説明

ビタミン組成物

【課題】
ビタミンB12類を安定化させた顆粒状組成物を製造する。
【解決手段】
ビタミンB12類とともに、ビタミンE類を配合させた顆粒状組成物であり、当該顆粒状組成物80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが4以上とすることで、ビタミンB12類を安定化することができる。この顆粒状組成物を打錠し、錠剤としたり、糖衣錠とすることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定なビタミンB12類含有顆粒状組成物、錠剤および糖衣錠、詳しくはビタミンE類を含有することを特徴とするビタミンB12類含有顆粒状組成物(顆粒剤を含む)、錠剤、糖衣錠およびフィルムコーティング錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビタミンとは、体外から摂取する食品の成分のうち、主栄養素であるタンパク質、脂肪、炭水化物、無機塩類および水以外に、動物の正常な発育と栄養を保つ上に微量でよいが欠くことのできない特殊な有機物質を総称する。例えば、神経・筋肉の円滑な働きに必要なビタミンB2、B6類、末消の血行を高めるビタミンE類、脂肪・糖質の代謝に関与して妊婦などの栄養補給に必要なパントテン酸カルシウム等がある。
この中で、ビタミンB12類は、神経・筋肉の円滑な働きに必要であり、ビタミンB1主薬製剤、ビタミンB6主薬製剤またはビタミンB1・B6主薬製剤等に配合される重要なビタミンである。しかしながら、ビタミンB12類は、安定性が悪く、安定化を向上させるための様々なの検討が行われている。例えば、特許文献1には、ビタミンB12類含有溶剤を用いてビタミンB1類を含む造粒物を製造し、その造粒物を打錠して錠剤を製造し、ビタミンB12類を安定化させていることが記載されている。特許文献2には、ビタミンB1類およびビタミンB12類を含有する造粒物を製造し、この造粒物とビタミンB6類を混合、打錠し、ビタミンB12類を安定化させていることが記載されている。特許文献3には、ビタミンB12類とゼラチンの混合水溶液を粉末担体に吸着させ、この吸着物を高分子でコーティングすることによって、ビタミンB12類を安定化させていることが記載されている。特許文献4には、アルファ化デンプン類とビタミンB12類をセルロース系高分子又はアクリル系高分子でコーティングすることによって、ビタミンB12類を安定化させていることが記載されている。
【特許文献1】特開2002−316930号公報
【特許文献2】特開平9−169651号公報
【特許文献3】特開平10−36270号公報
【特許文献4】特開2000−16940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2ではビタミンB12類とともにビタミンB1類を同一の造粒物とし、その造粒物を打錠しているものの、ビタミンB12類を微量しか添加しない場合、後述するようにビタミンB12類の残存率が経時的に低下することが明らかとなっている。また、特許文献3、4では、製造方法が煩雑となり、特に特許文献4ではBSAで問題となっているゼラチンを使用しており、実用的な製剤処方とは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、今回意外にも、微量のビタミンB12類とともにビタミンE類を同一の顆粒状組成物に含有させ、しかも当該顆粒状組成物を溶解・懸濁した溶液のpHが4以上であれば、当該顆粒状組成物を打錠し、錠剤、糖衣錠としてもビタミンB12類の分解を抑制することを見出し、以下の発明を完成した。
(1)ビタミンE類を含むことを特徴とするビタミンB12類含有顆粒状組成物であり、当該顆粒状組成物80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが4以上であることを特徴とする顆粒状組成物。
(2)上記の顆粒状組成物80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが5以上であることを特徴とする上記(1)記載の顆粒状組成物。
(3)無機酸付加塩を含有しない上記(1)または(2)に記載の顆粒状組成物。
(4)無機酸付加塩であるビタミン類を含有しない上記(1)または(2)に記載の顆粒状組成物。
(5)無機酸付加塩であるビタミンB1類および/またはビタミンB6類を含有しない上記(1)または(2)に記載の顆粒状組成物。
(6)ビタミンB2類を含有する上記(1)から(5)のいずれかに記載の顆粒状組成物。
(7)ビタミンB12類がシアノコバラミン、ヒドロキソコバラミンおよびメチルコバラミンから選択される1または2以上である上記(1)記載の顆粒状組成物。
(8)ビタミンE類がコハク酸d−α−トコフェロールまたはコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムである上記(1)記載の顆粒状組成物。
(9)ビタミンE類がコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムである上記(1)記載の顆粒状組成物。
(10)上記(1)から(9)のいずれかに記載の顆粒状組成物を打錠することによって得られる錠剤。
(11)上記(1)から(9)のいずれかに記載の顆粒状組成物と、ビタミンB1類、ビタミンB2類およびビタミンB6類から選択される1または2以上を混合し、打錠して得られる錠剤。
(12)上記(1)から(9)のいずれかに記載の顆粒状組成物と、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類およびパントテン酸カルシウムから選択される1または2以上を混合し、打錠して得られる錠剤。
(13)上記(10)から(12)のいずれかに記載の錠剤に被覆層を形成してなる被覆錠剤。
(14)ニコチン酸アミドを含有した被覆層を形成してなる上記(13)記載の被覆錠剤。
(15)ビタミンE類としてコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムを含有する上記(10)から(12)のいずれかに記載の錠剤に、ニコチン酸アミドを含有した被覆層を形成してなる被覆錠剤。
(16)1錠剤または1被覆錠剤あたりのビタミンB12類の含有量が0.001〜0.2重量%である上記(10)〜(15)のいずれかに記載の錠剤または被覆錠剤。
(17)上記(1)から(9)のいずれかに記載の顆粒状組成物と、ビタミンB1類、ビタミンB2類およびビタミンB6類から選択される1または2以上を混合し、打錠することを特徴とする錠剤の製造方法。
