説明

ヒステリシス特性を有するコンパレータ

【課題】ヒステリシスを有するコンパレータを提供すること。
【解決手段】一実施形態においてコンパレータは、入力電圧及び基準電圧を受け取り第1の差動出力を生成する第1の差動入力段と、差動入力を有し第2の差動出力を生成する第2の差動入力段とを有する。コンパレータ段は、第1の差動出力及び第2の差動出力に応答し、コンパレータ出力を生成する。コンパレータはヒステリシス制御回路を更に有し、ヒステリシス制御回路はその構成要素として、1)第2の差動入力段の差動入力間に接続された抵抗器及びヒステリシス調整電圧、2)第1の電圧発生器及び第2の電圧発生器、並びに3)コンパレータ出力の制御により、第1の電流発生器と第2の電流発生器の異なる組み合わせを作動させ、抵抗器を流れる第1の電流又は第2の電流を誘導する、少なくとも1つのスイッチを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒステリシスを有するコンパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
コンパレータ(比較器)は、アナログ/デジタル変換器、データ伝送部品(例えば赤外線トランシーバ)、スイッチング電力調整器といった様々な用途に使用されている。
【0003】
コンパレータの中には「ヒステリシス」を有するものがある。ヒステリシスとは、入力信号の立上がりエッジと立下りエッジに対するコンパレータの異なる応答として定義される。多くの場合、ヒステリシスは、出力信号のエッジ付近におけるノイズによる信号の発振するのを防止するために使用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、コンパレータは、入力電圧及び基準電圧を受け取り第1の差動出力を生成する第1の差動入力段と、差動入力を有し第2の差動出力を生成する第2の差動入力段とを有する。コンパレータは、第1の差動出力及び第2の差動出力に応答してコンパレータ出力を生成するコンパレータ段を更に有する。コンパレータはヒステリシス制御回路を更に有し、該ヒステリシス制御回路は、1)第2の差動入力段の差動入力間に接続された抵抗器及びヒステリシス調整電圧入力、2)第1の電流発生器及び第2の電流発生器、並びに3)コンパレータ出力の制御により、第1の電流発生器と第2の電流発生器の異なる組み合わせを交互に作動させ、前記抵抗器を流れる第1の電流又は第2の電流を誘導する、少なくとも1つのスイッチを含む。
【0005】
他の実施形態として、コンパレータの差動入力間にヒステリシス電圧を生成する方法であって、
1)差動入力間に、抵抗器及びヒステリシス調整電圧入力を接続するステップと、
2)コンパレータの出力に応答して、前記抵抗器を流れる第1の電流又は第2の電流を交互に誘導するステップとからなる方法を提供する。
【0006】
更に他の実施形態も開示する。
【0007】
本発明の現時点において好ましい例示的な実施形態を添付の図面に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、ヒステリシスを有するコンパレータの一実施形態を示している。コンパレータ100は、入力電圧(Vin)及び基準電圧(Vref)を受け取り、第1の差動出力を生成する第1の差動入力段102を有する。コンパレータ100は、差動入力電圧を受け取り第2の差動出力を生成する第2の差動入力段104を更に有する。コンパレータ100は、第1の差動出力及び第2の差動出力に応答してコンパレータ出力(V1、V2、又はVout)を生成するコンパレータ段106を更に有する。コンパレータ100はヒステリシス制御回路108を更に有し、該ヒステリシス制御回路108は、1)第2の差動入力段104の差動入力間に接続された抵抗器(R)及びヒステリシス調整電圧入力(Vreg)、2)第1の電流発生器110及び第2の電流発生器112、並びに3)コンパレータ出力(例えばV2)の制御により、第1の電流発生器と第2の電流発生器の異なる組み合わせを交互に作動させ、抵抗器(R)を流れる第1の電流又は第2の電流を誘導する、少なくとも1つのスイッチを含む。図1において少なくとも1つのスイッチは、第1の電流発生器及び第2の電流発生器に対応する、一対のスイッチ(P7、N11)である。使用時には、スイッチP7及びN11が作動し、第1の電流発生器と第2の電流発生器を交互に作動させ、抵抗器(R)を流れる第1の電流(I1)又は第2の電流(I2)が誘導される。
【0009】
