説明

ヒト肺組織の病態を示すヒト血清中のタンパク質の同定

正常な個人、及び医師によって診断されて非小細胞肺癌及び喘息を有することが知られた患者間で差別的に発現する、ヒト血清中に存在するタンパク質を同定する方法。それぞれの集団からのヒト血清検体を、トリプシン又は他の適したエンドプロテアーゼで消化し、そして液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分光計を使用して分析する。それぞれの集団からの質量スペクトルデータは、正常、喘息、及び肺癌集団間で、有意に差別的に発現する発現強度を持つタンパク質を決定するために比較される。11個のタンパク質が、集団間で有意に差別的に発現する発現強度を有することが見出された。最後に、11個のタンパク質の正体は、質量スペクトルデータを、既知のタンパク質の質量スペクトルデータのライブラリーを有する既知のデータベースと比較することによって得られた。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本発明は、本明細書中に参考文献として援用される2007年9月11日に出願された米国特許仮出願60/971,422号の利益を主張する新規の本出願である。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、一般的にヒト肺組織の病態の診断に関する。更に具体的には、本発明は、ヒト血清中に存在するタンパク質を同定するための液体クロマトグラフィー−質量分光法を使用する非小細胞肺癌及び喘息の診断に関し、これは、正常な集団中に見出される同一のタンパク質からのヒト血清中における発現の相対強度が変化した場合、ヒト肺組織及びヒトの呼吸器系に関連する病態を示す。このような病態に関連するタンパク質を同定し、代表的な発現強度を決定し、そして簡単な血液試験により、これらの発現強度を、患者の血清中に存在する発現強度と比較することによって、そして病態の間を鑑別することによって、その進行の初期に病態の存在を検出することが可能である。
【背景技術】
【0003】
[0003]喘息及び肺癌のような呼吸器系の病態は、数百万人の米国人に影響している。事実、米国肺協会は、殆んど2千万人の米国人が喘息に罹っていることを報告している。米国癌協会は、2007年単年で229,400人の呼吸器系の新しい癌の症例、及び呼吸器系の癌からの164,840人の死亡を推定している。癌が検出された場合、癌の症例の5年生存率は、なお46%は局在的であるが、肺癌患者の5年生存率は、わずか13%である。対応的に、肺癌患者の16%のみが、疾病が伝播する前に発見されている。肺癌は、一般的に癌細胞の病態に基づいて二つの主要な型として分類される。それぞれの型は、癌細胞となるために変換される細胞の型に対して命名されている。小細胞肺癌は、ヒト肺組織中の小細胞から誘導され、一方非小細胞肺癌は、一般的に小細胞型ではない全ての肺癌を包含する。非小細胞肺癌は、治療が一般的に全ての非小細胞型に対して同一であるために、一緒にグループ化される。非小細胞肺癌、又はNSCLCは、一緒にして全ての肺癌の約75%を構成している。
【0004】
[0004]肺癌患者の生存率を減少する主要な因子は、肺癌を、初期に診断することが困難であるという事実である。ヒトにおいて肺癌を診断する又はその存在を確認する現時点の方法は、肺のX線、CTスキャン及び腫瘍の存在又は非存在を物理的に決定するための肺の同様な試験を行うことに限られる。従って、肺癌の診断は、しばしば有意な期間にわたり存在する兆候に対して、そして疾病が物理的に検出可能な集団を生じるために十分に長くヒト中に存在した後のみに行われる。
【0005】
[0005]同様に、喘息を検出する現時点の方法は、典型的には反復性の喘鳴、咳嗽、及び胸部絞扼感のような兆候の長期の存在後に行われる。喘息を検出する現時点の方法は、典型的には、肺活量測定又は負荷試験のような肺機能試験に限られている。更に、これらの試験は、しばしば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、肺炎、及び鬱血性心不全のような他の病態又は疾病を除外するための多くの他の試験と共に行うように医師によって命じられる。
【0006】
[0006]従来の技術において、ヒト肺組織の病態をその発症の初期に診断する簡単な、信頼性のある方法は存在しない。更に、特定の肺組織の病態の存在を示すことが可能な今日利用可能な血液試験は存在しない。従って、肺癌の存在を疾病の進行の初期に決定するための方法を開発することが好ましい。同様に、喘息及び非小細胞肺癌を診断し、そしてこれらを互いに、そして感染症のような他の肺疾病からの兆候の初期の出現において鑑別するための方法を開発することが好ましい。それが発現の相対強度に関して変化した場合、非小細胞肺癌及び/又は喘息の存在を示す、ヒトの血液中に存在する特異的タンパク質を同定することが更に好ましい。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本発明は、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分光計(“LC−ESIMS”)を使用して医師によって診断されるような、正常な個人並びに非小細胞肺癌及び喘息を有することが知られている患者間で差別的に発現する(differentially expressed)、ヒト血清中に存在するタンパク質を同定する新規な方法を提供する。非小細胞肺癌及び/又は喘息を示すタンパク質の選択は、質量スペクトルのデータ、即ちペプチドの質量及び一次元の時間に対するタンパク質の発現した強度のグラフ的表示を比較することによって行われた。数千のタンパク質を比較し、いずれもの肺組織の病態を有しない個人の集団、医師によって診断された喘息を有する個人の集団及び医師によって診断された非小細胞肺癌を有する個人の集団間で、実質的に異なった強度で発現する11個のタンパク質の選択をもたらした。
【0008】
[0008]具体的には、“正常集団”、“喘息集団”、及び“肺癌集団”からヒト血清を取得した。“正常集団”は、本明細書中で使用する場合、喘息又は肺癌を有しないことが知られた個人を定義することを意味する。“喘息集団”は、本明細書中で使用する場合、喘息を有することが知られ、そして医師によってそのように診断された個人を定義することを意味する。“肺癌集団”は、本明細書中で使用する場合、非小細胞肺癌を有することが知られ、そして医師によってそのように診断された個人を定義することを意味する。
【0009】
[0009]正常集団、喘息集団及び肺癌集団の血清を取得した後、それぞれの血清検体をアリコートに分割し、そして消化剤又はプロテアーゼ、即ち、トリプシンに暴露して、血清検体中に存在するタンパク質を、規定された、そして予測可能な開裂又はペプチドに消化した。次いでトリプシンペプチドとして知られるトリプシンの酵素作用によって産生されたペプチドを、トリプシンによって消化された不溶性物質からの検体を遠心にかけることによって分離して、不溶性物質を沈澱させた。次いでトリプシンペプチドを含有する上清溶液を、毛管液体クロマトグラフィーにかけて、トリプシンペプチドの時間空間的分離を行った。
【0010】
[0010]次いでトリプシンペプチドをLC−ESIMSにかけた。ペプチドを、Supelcosil ABZ+の5μm充填物質の固定相を18cmの充填長さ及び0.375mmの内径で含有するクロマトグラフィーのカラム上の、疎水性流体、即ち、水、0.1容量%のギ酸を含有するアセトニトリルのカラムを通過させることによって、それぞれのペプチドを時間により分離した。分離されたペプチドは、カラムの流出液によって保持される。カラムは、終端を有し、そこからの分離されたペプチドは、次いで接地端子に対して正のバイアスを有するカラム先端への高電位の適用によってエレクトロスプレーされ、荷電された液滴のビームを形成し、これは、適用された電界の力によってLC−ESIMSの入口に向かって加速された。形成された得られた噴霧は、溶解されたトリプシンペプチドを含有する溶媒の小さい液滴からなっていた。液滴は、エレクトロスプレー源の常圧領域に交差する通路によって、そして次いでLC−ESIMSの加熱された毛管の入口で脱溶媒和された。
【0011】
[0011]液滴の脱溶媒和は、正に荷電されたイオン、最も典型的にはペプチドに電荷を分け与えるペプチド上の水素(H)の析出をもたらした。ガス相中のこのような荷電されたペプチドは、当技術において“擬分子イオン”と記載される。擬分子イオンは、各種の電位によってLC−ESIMSの質量分析器を通して引き付けられ、ここにおいてこれらは、質量と電荷の比に基づいて空間及び時間的に分離される。次いで質量と電荷の比によって分離された後、擬分子イオンは、更なる電界勾配によってLC−ESIMSの検出器に向けられ、ここにおいて、擬分子イオンのビームは、電気的インパルスに転換され、これは、データ記録装置によって記録される。
【0012】
[0012]従って、トリプシン消化物中に存在するペプチドは、LC−ESIMSの質量分析器を通過し、ここでそれぞれのペプチドに対する分子量が測定され、試料からのペプチドがカラムを通過する全時間にわたって繰返し獲得される時間に従い、増加する質量スペクトルを作成した。質量スペクトル読取り値は、一般的にLC−ESIMSによって見出されるペプチドの、x軸が測定質量と電荷の比であり、y軸がペプチドのシグナル強度である、グラフ的図示である。次いでこれらの質量スペクトルを、x軸がクロマトグラフィーによる分離の時間であり、z軸が質量スペクトルの質量軸であり、そしてy軸が、LC−ESIMSによって検出された所定の擬分子イオンの量に比例する質量スペクトルシグナルの強度である、時間に関する三次元の表示に構築することができる。
