説明

パルス幅変調回路及びそれを用いたスイッチングアンプ

【課題】 クロック信号の周波数を変化させた場合であっても、正常なPWM波形を出力することができるパルス幅変調回路を提供する。
【解決手段】 電圧切換回路36は基準クロックの周波数が切り換えられた際に基準クロックの周波数に応じて電圧源35が供給する電圧を切り換える。VI変換回路32は、電圧源35からの電圧に基づいて電流2Ic(Icは充電電流Ijの直流バイアス電流)を生成し、VI変換回路31は、同じ電圧源35からの電圧に基づいて放電電流Id(=2Ic)を生成する。従って、基準クロックの周波数が切り換えられ、コンデンサC1,C2の充電時間が変化した場合にも、コンデンサC1,C2の最大充電電圧を充電可能電圧の1/2の電圧に設定することができ、正常なPWM波形を出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス幅変調回路及びそれを用いたスイッチングアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来のパルス幅変調回路を示すブロック図である(特許文献1参照)。パルス幅変調回路901は、オーディオ信号eSに基づく電流Ic+Δiに基づいて、クロック信号MCLKの第1期間T1で第1コンデンサC1を充電し、放電電流Idに基づいて第2期間T2で第1コンデンサC1の電圧を放電させ、かつ、第2コンデンサC2を充電し、放電電流Idに基づいて第3期間T3で第2コンデンサC2の電圧を放電させる。
【0003】
第2期間T2が開始されてから第1コンデンサC1の電圧が閾値電圧Vrefに到達するまでの時間を検出し、第3期間T3が開始されてから第2コンデンサC2の電圧が閾値電圧Vrefに到達するまでの時間を検出する。第1コンデンサC1の電圧が閾値電圧Vrefに到達してから第3期間T3が開始されるまで第1コンデンサC1の電圧を維持し、第2コンデンサC2の電圧が閾値電圧Vrefに到達してから第4期間T4が開始されるまで第2コンデンサC2の電圧を維持する。第1及び第2コンデンサC1,C2の電圧が閾値電圧Vrefに到達するまでの時間に基づいて、当該時間のパルス幅を有するパルス信号を生成する。
【0004】
ここで、パルス幅変調回路901は、オーディオ用のスイッチングアンプに適用されるものであるが、スイッチングアンプはパルス波形の電力を増幅するものであり、原理的に不要輻射問題が生じやすい。一例として、ラジオの受信妨害がある。この対策の一つとして、キャリア周波数を切り換えることが考えられる。上記のパルス幅変調回路901においては、変調キャリア周波数はクロック信号の周波数の2倍となるので、基準クロックの周波数を切り換えることで不要輻射の問題を解決できる。
【0005】
しかし、基準クロックの周波数を変更すると、図10に示すように、充放電を行う第1,第2コンデンサC1,C2の最大充電電圧(充電終了時の電圧)が変化し、次のような問題が生じる。図10は、基準クロックMCLKの周波数を変更した際の第1コンデンサC1の充電電圧波形を示す図であり、(a)は基準クロックMCLKが基準周波数である第2周波数である場合を、(b)は基準クロックMCLKが基準周波数よりも低周波数である第1周波数である場合を、(c)は基準クロックMCLKが基準周波数よりも高周波数である第3周波数である場合をそれぞれ示す。波形(1)はオーディオ信号eSが無信号の場合を、波形(2)はオーディオ信号eSの振幅値が正の値の場合を、波形(3)はオーディオ信号eSの振幅値が負の値の場合を示す。また、信号φ1は、基準クロックに同期し、ハイレベルの時にスイッチSW1をオン状態にして第1コンデンサC1を充電させ、ローレベルの時にスイッチSW1をオフ状態にして第1コンデンサC1を充電させない信号である。
【0006】
図10(a)に示すように、基準クロックMCLKの周波数が第2周波数(基準周波数)であるとき、オーディオ信号eSが無信号の場合の第1コンデンサC1の最大充電電圧Vaは、第1コンデンサC1の充電可能電圧の1/2の電圧(すなわち、(VCC−Vref)/2)になっている。従って、振幅値が正のときに充電可能な電圧の範囲が、振幅値が負のときに充電可能な電圧の範囲と同じである。つまり、正側で充電電圧がクリップする振幅値と、負側で充電電圧がクリップする振幅値とが同じである。その結果、充電電圧がクリップしたとしても正側及び負側で対称であるので、正常なPWM波形を出力することができる。つまり、大信号入力時の歪率を低減でき、かつ、正負のアンバランスクリップによる誤動作防止が可能である。
【0007】
次に、図10(b)に示すように、基準クロックMCLKの周波数が第1周波数(低周波数)であるとき、第1コンデンサC1への充電時間が長くなるので、オーディオ信号eSが無信号の場合の第1コンデンサC1の最大充電電圧Vaは、第1コンデンサC1の充電可能電圧の1/2(すなわち、(VCC−Vref)/2)よりも大きくなる。従って、振幅値が正のときに充電可能な電圧の範囲が、振幅値が負のときに充電可能な電圧の範囲よりも小さくなり、正側で充電電圧がクリップする振幅値が、負側で充電電圧がクリップする振幅値よりも小さくなる。その結果、オーディオ信号eSの振幅値が正で大きな値の場合には充電電圧が制限されクリップするが、オーディオ信号eSの振幅値が負で大きな値の場合には充電電圧がクリップせず、オーディオ信号eSの振幅値が正側の場合と負側の場合とでPWM波形がアンバランスな状態になり、正常なPWM波形を出力できない。
【0008】
次に、図10(c)に示すように、基準クロックMCLKの周波数が第3周波数(高周波数)であるとき、第1コンデンサC1への充電時間が短くなるので、オーディオ信号eSが無信号の場合の第1コンデンサC1の最大充電電圧Vaは、第1コンデンサC1の充電可能電圧の1/2(すなわち、(VCC−Vref)/2)よりも小さくなる。従って、振幅値が正のときに充電可能な電圧の範囲が、振幅値が負のときに充電可能な電圧の範囲よりも大きくなり、正側で充電電圧がクリップする振幅値が、負側で充電電圧がクリップする振幅値よりも大きくなる。その結果、オーディオ信号eSの振幅値が正で大きな値の場合には充電電圧がクリップしないが、オーディオ信号eSの振幅値が負で大きな値の場合には充電電圧が制限されクリップし、オーディオ信号eSの振幅値が正側の場合と負側の場合とでPWM波形がアンバランスな状態になり、正常なPWM波形を出力できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−206128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、上記のパルス幅変調回路において、クロック信号の周波数を変化させた場合であっても、正常なPWM波形を出力することができるパルス幅変調回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路は、電荷を蓄積する第1電荷蓄積手段と、電荷を蓄積する第2電荷蓄積手段と、入力される交流電圧の振幅に応じて電流値が変化する第1の電流を生成し、かつ、第2の電流を生成する電流生成手段と、前記第1の電流に基づいてクロック信号の半周期である第1期間において前記第1電荷蓄積手段における電圧を変化させ、前記第2の電流に基づいて前記第1期間とは半周期ずれた前記第1期間に続く第2期間において前記第1電荷蓄積手段における電圧を前記第1期間における増減方向と逆向きに変化させるとともに、前記第1の電流に基づいて前記第2電荷蓄積手段における電圧を変化させ、前記第2の電流に基づいて前記第2期間とは半周期ずれた前記第2期間に続く第3期間において前記第2電荷蓄積手段における電圧を前記第2期間における増減方向と逆向きに変化させる電圧制御手段と、前記第2期間が開始されてから前記第1電荷蓄積手段における電圧が閾値電圧に到達するまでの時間を検出する第1検出手段と、前記第3期間が開始されてから前記第2電荷蓄積手段における電圧が前記閾値電圧に到達するまでの時間を検出する第2検出手段と、前記第1検出手段及び前記第2検出手段から前記クロック信号の半周期ごとに交互に繰り返し出力される時間に基づいて、当該時間のパルス幅を有するパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、前記クロック信号の周波数を複数の周波数の中から選択された1つの周波数に切り換える周波数制御手段とを備え、前記電流生成手段が、電圧を供給する電圧源と、前記周波数制御手段によって選択されたクロック信号の周波数に応じて、前記電圧源が供給する電圧を切り換える電圧切換手段と、前記電圧源から供給される前記電圧と、前記交流電圧とに基づいて前記第1の電流を生成する第1電流生成手段と、前記電圧源から供給される前記電圧に基づいて前記第2の電流を生成する第2電流生成手段とを有する。
