説明

ヒーター装置

【課題】棒型ヒーターの長手方向に関して被加熱物の均一な加熱が可能なヒーター装置を提供する。
【解決手段】通電により発熱する発熱線24を備える棒型ヒーター20と、複数通りの開口パターンをそれぞれ有する気流調整窓32が棒型ヒーター20の長手方向に沿って複数設けられた、棒型ヒーター20の少なくとも一部を覆うカバー部材30と、気流調整窓32の開口34を通じて棒型ヒーター20に向けて気流を送る送風装置50と、を有し、気流調整窓32の開口パターンを複数通りにそれぞれ変化させることで、気流Fの流量が長手方向に沿って増減調整されることを特徴とするヒーター装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱線を備える棒型ヒーターおよびこれを覆うカバー部材を備えるヒーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
I字状やU字状などの棒型ヒーターを加熱して近赤外〜遠赤外線を放射し、ヒーターに対向して配置された被加熱物を加熱するヒーター装置が従来から知られている。ヒーター装置としては、熱源により大別して、加熱流体をヒーター内に循環供給する方式と、電熱線(発熱線)に通電して発熱させる方式とが知られている。
このうち発熱線を用いる後者の方式は、装置の簡略化が可能であって設置コストやランニングコストが低く、通電開始からの立ち上がり時間が短いという利点がある。
【0003】
下記特許文献1には、I字状のセラミック管内に内蔵した発熱線に通電して近赤外線を照射することで被加熱物を加熱する装置が記載されている。またこの装置では、被加熱物の加熱ムラを低減するため、被加熱物の送り方向に設けた多数の噴出口より熱風を吹き出して装置内を循環させている。
なお、発熱線を用いたヒーターの他の例であるシーズヒーターやカートリッジヒーターは、螺旋状などに巻回された発熱線を金属管に挿通し、発熱線の周囲に金属酸化物からなる絶縁粉末を充填して構成されている。
【0004】
【特許文献1】実開平7−18192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱装置においては、加熱効率がよいことと並び、加熱ムラのないことが求められる。
上記特許文献1に記載のヒーター装置の場合、被加熱物の送り方向に並んで配置されたヒーター同士の間から熱風を吹き出して循環させることで、送り方向に関するヒーターの加熱ムラの低減が図られている。
【0006】
しかしこの種のヒーター装置では、より高温になる幅方向の中央部と、雰囲気空気と接触して温度降下しやすい両端部とでは加熱効率に差が生じる。またヒーター装置の幅方向、すなわち棒型ヒーターの長手方向には、発熱線が螺旋状などに巻回された場合の巻線密度のムラや、絶縁粉末の充填密度の不均一さなどの要因によっても表面温度に不均一が生じる。
そしてヒーター装置の幅方向に加熱効率の高い領域と低い領域とが発生した場合、これに対向して加熱される被加熱物には加熱ムラが生じる。特に被加熱物が長尺のシートなどであって連続的に送られながら加熱される場合、十分に加熱された領域と不十分に加熱された領域とが筋状に生成されることとなる。
これに対し上記特許文献1に記載のヒーター装置では、棒型ヒーターの長手方向に関する加熱ムラが低減できないという問題がある。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、すなわち棒型ヒーターの長手方向に関して被加熱物の均一な加熱が可能なヒーター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヒーター装置は、通電により発熱する発熱線を備える棒型ヒーターと、
複数通りの開口パターンをそれぞれ有する気流調整窓が前記棒型ヒーターの長手方向に沿って複数設けられた、前記棒型ヒーターの少なくとも一部を覆うカバー部材と、
前記気流調整窓の開口を通じて前記棒型ヒーターに向けて気流を送る送風装置と、
を有し、
前記気流調整窓の開口パターンを前記複数通りにそれぞれ変化させることで、前記気流の流量が前記長手方向に沿って増減調整されることを特徴とする。
【0009】
また本発明のヒーター装置はより具体的な態様として、気流調整窓の前記開口から露出する前記棒型ヒーターの露出面積が、前記開口パターンを前記複数通りに変化させることにより増減することとしてもよい。
【0010】
また本発明のヒーター装置はより具体的な態様として、気流調整窓の前記開口の面積が、前記開口パターンを前記複数通りに変化させることにより増減することとしてもよい。
