説明

パラレルリンク機構、等速自在継手、およびリンク作動装置

【課題】 精密で広範な作動範囲の高速動作が可能であり、機構全体が軽量でコンパクトなパラレルリンク機構を提供する。
【解決手段】 パラレルリンク機構1は、基端側および先端側のリンクハブ2と、3組以上のリンク機構とを有する。リンク機構は、四つの回転対偶からなる三節連鎖のリンク機構であり、基端側および先端側の端部リンク部材5と中央リンク部材とでなる。リンク機構の回転対偶は、一対の対偶構成部材2,5が互いに軸受12を介して連結されており、一方の対偶構成部材5に設けられた軸部13が軸受12の内輪12aの内周に嵌合し、かつ他方の対偶構成部材2に設けられた環状内面形成部15が軸受12の外輪12bの外周に嵌合する。軸部13と環状内面形成部15とにより、軸受12の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造19,21を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3次元空間において精密で広範な作動範囲の動作を行えるパラレルリンク機構、並びに、このパラレルリンク機構をそれぞれ備え医療機器や産業機器等に用いられる等速自在継手およびリンク作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パラレルリンク機構を具備する作業装置の一例が特許文献1に、2軸間で動力伝達を行う等速自在継手の一例が特許文献2に、医療機器や産業機器等に用いられるリンク作動装置の一例が特許文献3にそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−94245号公報
【特許文献2】特開2002−349593号公報
【特許文献3】米国特許第5,893,296号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパラレルリンク機構は、各リンクの作動角が小さいため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定するには、リンク長さを長くする必要がある。それにより、機構全体の寸法が大きくなって、装置が大型になってしまうという問題があった。また、リンク長さを長くすると、機構全体の剛性の低下を招く。そのため、トラベリングプレートに搭載されるツールの重量、つまりトラベリングプレートの可搬重量も小さいものに制限されるという問題もあった。これらの理由から、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が要求される医療機器等に用いるのは難しい。
【0005】
特許文献2の等速自在継手、および特許文献3のリンク作動装置は、3節連鎖のリンク機構を3組以上設けたパラレルリンク機構としたことにより、コンパクトな構成でありながら、広範な作動範囲での動力伝達および精密な動作が可能となっている。ただし、機構全体の高剛性化を図ろうとして、各リンク機構の回転対偶部をサイズアップさせると、リンク機構の各部材間の干渉が起こりやすくなり、作動範囲が狭くなるという問題があった。また、リンク機構の各部材間の干渉を避けるためには、リンク機構のリンクの長さを長くしなければならず、機構全体の寸法が大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、精密で広範な作動範囲の高速動作が可能であり、機構全体が軽量でコンパクトなパラレルリンク機構を提供することである。
この発明の他の目的は、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の折れ角が変わっても、入力軸と出力軸とが等速回転する状態に維持され、精密で広範な作動範囲の高速動作が可能であり、全体が軽量でコンパクトな等速自在継手を提供することである。
この発明の他の目的は、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを任意の姿勢に変更することができ、精密で広範な作動範囲の高速動作が可能であり、全体が軽量でコンパクトなリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなる、四つの回転対偶を有する三節連鎖構造である。前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状である。この発明のパラレルリンク機構は、上記構成において、前記各リンク機構の各回転対偶は、一対の対偶構成部材が互いに軸受を介して連結されており、一方の対偶構成部材に設けられた軸部が前記軸受の内輪の内周に嵌合し、かつ他方の対偶構成部材に設けられた環状内面形成部が前記軸受の外輪の外周に嵌合し、前記軸部と前記環状内面形成部とにより、軸受の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造を構築したことを特徴とする。
【0008】
この構成によると、基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、3組以上のリンク機構とで、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の折れ角は最大で約±90°であり、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。
【0009】
また、各回転対偶に軸受を介在させたことにより、各回転対偶での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。回転対偶の一方の対偶構成部材に設けられた軸部と他方の対偶構成部材に設けられた環状内面形成部とで構築されるシール構造により、上記軸受の内部と外部間の潤滑剤等の出入りが規制させる。このように、パラレルリンク機構を構成する部品でシール構造を構築することで、別部材からなるシールを設ける必要がなくなり、軸受の幅寸法を抑えることができる。そのため、リンク機構の部品間の干渉が起り難く、作業範囲が広くなる。また、軸受周辺の寸法が小さくなるため、パラレルリンク機構全体の軽量・コンパクト化を実現できる。
【0010】
この発明において、前記シール構造は、前記軸部の一部の外周面と、前記環状内面形成部の一部の内周面との間の隙間により構築すると良い。
上記隙間が狭いほど、軸受内部の潤滑剤が外部へ漏れることや、外部から異物が軸受内部へ侵入することを防止する効果が高くなる。軸部および環状内面形成部は、一対の対偶構成部材における軸受周辺の部位であり、回転対偶部に軸受を設ける場合に必ず必要となる部位である。そのため、別部材を設置することなく、シール構造を構築できる。
【0011】
上記構成の場合、前記軸部の一部を、前記軸受の内輪の内周に嵌合した部分よりも外径が大きい段差部とし、この段差部の段差面に前記内輪の端面を当接させて内輪の軸方向の位置決めさせると良い。
軸部の段差部は、軸受の内輪を位置決めするために必要であり、環状内面形成部の一部に内周面との距離が近い部位である。この軸部の段差部を利用することにより、別部材を設置することなく、容易に隙間によるシール構造を構築できる。
【0012】
また、前記環状内面形成部の一部を、前記軸受の外輪の外周に嵌合した部分よりも内径が小さい段差部とし、この段差部の段差面に前記外輪の端面を当接させて外輪の軸方向の位置決めさせると良い。
環状内面形成部の段差部は、軸受の外輪を位置決めして固定するために必要であり、軸部の一部の外周面との距離が近い部位である。この環状内面形成部の段差部を利用することにより、別部材を設置することなく、容易に隙間によるシール構造を構築できる。
【0013】
この発明において、前記軸受の内輪の軸方向位置を固定する内輪固定手段と、この内輪固定手段と前記軸受の内輪との間に介在する間座部材とを設け、前記間座部材と前記環状内面形成部とにより、軸受の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造を構築しても良い。
一般的に、内輪に対して均一に荷重がかかるように、内輪固定手段と内輪との間に間座部材を設ける。この間座部材を利用することにより、別部材を設置することなく、容易に隙間によるシール構造を構築できる。また、組立性等の問題により、軸部と環状内面形成部だけでは軸受両端のシール構造を構築することは難しいが、間座部材と環状内面形成部によるシール構造を併用することで、軸受両端のシール構造を容易に構築することができる。
【0014】
上記構成の場合、前記シール構造は、前記間座部材の一部の外周面と、前記環状内面形成部の一部の内周面との間の隙間により構築すると良い。
