説明

ビデオアンプ

【課題】DCカット用コンデンサ無しで負荷を直流結合で駆動し、またチャージ・ポンプ回路の動作に起因して発生するノイズが画像信号に混入することを防止することが可能なビデオアンプを提供する。
【解決手段】同期成分を含むビデオ信号を入力し、ケーブル駆動用の出力信号を出力するビデオアンプを、ビデオ信号から同期成分を分離し、分離した同期成分からビデオ信号のブランキング期間内に立ち上がり変化と立ち下り変化を有するクロック信号を生成するクロック信号生成回路と、ビデオアンプに供給される正電源から正電圧が供給され、クロック生成器からのクロック信号で駆動されて、出力に負電圧を発生させるチャージ・ポンプ回路と、正電源からの正電圧とチャージ・ポンプ回路からの負電圧が供給され、入力したビデオ信号を、少なくとも電流増幅してケーブル駆動用のビデオ信号を出力するビデオ信号出力回路とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオ信号を増幅し出力信号とするビデオアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるコンポジット信号と呼ばれる、水平同期や垂直同期の同期信号と画像信号を含むビデオ信号を、単電源、すなわち一つの正電源下で駆動されるビデオアンプで、75Ωケーブルに出力する(通常、ケーブル駆動すると表現される)場合、直流成分を通さない交流成分のみを増幅する形態が取られていた。このビデオアンプの出力を、ケーブルを介して他の機器に出力する場合、すなわち、ケーブル駆動する場合、このビデオアンプそのものの出力インピーダンスを0オームと仮定して、信号源インピーダンスとして75オームの抵抗を介して出力し、さらに受信端において75オームでグランド終端される。したがって、ビデオアンプそのものの負荷としては150オームとなっている。さらに、ビデオアンプの出力のDC電位は、一般的には出力信号電圧の中心レベル(平均値)を、おおむね正電源の2分の1の電圧にしており、この電圧をカットして交流成分のみを出力するためにDCカット用の直列コンデンサをビデオアンプそのものの出力端と負荷側との間に直列に挿入していた。すなわち、DCオフセットの無い出力信号としていた。
【0003】
しかし、画像信号中の低域成分を歪みなく伝送するために、たとえば、1分配の場合、負荷抵抗は150オームとなるのでDCカット用の直列コンデンサは、200〜1000マイクロ・ファラッドという極めて大きな容量値のものが必要であった。このような大容量のコンデンサは高価であり、サイズも大きく、小型で安価な電子機器の搭載していく上で極めて望ましくないものであった。また、2分配の場合にも1分配と同じ特性とする場合、ビデオアンプとしての負荷抵抗が半分の75オームになるために、1分配の時の2倍の容量のコンデンサが必要になる。
【0004】
この問題を解決するための技術として、供給された正電源を用いて負電源を発生させる負電源発生手段を内蔵して、この正負の電源で駆動される出力ドライバを使用して、直流結合で出力することが行われている(たとえば、特許文献1参照)。このようにビデオアンプと負荷との間を直流結合にすることで、通常で必要とされるDCカット用の大容量のコンデンサを削除することを可能にしている。図2は、この従来技術の回路例を示している。図2において、チャージ・ポンプ回路21は、正電源(VCC)で駆動され、グランド(GND)に対して負電源(VEE)を発生する。ビデオ信号出力アンプ22は、正電源(VCC)と負電源(VEE)間で駆動され、グランド(GND)電圧を中心レベルとして、DCカット用のコンデンサを用いずに直接負荷を駆動し、ビデオ信号を出力するものである。
【0005】
ここで、正負の電源で駆動される出力ドライバは、いわゆる負荷として同軸ケーブルのラインを駆動するための電流増幅のみをする回路部分であり、この場合に75オーム負荷の両端で規定のレベルのビデオ信号とするために、電圧増幅は正の電源のみで駆動される前段の電圧増幅回路で実行される。
【0006】
