説明

ピアス銃及びピアス銃の制御方法

【課題】高速な電子ビーム強度の制御を可能にする。
【解決手段】装置(10)は、フィラメント(22)と、フィラメント(22)によって加熱されて電子ビーム(14)を発生する電子放出器(20)と、フィラメント(22)及び電子放出器(20)の各々に電力を供給するように構成されている電源(26)とを含んでいる。装置はまた、フィラメント(22)及び電子放出器(20)の各々への電力の供給を制御する制御システム(34)を含んでおり、制御システム(34)は、所望の電子放出器動作温度を示す入力を受け取って、電子放出器(20)及びフィラメント(22)の動作温度を最低にするように、所望の放出器要素動作温度に基づいて、電子放出器(20)とフィラメント(22)との間に望ましい電圧を印加し、フィラメント(22)に望ましい電圧を印加するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、ピアス型電子銃に関し、さらに具体的には、電子ビームの電流密度を制御すると共に、電子放出器及びフィラメントの動作温度を、当該電子放出器及びフィラメント両方の温度を最低限の動作温度に保つよう制御するようにピアス型電子銃の動作を制御するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管は典型的には、電子ビームを与える陰極構造を含んでおり、電子ビームは、陰極−陽極間の真空ギャップに跨がって印加される高電圧を用いて加速されて、回転式陽極に衝突するとX線を発生する。電子ビームが陽極と衝突する区域をしばしば焦点スポットと呼ぶ。典型的には、陰極は1又は複数の円筒形又は平坦型フィラメントを含んでおり、フィラメントはカップの内部に配置されて、例として述べると高出力の大径焦点スポット又は高分解能の小径焦点スポットを生成する電子ビームを与える。撮像応用は、応用に依存して特定の形状を有する小径又は大径の焦点スポットの何れかを選択することを含んで設計され得る。
【0003】
電子ビームを発生するための一つの特定的な陰極構造は、ピアス(Pierce)型電子銃である。ピアス型電子銃は、加熱用フィラメントと、電子放出用陰極と、陰極から離隔して設けられた電場成形用電極及び第一の抽出板と、抽出板から離隔して設けられたX線ターゲット陽極とを含んでいる。かかるピアス型銃の特定の実施形態が米国特許第3,882,339号に記載されている。かかる電子銃は典型的には、空間電荷制限体制で動作し、放出電流は抽出電圧を調節することにより容易に制御され得る。かかる銃は、アンペア数を高速で変化させて電子ビームを発生するのに特に適する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第20020125841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のピアス型電子銃の一つの欠点は、電圧の制御、並びに放出器及びフィラメントを適正な動作温度に保つのに必要とされる電力の制御及び制限である。構成要素の寿命を延ばすために、様々な温度を適正な動作と両立させつつ可能な限り低くする必要がある。加えて、制御は、帰還線の本数を可能な限り少なくして行なう必要があり、またこれらの線は真空チェンバの内部から引き出すべきでなく、チェンバの内部に付加的な設備(例えば温度を測定するためのもの)を設けることは回避すべきである。
【0006】
このように、電圧供給源によって発生される電圧の速やかな印加による極めて高速の態様での電子ビーム強度の制御を可能にするシステム及び方法が必要とされている。また、フィラメント及び放出器両方の動作温度を最低にしつつ放出器の温度を高速で且つ正確な態様で制御することを可能にするシステムを提供し得ると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の各実施形態は、電子ビームの電流密度を制御すると共に、電子放出器及びフィラメントの動作温度を、当該電子放出器及びフィラメント両方の温度を最低限の動作温度に保つよう制御する装置を提供することにより上述の欠点を克服する。
【0008】
本発明の一観点によれば、装置が、電圧が印加されると発熱するように構成されているフィラメントと、フィラメントによって加熱されて電子ビームを発生する電子放出器と、フィラメント及び電子放出器の各々に電力を供給するように構成されており複数の電圧供給源を含む電源とを含んでいる。この装置はまた、フィラメント及び電子放出器の各々への電力の供給を制御する制御システムであって、所望の電子放出器動作温度を示す入力を受け取って、電子放出器及びフィラメントの動作温度を最低にするように、所望の放出器要素動作温度に基づいて、電子放出器とフィラメントとの間に望ましい電圧を印加し、フィラメントに望ましい電圧を印加するように構成されている制御システムを含んでいる。
【0009】
本発明のもう一つの観点によれば、電子銃の動作を制御する方法が、電子ビームの電流を制御する第一の制御ループを設定するステップを含んでおり、該第一の制御ループを設定するステップは、所望の電子ビーム電流を与え、所望の電流を有する電子ビームを発生するように電子放出器と抽出電極との間に電位を印加し、所望の期間にわたり電子ビームを印加することをさらに含んでいる。この方法はまた、電子放出器及びフィラメントの動作温度を制御する第二の制御ループを設定するステップを含んでおり、該第二の制御ループを設定するステップは、所望の電子放出器動作温度を与え、電子放出器及びフィラメントの動作温度を制御するように、電子放出器とフィラメントとの間に電位を印加すると共にフィラメントに跨がる電位を印加することをさらに含んでいる。
【0010】
本発明のさらにもう一つの観点によれば、制御システムが、所望の電子ビーム電流、電子ビーム放出持続時間、及び所望の電子放出器動作温度を示す入力を受け取り、所望の時間間隔にわたり所望の電子ビーム電流に基づいて電子放出器と抽出電極との間に電圧を印加し、所望の放出器要素動作温度に基づいて電子放出器とフィラメントとの間に初期電圧を印加するようにプログラムされているプロセッサを含んでいる。プロセッサはさらに、放出器要素とフィラメントとの間の初期電圧に基づいて初期フィラメント電圧を印加し、測定されたフィラメント電流値を、初期フィラメント電圧及び電子放出器要素とフィラメントとの間の電圧に関連している初期フィラメント電流値と比較し、測定されたフィラメント電流と初期フィラメント電流との比較に基づいて、初期フィラメント電圧、及び電子放出器とフィラメントとの間の初期電圧の各々を修正するようにプログラムされている。
