説明

ピークホールド回路

【課題】入力電圧のピーク値を高応答かつ追従性良く検出し、保持すると共に、回路構成が簡単で小型化が可能なピークホールド回路を提供する。
【解決手段】ピーク検出部10は、入力電圧がピーク検出部10の出力電圧より大きくなったときにアクティブの信号を出力する比較器12と、その出力信号によりオンするアナログスイッチ14と、オン状態のアナログスイッチ14を介して入力電圧により充電され、かつ、両端電圧がピーク検出部10の出力電圧となるコンデンサ15と、を有し、ピークホールド部20は、A/D変換器30のトリガ信号によりオンするアナログスイッチ21と、オン状態のアナログスイッチ21を介してピーク検出部10の出力電圧により充電され、かつ、両端電圧がピークホールド部20のアナログ出力電圧となるコンデンサ22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧のピーク値を高精度に検出して保持するピークホールド回路に関し、例えば、浄水場や河川、湖沼等の水面(検出対象面)に存在する油膜を検出するための油膜検出装置の信号処理回路として好適なピークホールド回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
検出対象面に検出光を照射した際に油膜による反射率が水面からの反射率よりも大きいことを利用して、検出対象面からの反射光量に比例した電圧のピーク値を検出して水面か油膜面かを判断するための閾値と比較することにより、検出対象面に存在する油膜を検出するようにした油膜検出装置が、種々提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水位に変動や波立ちがある場合にも検出対象面からの反射光を確実に検出できるように、水位の変動に応じて発光手段から検出対象面に照射されるレーザ光の角度を周期的に変化させると共に、発光手段及び受光手段を含む検出手段を昇降させて検出対象面との間の距離を一定に保つことが記載されている。
また、特許文献2には、検出光を発散ビームとして検出対象面に照射し、検出対象面からの反射光を回帰性反射部材を介して受光させることにより、検出対象面に存在する小さな油膜も確実に検出することが記載されている。
更に、特許文献3には、光源の照射角度を変化させて検出対象面における照射範囲を二次元的に変化させることで、油膜検出範囲を広くすることが開示されている。
【0004】
上記のように、この種の油膜検出装置では、検出対象面の変動の影響を受けず、広範囲にわたって油膜の存在を確実に検出することが課題となっている。
しかしながら、検出光の照射角度を変化させて検出対象面を二次元的に走査し、検出対象面からの反射光を集光反射鏡などを介して広範囲に集光したとしても、水位の変動や波立ちによって検出対象面の状態が不規則に変化すると、常に移動する測定点からの反射光は発生頻度の低いパルスとなり、その反射光量に比例した電圧のピーク値を短時間で確実に捕捉することは一般に困難である。また、検出対象面が細かく振動するような場合には、反射光のパルスも極めて短時間の急峻な波形となるので、そのピーク値を正確に検出することは難しい。
【0005】
更に、太陽光や周囲の照明光が存在する環境で油膜を検出する場合には、これらの直接光や反射光がノイズとなって油膜を誤検出するおそれがあるので、その解決が求められている。
加えて、光源からのレーザ光の照射空間に人が侵入する可能性があれば、安全対策上、人体に影響がない微弱強度のレーザ光を用いて油膜を検出できることが望ましい。
このように、従来の油膜検出装置には、特に反射光量に比例した電圧のピーク値を検出する技術に関して改良の余地が残されている。
【0006】
一方、用途として油膜検出装置に限らず、入力電圧のピーク値を検出するピーク検出器は、例えば特許文献4により公知となっている。
図7は、この従来技術を示すものであり、200はピーク検出回路、101,102はその入力端子,出力端子、201は差動増幅器、202は検波用のダイオード、203はリセットスイッチ、204はコンデンサ、205はバッファ、300はサンプルホールド回路、103はその出力端子、301,304はバッファ、302はサンプルスイッチ、303はコンデンサ、104はリセット信号入力端子、401は遅延回路、402は比較回路、403はオア回路である。
【0007】
