説明

パワープラントの支持構造、車両、及びその振動低減方法

【課題】内燃機関の通常運転時と起動及び停止時のモードで、パワープラントの支持構造の構成を切り替えることで、起動及び停止時の振動伝達率を低減し、車体振動を低減することができるパワープラントの支持構造、車両、及びその振動低減方法を提供する。
【解決手段】内燃機関11と変速機12からなるパワープラント10を車両の固定台40に支持するパワープラントの支持構造1において、内燃機関11の起動時と停止時の支持構造の構成を、内燃機関11の通常運転時の第1の支持構成20とは異なった第2の支持構成20+30に変化させると共に、第2の支持構成20+30におけるパワープラント10と第2の支持構造20+30とで形成される系の固有振動数を、第1の支持構成20の固有振動数よりも小さくなるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と変速機からなるパワープラントを支持するパワープラントの支持構造、車両、及びその振動低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバス等の自動車の車両では、内燃機関と変速機とからなるパワープラントがマウントと呼ばれる支持構造で車体に固定されている。この支持構造は、アイドル運転時から高出力までの広い範囲で内燃機関と変速機の振動が車体側に伝達されないようにするため、工夫がなされてきており、この支持構造の一つに、パッシブマウント方式の支持構造がある。
【0003】
図8〜図10に例示するように、例えば、パッシブマウント方式のパワープラントの支持構造1Xでは、内燃機関(エンジン)11と変速機(トランスミッション)12からなるパワープラント10に固定された固定部材(エンジンフット)21を、緩衝部材(ラバーマウント)22を介して車体側のフレーム40に固定された支持部材(エンジンブラケット)23で構成される支持機構20で支持している。
【0004】
この図8〜図10に示すパワープラントの支持構造1Xでは、内燃機関11の左右の2か所と変速機12の左右の2か所の計4か所に支持機構20を配置した支持構成となっている。このパッシブマウント方式では、もっぱら、緩衝部材22により振動を吸収することで、車体側の固定台(フレーム)40への振動伝達を低減している。
【0005】
しかしながら、自動車の内燃機関の運転に関して、燃費の改善の観点からアイドルストップが行われるようになると、図11に示す2000rpm全負荷時のような内燃機関の通常運転時のエンジン回転変動に比べて、図12に示す750rpmアイドル運転時のようなエンジン回転数が低い時にはエンジン回転変動が著しく大きくなるので、内燃機関の起動時と停止時に発生する比較的大きな振動が車両の乗員に伝達され、乗員に不快感を与えるという問題が生じてきた。
【0006】
特に、起動時においては、パワープラントとその支持構成とで決まる振動伝達に関する固有振動数(固有値)と、セルモーターなどの外部の力で内燃機関のクランクシャフトを回すクランキング時の回転数で決まる振動の周波数とが比較的近くなるため、振動伝達率が大きくなり、車体振動が大きくなると考えられる。
【0007】
このエンジン始動時等に発生する過渡振動を効果的に抑制できる能動型防振支持装置として、エンジンの前後の一対のACM(アクティブ・コントロール・マウント)で、エンジンを車体フレームに弾性的に支承すると共に、エンジンの発動を判定した場合には、エンジンの固有振動数にもとづいて、ACMのアクチュエータを制御する能動型防振支持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかしながら、能動型防振支持装置(アクティブマウント方式)では、支持装置の内部に流体を保持し、内燃機関からの振動に応じて流体の移動を制御することにより、流体の移動時の摩擦抵抗等を利用して積極的に振動を低減させており、特に、流路内の流体を共振させると振動エネルギーを効果的に吸収することができるが、この能動型防振支持装置は複雑な構成になるという問題があり、乗用車等には向いているが、トラック等では比較的単純な構造のパッシブマウント方式の支持構造で対応することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−41714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の通常運転時のモードと起動時及び停止時のモードとで、パワープラントの支持構造の構成を切り替えることで、起動時及び停止時の力の伝達率(振動伝達率)を低減し、車体振動を低減することができるパワープラントの支持構造、車両、及びその振動低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明のパワープラントの支持構造は、内燃機関と変速機からなるパワープラントを車両の固定台に支持するパワープラントの支持構造において、内燃機関の起動時と停止時の支持構造の構成を、内燃機関の通常運転時の第1の支持構成とは異なった第2の支持構成に変化させると共に、第2の支持構成における、パワープラントと第2の支持構成とで形成される系の固有振動数を、第1の支持構成における、パワープラントと第1の支持構成とで形成される系の固有振動数よりも低くなるように構成される。