【0012】
電圧切換手段はクロック信号の周波数が切り換えられた際に、クロック信号の周波数に応じて電圧源が供給する電圧を切り換える。第1電流生成手段は、電圧源からの電圧に基づいて第1の電流を生成し、第2電流生成手段は、同じ電圧源からの電圧に基づいて第2の電流を生成する。第1クロック信号の周波数が切り換えられ、第1電荷蓄積手段及び第2電荷蓄積手段の充電時間が変化した場合にも、第1電荷蓄積手段及び第2電荷蓄積手段の最大充電電圧を充電可能電圧の1/2の電圧に設定することができる。その結果、振幅値が正のときに充電可能な電圧の範囲を、振幅値が負のときに充電可能な電圧の範囲と同じにすることができ、正側で充電電圧がクリップする振幅値と、負側で充電電圧がクリップする振幅値とを同じにすることができる。その結果、電圧がクリップしたとしても正側と負側とで対称であるので、正常なPWM波形を出力することができる。また、同一の電圧源の電圧から第1電流生成手段及び第2電流生成手段が第1の電流及び第2の電流を生成するので、電圧切換手段が電圧源の電圧を切り換えるだけで、第1の電流及び第2の電流の両方を変更することができ、回路構成を簡単化することができる。
【0013】
好ましい実施形態においては、前記クロック信号の周波数が現在の周波数よりも低い周波数に切り換えられるとき、前記第1の電流及び前記第2の電流が現在の電流よりも小さくなるよう、前記電圧切換手段が、前記電圧源からの電圧が現在の電圧よりも小さくなるように切り換え、前記クロック信号の周波数が現在の周波数よりも高い周波数に切り換えられるとき、前記第1の電流及び前記第2の電流が現在の電流よりも大きくなるよう、前記電圧切換手段が、前記電圧源からの電圧が現在の電圧よりも大きくなるように切り換える。
【0014】
クロック信号の周波数が低周波数に切り換えられ、第1電荷蓄積手段及び第2電荷蓄積手段の充電時間が長くなる場合には、第1の電流及び第2の電流が小さくされるので、第1電荷蓄積手段及び第2電荷蓄積手段の電圧変化の傾きが緩やかになり、第1電荷蓄積手段及び第2電荷蓄積手段の最大充電電圧を充電可能電圧の1/2の電圧に設定することができる。一方、クロック信号の周波数が高周波数に切り換えられ、第1電荷蓄積手段及び第2電荷蓄積手段の充電時間が短くなる場合には、第1の電流及び第2の電流が大きくなるので、第1電荷蓄積手段及び第2電荷蓄積手段の電圧変化の傾きが急峻になり、第1電荷蓄積手段及び第2電荷蓄積手段の最大充電電圧を充電可能電圧の1/2の電圧に設定することができる。
【0015】
好ましい実施形態においては、前記第1電流生成手段が、前記電圧源から供給される前記電圧に基づいて、前記第2の電流と同じ電流値の第3の電流を生成する電圧電流変換手段と、前記第3の電流の1/2の電流に前記交流電圧に基づく電流を加算した第4の電流を生成する差動回路と、前記第4の電流と同じ電流値である前記第1の電流を生成するカレントミラー回路とを含む。
【0016】
クロック信号の周波数を切り換えることにより第1の電流及び第2の電流の電流値が変更される場合でも、第1の電流の直流バイアス電流と第2の電流との比を常に1:2の関係に維持することができる。
【0017】
好ましい実施形態においては、前記電圧切換手段が、前記電圧源が有する抵抗素子の前記電圧源への接続又は非接続を切り換える複数のスイッチ素子を含み、前記スイッチ素子の個数がnである場合に、全てのスイッチ素子がオフ状態になる場合を除く2−1種類の電圧のうち、前記クロック信号の周波数に応じていずれかの電圧に切り換える。
【0018】
n個のスイッチ素子と抵抗素子との組を備えるだけで、2−1のパターンの第1の電流及び第2の電流を生成することができ、2−1パターンのクロック信号の周波数に対して、第1電荷蓄積手段及び第2電荷蓄積手段の最大充電電圧を充電可能電圧の1/2の電圧に設定することができる。従って、回路の部品点数及びコストを削減することができる。
【0019】
好ましい実施形態においては、前記第1電荷蓄積手段および前記第2電荷蓄積手段における充電開始電圧が前記閾値電圧Vrefであり、前記第1電荷蓄積手段および前記第2電荷蓄積手段における充電可能な電圧の上限が電源電圧VCCである場合に、前記クロック信号の周波数がいずれの周波数に切り換えられた場合にも、前記交流電圧の振幅が0であるときの前記第1電荷蓄積手段および前記第2電荷蓄積手段の最大充電電圧Vaが(VCC−Vref)/2になるように、前記電圧切換手段によって切り換えられる前記電圧源が供給する電圧が決定されている。
【0020】
振幅値が正のときに充電可能な電圧の範囲が、振幅値が負のときに充電可能な電圧の範囲と同じであり、正側で充電電圧がクリップする振幅値と、負側で充電電圧がクリップする振幅値とを同じにすることができる。その結果、電圧がクリップしたとしても正側と負側とで対称であるので、正常なPWM波形を出力することができる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によるスイッチングアンプは、上記いずれかのパルス幅変調回路と、前記パルス幅変調回路から出力される変調信号に基づいて電源電圧をスイッチングするスイッチング回路とを備える。
【発明の効果】
【0022】
クロック信号の周波数を変化させた場合であっても、正常なPWM波形を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路が適用されるスイッチングアンプを示すブロック図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態によるパルス幅変調回路を示すブロック図である。
【図3】電流生成回路を示す回路図である。
【図3B】他の電流生成回路を示す回路図である。
【図3C】他の電流生成回路を示す回路図である。
【図3D】他の電流生成回路を示す回路図である。
【図4】基準クロックの周波数と電流生成回路の状態との関係を示す表である。
【図5】オーディオ信号の振幅が0の場合の動作を示すタイムチャートを示す図である。
【図6】オーディオ信号の振幅が正の場合の動作を示すタイムチャートを示す図である。
【図7A】基準クロックが基準周波数である場合のコンデンサの電圧波形を示すタイムチャートである。
【図7B】基準クロックが低周波数である場合のコンデンサの電圧波形を示すタイムチャートである。
【図7C】基準クロックが高周波数である場合のコンデンサの電圧波形を示すタイムチャートである。
【図8】他の実施形態によるパルス幅変調回路を示すブロック図である。
【図9】従来のパルス幅変調回路を示すブロック図である。
【図10】従来のパルス幅変調回路におけるコンデンサの電圧波形を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるパルス幅変調(PWM)回路が適用されるスイッチングアンプを示す構成図である。図2は、図1に示すパルス幅変調回路を示すブロック回路図である。
【0025】
[スイッチングアンプの構成]
スイッチングアンプは、オーディオ信号発生源AUに接続されたパルス幅変調回路1と、スイッチング回路2と、ローパスフィルタ回路3と、正負の電源電圧+EB,−EBを供給する第1電源4及び第2電源5とを備えている。ローパスフィルタ回路3の出力には、負荷RLとしてのスピーカ(図略)が接続されている。
【0026】
パルス幅変調回路1は、オーディオ信号発生源AUから出力された入力信号としてのオーディオ信号eSをパルス幅変調信号PWMoutに変換して出力するものである。パルス幅変調回路1から出力されたパルス幅変調信号PWMoutは、スイッチング回路2に入力される。
【0027】
スイッチング回路2は、パルス幅変調信号PWMoutによってオン、オフ動作が制御されるスイッチ素子SW−Aと、パルス幅変調回路1から出力されるパルス幅変調信号PWMoutの位相を反転させるインバータ2aと、このインバータ2aから出力される位相が反転されたパルス幅変調信号PWMout’によってオン、オフ動作が制御されるスイッチ素子SW−Bと、両スイッチ素子SW−A,SW−Bの両端にそれぞれ接続された逆電流防止用ダイオードD−A,D−Bとを備えている。
【0028】
スイッチング回路2では、第1電源4及び第2電源5から正負の電源電圧+EB,−EBがそれぞれスイッチ素子SW−Aとスイッチ素子SW−Bとを介して負荷RLに供給されるが、スイッチ素子SW−Aとスイッチ素子SW−Bは、パルス幅変調信号PWMoutとパルス幅変調信号PWMout’とによってそれぞれ交互にオン、オフ動作が行われるので、ローパスフィルタ回路3及び負荷RLには電源電圧+EBと電源電圧−EBとが交互に供給される。すなわち、負荷RLには、ローパスフィルタ回路3を介して+EBと−EBとの間でレベルが変化し、パルス幅変調信号PWMoutと同一のデューティ比を有する矩形波電圧が供給される。
