説明

ビーム照射装置

【課題】 簡素な構成にて、走行状況を判定し、この判定結果に基づいて車両制御用情報を設定することができるビーム照射装置を提供する。
【解決手段】半導体レーザ100からのレーザ光は、レンズアクチュエータ300に支持された照射レンズに入射される。照射レンズを通過したレーザ光は、レンズアクチュエータ300の駆動に応じて、Y−Z平面方向に出射角度が変化する。これにより、目標領域におけるレーザ光のスキャンが行われる。照射レンズを通過したレーザ光は、ビームスプリッタ400によってその一部が反射され分離される。分離された光は、集光レンズ500を通してPSD600上に収束される。DSP制御回路10は、PSD600からの信号をもとに、照射レンズを通過したレーザ光のスキャン位置をモニタする。そして、照射位置がスキャン軌道から外れたとき、悪路等により走行状況が良くない、と判断し、車高の高さ、あるいは、ダンパーの減衰力などの車両制御用情報を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム照射装置に関し、たとえば、車間検出器や距離検出器等に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光を用いた車間検出器や距離検出器が様々な装置に用いられている。たとえば、車間検出器においては、車両前方からレーザ光を照射したときの反射光を検出することにより、障害物の有無と障害物までの距離が計測される。この場合、レーザ光は、予め前方空間に設定された目標領域を縦横方向に走査(スキャン)される。そして、各スキャン位置において、レーザ光の照射タイミングと反射光の受光タイミングの時間差が測定され、その測定結果から各スキャン位置前方にある障害物までの距離が算出される。
【0003】
これらの検出器においては、レーザ光を縦横方向にスキャンさせながら目標領域に照射する、いわゆるビーム照射装置が用いられる。ここで、レーザ光のスキャンは、ポリゴンミラーを用いたスキャン機構や、レンズアクチュエータを用いたスキャン機構等を用いて行われる。
【0004】
ポリゴンミラーを用いたスキャン機構は、ポリゴンミラーを回転させながらレーザ光をポリゴンミラー側面に照射して、レーザ光をスキャンさせるものである。ポリゴンミラーは、断面多角形となっており、且つ、各側面にミラーが形成されている。ポリゴンミラーを回転させながらレーザ光を側面に照射することにより、各側面に対するレーザ光の入射角度が変化し、これにより、反射光がポリゴンミラーの回転方向にスキャンされる。
【0005】
しかし、かかるスキャン機構においては、ミラー回転軸と平行な方向にビームをスキャンさせるのが困難となる。この場合、たとえば、ミラー回転軸の傾きを変化させる機構や、ミラー回転軸に対する各側面の傾き角を予め変化させておくといった構造上の改良が別途必要となる。さらに、このスキャン機構では、ミラー面の平面精度やミラーの回転状態がビームのスキャン状態に大きく影響するため、精度の良いスキャン動作を実現するためには、高精度の平面加工技術や、高性能モータの適用が必要となる。
【0006】
これに対し、たとえば、特許文献1に示すようなレンズアクチュエータを用いたスキャン機構では、レンズ駆動によってビームスキャンが行われることから、比較的簡単な構成にて、2次元方向のスキャン動作を実現できる。また、このスキャン機構では、高精度の平面加工技術や高性能モータ等の使用が不要となるため、ポリゴンミラーを用いる場合に比べ、コストの低減を図ることができる。
【特許文献1】特開平11−83988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、かかるスキャン機構においては、振動や外乱等によってレンズに不所望な変位が生じ、その結果、レーザ光のスキャン軌道が所期のスキャン軌道から外れてしまうといった問題が起こり得る。このため、目標領域をくまなくスキャンすることができず、たとえば、障害物の検出モレ等の不具合が生じる恐れがある。ビーム照射装置を車間検出器等に用いる場合、障害物の検出モレは大事故につながる恐れがある。よって、車間検出器等に用いる場合には特に、安定したスキャン動作が実現される必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、円滑且つ安定したスキャン動作を実現するために、簡素な構成にて、走行状況を判定し、この判定結果に基づいて車両制御条件を設定することができるビーム照射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み本発明は、以下の特徴を有する。
【0010】