コンパレータ100の一実施形態を例示するために、図1では、複数のNチャネル・エンハンスメント型電界効果トランジスタ(FET)とPチャネル・エンハンスメント型FETの間に接続線を示している。当業者であれば、トランジスタのタイプ、数及び配置は、コンパレータ100を実施するのに使用されるプロセスに応じて他のもので置き換えてもよいことが分かるであろう。
【0010】
図1に示すように、第1の差動入力段102は2つのNチャネルFETを含み、各FETはゲート端子に対する2つの入力(Vref及びVin)のうちの一方によって制御される。Vref及びVinは比較対象となる2つの信号を表わし、そのうち、第1の信号(Vref)は一定電圧であり、第2の信号(Vin)は変動する入力信号である(例えば、デジタル信号に変換されているアナログ信号のように)。2つのFET、N1及びN2のソース端子とグラウンド(GND)との間には、第3のFET、N3が接続される。N3のゲートはバイアス電圧Vbによって制御される。従って、N1及びN2を流れる電流の和はN3を流れる電流と等しくなり、N1を流れる電流とN2を流れる電流の比はVrefとVinの比に比例する。N1及びN2のドレインは、差動加算接合130に対する第1の差動出力として機能する。
【0011】
第2の差動入力段104は2つのFET、N4及びN5を含み、それらのゲートはヒステリシス制御回路108の抵抗器Rを介して互いに接続される。N4のゲートとN5のゲートの間には、ヒステリシス調整電圧入力(Vreg)が更に接続される。N4及びN5のソース端子とグラウンド(GND)との間には、第3のFET、N6が接続される。N6のゲートはバイアス電圧Vbによって制御される。従って、N4及びN5を流れる電流の和はN6を流れる電流と等しくなり、後で詳しく説明するように、N4を流れる電流とN5を流れる電流の比は抵抗器R両端の電圧によって決まる。N4及びN5のドレインは、差動加算接合130に対する第2の差動出力として機能する。
【0012】
コンパレータ段106は例えば、差動加算接合130、複数の電流ミラー回路、及び一対のインバータ(INV1、INV2)を含む。差動加算結合130は、第1の差動入力段102及び第2の差動入力段104から出力された電流を加算する。従って、差動入力段104による差動ヒステリシス出力は、差動入力段102による電流比出力に適用される。差動加算接合130の一方のノードに生成された合計電流(即ち、ヒステリシスを有する入力電流)は、2つのPチャネルFET、P1及びP2によって形成される電流ミラーに供給され、差動加算回路130の他方のノードに生成された合計電流(即ち、ヒステリシスを有する基準電流)は、FET、P3及びP4によって形成される電流ミラーに供給される。
【0013】
P1、P2、P3及びP4のソース端子は電源(即ちVDD)に接続される。差動加算接合130のノードは、P2及びP3のドレイン端子にそれぞれ接続される。P1及びP4のドレインは、FET、N7及びN8のドレイン端子にそれぞれ接続される。FET、N7及びN8は、第3の電流ミラー回路の入出力接続として働く。N7及びN8のソース端子はグラウンドに接続される。
【0014】
第3の電流ミラー回路(N7、N8)は、P1を通ってコンパレータ100の出力段へ流れる電流の量と、P4を通ってコンパレータ100の出力段へ流れる電流の量との間に差を生じさせる。図1において、出力段は、P4のドレインに接続された一対の直列のインバータ(INV1、INV2)によって形成される。これらのインバータは、コンパレータの出力信号をバッファリングし、増幅する働きをする。インバータの数は一個で足りる場合もあれば、2個のインバータを使用してより強い出力信号を得る場合や、コンパレータの出力信号を両方とも(即ち、正と負)「センス」する場合もある。
【0015】
次に、ヒステリシス制御回路108について説明する。図示のように、制御回路108は、第2の差動入力段104の差動入力間に接続された、抵抗器(R)及びヒステリシス調整電圧入力(Vreg)を含む。
【0016】
抵抗器Rを流れる電流が全くない場合、電圧入力Vregは、第2の差動入力段104の入力に共通電圧をバイアスとして加える手段として機能する。ただし、抵抗器Rを流れる電流がない場合、第2の差動入力段104は入力信号Vinに対してヒステリシス電圧を全く加えない点に注意して欲しい。しかしながら、抵抗器RのノードAに正の電流I1が供給された場合、第2の差動入力段104は、ヒステリシス電圧(Vhyst)を入力電圧Vinに加えることになる。同様に、ノードAに負の電流I2が供給された場合、差動入力段104は、ヒステリシス電圧−I2Rを入力信号Vinに加えることになる。従って、入力信号Vinには、正のヒステリシス電圧又は負のヒステリシス電圧が印加される。
