説明

ビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド及びその製造方法

【課題】高S/Nを有するビットパターンドメディアを製造でき、パターン欠陥の発生を抑制でき、製造を比較的短時間で行えるインプリントモールド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されているインプリントモールドにおいて、前記ドット状の凸部は、前記基板の主表面を削って形成された、複数の連続的な平面視ライン状の溝が交わってなる格子状の溝部に囲まれることによって形成され、前記一定周期において、前記ライン状の溝の幅は、前記ドット状の凸部の幅よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク等で用いられる磁気メディアにおいては、磁性粒子を微細化し、磁気ヘッド幅を極小化し、情報が記録されるデータトラック間を狭めて高記録密度化を図るという手法が用いられてきた。その一方で、高記録密度化の要求はますます進み、この磁気メディアでは隣接トラック間の磁気的影響が無視できなくなっている。そのため、従来手法だと高記録密度化に限界がきている。
【0003】
近年、磁気メディアのデータトラックを磁気的に分離して形成するパターンドメディアという、新しいタイプのメディアが提案されている。このパターンドメディアとは、記録に不要な部分の磁性材料を除去(溝加工)して信号品質を改善し、より高い記録密度を達成しようとするものである。
【0004】
最近、このパターンドメディアとして、磁気ディスクのデータトラックを磁気的に分離して形成するディスクリートトラック型メディア(Discrete Track Recording Media;以降、DTRメディアと言う。)という、タイプのメディアが提案されている。
【0005】
このDTRメディアは、磁性体領域と非磁性体領域を溝によって物理的に分離していることから、S/N比(信号雑音比 (Signal−Noise Ratio) )に優れている。
【0006】
その一方、このDTRメディアをさらに高密度化して発展させた、「ビットパターンドメディア」(信号をビットパターン(ドットパターン)として記録する磁気メディア Bit Patterned Media;以降、BPMと言う。))という新しいタイプのメディアも提唱されてきている。
【0007】
このパターンドメディアを量産する技術として、マスターモールド、または、このマスターモールドを元型モールドとして、一回または複数回転写して複製したコピーモールド(ワーキングレプリカとも言う。)が有するパターンを被転写体(ここでは、BPM)に転写することによりパターンドメディアを作製する、インプリント技術(または、ナノインプリント技術と言う。)が知られている。
【0008】
なお、上記のインプリント技術は、元型となるモールドに形成されたパターンを、被転写体に転写する技術である。この元型となるモールドを用意する手法としては様々な技術が知られている。その中でも、基板そのものをエッチングすることにより、所定のパターン形状を有するよう基板を削り、この基板を元型モールドとする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この特許文献1について簡単に説明すると、石英基板表面にレジストを成膜し、このレジスト膜に対して所定のパターン形状に相当する部位を露光し、現像処理を行い、レジストパターンを形成する。その後、このレジストパターン上から基板をエッチングし、レジストパターンを取り除いた後の基板を元型のモールドとする技術である。
【0010】
一方、上記のインプリント技術について、本願発明のように基板そのものを削る技術とは異なるが、特許文献2に記載されているものがある。
【0011】
この特許文献2について簡単に説明すると、Si基板表面にポジ型レジストを成膜し、このレジスト膜に対してビットパターンに相当する部位を露光する。そして、このレジスト膜に対して現像処理を行い、レジストパターンを形成する。その後、このレジストパターン上から導電膜及び電鋳膜を形成し、この電鋳膜をファザースタンパとする技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−310944号公報
【特許文献2】特開2008−34024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
BPMを作製するためのモールドは、従来だと、特許文献1や2のようにビットパターン部分を電子線で露光描画を行うことにより作製される。
つまり、マスターモールドに円柱状のビットパターン(ピラーアレー)を形成したい場合は、ネガ型レジストを使用してビットパターン部分を電子線で露光描画する。
逆に、マスターモールドに穴状のビットパターン(ホールアレー)を形成したい場合は、特許文献2のように、ポジ型レジストを使用してビットパターン部分を電子線で露光描画する。
【0014】
ところが、上記の方法には、以下の問題がある。
即ち、円柱状のビットパターンを形成する場合、ネガ型レジストを用いると、ピラーアレーのレジストパターンが形成される。このとき、円柱状のビット毎に露光を行うことから、円柱状のピラーは、互いに分離して形成されている。その結果、現像処理や基板へのエッチングの際に、このピラーアレーの一部が倒れてしまうおそれがある。レジストパターンにおけるピラーアレーが倒れてしまうと、基板へのエッチングの際、元型となるモールドにパターン欠陥が発生してしまう。そしてそのパターン欠陥は、元型のモールドから被転写体へと転写されてしまう。
【0015】
一方、穴状のビットパターンを形成する場合、ポジ型レジストを用いると、ホールアレーのレジストパターンが形成される。このとき、穴状のビット毎に露光を行うことから、本来ならば各々の穴は互いに分離して、ホールアレーが形成されるはずである。しかしながら、このホールアレーの一部で、穴同士が互いにつながってしまうおそれがある。これが、円柱状のビットパターンの場合と同様、パターン欠陥の発生につながる。
【0016】
以上のようなパターン欠陥が、最終的にBPMにおけるパターン欠陥につながることになり、最終製品の歩留まりに深刻な影響を与える恐れがある。
【0017】
また、この問題に対処する必要がある上、高記録密度化(高S/N化)については更なる向上要求があり、即ち、パターン(ビット)ピッチの狭小微細化はますます要求される。
【0018】
本発明の目的は、高S/Nを有するBPMを製造でき、パターン欠陥の発生を抑制でき、製造を比較的短時間で行えるインプリントモールド及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、BPMをインプリントにより作製する際の元型となるモールドについて検討した。更に詳しく言うと、基板の主表面を削ることによってビットパターンを基板の主表面に形成したモールドにおいて、上述のようなパターン欠陥をいかに減少させるかについて検討した。
【0020】
この検討の末、本発明者らは、従来のようにドット状の部分を露光するのではなく、レジストに対して格子状の露光を行い、格子によって囲まれた部分をビットパターンとするという知見を得た。更に詳しく言うと、ドット状の露光によりビットパターンを形成するのではなく、ライン状の露光によりビットパターンを、基板を削ることにより基板主表面に形成する(即ち、「線(ライン)」を以て「点(ビット(ドット))」を作る)という、少なくともインプリント技術においては今までにない知見を得た。
【0021】
その結果、そもそもの課題であるパターン欠陥の減少を実現するのみならず、BPMでいうところの磁性体部分の面積を大きくすることができ、S/N比を向上させることができることを見出した。
本発明者らは、以上の知見を元にして、上述の課題が解決可能となる手段を想到した。
【0022】
この知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されているインプリントモールドにおいて、
前記ドット状の凸部は、前記基板の主表面を削って形成された、複数の連続的な平面視ライン状の溝が交わってなる格子状の溝部に囲まれることによって形成され、
前記一定周期において、前記ライン状の溝の幅は、前記ドット状の凸部の幅よりも小さいことを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
前記一定周期が25nm以下であり、
前記ライン状の溝の幅は、前記ドット状の凸部の幅の2/3以下であることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の態様であって、前記基板は透明又は半透明基板であることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3のいずれかの態様に記載の態様であって、前記基板は石英からなることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第1ないし第4のいずれかの態様に記載の態様であって、