請求項1の発明は、ビーム照射装置であって、レーザ光を出射する光源と、目標領域に前記レーザ光が所定の間隔で照射されるように前記光源を制御する光源制御手段と、この光源から出射されたレーザ光を目標領域に向けて照射するレンズと、このレンズを少なくとも前記レーザ光の光軸に直交する方向に変位させる変位手段と、前記変位手段を駆動して前記レーザ光を前記目標領域内の所期の照射位置に走査させる走査手段と、前記レンズを通過したレーザ光の一部を分離する分離手段と、前記分離手段によって分離されたレーザ光を受光するとともに受光面上における前記分離光の受光位置を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された受光位置に基づいて前記目標領域に照射されるレーザ光の走査位置を補正する補正手段と、前記検出手段によって検出された受光位置に基づいて走行状況を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【0011】
この特徴により、レーザ光による正確なスキャン動作を実現するとともに、そのスキャン光を監視することにより、現在、悪路を走行しているか否か等の走行状況を判定することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のビーム照射装置であって、さらに、前記判定手段の判定結果を報知する報知手段を有することを特徴とする。
【0013】
この特徴により、現在の走行状況を知ることができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1あるいは2に記載のビーム照射装置であって、さらに、前記判定手段による結果に基づき、走行時の車両制御用情報を設定するための車両制御用情報設定手段を有することを特徴とする。
【0015】
この特徴により、判定された走行状況に基づいて、走行制御にかかるパラメータを設定することができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかに記載のビーム照射装置であって、前記判定手段は、所期の照射位置と、前記検出手段によって検出された受光位置との変位に基づいて、走行状況を判定することを特徴とする。
【0017】
この特徴により、レーザ光による正確なスキャン動作を実現するとともに、そのスキャン光と所期のレーザ光照射位置との変位によって、より正確に走行状況を把握することができる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れかに記載のビーム照射装置であって、前記走査手段は、前記レーザ光が目標領域内を水平方向に走査するよう前記変位手段を駆動し、前記目標領域を水平方向に走査している間、前記光源制御手段は、この目標領域に対して所定の間隔でレーザ光が照射されるように制御することを特徴とする。
【0019】
この特徴により、水平方向のスキャンを行っている間、正確なスキャン動作を実現するとともに、現在の走行状況を判定することができる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかに記載のビーム照射装置であって、前記所定の間隔は、前記目標領域内を一定の大きさに分割したときのブロック単位であることを特徴とする。
【0021】
この特徴により、目標領域内を均一にスキャンするとともに、現在の走行状況を判定することができる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1ないし5の何れかに記載のビーム照射装置であって、前記所定の間隔は、一定の時間間隔であることを特徴とする。
【0023】
この特徴により、目標領域内を均一にスキャンするとともに、現在の走行状況を判定することができる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項1ないし7の何れかに記載のビーム照射装置であって、前記変位手段は、前記走査手段からの正弦波信号に基づいて駆動されることを特徴とする。
【0025】
この特徴により、変位手段の動作を円滑にすることができ、正確なレーザ光によるスキャン動作を実現するとともに、現在の走行状況を判定することができる。
【0026】
請求項9の発明は、請求項3ないし7の何れかに記載のビーム照射装置であって、前記車両制御用情報は、車高の高さを制御するための情報であることを特徴とする。
【0027】
この特徴により、走行状況によって車両の高さを調整することができる。
【0028】
請求項10の発明は、請求項3ないし7の何れかに記載のビーム照射装置であって、前記車両制御用情報は、ダンパーの減衰力を制御するための情報であることを特徴とする。
【0029】
この特徴により、走行状況によってダンパーの減衰力を調整することができる。
【発明の効果】
【0030】
上記のように本発明によれば、簡素な構成にて、走行状況を判定し、この判定結果に基づいて車両制御用情報を設定することができるビーム照射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
(実施例1)
まず、図1に実施の形態に係るビーム照射装置の構成を示す。図示の如く、ビーム照射装置は、DSP(Digital Signal Processor)制御回路10と、DAC(Digital Analog
Converter)20と、レーザ駆動回路30と、アクチュエータ駆動回路40と、ビーム照射ヘッド50と、PSD(Position Sensitive Detector)信号処理回路60と、ADC(Analog Digital Converter)70、車両走行制御回路80を備えている。