【0029】
ローパスフィルタ回路3は、コイルL0及びコンデンサC0によるLC回路によって構成されている。ローパスフィルタ回路3は、スイッチング回路2から入力される矩形波電圧の高周波成分を除去する回路であり、例えば60kHzのカットオフ周波数を有する。ローパスフィルタ回路3からはパルス幅変調信号PWMoutを復調した交流電圧信号(オーディオ信号eSとほぼ同一波形の交流電圧信号)が出力され、この交流電圧信号が負荷RLに供給されることによりオーディオ信号eSが音声として出力される。
【0030】
[パルス幅変調回路の構成]
図2に示すように、パルス幅変調回路1は、クロック周波数制御部10と、基準クロック生成回路11と、デッドタイム生成回路12と、立下りエッジ検出回路13と、充電電流・放電電流生成回路(以下、電流生成回路という。)14と、第1〜第4スイッチSW1〜SW4と、第1,第2コンデンサC1,C2と、電流バイパス回路16と、第1,第2RSフリップフロップ回路17,18と、信号出力回路19とによって構成されている。
【0031】
パルス幅変調回路1は、
(1)外部から入力されるオーディオ信号eSから電流生成回路14によって第1,第2コンデンサC1,C2を充電するための充電電流Ijを生成する。
(2)基準クロックMCLKの1周期のうち、例えば、第1コンデンサC1については前半の半周期を充電期間、後半の半周期を放電期間とし、第2コンデンサC2については前半の半周期を放電期間、後半の半周期を充電期間とすると、第1,第2コンデンサC1,C2を各充電期間に充電電流Ijで充電し、各放電期間で第1,第2コンデンサC1,C2の蓄積電荷を放電電流Idで放電させる。
(3)第1,第2コンデンサC1,C2の各放電期間毎に、放電開始時(充電終了時)から第1,第2コンデンサC1,C2の電圧が所定の閾値電圧Vrefに変化するまでの放電時間と同一のパルス幅を有するパルス信号をそれぞれ生成する。
(4)基準クロックMCLKの半周期毎に交互に生成されるパルス信号を合成してパルス幅変調信号PWMoutを生成する。
という動作原理によってオーディオ信号eSをパルス幅変調信号PWMoutに変換する。
【0032】
基準クロック生成回路11は、上記の基準クロックMCLKを生成する回路である。基準クロックMCLKは、周期が一定でデューティ比がほぼ50%のクロック信号であり、第1,第2スイッチSW1,SW2のオン、オフ動作を制御するための第1,第2切換信号φ1,φ2の基準信号となるものである。また、基準クロックMCLKはパルス幅変調信号PWMoutの周期を規定する基準信号にもなっている。基準クロック生成回路11は、基準クロックMCLKをデッドタイム生成回路12に出力する。なお、基準クロック生成回路11は、パルス幅変調回路1の外部に設けられ、外部クロック信号として基準クロックMCLKをパルス幅変調回路1に対して与えるように構成されていてもよい。
【0033】
クロック周波数制御部10は、基準クロック生成回路11に対して、基準クロックMCLKの周波数を変更するように制御する。クロック周波数制御部10は、基準クロックMCLKの周波数を、基準周波数である第2周波数から、第2周波数よりも低周波数である第1周波数、又は、第2周波数よりも高周波数である第3周波数に変更するよう、基準クロック生成回路11を制御する。その結果、基準クロック生成回路11は、クロック周波数制御部10からの制御信号に応じて、周波数が変更された基準クロックMCLKを出力する。なお、基準クロックMCLKの周波数は4つ以上の周波数に切り換えられてもよい。
【0034】
また、クロック周波数制御部10は、電流生成回路14に対して、第5切換信号φ5及び第6切換信号φ6を出力する。第5切換信号φ5及び第6切換信号φ6は、基準クロックMCLKの周波数を第1周波数〜第3周波数に切り換える際に、充電電流Ij及び放電電流Idを変動させるように電流生成回路14を制御する信号である。
【0035】
デッドタイム生成回路12は、基準クロック生成回路11からの基準クロックMCLKに基づいて、第1切換信号φ1と第2切換信号φ2とを生成する回路である。第2切換信号φ2は第1切換信号φ1に対して逆位相の関係を有するが、第2切換信号φ2の立下りタイミングと立上がりタイミングがそれぞれ第1切換信号φ1の立上がりタイミングと立下がりタイミングに一致しないように、第2切換信号φ2のレベル反転のタイミングは第1切換信号φ1のレベル反転のタイミングに対して所定時間ΔT(デッドタイム)だけずれている。
【0036】
すなわち、第1切換信号φ1は、図5の(a),(b)に示すように、基準クロックMCLKがローレベルからハイレベルに反転したときから所定期間ΔTだけ遅れてローレベルからハイレベルに反転し、基準クロックMCLKがハイレベルからローレベルに反転すると同時にハイレベルからローレベルに反転する信号である。一方、第2切換信号φ2は、図5の(a),(c)に示すように、基準クロックMCLKがローレベルからハイレベルに反転すると同時にハイレベルからローレベルに反転し、基準クロックMCLKがハイレベルからローレベルに反転したときから所定期間ΔTだけ遅れてローレベルからハイレベルに反転する信号である。
【0037】
第1切換信号φ1と第2切換信号φ2との間にデッドタイムを設けることにより、図5の(b),(c)に示すように、第1切換信号φ1のハイレベル反転と第2切換信号φ2のローレベル反転とが同時に生じないとともに、第1切換信号φ1のローレベル反転と第2切換信号φ2のハイレベル反転とが同時に生じないので、第1切換信号φ1によって第1スイッチSW1をオフ状態からオン状態に切り換えるとき(電流生成回路14の充電電流Ijを供給するノードを第1コンデンサC1に接続するとき)には、第2スイッチSW2は既に第2切換信号φ2によってオフ状態に切り換えられており(電流生成回路14の充電電流Ijを供給するノードは既に第2コンデンサC2から切り離されており)、電流生成回路14の充電電流Ijを供給するノードが同時に第1,第2コンデンサC1,2に接続されることがない。また、第2切換信号φ2によって第2スイッチSW2をオフ状態からオン状態に切り換えるとき(電流生成回路14の充電電流Ijを供給するノードを第2コンデンサC2に接続するとき)にも、第1スイッチSW1は既に第1切換信号φ1によってオフ状態に切り換えられており(電流生成回路14の充電電流Ijを供給するノードは既に第1コンデンサC1から切り離されており)、電流生成回路14の充電電流Ijを供給するノードが同時に第1,第2コンデンサC1,C2に接続されることがない。
【0038】
これにより、第1コンデンサC1の充電中に電流生成回路14から第1コンデンサC1に供給されている充電電流Ijが第2コンデンサC2にも供給されたり、逆に第2コンデンサC2の充電中に電流生成回路14から第2コンデンサC2に供給されている充電電流Ijが第1コンデンサC1にも供給されたりすることがないので、第1,第2RSフリップフロップ回路17,18からそれぞれ出力されるパルス信号のパルス幅に誤差が生じ、その結果、パルス幅変調信号PWMoutのパルス幅に誤差が生じるという不都合を防止することができる。第1,第2切換信号φ1,φ2は、第1,第2スイッチSW1,SW2にそれぞれ出力されるとともに、立下りエッジ検出回路13に出力される。
【0039】
なお、デッドタイム生成回路12で設けられるデッドタイムは極めて微小な時間で、実質的に第1スイッチSW1は基準クロックMCLKによってオン、オフが制御され、第2スイッチSW2は基準クロックMCLKの位相を反転したクロックによってオン、オフが制御されているということができる。
【0040】
立下りエッジ検出回路13は、後述する第1,第2RSフリップフロップ回路17,18に供給される第1,第2セット信号set1,set2を出力する回路である。すなわち、立下りエッジ検出回路13は、第1切換信号φ1がハイレベルからローレベルに立下がるタイミングを検出し、図5(d)に示すように、その検出タイミングに一瞬ローレベルに立ち下がる信号を第1セット信号set1として第1RSフリップフロップ回路17に出力する。また、立下りエッジ検出回路13は、第2切換信号φ2がハイレベルからローレベルに立下がるタイミングを検出し、図5(e)に示すように、その検出タイミングに一瞬ローレベルに立ち下がる信号を第2セット信号set2として第2RSフリップフロップ回路18に出力する。
【0041】