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に25nm以下の一定周期で形成されており、前記基板は透明又は半透明基板であるインプリントモールドにおいて、
前記ドット状の凸部は、前記基板の主表面を削って形成された、複数の連続的な平面視ライン状の溝が交わってなる格子状の溝部に囲まれることによって形成され、
前記一定周期において、前記ライン状の溝部の幅は、前記ドット状の凸部の幅の2/3以下であることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドである。
本発明の第6の態様は、
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凹部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凹部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されているインプリントモールドにおいて、
前記ドット状の凹部は、前記基板の主表面において削られた部分が、複数の連続的な平面視ライン状の壁が交わってなる格子状の壁部に囲まれることによって形成され、
前記一定周期において、前記ライン状の壁の幅は、前記ドット状の凹部の幅よりも小さいことを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドである。
本発明の第7の態様は、第1ないし第6のいずれかの態様に記載のパターンドメディア製造用のインプリントモールドを元型モールドとして用い、インプリントにより作製されたことを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドである。
本発明の第8の態様は、
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が1ビットごとに分離して基板の主表面に形成され、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されるインプリントモールドの製造方法において、
基板の主表面を覆うようにポジ型レジストを塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ポジ型レジストで覆われた基板の主表面に対して、複数のライン状の露光候補部を互いに交わらせることによって格子状の露光を行い、格子状の露光候補部と、前記格子状の露光候補部によって囲まれたドット状の非露光部とを形成する露光工程と、
前記露光工程の後、前記ポジ型レジストを現像してレジストパターンを形成する現像工程と、
前記現像工程の後、ドット状の凸部からなるビットパターンをエッチングにより前記基板の主表面に形成する工程と、
を有し、
前記露光工程では、前記一定周期において、ライン状の露光候補部の幅をドット状の非露光部の幅よりも小さくするよう露光を行い、
ライン状の露光によって、最終的にドット状の凸部を1ビットごとに分離して前記基板の主表面に形成することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法である。
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の態様であって、
前記露光は、前記ポジ型レジストで覆われた基板の主表面に対して電子線で描画することにより行われることを特徴とする
本発明の第10の態様は、第8又は第9の態様に記載の態様であって、
前記一定周期を25nm以下とし、
前記ライン状の露光候補部の幅を、前記ドット状の非露光部の幅の2/3以下とすることを特徴とする。
本発明の第11の態様は、第8ないし第10のいずれかの態様に記載の態様であって、前記基板は透明又は半透明基板であることを特徴とする。
本発明の第12の態様は、第8ないし第11のいずれかの態様に記載の態様であって、前記基板は石英からなることを特徴とする。
本発明の第13の態様は、第8ないし第12のいずれかの態様に記載の態様であって、
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が基板の主表面に形成され、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に25nmの一定周期で形成され、前記基板は透明又は半透明基板であるインプリントモールドの製造方法において、
基板の主表面を覆うようにポジ型レジストを塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ポジ型レジストで覆われた基板の主表面に対して、複数のライン状の露光候補部を互いに交わらせることによって格子状の露光を電子線により行い、格子状の露光候補部と、前記格子状の露光候補部によって囲まれたドット状の非露光部とを形成する露光工程と、
前記露光工程の後、前記ポジ型レジストを現像してレジストパターンを形成する現像工程と、
前記現像工程の後、エッチングにより前記基板の主表面にビットパターンを形成する工程と、
を有し、
前記露光工程では、前記一定周期において、前記ライン状の露光候補部の幅を、前記ドット状の非露光部の幅の2/3以下とするよう露光を行い、
ライン状の露光によって最終的にドット状の凸部を1ビットごとに分離して前記基板の主表面に形成することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法である。
本発明の第14の態様は、
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凹部が1ビットごとに分離して基板の主表面に形成され、前記ドット状の凹部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されるインプリントモールドの製造方法において、
基板の主表面を覆うようにネガ型レジストを塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ネガ型レジストで覆われた基板の主表面に対して、複数の連続的なライン状の露光部を交わらせることによって格子状の露光を行い、格子状の露光部と、前記格子状の露光部によって囲まれたドット状の非露光部とを形成する露光工程と、
前記露光工程の後、前記ネガ型レジストを現像して格子状のレジストパターンを形成する現像工程と、
前記現像工程の後、ドット状の凹部からなるビットパターンをエッチングにより前記基板の主表面に形成する工程と、
を有し、
前記露光工程では、前記一定周期において、ライン状の露光部の幅をドット状の非露光部の幅よりも小さくするよう露光を行い、
ライン状の露光によって、最終的にドット状の凹部を1ビットごとに分離して前記基板の主表面に形成することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法である。
本発明の第15の態様は、第8ないし14のいずれかの態様に記載のパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法で作製したインプリントモールドを元型モールドとして用い、インプリントにより作製することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高S/Nを有するBPMを製造でき、パターン欠陥の発生を抑制でき、製造を比較的短時間で行えるインプリントモールド及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態における、マスターモールドの製造過程を示す概略断面図である。
【図2】変形例における、レジスト層への露光部分を示す概略平面図であり、(a)は露光候補部を記載した図であり、(b)は露光候補部の記載を除いて実際に露光した部分と非露光部とを記載した図である。
【図3】変形例における、レジスト層への露光部分を示す概略平面図である。
【図4】(a)は、格子状の溝部を有するインプリントモールドを作製する際、ポジ型のレジスト層への露光部分を示す概略平面図である。(b)は、本実施形態における、本実施形態における、格子状の溝部を有するインプリントモールドの概略斜視図である。
【図5】本実施形態における、ワーキングレプリカの製造過程を示す概略断面図である。
【図6】(a)は、変形例における、格子状の溝部を有するインプリントモールドを作製する際、ポジ型のレジスト層の現像部分を示す概略平面図である。(b)は、変形例における、格子状の溝部を有するインプリントモールドを示す概略斜視図である。