【0011】
これらの利点及び特徴、並びに他の利点及び特徴は、添付図面と共に掲げられている以下の本発明の好適な実施形態の詳細な説明からさらに容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面は、発明を実施するのに現状で思量される実施形態を示す。
【図1】本発明の一実施形態による電子銃のブロック概略図である。
【図2】図1の電子銃での電子ビームの電流の制御を示すグラフである。
【図3】図1の電子銃での電子放出器及びフィラメントの動作温度の制御を示すグラフである。
【図4(A)】2種の別個の電力曲線に従って図1の電子銃の電子放出器に印加される電力の制御を示すグラフである。
【図4(B)】2種の別個の電力曲線に従って図1の電子銃の電子放出器に印加される電力の制御を示すグラフである。
【図4(C)】2種の別個の電力曲線に従って図1の電子銃の電子放出器に印加される電力の制御を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態によるピアス型電子銃の動作を制御する手法の第一の制御ループを示す流れ図である。
【図6】本発明の一実施形態によるピアス型電子銃の動作を制御する手法の第二の制御ループを示す流れ図である。
【図7】本発明の一実施形態によるピアス型電子銃の動作を制御する手法の第二の制御ループを示す流れ図である。
【図8】本発明の一実施形態によるX線源の概略図である。
【図9】本発明の一実施形態を組み入れたCTイメージング・システムの遠近図である。
【図10】図8に示すシステムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の一実施形態による装置10のブロック概略図を示す。装置10は、内部に含まれている電子放出器20及びフィラメント22両方の温度を、当該電子放出器20及びフィラメント22が最低限の動作温度に保たれるよう制御するように構成されている。本発明の実施形態の一例によれば、装置10は、参照番号12によって全体的に示す陰極構造を含むピアス型の電子銃であって、電子のビーム14を発生して陰極12からターゲット陽極16の傘型(ベベル付き)周縁(図示されていない)に向かわせるように構成されている。電子ビーム14はスポットに集束されて、陽極16が回転するにつれてこのスポットからX線のビームが発散する。また、電子銃10には加速用陽極アセンブリ18(すなわちX線管において具現化されるときにはビーム収集器として形成される)が含まれており、アセンブリ18は陰極構造12とターゲット陽極16との間に介設されている。陰極構造12からの電子ビーム14は加速用アセンブリ18の開口を通過して最終的にはターゲット陽極16に衝突する。一般的に述べると、参照番号12のような陰極構造及び加速用陽極18が、電子銃10のようなピアス型電子銃の主要素である。
【0014】
図1に示すように、陰極構造12は熱イオン型陰極として構成され、この陰極は一実施形態によれば、本質的には、放出面(例えば凹面形放出面)を形成する電子放出器要素20を有する金属ブロックである。電子放出器要素20は、熱イオン性放出率を強化するために例えば炭酸バリウムを含浸させたタングステンのような耐火性金属で主に構成される。1又は複数のフィラメント又は発熱体22が電子放出器要素20に隣接して配置され、フィラメント22にエネルギが与えられて電圧Ve−fが印加されると、フィラメント22が放出器要素20の温度を放出温度まで高める。次いで、制御電圧を電子放出器要素20に印加して電子ビーム14を発生することができ、この電子ビーム14を、電子放出器要素20に隣接して配置された集束用電極23によって集束させることができる。
【0015】
また、陰極構造12には、正のVe−e電圧を印加することにより電子放出器要素20から電子ビーム14を抽出し、又は負のVe−e電圧を印加することにより電子ビーム14を遮断するように作用する抽出板24が含まれている。抽出板24は電子放出器要素20から離隔して設けられているので、抽出板24と電子放出器要素20との間に電位又は電圧を印加することができる。
【0016】
電子放出器要素20、フィラメント22、及び抽出板24の各々が、電気経路/接続28、29を介して真空チェンバ(図示されていない)の外部に位置する電源26に接続される。電源26は、電子放出器要素20、フィラメント22、及び抽出板24の各々に電力を選択的に印加し、各々の構成要素に印加される電圧は、後にあらためて詳述するように、電圧Ve−e、Ve−f、Vacをそれぞれ印加する電圧源33、35、37を介して個々に制御可能である。このように、電力源26を参照するときには、電圧源33、35、37も参照される。また、電子銃10には、電気経路28、29に沿った所望の位置での電流を測定するように構成されている第一及び第二のプローブ30、32が含まれている。第一のプローブ30は電気経路28に沿って配置されて、電子放出器要素20によって発生される電子ビーム14の電流を測定する。第二のプローブ32は電気経路29に沿って配置されて、フィラメント22によって発生される電流を測定する。
【0017】
