説明

ヒアルロン酸の生産

レンサ球菌細胞中の一つ又はそれ以上の酵素の活性を改変すること及び/又は利用できる基質又は基質前駆物質の量を改変することを含んでいる、ヒアルロン酸を産生する方法が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンサ球菌種(Streptococcus sp.)中でヒアルロン酸を生産する方法、更にこのような方法で生産されたヒアルロン酸にも関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ヒアルロン酸(HA)は、β−1−3及びβ−1−4グリコシド結合で交互に連結しているグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンの二糖2,000〜25,000個からなる、一様な繰り返しの、直鎖グリコサミノグリカン:[β−1,4−グルクロン酸−β−1,3−N−アセチルグルコサミン]:である。
【0003】
その様々な天然の機能を反映して、HAは医薬、化粧品及び特定食品において多くの適用が見出されている。多くの適用において、高分子量が望ましい特性であって、高分子量(MW)HAを生産するために異なった取り組みが採用されてきた。
【0004】
高MW HAは鶏のトサカから丁寧な抽出によって得ることができる。鶏のトサカにあるHAは非常に高い値、例えば1,200万〜1,400万(12〜14M)ダルトン(Da)にまで達することがある。抽出方法次第で、3〜5MDaの最終生成物が得られる(米国特許第4,141,973号)。医薬及び化粧品において動物由来製品の使用を控えることが増加して、微生物によるHA産生への転換が見られている。C群レンサ球菌、特にストレプトコッカス・エクイ亜種エクイ(Streptococcus equi subsp. equi)及びストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカス(Streptococcus equi subsp. zooepidemicus)、の発酵を経由する微生物によるHAの生産は、1980年代の初頭から工業的に実施されている。しかしながら、微生物から得られるHAは、鶏のトサカから得られ得るHAより分子量が小さい(通常、0.5〜2MDa)。
【0005】
ある適用では、分子量を増大するために化学的架橋が利用されている(例えば、米国特許第4,582,865号、米国特許第6,903,199号、米国特許第7,125,860号、及び米国特許第6,703,444号)。別の適用では、特に眼科の適用では、架橋結合が好ましくなく、菌株工学(strain engineering)が高MW HAを実現化するための唯一の手段である。
【0006】
HAは、病原性ランスフィールド分類A群及びC群レンサ球菌によって細胞外皮膜として合成される。顕微鏡下では、これらの胞子非形成且つ非運動性細菌は、多数の細胞外皮膜に取り囲まれて典型的に対に又は鎖状に配置されている球状又は卵形に見える。羊血液寒天プレート上では、これらのβ−溶血性細菌のコロニーは、細菌コロニーを取り囲むムコイド又は粘性透明層として確認されるHAと透明帯を生じる。このHA皮膜は、恐らくHA皮膜を外部物質として認識しない高等生物の免疫系としてのステルス機能を細菌に提供している、これらレンサ球菌の病原性因子である。
【0007】
HAは、HAシンターゼ(EC2.4.1.212)による触媒作用を受ける反応において、2つの活性化グリコシルドナー、UDP−グルクロン酸(UDP−GUA)及びUDP−N−アセチルグルコサミン(UDP−NAG)の重合によって生成する(図1)。2つの前駆体はグルコース−6−リン酸から枝分かれする2つの経路で合成される。
第一の経路は、α−ホスホグルコムターゼ(EC5.4.2.2)によるグルコース−6−リン酸のグルコース−1−リン酸への変換から出発する。UDP−グルコースピロホスホリラーゼ(EC2.7.7.9)は、ヌクレオチド糖UDP−グルコースを生成するUTPとグルコース−1−リン酸の反応を触媒する。次いで、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.22)の作用によって、UDP−グルコースの1級アルコール基を特異的に酸化することによってUDP−GUAが得られる。
アミノ糖の生成に関する第二の経路は、ホスホグルコイソメラーゼ(EC5.3.1.9)の触媒作用を受けるグルコース−6−リン酸のフルクトース−6−リン酸への転換から出発する。アミドトランスフェラーゼ(EC2.6.1.16)によるグルタミンからフルクトース−6−リン酸へのアミノ基の転移はグルコサミン−6−リン酸を生じる。ムターゼ(EC5.4.2.10)によるリン酸基の転位はグルコサミン−6−リン酸からグルコサミン−1−リン酸を生成する。アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.4)によるアセチル基の転移はN−アセチルグルコサミン−6−リン酸を形成する。最後に、ピロホスホリラーゼ(EC2.7.7.23)をUDPに付加してUDP−NAGが得られる。
【0008】
HA産生におけるそれらの役割に加えて、この2つの経路は細胞壁成分の生合成に必要である。UDP−GUA経路における中間体は細胞壁多糖類及びテイコ酸の生合成に用いられる。UDP−NAGはリポ多糖類、プロテオグリカン、更にペプチドグリカンにおけるアミノ糖源である。ペプチドグリカン合成の第一工程は、UDP−NAGとホスホエノールピルベートを結合してUDP−N−アセチル−3−O−(1−カルボキシビニル)−グルコサミンを形成する、UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(UDP−NAG−CVT)(EC2.5.1.7)によって触媒される。
【0009】
HAシンターゼはHA MWを調節するのに重要な役割を演じて、部位特異的突然変異誘発(site directed mutagenesis)はHA MWを修正するために用いられていた(Kumari, K., et al. (2006). "Mutation of Two intramembrane Polar Residues Conserved within the Hyaluronan Synthase Family Alters Hyaluronan Product Size." J. Biol. Chem. 281(17): 11755-11760)。菌株の選択に続く無作為の突然変異生成はHA MWを含む菌株特性の改善にも用いられている(Kim, J.-H., et al. (1996). "Selection of a Streptococcus equi mutant and optimization of culture conditions for the production of high molecular weight hyaluronic acid." Enzy. Microbial Tech. 19(6): 440-445; Lee, M.S., et al. (1999). "Construction and analysis of library for random insertional mutagenesis in Streptococcus pneumoniae: Use for recovery of mutants defective in genetic transformation and for identification of essnetial genes." Appl. Environ. Microbiol. 65(5): 1883-1890: 米国特許第5,496,726号;米国特許第7,323,329号)。
【0010】
HAシンターゼ(HasA)に加えて高いUDP−グルコースデヒドロゲナーゼ活性(HasB)が高いHA収率を達成するために必要であるということを幾つかの研究が明らかにしている。大腸菌(Escherichia coli.)、枯草菌(Bacillus subtilis)又は乳酸レンサ球菌(Lactococcus lactis)のような異種宿主中でのHasAの発現は、さらにHasBが過剰発現されなければ、殆ど若しくは全くHAを生じない(DeAngelis P. "polypeptide, or a variant, analogue or fragment thereof", L., et al. (1993) "Molecular cloning, identification, and sequence of the hyaluronan synthase gene from group A Streptococcus pyogenes." J. Biol. Chem. 268:19181-19184; 国際特許出願公開第WO03/054163号公報;Chien L. J., Lee C. K. (2007) "Hyaluronic acid production by recombinant Lactococcus lactis." Appl. Microbiol. Biotechnol. 77:339-346)。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法は培養培地中でレンサ球菌細胞を生育させること(ここで細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現する、ここで細胞中にある、ホスホグルコイソメラーゼ、D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ、グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、及びホスホアセチルグルコサミンムターゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量を増大させる);及び任意にこの細胞により産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる。
【0012】
第2の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法はヒアルロン酸の合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収することを含有してなり、ここで細胞中にある、ホスホグルコイソメラーゼ、D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ、グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、及びホスホアセチルグルコサミンムターゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量を増大させる。
【0013】
第3の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法は培養培地中でレンサ球菌細胞を生育させること(ここで細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現する、ここで細胞中にある、ホスホグルコイソメラーゼ、D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ、グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、及びホスホアセチルグルコサミンムターゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量を増大させるように細胞を改変又は処理してある);及び任意にこの細胞により産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる。
【0014】
第4の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法はヒアルロン酸の合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収することを含有してなり、ここで細胞中にある、ホスホグルコイソメラーゼ、D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ、グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、及びホスホアセチルグルコサミンムターゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量を増大させるように、細胞を改変又は処理してある。
【0015】
第5の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法は培養培地中でレンサ球菌細胞を生育させること(ここで細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現して、UDP−N−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びグルコサミンから選ばれる1つ又はそれ以上の基質をもたらす);及び任意にこの細胞により産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる。
【0016】
