説明

パワーオンリセット回路

【課題】回路の消費電流を低減可能な、パワーオンリセット回路を提供すること。
【解決手段】抵抗分圧回路(R3,R4)によって得られた電源電圧VDDの検出電圧Vcが基準電圧Vrefを超えているとき、リセット解除信号を出力するコンパレータC2と、基準電圧Vrefよりも高い所定電圧を検出する第2の電圧検出回路D2と、第2の電圧検出回路D2によって前記の所定電圧が検出されているときに抵抗分圧回路(R3,R4)とコンパレータC2に流れる電流を遮断するスイッチM1,M2と、スイッチM1,M2によって電流が遮断されているときにリセット解除信号の出力を補償する補償回路とを備え、第2の電圧検出回路D2の消費電流を、抵抗分圧回路(R3,R4)とコンパレータC2との合計消費電流よりも低く設定した、パワーオンリセット回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リセット解除信号を出力するパワーオンリセット回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、電源電圧が所定の閾値を超えて上昇したことを検出するとリセット信号を解除するパワーオンリセット回路が知られている(例えば、特許文献1を参照)。図1は、特許文献1等の従来のパワーオンリセット回路の基本構成を示した図である。図1の回路の場合、コンパレータC1は、電源電圧VDDの投入直後は、電源電圧VDDの抵抗R1とR2による分圧電圧Vaが基準電圧Vrefよりも低いので、ローレベルの電圧信号PORを出力し、電源電圧VDDがある程度まで立ち上がると、分圧電圧Vaが基準電圧Vrefを上回るので、ハイレベルの電圧信号PORを出力する。すなわち、図1の回路の場合、ローレベルの電圧信号PORが出力されている状態は、リセット状態を表し、ハイレベルの電圧信号PORが出力されている状態は、リセット解除状態を表す。
【0003】
図2は、図1の回路における、電源電圧VDDの投入から遮断までの電圧信号PORと電源電圧VDDの推移を示したタイムチャートである。電源電圧VDDは、不図示のレギュレータ等の電圧制御回路によって、予め設定された目標電圧に一致するように制御される。一般的に、電源電圧VDDの立ち上がり時には、電源電圧VDDの目標電圧よりも低い電圧で、電圧信号PORのレベルがローレベルからハイレベルに切り替わることにより、リセットモードからリセット解除モードに移行する。また、電源電圧VDDの立ち下がり時にも同様に、電源電圧VDDの目標電圧よりも低い電圧で、電圧信号PORのレベルがハイレベルからローレベルに切り替わることにより、リセット解除モードからリセットモードに移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−123168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のパワーオンリセット回路では、リセットモードとリセット解除モードとの間でのモード切り替えのために、検出対象となる電圧を、電源電圧VDDが投入されてから遮断されるまで常に監視しなければならない。このように、電圧を常時監視することは、パワーオンリセット回路の消費電流を増大させる一因となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、回路の消費電流を低減可能な、パワーオンリセット回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るパワーオンリセット回路は、
電源電圧を監視する第1の監視回路と、
前記第1の監視回路によって監視された電源電圧が第1の所定値を超えているとき、リセット解除信号を出力する出力回路と、
前記第1の監視回路よりも消費電流が低い制御回路とを有し、
前記制御回路が、
前記電源電圧を監視する第2の監視回路と、
前記第2の監視回路によって監視された電源電圧が前記第1の所定値よりも高い第2の所定値を超えているとき、前記第1の監視回路に流れる電流を抑制する抑制回路と、
前記第2の監視回路によって監視された電源電圧が前記第2の所定値を超えているとき、前記リセット解除信号の出力を補償する補償回路とを備える、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回路の消費電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のパワーオンリセット回路の基本構成を示した図である。
