説明

パワーデバイス短絡検出回路

【課題】パワーデバイスを駆動するドライブ基板内に設け、ドライブ基板につながるパワーデバイスのゲート・エミッタ間電圧の変化を利用して短絡故障を検出することができるパワーデバイス短絡検出回路を得る。
【解決手段】パワーデバイス1と、パワーデバイスを駆動するドライブ基板2に設けられたゲート抵抗4と、パワーデバイスのゲート・エミッタ間に設けられ、必要なゲート電圧の変動を利用してパワーデバイスが短絡故障を起こしたことを検出する短絡検出回路5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、IGBTやFETなどの自励式電圧駆動パワーデバイスの短絡故障を検出するパワーデバイス短絡検出回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパワーデバイスを用いた電力変換装置においては、パワーデバイスの短絡故障の対処方法として、デバイス内に電流センスIGBTチップやRTC回路を内蔵したパワーモジュールを用いて短絡電流をデバイス自体が絞る方法や、各パワーデバイスのゲート・エミッタ間へシャント抵抗を外付けして、その間の電圧異常を検出し、故障と判別して変換装置自体が停止する方法などがあった(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−315303号公報
【特許文献2】特開平6−120787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のパワーデバイスの短絡故障の対処方法では、各パワーモジュール内に過電流検出チップや検出回路を設けるため、パワーモジュールの小型化・低コスト化の弊害となり、また、各パワーモジュールへ外付けでゲート電圧異常検出回路を設けるため、回路の部品点数が多く、複雑化することになり、誤検出などドライブ回路の信頼性の低下となる恐れがあった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、パワーデバイスを駆動するドライブ基板内に設け、ドライブ基板につながるパワーデバイスのゲート・エミッタ間電圧の変化を利用して短絡故障を検出することができるパワーデバイス短絡検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わるパワーデバイス短絡検出回路は、パワーデバイスを駆動するドライブ基板に設けられたゲート抵抗と、パワーデバイスのゲート・エミッタ間に設けられ、必要なゲート電圧の変動を利用してパワーデバイスが短絡故障を起こしたことを検出する短絡検出回路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、抵抗・フォトカプラ・ダイオードといった部品で構成した短絡検出回路をドライブ基板へ設けることにより、単体のパワーデバイスでも、複数並列されたパワーデバイスでも、短絡故障を検出して、制御基板へドライブ回路とは絶縁した故障信号を伝達することにより、パワーデバイスの駆動を停止させることにより、健全なパワーデバイスや、他の装置構成部品の破損等被害拡大を阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1におけるパワーデバイス短絡検出回路を図1により説明する。
図において、1は自励式電圧駆動パワーデバイス(IGBT)、2はこのパワーデバイス1を駆動させるドライブ基板、3は制御基板、4はドライブ基板2の上に設けられたゲート抵抗で、パワーデバイス1のゲート電流を調節するものである。5はドライブ基板2の上に設けられた短絡検出回路で、ゲート抵抗4とパワーデバイス1のゲート・エミッタ間に設けられ、必要なゲート電圧の変動を利用して前記パワーデバイスが短絡故障を起こしたことを検出する。
【0009】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
正常時には、パワーデバイス1のゲート電流は、パワーデバイス1がターンON、ターンOFFする時にだけ流れる。しかし、パワーデバイス1が短絡故障を発生すると、パワーデバイス1のゲートが短絡状態となり、ゲート電流が常時流れるようになる。よって、このゲート電流の変化を用いて、短絡検出回路5はパワーデバイス1の短絡故障を検出する。そして、短絡検出回路5で短絡故障を検出した時、制御基板3へ故障信号として伝達してゲート駆動を停止する。
これにより、標準のパワーデバイスを使用でき、またパワーデバイス毎に設けていた煩雑な短絡検出回路をシンプルにまとめることができる。
【0010】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2におけるパワーデバイス短絡検出回路を図2により説明する。
この実施の形態2においては、短絡検出回路5をフォトカプラ5aと抵抗5bにより構成し、ドライブ基板につながった単体のパワーデバイスが短絡故障を発生したとき、ゲート電圧変動が起こることにより、フォトカプラ5aに流れる電流の変化を利用してパワーデバイスが短絡故障を起こしたことを検出する。これ以外の構成は実施の形態1と同様である。
【0011】
次に、実施の形態2の動作について、図3により説明する。
正常時には、パワーデバイス1のゲート電流は、パワーデバイス1がターンON、ターンOFFする時にだけ流れる。そのため、ターンON、ターンOFFする時以外、フォトカプラ5aへ流れる一次側順電流Ifは、ゲート抵抗4と抵抗5bにより調節された電流値が流れている。
図3の左側が正常時のパワーデバイス1のゲート電圧波形と、フォトカプラ5aの順電流Ifを示している。(ターンON時、ターンOFF時のIfの変化の図示は省略している。)
しかし、パワーデバイス1が短絡故障を発生すると、パワーデバイス1のゲートが短絡状態となり、ゲート電流が常時流れるようになり、フォトカプラ5aの一次側順電流If値が下がる。