【0012】
この構成により、内燃機関の起動時と停止時において、パワープラントの支持構造の構成を第2の支持構成に切り替えて、パワープラントと第2の支持構成の系の固有振動数(固有値)を低くして、内燃機関の起動時と停止時の振動の伝達を少なくする。つまり、内燃機関の回転数が通常運転時と異なる始動時と停止時に、パワープラントの支持構造の構成を変化させることにより、パワープラントとその支持構造で形成される系の固有振動数を変化させて、車体側への振動伝達率を低減し、車体振動を低減する。
【0013】
また、特に、パワープラントと第2の支持構成の系の固有振動数(固有値)をクランキング回転時の振動周波数よりも低くして、このクランキング回転時の振動に対しての振動伝達率を低くすることがより好ましい。
【0014】
なお、通常運転時で、第1の支持構成とするのは、第2の支持構成は第1の支持構成に比べて耐久性が低くなるので、通常運転には耐久性に優れた第1の支持構成に戻すことで、パワープラントの支持構成としての耐久性を高く維持するためである。
【0015】
上記のパワープラントの支持構造において、内燃機関のトルクロール軸に近い位置に、始動時及び停止時の振動低減用の支持機構を設けて、該始動時及び停止時の振動低減用の支持機構で、パワープラント側の固定部材に対して、ゼロを含む第1の押圧力で緩衝部材を押圧する場合を前記第1の支持構成とし、前記第1の押圧力よりも大きい第2の押圧力で前記緩衝部材を押圧する場合を前記第2の支持構成とする。
【0016】
この構成によれば、始動及び停止時の振動低減用の支持機構において、パワープラント側の固定部材に緩衝部材を押圧する押圧力を切り替えることにより、比較的簡単な構成で、第1の支持構成と第2の支持構成に切り替えることができる。
【0017】
上記のパワープラントの支持構造において、前記始動時及び停止時の振動低減用の支持機構を、内燃機関側の固定部材と、該固定部材に押圧される緩衝部材と、該緩衝部材を押圧する支持部材と、該支持部材の押圧力を変化させるアクチュエータを有して構成すると、比較的単純な構成で、第1の支持構成と第2の支持構成に切り替えることができる。
【0018】
そして、上記の目的を達成するための車両は、上記のパワープラントの支持構造を備えて構成される。この構成により、内燃機関の通常運転時のモードと起動時及び停止時のモードとで、パワープラントの支持構造の構成を切り替えることで、起動時及び停止時の振動伝達率を低減し、車体振動を低減することができる。
【0019】
そして、上記の目的を達成するための車両の振動低減方法は、内燃機関と変速機からなるパワープラントを車両の固定台に支持するパワープラントの支持構造を有し、パワープラントと支持構造とで形成される系の固有振動数が互いに異なる第1の支持構成と第2の支持構成とに切替可能に構成された車両の振動低減方法において、内燃機関の通常運転時では、第1の支持構成とし、内燃機関の起動時と停止時では、第1の支持構成の固有振動数よりも低い固有振動数を持つ第2の支持構成に切り替えることを特徴とする方法である。
【0020】
この方法によれば、内燃機関の通常運転時のモードと内燃機関の起動時及び停止時のモードとで、パワープラントの支持構造の構成を切り替えることで、起動時及び停止時の振動伝達率を低減し、車体振動を低減することができる。特に、アイドルストップ時および通常のエンジン始動時及び停止時の車体振動を低減できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のパワープラントの支持構造、車両、及びその振動低減方法によれば、内燃機関の通常運転時のモードと、起動時及び停止時のモードとで、パワープラントの支持構造の構成を切り替えることで、起動時及び停止時の振動伝達率を低減し、車体振動を低減することができる。特に、アイドルストップ時並びに通常のエンジンの始動時及び停止時の車体振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施の形態のパワープラントの支持構造の構成を示す平面図である。
【図2】図1のパワープラントの支持構造の第1の支持構成を示す側面図である。
【図3】図1のパワープラントの支持構造の第2の支持構成を示す側面図である。
【図4】パワープラントとその支持構造で形成する振動系を模式的に示す図である。
【図5】パワープラントとその支持構造の系における周波数と力の伝達率の関係を示す図である。