【0013】
[0013]次に、喘息集団及び肺癌集団から試験されたそれぞれの検体と、正常集団から試験されたそれぞれの検体に対する質量スペクトル読取り値を比較して比較分析を行った。LC−ESIMSで検出された推定的に同定されたタンパク質に関連するそれぞれのトリプシンペプチドの擬分子イオンのシグナル(“ピーク”)を、喘息、肺癌及び正常の病態間で比較した。喘息集団又は肺癌集団と正常集団を比較した場合、実質的に変化しないペプチドの量を示す質量スペクトルのピーク強度を持つペプチドは、有意ではないと決定し、そして除外した。一般的に、使用した除外基準は、それぞれの病態からの個々の患者の血清の分析から誘導された、少なくとも10個のデータの組間の所定のタンパク質に対して、同定された特徴的ペプチドの、少なくとも半数のペプチドのピーク強度を比較することを含んでいた。所定のタンパク質から誘導されたペプチドのピークの大部分の強度が、血清データの組の80%に対して、強度において少なくとも10倍高い場合、このタンパク質は、二つの病態の群間で差別的に調節されたものとして分類した。
【0014】
[0014]比較分析の結果として、11個のタンパク質が、喘息集団、肺癌集団及び正常集団間で恒常的に差別的に発現していることが決定された。11個のタンパク質は、タンパク質及びペプチドの既知のデータベース又はライブラリーを参照することによって同定された。このようなデータベースの例は、国立バイオテクノロジー情報センター(“NCBInr”)によって維持されているEntrez Protein、スイスのバイオインフォメーションインスチチュート(“SwissProt”)によって維持されているExPASy、及びロンドンのインペリアルカレッジの医学研究会議の臨床科学センターの質量スペクトルデータベース(“MSDB”)を含む。
【0015】
[0015]正常、肺癌及び喘息集団のそれぞれからのそれぞれの検体の質量スペクトル読取り値を、Mascotと呼ばれる既知の検索エンジンにインプットした。Mascotは、当技術において既知の検索エンジンであり、これは、質量スペクトルのデータを使用して、四つの主要な配列決定データベース、即ちMSDB、NCBInr、SwissProt及びdbESTデータベースからタンパク質を同定する。検索基準及びパラメータをMascotプログラムにインプットし、そしてそれぞれの検体をMascotプログラムにより実行した。次いでMascotプログラムを配列決定データベースによりインプットされたペプチドで実行し、それぞれのペプチドのピーク強度及び質量を、既知のペプチド及びタンパク質の質量及びピーク強度と比較した。次いでMascotは、実行したそれぞれのペプチドに対する、通常“有意なマッチ”として知られる、可能性のあるマッチの候補リストを作成した。
【0016】
[0016]有意なマッチは、試験されたそれぞれの検体に対する“Mowseスコア”と呼ばれるスコアを決定することによって、Mascotプログラムによって決定される。Mowseスコアは、スコアが、−10LOG10(P)であるアルゴリズムであり、式中、Pは、観察されたマッチが無秩序な現象である確率であり、これは、pが0.05より小さい場合、有意性のp値と相関し、これは、一般的に科学界において容認された有意性の標準である。概略55ないし概略66又はそれより大きいMowseスコアは、一般的に有意と考えられる。有意性のレベルは、具体的な探求上の考慮及びデータベースのパラメータにより、幾分変化する。有意なマッチは、それぞれのペプチドの実行のために戻され、タンパク質の候補リストとなった。
【0017】
[0017]次いでペプチドを、有意なマッチからのタンパク質と対応して、ペプチドのMascotプログラムによる実行の確認が決定された。Mascotプログラムによって同定されたそれぞれのペプチド及び有意なマッチからのそれぞれのタンパク質のために、手分析を行なった。化学的又は電子的を問わず“ノイズ”の結果として決定されたピーク強度のマッチは除外した。質量スペクトル読取りからのデータは、生データ、ピーク強度、電荷多重性、同位体分布及び隣接電荷状態を確認するために有意なマッチと相互照合した。
【0018】
[0018]次いでMascotプログラムによる自働検索によって見落とされたかもしれないペプチドを候補リストに追加するために逆検索を行った。比較されるペプチドのそれぞれのパラメータと実質的にマッチする単一のタンパク質を意味する“最良のマッチ”を選択し、トリプシンペプチド及びそのそれぞれの分子質量が、既知のアミノ酸又はタンパク質の遺伝子配列に基づいて計算される、コンピュータ内における(in silicoの)消化を行なうことによって、更なるペプチドを同定した。次いでこれらの予想されたペプチドの質量を、生の質量スペクトルのデータに対して検索し、そして確認されたいずれものピークを先に記載したように試験し、そして認定する。次いでMascotによって自働的に確認されたもの及び手作業実験によって確認されたものを含むペプチドの全ては、Mascotによって使用される質量リストに入れられる。次いで改良されたマッチは、改良されたMowseスコアを誘導するために、本明細書中で以下に記載されるように使用される。
【0019】
[0019]同定プロセスの結果として、喘息集団、肺癌集団及び/又は正常集団間で有意に差別的に発現することが決定された11個のタンパク質は、BAC04615、Q6NSC8、CAF17350、Q6ZUD4、Q8N7P1、CAC69571、プロテイン質4を含有するFERM領域、JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライス型、シンタキシン11、AAK13083、及びAAK130490と同定された。BAC04615、Q6NSC8、CAF17350、Q6ZUD4、Q8N7P1は、遺伝子配列決定の努力の結果として同定されたタンパク質である。プロテイン4を含有するFERM領域は、細胞質内タンパク質膜足場に関係することが知られている。JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスは、既知のプロテアソームである。シンタキシン11は、細胞の免疫反応において活性である。BAC04615、AAK13083、及びAAK130490は、主要組織適合複合体(“MHC”)関連のタンパク質である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】[0020]図1は、タンパク質BAC04615に対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【図2】[0021]図2は、タンパク質Q6NSC8に対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【図3】[0022]図3は、タンパク質CAF17350に対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【図4】[0023]図4は、タンパク質Q6ZUD4に対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【図5】[0024]図5は、タンパク質Q8N7P1に対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【図6】[0025]図6は、タンパク質CAC69571に対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【図7】[0026]図7は、プロテイン4を含有するタンパク質FERM領域に対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【図8】[0027]図8は、タンパク質JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスに対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【図9】[0028]図9は、タンパク質シンタキシン11に対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【図10】[0029]図10は、タンパク質AAK13083及びAAK13049に対するMowseスコアを示す表及び有意なマッチを開示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0030]本発明は同定方法を提供するものであって、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分光計を使用して、正常な個人と、医師による診断で非小細胞肺癌及び喘息を有することが判明している患者の間で差別的に発現するヒト血清中に存在するタンパク質を同定する。いずれものヒト肺組織の病態を有しないヒトの集団、喘息を持つと診断されたヒトの集団、及び非小細胞肺癌を持つと診断されたヒトの集団間で、実質的に、そして恒常的に差別的に発現するタンパク質を決定し、そしてこれらのタンパク質のアイデンティティを取得することによって、同一タンパク質を同定し、そして喘息又は非小細胞肺癌を同定し、そして診断するタンパク質の発現のレベルを定量する血液試験によって、患者における病態の存在を、それぞれの疾病の進行中に、更に早く同定することが可能である。