【0032】
DSP制御回路10は、レーザ駆動回路30およびアクチュエータ駆動回路40を駆動制御するためのデジタル信号をDAC20に出力する。
【0033】
DAC20は、DSP制御回路10から入力されたデジタル信号をアナログ信号(制御信号)に変換してレーザ駆動回路30およびアクチュエータ駆動回路40に出力する。
【0034】
レーザ駆動回路30は、DAC20から入力された制御信号に応じて、ビーム照射ヘッド50内の半導体レーザ100を駆動する。
【0035】
アクチュエータ駆動回路40は、DAC20から入力された制御信号に応じて、ビーム照射ヘッド50内のレンズアクチュエータ300を駆動する。
【0036】
ビーム照射ヘッド50は、前方空間に設定された目標領域にレーザ光をスキャンさせながら照射する。図示の如く、ビーム照射ヘッド50は、半導体レーザ100と、アパーチャ200と、レンズアクチュエータ300と、ビームスプリッタ400と、集光レンズ500と、PSD600を備えている。
【0037】
半導体レーザ100から出射されたレーザ光は、アパーチャ200によって所望の形状に整形された後、レンズアクチュエータ300に支持された照射レンズに入射される。ここで、照射レンズは、同図のY−Z平面方向に変位可能となるよう、レンズアクチュエータ300によって支持されている。したがって、照射レンズを通過したレーザ光は、レンズアクチュエータ300の駆動に応じて、Y−Z平面方向に出射角度が変化する。これにより、目標領域におけるレーザ光のスキャンが行われる。
【0038】
照射レンズを通過したレーザ光は、ビームスプリッタ400によってその一部が反射され、照射レーザ光(目標領域に照射されるレーザ光)から分離される。分離されたレーザ光(分離光)は、集光レンズ500を通してPSD600上に収束される。PSD600は、図1のX−Y平面に平行な受光面を有しており、この受光面上における分離光の収束位置に応じた電流を出力する。ここで、受光面上における分離光の収束位置と目標領域上における前記照射レーザ光の照射位置は一対一に対応している。よって、PSD600から出力される電流は、目標領域上における前記照射レーザ光の照射位置に対応するものとなっている。なお、PSD600の構成および電流の出力動作については、図5、図6を参照しながら追って詳述する。
【0039】
PSD600からの出力電流はPSD信号処理回路60に入力される。PSD信号処理回路60は、入力された電流から分離光の収束位置を表す電圧信号をADC70に出力する。
【0040】
ADC70は、入力された電圧信号をデジタル信号に変換してDSP制御回路10に出力する。DSP制御回路10は、入力された電圧信号をもとに、受光面上における分離光の収束位置を検出する。
【0041】
なお、DSP制御回路10には、レーザ光の照射位置を目標領域内においてスキャンさせるためのテーブル(スキャンテーブル)と、このテーブルに従ってレーザ光をスキャンさせたときの、受光面上における分離光の収束位置の軌道を示すテーブル(軌道テーブル)が配備されている。
【0042】
DSP制御回路10は、レーザ光のスキャン動作時、スキャンテーブルを参照しながらアクチュエータ駆動回路40を制御するための信号をDAC20に出力する。
【0043】
また、同時に、ADC70から入力された信号をもとに受光面上における分離光の収束位置を検出し、検出した位置と軌道テーブルにて規定された所期の収束位置とを比較して、検出位置が所期の収束位置に引き込まれるよう、アクチュエータ駆動回路40を制御するための信号をDAC20に出力する。かかるサーボ動作によって、照射レーザ光は、スキャンテーブルにて規定された軌道に沿うよう目標領域内をスキャンする。なお、サーボ動作の詳細は、図10を参照しながら追って詳述する。
【0044】
さらに、DSP制御回路10は、レーザ光のスキャン動作時、半導体レーザ100の出射をパルス(矩形)状に行うよう設定するための信号を、DAC20を介してレーザ駆動回路30に出力する。ここで、パルス状とは、目標領域内のブロック毎に一定期間の出射と半導体レーザ100の出力をオフにすることを繰り返し行う状態をいう。しかして、照射レーザ光は、目標領域内をブロック毎に発光する。
【0045】
また、これと同時に、受光面上における分離光の収束位置を監視する。
【0046】
車両走行制御回路80は、たとえば、エアサスペンションへの送り込む空気量を制御し、車高を調整する回路などである。DSP制御回路10は、以下に説明するサーボ動作、すなわち、所期のスキャン軌道と実際のスキャン軌道の差に基づき、車両走行のためのパラメータを車両走行制御回路80に設定する。
【0047】
図2に、レンズアクチュエータ300の構成(分解斜視図)を示す。
【0048】
同図を参照して、照射レンズ301は、レンズホルダー302中央の開口に装着される。レンズホルダー302には、4つの側面にそれぞれコイルが装着されており、各コイル内にヨーク303中央の突出部が図示矢印のように挿入される。各ヨーク303は、両側の舌片が一対のヨーク固定部材305の凹部に嵌入される。さらに、それぞれのヨーク固定部材305に、ヨーク303の舌片を挟むようにして磁石304が固着される。この状態にて、ヨーク固定部材305が磁石304とともにベース(図示せず)に装着される。