電流生成回路14は、オーディオ信号発生源AU(図3参照)からパルス幅変調回路1に供給されるオーディオ信号eSを電圧−電流変換し、その変換した電流Δiに直流バイアス電流Icを加えた充電電流Ijを生成する回路である。電流生成回路14の充電電流Ijを出力するノードは、第1,第2スイッチSW1,SW2を介して第1,第2コンデンサC1,C2にそれぞれ接続されており、第1スイッチSW1がオン状態では第1コンデンサC1に接続されて充電電流Ijで第1コンデンサC1を充電し、第2スイッチSW2がオン状態では第2コンデンサC2に接続されて充電電流Ijで第2コンデンサC2を充電する。
【0042】
また、電流生成回路14は、放電電流Idを生成し、第1,第2コンデンサC1,C2の蓄積電荷を放電電流Idで放電させる。すなわち、電流生成回路14の放電電流Idが出力されるノードは、第3,第4スイッチSW3,SW4を介して第1,第2コンデンサC1,C2にそれぞれ接続されており、第3スイッチSW3がオン動作して第1コンデンサC1に接続されると、第1コンデンサC1の蓄積電荷を放電電流Idで放電させ、第4スイッチSW4がオン動作して第2コンデンサC2に接続されると、第2コンデンサC2の蓄積電荷を放電電流Idで放電させる。なお、電流生成回路14の詳細については、後述する。
【0043】
電流バイパス回路16は、ダイオードD2と電圧源23とを含む。電流バイパス回路16は、電流生成回路14の放電電流Idを出力するノードが第3,第4スイッチSW3,SW4によって電気的に第1,第2コンデンサC1,C2に接続されていないときにも放電電流Idを流しておくためのものである。すなわち、電流生成回路14の放電電流Idを出力するノードが第3,第4スイッチSW3,SW4によって電気的に第1,第2コンデンサC1,C2に接続されていないときには、ダイオードD2がオン状態となり、電流生成回路14の放電電流Idを出力するノードに電圧源23が接続される。
【0044】
この状態で、例えば、第3スイッチSW3がオンになり、電流生成回路14の放電電流Idを出力するノードに第1コンデンサC1が接続されると、第1コンデンサC1の電圧はダイオードD2のカソード側の電圧よりも高いので、ダイオードD2はオフ状態となり、放電電流Idの流れる経路は、電圧源23から第1コンデンサC1に切り換えられる。すなわち、第3スイッチSW3がオンになると同時に、第1コンデンサC1の蓄積電荷の放電電流Idでの放電動作が開始される。なお、第4スイッチSW4がオンになったときも同様の動作が行われ、第4スイッチSW4がオンになると同時に、第2コンデンサC2の蓄積電荷の放電電流Idでの放電動作が開始される。
【0045】
第1,第2スイッチSW1,SW2は、第1,第2コンデンサC1,C2の電流生成回路14からの充電電流Ijによる充電動作を制御するためのスイッチである。第1スイッチSW1の一端は電流生成回路14の充電電流Ijを出力するノードに接続され、第1スイッチSW1の他端は、第1コンデンサC1の一端(図2のA点参照)に接続されている。第1スイッチSW1がオン動作をすると(閉成状態になると)、第1コンデンサC1の充電経路が形成される。また、第2スイッチSW2の一端も電流生成回路14の充電電流Ijを出力するノードに接続され、第2スイッチSW2の他端は、第2コンデンサC2の一端(図2のA’点参照)に接続されている。第2スイッチSW2がオン動作をすると(閉成状態になると)、第2コンデンサC2の充電経路が形成される。
【0046】
第1,第2スイッチSW1,SW2は、デッドタイム生成回路12から出力される第1,第2切換信号φ1,φ2によってオン、オフ動作される。すなわち、第1スイッチSW1は、図5の(b)に示すように、第1切換信号φ1がハイレベルの状態でオン動作し、第1切換信号φ1がローレベルの状態でオフ動作する。また、第2スイッチSW2は、図5の(c)に示すように、第2切換信号φ2がハイレベルの状態でオン動作し、第2切換信号φ2がローレベルの状態でオフ動作する。
【0047】
第3,第4スイッチSW3,SW4は、第1,第2コンデンサC1,C2の電流生成回路14からの放電電流Idによる放電動作を制御するためのスイッチである。第3スイッチSW3の一端は電流生成回路14の放電電流Idを出力するノードに接続され、第3スイッチSW3の他端は、第1コンデンサC1の一端(図2のA点参照)に接続されている。第3スイッチSW3がオン動作をすると(閉成状態になると)、第1コンデンサC1の放電経路が形成される。また、第4スイッチSW4の一端も電流生成回路14の放電電流Idを出力するノードに接続され、第4スイッチSW4の他端は、第2コンデンサC2の一端(図2のA’点参照)に接続されている。第4スイッチSW4がオン動作をすると(閉成状態になると)、第2コンデンサC2の放電経路が形成される。
【0048】
第3,第4スイッチSW3,SW4は、後述する第1,第2RSフリップフロップ回路17,18からの第3,第4切換信号φ3,φ4によってオン、オフ動作される。すなわち、第3スイッチSW3は、図5の(h)に示すように、第3切換信号φ3がハイレベルの状態でオン動作し、ローレベルの状態でオフ動作する。また、第4スイッチSW4は、図5の(i)に示すように、第4切換信号φ4がハイレベルの状態でオン動作し、ローレベルの状態でオフ動作する。
【0049】
第1,第2コンデンサC1,C2は、オーディオ信号eSの振幅(瞬時電圧値)に応じた時間を生成するためのものである。具体的には、第1コンデンサC1は、第1切換信号φ1のオン期間(一定の期間)に第1スイッチSW1がオン動作(このとき、第3スイッチSW3はオフ動作)することにより、電流生成回路14からの充電電流Ij(=Ic±Δi、オーディオ信号eSの振幅(瞬時電圧値)に応じた電流)で充電されることにより閾値電圧Vrefからオーディオ信号eSの振幅に応じた電圧(充電終了電圧)に上昇する。その充電動作の終了後に第3スイッチSW3がオン動作(このとき、第1スイッチSW1はオフ動作)することにより、蓄積された電荷が一定の放電電流Idで放電される。そして、この放電動作において、第1コンデンサC1の電圧が充電終了電圧から所定の閾値電圧Vrefに低下するまでの放電時間がオーディオ信号eSの振幅(瞬時電圧値)に応じた時間として生成される。
【0050】
なお、所定の閾値電圧Vrefは、第1,第2RSフリップフロップ回路17,18における論理レベルの閾値電圧で、第1,第2RSフリップフロップ回路17,18に供給される電源電圧+Vccの約1/2の電圧である。例えば、第1,第2RSフリップフロップ回路17,18の駆動電圧が+5[v]であれば、閾値電圧Vrefはおよそ+2.5[v]である。
【0051】
第2コンデンサC2は、第2切換信号φ2のオン期間(一定の期間)に第2スイッチSW2がオン動作(このとき、第4スイッチSW4はオフ動作)することにより、電流生成回路14からの充電電流Ijで充電されることにより充電開始電圧Vrefからオーディオ信号eSの振幅に応じた電圧(充電終了電圧)に上昇される。その充電動作の終了後に第4スイッチSW4がオン動作(このとき、第2スイッチSW2はオフ動作)することにより、蓄積された電荷が一定の放電電流Idで放電される。そして、この放電動作において、第2コンデンサC2の電圧が充電終了電圧から所定の閾値電圧Vrefに低下するまでの放電時間がオーディオ信号eSの振幅(瞬時電圧値)に応じた時間として生成される。
【0052】
第1RSフリップフロップ回路17は、第1コンデンサC1の各放電期間に、当該第1コンデンサC1の放電時間と同一のパルス幅を有するパルス信号を生成するとともに、第3切換信号φ3を生成する回路である。
【0053】
第1RSフリップフロップ回路17は、2つのNANDゲート(第1NAND回路NA1と第2NAND回路NA2)によって構成されたRSフリップフロップ回路である。第1コンデンサC1の電圧が第1NAND回路NA1に第1リセット信号res1として入力され、その第1NAND回路NA1から出力rsout1が出力される。また、立下りエッジ検出回路13から出力される第1セット信号set1(瞬時的に閾値電圧Vrefよりも低いレベルに立ち下がる信号)が第2NAND回路NA2に入力され、その第2NAND回路NA2から第3切換信号φ3が出力される。
【0054】
第1RSフリップフロップ回路17は、第1セット信号set1が入力されると、出力rsout1をローレベル、第3切換信号φ3をハイレベル反転し、第1コンデンサC1の電圧がローレベル(閾値電圧Vref以下)になる、すなわち、第1リセット信号res1が入力されると、出力rsout1をハイレベル、第3切換信号φ3をローレベルに反転する。第1セット信号set1の入力タイミングは第1コンデンサC1の放電開始タイミングに対応し、第1リセット信号res1の入力タイミングは第1コンデンサC1の電圧が閾値電圧Vrefに低下したタイミングであるから、出力rsout1のローレベルの期間は第1コンデンサC1の放電時間に相当する。
