説明

ヒドラジド基含有共重合体及び樹脂用架橋又は硬化剤

【課題】 ヒドラジド基含有共重合体の、樹脂の架橋又は硬化剤としての作用を損なうことなく、これを樹脂に配合した場合に樹脂組成物の長期間の保存安定性を向上することができるヒドラジド含有共重合体を提供する。
【解決手段】 式(1)で表されるヒドラジド基含有共重合体を有効成分とする樹脂用の架橋又は硬化剤、及びこれを含有する樹脂組成物。
【化1】


[式中、A、B、Dは水素原子又は低級アルキル基を示す。Eはアンモニウム、又は有機アミンを示す。l,m,n及びoは次の通りである。
1モル%≦l≦99モル%、1モル%≦m≦99モル%、0モル%≦n≦98モル%、1モル%≦o≦98モル%、l+m+n+o=100モル%]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒドラジド基含有共重合体を有効成分とする樹脂用架橋又は硬化剤、その樹脂組成物、その架橋又は硬化物及びそれらを用いた塗料、接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する関心が高まり、塗料、接着剤分野においても、大気中への揮発性有機化合物の放出量低減などの、環境負荷低減への努力がなされている。そのような状況下にあって、塗料分野においては、有機溶媒を含有しない水系塗料が注目されている。しかしながら一般に水系塗料は、乾燥時間が長く、得られた塗膜の耐水性に難点があったため、その適用範囲は必然的に制限されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者等は上記状況を鑑み、ある特定の分子量及びヒドラジド化率を有するヒドラジド基含有共重合体が水系塗料を始めとする水系樹脂の架橋又は硬化剤として使用し得ることを見いだした(特許文献1参照)。それらヒドラジド基含有共重合体の架橋又は硬化剤は水系樹脂の架橋時間を短縮でき、得られる樹脂硬化物(塗膜)は耐水性に優れる効果を有している。しかしながら樹脂組成物として長期間の保存に耐えうるだけの安定性に難点があった。
ところで70万〜100万の平均分子量を有するアクリル酸ヒドラジド共重合体中のカルボン酸をナトリウム、カリウム、アンモニウムの塩とすることでヒドラジド基含有共重合体自身の安定性を向上できることが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特願2004−328390号
【特許文献2】特公昭60−45205号
【0004】
本発明の課題は、ヒドラジド基含有共重合体の、樹脂の架橋又は硬化剤としての作用を損なうことなく、これを樹脂に配合した場合に樹脂組成物の長期間の保存安定性を向上することができるヒドラジド含有共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明に係る。
1.式(1)で表されるヒドラジド基含有共重合体を有効成分とする樹脂用の架橋又は硬化剤。
【0006】
【化1】

[式中、A、B、Dは水素原子又は低級アルキル基を示す。Eはアンモニウム、又は有機アミンを示す。l,m,n及びoは次の通りである。
1モル%≦l≦99モル%、1モル%≦m≦99モル%、0モル%≦n≦98モル%、1モル%≦o≦98モル%、l+m+n+o=100モル%]
【0007】
2.Eの有機アミンがトリエチルアミン、ジメチルアミノエタノールである上記1に記載の樹脂用の架橋又は硬化剤。
3.式(1)で表されるヒドラジド基含有共重合体の分子量が20万以下の上記1〜2に記載の架橋又は硬化剤。
4.分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、上記1に記載の架橋又は硬化剤とからなる樹脂組成物。
5.分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、上記2に記載の架橋又は硬化剤とからなる樹脂組成物。
6.分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、上記3に記載の架橋又は硬化剤とからなる樹脂組成物。
7.上記1〜3のいずれかに記載の架橋又は硬化剤を用いた塗料組成物。
8.上記1〜3のいずれかに記載の架橋又は硬化剤を用いた接着剤組成物。
9.分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる樹脂の少なくとも1種の樹脂が、上記1〜3のいずれかに記載の架橋又は硬化剤で架橋又は硬化してなる架橋又は硬化物。
10.Eが有機アミンである式(1)で表されるヒドラジド基含有共重合体。
11.有機アミンがトリエチルアミン、ジメチルアミノエタノールである上記10に記載のヒドラジド基含有共重合体。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヒドラジド基含有共重合体は、樹脂の架橋又は硬化において、乾燥時間が短く、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐汚染性に優れた樹脂塗膜を付与することができる。また、これを配合した樹脂組成物の貯蔵安定性を改善することができる。特に、水系の樹脂に適用した場合に、一液貯蔵安定性、初期乾燥性、耐水性等に優れた効果が顕著に認められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式(1)で表される本発明のヒドラジド基含有共重合体は、例えばアクリルアミドの単重合によって得られるポリアクリルアミドの分子内のアミド基の全部又は一部を加水分解することにより得られるアクリルアミド−アクリル酸共重合体、又はアクリルアミドとアクリル酸との共重合によって得られるアクリルアミド−アクリル酸共重合体を、濃度20〜40重量%の水溶液とし、1モルに対してヒドラジン1〜3モルを添加し、通常50〜100℃で3〜20時間程度反応させてアミド基をヒドラジドとした後、分子内のカルボン酸を塩基性化合物で中和することにより得られる。
【0010】
塩基性化合物としては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等の有機アミン、アンモニア水が挙げられる。
使用する塩基性化合物の量としては、目的とする塩含量に応じて適宜設定すればよいが、
好ましくは、カルボン酸基を全て中和するのに必要な塩基性化合物を添加する。