【図7】(a)は、本実施形態における、格子状の壁部を有するインプリントモールドを作製する際、ネガ型のレジスト層への露光部分を示す概略平面図である。(b)は、基板上に格子状のレジストパターンを形成した時の概略斜視図である。(c)は、基板に対してエッチングを施した時の概略斜視図である。(d)は、格子状の壁部を有するインプリントモールドの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施形態においては、ビットパターンが形成された原盤(マスターモールドとも言う)を作製し、これを元型モールドにして一回又は複数回転写して複製したワーキングレプリカを作製する場合について述べる。そして、このワーキングレプリカが有するビットパターンをインプリント技術により転写して、BPMを作製する場合について述べる。また、本実施形態においてはビットパターンの周期が1μm未満の場合について詳述するため、インプリント技術のことをナノインプリント技術又は単にナノインプリントとも言う。なお、「マスターモールド」、「ワーキングレプリカ」をまとめて単に「モールド」とも言う。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態においては、初めに図1を用い、次の順序で説明を行う。
1.マスターモールドの製造方法
a)基板の準備
b)レジスト塗布工程
c)露光工程
d)現像工程
e)基板へのエッチング工程
f)洗浄・乾燥工程
2.マスターモールド主表面におけるビットパターンの詳細
3.マスターモールドを元にしたワーキングレプリカの製造方法
a)ワーキングレプリカ製造用基板の準備
b)レジスト層の形成
c)レジスト層への元型モールドの載置
d)露光によるパターン転写
e)レジスト層における残膜層の除去
f)基板へのエッチング
g)ワーキングレプリカの完成
4.ワーキングレプリカを元にしたBPMの製造方法
5.実施の形態による効果
6.変形例
【0027】
<1.マスターモールドの製造方法>
a)基板の準備
本実施形態において、図1(a)の基板1は、複数のトラックを有する磁気記録媒体を製造するため、又は複数のトラックを有する磁気記録媒体の製造に用いられるワーキングモールドをインプリントにより製造する際に用いられるマスターモールド(原盤)10となる基板である。つまり、ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドとなる基板である。
本実施形態においては、ウエハ形状の石英からなる基板1を用いて説明する。以降、このウエハ形状の石英からなる基板を単に基板1という。
なお、本実施形態において基板1はウエハ形状とするが、発明の概略をわかりやすく説明する都合上、図面においては矩形基板の場合について概略的に記載する。
【0028】
b)レジスト塗布工程
この基板1に対して脱水ベーク処理や密着補助層(図示せず)の形成を行う。その後、図1(b)に示す通り、基板1の一方の主表面を覆うように、塗布工程感光膜の一例としてのレジスト層21を形成する。本実施形態においては、レジスト層21には、一例としてポジ型レジストを使用する。
なお、ネガ型レジストを用いた場合については、<6.変形例>の項目にて説明する。
【0029】
塗布方法としては、本実施形態においては、ハードマスク2を形成した基板1の主表面に上記レジストの溶液を滴下した後、所定の回転数にて基板1を回転させレジスト層21を形成するスピンコート法を用いる。次いで、レジスト層21がスピンコートされた基板1をホットプレートにて所定の温度と時間でベーク処理し、その後、例えば室温(例:22.5℃)に保たれた冷却プレート上に移載して冷却処理し、乾燥して、レジスト層21を形成する。
【0030】
また、この時のレジスト層21の厚さは、基板1へのエッチングが完了するまでレジスト層が残存する程度の厚さであることが好ましい。基板1へのエッチングにより、レジスト層21に形成されるレジスト溶解部に対応する部位のみならず、レジスト非溶解部のレジスト層21も少なからず除去されるためである。
【0031】
c)露光工程
前記塗布工程の後、電子線露光(描画)装置を用いて、レジスト層21に所望のパターンを描画する。なお、本実施形態においては、先に述べたように、レジスト層21はポジ型レジストある。そのため、電子線描画した部位がレジスト溶解部となり、ひいては電子線描画した部位がマスターモールド10における格子状の溝部8に対応することになる。なお、以降においては、電子線による描画についても「露光」又は「電子線露光」と言う。
以下、詳細に説明する。
【0032】
本実施形態においては、図4(a)のように、ポジ型レジストで覆われた基板1の主表面に対して、複数のライン状の露光候補部6を交わらせることによって格子状の露光を行い、格子状の露光候補部6と、前記格子状の露光候補部6によって囲まれたドット状の非露光部7とを形成する。
【0033】
ここで「露光候補部」とは、基板主表面において、電子線露光装置で露光を行う可能性がある部分のことである。つまり、この露光候補部6においては、ポジ型レジストで覆われた基板1の主表面を示す図2(a)(b)のように、実際の露光工程後、露光した部分6aのみならず、結果的に露光しなかった部分6bを含む余地を残している。このように、露光しなかった部分6bが露光候補部6に存在するとしても、その後の工程によって、最終的に図4(b)のようにドット状の凸部1aを1ビットごとに分離して前記基板1の主表面に形成できれば良い。
【0034】
次に、複数のライン状の露光候補部6における「ライン」は、直線も曲線も含む。更には、連続的なライン状露光であっても良いし、不連続的(例えば平面視で破線状)なライン状露光であっても良い。この複数の露光候補部6が互いに交わることによって、格子状の露光候補部6を形成することができさえすれば良く、この格子状の露光候補部6によって囲まれることにより、ドット状の非露光部7が形成されれば良い。
【0035】
ここでいう「格子状の露光候補部」とは、図2(a)のように、複数の平面視直線状の露光候補部6が互いに交差することによって格子が形成される部分でも良い。また、同じくポジ型レジストで覆われた基板1の主表面を示す図3(a)のように、交差ではなく露光候補部6が交わり、平面視で三叉路を形成するような部分でも良い。
【0036】
なお、ここでいう「格子状」とは、「露光候補部」によって非露光部7が囲まれている状態のものを指す。この状態は、図4(a)のように露光工程にて実際に露光された部分6aのみで完全に囲まれた場合も含むし、図2(a)のように露光候補部6によって囲まれてはいるが、図2(b)のように実際に露光された部分6aでは完全には囲まれていない部分も含む。
【0037】
いずれにせよ、後述するe)基板へのエッチング工程にて、基板主表面に連続的な溝を形成することができ、最終的にドット状の凸部1aを1ビットごとに分離して前記基板1の主表面に形成することができれば良い。
【0038】
なお、上記の不連続的なライン状露光の場合について、及び、露光候補部6が、実際には露光しなかった部分を含む場合については、<6.変形例>で述べる。本実施形態においては、露光候補部6の全ての部分に露光を行った場合について述べる。
【0039】
上述のように、本実施形態においては、露光候補部6の全てを実際に露光する(図4(a))。その際、前記一定周期において、ライン状の露光候補部6の幅をドット状の非露光部7の幅よりも小さくするよう露光を行う。
【0040】
ビットとなる部分「以外の部分」を露光し、更にライン状の露光候補部6の幅をドット状の非露光部7の幅よりも小さくすることにより、ドット状の凸部1aの部分のレジストを従来よりも比較的多く残すことができる。その結果、その後の基板1へのエッチングの際に、レジストが多少失われたとしても、比較的大きなドット状の凸部1aを形成することができる(図4(b))。
【0041】
従来だとBPM及びその製造に用いられるモールドにおいては、露光部幅と非露光部幅とを「同じ」(即ち、最終的に基板主表面に形成される、凹部幅:凸部幅=1:1)とするという極めて厳しい条件設定としていた。
しかしながら、上記のような本実施形態の手法を用いると、ドット状の凸部1aの部分のレジストを充分残すことができ、ビットパターン形成の際の難易度を下げることができ、ひいては、パターン欠陥の発生を抑制できる。
【0042】
更には、充分大きな磁性体領域を有するBPMを作製することができる。それと同時に、この充分大きな磁性体領域に対応する大きなビットをその都度露光しなくとも済む。つまり、小さい面積(ビット以外の部分の面積)の露光を行うだけで済み、露光に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0043】
以上の結果、高S/Nを有するBPMを製造でき、パターン欠陥の発生を抑制でき、製造を比較的短時間で行えるインプリントモールドを提供することができる。