【図2】図1の回路における、電源電圧VDDの投入から遮断までの電圧信号PORと電源電圧VDDの推移を示したタイムチャートである。
【図3】本発明の実施形態であるパワーオンリセット回路1の回路図である。
【図4】第2の電圧検出回路D2の回路図である。
【図5】電源電圧VDDの変化に対する電圧信号Veの変化を示した図である。
【図6】電源電圧VDDの時間的変化に対する、電圧信号PORとVeの振る舞いを示した図である。
【図7】パワーオンリセット回路1に構成される、基準電圧Vrefの生成回路と第2の電圧検出回路D2の具体例を示した図である。
【図8】スイッチM1及びM2が共にオンした状態とオフした状態との、図7の回路の消費電流を比較した図である。
【図9】コンパレータC2の内部回路を示した図である。
【図10】第2の電圧検出回路D2の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。図3は、本発明の実施形態であるパワーオンリセット回路1の回路図である。パワーオンリセット回路1は、周辺回路が誤動作しない電圧に電源電圧VDDが到達するまで、周辺回路にリセットをかけるパワーオンリセット(POR)の機能を有する。
【0011】
パワーオンリセット回路1は、第1の電圧検出回路D1と、第2の電圧検出回路D2と、スタンバイスイッチM1及びM2とを備える。第1の電圧検出回路D1は、電源電圧VDDを動作電源とする回路であって、抵抗分圧回路(R3,R4)と、コンパレータC2とを備える。
【0012】
抵抗分圧回路(R3,R4)は、電源電圧VDDを監視する監視回路である。抵抗分圧回路(R3,R4)は、抵抗R3とR4との直列回路であって、グランドパターンと監視対象電圧の電位パターンとの間に挿入される。監視対象電圧は、電源電圧VDDの変化に連動する電圧であって、電源電圧VDDそのものでもよい。抵抗分圧回路(R3,R4)は、その監視対象電圧を抵抗R3とR4による分圧をすることによって、抵抗R3と抵抗R4との接続点から、監視対象電圧を分圧した検出電圧Vcを出力する。つまり、検出電圧Vcは、電源電圧VDDに対応した値である。例えば、抵抗R3とR4の抵抗値の比は、1:2である。なお、監視対象電圧の分圧は、3つ以上の複数の抵抗によって行われてもよい。
【0013】
コンパレータC2は、検出電圧Vcと所定の基準電圧Vrefとが比較入力される比較入力回路と、リセット信号又はリセット解除信号を電圧信号PORとして出力する出力回路とを備える(比較入力回路と出力回路の詳細については、後述する)。出力回路は、比較入力回路によって検出電圧Vcが基準電圧Vrefを超えていないと検出されているときには、リセット信号を出力し、比較入力回路によって検出電圧Vcが基準電圧Vrefを超えていると検出されているときには、リセット解除信号を出力するものである。つまり、コンパレータC2は、検出電圧Vcと基準電圧Vrefとを比較し、その比較結果に応じて、リセット信号又はリセット解除信号を表す電圧信号PORを出力する。なお、リセット信号とリセット解除信号は、排他的に出力されるものである。また、リセット解除信号を出力するということは、リセット(信号)を解除することと同義である。
【0014】
基準電圧Vrefは、電源電圧VDDが降圧回路(不図示)によって降圧変換されて生成された一定の電圧値である。基準電圧Vrefは、コンパレータC2の非反転入力端子に入力され、検出電圧Vcは、コンパレータC2の反転入力端子に入力される。したがって、コンパレータC2は、検出電圧Vcが基準電圧Vrefを下回っているとき、ハイレベルの電圧信号PORをリセット信号として出力し、検出電圧Vcが基準電圧Vrefを上回っているとき、ローレベルの電圧信号PORをリセット解除信号として出力する。コンパレータC2は、電源電圧VDDを動作電源とする。
【0015】
スタンバイスイッチM1,M2は、電源電圧VDDを監視する監視回路に流れる電流を抑制可能な遮断回路である。第1の電圧検出回路D1は、電源電圧VDDを監視する第1の監視回路として、抵抗分圧回路(R3,R4)と、コンパレータC2の比較入力回路とを備える。すなわち、スイッチM1は、抵抗分圧回路(R3,R4)に流れる電流を遮断する第1の遮断回路であり、スイッチM2は、コンパレータC2の比較入力回路に流れる電流を遮断する第2の遮断回路である。
