パーソナルコンピュータ用CPUの放熱器
【課題】 放熱性能の優れた放熱器を提供する。
【解決手段】 パーソナルコンピュータのハウジング内のマザーボードに設けられているソケット46に固定され、かつソケット46に取り付けられているCPU43から発せられる熱を放熱する放熱器60である。片面にCPU43に接する平坦な受熱部が設けられたアルミニウム製放熱基板61と、放熱基板61の他面に切り起こし状に一体に形成された複数の放熱フィン62とよりなる。放熱基板61の板厚を3〜8mm、放熱フィン62の基端から先端までの高さを15〜35mm、放熱フィン62の肉厚を0.2〜0.7mm、放熱フィン62のフィンピッチを1.5〜2.5mmとする。放熱フィン62上に冷却ファン69を配する。
【解決手段】 パーソナルコンピュータのハウジング内のマザーボードに設けられているソケット46に固定され、かつソケット46に取り付けられているCPU43から発せられる熱を放熱する放熱器60である。片面にCPU43に接する平坦な受熱部が設けられたアルミニウム製放熱基板61と、放熱基板61の他面に切り起こし状に一体に形成された複数の放熱フィン62とよりなる。放熱基板61の板厚を3〜8mm、放熱フィン62の基端から先端までの高さを15〜35mm、放熱フィン62の肉厚を0.2〜0.7mm、放熱フィン62のフィンピッチを1.5〜2.5mmとする。放熱フィン62上に冷却ファン69を配する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パーソナルコンピュータのハウジング内のプリント回路基板に設けられているソケットに固定され、かつソケットに取り付けられているCPUから発せられる熱を放熱する放熱器に関する。
【0002】この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。また、この明細書において、各図面の上下を上下といい、図1の右斜め下側(図2の左側)、図11の左斜め下側(図15および図16の左側)および図24の左斜め下側を前、これと反対側を後といい、前方から後方を見た場合の左右を左右というものとする。
【0003】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】たとえば、パーソナルコンピュータにおいては、ハウジング内に配されているマザーボードと称されるプリント回路基板に設けられたソケットに、パッケージを有するCPU(中央演算処理装置)が取付けられている。ところで、最近では、パーソナルコンピュータの多機能化や処理速度の高速化が著しく、その結果CPUの出力が増大し、発熱量も著しく増加している。そのため、放熱器を、CPUに接触するように配置し、この状態でクリップを用いてマザーボードのソケットに固定することが行われるようになってきている。
【0004】図24および図25に示すように、従来の放熱器(40)は、下面が平坦面となされたアルミニウム押出形材製放熱基板(41)と、放熱基板(41)の上面に並列状に一体に形成されかつ放熱基板(41)の押出方向(前後方向)に伸びる複数のプレート状放熱フィン(42)とよりなる。放熱基板(41)下面の左右両側縁部には、それぞれCPU(43)のパッケージ(44)の左右両側面に係合する前後方向に長い垂下壁(45)が、下方突出状に一体に形成されている。垂下壁(45)の長さは放熱基板(41)の長さよりも短く、その後端は放熱基板(41)の後端よりも前方に位置している。そして、両垂下壁(45)がそれぞれCPU(43)のパッケージ(44)の左右両側面に係合するとともに、両垂下壁(45)の後端がそれぞれマザーボード(M)のソケット(46)における後部上方突出部(46c)の前面の左右両端部に当接することによって、放熱器(40)の左右方向および前後方向の位置決めが行われるようになっている。
【0005】このような放熱器(40)は、下面が平坦面となされるとともにその両側縁部にそれぞれ前後方向に伸びる垂下壁(45)が全長にわたって一体に形成された板状のアルミニウム押出形材をつくった後、この押出形材の垂下壁(45)の後端部を所定長さにわたって切除することにより製造されている。
【0006】放熱器(40)をソケット(46)に固定するクリップ(47)は、放熱基板(41)上面における放熱フィン(42)が形成されていない左右の中央部に面接触する帯状水平ベース部(48)と、帯状水平ベース部(48)の両端にそれぞれ上方突出状に一体に形成された円弧状湾曲部(49)と、両湾曲部(49)の先端にそれぞれ一体に形成された垂直下向きの脚部(50)とよりなる。脚部(50)の下部には、ソケット(46)の前後両端面の左右方向の中央部にそれぞれ一体に形成された突起(46a)(46b)が嵌め入れられる貫通穴(51)が形成されている。また、脚部(50)における貫通穴(51)よりも下側の部分は、前後方向外側に若干折り曲げられている。この折り曲げ部を(50a)で示す。クリップ(47)は、ばね鋼やステンレス鋼等からなる薄板にプレス成形を施すことにより製造されたものであり、ばね状弾性を有している。
【0007】クリップ(47)を用いて放熱器(40)をソケット(46)に固定する方法は、次の通りである。すなわち、放熱器(40)の放熱基板(41)の下面の所定位置に、熱伝導性樹脂フィルム(図示略)を接着し、この熱伝導性樹脂フィルムがCPU(43)上面に密着するように放熱器(40)を配置する。このとき、放熱基板(41)の垂下壁(45)の働きにより、放熱器(40)の左右方向および前後方向の位置決めがなされ、熱伝導性樹脂フィルムが位置ずれすることなく、CPU(43)の上面に密着する。ついで、クリップ(47)を、その帯状水平ベース部(48)が左右方向の中央部における2つの放熱フィン(42)間にくるように放熱基板(41)上に配し、両湾曲部(49)を下方に押圧し、両湾曲部(49)および両脚部(50)を弾性変形させた状態で、前後の脚部(50)の貫通穴(51)内に、ソケット(46)の前後両端面に形成された突起(46a)(46b)をそれぞれ圧入する。このとき、両脚部(50)は、その外方折り曲げ部(50a)が突起(46a)(46b)に押されることにより一旦前後方向外側に開くように弾性変形し、外方折り曲げ部(50a)が突起(46a)(46b)を過ぎると、その弾性力により元の状態に戻り、突起(46a)(46b)が貫通穴(51)内に嵌まり、突起(46a)(46b)と貫通穴(51)の下縁部とが強固に係合する。こうして、放熱器(40)が、その放熱基板(41)の下面がCPU(43)のパッケージ(44)上面に密着した状態でソケット(46)に固定されている。
【0008】しかしながら、上述した放熱器(40)の場合、押出形材製の放熱基板(41)の上面にその押出方向に伸びるプレート状放熱フィン(42)が一体成形されているので、その製造技術上、放熱フィン(42)の厚さが比較的大きくなるとともに、隣り合う放熱フィン(42)間の間隔であるフィンピッチも比較的大きくなり、その結果パーソナルコンピュータのハウジング内のマザーボード(M)に設けられているソケット(46)、およびソケット(46)に取り付けられているCPU(43)により放熱基板(41)の大きさに制限を受ける場合には、十分な放熱面積を得ることができず、放熱性能が悪いという問題があった。
【0009】また、従来の放熱器(40)を製造するにあたっては押出形材を形成した後、垂下壁(45)を部分的に切除する必要があり、その作業が面倒であるという問題があった。また、放熱器(40)とクリップ(47)とが分離しているので、これらを別々に梱包しなければならず、その作業が面倒であるという問題があった。
【0010】そこで、これらの問題を解決するために、米国特許第5,570,271号に記載されたクリップ付き放熱器が提案されている。このクリップ付き放熱器は、放熱器と、放熱器に保持されたクリップとからなり、放熱器が、下面が平坦面となされた放熱基板と、放熱基板の上面に並列状に一体に形成されるとともに前後方向に伸びる複数のプレート状放熱フィンとよりなり、クリップが、帯状水平ベース部と、帯状水平ベース部の両端部にそれぞれ一体に形成されて下方に伸びた垂直脚部と、帯状水平ベース部の長さの中間部における両側縁に一体に形成された垂下壁部とを備えており、左右方向の中央部に形成されている2つのプレート状フィンの互いに対向する面に形成された長さ方向に伸びる凸条に、クリップの各垂下壁部の外面に形成された突起が係合することにより、クリップが放熱器に保持されている。
【0011】このクリップ付き放熱器の場合、放熱器はアルミニウム押出形材製であって、放熱基板、プレート状放熱フィン、および凸条は、押出加工により一体に形成されているので、その製造作業は簡単になる。また、クリップは放熱器に保持されているので、これらを一緒に梱包することができ、梱包作業が容易になる。しかしながら、クリップの保持を、放熱器の放熱フィンに形成された凸条と、クリップに形成された突起との係合により行っているので、保持強度を増大させるためには、凸条を形成すべきフィンの厚さを大きくしなければならず、しかも放熱器が押出形材製であるので、その製造技術上、その他の放熱フィンの厚さも比較的大きくなるとともに、フィンピッチも比較的大きくなる。したがって、十分な放熱面積を得ることができず、放熱性能が比較的低くなる。
【0012】この発明の目的は、上記問題を解決し、放熱性能の優れた放熱器を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段と発明の効果】請求項1の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、パーソナルコンピュータのハウジング内のプリント回路基板に設けられているソケットに固定され、かつソケットに取り付けられているCPUから発せられる熱を放熱する放熱器であって、片面にCPUに接する平坦な受熱部が設けられた金属製放熱基板と、放熱基板の他面に切り起こし状に一体に形成された複数の放熱フィンとよりなるものである。
【0014】請求項1の発明の放熱器は、片面にCPUに接する平坦な受熱部が設けられた金属製放熱基板と、放熱基板の他面に切り起こし状に一体に形成された複数の放熱フィンとよりなるので、放熱基板に一体成形されたプレート状放熱フィンを備えた従来の放熱器に比べて、放熱基板の大きさが同じ場合に多くの放熱フィンを形成することができ、放熱面積が増大する。したがって、ソケットおよびCPUにより放熱基板の大きさに制限を受ける場合にも、CPUから発せられる熱の放熱効率が優れたものになる。
【0015】請求項2の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項1の発明において、放熱基板の板厚が3〜8mm、放熱フィンの基端から先端までの高さが15〜35mm、放熱フィンの肉厚が0.2〜0.7mm、放熱フィンのフィンピッチが1.5〜2.5mmとなされており、放熱フィン上に冷却ファンが配されるものである。
【0016】請求項3の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項2の発明において、放熱フィンの基端から先端までの高さと、隣り合う放熱フィンのフィン間スペースとの比が7〜44となされているものである。
【0017】請求項4の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項1の発明において、放熱基板の板厚が3〜8mm、放熱フィンの基端から先端までの高さが20〜50mm、放熱フィンの肉厚が0.2〜0.7mm、放熱フィンのフィンピッチが1.5〜4mmとなされているものである。
【0018】請求項5の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項4の発明において、放熱フィンの基端から先端までの高さと、隣り合う放熱フィンのフィン間スペースとの比が6〜62となされているものである。