【0044】
つまり、本実施形態のように、「線(ライン)」を以て「点(ドット)」を作るという発想に基づいて、ビットとなる部分「以外の部分」を露光することにより、上記の効果を得ることができる。
【0045】
なお、上記の一定周期の長さであるが、1μm未満であれば、近年の電子機器の性能及び最終製品の性能という観点からは好ましい。
【0046】
更に、一定周期を25nm以下とし、更に前記ライン状の露光候補部6の幅を、前記ドット状の非露光部7の幅の2/3以下とすることが、特に好ましい。その理由については以下のとおりである。
【0047】
従来だと、25nmという極めて微小なオーダーで、ビットパターンを形成するとなると、より精緻にビットパターンを形成しなければならないと考えられていた。
【0048】
より精緻にビットパターンを形成するためには、レジスト層が設けられた基板において、ビットとなる部分を露光するのが常であった。最終的に基板主表面に形成される凹部幅と凸部幅とを1:1としていた従来の状況でもそうなのだから、25nmという極めて微小なオーダーで、しかもドット状の凸部1aの幅を大きくするとなると、ドット状の凸部1aを更に精度良く配置しなければならず、ひいては精度良く凸部1aを電子線によって露光しなければならないことが予想される。
【0049】
しかしながら、本実施形態のように、従来とは逆転の発想(即ち、「線(ライン)」を以て「点(ビット(ドット))」を作る)を基に、ビットとなる部分「以外の部分」を露光することによりこの問題を解消できる。
つまり、本実施形態のようにポジ型レジストを用い、前記ライン状の露光候補部6の幅を、前記ドット状の非露光部7の幅の2/3以下となるように、ビットとなる部分「以外の部分」を露光することにより、ドット状の非露光部7の部分のレジストを多く残すことができる。その結果、その後の基板1へのエッチングの際に、レジストが多少失われたとしても、充分大きなドット状の凸部1aを基板主表面に形成することができ、ひいては充分大きな磁性体領域を有するBPMを作製することができる。
その結果、更に確実に、高S/Nを有するBPMを製造でき、パターン欠陥の発生を抑制できる。
【0050】
なお、非露光部7の平面視形状については、本実施形態においては略矩形の場合について説明しているが、BPMにおいて磁性体領域として機能する形状であれば良い。上述の露光工程での露光の仕方によって、略円形にすることもできるし、略矩形とすることもできるし、それ以外の形状とすることも随時可能である。
【0051】
d)現像工程
(現像)
所望の微細パターンを露光した後、図1(c)に示すように、ポジ型レジストからなるレジスト層21を所定の現像剤で現像し、レジスト層21において露光された部分(レジスト溶解部)を除去し、所望の微細パターンに対応するレジストパターン22を形成する。
【0052】
(リンス・乾燥)
その後、前記現像剤の滴下供給を止めた直後に、基板1を回転させながら基板1の上方から、前記現像剤を洗い流すためにリンス剤を滴下供給する。その後、上記のリンス処理を行った基板1に対して乾燥処理を行う。こうして、所望のレジスト溶解部とレジスト非溶解部からなるレジストパターン22が形成された基板1が得られる。
【0053】
e)基板へのエッチング工程
前記現像工程の後、ドット状の凸部1aからなるビットパターンをエッチングにより前記基板の主表面に形成する。以下、このエッチング工程について説明する。
【0054】
(レジストパターンのデスカム:第1のエッチング)
その後、レジストパターン22が形成された基板1を、ドライエッチング装置に導入する。そして、図1(d)のように、酸素ガスとアルゴン(Ar)ガスの混合ガスによる第1のエッチングを行い、レジスト溶解部の残膜層21aである残渣(スカム)を除去する。
【0055】
(基板のエッチング:第2のエッチング)
続いて、第1のエッチングで用いたガスを排気した後、フッ素系ガスを用いた第2のエッチングを基板1に対して行う。こうして図1(e)のように、レジストパターン22に対応する溝加工が基板1に施され、溝部8以外の部分においてレジストパターン22が残存しているモールドが作製される。
【0056】
(レジストパターンの除去)
続いて、硫酸と過酸化水素水の混合液からなるレジスト剥離剤によって、図1(f)のように、前記第3のエッチングの後に生じたレジストパターン22の残存を除去し、レジストパターン22を完全に剥離する。
具体的には、基板1を前記レジスト剥離剤に所定の時間浸漬し、その後、リンス剤(ここでは、常温または加熱された純水)によりレジスト剥離剤を洗い流す。次いで前記乾燥処理と同様な手法で、基板1を乾燥させる。
なお、ここで用いるレジスト剥離剤としては、レジストを膨潤溶解又は化学的に分解して剥離除去できる化合物であれば良い。
【0057】
f)洗浄・乾燥工程
以上の工程を経た後、必要があれば基板1の洗浄等を行う。このようにして、図1(f)に示すようなマスターモールド10を完成させる。
【0058】
<2.マスターモールド主表面におけるビットパターンの詳細>
以上の工程を経てマスターモールド10について、以下、図4(b)を用いて説明する。
本実施形態におけるマスターモールド10には、基板主表面をエッチングにて削り取ることにより、凹凸が形成されている。この凸部1aの形状はドット状である。それと同時に、このマスターモールド10から、磁性体領域を有するBPMをインプリントにより作製する際、磁性体領域の元となる部分である。
【0059】
前記ドット状の凸部1aは、前記基板1の主表面を削って形成された、複数の連続的な平面視ライン状の溝8aが交わってなる格子状の溝部8に囲まれることによって形成される。更に、前記一定周期において、前記ライン状の溝8aの幅は、前記ドット状の凸部1aの幅よりも小さい。
【0060】
ここでいう「連続的なライン状の溝」とは、「格子状の溝部」を構成する各々の溝8aのことであり、連続的であればラインの形状は問わない。
【0061】
更に、「格子状の溝部」における溝8aの配置であるが、例えば、平面視で見たとき、複数本の連続的な直線が交差することによって形成される溝でも良い。また、交差ではなく溝同士が交わり三叉路を形成するような溝でも良い。
【0062】
また、「格子状の溝部」は、「連続的なライン状の溝」の組み合わせにより形成される部分であり、その存在によって、ドット状の凸部1aを1ビットごとに分離して前記基板1の主表面に形成している部分である。つまり本実施形態における「格子状の溝部」は、ドット状の凸部1aを囲むように形成されている溝8aの集合体を指す。
【0063】
従来だと、ピラーアレーであれホールアレーであれ、パターンの一定周期において、ドット状の部分(BPMでいうところの磁性体部分)の幅は、ドット状の部分以外の部分(BPMでいうところの非磁性体部分)の幅に比べて同等以下に設定されている。そのため、BPMでいうところの磁性体部分の面積は、相対的に小さいものになっている。
しかしながら、本実施形態におけるインプリントモールドならば、ドット状の部分を非常に大きく確保することができる。その結果、高S/Nを有するBPMを製造でき、パターン欠陥の発生を抑制できる。
【0064】
なお、このドット状の凸部1aは、基板1の主表面において所定の方向に一定周期で形成されている。この所定の方向は、BPMにおける情報読み取り方向(円周方向)である場合が多い。もちろん、半径方向であっても良いし、それ以外の方向であっても良い。
【0065】
この一定周期の長さであるが、<1.マスターモールドの製造方法>c)露光工程にて述べたように、1μm未満であれば、近年の電子機器の性能及び最終製品の性能という観点からは好ましい。なお、一定周期を25nm以下とし、更に前記ライン状の溝8aの幅を、前記ドット状の凸部1aの幅の2/3以下とすることが、特に好ましい。
【0066】
また、平面視におけるドット状の凸部1aの面積としては、前記一定周期(即ちドット状の凸部1aと格子状の溝部8により形成される、一つの単位となる領域)において、格子状の溝部8の面積の1/3より大きいのが好ましい。このくらいドット状の凸部1aが大きければ、最終的にBPMにて磁性体部分からなる領域を大きく確保することができ、充分なS/N比を有するBPMを作製することが可能となる。
【0067】
<3.マスターモールドを元にしたワーキングレプリカの製造方法>
本実施形態においては、以下の手順でワーキングレプリカ作製工程を、図5を用いて説明する。
a)ワーキングレプリカ製造用基板の準備
b)レジスト層の形成
c)レジスト層への元型モールドの載置
d)露光によるパターン転写
e)レジスト層における残膜層の除去
f)基板へのエッチング
g)ワーキングレプリカの完成
【0068】
a)ワーキングレプリカ製造用基板の準備
まず図5(a)に示すように、ワーキングレプリカ30のための基板3を用意する。