【0011】
また本発明のヒーター装置はより具体的な態様として、前記カバー部材には、隣り合う前記気流調整窓同士を隔てる隔壁が前記棒型ヒーターに向けて立設されてもよい。
【0012】
また本発明のヒーター装置はより具体的な態様として、前記カバー部材は、少なくとも前記棒型ヒーターに対向する面が金属材料からなることとしてもよい。
【0013】
なお本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等であってもよい。
また本発明で云う気流とは流動する気体を含むものであればよく、例えば空気や窒素または水蒸気などのガスのほか、これらにミスト状の液体(水など)を含んでもよい。
また気流調整窓の開口パターンとは、気流が通過する開口の位置または形状のパターンを意味する。
また気流調整窓が複数通りの開口パターンを有するとは、選択可能な有限個の開口パターンを気流調整窓が有する場合のほか、開口の位置や形状を連続的に変化させることができる場合を含む。
また気流調整窓から露出する棒型ヒーターの露出面積とは、気流調整窓の開口の法線方向から当該開口を通じて視認される棒型ヒーターの面積を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のヒーター装置には、棒型ヒーターの長手方向に沿って気流調整窓が複数設けられ、それぞれが開口パターンを変化させることで棒型ヒーターに送られる気流の流量を増減調整することができる。これにより、気流と棒型ヒーターとの熱交換効率を、長手方向の位置ごとに個別に変化させることができるため、棒型ヒーターの表面温度を長手方向に均一化し、もって被加熱物を均一に加熱することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態にかかるヒーター装置10およびこれを備える加熱装置100の使用状態を模式的に示す三面図である。同図(a)は平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は左側面図である。説明のため一部の構成要素については適宜図示を省略している。
【0017】
はじめに、本実施形態のヒーター装置10の概要について説明する。
ヒーター装置10は、通電により発熱する発熱線(図示せず)を備える棒型ヒーター20を有している。
棒型ヒーター20の少なくとも一部はカバー部材30(同図(b)では一部を切り欠いて図示)によって覆われている。カバー部材30は、複数通りの開口パターンをそれぞれ有する気流調整窓32が、棒型ヒーター20の長手方向に沿って複数設けられている。
またヒーター装置10は、気流調整窓32の開口34を通じて棒型ヒーター20に向けて気流Fを送る送風装置50(同図(a)では図示省略)を有している。
そしてヒーター装置10では、気流調整窓32の開口パターンを複数通りに変化させることで、棒型ヒーター20に送られる気流Fの流量が長手方向に沿って増減調整される。
【0018】
次に、本実施形態のヒーター装置10および加熱装置100について詳細に説明する。
本実施形態のヒーター装置10は、複数本の棒型ヒーター20が長手方向(同図(a)における左右方向)に対する交差方向(同図における上下方向)に並べて配置されている。
【0019】
加熱装置100は、上記ヒーター装置10に加え、棒型ヒーター20やカバー部材30を収容する筐体130(同図(a)においては一部図示省略)と、被加熱物である長尺のシート120を搬送する搬送ローラー110とを備える。そして搬送ローラー110によってシート120を棒型ヒーター20の並び方向(同図における上下方向)に連続的に送りながらヒーター装置10によって加熱する。シート120の送り方向を、図1(a)に矢印にて示す。以下、棒型ヒーター20の長手方向にあたるシート120の幅方向を、加熱装置100の幅方向という場合がある。
【0020】
なお本発明において被加熱物を加熱するとは、ヒーター装置10から被加熱物にエネルギーを与えることを意味し、被加熱物の温度を上昇させる場合のほか、被加熱物の温度を維持または降下させつつこれが有する溶媒分子を励振させて除去する、すなわち輻射乾燥させる場合などを含む。
加熱装置100による被加熱物の加熱の目的としては、乾燥処理のほか、発泡剤を含浸したシート材料の発泡処理や、金属材料のアニール処理などを例示することができる。
【0021】
<棒型ヒーターについて>