【図6】エンジンの低回転から高回転への過程におけるアクチュエータのON/OFFを示すタイムチャートである。
【図7】エンジンの高回転から低回転への過程におけるアクチュエータのON/OFFを示すタイムチャートである。
【図8】従来技術のパワープラントの支持構造の構成を示す平面図である。
【図9】図8のパワープラントの支持構造の構成を示す側面図である。
【図10】図8のパワープラントの支持構造の構成を示す正面図である。
【図11】通常運転時のエンジン回転変動の例を示す図である。
【図12】アイドル運転時のエンジン回転変動の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態のパワープラントの支持構造、車両、及びその振動低減方法について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1〜図3に示すように、このパワープラントの支持構造1は、内燃機関(エンジン)11と変速機(トランスミッション)12からなるパワープラント10を車両の固定台(フレーム)40に支持する。
【0025】
このパワープラントの支持構造1は、内燃機関11側のエンジンフットと呼ばれる固定部材21と、この固定部材11に押圧されるラバーマウントと呼ばれる緩衝部材22と、この緩衝部材22を押圧するエンジンブラケットと呼ばれる支持部材23からなる第1支持機構20を、内燃機関11の側部2か所と変速機12の側部2か所の計4か所に備えている。
【0026】
また、内燃機関11のトルクロール軸Rcに近い位置に、第2支持機構(起動及び停止時振動低減用の支持機構)30を設けて構成する。この第2支持機構30は、内燃機関のロール振動力の影響を少なくするように、トルクロール軸Rcの中心から内燃機関11の幅方向及び高さ方向に関して、内燃機関11の幅の20%以内に配置することが好ましい。
【0027】
この第2支持機構30は、固定部材(エンジンフット)31、緩衝部材(ラバーマウント)32、支持部材(エンジンブラケット)33に加えて、支持部材33の押圧力を変化させるアクチュエータ34を有して構成される。このアクチュエータ34としては、ソレノイド、あるいは、油圧シリンダ、エアシリンダなどのアクチュエータを用いることができ、このアクチュエータ34を支持部材33と車体の固定台(フレーム)40との間に設ける。
【0028】
図2に示すように、このアクチュエータ34のロッド34aをロッド34aを縮小した場合には、ゼロを含む第1の押圧力で押圧する第1の支持構成となり、主に、内燃機関11側と変速機12側の4か所の第1支持機構20でパワープラント10を車両の固定台40に支持する。
【0029】
また、図3に示すように、このアクチュエータ34のロッド34aを伸長した場合には、第1の押圧力よりも大きい第2の押圧力で押圧する第2の支持構成となるように構成する。この第2の支持構成では、内燃機関11側の2か所の第1支持機構20の固定部材11が浮き上がり、主に、変速機12側の2か所の第1支持機構20と第2支持機構30とでパワープラント10を車両の固定台40に支持する。
【0030】
このアクチュエータ34を用いる構成にすると、比較的単純な構成で、第1の支持構成と第2の支持構成に切り替えることができる。なお、内燃機関11の始動当初からアクチュエータをONの作動状態にしておけるように、アクチュエータ用電源は別に配置し、その電源は常時ONにしておく。
【0031】
なお、第1の押圧力がゼロということは、固定部材31と緩衝部材32との間に押圧力が作用しないことであり、固定部材31と緩衝部材32とが離間若しくは接触している場合、又は、緩衝部材32と支持部材33とが離間若しくは接触している場合などで、この状態となる。
【0032】
更に、この第2の支持構成におけるパワープラント10とパワープラントの支持構造1とで形成される系の、即ち、パワープラント10と2か所の第1支持構造20と1か所の第2支持構造30とで形成される系の固有振動数(固有値)を、パワープラント10と4か所の第1支持構造20とで形成される系の固有振動数(固有値)よりも低くなるように、更に、好ましくは、内燃機関11の起動時と停止時のクランキングの回転による振動の周波数よりも小さくなるように構成する。
【0033】
この時のパワープラント10と支持構造20、30との全体の系は、図4に示すように模式化できて、パワープラント10の質量をmとし、支持構造1のバネ定数をk、減衰係数をcとする振動系となり、加振力P0に対して伝達力F0とした時に、力の伝達率ηは、η=F0/P0となる。図5に第1の支持構成の場合の力の伝達率ηを太線Aで表わし、第2の支持構成の場合の力の伝達率ηを細線Bで表わす。
【0034】
また、本発明の実施の形態の車両は、上記のパワープラントの支持構造1を備えて構成される。
【0035】