図1に示すように、電子銃10には、電源26から電子放出器要素20、フィラメント22、及び抽出板24の各々に供給される電圧を制御する制御システム34が含まれている。すなわち、制御システム34は、放出器要素20、フィラメント22、及び抽出板24の各々に供給される電圧の大きさを個々に制御する。制御システム34はこのように、フィラメントへの電圧(Vac)、電子放出器要素とフィラメントとの間の電圧(Ve−f)、及び電子放出器要素と抽出板との間の電圧(Ve−e)を制御するように構成される。また、制御システム34は、放出が要求されたときにのみ、且つ電圧Ve−eが調整されて所望の値になった後にのみ、抽出板24に電圧を加えることにより電子ビーム14の放出を選択的に生ずるように構成される。放出が望まれないときには、制御システム34は、放出器と抽出板との間の電圧Ve−eを負の値に保つ。本発明の各実施形態によれば、制御システム34は、放出器要素20、フィラメント22、及び抽出板24の各々に供給される電圧の大きさを、電力源26に接続されて電気経路28、29に沿って配置されているケイ素及び炭化ケイ素スイッチ、並びにダイオード等のような様々な装置(図示されていない)の任意のものを介して調整することができ、電圧源Ve−e、Ve−f、及びVacが放出器要素20、フィラメント22、及び抽出板24のために提供されるようにする。
【0018】
動作について述べると、制御システム34は、電子ビーム14の電流を制御すると共に、電子放出器20及びフィラメント22の動作温度を、当該電子放出器20及びフィラメント22両方の温度を最低限の動作温度に保つよう制御するように作用する。制御システム34は、電子銃10の動作を制御する二つの制御ループを設定し具現化するように構成されているものとして記述され得る。第一の制御ループは、電子ビームの電流14を制御するために設定される。第二の制御ループは、電子放出器20及びフィラメント22の動作温度を、当該電子放出器20及びフィラメント22両方の温度を最低限の動作温度を保つよう制御するために設定される。制御ループの「第一」及び「第二」との表記は識別の目的のためのみのものであって、具現化形態の特定の序列を示唆するものではない。本発明の一実施形態によれば、第二の制御ループは、第一の制御ループに先立って又は第一の制御ループと同時に具現化される。第一及び第二の制御ループを介した電子銃10の制御は、極めて高速の態様での電子ビーム電流強度の制御を可能にすると同時に、高速で且つ正確な態様での電子放出器要素20の温度の同時制御を可能にする。
【0019】
電子ビームの電流14を制御すると共に電子放出器20及びフィラメント22の動作温度を制御するために、制御システム34は、フィラメントへの電圧(Vac)、電子放出器要素とフィラメントとの間の電圧(Ve−f)、及び電子放出器要素と抽出板との間の電圧(Ve−e)を制御する。図2には、第一の制御ループによる電子ビームの電流14の制御を示すグラフが掲げられている。x軸は電子放出器要素と抽出板との間の電圧Ve−eに対応しており、y軸は放出される電子ビームの電流Ie−tに対応している。図2に示すように、Ve−eとIe−tとの間の関係を示す曲線36が掲げられており、所望の電流密度を有する電子ビームの放出は、電子放出器要素と抽出板との間に、対応する電圧の印加を要求する。曲線36は、線形部分38と「飽和」部分40とを含んでおり、飽和部分40は電子放出器要素の動作温度Temitによる影響を受ける。電子銃10(図1)の動作時には、電子ビームの電流の制御は、曲線36の線形部分38に位置する所望の制御ゾーン42において行なわれる。線形部分38は、電子放出器要素の空間電荷制限動作モードに対応する。空間電荷制限モードでの電子放出器要素の動作は、極めて高速の態様での電子ビーム電流強度の制御を可能にする。
【0020】
図3には、第二の制御ループによる電子放出器及びフィラメントの動作温度の制御を示すグラフが掲げられている。x軸は電子放出器要素とフィラメントとの間の電圧Ve−fに対応しており、y軸はフィラメントによって放出される電流Ifilに対応している。図3に示すように、Ve−fとIfilとの間の関係を示す曲線44が掲げられている。曲線44は、線形部分45と「飽和」部分46とを含んでおり、飽和部分及び閾値電圧(Vemit−fil)はフィラメントの動作温度Tfilによる影響を受け、閾値電圧は線形挙動から飽和挙動への移行に対応する電圧である(温度Tfilが与えられた場合)。電子銃10(図1)の動作時には、電子放出器の動作温度の制御は、制御ゾーン42において行なわれ、フィラメントの動作温度の制御は、曲線44の飽和部分46に位置する所望の制御ゾーン47において、一定の電力曲線48に従ってフィラメントを制御することにより行なわれる。飽和部分46は、フィラメントの温度制限動作モードに対応する。温度制限モードでのフィラメントの動作は、電荷制限モードでの電子放出器要素の温度の制御を提供し、次にこの制御が、各構成要素の寿命を最適化するように、高速で且つ正確な態様での電子ビーム14(図1)強度の制御、温度スパイクの回避、並びに電子放出器及びフィラメント両方の温度の最低限の動作温度での保持を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、図4(A)に示すように、電子放出器に印加される電力の制御は、制御ゾーン47において2種の別個の電力曲線48、49(図3に示す単一の電力曲線48ではなく)に従って行なわれ得ることが認められる。すなわち、最小の時間量で電子放出器を所望の動作温度まで高めるために、第一の電力曲線49に従って所定の期間にわたり電力を初期印加することができる。電子放出器が所望の動作温度に達したら、第二の電力曲線48に従って電力を印加することができ、第二の電力曲線48に従って印加される電力は、電子銃10(図1)の動作時間にわたり保たれる。図4(B)及び図4(C)に示すように、電力は、参照番号50に示す時刻tまで第一の電力曲線49に従って初期印加される。時刻tには、電子放出器は、参照番号51に示す所望の動作温度に達する。従って、時刻tには、電力は第二の電力曲線48に従って印加され、印加される電圧は、電子銃の動作時間にわたり第二の電力曲線48に沿って保たれる。
【0022】
図5〜図7を図1と併せて参照して、電子銃10の動作を制御する手法52を示す流れ図について説明する。手法52は、例えば、電子銃の電子回路に設けられている制御システム34のような制御システムによって行なわれ得る。手法52は、電子ビームの電流14を制御すると共に、電子放出器20及びフィラメント22の動作温度を、当該電子放出器20及びフィラメント22両方の温度を最低限の動作温度に保つよう制御する第一及び第二の制御ループ54(図5)、56(図6及び図7)を具現化している。
【0023】