【0019】請求項6の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項1〜5のうちのいずれかの発明において、放熱基板がアルミニウム押出形材製であり、放熱基板の押出方向に間隔をおいて形成された複数の放熱フィンからなるフィン列を備えているものである。
【0020】なお、放熱器の製造が簡単であるとともに、放熱器とクリップとを一緒に梱包することができ、放熱器の放熱基板とCPUとの密着性を高め、しかも放熱性能の優れたクリップ付き放熱器の具体例としては、次のようなものがある。
【0021】第1のクリップ付き放熱器は、パッケージを有するCPUから発せられる熱を放熱する放熱器と、放熱器に保持され、かつCPUが取付けられているソケットに放熱器を固定するクリップとよりなるクリップ付き放熱器であって、放熱器が、下面が平坦面となされるとともに、上面に内部拡大溝が形成されている放熱基板と、放熱基板の上面における内部拡大溝を除いた部分に設けられた放熱フィンとよりなり、クリップが、内部拡大溝内に配置されるベース部と、ベース部の前後両端部にそれぞれ一体に形成されるとともに、内部拡大溝内から出るように伸びて先端が放熱基板の上方でかつその前後方向外側に至る突出部と、両突出部の先端にそれぞれ一体に形成されるとともに下方に伸び、かつ先端にソケットの一部分に係合しうる係合部を備えている脚部とよりなり、クリップのベース部に、左右方向の幅が内部拡大溝の開口幅よりも広く、かつ底部幅よりも狭くなされた部分が設けられているものである。
【0022】第1のクリップ付き放熱器によれば、クリップのベース部に、左右方向の幅が内部拡大溝の開口幅よりも広く、かつ底部幅よりも狭くなされた部分が設けられているので、クリップは放熱器から脱落することなく、かつ左右方向に位置ずれすることなく保持される。したがって、放熱器とクリップとを一緒に梱包することができ、その作業が簡単になる。しかも、クリップが放熱器に対して左右方向に位置ずれしないので、クリップを用いて放熱器をソケットに固定した場合、放熱器のソケットに対する左右方向の位置が正確に決められる。また、放熱器が、下面が平坦面となされるとともに、上面に内部拡大溝が形成されている放熱基板と、放熱基板の上面における内部拡大溝を除いた部分に設けられた放熱フィンとよりなるので、放熱基板を押出成形することができ、その製造作業が簡単になる。さらに、クリップのベース部を内部拡大溝の溝底部に配置することにより、クリップが放熱器に保持されるので、米国特許第5,570,271号に記載されているように、放熱フィンでクリップを保持する必要はない。したがって、放熱フィンとして放熱基板に切り起こし状に形成された薄肉の舌状フィン、ピン状フィン、放熱基板にろう付された薄肉のプレート状フィンを用いることが可能になり、その結果押出成形されたプレート状フィンの場合に比べて、放熱面積が大きくなって、放熱性能が向上する。
【0023】第2のクリップ付き放熱器は、第1のクリップ付き放熱器において、クリップのベース部が、内部拡大溝の開口幅よりも狭い幅を有する帯状部と、帯状部の左右両側縁部にそれぞれ一体に形成された側方張出し部とよりなり、左右の側方張出し部の先端間の幅が、内部拡大溝の開口幅よりも広く、かつ底部幅よりも狭くなされているものである。
【0024】第3のクリップ付き放熱器は、第1のクリップ付き放熱器において、クリップのベース部の左右方向の幅が、その全長にわたって内部拡大溝の開口幅よりも広く、かつ底部幅よりも狭くなされているものである。
【0025】第4のクリップ付き放熱器は、第1、2または3のクリップ付き放熱器において、クリップのベース部に貫通穴が形成され、放熱器の放熱基板における内部拡大溝の底面部分に上方突出部が一体に形成され、上方突出部が貫通穴に圧入されることによりクリップが放熱基板に仮止めされているものである。この場合、放熱器によるクリップの保持が一層確実に行われる。しかも、放熱器とクリップとが、前後方向および左右方向に正確に位置決めされるので、放熱器をソケットに固定するさいに、両者間で相対的位置ずれが起こることはなく、放熱器をソケット、すなわちCPUに対して前後方向および左右方向の両方向に関して正確な位置に固定することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】図1および図2はこの発明による放熱器を示す。
【0028】図1および図2において、放熱器(60)は、下面全体が平坦面となされるとともに、その中央部にCPUに接する受熱部(図示略)が設けられたアルミニウム製放熱基板(61)と、放熱基板(61)の上面に設けられ、かつ放熱基板(61)の押出方向(前後方向)に間隔をおいて一体に切り起こし状に形成された多数の舌状放熱フィン(62)からなる複数、ここでは2つのフィン列(63)とよりなる。両フィン列(63)は、それぞれ放熱基板(61)の押出方向(前後方向)に伸びており、相互に左右方向に間隔をおいて設けられている。また、各フィン列(63)を構成する放熱フィン(62)は高さの中央部が後方に突出した略円弧状であり、各放熱フィン(62)にはその先端からスリット(64)が入れられている。
【0029】放熱器(60)の放熱フィン(62)は、図3に示すように、放熱基板(61)を押出成形するさいに左右方向に間隔をおいて一体に形成された前後方向に伸びる2つのフィン成形用凸条(65)に、切り起こし加工を施すことにより形成されたものである。フィン成形用凸条(65)の上面には前後方向に伸びる凹溝(66)が形成されている。この凹溝(66)は、放熱フィン(62)を切り起こし加工するさいの切り起こし抵抗を減少させるとともに、潤滑油を保持させる目的で形成されたものである。そして、凹溝(66)の存在により、切り起こし加工により形成された放熱フィン(62)にはスリット(64)が形成されることになる。
【0030】放熱器(60)は、その放熱基板(61)下面の受熱部に熱伝導性樹脂フィルム(図示略)を接着した後、この熱伝導性樹脂フィルムがCPU(43)に密着するように適当な手段によりマザーボード(M)のソケット(46)に固定される。
【0031】放熱器(60)の放熱フィン(62)は、左方および右方から見て下方に開口した略U字状であるプラスチック製フィンカバー(67)により覆われている。フィンカバー(67)の頂壁(67a)には開口(68)が形成されている。また、フィンカバー(67)の頂壁(67a)の下側に冷却ファン(69)が配置されている。フィンカバー(67)および冷却ファン(69)は、図1に矢印で示すように、空気がフィンカバー(67)内に吸引されて隣り合う放熱フィン(62)間を左右方向内方に流れ、かつ上方に流れて開口(68)からカバー(67)外に排出されるようにするためのものである。
【0032】このような放熱器(60)においては、放熱基板(61)の板厚Tを3〜8mm、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHを15〜35mm、放熱フィン(62)の肉厚を0.2〜0.7mm、各フィン列(63)における放熱フィン(62)のフィンピッチPを1.5〜2.5mmとすることが好ましい。
【0033】板厚Tは、発明者が行った次のような実験から求められたものである。まず、Si0.2〜0.6wt%、Mg0.45〜0.9wt%を含み、残部Alおよび不可避不純物よりなる合金から、縦80mm、横60mmであり、板厚の異なるアルミニウム板(70)を複数枚つくった。ついで、図4に示すように、各アルミニウム板(70)の下面の中央部にヒータ(71)を取付け、ヒータ(71)によりアルミニウム板(70)を加熱しつつ、アルミニウム板(70)下面の中央部S1の温度X1を測定した。これと同時に、アルミニウム板(70)上面における4つの角部近傍部分S2〜S5および上面中央部分S6の温度を測定し、5箇所S2〜S6の温度の平均温度X2を求めた。そして、ヒータ(71)による入力熱量Q(W)と、上記温度X1、X2に基づいて、(X1−X2)/Qという式により熱拡散抵抗R0(℃/W)を求めた。その結果、アルミニウム板(70)の板厚Tと熱拡散抵抗R0との関係は図5に曲線Aで示すようになった。また、アルミニウム板(70)の板厚Tと重量との関係は、同図に直線Bで示すようになり、曲線Aと直線Bとを重ね合わせて得られる曲線Cに基づいて、放熱器(60)の放熱基板(61)の板厚を3〜8mmに決定した。すなわち、板厚Tが3mm未満であると熱拡散抵抗R0が十分に小さくならず、放熱基板(61)の上面全体に熱が伝わりにくくなって全ての放熱フィン(62)が有効に働かず、8mmを越えると重量が大きくなる。なお、板厚Tが3mm未満では熱拡散抵抗R0が大きくなるのは、板厚Tが小さいと熱は放熱基板(61)の上面の中央部に集中して伝わり、上面全体に伝わりにくくなるからであると考えられる。また、板厚Tが3〜8mmの範囲内では、板厚Tが大きくなるほど熱拡散抵抗R0も小さくなるが、さらに大きくなると熱拡散抵抗R0も増大する。
【0034】放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHは、発明者が行った次のような実験から求められたものである。まず、Si0.2〜0.6wt%、Mg0.45〜0.9wt%を含み、残部Alおよび不可避不純物よりなる合金から、縦80mm、横60mm、板厚6mmである放熱基板(61)の上面に、肉厚0.3mmの放熱フィン(62)がフィンピッチ2mmとなるように一体に形成されており、かつフィン高さHの異なる複数の放熱器(60)をつくった。ついで、各放熱器(60)にフィンカバー(67)および冷却ファン(69)(最大風量0.5m3/min、定格回転数4400rpm)を装着するとともに、放熱基板(61)下面の中央部にヒータを取付け、冷却ファン(69)を作動させるとともにヒータにより放熱基板(61)を加熱しつつ、放熱基板(61)の下面における中央部および4つの角部近傍の温度を測定し、5箇所の温度の平均温度Y1を求めた。これと同時に、放熱フィン(62)に導入される前の冷却用空気の温度Y2を測定した。そして、ヒータによる入力熱量Q(W)と、上記温度Y1、Y2に基づいて、(Y1−Y2)/Qという式により熱抵抗R(℃/W)を求めた。また、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の空間の通気抵抗を測定した。その結果、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと熱抵抗Rとの関係は図6に曲線A1で示すようになった。また、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと通気抵抗との関係は同図に曲線B1で示すようになり、曲線A1と曲線B1とを重ね合わせて得られる曲線C1に基づいて、放熱器の放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHを15〜35mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)の高さHが15mm未満であると通気抵抗が十分に小さくならず、35mmを越えるとフィン効率が低下して熱抵抗Rが大きくなり、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。なお、フィン高さHが15mm未満で通気抵抗が大きくなるのは、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通風間隙の面積が小さくなるからであると考えられる。