(18)上記(1)から(9)のいずれかに記載の顆粒状組成物と、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類およびパントテン酸カルシウムから選択される1または2以上を混合し、打錠することを特徴とする錠剤の製造方法。
(19)ビタミンE類を顆粒状組成物に含有させ、かつ当該顆粒状組成物80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが4以上となるように当該顆粒状組成物を調製することを特徴とするビタミンB12類を安定化する方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、ビタミンE類およびビタミンB12類を含有した顆粒状組成物であり、しかも当該顆粒状組成物約80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが4以上、より好ましくは上記溶液のpHが5以上であれば、ビタミンB12類を安定化できることを見出した。この顆粒状組成物を打錠し、錠剤に成形しても、ビタミンB12類を安定化することができ、また錠剤をフィルムコーティングしたり、または糖衣層で被覆しても、安定化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明における顆粒状組成物には、少なくともビタミンE類およびビタミンB12類を含有する。ビタミンE類として、具体的にはコハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、酢酸d−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール等が挙げられる。ビタミンB12類の残存率低下を抑制するために、ビタミンE類として好ましくはコハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムを、より好ましくはコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムを使用することが好ましい。ビタミンB12類として、具体的にはシアノコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、およびメコバラミン等が挙げられる。また、ビタミンE類およびビタミンB12を同一の顆粒状組成物に含有することに加え、顆粒状組成物約80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが4以上であることが好ましい。したがって、無機酸付加塩(塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩)、ビタミンの場合は、無機酸付加塩であるビタミン類、特に無機酸付加塩であるビタミンB1類、ビタミンB6類を、上記ビタミンE類およびビタミンB12類を含有する顆粒状組成物に含まないことが好ましい。無機酸付加塩のビタミンB1類として、具体的には塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジセチル硫酸エステル塩等やビタミンB1誘導体(塩酸フルスルチアミン、塩酸ジセチアミン等)が挙げられる。また、ビタミンB6類として、具体的には塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール等が挙げられる。一方、当該顆粒状組成物には、ビタミンB2類を含有してもよい。ビタミンB2類として、具体的にはリボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン等が挙げられる。その他のビタミン類としては、顆粒状組成物約80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが4以上であれば、顆粒状組成物に添加してもよい。具体的には、ビタミンC(アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム等)、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム(例、パントテン酸カルシウムタイプS(商品名、乳酸カルシウム配合))、ビオチン、γ−オリザノール、オロチン酸、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミド、ヨクイニン等のビタミン類が挙げられる。
【0007】
本発明における顆粒状組成物あたりのビタミンE類の含有量は、5〜99.9重量%、好ましくは20〜99.9重量%、特に好ましくは50〜99.9重量%である。これより少なければ、ビタミンB12類を安定化することができない。また、本発明における顆粒状組成物あたりのビタミンB12類の含有量は、0.001〜0.1重量%、好ましくは0.0025〜0.075重量%、特に好ましくは0.005〜0.05重量%である。これより少なければ、十分な薬効をしめすことができない。
【0008】
本発明の顆粒状組成物においては、必要に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を配合できる。
【0009】
本発明の顆粒状組成物で使用することができる賦形剤、結合剤としては、製剤学上許容できるものであればよい。具体的には、セルロースとその誘導体、デンプンとその誘導体、合成高分子化合物、糖質等が挙げられる。本発明で使用することができるセルロースとその誘導体としては、結晶セルロース、粉末セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。本発明で使用することができるデンプンとその誘導体としては、トウモロコシデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、シクロデキストリン等が挙げられる。本発明で使用することができる合成高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーE、メタアクリル酸コポリマーL、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーRS、メタアクリル酸コポリマーS、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミンアセテート等が挙げられる。本発明で使用することができる糖質としては、ショ糖、トレハロース、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、粉末還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