このピーク検出器により、入力電圧の正のピーク値を検出する場合の動作を略述すると、以下の通りである。
リセットスイッチ203は平常時、オフであり、入力端子101から入力された電圧は差動増幅器201により出力端子102の電圧と比較され、入力電圧の方が大きいと、ダイオード202を介してコンデンサ204に入力電圧のピーク値が充電される。このコンデンサ204の電圧は、バッファ205を介して出力端子102に現れる。これにより、出力端子102には常に入力電圧のピーク値が保持されることになり、リセットパルスによってリセットスイッチ203がオンされると、コンデンサ204が放電してピーク検出回路200の出力電圧はゼロとなる。
【0008】
ピーク検出回路200により検出された入力電圧のピーク値は、サンプルホールド回路300のサンプルスイッチ302がオンすることにより、バッファ301を介してコンデンサ303を充電する。このコンデンサ303の電圧は、バッファ304を介して出力端子103から出力される。
【0009】
また、前記リセットパルスは、遅延回路401により僅かに遅延されてオア回路403の一方の入力端子に加えられている。更に、ピーク検出回路200の出力電圧は比較回路402の非反転入力端子に入力され、サンプルホールド回路300の出力電圧は比較回路402の反転入力端子に入力されており、比較回路402の出力信号がオア回路403の他方の入力端子に加えられている。このオア回路403の出力をサンプルパルスとして、前記サンプルスイッチ302をオンさせるように構成されている。
ここで、比較回路402は、ピーク検出回路200の出力電圧の絶対値がサンプルホールド回路300の出力電圧の絶対値よりも大きい場合に「High」レベル(アクティブ)の信号を出力し、この信号がオア回路403を介してサンプルパルスとなるものである。
【0010】
リセットパルスによってリセットスイッチ203がオンされた直後に、コンデンサ204は入力電圧のピーク値に充電されるが、その後、遅延回路401及びオア回路403を経た遅延パルスがサンプルパルスとしてサンプルスイッチ302をオンさせるため、コンデンサ204に充電されたピーク値がコンデンサ303に移り、バッファ304を介して出力端子103に現れる。
このサンプルホールド動作の後に、入力電圧が上昇してサンプルホールド回路300の出力電圧よりも大きくなると、比較回路402及びオア回路403を介してサンプルパルスが再び出力されてサンプルスイッチ302をオンさせることにより、ピーク検出回路200の出力電圧によってコンデンサ303が充電される。これにより、コンデンサ303は常に入力電圧のピーク値を保持することになる。
【0011】
図7の回路によれば、サンプルホールド回路300の出力電圧は、リセットパルスとリセットパルスとの間の入力電圧のピーク値に常に等しくなる。
また、コンデンサ204の容量を小さくすることでピーク検出回路200の周波数帯域を拡げ、これに伴ってコンデンサ204の電圧のリークが速くなったとしても、コンデンサ204の電圧が低下しないうちに比較回路402の出力によってサンプルパルスを発生させ、ピーク検出回路200により検出したピーク値をサンプルホールド回路300のコンデンサ303に保持させることができる。更に、ピーク検出回路200の出力電圧は直流電圧であるから、サンプルホールド回路300は周波数特性が要求されず、安価な大容量のコンデンサ303を使用して長い保持時間を確保することができる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−149146号公報(段落[0019]〜[0022]、図1,図2等)
【特許文献2】特許第4087759号公報(段落[0024]〜[0035]、図1〜図4等)
【特許文献3】特開2001−153800号公報(段落[0037]〜[0039]、図10等)
【特許文献4】特許第2915928号公報(第4欄第19行〜第6欄第15行、第1図,第2図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図7に示したピーク検出器は、ダイオードスイッチングするピーク検出回路200において、コンデンサ204の容量を大きくせずにリーク電流を減少させ、かつ、広範囲の周波数帯域を持たせることや、後段のサンプルホールド回路300において、スペクトラムアナライザに適用した場合のリセット間隔(例えば1.4秒)以上の時間にわたってピーク値を保持可能なことを解決課題として提供されたものである。