棒型ヒーター20としては、いわゆるカートリッジヒーター、シーズヒーター、裸のニクロム線ヒーターなど、発熱線24に通電することにより赤外線が放射される発熱線加熱型ヒーターを用いることができる。本実施形態では、ステンレス合金(SUS)などの金属製のヒーターパイプ22に、ニクロム線などの抵抗線を螺旋状に巻回した発熱線24を収容し、MgOなどの絶縁粉末(図示せず)を充填したシーズヒーターを図示している。発熱線24の両端はヒーター端子26にそれぞれ接続され、電源装置(図示せず)から所定の電圧が負荷されて発熱する。
またヒーターパイプ22は図示しないヒーター保持部材によって筐体130に取り付けられる。
【0022】
ヒーターパイプ22には、セラミック材料を周囲に被着することにより、棒型ヒーター20はセラミックヒーターとなる。セラミック材料は、例えば幅10〜100mm程度のリング状に成型し、ヒーターパイプ22の周囲に隙間なく装着するとよい。
【0023】
棒型ヒーター20から放射する赤外線は、波長が0.7〜2.5μm程度の近赤外線であっても、2.5〜4.0μm程度の中赤外線であっても、4.0〜100μm程度の遠赤外線であってもよい。特に、3±1μmおよび6±1μmの放射波長域にそれぞれ分光放射輝度の極大値を有する放射プロファイルとすることにより、水・トルエン・メチルエチルケトンなど、水性/有機溶剤系を問わず溶媒分子の分子運動が好適に励起されるため、加熱装置100を加熱乾燥に用いた場合に被加熱物の乾燥が促進される。
【0024】
棒型ヒーター20の断面形状は特に限定されるものではなく、棒型ヒーター20がシーズヒーターやカートリッジヒーターの場合、ヒーターパイプ22の断面形状は円形が代表的である。またヒーターパイプ22の中心線形状は図示のように直線状(I字状)のほか、U字状やW字状、N字状、S字状などでもよい。
そして発熱線が全体的に伸びる方向(発熱線が螺旋状に巻回されている場合はその巻軸方向)を棒型ヒーター20の長手方向というものとする。具体的には、I字状やS字状のシーズヒーターの場合は、両端のヒーター端子26同士を結ぶ方向を長手方向とする。またU字状やW字状、N字状など折り返しのあるシーズヒーターの場合は、ヒーター端子26から折り返しに至るまでの直線部分の伸びる方向を長手方向とする。なお当業者であれば棒型ヒーター20の長手方向がいずれの方向を意味するかは明らかである。
【0025】
ヒーター装置10によって所定の面積の加熱面を形成する場合は、本実施形態のように複数本の棒型ヒーター20を並べて配置するとよい。本実施形態では2本の棒型ヒーター20を近接して並べることで、シート120などの被加熱物を面状に加熱することとしているが、棒型ヒーター20の本数はこれに限られない。3本以上の棒型ヒーター20を並べる場合、並び方向は図示のように直線状であっても、または曲線状であってもよい。
【0026】
シート120などの被加熱物は、搬送ローラー110によって、棒型ヒーター20の長手方向に対する交差方向に、好ましくは直交方向に移送される。これによりシート120の幅方向にわたって均一な加熱が図られる。本実施形態のヒーター装置10は、かかる幅方向の加熱をカバー部材30および送風装置50によって更に均一化するものである。
【0027】
<カバー部材について>
カバー部材30は、棒型ヒーター20の少なくとも一部を覆って赤外線の散逸を防ぐとともに、棒型ヒーター20の表面を温度調整するための気流Fの流路を構成する。
本実施形態のカバー部材30は、側板42と天板31とを備える箱型形状をなして棒型ヒーター20を覆っている。ただしシート120に対向する下面側は開口し、棒型ヒーター20から放射された赤外線がシート120に照射されることを妨げることはない。
カバー部材30により棒型ヒーター20を覆う領域としては、発熱線24がヒーターパイプ22に埋設された加熱領域の全体を含んでもよく、その一部であってもよい。またカバー部材30は、個別の棒型ヒーター20ごとに装着されても、複数本の棒型ヒーター20をまとめて覆うものでもよい。本実施形態では、棒型ヒーター20を個別に覆う細長形状の複数のカバー部材30が棒型ヒーター20の並び方向に連続して配置され、互いに接合されて一体化されている。またカバー部材30は、図示しないカバー固定部材により加熱装置100の筐体130に取り付けられる。
【0028】
カバー部材30の長手方向(図1(a)における左右方向)の両端に位置する側板42には、同図(c)に示すように、棒型ヒーター20と干渉しないよう下方側からスリット部41が設けられており、カバー部材30は棒型ヒーター20に対して上方から被せることで装着可能である。