【0022】
[0031]ヒト血液試料を志願者から収集した。30個の試料を、非小細胞肺癌又は喘息のいずれをも有しないことが知られた個人から収集した。非小細胞肺癌又は喘息のいずれをも有しないことが知られた個人は包含され、そして本明細書中では“正常集団”と呼ばれる。更に用語“肺癌”は、本明細書中で使用される場合、非小細胞肺癌を記載することを意味する。28個の血液試料を、喘息を有するとして知られ、そして医師によってそのように診断された個人から収集した。喘息を有するとして知られた個人は包含され、そして本明細書中では“喘息集団”と呼ばれる。30個の血液試料を、非小細胞肺癌を有することが知られ、そして医師によってそのように診断された個人から収集した。非小細胞肺癌を有することが知られた個人は包含され、そして本明細書中では“肺癌集団”と呼ばれる。一般的に、本明細書中で使用する場合、用語“肺癌”又は“肺癌類”は、非小細胞肺癌を指すことを意味する。最後に、71個の血液試料を、医師によって記録されているような喫煙の履歴によって肺癌の危険度を有することが知られた個人から収集した。これらの71個の試料は、前記の研究及び実験にかけられ、そして従って本明細書中では検討されない。
【0023】
[0032]血液試料を、IRBの認可されたプロトコル下で、インフォームドコンセント後、標準的な静脈穿刺技術を使用して滅菌された10mlのBDVacutainer(登録商標)のガラスの血清用赤色蓋の試験管に、志願者から収集した。次いで血液試料を、室温で30分間そのままにしておき、血液を凝固させた。試料を、標準的な卓上遠心器中で室温で2000rpmで10分間遠心して、血清を血液試料から分離した。次いでそれぞれの試料の血清を、ピペットにより血清を第2の試験管に移した。第2の試験管を、氷上で予備冷却して、タンパク質分解及び変性による分解を制限することによって、それぞれの血清検体の一体性を確保した。次いで収集されたそれぞれの試料からの血清検体を、氷上の予備冷却されたCryovial試験管中に1.0mlのアリコートで分割した。血清検体からのアリコートを、少なくとも氷点下摂氏80度(−80℃)のような冷たい温度で保存した。処理時間は、静脈切開から−80℃における保存まで1時間以下であった。
【0024】
[0033]喘息集団、正常集団及び肺癌集団のそれぞれから、8ないし10個の試料を試験するために無作為に選択した。それぞれの集団からのそれぞれの血清検体を、プロテアーゼ又は消化剤、この場合トリプシンにかけた。トリプシンをプロテアーゼとして使用し、そしてトリプシンが、ペプチド鎖を、リシン及びアルギニンのカルボキシル側で、プロリンが存在する場合にリシン又はアルギニンのいずれかの直後で行われることを除き、開裂することが知られている事実により、高度に特異的な、そして高度に予測可能な開裂を行うその能力のために、これをプロテアーゼとして使用することが好ましい。トリプシンが使用されているが、他のプロテアーゼ又は消化剤を使用することが可能である。少なくともトリプシンのように、特異的に開裂するプロテアーゼ又はプロテアーゼの混合物を使用することが好ましい。
【0025】
[0034]開裂後、トリプシンによって残されたペプチドであるトリプシンペプチドは、次いで検体を、遠心及び0.1%のギ酸を伴うアセトニトリル水溶液の勾配を伴い、Eksigent 2D毛管HPCLで0.375×180mmのSupelcosil ABZ+カラムを使用する、毛管液体クロマトグラフィーにかけることによって不溶性物質から分離して、発生したトリプシンペプチドのクロマトグラフィーによる解離を行う。この場合、これらが、HPLCカラムの終端と共有末端であるエレクトロスプレーエミッターから同時に溶出される場合、エレクトロスプレーイオン化過程が、より高いプロトン親和性を有する型のイオンがより低いプロトン親和性を有するイオンのイオン形成を抑制するイオンのコサプレッションにかけられるために、このペプチドの分離が必要である。
【0026】
[0035]この方法論は、トリプシン消化において産生された多くのペプチドの分離を可能にし、そしてコサプレッションの問題を最小化することを援助し、これによって擬分子イオンのコサプレッションの形成の機会を最大化し、これによってイオンの採取を最大化する。次いでそれぞれの検体に対するトリプシンペプチドは、LC−ESIMSにかけられる。LC−ESIMSは、それぞれの検体中のペプチドを、先に記載したような水、アセトニトリル及びギ酸からなる溶媒系のカラムを通過させることによって、それぞれの検体中のそれぞれのペプチドを時間により分離する。
【0027】
[0036]次いでペプチドを、エレクトロスプレーイオン化源中で噴霧して、ペプチドをイオン化し、そしてペプチドの擬分子イオンを、先に記載したように産生した。ペプチドを、LC−ESIMS中の質量分析器を通過させ、ここで、それぞれのペプチド擬分子イオンの分子質量を測定した。LC−ESIMSを通過した後、質量スペクトルのデータ、即ちペプチドの強度、分子量及びクロマトグラフィーカラムからの溶出の時間から、それぞれの試料中に存在するペプチドに対して、質量スペクトル読取り値が作成された。質量スペクトル読取り値は、一般的に、x軸が、質量と電荷の比の測定値であり、y軸が、擬分子イオンシグナルの強度であるLC−ESIMSによって記録されたペプチドの擬分子イオンシグナルのグラフ的図示である。次いでこれらのデータは、LC−ESIMSを制御するソフトウェア系によって加工され、そして得られたデータを獲得し、そして保存する。
【0028】
[0037]質量スペクトルのデータが取得され、そして質量スペクトル読取り値が認識されたならば、比較分析が行われ、それぞれの集団に対して行われたLC−ESIMS中で試験されたそれぞれの血清検体の質量スペクトル読取りが、病態間的及び病態内的の両方で行われた。正常集団内で試験されたそれぞれの検体間で、質量スペクトルのピークを比較した。次いで、喘息集団及び肺癌集団内で試験されたそれぞれの検体間で、質量スペクトルのピークを比較した。病態内比較を行った後、病態間比較を行い、ここにおいて、喘息集団に対してLC−ESIMS中で試験されたそれぞれの検体に対する質量スペクトル読取り値を、正常集団において試験されたそれぞれの検体と比較した。同様に、肺癌集団に対してLC−ESIMSにおいて試験されたそれぞれの検体に対する質量スペクトル読取り値を、正常集団において試験されたそれぞれの検体と比較した。
【0029】
[0038]ペプチド強度が、病態内で一貫性なく差別的に発現しているか、或いは喘息集団又は肺癌集団と正常集団を比較した場合、実質的に変化しない(強度において10倍より少ない変動)ことを示す質量スペクトル読取り値を持つペプチドは、有意ではないと決定し、そして除外した。一般的に、使用した除外基準は、それぞれの病態からの個々の患者の血清の分析から誘導された少なくとも10個のデータの組中の所定のタンパク質に対して、同定された特徴的ペプチドの少なくとも半分に対するペプチドのピーク強度を比較することを含んでいた。所定のタンパク質から誘導されたペプチドのピークの大部分の強度が、血清データの組の80%に対して、強度において少なくとも10倍高い場合、このタンパク質は、二つの病態の群間で差別的に調節されたものとして分類した。
【0030】
[0039]然しながら、差別的に調節されたことが観察されたペプチドから生じたタンパク質の正体は未知であり、同定する必要があった。タンパク質の同定を行うために、ペプチドの擬分子イオンのシグナル強度を、既知のタンパク質及びペプチド並びに可能性のあるタンパク質及びペプチドのライブラリーを含有する既知のデータベースと比較した。
【0031】
[0040]正常、肺癌及び喘息集団のそれぞれからのそれぞれの検体に対するトリプシン消化物の質量スペクトル読取り値を、Mascotと呼ばれる既知の検索エンジンにインプットした。Mascotは、四つの主要な配列決定データベース、即ちMSDB、NCBInr、SwissProt及びdbESTデータベースからの質量スペクトルデータを、タンパク質を同定するために使用する当技術において知られた検索エンジンである。これらのデータベースは、既知の配列の全てのタンパク質、及び遺伝子配列から誘導された特徴的タンパク質転写開始領域の観察に基づく全ての仮想タンパク質の情報を含有する。これらのデータベースは、正確性及び重複性に対して連続的に照合され、そして新しいタンパク質及び遺伝子配列が同定され、そして科学及び特許文献に公開された場合、連続的な追加にかけられる。
【0032】
[0041]比較分析の結果として、11個のタンパク質が、喘息集団、肺癌集団及び正常集団間で恒常的に差別的に発現することが決定された。検索基準及びパラメータを、Mascotプログラムにインプットし、そしてそれぞれの集団に対する質量スペクトル読取りからの質量スペクトルデータを、Mascotプログラムにより実行した。Mascotプログラムに入れた質量スペクトルのデータは、それぞれの病態の全ての検体に対するものであった。次いでMascotプログラムは、インプットしたペプチドに対する質量スペクトルデータを、配列決定データベースに対して実行し、それぞれのペプチドのピーク強度及び質量と、既知のペプチド並びにタンパク質の質量及びピーク強度を比較した。次いでMascotは、検索結果を作成し、これは、通常分析されたそれぞれの試料に対する“有意なマッチ”として知られる可能性のあるタンパク質の同定マッチの候補リストを戻した。