第6の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法はヒアルロン酸の合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収することを含有してなり、ここでUDP−N−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びグルコサミンから選ばれる1つ又はそれ以上の基質がもたらされる。
【0017】
第7の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法は培養培地中でレンサ球菌細胞を生育させること(ここで細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現して、細胞中にあるUDP−N−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びグルコサミンから選ばれる1つ又はそれ以上の基質の量を増大するように改変又は処理されている);及び任意にこの細胞により産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる。
【0018】
第8の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法はヒアルロン酸の合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収することを含有してなり、ここで細胞は細胞中のUDP−N−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びグルコサミンから選ばれる1つ又はそれ以上の基質の量を増大するように改変又は処理されている。
【0019】
第9の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法は培養培地中でレンサ球菌細胞を生育させること(ここで細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現して、細胞中にあるUDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ及びウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又は失効されている);及び任意にこの細胞により産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる。
【0020】
第10の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法はヒアルロン酸の合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収することを含有してなり、細胞中にあるUDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ及びウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又は失効している。
【0021】
第11の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法は培養培地中でレンサ球菌細胞を生育させること(ここで細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現して、細胞中にあるUDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ及びウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又は失効するように細胞が改変又は処理されている);及び任意にこの細胞により産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる。
【0022】
第12の態様では、本発明はヒアルロン酸を生産する方法を提供し、方法はヒアルロン酸の合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収することを含有してなり、細胞中にあるUDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ及びウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又は失効している。
【0023】
第13の態様では、本発明は更に本発明の方法によって得られるか又は得られうるヒアルロン酸を提供する。このヒアルロン酸は少なくとも3又は3.5MDaの平均分子量を有し得る。このヒアルロン酸は実質的に架橋されていなくてもよい。
【0024】
第14の態様では、本発明はヒアルロン酸を合成する酵素を含有しているレンサ球菌細胞を提供し、この細胞はホスホグルコイソメラーゼ、D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ、グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、及びホスホアセチルグルコサミンムターゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素を過剰に発現するように遺伝子的に改変されている。
【0025】
第15の態様では、本発明はヒアルロン酸を合成する酵素を含有しているレンサ球菌細胞を提供し、この細胞はUDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ及びウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素をより少なく発現する、又は発現しない又は下方調節された活性で発現するように遺伝子的に改変されている。
【0026】
第16の態様では、本発明は、本発明のヒアルロン酸及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有している医薬組成物を提供する。
【0027】
第17の態様では、本発明は、本発明のヒアルロン酸及び美容上許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有している化粧品組成物を提供する。
【0028】
第17の態様では、本発明は、本発明のヒアルロン酸を含有している食品若しくは食品添加物を提供する。
【0029】
(定義)
別に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術及び科学用語は、当業者(例えば、細胞生物学、化学、分子生物学及び細胞培養における)によって普通に理解されているようなものと同じ意味を有している。分子及び生化学的方法で用いられている標準的な技術は、Sambrook et al., Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 3rd ed. (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. 及び Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc. -及び Current Protocols in Molecular Biology と言う標題の完全版に見出すことができる。
【0030】
本明細書を通して用語「含有する(comprise)」、又は「含有する(comprises)」又は「含有している(comprising)」のような変形は、規定される成分、整数又は手順、若しくは成分、整数又は手順の群の包含を暗示しているが、その他の成分、整数又は手順、若しくは成分、整数又は手順の群を除外していないと理解すべきである。
【0031】
本明細書を通して、別に定義しない限り、数値への言及は、「約」その数値、を意味すると取るべきである。用語「約」は、値は値を測定するために用いられる装置及び方法に対する誤差の固有のばらつき、又は研究課題に存在するばらつきを含んでいることを示すために用いられる。
【0032】
本明細書中での先行技術への言及は、先行技術がオーストラリアにおいて周知の一般知識の一部を形成しているという認識又は何らかの示唆ではなく、そしてそのように取ってはならない。
本発明をこれから、例示のみを目的として、以下の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、ヒアルロン酸の生産をもたらす生合成経路の概要フローチャートを示す。
【図2】図2は、UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(EC2.5.1.7)(UPD−NAG−CVT)の位置を示しているS.ズーエピデミカス(S. zooepidemicus)(ATCC35246)の2Dゲルを示す。ヒアルロニダーゼを用いてタンパク質を採取してHA皮膜を除去した。pH勾配(4〜7)及び24cmの12%ポリアクリルアミドゲルを用いてタンパク質を分離した。タンパク質をcy3で標識化して、タイフーンスキャナー(typhoon scanner)を用いて可視化した。LC/MS/MS及びMALDI/TOF/TOFを用いてタンパク質のスポットを確認した。
【図3A】図3は、嫌気性条件下における野生型S.ズーエピデミカス(ATCC35246)について(図A)及びglmU及びpgiをコードするpNZプラスミドを保有しているS.ズーエピデミカスについて(図B)のフェドバッチ培養におけるHAの産生の定常期を示す。標準培養物はグルコースを消費するまで発酵し更に30分放置して必須アミン酸を枯渇した。グルコースの摂取によって、HA産生が再開されてバイオマスがコンスタントに残存した。
【図3B】図3は、嫌気性条件下における野生型S.ズーエピデミカス(ATCC35246)について(図A)及びglmU及びpgiをコードするpNZプラスミドを保有しているS.ズーエピデミカスについて(図B)のフェドバッチ培養におけるHAの産生の定常期を示す。標準培養物はグルコースを消費するまで発酵し更に30分放置して必須アミン酸を枯渇した。グルコースの摂取によって、HA産生が再開されてバイオマスがコンスタントに残存した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者らは、自然に高収率でHAを産生するレンサ球菌においてHA前駆体の生合成に関わる過剰発現酵素の効果を検討した。増強された発現はHAの収率に対して限られた効果を有しているのに対して、驚くことに、HA前駆体の生合成に関わる特定酵素の増強された発現が産生されるHAの分子量の増大をもたらすということを本発明者らは見出した。
【0035】
UDP−NAG経路に関わる酵素(例えば、ホスホグルコイソメラーゼ、D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ及びN−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ)の増強されたレベルを発現するように改変された細胞は、野生型の細胞及びHAシンターゼ又はUDP−GUA経路に関わる酵素(例えば、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼ及びUDP−グルコースピロホスホリラーゼ)を過剰発現するように改変された細胞に比べて、有意に高分子量であるHAを産生した。
【0036】
本発明は更に、高いレベルのUDP−NAGを伴う細胞が分子量が増加したHAを産生することを確認した。このことは、野生型細胞及びUDP−GUA経路中の遺伝子を発現する細胞に比べて、UDP−NAG経路中の遺伝子を過剰に発現する細胞についても言える。このことは、高レベルのGlmU(グルコサミン−1−リン酸アセチルトラスフェラーゼ/N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ)をそして、ペプチドグリカン生合成におけるUDP−NAG依存第1段階を触媒する酵素である、UDP−NAG−CVTの低レベルを発現することが見出されている、空プラスミドコントロールを保有している細胞についても言える。
【0037】
従って本発明者らは、HAの分子量は、UDP−NAGの供給を増大することによって大きくでき、これはUDP−NAGを産生する酵素の活性を増大することにより、細胞がUDP−NAGへ変換する基質で培地を補完することにより、そして/又はUDP−NAGに対してHAシンターゼと競合する酵素の活性を減少することによって達成できるとういう結論に達した。
【0038】
(酵素の発現又は活性を増大する方法及び細胞)
本発明は部分的に、レンサ球菌種におけるヒアルロン酸産生の経路において多数の酵素の増大した発現/活性は、細胞によって産生された得られるヒアルロン酸の分子量(MW)の増大をもたらすという知見に基づいている。HAのMWの増大をもたらすとして確認された特定の酵素は、ホスホグルコイソメラーゼ(HasE,Pgi−EC5.3.1.9)、D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GlmS−EC2.6.1.16)及びグルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ/N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ(HasD,GlmU−EC2.3.1.4及び2.7.7.23)である。
【0039】