【0011】
式(1)で表されるヒドラジド基含有共重合体は、平均分子量が5000〜600000、好ましくは6000〜300000、更に好ましくは7000〜200000、特に好ましくは9000〜160000である。分子量が大きくなると保存安定性の効果が十分でなく、耐水性等の効果も弱くなる。また、ヒドラジド化率(l)は1〜99モル%、好ましくは10〜98モル%、特に好ましくは10〜85モル%、カルボン酸と塩基性化合物の塩の割合(m)は1〜99モル%、好ましくは1〜10モル%で、更に好ましくは3〜6モル%である。カルボン酸の割合(n)は0〜98モル%、好ましくは0〜5モル%で、更に好ましくは0〜3モル%である。アクリルアミドの割合(o)は1〜98モル%、好ましくは2〜90モル%で、更に好ましくは9〜84モル%である。
【0012】
本発明において平均分子量とは数平均分子量で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析で測定した。測定機器はLC10Aシステム(島津製作所製)、
カラム:TSK−GEL α−2500、TSK−GEL α−4000、TSK−GEL α−6000(東ソー株式会社製)、温度40℃、流速1ml/min
スタンダード:ポリオキシエチレンオキシド(TSKstandardPEOキット、東ソー株式会社製)である。
【0013】
本発明で使用するヒドラジド基含有共重合体は、水溶解性にも優れ、高濃度水溶液として使用することができる。
本発明では上記ヒドラジド基含有共重合体を樹脂に配合して樹脂組成物を得ることができる。樹脂としては、特に制限されないが、ヒドラジド基含有共重合体のヒドラジド基と反応することのできるアルデヒド性又はケトン性のカルボニル基、エポキシ基、又はイソシアネート基等の反応部位を有するポリマーであれば特に制限されないが、例えば分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、及びエポキシ系樹脂等の樹脂が挙げられる。
ヒドラジド基含有共重合体の使用量としては、樹脂中に含まれる反応部位、例えばアルデヒド又はケトン性のカルボニル基、エポキシ基、イソシアネート基等の1当量に対して、ポリアクリル酸ヒドラジドのヒドラジド基が0.05〜2当量、好ましくは0.1〜1当量となる量とすればよい。
【0014】
分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂としては、分子内に1つ以上のアルデヒド性及び/又はケトン性のカルボニル基を有し、ラジカル重合性不飽和結合を有するアクリル系モノマーと、該アクリル系モノマーと共重合可能なラジカル重合性不飽和モノマーとを共重合させたものが挙げられる。
【0015】
具体的には、アクリル系モノマーとしては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート等が挙げられ、アクリル系モノマーと共重合させるモノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリルアミド、N−アルキロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリルアミド、N−アルキロールメタクリルアミド、メタクリロニトリル、イタコン酸、マレイン酸、2−メチレングルタル酸、ハロゲン化ビニル等が挙げられる。
【0016】
ウレタン系樹脂としては、ポリイソシアネート、ポリオール及びヒドロキシアクリレート又はヒドロキシメタクリレートの反応によって得られる化合物が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、芳香族イソシアネートを水素添加して得られるジイソシアネート(例えば水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネート等のジ−及びトリ−イソシアネート、当該ジ−及びトリ−イソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
ポリオールとしては、例えば脂肪酸、脂環式及び芳香族のポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
脂肪族及び脂環式ポリオール並びにポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えばカプロラクトン変性ジオール等が挙げられる。芳香族のポリオールとしては、例えばエトキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールS等が挙げられる。
【0018】
またヒドロキシアクリレート又はヒドロキシメタクリレートとしては、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸グリセロール、ジアクリル酸グリセロール、トリアクリル酸ペンタエリスリトール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸グリセロール、ジメタクリル酸グリセロール、トリメタクリル酸ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0019】
エポキシ系樹脂としては、例えばグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等を例示できる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水素添加ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、DPPノボラック型、3官能型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニルエタン型等を例示できる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、ヘキサヒドロフタル酸エステル型、フタル酸エステル型等を例示できる。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントイン型、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン型、アミノフェノール型、アニリン型、トルイジン型等を挙げることができる。