【0035】放熱フィン(62)の肉厚は、発明者が行った次のような実験から求められたものである。まず、Si0.2〜0.6wt%、Mg0.45〜0.9wt%を含み、残部Alおよび不可避不純物よりなる合金から、縦80mm、横60mm、板厚6mmである放熱基板(61)の上面に、肉厚の異なる放熱フィン(62)がフィンピッチ2mmとなるように一体に形成された複数の放熱器(60)をつくった。ついで、上記フィン高さHの場合と同様にして熱抵抗Rを求めるとともに、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通気抵抗を測定した。その結果、放熱フィン(62)の肉厚と熱抵抗Rとの関係は図7に曲線A2で示すようになった。また、放熱フィン(62)の肉厚と通気抵抗との関係は同図に曲線B2で示すようになり、曲線A2と曲線B2とを重ね合わせて得られる曲線C2に基づいて、放熱器(60)の放熱フィン(62)の肉厚を0.2〜0.7mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)の肉厚が0.2mm未満ではフィン効率が低下して熱抵抗Rが大きくなり、0.7mmを越えると通気抵抗が増大し、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。なお、放熱フィン(62)の肉厚が0.7mmを越えると通気抵抗が大きくなるのは、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通風間隙の面積が小さくなるからであると考えられる。
【0036】放熱フィン(62)のフィンピッチPは、発明者が行った次のような実験から求められたものである。まず、Si0.2〜0.6wt%、Mg0.45〜0.9wt%を含み、残部Alおよび不可避不純物よりなる合金から、縦80mm、横60mm、板厚6mmである放熱基板(61)の上面に、肉厚0.3mmの放熱フィン(62)が異なるフィンピッチPで一体に形成された複数の放熱器(60)をつくった。ついで、上記フィン高さHの場合と同様にして熱抵抗Rを求めるとともに、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通気抵抗を測定した。その結果、放熱フィン(62)のフィンピッチPと熱抵抗Rとの関係は図8に曲線A3で示すようになった。また、放熱フィン(62)のフィンピッチPと通気抵抗との関係は同図に曲線B3で示すようになり、曲線A3と曲線B3とを重ね合わせて得られる曲線C3に基づいて、放熱器(60)の放熱フィン(62)のフィンピッチPを1.5〜2.5mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)のフィンピッチPが1.5mm未満では通気抵抗が大きくなり、2.5mmを越えると通気抵抗が減少するものの必要な伝熱面積が得られなくなって熱抵抗Rが増大し、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。
【0037】さらに、放熱器(60)においては、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと、前後に隣り合う放熱フィン(62)のフィン間スペース(フィンピッチPから1つの放熱フィン(62)の肉厚を減じた寸法)との比を7〜44とすることが好ましい。上記比が下限値未満では十分な大きさの放熱面積が確保されず、上限値を越えるとフィンピッチPが小さくなって圧力損失が大きくなり、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。望ましくは、上記比は10〜20である。
【0038】また、放熱器(60)は、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)が装着されないで使用される場合もある。この場合、放熱器(60)の放熱基板(61)の板厚Tを3〜8mm、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHを20〜50mm、放熱フィン(62)の肉厚を0.2〜0.7mm、放熱フィン(62)のフィンピッチPを1.5〜4mmとすることが好ましい。
【0039】放熱基板(61)の板厚Tは、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)を用いる場合と同様な実験により求められたものである。放熱フィン(62)の基端から先端までの高さH、放熱フィン(62)の肉厚および放熱フィン(62)のフィンピッチPは、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)を用いないことを除いては、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)を用いた場合と同様な実験により求められたものである。その結果、放熱基板(61)の板厚Tと放熱フィン(62)の肉厚は、冷却ファンを用いる場合と同じになった。
【0040】放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHは、熱抵抗Rとフィン高さHの関係を示す図9の曲線A4と、通気抵抗とフィン高さHの関係を示す図9の曲線B4とを重ね合わせて得られる曲線C4に基づいて20〜50mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)の高さHが20mm未満であると通気抵抗が十分に小さくならず、50mmを越えるとフィン効率が低下して熱抵抗Rが大きくなり、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。なお、フィン高さHが20mm未満で通気抵抗が大きくなるのは、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通風間隙の面積が小さくなるからであると考えられる。
【0041】放熱フィン(62)のフィンピッチPは、熱抵抗RとフィンピッチPとの関係を示す図10の曲線A5と、通気抵抗とフィンピッチPとの関係を示す図10の曲線B5とを重ね合わせて得られる曲線C5に基づいて1.5〜4mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)のフィンピッチPが1.5mm未満では通気抵抗が大きくなり、4mmを越えると通気抵抗が減少するものの必要な伝熱面積が得られなくなって熱抵抗Rが増大し、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。
【0042】さらに、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)が装着されないで使用される場合、放熱器(60)においては、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと、前後に隣り合う放熱フィン(62)のフィン間スペース(フィンピッチPから1つの放熱フィン(62)の肉厚を減じた寸法)との比を6〜62とすることが好ましい。上記比が下限値未満では十分な大きさの放熱面積が確保されず、上限値を越えるとフィンピッチPが小さくなって圧力損失が大きくなり、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。望ましくは、上記比は10〜30である。
【0043】ここで、冷却ファンを用いる場合と用いない場合とで放熱フィン(62)の高さHおよびフィンピッチP、ならびに放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと、前後に隣り合う放熱フィン(62)のフィン間スペースとの比が異なるのは、風速が異なるからである。
【0044】図11はこの発明の放熱器を利用したクリップ付き放熱器の全体構成を示し、図12はその要部を示し、図13はクリップを示す。また、図14はクリップを放熱器に保持させる方法を示し、図15および図16は放熱器をソケットに固定する方法を示す。
【0045】図11において、クリップ付き放熱器は、下面が平坦面となされるとともに、上面に前後方向に伸びるT字溝からなる内部拡大溝(2)が形成されているアルミニウム押出形材製放熱基板(3)、および放熱基板(3)の上面における内部拡大溝(2)の左右両側部分にそれぞれ設けられ、かつ放熱基板(3)の押出方向(前後方向)に間隔をおいて一体に切り起こし状に形成された多数の舌状放熱フィン(4)からなるフィン列(20)を備えた放熱器(1)と、一部分が内部拡大溝(2)内に嵌め入れられた状態で放熱器(1)に保持されたクリップ(5)とよりなる。各フィン列(20)を構成する放熱フィン(4)は高さの中央部が前方に突出した略円弧状である。
【0046】放熱器(1)の放熱フィン(4)は、放熱基板(3)を押出成形するさいに一緒に形成した前後方向に伸びるフィン成形用凸条に、切り起こし加工を施すことにより形成されたものである。
【0047】図11〜図13に示すように、クリップ(5)は、内部拡大溝(2)内に配置される水平状のベース部(6)と、ベース部(6)の前後両端部にそれぞれ一体に形成されるとともに、内部拡大溝(2)内から出るように前後方向外側に向かって斜め上方に伸びて先端が放熱基板(3)の上方でかつその前後方向外側に至る帯状傾斜突出部(7)(8)と、両帯状傾斜突出部(7)(8)の先端にそれぞれ一体に形成されるとともに下方に伸び、かつ先端に方形貫通穴(10)(11)(係合部)を有する脚部(12)(13)とよりなる。クリップ(5)のベース部(6)は、内部拡大溝(2)の開口幅(W1)、すなわち放熱基板(3)における内部拡大溝(2)の開口の左右両側縁の内方突出部(2a)の先端間の間隔よりも狭い幅を有する前後方向に長い帯状部(15)と、帯状部(15)の左右両側縁部に、それぞれ前後方向に間隔をおいて一体に形成された複数、ここでは2つの側方張出し部(14)とよりなる。側方張出し部(14)は帯状部(15)の前後両端部に位置している。クリップ(5)の左右の側方張出し部(14)の先端間の幅(W2)は、内部拡大溝(2)の開口幅(W1)よりも大きくかつ溝底部、すなわち内部拡大溝(2)における内方突出部(2a)よりも下方の部分の幅(W3)よりも狭くなっている(図12参照)。また、左右の側方張出し部(14)の先端間の幅(W2)は、内部拡大溝(2)の一方、ここでは右側内方突出部(2a)の下縁部の先端と、溝底部の左側縁との距離(W4)よりも小さくなっている(図14参照)。クリップ(5)の前後両帯状傾斜突出部(7)(8)の左右方向の幅は、ベース部(6)の帯状部(15)の左右方向の幅と等しくなっている。後側の傾斜突出部(8)は前側傾斜突出部(7)よりも長くなされているとともにその途中で斜め上方に折曲げられており、その先端は前側の傾斜突出部(7)の先端よりも上方に位置している。前側の脚部(12)は垂直状である。後側の脚部(13)は、下方に向かって前方に傾斜している。両脚部(12)(13)の下端は、放熱基板(3)の下面よりも下方に位置している。また、両脚部(12)(13)における貫通穴(10)(11)よりも下方の部分は、前後方向外側に若干折り曲げられている。この折り曲げ部を(12a)(13a)で示す。このようなクリップ(5)は、ばね鋼やステンレス鋼等からなる薄板にプレス加工を施すことにより製造されたものであり、ばね状弾性を有している。
【0048】クリップ(5)は、図14に示すようにして放熱器(1)に保持される。
【0049】すなわち、ベース部(6)が斜めになるようにクリップ(5)を傾けた状態で、一方、ここでは左側の側方張出し部(14)を内部拡大溝(2)の開口を通して左側の内方突出部(2a)よりも下方の溝底部内に挿入する。ついで、他方、ここでは右側の側方張出し部(14)が開口を通して右側の内方突出部(2a)よりも下方の溝底部内に入るように、ベース部(6)を水平状態に戻す。その後、クリップ(5)を他方、すなわち右側の側方張出し部(14)側にずらし、両側方張出し部(14)の先端をそれぞれ内方突出部(2a)よりも左右方向外側に位置させる。こうして、クリップ(5)が放熱器(1)に保持され、放熱器(1)に対するクリップ(5)の左右方向の位置が決められる。