図5には、電子ビームの電流14を制御する第一の制御ループ54が示されている。第一の制御ループ54は、ステップ57において、電子銃10によって発生されるべき電子ビーム28の所望の電子ビーム電流を示す入力の受け取り又は取得から開始する。所望の電子ビーム電流の入力の受け取りの後に、ステップ58において、電子放出器20と抽出板24との間に印加されるべき望ましい電圧(放出器−抽出板間電圧Ve−e)を、所望の電子ビーム電流に基づいて決定する。本発明の実施形態の一例によれば、電子放出器20と抽出板24との間に印加されるべき電圧であって所望の電流を有する電子ビーム14を発生するのに必要とされる電圧を決定するために、ルックアップ・テーブルにアクセスする。
【0024】
電子放出器20と抽出板24との間に印加されるべき望ましい電圧Ve−eのルックアップ・テーブル等を介した決定の後に、ステップ60において電源及び制御システムを介して電子放出器20と抽出板24との間に望ましい電圧を印加し、望ましい電圧は、電子ビーム14を「入(オン)」にする所望の期間/持続時間として認められた所望の時間間隔(すなわち「入」時間(time on duration))にわたり印加される。電子放出器要素20とフィラメント22との間の電圧Ve−fの印加がフィラメント22への電圧Vac(後にあらためて詳述する)の供給と相俟って、電子放出器要素20が所望の温度に達する。電子放出器要素20が動作温度にあるときには、電子放出器20と抽出板24との間の電圧Ve−eの印加によって電子ビーム14の放出が生ずる。発生される電子ビーム14が、ステップ56において受け取られた所望の電流値に等しい電流値を有するか否かを決定し確認するために、ステップ62において、放出される電子ビーム14の実時間電流密度値を、電気経路28に沿って電源26と電子放出器要素20との間の点に配置されている第一のプローブ30等によって測定する。ステップ64では、第一のプローブ30によって測定された実時間電流を初期に望ましい電子ビーム電流と比較して、測定された実時間電流が初期に望ましい電子ビーム電流に近似的に等しいか、又は代わりに予め決められた量を上回って変化しているため「異なっている」かの決定を行なう。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、ステップ64において、測定された実時間電流の値と初期に望ましい電子ビーム電流の値との間の差が初期に望ましい電子ビーム電流の値の±5%未満である場合には、測定された実時間電流は初期に望ましい電子ビーム電流に近似的に等しいと看做される。測定された実時間電流の値と初期に望ましい電子ビーム電流の値との間の差が初期に望ましい電子ビーム電流の値の±5%よりも大きい場合には、測定された実時間電流は初期に望ましい電子ビーム電流に対して異なっていると看做される。かかる閾値範囲は、電子銃の安定性の目的のための公差及びヒステリシスを導入する。
【0026】
これら二つの電流値が近似的に等しいと判明した場合66には、電子銃10は不測の動作状態を何ら蒙っていないと決定される。第一の制御ループ54はステップ67に進み、時間間隔/期間を修正した後にステップ57にループして戻り、ステップ57において次の所望の電子ビーム電流が入力され受け取られる。第一の制御ループ54がループして戻る各回毎にステップ67において時間間隔をこのように修正する。次いで、第一の制御ループ54は、入力され受け取られた次の所望の電子ビーム電流について繰り返されて、更新後の所望の電子ビーム電流及び更新後の所望の「入」時間を有する電子ビーム14を発生するように、必要に応じて電子放出器20と抽出板24との間に印加される電圧を修正する。
【0027】
二つの電流値が「異なっている」(すなわち予め決められた量を上回って異なっている)と判明した場合68には、電子銃10が不測の動作状態を蒙っているかも知れず、所与の電子ビーム電流と、電子放出器20と抽出板24との間に印加される電圧であってこの所与の電子ビーム電流を発生するのに必要とされる電圧との間の相関が、元のルックアップ・テーブルに記載されている相関と比較して変化したと決定する。従って、ルックアップ・テーブルは、ステップ70においてこの不測の動作状態を反映するように更新されて、電子ビーム電流と、電子放出器20と抽出板24との間に印加される電圧との間のさらに正確な関係を与える。ルックアップ・テーブルの更新後に、「入」時間がステップ67において更新され、第一の制御ループ54はステップ57にループして戻り、ステップ57では次の所望の電子ビーム電流及び「入」時間67が入力され受け取られる。次いで、第一の制御ループ54は入力され受け取られた次の所望の電子ビーム電流及び「入」時間間隔について繰り返されて、更新後の所望の電子ビーム電流について電子放出器20と抽出板24との間に印加されるべき電圧が、更新されたルックアップ・テーブルを介して決定される。
【0028】
手法52の第一の制御ループ54はこのように具現化されて、電子放出器20と抽出板24との間に印加される電圧Ve−eを制御することを介して電子ビーム14の電流を制御する。電子ビーム14の所与の所望の電流について、電子放出器20と抽出板24との間に印加される電圧は一定に保たれるため、所望の電子ビーム電流強度を有する電子ビーム14は、不要の電流変動を招かずに確実に抽出されるようになる。加えて、第一の制御ループ54は、電子放出器20と抽出板24との間に印加される電圧を制御することを介して電子ビーム放出の迅速な停止を提供する。すなわち、第一の制御ループ54は、放出が必要とされて、電圧が調整されて所望の値になった後にのみ、抽出板24への電圧の印加を提供するため、放出が望まれないときには、放出器要素20と抽出板24との間の電圧を負の値に保つことができる。
【0029】
図6及び図7には、電子放出器20及びフィラメント22の動作温度を、当該電子放出器20及びフィラメント22両方の温度を最低限の動作温度に保つよう制御する第二の制御ループ56が図示されている。図6及び図7の第二の制御ループ56は図5の第一の制御ループ54とは別個に図示されているが、第二の制御ループ56は、第一の制御ループの前に又は第一の制御ループと同時に具現化され得ることが認められる。
【0030】