【0020】
これら樹脂と本発明のヒドラジド基含有共重合体の樹脂用架橋又は硬化剤とを混合して樹脂組成物が得られる。該組成物は固体、水溶液、水系エマルジョンのいずれの形態であってもよいが、使用時においては水溶液又は水系エマルジョンの形態である。
水溶液とする場合には、樹脂と本発明のヒドラジド基含有共重合体とを水に投入してもよく、予め調製した夫々の水溶液を併せてもよく、また、樹脂の水溶液に本発明のヒドラジド基含有共重合体を投入して溶解させてもよい。
水系エマルジョンとする場合には界面活性剤等の乳化剤を用いて、樹脂のエマルジョンを調製し、それに本発明のヒドラジド基含有共重合体又はその水溶液を加えることで調製できる。
【0021】
本発明の組成物においては、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。かかる添加剤としては、例えば、顔料、粘度調整剤、レべリング剤、消泡剤、カップリング剤、可塑剤、希釈剤、難燃剤等が挙げられる。また、必要に応じて従来から使用されている充填材や補強剤等を添加してもよい。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、例えば、金属、木材、合成樹脂、セメント、セラミックス、無機又は有機繊維による編物若しくは織物(ガラスクロス等)、紙等の被覆、粘着・接着、補修及びこれらを基材とした成形体の製造等に適用でき、特に土木建築用、塗料、接着剤や、両面テープの様な粘着剤、自動車の車体及び部品の塗装に適している。これら被処理物に、噴霧、塗布、浸漬した後、乾燥させることによって、架橋又は硬化物を得ることができる。
乾燥は、0℃以上、好ましくは5〜90℃程度で行なえばよく、乾燥後、常温で一週間程度の養生期間をおくのが好ましいが、乾燥を20〜25℃程度の常温下で約4時間以上行なうことで十分な架橋又は硬化物を得ることができる。
【0023】
橋梁、プラント、ビルや家屋等の外壁、船舶や車両の外装材等のように屋外において塗装が行なわれる場合、塗装後の降雨は塗膜形成に影響を与えるため、特に水性塗膜の使用にはかなりの制限があった。建築業界において塗装後24時間以内における降雨に対して塗膜が安定である性能を耐降雨性と表現し、塗料の選択において重要なファクターとなっている。本発明の樹脂組成物は短時間で架橋又は硬化物を得ることができるため優れた耐降雨性を有しており、屋外の作業を必要とする場面での使用にも適用できる。
得られた架橋又は硬化物は耐水性、耐汚染性、耐アルカリ性及び耐酸性に非常に優れたものとなっている。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、何らこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
平均分子量約8000のポリアクリルアミドの水溶液を約70℃に加熱して加水分解し、平均分子量約8000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物とした。カルボン酸量は、酸価測定法により求めた。
アクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物1.1gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して1時間熟成した。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤1)を得た。ヒドラジド化率はヨウ素滴定法により求めた(以下同様)。
平均分子量:約11,000、ヒドラジド化率:10%、アクリル酸アミン塩:4%、アクリル酸率:0%、アクリルアミド率:86%
【0026】
実施例2
平均分子量約8000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤2)を得た。
平均分子量:約10,000、アクリル酸アミン塩:4%、ヒドラジド化率:52%、アクリル酸率:0%、アクリルアミド率:44%
【0027】
実施例3
平均分子量約8000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物7.04gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤3)を得た。
平均分子量:約12,000、ヒドラジド化率:78%、アクリル酸アミン塩:4%、アクリル酸率:0%、アクリルアミド率:18%
【0028】
実施例4
平均分子量約35,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤4)を得た。
平均分子量:約42,000、ヒドラジド化率:50%、アクリル酸アミン塩:5%、アクリル酸率:0%、アクリルアミド率:45%
【0029】
実施例5
平均分子量約35,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物7.04gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤5)を得た。
平均分子量:約44,000、ヒドラジド化率:80%、アクリル酸アミン塩:5%、
アクリル酸率:0%、アクリルアミド率:15%
【0030】
実施例6
平均分子量約72,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物1.1gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤6)を得た。
平均分子量:約79,000、ヒドラジド化率:11%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:4%、アクリルアミド率:85%
【0031】
実施例7
平均分子量約72,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤7)を得た。
平均分子量:約80,000、ヒドラジド化率:50%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:4%、アクリルアミド率:46%
【0032】
実施例8
