説明

ピペリジン化合物およびその製法

本発明は、一般式〔I〕:


式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、Rは置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有しているチオール基、置換基を有しているスルホニル基等、または式:


で示される基であり、
11は置換基を有しているカルボニル基または置換基を有しているスルホニル基を表し、R12は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Rは水素原子等を表し、Zは酸素原子または−N(R)−で示される基を表し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基等を表し、R4aは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4bは置換基を有していてもよいアルキル基を表す、
で示される、優れたタキキニン受容体拮抗活性を有する新規ピペリジン化合物またはその薬理的に許容しうる塩を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたタキキニン受容体拮抗活性を有するピペリジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
タキキニンとは、一群の神経ペプチドの総称であり、哺乳類ではサブスタンスP(以下、「SP」と称する)、ニューロキニンA、及びニューロキニンBが知られており、これらのペプチドは生体内に存在するそれぞれの受容体(ニューロキニン1、ニューロキニン2、及びニューロキニン3)に結合することによって、様々な生物活性を発揮することが知られている。その中で、SPは神経ペプチドの中でももっとも歴史が長く詳細に研究されているものの1つであり、1931年にウマ腸管抽出物中に存在が確認され、1971年に構造決定されたアミノ酸11個からなるペプチドである。
【0003】
SPは中枢および末梢の神経系に広く分布しており、一次知覚ニューロンの伝達物質としての機能の他、血管拡張作用、血管透過性亢進作用、平滑筋収縮作用、神経細胞興奮作用、唾液分泌作用、利尿亢進作用、免疫作用などの生理活性を有する。特に、痛みインパルスにより脊髄後角の終末から遊離されたSPが2次ニューロンに痛み情報を伝えること、及び末梢終末より遊離されたSPがその受容体に炎症反応を惹起することが知られている。このようなことから、SPは種々の病態(例えば、痛み、炎症、アレルギー、頻尿、尿失禁、気道疾患、精神病、うつ病、不安、嘔吐など)に関与していると考えられており、またSPはアルツハイマー型痴呆にも関与していると考えられている〔総説:フィジオロジカル・レビューズ(Physiological Reviews)、73巻、229−308頁(1993年)(非特許文献1)、ジャーナル・オブ・オートノミック・ファーマコロジー(Journal of Autonomic Pharmacology)、13巻、23−93頁(1993年)(非特許文献2)〕。
【非特許文献1】フィジオロジカル・レビューズ(Physiological Reviews)、73巻、229−308頁(1993年)。
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・オートノミック・ファーマコロジー(Journal of Autonomic Pharmacology)、13巻、23−93頁(1993年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、前記種々病態(特に嘔吐、うつ病または排尿異常など)の治療薬として、優れたタキキニン受容体拮抗作用(特にSP受容体拮抗作用)を有し、かつ安全性、持続性(代謝、体内動態、及び吸収性)などの点から十分に満足できる化合物は未だ見出されていない。そこで、優れたタキキニン受容体拮抗作用を有し、該病態の治療薬として臨床上の効果が十分に満足できる化合物の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一般式〔I〕:

式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有しているチオール基、置換基を有しているカルボニル基、置換基を有しているスルフィニル基、置換基を有しているスルホニル基、または式:

で示される基であり、
11は置換基を有しているカルボニル基または置換基を有しているスルホニル基を表し、R12は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表し、Zは酸素原子または−N(R)−で示される基を表し、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4aは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4bは置換基を有していてもよいアルキル基を表す、
で示されるピペリジン化合物またはその薬理的に許容しうる塩に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、優れたタキキニン受容体拮抗作用を有し、かつ安全性、特に持続性(代謝、体内動態、及び吸収性)などの点から臨床上十分に満足できる化合物を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、ベンゼン環の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、保護されていてもよい水酸基またはアルコキシ基が挙げられる。環Aはこれら置換基を同一または異なって1〜3個有していてもよい。
【0008】
本発明において、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、ベンゼン環の置換基としては、トリハロゲノアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する複素環式基、アルキル基、保護されていてもよい水酸基またはアルコキシ基が挙げられる。環Bはこれら置換基を同一または異なって1〜3個有していてもよい。
【0009】
本発明の化合物における環Aおよび環Bの好ましい例としては、例えば、環Aが、式:

で示されるベンゼン環であり、環Bが、式:

で示されるベンゼン環であり、A、AおよびAは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、保護されていてもよい水酸基またはアルコキシ基であり、B、BおよびBは、同一または異なって、水素原子、トリハロゲノアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する複素環式基、アルキル基、保護されていてもよい水酸基またはアルコキシ基である化合物が挙げられる。トリハロゲノアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基またはトリクロロメチル基等が挙げられる。ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する複素環式基としては、例えば、テトラゾリル基が挙げられる。
【0010】
本発明において、保護されていてもよい水酸基の保護基としては、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいシリル基、アシル基等の慣用の保護基が挙げられる。このうち好ましいものとしては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のアリールアルキル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等の置換基を有しているシリル基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、マロニル基、アクリロイル基、ベンゾイル基等のアシル基が挙げられる。
【0011】
本発明において、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有しているチオール基、置換基を有しているカルボニル基、置換基を有しているスルフィニル基、置換基を有しているスルホニル基、または式:

で示される基であり、R11は置換基を有しているカルボニル基または置換基を有しているスルホニル基、R12は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。
【0012】
このうち、Rが置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有しているチオール基、置換基を有しているスルホニル基、または式:

で示される基であり、R11が置換基を有しているカルボニル基、R12が水素原子またはアルキル基であるものが好ましい。
【0013】
本発明において、Rの置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、アルコキシカルボニル基、モルホリノアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、水酸基、ヒドロキシアルキルアミノカルボニルオキシ基またはアルキルピペラジノカルボニル基が挙げられる。
【0014】
本発明において、Rの置換基を有していてもよい水酸基の置換基としては、
(1)置換基を有しているカルボニル基、
(2)置換基を有しているスルフィニル基、
(3)置換基を有しているスルホニル基または
(4)置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。
【0015】
上記(1)の置換基を有しているカルボニル基の置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有しているアミノ基、ヘテロ原子として窒素原子および酸素原子から選ばれる原子を1乃至2個含有する単環複素環式基(当該単環複素環式基は置換基を有していてもよい。)が挙げられる。当該置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、水酸基が挙げられる。当該置換基を有していてもよいアルコキシ基の置換基としては、アルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子が挙げられる。当該置換基を有しているアミノ基の置換基としては、カルボキシル基、モルホリノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルカノイルアミノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、アルカノイルオキシ基および水酸基から選ばれる基で置換されていてもよいアルキル基;ヒドロキシアルカノイル基もしくはアルコキシアルカノイル基で置換されているピペリジニル基;またはジアルキルアミノスルホニル基が挙げられる。当該単環複素環式基としては、モルホリノ基、イミダゾリル基、チオモルホリノ基、ピペリジノ基、フリル基、テトラヒドロチアゾリニル基またはピロリジニル基が挙げられる。当該単環複素環式基の置換基としては、水酸基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシアルキルアミノカルボニル基、アルコキシアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオアルキルアミノカルボニル基、アルキルスルフィニルアルキルアミノカルボニル基、アルキルスルホニルアルキルアミノカルボニルアルキル基、オキソ基または水酸基が挙げられる。
【0016】
上記(2)の置換基を有しているスルフィニル基の置換基としては、アルキル基またはチエニル基が挙げられる。
上記(3)の置換基を有しているスルホニル基の置換基としては、アルキル基またはチエニル基が挙げられる。
上記(4)の置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、置換基を有していてもよい水酸基、ジアルキルアミノ基またはヘテロ原子として硫黄原子、窒素原子および酸素原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する単環複素環式基(当該単環複素環式基は置換基を有していてもよい。)が挙げられる。当該置換基を有していてもよい水酸基の置換基としては、アルキル基、アルキルスルホニル基またはテトラヒドロピラニル基が挙げられる。当該単環複素環式基としては、トリアゾリル基またはテトラゾリル基が挙げられる。当該単環複素環式基の置換基としては、アルキル基が挙げられる。
【0017】
本発明において、Rの置換基を有しているチオール基の置換基としては、置換基を有しているピリミジニル基、置換基を有しているカルボニル基または置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。置換基を有しているピリミジニル基の置換基としては、水酸基が挙げられる。置換基を有しているカルボニル基の置換基としては、アルキル基が挙げられる。置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、ヒドロキシアルカノイルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基、ヒドロキシアルキルアミノカルボニルアミノ基、アルカノイルオキシ基または水酸基が挙げられる。
【0018】
本発明において、Rの置換基を有しているカルボニル基の置換基としては、水酸基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基またはヘテロ原子として硫黄原子、窒素原子および酸素原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する単環複素環式基(当該単環複素環式基は置換基を有していてもよい。)が挙げられる。置換基を有していてもよいアミノ基の置換基としては、水酸基で置換されているピリジル基、ピリミジニル基、アルキルピリド基、または水酸基もしくはシアノ基で置換されていてもよいアルキル基が挙げられる。当該アミノ基の置換基は、アミノ基に1〜2個置換していてもよい。当該単環複素環式基としては、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基またはピロリジノ基が挙げられる。当該単環複素環式基の置換基としては、アルキル基、水酸基、オキソ基、ピリミジニル基、アルキルスルホニル基、アルカノイル基またはヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0019】
本発明において、Rの置換基を有しているスルフィニル基の置換基としては、水酸基または置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、水酸基が挙げられる。
本発明において、Rの置換基を有しているスルホニル基の置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、水酸基またはアルカノイルオキシ基が挙げられる。
【0020】
本発明において、Rが式:

で示される基である場合、R11
(1)置換基を有しているカルボニル基の置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有しているアミノ基またはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個含有する複素環式基であって、当該複素環式基は置換基を有していてもよく、さらに当該複素環式基に含まれる窒素原子もしくは硫黄原子は酸化されていてもよい基が挙げられる。当該置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、アルカノイル基、ベンジルオキシ基、アルキルアミノカルボニル基、水酸基でアルキル基部分が置換されていてもよいジアルキルアミノカルボニル基、アミノカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルキル基で置換されているアミノ基、アルカノイル基およびアルキル基で置換されているアミノ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、テトラゾリル基、フリル基、水酸基、アルキルチオ基、2−アミノチアゾリル基、2−チオール−4−アルキルチアゾリル基、シクロアルキル基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、チエニル基または5−メチル−2,4(1H,3H)ピリミジンジオン基が挙げられる。当該置換基を有していてもよいアルコキシ基の置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子または水酸基が挙げられる。当該置換基を有していてもよいアリル基の置換基としては、ニトロ基またはアミノ基が挙げられ、アリル基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントニル基またはアントラセニル基等が挙げられる。当該置換基を有しているアミノ基の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基および水酸基から選ばれる基で置換されていてもよいアルキル基が挙げられ、モノ置換またはジ置換されている。当該複素環式基としては、飽和もしくは不飽和単環または二環複素芳香環式基が挙げられ、例えば、チエニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、ピラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、プテリジニル基、ピリドピリミジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、テトラヒドロキノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、テトラヒドロキノキサリニル基、ジヒドロフタラジニル基などが挙げられる。これら複素環式基の中でも、チエニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、ピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基などが好適に用いられる。当該複素環式基の置換基としては、アルコキシカルボニル基、アルキル基、ベンジルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイル基、水酸基、オキソ基またはホルミル基が挙げられる。
【0021】
(2)置換基を有しているスルホニル基の置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、ジアルキルアミノ基、またはアルケニル基が挙げられる。当該置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子または水酸基が挙げられる。
【0022】
本発明において、Rとしては、水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す。
本発明において、Rの置換基を有していてもよい水酸基の置換基としては、アルキル基が挙げられる。
本発明において、Rの置換基を有していてもよいアミノ基の置換基としては、アルキル基が挙げられる。
本発明において、Rの置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、アルコキシ基が挙げられる。
本発明において、Rの置換基を有しているカルボニル基の置換基としては、水酸基、アルコキシ基またはアルキルアミノ基が挙げられる。
【0023】
本発明において、Zとしては、酸素原子または−N(R)−で示される基が挙げられる。
【0024】
本発明において、Rとしては、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。Rの置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、水酸基、アルカノイル基、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアルキルアミノ基が挙げられる。
【0025】
本発明において、R4aとしては、置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。
本発明において、R4bとしては、置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられる。
【0026】
本発明の化合物としては、Rが置換基を有していてもよいアルキル基であるものが好ましい。当該アルキル基の置換基としては、ジアルキルアミノカルボニル基、モルホリノカルボニル基、水酸基、アルコキシカルボニル基またはヒドロキシアルキルアミノカルボニルオキシ基が好ましい。
【0027】
本発明の化合物としては、Rが置換基を有していてもよい水酸基であるものが好ましい。このうち、Rが置換基を有していてもよいアルコキシ基であるものが好ましい。このうち他に、置換基を有しているカルボニルオキシ基であるものが好ましい。当該アルコキシ基の置換基としては、水酸基、アルキルスルホニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、トリアゾリル基、アルキル基で置換されていてもよいテトラゾリル基またはアルコキシ基が好ましく、さらに、水酸基またはテトラヒドロピラニルオキシ基が好ましい。当該カルボニルオキシ基の置換基としては、モルホリノ基;イミダゾリル基;水酸基、モルホリノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、アルカノイルオキシ基もしくはカルボキシル基でアルキル基部分が置換されていてもよいアルキルアミノ基;水酸基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシアルキルアミノカルボニル基、アルコキシアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオアルキルアミノカルボニル基、アルキルスルフィニルアルキルアミノカルボニル基、アルキルスルホニルアルキルアミノカルボニル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されているピペリジノ基;ヒドロキシアルカノイル基もしくはアルコキシアルカノイル基で置換されているピペリジニルアミノ基;硫黄原子が酸化されていてもよいチオモルホリノ基;オキソピロリジニル基;オキソテトラヒドロチアゾリニル基;またはジアルキルアミノスルホニルアミノ基が好ましく、さらに、水酸基でアルキル基部分が置換されているアルキルアミノ基が好ましい。
【0028】
本発明の化合物としては、Rが置換基を有しているチオール基であるものが好ましい。当該チオール基の置換基としては、アルカノイル基;または水酸基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、ヒドロキシアルカノイルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基、ヒドロキシアルキルアミノカルボニルアミノ基もしくはアルカノイルオキシ基で置換されていてもよいアルキル基が好ましく、さらに水酸基で置換されているアルキル基が好ましい。
【0029】
本発明の化合物としては、Rが置換基を有しているカルボニル基であるものが好ましい。当該カルボニル基の置換基としては、水酸基;アルコキシ基;ピリミジルアミノ基;アルキルピリド基およびアルキル基で置換されているアミノ基;水酸基もしくはシアノ基でアルキル基部分が置換されていてもよいアルキルアミノ基;ジ(ヒドロキシアルキル)アミノ基;水酸基でピリジル基部分が置換されていてもよいピリジルアミノ基;水酸基もしくはオキソ基で置換されているピペリジノ基;オキソ基、アルキル基、アルキルスルホニル基もしくはアルカノイル基で置換されているピペラジノ基;モルホリノ基;チオモルホリノ基;またはヒドロキシアルキル基もしくは水酸基で置換されているピロリジノ基が好ましく、さらに、ピリミジニルアミノ基もしくはヒドロキシピペラジノ基が好ましい。
【0030】
本発明の化合物としては、Rが置換基を有しているスルフィニル基であるものが好ましい。当該スルフィニル基の置換基としては、水酸基で置換されていてもよいアルキル基または水酸基が好ましく、さらに、水酸基で置換されていてもよいアルキル基が好ましい。
【0031】
本発明の化合物としては、Rが置換基を有しているスルホニル基であるものが好ましい。当該スルホニル基の置換基としては、水酸基またはアルカノイルオキシ基で置換されていてもよいアルキル基が好ましく、さらに、水酸基で置換されていてもよいアルキル基が好ましい。
【0032】
本発明の化合物としては、Rが式:

で示される基であり、
11が、置換基を有しているカルボニル基または置換基を有しているスルホニル基を表し、R12が水素原子またはアルキル基であるものが好ましい。このうち、R11が置換基を有しているカルボニル基、R12が水素原子またはアルキル基であるものが好ましく、さらにR11が置換基を有していてもよいアルカノイル基、置換基を有していてもよいアミノカルボニル基、モルホリノカルボニル基、アルカノイル基で置換されていてもよいピペリジニルカルボニル基がそれぞれ好ましい。このうち他に、R11が置換基を有しているスルホニル基、R12が水素原子またはアルキル基であるものが好ましい。当該アルカノイル基の置換基としては、アルカノイル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アミノカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルキル基で置換されているアミノ基、アルカノイル基およびアルキル基で置換されているアミノ基、フェニル基で置換されていてもよいアルコキシ基、フリル基、テトラゾリル基、水酸基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、2−アミノチアゾリル基、2−オキソピロリジノ基、2−チオール−4−アルキルチアゾリジニル基またはシクロアルキル基が好ましく、さらに、水酸基が好ましい。当該アミノカルボニル基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基またはアルコキシ基で置換されていてもよいアルキル基が好ましく、さらに、アルキル基が好ましい。当該スルホニル基の置換基としては、水酸基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基またはジアルキルアミノ基が好ましく、さらに、アルキル基が好ましい。
【0033】
本発明の化合物〔I〕としては、環Aが、式:

で示されるベンゼン環であり、環Bが、式:

で示されるベンゼン環であり、Aが水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、Aが水素原子またはハロゲン原子であり、Aが水素原子であり、Bが水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基またはトリハロゲノアルキル基であり、Bが水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基またはトリハロゲノアルキル基であり、Bが水素原子であり、Rが水酸基;ジアルキルアミノカルボニル基、モルホリノカルボニル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、モルホリノアミノカルボニル基、ヒドロキシアルキルアミノカルボニルオキシ基もしくはアルキルピペラジノカルボニル基で置換されているアルキル基;ジヒドロキシピリミジニルチオ基;アルカノイルチオ基;水酸基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、ヒドロキシアルカノイルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基、ヒドロキシアルキルアミノカルボニルアミノ基もしくはアルカノイルオキシ基で置換されていてもよいアルキルチオ基;ジアルキルチオニウム基;水酸基、アルキルスルホニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、トリアゾリル基、アルキル基で置換されていてもよいテトラゾリル基もしくはアルコキシ基で置換されていてもよいアルコキシ基;モルホリノカルボニルオキシ基;イミダゾリルカルボニルオキシ基;水酸基、モルホリノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルカノイルアミノ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、アルカノイルオキシ基もしくはカルボキシル基でアルキル基部分が置換されていてもよいアルキルアミノカルボニルオキシ基;水酸基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシアルキルアミノカルボニル基、アルコキシアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオアルキルアミノカルボニル基、アルキルスルフィニルアルキルアミノカルボニル基、アルキルスルホニルアルキルアミノカルボニル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されているピペリジノカルボニルオキシ基;水酸基で置換されているジアルキルアミノカルボニルオキシ基;ヒドロキシアルカノイル基もしくはアルコキシアルカノイル基で置換されているピペリジニルアミノカルボニルオキシ基;硫黄原子がオキソ基で置換されていてもよいチオモルホリノカルボニルオキシ基;オキソピロリジニルカルボニルオキシ基;オキソテトラヒドロチアゾリニルカルボニルオキシ基;ジアルキルアミノスルホニルアミノカルボニルオキシ基;カルボキシル基;アルコキシカルボニル基;ピリミジニルアミノカルボニル基;水酸基またはシアノ基でアルキル基部分が置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基;ジ(ヒドロキシアルキル)アミノカルボニル基;水酸基でピリジル基部分が置換されてるピリジルアミノカルボニル基;アルキルピリド基およびアルキル基で置換されているアミノカルボニル基;水酸基もしくはオキソ基で置換されているピペリジノカルボニル基;オキソ基、アルキル基、ピリミジニル基、アルキルスルホニル基もしくはアルカノイル基で置換されているピペラジノカルボニル基;モルホリノカルボニル基;硫黄原子が酸化されていてもよいチオモルホリノカルボニル基;ヒドロキシアルキル基または水酸基で置換されているピロリジノカルボニル基;水酸基で置換されていてもよいアルキルスルフィニル基;ヒドロキシスルフィニル基;水酸基もしくはアルカノイルオキシ基で置換されていてもよいアルキルスルホニル基;または、式:

で示される基であり、R11がアルカノイル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アミノカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルキル基で置換されているアミノ基、アルカノイル基およびアルキル基で置換されているアミノ基、ハロゲン原子、フェニル基で置換されていてもよいアルコキシ基、テトラゾリル基、水酸基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、2−アミノチアゾリル基、2−オキソピロリジノ基、2,2−ジアルキル−1,3−ジオキシラニル基、2−チオール−4−アルキルチアゾリニル基、シクロアルキル基および5−アルキル−2,4(1H,3H)ピリミジンジオン基から選ばれる基で置換されていてもよいアルカノイル基;アミノ基もしくはニトロ基で置換されていてもよいフェニルカルボニル基;アルキル基または水酸基で置換されていてもよいピリジルカルボニル基;ホルミル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいフリルカルボニル基;チエニルカルボニル基;アルカノイル基で置換されているピラジニルカルボニル基;モルホリノカルボニル基;ベンジルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカノイル基、水酸基もしくはオキソ基で置換されていてもよいピロリジニルカルボニル基;テトラヒドロフリルカルボニル基;アルコキシカルボニル基もしくはアルカノイル基で置換されているピペリジニルカルボニル基;硫黄原子がオキソ基で置換されていてもよいチオモルホリノカルボニル基;3−アルキル−2,4(1H,3H)ピリミジンジオンカルボニル基;ハロゲン原子、水酸基もしくはアルコキシ基でアルキル基部分が置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基;水酸基でアルキル基部分が置換されていてもよいジアルキルアミノカルボニル基;アルコキシ基、水酸基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシカルボニル基;水酸基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルスルホニル基;アルケニルスルホニル基;またはジアルキルアミノスルホニル基であり、R12が水素原子またはアルキル基であり、Rが水素原子であり、Zが酸素原子または−N(R)−で示される基であり、Rが水酸基で置換されていてもよいアルキル基であり、Rが水素原子または水酸基で置換されていてもよいアルキル基である化合物が挙げられる。このうち、環Aが、式:

で示されるベンゼン環であり、環Bが、式:

で示されるベンゼン環であり、Aがアルキル基であり、Aがハロゲン原子であり、Aが水素原子であり、Bがハロゲン原子またはトリハロゲノメチル基であり、Bがハロゲン原子またはトリハロゲノメチル基であり、Bが水素原子であり、Rが水酸基;水酸基で置換されているアルキルチオ基;水酸基でアルキル基部分が置換されているアルキルアミノカルボニルオキシ基;水酸基で置換されていてもよいアルキルスルホニル基;または、式:

で示される基であり、R11が水酸基で置換されているアルカノイル基であり、R12が水素原子またはアルキル基である化合物が好ましい。
【0034】
本発明の化合物〔I〕は、遊離の形でも、また薬理的に許容しうる塩の形でも医薬用途に使用することができる。
本発明の化合物〔I〕の薬理的に許容しうる塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩の如き無機酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トシル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩の如き有機酸塩等が挙げられる。
また、本発明の化合物〔I〕またはその薬理的に許容しうる塩とは、その分子内塩やそれらの溶媒和物あるいは水和物等をいずれも含む。
【0035】
本発明の化合物〔I〕は、不斉原子に基づく光学異性体として存在しうるが、本発明はこれらの光学異性体およびその混合物のいずれも含むものである。本発明においては、これら光学異性体の中でも、ピペリジン環の2位(環Aの接続位)がR配置の化合物が好ましく、特に、ピペリジン環の2位(環Aの接続位)がR配置、4位(Rの接続位)がS配置の化合物が好ましい。
【0036】
本発明の化合物〔I〕またはその薬理的に許容しうる塩は、優れたタキキニン受容体拮抗作用、特にSP受容体拮抗作用を有し、哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、スナネズミ、フェレット、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)に対する、炎症もしくはアレルギー性疾患(例えば、アトピー、皮膚炎、ヘルペス、乾癬、喘息、気管支炎、喀痰、鼻炎、リューマチ関節炎、変形性関節炎、骨粗鬆症、多発性硬化症、結膜炎、眼炎、膀胱炎など)、疼痛、偏頭痛、神経痛、掻痒、咳、さらに中枢神経系の疾患〔例えば、精神分裂症、パーキンソン病、うつ病、不安、心身症、モルヒネ依存症、痴呆(例えば、アルツハイマー病など)など〕、消化器疾患[例えば、過敏性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、ウレアーゼ陽性のラセン状グラム陰性菌(例えば、ヘリコバクター・ピロリなど)に起因する異常(例えば、胃炎、胃潰瘍など)など]、悪心、嘔吐、排尿異常(例えば、頻尿、尿失禁など)、循環器疾患(例えば、狭心症、高血圧、心不全、血栓症など)および免疫異常などの安全な予防、治療薬として有用である。とりわけ、本発明の有効成分である化合物〔I〕またはその薬理的に許容しうる塩は、脳内移行性が高く、且つリン脂質症誘導能がないため毒性発現に繋がる可能性が低く(安全性が高く)、副作用を殆ど示さないため、嘔吐、うつ病などの中枢神経系疾患、頻尿などの排尿異常の予防、治療薬として有用である。
【0037】
本発明の化合物またはその薬理的に許容しうる塩は、例えば、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology)254巻、221−227頁(1994年)記載の方法に準じて、ニューロキニン−1受容体結合作用を測定することができ、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology)265巻、179−183頁(1994年)記載の方法に準じて、脳内移行性を測定することができ、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)119巻、931−936頁(1996年)記載の方法に準じて、嘔吐に対する作用を測定することができ、また、ジャーナル・オブ・ウロロジー(Journal of Urology)、155巻、1号、355−360頁(1996年)記載の方法に準じて、頻尿抑制作用を測定することができる。
【0038】
本発明の化合物〔I〕およびその薬理的に許容しうる塩は、経口的にも非経口的にも投与することができ、経口もしくは非経口投与に通常用いられる医薬担体を用いて、適当な製剤とすることができる。かかる医薬担体としては、例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビット、トラガント、ポリビニルピロリドン等)、賦形剤(乳糖、砂糖、コーンスターチ、リン酸カリウム、ソルビット、グリシン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(バレイショデンプン等)および湿潤剤(ラウリル無水硫酸ナトリウム等)等をあげることができる。また、これら医薬製剤は、経口投与する場合には、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤の如き固形製剤であってもよく、溶液、懸濁液、乳液の如き液体製剤であってもよい。一方、非経口投与する場合には、例えば、注射用蒸留水、生理的食塩水、ブドウ糖水溶液等を用いて注射剤や点滴剤として、あるいは坐剤等とすることができる。
【0039】
本発明の化合物〔I〕またはその薬理的に許容しうる塩の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態あるいは疾患の程度によって異なるものの、通常、1日あたりの投与量は、経口投与の場合には、0.1〜20mg/kg、とりわけ0.1〜10mg/kg、非経口投与の場合には、0.01〜10mg/kg、とりわけ0.01〜1mg/kgであるのが好ましい。
【0040】
〔A法〕
本発明の化合物のうち、一般式〔I’〕:

式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有しているチオール基、置換基を有しているカルボニル基、置換基を有しているスルフィニル基、置換基を有しているスルホニル基、または式:

で示される基であり、R11は置換基を有しているカルボニル基または置換基を有しているスルホニル基を表し、R12は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表し、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4aは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4bは置換基を有していてもよいアルキル基を表す、
で示される化合物は、例えば、一般式〔II〕:

式中、環A、RおよびRは前記と同一意味を有する、
で示される化合物と一般式〔III〕:

式中、環B、R、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物とをウレア化剤の存在下、反応させることにより製することができる。
【0041】
〔B法〕
本発明の化合物のうち、一般式〔I−b〕:

式中、Zは酸素原子または−N(R)−で示される基を表し、環A、環B、
11、R12、R、R、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物は、一般式〔I−c〕:

式中、環A、環B、R12、R、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物と一般式〔VI〕:
11−X 〔VI〕
式中、R11は前記と同一意味を有し、Xは脱離基を表す、
で示される化合物とを反応させることにより製することができる。
【0042】
〔C法〕
本発明の化合物のうち、一般式〔I−d〕:

式中、環A、環B、R、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物は、一般式〔VII〕:

式中、環A、環B、R、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有し、Rはハロゲン原子を表す、
で示される化合物と一般式〔VI−a〕:
CHCOS−X 〔VI−a〕
式中、Xは水素原子または金属を表す、
で示される化合物とを反応させることにより製することができる。
【0043】
〔D法〕
本発明の目的化合物〔I〕のうち、一般式〔I−a〕:

式中、環A、環B、R、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物は、例えば、一般式〔IV〕:

式中、環A、環B、R、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物を還元することにより製することができる。
【0044】
〔E法〕
本発明の化合物のうち、一般式〔I−b〕:

式中、環A、環B、R11、R12、R、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物は、一般式〔IV〕:

式中、環A、環B、R、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物と一般式〔V〕:

式中、Xは水素原子、水酸基、珪素原子、リチウム原子またはマグネシウム原子を表し、R11およびR12は前記と同一意味を有する、
で示される化合物とを反応させることにより製することができる。
【0045】
〔F法〕
本発明の化合物のうち、一般式〔I−e〕:

式中、環A、環B、R、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有し、R14は置換基を有していてもよいカルボキシル基を表す、
で示される化合物は、一般式〔IV〕:

式中、環A、環B、R、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物と一般式〔VI−b〕:
CH14 〔VI−b〕
式中、Xは脱離基を表し、R14は前記と同一意味を有する、
で示される化合物とを反応させ、得られる一般式〔VIII〕:

式中、環A、環B、R14、Z、R、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物を還元することにより製することができる。
【0046】
〔G法〕
本発明の化合物のうち、一般式〔I’’〕:

式中、環A、環B、R、R、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物は、一般式〔II〕:

式中、環A、RおよびRは前記と同一意味を有する、
で示される化合物と一般式〔III’〕:

式中、環B、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物とをウレア化剤の存在下反応させることにより製することができる。
【0047】
これら〔A法〕〜〔G法〕は、以下のようにして実施することができる。
〔A法〕
化合物〔II〕と化合物〔III〕との反応は、ウレア化剤の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。ウレア化剤としては、式:

式中、WおよびWは、同一または異なって脱離基を表す、
で示されるようなものが挙げられる。WおよびWとしては、同一または異なってイミダゾリル基、ハロゲン原子またはフェノキシ基のようなものが挙げられる。具体的には、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ホスゲンのようなものが好ましく、例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール、トリホスゲンまたはホスゲン等のカルボニルジハライドを用いることができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。
【0048】
さらに、本反応は、化合物〔II〕とウレア化剤、式:

式中、WおよびWは、同一または異なって脱離基を表す、
を反応させ、一般式〔IX−a〕:

式中、環A、R、RおよびWは前記と同一意味を有する、
とした後、次いで、化合物〔IX−a〕をその反応性誘導体へ導き、化合物〔III〕と反応させるか、または、化合物〔III〕とウレア化剤、式:

式中、WおよびWは前記と同一意味を有する、
を反応させ、一般式〔IX−b〕:

式中、環B、R、R4a、R4bおよびWは前記と同一意味を有する、
とした後、次いで、化合物〔IX−b〕をその反応性誘導体へ導き、化合物〔II〕と反応させることにより、化合物〔I〕を製することもできる。
【0049】
反応性誘導体としては、例えば、化合物〔IX−a〕または化合物〔IX−b〕において、Wを、式:

で示されるような基に誘導した化合物が挙げられる。
【0050】
化合物〔II〕または化合物〔III〕とウレア化剤の反応は、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。
【0051】
化合物〔IX−a〕または化合物〔IX−b〕をその反応性誘導体へ導く反応は、ヨウ化メチルのような反応性誘導化剤を用いて、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。
【0052】
それぞれの反応性誘導体と化合物〔III〕または化合物〔II〕との反応は、塩基の存在下、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。また、塩基としては、例えば、トリエチルアミンなどを用いることができ、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。
【0053】
〔B法〕
化合物〔I−c〕と化合物〔VI〕との反応は、例えば、Xが水酸基等の場合は、縮合剤の存在下または非存在下、適当な溶媒中で実施することができる。縮合剤としては、カルボン酸とアミンからアミド結合形成反応に用いられる、1,1’−カルボニルイミダゾール、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、クロロギ酸イソブチルまたはN−メチルモルホリン等を用いることができる。本反応は例えば、−20℃〜50℃で実施することができる。また、例えば、Xがハロゲン原子等の場合は、例えば、縮合剤を用いないで、塩基の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等を用いることができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン等を適宜用いることができる。
【0054】
〔C法〕
化合物〔VII〕と化合物〔VI−a〕との反応は、例えば、適当な溶媒中で実施することができる。X5の金属としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が挙げられ、このうちアルカリ金属が好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、カリウムおよびナトリウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。本反応は例えば、−50℃〜150℃、好ましくは、10℃〜100℃で実施することができ、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル等を適宜用いることができる。
【0055】
〔D法〕
化合物〔IV〕の還元反応は、還元剤の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウムのようなものが好ましく、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ナトリウム ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムヒドリド等のアルミニウムヒドリドを用いることができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、エタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、−70℃〜還流下、好ましくは、−70℃〜20℃で実施することができる。
【0056】
〔E法〕
化合物〔IV〕と化合物〔V〕との反応は、適当な溶媒中、還元的アミノ化反応に付することにより実施することができる。本還元的アミノ化反応は、酸性条件下、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム等の還元剤またはパラジウム等の還元触媒と共に水素添加により実施することができる。化合物〔V〕における基〔X〕としては、水素原子または水酸基が好ましく、例えば、水素原子、水酸基、珪素原子、リチウム原子またはマグネシウム原子が挙げられる。溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、ジクロロメタン、酢酸、エタノール、メタノール等を適宜用いることができる。化合物〔V〕の塩としては、塩酸塩、酢酸塩等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、−10℃〜80℃、好ましくは、0℃〜30℃で実施することができる。
【0057】
〔F法〕
化合物〔IV〕と化合物〔VI−b〕との反応は、例えば、塩基の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。化合物〔VI−b〕における脱離基〔X〕としては、ジエチルホスホノ基、トリフェニルホスフィニル基等が挙げられる。塩基としては、例えば、カリウム−tert−ブトキシド、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム等を、また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、−30℃〜80℃、好ましくは、−20℃〜30℃で実施することができる。
また、化合物〔VIII〕の還元反応は、常法により、パラジウム等の還元触媒と共に水素添加することにより実施することができる。溶媒としては、メタノール、エタノール等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、0℃〜50℃で実施することができる。
【0058】
〔G法〕
化合物〔II〕と化合物〔III’〕との反応は、ウレア化剤の存在下、適当な溶媒中で実施することができる。ウレア化剤としては、式:

式中、WおよびWは前記と同一意味を有する、
で示されるようなものが挙げられる。WおよびWとしては、同一または異なってイミダゾリル基、ハロゲン原子またはフェノキシ基のようなものが挙げられる。具体的には、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ホスゲンのようなものが好ましく、例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール、トリホスゲンまたはホスゲン等のカルボニルジハライドを用いることができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。本反応は、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。
【0059】
さらに、本反応は、化合物〔II〕とウレア化剤、式:

式中、WおよびWは前記と同一意味を有する、
を反応させ、一般式〔IX−a〕:

式中、環A、R、RおよびWは前記と同一意味を有する、
とした後、次いで、化合物〔IX−a〕をその反応性誘導体へ導き、化合物〔III’〕と反応させるか、または、化合物〔III’〕とウレア化剤、式:

式中、WおよびWは前記と同一意味を有する、
を反応させ、一般式〔IX’〕:

式中、環B、R4a、R4bおよびWは前記と同一意味を有する、
とした後、次いで、化合物〔IX’〕をその反応性誘導体へ導き、化合物〔II〕と反応させることにより、化合物〔I’’〕を製することもできる。
【0060】
反応性誘導体としては、例えば、化合物〔IX−a〕または化合物〔IX’〕において、Wを、式:

で示されるような基に誘導した化合物が挙げられる。
【0061】
化合物〔II〕または化合物〔III’〕とウレア化剤の反応は、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。
【0062】
化合物〔IX−a〕または化合物〔IX’〕をその反応性誘導体へ導く反応は、ヨウ化メチルのような反応性誘導化剤を用いて、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。また、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。
【0063】
それぞれの反応性誘導体と化合物〔III’〕または化合物〔II〕との反応は、塩基の存在下、例えば、0℃〜80℃、好ましくは、0℃〜50℃で実施することができる。また、塩基としては、例えば、トリエチルアミンなどを用いることができ、溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも使用することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を適宜用いることができる。
【0064】
本発明の目的化合物〔I〕は、上記の如くして得られる化合物の基Rおよび基Rを目的とする他の置換基へ変換することによっても製造することができる。このような置換基の変換方法は、目的とする置換基の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、次の(a法)〜(q法)の如く実施することができる。
【0065】
(a法):一般式〔I〕において、基Rが置換基を有している水酸基を含有する置換基(例えば、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有しているカルボニルオキシ基またはアルキルスルホニルオキシ基等)である目的化合物〔I〕は、基Rに水酸基を含有した対応化合物を常法により、アルキル化、アシル化またはスルホニル化することにより、製することができる。例えば、アルキル化は−10℃〜80℃、アシル化は5℃〜80℃、スルホニル化は5℃〜80℃で実施することができる。
【0066】
(b法):一般式〔I〕において、基Rが置換基を有しているアミノ基を含有する置換基である目的化合物〔I〕は、基Rにアミノ基を含有した対応化合物を常法により、アミノ基の置換基(例えば、tert−ブトキシカルボニル基の如きアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等の如きアリールアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等の如きアルカノイル基、メチル基、エチル基、プロピル基等の如きアルキル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等の如きアルキルスルホニル基、ビニルスルホニル基等の如きアルケニルスルホニル基、ピリジル基等の如く複素環式基等)で置換することにより製するか、またはN,N’−サクシンイミジルカルボネート等の如きカルバメート合成用試薬を用い、例えばアルコキシアルキルアルコール等と反応することにより製することができる。置換は、置換基の種類に応じて、アルキル化、アシル化、スルホニル化、アリル化等の常法で適宜実施することができる。さらにアミノ基の水素原子を置換基により置換することにより、ジ置換体とすることもできる。本反応は、−20℃〜50℃で実施することができる。
【0067】
また、基Rが置換基を有しているアミノ基を含有する置換基である目的化合物〔I〕がウレア結合を有している化合物の場合、対応するアミン化合物とウレア化剤を用いて、〔A法〕と同様かまたは、特開平10−195037号記載の方法に準じて、反応することにより製することができる。
【0068】
さらに一般式〔I〕において、基Rが置換基を有しているアミノ基を含有する置換基である目的化合物〔I〕は、基Rに炭素−炭素二重結合を含有した対応化合物にアミノ基を含有している化合物を常法により付加することにより、製することができる。本反応は、例えば、溶媒を加熱還流下あるいは無触媒下にて行うことができる。
【0069】
(c法):一般式〔I〕において、基Rがアミノ基を含有している目的化合物〔I〕は、基Rに保護されているアミノ基である対応化合物〔I〕から当該保護基を除去(脱保護)することにより製することができる。当該保護基の除去は常法(例えば、酸処理、塩基処理、接触還元等)によって実施することができる。本反応のうち、酸処理による反応は、例えば、5℃〜120℃、塩基処理による反応は5℃〜40℃、接触還元による反応は、10℃〜40℃で実施することができる。
【0070】
また、一般式〔I〕において、基Rがアミノ基を含有している目的化合物〔I〕は、基Rがニトロ基を含有している対応化合物〔I〕を還元することにより製することができる。還元は、酸の存在下、二塩化スズ、亜鉛等を反応させることにより、実施できる。本反応は、例えば、溶媒を加熱還流下にて行うことができる。
【0071】
さらに、一般式〔I〕において、基Rがアミノ基を含有している目的化合物〔I〕は、基Rがカルボキシル基を含有している対応化合物〔I〕をクルチウス転移反応等に付すことにより製することができる。クルチウス転移反応は、例えばアドバンスド オーガニック ケミストリー(Advanced Organic Chemistry)第4版、1054頁記載の方法により実施できる。すなわち、カルボキシル基をチオニルクロライド等により、酸クロライドにし、次いでアジ化ナトリウム等によりアジド化した後、加水分解することにより実施することができる。
【0072】
(d法):一般式〔I〕において、基Rが水酸基を含有している目的化合物〔I〕は、基Rが保護されている水酸基を含有している対応化合物〔I〕から当該保護基を常法により除去することにより製することができる。当該保護基の除去は、保護基の種類に応じて、酸処理、塩基処理、接触還元等によって実施することができる。本反応は、例えば、0℃〜80℃、とりわけ5℃〜50℃で好適に進行する。
【0073】
また、一般式〔I〕において、基Rが水酸基を含有している目的化合物〔I〕は、基Rがホルミル基を含有している対応化合物〔I〕を還元することにより製することができる。還元は、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤の存在下、反応させることにより、実施できる。本反応は、例えば、−80℃〜80℃、とりわけ−70℃〜20℃で好適に進行する。
【0074】
さらに、一般式〔I〕において、基Rが水酸基を含有している目的化合物〔I〕は、基Rがエステルやカルボキシル基を含有している対応化合物〔I〕を還元することにより製することができる。還元は、水素化リチウムアルミニウム等の還元剤の存在下、反応させることにより、実施できる。本反応は、例えば、−50℃〜200℃、とりわけ、−20℃〜60℃で好適に進行する。
【0075】
(e法):一般式〔I〕において、基Rが水酸基であって、そのRの結合部に不斉中心を持っている場合には、例えば、光延らの方法(シンセシス(Synthesis)、第1〜28頁、1981年)に準じて、その立体配置を逆の配置に変換することができる。具体的には、トリフェニルホスフィン、安息香酸およびジエチルアゾジカルボキシレートの存在下、適当な溶媒中、反応させることにより変換することができる。本反応は、例えば、0℃〜60℃、とりわけ、5℃〜40℃で好適に進行する。
【0076】
(f法):一般式〔I〕において、基Rが置換基を有していてもよいチオール基を含有している目的化合物〔I〕は、基Rに水酸基を有している対応化合物〔I〕とチオール基を含有している対応化合物を、例えば、光延らの方法(シンセシス(Synthesis)、第1〜28頁、1981年)に準じて、反応することにより製することができる。具体的には、トリフェニルホスフィンおよびジエチルアゾジカルボキシレートの存在下、適当な溶媒中、反応させることにより実施することができる。本反応は、例えば、溶媒の還流下で実施することができる。
【0077】
一般式〔I〕において、基Rが置換基を有していてもよいチオール基を含有している目的化合物〔I〕は、基Rにハロゲン原子を含有している対応化合物〔I〕とチオール基を含有している対応化合物を反応することにより、製することができる。本反応は、例えば、−50℃〜150℃、とりわけ、10℃〜100℃で好適に進行する。
また、さらに基Rにアルキルチオ基を含有している目的化合物は、基Rにチオール基を含有している対応化合物〔I〕またはチオール基を保護した(例えば、アセチル化したチオール基)対応化合物を塩基の存在下、アルキル化することにより、製することができる。本反応は、例えば、−10℃〜80℃、とりわけ、5℃〜50℃で好適に進行する。
【0078】
(g法):一般式〔I〕において、基Rが置換基を有しているアミノ基を含有している目的化合物〔I〕は、基Rに水酸基を含有している対応化合物〔I〕を例えば、光延らの方法(シンセシス(Synthesis)、第1〜28頁、1981年)に準じて、アミノ化することにより製することができる。
【0079】
(h法):一般式〔I〕において、基Rが遊離カルボキシル基を含有する目的化合物〔I〕は、基Rがエステル化されたカルボキシル基を含有している対応化合物〔I〕を常法により、脱エステル化(例えば、エステル残基の種類に応じて水酸化ナトリウム等の塩基による加水分解、トリフルオロ酢酸、塩化水素、臭化水素等による酸処理、水素雰囲気下、パラジウム(黒)、パラジウム炭素等を用いた還元等)することにより製することができる。本脱エステル化反応のうち、例えば、塩基による加水分解反応は5℃〜70℃、酸処理は5℃〜80℃、還元は10℃〜40℃で実施することができる。
【0080】
(i法):一般式〔I〕において、基Rがアミド結合を含有する目的化合物〔I〕は、基Rが遊離のカルボキシル基を含有している対応化合物〔I〕と対応するアミン化合物、または基Rが遊離のアミノ基を含有している対応化合物〔I〕と対応するカルボン酸化合物とを縮合剤の存在下、または非存在下反応させることにより製することができる。縮合剤としては、カルボン酸とアミンからアミド結合形成反応に通常用いられる、1,1’−カルボニルジイミダゾール、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、クロロギ酸イソブチルまたはN−メチルモルホリン等を用いることができる。本反応は、例えば、−20℃〜50℃で実施することができる。
【0081】
(j法):一般式〔I〕において、基Rにおける置換基の窒素原子がオキソ基で置換された(窒素原子が酸化された)複素環式基を含有する基(例えば、N−オキソモルホリノ基等)である目的化合物〔I〕は、基Rが複素環式基を含有している基である対応化合物〔I〕を酸化剤(例えば、3−クロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、オキソン等)で処理することにより製することができる。本反応は、例えば、5℃〜50℃で好適に進行する。
【0082】
(k法):一般式〔I〕において、基Rが上記(j法)以外に、窒素原子が酸化された複素環式基を含有する基(例えば、N−アルキル−4−モルホリニオ基等)である目的化合物〔I〕は、基Rが複素環式基を含有している基である対応化合物〔I〕とアルキルハライドとを反応することにより製することができる。本反応は、例えば、20℃〜80℃で好適に進行する。
【0083】
(l法):一般式〔I〕において、基Rがアルキル基である目的化合物〔I〕は、基Rが水素原子である対応化合物〔I〕を常法により、アルキル化することにより製することができる。当該アルキル基は置換基を有していてもよい。本反応は、例えば、20℃〜80℃で好適に進行する。
【0084】
(m法):一般式〔I〕において、基Rにおける置換基の硫黄原子がオキソ基で一つ置換された基を含有する基(例えば、スルフィニル基等)である目的化合物〔I〕は、基Rがチオ基を含有している基である対応化合物〔I〕を酸化剤(例えば、3−クロロ過安息香酸、過酢酸、過ヨウ素酸ナトリウム、オキソン等)で処理することにより製することができる。本反応は、例えば、−80℃〜150℃、とりわけ0℃〜40℃で好適に進行する。
【0085】
(n法):一般式〔I〕において、基Rにおける置換基の硫黄原子がオキソ基で2つ置換された基を含有する基(例えば、スルホニル基等)である目的化合物〔I〕は、基Rがチオ基を含有している基である対応化合物〔I〕を酸化剤(例えば、3−クロロ過安息香酸、過酢酸、過ヨウ素酸ナトリウム、オキソン等)で処理することにより製することができる。本反応は、例えば、−80℃〜150℃、とりわけ0℃〜40℃で好適に進行する。
【0086】
(o法):一般式〔I〕において、基Rがアミノ基を含有する基である目的化合物〔I〕は、基Rにカルボニル基を含有している基である対応化合物〔I〕を還元的アミノ化反応に付すことにより製することができる。本反応は、前記〔E法〕と同様に処理することにより実施することができる。
【0087】
(p法):一般式〔I〕において、基Rがスルフィン酸を含有する目的化合物〔I〕は、基Rがアルキルスルフィニル基を含有している対応化合物〔I〕を、例えば、文献(シンレット(Synlett)、4月号、375−377頁、1997年)に準じて、製することができる。
【0088】
(q法):一般式〔I〕において、基Rがイミダゾリジニル基またはヘキサヒドロピリミジニル基を含有する目的化合物〔I〕は、基Rがアミノアルキルアミノ基を含有している対応化合物を環化することにより製することができる。本反応は、例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール等の様な縮合剤の存在下、実施することができる。本反応は、例えば、−20℃〜50℃で実施することができる。
【0089】
上記(a法)〜(q法)に記載の反応に用いる溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば、特に限定されず、例えば、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホラアミド、ベンゼン、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、アルコール、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、酢酸、ジエチルエーテル、メトキシエタン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、水またはこれらの混合溶媒を適宜選択して用いることができる。
【0090】
なお、本発明の原料化合物〔IV〕は新規化合物であり、例えば、下式化学反応式のようにして製造することができる。