【0016】
スイッチM1は、抵抗分圧回路(R3,R4)に監視対象電圧を印加するか否かを切り替えるための第1のスイッチであり、スイッチM2は、コンパレータC2に電流を流すか否かを切り替えるための第2のスイッチである。スイッチM1は、抵抗分圧回路(R3,R4)に直列に接続され、スイッチM2は、コンパレータC2の電源経路に直列に接続される。スイッチM1,M2は、NチャンネルのMOSFET(以下、「NMOS」という)である。したがって、スイッチM1,M2への入力信号がハイレベルであれば、スイッチM1,M2はオンし、スイッチM1,M2への入力信号がローレベルであれば、スイッチM1,M2はオフする。
【0017】
スイッチM1のオンによって、抵抗分圧回路(R3,R4)に監視対象電圧が印加され、抵抗分圧回路(R3,R4)に電流が流れる。これにより、抵抗分圧回路(R3,R4)の監視対象電圧の監視機能が正常に働く。一方、スイッチM1のオフによって、抵抗分圧回路(R3,R4)に監視対象電圧が印加されず、抵抗分圧回路(R3,R4)に電流が流れない。これにより、抵抗分圧回路(R3,R4)の監視対象電圧の監視機能は制限され、抵抗分圧回路(R3,R4)の監視動作は停止する。
【0018】
また、スイッチM2のオンによって、コンパレータC2に電源電圧VDDが印加され、コンパレータC2に電流が流れる。これにより、コンパレータC2の入力電圧監視機能が正常に働く。一方、スイッチM2のオフによって、コンパレータC2を流れる電流の経路が遮断され、コンパレータC2に電流が流れない。これにより、コンパレータC2の入力電圧監視機能は制限され、コンパレータC2の比較入力回路の監視動作は停止する。
【0019】
スイッチM1,M2は、第2の電圧検出回路D2から出力された電圧信号Veの電圧レベルに応じて、オン/オフする。第2の電圧検出回路D2は、第1の監視回路が監視対象としている電源電圧VDDを監視する第2の監視回路である。第2の電圧検出回路D2は、検出電圧Vcが基準電圧Vrefに一致する時の電源電圧VDDの電圧値Vrよりも高い所定の電圧値Vsを電源電圧VDDが超えているか否かを検出可能な回路である(図6参照)。電圧値Vsは、図6に示されるように、電源電圧VDDの目標設定電圧Vtよりも低い値である。目標設定電圧Vtは、不図示のレギュレータ等の電圧制御回路によって決まる一定の電圧値である。
【0020】
図4は、第2の電圧検出回路D2の回路例を示した回路図である。第2の電圧検出回路D2は、電流源S1とトランジスタM3との直列回路と、電流源S1とトランジスタM3との接続点に入力部が接続されたインバータA1とを備える。トランジスタM3は、PチャンネルMOSFETである(以下、「PMOS」という)。インバータA1は、電流源S1とトランジスタM3との接続点の電圧レベルを反転させた信号を出力する。電圧信号Veは、インバータA1の出力信号に相当する。
【0021】
トランジスタM3のゲートに入力されるバイアス電圧VbiasとトランジスタM3のソース側の電源電圧VDDとの電位差Vgs(=|Vbias−VDD|)が、トランジスタM3の閾値電圧Vthよりも大きくなることにより、トランジスタM3はオンする。インバータA1から出力される電圧信号Veのレベルは、トランジスタM3のオンによって、ハイレベルからローレベルに変化する。
【0022】
図5は、電源電圧VDDの変化に対する電圧信号Veの変化を示した図である。電源電圧VDDの投入直後は、電圧信号Veは、電源電圧VDDの増加に応じて、略比例で増加する。この略比例で増加する期間では、電圧信号Veと電源電圧VDDの電圧値は、略等しい。その後、電源電圧VDDが電圧値Vs(=|Vbias−VDD|−Vth)付近に近づくと、電圧信号Veはハイレベルからローレベルに切り替わる。つまり、電源電圧VDDが、
|Vbias−VDD|−Vth>VDD ・・・(1)
の関係式を満たす電圧領域では、電圧信号Veはローレベルである。
【0023】
トランジスタM3の閾値電圧Vthは、製造プロセスで決まる値なので、バイアス電圧Vbiasの調整次第で、任意の電圧値Vsで、電圧信号Veの切り替えを行うことができる。例えば、Vbiasが低いと、VbiasとVDDとの電位差Vgsは大きくなるので、電源電圧VDDが低い電圧領域で電圧信号Veのレベルの切り替えが可能となる。逆に、Vbiasが高いと、電位差Vgsは小さくなるので、電圧信号Veのレベルが切り替わる時の電源電圧VDDは高くなる。