従って、本発明の方法では、レンサ球菌の細胞がホスホグルコイソメラーゼ、D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ、グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、及びホスホアセチルグルコサミンムターゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性/発現を増大させている可能性がある。
【0040】
ある態様では、レンサ球菌細胞は、異種遺伝子、例えば、グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ又はホスホアセチルグルコサミンムターゼをコードする真核生物遺伝子を過剰発現するように遺伝子的に改変されている。
【0041】
細胞が少なくともホスホグルコイメラーゼの活性/発現を増大していることが好ましい。
【0042】
一態様では、細胞はHAシンターゼ(HasA)の野生型のレベル及び活性を有している。
【0043】
増大した発現/活性は、遺伝子的に改変されていない、そして標準的な条件下(富栄養培地(M17G)又は2%w/vのグルコースを補完した既知組成培地(CDM)中、37℃でのような)で生育した対応する野生型の株と比較して測定することができる。例えば、ムコイドC群ストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカスの場合、適切な対照株はATCC35246である。
【0044】
一態様では、酵素の活性増大は、酵素の発現を指示する1つ又はそれ以上の核酸配列を導入することによって遺伝子的に改変された細胞によって達成される。このような配列は、エレクトロポレーションを用いて細胞にプラスミドDNAを導入した後、選択培地上で形質転換細胞を選択するような、当業者に公知の各種の技術によって導入することができる。これらの異種核酸配列は、染色体外に保持することができ、若しくは相同的組み換えによって宿主細胞のゲノムに導入することができる。
【0045】
従って、本発明は、ヒアルロン酸の合成用の酵素を含有しているレンサ球菌細胞で、その細胞がホスホグリコイソメラーゼ、D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ、ホスホグルコサミンムターゼ、グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ、グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ、及びホスホアセチルグルコサミンムターゼから選ばれる1つ又はそれ以上の酵素を過剰発現するように遺伝子的に改変されている、レンサ球菌細胞を提供する。
特定の態様では、細胞は、1つ又はそれ以上の酵素をコードする1つ又はそれ以上の異種核酸配列を含有している。
別の態様では、細胞は、1つ又はそれ以上の酵素をコードするゲノム調節配列に1つ又はそれ以上の突然変異を含有していて、その突然変異は野生型細胞と比較して、1つ又はそれ以上の酵素の発現レベルの増大をもたらす。
更なる態様では、細胞は、1つ又はそれ以上の酵素のコード配列中に、増大した酵素活性をもたらす1つ又はそれ以上の突然変異を含有していてもよい。
これらの態様の組合わせも可能である。
【0046】
上記の方法及び細胞に関連して、細胞がホスホグルコイソメラーゼ及び/又はグルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ/N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼの増大した活性/発現をもたらすことが特に好ましい。
【0047】
目的の酵素をコードしていて、適当なレンサ球菌宿主細胞において酵素の発現を指示することができる調節配列に操作可能に結合している、核酸配列は、多くの供給源から誘導することができる。現在まで4つのレンサ球菌の種からHASオペロンがクローン化されている。hasD/glmUの配列がS.エクイシミラス(S. equisimilus)及びS.エクイ亜種ズーエピデミカスに対してクローン化されている。配列は別の種からも得ることができ、例えば、枯草菌(B.subtillis)はtuaDと称するhasBのホモログを有している。HasD/glmUは多数の細菌種、例えば、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)(受入れ番号 No.YP_001129027);大腸菌(受入れ番号 No.ABG719000及びP0ACC7)及び枯草菌(受入れ番号 No.P14192)に対してクローン化されている。化膿レンサ球菌、大腸菌及び枯草菌の完全ゲノムは配列が決定されて公表されている。
【0048】
さらなる実例として、S.ズーエピデミカスのゲノムDNA由来のhasD(glmU)、hasE(pgi)及びglmMの配列を増幅するための適切なオリゴヌクレチドプライマーが、以下の実施例の欄に記載されている。
【0049】
ある態様では、目的の1つ又はそれ以上の酵素をコードする核酸配列が、培養培地に誘導分子を添加することによって、酵素の発現を所望通りに上方調節するよう誘導可能である調節配列に操作可能に連結されている。
【0050】
別のアプローチは、目的の酵素をコードする異種配列の発現を制御する宿主細胞の調節配列を、相同的組み換えによって、例えばプロモーター配列で改変することである。
【0051】
更なるアプローチは、異種配列の増幅が生じ、目的の酵素をコードする異種DNAの複写数の増大をもたらし、酵素の発現及び活性の増大を引き起こすように細胞を処理することである。
【0052】
細胞に多数の突然変異を誘発して、当該技術分野で公知の酵素分析、例えば実施例の欄に記載されている例を用いて酵素活性の増大を試験することが可能である。部位特異的突然変異誘発法を用い、コード配列を改変して酵素活性を増大することも可能である。
【0053】
目的の酵素の活性を化学処理によって上方調節することもできる。例えば、1つ又はそれ以上の目的酵素の発現を上方調節する分子、例えば転写調節タンパク質に結合して、転写調節タンパク質の目的酵素の発現を調節する調節配列との結合を改変する化合物。適切な化合物を、例えば化合物ライブラリーをスクリーニングして、上記のような酵素活性の増大について試験することによって、同定することができる。
【0054】
本発明の、そして本発明の方法で用いられるレンサ球菌細胞は、ストレプトコッカス エクイ(例えば、ストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカス又はストレプトコッカス・エクイ亜種エクイ)のような、ランスフィールド分類のA群又はC群レンサ球菌が好ましい。これらの細菌は天然に細胞外皮膜としてHAを産生する。
【0055】
(基質のレベルを増大する方法及び細胞)
本発明は、HAの生合成に関わる特定の基質のレンサ球菌中の増強されたレベルが産生されたHAの分子量の増大をもたらすという予期せぬ知見にも基づいている。そのような特定の基質の1つはUDP−N−アセチルグルコサミンである。グルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンのような特定の基質の増強されたレベル、そしてそれによる産生されたHAの分子量の増大を様々の方法で達成することができるということが更に確認されている。これらの方法は、これに限定されないが、特定の基質又は基質前駆物質の追加量の供給を包含する。これは、例えば、特定の基質又は基質前駆物質の内因性産生を増大することによって、又は特定の基質又は基質前駆物質の生物学的利用能を外因的に増大することによって達成することができる。グルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンのような特定の基質のレベルを増強して、それによって産生されたHAの分子量を増大するその他の方法は、これに限定されないが、これらの基質又は基質前駆物質を、UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(UDP−NAG−CVT)のような、異なった生合成経路に動員させる酵素の活性又は量を下方調節又は抑制することを包含する。
【0056】
一態様では、本発明は、UDP−NAGの基質前駆物質を供給してHAを産生する方法を包含している。これらの前駆物質は、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンを包含してもよい。加えて、このような方法は、グルタミン、アセチルCoA及びUTPを含む代謝産物の供給を更に包含している。
【0057】
グルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンのような特定の基質又は基質前駆物質の内因性産生を増大する方法は、当該基質又はその前駆物質を産生する酵素をコードする発現ベクターでHA−産生レンサ球菌細胞を形質転換、トランスフェクト又は形質導入することを包含する。発現ベクターの導入は、エレクトロポレーション、次いで選択培地上で形質転換細胞を選択することによって達成できる。そのようにして細胞に導入された異種核酸配列は、染色体外に保持されるか、或は相同的組み替えによって宿主細胞のゲノムに導入することができる。このような細菌細胞を形質転換する方法は当業者に周知であって、ガイダンスを、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989 及び Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. and Wiley-Intersciences, 1992 から得ることができる。
【0058】
従って本発明は、方法が培養培地中でレンサ球菌細胞を生育すること(その細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現し、そこでその細胞は、細胞中にあるグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンから選ばれる1つ又はそれ以上の基質又はそれらの前駆物質の量を増大するように改変又は処理されている);及び任意に細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる、ヒアルロン酸を生産する方法を提供する。
本発明は、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌からヒアルロン酸を回収することを含有してなる、ヒアルロン酸を生産する方法も提供し、ここで細胞は細胞中にあるグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンから選ばれる1つ又はそれ以上の基質又はそれらの前駆物質の量を増大するように改変又は処理されている。好ましい態様では、基質がUDP−N−アセチルグルコサミンである。
【0059】
グルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンのような、特定の基質又は基質前駆物質の生物利用能を増大する方法は、HA産生レンサ球菌細胞をその基質又は基質前駆物質と共に培養することを包含する。
【0060】
従って、本発明は、方法が培養培地中でレンサ球菌細胞を生育すること(その細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現する);及びグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンから選ばれる1つ又はそれ以上の基質又はそれらの前駆物質を供給すること;及び任意に細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる、ヒアルロン酸を生産する方法を提供する。
本発明は、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収することを含有してなる、ヒアルロン酸を生産する方法も提供し、ここではグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンから選ばれる1つ又はそれ以上の基質又はそれらの前駆物質が供給されている。好ましい態様では、基質がグルコサミンである。
【0061】
従って本発明は、ヒアルロン酸を合成する酵素を含有してなるレンサ球菌細胞で、その細胞がグルコサミン、N−アセチルグルコサミン及びUDP−N−アセチルグルコサミンから選ばれる1つ又はそれ以上の基質又はそれらの前駆物質を産生する酵素を過剰発現するように遺伝子改変されている、レンサ球菌細胞を提供する。
ある態様では、過剰発現は、HA産生レンサ球菌細胞を、基質又はその前駆物質或は当該基質又は前駆物質を産生する酵素をコードする発現ベクターで形質転換、トランスフェクト又は形質導入することによって達成できる。発現ベクターの導入は、エレクトロポレーション、次いで選択培地上で形質転換細胞を選択することによって達成できる。そのようにして細胞に導入された異種核酸配列は、染色体外に保持されるか、或は相同的組み替えによって宿主細胞のゲノムに導入することができる。ある好ましい態様では、細胞がUDP−N−アセチルグルコサミンを過剰発現する。
【0062】
HA産生で用いられる特定の基質又は基質前駆物質の生物利用能を最大化する更なる方法は、基質を代替え生合成に動員させる酵素に対して競合的親和性を有する代替え基質を供給することを包含する。例えば、UDP−NAG−CVTに対して競合的親和性を有しているUDP−N−アセチルグルコサミンの代替え基質の供給は、UDP−N−アセチルグルコサミンではない、ペプチドグリカン生合成に用いるためのUDP-NAG-CVTによる基質の動員をもたらし、それにより、HA産生に用いることのできるUDP−N−アセチルグルコサミンのレベルの増強が可能になる。