【0055】
従って、第1RSフリップフロップ回路17の第1NAND回路NA1の出力端子からは、第1コンデンサC1の各放電期間に当該第1コンデンサC1の放電時間と同一のパルス幅を有するパルス信号が出力rsout1として出力される。
【0056】
第2RSフリップフロップ回路18は、第2コンデンサC2の各放電期間に、当該第2コンデンサC2の放電時間と同一のパルス幅を有するパルス信号を生成するとともに、第4切換信号φ4を生成する回路である。
【0057】
第2RSフリップフロップ回路18も第1RSフリップフロップ回路17と同様に、2つのNANDゲート(第3NAND回路NA3と第4NAND回路NA4)によって構成されたRSフリップフロップ回路である。第2コンデンサC2の電圧が第3NAND回路NA3に第2リセット信号res2として入力され、その第3NAND回路NA3から出力rsout2が出力される。また、立下りエッジ検出回路13から出力される第2セット信号set2(瞬時的に閾値電圧Vrefよりも低いレベルに立ち下がる信号)が第4NAND回路NA4に入力され、その第4NAND回路NA4から第4切換信号φ4が出力される。
【0058】
第2RSフリップフロップ回路18は、第2セット信号set2が入力されると、出力rsout2をローレベル、第4切換信号φ4をハイレベル反転し、第2コンデンサC2の電圧がローレベル(閾値電圧Vref以下)になる、すなわち、第2リセット信号res2が入力されると、出力rsout2をハイレベル、第4切換信号φ4をローレベルに反転する。第2セット信号set2の入力タイミングは第2コンデンサC2の放電開始タイミングに対応し、第2リセット信号res2の入力タイミングは第2コンデンサC2の電圧が閾値電圧Vrefに低下したタイミングであるから、出力rsout2のローレベルの期間は第2コンデンサC2の放電時間に相当する。
【0059】
従って、第2RSフリップフロップ回路18の第3NAND回路NA3の出力端子からは、第2コンデンサC2の各放電期間に当該第2コンデンサC2の放電時間と同一のパルス幅を有するパルス信号が出力rsout2として出力される。
【0060】
信号出力回路19は、第1RSフリップフロップ回路17から出力される出力rsout1と第2RSフリップフロップ回路18から出力される出力rsout2を合成する回路である。信号出力回路19は、NANDゲート(第5NAND回路NA5)で構成されている。出力rsout1は基準クロックMCLKのローレベルの期間にだけパルス信号(第1コンデンサC1の放電時間と同一のパルス幅を有するパルス信号)が発生する信号である一方、出力rsout2は基準クロックMCLKのハイレベルの期間にだけパルス信号(第2コンデンサC2の放電時間と同一のパルス幅を有するパルス信号)が発生する信号であるから、信号出力回路19からは出力rsout1のパルス信号と出力rsout2のパルス信号とが交互に組み合されたパルス信号(基準クロックMCLKの半周期と同一の周期でオーディオ信号のeSの振幅(瞬時電圧値)に対応したパルス幅を有するパルス列の信号)がパルス幅変調信号PMWoutとして出力される。
【0061】
[パルス幅変調回路の動作]
次に、パルス幅変調回路1の動作を図5〜図6のタイムチャートを用いて説明する。図5は、オーディオ信号の振幅が0である(つまり、充電電流Ij=直流バイアス電流Ic)場合のタイムチャートである。
【0062】
第1切換信号φ1のハイレベルの期間とローレベルの期間はそれぞれ第1コンデンサC1の充電期間と放電期間とになっている。第1切換信号φ1がハイレベルに反転すると、第1スイッチSW1が電流生成回路14の充電電流Ijの出力ノードを第1コンデンサC1に接続し、電流生成回路14からの充電電流Ijによる第1コンデンサC1の充電が開始される。その充電動作は第1切換信号φ1がローレベルに反転し、第1スイッチSW1が電流生成回路14を切り離すまで継続される(図5の(b),(f)参照)。
【0063】
第1切換信号φ1がローレベルに反転し、放電期間に移行すると、そのローレベル反転を検出した第1セット信号set1によって第1RSフリップフロップ回路17から出力される第3切換信号φ3がハイレベルに反転し、これにより第3スイッチSW3が電流生成回路14の放電電流Idの出力ノードを第1コンデンサC1に接続して電流生成回路14からの放電電流Idによる第1コンデンサC1の放電が開始される。その放電動作は第1コンデンサC1の電圧が閾値電圧Vrefに低下し、これにより第3切換信号φ3がローレベルに反転し、第3スイッチSW3が電流生成回路14を切り離すまで継続される(図5の(b),(d),(f)参照)。
【0064】
放電期間では、第1RSフリップフロップ回路17から、第1セット信号set1が入力されると同時にローレベルに反転し、第1リセット信号res1として入力される第1コンデンサC1の電圧が閾値電圧Vrefに低下すると同時にハイレベルに反転するパルス信号が出力rsout1として出力される。すなわち、オーディオ信号eSの振幅に対応したパルス幅を有するパルス信号が生成される(図5の(j)参照)。
【0065】
また、第2切換信号φ2のハイレベルの期間とローレベルの期間はそれぞれ第2コンデンサC2の充電期間と放電期間とになっている。第2切換信号φ2は、デッドタイムを無視すると、第1切換信号φ1の位相を反転した信号となっているので、第2コンデンサC2に対して上記の第1コンデンサC1における充放電動作と同様の充放電動作が、第1切換信号φ1の半周期だけずれて行われる(図5の(c),(e),(g),(i)参照)。
【0066】
従って、第2コンデンサC2の放電期間では、第2RSフリップフロップ回路18から、第2セット信号set2が入力されると同時にローレベルに反転し、第2リセット信号res2として入力される第2コンデンサC2の電圧が閾値電圧Vrefに低下すると同時にハイレベルに反転するパルス信号が出力rsout2として出力される。すなわち、オーディオ信号eSの振幅に対応したパルス幅を有するパルス信号が生成される(図5の(k)参照)。
【0067】
第1,第2フリップフロップ回路17,18から出力される出力rsout1及び出力rsout2は、信号出力回路19によって合成されてパルス幅変調信号PWMout(出力rsout1の波形と出力rsout2の波形を合成した信号)として出力される(図5の(l)参照)。
【0068】
なお、図6に示すように、オーディオ信号eSの振幅が正の場合には、充電電流Ij=Ic+Δiの大きさが大となり、第1,第2コンデンサC1,C2の一端における充電電圧波形の傾きもオーディオ信号eSの振幅が0の場合に比べて大となる。そのため、第1又は第2切換信号φ1,φ2のレベルがハイレベルからローレベルに反転する時点での第1,第2コンデンサC1,C2の端子電圧は、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べて高くなり、これらが放電電流Idによって放電されるとき、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べて、放電が開始されてから閾値電圧Vrefに達する時間が長くなる。したがって、図6(l)に示すように、図5に示したオーディオ信号eSが無信号の場合に比べ、ハイレベルの時間が長いパルス幅変調信号PWMoutが出力される。このように、オーディオ信号eSの振幅に応じたパルス幅変調信号PWMoutが出力されることになる。
【0069】
図示しないが、同様に、オーディオ信号eSが負の場合には、充電電流Ij=Ic+Δiの大きさが小となり、第1,第2コンデンサC1,C2の一端における充電電圧波形の傾きも小となる。そのため、第1又は第2切換信号φ1,φ2のレベルがハイレベルからローレベルに反転する時点での第1,第2コンデンサC1,C2の端子電圧は、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べて低くなり、これらが放電電流Idによって放電されるとき、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べて、放電が開始されてから閾値電圧Vrefに達する時間が短くなる。したがって、オーディオ信号eSが無信号の場合に比べ、ハイレベルの時間が短いパルス幅変調信号PWMoutが出力される。
【0070】
[電流生成回路14の構成]
図3は電流生成回路14を示す回路図である。電流生成回路14は、電圧電流変換回路(以下、VI変換回路という。)31,32と、差動回路33と、カレントミラー回路34と、電圧源35と、電圧切換回路36とを有している。VI変換回路31は、放電電流生成回路を構成し、VI変換回路32、差動回路33、及び、カレントミラー回路34は、充電電流生成回路を構成する。