上記隙間が狭いほど、軸受内部の潤滑剤が外部へ漏れることや、外部から異物が軸受内部へ侵入することを防止する効果が高くなる。間座部材は軸受周辺の部材であり、かつ環状内面形成部は一方の対偶構成部材における軸受周辺の部位であるため、シール構造の構築に利用しやすい。
【0015】
また、前記環状内面形成部の一部を、内径が前記軸受の外輪の外径と等しい外輪嵌合部とし、この外輪嵌合部に前記外輪を嵌合させると良い。
環状内面形成部の一部を内径が軸受の外輪の外径と等しい外輪嵌合部とすることにより、別部材を用いずに、環状内面形成部に軸受の外輪を嵌合させることができる。
【0016】
また、前記環状内面形成部の一部を、前記軸受の外輪の外周に嵌合した部分よりも内径が小さい段差部とし、この段差部の段差面に前記外輪の端面に当接させて外輪の軸方向の位置決めさせると良い。
環状内面形成部の段差部は、軸受の外輪を位置決めして固定するために必要であり、間座部材の一部の外周面との距離が近い部位である。この環状内面形成部の段差部を利用することにより、別部材を設置することなく、容易に隙間によるシール構造を構築できる。
【0017】
前記内輪固定手段を、前記軸部に形成されたねじ部に螺合するナットとすると良い。
内輪固定手段がナットであると、軸受の内輪の軸方向位置を容易に固定することができるだけでなく、締付けトルクにより軸受の予圧を管理することができる。
【0018】
この発明において、前記シール構造をラビリンス構造とすると良い。
ラビリンス構造とすることで、隙間だけによるシール構造よりもシール性を向上させることができる。
【0019】
この発明において、前記環状内面形成部は前記基端側の端部リンク部材および前記先端側の端部リンク部材に設けられ、前記軸部は前記基端側のリンクハブ、前記先端側のリンクハブ、および前記中央リンク部材に設けられていると良い。
この構成であると、リンク機構の各部品の形状が基端側と先端側で対称となる。それにより、各回転対偶に設けた軸受のシール構造を基端側と先端側で同じ構成にできるため、製作コストを削減できる。
【0020】
あるいは、前記環状内面形成部は前記基端側のリンクハブ、前記先端側のリンクハブ、および前記中央リンク部材に設けられ、前記軸部は前記基端側の端部リンク部材および前記先端側の端部リンクに設けられていても良い。
この場合も、リンク機構の各部品の形状が基端側と先端側で対称となり、各回転対偶に設けた軸受のシール構造を基端側と先端側で同じ構成にできるため、製作コストを削減できる。
【0021】
この発明において、前記軸受をアンギュラ玉軸受とすると良い。
アンギュラ玉軸受は、小型でかつ剛性の高い軸受であるため、モーメント荷重が作用し、コンパクトな構成を要求されるパラレルリンク機構の回転対偶部に設置される軸受に最適である。また、小型のアンギュラ玉軸受は標準品でシール付きのものは少なく、従来はパラレルリンク機構に使用することが難しかったが、この発明のシール構造を構築することで小型のアンギュラ玉軸受を使用することが可能になる。
【0022】
この発明の等速自在継手は、上記いずれかのパラレルリンク機構における前記基端側のリンクハブに入力軸を設け、前記先端側のリンクハブに出力軸を設けたことを特徴とする。
パラレルリンク機構の各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であるため、幾何学的対称性から、基端側のリンクハブおよび基端側の端部リンク部材と、先端側のリンクハブおよび先端側の端部リンク部材とが同じに動き、基端側と先端側は同じ回転角になって等速で回転する。このため、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の折れ角が変わっても、入力軸と出力軸とが等速回転する状態に維持される。
また、上記のような軽量・コンパクト化を実現可能なパラレルリンク機構を用いることにより、等速自在継手の軽量・コンパクト化を実現できる。
【0023】
この発明のリンク作動装置は、上記いずれかのパラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、四つの回転対偶のうちの少なくとも一つの回転対偶の角度を変更させる姿勢変更用アクチュエータを設けたことを特徴とする。
3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組について、基端側の端部リンク部材の回転角度が決まれば基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢も決まる。よって、3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組に姿勢変更用アクチュエータを設け、これら姿勢変更用アクチュエータを適正に制御することで、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを任意の姿勢に変更することができる。
また、上記のような軽量・コンパクト化を実現可能なパラレルリンク機構を用いることにより、リンク作動装置の軽量・コンパクト化を実現できる。
【発明の効果】
【0024】
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなる、四つの回転対偶を有する三節連鎖構造であり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記各リンク機構の各回転対偶は、一対の対偶構成部材が互いに軸受を介して連結されており、一方の対偶構成部材に設けられた軸部が前記軸受の内輪の内周に嵌合し、かつ他方の対偶構成部材に設けられた環状内面形成部が前記軸受の外輪の外周に嵌合し、前記軸部と前記環状内面形成部とにより、軸受の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造を構築したため、精密で広範な作動範囲の高速動作が可能であり、機構全体が軽量でコンパクトにできる。
【0025】
この発明の等速自在継手は、上記いずれかのパラレルリンク機構における前記基端側のリンクハブに入力軸を設け、前記先端側のリンクハブに出力軸を設けたため、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の折れ角が変わっても、入力軸と出力軸とが等速回転する状態に維持され、精密で広範な作動範囲の高速動作が可能であり、全体が軽量でコンパクトにできる。
【0026】
この発明のリンク作動装置は、上記いずれかのパラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、四つの回転対偶のうちの少なくとも一つの回転対偶の角度を変更させる姿勢変更用アクチュエータを設けたため、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを任意の姿勢に変更することができ、精密で広範な作動範囲の高速動作が可能であり、全体が軽量でコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態にかかるパラレルリンク機構の一部を省略した正面図である。
【図2】同パラレルリンク機構の異なる状態を示す一部を省略した正面図である。
【図3】同パラレルリンク機構を3次元的に表わした斜視図である。
【図4】同パラレルリンク機構の一つリンク機構を直線で表現した図である。
【図5】同パラレルリンク機構の基端側のリンクハブ等の水平断面図である。
【図6】図5の一部分の拡大図である。
【図7】図5の異なる一部分の拡大図である。
【図8】この発明の異なる実施形態にかかるパラレルリンク機構の一部を省略した正面図である。
【図9】同パラレルリンク機構の基端側のリンクハブ等の水平断面図である。
【図10】図9の一部分の拡大図である。
【図11】図9の異なる一部分の拡大図である。
【図12】シール構造の異なる例を示す断面である。
【図13】この発明の一実施形態にかかる等速自在継手の一部を省略した正面図である。
【図14】この発明の一実施形態にかかるリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
【図15】この発明の異なる実施形態にかかるリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
【図16】同リンク作動装置の部分断面図である。