図6に示すように、第二の制御ループ56はステップ72において、電子放出器要素20の所望の動作温度を示す入力の受け取り又は取得/計算から開始する。所望の電子放出器要素動作温度は、電子銃によって要求される最大の電子ビーム強度について電荷制限動作モードでの電子放出器要素の動作を可能にする最低温度になるように算出され選択される。所望の電子放出器要素動作温度の入力の受け取りの後に、ステップ74において、放出器要素20に印加されるべき電力Pappを所望の放出器要素動作温度に基づいて決定する。本発明の実施形態の一例によれば、所望の放出器要素動作温度に対応する放出器要素20に印加されるべき電力を決定するために、ルックアップ・テーブルにアクセスする。放出器要素20に印加されるべき電力の決定の後に、ステップ76において、決定された電力に関連するフィラメント温度を決定するためにもう一つのルックアップ・テーブルにアクセスする。さらに明確に述べると、フィラメント温度を決定するときに、決定された電力について最大許容可能電圧(Ve−f)が電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加されると想定する。この電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加される最大許容可能電圧について、ルックアップ・テーブルは、この決定された電力についての電子放出器要素20とフィラメント22との間の最大電圧に対応するフィラメント電流Ifil(Ifilはフィラメントによって放出される電流)を与えるのに必要とされる関連するフィラメント温度を与える。
【0031】
ステップ74及びステップ76は放出器要素20に印加されるべき電力及び所要のフィラメント温度をそれぞれ決定するために別個のルックアップ・テーブルにアクセスするものとして記載されているが、単一のルックアップ・テーブルから両設定を得てもよいことが認められる。すなわち、電子放出器要素20及びフィラメント22の幾何学的構成に基づいて、所望の放出器要素動作温度と、放出器要素20に印加されるべき電力と、所要のフィラメント温度との間の関係を単一のルックアップ・テーブルから得ることができる(印加され得る最大Ve−fが与えられた場合)。
【0032】
電子放出器要素20とフィラメント22との間の最大許容可能電圧に関連するフィラメント温度を決定したら、ステップ78において、決定されたフィラメント温度がフィラメント22から電子放出器要素20へのIfilの放出を生ずるのに十分であるか否かについての決定を行なう。すなわち、ステップ78において、決定されたフィラメント温度が電子ビーム14の放出を齎すために電子放出器要素20を加熱するのに十分であるか否かを決定する。決定されたフィラメント温度がIfilの放出を齎すのに十分である場合80には、第二の制御ループ56は、ステップ82において、決定されたフィラメント動作温度に基づいて行なわれるフィラメントに印加すべき初期電圧(Vac)の決定に進む。実施形態の一例によれば、ステップ82において、関連するフィラメント動作温度に基づいてフィラメント22に印加すべき初期電圧を決定するために、ルックアップ・テーブルにアクセスする。
【0033】
ステップ76において得られたフィラメント温度がIfilの放出を齎すのに十分でないと決定された場合84には、第二の制御ループ56は、ステップ86において、Ifilの放出を提供する最低のフィラメント温度の選択又は識別に進む。放出を提供する最低のフィラメント温度の識別の後に、第二の制御ループ56はステップ82に進み、放出を提供する識別された最低のフィラメント動作温度に基づいて、ルックアップ・テーブル等を介して、フィラメント22に印加すべき初期電圧を決定する。放出を提供する最低のフィラメント温度の識別の後に、第二の制御ループ56はまたステップ88に進み、放出を提供する最低のフィラメント温度に基づいて電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加されるべき修正後の電圧値を決定する。本質的に、ステップ88での電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加されるべき修正後の電圧の決定は、ステップ76において用いられたルックアップ・テーブルの反転ルックアップ・テーブルを用いることにより行なわれる。放出を提供するフィラメント温度は既知であるので、ステップ88において反転ルックアップ・テーブルにアクセスして、電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加されるべき電圧であって最低フィラメント放出温度に対応する電圧を決定することができる。
【0034】
図7を参照して述べると、フィラメント22に印加されるべき初期電圧及び電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加されるべき初期電圧の設定の後に、ステップ90では、決定された初期電圧をフィラメント22、及び電子放出器要素20とフィラメント22との間の両方に印加する。電力が電源26によって与えられ、制御システム34は、フィラメント22に印加される電圧及び電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加されるべき初期電圧の大きさをそれぞれの決定された初期電圧レベルに従って個々に制御するように作用する。電子放出器要素20及びフィラメント22への電圧の印加の後に、ステップ92において、電気経路29に沿って電源26とフィラメント22との間の点に位置する第二のプローブ32等を介してフィラメント22の実時間電流値を測定する。
【0035】
フィラメント22の実時間電流値の測定が取得された後に、ステップ94において初期電圧の印加と及び実時間フィラメント電流の測定との間で予め決められた時間間隔が経過したか否かについての決定を行なう。実施形態の一例によれば、かかる決定は、タイマを設定して、測定時刻にタイマが満了しているか否かを決定することにより行なわれ得る(タイマは安定動作のために望ましい)。タイマが満了していない場合96には、第二の制御ループ56はステップ98に進み、電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加される電圧を測定された実時間フィラメント電流に基づいて再計算する。電子放出器要素20とフィラメント22との間の電圧Ve−fは、次式に従って決定され得る。