【0024】
図6は、電源電圧VDDの時間的変化に対する、電圧信号PORとVeの振る舞いを示した図である。電源電圧VDDが零から立ち上がって電圧値Vrを超えることにより検出電圧Vcが基準電圧Vrefを超えるので、コンパレータC2から出力される電圧信号PORのレベルが、ハイレベルからローレベルにタイミングt1で切り替わる。電圧信号PORのレベルが切り替わった後、電源電圧VDDが電圧値Vsを超えることにより、第2の電圧検出信号から出力される電圧信号Veのレベルが、ハイレベルからローレベルにタイミングt2で切り替わる。その後、電源電圧VDDがタイミングt3以後に目標設定電圧Vtで安定する。
【0025】
電圧信号Veのレベルがローレベルになることにより、スイッチM1,M2はオフする。スイッチM1,M2のオフにより、抵抗分圧回路(R3,R4)とコンパレータC2に流れる電流が遮断される。この電流遮断によって、抵抗分圧回路(R3,R4)とコンパレータC2の比較入力回路の動作が停止する。
【0026】
つまり、抵抗分圧回路(R3,R4)とコンパレータC2に流れる電流がタイミングt2以後遮断されているので、電源電圧VDDの投入から遮断までの全動作期間のほとんどを占めるタイミングt3以後の期間での消費電流を、効果的に低減することができる。
【0027】
図7は、図3に示したパワーオンリセット回路1に構成される、基準電圧Vrefの生成回路と第2の電圧検出回路D2の具体例を示した図である。
【0028】
基準電圧Vrefの生成回路(以下、「Vref生成回路」という)は、ドレインが電源電圧VDDに接続されたディプレッション型MOSFET(NDMOS)のトランジスタM3と、ダイオード接続されたNMOSのトランジスタM4とを備える。トランジスタM3のゲートとソース間が接続されてゲート−ソース間電圧が0Vであるため、トランジスタM3に一定のドレイン電流が流れる。したがって、Vfef生成回路は、電源電圧VDDに基づいて、電源電圧VDDよりも低い一定の基準電圧Vrefを生成する。
【0029】
第2の電圧検出回路D2は、ソースが電源電圧VDDに接続されたPMOSのトランジスタM5と、ソースがグランドに接続されたNMOSのトランジスタM6と、インバータA1とを備える。第2の電圧検出回路D2は、基準電圧Vrefをバイアス電圧Vbiasとして、トランジスタM5とトランジスタM6のそれぞれに与える回路構成である。トランジスタM5とトランジスタM6のドレイン同士の接続点から出力される電圧信号が、インバータA1に入力される。インバータA1の出力信号Veを、抵抗分圧回路(R3,R4)のグランド側に接続されたスイッチM1と、コンパレータC2のグランド側に接続されたスイッチM2に入力する。
【0030】
図9は、コンパレータC2の内部回路を示した図である。コンパレータC2は、検出電圧Vcと所定の基準電圧Vrefとが比較入力される比較入力回路として、トランジスタM9,M10,M17,M18及び電流源S2を備え、リセット信号又はリセット解除信号を電圧信号PORとして出力する出力回路として、トランジスタM12,M13,M15,M16を備える。トランジスタM15,M16,M17,M18はNMOSであり、トランジスタM9,M10,M12,M13はPMOSである。また、NMOSのスイッチM7は、上述のスイッチM2に相当する。
【0031】
また、コンパレータC2は、ローレベルの電圧信号Veの入力によりスイッチM7がオフしているときのリセット解除信号の出力を補償する補償回路として、インバータA2と、スイッチM14,M19と、スイッチM8,M11とを備える。
【0032】
図9の動作について説明する。電圧信号Veがハイレベルのとき、スイッチM7はオンであり、スイッチM14,M19はオフである。スイッチM7のオンにより、比較入力回路は、正常に動作する。すなわち、検出電圧Vcが基準電圧Vrefよりも低いとき、スイッチM13のオンにより、電圧信号PORはハイレベルであり(リセット状態)、検出電圧Vcが基準電圧Vrefよりも高いとき、スイッチM12,M16のオンにより、電圧信号PORはローレベルである(リセット解除状態)。
【0033】