【0033】
[0042]有意なマッチは、試験されたそれぞれの検体に対する“Mowseスコア”と呼ばれるスコアを決定することによってMascotプログラムによって決定される。Mowseスコアは、スコアが、−10LOG10(P)であるアルゴリズムであり、式中、Pは、観察されたマッチが無秩序な現象である確率であり、これは、pが0.05より小さい場合、有意性のp値と相関し、これは、一般的に科学界において容認された有意性の標準である。概略55ないし概略66又はそれより大きいMowseスコアは、一般的に有意と考えられる。有意性のレベルは、具体的な検索上の考慮及びデータベースのパラメータにより幾分変化する。有意なマッチは、それぞれのペプチドの実行のために戻され、タンパク質の候補リストとなる。
【0034】
[0043]次に、喘息集団及び肺癌集団からの試験されたそれぞれの検体に対する質量スペクトル読取り値と、正常集団からの試験されたそれぞれの検体を比較して比較分析を行った。LC−ESIMSで検出された推定的に同定されたタンパク質に関係するそれぞれのトリプシンペプチドの擬分子イオンのシグナル(ピーク)を、喘息、肺癌及び正常病態間で比較した。ペプチドの量が、喘息集団又は肺癌集団と正常集団を比較した場合、実質的に変化しないことを示す質量スペクトルのピーク強度を持つペプチドは、有意ではないと決定し、そして除外した。一般的に、使用した除外基準は、所定のタンパク質に対する同定された特徴的なペプチドの少なくとも半分に対するペプチドのピーク強度を、それぞれの病態からの個々の患者の血清の分析から誘導された少なくとも10個のデータの組と比較することを含んでいた。所定のタンパク質から誘導されたペプチドのピークの大部分の強度が、血清データの組の80%に対して、強度において少なくとも10倍高い場合、このタンパク質は、二つの病態の群間で差別的に調節されたものとして分類した。
【0035】
[0044]質量スペクトル読取りからのデータは、生データ、ピーク強度、電荷多重性、同位体分布及び隣接電荷状態を確認するために有意なマッチと相互照合した。次いでMascotプログラムによる自働検索によって見落とされて取得されたペプチドを、候補リストに追加するために逆探査を行った。更なるペプチドを、比較されるペプチドのそれぞれのパラメータと実質的にマッチする単一のタンパク質を意味する“最良のマッチ”を選択し、トリプシンペプチド及びそのそれぞれの分子質量が、既知のアミノ酸又はタンパク質の遺伝子配列に基づいて計算される、コンピュータ内における(in silico)消化を行なうことによって同定した。次いでこれらの予想されたペプチドの質量を、生の質量スペクトルのデータに対して検索し、そして同定されたいずれものピークを先に記載したように試験し、そして認定する。次いでMascotによって自働的に同定されたもの及び手作業実験によって同定されたものを含むペプチドの全ては、Mascotによって使用される質量リストに入れられる。次いで改良されたマッチは、改良されたMowseスコアを誘導するために、本明細書中で以下に記載されるように使用される。
【0036】
[0045]図1ないし図10において、Mascot検索の結果が、正常集団と比較された肺癌集団又は喘息集団のいずれか間で差別的に発現したことが同定されたそれぞれのタンパク質に対して示される。それぞれの場合において、検索基準及びパラメータを入れ、そして有意性の許容度に対するMowseスコアの閾値を確立した。図1において、タンパク質BAC04615に対するMascot検索の結果を示す。検索するために選択されたデータベースは、NCBInr10であり、そしてMascotプログラムに入れた検体の分類は、ホモサピエンス12と設定した。Mowseスコアの有意性の閾値を、66又はそれより大きいMowse値14として確立した。Mascot検索の結果として、Mowseスコアのグラフ18によって示されるように、121の最大スコアが得られ、グラフのy軸は、特定のMowseスコアを有することが確認されたタンパク質の数を示す。
【0037】
[0046]なお図1において、121の最大Mowseスコアは、行20によって示したように、gi/21755032に対して得られた。121のMowseスコアは、高度に有意であり、マッチが無秩序であることが非常に低い確率があることを意味する。事実、列28に示すように、このマッチが無秩序に起こる期待値は、Mascotプログラムによって1.7×10−07として示される。然しながら、列22、24及び26に示されたタンパク質も更に非常に高いMowseスコアを有し、これらの三つのタンパク質も同様に有意なマッチであることを示した。次いで有意ではない及び/又はノイズデータを除去し、そして生データ、ピーク強度、電荷多重性、同位体分布及び隣接電荷状態を相互照合する手分析を行った。手分析の結果として、行22、24及び26に示したタンパク質が有意なマッチである確率が有意に減少し、そして従って、行22、24及び26に示したタンパク質を、マッチから除外した。行20に示したタンパク質、gi/21755032は、図1のMascotプログラムに入れられた質量スペクトルデータによって示されるタンパク質として同定された。行20に示したタンパク質番号、gi/21755032は、gi番号(時に“GI”と書かれる)が、単純にNCBIによって処理されるそれぞれの配列記録に継続的に指定される一連の数字である。gi/21755032は、タンパク質BAC04615に対応する。
【0038】
[0047]図2において、タンパク質Q6NSC8に対するMascot検索の結果が開示される。Mowseスコアの有意性の閾値29が、64のMowse値として確立され、そしてMowseスコアのグラフ30中のMowseスコアの棒36によって示されるように117の最大Mowseスコアが得られた。行32によって示されるように、Mowseスコアの棒36に対応する同定されたタンパク質は、Q6NSC8である。図2に示すように、Mowseスコアのグラフ30の斜線部分34は、記録されたが、しかし有意性の閾値以下であり、そして従って考慮から除外されたタンパク質を示す。
【0039】
[0048]図3において、タンパク質CAF17350に対するMascot検索の結果を開示する。Mowseスコアの有意性の閾値38が、64のMowse値として確立され、そしてMowseスコアのグラフ40中のMowseスコアの棒42によって示されるように、152の最大Mowseスコアが得られた。Mowseスコアの棒42に対応する同定されたタンパク質は、行46に示すように、CAF17350である。図3に示すように、Mowseスコアのグラフ40の斜線部分44は、記録されたが、しかし有意性の閾値以下であり、そして従って考慮から除外されたタンパク質を示す。
【0040】
[0049]図4において、タンパク質Q6ZUD4に対するMascot検索の結果を開示する。Mowseスコアの有意性の閾値48は、64のMowse値として確立され、そしてMowseスコアグラフ50のMowseスコアの棒52によって示されるように、220の最大Mowseスコアが得られた。Mowseスコアの棒52に対応する同定されたタンパク質は、行56に示すようにQ6ZUD4である。図4に示すように、Mowseスコアグラフ50の斜線部分52は、記録されたが、しかし有意性の閾値以下であり、そして従って考慮から除外されたタンパク質を示す。
【0041】
[0050]図5において、タンパク質Q8N7P1に対するMascot検索の結果が開示される。Mowseスコアの有意性の閾値58は、66のMowse値として確立され、そしてMowseスコアグラフ60中のMowseスコアの棒62によって示されるように、74の最大Mowseスコアが得られた。Mowseスコアの棒62に対応する同定されたタンパク質は、行64に示すように、gi/71682143である。図1と同様に、gi/71682143は、Q8N7P1に対応する。行66及び68に示したタンパク質も非常に高いMowseスコアを有し、これらの二つのタンパク質が同様に有意なマッチであることを示す。次いで有意ではない及び/又はノイズのデータを除去し、そして生データ、ピーク強度、電荷多重性、同位体分布及び隣接電荷状態を相互照合する手分析を行った。手分析の結果として、行66及び68に示したタンパク質が有意なマッチである確率は有意に減少し、そして従って、行66及び68に示したタンパク質を、マッチから除外した。Q8N7P1は、図5のMascotプログラムに入れた質量スペクトルデータによって示されるタンパク質として同定された。70におけるタンパク質Q8NB22の表示は、これがQ8N7P1と同一のタンパク質であるために示した。
【0042】