【特許文献1】特開2001−309400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図2に示した従来の回路は、チャージ・ポンプ回路を駆動するための発振回路またはクロック信号の供給を必要とし、またチャージ・ポンプ回路の動作時に、そのチャージ・ポンプの駆動に応じて、正電源(VCC)や負電源(VEE)にノイズ(あるいはリップル)が乗るため、そのノイズが画像信号に混入してディスプレイに画像を出力した場合に、チラチラするとか縦縞ができるなどという視覚的な画像ノイズが発生する、という問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、従来ビデオ信号を出力する場合に必要であった数百マイクロ・ファラッドのDCカット用コンデンサを不要としつつ、そこで用いられるチャージ・ポンプ回路を駆動する発振回路またはクロック信号の供給を不要とし、またチャージ・ポンプ回路の動作に起因して発生するノイズが画像信号に混入することを防止することが可能なビデオアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、同期成分を含むビデオ信号を入力し、当該ビデオ信号を直流結合で出力するケーブル駆動用のビデオアンプであって、前記ビデオ信号から同期成分を分離し、分離した同期成分から前記ビデオ信号のブランキング期間内に立ち上がり変化と立ち下り変化を有するクロック信号を生成するクロック信号生成回路と、前記ビデオアンプに供給される正電源から正電圧が供給され、前記クロック生成器からのクロック信号で駆動されて、出力に負電圧を発生させるチャージ・ポンプ回路と、前記正電源からの正電圧と前記チャージ・ポンプ回路からの負電圧が供給され、入力した前記ビデオ信号を、少なくとも電流増幅してケーブル駆動用のグランド電位の上下に変位するビデオ信号を出力するビデオ信号出力回路とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のビデオアンプであって、前記クロック信号は、少なくとも前記ビデオ信号から分離した水平同期成分に基づいて生成され、当該クロック信号の立ち上がり変化または立ち下り変化の少なくともどちらか一方のタイミングが、分離した水平同期成分の信号の立ち上がりまたは立ち下り変化と実質的に同じタイミングであり、他方が異なるタイミングであることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のビデオアンプであって、前記クロック信号は、分離した水平同期成分に対して遅延した位相関係を有することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のビデオアンプであって、前記クロック信号生成回路は、分離した水平同期成分を表す信号にフェーズ・ロックするフェーズ・ロック・ループ回路を含み、前記クロック信号はフェーズ・ロック・ループ回路から生成されることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のビデオアンプであって、前記クロック信号生成回路は、出力するクロック信号の極性を切り換える切り換え回路を備え、極性の切り換えられたクロック信号を出力することが可能であることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のビデオアンプであって、前記チャ−ポンプ回路は、前記クロック信号の第1の位相期間に、前記正電源とグランドとの間にキャパシタを直接接続し、前記クロック信号の第2の位相期間に、前記キャパシタの正電極をグランドに直接接続することにより、前記キャパシタの負電極から前記負電圧を発生させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、片電源、たとえば正電源のみで構成される回路において、チャージ・ポンプ回路で負電源を生成し、正負の電源で駆動されるビデオ出力アンプを使用する場合に、チャージ・ポンプ回路の駆動を、ビデオ出力アンプの入力信号から分離した水平同期成分あるいはこの変形のクロック信号を使用して行い、このクロック信号の立ち上がりや立ち下がりをブランキング期間内とするので、チャージ・ポンプ回路が発生するノイズは画像信号が存在しない期間に発生することになり、アンブランキング期間、すなわち画像信号領域にノイズが混入することがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を、説明する。