【図17】図16の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明にかかるパラレルリンク機構の一実施形態を図1〜図7と共に説明する。図1および図2はそれぞれ異なる状態を示す正面図であり、このパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3組のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。図1および図2では、1組のリンク機構4のみが示されている。
【0029】
図3は、パラレルリンク機構1を三次元的に表わした斜視図である。各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5、先端側の端部リンク部材6、および中央リンク部材7で構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材5,6はL字状をなし、基端がそれぞれ基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3にそれぞれ回転自在に連結されている。中央リンク部材7は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材5,6の先端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0030】
基端側および先端側の端部リンク部材5,6は球面リンク構造で、3組のリンク機構4における球面リンク中心PA,PB(図1、図2)は一致しており、また、その球面リンク中心PA,PBからの距離Dも同じである。端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶の中心軸は、ある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。
【0031】
3組のリンク機構4は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、各リンク部材5,6,7を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。図4は、一組のリンク機構4を直線で表現した図である。
【0032】
この実施形態のリンク機構4は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。図1は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBとが同一線上にある状態を示し、図2は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが所定の作動角をとった状態を示す。各リンク機構4の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離Dは変化しない。
【0033】
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3組のリンク機構4とで、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブが直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBの折れ角θの最大値(最大折れ角)を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φを0°〜360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3が傾斜した水平角度のことである。
【0034】
基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3は、その中心部に貫通孔10が軸方向に沿って形成され、外形が球面状をしたドーナツ形状をしている。これら基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の外周面の円周方向に等間隔の位置に、基端側の端部リンク部材5および先端側の端部リンク部材6がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0035】
図5は、基端側のリンクハブ2等の水平断面図であって、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部T1、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2、および先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部T3が図示されている。なお、回転対偶部T2,T3については、一つのリンク機構4のものだけが図示されている。
【0036】
基端側のリンクハブ2は、前記軸方向の貫通孔10と外周側とを連通する半径方向に延びる連通孔11が円周方向3箇所に形成され、各連通孔11内に設けた二つの軸受12により軸部材13がそれぞれ回転自在に支持されている。軸部材13の外側端部は基端側のリンクハブ2から突出し、その突出部に基端側の端部リンク部材5が連結され、先端ねじ部13aに螺着したナット14によって、間座部材16と共に締付け固定されている。つまり、回転対偶部T1は、一対の対偶構成部材である基端側のリンクハブ2と他方の対偶構成部材である基端側の端部リンク部材5とが、軸受12を介して互いに回転自在に連結されている。
【0037】
基端側のリンクハブ2における前記連通孔11の周辺部分が、請求の範囲で言う環状内面形成部15である。図示例では、環状内面形成部15はリンクハブ2の一部とされているが、環状内面形成部15はリンクハブ2と別体であっても良い。また、前記軸部材13が、請求の範囲で言う軸部である。図示例では、軸部である軸部材13は端部リンク部材5とは別部材とされているが、軸部は端部リンク部材5と一体に設けられていても良い。
【0038】
より詳しくは、図6の部分拡大図に示すように、二つの軸受12はアンギュラ玉軸受であり、例えば背面組合せで配置されている。軸部材13の内端部分は、軸受12の内輪12aの内周に嵌合した部分13bよりも外径が大きい段差部13cとされ、この段差部13cの段差面13dが内側の軸受12の内輪12aの端面に当接することで、内輪12aを軸方向に位置決めしている。また、外側の軸受12の内輪12aと端部リンク部材5との間には、両端をこれらに接して間座部材16が設けられている。よって、前記ナット14を締付けることにより、端部リンク部材5および間座部材16を介して内輪12aが前記段差面13dに押付けられて、内輪12aを締付け固定すると共に、軸受12に対して予圧を付与する。ナット14は、内輪12aの軸方向位置を固定する内輪固定手段である。
【0039】
環状内面形成部15の一部は、軸受12の外輪12bの外周に嵌合した部分すなわち外輪嵌合部15aよりも内径が小さい段差部15bとされ、この段差部15bの段差面15cが内側の軸受12の外輪12bの端面に当接することで、外輪12bを軸方向に位置決めしている。また、外側の軸受12の外輪12bは、環状内面形成部15に取付けた止め輪17によって抜け止めされている。
【0040】
前記軸部材13の段差部13cの外周面と前記環状内面形成部15の段差部15bの内周面とは、僅かな隙間18を介して非接触で対向している。これにより、軸部材13の段差部13cと環状内面形成部15の段差部15bとは互いに回転が可能でありながら、軸受12の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造19が構築されている。つまり、隙間18を狭くすることで、軸受12の内部の潤滑剤が外部に漏れることや、外部から軸受12の内部へ異物が侵入することを防いでいる。上記隙間18が狭いほどシール効果が高い。
【0041】
前記間座部材16の軸方向外側部分は、前記止め輪17を避けて外径側へ延びたつば状部16aとして形成されており、このつば状部16aの外周面と環状内面形成部15の一部である外端部15dとが、僅かな隙間20を介して非接触で対向している。これにより、間座部材16のつば状部16aと環状内面形成部15の外端部15dとは互いに回転が可能であり、かつ前記同様のシール機能を有するシール構造21が構築されている。上記隙間20が狭いほどシール効果が高い。
【0042】
図5において、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2は、中央リンク部材7の連通孔23内に二つの軸受24を設け、これら軸受24により、基端側の端部リンク部材5の先端の軸部25を回転自在に支持する構造である。つまり、回転対偶部T2は、一対の対偶構成部材である基端側の端部リンク部材5と他方の対偶構成部材である中央リンク部材7とが、軸受24を介して互いに回転自在に連結されている。軸受24は、間座部材26を介して、軸部25の先端ねじ部25aに螺着したナット27によって締付け固定されている。