【0050】次に、放熱器(1)を、これに保持されたクリップ(5)を用いてソケット(46)に固定する方法について、図15および図16を参照して説明する。なお、図15および図16において、図24および図25に示すものと同一物および同一部分には同一符号を付している。
【0051】まず、クリップ付き放熱器を、その後端部が下側にくるように斜めに傾け、後側の脚部(13)の貫通穴(11)内にソケット(46)の後端面に形成された突起(46b)を嵌め入れ、脚部(13)における貫通穴(11)の下縁部と突起(46b)とを係合させる(図15参照)。ついで、クリップ(5)の前端部を下方に押圧し、後側の傾斜突出部(8)および脚部(13)と、前側の傾斜突出部(7)および脚部(12)とを弾性変形させた状態で、前側の脚部(12)の貫通穴(10)内にソケット(46)の前端面に形成された突起(46a)を嵌め入れる。このとき、前側の脚部(12)は、その外方折り曲げ部(12a)が突起(46a)に押されることにより一旦前方に開くように弾性変形し、外方折り曲げ部(12a)が突起(46a)を過ぎると、その弾性力により元の状態に戻り、突起(46a)が貫通穴(10)内に嵌まり、脚部(12)における貫通穴(10)の下縁部と突起(46a)とが強固に係合する。こうして、放熱基板(3)下面に接着された熱伝導性樹脂フィルム(図示略)が圧縮されてCPU(43)の上面に密着した状態で、放熱器(1)がソケット(46)に固定される。このとき、クリップ(5)のベース部(6)も弾性変形して上方に弓形に反り、その結果両側方張出し部(14)が内部拡大溝(2)の内方突出部(2a)を上方に押圧することになる。したがって、放熱器(1)およびクリップ(5)には上向きの力が作用し、その結果ソケット(46)の両突起(46a)(46b)とクリップ(5)の両脚部(12)(13)における貫通穴(10)(11)の下縁部との係合が一層強固になって、放熱器(1)およびクリップ(5)のソケット(46)からの外れが確実に防止される。
【0052】CPU(43)を交換する場合のように、放熱器(1)をソケット(46)から取り外す必要がある場合には、クリップ(5)の弾性力に抗して、クリップ(5)の後端部を後方から前方に押圧する。すると、クリップ(5)が前方に移動し、その結果ソケット(46)の前端面の突起(46a)が前側脚部(12)の貫通穴(10)から抜ける。その後、ソケット(46)の後端面の突起(46b)を、後側脚部(13)の貫通穴(11)から抜く。こうして、放熱器(1)がソケット(46)から取り外される。したがって、取り外し作業も極めて簡単に行うことができる。
【0053】図17〜図19は、この発明の放熱器を利用したクリップ付き放熱器の他の具体例を示す。
【0054】この場合、クリップ(5)のベース部(6)の帯状部(15)には、前後方向に間隔をおいて複数、ここでは2つの円形貫通穴(21)が形成されている(図8参照)。そして、上述した第1の実施形態の場合と同様にして、クリップ(5)を放熱器(1)に保持させた後、円形貫通穴(21)よりも若干小さな直径を有するポンチ(22)を用いて、円形貫通穴(21)を通して内部拡大溝(2)の底面にポンチマーク(23)を付ける。すると、ポンチ(22)先端部の外周面と円形貫通穴(21)の内周面との間に、上方に突出したバリ(24)(上方突出部)が形成され、このバリ(24)が円形貫通穴(21)内に圧入されることになる(図17参照)。したがって、放熱器(1)によるクリップ(5)の保持が一層確実に行われる。しかも、放熱器(1)とクリップ(5)とが、前後方向および左右方向に正確に位置決めされるので、放熱器(1)をソケット(46)に固定するさいに、両者間で相対的位置ずれが起こることはなく、放熱器(1)をソケット(46)、すなわちCPU(43)に対して前後方向および左右方向の両方向に関して正確な位置に固定することができる。その他の構成は、上述した第1の実施形態と同じであり、上述したのと同様な方法で、放熱器(1)がソケット(46)に固定される。
【0055】クリップ(5)により放熱器(1)をソケット(46)に固定した場合には、図19に示すように、第1の具体例の場合と同様に、クリップ(5)のベース部(6)も弾性変形して上方に弓形に反り、その結果バリ(24)が円形貫通穴(21)から抜ける。したがって、放熱器(1)をソケット(46)から取り外す場合には、クリップ(5)を放熱器(1)に対して前方に移動させることができ、放熱器(1)の取り外しに支障を来すことはない。
【0056】図20は、この発明の放熱器を利用したクリップ付き放熱器の第3の具体例を示す。
【0057】この場合、放熱器(1)の放熱基板(3)の上面における内部拡大溝(2)の左右両側部分には、多数のピン状放熱フィン(25)が一体に形成されている。その他の構成は、上述した第1の具体例と同じである。
【0058】ピン状放熱フィン(25)は、放熱基板(3)と一体に押出成形された前後方向に伸びるプレートに、多数のスリットを入れることにより形成されている。
【0059】この具体例の場合、図20に示すように、ピン状放熱フィン(25)を利用して、放熱器(1)上に冷却ファン(26)を設置することが可能になる。
【0060】図21は、クリップの変形例を示す。
【0061】この場合、クリップ(30)のベース部(6)の後端に一体に形成された帯状傾斜突出部(31)は、前側の帯状傾斜突出部(7)と前後対称形である。また、帯状傾斜突出部(31)の後端に、前側の脚部(12)と前後対称形であり、かつ下部に方形貫通穴(32)を有する垂直状脚部(33)が一体に形成されている。その他の構成は、第1の実施形態のクリップ(5)と同様である。
【0062】図22は、クリップの他の変形例を示す。
【0063】この場合、クリップ(35)のベース部(6)は、帯状部(15)と、帯状部(15)の左右両側縁部における前後方向の中央部に一体に形成された側方張出し部(36)とよりなる。左右の側方張出し部(36)の先端間の幅は、第1の実施形態の側方張出し部(14)の先端間の幅と同一である。その他の構成は、図21のクリップ(30)と同様である。
【0064】図23は、クリップのさらに他の変形例を示す。
【0065】この場合、クリップ(38)のベース部(39)の左右方向の幅は全長にわたって等しくなっている。そして、ベース部(39)の左右方向の幅は、第1の実施形態の側方張出し部(14)の先端間の幅と同一である。その他の構成は、図21のクリップ(30)と同様である。
【0066】図21〜図23に示すクリップ(30)(35)(38)の場合も、上記第2の具体例の場合と同様にして、ベース部(6)(39)に円形貫通穴を形成し、ここにバリを圧入させることにより、クリップ(30)(35)(38)を放熱器(1)に確実に保持させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による放熱器を示す斜視図である。
【図2】この発明による放熱器を示す側面図である。
【図3】放熱フィンを形成する前の押出成形された放熱基板を示す斜視図である。
【図4】放熱基板の板厚を決めるために行った実験方法を示す斜視図である。
【図5】アルミニウム板の板厚と熱抵抗および重量との関係を示すグラフである。
【図6】放熱フィンのフィン高さと熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図7】放熱フィンの肉厚と熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図8】放熱フィンのフィンピッチと熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図9】冷却ファンを用いない放熱器における放熱フィンのフィン高さと熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図10】冷却ファンを用いない放熱器における放熱フィンのフィンピッチと熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図11】クリップ付き放熱器の全体構成を示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線拡大断面図である。
【図13】図11のクリップ付き放熱器のクリップを示す斜視図である。
【図14】図11のクリップ付き放熱器において、クリップを放熱器に保持させる方法を示す図12相当の断面図である。
【図15】図11のクリップ付き放熱器において、クリップにより放熱器をソケットに固定する方法を示す一部切欠き側面図である。
【図16】図11のクリップ付き放熱器において、クリップにより放熱器をソケットに固定した状態を示す一部切欠き側面図である。
【図17】クリップ付き放熱器の他の具体例の要部を示す拡大垂直断面図である。
【図18】図17のクリップ付き放熱器に用いられるクリップを示す斜視図である。
【図19】図17のクリップ付き放熱器において、クリップにより放熱器をソケットに固定した状態を示す部分拡大垂直断面図である。
【図20】クリップ付き放熱器のさらに他の具体例の全体構成を示す分解斜視図である。
【図21】クリップの変形例を示す斜視図である。
【図22】クリップの他の変形例を示す斜視図である。
【図23】クリップのさらに他の変形例を示す斜視図である。
【図24】クリップにより放熱器をソケットに固定する従来の方法における途中の状態を示す斜視図である。
【図25】クリップにより放熱器をソケットに固定する従来の方法における図24とは異なる途中の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
(60):放熱器
(61):放熱基板
(62):放熱フィン
(63):フィン列
(43):CPU
(46):ソケット
(M):マザーボード(プリント回路基板)
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パーソナルコンピュータのハウジング内のプリント回路基板に設けられているソケットに固定され、かつソケットに取り付けられているCPUから発せられる熱を放熱する放熱器に関する。
【0002】この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。また、この明細書において、各図面の上下を上下といい、図1の右斜め下側(図2の左側)、図11の左斜め下側(図15および図16の左側)および図24の左斜め下側を前、これと反対側を後といい、前方から後方を見た場合の左右を左右というものとする。
【0003】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】たとえば、パーソナルコンピュータにおいては、ハウジング内に配されているマザーボードと称されるプリント回路基板に設けられたソケットに、パッケージを有するCPU(中央演算処理装置)が取付けられている。ところで、最近では、パーソナルコンピュータの多機能化や処理速度の高速化が著しく、その結果CPUの出力が増大し、発熱量も著しく増加している。そのため、放熱器を、CPUに接触するように配置し、この状態でクリップを用いてマザーボードのソケットに固定することが行われるようになってきている。