【0017】
図1は、本発明のビデオアンプの一回路構成例を示す図である。図において、同期信号を含む入力ビデオ信号10は、グランド(GND)電圧を中心レベルとした信号であり、前段で、規定値の約2倍のレベルに電圧増幅されている。クロック生成回路12は、入力ビデオ信号10を入力してクロック信号15を生成する。チャージ・ポンプ回路13は、正電圧VCCが供給され、このクロック信号15を用いて、グランドGNDに対して負電圧VEEを発生させる。ビデオ信号出力回路はチャージ・ポンプ回路13が発生した負電圧VEEを負電圧側電源とし、正電圧VCCを正電圧側電源としてビデオ信号出力を行うようになっている。ビデオ信号出力回路14は、実質的に、入出力間のDCオフセットが無視可能な電流増幅回路として動作することが可能な回路である。したがって、図1に示すビデオアンプは、全体として、入力ビデオ信号と同様にグランド電位を中心として、その上下の電圧範囲にわたって、電流増幅した出力ビデオ信号11を出力し、直流結合で負荷を駆動することができる。
【0018】
図3は、クロック生成回路12の一実施形態を示す図である。図において、入力ビデオ信号10は、クランプ回路31によって、たとえば、シンク・チップ・レベルまたはペデスタル・レベルがあらかじめ設定された電位にクランプされるようになっている。同期信号部分がスライスされるように設定された電圧VCOMPを比較点とするコンパレータ32によって、クランプ回路31の出力から矩形波状の同期信号(複合同期信号)成分を表す信号が得られる。この同期信号成分を表す信号から水平同期信号に同期したクロック信号15が生成される。
【0019】
図4は、チャージ・ポンプ回路13の一実施形態の機能構成を示す図である。図において、たとえばクロック信号15の位相がLである区間(Φ1)で、供給された正電圧VCCとグランド電圧GNDの間にキャパシタC1をスイッチSW1とSW3で直接接続する。この期間に、キャパシタC1には、図示した極性に充電される。次のクロック信号15の位相がHである区間(Φ2)で、グランド電圧GNDと負電圧VEEを発生する端子の間にキャパシタC1をスイッチSW2とSW4で直接接続する。この期間では、キャパシタC1のプラス電極がグランドに接続され、マイナス電極がVEEのラインに接続される。この期間は、VEEに接続された負荷を通して、キャパシタC1の放電が行われることになる。
【0020】
以上の操作をクロック信号15によって継続的に行うことで負電圧VEEが発生されるようになっている。負電圧が発生する端子には出力電圧安定化のために、およびキャパシタC1から負電圧を生成しない期間にも負電圧を維持するために、キャパシタC2を接続する。
【0021】
図5は、ビデオアンプの一実施形態の構成例を示す図である。これは、図1のビデオ信号出力回路14とその前段の電圧増幅回路も含む、一般的なケーブル駆動ビデオアンプの構成例を示す図である。ただし、図5では、負荷との間に、通常、信号源インピーダンスとして接続される75オームの抵抗を、図示していない。
【0022】
入力ビデオ信号10の直流レベルがVRでDCレベル調整され、入力差動段回路51の非反転入力に入力される。一方の反転入力には抵抗R3、R4により分割された出力電圧が入力され、フィードバック制御される。このビデオアンプの電圧増幅度は、(R3+R4)/R3で求められる。出力ビデオ信号のDC中心は、出力DCレベル調整で、グランドになるように調整される。この出力DCレベル調整を設けることによって、入力差動段と出力段回路52の組合せの入出力にDCオフセットが存在する場合でも、出力に現れるDCオフセットをゼロにすることができる。出力段回路52は正電源VCCとチャージ・ポンプによって発生された負電源VEEとの間に配置された相補型のトランジスタM1(PMOS)とM2(NMOS)で構成され、それぞれ入力差動段回路51から制御信号53と54が与えられ制御される。なお、図1では、出力段回路52に相当するビデオ信号出力アンプ22のみにVEEが供給されているが、図5では、入力段差動段回路51も正電源VCCと負電源VEEで駆動されている。