この基板3は、ワーキングレプリカ30として用いることができるのならば良く、先に述べたマスターモールド10と同様の材質でも構わない。
本実施形態においては、円盤形状の石英基板3を用いて説明する。
【0069】
b)レジスト層の形成
上記の基板3に対して適宜洗浄・ベーク処理を行った後、図5(b)に示すように、ワーキングレプリカ30用の基板3に対して光インプリント用のレジストを塗布してレジスト層41を形成し、本実施形態におけるワーキングレプリカ30の製造に用いられるレジスト層41付き基板3を作製する。
なお、マスターモールド10の際と同様に、基板3とレジスト層41との間に、別途ハードマスクや密着補助層等を設けても良い。
【0070】
光インプリント用のレジストとしては、光硬化性樹脂とりわけ紫外線硬化性樹脂が挙げられるが、光硬化性樹脂の内、後で行われるエッチング工程に適するものであれば良い。また、光硬化性樹脂以外であっても、熱インプリント用の樹脂のように、インプリントに適するレジストならどの種類のレジストを用いても構わない。
【0071】
また、この時のレジスト層41の厚さは、各種エッチングが完了するまでマスクとなる部分のレジストが残存する程度の厚さであることが好ましい。
【0072】
c)レジスト層への元型モールドの載置
このレジスト層41に対して適宜ベーク処理を行った後、図5(c)に示すように、このレジスト層41の上に、微細パターン及びその上に離型層5が形成されたマスターモールド10を配置する。
【0073】
この時、レジスト層41が液状であるならば、マスターモールド10を載置するだけで良い。
また、レジスト層41が固体形状の場合は、マスターモールド10をレジスト層41に対して押圧して微細パターンを転写できる程度に軟らかいレジスト層41であれば良い。
【0074】
d)露光によるパターン転写
その後、紫外光照射装置を用いて、前記レジスト層41に対してマスターモールド10の微細パターンを転写する。このとき紫外光の露光はマスターモールド10側から行うのが通常であるが、基板3が透光性基板である場合は、基板3側から行っても良い。
【0075】
なおこの際、マスターモールド10と基板3との間の位置ずれによる転写不良を防止するため、アライメントマーク用の溝を基板3上に予め設けていても良い。
【0076】
e)レジスト層における残膜層の除去 微細パターン転写後、図5(d)に示すように、マスターモールド10をレジスト層41付き基板3から離型する。
そして、<1.マスターモールドの製造方法>e)基板へのエッチング工程(レジストパターンのデスカム:第1のエッチング)で説明した方法で、基板3上にあるレジストの残膜層41aを、酸素、オゾン等のガスのプラズマを用いたアッシングにより除去する。
こうして、図5(e)に示すように、所望の微細パターンに対応するレジストパターン42を形成する。なお、レジストが形成されなかった部分において、基板3上に溝8aが形成されることになる。
【0077】
f)基板へのエッチング
次に、基板上にレジストパターン42が形成された基板3を、ドライエッチング装置に導入する。そして、<1.マスターモールドの製造方法>e)基板へのエッチング工程で説明した方法で、基板3に対してエッチングを行う。この際、前記レジストパターン42をマスクとして基板3をエッチング加工し、図5(f)に示すように、微細パターンに対応した格子状の溝部8を基板3に施す。その前後において、上述のレジスト剥離液にてレジストパターン42を除去する。
こうして図5(f)に示すように、微細パターンに対応する溝加工が基板3に施される。
【0078】
g)ワーキングレプリカの完成
以上の工程を経た後、必要があれば基板3の洗浄等を行う。このようにして、図5(g)に示すようなワーキングレプリカ30を完成させる。
【0079】
このように作製したワーキングレプリカ30は、特に、インプリント技術を用いて作製されるパターンドメディアに本実施形態を好適に応用することができる。
【0080】
<4.ワーキングレプリカを元にしたBPMの製造方法>
以下、BPMの製造方法について簡単な一例を示す。
所定のビットパターンが転写された前記ワーキングレプリカに対し、剥離剤層を形成する。
そして、BPMとなる基板上に、軟磁性層、非磁性配向層、磁性体部分からなる磁気記録層、及び保護層をこの順にスパッタリング法で成膜する。そして、保護層上の潤滑剤層をディップ法で形成する。
【0081】
そして、BPMとなる基板上に対して光硬化性レジストを塗布し、レジスト層を形成し、その後、露光によりレジストパターンを形成する。
【0082】
その後、ビットパターンが転写されたインプリントレジスト層をマスクにしてエッチングを行い、インプリント用モールド構造体1上に形成されたビットパターンに基づく凸部を磁気記録層に形成し、凹部に非磁性材料を埋め込み、表面を平坦化する。その後、保護膜を形成してBPMを得る。
【0083】
<5.実施の形態による効果>
本実施形態においては、前記一定周期において、ライン状の露光候補部6の幅をドット状の非露光部7の幅よりも小さくするよう露光を行う。
【0084】
ビットとなる部分「以外の部分」を露光し、更にライン状の露光候補部6の幅をドット状の非露光部7の幅よりも小さくすることにより、ドット状の凸部1aの部分のレジストを従来よりも比較的多く残すことができる。その結果、後での基板1へのエッチングの際に、レジストが多少失われたとしても、比較的大きなドット状の凸部1aを形成することができる。
その結果、ドット状の凸部1aの部分のレジストを充分残すことができ、ビットパターン形成の際の難易度を下げることができ、ひいては、パターン欠陥の発生を抑制できる。
【0085】
更には、充分大きな磁性体領域を有するBPMを作製することができる。それと同時に、この充分大きな磁性体領域に対応する大きなビットをその都度電子線により露光しなくとも済む。つまり、小さい面積(ビット以外の部分の面積)の露光を電子線により行うだけで済み、露光に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0086】
以上の結果、高S/Nを有するBPMを製造でき、パターン欠陥の発生を抑制でき、製造を比較的短時間で行えるインプリントモールドを提供することができる。
【0087】
<6.変形例>
なお、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0088】
(露光候補部における非露光の部分)
上記の<1.マスターモールドの製造方法>c)露光工程において簡単に述べたが、本実施形態における「露光候補部」では、必ずしも全部を露光する必要はない。例えば図2(a)(b)のように、複数の露光候補部6を互いに交差させるように配置しつつ、交差する部分においては露光を行わなくとも良い。
ポジ型レジストに対してこのように露光を行うことにより、露光候補部6において、交差部6b以外の部分のレジストが溶解されることになる。その結果、ドット状の非露光部7に加え、交差部6bのレジストが残存することになる。
このまま基板1へのエッチングを行うと、交差部6bに残存するレジストのせいで、連続的な溝8aが形成できないように見える。しかしながら、交差部6bに残存するレジストパターン22が、基板1に連続した溝8aを施すことができる程度に少量ならば、基板1へのエッチングの際に除去されることになる。その結果、交差部6bを露光せずとも、最終的にはドット状の凸部1aを1ビットごとに分離して前記基板1の主表面に形成できる。
【0089】
(溝の配置)
先にも述べたが、インプリントモールドに形成される「格子状の溝部」における溝8aの配置は、複数本の連続的な直線が交差することによって形成される溝部8でも良いし、交差ではなく溝同士が交わり三叉路を形成するような溝部8でも良い。
【0090】
具体的には、トラックごとに円周方向へと連続的な溝8aを形成し、トラック間を繋げるように溝8aを形成しても良い。そしてこのトラック間の溝8aは、あるトラック間を繋ぎさえすれば良く、半径方向に連続した溝8aでなくとも良い。このとき、トラック間の溝8aを形成する際、各トラック間で、円周方向において一定周期の半分だけずらして形成しても良い。
【0091】
(露光候補部における非露光の部分、及び、溝の配置)
上記の変形例を組み合わせることにより露光工程を行い、そしてインプリントモールドを作製しても良い。具体的には、図3(b)(c)のように、トラック間を繋げるように露光候補部6を形成する際に、各トラック間で、円周方向において一定周期の半分だけずらして形成しても良い。
【0092】
(ビットの形状)
本実施形態においては、ビットの形状を矩形として説明したが、それ以外の形状であっても構わない。結局、BPMにおいて磁性体部分として適切な形状であれば平面視円形でも多角形でも構わない。
【0093】
なお、ビットの形状を平面視で略円形とする場合、本実施形態の手法で基板1に対するエッチングを行えば良い。