【0004】図24および図25に示すように、従来の放熱器(40)は、下面が平坦面となされたアルミニウム押出形材製放熱基板(41)と、放熱基板(41)の上面に並列状に一体に形成されかつ放熱基板(41)の押出方向(前後方向)に伸びる複数のプレート状放熱フィン(42)とよりなる。放熱基板(41)下面の左右両側縁部には、それぞれCPU(43)のパッケージ(44)の左右両側面に係合する前後方向に長い垂下壁(45)が、下方突出状に一体に形成されている。垂下壁(45)の長さは放熱基板(41)の長さよりも短く、その後端は放熱基板(41)の後端よりも前方に位置している。そして、両垂下壁(45)がそれぞれCPU(43)のパッケージ(44)の左右両側面に係合するとともに、両垂下壁(45)の後端がそれぞれマザーボード(M)のソケット(46)における後部上方突出部(46c)の前面の左右両端部に当接することによって、放熱器(40)の左右方向および前後方向の位置決めが行われるようになっている。
【0005】このような放熱器(40)は、下面が平坦面となされるとともにその両側縁部にそれぞれ前後方向に伸びる垂下壁(45)が全長にわたって一体に形成された板状のアルミニウム押出形材をつくった後、この押出形材の垂下壁(45)の後端部を所定長さにわたって切除することにより製造されている。
【0006】放熱器(40)をソケット(46)に固定するクリップ(47)は、放熱基板(41)上面における放熱フィン(42)が形成されていない左右の中央部に面接触する帯状水平ベース部(48)と、帯状水平ベース部(48)の両端にそれぞれ上方突出状に一体に形成された円弧状湾曲部(49)と、両湾曲部(49)の先端にそれぞれ一体に形成された垂直下向きの脚部(50)とよりなる。脚部(50)の下部には、ソケット(46)の前後両端面の左右方向の中央部にそれぞれ一体に形成された突起(46a)(46b)が嵌め入れられる貫通穴(51)が形成されている。また、脚部(50)における貫通穴(51)よりも下側の部分は、前後方向外側に若干折り曲げられている。この折り曲げ部を(50a)で示す。クリップ(47)は、ばね鋼やステンレス鋼等からなる薄板にプレス成形を施すことにより製造されたものであり、ばね状弾性を有している。
【0007】クリップ(47)を用いて放熱器(40)をソケット(46)に固定する方法は、次の通りである。すなわち、放熱器(40)の放熱基板(41)の下面の所定位置に、熱伝導性樹脂フィルム(図示略)を接着し、この熱伝導性樹脂フィルムがCPU(43)上面に密着するように放熱器(40)を配置する。このとき、放熱基板(41)の垂下壁(45)の働きにより、放熱器(40)の左右方向および前後方向の位置決めがなされ、熱伝導性樹脂フィルムが位置ずれすることなく、CPU(43)の上面に密着する。ついで、クリップ(47)を、その帯状水平ベース部(48)が左右方向の中央部における2つの放熱フィン(42)間にくるように放熱基板(41)上に配し、両湾曲部(49)を下方に押圧し、両湾曲部(49)および両脚部(50)を弾性変形させた状態で、前後の脚部(50)の貫通穴(51)内に、ソケット(46)の前後両端面に形成された突起(46a)(46b)をそれぞれ圧入する。このとき、両脚部(50)は、その外方折り曲げ部(50a)が突起(46a)(46b)に押されることにより一旦前後方向外側に開くように弾性変形し、外方折り曲げ部(50a)が突起(46a)(46b)を過ぎると、その弾性力により元の状態に戻り、突起(46a)(46b)が貫通穴(51)内に嵌まり、突起(46a)(46b)と貫通穴(51)の下縁部とが強固に係合する。こうして、放熱器(40)が、その放熱基板(41)の下面がCPU(43)のパッケージ(44)上面に密着した状態でソケット(46)に固定されている。
【0008】しかしながら、上述した放熱器(40)の場合、押出形材製の放熱基板(41)の上面にその押出方向に伸びるプレート状放熱フィン(42)が一体成形されているので、その製造技術上、放熱フィン(42)の厚さが比較的大きくなるとともに、隣り合う放熱フィン(42)間の間隔であるフィンピッチも比較的大きくなり、その結果パーソナルコンピュータのハウジング内のマザーボード(M)に設けられているソケット(46)、およびソケット(46)に取り付けられているCPU(43)により放熱基板(41)の大きさに制限を受ける場合には、十分な放熱面積を得ることができず、放熱性能が悪いという問題があった。
【0009】また、従来の放熱器(40)を製造するにあたっては押出形材を形成した後、垂下壁(45)を部分的に切除する必要があり、その作業が面倒であるという問題があった。また、放熱器(40)とクリップ(47)とが分離しているので、これらを別々に梱包しなければならず、その作業が面倒であるという問題があった。
【0010】そこで、これらの問題を解決するために、米国特許第5,570,271号に記載されたクリップ付き放熱器が提案されている。このクリップ付き放熱器は、放熱器と、放熱器に保持されたクリップとからなり、放熱器が、下面が平坦面となされた放熱基板と、放熱基板の上面に並列状に一体に形成されるとともに前後方向に伸びる複数のプレート状放熱フィンとよりなり、クリップが、帯状水平ベース部と、帯状水平ベース部の両端部にそれぞれ一体に形成されて下方に伸びた垂直脚部と、帯状水平ベース部の長さの中間部における両側縁に一体に形成された垂下壁部とを備えており、左右方向の中央部に形成されている2つのプレート状フィンの互いに対向する面に形成された長さ方向に伸びる凸条に、クリップの各垂下壁部の外面に形成された突起が係合することにより、クリップが放熱器に保持されている。
【0011】このクリップ付き放熱器の場合、放熱器はアルミニウム押出形材製であって、放熱基板、プレート状放熱フィン、および凸条は、押出加工により一体に形成されているので、その製造作業は簡単になる。また、クリップは放熱器に保持されているので、これらを一緒に梱包することができ、梱包作業が容易になる。しかしながら、クリップの保持を、放熱器の放熱フィンに形成された凸条と、クリップに形成された突起との係合により行っているので、保持強度を増大させるためには、凸条を形成すべきフィンの厚さを大きくしなければならず、しかも放熱器が押出形材製であるので、その製造技術上、その他の放熱フィンの厚さも比較的大きくなるとともに、フィンピッチも比較的大きくなる。したがって、十分な放熱面積を得ることができず、放熱性能が比較的低くなる。
【0012】この発明の目的は、上記問題を解決し、放熱性能の優れた放熱器を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段と発明の効果】請求項1の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、パーソナルコンピュータのハウジング内のプリント回路基板に設けられているソケットに固定され、かつソケットに取り付けられているCPUから発せられる熱を放熱する放熱器であって、片面にCPUに接する平坦な受熱部が設けられた金属製放熱基板と、放熱基板の他面に切り起こし状に一体に形成された複数の放熱フィンとよりなるものである。
【0014】請求項1の発明の放熱器は、片面にCPUに接する平坦な受熱部が設けられた金属製放熱基板と、放熱基板の他面に切り起こし状に一体に形成された複数の放熱フィンとよりなるので、放熱基板に一体成形されたプレート状放熱フィンを備えた従来の放熱器に比べて、放熱基板の大きさが同じ場合に多くの放熱フィンを形成することができ、放熱面積が増大する。したがって、ソケットおよびCPUにより放熱基板の大きさに制限を受ける場合にも、CPUから発せられる熱の放熱効率が優れたものになる。
【0015】請求項2の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項1の発明において、放熱基板の板厚が3〜8mm、放熱フィンの基端から先端までの高さが15〜35mm、放熱フィンの肉厚が0.2〜0.7mm、放熱フィンのフィンピッチが1.5〜2.5mmとなされており、放熱フィン上に冷却ファンが配されるものである。
【0016】請求項3の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項2の発明において、放熱フィンの基端から先端までの高さと、隣り合う放熱フィンのフィン間スペースとの比が7〜44となされているものである。
【0017】請求項4の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項1の発明において、放熱基板の板厚が3〜8mm、放熱フィンの基端から先端までの高さが20〜50mm、放熱フィンの肉厚が0.2〜0.7mm、放熱フィンのフィンピッチが1.5〜4mmとなされているものである。
【0018】請求項5の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項4の発明において、放熱フィンの基端から先端までの高さと、隣り合う放熱フィンのフィン間スペースとの比が6〜62となされているものである。
【0019】請求項6の発明によるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器は、請求項1〜5のうちのいずれかの発明において、放熱基板がアルミニウム押出形材製であり、放熱基板の押出方向に間隔をおいて形成された複数の放熱フィンからなるフィン列を備えているものである。
【0020】なお、放熱器の製造が簡単であるとともに、放熱器とクリップとを一緒に梱包することができ、放熱器の放熱基板とCPUとの密着性を高め、しかも放熱性能の優れたクリップ付き放熱器の具体例としては、次のようなものがある。
【0021】第1のクリップ付き放熱器は、パッケージを有するCPUから発せられる熱を放熱する放熱器と、放熱器に保持され、かつCPUが取付けられているソケットに放熱器を固定するクリップとよりなるクリップ付き放熱器であって、放熱器が、下面が平坦面となされるとともに、上面に内部拡大溝が形成されている放熱基板と、放熱基板の上面における内部拡大溝を除いた部分に設けられた放熱フィンとよりなり、クリップが、内部拡大溝内に配置されるベース部と、ベース部の前後両端部にそれぞれ一体に形成されるとともに、内部拡大溝内から出るように伸びて先端が放熱基板の上方でかつその前後方向外側に至る突出部と、両突出部の先端にそれぞれ一体に形成されるとともに下方に伸び、かつ先端にソケットの一部分に係合しうる係合部を備えている脚部とよりなり、クリップのベース部に、左右方向の幅が内部拡大溝の開口幅よりも広く、かつ底部幅よりも狭くなされた部分が設けられているものである。
【0022】第1のクリップ付き放熱器によれば、クリップのベース部に、左右方向の幅が内部拡大溝の開口幅よりも広く、かつ底部幅よりも狭くなされた部分が設けられているので、クリップは放熱器から脱落することなく、かつ左右方向に位置ずれすることなく保持される。したがって、放熱器とクリップとを一緒に梱包することができ、その作業が簡単になる。しかも、クリップが放熱器に対して左右方向に位置ずれしないので、クリップを用いて放熱器をソケットに固定した場合、放熱器のソケットに対する左右方向の位置が正確に決められる。また、放熱器が、下面が平坦面となされるとともに、上面に内部拡大溝が形成されている放熱基板と、放熱基板の上面における内部拡大溝を除いた部分に設けられた放熱フィンとよりなるので、放熱基板を押出成形することができ、その製造作業が簡単になる。さらに、クリップのベース部を内部拡大溝の溝底部に配置することにより、クリップが放熱器に保持されるので、米国特許第5,570,271号に記載されているように、放熱フィンでクリップを保持する必要はない。したがって、放熱フィンとして放熱基板に切り起こし状に形成された薄肉の舌状フィン、ピン状フィン、放熱基板にろう付された薄肉のプレート状フィンを用いることが可能になり、その結果押出成形されたプレート状フィンの場合に比べて、放熱面積が大きくなって、放熱性能が向上する。
【0023】第2のクリップ付き放熱器は、第1のクリップ付き放熱器において、クリップのベース部が、内部拡大溝の開口幅よりも狭い幅を有する帯状部と、帯状部の左右両側縁部にそれぞれ一体に形成された側方張出し部とよりなり、左右の側方張出し部の先端間の幅が、内部拡大溝の開口幅よりも広く、かつ底部幅よりも狭くなされているものである。