【0049】
さらに、ベースには一対のワイヤー固定部材306が装着されており、このワイヤー固定部材306にワイヤー307を介してレンズホルダー302が弾性支持される。レンズホルダー302には四隅にワイヤー307を嵌入するための孔が設けられている。この孔にそれぞれワイヤー307を嵌入した後、ワイヤー307の両端をワイヤー固定部材306に固着する。これにより、レンズホルダー302がワイヤー307を介してワイヤー固定部材306に弾性支持される。
【0050】
駆動時には、レンズホルダー302に装着されている各コイルに、上記アクチュエータ駆動回路40から駆動信号が供給される。これにより、電磁駆動力が発生し、照射レンズ301がレンズホルダーとともに2次元駆動される。
【0051】
ここで、上記アクチュエータ駆動回路40から駆動信号(VCM駆動電流)は、図3に示すような矩形波、正弦波、のこぎり波、山形波などのいずれの波形であってもよい。例えば、制御信号を矩形波とする場合、駆動パターンが単純となり、レーザ光を可変パルス間隔で照射できる。また、制御信号を正弦波とする場合、アクチュエータ300の追従性がよく、レーザ光を可変パルス間隔で照射できる。また、制御信号を山形波やのこぎり波とする場合、レーザ光を可変パルス間隔で照射できる。
【0052】
図4は、レンズアクチュエータ300を駆動して照射レンズ301を一方向に変位させたときの、照射レーザ光の出射角度とPSD受光面上における分離光(同図ではモニター光)の収束位置の関係(シミュレーション)を示すものである。同図に示す如く、分離光の変位量は照射レーザ光の出射角度に比例して増加する。なお、同図の特性にうねりが生じているのは、照射レンズを2次元駆動することによって、PSD受光面上の分離光に収差が生じるためである。
【0053】
図5に、PSD600の構造を示す。なお、同図は、図1において、PSD600をY軸方向から見たときの構造を示すものである。
【0054】
図示の如く、PSD600は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、図1のX方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、図1のY方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
【0055】
受光面に分離光が収束されると、収束位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流は、分離光の収束位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における収束位置を検出することができる。
【0056】
図6(a)は、PSD600の有効受光面を示す図である。また、図6(b)は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流をもとにPSD信号処理回路60にて生成される位置検出電圧と、有効受光面上における分離光の収束位置の関係を示す図である。なお、図6(a)では有効受光面を正方形としている。また、図6(b)では、有効受光面のセンター位置を基準位置(0位置)として、基準位置に対する収束位置のX方向およびY方向の変位量と出力電圧の関係を示している。
【0057】
上記PSD信号処理回路60は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流をもとに、収束位置のX方向変位量に対応する電圧Xoutと、Y方向変位量に対応する電圧Youtを生成し、ADC70を介してDSP制御回路10に出力する。DSP制御回路10は、入力された電圧XoutとYoutから収束位置のX方向変位量とY方向変位量を検出する。
【0058】
図7を参照して、本実施例におけるスキャン動作について説明する。
【0059】
同図(a)に示すように、ビーム照射装置の前方空間に設定された目標領域を横200×縦3のブロックに分割したとき、照射レーザ光は、全てのブロックを順番に照射するようにしてスキャンされる。ここで、ブロックのスキャン順序は任意に設定できる。たとえば、同図(b)に示す如く、左上隅のブロック位置から順次、1ラインずつスキャンするように設定することもできる。なお、スキャン軌道(スキャン順序)は、上述の如く、DSP制御回路10内のスキャンテーブルによって規定される。
【0060】
同図(b)のようにしてスキャンされる場合、PSD600の受光面上における分離光の収束位置は、同図(c)に示す軌道に沿って移動する。ここで、同図(c)の軌道は、同図(b)のスキャン軌道に対し、一対一に対応している。したがって、同図(c)の軌道上における収束位置から照射レーザ光のスキャン位置を識別することができる。なお、この場合、同図(c)の軌道は、上述の如く、DSP制御回路10内の軌道テーブルに従うこととなる。