具体的に言うと、このエッチングの際、露光候補部6が全て露光されている場合、露光候補部6が互いに交わる部分には重複して露光がなされている。その結果、現像工程において、露光候補部6が互いに交わる部分においては、予想以上に大きい面積のレジストが除去される(図6(a))。その結果、符号6cの部分(斜線部分)のレジストが除去されることになり、平面視にて矩形状で形成されていたレジストパターン22の角部分が丸まることになる。その結果、基板1におけるドット状の凸部1aの角部分もエッチングされることになる(図6(b))。
以上のように、エッチング条件を制御することにより、比較的容易に平面視で略円形のドット状の凸部1aを形成することができる。
【0094】
一方、ビットの形状を平面視で略矩形とする場合、ポジ型レジストにおいては、先に示した図2(a)(b)のように、露光候補部6が互いに交わる部分6bを非露光とするのが好ましい。このように露光することにより、先に述べたように露光候補部6が互いに交わる部分6bにおいてはレジストが残存するが、基板1へのエッチングの途中で除去されることになる。このレジストが除去されるタイミングを利用する。つまり、基板1へのエッチングの途中までは、露光候補部6が互いに交わる部分6bにおいてはレジストが残存する。そのため、露光候補部6が全て露光されている場合とは異なり、現像工程において、露光候補部6が互いに交わる部分6bにおいては、重複どころか露光そのものがなされない。その結果、基板1へのエッチングを行う際に初めて、露光候補部6が互いに交わる部分6bのレジストが除去されることになり、基板1におけるドット状の凸部1aの角部分がエッチングされる間もなく、基板1へのエッチングが完了する。
以上のように、エッチング条件を制御することにより、平面視で略矩形のドット状の凸部1aを比較的容易に形成することができる。
【0095】
(ネガ型レジスト)
本実施形態においてはポジ型レジストを用いた場合について説明したが、ネガ型レジストを用いることにより本発明の効果が得られる。それに加え、ネガ型レジストを用いた場合に特有な効果も得られる。以下、ネガ型レジストを用いた場合について、図7を用いて説明する。
【0096】
図7(a)に示すように、マスターモールド10の作成に際してネガ型レジストを用いた場合、露光した部分のレジストが残存することになる。その結果、図7(b)に示すように、上述のd)現像工程にて、複数の連続的なライン状の壁が交わってなる格子状の壁のようなレジストパターン22が形成されることになる。図7(c)に示すように、e)エッチング工程にて、この形状のレジストパターン22をマスクとして基板1をエッチングすることにより、図7(d)に示すように、最終的には、複数の連続的な平面視ライン状の壁9aが交わってなる格子状の壁部9が基板主表面に形成される。そして、格子状の壁部9によって囲まれる部分が、前記基板1の主表面において削られた部分(ドット状の凹部1b)となる。
【0097】
この場合、ドット状の凹部1bが、BPMにおいて磁性体領域の元となる。そしてこのドット状の凹部1bは、前記ドット状の凹部1bが前記基板1の主表面において所定の方向に一定周期で形成されている。このとき、ポジ型レジストの場合と同様に、一定周期において、前記ライン状の壁9aの幅を、前記ドット状の凹部1bの幅よりも小さくしている。
この構成により、ポジ型レジストの場合と同様、高S/Nを有するBPMを製造でき、パターン欠陥の発生を抑制できるモールドを提供できる。
【0098】
更に、ネガ型レジストを用いた場合、レジストパターン22を形成する際、天井の梁のように連続したレジストパターン(いわば連続したレジストの壁)を形成することができる。こうすることにより、レジストの壁が連続して形成されていることから、レジストパターン22の倒れを抑制することができる。その結果、基板1へのエッチングの際のパターン倒れを抑制することができ、パターン欠陥の発生を確実に抑制できる。
【0099】
なお、ネガ型レジストを用いた場合であっても、本実施形態において述べたポジ型レジストの場合における好ましい例(一定周期の長さ、基板の種類、溝の配置及び形状等)については基本的に適用でき、これらの構成による効果についても同様である。
【0100】
ただ、ネガ型レジストを用いた場合、連続したレジストの壁を形成することに意味がある。そのため、ポジ型レジストの場合とは異なり、露光候補部6全体を実際に露光するのが良い。つまり、露光候補部6全体を「露光部」とし、この露光部を格子状に設け、この格子状の露光部にて非露光部7を囲むのが良い。
【0101】
(その他の変形例)
以下、上記以外の変形例について列挙する。
まず、基板1,3の形状であるが、基板1はウエハ形状以外であっても良く、平面(上面)から見たときに矩形、多角形、半円形状、あるいは、側面から見たときに矩形あるいは台形形状等に加工された基板であって、インプリント装置にモールドとして精度良く安定して固定しやすい形状であれば良い。また、モ−ルド主表面のパターン形成領域に対しその周縁部の高さをやや低くした台地形(メサ(mesa)構造、あるいは台座)を主表面に持っていても良い。
【0102】
また、トラックにおいても同心円状ではなく、直線のトラックであっても良いし、同心円以外の曲線のトラックであっても良い。
【0103】
基板1,3の透明性について言えば、上述のワーキングレプリカ作製の際の容易性を考えて、透明又は半透明基板であるのが好ましい。また、基板1,3の材質について言えば、石英、サファイヤ、又はSi等の金属、プラスチック、セラミック等からなり、あるいはそれらの組み合わせからなり、マスターモールド10として用いることができるのならば材質あるいは構造は問わない。
【0104】
また、本実施形態におけるレジストは、エネルギービームを照射して露光したときに反応性を有するものであれば良い。具体的には、現像剤による現像処理を行う必要のあるレジストであれば良く、紫外線、X線、電子線、イオンビーム、プロトンビーム等に感度を持つレジストであっても良い。
【0105】
なお、本実施形態においては基板に直接レジスト層を設けたが、基板とレジスト層の間に別の層を設けても良い。この別の層としては、導電層や酸化防止層を含むハードマスク、及び密着層等が挙げられる。なお、ここでいう「ハードマスク」とは、単一又は複数の層からなり、基板上への溝のエッチングに用いられる層状のもののことを指すものとする。なお、ハードマスクにおける酸化防止層は、導電層を兼ねても良い。その場合、導電層は省略可能である。
【0106】
また、本実施形態においては、インプリント法によりマスターモールド10からワーキングレプリカ30を形成する例について挙げた。これ以外でも、このマスターモールドの微細パターンを別の被成形材料に転写して形成されたワーキングレプリカや、このワーキングレプリカの微細パターンを更に別の被成形材料に転写して形成されたワーキングレプリカなどから、本実施形態のワーキングレプリカ30を形成しても良い。このワーキングレプリカが変形・破損したとしても、マスターモールドが無事ならば、ワーキングレプリカを作製することができるためである。
【0107】
また、本実施形態におけるエッチングでは、一部のエッチングのみをウェットエッチングとし、他のエッチングにおいてはドライエッチングを行っても良いし、全てのエッチングにおいてウェットエッチング又はドライエッチングを行っても良い。また、パターンサイズがミクロンオーダーである場合など、ミクロンオーダー段階ではウェットエッチングを行い、ナノオーダー段階ではドライエッチングを行うというように、パターンサイズに応じてウェットエッチングを導入しても良い。
【0108】
以下、本実施形態において好ましい形態を付記する。
[付記1]
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されているインプリントモールドにおいて、
前記ドット状の凸部は、前記基板の主表面を削って形成された、複数の連続的な平面視ライン状の溝が交わってなる格子状の溝部に囲まれることによって形成され、
前記一定周期において、前記ライン状の溝の幅は、前記ドット状の凸部の幅よりも小さいことを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドであって、
前記一定周期が1μm未満であり、
平面視において、前記一定周期におけるドット状の凸部の面積は、前記一定周期における格子状の溝部の面積の1/3より大きいことを特徴とする請求項1に記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
[付記2]
前記格子状の溝部は、複数の平面視直線の溝が交わることによって形成されていることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
[付記3]