【0071】
電流生成回路14は、共通の電圧源35が生成する電圧Vbに基づいて、放電電流Idと、充電電流Ijの直流バイアス電流Icとを生成する。また、電流生成回路14は、クロック周波数制御部10からの第5切換信号φ5及び第6切換信号φ6によって電圧源35が生成する電圧Vbを変化させる。その結果、充電電流Ijの直流バイアス電流Ic、及び、放電電流Idが同じ比率で変動する。
【0072】
基準クロックMCLKの周波数が低周波数に(つまり、第3周波数から第1周波数に向かって)変更されるとき、電圧源35の電圧Vbが減少され、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idの電流値が減少される。従って、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の電圧変化量は減少する。一方、基準クロックMCLKの周波数が高周波数に(つまり、第1周波数から第3周波数に向かって)変更されるとき、電圧源35の電圧Vbが増加され、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idの電流値が増加される。従って、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の電圧変化量は増加する。これにより、オーディオ信号が無信号時(無変調時)の第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の最大充電電圧(充電終了時の電圧)を、基準クロックMCLKの周波数にかかわらず常に充電可能電圧の1/2の電圧(VCC−Vref)/2に設定することができる。
【0073】
なお、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idの電流量が変動された場合でも、直流バイアス電流Icと放電電流Idとの電流値の比は常に一定比(例えば、Ic:Id=1:2)に維持される。
【0074】
VI変換回路31は、電圧源35から電圧Vbが供給され、当該電圧Vbを電圧電流変換することによって放電電流Idを生成する。VI変換回路31は、トランジスタQ1及び抵抗R1を含む。トランジスタQ1は、ベースが電圧源35の出力端に接続され、エミッタが抵抗R1を介して負の電源ラインV2に接続され、コレクタが放電電流Idを出力するノードになっている。つまり、トランジスタQ1のコレクタは、第3スイッチSW3を介して第1コンデンサC1に接続され、かつ、第4スイッチSW4を介して第2コンデンサC2に接続されている。
【0075】
VI変換回路31が生成する電流Idを下記式1に示す。なお、VBEはトランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧(導通開始電圧)である。
【数1】

【0076】
VI変換回路32は、電圧源35から電圧Vbが供給され、当該電圧Vbを電圧電流変換することによって基準電流2Icを生成する。基準電流2Icは、放電電流Idと直流バイアス電流Icの基準となる電流である。VI変換回路32は、トランジスタQ2及び抵抗R2を含む。トランジスタQ2は、ベースが電圧源35の出力端に接続され、エミッタが抵抗R2を介して負の電源ラインV2に接続され、コレクタが差動回路33(抵抗R3,R4)に接続されている。
【0077】
VI変換回路32が生成する電流2Icを下記式2に示す。なお、VBEはトランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧であり、トランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧と同じである。
【数2】

【0078】
抵抗R1と抵抗R2とは抵抗値が同じ抵抗素子が採用され、トランジスタQ1とトランジスタQ2とは特性(例えばベース−エミッタ間電圧や内部抵抗等)が同じトランジスタが採用されている。その結果、VI変換回路31が生成する放電電流Idは、VI変換回路32が生成する基準電流2Icと等しくなっている。
【0079】
差動回路33は、VI変換回路32に接続されており、VI変換回路32から供給される基準電流2Icの1/2の電流である直流バイアス電流Icを生成する。詳細には、差動回路33は、オーディオ信号源AUからのオーディオ信号eSを電圧電流変換した電流Δiを、直流バイアス電流Icに加算し、電流Ic+Δiを生成する。差動回路33は、トランジスタQ3,Q4と、抵抗R3〜R5とを含む。トランジスタQ3は、エミッタが抵抗R3を介してトランジスタQ2のコレクタに接続され、コレクタがカレントミラー回路34のトランジスタQ5のコレクタに接続され、ベースがオーディオ信号源AUに接続されている。トランジスタQ4は、エミッタが抵抗R4を介してトランジスタQ2のコレクタに接続され、コレクタが抵抗R5を介して正の電源ラインV1に接続され、ベースが接地電位に接続されている。
【0080】
差動回路33においては、VI変換回路32からの電流2Icを受け、トランジスタQ3のコレクタからエミッタに向かって電流Ic+Δiが流れ、トランジスタQ4のコレクタからエミッタに向かって電流Ic−Δiが流れる。従って、オーディオ信号eSの振幅値が0である場合(無信号時)には、Δiが0であるので、トランジスタQ3のコレクタからエミッタに向かって電流Icが流れ、トランジスタQ4のコレクタからエミッタに向かって電流Icが流れる。
【0081】
カレントミラー回路34は、差動回路33のトランジスタQ3に流れる電流Ic+Δiと同じ電流値の電流を、充電電流IjとしてコンデンサC1,C2に供給する。カレントミラー回路34は、トランジスタQ5,Q6と、抵抗R6,R7とを含む。トランジスタQ5は、コレクタがトランジスタQ3のコレクタに接続され、エミッタが抵抗R6を介して正の電源ラインV1に接続され、ベースがトランジスタQ6のベースに接続されている。トランジスタQ6は、エミッタが抵抗R7を介して正の電源ラインV1に接続され、コレクタが充電電流Ijを出力するノードになっている。つまり、トランジスタQ6のコレクタは、第1スイッチSW1を介して第1コンデンサC1に接続され、第2スイッチSW2を介して第2コンデンサC2に接続されている。
【0082】
以上のように、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idを同一の電圧源35の電圧Vbから生成しているので、直流バイアス電流Ic:放電電流Id=1:2の関係を維持することができる。この関係は、電圧源35の電圧V2が電圧切換回路36によって変動されても維持することができる。
【0083】
電圧源35は、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idを生成するための電圧Vbを生成する。電圧源35は、トランジスタQ7と、抵抗R9〜R11とを含む。トランジスタQ7は、エミッタが負の電源ラインV2に接続され、コレクタが電圧源35の出力端になっており、ベースが抵抗R9及びR8を介して正の電源ラインV1に接続され、かつ、抵抗R10及びR11の各一端に接続されている。抵抗R10の他端は、電圧切換回路36のスイッチ素子Q8を介して負の電源ラインV2に接続されている。抵抗R11の他端は、電圧切換回路36のスイッチ素子Q9を介して負の電源ラインV2に接続されている。
【0084】
電圧源35が生成する電圧を下記式3に示す。
【数3】

【0085】
なお、VBEはトランジスタQ7のベース−エミッタ間電圧であり、トランジスタQ1,Q2のベースエミッタ間電圧と同じである。Rbは、抵抗R10及びR11に基づく抵抗値であり、電圧切換回路36によって、R10、R11、又は、R10とR11との合成抵抗R10・R11/(R10+R11)のいずれかに設定される。
【0086】
電圧切換回路36は、基準クロックMCLKの周波数が切り換えられる際に、第5切換信号φ5及び第6切換信号φ6を受けて、電圧源35が生成する電圧Vbの電圧値を切り換える。電圧切換回路36は、抵抗R10と負の電源ラインV2との間に接続されたスイッチ素子(例えばFET)Q8と、抵抗R11と負の電源ラインV2との間に接続されたスイッチ素子(例えばFET)Q9とを含む。
【0087】
スイッチ素子Q8は、第5切換信号φ5が供給され、第5切換信号φ5に基づいてオン状態又はオフ状態になり、抵抗R10が抵抗R9及びトランジスタQ7のベースに接続された状態、又は、抵抗R10が抵抗R9及びトランジスタQ7のベースに接続されていない状態のいずれかに切り換える。例えば、スイッチ素子Q8は、第5切換信号φ5がハイレベルの時にオン状態になり、ローレベルの時にオフ状態になる。