その後、電圧信号Veがハイレベルからローレベルに変化する。電圧信号Veがローレベルのとき、スイッチM7はオフであり、スイッチM14,M19は、ローレベルの電圧信号VeがインバータA2によって反転したハイレベルの電圧信号が入力されることで、オンである。スイッチM7のオフにより、比較入力回路に流れる電流は遮断され、その監視動作が停止する。
【0034】
この場合、補償回路のPMOSのスイッチM8及びM11は、ローレベルの電圧信号Veが入力されることでオンするので、比較入力回路のトランジスタM17,M18のドレイン側のノードが、電源電圧VDD側にプルアップされる。これにより、出力回路のスイッチM12,M13は、オフする。一方、補償回路のNMOSのスイッチM14はオンしているので、スイッチM14のドレイン側のノードはGND側にプルダウンされる。また、NMOSのスイッチM19もオンしているので、電圧信号PORの出力をグランドレベルに引き込む。
【0035】
つまり、出力回路のPMOSのトランジスタM12,M13のゲート入力はハイレベル、トランジスタM16のゲート入力はローレベル、スイッチM19のゲート入力はハイレベルになるため、電圧信号PORの出力はローレベルである。
【0036】
このように、スイッチM1とスイッチM7(M2)がオフされても、電圧信号PORはローレベルのまま変化しないので、周辺回路に誤ってリセットがかかってしまうことはない。
【0037】
図8は、スイッチM1及びM2が共にオンした状態とオフした状態との、図7及び図9に示した回路構成を有するパワーオンリセット回路1の消費電流を比較した図である。図8に示されるように、スイッチM1及びM2をオフすることにより、抵抗分圧回路(R3,R4)に流れる電流とコンパレータC2の比較入力回路に流れる電流が遮断されることで、消費電流が低減する。
【0038】
ところで、従来のパワーオンリセット回路(図1)に対して、本発明の実施形態であるパワーオンリセット回路1は、新たな制御回路が追加されている。すなわち、新たな制御回路として、第2の電圧検出回路D2(M5+M6+A1)と、第1の監視回路(R3+R4+C2の比較入力回路)に流れる電流を抑制する抑制回路(M1+M2)と、リセット解除信号の出力を補償する補償回路(A2+M8+M11+M14)とが追加されている。本発明のパワーオンリセット回路1は、これらの追加した新たな制御回路によって第1の監視回路(R3+R4+C2の比較入力回路)に流れる電流を遮断することにより、従来のパワーオンリセット回路(図1)よりも消費電流の低減を図っている。そのため、遮断して削減される消費電流よりも、追加する回路の消費電流が大きくならないようにする必要がある。また、スイッチM1,M2がオフしている期間はオンしている期間に比べて十分長く、電源電圧VDDが供給されている期間のうち、スイッチM1,M2がオフしている期間がほとんど占めている。したがって、スイッチM1,M2がオフしているときのこれらの新たな制御回路の消費電流は、スイッチM1,M2がオンしているときの第1の監視回路(R3+R4+C2の比較入力回路)の消費電流よりも低くなければならない。
【0039】
この点、スイッチM1,M2がオフしているときの抑制回路(M1+M2)及び補償回路(A2+M8+M11+M14)の消費電流は、ほとんど零である。また、図8に示されるように、スイッチM1,M2がオフしているときの第2の電圧検出回路D2(M5+M6+A1)の消費電流は、スイッチM1,M2がオンしているときの第1の監視回路(R3+R4+C2の比較入力回路)の消費電流よりも低い。したがって、スイッチM1,M2がオフしているときのこれらの新たな制御回路の消費電流は、スイッチM1,M2がオンしているときの第1の監視回路(R3+R4+C2の比較入力回路)の消費電流よりも低くなっているので、新たな制御回路を追加しても、図1のような従来の回路に比べて、消費電流を削減することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、パワーオンリセットの機能を損なうことなく(リセット信号を誤出力することなく)、消費電流を削減することができる。また、電源電圧VDDが投入される際だけに限らず、遮断される際も、リセット解除信号を誤出力することはない。すなわち、リセット解除モードからリセットモードへの切り替え時の電圧値よりも高い電源電圧VDDでスイッチM1,M2がオフからオンに切り替わるので、出力信号PORのレベルが誤って反転することはない。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0042】