【0061】
ビーム照射装置においては、同図(b)に示すスキャン軌道に沿って照射レーザ光がスキャンされるのが最も理想的である。しかし、通常は、アクチュエータ300の移動量によって照射レーザ光のスキャン位置が所期のスキャン軌道から外れてしまう。すなわち、図7(b)において、スキャン領域の両端であるA、B付近、すなわち、アクチュエータ300の移動方向が変わる場所での動作速度は、AからBをスキャン(移動)中の動作速度がほぼ一定であるのに対して、遅延が生じる。
【0062】
この場合、かかるスキャン位置の外れに応じて、有効受光面上における分離光の収束位置も同図(c)に示す軌道から外れることとなる。
【0063】
このため、図8に示すように、アクチュエータ移動量が同じになるように可変時間間隔でパルス発光を行う。また、このとき、アクチュエータ駆動回路40から駆動信号(VCM駆動電流)として、アクチュエータ300の追従性のよい正弦波を用いることによって、安定したスキャン動作を実現することができる。
【0064】
また、アクチュエータ300のスキャン(移動)中の動作速度がほぼ一定である期間に目標領域の水平方向のスキャンを行うように、周期を長くした正弦波を駆動信号(VCM駆動電流)として用いることもできる。このときのレーザ光発光タイミングとアクチュエータ駆動回路40から駆動信号(VCM駆動電流)との関係を図9に示す。同図より、このときのレーザ光は、等時間間隔で発光を行う。
【0065】
なお、図8および図9において、各パルス発射領域は、目標領域の水平方向分であり、正弦波の立ち上がり部分は、目標領域の右端から左端に戻る時間に相当する。
【0066】
図10は、有効受光面上における分離光のスポット軌道の一例を示すものである。かかる場合、DSP制御回路10は、上述の如く、分離光の収束位置を目標軌道に引き込むよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。
【0067】
今、分離光の収束位置がP(x,y)にあり、このとき、目標軌道上にあるべき収束位置が
P’(x',y')であるとする。ここで、目標軌道上の収束位置P’(x',y')は、DSP制御回路10内に設定された軌道テーブルから取得される。具体的には、照射レーザ光のスキャン位置に対応する収束位置が軌道テーブルから取得される。
【0068】
このとき、DSP制御回路10は、P(x,y)とP’(x',y')をもとに、Ex=x−x’と
Ey=y−y’を演算し、演算結果をもとに、Ex=0、Ey=0になるよう、アクチュエ
ータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。これにより、照射レーザ光のスキャン位置は、当該タイミングにおいてスキャン軌道上にあるべきスキャン位置方向に引き戻される。これに応じて、分離光の収束位置も、当該タイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(x',y')の方向に引き込まれる。かかるサーボ動作によって、照射レーザ光は所期のスキャン軌道に追従するようスキャンされる。
【0069】
図11に、スキャン動作時のフローチャートを示す。
【0070】
S100にてスキャン動作が開始されると、S102にて照射レーザ光の照射位置がホームポジションへ移動される。なお、ホームポジションは、たとえば、図6(b)に示すブロックのうち、左端で且つ上端のブロック位置に設定される。
【0071】
さらに、S104にて照射レーザ光に対する軌道サーボがONとされた後、S106にてスキャン動作が開始される。
【0072】
次に、S108にて、照射レーザ光が目標領域に照射される。このとき、目標領域からの反射光を受光することにより、当該ビーム照射装置を搭載した検出器において、障害物測定や距離測定等の処理が行われる。
【0073】
しかる後、S110にてスキャン動作が終了したかが判別され、終了していなければ、S106に戻り、上述のスキャン動作が繰り返される。他方、スキャン動作が終了すれば、S112にて軌道サーボがOFFとされた後、S114にて半導体レーザがOFFとされる。
【0074】
次に、図12を参照しながら、本実施例における車両制御用情報の設定処理について説明する。
【0075】
各種車両制御用情報は、走行時の状況に基づいて設定される。ここで、走行時の状況は、図10を用いた説明における、分離光の収束位置P(x,y)と、このとき、目標軌道上にあるべき収束位置P’(x',y')を用いて、Ex=x−x’とEy=y−y’を演算し、この演算結果に基づいて判定される。
【0076】
まず、予め、安定走行時のExおよびEyを設定(S200)しておき、現在のExおよびEyを取得し(S202)、たとえば、現在のExおよびEyが、各々安定走行時の値の2倍以上か否か、判定する(S204)。
【0077】
この判定の結果、現在のExおよびEyが安定走行時の値の2倍以上であると(S200Y)、悪路走行中であると判定し(S206)、DSP制御回路10は、エアサスペンションへ空気を送り込み、車高を上昇させるように制御するための情報を車両走行制御回路80に設定し(S208)、本処理を終了する。