次に、上記の構成の車両の振動低減方法で行われる、エンジン始動時やエンジン一時停止からの発進時等の低回転から高回転への過渡期と、エンジン停止時やエンジン一時停止時等の高回転から低回転への過渡期における制御について説明する。
【0036】
内燃機関11のエンジン回転が低回転から高回転への移行過程においては、図6のタイムチャートに示すように、アクチュエータ信号がONの状態から、エンジン回転数Neが予め設定した切換回転数Nc(例えば、1500rpm)以上に(Ne≧Nc)なると、アクチュエータ信号がOFFとなるように制御する。
【0037】
つまり、内燃機関11のエンジン回転数Neが切換回転数Ncを超えるまでは、アクチュエータ信号はONのままの制御であるので、アクチュエータ34が作動してロッド34aが伸長した状態となっている。これにより、第2支持機構の支持部材33と緩衝部材32が上昇して、内燃機関11を支持する固定部材31を押し上げる状態になっているので、第2支持機構20の分担荷重は増加している。その一方で内燃機関11の左右フロントの第1支持機構20の固定部材11は浮き上がって、その分担荷重はゼロに近づくかゼロになり、固有振動数が低い第2の支持構成となる。
【0038】
この第2の支持構成では、内燃機関1が低回転で運転されて、エンジン回転数Neが低くても、力の伝達率が図5の細線Bのようになり、パワープラントの支持構造1のロールの固有振動数(図5では5Hz)が低くなっているので、車体に伝わる振動が小さくなり、車体振動は、通常のマウント配置の第1の支持構成を維持した場合(図5では太線A)に比べて小さくなる。なお、低回転では加振力の大きさが小さいため、変速機12側の2か所の第1支持機構20と、内燃機関11側の1か所の第2支持機構30でも十分支持できる。また、エンジン始動時等のクランキング回転における振動の周波数における力の伝達率も大きく低減しているので、クランキング回転時の車体振動も低減する。
【0039】
そして、内燃機関11のエンジン回転数Neが切換回転数Ncを超えると、アクチュエータ信号はOFFに制御されるので、アクチュエータ34は縮小し、もとの位置に戻る。この状態では、第2支持機構における第2支持構造30の分担荷重はゼロとなり、通常のマウント位置である第1の支持構成となる。従って、内燃機関11が高回転で起振力が高くなる通常運転においては、比較的耐久性に弱い第2支持構造30を使用せずに、比較的耐久性に優れた4か所の第1支持構造20で支持するので、比較的耐久性に弱い第2支持構造30を保護できる。
【0040】
この第1の支持構成では、図5の太線Aで示すような力の伝達率となるが、エンジン回転数Neが大きく、エンジンの回転に伴う振動数は高くなって、パワープラントの支持構造1の固有振動数(図5では10Hz)から大きく離れるので、力の伝達率が大きく低減して、車体振動も低減する。
【0041】
そして、内燃機関11のエンジン回転の高回転から低回転への移行過程においては、図7のタイムチャートに示すように、アクチュエータ信号がOFFの状態から、エンジン回転数Neが予め設定した切換回転数Nc(例えば、1500rpm)よりも低くなった時に(Ne<Nc)、アクチュエータ信号がONとなるように制御する。
【0042】
つまり、内燃機関11のエンジン回転数Neが切換回転数Nc以上のままのときは、アクチュエータ信号はOFFのままの制御となり、通常のマウント位置の第1の支持構成となる。この第1の支持構成では、図5の太線Aで示すような力の伝達率となっているが、高回転では、エンジン回転数Neが大きく、エンジンの回転に伴う振動数も高くなっており、パワープラントの支持構造1の固有振動数(図5では10Hz)から大きく離れているので、力の伝達率が大きく低減しており、車体振動が低減している。
【0043】
そして、内燃機関11のエンジン回転数Neが切換回転数Ncより低くなった時には(Ne<Nc)、アクチュエータ信号がONになるように制御されるので、アクチュエータ34が作動しロッド34aを伸長する。これにより、第2支持機構の支持部材33と緩衝部材32が持ち上がり、内燃機関11を支持する固定部材31を押し上げるので、第2支持機構20の分担荷重が増加する。その一方で、内燃機関11側の左右フロントの第1支持機構20の分担荷重はゼロに近づくかゼロとなり、第2の支持構成になる。
【0044】
この第2の支持構成では、力の伝達率が図5の細線Bのようになり、内燃機関1のエンジン回転数Neが低くても、パワープラントの支持構造1のロールの固有振動数(図5では5Hz)が低いので、車体に伝わる振動が小さくなり、車体振動は、通常のマウント配置の第1の支持構成に比べて小さくなる。なお、低回転では加振力の大きさが小さいため、変速機12側の2か所の第1支持機構20と、内燃機関11側の1か所の第2支持機構30でも十分支持できる。
【0045】