【0017】
ヒステリシス制御回路108の残りの部分は、コンパレータの出力に応答して、適当なタイミングで電流I1及びI2を生成する働きをする。その目的のために、制御回路108は、電流I1及び電流I2をそれぞれ生成する電流発生器110及び112を有するとともに、コンパレータ出力(例えばV2)により制御され、第1の電流発生器110と第2の電流発生器112を交互に作動させ、抵抗器(R)を流れる第1の電流I1又は第2の電流I2を誘導する一対のスイッチ(P7、N11)を有する。
【0018】
図示のように、第1の電流発生器110は、合計電流をノードXに生成するように接続された、複数の電流発生経路114、116、118を有する。電流経路の数やタイプは異なるものであってもよいが、図1の実施形態は、FET、N12を通る一定電流経路114と、FET、N12及びP8を通るスイッチ電流経路116と、FET、N14及びP9を通る第2のスイッチ電流経路118とを備えている。電流発生経路114〜118は全て、ノードXとグラウンドとの間に接続される。N12、N13及びN14のゲートには、バイアス電圧Vbが印加される。スイッチ電流経路116及び118はFET、P8及びP9によってそれぞれ制御され、P8及びP9のゲートには制御信号S0及びS1がそれぞれ印加される。
【0019】
ノードXにおける合計電流は、FET、P5及びP6によって構成される電流ミラー回路に供給される。FET、P5及びP6のソース端子は電源に接続される。更に、ノードXと電源との間には、スイッチP7が接続される。スイッチP7のゲートは、コンパレータ出力ノードV2によって駆動される。従って、V2を高にすると、ノードXに生成された電流はノードAにミラーされ、電流I1が生成され、V2を低にすると、ノードXに生成された電流はスイッチP7を通じて迂回される。従って、V2を低にすれば、電流I1は実質的にゼロになる。
【0020】
第2の電流発生器112も第1の電流発生器110と同様に、合計電流をノードYに生成するように接続された、複数の電流発生経路120、122、124を有する。電流発生経路の数やタイプは異なるものであってもよいが、図1の実施形態は、FET、N15を通る一定電流経路120と、FET、N16及びP12を通るスイッチ電流経路124と、FET、N17及びP13を通る第2のスイッチ経路124とを備えている。電流発生経路120〜124は全て、ノードYとグラウンドとの間に接続される。N15、N16及びN17のゲートには、バイアス電圧Vbが印加される。スイッチ電流経路122及び124はFET、P12及びP13によってそれぞれ制御され、P12及びP13のゲートには制御信号S0及びS1がそれぞれ印加される。
【0021】
ノードYにおける合計電流は、FET、P10及びP11によって構成される電流ミラー回路に供給される。FET、P10及びP11のソース端子は電源に接続される。従って、ノードYにおける電流はノードZにミラーされる。
【0022】
ノードZにおける電流は、FET、N9及びN10から構成される第2の電流ミラー回路に供給される。FET、N9及びN10のソース端子はグラウンドに接続される。N9及びN10のゲートとグラウンドとの間には、スイッチN11が接続される。スイッチN11のゲートは、スイッチP7と同様に、コンパレータ出力ノードV2によって駆動される。従って、V2を低にすると、ノードZに生成された電流はノードAにミラーされ、電流I2が生成され、V2を高にすると、ノードZに生成された電流はスイッチN11を通じて迂回される。従って、V2を高にすれば、電流I2は実質的にゼロになる。
【0023】
スイッチP7とスイッチN11は同じ信号(V2)によって制御され、同時に切り替わるため、電流I1と電流I2のどちらか一方が抵抗器Rを通って流れ、正のヒステリシス電圧又は負のヒステリシス電圧Vhystが生成される。
【0024】
信号S0及びS1を設定することで、コンパレータ100をプログラムし、所望の正又は負のヒステリシス電圧を入力電圧Vinに印加させることができる。また、S0とS1のどちらか一方又は両方を断続的又は連続的に制御することで、電流I1及びI2を段階的又は連続的に変化させることができる。電流I1及びI2は他の方法によって設定することもでき、例えば、P5とP6の電流ミラー比を変化させることや、バイアス電圧Vbを変化させることによって設定することもできる。
【0025】