【0010】
本発明における顆粒状組成物あたりの賦形剤の含有量は、0〜70重量%、好ましくは0〜40重量%、特に好ましくは0〜30重量%である。また、本発明における顆粒状組成物あたりの結合剤の含有量は、0.01〜7重量%、好ましくは0.5〜6重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0011】
本発明の顆粒状組成物で使用することができる崩壊剤としては、製剤学上許容できるものであればよい。具体的には、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン等が挙げられる。
【0012】
本発明における顆粒状組成物あたりの崩壊剤の含有量は、0〜20重量%、好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
【0013】
本発明における顆粒状組成物中のビタミンE類、ビタミンB12類および添加物の組み合わせとして、ビタミンE類として好ましくは、コハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムを、より好ましくはコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムであり、ビタミンB12類として好ましくはシアノコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、より好ましくはシアノコバラミンであり、賦形剤として好ましくは、結晶セルロース、粉末セルロース、ショ糖、トレハロース、乳糖、マンニトールであり、より好ましくは結晶セルロース、マンニトールである。また、結合剤として好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロースであり、より好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロースであり、崩壊剤として好ましくはクロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンであり、より好ましくはカルメロースカルシウムである。それぞれのビタミンE類、ビタミンB12類および添加物の含有量として、ビタミンE類は5〜99.9重量%、ビタミンB12類は0.001〜0.1重量%、賦形剤は0〜70重量%、結合剤は0.01〜7重量%、崩壊剤は0〜20重量%である。好ましくは、ビタミンE類、ビタミンB12類および添加物の含有量として、ビタミンE類は20〜99.9重量%、ビタミンB12類は0.0025〜0.075重量%、賦形剤は0〜40重量%、結合剤は0.5〜6重量%、崩壊剤は0〜15重量%である。特に好ましくは、ビタミンE類、ビタミンB12類および添加物の含有量として、ビタミンE類は50〜99.9重量%、ビタミンB12類は0.005〜0.05重量%、賦形剤は0〜30重量%、結合剤は1〜5重量%、崩壊剤は0〜10重量%である。
【0014】
本発明における顆粒状組成物の製造は、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授 橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)の
ような刊行物に記載されている顆粒剤の一般的な方法で製造すればよい。例えば、押し出し造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、転動流動層造粒法、攪拌造粒法、圧縮造粒法等があるが、好ましくは流動層造粒法である。また、当該顆粒状組成物の乾燥条件は、製剤成分の混合時、造粒時に使用する水量等によっても変化するが、給気温度は通常約50〜100℃、好ましくは55〜95℃、排気温度は通常約35〜68℃、好ましくは38〜65℃である。
【0015】
本発明において、ビタミンB12類およびビタミンE類を含む、顆粒状組成物を製造後、この顆粒状組成物を打錠し、錠剤に成形することもできる。当該顆粒状組成物とは別にビタミンB12類およびビタミンE類以外の製剤学上許容し得る有効成分を錠剤中に含有してもよい。例えば、上述したような顆粒状組成物に含有しないことが好ましい無機酸付加塩(塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩)、ビタミンの場合は、無機酸付加塩であるビタミン類、特に無機酸付加塩であるビタミンB1類および/またはビタミンB6類を含有してもよい。また、ビタミンC(アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム等)、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム(例、パントテン酸カルシウムタイプS(商品名、乳酸カルシウム配合品))、ビオチン、γ−オリザノール、オロチン酸、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミド、ヨクイニン等のビタミン類を顆粒状組成物とは別にし、同一錠剤中に含有することもできる。なお、パントテン酸カルシウム含有組成物は、製剤において乾式で配合することが好ましい。これは例えば、ビタミンE類およびビタミンB12類を含有する顆粒状組成物とパントテン酸カルシウム含有組成物を含む成分とを乾式状態で混合し、ついでこの混合物を製錠すれば、ビタミンB12類およびパントテン酸カルシウムを安定に錠剤中へ配合することができる。また、ニコチン酸アミドは、特にビタミンB12類の分解を促進するので、ビタミンB12類を錠剤内へ配合した場合、錠剤表面におけるフィルムコーティング層内へ配合することが好ましい。
【0016】
上記所望により加えられる有効成分、賦形剤、崩壊剤および結合剤を混合し、造粒後、整粒した造粒物とし、当該造粒物とともにビタミンB12類およびビタミンE類を含む顆粒状組成物、その他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤を混合し、製錠することにより錠剤を得ることができる。また、ビタミンB12類およびビタミンE類を含む顆粒状組成物以外は、造粒物としてでなく、粉末として添加することも可能である。錠剤の成形に使用される賦形剤、崩壊剤、結合剤は、上述のものが使用できる。当該錠剤で使用することができる滑沢剤としては、製剤学上許容できるものであればよい。具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0017】