式中、R51はアルキル基を表し、R61はアミノ基の保護基を表し、R52は末端で結合していてもよいアルキル基を表し、Xは脱離基を表し、Xは脱離基を表し、環A、環B、R、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する。
【0091】
つまり、ピリジン化合物〔IX〕とグリニャール化合物〔X〕とを縮合してさらにアミノ基を保護し、化合物〔XI〕を得、次いで還元反応に付し、化合物〔XII〕を得る。さらに、化合物〔XII〕のカルボニル基をケタールによって保護して、化合物〔XIII〕を製した後、アミノ基の保護基を除去し、化合物〔XIV〕を得る。次いで化合物〔XIV〕と化合物〔XV〕とを縮合反応に付し、化合物〔XVI〕を得、化合物〔XVII〕と反応するか、もしくは、化合物〔XIV〕と化合物〔III〕とを縮合反応に付し、得られる化合物〔XVIII〕の保護基を除去し、化合物〔IV〕を得る。
【0092】
本発明の原料化合物〔III〕は、例えば、下記化学反応式のようにして製造することができる。

式中、環B、R、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する。
【0093】
つまり、化合物〔XIX〕をグリニャール反応に付し、次いでイソニトリル化反応に付す。得られた化合物を加水分解することにより化合物〔XX〕を得、次いで化合物〔XX〕を脱ホルミル反応に付すことにより、化合物〔III〕を得る。
【0094】
化合物〔IV〕は、不斉炭素を有しており、当該不斉炭素に基づく光学異性体が存在するが、上記化合物〔XIV〕の光学異性体を用いることにより、所望の光学異性体化合物〔IV〕を得ることができる。
【0095】
化合物〔XIV〕の光学異性体は、化合物〔XIV〕のラセミ混合物を常法により、光学分割することにより得られる。光学分割は、例えば、化合物〔XIV〕とN−アシル−光学活性アミノ酸またはN−スルホニル−光学活性アミノ酸を作用させ、生成する2種のジアステレオマー塩の溶解度差を利用して、一方のジアステレオマー塩を分離・採取することことにより実施することができる。
【0096】
N−アシル−光学活性アミノ酸のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、トシル基またはベンジルオキシカルボニル基が挙げられ、光学活性アミノ酸としては、例えば、L−フェニルアラニン、L−ロイシン、L−グルタミン、L−メチオニン、L−バリン、L−トレオニン、D−フェニルアラニンまたはD−フェニルグリシンが挙げられる。
【0097】
また、本発明の原料化合物〔II〕のうち、化合物〔II−a〕は、例えば、下式化学反応式のようにして製造することができる。

式中、環A、R11、R12、R61およびXは前記と同一意味を有する。
【0098】
つまり、化合物〔XII〕と化合物〔V〕を還元的アミノ化反応に付し、得られる化合物〔XXI〕のアミノ基の保護基を除去することにより、化合物〔II−a〕が得られる。還元的アミノ化は、〔E法〕と同様にして実施することができる。
【0099】
上記化合物〔IV〕を製造するにあたり、各中間体化合物は化学反応式に示しているものだけでなく、反応に関与しなければ、その塩またはその反応性誘導体も、適宜、用いることができる。
【0100】
また、さらに本発明の原料化合物のうち、一般式〔XXII〕:

式中、環A、環B、R、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示される化合物は、下記のようにして製造することができる。
【0101】

式中、環A、環B、R、R4a、R4bおよびR61は前記と同一意味を有する。
【0102】
つまり、化合物〔IV〕を還元的アミノ化反応に付し、得られた化合物〔I−c〕からアミノ基の保護基を除去することにより、化合物〔XXII〕が得られるか、または、化合物〔IV〕とアンモニアを用いて還元的アミノ化反応に付すことにより、化合物〔XXII〕が得られる。
【0103】
また、本発明の原料化合物のうち、一般式〔II−b〕:

式中、環Aは前記と同一意味を有する、
で示される化合物および一般式〔II−c〕:

式中、R53は置換基を表し、環Aは前記と同一意味を有する、
で示される化合物は下記のようにして製造することができる。
【0104】
53の置換基としては、Rが置換基を有していてもよい水酸基である場合の置換基が挙げられる。

式中,環AおよびR61は前記と同一意味を有する。
【0105】
つまり、化合物〔XII〕を還元し、化合物〔XXIII〕を得、得られた化合物〔XXIII〕のアミノ基の保護基の除去を行うことにより、化合物〔II−b〕を製造することができる。
【0106】