図1に示す電流発生器110及び112のそれぞれの電流ミラー回路が同じように構成された場合、制御回路108の独立した電流発生器110及び112はバランスのとれたヒステリシス電圧を生成する。つまり、電圧Vrefを中心とするバランスのとれたヒステリシス電圧は、電流I1と電流I2が同じ大きさで異なる極性を持つときに得られる。図2を参照して欲しい。
【0026】
場合によっては、アンバランスなヒステリシス電圧(即ち、Vrefを中心としたバランスのとれていないヒステリシス電圧)を生成することが望ましい場合もある。図3を参照して欲しい。アンバランスなヒステリアス電圧は、制御回路108に種々の変更を加えることによって得られる。例えば、アンバランスなヒステリアス電圧を得るための1つの方法は、スイッチP12及び/又はP13に供給される制御信号(S0、S1)を、制御信号S0及びS3又は制御信号S2及びS3といった、別の信号の組で置き換えることである。従って、電流I1及びI2は個別にプログラムすることができ、バランスのとれたヒステリシス電圧とアンバランスなヒステリアス電圧は自由に選択することができる。
【0027】
アンバランスなヒステリシス電圧を生成する他の方法としては、ミラーP5/P6、P10/P11及びN9・N10のうちのいずれか又は全ての電流ミラー比を調節すること、電流発生器110、112の異なるトランジスタの幅及び/又は長さを調節すること、及び、FET、N12、N13及びN14のゲートに印加されるバイアス電圧と、FET、N15、N16及びN17のゲートに印加されるバイアス電圧とを異ならせることなどがある。
【0028】
ヒステリシス制御回路108に更に変更を加え、オフセット・ヒステリシス、即ち、基準電圧に対してオフセットされたヒステリシス電圧を生成することも可能である。図4及び図5を見て欲しい。図6は、正のオフセット・ヒステリシスを生成するコンパレータ600を示し、図7は、負のオフセット・ヒステリシスを生成するコンパレータ700を示している。
【0029】
コンパレータ600(図6)はコンパレータ100に似ている。そのため、共通のFETには共通の符号が付してあり、コンパレータ段106の幾つかの部分は描かれていない。コンパレータ600において、電流発生器110は前述と同様に構成されているが、電流発生器112(図6では電流発生器612)には多数の変更が施されている。電流発生器612の場合、FET、N9及びN10によって形成される電流ミラー回路は省略され、ノードZはノードAに併合されている。スイッチN11を省略され、ノードYと電源との間に接続されたスイッチP14で置き換えられている。スイッチP14のゲートにはVoutが印加される。従って、スイッチP7及びP14は、抵抗器Rに対して電流I1と電流I2を交互に供給する。ただし、電流I1と電流I2は同じ極性である。仮に電流発生器110の構成要素が電流発生器612の構成要素と同じであるとすれば、電流I1と電流I2は同じ電流になる。ただし、スイッチの組、P8/P9及びP12/P13に異なる制御信号の組が供給された場合、あるいは、電流ミラー回路P5/P6の電流ミラー比がP10/P11の電流ミラー比と異なる場合、電流I1及び電流I2によって生成されるヒステリシス電圧は、基準電圧Vrefに対して正の異なる大きさの電圧になる。即ち、正のオフセット・ヒステリシスが生成される。図4を見て欲しい。
【0030】
場合によっては、コンパレータ600に変更を加え、スイッチP7又はP14を省略する場合もある。この場合、電流発生器110、612のうちの一方は常に電流を抵抗器Rに供給し、他方の電流発生器は先の電流発生器に対して第2の電流を加算又は減算する。例えば図5のグラフに示すように、スイッチ14を省略し、第2の電流発生器612によって一定の電流I2を抵抗器Rに供給する場合がある。第1の電流発生器110は選択的に作動し、電流(I1+I2)を抵抗器Rに供給する。
【0031】
コンパレータ700(図7)もコンパレータ100に似ている。そのため、共通のFETには共通の符号を付してあり、コンパレータ段106の幾つかの部分は描かれていない。コンパレータ700において、電流発生器112は前述と同様に構成されるが、電流発生器110(図7では電流発生器710)には多数の変更が施されている。電流発生器710は、FET、N18及びN19によって形成された第2の電流ミラー回路を含む。電流ミラー回路N18/N19は電流ミラー回路N9/N10と同様に構成され、ノードBにおいて電流ミラー回路N5/N6に接続される。