本発明における一錠剤あたりの賦形剤の含有量は、0〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。本発明における一錠剤あたりの結合剤の含有量は、0.1〜7重量%、好ましくは0.5〜6重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。本発明における一錠剤あたりの崩壊剤の含有量は、0.1〜50重量%、好ましくは1〜35重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。本発明における一錠剤あたりの滑沢剤の含有量は、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%、特に好ましくは1〜3重量%である。
【0018】
本発明における錠剤の製造は、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授 橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)のような刊行物に記載されている錠剤の一般的な方法で製造すればよい。例えば、直接打錠法、乾式顆粒打錠法、湿式顆粒打錠法等があるが、好ましくは湿式顆粒打錠法である。
【0019】
錠剤を成形後、その錠剤の表面への被覆層として(以下、被覆層で形成前の錠剤を「素錠」ということもある。)、必要に応じフィルムコーティングを施すことができる。フィルムコーティングの目的としては、素錠の上に直接糖衣層を施す場合、糖衣工程自体かなり湿度の高い状態(水分過多)で作業するために素錠内に水分が移行しやすくなり、この素錠への水分の移行を防止するために乾燥状態でコーティングできる基剤、すなわちフィルムコーティングを被覆させる。また、これ以外の目的として、薬物と糖衣層または素錠との接触を避けたい場合、フィルムコーティングを設ける。
【0020】
本発明におけるフィルムコーティング基剤としては、製剤学上使用できるものであればよい。具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーE、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーL、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーS、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミンアセテート等が挙げられ、好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。これにより、塩酸フルスルチアミンおよびコンドロイチン硫酸ナトリウムが有する不快な臭いおよび味を効果的に低減でき、また糖衣層を施す場合、素錠への水分移行を防止することができ、さらに経時的に安定なフィルムコーティング剤が得られる。該フィルムコーティング液として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび所望により配合される上記の添加剤を上記の割合で水中に懸濁・溶解して得られる。また、素錠のフィルムコーティングをおこなう前に、所望によりサブコーティング(中間層)を形成してもよい。
【0021】
本発明における一錠剤あたりのフィルムコーティング基剤の含有量は、素錠重量に対してフィルム層が6〜20重量%、好ましくは8〜18重量%、さらに好ましくは10〜15重量%となるようにおこなう。この含有量よりも少なければ、十分に不快な臭いを抑制することができず、また糖衣層を施す場合、十分に素錠への水分移行を防止することができず、多ければ有効成分が十分に溶出することができない。
【0022】
本発明におけるフィルムコーティング錠の製造方法としては、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いればよく、特別な制限はない。フィルムコーティングを施す場合は、コーティング機として、通気式のコーティング機、例えばドリアコーター(パウレック)、アクアコーター(フロイント産業)、ハイコーター(フロイント産業)等の機器を用い、コーティング液を1000μm以下のミストとして噴霧し、給気温度、給気風量、注液速度等のコーティング条件を調整することによって達成される。
【0023】
錠剤を成形後、その錠剤の表面への被覆層として、必要に応じ糖衣基剤を施し、糖衣錠とすることもできる。糖衣基剤を施すのは、防湿・防気性の効果を得るためである。本発明における糖衣基剤としては、白糖、ショ糖、トレハロース、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、粉末還元麦芽糖水飴等が挙げられ、好ましくは、白糖、トレハロース、乳糖、特に好ましくは白糖である。
【0024】
錠剤への糖衣基剤の被覆は、糖衣基剤の溶液を錠剤に噴霧することによりおこなうことができる。該錠剤は所望によりサブコーティングされていてもよい。糖衣基剤は、好ましくは素錠に対して、重量比で0.06〜1.5倍、さらに好ましくは0.15〜1倍、特に好ましくは0.35〜0.7倍量の割合で被覆を行うことができる。この含有量よりも少なければ、十分に不快な臭いを抑制することができない可能性があり、多ければ錠剤が大きくなり、服用性も悪くなる恐れがある。
【0025】
本発明における糖衣基剤を被覆した錠剤の製造方法としては、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いればよく、特別な制限はない。糖衣基剤を施す場合は、コーティング機として、通気式のコーティング機、例えばドリアコーター(パウレック)、アクアコーター(フロイント産業)、ハイコーター(フロイント産業)等の機器を用い、コーティング液を1000μm以下のミストとして噴霧し、給気温度、給気風量、注液速度等のコーティング条件を調整することによって達成される。
なお、素錠を成形した後、素錠をフィルムコーティング基剤のみで被覆してもよいし、糖衣基剤のみで被覆してもよい。また、素錠をフィルムコーティング基剤で被覆後、糖衣基剤で被覆してもよい。
【0026】