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凹部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凹部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されているインプリントモールドにおいて、
前記ドット状の凹部は、前記基板の主表面において削られた部分が、複数の連続的な平面視ライン状の壁が交わってなる格子状の壁部に囲まれることによって形成され、
前記一定周期において、前記ライン状の壁の幅は、前記ドット状の凹部の幅よりも小さいことを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドであって、
前記一定周期が1μm未満であり、
平面視において、前記一定周期におけるドット状の凹部の面積は、前記一定周期における格子状の溝部の面積の1/3より大きいことを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
[付記4]
前記格子状の壁部は、複数の平面視直線の壁が交わることによって形成されていることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
[付記5]
前記一定周期が25nm以下であり、
前記ライン状の壁の幅は、前記ドット状の凹部の幅の2/3以下であることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
[付記6]
前記基板は透明又は半透明基板であることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
[付記7]
前記基板は石英からなることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
[付記8]
ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凹部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凹部が前記基板の主表面において所定の方向に25nm以下の一定周期で形成されており、前記基板は透明又は半透明基板であるインプリントモールドにおいて、
前記ドット状の凹部は、前記基板の主表面において削られた部分が、複数の連続的な平面視ライン状の壁が交わってなる格子状の壁部に囲まれることによって形成され、
前記一定周期において、前記ライン状の壁部の幅は、前記ドット状の凹部の幅の2/3以下であることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
[付記9]
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が1ビットごとに分離して基板の主表面に形成され、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されるインプリントモールドの製造方法において、
基板の主表面を覆うようにポジ型レジストを塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ポジ型レジストで覆われた基板の主表面に対して、複数のライン状の露光候補部を互いに交わらせることによって格子状の露光を行い、格子状の露光候補部と、前記格子状の露光候補部によって囲まれたドット状の非露光部とを形成する露光工程と、
前記露光工程の後、前記ポジ型レジストを現像してレジストパターンを形成する現像工程と、
前記現像工程の後、ドット状の凸部からなるビットパターンをエッチングにより前記基板の主表面に形成する工程と、
を有し、
前記露光工程では、前記一定周期において、ライン状の露光候補部の幅をドット状の非露光部の幅よりも小さくするよう露光を行い、
ライン状の露光によって、最終的にドット状の凸部を1ビットごとに分離して前記基板の主表面に形成することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法であって、
前記一定周期を1μm未満とし、
前記一定周期におけるドット状の非露光候補部の面積を、前記一定周期における格子状の露光候補部の面積の1/3より大きくすることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
[付記10]
前記格子状の露光は、複数の平面視直線の露光候補部が互いに交わることによって行われることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
[付記11]
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凹部が1ビットごとに分離して基板の主表面に形成され、前記ドット状の凹部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されるインプリントモールドの製造方法において、
基板の主表面を覆うようにネガ型レジストを塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ネガ型レジストで覆われた基板の主表面に対して、複数のライン状の露光部を交わらせることによって格子状の露光を行い、格子状の露光部と、前記格子状の露光部によって囲まれたドット状の非露光部とを形成する露光工程と、
前記露光工程の後、前記ネガ型レジストを現像してレジストパターンを形成する現像工程と、
前記現像工程の後、ドット状の凹部からなるビットパターンをエッチングにより前記基板の主表面に形成する工程と、
を有し、
前記露光工程では、前記一定周期において、ライン状の露光部の幅をドット状の非露光部の幅よりも小さくするよう露光を行い、
ライン状の露光によって、最終的にドット状の凹部を1ビットごとに分離して前記基板の主表面に形成することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法であって、
前記露光は、前記ネガ型レジストで覆われた基板の主表面に対して電子線で描画することにより行われることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
[付記12]
前記一定周期を25nm以下とし、
前記ライン状の露光候補部の幅を、前記ドット状の非露光部の幅の2/3以下とすることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
[付記13]
前記基板は透明又は半透明基板であることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
[付記14]
前記基板は石英からなることを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
[付記15]
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凹部が基板の主表面に形成され、前記ドット状の凹部が前記基板の主表面において所定の方向に25nmの一定周期で形成され、前記基板は透明又は半透明基板であるインプリントモールドの製造方法において、
基板の主表面を覆うようにネガ型レジストを塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ネガ型レジストで覆われた基板の主表面に対して、複数のライン状の露光候補部を互いに交わらせることによって格子状の露光を電子線により行い、格子状の露光候補部と、前記格子状の露光候補部によって囲まれたドット状の非露光部とを形成する露光工程と、
前記露光工程の後、前記ネガ型レジストを現像してレジストパターンを形成する現像工程と、
前記現像工程の後、エッチングにより前記基板の主表面にビットパターンを形成する工程と、
を有し、
前記露光工程では、前記一定周期において、前記ライン状の露光候補部の幅を、前記ドット状の非露光部の幅の2/3以下とするよう露光を行い、
ライン状の露光によって最終的にドット状の凹部を1ビットごとに分離して前記基板の主表面に形成することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
【符号の説明】
【0109】
1 基板(マスターモールド用)
10 マスターモールド
21 レジスト層
21a 残膜層
22 レジストパターン
3 基板(ワーキングレプリカ用)
30 ワーキングレプリカ
41 レジスト層
41a 残膜層
42 レジストパターン
5 離型層
6 露光候補部
6a 露光候補部において実際に露光した部分
6b 露光候補部において実際には露光しなかった部分(露光候補部が互いに交わる部分又は交差部)
6c レジストが除去される部分
7 非露光部
8 格子状の溝部
8a ライン状の溝
9 格子状の壁部