【0023】
図1のビデオ信号出力回路14の具体的な構成としては、引用文献1の図3で示されるような、エミッタ・フォロワを基本とした回路構成を使用することもでき、簡単にする場合は、1つのエミッタ・フォロワ、あるいは2つのエミッタ・フォロアのシリーズとすることができる。
【0024】
上述したような構成とすることにより、グランド電位の上下の電圧範囲にわたって、すなわちグランド電位の上下に変位する出力ビデオ信号を出力することが可能になり、AC結合における大容量のデカップリング・コンデンサを排除したに構成にすることができる。また、入力ビデオ信号10のペデスタル・レベルがグランド電位であれば、コンデンサ結合を直流結合にすることにより、出力ビデオ信号も、そのペデスタル・レベルをグランド電位とすることができる。
【0025】
図6は、図1に示した入力ビデオ信号、クロック信号、チャージ・ポンプ回路によって生成されるVEEそれぞれの波形やタイミングの相互関係を示す図である。
【0026】
(第1の実施形態)
図6の(6―1)の波形図は、入力ビデオ信号の一例を示している。各水平ライン信号の始まりのところには水平同期信号と呼ばれる信号が存在し、この最も低い部分のレベルがシンク・チップ・レベルと呼ばれる。本実施例では、この負方向の突出したシンク・チップ・レベルを抽出して、その電位をある一定電圧にクランプするクランプ回路が設けられている。図1において、入力ビデオ信号は、規定レベル(同期と100%レベルの映像信号を含むレベルが1.0V)の約2倍の電圧レベルになっているので、通常この同期信号の深さは、600mV程度である。したがって、本例ではクランプされた電圧より200mV高い電圧を比較点とするコンバレータで、クランプ回路出力から分離された同期成分を表す信号が取り出され、さらに水平同期成分からなるクロック信号が生成される。図6の(6−2)の波形は、第1の実施形態におけるクロック信号を示し、取り出した水平同期成分を表す信号をクロック信号とする場合を示している。
【0027】
図6の(6−4)の波形図は、(6−2)の波形図に示したクロック信号で、図4に示すチャージ・ポンプ回路を駆動し、生成したVEEの電圧波形を示している。このVEEの電圧波形について以下に説明する。ここで、図6の(6−2)の波形図に示すように、クロック信号のL期間をΦ1とし、H期間をΦ2とする。
【0028】
図4に示されたチャージ・ポンプ回路のスイッチSW1は、P型MOSトランジスタでできており、SW2、SW3およびSW4は、N型MOSトランジスタでできている。したがって、SW1はクロック信号(6−2)で、SW3はクロック信号(6−2)の反転信号で、SW3およびSW4はクロック信号(6−2)で駆動される。ただし、SW3とSW4は負電圧領域でパスをオン/オフするために適切にレベルシフトされて用いられる。
【0029】
Φ1の期間で、キャパシタC1は、VEEの生成から切り離され、正電源VCCとグランド電源GNDの間で充電される、Φ2の区間で、充電されたキャパシタC1が、負電圧発生端子VEEとグランド間に接続される。
【0030】
ビデオアンプは連続的にビデオ信号を出力しているため常に電流を消費し、発生された負電圧がグランド方向に上昇する。Φ1の期間では、キャパシタC2に蓄積された電荷が消費され、Φ2の期間は、C1とC2に蓄積された電荷が消費される。チャージ・ポンプ回路が、充電されたキャパシタC1をグランドとVEE間に接続した際には、生成されたVEEの電圧は、負方向にステップ的に下降し、以後放電のみがなされて、VEEの電位が上昇する。この上昇と下降がバランスする電圧領域で負電源VEEは微小な上下を繰り返し、図6の(6−3)の波形図に示すような波形となる。しかし、負電源VEEの微小な上下はチャージ・ポンプ回路に適切に大きな容量値のキャパシタC1、C2を用いることで、正電源VCCと絶対値が同じ負の電圧に十分近い電圧を作ることができ、したがって負電圧部分のビデオ信号を駆動できるものとなる。
【0031】