【0043】
この回転対偶部T2の場合、中央リンク部材7における前記連通孔23の周辺部分が、請求の範囲で言う環状内面形成部28である。図示例では、環状内面形成部28は中央リンク部材7の一部とされているが、環状内面形成部28は中央リンク部材7と別体であっても良い。また、図示例では、軸部25は端部リンク部材5と一体に設けられているが、軸部25は端部リンク部材5と別部材であっても良い。
【0044】
より詳しくは、図7の部分拡大図に示すように、二つの軸受24はアンギュラ玉軸受であり、例えば背面組合せで配置されている。軸部25の基端部分は、軸受24の内輪24aの内周に嵌合した部分25bよりも外径が大きい段差部25cとされ、この段差部25cの段差面25dが基端側の軸受24の内輪24aの端面に当接することで、内輪24aを軸方向に位置決めしている。また、先端側の軸受24の内輪24aは、前記間座部材26に接している。よって、前記ナット27を締付けることにより、間座部材26を介して内輪24aが前記段差面25dに押付けられて、内輪24aを締付け固定すると共に、軸受24に対して予圧を付与する。ナット27は、内輪24aの軸方向位置を固定する内輪固定手段である。
【0045】
環状内面形成部28の一部は、軸受24の外輪24bの外周に嵌合した部分すなわち外輪嵌合部28aよりも内径が小さい段差部28bとされ、この段差部28bの段差面28cが基端側の軸受24の外輪24bの端面に当接することで、外輪24bを軸方向に位置決めしている。また、先端側の軸受24の外輪24bは、環状内面形成部28に取付けた止め輪29によって抜け止めされている。
【0046】
前記軸部25の段差部25cの外周面と前記環状内面形成部28の段差部28bの内周面とは、僅かな隙間30を介して非接触で対向している。これにより、軸部25の段差部25cと環状内面形成部28の段差部28bとは互いに回転が可能でありながら、軸受24の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造31が構築されている。つまり、隙間30を狭くすることで、軸受24の内部の潤滑剤が外部に漏れることや、外部から軸受24の内部へ異物が侵入することを防いでいる。上記隙間30が狭いほどシール効果が高い。
【0047】
前記間座部材26の軸方向先端側部分は、前記止め輪29を避けて外径側へ延びたつば状部26aとして形成されており、このつば状部26aの外周面と環状内面形成部28の一部である先端部28dとが、僅かな隙間32を介して非接触で対向している。これにより、間座部材26のつば状部26aと環状内面形成部28の先端部28dとは互いに回転が可能であり、かつ前記同様のシール機能を有するシール構造33が構築されている。上記隙間32が狭いほどシール効果が高い。
【0048】
以上、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部T1、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2について説明した。詳細な説明は省略するが、先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部T4は回転対偶部T1と同じ構造であり、先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部T3は回転対偶部T2と同じ構成である。
【0049】
このように、各リンク機構4における4つの回転対偶部T1〜T4に軸受12,24を設けた構造とすることにより、各回転対偶での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0050】
この軸受12,24を設けた構造では、軸受12,24に予圧を付与することにより、ラジアル隙間とスラスト隙間をなくし、回転対偶のがたつきを抑えることができ、基端側のリンクハブ2側と先端側のリンクハブ3側間の回転位相差がなくなり等速性を維持できると共に振動や異音の発生を抑制できる。特に、前記軸受12,24の軸受隙間を負すきまとすることにより、入出力間に生じるバックラッシュを少なくすることができる。
【0051】
軸受12,24として、例えばアンギュラ玉軸受が用いられている。アンギュラ玉軸受は、小型でかつ剛性の高い軸受であるため、モーメント荷重が作用し、コンパクトな構成を要求されるパラレルリンク機構1の回転対偶部T1〜T4に設置される軸受12,24に最適である。また、小型のアンギュラ玉軸受は標準品でシール付きのものは少なく、従来はパラレルリンク機構に使用することが難しかったが、この発明のシール構造を構築することで小型のアンギュラ玉軸受を使用することが可能になる。場合によっては、アンギュラ玉軸受以外の玉軸受を用いても良く、あるいはころ軸受を用いても良い。
【0052】
基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の環状内面形成部15に軸受12を埋設状態で設けたことにより、パラレルリンク機構1全体の外形を大きくすることなく、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の外形を拡大することができる。そのため、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3を他の部材に取付けるための取付スペースの確保が容易である。
【0053】
リンクハブ2(3)と端部リンク部材5(6)の回転対偶部T1(T4)では、軸受12の軸方向一方側に、回転対偶の一方の対偶構成部材である端部リンク部材5(6)に設けられた軸部材13と他方の対偶構成部材であるリンクハブ2(3)に設けられた環状内面形成部15とでシール構造19が構築され、かつ軸方向他方側に、前記軸部材13の外周に嵌合する間座部材16と前記環状内面形成部15とでシール構造21が構築されている。
リンクハブ2(3)および端部リンク部材5(6)は、パラレルリンク機構1を構成する部品である。また、間座部材16は、軸受12の内輪12aを内輪固定手段であるナット14で締付け固定する場合に、内輪12aに対して均一に荷重がかかるように、一般的に内輪12aとナット14の間に設けられる部品である。このように、必要不可欠な部品だけでシール構造19,21を構築することで、別部材からなるシールを設ける必要がなくなり、軸受12の幅寸法を抑えることができる。そのため、リンク機構4の部品間の干渉が起り難く、作業範囲が広くなる。また、軸受12周辺の寸法が小さくなるため、パラレルリンク1構1全体の軽量・コンパクト化を実現できる。
組立性等の問題により、軸部材13と環状内面形成部15だけでは軸受12の両端にシール構造を構築することは難しいが、間座部材16と環状内面形成部15とによるシール構造を併用することで、軸受24の両端にシール構造19,21を容易に構築することができる。
【0054】
端部リンク部材5(6)と中央リンク部材7の回転対偶部T2(T3)では、軸受24の軸方向一方側に、回転対偶の一方の対偶構成部材である端部リンク部材5(6)に設けられた軸部25と他方の対偶構成部材である中央リンク部材7に設けられた環状内面形成部28とでシール構造31が構築され、かつ軸方向他方側に、前記軸部25の外周に嵌合する間座部材26と前記環状内面形成部28とでシール構造33が構築されている。
前記同様に、必要不可欠な部品だけでシール構造31,33を構築することで、別部材からなるシールを設ける必要がなくなり、軸受24の幅寸法を抑えることができる。そのため、リンク機構4の部品間の干渉が起り難く、作業範囲が広くなる。また、軸受24周辺の寸法が小さくなるため、パラレルリンク1構1全体の軽量・コンパクト化を実現できる。
組立性等の問題により、軸部25と環状内面形成部28だけでは軸受24の両端にシール構造を構築することは難しいが、間座部材26と環状内面形成部28とによるシール構造を併用することで、軸受24の両端にシール構造31,33を容易に構築することができる。
【0055】
より詳しくは、前記シール構造19は、軸部材13の一部である段差部13cの外周面と、環状内面形成部15の一部である段差部15bの内周面との間の隙間18により構築されている。軸部材13の段差部13cは内輪12aの位置決めに利用され、環状内面形成部15の段差部15bは外輪12bの位置決めに利用される。両段差部13c,15bは互いに近い距離にあるため、別部材を設置することなく、容易に隙間18によるシール構造19を構築できる。
【0056】