9a ライン状の壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されているインプリントモールドにおいて、
前記ドット状の凸部は、前記基板の主表面を削って形成された、複数の連続的な平面視ライン状の溝が交わってなる格子状の溝部に囲まれることによって形成され、
前記一定周期において、前記ライン状の溝の幅は、前記ドット状の凸部の幅よりも小さいことを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
【請求項2】
前記一定周期が25nm以下であり、
前記ライン状の溝の幅は、前記ドット状の凸部の幅の2/3以下であることを特徴とする請求項1に記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
【請求項3】
前記基板は透明又は半透明基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
【請求項4】
前記基板は石英からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
【請求項5】
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に25nm以下の一定周期で形成されており、前記基板は透明又は半透明基板であるインプリントモールドにおいて、
前記ドット状の凸部は、前記基板の主表面を削って形成された、複数の連続的な平面視ライン状の溝が交わってなる格子状の溝部に囲まれることによって形成され、
前記一定周期において、前記ライン状の溝部の幅は、前記ドット状の凸部の幅の2/3以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
【請求項6】
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凹部が基板の主表面に形成されており、前記ドット状の凹部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されているインプリントモールドにおいて、
前記ドット状の凹部は、前記基板の主表面において削られた部分が、複数の連続的な平面視ライン状の壁が交わってなる格子状の壁部に囲まれることによって形成され、
前記一定周期において、前記ライン状の壁の幅は、前記ドット状の凹部の幅よりも小さいことを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のパターンドメディア製造用のインプリントモールドを元型モールドとして用い、インプリントにより作製されたことを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールド。
【請求項8】
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が1ビットごとに分離して基板の主表面に形成され、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されるインプリントモールドの製造方法において、
基板の主表面を覆うようにポジ型レジストを塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ポジ型レジストで覆われた基板の主表面に対して、複数のライン状の露光候補部を互いに交わらせることによって格子状の露光を行い、格子状の露光候補部と、前記格子状の露光候補部によって囲まれたドット状の非露光部とを形成する露光工程と、
前記露光工程の後、前記ポジ型レジストを現像してレジストパターンを形成する現像工程と、
前記現像工程の後、ドット状の凸部からなるビットパターンをエッチングにより前記基板の主表面に形成する工程と、
を有し、
前記露光工程では、前記一定周期において、ライン状の露光候補部の幅をドット状の非露光部の幅よりも小さくするよう露光を行い、
ライン状の露光によって、最終的にドット状の凸部を1ビットごとに分離して前記基板の主表面に形成することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
【請求項9】
前記露光は、前記ポジ型レジストで覆われた基板の主表面に対して電子線で描画することにより行われることを特徴とする請求項8に記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
【請求項10】
前記一定周期を25nm以下とし、
前記ライン状の露光候補部の幅を、前記ドット状の非露光部の幅の2/3以下とすることを特徴とする請求項8又は9に記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
【請求項11】
前記基板は透明又は半透明基板であることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
【請求項12】
前記基板は石英からなることを特徴とする請求項8ないし11のいずれかに記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
【請求項13】
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凸部が基板の主表面に形成され、前記ドット状の凸部が前記基板の主表面において所定の方向に25nmの一定周期で形成され、前記基板は透明又は半透明基板であるインプリントモールドの製造方法において、
基板の主表面を覆うようにポジ型レジストを塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ポジ型レジストで覆われた基板の主表面に対して、複数のライン状の露光候補部を互いに交わらせることによって格子状の露光を電子線により行い、格子状の露光候補部と、前記格子状の露光候補部によって囲まれたドット状の非露光部とを形成する露光工程と、
前記露光工程の後、前記ポジ型レジストを現像してレジストパターンを形成する現像工程と、
前記現像工程の後、エッチングにより前記基板の主表面にビットパターンを形成する工程と、
を有し、
前記露光工程では、前記一定周期において、前記ライン状の露光候補部の幅を、前記ドット状の非露光部の幅の2/3以下とするよう露光を行い、
ライン状の露光によって最終的にドット状の凸部を1ビットごとに分離して前記基板の主表面に形成することを特徴とする請求項8ないし12のいずれかに記載のビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
【請求項14】
ビットパターンドメディアをインプリント法で作成するためのインプリント用モールドであって、ビットパターンドメディアにおいて磁性体領域の元となるドット状の凹部が1ビットごとに分離して基板の主表面に形成され、前記ドット状の凹部が前記基板の主表面において所定の方向に一定周期で形成されるインプリントモールドの製造方法において、
基板の主表面を覆うようにネガ型レジストを塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記ネガ型レジストで覆われた基板の主表面に対して、複数の連続的なライン状の露光部を交わらせることによって格子状の露光を行い、格子状の露光部と、前記格子状の露光部によって囲まれたドット状の非露光部とを形成する露光工程と、
前記露光工程の後、前記ネガ型レジストを現像して格子状のレジストパターンを形成する現像工程と、
前記現像工程の後、ドット状の凹部からなるビットパターンをエッチングにより前記基板の主表面に形成する工程と、
を有し、
前記露光工程では、前記一定周期において、ライン状の露光部の幅をドット状の非露光部の幅よりも小さくするよう露光を行い、
ライン状の露光によって、最終的にドット状の凹部を1ビットごとに分離して前記基板の主表面に形成することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。
【請求項15】
請求項8ないし14のいずれかに記載のパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法で作製したインプリントモールドを元型モールドとして用い、インプリントにより作製することを特徴とするビットパターンドメディア製造用のインプリントモールドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−99178(P2012−99178A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245911(P2010−245911)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】