上述の説明で、クロック信号のL期間をΦ1とし、H期間をΦ2とし、さらに、Φ1の期間でキャパシタC1を充電し、Φ2の期間で放電させるとして説明した。しかし、図6の(6−1)の波形図に示すようなビデオ信号の場合で、且つ図5に示すような構成のビデオアンプの場合、負電源のVEEに流れる電流は、出力として正となる部分のため画像信号の期間には減少する。一方、それ以外の期間では、出力として負となるため、VEEに流れる電流が増加し、その結果、VEEの上昇が大きくなることが理解されよう。言い換えれば、VEEが必要とされる期間内の一部期間では、VEEに大きな変動が生じているが、一方、画質そのものに影響を与える画像信号期間には、VEEに大きな変動が生じないことになる
この実施形態の場合、VEEの変動は、水平同期信号の立ち上がり(後縁)で発生しているが、通常、水平同期のタイミングは立ち下がり(前縁)で行われるので、その変動の影響が出力信号に若干現れたとしても、後段の画像処理などに対する悪影響を生じることはない。
【0032】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、クロック生成回路の生成するクロックは水平同期信号と同じ形状をしていたが、第2の実施形態のクロックとして、図6の(6−4)の波形図に示すように、水平同期信号を遅延させたタイミングのものとすることもできる。これは、ローパス・フィルタを通過させた入力ビデオ信号を用いてクロックを生成させたり、あるいは、クロック生成回路の遅延回路などを使用して、図6の(6−2)の波形図に示す信号を遅延させたりすることによって生成することもできる。
【0033】
図7は、入力ビデオ信号をローパス・フィルタに通して、水平同期信号に対して遅延したクロック信号を生成する回路例を示す図である。分離した水平同期信号を同じローパス・フィルタあるいは遅延回路を通すことにより、同様な効果を得ることもできる。
【0034】
この実施形態の場合、たとえば、チャージ・ポンプ回路を駆動するクロックの立ち下がりがり(前縁でΦ1に開始時点)や立ち上がり(後縁でΦ1の終了時点)などで、出力信号中にノイズが載るような場合に、そのノイズの位置を、後段の処理に影響を与えない位置、すなわち水平同期の立ち立ち下がりから離れた位置にすることができるメリットがある。この場合、クロックの立ち上がりは、バースト期間から離れた位置が望ましい。
【0035】
また、このローパス・フィルタのカットオフ周波数は、100KHzから2MHzであることが好適である。この範囲のカットオフ周波数を有するローパス・フィルタは水平同期信号を良好に通過させながらも、カラー信号中のブランキング期間のカラー・バースト信号や、アンブランキング期間の色信号を、効果的に減衰させることができる。これにより、ペデスタル・レベル(水平同期信号の前後のレベル、ブランキング・レベルとも言う)より、下側に向かう色副搬送は信号を減衰させることができる。このことは、ビデオ信号中のマイナス方向のピーク信号は同期信号部分であるとしてピーク値を検出し、そのピーク値を所定電位にクランプし、この所定の電位に所定の電圧を加算した電位でクランプされたビデオ信号をスライスして同期分離する場合に、有効に機能する。すなわち、後続のクロック信号発生回路で、同期信号の抽出を誤動作無く的確にできるようになる。また、ローパス・フィルタは、ノイズが多い放送されたビデオ信号などを処理する場合にも、ノイズ除去に有効に機能する。ノイズ除去または同期信号分離のための副搬送波成分の除去のためにはローパス・フィルタの代わりにバンドパスフィルタを使用することができるが、ローパス・フィルタには、遅延+ノイズ除去に効果があることで、実に有益である。
【0036】
(第3の実施形態)
さらに別の実施例として、クロック信号の立ち上がり変化または立下り変化の一方を同期信号の変化と実質的に同じタイミングとし、他方を異なるタイミングのものとすることもできる。一例としてクロック信号の立下りと同期信号の立下りを実質的に同じタイミングとし、クロック信号の立ち上がりを同期信号の立ち上がりよりも遅延させたものとすることもできる。この例を図6の(6−5)の波形図に示す。
【0037】