平均分子量約72,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物7.04gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤8)を得た。
平均分子量:約82,000、ヒドラジド化率:80%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:4%、アクリルアミド率:14%
【0033】
実施例9
平均分子量約120,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物1.1gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤9)を得た。
平均分子量:約153,000、ヒドラジド化率:10%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:6%、アクリルアミド率:84%
【0034】
実施例10
平均分子量約120,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤10)を得た。
平均分子量:約150,000、ヒドラジド化率:51%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:6%、アクリルアミド率:43%
【0035】
実施例11
平均分子量約120,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物7.04gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤11)を得た。
平均分子量:約155,000、ヒドラジド化率:81%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:6%、アクリルアミド率:13%
【0036】
実施例12
平均分子量約35,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、30%アンモニア水溶液0.42gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤12)を得た。
平均分子量:約39,000、ヒドラジド化率:53%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アンモニム塩:5%、アクリルアミド率:42%
【0037】
実施例13
平均分子量約35,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、ジメチルアミノエタノール0.66gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤13)を得た。
平均分子量:約41,000、ヒドラジド化率:48%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:5%、アクリルアミド率:47%
【0038】
実施例14
平均分子量約35,000のアクリルアミド−アクリル酸共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.42gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤14)を得た。
平均分子量:約41,000、ヒドラジド化率:48%、アクリル酸含有量:2%、アクリル酸アミン塩:3%、アクリルアミド率:47%
【0039】
実施例15
アクリルアミド(95モル%)とアクリル酸(5モル%)で共重合し、平均分子量約32,000のアクリル酸アミド、アクリル酸共重合物を得た。この共重合物10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン0.75gを添加して、1時間、熟成する。熟成後、反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤15)を得た。
平均分子量:約40,000、ヒドラジド化率:52%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:5%、アクリルアミド率:43%
【0040】
比較例1
平均分子量約7000のポリアクリル酸アミド10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤16)を得た。
平均分子量:約11,000、ヒドラジド化率:51%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:0%、アクリルアミド率:49%
【0041】
比較例2
平均分子量約33,000のポリアクリル酸アミド10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤17)を得た。
平均分子量:約41,000、ヒドラジド化率:49%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:0%、アクリルアミド率:51%
【0042】
比較例3
平均分子量約73,000のポリアクリル酸アミド10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤18)を得た。
平均分子量:約82,000、ヒドラジド化率:51%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:0%、アクリルアミド率:49%
【0043】
比較例4
平均分子量約122,000のポリアクリル酸アミド10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤19)を得た。
平均分子量:約151,000、ヒドラジド化率:50%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:0%、アクリルアミド率:50%
【0044】
比較例5
平均分子量約25,000のポリアクリル酸アミド10gと水34mlとを混合して、水溶液とし、100%ヒドラジン一水和物4.5gを加えて、50〜57℃で15時間撹拌した。反応液を10倍量のメタノール中に注入し、析出した白色沈殿物を濾過してとり、乾燥してヒドラジド基含有共重合体(架橋剤20)を得た。