【0063】
(酵素の発現又は活性を減少する方法又は細胞)
UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(UDP−NAG−CVT)(murA)又はMurGトランスフェラーゼ(murG)(ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ)のような、細胞中の酵素の活性又は量を下方調節又は抑制する方法は、酵素をコードする遺伝子を、例えば、挿入又は欠失による破壊によって、又は遺伝子の転写に関わる遺伝子又は補助因子の何れか一方を標的とする定方向の又はランダムな他の何らかの形式の突然変異誘発によって、遺伝子を「ノックアウト」することにより遺伝子の転写を減少又は抑制するように、破壊することを包含する。
これに関しては、UDP−NAG−CVTは一般に、それぞれが別の遺伝子に由来する2つのアイソフォームにあるHA−産生レンサ球菌に存在していることに留意することが重要である。
従って、UDP−NAG−CVTをコードする1つの遺伝子は、レンサ球菌細胞の生存能力を損なうことなく、下方調節又は抑制できる。細胞中の酵素の活性又は量を下方調節又は抑制する別の方法は、遺伝子から転写されたmRNAの翻訳を、例えば、アンチセンスmRNA又はsiRNAのような干渉RNAを用いることによって、中断させることを包含する。細胞中の酵素の活性又は量を下方調節又は抑制する更なる方法は、小分子又は抗体のようなアンタゴニストを用いて酵素を標的にすることを包含する。
このように下方調節又は抑制する方法は当業者に周知であって、本明細書の他の部分に開示されているような標準的なテキストからガイダンスを得ることができる。
【0064】
従って本発明は、その方法が培養培地中で、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現する、レンサ球菌細胞を生育すること(ここで、UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(UDP−NAG−CVT)(murA)又はMurGトランスフェラーゼ(murG)(ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ)から選ばれる細胞中の1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又は抑制されている);及び任意に細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる、ヒアルロン酸を生産する方法を提供する。
本発明は、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌からヒアルロン酸を回収することを含有してなるヒアルロン酸を生産する方法も提供し、ここで、UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(UDP−NAG−CVT)(murA)又はMurGトランスフェラーゼ(murG)(ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ)から選ばれる細胞中の1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又は抑制されている。
本発明は、その方法が培養培地中で、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現する、レンサ球菌細胞を生育すること(ここで、細胞は、UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(UDP−NAG−CVT)(murA)又はMurGトランスフェラーゼ(murG)(ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ)から選ばれる細胞中の1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又は抑制するように改変又は処理されている);及び任意に細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを含有してなる、ヒアルロン酸を生産する方法を更に提供する。
本発明はその上に、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌からヒアルロン酸を回収することを含有してなるヒアルロン酸を生産する方法を提供し、ここで、細胞は、UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(UDP−NAG−CVT)(murA)又はMurGトランスフェラーゼ(murG)(ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ)から選ばれる細胞中の1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又は抑制するように改変又は処理されている。
【0065】
酵素の減少又は抑制された活性又は量は、遺伝子的に改変されていない、そして標準的な条件下(例えば、富栄養培地(M17G)又は2%w/vのグルコースを補完した既知組成培地(CDM)中、37℃でのような)で生育させた対応する野生株と比較して測定することができる。例えば、ムコイドC群ストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカスの場合、適切な対照株はATCC35246である。
【0066】
本発明の、そして本発明の方法で用いられるレンサ球菌細胞は、ストレプトコッカス エクイ(例えば、ストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカス又はストレプトコッカス・エクイ亜種エクイ)のような、ランスフィールド分類のA群又はC群レンサ球菌が好ましい。これらの細菌は天然に細胞外皮膜としてHAを産生する。
【0067】
本発明は更にヒアルロン酸の合成のための酵素を含有するレンサ球菌細胞を提供し、この細胞はUDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(UDP−NAG−CVT)(murA)又はMurGトランスフェラーゼ(murG)(ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ)から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素を低発現するか又は発現しないか或は下方調節された活性で発現するように遺伝子改変されている。
ある態様では、細胞は1つ又はそれ以上の酵素をコードするゲノム調節配列中に1つ又はそれ以上の突然変異を含有していて、その突然変異は、野生型の細胞と比較すると、1つ又はそれ以上の酵素の発現の下方調節又は抑制をもたらす。
別の態様では、細胞は1つ又はそれ以上の酵素のコード配列中に1つ又はそれ以上の突然変異を含有していてもよく、この突然変異は、野生型の細胞と比較すると、1つ又はそれ以上の酵素の発現の下方調節又は抑制をもたらす。
ある好ましい態様では、この酵素がUDP−NAG−CVTである。
別の好ましい態様では、細胞はUDP−NAG−CVTをコードする1つ以上の遺伝子を含有していてもよく、それによりUDP−NAG−CVTをコードする1つの遺伝子は細胞の生存能力を損なうことなく、下方調節又は抑制される。このような下方調節又は抑制は本明細書に記載されている何れかの方法によって達成することができる。
別の態様では、細胞中の酵素の活性又は量の下方調節又は抑制は、酵素をコードする遺伝子から転写されたmRNAの翻訳を、例えば、酵素に向けられる抗体、又はアンチセンスmRNA又はsiRNAのような干渉RNAを用いて中断させることによって達成される。このような抗体又はmRNAを、当業者に公知の方法によって、発現ベクター中で、細胞に導入することができる。
ある態様では、細胞は野生型のHAシンターゼ(HasA)のレベル及び活性を有している。
【0068】
目的の酵素の活性を化学処理を用いて下方調節することもできる。例えば目的の1つ又はそれ以上の酵素の発現を下方調節する分子、例えば、転写調節タンパク質に結合して、転写調節タンパク質の目的の酵素の発現を調節する調節配列との結合を改変する化合物で。適切な化合物は、例えば、化合物ライブラリーをスクリーニングして酵素活性の減少を試験することによって同定することができる。
【0069】
(細胞培養及びヒアルロン酸の産生)
本発明は、本発明の方法によって得られるか又は得られうるヒアルロン酸を提供する。HAは、上記のような適当なレンサ球菌を、適切な条件下で、培養することによる、本発明の方法に従って生産することができる。例えば、連続発酵又はバッチフェド培養法を用いることができる。HAを産生するために用いることができる条件の例は国際出願公開第WO92/08777号公報に記載されていて、これは6.0〜7.0のpH及び1%飽和以下の溶解酸素を用いる連続発酵方法を記載している。この全内容は参照として本明細書に組み込まれている。この全内容も参照として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,537,795号は、バッチフェド培養法を記載している。細胞の培養に適している既知組成培地は、本明細書の実施例に記載されている。細胞は通常、約35℃〜約40℃の範囲内、より好ましくは約37℃の温度で培養する。
【0070】
バッチにおいて又は連続培養における適切な間隔でHAの産生が所望のレベルに達したら、その後にHAを細胞から回収することができる。細菌からHAを精製する多くの方法が当該技術分野で知られている。一般に、HAを1つ又はそれ以上の精製工程に付して、そこで特に医薬品グレードのHAが生産される。米国特許第4,782,046号に基づいている、以下の記載は例示である。
【0071】
一般に、バイオマスを、ホルムアルデヒドのような適当な試薬で処理して、HAをラウリル硫酸ナトリウム(SLS)又はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のような、陰イオン界面活性剤、又は同等の陰イオン洗浄剤で抽出して、HAを細胞から放出する。
【0072】
次いで、得られる混合物を、例えば0.45μmの混合セルロースエステルフィルターを通して、単純ろ過してもよい。代替え手段は、混合物を、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドのような、非イオン洗浄剤又は同等の非イオン洗浄剤で処理してHAと陰イオン洗浄剤を沈殿させることである。得られる沈殿物を遠心分離又は篩いろ過によって採集することができる。次いで沈殿物をCaCl中に可溶化する。得られる懸濁液を遠心分離又は篩いろ過して細胞混入物質及び両方の洗浄剤を含有している沈殿物を除去する。
【0073】
次いで、何れかの方法から得られるろ液/上澄液を適当なアルコール(95%のEtOH又は99%のイソプロパノールが好ましい)で抽出する。ゼラチン状の沈殿物が形成され、これを遠心分離又は篩いろ過で採取する。ペレットを通常は、例えばエタノール/食塩溶液で洗浄する。
【0074】
米国特許第4,782,046号に記載のような、用いることができる更なる精製工程は以下の通りである。沈殿物を脱イオンした蒸留水に4〜10℃で1晩かけて可溶化する。懸濁液を遠心分離又は篩いろ過して、沈殿物を除去する。上澄液に1%w/vのNaClを添加して、溶解する。次いで、適当なアルコールを添加してHAを沈殿させる。この沈殿物を沈静化させて、その後遠心分離又は篩いろ過によってこれを採取することができる。
【0075】
水にHAを溶解した後1.0%のNaClを添加して、アルコールで沈殿させることを、HA−水溶液か透明になるまで、徐々に容量を減らして(元の容量の1/20〜1/100)繰り返してもよい。これは少なくとも4回の追加アルコール沈殿工程を必要とするかもしれない。
【0076】
得られるHAを、例えば0.1%のベータプロピオラクトン(4℃〜10℃で24〜48時間)を用いて殺菌できる−次いで37℃に加熱して、ベータプロピオラクトンを加水分解する。
【0077】
別の殺菌方法は、例えば、一般に約0.45μmの孔経を有する、混合セルロースエステルフィルターのような、適当なタンパク質結合フィルターを用いるろ過を包含する。
【0078】
得られる本発明の細菌性HAは、3MDaより大きい、好ましくは3.5MDaより大きい分子量(クロスリンキングせずに)を有していることが好ましい。
【0079】
(組成物及び処置方法)
本発明のHAは、美容及び再生手術において;皮膚の老化防止において;皺取り製品;滑液を含む代替体液(例えば、変形性関節症の治療用注射組成物として)に;火傷及び潰瘍の局所治療として;水晶体摘出、眼内レンズ移植、角膜移植、緑内障ろ過、及び網膜付着手術(例えば、点眼液又はゲルの形成において)における手術補助として;手術、例えば心臓手術、ヘルニアの修復、鼻腔/副鼻腔の修復、関節鏡視下手術及び脊髄手術における接着管理として;等のような、多くの適用において用いることができる。HAは特定食品にも用いることができる。
【0080】