図8は、このようなクロック信号を生成するための回路の一例を示す図である。ここでは、クロック信号と、それをインバータの遅延を利用して遅延させた信号のANDを取り、その出力を新たなクロック信号とするものである。この場合、入力信号となる元となるクロック信号は、図6の(6−2)の波形図に示したクロック信号となる。2つのインバータの間に遅延線を挿入することで、クロックの立ち上がりを調整することができる。
【0038】
この実施形態の場合、第1および第2の実施形態では、キャパシタC1への充電期間が短すぎる場合に、その充電時間を増加させることが簡単な回路で実施することができる。
【0039】
(第4の実施形態)
第4の実施形態として、クロック生成回路を、フェーズ・ロック・ループ回路を含む回路で実現し、画像信号を含まないブランキング期間で、水平同期信号より幅の広いクロック信号を生成する。図6中の(6−6)の波形図は、その場合に生成されるクロック信号の例を示している。
【0040】
この実施形態の場合、チャージ・ポンプ回路のキャパシタC1への充電時間を長くすることができ、VEEとして流す電流を多くする必要がある場合に有効になる。この場合、クロックの立ち下がり(Φ1の開始点)は、ブランキングの開始点あるいはその直後にすることが望ましい、また、クロックの立ち上がり(Φ1の終了点)は、後段のカラーロックに影響を与えない期間、すなわち、バースト期間の後でブランキングの終了点の前とすることが望ましい。
【0041】
なお、上述した説明で、水平同期信号に関係したクロック期間、言い換えれば、ブランキング期間内のある期間に、チャージ・ポンプ回路の、たとえば図4に示すキャパシタC1の充電が行われるとして説明した。しかし、この逆の場合も、可能であることが理解されよう。この逆の場合も、本発明に含まれる。この場合、チャージ・ポンプ回路の負荷が重くなるブランキング期間では、キャパシタC1とキャパシタC2から負電源を供給し、負荷が軽くなる期間に、キャパシタC1に充電をすることができるメリットがある。また、充電時間を長くすることができるメリットもある。どちらが良いかは、ビデオアンプの実際の回路構成とチャージ・ポンプ回路の実際の回路構成に依存する。また、必要とする負電流の大きさにも依存することになる。したがって、クロックの位相切替器を設けて、実装形態によっては適切な位相を固定的に選択することも本発明に含まれる。
【0042】
以上において、図1では、DCカット用のコンデンサを用いずに直接負荷を駆動し、すなわち直流結合でビデオ信号を出力する電流増幅回路のみに、チャージ・ポンプ回路からの負電源を供給する例を示した。また、図5では、電圧増幅部とこの後段の電流増幅部に対して、チャージ・ポンプ回路からの負電源を供給する例を示した。本願発明は、DCカット用のキャパシタを用いずに直接負荷を駆動しビデオ信号を出力する回路であれば、その回路が電圧増幅部を含むか否かに無関係に適用することができることは、当業者には明らかである。また、このチャージ・ポンプ回路を駆動するクロック信号の前縁と後縁が、ブランキング期間に含まれることを特徴とし、ブランキング期間にチャージ・ポンプ回路の、たとえば図4に示すキャパシタC1の充電が行われるか、あるいは放電が行われるかに無関係であることが理解されよう。
【0043】
また、上述の説明では、いわゆるACカップリングされた形で変位する出力信号を出力することを例にして説明しているが、ビデオ信号のペデスタル部分(ブランキング期間内で、水平同期信号の前後のレベル部分)を、実質的にグランド・レベルとしたビデオ信号を出力する場合にも、本発明を適用できることが、当業者には理解されよう。このようなビデオ信号の場合にも、DCオフセットの無いビデオ信号と呼ぶこととする。
【0044】
また、上述の説明では、ビデオ信号出力回路、クロック信号生成回路およびチャージ・ポンプ回路が一組として構成される形態を示したが、複数のビデオ信号の位相が実質的に一致している場合、一組のクロック信号生成回路およびチャージ・ポンプ回路と、複数のビデオ信号出力回路の組合せとすることができることが当業者には理解されよう。
【0045】
また、チャージ・ポンプ回路を、いわゆる半波整流の形の構成で示したが、両波整流の形とすることもできる。
【0046】