すなわち、この従来技術は、ダイオード202等を流れるリーク電流によってコンデンサ204の電圧が低下する前に、リセットパルスを遅延させてサンプルパルスを発生させ、コンデンサ204に充電されているピーク値相当の電圧をサンプルホールド回路300内のコンデンサ303に速やかに移し替えて長時間保持しようとする着想に基づいている。
また、ピーク検出回路200に着目すると、一般にダイオード202のオン抵抗とオフ抵抗との境界値は明確ではないため、コンデンサ204の電圧を入力側に帰還して差動増幅器201により入力電圧との差を増幅し、この差電圧をダイオード202に加えることによってダイオード202のスイッチング動作を明確にしている。
【0014】
しかしながら、油膜検出装置においては、振動的かつ急峻なパルス状電圧を含む入力電圧のピーク値を時々刻々検出し、これをディジタル信号として処理するために短時間でA/D変換する必要があり、図7のピーク検出器の如く、ピーク値を長期にわたって保持するという要請はない。言い換えれば、回路全体の小型化等の観点から言えば、ピーク値を保持する終段のコンデンサの容量は、より少ないことが望ましい。
また、図7の従来技術では、ピーク検出回路200がダイオードスイッチングを前提としているためダイオード202が不可欠であり、回路構成が複雑になるという問題がある。
更に、ピーク検出回路200内の帰還ループの動作遅れにより、コンデンサ204の充電電圧の立ち上がりが遅れるおそれもある。
従って、図7に示したピーク検出器をそのまま油膜検出装置に適用することはできない。
【0015】
そこで、本発明の解決課題は、油膜検出装置等の用途に最適であって、入力電圧のピーク値を高応答かつ追従性良く検出し、保持すると共に、回路構成が簡単で小型化が可能なピークホールド回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に係るピークホールド回路は、入力電圧のピーク値を検出するピーク検出部と、このピーク検出部の後段に接続されて前記ピーク値を保持するピークホールド部と、このピークホールド部の後段に接続されて前記ピークホールド部のアナログ出力電圧を周期的にディジタル信号に変換するA/D変換手段と、を備えたピークホールド回路において、
前記ピーク検出部は、前記入力電圧が前記ピーク検出部の出力電圧より大きくなったときにアクティブとなる信号を出力する比較手段と、この比較手段の出力信号によりオンする第1のスイッチと、オン状態の前記第1のスイッチを介して前記入力電圧により充電され、かつ、両端電圧が前記ピーク検出部の出力電圧となる第1のコンデンサと、を有し、
前記ピークホールド部は、前記A/D変換手段の動作を開始させるトリガ信号によりオンする第2のスイッチと、オン状態の前記第2のスイッチを介して前記ピーク検出部の出力電圧により充電され、かつ、両端電圧が前記ピークホールド部のアナログ出力電圧となる第2のコンデンサと、を有するものである。
【0017】
請求項2に係るピークホールド回路は、請求項1において、前記A/D変換手段の動作終了時に発生する終了信号により前記第1のスイッチをオンさせる手段を更に備えたものである。
【0018】
請求項3に係るピークホールド回路は、請求項1または2において、第1のスイッチのオン抵抗が小さく、第2のスイッチのオフ抵抗が大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、油膜検出装置のように、検査対象面からの反射光量に比例する入力電圧が振動的かつ急峻なパルス状電圧を含む場合でも、そのピーク値を高応答で追従性良く検出し、保持することができる。また、ピーク検出原理としてダイオードスイッチングを用いず、出力側のピーク値ホールド用コンデンサに大容量のものを必要としないため、回路構成の簡略化、小型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示す回路図である。
【図2】図1における各部の電圧をA/D変換トリガ信号と共に示した動作説明図である。
【図3】本発明の実施例1によるピークホールド波形(200[pps]のパルス駆動時)を示す図である。
【図4】従来技術によるピークホールド波形(200[pps]のパルス駆動時)を示す図である。