従って本発明はまた、本発明の方法によって得られた若しくは得られ得るHAを、美容的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に含有している化粧用組成物を、更に本発明の方法によって得られた若しくは得られ得るHAを、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に含有している医薬組成物も含有している。更に、本発明は本発明のヒアルロン酸を含有している食品又は食品添加物を提供する。
【0081】
本発明の組成物は治療的に又は美容的に投与できる。治療適用においては、既に疾患を患っている対象に、対象が治癒するか或は疾患又は合併症を少なくとも部分的に抑えるのに十分な量で、組成物を投与する。組成物の量は患者を有効に治療するのに十分でなければならない。組成物は、当業者に公知の方法に従って調製することができて、美容的又は薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有できる。投与可能な組成物を調製する方法は当業者に明らかであって、例えば、本明細書に参照として取り込まれている、Remington's Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. に詳細に記載されている。
【0082】
本発明の組成物は局所製剤及び/又は他の治療成分を含んでいてもよい。局所投与に適している製剤は、塗布剤、ローション、クリーム、軟膏又はペーストのような、治療が必要な部位への皮膚を介する浸透に適している液体又は半流動体製剤、及び眼、耳又は鼻に投与するのに適している点滴薬を包含する。
【0083】
本発明の点滴薬は、無菌の水性又は油性溶液又は懸濁液を含んでいてよい。これらは、ヒアルロン酸を、抗菌及び/又は抗真菌剤及び/又はその他の適切な保存剤の水溶液中に溶解して、任意に界面活性剤を含有させることによって調製できる。次いで、得られる溶液をろ過して清澄にし、適当な容器に移して殺菌する。殺菌は加圧滅菌又は90℃〜100℃に30分間保持することによって、又はろ過した後に殺菌技術を用いて容器に移すことによって実施できる。点滴薬に加えるのに適している抗菌又は抗真菌剤の例は、硝酸又は酢酸フェニル水銀(0,002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)及び酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。油性溶液の製剤用の適切な溶媒は、グリセロール、希釈アルコール及びプロピレングリコールを包含する。
【0084】
本発明によるローションは、皮膚への適用に適しているものを包含する。皮膚に適用するローション又は塗布剤は、アルコール又はアセトンのような、速乾剤及び皮膚冷却剤、及び/又はグリセロール又はひまし油若しくははラッカセイ油等の油のような保湿剤も含んでいてよい。
【0085】
本発明によるクリーム、軟膏又はペーストは、外用のためのヒアルロン酸の半流動体製剤である。これらは、微粉化又は粉末形態のヒアルロン酸を、単独で又は水性又は非水性溶液又は懸濁液中で、脂肪性基剤又は非脂肪性基剤と混合することによって作ることができる。基剤は、固形、軟又は流動パラフィンのような炭化水素、グリセロール、密ろう、金属石けん、ゴム糊、アーモンド、コーン、ラッカセイ、ヒマシ又はオリーブ油のような天然由来の油、羊毛脂若しくはその誘導体、又はプロピレングリコール若しくはマクロゴールのようなアルコールと一緒のステアリン酸若しくはオレイン酸のような脂肪酸を含んでいてよい。
【0086】
組成物は、ソルビタンエステル又はそれらのポリオキシエチレン誘導体のような、陰イオン性、陽イオン性若しくは非イオン性界面活性剤のような適切な界面活性剤の何れかを包含することができる。天然のゴム、セルロース誘導体、又はケイ素シリカのような無機物質、及びラノリンのようなその他の成分を包含してもよい。
【0087】
組成物はリポソームの形態で投与することもできる。リポソームはリン脂質又はその他の脂質物質から得られ、水性媒体中に分散されている単層又は複層の水和液晶によって形成できる。リポソームを形成できる非毒性で、生理学的に許容され、そして代謝可能な脂質を使用できる。リポソーム形態にある組成物は、安定化剤、保存剤及び賦形剤を含有することができる。好ましい脂質は、天然及び合成の両方の、リン脂質及びホスファチジルコリン(レクチン)を包含する。リポソームを生産する方法は当該技術分野で公知であって、これに関して具体的にPrescott, Ed., Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y. (1976), p. 33 以下を参照されたい。この内容は参照して本明細書に取り込まれている。
【0088】
(用量)
何れかの特定の患者に対する治療又は美容に有効な用量は、治療される疾患及び疾患の重症度、使用される化合物又は薬剤の活性、用いる組成物、患者の年齢、体重、健康状態、性別及び食習慣、投与期間、投与経路、ヒアルロン酸の分画速度、治療期間、及び治療と組み合わせて又は同時に用いられる何れかの薬剤を包含する、多数の因子に、当該技術分野で周知のその他の関連する因子を伴って決定されるであろう。従って、当業者は、通常の実験によって、適用可能な疾患を治療するのに必要なヒアルロン酸の有効で、非毒性の量を決定することができるだろう。
【0089】
一般に、治療又は美容の適用においては、病態継続期間に治療を行う。
【0090】
更に、組成物の個々の用量の最適な分量及び間隔は、治療される疾患の種類及び程度、投与の形態、経路及び部位、及び治療される特定の個人の性質によって決定されるということは、当業者に理解できるであろう。また、このような最適な状態は従来の技術によって決定できる。
【0091】
規定日数について1日に与える組成物の投与回数のような、最適な治療コースは、従来の治療コース決定検査を用いて当業者が確定することができる。
【0092】
(投与経路)
本発明の組成物は、当業者が周知の標準的な経路によって投与できる。組成物は骨膜関節又は炎症の部位に直接注射することもできる。
【0093】
(担体、賦形剤及び希釈剤)
担体、賦形剤及び希釈剤は、組成物の別の成分と適合して、その服用者に有害ではないという観点から、「許容される」ものでなければならない。このような担体、賦形剤及び希釈剤は本発明の組成物の品質及び半減期を向上させるために用いることができる。これらは本発明の組成物の生物活性を増大又は保護するためにも用いることができる。
【0094】
薬学的に及び/又は美容上許容される担体又は希釈剤の例は、脱塩水又は蒸留水;食塩液;ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ごま油、ラッカセイ油又はヤシ油のような植物油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン及びメチルフェニルポリソルポキサン(polysolpoxane)のような、ポリシロキサンを含む、シリコン油;揮発性シリコン;流動パラフィン、軟パラフィン又はスクアランのような鉱物油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのような、セルロース誘導体;低級アルカノール、例えばエタノール又はイソプロパノール;低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコール又は低級アルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール又はグリセロール;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル又はオレイン酸エチルのような脂肪酸エステル;ポリビニルピロリドン;寒天;トラガカントゴム又はアカシアゴム;及びワセリンである。一般に、担体(複数を含む)は組成物の10〜99.9重量%を形成するであろう。
【0095】
本発明の組成物は、注射による投与に適している形態、経口摂取に適している製剤(例えば、カプセル、錠剤、カプレット、エリキシルのような)の形態、局所投与に適している軟膏、クリーム又はローションの形態、経鼻吸入又は経口吸入によるような吸入による投与に適しているエアゾール形態、非経口投与、即ち皮下、皮内又は静脈内注射に適している形態であってよい。
【0096】
注射用溶液又は懸濁液として投与するための、非毒性で許容される希釈剤又は担体としては、リンゲル溶液、等張食塩液、リン酸緩衝食塩液、エタノール及び1,2−プロピレングリコールを含むことができる。
【0097】
本発明を、説明するのみであって限定するものではない、以下の実施例を参照して、ここで更に記述する。
【実施例】
【0098】
実施例1.材料及び方法
1.1 細菌株
ムコイドC群の ストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカス株(Streptococcus equi subsp. zooepidemicus strain )ATCC 35246 (S. ズーエピデミカス(zooepidemicus)) を American Type Culture Collection (PO Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America) から入手した。
【0099】
1.2 組み換え株の構築
6つの遺伝子、すなわちhasA、hasB、hasC、glmU、pgi及びglmSを、表1に記載するプライマーを用いて S. ズーエピデミカスゲノムDNAから増幅した。オリゴヌクレオチドプライマーを、NCBI(ncbi. nlm. gov;受入れ番号AF347022)及びSanger Institute S. zooepidemicus Blast Server 上で入手できる ストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカス(S. ズーエピデミカス)hasオペロンの部分配列から入手できるデータに基づいてデザインした。プライマーGuaBは S.ズーエピデミカスのハウスキーピング遺伝子を前方向及び逆方向に増幅して、S.ズーエピデミカスについてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の陽性コントロールとして用いた。PCR産物のサイズを QIAquick Gel Extraction kit (Quiagen) を用いて抽出したアガロースゲル及びバンドで確認した。精製したPCR産物を所望の制限酵素で二重消化して(表1を参照されたい)、ナイシン誘引プラスミドpNZ8148(Kuipers, O.P., et al. (1998) "Quorum sensing-controlled gene expression in lactic acid bacteria." J. Biotech. 64(1):15-21)中にライゲーションした。ライゲーション混合物を、エレクトロコンピテント(electrocompetent)乳酸レンサ球菌 ( Lactococcus lactis )MG1363を形質転換するために用いて、5μgCm/mlを含有するM17G寒天プレート上で1晩培養した後、形質転換体を同定した。コロニーを1晩培養して組み換えプラスミドを QIAprep Spin Miniprep kit (Quiagen) を用いてペレットから精製した。挿入部位及び配列をDNAシーケンシングによって確認した。このプラスミドを エレクトロコンピテント S. ズーエピデミカス細胞を形質転換するために用いて、2.5μg/mlのCmを含有するM17G寒天プレート上で1晩培養した後、組み換え株を単離した。この組み換え株を2.5μg/mlのCmを含有する羊血液寒天プレート上で常時保管した。
【0100】
【表1】

【0101】
1.3 生育培地及び培養条件
血液寒天プレートから単一コロニーを選択して既知組成培地(CDM:表2)中に1晩接種した。pNZ株に対しては、2.5μg/mlのCm及び20ng/mlのナイシンを培地に添加した。生育を、分光光度計を用いて530nmで監視した。
【0102】
第1回目のOD530に達したときに、培養物を、2Lのバイオリアクター(Applikon)中の0.05のD530に接種した。バイオリアクターを可動用量1.4Lで、そして温度を37℃に保持して操作した。リアクターを300rpmで撹拌して、発酵中は窒素を拡散して嫌気性条件を保持した。5MのNaOH及び5MのHClを添加してpHを6.7に調節した。
【0103】
好気性培養も、可動用量を1.4Lから1Lにして泡が冷却器に入らないようにした以外は、上記のように行った。好気性条件を、発酵期間中ずっと0.4L/分の流速で定常的に底から空気を拡散することによって保持した。
【0104】
バッチ/フェドバッチ発酵のために、最初のバッチ相を上記のように実施した。培養が、グルコースの枯渇による定常期に到達したら、これを少なくと更に30分生育させて、必須アミノ酸(例えば、アルギニンデイミナーゼ経路を介するアルギニン)の完全な枯渇を確認した。定常期の1時間後に、図3A及び3Bに示されるように、追加のグルコースを培養物に添加した。この戦略により、必須アミノ酸の1つが枯渇するので、バイオマスが合成されずにHAを産生する定常期を実現した。
【0105】
表2に示したように、既知組成培地(CDM)は、Van de Rijn, I. et al. (1980). "Growth characteristics of group A streotococci in a new chemically defined medium". Infect. Immun. 27(2):444-448 を改変した。全ての化学物質は Sigma Aldrich から購入した。
【0106】