また、コンパレータ700では、コンパレータ100におけるスイッチP7が省略され、N18及びN19のゲートとグラウンドとの間に接続されたスイッチ20で置き換えられている。スイッチN20のゲートにはVoutが印加される。従って、スイッチN11及びN20は、抵抗器Rに対して電流I1と電流I2を交互に供給する。ただし、電流I1及びI2はいずれも負の極性である。仮に電流発生器710の構成要素が電流発生器112の構成要素と同じであるとすれば、電流Iと電流I2は同じ電流になる。ただし、スイッチの組、P8/P9及びP12/P13に異なる制御信号の組が供給された場合、あるいは、電流ミラー回路P5/P6の電流ミラー比がP10/P11の電流ミラー比と異なる場合や、電流ミラー回路N9/N10の電流ミラー比がN18/N19の電流ミラー比と異なる場合は、電流I1及び電流I2によって生成されるヒステリシス電圧は、基準電圧Vrefに対して負の異なる大きさの電圧になる。即ち、負のオフセット・ヒステリシスが生成される。
【0032】
図5及び図6に関して説明したように、スイッチN11又はN20は省略される場合があり、電流の増加(又は異なる電流)によって、負のオフセット・ヒステリシスが生成される場合がある。
【0033】
コンパレータ100、500、700に供給されるヒステリシス調整電圧Vregは、種々の方法で導出することができる。一実施形態において、ヒステリシス調整電圧Vregは、図8に示すような基準電圧Vrefから導出される。すなわち、FET、P15及びP16からなる電流ミラー回路により、バイアス電流(Ibias)はFET、N21のドレイン端子にミラーリングされる。FET、N21のソース端子は、抵抗器R1及びR2からなる分圧器に直列に接続される。分圧器の中間点は演算増幅器(オペアンプ)OPAMP1の一方の入力に接続され、コンパレータの他方の入力には基準電圧Vrefが接続される。コンパレータの出力はFET、N21のゲートに印加される。このようにすれば、最小限の基準電圧を印加するだけで、基準電圧Vregを得ることができる。
【0034】
例示したコンパレータ100、500、700には、アナログ/デジタル変換器、データ伝送部品(例えば赤外線トランシーバ)、スイッチング電力調整器などのような、種々の用途がある。
【0035】
コンパレータ100、500、700は、その構成や用途によっても異なるが、他のコンパレータに比べて種々の利点を有する。例えば、これらのコンパレータによれば、ゲイン調節の代わりに、ヒステリシス調節による受信機の感度の制御が可能になる。第1の電流発生器の構成要素を第2の電流発生器の構成要素と同じにすることにより(例えば、レイアウトやFETの寸法を一致させ、同等のFETを交差接続することにより)、コンパレータ100、500、700は、ヒステリシス生成におけるプロセスや温度の影響を低減する手段を提供する。また、コンパレータ100、500、700は、ヒステリシス生成における入力段相互コンダクタンスを低減する手段も提供する。
【0036】
図9は、図1、図6又は図7に示したようなコンパレータの差動入力間にヒステリシス電圧を生成するのに使用される方法900を示すフロー図である。この方法は、1)差動入力間に抵抗器及びヒステリシス調整電圧入力を接続するステップ902と、2)コンパレータの出力に応答して抵抗器を流れる第1の電流と第2の電流を交互に誘導するステップ904とを含む。
【0037】
以下に、本発明の種々の例示的実施態様を列挙する。
1.ヒステリシスを有するコンパレータであって、
入力電圧及び基準電圧を受け取り、第1の差動出力を生成する第1の差動入力段と、
差動入力を有し、第2の差動出力を生成する第2の差動入力段と、
前記第1の差動出力及び前記第2の差動出力に応答し、コンパレータ出力を生成するコンパレータ段と、
i)前記第2の差動入力段の差動入力間に接続された抵抗器及びヒステリシス調整電圧入力、ii)第1の電圧発生器及び第2の電圧発生器、並びにiii)コンパレータ出力の制御により、前記第1の電圧発生器と前記第2の電圧発生器の異なる組み合わせを作動させ、前記抵抗器を流れる第1の電流又は第2の電流を誘導する少なくとも1つのスイッチを含む、ヒステリシス制御回路と
からなるコンパレータ。
2.前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器はそれぞれ、
合計電流を生成するように接続された複数の電流発生経路と、
前記電流発生パスの少なくとも一部を流れる電流を制御するための複数のスイッチとを含む、1に記載のコンパレータ。