前記シール構造21は、間座部材16の一部であるつば状部16aの外周面と環状内面形成部15の一部である外端部15dの内周面との間の隙間20により構築されている。間座部材16は内輪12aの締付け固定に利用され、環状内面形成部15の外端部15dは止め輪17の保持に利用される。間座部材16につば状部16aを設けて、つば状部16aの外周面と環状内面形成部15の外端部15dの内周面との距離を近くすることにより、別部材を設置することなく、容易に隙間20によるシール構造21を構築できる。
【0057】
前記シール構造31は、軸部25の一部である段差部25cの外周面と、環状内面形成部28の一部である段差部28bの内周面との間の隙間30により構築されている。軸部25の段差部25cは内輪24aの位置決めに利用され、環状内面形成部28の段差部28bは外輪24bの位置決めに利用される。両段差部25c,28bは互いに近い距離にあるため、別部材を設置することなく、容易に隙間30によるシール構造31を構築できる。
【0058】
前記シール構造33は、間座部材26の一部であるつば状部26aの外周面と環状内面形成部28の一部である外端部28dの内周面との間の隙間32により構築されている。間座部材26は内輪24aの締付け固定に利用され、環状内面形成部28の外端部28dは止め輪29の保持に利用される。間座部材26につば状部26aを設けて、つば状部26aの外周面と環状内面形成部28の外端部28dの内周面との距離を近くすることにより、別部材を設置することなく、容易に隙間32によるシール構造33を構築できる。
【0059】
図8ないし図11は、この発明のパラレルリンク機構の異なる実施形態を示す。このパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に対して端部リンク部材5,6をそれぞれ回転自在に支持する軸受12(図9)を外輪回転タイプとしたものである。基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部T1を例にとって説明すると、図9に示すように、基端側のリンクハブ2の円周方向の3箇所に軸部35が形成され、これら軸部35の外周に、並列に設けた二つの軸受12を介して端部リンク部材5が回転自在に支持されている。二つの軸受12は、端部リンク部材5に形成された連通孔34内に設けられ、間座部材36を介して、軸部35の先端ねじ部35aに螺着したナット37によって締付け固定されている。
【0060】
この回転対偶部T1の場合、端部リンク部材5における前記連通孔34の周辺部分が、請求の範囲で言う環状内面形成部38である。図示例では、環状内面形成部38は端部リンク部材5の一部とされているが、環状内面形成部38は端部リンク部材5と別体であっても良い。また、図示例では、軸部35はリンクハブ2と一体に設けられているが、軸部35はリンクハブ2と別部材であっても良い。
【0061】
より詳しくは、図10の部分拡大図に示すように、二つの軸受12はアンギュラ玉軸受であり、例えば背面組合せで配置されている。軸部35の基端部分は、軸受12の内輪12aの内周に嵌合した部分35bよりも外径が大きい段差部35cとされ、この段差部35cの段差面35dが基端側の軸受12の内輪12aの端面に当接することで、内輪12aを軸方向に位置決めしている。また、先端側の軸受12の内輪12aは、前記間座部材36に接している。よって、前記ナット37を締付けることにより、間座部材36を介して内輪12aが前記段差面35dに押付けられて、内輪12aを締付け固定すると共に、軸受12に対して予圧を付与する。ナット37は、内輪12aの軸方向位置を固定する内輪固定手段である。
【0062】
環状内面形成部38の一部は、軸受12の外輪12bの外周に嵌合した部分すなわち外輪嵌合部38aよりも内径が小さい段差部38bとされ、この段差部38bの段差面38cが基端側の軸受12の外輪12bの端面に当接することで、外輪12bを軸方向に位置決めしている。また、端部リンク部材5には、その側面から突出して基端が外輪嵌合部38aの一部となる環状のつば状部38dを有しており、外輪嵌合部38aに外輪12bが嵌合した状態で前記つば状部38dを内径側へかしめることで、外輪12bを締まり嵌めとし、またはつば状部38dの外輪12bよりも突出した部分である先端部38daの基端を外輪12bの端面に係合させることで、前記段差部38bとかしめ部分の間で外輪12bを軸方向に抜け止めした状態に位置決めしている。
【0063】
前記軸部35の段差部35cの外周面と前記環状内面形成部38の段差部38bの内周面とは、僅かな隙間40を介して非接触で対向している。これにより、軸部35の段差部35cと環状内面形成部38の段差部38bとは互いに回転が可能でありながら、軸受12の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造41が構築されている。つまり、隙間40を狭くすることで、軸受12の内部の潤滑剤が外部に漏れることや、外部から軸受12の内部へ異物が侵入することを防いでいる。上記隙間40が狭いほどシール効果が高い。
【0064】
前記間座部材36の軸方向先端側部分は、外輪12aとの接触を避けて外径側へ延びたつば状部36aとして形成されており、このつば状部36aの外周面と環状内面形成部38の一部である前記先端部38daの内周面とが、僅かな隙間42を介して非接触で対向している。これにより、間座部材36のつば状部36aと環状内面形成部38の先端部38daとは互いに回転が可能であり、かつ前記同様のシール機能を有するシール構造43が構築されている。上記隙間42が狭いほどシール効果が高い。
【0065】
図9において、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2は、端部リンク部材5の連通孔44内に二つの軸受24を設け、これら軸受24により中央リンク部材7の軸部45を回転自在に支持する構造である。つまり、回転対偶部T2は、一対の対偶構成部材である基端側の端部リンク部材5と他方の対偶構成部材である中央リンク部材7とが、軸受24を介して互いに回転自在に連結されている。軸受24は、間座部材46を介して、軸部45の先端ねじ部45aに螺着したナット47によって締付け固定されている。
【0066】
基端側の端部リンク部材5における前記連通孔44の周辺部分が、請求の範囲で言う環状内面形成部48である。図示例では、環状内面形成部48は端部リンク部材5の一部とされているが、環状内面形成部48は端部リンク部材5と別体であっても良い。また、図示例では、軸部45は中央リンク部材7と一体に設けられているが、軸部45は中央リンク部材7と別部材であっても良い。
【0067】
より詳しくは、図11の部分拡大図に示すように、二つの軸受24はアンギュラ玉軸受であり、例えば背面組合せで配置されている。軸部45の基端部分は、軸受24の内輪24aの内周に嵌合した部分45bよりも外径が大きい段差部45cとされている。この段差部45cは2段の段差45ca,45cbを有し、1段目の段差45caの段差面45dが基端側の軸受24の内輪24aの端面に当接することで、内輪24aを軸方向に位置決めしている。2段目の段差45cbは別部材としても良い。例えば、2段目の段差45cbをリング部材とし、その内周面を1段目の段差45caの外周面に嵌合させて固定しても良い。また、先端側の軸受24の内輪24aは、前記間座部材46に接している。よって、前記ナット47を締付けることにより、間座部材46を介して内輪24aが前記段差面45dに押付けられて、内輪24aを締付け固定すると共に、軸受24に対して予圧を付与する。ナット47は、内輪24aの軸方向位置を固定する内輪固定手段である。
【0068】
環状内面形成部48の一部は、軸受24の外輪24bの外周に嵌合した部分すなわち外輪嵌合部48aよりも内径が小さい段差部48bとされ、この段差部48bの段差面48cが先端側の軸受24の外輪24bの端面に当接することで、外輪24bを軸方向に位置決めしている。また、端部リンク部材5には、その側面から突出して基端が外輪嵌合部48aの一部となる環状のつば状部48dを有しており、外輪嵌合部48aに外輪24bが嵌合した状態で前記つば状部48dを内径側へかしめることで、外輪24bを締まり嵌めとし、またはつば状部48dの外輪24bよりも突出した部分である先端部48daの基端を外輪12bの端面に係合させることで、前記段差部48bとかしめ部分の間で外輪24bを軸方向に抜け止めした状態に位置決めしている。
【0069】