本発明において、フィルムコーティング、糖衣基剤を被覆する場合、必要であれば、通常用いられる量の充填剤、滑沢剤、隠蔽剤、可塑剤、着色剤等の添加剤を配合することができる。本発明に使用できる添加剤としては、タルク、沈降炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、酸化チタン、マクロゴール6000、コポリビドン、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン、プロピレングリコール、プルラン、アラビアゴム、リボフラビン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄色5号アルミニウムレーキ、ポリシングワックス等が挙げられる。
【0027】
糖衣基剤を被覆する前に、錠剤の形状を整えるためにあるいは糖衣基剤の被覆量を低減させるために、下掛け層を施すことができる。なお、下掛け層としては、白糖が好ましい。
【0028】
本発明における固形製剤に、服用性向上のために、必要とあれば、香りおよび味を付与することもできる。例えば、着香剤または香料、矯味剤を配合することにより、香りおよび味を付与することができる。本発明で使用することができる着香剤または香料としては、例えば、ハッカ油、ユーカリ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、チョウジ油、オレンジ油、レモン油、ローズ油、フルーツフレーバー、バナナフレーバー、ストロベリーフレバー、ミントフレバー、ペパーミントフレバー、dl−メントール、l−メントール等が挙げられる。矯味剤としては、糖、糖アルコール、高甘味度甘味剤、酸味剤を配合することができる。矯味剤として本発明に用いられる糖、糖アルコールは、ショ糖、トレハロース、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、粉末還元麦芽糖水飴等が挙げられる。矯味剤として本発明に用いられる高甘味度甘味剤は、人工的に合成された甘味剤のうち、その甘味度が砂糖の数倍以上のもの、好ましくは約100倍以上のものをいい、具体的には、例えば、アスパルテーム、ステビア、サッカリン、グリチルリチン二カリウム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファームK等が挙げられる。矯味剤として本発明で用いられる酸味剤は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0029】
本発明における顆粒状組成物は、日本薬局方第14改正に記載の顆粒剤の規定に準ずるものであり、また、本発明における錠剤、フィルムコーティング錠、糖衣錠は、日本薬局方第14改正に記載の錠剤の規定に準ずるものである。特に、錠剤、フィルムコーティング錠、糖衣錠は、経口投与可能な錠剤であればよく、具体的には、直径5〜15mm、高さ2〜8mmのものであればよい。
【実施例1】
【0030】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。なお、実施例1〜3、参考例1〜3は、パントテン酸カル
シウムを配合した錠剤、実施例4、5は、ニコチン酸アミドを配合した錠剤である。
(実施例1の顆粒状組成物の製造法)
表1のコハク酸d−α−トコフェロール、賦形剤としてD−マンニトール、結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機(WSG5型)中で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)およびシアノコバラミン(0.6w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。この顆粒状組成物をA−1顆粒とする。また、別途、表1の塩酸ジセチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸カルシウムタイプS、賦形剤として結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機(WSG5型)中で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。この顆粒状組成物をB−1顆粒とする。
(実施例1の錠剤の製造法)
上記A−1顆粒、B−1顆粒のそれぞれの顆粒状組成物とともに、表1記載の結合剤である結晶セルロース、崩壊剤であるカルメロースカルシウムおよび滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム(植物性)を、顆粒外添加物として所定量V型混合機にいれ、混合する。その後、上記混合物を下記条件によって、単発式錠剤機(ロータリー型S30K−T30)によって打錠し、錠剤を製造した。
(実施例1の糖衣錠の製造法)
表1に示す白糖、プルラン、アラビアゴム末、タルク、沈降炭酸カルシウム、酸化チタン、および黄色5号の所定量を118mLの水に溶解・懸濁し、その溶液をパンコーティング装置(糖衣パン、菊水製作所)内で下記条件によって、上記錠剤に噴霧し、仕上げにポリッシングワックスをかけることにより、錠剤を糖衣層で被覆した。
【実施例2】
【0031】
(実施例2の顆粒状組成物の製造法)
表1のコハク酸d−α−トコフェロール、酪酸リボフラビン、賦形剤としてD−マンニトール、結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機(WSG5型)中で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)およびシアノコバラミン(0.6w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。この顆粒状組成物をA−2顆粒とする。また、別途、表1の塩酸ジセチアミン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸カルシウムタイプS、賦形剤としてD−マンニトール、結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機(WSG5型)中で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。この顆粒状組成物をB−2顆粒とする。
(実施例2の錠剤、糖衣錠の製造法)
錠剤および糖衣錠の製造方法は、顆粒状組成物として上記組成物とすること以外は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0032】
(実施例3の顆粒状組成物、錠剤、糖衣錠の製造法)
実施例A−2顆粒のコハク酸−d−トコフェロールをコハク酸−dl−α−トコフェロールカルシウム(ビタミンE含量96.54%)に変更した以外は、実施例2と同様である。
【0033】