図3の右側が短絡発生時のパワーデバイス1のゲート電圧波形と、フォトカプラ5aの順電流Ifを示している。
このIf値の変化を用いて、短絡検出回路5はパワーデバイス1の短絡故障として、ドライブ回路とは絶縁して検出することができる。
これにより、短絡検出回路を、抵抗とフォトカプラを用いたシンプルな回路構成とすることができる。また、短絡発生時、パワーデバイスのゲートが短絡状態となりゲート電圧が低下、フォトカプラに流れる電流が変化するので、パワーデバイスが短絡したことをドライブ回路とは絶縁して検出することができる。
【0012】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3におけるパワーデバイス短絡検出回路を図4により説明する。
この実施の形態3においては、短絡検出回路5を更に2個以上の並列パワーデバイス短絡故障検出できるようにしたものである。すなわち、自励式電圧駆動パワーデバイス(IGBT)1を例えば図4のような3個並列とし、3個の並列パワーデバイス1を駆動させるドライブ基板2としている。そして、ドライブ基板2の上には、3個のゲート抵抗4と、短絡検出回路5が設けられており、この短絡検出回路5は、フォトカプラ5aと、抵抗5bと、パワーデバイス1の並列間でゲート電流の干渉を防止する3個の干渉防止用ダイオード5cと、同じくパワーデバイス1のOFF時のみ一次側順電流Ifを流して、パワーデバイス1の並列間でゲート電流の干渉を防止する3個の干渉防止用ダイオード5dと、短絡故障が発生した時に正常なゲートから上記ダイオード5c、5dを通り、短絡故障したゲートへ短絡電流が流れ込まないように抑制する抑制抵抗5e、5fとから構成したものである。
【0013】
次に、実施の形態3の動作について、図5により説明する。
正常時に、3個の並列パワーデバイス1のすべてがONしていると、ゲート抵抗4→干渉防止用ダイオード5c→抑制抵抗5e→抵抗5b→フォトカプラ5aを順電流Ifが流れる。OFF時は、フォトカプラ5a→抵抗5b→抑制抵抗5f→干渉防止用ダイオード5d→ゲート抵抗4を順電流Ifが流れる。
図5の左側が正常時の並列パワーデバイス1のゲート電圧波形と、フォトカプラ5aの順電流Ifを示している。(ターンON時、ターンOFF時のIfの変化の図示は省略している。)
しかし、並列パワーデバイス1の内、一つでも短絡故障が発生すると、そのパワーデバイス1のゲート電圧が下がり、他の正常なゲート電圧がある並列パワーデバイスから干渉防止用ダイオード5c、5d、抑制抵抗5e、5fを通る横流が発生する。そして、この横流分によってフォトカプラ5aのIf値が下がることになる。
図5の右側が短絡発生時の並列パワーデバイス1のゲート電圧波形と、フォトカプラ5aの順電流Ifを示している。
このIf値の変化を用いて、短絡検出回路5は1個のパワーデバイス1の短絡故障をドライブ回路とは絶縁して検出することができる。
これにより、並列パワーデバイス分のフォトカプラを必要としない。また、並列に接続されたパワーデバイスの内、1個でも短絡故障が発生した場合、正常なパワーデバイスのゲート電圧と、短絡故障したパワーデバイスのゲート電圧との間にアンバランスが生じ、フォトカプラに流れる電流が変化するので、パワーデバイスが短絡したことをドライブ回路とは絶縁して検出することができる。
なお、2個以上のパワーデバイスの短絡故障も同様に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1におけるパワーデバイス短絡検出回路を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2におけるパワーデバイス短絡検出回路を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2におけるパワーデバイス短絡検出回路の動作を説明する動作説明図である。
【図4】この発明の実施の形態3におけるパワーデバイス短絡検出回路の要部を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態3におけるパワーデバイス短絡検出回路の動作を説明する動作説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1 パワーデバイス
2 ドライブ基板
3 制御基板
4 ゲート抵抗
5 短絡検出回路
5a フォトカプラ
5b 抵抗
5c、5d 干渉防止用ダイオード
5e、5f 抑制抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーデバイスを駆動するドライブ基板に設けられたゲート抵抗と、
前記パワーデバイスのゲート・エミッタ間に設けられ、必要なゲート電圧の変動を利用して前記パワーデバイスが短絡故障を起こしたことを検出することを特徴とするパワーデバイス短絡検出回路。
【請求項2】
ドライブ基板上へ抵抗とフォトカプラを用いた短絡検出回路を設け、前記ドライブ基板につながった単体のパワーデバイスが短絡故障を発生したとき、ゲート電圧変動が起こることにより、前記フォトカプラに流れる電流の変化を利用して前記パワーデバイスが短絡故障を起こしたことを検出することを特徴とする請求項1記載のパワーデバイス短絡検出回路。
【請求項3】
ドライブ基板につながった2個以上の並列パワーデバイスの内、1個でも短絡故障を発生したとき、各パワーデバイスのゲート電圧のアンバランスにより、前記フォトカプラに流れる電流の変化を利用してパワーデバイスが短絡故障を起こしたことを検出することを特徴とする請求項2記載のパワーデバイス短絡検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−154372(P2008−154372A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339926(P2006−339926)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】