【0024】第3のクリップ付き放熱器は、第1のクリップ付き放熱器において、クリップのベース部の左右方向の幅が、その全長にわたって内部拡大溝の開口幅よりも広く、かつ底部幅よりも狭くなされているものである。
【0025】第4のクリップ付き放熱器は、第1、2または3のクリップ付き放熱器において、クリップのベース部に貫通穴が形成され、放熱器の放熱基板における内部拡大溝の底面部分に上方突出部が一体に形成され、上方突出部が貫通穴に圧入されることによりクリップが放熱基板に仮止めされているものである。この場合、放熱器によるクリップの保持が一層確実に行われる。しかも、放熱器とクリップとが、前後方向および左右方向に正確に位置決めされるので、放熱器をソケットに固定するさいに、両者間で相対的位置ずれが起こることはなく、放熱器をソケット、すなわちCPUに対して前後方向および左右方向の両方向に関して正確な位置に固定することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】図1および図2はこの発明による放熱器を示す。
【0028】図1および図2において、放熱器(60)は、下面全体が平坦面となされるとともに、その中央部にCPUに接する受熱部(図示略)が設けられたアルミニウム製放熱基板(61)と、放熱基板(61)の上面に設けられ、かつ放熱基板(61)の押出方向(前後方向)に間隔をおいて一体に切り起こし状に形成された多数の舌状放熱フィン(62)からなる複数、ここでは2つのフィン列(63)とよりなる。両フィン列(63)は、それぞれ放熱基板(61)の押出方向(前後方向)に伸びており、相互に左右方向に間隔をおいて設けられている。また、各フィン列(63)を構成する放熱フィン(62)は高さの中央部が後方に突出した略円弧状であり、各放熱フィン(62)にはその先端からスリット(64)が入れられている。
【0029】放熱器(60)の放熱フィン(62)は、図3に示すように、放熱基板(61)を押出成形するさいに左右方向に間隔をおいて一体に形成された前後方向に伸びる2つのフィン成形用凸条(65)に、切り起こし加工を施すことにより形成されたものである。フィン成形用凸条(65)の上面には前後方向に伸びる凹溝(66)が形成されている。この凹溝(66)は、放熱フィン(62)を切り起こし加工するさいの切り起こし抵抗を減少させるとともに、潤滑油を保持させる目的で形成されたものである。そして、凹溝(66)の存在により、切り起こし加工により形成された放熱フィン(62)にはスリット(64)が形成されることになる。
【0030】放熱器(60)は、その放熱基板(61)下面の受熱部に熱伝導性樹脂フィルム(図示略)を接着した後、この熱伝導性樹脂フィルムがCPU(43)に密着するように適当な手段によりマザーボード(M)のソケット(46)に固定される。
【0031】放熱器(60)の放熱フィン(62)は、左方および右方から見て下方に開口した略U字状であるプラスチック製フィンカバー(67)により覆われている。フィンカバー(67)の頂壁(67a)には開口(68)が形成されている。また、フィンカバー(67)の頂壁(67a)の下側に冷却ファン(69)が配置されている。フィンカバー(67)および冷却ファン(69)は、図1に矢印で示すように、空気がフィンカバー(67)内に吸引されて隣り合う放熱フィン(62)間を左右方向内方に流れ、かつ上方に流れて開口(68)からカバー(67)外に排出されるようにするためのものである。
【0032】このような放熱器(60)においては、放熱基板(61)の板厚Tを3〜8mm、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHを15〜35mm、放熱フィン(62)の肉厚を0.2〜0.7mm、各フィン列(63)における放熱フィン(62)のフィンピッチPを1.5〜2.5mmとすることが好ましい。
【0033】板厚Tは、発明者が行った次のような実験から求められたものである。まず、Si0.2〜0.6wt%、Mg0.45〜0.9wt%を含み、残部Alおよび不可避不純物よりなる合金から、縦80mm、横60mmであり、板厚の異なるアルミニウム板(70)を複数枚つくった。ついで、図4に示すように、各アルミニウム板(70)の下面の中央部にヒータ(71)を取付け、ヒータ(71)によりアルミニウム板(70)を加熱しつつ、アルミニウム板(70)下面の中央部S1の温度X1を測定した。これと同時に、アルミニウム板(70)上面における4つの角部近傍部分S2〜S5および上面中央部分S6の温度を測定し、5箇所S2〜S6の温度の平均温度X2を求めた。そして、ヒータ(71)による入力熱量Q(W)と、上記温度X1、X2に基づいて、(X1−X2)/Qという式により熱拡散抵抗R0(℃/W)を求めた。その結果、アルミニウム板(70)の板厚Tと熱拡散抵抗R0との関係は図5に曲線Aで示すようになった。また、アルミニウム板(70)の板厚Tと重量との関係は、同図に直線Bで示すようになり、曲線Aと直線Bとを重ね合わせて得られる曲線Cに基づいて、放熱器(60)の放熱基板(61)の板厚を3〜8mmに決定した。すなわち、板厚Tが3mm未満であると熱拡散抵抗R0が十分に小さくならず、放熱基板(61)の上面全体に熱が伝わりにくくなって全ての放熱フィン(62)が有効に働かず、8mmを越えると重量が大きくなる。なお、板厚Tが3mm未満では熱拡散抵抗R0が大きくなるのは、板厚Tが小さいと熱は放熱基板(61)の上面の中央部に集中して伝わり、上面全体に伝わりにくくなるからであると考えられる。また、板厚Tが3〜8mmの範囲内では、板厚Tが大きくなるほど熱拡散抵抗R0も小さくなるが、さらに大きくなると熱拡散抵抗R0も増大する。
【0034】放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHは、発明者が行った次のような実験から求められたものである。まず、Si0.2〜0.6wt%、Mg0.45〜0.9wt%を含み、残部Alおよび不可避不純物よりなる合金から、縦80mm、横60mm、板厚6mmである放熱基板(61)の上面に、肉厚0.3mmの放熱フィン(62)がフィンピッチ2mmとなるように一体に形成されており、かつフィン高さHの異なる複数の放熱器(60)をつくった。ついで、各放熱器(60)にフィンカバー(67)および冷却ファン(69)(最大風量0.5m3/min、定格回転数4400rpm)を装着するとともに、放熱基板(61)下面の中央部にヒータを取付け、冷却ファン(69)を作動させるとともにヒータにより放熱基板(61)を加熱しつつ、放熱基板(61)の下面における中央部および4つの角部近傍の温度を測定し、5箇所の温度の平均温度Y1を求めた。これと同時に、放熱フィン(62)に導入される前の冷却用空気の温度Y2を測定した。そして、ヒータによる入力熱量Q(W)と、上記温度Y1、Y2に基づいて、(Y1−Y2)/Qという式により熱抵抗R(℃/W)を求めた。また、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の空間の通気抵抗を測定した。その結果、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと熱抵抗Rとの関係は図6に曲線A1で示すようになった。また、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと通気抵抗との関係は同図に曲線B1で示すようになり、曲線A1と曲線B1とを重ね合わせて得られる曲線C1に基づいて、放熱器の放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHを15〜35mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)の高さHが15mm未満であると通気抵抗が十分に小さくならず、35mmを越えるとフィン効率が低下して熱抵抗Rが大きくなり、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。なお、フィン高さHが15mm未満で通気抵抗が大きくなるのは、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通風間隙の面積が小さくなるからであると考えられる。
【0035】放熱フィン(62)の肉厚は、発明者が行った次のような実験から求められたものである。まず、Si0.2〜0.6wt%、Mg0.45〜0.9wt%を含み、残部Alおよび不可避不純物よりなる合金から、縦80mm、横60mm、板厚6mmである放熱基板(61)の上面に、肉厚の異なる放熱フィン(62)がフィンピッチ2mmとなるように一体に形成された複数の放熱器(60)をつくった。ついで、上記フィン高さHの場合と同様にして熱抵抗Rを求めるとともに、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通気抵抗を測定した。その結果、放熱フィン(62)の肉厚と熱抵抗Rとの関係は図7に曲線A2で示すようになった。また、放熱フィン(62)の肉厚と通気抵抗との関係は同図に曲線B2で示すようになり、曲線A2と曲線B2とを重ね合わせて得られる曲線C2に基づいて、放熱器(60)の放熱フィン(62)の肉厚を0.2〜0.7mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)の肉厚が0.2mm未満ではフィン効率が低下して熱抵抗Rが大きくなり、0.7mmを越えると通気抵抗が増大し、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。なお、放熱フィン(62)の肉厚が0.7mmを越えると通気抵抗が大きくなるのは、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通風間隙の面積が小さくなるからであると考えられる。
【0036】放熱フィン(62)のフィンピッチPは、発明者が行った次のような実験から求められたものである。まず、Si0.2〜0.6wt%、Mg0.45〜0.9wt%を含み、残部Alおよび不可避不純物よりなる合金から、縦80mm、横60mm、板厚6mmである放熱基板(61)の上面に、肉厚0.3mmの放熱フィン(62)が異なるフィンピッチPで一体に形成された複数の放熱器(60)をつくった。ついで、上記フィン高さHの場合と同様にして熱抵抗Rを求めるとともに、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通気抵抗を測定した。その結果、放熱フィン(62)のフィンピッチPと熱抵抗Rとの関係は図8に曲線A3で示すようになった。また、放熱フィン(62)のフィンピッチPと通気抵抗との関係は同図に曲線B3で示すようになり、曲線A3と曲線B3とを重ね合わせて得られる曲線C3に基づいて、放熱器(60)の放熱フィン(62)のフィンピッチPを1.5〜2.5mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)のフィンピッチPが1.5mm未満では通気抵抗が大きくなり、2.5mmを越えると通気抵抗が減少するものの必要な伝熱面積が得られなくなって熱抵抗Rが増大し、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。
【0037】さらに、放熱器(60)においては、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと、前後に隣り合う放熱フィン(62)のフィン間スペース(フィンピッチPから1つの放熱フィン(62)の肉厚を減じた寸法)との比を7〜44とすることが好ましい。上記比が下限値未満では十分な大きさの放熱面積が確保されず、上限値を越えるとフィンピッチPが小さくなって圧力損失が大きくなり、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。望ましくは、上記比は10〜20である。