【表1】

(参考例1)
【0034】
(参考例1の錠剤の製造法)
表2の塩酸ジセチアミン、酪酸リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸カルシウムタイプS、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、賦形剤としてD−マンニトール、結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機(WSG5型)で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)およびシアノコバラミン(0.6w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。
(参考例1の錠剤の製造法)
上記顆粒状組成物とともに、表2記載の結合剤である結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムおよび滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム(植物性)を、顆粒外添加物として所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合する。その後、上記混合物を下記条件によって、単発式錠剤機(ロータリー型S30K−T30)によって打錠し、錠剤を製造した。
(参考例1の糖衣錠の製造法)
表2に示す白糖、プルラン、アラビアゴム末、タルク、沈降炭酸カルシウム、酸化チタン、および黄色5号の所定量を118mLの水に溶解・懸濁し、その溶液をパンコーティング装置(糖衣パン、菊水製作所)内で下記条件によって、上記錠剤に噴霧し、仕上げにポリッシングワックスを掛けることにより、錠剤を糖衣層で被覆した。
(参考例2)
【0035】
(参考例2の顆粒状組成物の製造法)
表2の塩酸ジセチアミン、酪酸リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸カルシウムタイプS、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、賦形剤としてD−マンニトール、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機(WSG5型)中で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。この顆粒状組成物をC−2顆粒とする。
(参考例2の錠剤の製造法)
上記C−2顆粒とともに、表2記載の結合剤である結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムおよび滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム(植物性)を、顆粒外添加物として所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合する。その後、上記混合物を下記条件によって、単発式錠剤機(ロータリー型S30K−T30)によって打錠し、錠剤を製造した。
(参考例2のフィルムコーティング錠剤の製造法)
表2に示すシアノコバラミン(0.03w/v%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPCSL、7.5w/v%)、および白糖の所定量を8mLの水に溶解し、その溶液をパンコーティング装置(ハイコーターHC48、フロイント産業)内で下記条件によって噴霧することにより、上記錠剤をフィルムコーティングした。
(参考例2の糖衣錠の製造法)
上記フィルムコーティング錠剤に、表2の糖衣層を参考例1と同様に被覆し、糖衣錠を製造した。
(参考例3)
【0036】
(参考例3の顆粒状組成物の製造法)
表2の塩酸ジセチアミン、賦形剤としてD−マンニトール、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機中で流動させながら、シアノコバラミン(0.6w/v%)およびヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。この顆粒状組成物をC−3顆粒とする。また、別途、表1のリボフラビン、塩酸ピリドキシン、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、パントテン酸カルシウムタイプS、賦形剤として結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機(WSG5型)中で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。この顆粒状組成物をD−3顆粒とする。
(参考例3の錠剤の製造法)
上記C−3顆粒、D−3顆粒とともに、表2記載の結合剤である結晶セルロース、崩壊剤であるカルメロースカルシウムおよび滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム(植物性)を、顆粒外添加物として所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合する。その後、上記混合物を下記条件によって、単発式錠剤機(ロータリー型S30K−T30)によって打錠し、錠剤を製造した。
(参考例3の糖衣錠の製造法)
参考例1の糖衣錠の製造法と同様に、製造した。
【0037】

【表2】

【実施例4】
【0038】
(実施例4の顆粒状組成物の製造法)
表3のコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、リボフラビン、賦形剤としてD−マンニトール、結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機中で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)およびシアノコバラミン(0.6w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。この顆粒状組成物をA−4顆粒とする。また、別途、表3の塩酸ジセチアミン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸カルシウムタイプS、賦形剤としてD−マンニトール結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムを所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合した。その後、上記混合した粉末を下記条件によって、流動層造粒機(WSG5型)中で流動させながら、ヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、6.0w/v%)を溶解した水溶液を噴霧し、顆粒状組成物を製造した。この顆粒状組成物をB−4顆粒とする。
(実施例4の錠剤の製造法)
上記A−4顆粒、B−4顆粒のそれぞれの顆粒状組成物、表3の結合剤として結晶セルロースおよび崩壊剤としてカルメロースカルシウムおよび滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性)を所定量V型混合機(8LV型混合機)にいれ、混合する。その後、上記混合物を下記条件によって、単発式錠剤機(ロータリー型S30K−T30)によって打錠し、錠剤を製造した。
(実施例4の糖衣剤の製造法)
表3に示すヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖およびタルクの所定量を10mLの水に溶解・懸濁し、その溶液をパンコーティング装置(ハイコーターHC48、フロイント産業)内で下記条件によって上記錠剤へ噴霧することにより、上記錠剤を被覆した。さらに、表3に示すニコチン酸アミド、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびタルクの所定量を9mLの水に溶解・懸濁し、その溶液をパンコーティング装置(ハイコーターHC48、フロイント産業)内で下記条件によって噴霧することにより、上記錠剤をフィルムコーティングした。
表3に示す白糖、プルラン、アラビアゴム末、タルク、沈降炭酸カルシウム、酸化チタン、および黄色5号の所定量を96mLの水に溶解・懸濁し、その溶液をパンコーティング装置(糖衣パン、菊水製作所)内で下記条件によって、上記錠剤に噴霧し、仕上げにポリッシングワックスを掛けることにより、フィルムコーティング錠剤を糖衣層で被覆した。
【実施例5】
【0039】
(実施例5の糖衣錠の製造法)
実施例4のコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムをコハク酸d−α−トコフェロールに変更した以外は、実施例4と同様である。
【0040】