【0029】
カバー部材30は、少なくとも棒型ヒーター20に対向する面(内面)が金属材料からなり、棒型ヒーター20から放射された赤外線をシート120にむけて反射することができる。
金属材料としては、耐熱性、耐食性および赤外線反射率などの観点から、銀、アルミニウム、ニッケルもしくはこれらの合金、またはSUSなどが好適に用いられる。
【0030】
またカバー部材30には、隣り合う気流調整窓32同士を隔てる隔壁40が、天板31より棒型ヒーター20に向けて立設されている。本実施形態の隔壁40は、カバー部材30のうち対向する長手方向の側板42同士を連結している。
隔壁40は、両端側の側板42と同様に、下方側にスリットを備え、カバー部材30にて覆われる棒型ヒーター20とは干渉しない。
そしてカバー部材30の内部が隔壁40で仕切られることにより、側板42、天板31および隔壁40にて構成される小部屋43が気流調整窓32の数だけ長手方向に並ぶこととなる。
【0031】
<気流調整窓について>
カバー部材30のうち、棒型ヒーター20を挟んでシート120と反対側にあたる天板31には、棒型ヒーター20の長手方向に沿って複数の気流調整窓32が棒型ヒーター20に対向して配置されている。
棒型ヒーター20ごとに設ける気流調整窓32の個数は特に限定されず、長手方向に3〜30個程度を設けることができる。隣接する気流調整窓32同士を等間隔で配置しても、異なる間隔で配置してもよい。
本実施形態では、一本の棒型ヒーター20に対して5つの気流調整窓32が長手方向に等間隔に並んで設けられている。
【0032】
そして図1(a)に示すように、気流調整窓32の開口34からは棒型ヒーター20のヒーターパイプ22が露出している。また同図に示すように、長手方向に並ぶ気流調整窓32の開口パターンはそれぞれ複数通りに変化させることができる。これにより、開口34の面積、および開口34から露出する棒型ヒーター20の露出面積が増減する。
【0033】
本実施形態の場合、調節ねじ36を操作して遮蔽板37をスライド回転させることにより、気流調整窓32は個別に、かつ所望の開口パターンに調整することができる。
そして具体的には、棒型ヒーター20の長手方向の中央部に対向する気流調整窓32(32c)の開口面積をもっとも大きく、そして棒型ヒーター20の露出面積ももっとも大きくしている。一方、棒型ヒーター20の長手方向の両端部に対向する気流調整窓32(32a,32e)については、開口34を遮蔽して開口面積をゼロとしている。
そして両端部と中央部の間に位置する気流調整窓32(32b,32d)については、開口面積も両者の中間としている。
これにより、棒型ヒーター20の中央部に向けて送られる気流Fの流量は最大となり、気流Fと棒型ヒーター20との熱交換効率はもっとも高くなる。一方、棒型ヒーター20の長手方向の両端部に向けて送られる気流Fの流量は最少(ゼロ)となり、棒型ヒーター20との熱交換効率も最低となる。
【0034】
図2は、気流調整窓32の具体的な構成を模式的に示す平面図である。本実施形態の気流調整窓32は、カバー部材30の天板31に設けられた通孔35と、通孔35の一部または全部を遮蔽する遮蔽板37と、遮蔽板37をスライド回転させる調節ねじ36とを組み合わせて構成される。
図2(a)は遮蔽板37、同図(b)は通孔35が設けられた天板31、同図(c)はこれらを組み合わせてなる気流調整窓32をそれぞれ示す。ただし同図では調節ねじ36を省略している。遮蔽板37のうち、少なくとも棒型ヒーター20に対向する裏面については赤外線反射率の高い金属材料からなる。
【0035】
本実施形態の遮蔽板37(37a,37b,37c)は、中央にネジ孔38を有する円盤状をなし、またネジ孔38を挟んで両側に一対の略扇形状の打抜部39が設けられている。一つの打抜部39の中心角は90度である。
図2(a)の中央に示す遮蔽板37b、および右側に示す遮蔽板37cは、左側に示す遮蔽板37aを面内で時計回りに45度および90度回転させた状態にある。
【0036】
本実施形態の場合、天板31に設けられた通孔35は、本実施形態の場合、遮蔽板37の打抜部39と同一の寸法および形状をとる。したがって通孔35もまた略扇形状をなし、中心角は90度である。また対になる通孔35の中央にはネジ孔33が設けられている。
そしてネジ孔38とネジ孔33とを一致させて両者を調節ねじ36で締結することにより、遮蔽板37は天板31に対して回転自在に取り付けられる。