これらの制御の結果、エンジン始動時やエンジンの一時停止時等の低回転においては、第2の支持構成とすることができ、パワープラント10のロール方向の固有振動数が大きく低減して、図5の細線Bで示す第2の支持構成における力の伝達率の曲線となるので、エンジン始動時はクランキング回転の振動の周波数における力の伝達率が、図5の太線Aで示す第1の支持構成における力の伝達率の曲線よりも著しく小さくなり、車体振動が低減する。
【0046】
上記の構成のパワープラントの支持構成1、車両、及びその振動低減方法によれば、内燃機関11の起動時と停止時の支持構造の構成を、内燃機関11の通常運転時の第1の支持構成20とは異なった第2の支持構成(20+30)に変化させると共に、第2の支持構成(20+30)におけるパワープラント10と支持構造(20+30)とで形成される系の固有振動数を、第1の支持構成における、パワープラント10と第1の支持構成20とで形成される系の固有振動数よりも低くなるように構成されるので、起動及び停止時の振動伝達率を低減し、車体振動を低減することができる。特に、アイドルストップ時並びに通常のエンジン始動時及び停止時の車体振動を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のパワープラントの支持構造、車両、及びその振動低減方法によれば、内燃機関の通常運転時のモードと、起動及び停止時のモードとで、パワープラントの支持構造の構成を切り替えることで、起動及び停止時の振動伝達率を低減し、車体振動を低減することができる。特に、アイドルストップ時並びに通常のエンジン始動時及び停止時の車体振動を低減できるので、トラックやバス等のパワープラントの支持構造、車両、及びその振動低減方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1、1X パワープラントの支持構造
10 パワープラント
11 内燃機関(エンジン)
12 変速機(トランスミッション)
20 第1支持機構
21 固定部材(エンジンフット)
22 緩衝部材(ラバーマウント)
23 支持部材(エンジンブラケット)
30 第2支持機構(起動時及び停止時の振動低減用の支持機構)
31 固定部材(エンジンフット)
32 緩衝部材(ラバーマウント)
33 支持部材(エンジンブラケット)
34 アクチュエータ
34a ロッド
40 固定台(フレーム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と変速機からなるパワープラントを車両の固定台に支持するパワープラントの支持構造において、内燃機関の起動時と停止時の支持構造の構成を、内燃機関の通常運転時の第1の支持構成とは異なった第2の支持構成に変化させると共に、第2の支持構成における、パワープラントと第2の支持構成とで形成される系の固有振動数を、第1の支持構成における、パワープラントと第1の支持構成とで形成される系の固有振動数よりも低くなるように構成したことを特徴とするパワープラントの支持構造。
【請求項2】
内燃機関のトルクロール軸に近い位置に、始動時及び停止時の振動低減用の支持機構を設けて、該始動時及び停止時の振動低減用の支持機構で、パワープラント側の固定部材に対して、ゼロを含む第1の押圧力で緩衝部材を押圧する場合を前記第1の支持構成とし、前記第1の押圧力よりも大きい第2の押圧力で前記緩衝部材を押圧する場合を前記第2の支持構成とすることを特徴とする請求項1記載のパワープラントの支持構造。
【請求項3】
前記始動時及び停止時の振動低減用の支持機構を、内燃機関側の固定部材と、該固定部材に押圧される緩衝部材と、該緩衝部材を押圧する支持部材と、該支持部材の押圧力を変化させるアクチュエータを有して構成したことを特徴とする請求項2記載のパワープラントの支持構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパワープラントの支持構造を備えたことを特徴とする車両。
【請求項5】
内燃機関と変速機からなるパワープラントを車両の固定台に支持するパワープラントの支持構造を有し、パワープラントと支持構造とで形成される系の固有振動数が互いに異なる第1の支持構成と第2の支持構成とに切替可能に構成された車両の振動低減方法において、内燃機関の通常運転時では、第1の支持構成とし、内燃機関の起動時と停止時では、第1の支持構成の固有振動数よりも低い固有振動数を持つ第2の支持構成に切り替えることを特徴とする車両の振動低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−126234(P2012−126234A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278902(P2010−278902)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】