[0051]図6において、タンパク質CAC69571に対するMascot検索の結果が開示される。Mowseスコアの有意性の閾値72は、64のMowse値として確立され、そしてMowseスコアグラフ74中のMowseスコアの棒76によって示されるように、171の最大Mowseスコアが得られた。Mowseスコアの棒76に対応する、示されたタンパク質は、行78に示すように、CAC69571である。行80、82、84及び86に示したタンパク質も又非常に高いMowseスコアを有し、これらの四つのタンパク質も同様に有意なマッチであることを示す。次いで有意ではない及び/又はノイズのデータを除去し、そして生データ、ピーク強度、電荷多重性、同位体分布及び隣接電荷状態を相互照合する手分析を行った。手分析の結果として、行80、82、84及び86に示したタンパク質が有意なマッチである確率は有意に減少し、そして従って、行80、82、84及び86に示したタンパク質を、マッチから除外した。CAC69571は、図6のMascotプログラムに入れた質量スペクトルデータによって示されるタンパク質として同定された。
【0043】
[0052]図7において、プロテイン4を含有するタンパク質FERM4領域に対するMascot検索の結果を開示する。Mowseスコアの有意性の閾値88は、64のMowse値として確立され、そしてMowseスコアグラフ90中のMowseスコアの棒92によって示されるように、335の最大Mowseスコアが得られた。Mowseスコアの棒92に対応する、示されたタンパク質は、行98に示すように、プロテイン4を含有するタンパク質FERM4領域である。行100、102、104及び106並びに108に示したタンパク質も又非常に高いMowseスコアを有し、これらの五つのタンパク質も同様に有意なマッチであることを示す。次いで有意ではない及び/又はノイズのデータを除去し、そして生データ、ピーク強度、電荷多重性、同位体分布及び隣接電荷状態を相互照合する手分析を行った。手分析の結果として、行100、102、104及び106並びに108に示したタンパク質が有意なマッチである確率は有意に減少し、そして従って、行100、102、104及び106並びに108に示したタンパク質を、マッチから除外した。プロテイン4を含有するタンパク質FERM4領域は、図7のMascotプログラムに入れた質量スペクトルデータによって示されるタンパク質として同定された。
【0044】
[0053]図8において、JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライス型(“JCC1445”)に対するMascot検索の結果を開示する。Mowseスコアの有意性の閾値110は、66のMowse値として確立され、そしてMowseスコアグラフ112中のMowseスコアの棒114によって示されるように、123の最大Mowseスコアが得られた。Mowseスコアの棒114に対応する、示されたタンパク質は、行116に示すように、gi/4506179である。gi/4506179は、タンパク質JCC1445に対応する。行118、120、122、124、126及び128に示したタンパク質も又非常に高いMowseスコアを有し、これらの六つのタンパク質も同様に有意なマッチであることを示す。次いで有意ではない及び/又はノイズのデータを除去し、そして生データ、ピーク強度、電荷多重性、同位体分布及び隣接電荷状態を相互照合する手分析を行った。手分析の結果として、行118、120、122、124、126及び128に示したタンパク質が有意なマッチである確率は有意に減少し、そして従って、行118、120、122、124、126及び128に示したタンパク質を、マッチから除外した。JCC1445は、図8のMascotプログラムに入れた質量スペクトルデータによって示されるタンパク質として同定された。
【0045】
[0054]図9において、タンパク質シンタキシン11に対するMascot検索の結果を開示する。Mowseスコアの有意性の閾値130は、66のMowse値として確立され、そしてMowseスコアの棒134並びに行136及び138によって示されるように、127の最大Mowseスコアが二回得られた。シンタキシン11に対する95の第3のMowseスコアが、行140に示すように得られた。シンタキシン11は、図9のMascotプログラムに入れた質量スペクトルデータによって示されるタンパク質として同定された。
【0046】
[0055]図10において、二つのタンパク質、AAK13083及びAAK13049に対するMascot検索の結果が開示される。Mowseスコアの有意性の閾値142は、64のMowse値として確立され、そして行148及びMowseスコアの棒146によって示されるように、タンパク質Q5VY82によって273の最大Mowseスコアが得られた。行150、152及び154に示したタンパク質も又非常に高いMowseスコアを有し、これらの三つのタンパク質も同様に有意なマッチであることを示す。然しながら、行った手分析の結果として、行150及び154に示したタンパク質は、可能性のあるマッチから除外した。Q5VY82は、これが有意に差別的に発現したか否かを決定するために更なる研究及び実験を受けた。行152に示したAAK13049及びAAK13083は、図10のMascotプログラムに入れた質量スペクトルデータによって示されるタンパク質として両方とも同定された。
【0047】
[0056]図1ないし図10は、正常集団と比較した場合、喘息及び/又は肺癌集団において差別的に発現する11個のタンパク質を同定するために行われたデータ分析を開示している。本明細書中に記載され、そして図1ないし図10に示したような方法は、11個のタンパク質のそれぞれに対して、喘息集団、正常集団及び肺癌集団に対して行われた。
【0048】
[0057]同定過程の結果として、喘息集団、肺癌集団及び/又は正常集団間で有意に差別的に発現することが決定された11個のタンパク質は、BAC04615、Q6NSC8、CAF17350、Q6ZUD4、Q8N7P1、CAC69571、プロテイン4を含有するFERM領域、JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライス型、シンタキシン11、AAK13083、及びAAK130490として同定された。BAC04615、Q6NSC8、CAF17350、Q6ZUD4、Q8N7P1は、遺伝子配列決定の努力の結果として同定されたタンパク質である。プロテイン4を含有するFERM領域は、細胞質内タンパク質膜足場に関係することが知られている。JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライス型は、既知のプロテアソームである。シンタキシン11は、細胞の免疫反応において活性である。BAC04615、AAK13083、及びAAK130490は、主要組織適合複合体(“MHC”)関連のタンパク質である。
【0049】
[0058]喘息及び肺癌患者において恒常的に差別的に発現する11個の特異的タンパク質を同定したことにより、これらの病態を、患者の血清からのタンパク質BAC04615、Q6NSC8、CAF17350、Q6ZUD4、Q8N7P1、CAC69571、プロテイン4を含有するFERM領域、JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライス型、シンタキシン11、AAK13083、及びAAK130490を、LC−ESIMSにかけ、これらのタンパク質から質量スペクトルデータを取得し、そして質量スペクトルデータを、正常集団の質量スペクトルデータと比較することによって、疾病の進行の初期に診断することが可能である。質量スペクトルデータを、肺癌集団及び/又は喘息集団からの質量スペクトルデータと比較することによって更なる分析を行なって、所定の病態の存在を確認するか又は取消すことができる。
【0050】
[0059]分析は、勿論、制約されるものではないが:放射免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着測定法、放射測定を伴う高圧液体クロマトグラフィー、可視光及び紫外光の吸収による分光測定的検出、質量分光測定的定性及び定量分析、ウェスタンブロット、放射性プローブ又は核の検出による定量的可視化を伴う1又は2次元ゲル電気泳動、吸光又は蛍光側光法を伴う抗体に基づく検出、多くの化学発光レポーター系のいずれかの発光による定量、酵素アッセイ、免疫沈降又は免疫捕獲アッセイ、或いは多くの固相及び液相免疫アッセイのいずれかを含む、それによって特異的タンパク質の濃度を決定することができる複数の更なる技術に拡張することができる。
【0051】
[0060]肺癌又は喘息の存在を、疾病の進行の初期に決定することに加えて、このような病態の指標として本明細書中で同定されたタンパク質は、肺癌及び/又は喘息の治療の目的を推進するための関連する方法で使用し、そして適用することができる。例えば、これらのタンパク質と結合するための抗体を開発することができる。抗体は、抗体のいずれか又は全てを単一のビーズ基剤パネル又はビーズ基剤免疫アッセイのキットに組込まれる、バイオマーカーパネルに組込むことができる。次いでタンパク質は、LuminexのxMAP技術のようなビーズ基剤技術を使用する多重免疫アッセイにかけ、そして定量することができる。更に、他の非ビーズ基剤アッセイを、これらのタンパク質の発現レベルを定量するために使用することができる。これらのタンパク質の発現レベルを定量することによって、これらの定量化した結果を、正常集団、喘息集団及び/又は肺癌集団の発現レベルと比較して、患者中の肺癌又は喘息の存在を確認又は取消すことができる。