また、上述した構成のビデオアンプでキャパシタを除いた部分については、半導体集積回路として構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係るビデオアンプの構成を示す図である。
【図2】従来技術のビデオアンプを示す図である。
【図3】図1のクロック生成回路の一例を示す図である。
【図4】図1のチャージ・ポンプ回路の一例を示す図である。
【図5】図1のビデオ信号出力回路の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るビデオアンプの動作を示すタイミング図である。
【図7】入力ビデオ信号をローパス・フィルタに通して、水平同期信号に対して遅延したクロック信号を生成する回路例を示す図である。
【図8】クロック信号の立ち上がりを同期信号の立ち上がりよりも遅延させたものとする回路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10 入力ビデオ信号
11 出力ビデオ信号
12 クロック信号生成回路
13、21 チャージ・ポンプ回路
14 ビデオ信号出力回路
15 クロック信号
21 ビデオ信号出力アンプ
31 クランプ回路
32 コンパレータ
33 クロック生成回路
51 入力差動段回路
52 出力段回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期成分を含むビデオ信号を入力し、当該ビデオ信号を直流結合で出力するケーブル駆動用のビデオアンプであって、
前記ビデオ信号から同期成分を分離し、分離した同期成分から前記ビデオ信号のブランキング期間内に立ち上がり変化と立ち下り変化を有するクロック信号を生成するクロック信号生成回路と、
前記ビデオアンプに供給される正電源から正電圧が供給され、前記クロック生成器からのクロック信号で駆動されて、出力に負電圧を発生させるチャージ・ポンプ回路と、
前記正電源からの正電圧と前記チャージ・ポンプ回路からの負電圧が供給され、入力した前記ビデオ信号を、少なくとも電流増幅してケーブル駆動用の、グランド電位の上下に変位するビデオ信号を出力するビデオ信号出力回路と
を備えることを特徴とするビデオアンプ。
【請求項2】
前記クロック信号は、少なくとも前記ビデオ信号から分離した水平同期成分に基づいて生成され、当該クロック信号の立ち上がり変化または立ち下り変化の少なくともどちらか一方のタイミングが、分離した水平同期成分の信号の立ち上がりまたは立ち下り変化と実質的に同じタイミングであり、他方が異なるタイミングであることを特徴とする請求項1に記載のビデオアンプ。
【請求項3】
前記クロック信号は、分離した水平同期成分に対して遅延した位相関係を有することを特徴とする請求項1に記載のビデオアンプ。
【請求項4】
前記クロック信号生成回路は、分離した水平同期成分を表す信号にフェーズ・ロックするフェーズ・ロック・ループ回路を含み、前記クロック信号はフェーズ・ロック・ループ回路から生成されることを特徴とする請求項1に記載のビデオアンプ。
【請求項5】
前記クロック信号生成回路は、出力するクロック信号の極性を切り換える切り換え回路を備え、極性の切り換えられたクロック信号を出力することが可能であることを特徴とする請求項1に記載のビデオアンプ。
【請求項6】
前記チャ−ポンプ回路は、
前記クロック信号の第1の位相期間に、前記正電源とグランドとの間にキャパシタを直接接続し、
前記クロック信号の第2の位相期間に、前記接続を解除して前記キャパシタの正電極をグランドに直接接続することにより、前記キャパシタの負電極から前記負電圧を発生させる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のビデオアンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−79132(P2008−79132A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257687(P2006−257687)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】