式中、環A、R53及びR61は前記と同一意味を有する。
【0107】
また、上記のようにして得られた化合物〔XXIII〕の水酸基に置換基を導入し、化合物〔XXIV〕を得、得られた化合物〔XXIV〕のアミノ基の保護基の除去を行うことにより、化合物〔II−c〕を製造することができる。
【0108】
化合物〔II−b〕および〔II−c〕には、光学異性体が存在するが、前記の化合物〔XIV〕の光学分割と同様の方法により、ラセミ混合物から光学分割することにより製造することができる。
【0109】
さらに、本発明の目的化合物および原料化合物の製造に際し、原料化合物ないし各中間体化合物が官能基を有する場合、上記で示した以外にも合成化学の常法により各官能基に適切な保護基を導入し、また、必要がなければ、それら保護基を、適宜、除去してもよい。
【0110】
本明細書において、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基等、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味し、好ましくは炭素数1〜4のものを意味する。アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリール基、プロペニル基、イソプロペニル基等、炭素数2〜7の直鎖または分岐鎖のアルケニル基を意味し、好ましくは炭素数2〜4のものを意味する。アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基を意味し、好ましくは炭素数1〜4のものを意味し、アルカノイル基とは、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、tert−ブチルカルボニル基等、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルカノイル基を意味し、好ましくは炭素数1〜4のものを意味する。シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等、炭素数3〜8のシクロアルキル基を意味し、好ましくは炭素数3〜6のものを意味する。さらに、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素またはヨウ素が挙げられる。
【実施例】
【0111】
実施例1
N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニル−1−メチル}エチル−N−メチルアミン2.8gのテトラヒドロフラン50ml溶液に1,1’−カルボニルジイミダゾール3.2gを加えて還流条件下16時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去してクロロホルムと水を加えて分液し、有機層をさらに2回水洗、乾燥、濃縮した。残渣のアセトニトリル50ml溶液にヨウ化メチル3mlを加え70℃で2時間攪拌した。反応溶液を濃縮して、残渣にテトラヒドロフラン50mlを加え、この溶液に(2R,4S)−4−ヒドロキシ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン2.1gとトリエチルアミン1.5mlを順次加えて70℃で16時間攪拌した。反応溶液を濃縮して、残渣にクロロホルムと水を加えて分液した。有機層を再度洗浄、乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:2)で精製することにより、下記第1表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン2.2gを得た。
【0112】
実施例2
(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン132mgのテトラヒドロフラン5ml溶液に、1,1’−カルボニルジイミダゾール42mgを加え、加熱還流下に2時間攪拌した。さらにエタノールアミン0.3mlを加え同温で1時間攪拌した後、反応溶液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、下記第1表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−(2−ヒドロキシエチルアミノカルボニルオキシ)ピペリジン123mgを得た。
【0113】
実施例3−4
対応原料化合物を用いて、実施例2と同様に処理することにより、下記第1表記載の化合物を得た。
【0114】
実施例5
(1)(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン2.0gのテトラヒドロフラン20ml溶液に、四臭化炭素1.66gおよびトリフェニルフォスフィン1.31gを加え、室温下、2時間撹拌した。溶液にジエチルエーテル80mlを加え、撹拌した後、析出した不溶物をろ去した。ろ液を濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1→10:1)で精製することにより、下記第1表記載の(2R,4R)−4−ブロモ−1−[N−{1−(3,5−ジフルオロフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン2gを得た。
【0115】
(2)上記(1)で得られた化合物2gのN,N−ジメチルホルムアミド20ml溶液に、チオ酢酸カリウム1.14gを加え、80℃で一終夜撹拌した。反応溶液を濃縮した後、酢酸エチルを加え、有機層を水および飽和食塩水で洗浄、乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=19:1→3:1)で精製することにより、下記第1表記載の(2R,4S)−4−アセチルチオ−1−[N−{1−(3,5−ジフルオロフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン1.5gを得た。
【0116】
(3)上記(2)で得られた化合物290mgのメタノール2ml溶液に、ヨウ化メチル0.2mlと2M水酸化ナトリウム水溶液2mlを加え、室温で一終夜撹拌した。反応溶液にクエン酸水溶液を加え中和した後、メタノールを留去した。残渣にクロロホルムを加え、洗浄、乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製することにより、下記第1表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ジフルオロフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−メチルチオピペリジン230mgを得た。
【0117】
(4)上記(3)で得られた化合物125mgのクロロホルム5ml溶液に、3−クロロ過安息香酸200mgを加え、室温で一終夜撹拌した。この溶液にチオ硫酸ナトリウム五水和物を加え、クロロホルムにて抽出、乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=19:1)で精製することにより、下記第1表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ジフルオロフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−メタンスルホニルピペリジン120mgを得た。
【0118】
実施例6
対応原料化合物を用いて、実施例5(1)−(3)と同様に処理することにより、下記第1表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ジフルオロフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ピペリジンを得た。
【0119】
実施例7−10
対応原料化合物を用いて、実施例5(1)−(4)と同様に処理することにより、下記第1表および第2表記載の化合物を得た。
【0120】
実施例11
(2R,4S)−4−アミノ−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン104mgのN,N−ジメチルホルムアミド溶液5mlに3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸25mg、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩31mgおよび1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール38mgを加えて室温で一終夜攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで抽出した後、有機層を飽和食塩水で2回洗浄、乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1→2:3)で精製することにより、下記第2表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチロイルアミノ)ピペリジン103mgを得た。
【0121】
実施例12
対応原料化合物を用いて、実施例11と同様に処理することにより、下記第2表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−{N−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチロイル)−N−メチルアミノ)ピペリジンを得た。
【0122】
実施例13
対応原料化合物を用いて、実施例1と同様に処理することにより、下記第3表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ジフルオロフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシピペリジンを得た。
【0123】
実施例14
対応原料化合物を用いて、実施例2と同様に処理することにより、下記第3表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ジフルオロフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−(2−ヒドロキシエチルアミノカルボニルオキシ)ピペリジンを得た。
【0124】
実施例15−17
対応原料化合物を用いて、実施例5(1)−(4)と同様に処理することにより、下記第3表記載の化合物を得た。
【0125】
参考例1
(1)3,5−ビストリフルオロメチルアセトフェノン12.8gをジエチルエーテル200mlに溶解し、−20℃に冷却した後、メチルグリニヤール−ジエチルエーテルの3M溶液20mlを滴下した。反応溶液を1時間攪拌後、塩化アンモニウム水溶液、水、酢酸エチルを加えてさらに10分攪拌した。分液で有機層を回収し飽和食塩水で洗浄、乾燥、濃縮することにより油状物を得た。得られた油状物をトリメチルシリルシアニド25mlに溶解し、−20℃に冷却した後、濃硫酸16mlを滴下して1時間攪拌した。反応溶液を氷中に滴下した後、1M水酸化ナトリウム水溶液80mlを加えて攪拌した。この溶液をクロロホルムで抽出した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。残渣をN,N−ジメチルホルムアミド100mlに溶解し、0−5℃に冷却した。この溶液に水素化ナトリウム(60%油状)4gを加え、ついでヨウ化メチル10mlを加えて0−5℃で2時間攪拌した。反応溶液に、水と酢酸エチルを順次加えて攪拌した後、分液した。有機層を水洗した後、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製することにより、{N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニル−1−メチル}エチル}−N−メチル}ホルムアミド13.5gを得た。
【0126】
(2)上記(1)で得られた化合物13.5gのエタノール100ml溶液に、濃水素化臭素水溶液(49%)100mlを加えた後、60℃で2時間攪拌した。反応溶液をよく冷やした炭酸ナトリウム水溶液中にゆっくり滴下した。この混合溶液をクロロホルムで2回抽出した後、水層に食塩を加えて再度クロロホルムで抽出した。全有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮することにより、下記第4表記載のN−{1−(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニル−1−メチル}エチル}−N−メチルアミン11.2gを得た。
【0127】
参考例2
(1)マグネシウム14.2g、2−ブロモ−5−フルオロトルエン93.1g、テトラヒドロフラン500mlから調製したグリニヤール溶液に−20℃、窒素気流下で4−メトキシピリジン50mlを滴下した。滴下終了後、同温にて20分攪拌した。さらに、反応液を−50℃に冷却し、−40℃以下を保ちながらベンジルクロロカーボネート85mlを滴下した。滴下終了後、反応溶液をゆっくりと昇温し、−15℃で氷200gを加え30分攪拌した。さらに、5Mクエン酸水溶液200mlを加え室温で1時間攪拌した。反応溶液から、テトラヒドロフランを減圧下に留去し、残渣に酢酸エチル200mlを加え2回抽出した。全有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水溶液で洗浄、乾燥、濃縮した。残渣をイソプロピルエーテルでろ取して、洗浄することにより、1−ベンジルオキシカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ピリジン146.5gを得た。
【0128】
(2)1−ベンジルオキシカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ピリジン190gの酢酸4600ml溶液に、亜鉛末91gを加え、室温にて24時間攪拌した。反応溶液から不溶物をろ別し、ろ液を濃縮した。残渣に酢酸エチル400mlを加え、炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄、乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:1)にて精製することにより、1−ベンジルオキシカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−オキソピペリジン166gを得た。
【0129】
(3)上記(2)で得られた化合物132gに、メタノール650ml、トリメトキシメタン84mlおよび強酸性樹脂IR−120(オルガノ株式会社製)2gを加え、室温にて3日間攪拌した。反応溶液から不溶物をろ別し、ろ液を濃縮することにより、1−ベンジルオキシカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4,4−ジメトキシ−ピペリジン146gを得た。
【0130】
(4)上記(3)で得られた化合物30gおよび10%パラジウム−炭素3gをエタノール300mlに加え、水素雰囲気下室温にて3時間攪拌した。反応溶液から不溶物をろ別後、ろ液を濃縮し、残渣に酢酸エチル300mlを加えた。氷冷下、4M塩酸−酢酸エチル溶液20mlをゆっくりと滴下した。結晶をろ取し、酢酸エチルにて洗浄した。乾燥後、ジクロロメタン−炭酸ナトリウム水に加え、攪拌した。有機層を分離後、水層をジクロロメタンにて再抽出した。全有機層を乾燥、濃縮することにより、2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4,4−ジメトキシピペリジン16.7gを得た。
【0131】
(5)上記(4)で得られた化合物10.1gとL−N−アセチルバリン3.18gの酢酸エチル130ml懸濁液にメタノール35mlを加え、過熱溶解させた後、室温で放冷した。3.5時間後に析出結晶をろ取、酢酸エチル20mlにて洗浄、得られた結晶を減圧下に乾燥した。次にクロロホルム50mlを加えた後、有機層を2M水酸化ナトリウム水溶液30ml、飽和食塩水溶液30mlで洗浄、乾燥、濃縮した。残渣にエーテルを加え、析出した結晶を更に減圧下に乾燥することにより、(2R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4,4−ジメトキシピペリジン2.94g(光学純度:97.0%ee)を得た。
【0132】
(6)(2R)−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4,4−ジメトキシピペリジン30gをテトラヒドロフラン300mlと水180mlに溶解し、ベンジロキシカルボニルクロリド20.3mlと炭酸ナトリウム15.06gを氷冷下で加えて2時間攪拌した。反応溶液に酢酸エチルと水を加えて分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥、濃縮することにより、(2R)−1−ベンジルオキシカルボニル−4,4−ジメトキシ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−ピペリジン50.9gを得た。
【0133】
(7)上記(6)で得られた化合物50.9gをテトラヒドロフラン570mlに溶解し、氷冷下、1M硫酸水溶液230mlを加え、0−5℃で4時間攪拌した。1M水酸化ナトリウム水溶液にてpHを8〜9に調整後、テトラヒドロフランを留去、残渣に水と酢酸エチルを加えて分液した。水層を酢酸エチルにて抽出し、全有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム:酢酸エチル=10:10:1→5:5:1)で精製することにより、(2R)−1−ベンジルオキシカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)−4−オキソピペリジン39.8gを得た。
【0134】
(8)上記(7)で得られた化合物34.2gのメタノール300ml溶液に、−78℃でアンモニアガスを30分間吹き込んだ後、室温で18時間攪拌した。再度、−60℃に冷却し、アンモニアガスを30分間吹き込んだ後、水素化ほう素ナトリウム1.9gを加え、室温に昇温した。反応溶液に蒸留水を加えて減圧濃縮し、残渣を酢酸エチルで抽出、乾燥、濃縮した。残渣をジエチルエーテル200mlに溶解し、これに、ジ−tert−ブチルジカーボネート22gを加え、室温で18時間攪拌した。反応液に蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1→2:1)で精製することにより、(2R,4S)−1−ベンジロキシカルボニル−4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン23.6gを得た。
(9)上記(8)で得られた化合物23.6gをメタノール25mlに溶解し、パラジウム−炭素5gを加えて101kPaの水素雰囲気下で2時間攪拌した。反応終了後、ろ過を行い、ろ液を濃縮した。残渣をNH−シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、下記第4表記載の(2R,4S)−4−ブトキシカルボニルアミノ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン15.7gを得た。
【0135】
参考例3
(1)N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−1−メチルエチル}−N−メチルアミン2.85gのテトラヒドロフラン溶液100mlに1,1’−カルボニルジイミダゾール3.2gを加え、加熱還流下で20分間攪拌した。反応溶液を濃縮した後、クロロホルムで抽出した。有機層を、乾燥、濃縮した。残渣をアセトニトリル50mlに溶解し、ヨウ化メチル3mlを加えて70℃にて2時間攪拌した後、反応溶液を濃縮した。残渣のジクロロメタン50ml溶液に、(2R,4S)−4−ブトキシカルボニルアミノ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン3.1g、トリエチルアミン1.4mlを加えて70℃にて一終夜攪拌した。反応溶液を水にあけ、分液した。水層を酢酸エチルにて抽出し、全有機層を飽和食塩水で洗浄、乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1→1:1)で精製することにより、(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−4−ブトキシカルボニルアミノ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン2.4gを得た。
【0136】
(2)上記(1)で得られた化合物310mgに4M塩酸−酢酸エチル溶液2mlを加え、この溶液を減圧濃縮した後、水酸化ナトリウムとジクロロメタンを加えて分液した。有機層を濃縮することにより、下記第4表記載の(2R,4S)−4−アミノ−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン200mgを得た。
【0137】
参考例4
(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−4−ブトキシカルボニルアミノ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン620mgのN,N−ジメチルホルムアミド5ml溶液に、水素化ナトリウム40mgとヨウ化メチル0.5mlを氷冷下順次加えて1時間攪拌した。反応終了後、クエン酸水溶液と食塩水および酢酸エチルを加えて分液した。有機層をさらに食塩水で洗浄、乾燥、濃縮した。残渣を参考例3(2)と同様に処理した後、残渣をNH−シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、下記第4表記載の(2R,4S)−1−[N−{1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチル]アミノカルボニル−4−メチルアミノ−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン400mgを得た。
【0138】
参考例5
(1)対応原料化合物を参考例1(1)と同様に処理することにより、N−{1−(3,5−ジフルオロフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチルホルムアミドを得た。
(2)上記(1)で得られた化合物8.5gに6M塩酸水溶液100mlを加えて110℃で1時間攪拌した。反応溶液に、2M水酸化ナトリウム水溶液500mlを加えて攪拌した後、ジエチルエーテルで2回抽出した。全有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。残渣をNH−シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、下記第4表記載のN−{1−(3,5−ジフルオロフェニル−1−メチル)エチル}−N−メチルアミン5gを得た。
【0139】
参考例6
N−トシル−D−フェニルアラニン0.639gをメタノール5mlに溶解して、59℃に加熱後、2−(4−フルオロ−2−メチル)フェニル−4−ヒドロキシピペリジン0.418gをメタノール1.3mlに溶解して滴下した。結晶が析出し始めた時点で20分間結晶を育晶後、残りの2−(4−フルオロ−2−メチル)フェニル−4−ヒドロキシピペリジンのメタノール溶液を5分間かけて滴下した。その後、温度を59℃から30℃まで1時間かけて冷却後、さらに1時間攪拌条件下で育晶した。得られた結晶をろ取し、氷冷メタノールで洗浄し、60℃で一晩送風乾燥することにより、(2R,4S)−2−(4−フルオロ−2−メチル)フェニル−4−ヒドロキシピペリジンのジアステレオマー塩0.325gを得た。得られた結晶に2M塩酸0.62mlを添加して、酢酸エチルを加え分液した。水層に5Mの水酸化ナトリウム水溶液0.3mlを加えて、酢酸エチル(1ml)で4回抽出した。有機層を乾燥後、濃縮することにより、下記第4表記載の(2R,4S)−2−(4−フルオロ−2−メチル)フェニル−4−ヒドロキシピペリジン0.129gを得た。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の化合物は、優れたタキキニン受容体拮抗作用を有する。また、本発明の化合物は、安全性が高く、また吸収性、脳内移行性、代謝安定性、血中濃度、持続性等の点で優れ、このため優れた薬効を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式〔I〕:

式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有しているチオール基、置換基を有しているカルボニル基、置換基を有しているスルフィニル基、置換基を有しているスルホニル基、または式:

で示される基であり、
11は置換基を有しているカルボニル基または置換基を有しているスルホニル基を表し、R12は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表し、Zは酸素原子または−N(R)−で示される基を表し、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4aは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4bは置換基を有していてもよいアルキル基を表す、
で示されるピペリジン化合物またはその薬理的に許容しうる塩。
【請求項2】
が置換基を有していてもよいアルキル基である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が置換基を有していてもよい水酸基である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
が置換基を有しているチオール基である請求項1記載の化合物。
【請求項5】
が置換基を有しているカルボニル基である請求項1記載の化合物。
【請求項6】
が置換基を有しているスルフィニル基である請求項1記載の化合物。
【請求項7】
が置換基を有しているスルホニル基である請求項1記載の化合物。
【請求項8】
が式:

で示される基であり、
11は置換基を有しているカルボニル基または置換基を有しているスルホニル基を表し、R12は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基である請求項1記載の化合物。
【請求項9】
一般式〔II〕:

式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有しているチオール基、置換基を有しているカルボニル基、置換基を有しているスルフィニル基、置換基を有しているスルホニル基、または式:

で示される基であり、
11は置換基を有しているカルボニル基または置換基を有しているスルホニル基を表し、R12は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表す、
で示される化合物と一般式〔III〕:

式中、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4aは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4bは置換基を有していてもよいアルキル基を表す、
で示される化合物とをウレア化剤の存在下反応させ、次いで所望により薬理的に許容しうる塩とすることを特徴とする一般式〔I’〕:

式中、環A、環B、R、R、R、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示されるピペリジン化合物またはその薬理的に許容しうる塩の製法。
【請求項10】
一般式〔I−c〕:

式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、環Bは置換基を有していてもよいベンゼン環を表し、R12は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有しているカルボニル基またはハロゲン原子を表し、Zは酸素原子または−N(R)−で示される基を表し、Rは水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4aは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4bは置換基を有していてもよいアルキル基を表す、
で示される化合物と一般式〔VI〕:
11−X 〔VI〕
式中、R11は置換基を有しているカルボニル基または置換基を有しているスルホニル基、Xは脱離基を表す、
で示される化合物とを反応させ、さらに所望により薬理的に許容しうる塩とすることを特徴とする一般式〔I−b〕:

式中、環A、環B、R11、R12、Z、R4aおよびR4bは前記と同一意味を有する、
で示されるピペリジン化合物またはその薬理的に許容しうる塩の製法。

【国際公開番号】WO2005/051912
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515802(P2005−515802)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017543
【国際出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】