【0052】
[0061]これらのタンパク質は、更に薬物治療、放射線/化学療法、又は外科治療のような治療的介入に対する患者の反応を評価するための薬理学の分野に使用し、そして適用することができる。更に、個々のタンパク質又は一団のタンパク質を測定するためのキットを、喫煙者のような大きい危険度の患者、又は病態の家族履歴を持つ患者の健康状態をモニターするために、患者の日常の試験のために使用することができる。
【0053】
[0062]最後に、本明細書中で同定された11個のタンパク質のそれぞれに対するアミノ酸配列の配列リストを本明細書と共に出願し、そしてこれは、本明細書中に参考文献として特異的に援用される。配列リストにおいて、配列番号:1に開示されるアミノ酸配列は、タンパク質BAC04615に対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:2において開示されるアミノ酸配列は、タンパク質Q6NSC8に対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:3において開示されるアミノ酸配列は、タンパク質CAF17350に対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:4において開示されるアミノ酸配列は、タンパク質Q6ZUD4に対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:5において開示されるアミノ酸配列は、プロテイン4を含有するタンパク質FERMに対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:6において開示されるアミノ酸配列は、タンパク質AAK13083に対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:7において開示されるアミノ酸配列は、タンパク質Q8N7P1に対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:8において開示されるアミノ酸配列は、タンパク質CAC69571に対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:9において開示されるアミノ酸配列は、タンパク質JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスに対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:10において開示されるアミノ酸配列は、タンパク質シンタキシン11に対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。配列番号:11において開示されるアミノ酸配列は、タンパク質AAK13049に対して、本出願を出願した日付において知られた一次アミノ酸配列である。
【0054】
[0063]本明細書中及び配列リスト中に開示したアミノ酸配列は、本出願の出願日において知られた一次アミノ酸配列である。タンパク質に対する配列リスト中に記載された配列に、将来改変を行うことができることは理解されることである。例えば、記載したタンパク質の加工に伴い変化する翻訳後修飾が発見されるか、又は身体内のその機能のある時点においてタンパク質と機能的付加体を形成することができる。更に、配列リストは、スプライシングの差又は指名したタンパク質と同様なファミリーの構造的に密接に関連するタンパク質の発見によって変更することができる。更に、記載したタンパク質の加工又は分解から得られるその並べ替えの全てにおけるタンパク質分解の断片は、親タンパク質を医薬及び薬理学の分野において活用することができる方法のすべてにおいて使用可能なマーカー断片を産生することができる。このような改変は、本明細書中で開示される本発明の範囲から逸脱するものではなく、本明細書中に開示される本発明の範囲内であることを意図している。
【0055】
[0064]本発明は、具体的な態様に言及して説明されているが、本説明は、制約的な意味で解釈されることを意味してはいない。開示された態様の各種の改変、並びに本発明の別の態様は、本発明の説明を参照して当業者にとって明白であるものである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲内に入るこのような改変を包含するものであることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を、前記タンパク質が、前記病態を有しないヒトからの血清中の同一の前記タンパク質の発現のレベルと比較した場合、発現のレベルが変化している場合に同定する方法であって、以下の工程を含む方法:
第1に、前記ヒト肺組織の前記病態を持たないヒトの集団から、複数のヒト血清を取得し;
第2に、喘息を持つヒトの集団から、複数のヒト血清を取得し;
第3に、非小細胞肺癌を持つヒトの集団から、複数のヒト血清を取得し;
前記第1の取得工程、前記第2の取得工程、及び前記第3の取得工程中に取得した前記ヒト血清を消化剤に暴露し、前記消化剤は、前記ヒト血清中の前記タンパク質を所定の、そして定義されたペプチドに開裂し;
前記ペプチドを前記ヒト血清から分離し;
前記第1の取得工程、前記第2の取得工程、及び前記第3の取得工程中に取得された前記複数のヒト血清のそれぞれからの前記ペプチドを、液体クロマトグラフィー質量分光計を使用する分析にかけ、前記質量分光計は、前記カラムを通って流れる溶媒系を伴う疎水性固定相のカラムをその中に有し、前記溶媒系は前記ペプチドを分離し、そして検出機構は質量スペクトル読取り値を発生し、前記質量スペクトル読取り値は、前記ペプチドの質量、及び前記ペプチドが前記カラムを通過する時間にわたる前記ペプチドの前記強度を測定するグラフ的図示を含んでなり;
第1に、前記第1の取得工程において取得した前記ヒト血清からの前記質量スペクトル読取り値を、前記第2の取得工程において取得した前記ヒト血清からの前記質量スペクトル読取り値と比較し;
第2に、前記第1の取得工程において取得した前記ヒト血清からの前記質量スペクトル読取り値を、前記第3の取得工程において取得した前記ヒト血清からの前記質量スペクトル読取り値と比較し;
第3に、前記第2の取得工程において取得した前記ヒト血清からの前記質量スペクトル読取り値を、前記第3の取得工程において取得した前記ヒト血清からの前記質量スペクトル読取り値と比較し;
前記第1の比較工程、前記第2の比較工程、及び前記第3の比較工程において比較された前記質量スペクトル読取り値を選択し、ここで、前記質量スペクトル読取り値が、(a)前記喘息を持つヒトの前記集団及び前記肺組織の前記病態を持たないヒトの前記集団、(b)前記非小細胞肺癌を持つヒトの前記集団及び前記肺組織の前記病態を持たないヒトの前記集団、及び(c)前記喘息を持つヒトの前記集団及び前記非小細胞肺癌を持つヒトの前記集団間で、同一の前記ペプチドの前記強度が実質的に変化していることを示し;
前記ヒト肺組織の前記病態を示す前記タンパク質を、前記選択工程中に選択した前記質量スペクトル読取り値から前記ペプチドの正体を取得することによって同定し;そして
ここにおいて、前記ヒト肺組織の病態が、前記喘息及び前記非小細胞肺癌を含む。
【請求項2】
前記消化剤が、トリプシン又は他のエンドプロテアーゼである、請求項1に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項3】
前記同定工程が、更に:
前記選択工程中に選択された前記質量スペクトル読取り値を、所定のコンピュータープログラムにより分析し、前記所定のコンピュータープログラムは、前記ペプチドの前記質量スペクトル読取り値を、少なくとも一つの事前定義されたタンパク質の質量スペクトル読取り値のライブラリーと比較し、そして前記質量スペクトル読取り値中の前記ペプチドの前記質量及び前記強度と、前記事前定義されたタンパク質の質量及び強度と対応させ;そして
前記所定のコンピュータープログラムからの結果として同定されたタンパク質を取得すること;
の工程を含んでなる、請求項2に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項4】
前記同定工程が、更に:
前記選択工程中に選択された前記質量スペクトル読取り値を、所定のコンピュータープログラムにより実行し、前記所定のコンピュータープログラムは、前記ペプチドの前記質量スペクトル読取り値を、少なくとも一つの事前定義されたタンパク質の質量スペクトル読取り値のライブラリーと比較し、そして前記質量スペクトル読取り値中の前記ペプチドの前記質量及び前記強度と、前記事前定義されたタンパク質の候補リストの質量及び強度と対応させ、前記候補リストは、複数の前記事前定義されたタンパク質を含んでなり、前記質量及び前記強度は、前記ペプチドの前記質量及び前記強度と実質的に同様であり;そして
前記候補リストから結果として同定されたタンパク質を取得すること;
の工程を含んでなる、請求項2に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項5】
前記決定工程が:
前記候補リスト上の、前記ペプチドの前記強度及び質量と、殆んど実質的に同様ではない前記タンパク質の前記強度及び前記質量を排除し;そして
前記候補リストから、前記ペプチドの前記強度及び前記質量と、殆んど実質的に同様な前記強度及び前記質量を選択すること;
の工程を含んでなる、前記候補リスト中の、前記結果として同定されたタンパク質ではないタンパク質を排除する工程を含んでなる、請求項4に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項6】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、CAC69571を含んでなる、請求項5に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項7】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、プロテイン4を含有するFERM領域を含んでなる、請求項5に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項8】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスを含んでなる、請求項5に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項9】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、シンタキシン11を含んでなる、請求項5に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項10】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にプロテイン4を含有するFERM領域を含んでなる、請求項6に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項11】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にJCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスを含んでなる、請求項6に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項12】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項6に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項13】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にJCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスを含んでなる、請求項7に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項14】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項7に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項15】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項8に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項16】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にJCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスを含んでなる、請求項10に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項17】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項11に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項18】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項13に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項19】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項16に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項20】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にBAC04615、Q6NSC8、CAF17350、Q6ZVD4、及びQ8N7P1からなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質を含んでなる、請求項6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19のいずれか1項に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項21】
前記同定工程において同定された前記タンパク質が、更にBAC04615、AKK13083及びAKK13490からなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質を含んでなる、請求項20に記載のヒト血清中に存在するヒト肺組織の病態を示すタンパク質を同定する方法。
【請求項22】
患者のヒト肺組織の病態を、前記患者のヒト血清検体中のタンパク質の発現の変化した強度を同定することによって診断する方法であって:
第1に、前記タンパク質の発現の前記変化した強度を試験される前記患者の血清検体を取得し;
前記患者の血清検体を消化剤に暴露し、前記消化剤は、前記患者の血清検体中の前記タンパク質を定義されたペプチドに分裂し;
前記ペプチドを前記患者の血清検体から分離し;
前記第1の取得工程中に取得した前記患者の血清検体からの前記ペプチドを、液体クロマトグラフィー質量分光計を使用する分析にかけ、前記質量分光計は、前記カラムを通って流れる溶媒系を伴う疎水性固定相のカラムをその中に有し、前記溶媒系は前記ペプチドを分離し、そして検出機構は質量スペクトル読取り値を発生し、前記質量スペクトル読取り値は、前記ペプチドの質量及び前記ペプチドが前記カラムを通過する時間にわたる前記ペプチドの前記強度を測定するグラフ的図示を含んでなり;
前記ヒト血清検体からの前記ペプチドの少なくとも一つを選択して、前記質量スペクトル読取り値と、前記暴露工程中に開裂した前記ペプチドからのタンパク質の代表的な質量スペクトル読取り値を比較し;
第2に、前記選択工程中に選択された前記ペプチドから示される同一のタンパク質のそれぞれに対する実質的に変化しない発現の強度の質量スペクトル読取り値を取得し、前記変化しない発現の強度は、ヒト肺組織の前記の病態を有しないヒト血清検体の集団から決定され;
第1に、前記患者の血清検体から前記選択工程中に選択された前記少なくとも一つのペプチドの前記質量スペクトル読取り値と、前記ヒト肺組織の前記病態を有しないヒト血清検体の前記集団からの前記変化しないタンパク質発現の前記質量スペクトル読取り値を比較し;
第1に、前記患者の血清検体の前記タンパク質の発現の強度が変化しているか否かを決定し;
ここにおいて、前記タンパク質の発現の変化した強度は、前記ヒト肺組織の前記病態を示し;そして
ここにおいて、前記ヒト肺組織の前記病態は、非小細胞肺癌及び喘息を含んでなること;
を含んでなる、前記方法。
【請求項23】
前記消化剤が、トリプシン又は他のエンドプロテアーゼである、請求項22に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項24】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、CAC69571を含んでなる、請求項23に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項25】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、プロテイン4を含有するFERM領域を含んでなる、請求項23に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項26】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、JCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスを含んでなる、請求項23に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項27】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、シンタキシン11を含んでなる、請求項23に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