なお、通孔35や打抜部39の中心角はそれぞれ90度であることは必須ではなく、また互いに相違してもよい。
【0037】
同図(c)に示すように、通孔35と打抜部39との重なり部分にあたる開口34(34a,34b)は遮蔽板37と天板31とを貫いて気流F(図1(b)を参照)が流通可能となる。なお、図1および図2において、強調のため開口34には斜線を付している。
そして通孔35と打抜部39とを一致させた場合に開口34の面積は最大となる(開口34a:図2(c)左側)。この状態から遮蔽板37を回転させることで、開口34の面積は徐々に減少する(開口34b:図2(c)中央)。そして遮蔽板37(37c)によって通孔35(35c)を完全に遮蔽した場合、開口34の面積はゼロとなる(図2(c)右側)。この場合、気流調整窓32を通じての気流Fの流入は遮断される。
【0038】
このように本実施形態の気流調整窓32は、遮蔽板37を通孔35に対してスライド回転させることで、開口34の形状や面積を連続的に、すなわち複数通りの開口パターンに変化させることができる。
そして図1(a)に示すように、複数の気流調整窓32(32a〜32e)においてそれぞれ個別に開口パターンを変化させることで、開口34から露出する棒型ヒーター20の露出面積を増減させることができる。
【0039】
気流調整窓32から棒型ヒーター20までの距離は、棒型ヒーター20からシート120までの距離よりも短くすることが好ましい。これにより、長手方向の位置ごとに所定に調整された気流Fの流量の差異が棒型ヒーター20の表面温度に及ぼす影響がより大きくなる。
【0040】
<送風装置について>
送風装置50は、気流調整窓32の開口を通じて棒型ヒーター20に向けて気流を送る。
本実施形態に用いられる送風装置50は特に限定されず、気体を加圧して気流調整窓32の内部に吹き出す吹出式であっても、気体を吸引して気流調整窓32の開口34から棒型ヒーター20に向けて気流を流入させる吸引式でも、または両者の組み合わせでもよい。
本実施形態の加熱装置100の場合、図1(b)、(c)に示すように、送風装置50としてのファン51が筐体130の上面に設置されている。ファン51からは常温の空気がカバー部材30の天板31に向けて吹き出され、気流調整窓32の開口34を通じて棒型ヒーター20の表面に吹き付けられる。ファン51と気流調整窓32との間は図示しないダクトで連通されていてもよい。
【0041】
気流Fは棒型ヒーター20に対する冷却風として機能する。したがって気流Fの温度は、発熱線24で加熱された棒型ヒーター20の表面温度より低いものであれば特に限定されず、常温であっても、これより高温または低温であってもよい。
そして棒型ヒーター20が気流Fと接触することにより、発熱線24で加熱された棒型ヒーター20の表面が熱交換されて冷却される。
したがって気流調整窓32の開口面積を大きくして棒型ヒーター20に向けて送られる気流Fの流量を増大させることにより、棒型ヒーター20の表面の冷却効率が向上する。逆に気流調整窓32の開口面積を小さくすることで棒型ヒーター20の表面の冷却効率は低下する。このため、気流調整窓32の開口34の面積を調整することで、本実施形態の棒型ヒーター20は長手方向の位置ごとに表面温度が昇降調整される。
【0042】
具体的には、例えば棒型ヒーター20の長手方向の中間部における加熱効率が両端部に比して高くなるおそれがある場合には、中間部に位置する気流調整窓32の開口34を通じて棒型ヒーター20に送られる気流の流量を、両端部よりも多くするとよい。これにより、棒型ヒーター20の表面温度を長手方向の位置によらず均一化することができ、加熱装置100の幅方向にわたって被加熱物を均一に加熱することができる。
【0043】
なお、棒型ヒーター20との熱交換によって加熱された気流Fの一部はシート120に吹き付けられてこれに熱を与える場合があるが、かかる熱量は、棒型ヒーター20が冷却されることによる加熱減少量に比して無視することができる。
【0044】
気流調整窓32の開口面積の調整は、種々の観点から行うことが可能である。例えばヒーター装置10で加熱されて加熱装置100から搬出された被加熱物の状態を目視して加熱ムラを見出し、加熱不足の領域については気流調整窓32を遮蔽して棒型ヒーター20を保温し、加熱過剰の領域については気流調整窓32を開放して開口34から気流Fを流入させて棒型ヒーター20を冷却するとよい。
加熱装置100で乾燥処理やアニール処理を行う場合は被加熱物の表面の色合いにより、また発泡処理を行う場合は被加熱物の発泡厚さの検知により、加熱ムラの発生を知ることができる。