【表3】

【0041】
(流動層造粒機における造粒条件)
送風温度 60℃
送風量 2m3/分
スプレー液速 50g/分
スプレー圧 0.15Mpa
ノズル径 φ1.8mm
【0042】
(製錠機における打錠条件)
回転数 33rpm
杵 φ9.0mm
打錠圧 5kN
【0043】
(錠剤のフィルムコーティングにおける被覆条件)
給気管径 φ50mm
給気速度 1.5m3/分
給気温度 55℃
パン回転数 25rpm
【0044】
(錠剤の糖衣被覆における被覆条件)
給気風量 1.5m3/分
給気温度 55℃
パン回転数 25rpm
スプレー液速 7〜8g/分
スプレー圧 0.2MPa
ノズル径 φ0.8mm
【0045】
(錠剤の経時安定性試験法)
保存条件:40℃±2℃/75%±5%RH ポリ瓶密栓
【0046】
(シアノコバラミン[ビタミンB12類]の残存率測定法)
ビタミンB12類の残存率測定の操作は、直射日光を避け、遮光した容器を用いて行う。また,以下の方法で複数回試験した結果の平均値を定量値とする。
本品1個に、水30mLを正確に加えた後、20分間超音波照射し、さらに30分間激しく振り混ぜる。この液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、初めのろ液3mLを除き、次のろ液を試料溶液とする。別に定量用シアノコバラミン約24mgを精密に量り、水に溶かし、正確に200mLとする。この液5mLを正確に量り、水を加えて正確に100mLとする。この液5mLを正確に量り、水を加えて正確に30mLとし、標準溶液とする。試料溶液及び標準溶液100μLずつを正確にとり、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、シアノコバラミンのピーク面積AT,ASを測定する。
【0047】

【数1】

試験条件
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:365nm)
・カラム:内径4.6mm,長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする(L−カラム ODS)。
・カラム温度:25℃付近の一定温度
・移動相A:リン酸二水素アンモニウム5.8gを水に溶かし、1000mLとする。この液にアンモニア試液を加えてpH7.0に調整し、pH7.0の0.05mol/Lリン酸二水素アンモニウム緩衝液とする。この液4容量に液体クロマトグラフ用メタノールを1容量加える。
・移動相B:リン酸二水素アンモニウム5.8gを水に溶かし、1000mLとする。この液にアンモニア試液を加えてpH7.0に調整し、pH7.0の0.05mol/Lリン酸二水素アンモニウム緩衝液とする。この液3容量に液体クロマトグラフ用メタノールを2容量加える。

移動相の送液:移動相A及びBの混合比を次のように変えて濃度勾配制御する。
【0048】

【表4】

流量:毎分1.0mL(シアノコバラミンの保持時間が約14分)
定量用シアノコバラミンは、「ビタミンB12」内規適合品を使用した。ただし、定量時において、換算した乾燥物に対し、シアノコバラミン99.0%以上を含む。減圧・0.67kPa以下、酸化リン(V)、100℃、4時間乾燥したものをデシケーター(シリカゲル)で保存する。
【0049】
(シアノコバラミン[ビタミンB12類]の残存率測定結果)
シアノコバラミン[ビタミンB12類]を配合した上記錠剤を経時試験し、シアノコバラミンの残存率を測定した。
【0050】