平均分子量:約311,000、ヒドラジド化率:49%、アクリル酸率:0%、アクリル酸アミン塩:0%、アクリルアミド率:51%
上記、実施例1〜15び比較例1〜5で得られたヒドラジド基含有共重合体のカルボン酸導入法、分子量、ヒドラジド化率(HD率)、塩基性化合物、カルボン酸と塩基性化合物の塩の率、カルボン酸率及びアミド率を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
酸価測定法
ポリマーを溶媒に溶かし、フェノールフタレインを指示薬に分析用の水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行う。この滴定値から下記の式より酸価を算出する。この酸価を用いてカルボン酸量を算出する。
A=56.1(KOH分子量)×(V/1000)×c/m×1000[=56100×酸の量(mmol)]
A:酸価(mg KOH/g)
V:水酸化カリウム滴定溶液の滴定量(ml)
c:水酸化カリウム滴定液の濃度(mol/L)
m:試料の質量(g)
【0047】
<樹脂組成物の調製>
評価用エマルジョンはモノマー組成が、BA/MMA/MAA/DAAM=52.9:43.3:1.5:2.3(重量%)で開始剤に過硫酸アンモニウム塩0.2(重量%)を用い、乳化重合して得られた固形分45%のエマルジョンを用いた。ここでBA:アクリル酸ブチル、MMA:メタクリル酸メチル、MAA:メタクリル酸、DAAM:ダイアセトンアクリルアミドである。
上記架橋剤1を評価用エマルジョンにエマルジョン中のDAAMのケトン基と当量添加し、溶解させて樹脂組成物1を調製した。
同様に、架橋剤2〜15及び比較架橋剤1〜5を用いて処理し、樹脂組成物1〜15、及び比較樹脂組成物1〜5を夫々調製した。これを、50℃で1ヶ月保存した。
【0048】
試験例1(貯蔵安定性)
樹脂組成物を500mlのマヨネーズ瓶に入れ、密閉したのち50℃で1ヶ月貯蔵した後、室温に戻し、B型粘度計で粘度を測定して、粘度が初期の2倍以下の場合○、2倍以上で凝集がない場合△、凝集物が有るかゲル化した場合×と評価した。
【0049】
試験例2(ゲル分率)
アルミカップに樹脂組成物を約3gとり、50℃で8時間乾燥後、架橋物の重量を正確に量りとり、これをテトラヒドロフラン中でソックスレー抽出器を用い、還流下12時間抽出した後、デシケーターを用い、真空乾燥し、残存したポリマーを秤量する。この値を用いて次式に従いゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=(抽出後の架橋物の質量/抽出前の架橋物の質量)×100
【0050】
試験例3(耐水性)
硝子板(150×70×1mm)に樹脂組成物を塗布(膜厚:5MILS)し、80℃で10分間、その後22〜24℃、湿度18〜22%で15時間乾燥させて、透明塗膜を得た。この塗膜を23〜25℃の水中(脱イオン水)に浸しておき、7日後の塗膜状態を目視観察し、白化状態を評価した。評価は以下の通りとした。
全く異常が認められない: ◎
かすかに白化が認められた: ○
明らかな白化が認められた: △
極度の白化が生じた: ×
【0051】
試験例4(耐酸性)
硝子板(150×70×1mm)に樹脂組成物を塗布(膜厚:5MILS)し、所定の温度と時間で乾燥し、直ちにパスツールピペットを用いて直径約1cmの3規定塩酸の水滴を置いた。水滴が蒸発しないように時計皿で覆い、7日後の塗膜状態を目視観察し、白化状態を評価した。評価は試験例3と同じとした。
【0052】
試験例5(耐アルカリ性試験)
3規定塩酸に替えて3規定水酸化ナトリウム水溶液を用いた以外は、試験例4と同じとした。評価結果を表2に示す。
【0053】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるヒドラジド基含有共重合体を有効成分とする樹脂用の架橋又は硬化剤。
【化1】

[式中、A、B、Dは水素原子又は低級アルキル基を示す。Eはアンモニウム、又は有機アミンを示す。l,m,n及びoは次の通りである。
1モル%≦l≦99モル%、1モル%≦m≦99モル%、0モル%≦n≦98モル%、1モル%≦o≦98モル%、l+m+n+o=100モル%]
【請求項2】
Eの有機アミンがトリエチルアミン、ジメチルアミノエタノールである請求項1記載の樹脂用の架橋又は硬化剤。
【請求項3】
式(1)で表されるヒドラジド基含有共重合体の分子量が20万以下の請求項1〜2のいずれか1項に記載の架橋又は硬化剤。
【請求項4】
分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、請求項1に記載の架橋又は硬化剤とからなる樹脂組成物。
【請求項5】
分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、請求項2に記載の架橋又は硬化剤とからなる樹脂組成物。
【請求項6】
分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、請求項3に記載の架橋又は硬化剤とからなる樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の架橋又は硬化剤を用いた塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の架橋又は硬化剤を用いた接着剤組成物。
【請求項9】
分子内に1個以上のカルボニル基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる樹脂の少なくとも1種の樹脂が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の架橋又は硬化剤で架橋又は硬化してなる架橋又は硬化物。
【請求項10】
Eが有機アミンである式(1)で表されるヒドラジド基含有共重合体。
【請求項11】
有機アミンがトリエチルアミン、ジメチルアミノエタノールである請求項10に記載のヒドラジド基含有共重合体。

【公開番号】特開2006−316142(P2006−316142A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138701(P2005−138701)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】