前記軸部45の段差部45cの外周面と前記環状内面形成部48の先端部48daの内周面とは、僅かな隙間50を介して非接触で対向している。これにより、軸部45の段差部45cと環状内面形成部48の先端部48daとは互いに回転が可能でありながら、軸受24の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造51が構築されている。つまり、隙間50を狭くすることで、軸受24の内部の潤滑剤が外部に漏れることや、外部から軸受24の内部へ異物が侵入することを防いでいる。上記隙間50が狭いほどシール効果が高い。
【0070】
前記間座部材46の外周面と環状内面形成部48の段差部48bの内周面とが、僅かな隙間52を介して非接触で対向している。これにより、間座部材46と環状内面形成部48の段差部48bとは互いに回転が可能であり、かつ前記同様のシール機能を有するシール構造53が構築されている。上記隙間52が狭いほどシール効果が高い。
【0071】
以上、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部T1、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部T2について説明した。詳細な説明は省略するが、先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部T4は回転対偶部T1と同じ構造であり、先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部T3は回転対偶部T2と同じ構成である。このように、各リンク機構4における4つの回転対偶部T1〜T4に軸受12,24を設けた構造とすることにより、前記実施形態の場合と同様の作用・効果が得られる。
【0072】
図12はシール構造の異なる例を示す。このシール構造は、図8ないし図11の実施形態におけるリンクハブ2(3)と端部リンク部材5(6)の回転対偶部T1(T4)に適用されたものであり、軸部35の段差部35cの外周面、および間座部材36のつば状部36aの外周面に、円周方向に沿った複数の溝55,56がそれぞれ設けられている。それにより、各シール構造57,58はラビリンスシール構造となり、隙間40,42だけのシール構造41,42(図10)よりもさらにシール性が向上する。このシール構造は、端部リンク部材5(6)と中央リンク部材7の回転対偶部T2(T3)に適用しても良い。また、図1ないし図7の実施形態の各回転対偶部T1〜T4に適用しても良い。
【0073】
図13は、この発明のパラレルリンク機構を用いた等速自在継手を示す。この等速自在継手61は、図1ないし図7に示すパラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2に、取付板62を介して入力軸63を取付け、かつ先端側のリンクハブ3に、取付板64を介して出力軸65を取付けたものである。入力軸63および出力軸65の軸心は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAおよび基端側のリンクハブ3の中心軸QBとそれぞれ一致している。
【0074】
パラレルリンク機構1において、基端側および出力側のリンクハブ2,3の軸部材13(図5)の角度、および長さが等しく、かつ基端側の端部リンク部材5と先端側の端部リンク部材6の幾何学的形状が等しく、かつ中央リンク部材7についても基端側と先端側とで形状が等しいとき、中央リンク部材7の対称面に対して、中央リンク部材7と端部リンク部材5,6との角度位置関係を基端側と先端側とで同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動く。この例のように、基端側と先端側のリンクハブ2,3にそれぞれ中心軸QA,QBと同軸に入力軸63および出力軸65を設け、基端側から先端側へ回転伝達を行う場合、入力軸63と出力軸65は同じ回転角になって等速で回転する。この等速回転するときの中央リンク部材7の対称面を等速二等分面という。
【0075】
このため、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3を共有する同じ幾何学形状のリンク機構4を円周上に複数配置させることにより、複数のリンク機構4が矛盾なく動ける位置として中央リンク部材7が等速二等分面上のみの動きに限定される。これにより、基端側と先端側とが任意の作動角をとっても、入力軸63と出力軸65とが等速回転する。
【0076】
図14は、この発明のパラレルリンク機構を用いたリンク作動装置を示す。このリンク作動装置71は、図1ないし図7に示すパラレルリンク機構1と、このパラレルリンク機構1を支持する基台72と、パラレルリンク機構1を作動させる2つ以上の姿勢変更用アクチュエータ73と、これら姿勢変更用アクチュエータ73を操作するコントローラ74とを備える。
【0077】
基台72は縦長の部材であって、その上面にパラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2が固定されている。基台72の上部の外周にはつば状の駆動源取付台75が設けられ、この駆動源取付台75に前記姿勢変更用アクチュエータ73が垂下状態で取付けられている。姿勢変更用アクチュエータ73の数は、例えば2個である。姿勢変更用アクチュエータ73はロータリアクチュエータからなり、その出力軸に取付けたかさ歯車76と基端側のリンクハブ2の軸部材13(図5)に取付けた扇形のかさ歯車77とが噛み合っている。
【0078】
このリンク作動装置71は、コントローラ74を操作して姿勢変更用アクチュエータ73を回転駆動することで、パラレルリンク機構1を作動させる。詳しくは、姿勢変更用アクチュエータ73が回転駆動すると、その回転が一対のかさ歯車76,77を介して軸部材13に伝達されて、基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の角度が変更する。それにより、先端側のリンクハブ3の位置および姿勢が定まる。姿勢変更用アクチュエータ73を設けるリンク機構4の数を2組以上としたのは、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の位置および姿勢を確定するのに必要なためである。3組すべてのリンク機構4に姿勢変更用アクチュエータ73を設けてもよい。
【0079】
パラレルリンク機構1を作動させるための姿勢変更用アクチュエータ73の回転駆動は、コントローラ74に設けた操作具(図示せず)により手動で行なってもよく、またはコントローラ74に設けた設定器(図示せず)によって定められた設定量となるように、制御手段78により自動制御で行ってもよい。制御手段78は、コントローラ74内に設けてもよく、またはコントローラ74の外部に設けてもよい。
【0080】
自動制御で行う場合、設定器により設定された先端側のリンクハブ3の姿勢に応じて、基端側の端部リンク部材5の回転角βnの制御目標値を計算する。上記回転角βnは、姿勢変更用アクチュエータ73の動作位置を意味する。回転角βnの計算は、下記の式1を逆変換することで行われる。逆変換とは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対する先端側のリンクハブ3の中心軸QBの折れ角θ(図3)、および基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φ(図3)から、基端側の端部リンク部材5の回転角βnを算出する変換のことである。換言すると、折れ角θは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した垂直角度であり、旋回角φは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した水平角度である。
【0081】
cos(θ/2)sinβn−sin(θ/2)sin(φ+δn)cosβn+sin(γ/2)=0 ・・・(式1)
ここで、γ(図3)は、基端側の端部リンク部材5に回転自在に連結された中央リンク部材7の連結端軸と先端側の端部リンク部材6に回転自在に連結された中央リンク部材7の連結端軸とが成す角度である。δn(図3におけるδ1,δ2,δ3)は、基準となる基端側の端部リンク部材5に対する各基端側の端部リンク部材5の円周方向の離間角である。
【0082】
回転角βnの制御目標値を計算したなら、2つの姿勢変更用アクチュエータ73を、前記回転角βnが制御目標値となるように、先端側のリンクハブ3の姿勢を検出する姿勢検出手段79の信号を利用してフィードバック制御する。姿勢検出手段79は、例えば図示のように、基端側の端部リンク部材5の回転角βn(図3におけるβ1,β2)を検出する。折れ角θおよび旋回角φと、回転角βnとは相互関係があり、一方の値から他方の値を導くことができる。
【0083】
