずれかのボールジョイントは、軸部と球状頭部とを含むボールスタッドと、該ボールスタッドの球状頭部を揺動回動自在に保持するソケットとを有し、
前記ソケットは、前記球状頭部の先端部から赤道までを保持する半球状凹部と、該半球状凹部から滑らかに連続し、前記球状頭部の赤道から前記軸部側へ延びる延長部とを含み、
前記延長部の開口部の内径は、前記球状頭部の直径と同じか該直径よりも大きく形成されていることを特徴とするパラレルメカニズム。
【請求項2】
前記一対のロッドは、それぞれの中心軸が互いに平行となるように配置されており、
前記延長部は、略円筒状に形成されており、該延長部の中心軸は、前記一対のロッドそれぞれの中心軸により定義される平面に対して平行に、かつ、前記一対のロッドそれぞれの中心軸に対して略垂直に延びていることを特徴とする請求項1に記載のパラレルメカニズム。
【請求項3】
前記延長部の長さは、前記球状頭部の直径に応じて設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のパラレルメカニズム。
【請求項4】
前記延長部の長さは、前記引張部材の全長に応じて設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパラレルメカニズム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−248287(P2009−248287A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102966(P2008−102966)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【出願人】(000141886)株式会社京都製作所 (83)
【Fターム(参考)】