【図5】本発明の実施例2によるピークホールド波形(300[pps]のパルス駆動時)を示す図である。
【図6】従来技術によるピークホールド波形(300[pps]のパルス駆動時)を示す図である。
【図7】特許文献4に記載されたピーク検出器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。なお、この実施形態は、本発明を油膜検出装置に適用して油膜からの反射光量に比例した電圧のピーク値を検出する場合のものである。
図1は、本実施形態に係るピークホールド回路の回路図であり、10はピーク検出部、20はピークホールド部、30はA/D変換器である。
【0022】
まず、ピーク検出部10において、11は検出対象面からの反射光量に比例した電圧が入力される入力端子であり、この入力端子11は比較器12の非反転入力端子に接続されていると共に、FET等からなる第1のアナログスイッチ14の一端に接続されている。
アナログスイッチ14の他端は、第1のコンデンサ15の一端及び高入力インピーダンスのバッファ16を介して中間端子17に接続されており、コンデンサ15の他端は接地されている。
バッファ16の出力端子は比較器12の反転入力端子に接続され、比較器12の出力信号は、オア回路13を介して前記アナログスイッチ14の操作端(例えばFETのゲート)に加えられている。また、オア回路13には、後述するA/D変換器30によるA/D変換動作の終了信号も入力されている。
【0023】
他方、ピークホールド部20において、前記中間端子17にはFET等からなる第2のアナログスイッチ21の一端が接続され、その他端は、第2のコンデンサ22の一端及び高入力インピーダンスのバッファ23を介して出力端子24に接続されている。なお、コンデンサ22の他端は接地されている。
出力端子24にはA/D変換器30が接続されており、このA/D変換器30にA/D変換動作を開始させるためのトリガ信号が、A/D変換器30及び前記アナログスイッチ21の操作端に加えられている。
【0024】
上記構成において、第1のアナログスイッチ14はオン抵抗が大きく、第2のアナログスイッチ21にはオフ抵抗が大きいスイッチング素子が使用される。また、A/D変換器30としては、逐次比較型やΣ−Δ型のように、A/D変換の動作中に、標本化されたアナログ入力電圧を変化させることなく保持する機能を有する変換器が用いられる。
【0025】
次に、入力電圧の正のピーク値を検出する場合の動作について、図2を参照しつつ説明する。
図2は、図1における各部の電圧をA/D変換トリガ信号と共に示した波形図である。なお、この図では理解を容易にするために各波形を簡略化し、また、特性線が重ならないように意図的にずらして描いてある。
図2において、aは、検出対象面からの反射光量に比例する入力電圧(入力端子11の電圧)を、bは中間端子17の電圧(ピーク検出部10の出力電圧)を、cは出力端子24の電圧(ピークホールド部20の出力電圧)を、それぞれ示している。
【0026】
まず、図1の比較器12は、入力電圧aとピーク検出部10の出力電圧bとを比較し、前者が後者より大きい場合に「High」レベル(アクティブ)の信号を出力する。これにより、オア回路13を介して第1のアナログスイッチ14がオンするため、コンデンサ15は入力電圧aにより充電されていく。なお、後述するA/D変換動作が終了する都度、A/D変換終了信号が発生してオア回路13を介しアナログスイッチ14をオンさせるので、コンデンサ15は周期的に入力電圧aを充電可能な状態となる。
【0027】
コンデンサ15への充電と同時に、ピーク検出部10の出力電圧bも入力電圧aに追従して増加していく。この時、第1のアナログスイッチ14を構成するスイッチング素子のオン抵抗を小さくし、コンデンサ14の容量を適切な値に設定すれば、入力電圧aに対する出力電圧bの応答性を高めることができ、入力電圧aのピーク値を確実に検出することができる。
ちなみに、前述したように第1のアナログスイッチ14としてFETを用い、そのドレイン−ソース間に形成されるダイオードを利用することで、例えばシリコンダイオード等に比べてオン抵抗を減少させることが可能であり、反射光量に比例する電圧として急峻なパルス状電圧がピーク検出部10に入力された場合にも、そのピーク値をコンデンサ15によって短時間で確実に検出し、保持することができる。
【0028】