【0045】
このほか、棒型ヒーター20の表面または内部に熱電対などの温度センサーを取り付け、その計測温度に基づいて高温箇所と低温箇所を検知してもよい。そして高温箇所にあたる気流調整窓32を手動または自動制御により開放し、低温箇所にあたる気流調整窓32を遮蔽するとよい。気流調整窓32の調節ねじ36を手動で操作する場合は、加熱装置100の筐体130の上面を開放した状態で行う。
また熱電対に代えて、カバー部材30の内部空間の温度分布や、シート120の表面の温度分布を赤外線サーモグラフィなどで測定して高温箇所と低温箇所とを検知し、これに基づいて気流調整窓32の開口パターンを制御してもよい。
【0046】
上記本実施形態のヒーター装置10の作用効果について説明する。
本実施形態のヒーター装置10によれば、気流調整窓32の開口パターンを変化させることで、棒型ヒーター20に送られる気流の流量を位置ごとに増減させてその表面を所望に冷却することができる。これにより、送風装置50をヒーター装置10の部位ごとに個別に設けずとも、棒型ヒーター20に送られる気流の流量を所望に調整することができる。
【0047】
ここで、棒型ヒーター20の発熱量は位置ごとにばらつきがあり、また雰囲気との熱授受の大小にも左右され、かつ製品ごとにも温度分布にはばらつきが生じる。したがって、現実の使用雰囲気下にて発熱線24に通電した状態でシート120の加熱状態や棒型ヒーター20の温度を検出し、その後に気流調整窓32の開口パターンを変化させて気流Fの流量を個別に調整することにより、上記のばらつきを吸収することができる。かかる観点から、本実施形態のヒーター装置10によれば、高い精度で被加熱物に対する加熱率を均一化することができ、また従来の棒型ヒーター20をそのまま使用することもできる。さらに、棒型ヒーター20を交換したり、発熱線24への通電量を変えたりするなど、ヒーター装置10の使用環境を変更した場合も、気流調整窓32の開口パターンをその都度変更することで、棒型ヒーター20の温度分布を再度最適なものに調整することができる。
【0048】
また本実施形態では、開口パターンを複数通りに変化させることで気流調整窓32の開口34から露出する棒型ヒーター20の露出面積を増減させている。これにより、棒型ヒーター20に対する気流Fの接触効率が増減して、棒型ヒーター20の表面と気流Fとの熱交換効率が所望に調整されるため、棒型ヒーター20の表面温度を好適に均一化することができる。
【0049】
また本実施形態では、開口パターンを複数通りに変化させることで気流調整窓32の開口34の面積を増減させている。これにより、開口34を通じて棒型ヒーター20に向けて送られる気流Fの流量が気流調整窓32ごとに、すなわち棒型ヒーター20の長手方向の位置ごとに調整されるため、棒型ヒーター20の表面温度を均一化することができる。
【0050】
また本実施形態のカバー部材30には、隣り合う気流調整窓32同士を隔てる隔壁40が棒型ヒーター20に向けて立設されている。これにより、一の気流調整窓32の開口34を通過した気流が、他の気流調整窓32の開口34を通過した気流と混じり合うことが防止される。このため棒型ヒーター20の長手方向の所定の位置の温度を調整するに際して、他の気流調整窓32の開口34から流入した気流の影響を排除することができる。すなわち長手方向の所定の位置に送られる気流の流量を増大させた場合に、棒型ヒーター20のうち当該所定位置の周辺領域に対しては、気流との熱交換効率が無用に過大となってしまうことが防止される。
【0051】
特に本実施形態のように、小部屋43で仕切られたカバー部材30によって棒型ヒーター20を覆うことで、気流Fが他の小部屋43に流入することが防止される。このため、長手方向の任意の位置について棒型ヒーター20の表面温度を調整した場合に、その周辺領域の表面温度については影響を受けにくい。
【0052】
また本実施形態のカバー部材30は、天板31、側板42および遮蔽板37のうち、少なくとも棒型ヒーター20に対向する面が金属材料からなる。これにより、棒型ヒーター20が放射した赤外線をシート120に向けて反射させ、ヒーター装置10による加熱効率を向上させている。
ここで、気流調整窓32の開口34の面積を拡大した場合、棒型ヒーター20から上方に放射された赤外線は気流調整窓32を通過してカバー部材30の外部に散逸しやすくなるため、シート120への赤外線照射量が減少する。したがって、気流Fによる棒型ヒーター20の冷却効果と相まって、開口34の面積の拡大によってシート120の加熱効率の低減が促進される。