【0088】
スイッチ素子Q9は、第6切換信号φ6が供給され、第6切換信号φ6に基づいてオン状態又はオフ状態になり、抵抗R11が抵抗R9及びトランジスタQ7のベースに接続された状態、又は、抵抗R11が抵抗R9及びトランジスタQ7のベースに接続されていない状態のいずれかに切り換える。例えば、スイッチ素子Q9は、第6切換信号φ6がハイレベルの時にオン状態になり、ローレベルの時にオフ状態になる。
【0089】
図4は、R10>R11のときに、基準クロックMCLKが第1周波数〜第3周波数のそれぞれの場合における、第5切換信号φ5(スイッチ素子Q8)、第6切換信号φ6(スイッチ素子Q9)、及び、抵抗Rbの関係を示す。例えば、R10=1kΩ、R11=0.5kΩの場合、第1周波数のときにRb=1kΩ、第2周波数のときにRb=0.5kΩ、第3周波数のときにRb=0.33kΩとなり、基準クロックMCLKの周波数が高くなるほど、Rbが小さくなる。従って、電圧源35が生成する電圧Vbは上記式3で表されるので、基準クロックMCLKの周波数が高くなるほど、大きくなる。従って、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idは上記式1及び2で表されるので、基準クロックMCLKの周波数が高くなるほど大きくなり、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2の電圧変化量が大きくなる。
【0090】
同様に、基準クロックMCLKの周波数が低くなるほど、Rbが大きくなる。従って、電圧源35が生成する電圧Vbは、基準クロックMCLKの周波数が低くなるほど、小さくなる。従って、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idは、基準クロックMCLKの周波数が低くなるほど小さくなり、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2の電圧変化量が小さくなる。
【0091】
電圧切換回路36において、スイッチ素子Q8及びQ9が共にオフである状態を採ることはできない。従って、抵抗R9及びトランジスタQ7のベースに並列接続される、抵抗とスイッチ素子との組合せが図3のように2組(R10とQ8との組、及び、R11とQ9との組)であれば、電圧Vbを「2−1=3」通りの値に切り換えることができる。その結果、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idも「2−1=3」通りの値に切り換えることができ、基準クロックMCLKの周波数を3通りに切り換えることができる。
【0092】
同様に、図3Bに示す電流生成回路のように抵抗R9及びトランジスタQ7のベースに並列接続される、抵抗とスイッチ素子との組合せが3組(R10とQ8との組、R11とQ9との組、及び、R12とQ10との組)であれば、電圧Vbを「2−1=7」通りの値に切り換えることができる。その結果、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idも「2−1=7」通りの値に切り換えることができ、基準クロックMCLKの周波数を7通りに切り換えることができる。
【0093】
一般化すると、抵抗R9及びトランジスタQ7のベースに並列接続される、抵抗とスイッチ素子との組合せがn組であれば、電圧Vbを「2−1」通りの値に切り換えることができる。その結果、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idも「2−1」通りの値に切り換えることができ、基準クロックMCLKの周波数を「2−1」通りに切り換えることができる。このように、電圧切換回路36によると、少ない抵抗とスイッチ素子との組合せによって、基準クロックMCLKの周波数に応じて、電圧Vbを多数の値に切り換えることができ、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idを多数の値に切り換えることができる。
【0094】
ここで、基準クロックMCLKの周波数を切り換えた際に、オーディオ信号が無信号時(無変調時)の第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の充電電圧(充電終了時の電圧)を、基準クロックMCLKの周波数と無関係に常に充電可能電圧の1/2の電圧(VCC−Vref)/2に設定するための抵抗Rbの条件を下記式4に示す。
【数4】

【0095】
VBEはトランジスタQ7のベース−エミッタ間電圧であり、トランジスタQ1,Q2のベースエミッタ間電圧と同じである。Cは第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の容量、fは基準クロックMCLKの周波数である。従って、基準クロックMCLKの周波数に応じて抵抗Rbを適切な値に設定できるように、抵抗R10、R11の抵抗値や第5切換信号φ5、第6切換信号φ6を設定すればよい。
【0096】
以下、基準クロックMCLKの周波数を切り換えた際の動作を、図7A〜図7Cを参照して説明する。各図7においては、図5における(f)及び(b)の波形のみを記載している。また、各図7において、(1)はオーディオ信号が無信号の場合を、(2)はオーディオ信号の振幅値が正の場合を、(3)はオーディオ信号の振幅値が負の場合を示す。図7Aは、基準クロックMCLKの周波数が基準周波数である第2周波数のときを示す。図7Bは、基準クロックMCLKの周波数が低周波数である第1周波数のときを示す。図7Cは、基準クロックMCLKの周波数が高周波数である第3周波数のときを示す。
【0097】
基準クロックMCLKが第2周波数の時、図4に示すように、第5切換信号φ5がローレベル、第6切換信号φ6がハイレベルであるので、スイッチ素子Q8はオフ状態、スイッチ素子Q+はオン状態である。従って、抵抗R9及びトランジスタQ7のベースには抵抗R11のみが接続された状態であり、Rb=R11(例えば0.5kΩ)になっている。これにより、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idの電流量は設定されている3つの電流量のうち中間の値になる。その結果、図7Aに示すように、第1コンデンサC1の充電時および放電時における電圧変化量(傾き)は中間レベルである。そして、基準クロックMCLKの周波数が基準周波数であり、コンデンサC1の充電時間も中間レベルであるので、コンデンサC1の充電電圧Vaは(VCC−Vref)/2になる。その結果、Va〜VCCまでの電圧値と、Va〜Vrefまでの電圧値とが同じになるので、コンデンサC1において電圧がクリップする際のオーディオ信号の正側の振幅値と負側の振幅値とが同じになり、正常なPWM波形を出力することができる。
【0098】
基準クロックMCLKが第1周波数の時、図4に示すように、第5切換信号φ5がハイレベル、第6切換信号φ6がローレベルであるので、スイッチ素子Q8はオン状態、スイッチ素子Q9はオフ状態である。従って、抵抗R9及びトランジスタQ7のベースには抵抗R10のみが接続された状態であり、Rb=R10(例えば1kΩ)になっている。これにより、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idの電流量は設定されている3つの電流量のうち最小の値になる。その結果、図7Bに示すように、第1コンデンサC1の充電時および放電時における電圧変化量(傾き)は最小になる。そして、基準クロックMCLKの周波数が低周波数であり、コンデンサC1の充電時間が長いので、コンデンサC1の充電電圧Vaは(VCC−Vref)/2になる。その結果、Va〜VCCまでの電圧値と、Va〜Vrefまでの電圧値とが同じになるので、コンデンサC1において電圧がクリップする際のオーディオ信号の正側の振幅値と負側の振幅値とが同じになり、正常なPWM波形を出力することができる。
【0099】
基準クロックMCLKが第3周波数の時、図4に示すように、第5切換信号φ5がハイレベル、第6切換信号φ6がハイレベルであるので、スイッチ素子Q8はオン状態、スイッチ素子Q9はオン状態である。従って、抵抗R9及びトランジスタQ7のベースには抵抗R10及びR11が並列接続された状態であり、Rb=R10R11/(R10+R11)(例えば0.33kΩ)になっている。これにより、直流バイアス電流Ic及び放電電流Idの電流量は設定されている3つの電流量のうち最大の値になる。その結果、図7Cに示すように、第1コンデンサC1の充電時および放電時における電圧変化量(傾き)は最大になる。そして、基準クロックMCLKの周波数が高周波数であり、コンデンサC1の充電時間が短いので、コンデンサC1の充電電圧Vaは(VCC−Vref)/2になる。その結果、Va〜VCCまでの電圧値と、Va〜Vrefまでの電圧値とが同じになるので、コンデンサC1において電圧がクリップする際のオーディオ信号の正側の振幅値と負側の振幅値とが同じになり、正常なPWM波形を出力することができる。