3.前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器はそれぞれ、該電流発生器の合計電流を前記抵抗器の一端に対してミラーリングするための複数の電流ミラー回路を含む、2に記載のコンパレータ。
4.前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器の対応する電流ミラー回路が同様に構成されている、3に記載のコンパレータ。
5.前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器はそれぞれ、前記抵抗器の一端に対して電流を送受信する、4に記載のコンパレータ。
6.前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器はいずれも、前記抵抗器の一端に電流を供給する、4に記載のコンパレータ。
7.前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器はいずれも、前記抵抗器の一端から電流を受け取る、4に記載のコンパレータ。
8.前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器の対応する電流ミラー回路が、異なる比のトランジスタを含む、3に記載のコンパレータ。
9.前記第1の電流発生器の電流発生経路及びスイッチは、前記第2の電流発生器の電流発生経路及びスイッチと同等のものであり、前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器の対応するスイッチは、同じスイッチング信号を受信する、2に記載のコンパレータ。
10.前記第1の差動対に前記入力電圧を供給するための赤外線入力段を更に含む、9に記載のコンパレータ。
11.前記第1の電流発生器の電流発生経路及びスイッチは、前記第2の電流発生器の電流発生経路及びスイッチと同等のものであり、異なる電流発生器の電流発生経路は、スイッチング信号の異なる組を受信する、2に記載のコンパレータ。
12.前記少なくとも1つのスイッチは少なくとも一対のスイッチからなり、その1つは前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器のそれぞれに対応し、
前記ヒステリシス制御回路は前記一対のスイッチを作動させ、前記第1の電流発生器又は前記第2の電流発生器を交互に作動させる、1に記載のコンパレータ。
13.前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器はそれぞれ、前記抵抗器の一端に対して電流を送受信する、1に記載のコンパレータ。
14.前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器はいずれも、前記抵抗器の一端に電流を供給する、1に記載のコンパレータ。
15.前記第1の電圧発生器及び前記第2の電圧発生器はいずれも、前記抵抗器の一端にから電流を受信する、1に記載のコンパレータ。
16.前記基準電圧からヒステリシス調整電圧を導出するための回路を更に含む、1に記載のコンパレータ。
17.前記第1の作動対に前記入力電圧を供給するための赤外線入力段を更に含む、1に記載のコンパレータ。
18.コンパレータの差動入力間にヒステリシス電圧を生成する方法であって、
前記作動入力間に抵抗器及びヒステリシス調整電圧入力を接続するステップと、
前記コンパレータの出力に応答して、前記抵抗器を流れる第1の電流又は第2の電流を交互に誘導するステップと
からなる方法。
19.前記第1の電流と前記第2の電流は反対の極性である、18に記載の方法。
20.前記第1の電流と前記第2の電流は同じ極性であり、かつ違う大きさである、18に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ヒステリシスを有するコンパレータの一実施形態を示す図である。
【図2】バランスのとれたヒステリシスを有するコンパレータのスイッチング動作の一例を示すグラフである。
【図3】アンバランスなヒステリシスを有するコンパレータのスイッチング動作の一例を示すグラフである。
【図4】オフセット・ヒステリシスを有するコンパレータのスイッチング動作の一例を示すグラフである。
【図5】オフセット・ヒステリシスを有するコンパレータのスイッチング動作の一例を示すグラフである。
【図6】正のオフセット・ヒステリシスを有するコンパレータの一実施形態を示す図である。
【図7】負のオフセット・ヒステリシスを有するコンパレータの一実施形態を示す図である。