【0078】
一方、S204における判定の結果、現在のExおよびEyが安定走行時の値の2倍以上でないと(S200N)、悪路走行中でないと判定し(S210)、エアサスペンションへ送り込む空気を標準量とし、車高を標準高とするように制御するための情報を車両走行制御回路80に設定し(S212)、本処理を終了する。
【0079】
車両走行制御については、上記のほか、乗り心地に関して制御を行うこともできる。図12のS200に代わって、予め、乗り心地が良好な時のExおよびEyを設定しておき、現在のExおよびEyを取得し(S202)、たとえば、現在のExおよびEyが、安定走行時の値の2倍以上か否か、判定する(S204)。
【0080】
この判定の結果、現在のExおよびEyが安定走行時の値の2倍以上であると(S200Y)、S206に代わって、乗り心地がふわふわしていると判定し、DSP制御回路10は、S208に代わって、ダンパーの減衰力を上昇させる制御を行うための情報を車両走行制御回路80に設定し、本処理を終了する。
【0081】
一方、S204における判定の結果、現在のExおよびEyが安定走行時の値の2倍以上でないと(S200N)、S210に代わって、乗り心地がごつごつしていると判定し、S212に代わって、ダンパーの減衰力を下降させる制御をするための情報を車両走行制御回路80に設定し、本処理を終了する。
【0082】
以上のように、本発明によれば、簡素な構成にて、走行状況を判定し、この判定結果に基づいて車両制御用情報を設定して安定した走行を行うことができる。これにより、円滑且つ安定したスキャン動作を実現することができるビーム照射装置を提供することができる。
【0083】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は、斯かる実施の形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0084】
たとえば、上記実施例では、図10を参照して説明したように、分離光の収束位置P(x,y)を、当該タイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(x',y')に引き込むようにしてサーボを掛けるようにしたが、この他のサーボ処理にて、分離光の収束位置を目標軌道上に引き込むようにすることもできる。たとえば、図13に示すように、当該タイミングよりΔTだけ経過したタイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(xa',ya')に引き込むようにすることもできる。この場合、DSP制御回路10は、P(x,y)とP’(xa',ya')をもとに、Ex=x−xa’とEy=y−ya’を演算し、演算結果をもとに、
Ex=0、Ey=0になるよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。こうすると、照射レーザ光のスキャン位置を次に予定されているスキャン位置に円滑に引き込むことができ、効率的なスキャン動作を実現することができる。
【0085】
なお、上記において、想定し得ない大きさの振動や外乱がビーム照射装置に加わった場合には、サーボ外れが生じて照射レーザ光のスキャン位置が所期のスキャン位置から大きく外れる場合が起こり得る。このような場合には、たとえば、図7(b)のスキャン形態では、スキャン位置をサーボ外れが生じたときにスキャン途中であったラインの先頭位置に戻し、この位置から以降のスキャン処理を継続するようにすれば良い。
【0086】
また、振動や外乱を予測する、いわゆる外乱オブザーバを併せて適用すれば、照射レーザ光の軌道追従をより円滑に行うことができる。この場合、想定し得ない大きさの振動や外乱がビーム照射装置に加わったような場合にも、サーボ外れの発生を効果的に抑制することができる。
【0087】
また、上記実施例では、走行状況を判定する際、分離光の収束位置P(x,y)と、このとき、目標軌道上にあるべき収束位置P’(x',y')を用いて、Ex=x−x’とEy=y−y’を演算し、これが安定走行時の値の2倍以上であるか否かによって判定したが、これ以外の基準によって判定してもよい。
【0088】
また、上記実施例のS206において、悪路走行中であると判定したときに、車内の表示装置等に、その旨を表示するようにしてもよい。さらに、S208以降の走行に関わる車両制御用情報の設定処理を促す表示を行うようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施例では、走行時の車両制御用情報として、車高の高さ、あるいは、ダンパーの減衰力を制御するものとしたが、これ以外に、車載電子機器の制御条件であってもよい。たとえば、悪路によって走行状況が悪いとき、振動によって誤動作を防ぐために、CDプレーヤのトラッキング・サーボのゲインをあげる、CDチェンジャのディスク交換動作を禁止する、ドアをロックする、スピーカからの音量をロックする、ハンドルの重さを重くする、車載テレビチューナ、アンテナ等の受信感度をあげる、等の条件を設定するようにしてもよい。