項28】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にプロテイン4を含有するFERM領域を含んでなる、請求項24に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項29】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にJCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスを含んでなる、請求項24に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項30】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項24に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項31】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にJCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスを含んでなる、請求項25に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項32】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項25に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項33】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項26に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項34】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にJCC1445プロテアソームエンドペプチダーゼ複合鎖C2長スプライスを含んでなる、請求項28に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項35】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、シンタキシン11を更に含んでなる、請求項29に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項36】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項31に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項37】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にシンタキシン11を含んでなる、請求項34に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項38】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にBAC04615、Q6NSC8、CAF17350、Q6ZVD4、及びQ8N7P1からなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質を含んでなる、請求項24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36又は37のいずれか1項に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項39】
前記選択工程において選択された前記タンパク質が、更にBAC04615、AKK13083及びAKK13490からなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質を含んでなる、請求項38に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項40】
請求項39に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法であって、更に:
第3に、喘息を有するヒトからのヒト血清検体の集団から前記選択工程中に選択された前記ペプチドから示される同一タンパク質のそれぞれに対する発現の強度の質量スペクトル読取り値を取得し;
第2に、前記患者の血清検体から前記選択工程中に選択された前記少なくとも一つのペプチドの前記質量スペクトル読取り値と、前記喘息を有するヒトからのヒト血清検体の前記集団からの前記質量スペクトル読取り値を比較し;
第2に、前記患者の血清検体の前記タンパク質発現の前記強度が、前記喘息を有するヒトからのヒト血清検体の前記集団からの前記タンパク質の発現の前記強度と実質的に同様であるか否かを決定し;そして
ここにおいて、前記タンパク質発現の前記実質的に同様な強度は、喘息を示すこと;
を含んでなる、前記方法。
【請求項41】
請求項39に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法であって、更に:
第4に、非小細胞肺癌を有するヒトからのヒト血清検体の集団から前記選択工程中に選択された前記ペプチドから示される同一タンパク質のそれぞれに対するシグナルの強度の質量スペクトル読取り値を取得し;
第3に、前記患者の血清検体からの前記選択工程中に選択された前記少なくとも一つのペプチドの前記質量スペクトル読取り値と、前記非小細胞肺癌を有するヒトからのヒト血清検体の前記集団からの前記質量スペクトル読取り値を比較し;
第3に、前記患者の血清検体の前記タンパク質発現の前記強度が、前記非小細胞肺癌を有するヒトからのヒト血清検体の前記集団からの前記タンパク質の発現の前記強度と実質的に同様であるか否かを決定し;そして
ここにおいて、前記タンパク質発現の前記実質的に同様な強度は、小細胞肺癌を示すこと;
を含んでなる、前記方法。
【請求項42】
請求項40に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法であって、更に:
第4に、非小細胞肺癌を有するヒトからのヒト血清検体の集団から前記選択工程中に選択された前記ペプチドから示される同一タンパク質のそれぞれに対する発現の強度の質量スペクトル読取り値を取得し;
第3に、前記患者の血清検体からの前記選択工程中に選択された前記少なくとも一つのペプチドの前記質量スペクトル読取り値と、前記非小細胞肺癌を有するヒトからのヒト血清検体の前記集団からの前記質量スペクトル読取り値を比較し;
第3に、前記患者の血清検体の前記タンパク質発現の前記強度が、前記非小細胞肺癌を有するヒトからのヒト血清検体の前記集団からの前記タンパク質の発現の前記強度と実質的に同様であるか否かを決定し;そして
ここにおいて、前記タンパク質発現の前記実質的に同様な強度は、小細胞肺癌を示すこと;
を含んでなる、前記方法。
【請求項43】
喘息を有するヒトからのヒト血清検体の前記集団からの前記タンパク質発現の前記強度の前記質量スペクトル読取り値が、前記集団からのそれぞれのヒト血清検体を消化し、それぞれの前記ヒト血清検体からのペプチドを分離し、そしてそれぞれの前記ヒト血清検体の前記ペプチドを、前記液体クロマトグラフィー質量分光計にかけることによって取得される、請求項40に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項44】
非小細胞肺癌を有するヒトからのヒト血清検体の前記集団からの前記タンパク質発現の前記強度の前記質量スペクトル読取り値が、前記集団からのそれぞれのヒト血清検体を消化し、それぞれの前記ヒト血清検体からのペプチドを分離し、そしてそれぞれの前記ヒト血清検体の前記ペプチドを、前記液体クロマトグラフィー質量分光計にかけることによって取得される、請求項41に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。
【請求項45】
非小細胞肺癌を有するヒトからのヒト血清検体の前記集団からの前記タンパク質発現の前記強度の前記質量スペクトル読取り値が、前記集団からのそれぞれのヒト血清検体を消化し、それぞれの前記ヒト血清検体からのペプチドを分離し、そしてそれぞれの前記ヒト血清検体の前記ペプチドを、前記液体クロマトグラフィー質量分光計にかけることによって取得される、請求項42に記載の患者のヒト肺組織の病態を診断する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−539486(P2010−539486A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524992(P2010−524992)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/076049
【国際公開番号】WO2009/036193
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510067957)キャンサー・プリヴェンション・アンド・キュア,リミテッド (2)
【Fターム(参考)】