【0036】
e−f=Papp/Iprobe2 [式1]
式中、Pappは放出器要素20に印加される電力であり、Iprobe2は第二のプローブ32によって測定される実時間フィラメント電流である。次いで、修正後/更新後振幅のVe−fを電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加して、第二の制御ループ56はステップ92にループして戻り、実時間フィラメント電流を再び測定する。電子放出要素20によって反射し返された加熱を補償するためには電圧調節が必要である。
【0037】
ステップ94においてタイマが満了したとの決定が為された場合100には、第二の制御ループ56はステップ102に進み、第二のプローブ32によって測定された実時間フィラメント電流の測定値Iprobe2を初期フィラメント電流Ifil−initと比較して、実時間フィラメント電流が初期フィラメント電流よりも大きいか否かの決定を行なう。尚、初期フィラメント電流は測定される必要はなく、ステップ76又はステップ88において確定される供給電力Papp及び電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加される電圧Ve−fに基づいて決定されることを特記しておく。ステップ102において実時間フィラメント電流が初期フィラメント電流よりも大きいとの決定が為された場合104には、第二の制御ループ56は、ステップ106においてフィラメント22に印加される電圧の値を減少させ、ステップ108においてタイマをリセットした後にステップ98に進み、電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加される電圧を測定された実時間フィラメント電流に基づいて再計算して、再計算後/修正後の電圧を印加する。
【0038】
ステップ102において実時間フィラメント電流が初期フィラメント電流よりも大きくないとの決定が為された場合110には、第二の制御ループ56はステップ112に進み、実時間フィラメント電流が初期フィラメント電流よりも小さいか否かを決定する目的のために、測定された実時間フィラメント電流Iprobe2を初期フィラメント電流Ifil−initと再び比較する。ステップ112において実時間フィラメント電流が初期フィラメント電流よりも小さいとの決定が為された場合114には、第二の制御ループ56は、ステップ116においてフィラメント22に印加される電圧の値を増加させ、ステップ108においてタイマをリセットした後にステップ98に進み、電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加される電圧を測定された実時間フィラメント電流に基づいて再計算して、再計算後/修正後の電圧を印加する。ステップ112において実時間フィラメント電流が初期フィラメント電流よりも小さくないとの決定が為された場合118には、実時間フィラメント電流は初期フィラメント電流に等しいと決定されて、フィラメント22に印加される電圧の値は現在値に保たれる。次いで、第二の制御ループ56はステップ98に進み、電子放出器要素20とフィラメント22との間に印加される電圧を測定された実時間フィラメント電流に基づいて再計算して、再計算後/修正後の電圧を印加する。
【0039】
図8には、本発明の一実施形態による電子ビームを発生する電子銃を組み入れたCTシステム向け等のX線発生管140が示されている。主に、X線管140は、筐体146に収納された陰極アセンブリ142及び陽極アセンブリ144を含んでおり、陰極アセンブリ142は、図1の陰極構造12に従って構築されて制御システム34(図1)によって制御されるピアス型電子銃陰極である。陽極アセンブリ144は、回転式陽極円板154及び陽極円板を包囲する陽極遮蔽156を回転させるように構成されているロータ158を含んでおり、当技術分野では公知である。陰極アセンブリ142からの電子電流162によって衝突されると、陽極156はここからX線ビーム160を放出する。
【0040】
図9には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム210が、「第三世代」CTスキャナに典型的なガントリ212を含むものとして示されている。ガントリ212はX線源214を有し、X線源214はガントリ212を巡って回転して、ガントリ212の反対側に設けられている検出器アセンブリ又はコリメータ218へ向けてX線のビーム216を投射する。X線源214は、図1に示して説明した電子銃10を有するX線管を含んでいる。図10を参照すると、検出器アセンブリ218は、複数の検出器220及びデータ取得システム(DAS)232によって形成されている。これら複数の検出器220は、患者222を通過した投射X線を感知して、DAS232がこのデータを後続の処理のためのディジタル信号へ変換する。各々の検出器220が、入射X線ビームの強度、従って患者222を通過して減弱したビームの強度を表わすアナログ電気信号を発生する。X線投影データを取得するための1回の走査の間に、ガントリ212及びガントリ212に装着されている各構成要素が回転中心224の周りを回転する。
【0041】
ガントリ212の回転及びX線源214の動作は、CTシステム210の制御機構226によって制御される。制御機構226は、X線源214に電力信号、制御信号、及びタイミング信号を与えるX線制御器228と、ガントリ212の回転速度及び位置を制御するガントリ・モータ制御器230とを含んでいる。画像再構成器234が、標本化されてディジタル化されたX線データをDAS232から受け取って高速再構成を実行する。再構成された画像はコンピュータ236への入力として印加されて、コンピュータ236は大容量記憶装置238に画像を記憶させる。
【0042】