例えば、図10は、第2の電圧検出回路D2の変形例である。図10の検出回路D2は、図7の検出回路D2に比べて、電源電圧VDDが低い領域でも、電圧信号Veを反転させて消費電流をカットすることができる点を特徴としている。
【0043】
PMOSのトランジスタM26へのバイアス電圧Vbiasは、ダイオード接続されたNMOSのトランジスタM22のソース電圧から供給している。これにより、バイアス電圧Vbiasを図7に比べてトランジスタM22の閾値電圧分だけ下げることができることができるので、PMOSのトランジスタM26がオン可能な電源電圧VDDを図7に比べて下げることができる。
【0044】
すなわち、図7の検出回路(M5,M6)は上下2段のインバータの構成なので、検出回路(M5,M6)の出力レベルを切り替えて電圧信号Veを反転させるためには、『VDD/2>Vref』、つまり『VDD>2×Vref』という関係式が成立する必要がある。例えば、Vrefが1Vの場合、電源電圧VDDは2Vを超えなければ、電圧信号Veを反転させることができない。
【0045】
一方、図10の場合、トランジスタM22の閾値電圧をVth1とすると、バイアス電圧Vbiasは、『Vbias=Vref−Vth1』という関係式が成立する。したがって、トランジスタM26の閾値電圧をVth2とすると、PMOSのトランジスタM26がオンするためには、『VDD>Vth2+Vbias』という関係式が成立すればよい。そうすると、例えば、Vrefが1V、Vth1が0.8V,Vth2が0.8Vの場合、電源電圧VDDは1.0Vを超えれば、電圧信号Veを反転させることができる。なお、電圧信号Veの反転の際は、PMOSのトランジスタM26のオーバードライブ電圧(Vgs−Vth2)を0.1〜0.2V程度取るため、電圧信号Veが実際に反転するのは、1.1V〜1.2Vの時である。
【0046】
また、例えば、ローレベルの電圧信号PORをリセット信号として出力し、ハイレベルの電圧信号PORをリセット解除信号として出力したい場合、図3に示した回路であれば、コンパレータC2の出力にインバータを設ければよい。又は、検出電圧VcをコンパレータC2の非反転入力端子に入力し、基準電圧VrefをコンパレータC2の反転入力端子に入力する回路構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 パワーオンリセット回路
D1 第1の電圧検出回路
D2 第2の電圧検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を監視する第1の監視回路と、
前記第1の監視回路によって監視された電源電圧が第1の所定値を超えているとき、リセット解除信号を出力する出力回路と、
前記第1の監視回路よりも消費電流が低い制御回路とを有し、
前記制御回路が、
前記電源電圧を監視する第2の監視回路と、
前記第2の監視回路によって監視された電源電圧が前記第1の所定値よりも高い第2の所定値を超えているとき、前記第1の監視回路に流れる電流を抑制する抑制回路と、
前記第2の監視回路によって監視された電源電圧が前記第2の所定値を超えているとき、前記リセット解除信号の出力を補償する補償回路とを備える、パワーオンリセット回路。
【請求項2】
前記第1の監視回路は、前記電源電圧を抵抗によって分圧することにより前記電源電圧の検出電圧を出力する抵抗分圧回路を備え、
前記抑制回路は、前記抵抗分圧回路に流れる電流を抑制する、請求項1に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項3】
前記第1の監視回路は、前記電源電圧の検出電圧と前記第1の所定値とが比較入力される比較入力回路を備え、
前記抑制回路は、前記比較入力回路に流れる電流を抑制する、請求項2に記載のパワーオンリセット回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−234241(P2011−234241A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104330(P2010−104330)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】