【0053】
なお本実施形態については種々の変形を許容する。
例えば気流調整窓32について、上記本実施形態では遮蔽板37をスライド回転させた場合に開口34の面積と、棒型ヒーター20の露出面積がともに変化する態様を例示したが、これに代えていずれか一方のみが変化する気流調整窓32を採用してもよい。
具体的には、天板31に設ける通孔35の形状を略扇形状から円形またはリング状に変更し、遮蔽板37の打抜部39の位置によらず開口34の面積は不変としてもよい。かかる場合、開口34を通じて小部屋43に流入する気流Fの流量は気流調整窓32によらず等しくなるものの、流入した気流Fと棒型ヒーター20との接触効率が、棒型ヒーター20の露出面積の大小に応じて増減するため、棒型ヒーター20の表面温度の昇降調整が可能になる。
なお具体的には、打抜部39が棒型ヒーター20の直上に位置する場合(図2(a)の左側を参照)は棒型ヒーター20の露出面積が増大し、逆に打抜部39が棒型ヒーター20の直上を避けている場合(同図の右側を参照)は棒型ヒーター20の露出面積が減少することとなる。
また、開口34のうち、棒型ヒーター20の露出領域以外の場所において開口面積を増減させる態様とした場合、気流調整窓32の開口パターンによらず棒型ヒーター20の露出面積は不変となるが、開口面積が増減することでこれを通過する気流Fの流量が増減調整されるため、棒型ヒーター20の表面温度を調整することが可能である。
【0054】
また本実施形態では遮蔽板37が所定の回転位置にある場合に通孔35が完全に遮蔽され、開口34が存在しなくなる態様が例示されているが、本発明はこれに限られない。すなわち気流調整窓32がいずれの開口パターンをとった場合も開口34が形成されることとしてもよい。
また通孔35や遮蔽板37の形状や寸法は、気流調整窓32ごとに相違するものとしてもよい。また遮蔽板37のスライド方向は上記本実施形態のように回転方向ではなく、所定の直線方向としてもよい。
【0055】
<第二実施形態>
図3は本実施形態にかかるヒーター装置10およびこれを備える加熱装置100の仕様状態を模式的に示す三面図である。同図(a)は平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は左側面図である。
【0056】
本実施形態のヒーター装置10は、気流調整窓32を構成する遮蔽板37が天板31に対して面外方向に回転することを特徴とする。
遮蔽板37には、それぞれ所定の方向(本実施形態の場合、棒型ヒーター20の長手方向)に延在する回転軸44を備え、個別に回転してブラインドのごとく開口面積を変えることができる。本実施形態では、隔壁40、天板31および側板42で仕切られる小部屋43に対し、それぞれ三式の気流調整窓32が設けられている。
【0057】
遮蔽板37は回転軸44のまわりに任意の角度で回転し、その回転位置を保持することができる。そして図3(c)に示すように比較的大きな回転角度で遮蔽板37(37d)を開放した場合は、大面積の開口34を得ることができる。一方、比較的小さな回転角度で遮蔽板37(37e)を開放した場合は、小面積の開口34を得ることができる。
本実施形態の場合、遮蔽板37の回転角度は0度から90度まで選択することができる。回転角度が0度であるとは、開口34が完全に遮蔽された状態であり、これが90度であるとは、遮蔽板37が完全に直立して開口34の面積が遮蔽板37の面積と同等となった状態である。
そして本実施形態のヒーター装置10では、遮蔽板37の回転角度を調整することにより、気流Fの流入量を制御し、もって棒型ヒーター20の表面温度を所望に昇降調整することができる。
【0058】
また遮蔽板37は金属材料からなり、同図(c)に示すように、棒型ヒーター20が放射した赤外線IRをシート120に向けて反射する。
したがって遮蔽板37を大きく開口することにより、赤外線IRの反射面の面積が減少し、シート120に照射される赤外線量が減少する。特に本実施形態の場合、開口34の最大面積を遮蔽板37と同等まで大きくとることができる点で、上記第一実施形態のヒーター装置10よりも棒型ヒーター20の温度調整幅を大きく得ることができる。
【0059】
本実施形態のヒーター装置10は送風装置50としての吸引装置52が搬送ローラー110の下面に設けられている。そして筐体130の上面側から加熱装置100に取り込まれた空気を吸引して排気する。
有機溶剤などの環境負荷物質を含む被加熱物を加熱装置100によって加熱乾燥する場合、本実施形態のように送風装置50として吸引装置52を用いることで、気流Fとともに当該物質を回収することができて好ましい。