コンピュータ236はまた、キーボード、マウス、音声作動式コントローラ、又はその他任意の適当な入力装置のような何らかの形態の操作者インタフェイスを有するコンソール240を介して、操作者から命令及び走査パラメータを受け取る。付設されている表示器242によって、操作者は再構成画像、及びコンピュータ236からの他データを観測することができる。操作者が供給した命令及びパラメータはコンピュータ236によって用いられて、DAS232、X線制御器228及びガントリ・モータ制御器230に制御信号及び情報を与える。加えて、コンピュータ236は、電動式テーブル246を制御して患者222及びガントリ212を位置決めするテーブル・モータ制御器244を動作させる。具体的には、テーブル246は、患者222を全身として又は部分的に図9のガントリ開口248に挿入して移動させる。
【0043】
開示されるシステム及び方法の技術的寄与は、放出される電子ビームの電流密度を制御すると共に、電子放出器及びフィラメントの動作温度を、当該電子放出器及びフィラメント両方の温度を最低限の動作温度に保つよう制御するようにピアス型電子銃の動作を制御するコンピュータ実装型の手法を提供することにある。
【0044】
従って、本発明の一実施形態によれば、装置が、電圧が印加されると発熱するように構成されているフィラメントと、フィラメントによって加熱されて電子ビームを発生する電子放出器と、フィラメント及び電子放出器の各々に電力を供給するように構成されており複数の電圧供給源を含む電源とを含んでいる。この装置はまた、フィラメント及び電子放出器の各々への電力の供給を制御する制御システムであって、所望の電子放出器動作温度を示す入力を受け取って、電子放出器及びフィラメントの動作温度を最低にするように、所望の放出器要素動作温度に基づいて、電子放出器とフィラメントとの間に望ましい電圧を印加し、フィラメントに望ましい電圧を印加するように構成されている制御システムを含んでいる。
【0045】
本発明のもう一つの実施形態によれば、電子銃の動作を制御する方法が、電子ビームの電流を制御する第一の制御ループを設定するステップを含んでおり、該第一の制御ループを設定するステップは、所望の電子ビーム電流を与え、所望の電流を有する電子ビームを発生するように電子放出器と抽出電極との間に電位を印加し、所望の期間にわたり電子ビームを印加することをさらに含んでいる。この方法はまた、電子放出器及びフィラメントの動作温度を制御する第二の制御ループを設定するステップを含んでおり、該第二の制御ループを設定するステップは、所望の電子放出器動作温度を与え、電子放出器及びフィラメントの動作温度を制御するように、電子放出器とフィラメントとの間に電位を印加すると共にフィラメントに跨がる電位を印加することをさらに含んでいる。
【0046】
本発明のさらにもう一つの実施形態によれば、制御システムが、所望の電子ビーム電流、電子ビーム放出持続時間、及び所望の電子放出器動作温度を示す入力を受け取り、所望の時間間隔にわたり所望の電子ビーム電流に基づいて電子放出器と抽出電極との間に電圧を印加し、所望の放出器要素動作温度に基づいて電子放出器とフィラメントとの間に初期電圧を印加するようにプログラムされているプロセッサを含んでいる。プロセッサはさらに、放出器要素とフィラメントとの間の初期電圧に基づいて初期フィラメント電圧を印加し、測定されたフィラメント電流値を、初期フィラメント電圧及び電子放出器要素とフィラメントとの間の電圧に関連している初期フィラメント電流値と比較し、測定されたフィラメント電流と初期フィラメント電流との比較に基づいて、初期フィラメント電圧、及び電子放出器とフィラメントとの間の初期電圧の各々を修正するようにプログラムされている。
【0047】
発明を限定された数の実施形態にのみ関連して詳細に記載したが、本発明はかかる開示された実施形態に限定されないことが容易に理解されよう。寧ろ、本発明は、本書では記載されていないが発明の要旨及び範囲に沿った任意の数の変形、変更、置換又は均等構成を組み入れるように改変され得る。加えて、発明の様々な実施形態について記載したが、発明の各観点は所載の実施形態の幾つかのみを含み得ることを理解されたい。従って、本発明は、以上の記載によって制限されるのではなく、特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。
【符号の説明】
【0048】
10 ピアス型電子銃装置
12 陰極構造
14 電子ビーム
16 ターゲット陽極
18 加速用陽極アセンブリ
20 電子放出器
22 フィラメント
23 集束用電極
24 抽出板
26 電源
28、29 電気経路/接続
30 第一のプローブ
32 第二のプローブ
33、35、37 電圧源
34 制御システム
36 Ve−eとIe−tとの間の関係を示す曲線
38 線形部分
40 飽和部分
42 制御ゾーン
44 Ve−fとIfilとの間の関係を示す曲線
45 線形部分
46 飽和部分
47 制御ゾーン
48、49 電力曲線
50 時刻t
51 所望の動作温度
52 電子銃の動作を制御する手法
54 第一の制御ループ
56 第二の制御ループ
140 X線発生管
142 陰極アセンブリ
144 陽極アセンブリ
146 筐体
154 回転式陽極円板
156 陽極遮蔽
158 ロータ
160 X線ビーム
162 電子電流
210 イメージング・システム
212 ガントリ
214 放射線源
216 X線ビーム
218 検出器アセンブリ又はコリメータ
220 検出器
222 患者
224 回転中心
226 制御機構
228 X線制御器
230 ガントリ・モータ制御器
232 データ取得システム(DAS)
234 画像再構成器
236 コンピュータ
238 大容量記憶装置
240 コンソール
242 表示器
244 テーブル・モータ制御器
246 電動式テーブル
248 ガントリ開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧が印加されると発熱するように構成されているフィラメント(22)と、
該フィラメント(22)により加熱されて電子ビーム(14)を発生する電子放出器(20)と、
前記フィラメント(22)及び前記電子放出器(20)の各々に電力を供給するように構成されており、複数の電圧供給源(33、35、37)を含む電源(26)と、