【表2−1】

【0107】
【表2−2】

【0108】
1.4 バイオマス及び発酵産物の測定
1時間毎にサンプルを採取して、光学密度を分光光度計を用いて波長530nmで測定して、方程式:バイオマス(g/L)=OD5300.26±0.01(Goh, L.-T. (1998). Fermentation studies of Hyaluronic acid production by Streptococcus zooepidemicus. Department of Chemical Engineering. Brisbane Australia):を用いてバイオマスに変換した。残ったサンプルを等量のSDSと混合してHA皮膜を破壊して、細胞を除去するためにシリンジフィルター(0.45μm)でろ過した。
【0109】
BioRad HPX−87Hアシッドカラムを用い、1MのHSOを溶出液とし、1分当たり1mLの流速で、HPLCにより乳酸、酢酸塩、ギ酸塩、グルコース及びエタノールを測定した。グルコース濃度が40ppm以下のサンプルをYSI 2700 Select Biochemistry Glucose Analyser(Yellow Springs Inc.)を用いて分析した。
【0110】
サンプルのHA濃度をHA比濁定量分析(Di Ferrante, N. (1956). "Turbidimetric measurement of acid mucopoly-saccharides and hyaluronidase activity." J. Bio. Chem. 220:303-306)を用いて測定した。すなわち、200μLのサンプルを0.5MのNaOH中で、 200μLの0.1M酢酸カリウム(pH=5.6)及び400μLの2.5%W/V臭化セチル−トリメチル−アンモニウム(CTAB)と混合した。20分間培養した後、OD600を測定して、HA濃度を較正曲線から決定した
【0111】
1.5 UDP糖類の測定
5mlの細胞懸濁液を遠心分離(50,000×g、2分、37℃)によってペレットにして、沸騰エタノールで抽出した。抽出液を、500mgのSAX樹脂カラム(6ml貯留、Isolute, International Sorbent Technology)を用いる固相抽出で、酢酸ナトリウムの代わりに2mLの0.15Mクエン酸ナトリウムを用いて代謝物をカラムから溶出する以外は、他の文献(Jensen, N.B.S., Jokumsen, K.V., Villadsen, J., Determination of the phosphorylated sugars of Embden-Meyerhoff-Parnas pathway in Lactococcus lactis using a fast sampling technique and solid phase extraction. Biotechnol. Bioeng. 1999, 63, 356-362)に記載のようにして処理した。
【0112】
サンプルを水で1:1(w/w)に希釈した後に、高圧アニオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)によるUDP−糖分析を行った。25μLの希釈したサンプルを、Amino Trapガードカラム(2mm×50mm)及びCarbo Pac PA 10分析カラム(2mm×250mm)(Dionex, Sunnyvale, USA)を装着したAAA Directシステム(Dionex, Sunnyvale, USA)に注入した。カラムの温度を30℃に保持して、流速を0.25ml/分に設定した。UDP−糖を、1mMのNaOH中で酢酸ナトリウム勾配で溶出して、金電極を用いるED40電気化学検出器(Dionex, Sunnyvale, USA)で検出した。
【0113】
1.6 酵素活性の分析
hasA活性を、既に記載されている方法(Tlapak-Simmons, V.L., Baggenstoss, B.A., Kumari, K., Heldermon, C., and Weigel, P.H. (1999). Kinetic Characterization of the Recombinant Hyaluronan Synthases from Streptococcus pyogenes and Streptococcus equisimilis. J Biological Chemistry 274, 4246-4253)に基づく手順を用い、得られた膜抽出物からHAのインビボ合成によって分析した。最初に、400μLの膜溶解液を、洗浄緩衝液(50mMのKHPO、5mMのEDTA、10%のグリセロール、プロテアーゼインヒビター混合物(GE healthcare)、pH7)に溶解した4mMのUDP−グルクロン酸の200μL、及び4mMのUDP−N−アセチルグルコサミン(洗浄緩衝液中)の400μLと混合した。次いで、100μLのHAS緩衝液(250mMのNaHPO、250mMのKHPO、500mMのNaCl、1mMのEGTA)、20μLの1M MgCl、20μLの20mM DTT、10μLのプロテアーゼインヒビター混合物(GE healthcare)及び50μLの洗浄緩衝液を反応物に添加した。酵素反応を水浴中で37℃に2時間保持し、次いで100℃の水浴中で2分間保持して反応を停止した(Tlapak-Simmons, et al. (1999) ibid)。室温まで冷却した後、1mLの0.1%SDSを加えて膜抽出液に付着しているHAを剥がして、HAを上記の比濁分析で測定した。
【0114】
既に記載されている方法に基づく手順を用いてその他の酵素活性を分析した:HasB(Dougherty, B. and van de Rijn, I. (1993). "Molecular characterization of hasB from an operon required for hyaluronic acid synthesis in group A streptococci. Demonstration of UDP-glucose dehydrogenase activity." J. Biol. Chem. 268(10): 7118-7124)、HasC(Franke, J. and Sussman, M. (1971). "Synthesis of Uridine Diphosphate Glucose Pyrophosphorylase during the Development of Dictyostelium discoideum." J. Biol. Chem. 246(21): 6381-6388)及びPgi(Bergmeyer, H.U., et al. (1974). Methods of Enzymatic Analysis (Bergmeyer, H.U., ed). New York, NY, Academic Press, Inc.)。
【0115】
GlmU活性は測定しなかったが、発現はリアルタイムPCRを用いて確認した。RNAをRNeasyミニキット(Quiagen)を用いて細胞抽出物から精製し、DNaseで処理して、プライマー:GlmUF(5’−GTCCATGGAAAGGAATCAAAACATGAAAAACTACG−3”)(配列番号7)及びGlmUR(5’−ATCTCTAGAACTATAGCTTACTGGGGGCTG−3’)(配列番号8):を用いて、SuperScript One−Step RT PCRキット(Gibco)でRT−PCRを行った。24サイクル後に、得られたglmU遺伝子の1396bpDNA断片をアガロースゲル上で、バンド強度に基づいて定量化した(Scion Image Beta 4.0.3)。
【0116】
1.7 分子量の測定
HAサンプルを、15mLの培養物を、室温で10分間培養した0.1%w/vのSDS(15mL)と混合して培養液から精製した(Chong, B.F. (2002). Improving the cellular economy of Streptococcus zooepideicus through metabolic engineering. Department of Chemical Engineering. Brisbane, The University of Queensland)。次いで、サンプルを0.45μmのフィルターでろ過し、ろ液を溶解し、3倍量のエタノールと混合して、1晩4℃に放置した。次いで、沈殿物を遠心分離(9630×g;4℃;20分)して、上澄液を除去した。ペレットを15mLのエタノール;食塩溶液(75%w/vエタノール、25%w/v0.15MのNaCl)中で洗浄して、再び遠心分離(17600×g;4℃;20分)した。上澄液を除去した後、ペレットを1晩乾燥する。最後に、HAペレットを0.15MのNaClにゆっくり揺すりながら再懸濁して、不溶物を遠心分離(17600×g;4℃;20分)で除去して、サンプルを0.45μmのフィルターでろ過した。
【0117】
Ubbelohde Dilution Capillary(直径0.63mm、5700mm容量)を用いてLauda Processor粘度測定システムで固有粘度を測定した。全ての測定は37℃で実施して、0.15Mの塩化ナトリウムを希釈溶媒として用いた。この固有粘度は、上記のように処理した公知分子量の標準値を用いて適合させたパラメータと共に、Mark−Houwink−Sakuradaの式:[η]=0.0292×Mw0.7848を用いて平均分子量を決定するために、使用した。
【0118】
1.8 プロテオミクス
指数関数的に増殖している細胞(OD530=2〜4)200mLを、20mgのヒアルロニダーゼを含有しているSchottボトル中に採取して、37℃で10分間培養した。細胞を20,000×g(20分、4℃、Avanti J26 XPI, Beckman Coulter)でペレットにして、30mlの溶解緩衝液(30mMトリス、7M尿素、2Mチオ尿素、4%CHAPS及びプロテアーゼインヒビターのカクテル)に再懸濁した。細胞を100μmのガラスビーズ1.44gを用いてビーズビーター上で溶解した。細胞を2−Dクリーンアップキットを用いて浄化して、2−D Quantキットを用い、製造会社(GE Healthcare)の手順書に従って、タンパク質濃度を測定した。CyDYEラベリングキットを用い、製造会社(GE-Healthcare)の手順書に従って、50μgのタンパク質を標識化した。
【0119】
IPGストリップ(GE Healthcare、24cm)を用いて等電点電気泳動を実施した。タンパク質を、能動的な再水和によって、Multiphore I ユニット(GE, Healthcare)上で分離した、等電点電気泳動の前12時間30V;1時間500V(Step and hold);1時間1000V(gradient);3時間8000V(gradient);12時間8000V(Step and hold)。平衡後、IPGストリップを、Ettan Dalt12電気泳動ユニット(GE Healthcare)上で2w/ゲルで30分及び18w/ゲルで6時間行う、ポリアクリルアミドゲルを用いて二次元SDS−PAGEに移した。ゲル画像を、Typhoonトリオ9100(GE Healthcare)を用い、製造会社の手順書に従って、100μmでスキャンした。タンパク質を、質量分析法(LC/MS及びMALDI TOF/TOF)を用いて同定した。
【0120】
1.9 質量分析
タンパク質スポットをゲルから切り取って、過剰のトリプシン(Promega, Trypsin Gold, MS grade)でゲル内分解した(37℃で1晩)。ペプチドをSpeediVac(SPD111V, Tthermo Savant)を用いて乾燥して、MS分析するために80μLの5%ギ酸に再溶解した。Agilent 1100 Binary HPLCシステム(Agilent)を、Vydac MSC18300A(粒子サイズ5μmのカラム(150mm×2mm))(Vydac) を用いるMSの前に、サンプルの逆相分離を実施するために用いた。RP−HPLCカラムからの溶出物をTurbolonSprayソースに直接導入した。
【0121】
質量分析実験は、ハイブリッド四重極/リニア イオントラップ4000QTRP MS/MSシステム(Applied Biosystems)上で実施した。TurbolonSprayソースを備えた4000QTRAPを陽性エレクトロスプレイイオン化モードで操作した。Analyst1.4.1ソフトウエアをデータ分析に用いた。データベース検索用の質量分析データを提供するために用いられる取得プロトコルは、以下の手順:Enhanced Multiple Scan(EMS)を用いるHPLC溶出物の質量プロファイリング:を含んでいた。+2〜+3の荷電状態又は未知の荷電を有する、これらの各スキャンにおける最も多いイオン及び次に多いイオンを回転衝突エネルギーを用いてCIDに付した。高産生イオンスキャンを断片イオンを並べて、続いて行うデータベース検索のための産生イオンスペクトルを示すために用いた。
【0122】