【図8】基準電圧からヒステリシス調整電圧を導出する回路の一例を示す図である。
【図9】コンパレータの差動入力間にヒステリシス電圧を生成する方法の一例を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒステリシスを有するコンパレータ(100)であって、
入力電圧及び基準電圧を受け取り、第1の差動出力を生成する第1の差動入力段(102)と、
差動入力を有し、第2の差動出力を生成する第2の差動入力段(104)と、
前記第1の差動出力及び前記第2の差動出力に応答し、コンパレータ(100)出力を生成するコンパレータ(100)段と、
i)前記第2の差動入力段(104)の差動入力間に接続された抵抗器及びヒステリシス調整電圧入力、ii)第1の電圧発生器及び第2の電圧発生器(110、112)、並びにiii)コンパレータ(100)出力の制御により、前記第1の電圧発生器と前記第2の電圧発生器(110、112)の異なる組み合わせを作動させ、前記抵抗器を流れる第1の電流又は第2の電流を誘導する少なくとも1つのスイッチを含む、ヒステリシス制御回路(108)と
からなるコンパレータ。
【請求項2】
前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器(110、112)はそれぞれ、
合計電流を生成するように接続された複数の電流発生経路(114、116、118、120、122、124)と、
前記電流発生パスの少なくとも一部(116、118、122、124)を流れる電流を制御するための複数のスイッチと
を含む、請求項1に記載のコンパレータ(100)。
【請求項3】
前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器(110、112)はそれぞれ、該電流発生器の合計電流を前記抵抗器の一端に対してミラーリングするための複数の電流ミラー回路を含む、請求項2に記載のコンパレータ(100)。
【請求項4】
前記第1の電流発生器(110)及び前記第2の電流発生器(112)の対応する電流ミラー回路が同様に構成されている、請求項3に記載のコンパレータ(100)。
【請求項5】
前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器(110、112)はそれぞれ、前記抵抗器の一端に対して電流を送受信する、請求項1又は請求項4に記載のコンパレータ(100)。
【請求項6】
前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器(110、612)はいずれも、前記抵抗器の一端に電流を供給する、請求項1又は請求項4に記載のコンパレータ(600)。
【請求項7】
前記第1の電流発生器及び前記第2の電流発生器(710、112)はいずれも、前記抵抗器の一端から電流を受け取る、請求項1又は請求項4に記載のコンパレータ(700)。
【請求項8】
前記第1の電流発生器(110)の電流発生経路(114、116、118)及びスイッチは、前記第2の電流発生器(112)の電流発生経路(120、122、124)及びスイッチと同等のものであり、前記第1の電流発生器(110)及び前記第2の電流発生器(112)の対応するスイッチは、同じスイッチング信号を受信する、請求項2に記載のコンパレータ(100)。
【請求項9】
前記第1の電流発生器(110)の電流発生経路(114、116、118)及びスイッチは、前記第2の電流発生器(112)の電流発生経路(120、122、124)及びスイッチと同等のものであり、異なる電流発生器(110、112)の電流発生経路(114、116、118、120、122、124)は、スイッチング信号の異なる組を受信する、請求項2に記載のコンパレータ(100)。
【請求項10】
コンパレータ(100)の差動入力間にヒステリシス電圧を生成する方法(900)であって、
前記作動入力間に抵抗器及びヒステリシス調整電圧入力を接続するステップ(902)と、
前記コンパレータ(100)の出力に応答して、前記抵抗器を流れる第1の電流又は第2の電流を交互に誘導するステップ(904)と
からなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−229954(P2006−229954A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29614(P2006−29614)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】