前記フィラメント(22)及び前記電子放出器(20)の各々への電力の供給を制御する制御システム(34)と
を備えた装置(10)であって、前記制御システム(34)は、
所望の電子放出器動作温度を示す入力を受け取って、
前記電子放出器(20)及び前記フィラメント(22)の動作温度を最低にするように、前記所望の放出器要素動作温度に基づいて、前記電子放出器(20)と前記フィラメント(22)との間に望ましい電圧を印加し、前記フィラメント(22)に望ましい電圧を印加する
ように構成されている、装置(10)。
【請求項2】
前記電子放出器(20)に隣接して配置されて該電子放出器(20)からの前記電子ビーム(14)を抽出する抽出電極(24)であって、前記電源(26)に電気的に接続されて該電源(26)から電力を受ける抽出電極(24)と、
前記電子ビーム(14)の経路に配置されており、前記電子ビーム(14)が衝突すると高周波数電磁エネルギのビームを放出するように構成されているターゲット陽極(16)と
をさらに含んでおり、
前記制御システム(34)は、
所望の電子ビーム電流を示す入力を受け取って、
前記所望の電流を有する電子ビーム(14)を発生するように、前記所望の電子ビーム電流に基づいて、前記電子放出器(20)と前記抽出電極(24)との間に望ましい電圧を印加する
ように構成されている、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記電源(26)と前記電子放出器(20)との間の電気経路に沿った点において第一の電流を測定する第一の電流センサ(30)
をさらに含んでおり、
前記制御システム(34)は、
前記第一の電流を前記所望の電子ビーム電流と比較して、
前記第一の電流が前記所望の電子ビーム電流と予め決められた量だけ異なる場合には、前記第一の電流と前記所望の電子ビーム電流との間の前記差に基づいて、前記電子放出器(20)と前記抽出電極(24)との間に修正後の電圧を印加する
ように構成されている、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記制御システム(34)は、
前記所望の電子ビーム電流に基づいて前記電子放出器(20)と前記抽出電極(24)との間に印加されるべき前記望ましい電圧を決定するためにルックアップ・テーブルにアクセスして、
前記第一の電流が前記所望の電子ビーム電流と前記予め決められた量だけ異なる場合には前記ルックアップ・テーブルを修正する
ように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御システム(34)は、
所望の電子ビーム「入」時間を示す入力を受け取って、
前記所望の電流を有する電子ビーム(14)を前記所望の「入」時間にわたり発生するように、前記所望の電子ビーム「入」時間にわたり前記電子放出器(20)と前記抽出電極(24)との間に前記望ましい電圧を印加する
ように構成されている、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記制御システム(34)は、
前記電子放出器(20)に電力を印加し、前記電子放出器(20)と前記フィラメント(22)との間に初期電圧を印加し、前記電子放出器(20)に印加されるべき前記電力及び前記電子放出器(20)と前記フィラメント(22)との間に印加されるべき前記初期電圧は、前記所望の電子放出器動作温度に基づいており、
前記放出器要素(20)と前記フィラメント(22)との間の前記初期電圧及び決定されたフィラメント動作温度に基づいて初期フィラメント電圧を印加する
ように構成されている、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項7】
前記制御システム(34)は、
所定の期間にわたり前記電子放出器(20)に第一のレベルの前記電力を印加し、
前記所定の期間が経過した後に前記電子放出器(20)に第二のレベルの前記電力を印加する
ように構成されており、
前記所定の期間は、前記放出器要素(20)を前記所望の電子放出器動作温度にするのに必要とされる時間量に対応している、請求項6に記載の装置(10)。
【請求項8】
前記電源(26)と前記フィラメント(22)との間の電気経路に沿った点において第二の電流を測定する第二の電流センサ(32)をさらに含んでおり、
前記制御システム(34)は、
前記第二の電流を初期フィラメント電流と比較し、
前記第二の電流と前記フィラメント電流との前記比較に基づいて修正後のフィラメント電圧を印加し、
前記第二の電流と前記フィラメント電流との前記比較に基づいて前記電子放出器(20)と前記フィラメント(22)との間に修正後の電圧を印加する
ように構成されている、請求項6に記載の装置(10)。
【請求項9】
前記制御システム(34)は、前記電子放出器(20)と前記フィラメント(22)との間の前記初期電圧及び前記初期フィラメント電圧の各々を決定するためにルックアップ・テーブルにアクセスするように構成されている、請求項6に記載の装置(10)。
【請求項10】
前記制御システム(34)は、前記電子放出器(20)を電荷制限モードで動作させ、前記フィラメント(22)を温度制限モードで動作させるように構成されている、請求項1に記載の装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(A)】
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【図4(B)】
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【図4(C)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−216481(P2011−216481A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66913(P2011−66913)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】