また、幾つかのサンプルを、4700プロテオミクスアナライザーMLDI−TOF/TOF(Applied Biosystems)を用いるMALDI−MSを用いて分析した。必要に応じて、サンプルを最初にミクロC18ZipTips(Millipore)を用いて脱塩して、ペプチドを60%ACN/0.1%ギ酸中の5mg/mLのCHCAを用いてMALDI標的プレート上に直接溶出した。全てのMSスペクトルを4800のレーザーエネルギーの正反射モードで記録した。TOF−TOFからの全てのMS/MSデータを、デフォルト正イオン、1kVの衝突エネルギー、反射モード、5500のレーザーエネルギーでのMS/MS方法を用いて取得した。TOF−MSスペクトルを、機器に搭載されているPeak Pickerソフトウェアを用いて分析した。閾値(>20:1 シグナル:ノイズ)基準に合致して、除外リスト上にない、10個の最大強度スペクトルピークを実験のTOF−TOF、MS/MS部分の取得リストに含めた。閾値基準を次のように設定した:質量範囲:500〜4000Da;最小クラスター面積:500;最小シグナル対ノイズ(S/N):20;スポット当たりのMS/MSスペクトルの最大数:10。マトリックスクラスターイオン及びトリプシン自己消化ピークを除外するマスフィルターを適用した。
【0123】
LC−MS/MS並びに非解読のTOF−MS及びTOF−TOF MS/MSデータのデータベース検索を、ProteinPilotソフトウェア(バージョン2.0.1)及びParagonアリゴリズム(Applied Biosystems)を用いて実行した。
【0124】
実施例2.結果
2.1 HAの分子量を増大する酵素の過剰発現
7つの遺伝子組み換えS.equi株(hasA、hasB、hasC、glmU、glmS及びpgi−glmU)を材料及び方法で概説したようにして作出した。遺伝子の過剰発現を酵素分析(hasA、hasB、hasC、glmS及びpgi)又はRT−PCR(glmU)を用いて確認した。それぞれの株をバイオリアクター中で発酵して、産生したHAの分子量を粘度測定法を用いて測定した。それぞれの改変株は、分子量が野生型株のそれよりも大きいHAを産出した(表3)。しかしながら、その増大はある程度そのプラスミドに起因している;過剰発現のために用いられたnisAプロモータを伴うpNZ8148プラスミド又はクロラムフェニコールマーカーがエリスロマイシンマーカーに置き換わっているnisRKプロモータを伴う同様なプラスミドpNZ9530を担持している株は、野生型(WT)と比べて増大した分子量を示した。
【0125】
空のプラスミド株に比べると、UDP−NAG経路に関わる遺伝子を担持する株(pgi、glmS及びglmU)のみがより高い分子量を示した。更に、pgiとglmUの両方を過剰発現するように組み換えられた別の株が全ての株で最も高い分子量を産生した。この観察と一致して、HA MWはUDP−NAGのレベルと強く相関した(0.86)が、UDP−GUAレベルとは相関しなかった(0.07)。
【0126】
【表3】

【0127】
2.2 WT、空のプラスミド(pNZ8148)及びPGI++株のプロテオミクス分析
空のプラスミドがUDP−NAGレベルを増大しそれによって分子量を増大するメカニズムを確認するためにプロテオミクスを用いた。野生型(WT)、空のプラスミド(pNZ8148)及びPGI++株をDIGEプロテオミクスを用いて比較した(図2)。
【0128】
10のタンパク質スポットの存在度はANOVA検査によると、野生型と空のプラスミド(pNZ8148)の培養物の間で有意に異なっていた(表4)。これらのスポットのうち7つは分離用クーマシーゲル中の存在量が少ないため、MSによる同定ができなかった。スポット24をS.ズーエピデミカスゲノム中に見出されたUDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ(UDP−NAG−CVT)の2つのホモログに位置付けた。LC/MS/MSを用いて、5つのペプチドを1つの遺伝子に位置づけ、3つのペプチドを別の物に位置付けた。UDP−NAG−CVTは、UDP−NAGからのペプチドグリカン生合成の第1段階を触媒して、UDP−NAGの主要な非HA関連ドレインを示す。スポット56をUDP−N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼ(GlmU)に位置付けた。UDP−NAG−CVTの有意な減少を伴うGlmUの有意な増大は、何故、空のプラスミド株が、野生型(WT)より高いUDP−NAG濃度及びより高いMWを持つのかを説明できる。
【0129】
【表4】

【0130】
空のプラスミド株に比べると、pgi++株はglmUがさらに1.8倍増大することを示した(表5)。幾つかのタンパク質は有意に異なっていたが、MSによって同定できなかった。2つの未同定タンパク質(スポット48及び201)は類似のパターン、すなわち、野生型に比べて空のプラスミド中に増大した存在量及び空のプラスミド及びpgi++株の間での更なる増大、を示した。pgiに位置付けられた2つのスポット(95及び463)は期待通りの増大を示したが、決定的な結論はこれらのスポット中の別のタンパク質の混入によって阻まれた。
【0131】
【表5】

【0132】
2.3 好気性条件は分子量を更に増大する
pgi及び、2つの遺伝子pgiとglmUを担持する2つの突然変異株を好気性条件下で野生型と比較した。表6に示したように、好気性条件は、HAの収率に殆ど影響を与えず、やや減少した生育速度を示したが、HAのMWを有意に増大した。
【0133】
【表6】

【0134】
2.4 高分子量のHA産生定常期を達成するためのバッチ−フェド−バッチ発酵
処理を最適化することによって更にHAのMWを増大するために、バッチ/フェドバッチ戦略を企てた。この戦略は、アルギニン枯渇を達成するように、バッチの間で短期間のグルコース欠乏を含んでいる。実際に可能であることを示す実験として、野生型レンサ球菌を嫌気性条件下で培養した(図3A)。HPLC分析は、バッチ期間の終期にグルコースが枯渇した時点で、アルギニンは既に枯渇していたことを示した。細胞の生育ではなくHAの産生が栄養供給後に再開した。
【0135】
フェドバッチ発酵の終期における平均分子量は、バッチ条件下での1.8MDaと比べて2.4MDaであった。図3Aに示すように、66%のHAがバッチ発酵で、そして34%が定常期に産生した。このことから定常期の間に産生したHAが3.6MDaの平均分子量を有していることが推測される。
【0136】
最適な発酵を導くために、2つの遺伝子pgi−glmUを担持している株を、図3Bに示すように、好気性条件下で試験した。表7に示したように、フェドバッチ戦略を用いて5.0MDaを得た。61%のHAがバッチ条件下で4.2MDaの平均MWで産生された。残りの39%は、6.4MDaの平均MWで定常期に産生された。
【0137】
【表7】

【0138】
2.5 グルコサミン上での発酵
代謝されるならば、グルコサミンは、その過程でグルコサミン−6−リン酸を産生するホスホトランスフェラーゼシステムによって輸送されることが期待される。グルコサミン−6−リン酸はUDP−NAG経路の一部である(図1)ので、グルコサミンの供給はUDP−NAGレベルを増大するだろう。
【0139】
S.ズーエピデミカスは、グルコースをグルコサミンで置き換えたCDM上で良く生育する。測定したUDP−NAGレベルは、グルコースによる培地上で見られるよりも2倍大きかった。しかしながら、UDP−GUA濃度はより少ない検出値であってMWはたった1.5MDaであった。このことは、グルコサミンはUDP−NAGレベルを増大するために供給できるが、UDP−GUAが枯渇されないことを保証するために注意しなければならない。例えば、培養物に、グルコースとグルコサミンの混合物を、2つの前駆体の供給を平衡化するように供給することができる。
【0140】
実施例3 結論
本発明者等は、HAの生合成経路における特定の酵素を過剰発現し、野生型の株と比べて有意に高いMWのHAを合成できる、多数のレンサ球菌株の設計及び構築について記載してきた。
【0141】
全ての株が野生型と比べて高い分子量のHAを産生したが、UDP−NAG経路中の遺伝子を過剰発現する株だけが、空のプラスミドコントロールより高い分子量のHAを産生した。分子量はUDP−NAGレベルと強く相関するが、UDP−GUAレベルとは相関しないことが観察された。UDP−NAGのより高いレベル、及びそれによる空のプラスミドコントロールの野生型株と比較した分子量は、ペプチドグリカン生合成のUDP−NAGとの低い競合性に起因していた;DIGEプロテオミクスは、空のプラスミドコントロールにおいて、ペプチドグリカン生合成における最初のUDP−NAG利用工程を触媒する、UDP−NAG−CVTのレベルの有意な減少を確認した。
【0142】
上記の各項目で言及されている多くの特徴及び態様は、必要に応じて、変更すべきところは変更して、他の項目に適用される。従って、ある項目で特定されている特徴を、必要に応じて別の項目で特定されている特徴と組み合わせることができる。
【0143】
上記明細書で述べられている全ての刊行物は参照して本明細書に組み込まれる。本発明の記述した方法及び産生物の多くの改変及び変法は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明は特定の好ましい態様に関連して記載されているが、当然なことながら、クレームされている発明をそのような特定の態様に過度に限定すべきではない。実際に、関連する分野の当業者にとって明白な、本発明を実施するための、記載されている方法の多くの改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法が、培地中でレンサ球菌細胞を生育すること(ここにおいて、当該細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現し、
当該細胞中の、
(a)ホスホグルコイソメラーゼ;
(b)D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ;
(c)ホスホグルコサミンムターゼ;
(d)グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;
(e)N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ
(f)グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;及び
(g)ホスホアセチルグルコサミンムターゼ:
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が増大されている)、それによりヒアルロン酸を産生することを含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項2】
細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを更に含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法が、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収すること(ここにおいて、当該細胞中の、
(a)ホスホグルコイソメラーゼ;
(b)D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ;
(c)ホスホグルコサミンムターゼ;
(d)グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;
(e)N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ
(f)グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;及び
(g)ホスホアセチルグルコサミンムターゼ:
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が増大されている)を含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項4】
方法が、培地中でレンサ球菌細胞を生育すること(ここにおいて、当該細胞がヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現し、
細胞中の、
(a)ホスホグルコイソメラーゼ;
(b)D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ;
(c)ホスホグルコサミンムターゼ;
(d)グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;
(e)N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ
(f)グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;及び
(g)ホスホアセチルグルコサミンムターゼ:
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量を増大するように当該細胞が組み替 えられているか又は処理されている)、それによりヒアルロン酸を産生することを含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項5】
細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを更に含有してなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
方法が、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収すること(ここにおいて、細胞中の、
(a)ホスホグルコイソメラーゼ;
(b)D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ;
(c)ホスホグルコサミンムターゼ;