このように、2つの姿勢変更用アクチュエータ73の回転駆動を制御することにより、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の位置および姿勢が決定される。3組あるリンク機構4のうち2組のリンク機構4だけに姿勢変更用アクチュエータ73を設けたため、2つの姿勢変更用アクチュエータ73だけを制御すればよい。3組すべてのリンク機構4に姿勢変更用アクチュエータ73を設けた場合と比べて、姿勢変更用アクチュエータ73のスムーズな動作が可能になり、動作速度が速い。
【0084】
図15ないし図17は、この発明のパラレルリンク機構を用いた異なるリンク作動装置を示す。図15において、このリンク作動装置81は、図8ないし図11に示すパラレルリンク機構1を介して、基台82に対して、各種器具等が取付けられる先端取付部材83を姿勢変更可能に連結したものである。基台82と、パラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2との間にはスペーサ84を介在させてある。
【0085】
図16およびその部分拡大図である図17に示すように、パラレルリンク機構1の3組のリンク機構4のうちの少なくとも2組に、基端側の端部リンク部材5を回動させて基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3の姿勢を任意に変更させる姿勢変更用アクチュエータ90と、この姿勢変更用アクチュエータ90の動作量を基端側の端部リンク部材5に減速して伝達する減速機構91とが設けられている。図示例では、3組のリンク機構4のすべてに、姿勢変更用アクチュエータ90および減速機構91が設けられている。
【0086】
姿勢変更用アクチュエータ90はロータリアクチュエータ、より詳しくは減速機90a付きのサーボモータであって、モータ固定部材92により基台82に固定されている。減速機構91は、姿勢変更用アクチュエータ90の減速機90aと、歯車式の減速部93とでなる。
【0087】
歯車式の減速部93は、姿勢変更用アクチュエータ90の出力軸90bにカップリング95を介して回転伝達可能に連結された小歯車96と、基端側の端部リンク部材5に固定され前記小歯車96と噛み合う大歯車97とで構成されている。図示例では、小歯車96および大歯車97は平歯車であり、大歯車97は、扇形の周面にのみ歯が形成された扇形歯車である。大歯車97は小歯車96よりもピッチ円半径が大きく、姿勢変更用アクチュエータ90の出力軸90bの回転が基端側の端部リンク部材5へ、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶の回転軸O1回りの回転に減速して伝達される。その減速比は10以上とされている。
【0088】
大歯車97のピッチ円半径は、基端側の端部リンク部材5のアーム長Lの1/2以上としてある。前記アーム長Lは、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶の中心軸O1の軸方向中心点P1から、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7との回転対偶の中心軸O2の軸方向中心点P2を基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶軸O1に直交してその軸方向中心点P1を通る平面に投影した点P3までの距離である。この実施形態の場合、大歯車97のピッチ円半径が前記アーム長L以上である。そのため、高い減速比を得るのに有利である。
【0089】
小歯車96は、大歯車97と噛み合う歯部96aの両側に突出する軸部96bを有し、これら両軸部96bが、基台82に設置された回転支持部材99に設けられた二つの軸受100によりそれぞれ回転自在に支持されている。軸受100は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。二つの軸受100の各外輪(図示せず)間にはシム(図示せず)を設け、軸部96bに螺合したナット101を締め付けることにより、軸受100に予圧を付与する構成としてある。軸受100の外輪は、回転支持部材99に圧入されている。
【0090】
この実施形態の場合、大歯車97は、基端側の端部リンク部材5と別部材であり、基端側の端部リンク部材5に対してボルト等の結合具102により着脱可能に取付けられている。大歯車97は基端側の端部リンク部材5と一体であってもよい。
【0091】
姿勢変更用アクチュエータ90の回転軸心O3および小歯車96の回転軸心O4は同軸上に位置する。これら回転軸心O3,O4は、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶軸O1と平行で、かつ基台82からの高さが同じとされている。
【0092】
図16に示すように、各姿勢変更用アクチュエータ90は制御装置110で制御される。制御装置110は、コンピュータによる数値制御式のものであり、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を設定する姿勢設定手段111と、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を検出する姿勢検出手段112とからの信号に基づき、各姿勢変更用アクチュエータ90に出力指令を与える。姿勢設定手段111は、例えば折れ角θ(図3を参考)および旋回角φ(図3を参考)を規定することで、先端側のリンクハブ3の姿勢を設定する。姿勢検出手段112は、例えばエンコーダ(図示せず)等により基端側の端部リンク部材5の回転角βn(図3におけるβ1,β2)を検出する。あるいは姿勢変更用アクチュエータ90のエンコーダ(図示せず)を先端側のリンクハブ3の姿勢検出に用いても良い。折れ角θおよび旋回角φと、各回転角βnとは相互関係があり、一方の値から他方の値を導くことができる。
【0093】
基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を姿勢変更する場合、姿勢設定手段111により設定された先端側のリンクハブ3の姿勢に応じて、基端側の端部リンク部材5の回転角βnの制御目標値を計算する。上記回転角βnは、姿勢変更用アクチュエータ90の動作位置を意味する。回転角βnの計算は、前記式1を逆変換することで行われる。逆変換とは、折れ角θおよび旋回角φから基端側の端部リンク部材5の回転角βnを算出する変換のことである。
【0094】
回転角βnの制御目標値を計算したなら、姿勢検出手段112の信号を利用したフィードバック制御により、実際の回転角βnが制御目標値となるように各姿勢変更用アクチュエータ90の出力を制御する。それにより、すべてのリンク機構4の基端側の端部リンク部材5が定められた回転角βnだけ回転し、先端側のリンクハブ2が姿勢設定手段111により設定された姿勢に変更される。
【0095】
このリンク作動装置81は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれるため、先端取付部材83に取付けられる医療用器具等の操作性が良い。3組のリンク機構4のすべてに姿勢変更用アクチュエータ90および減速機構91を設けたことにより、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3がどのような姿勢をとっていてもバランス良く駆動できる。つまり、駆動力のバランスが良い。これにより、各姿勢変更用アクチュエータ90を小型化できる。また、3組のリンク機構4のすべてに姿勢変更用アクチュエータ90および減速機構91を設けることで、パラレルリンク機構1や減速機構91のガタを詰めるように制御することが可能となり、先端側のリンクハブ3の位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置81自体の高剛性化を実現できる。
【0096】
減速機構91の歯車式の減速部93は、小歯車96と大歯車97の組合せからなり、10以上の高い減速比が得られる。減速比が高いと、エンコーダ等による位置決め分解能が高くなるため、先端側のリンクハブ3の位置決め分解能が向上する。また、低出力の姿勢変更用アクチュエータ90を使用することができる。この実施形態では減速機90a付きの姿勢変更用アクチュエータ90を使用しているが、歯車式の減速部93の減速比が高ければ、減速機無しの姿勢変更用アクチュエータ90を使用することも可能となり、姿勢変更用アクチュエータ90を小型化できる。
【0097】