【0100】
次に、本発明の別の実施形態によるパルス幅変調回路1’を説明する。図8は、パルス幅変調回路1’の要部を示すブロック回路図である。なお、図8では、図2に対して異なる部分のみを記載し、クロック周波数制御部10、基準クロック生成回路11、デッドタイム生成回路12、立下りエッジ回路13、第1RSフリップフロップ回路17、第2RSフリップフロップ回路18および信号出力回路19は省略している。パルス幅変調回路1’は、充放電期間における第1,第2コンデンサC1,C2の電圧の変化方向を逆にしたものである。すなわち、充電電流Ij(=Ic+Δi)及び放電電流Idの向きが図2のパルス幅変調回路1と逆になっており、第1切換信号φ1がハイレベルの期間に充電電流Ijによって第1コンデンサC1を放電(すなわち、接地電位に対してマイナス方向に充電)し、第1切換信号φ1がローレベルの期間に放電電流Idによって第1コンデンサC1を充電(すなわち、接地電位に対してプラス方向に放電)する。また、パルス幅変調回路1’は、閾値電圧の代わりに第1,第2コンデンサC1,C2の充電電圧を閾値電圧Vrefと比較するための比較回路27,28が設けられている。なお、このパルス幅変調回路1’の詳細については特許文献1に開示されている。
【0101】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。直流バイアス電流Icと放電電流Idとの一定比は1:2に限定されず、回路構成によっては1:1や2:3とする場合もある。図3Cおよび図3Dに示すように、図3および図3Bの回路図において、トランジスタQ4と抵抗R5との間にトランジスタQ11が設けられてもよい。トランジスタQ11はベースがトランジスタQ5及びQ6のベースに接続され、コレクタがトランジスタQ4のコレクタに接続され、エミッタが抵抗R5に接続されている。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明はオーディオ用スイッチングアンプのパルス幅変調回路に好適に適用され得る。
【符号の説明】
【0103】
1,1’ パルス幅変調回路
2 スイッチング回路
3 ローパスフィルタ回路
4 第1電源
5 第2電源
10 クロック周波数制御部
11 基準クロック生成回路
12 デッドタイム生成回路
13 立下りエッジ検出回路
14 電流生成回路
16 電流バイパス回路
17 第1RSフリップフロップ回路
18 第2RSフリップフロップ回路
19 信号出力回路
23 電圧源
31 VI変換回路
32 VI変換回路
33 差動回路
34 カレントミラー回路
35 電圧源
36 電圧切換回路
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
eS オーディオ信号
Ic 直流バイアス電流
Id 放電電流
res1 第1リセット信号
res2 第2リセット信号
set1 第1セット信号
set2 第2セット信号
SW1 第1スイッチ
SW2 第2スイッチ
SW3 第3スイッチ
SW4 第4スイッチ
Vref 閾値電圧
φ1 第1切換信号
φ2 第2切換信号
φ3 第3切換信号
φ4 第4切換信号
φ5 第5切換信号
φ6 第6切換信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷を蓄積する第1電荷蓄積手段と、
電荷を蓄積する第2電荷蓄積手段と、
入力される交流電圧の振幅に応じて電流値が変化する第1の電流を生成し、かつ、第2の電流を生成する電流生成手段と、
前記第1の電流に基づいてクロック信号の半周期である第1期間において前記第1電荷蓄積手段における電圧を変化させ、前記第2の電流に基づいて前記第1期間とは半周期ずれた前記第1期間に続く第2期間において前記第1電荷蓄積手段における電圧を前記第1期間における増減方向と逆向きに変化させるとともに、前記第1の電流に基づいて前記第2電荷蓄積手段における電圧を変化させ、前記第2の電流に基づいて前記第2期間とは半周期ずれた前記第2期間に続く第3期間において前記第2電荷蓄積手段における電圧を前記第2期間における増減方向と逆向きに変化させる電圧制御手段と、
前記第2期間が開始されてから前記第1電荷蓄積手段における電圧が閾値電圧に到達するまでの時間を検出する第1検出手段と、
前記第3期間が開始されてから前記第2電荷蓄積手段における電圧が前記閾値電圧に到達するまでの時間を検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段及び前記第2検出手段から前記クロック信号の半周期ごとに交互に繰り返し出力される時間に基づいて、当該時間のパルス幅を有するパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
前記クロック信号の周波数を複数の周波数の中から選択された1つの周波数に切り換える周波数制御手段とを備え、
前記電流生成手段が、
電圧を供給する電圧源と、
前記周波数制御手段によって選択されたクロック信号の周波数に応じて、前記電圧源が供給する電圧を切り換える電圧切換手段と、
前記電圧源から供給される前記電圧と、前記交流電圧とに基づいて前記第1の電流を生成する第1電流生成手段と、
前記電圧源から供給される前記電圧に基づいて前記第2の電流を生成する第2電流生成手段とを有する、パルス幅変調回路。
【請求項2】
前記クロック信号の周波数が現在の周波数よりも低い周波数に切り換えられるとき、前記第1の電流及び前記第2の電流が現在の電流よりも小さくなるよう、前記電圧切換手段が、前記電圧源からの電圧が現在の電圧よりも小さくなるように切り換え、
前記クロック信号の周波数が現在の周波数よりも高い周波数に切り換えられるとき、前記第1の電流及び前記第2の電流が現在の電流よりも大きくなるよう、前記電圧切換手段が、前記電圧源からの電圧が現在の電圧よりも大きくなるように切り換える、請求項1に記載のパルス幅変調回路。
【請求項3】
前記第1電流生成手段が、
前記電圧源から供給される前記電圧に基づいて、前記第2の電流と同じ電流値の第3の電流を生成する電圧電流変換手段と、
前記第3の電流の1/2の電流に前記交流電圧に基づく電流を加算した第4の電流を生成する差動回路と、
前記第4の電流と同じ電流値である前記第1の電流を生成するカレントミラー回路とを含む、請求項1または2に記載のパルス幅変調回路。
【請求項4】
前記電圧切換手段が、前記電圧源が有する抵抗素子の前記電圧源への接続又は非接続を切り換える複数のスイッチ素子を含み、前記スイッチ素子の個数がnである場合に、全てのスイッチ素子がオフ状態になる場合を除く2−1種類の電圧のうち、前記クロック信号の周波数に応じていずれかの電圧に切り換える、請求項1〜3のいずれかに記載のパルス幅変調回路。
【請求項5】
前記第1電荷蓄積手段および前記第2電荷蓄積手段における充電開始電圧が前記閾値電圧Vrefであり、前記第1電荷蓄積手段および前記第2電荷蓄積手段における充電可能な電圧の上限が電源電圧VCCである場合に、前記クロック信号の周波数がいずれの周波数に切り換えられた場合にも、前記交流電圧の振幅が0であるときの前記第1電荷蓄積手段および前記第2電荷蓄積手段の最大充電電圧Vaが(VCC−Vref)/2になるように、前記電圧切換手段によって切り換えられる前記電圧源が供給する電圧が決定されている、請求項1〜4のいずれかに記載のパルス幅変調回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のパルス幅変調回路と、
前記パルス幅変調回路から出力される変調信号に基づいて電源電圧をスイッチングするスイッチング回路とを備える、スイッチングアンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図10】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−200290(P2010−200290A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168020(P2009−168020)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】