【0060】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
例えば上記第一または第二実施形態において、被加熱物としては様々なものを用いることができる。加熱装置100では、例示のように長尺物を搬送しながら連続的に加熱する場合のほか、短尺物を搬送ローラー110によって搬送しながら連続的に加熱してもよく、または搬送ローラー110を用いず、短尺物を静置させてバッチ式または枚葉式に加熱してもよい。
【0061】
また上記実施形態において、気流調整窓32の位置、すなわち小部屋43の分割位置は、シート120の送り方向に隣り合うカバー部材30同士で一致させているが、これに代えて、千鳥状にずれあう位置に気流調整窓32を配置してもよい。これにより、搬送ローラー110の送り方向には気流調整窓32が連続することがなく、隔壁40の直下などに局所的な加熱ムラが生じることがない。
【0062】
またカバー部材30において気流調整窓32同士の間に立設される隔壁40は、高さ方向に昇降調整可能としてもよい。隔壁40の下端高さをシート120に近づけることにより、小部屋43ごとに流量を調整した気流Fの影響をその直下のシート120に対して強く及ぼすことができる。一方、隔壁40の下端高さをシート120から離間することにより、棒型ヒーター20からシート120に至るまでの間に気流Fがより混合され、シート120に対する風紋の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるヒーター装置および加熱装置の一例を模式的に示す三面図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。
【図2】第一の実施形態にかかる気流調整窓の一例を示す模式図である。
【図3】第二の実施形態にかかるヒーター装置および加熱装置の一例を模式的に示す三面図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 ヒーター装置
20 棒型ヒーター
22 ヒーターパイプ
24 発熱線
26 ヒーター端子
30 カバー部材
31 天板
32 気流調整窓
34 開口
35 通孔
36 調節ねじ
37 遮蔽板
39 打抜部
40 隔壁
42 側板
43 小部屋
44 回転軸
50 送風装置
51 ファン
52 吸引装置
100 加熱装置
110 搬送ローラー
120 シート
130 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する発熱線を備える棒型ヒーターと、
複数通りの開口パターンをそれぞれ有する気流調整窓が前記棒型ヒーターの長手方向に沿って複数設けられた、前記棒型ヒーターの少なくとも一部を覆うカバー部材と、
前記気流調整窓の開口を通じて前記棒型ヒーターに向けて気流を送る送風装置と、
を有し、
前記気流調整窓の開口パターンを前記複数通りにそれぞれ変化させることで、前記気流の流量が前記長手方向に沿って増減調整されることを特徴とするヒーター装置。
【請求項2】
気流調整窓の前記開口から露出する前記棒型ヒーターの露出面積が、前記開口パターンを前記複数通りに変化させることにより増減する請求項1に記載のヒーター装置。
【請求項3】
気流調整窓の前記開口の面積が、前記開口パターンを前記複数通りに変化させることにより増減する請求項1または2に記載のヒーター装置。
【請求項4】
前記カバー部材には、隣り合う前記気流調整窓同士を隔てる隔壁が前記棒型ヒーターに向けて立設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のヒーター装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、少なくとも前記棒型ヒーターに対向する面が金属材料からなる請求項1から4のいずれかに記載のヒーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−192097(P2009−192097A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30552(P2008−30552)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(395004597)株式会社根岸製作所 (9)
【Fターム(参考)】