大歯車97のピッチ円半径を、基端側の端部リンク部材5のアーム長Lの1/2以上としたことで、先端負荷による基端側の端部リンク部材5の曲げモーメントが小さくなる。そのため、リンク作動装置81全体の剛性を必要以上に高くしなくて済むと共に、基端側の端部リンク部材5の軽量化を図れる。例えば、基端側の端部リンク部材5をステンレス鋼(SUS)からアルミに変更できる。また、大歯車97のピッチ円半径が比較的大きいため、大歯車97の歯部の面圧が減少し、リンク作動装置81全体の剛性が高くなる。
また、大歯車97のピッチ円半径が前記アーム長の1/2以上であると、大歯車97が、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部に設置する軸受12の外径よりも十分大きな径となるため、大歯車97の歯部と軸受12との間にスペースができ、大歯車97の設置が容易である。
【0098】
特にこの実施形態の場合、大歯車97のピッチ円半径が前記アーム長L以上であるため、大歯車97のピッチ円半径がさらに大きくなり、前記作用・効果がより一層顕著に現れる。加えて、小歯車96をリンク機構4よりも外径側に設置することが可能となる。その結果、小歯車96の設置スペースを容易に確保することができ、設計の自由度が増す。また、小歯車96と他の部材との干渉が起こり難くなり、リンク作動装置81の可動範囲が広くなる。
【0099】
小歯車96および大歯車97は、それぞれ平歯車であるため、製作が容易であり、しかも回転の伝達効率が高い。小歯車96は軸方向両側で軸受100により支持されているため、小歯車96の支持剛性が高い。それにより、先端負荷による基端側の端部リンク部材5の角度保持剛性が高くなり、リンク作動装置81の剛性や位置決め精度の向上に繋がる。また、姿勢変更用アクチュエータ90の回転軸心O3、小歯車96の回転軸心O4、および基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶の中心軸O1が同一平面上にあるため、全体的なバランスが良く、組立性が良い。
【0100】
大歯車97は、基端側の端部リンク部材5に対して着脱自在であるため、歯車式の減速部93の減速比や、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の作動範囲等の仕様の変更が容易となり、リンク作動装置81の量産性が向上する。つまり、同じリンク作動装置81を、大歯車97を変えるだけで、様々な用途に適用することが可能である。また、メンテナンス性が良い。例えば、歯車式の減速部93に障害が生じた場合に、同減速部93のみを交換するだけで対処可能である。
【符号の説明】
【0101】
1…パラレルリンク機構
2…基端側のリンクハブ
3…先端側のリンクハブ
4…リンク機構
5…基端側の端部リンク部材
6…先端側の端部リンク部材
7…中央リンク部材
12,24…軸受
12a,24a…内輪
12b,24b…外輪
13…軸部材(軸部)
13a,25a,35a,45a…ねじ部
13c,25c,35c,45c…段差部
13d,25d,35d…段差面
14,27,37,47…ナット(内輪固定手段)
15,28,38,48…環状内面形成部
15a,28a,38a,48a…外輪嵌合部
15b,28b,38b,48b…段差部
15c,28c,38c,48c…段差面
16,26,36,46…間座部材
18,20,30,32,40,42,50,52…隙間
19,21,31,33,41,43,51,53,57,58…シール構造
25,35,45…軸部
61…等速自在継手
63…入力軸
65…出力軸
71,81…リンク作動装置
73,90…姿勢変更用アクチュエータ
T1,T2,T3,T4…回転対偶部
QA…基端側のリンクハブの中心軸
QB…先端側のリンクハブの中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなる、四つの回転対偶を有する三節連鎖構造であり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であるパラレルリンク機構において、
前記各リンク機構の各回転対偶は、一対の対偶構成部材が互いに軸受を介して連結されており、一方の対偶構成部材に設けられた軸部が前記軸受の内輪の内周に嵌合し、かつ他方の対偶構成部材に設けられた環状内面形成部が前記軸受の外輪の外周に嵌合し、前記軸部と前記環状内面形成部とにより、軸受の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造を構築したことを特徴とするパラレルリンク機構。
【請求項2】
請求項1において、前記シール構造は、前記軸部の一部の外周面と、前記環状内面形成部の一部の内周面との間の隙間により構築されたものであるパラレルリンク機構。
【請求項3】
請求項2において、前記軸部の一部は、前記軸受の内輪の内周に嵌合した部分よりも外径が大きい段差部とされ、この段差部の段差面が前記内輪の端面に当接することで内輪の軸方向の位置決めをするパラレルリンク機構。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、前記環状内面形成部の一部は、前記軸受の外輪の外周に嵌合した部分よりも内径が小さい段差部とされ、この段差部の段差面が前記外輪の端面に当接することで外輪の軸方向の位置決めをするパラレルリンク機構。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記軸受の内輪の軸方向位置を固定する内輪固定手段と、この内輪固定手段と前記軸受の内輪との間に介在する間座部材とを設け、前記間座部材と前記環状内面形成部とにより、軸受の内部と外部間の潤滑剤等の出入りを規制するシール構造を構築したパラレルリンク機構。
【請求項6】
請求項5において、前記シール構造は、前記間座部材の一部の外周面と、前記環状内面形成部の一部の内周面との間の隙間により構築されたものであるパラレルリンク機構。
【請求項7】
請求項6において、前記環状内面形成部の一部は、外径が前記軸受の外輪の外径と等しい外輪嵌合部とされ、この外輪嵌合部に前記外輪が嵌合したパラレルリンク機構。
【請求項8】
請求項6において、前記環状内面形成部の一部は、前記軸受の外輪の外周に嵌合した部分よりも内径が小さい段差部とされ、この段差部の段差面が前記外輪の端面に当接することで外輪の軸方向の位置決めをするパラレルリンク機構。
【請求項9】
請求項5ないし請求項8のいずれか1項において、前記内輪固定手段は、前記軸部に形成されたねじ部に螺合するナットであるパラレルリンク機構。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9において、前記シール構造は、ラビリンス構造であるパラレルリンク機構。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10において、前記環状内面形成部は前記基端側の端部リンク部材および前記先端側の端部リンク部材に設けられ、前記軸部は前記基端側のリンクハブ、前記先端側のリンクハブ、および前記中央リンク部材に設けられているパラレルリンク機構。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10において、前記環状内面形成部は前記基端側のリンクハブ、前記先端側のリンクハブ、および前記中央リンク部材に設けられ、前記軸部は前記基端側の端部リンク部材および前記先端側の端部リンクに設けられているパラレルリンク機構。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12において、前記軸受はアンギュラ玉軸受であるパラレルリンク機構。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構における前記基端側のリンクハブに入力軸を設け、前記先端側のリンクハブに出力軸を設けたことを特徴とする等速自在継手。
【請求項15】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構における前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、四つの回転対偶のうちの少なくとも一つの回転対偶の角度を変更させる姿勢変更用アクチュエータを設けたことを特徴とするリンク作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−96547(P2013−96547A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242605(P2011−242605)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】