【0038】また、放熱器(60)は、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)が装着されないで使用される場合もある。この場合、放熱器(60)の放熱基板(61)の板厚Tを3〜8mm、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHを20〜50mm、放熱フィン(62)の肉厚を0.2〜0.7mm、放熱フィン(62)のフィンピッチPを1.5〜4mmとすることが好ましい。
【0039】放熱基板(61)の板厚Tは、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)を用いる場合と同様な実験により求められたものである。放熱フィン(62)の基端から先端までの高さH、放熱フィン(62)の肉厚および放熱フィン(62)のフィンピッチPは、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)を用いないことを除いては、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)を用いた場合と同様な実験により求められたものである。その結果、放熱基板(61)の板厚Tと放熱フィン(62)の肉厚は、冷却ファンを用いる場合と同じになった。
【0040】放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHは、熱抵抗Rとフィン高さHの関係を示す図9の曲線A4と、通気抵抗とフィン高さHの関係を示す図9の曲線B4とを重ね合わせて得られる曲線C4に基づいて20〜50mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)の高さHが20mm未満であると通気抵抗が十分に小さくならず、50mmを越えるとフィン効率が低下して熱抵抗Rが大きくなり、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。なお、フィン高さHが20mm未満で通気抵抗が大きくなるのは、前後に隣り合う放熱フィン(62)間の通風間隙の面積が小さくなるからであると考えられる。
【0041】放熱フィン(62)のフィンピッチPは、熱抵抗RとフィンピッチPとの関係を示す図10の曲線A5と、通気抵抗とフィンピッチPとの関係を示す図10の曲線B5とを重ね合わせて得られる曲線C5に基づいて1.5〜4mmに決定した。すなわち、放熱フィン(62)のフィンピッチPが1.5mm未満では通気抵抗が大きくなり、4mmを越えると通気抵抗が減少するものの必要な伝熱面積が得られなくなって熱抵抗Rが増大し、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。
【0042】さらに、フィンカバー(67)および冷却ファン(69)が装着されないで使用される場合、放熱器(60)においては、放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと、前後に隣り合う放熱フィン(62)のフィン間スペース(フィンピッチPから1つの放熱フィン(62)の肉厚を減じた寸法)との比を6〜62とすることが好ましい。上記比が下限値未満では十分な大きさの放熱面積が確保されず、上限値を越えるとフィンピッチPが小さくなって圧力損失が大きくなり、いずれの場合も放熱効率を向上させることができない。望ましくは、上記比は10〜30である。
【0043】ここで、冷却ファンを用いる場合と用いない場合とで放熱フィン(62)の高さHおよびフィンピッチP、ならびに放熱フィン(62)の基端から先端までの高さHと、前後に隣り合う放熱フィン(62)のフィン間スペースとの比が異なるのは、風速が異なるからである。
【0044】図11はこの発明の放熱器を利用したクリップ付き放熱器の全体構成を示し、図12はその要部を示し、図13はクリップを示す。また、図14はクリップを放熱器に保持させる方法を示し、図15および図16は放熱器をソケットに固定する方法を示す。
【0045】図11において、クリップ付き放熱器は、下面が平坦面となされるとともに、上面に前後方向に伸びるT字溝からなる内部拡大溝(2)が形成されているアルミニウム押出形材製放熱基板(3)、および放熱基板(3)の上面における内部拡大溝(2)の左右両側部分にそれぞれ設けられ、かつ放熱基板(3)の押出方向(前後方向)に間隔をおいて一体に切り起こし状に形成された多数の舌状放熱フィン(4)からなるフィン列(20)を備えた放熱器(1)と、一部分が内部拡大溝(2)内に嵌め入れられた状態で放熱器(1)に保持されたクリップ(5)とよりなる。各フィン列(20)を構成する放熱フィン(4)は高さの中央部が前方に突出した略円弧状である。
【0046】放熱器(1)の放熱フィン(4)は、放熱基板(3)を押出成形するさいに一緒に形成した前後方向に伸びるフィン成形用凸条に、切り起こし加工を施すことにより形成されたものである。
【0047】図11〜図13に示すように、クリップ(5)は、内部拡大溝(2)内に配置される水平状のベース部(6)と、ベース部(6)の前後両端部にそれぞれ一体に形成されるとともに、内部拡大溝(2)内から出るように前後方向外側に向かって斜め上方に伸びて先端が放熱基板(3)の上方でかつその前後方向外側に至る帯状傾斜突出部(7)(8)と、両帯状傾斜突出部(7)(8)の先端にそれぞれ一体に形成されるとともに下方に伸び、かつ先端に方形貫通穴(10)(11)(係合部)を有する脚部(12)(13)とよりなる。クリップ(5)のベース部(6)は、内部拡大溝(2)の開口幅(W1)、すなわち放熱基板(3)における内部拡大溝(2)の開口の左右両側縁の内方突出部(2a)の先端間の間隔よりも狭い幅を有する前後方向に長い帯状部(15)と、帯状部(15)の左右両側縁部に、それぞれ前後方向に間隔をおいて一体に形成された複数、ここでは2つの側方張出し部(14)とよりなる。側方張出し部(14)は帯状部(15)の前後両端部に位置している。クリップ(5)の左右の側方張出し部(14)の先端間の幅(W2)は、内部拡大溝(2)の開口幅(W1)よりも大きくかつ溝底部、すなわち内部拡大溝(2)における内方突出部(2a)よりも下方の部分の幅(W3)よりも狭くなっている(図12参照)。また、左右の側方張出し部(14)の先端間の幅(W2)は、内部拡大溝(2)の一方、ここでは右側内方突出部(2a)の下縁部の先端と、溝底部の左側縁との距離(W4)よりも小さくなっている(図14参照)。クリップ(5)の前後両帯状傾斜突出部(7)(8)の左右方向の幅は、ベース部(6)の帯状部(15)の左右方向の幅と等しくなっている。後側の傾斜突出部(8)は前側傾斜突出部(7)よりも長くなされているとともにその途中で斜め上方に折曲げられており、その先端は前側の傾斜突出部(7)の先端よりも上方に位置している。前側の脚部(12)は垂直状である。後側の脚部(13)は、下方に向かって前方に傾斜している。両脚部(12)(13)の下端は、放熱基板(3)の下面よりも下方に位置している。また、両脚部(12)(13)における貫通穴(10)(11)よりも下方の部分は、前後方向外側に若干折り曲げられている。この折り曲げ部を(12a)(13a)で示す。このようなクリップ(5)は、ばね鋼やステンレス鋼等からなる薄板にプレス加工を施すことにより製造されたものであり、ばね状弾性を有している。
【0048】クリップ(5)は、図14に示すようにして放熱器(1)に保持される。
【0049】すなわち、ベース部(6)が斜めになるようにクリップ(5)を傾けた状態で、一方、ここでは左側の側方張出し部(14)を内部拡大溝(2)の開口を通して左側の内方突出部(2a)よりも下方の溝底部内に挿入する。ついで、他方、ここでは右側の側方張出し部(14)が開口を通して右側の内方突出部(2a)よりも下方の溝底部内に入るように、ベース部(6)を水平状態に戻す。その後、クリップ(5)を他方、すなわち右側の側方張出し部(14)側にずらし、両側方張出し部(14)の先端をそれぞれ内方突出部(2a)よりも左右方向外側に位置させる。こうして、クリップ(5)が放熱器(1)に保持され、放熱器(1)に対するクリップ(5)の左右方向の位置が決められる。
【0050】次に、放熱器(1)を、これに保持されたクリップ(5)を用いてソケット(46)に固定する方法について、図15および図16を参照して説明する。なお、図15および図16において、図24および図25に示すものと同一物および同一部分には同一符号を付している。
【0051】まず、クリップ付き放熱器を、その後端部が下側にくるように斜めに傾け、後側の脚部(13)の貫通穴(11)内にソケット(46)の後端面に形成された突起(46b)を嵌め入れ、脚部(13)における貫通穴(11)の下縁部と突起(46b)とを係合させる(図15参照)。ついで、クリップ(5)の前端部を下方に押圧し、後側の傾斜突出部(8)および脚部(13)と、前側の傾斜突出部(7)および脚部(12)とを弾性変形させた状態で、前側の脚部(12)の貫通穴(10)内にソケット(46)の前端面に形成された突起(46a)を嵌め入れる。このとき、前側の脚部(12)は、その外方折り曲げ部(12a)が突起(46a)に押されることにより一旦前方に開くように弾性変形し、外方折り曲げ部(12a)が突起(46a)を過ぎると、その弾性力により元の状態に戻り、突起(46a)が貫通穴(10)内に嵌まり、脚部(12)における貫通穴(10)の下縁部と突起(46a)とが強固に係合する。こうして、放熱基板(3)下面に接着された熱伝導性樹脂フィルム(図示略)が圧縮されてCPU(43)の上面に密着した状態で、放熱器(1)がソケット(46)に固定される。このとき、クリップ(5)のベース部(6)も弾性変形して上方に弓形に反り、その結果両側方張出し部(14)が内部拡大溝(2)の内方突出部(2a)を上方に押圧することになる。したがって、放熱器(1)およびクリップ(5)には上向きの力が作用し、その結果ソケット(46)の両突起(46a)(46b)とクリップ(5)の両脚部(12)(13)における貫通穴(10)(11)の下縁部との係合が一層強固になって、放熱器(1)およびクリップ(5)のソケット(46)からの外れが確実に防止される。
【0052】CPU(43)を交換する場合のように、放熱器(1)をソケット(46)から取り外す必要がある場合には、クリップ(5)の弾性力に抗して、クリップ(5)の後端部を後方から前方に押圧する。すると、クリップ(5)が前方に移動し、その結果ソケット(46)の前端面の突起(46a)が前側脚部(12)の貫通穴(10)から抜ける。その後、ソケット(46)の後端面の突起(46b)を、後側脚部(13)の貫通穴(11)から抜く。こうして、放熱器(1)がソケット(46)から取り外される。したがって、取り外し作業も極めて簡単に行うことができる。
【0053】図17〜図19は、この発明の放熱器を利用したクリップ付き放熱器の他の具体例を示す。