【表5】

【0051】

【表6】

パントテン酸カルシウムを配合した糖衣錠において、シアノコバラミンとビタミンE類を同一の顆粒状組成物に配合しない参考例2の場合、1月後のシアノコバラミンの残存率は、90%未満であった。また、シアノコバラミンとビタミンB1類、ビタミンB6類を同一の顆粒状組成物に配合すると、参考例1および3から明らかなように、1月後の残存率は、90%未満であった。一方、シアノコバラミンとビタミンE類を同一の顆粒状組成物に配合し、かつビタミンB1類およびビタミンB6類を配合しない実施例1〜3の場合、1月後のシアノコバラミンの残存率は、90%以上であった。特に、ビタミンE類をコハク酸−dl−α−トコフェロールカルシウムとした実施例3の場合、1月後の残存率は95%以上であった。
ニコチン酸アミドを配合した糖衣錠においても、シアノコバラミンとビタミンE類を同一の顆粒状組成物に配合した場合、かつビタミンB1類およびビタミンB6類を配合しない実施例4、5の場合、1月後のシアノコバラミンの残存率は、90%以上であった。特に、ビタミンE類をコハク酸−dl−α−トコフェロールカルシウムとした実施例4の場合、1月後の残存率は98%以上であった。
【0052】
(顆粒状組成物のpH測定)
シアノコバラミンを含有する顆粒状組成物(実施例1〜3、参考例3)のpHを測定した。1錠剤あたりの顆粒状組成物(実施例1のA−1顆粒:79.03mg、実施例2のA−2顆粒:84.03mg、実施例3のA−3顆粒:90.03mg、参考例3のC−3顆粒:70.03mg)を20mLの蒸留水に溶解、懸濁し、室温下においてpH計測機(HORIBA pH/ION METER F−23型)にて測定した。その結果、下記表7の通り、ビタミンB1類を配合した参考例3では、pH4未満となったが、ビタミンB1類およびビタミンB6類を配合せず、ビタミンE類を配合した実施例1〜3の場合、pHが4以上であった。
したがって、ビタミンE類を顆粒状組成物に含有させ、かつ当該顆粒状組成物約80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが4以上となるように当該顆粒状組成物を調製することによって、ビタミンB12類を安定化できることが明らかとなった。
【0053】

【表7】

【産業上の利用可能性】
【0054】
ビタミンE類を含むことを特徴とするビタミンB12類含有顆粒状組成物であり、当該顆粒状組成物約80mgを20mL水に溶解・懸濁した溶液のpHが4以上であれば、ビタミンB12類を安定化することができる。ビタミンB12類を安定化させた本発明の顆粒状組成物は、医薬品のみならず、健康食品等にも使用することができる。また、顆粒状組成物をカプセルに充填することもできる。























【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンE類を含むことを特徴とするビタミンB12類含有顆粒状組成物であり、当該顆粒状組成物80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが4以上であることを特徴とする顆粒状組成物。
【請求項2】
上記の顆粒状組成物80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが5以上であることを特徴とする請求項1記載の顆粒状組成物。
【請求項3】
無機酸付加塩を含有しない請求項1または2に記載の顆粒状組成物。
【請求項4】
無機酸付加塩であるビタミン類を含有しない請求項1または2に記載の顆粒状組成物。
【請求項5】
無機酸付加塩であるビタミンB1類および/またはビタミンB6類を含有しない請求項1または2に記載の顆粒状組成物。
【請求項6】
ビタミンB2類を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の顆粒状組成物。
【請求項7】
ビタミンB12類がシアノコバラミン、ヒドロキソコバラミンおよびメチルコバラミンから選択される1または2以上である請求項1記載の顆粒状組成物。
【請求項8】
ビタミンE類がコハク酸d−α−トコフェロールまたはコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムである請求項1記載の顆粒状組成物。
【請求項9】
ビタミンE類がコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムである請求項1記載の顆粒状組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の顆粒状組成物を打錠することによって得られる錠剤。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の顆粒状組成物と、ビタミンB1類、ビタミンB2類およびビタミンB6類から選択される1または2以上を混合し、打錠して得られる錠剤。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の顆粒状組成物と、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類およびパントテン酸カルシウムから選択される1または2以上を混合し、打錠して得られる錠剤。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載の錠剤に被覆層を形成してなる被覆錠剤。
【請求項14】
ニコチン酸アミドを含有した被覆層を形成してなる請求項13記載の被覆錠剤。
【請求項15】
ビタミンE類としてコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウムを含有する請求項10〜12のいずれかに記載の錠剤に、ニコチン酸アミドを含有した被覆層を形成してなる被覆錠剤。
【請求項16】
1錠剤または1被覆錠剤あたりのビタミンB12類の含有量が0.001〜0.2重量%である請求項10〜15のいずれかに記載の錠剤または被覆錠剤。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれかに記載の顆粒状組成物と、ビタミンB1類、ビタミンB2類およびビタミンB6類から選択される1または2以上を混合し、打錠することを特徴とする錠剤の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれかに記載の顆粒状組成物と、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類およびパントテン酸カルシウムから選択される1または2以上を混合し、打錠することを特徴とする錠剤の製造方法。
【請求項19】
ビタミンE類を顆粒状組成物に含有させ、かつ当該顆粒状組成物80mgを20mLの水に溶解または懸濁した溶液のpHが4以上となるように当該顆粒状組成物を調製することを特徴とするビタミンB12類を安定化する方法。






【公開番号】特開2006−143613(P2006−143613A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332867(P2004−332867)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】