(d)グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;
(e)N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ
(f)グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;及び
(g)ホスホアセチルグルコサミンムターゼ:
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量を増大するように当該細胞が組み替 えられているか又は処理されている)を含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項7】
細胞中の1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が、野生型レンサ球菌細胞と比較してより多くのUDP−N−アセチルグルコサミンを産生する、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
産生されたヒアルロン酸が野生型レンサ球菌細胞と比較してより高い平均分子量からなる、請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
方法が、培地中でレンサ球菌細胞を培養すること(ここにおいて、当該細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現する);及び
(a)UDP−N−アセチルグルコサミン;
(b)N−アセチルグルコサミン;及び
(c)グルコサミン;
から選ばれる1つ又はそれ以上の基質を提供すること、それによってヒアルロン酸を産生することを含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項10】
細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを更に含有してなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
方法が、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収すること(ここにおいて、
(a)UDP−N−アセチルグルコサミン;
(b)N−アセチルグルコサミン;及び
(c)グルコサミン;
から選ばれる1つ又はそれ以上の基質が提供されている)を含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項12】
(a)グルタミン;
(b)アセチル−CoA;及び
(c)UTP;
から選ばれる1つ又はそれ以上の代謝物を提供することを更に含有してなる、請求項9〜11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
方法が、培地中でレンサ球菌細胞を生育すること(ここにおいて、当該細胞がヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現して;
細胞中の
(a)UDP−N−アセチルグルコサミン;
(b)N−アセチルグルコサミン;及び
(c)グルコサミン;
から選ばれる1つ又はそれ以上の基質の量を増大するように当該細胞が組み替えられているか又は処理されている)、それによりヒアルロン酸を産生することを含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項14】
細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを更に含有してなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
方法が、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収すること(ここにおいて、細胞中の
(a)UDP−N−アセチルグルコサミン;
(b)N−アセチルグルコサミン;及び
(c)グルコサミン;
から選ばれる1つ又はそれ以上の基質の量を増大するように当該細胞が組み替えられているか又は処理されている)を含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項16】
細胞中の
(a)グルタミン;
(b)アセチル−CoA;及び
(c)UTP;
から選ばれる1つ又はそれ以上の代謝物の量を増大するように当該細胞が組み替えられているか又は処理されている、請求項13〜15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
細胞中のUDP−N−アセチルグルコサミンの量が野生型レンサ球菌細胞と比較して多い、請求項9〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
産生されたヒアルロン酸が野生型レンサ球菌細胞と比較してより高い平均分子量からなる、請求項9〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
方法が、培地中でレンサ球菌細胞(当該細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現する)を生育すること(ここにおいて、当該細胞中の、
(a)UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ;及び
(b)ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ;
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又無効にされている)、それによりヒアルロン酸を産生することを含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項20】
細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを更に含有してなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
方法が、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収すること(ここにおいて、当該細胞中の、
(a)UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ;及び
(b)ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ;
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が減少又無効にされている)を含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項22】
方法が、培地中でレンサ球菌細胞(当該細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現する)を生育すること(ここにおいて、当該細胞はヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現し、細胞中の、
(a)UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ;及び
(b)ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ;
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量を減少又無効するように当該細胞が組み替えられているか又は処理されている)、それによりヒアルロン酸を産生することを含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項23】
細胞によって産生されたヒアルロン酸を回収することを更に含有してなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
方法が、ヒアルロン酸合成に必要な酵素を発現するレンサ球菌細胞からヒアルロン酸を回収すること(ここにおいて、細胞中の、
(a)UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ;及び
(b)ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ;
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量を減少又無効にするように当該細胞が組み替えられているか又は処理されている)を含有してなる、ヒアルロン酸を産生する方法。
【請求項25】
細胞中のUDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーが、UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼを低発現するように、又は発現しないように、又は下方調節された活性で発現するように変異されている、請求項19〜24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
1つ又はそれ以上の酵素の活性又は量が、野生型レンサ球菌細胞と比較して、1つ又はそれ以上の酵素によるUDP−N−アセチルグルコサミンの使用の削減をもたらす、請求項19〜25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
産生されたヒアルロン酸が野生型レンサ球菌細胞と比較して高い平均分子量からなる、請求項19〜26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜27の何れか一項に記載の方法によって得られるか又は得られ得るヒアルロン酸。
【請求項29】
少なくとも3MDaの平均分子量を有している、請求項28項に記載のヒアルロン酸。
【請求項30】
実質的に架橋を有していない、請求項28又は29に記載のヒアルロン酸。
【請求項31】
ヒアルロン酸の合成のための酵素を含有してなるレンサ球菌細胞(ここにおいて、当該細胞は、
(a)ホスホグルコイソメラーゼ;
(b)D−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ;
(c)ホスホグルコサミンムターゼ;
(d)グルコサミン−1−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;
(e)N−アセチルグルコサミン−1−リン酸ピロホスホリラーゼ
(f)グルコサミン−6−リン酸アセチルトランスフェラーゼ;及び
(g)ホスホアセチルグルコサミンムターゼ:
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素を過剰発現又は上方調節された活性で発現するように処理されているか又は遺伝子組み替えされている)。
【請求項32】
ヒアルロン酸の合成のための酵素を含有してなるレンサ球菌細胞(ここにおいて、当該細胞は、
(a)UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼ;及び
(b)ウンデカプレニルジホスホ−ムラモイルペンタペプチド ベータ−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ;
から選ばれる1つ又はそれ以上の酵素を低発現するように、又は発現しないように、又は下方調節された活性で発現するように処理されているか又は遺伝子組み替えされている)。
【請求項33】
細胞中のUDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の少なくとも1つのコピーが、UDP−N−アセチルグルコサミン 1−カルボキシビニルトランスフェラーゼを低発現するように、又は発現しないように、又は下方調節された活性で発現するように変異されている、請求項32に記載の細胞。
【請求項34】
請求項28〜30の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有してなる、医薬組成物。
【請求項35】
請求項28〜30の何れか一項に記載のヒアルロン酸及び美容的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有してなる、化粧品組成物。
【請求項36】
請求項28〜30の何れか一項に記載のヒアルロン酸を含有してなる、食品又は食品添加物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2010−536387(P2010−536387A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522130(P2010−522130)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001267
【国際公開番号】WO2009/026635
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(500020760)ザ・ユニバーシティ・オブ・クイーンズランド (20)
【出願人】(510051266)シュガー インダストリー イノヴェーション プロプライエタリ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】