【0054】この場合、クリップ(5)のベース部(6)の帯状部(15)には、前後方向に間隔をおいて複数、ここでは2つの円形貫通穴(21)が形成されている(図8参照)。そして、上述した第1の実施形態の場合と同様にして、クリップ(5)を放熱器(1)に保持させた後、円形貫通穴(21)よりも若干小さな直径を有するポンチ(22)を用いて、円形貫通穴(21)を通して内部拡大溝(2)の底面にポンチマーク(23)を付ける。すると、ポンチ(22)先端部の外周面と円形貫通穴(21)の内周面との間に、上方に突出したバリ(24)(上方突出部)が形成され、このバリ(24)が円形貫通穴(21)内に圧入されることになる(図17参照)。したがって、放熱器(1)によるクリップ(5)の保持が一層確実に行われる。しかも、放熱器(1)とクリップ(5)とが、前後方向および左右方向に正確に位置決めされるので、放熱器(1)をソケット(46)に固定するさいに、両者間で相対的位置ずれが起こることはなく、放熱器(1)をソケット(46)、すなわちCPU(43)に対して前後方向および左右方向の両方向に関して正確な位置に固定することができる。その他の構成は、上述した第1の実施形態と同じであり、上述したのと同様な方法で、放熱器(1)がソケット(46)に固定される。
【0055】クリップ(5)により放熱器(1)をソケット(46)に固定した場合には、図19に示すように、第1の具体例の場合と同様に、クリップ(5)のベース部(6)も弾性変形して上方に弓形に反り、その結果バリ(24)が円形貫通穴(21)から抜ける。したがって、放熱器(1)をソケット(46)から取り外す場合には、クリップ(5)を放熱器(1)に対して前方に移動させることができ、放熱器(1)の取り外しに支障を来すことはない。
【0056】図20は、この発明の放熱器を利用したクリップ付き放熱器の第3の具体例を示す。
【0057】この場合、放熱器(1)の放熱基板(3)の上面における内部拡大溝(2)の左右両側部分には、多数のピン状放熱フィン(25)が一体に形成されている。その他の構成は、上述した第1の具体例と同じである。
【0058】ピン状放熱フィン(25)は、放熱基板(3)と一体に押出成形された前後方向に伸びるプレートに、多数のスリットを入れることにより形成されている。
【0059】この具体例の場合、図20に示すように、ピン状放熱フィン(25)を利用して、放熱器(1)上に冷却ファン(26)を設置することが可能になる。
【0060】図21は、クリップの変形例を示す。
【0061】この場合、クリップ(30)のベース部(6)の後端に一体に形成された帯状傾斜突出部(31)は、前側の帯状傾斜突出部(7)と前後対称形である。また、帯状傾斜突出部(31)の後端に、前側の脚部(12)と前後対称形であり、かつ下部に方形貫通穴(32)を有する垂直状脚部(33)が一体に形成されている。その他の構成は、第1の実施形態のクリップ(5)と同様である。
【0062】図22は、クリップの他の変形例を示す。
【0063】この場合、クリップ(35)のベース部(6)は、帯状部(15)と、帯状部(15)の左右両側縁部における前後方向の中央部に一体に形成された側方張出し部(36)とよりなる。左右の側方張出し部(36)の先端間の幅は、第1の実施形態の側方張出し部(14)の先端間の幅と同一である。その他の構成は、図21のクリップ(30)と同様である。
【0064】図23は、クリップのさらに他の変形例を示す。
【0065】この場合、クリップ(38)のベース部(39)の左右方向の幅は全長にわたって等しくなっている。そして、ベース部(39)の左右方向の幅は、第1の実施形態の側方張出し部(14)の先端間の幅と同一である。その他の構成は、図21のクリップ(30)と同様である。
【0066】図21〜図23に示すクリップ(30)(35)(38)の場合も、上記第2の具体例の場合と同様にして、ベース部(6)(39)に円形貫通穴を形成し、ここにバリを圧入させることにより、クリップ(30)(35)(38)を放熱器(1)に確実に保持させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による放熱器を示す斜視図である。
【図2】この発明による放熱器を示す側面図である。
【図3】放熱フィンを形成する前の押出成形された放熱基板を示す斜視図である。
【図4】放熱基板の板厚を決めるために行った実験方法を示す斜視図である。
【図5】アルミニウム板の板厚と熱抵抗および重量との関係を示すグラフである。
【図6】放熱フィンのフィン高さと熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図7】放熱フィンの肉厚と熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図8】放熱フィンのフィンピッチと熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図9】冷却ファンを用いない放熱器における放熱フィンのフィン高さと熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図10】冷却ファンを用いない放熱器における放熱フィンのフィンピッチと熱抵抗および通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図11】クリップ付き放熱器の全体構成を示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線拡大断面図である。
【図13】図11のクリップ付き放熱器のクリップを示す斜視図である。
【図14】図11のクリップ付き放熱器において、クリップを放熱器に保持させる方法を示す図12相当の断面図である。
【図15】図11のクリップ付き放熱器において、クリップにより放熱器をソケットに固定する方法を示す一部切欠き側面図である。
【図16】図11のクリップ付き放熱器において、クリップにより放熱器をソケットに固定した状態を示す一部切欠き側面図である。
【図17】クリップ付き放熱器の他の具体例の要部を示す拡大垂直断面図である。
【図18】図17のクリップ付き放熱器に用いられるクリップを示す斜視図である。
【図19】図17のクリップ付き放熱器において、クリップにより放熱器をソケットに固定した状態を示す部分拡大垂直断面図である。
【図20】クリップ付き放熱器のさらに他の具体例の全体構成を示す分解斜視図である。
【図21】クリップの変形例を示す斜視図である。
【図22】クリップの他の変形例を示す斜視図である。
【図23】クリップのさらに他の変形例を示す斜視図である。
【図24】クリップにより放熱器をソケットに固定する従来の方法における途中の状態を示す斜視図である。
【図25】クリップにより放熱器をソケットに固定する従来の方法における図24とは異なる途中の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
(60):放熱器
(61):放熱基板
(62):放熱フィン
(63):フィン列
(43):CPU
(46):ソケット
(M):マザーボード(プリント回路基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 パーソナルコンピュータのハウジング内のプリント回路基板に設けられているソケットに固定され、かつソケットに取り付けられているCPUから発せられる熱を放熱する放熱器であって、片面にCPUに接する平坦な受熱部が設けられた金属製放熱基板と、放熱基板の他面に切り起こし状に一体に形成された複数の放熱フィンとよりなるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項2】 放熱基板の板厚が3〜8mm、放熱フィンの基端から先端までの高さが15〜35mm、放熱フィンの肉厚が0.2〜0.7mm、放熱フィンのフィンピッチが1.5〜2.5mmとなされており、放熱フィン上に冷却ファンが配される請求項1記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項3】 放熱フィンの基端から先端までの高さと、隣り合う放熱フィンのフィン間スペースとの比が7〜44となされている請求項2記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項4】 放熱基板の板厚が3〜8mm、放熱フィンの基端から先端までの高さが20〜50mm、放熱フィンの肉厚が0.2〜0.7mm、放熱フィンのフィンピッチが1.5〜4mmとなされている請求項1記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項5】 放熱フィンの基端から先端までの高さと、隣り合う放熱フィンのフィン間スペースとの比が6〜62となされている請求項4記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項6】 放熱基板がアルミニウム押出形材製であり、放熱基板の押出方向に間隔をおいて形成された複数の放熱フィンからなるフィン列を備えている請求項1〜5のうちのいずれかに記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項1】 パーソナルコンピュータのハウジング内のプリント回路基板に設けられているソケットに固定され、かつソケットに取り付けられているCPUから発せられる熱を放熱する放熱器であって、片面にCPUに接する平坦な受熱部が設けられた金属製放熱基板と、放熱基板の他面に切り起こし状に一体に形成された複数の放熱フィンとよりなるパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項2】 放熱基板の板厚が3〜8mm、放熱フィンの基端から先端までの高さが15〜35mm、放熱フィンの肉厚が0.2〜0.7mm、放熱フィンのフィンピッチが1.5〜2.5mmとなされており、放熱フィン上に冷却ファンが配される請求項1記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項3】 放熱フィンの基端から先端までの高さと、隣り合う放熱フィンのフィン間スペースとの比が7〜44となされている請求項2記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項4】 放熱基板の板厚が3〜8mm、放熱フィンの基端から先端までの高さが20〜50mm、放熱フィンの肉厚が0.2〜0.7mm、放熱フィンのフィンピッチが1.5〜4mmとなされている請求項1記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項5】 放熱フィンの基端から先端までの高さと、隣り合う放熱フィンのフィン間スペースとの比が6〜62となされている請求項4記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【請求項6】 放熱基板がアルミニウム押出形材製であり、放熱基板の押出方向に間隔をおいて形成された複数の放熱フィンからなるフィン列を備えている請求項1〜5のうちのいずれかに記載のパーソナルコンピュータ用CPUの放熱器。
【図2】
【図3】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図3】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2001−156226(P2001−156226A)
【公開日】平成13年6月8日(2001.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−59195(P2000−59195)
【出願日】平成12年3月3日(2000.3.3)
【出願人】(000186843)昭和アルミニウム株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成13年6月8日(2001.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年3月3日(2000.3.3)
【出願人】(000186843)昭和アルミニウム株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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