【0090】
本実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義等は、本実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例に係るビーム照射装置の構成を示す図
【図2】実施例に係るビーム照射ヘッドの構成を示す図
【図3】実施例に係るVCM駆動電流の例を示す図
【図4】照射レーザ光の出射角度と分離光の収束位置の関係を示す図
【図5】実施例に係るPSD構造を示す図
【図6】PSDの構造と位置検出電圧の変動を説明する図
【図7】実施例に係るスキャン動作を説明する図
【図8】VCM駆動電流と発光タイミングとの関係を示す図
【図9】VCM駆動電流と発光タイミングとの関係を示す図
【図10】実施例に係る軌道サーボの掛け方を説明する図
【図11】実施例に係るスキャン動作を示すフローチャート
【図12】実施例に係る車両制御用情報設定処理の手順を示すフローチャート
【図13】実施例に係る軌道サーボの掛け方を説明する図
【符号の説明】
【0092】
10 DSP制御回路
30 レーザ駆動回路
40 アクチュエータ駆動回路
50 ビーム照射ヘッド
60 PSD信号処理回路
80 車両走行制御装置
100 半導体レーザ
300 レンズアクチュエータ
301 照射レンズ
400 ビームスプリッタ
600 PSD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、
目標領域に前記レーザ光が所定の間隔で照射されるように前記光源を制御する光源制御手段と、
この光源から出射されたレーザ光を目標領域に向けて照射するレンズと、
このレンズを少なくとも前記レーザ光の光軸に直交する方向に変位させる変位手段と、
前記変位手段を駆動して前記レーザ光を前記目標領域内の所期の照射位置に走査させる走査手段と、
前記レンズを通過したレーザ光の一部を分離する分離手段と、
前記分離手段によって分離されたレーザ光を受光するとともに受光面上における前記分離光の受光位置を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された受光位置に基づいて前記目標領域に照射されるレーザ光の走査位置を補正する補正手段と、
前記検出手段によって検出された受光位置に基づいて走行状況を判定する判定手段とを
有する、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項2】
さらに、
前記判定手段の判定結果を報知する報知手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のビーム照射装置。

【請求項3】
さらに、
前記判定手段による結果に基づき、走行時の車両制御用情報を設定するための車両制御用情報設定手段を有する、
ことを特徴とする請求項1あるいは2に記載のビーム照射装置。

【請求項4】
前記判定手段は、所期の照射位置と、前記検出手段によって検出された受光位置との変位に基づいて、走行状況を判定する、
ことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のビーム照射装置。

【請求項5】
前記走査手段は、前記レーザ光が目標領域内を水平方向に走査するよう前記変位手段を駆動し、
前記目標領域を水平方向に走査している間、前記光源制御手段は、この目標領域に対して所定の間隔でレーザ光が照射されるように制御する、
ことを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のビーム照射装置。

【請求項6】
前記所定の間隔は、前記目標領域内を一定の大きさに分割したときのブロック単位である、
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載のビーム照射装置。
【請求項7】
前記所定の間隔は、一定の時間間隔である、
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載のビーム照射装置。

【請求項8】
前記変位手段は、前記走査手段からの正弦波信号に基づいて駆動される
ことを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載のビーム照射装置。

【請求項9】
前記車両制御用情報は、車高の高さを制御するための情報である、
ことを特徴とする請求項3ないし7の何れかに記載のビーム照射装置。

【請求項10】
前記車両制御用情報は、ダンパーの減衰力を制御するための情報である、
ことを特徴とする請求項3ないし7の何れかに記載のビーム照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−284204(P2006−284204A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100836(P2005−100836)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】