次に、入力電圧aが減少に転じると比較器12の出力信号が反転して「Low」レベルとなり、A/D変換終了信号が発生するまではアナログスイッチ14がオフし、コンデンサ15は充電電圧を保持するので、ピーク検出部10の出力電圧bはほぼ一定値を保っている。
そして、A/D変換トリガ信号が発生すると、A/D変換器30に保持されている前サイクルの出力電圧cのA/D変換動作が開始され、同時に、それまでオフ状態であったピークホールド部20の第2のアナログスイッチ21がオンする。
【0029】
このため、コンデンサ22はピーク検出部10の出力電圧bにより充電されていき、このコンデンサ22による保持電圧が、バッファ23を介してピークホールド部20の出力電圧cとなる。そして、この出力電圧cが、A/D変換器30による次サイクルのA/D変換動作によってディジタル信号に変換される。なお、第2のアナログスイッチ21にオフ抵抗が大きいスイッチング素子を使用すれば、コンデンサ22の電圧のリークを防止することができる。
【0030】
上記の動作はA/D変換トリガ信号が発生する都度、繰り返されるので、このトリガ信号の前サイクルにおけるピーク検出部10の出力電圧bを保持したピークホールド部20の出力電圧cがA/D変換されると共に、A/D変換動作の終了後にはピーク検出部10内のコンデンサ15が入力電圧aのピーク値まで充電されることになる。つまり、現サイクルのピークホールド部20の出力電圧cに対するA/D変換を開始すると同時に、次のサイクルでA/D変換するピーク検出部10の出力電圧bをピークホールド部20のコンデンサ22に送ってピーク値の初期値とするものである。
上述したように、この実施形態によれば、ピーク検出部10により検出した入力電圧のピーク値を、A/D変換動作の開始時に次段のピークホールド部20に送り、このピーク値を初期値として次のA/D変換を開始するまでの間、保持することができる。
【0031】
油膜検出装置において、水位の変動や波立ちのある検出対象面を検出光により二次元的に走査してその反射光量に比例した電圧のピーク値を検出する場合、入力電圧には鋭いピークを持ったパルス波形が含まれる。この場合、特許文献4のように、ダイオードスイッチングを検出原理とするピーク検出器では、オン抵抗及びオフ抵抗の不確定さ等に起因してピーク値を短時間で高精度に検出することが困難である。
【0032】
これに対し、本実施形態では、前述したように第1のアナログスイッチ14のオン抵抗を小さくすることで、急峻なパルス波形が入力された場合でも、ピーク検出部10により高応答かつ追従性良くピーク値を検出し、保持することができる。
また、ピークホールド部20のコンデンサ22は、A/D変換の周期で初期値(ピーク検出部10の出力電圧b)にリセットされるので、大容量である必要はなく、小型化が可能である。更に、ダイオードスイッチングによるピーク検出原理ではないから、検波用のダイオードを不要にして回路構成の簡略化を図ることができる。
更に、入力電圧aによるコンデンサ15の充電経路に帰還ループが存在せず、A/D変換終了信号によるアナログスイッチ14のオンによってコンデンサ15を直ちに充電可能であるため、この点でも応答性の向上が可能である。
【0033】
なお、上述した実施形態において、検出光を照射する光源のオン・オフに同期した入力電圧の差を予め測定しておき、この差を用いて測定結果を補正するようにすれば、太陽光や周囲の照明光によるノイズの影響を除去することも可能である。
【実施例1】
【0034】
次に、本発明の実施例を説明する。
図3は、実施例1として、200[pps](pulse per second)のパルスによりパルスモータを駆動して波を発生させた水面からの反射光量に比例する入力電圧のピーク値を、図1のピークホールド回路を用いて測定した場合の出力電圧を示している。
また、図4は、同様の条件でパルス駆動により波を発生させた水面からの反射光量に比例する入力電圧のピーク値を、従来技術(前述した特許文献4に記載されている前段のピーク検出回路のように、出力電圧と入力電圧との差電圧によりダイオードを介してコンデンサを充電し、このコンデンサの電圧を入力電圧のピーク値として検出するもの)により測定した場合の出力電圧である。
これら図3,図4の比較から明らかなように、図4の従来技術では入力電圧の振幅の変化に十分に追従できていないのに対し、図3の本発明によれば、A/D変換の周期でピーク値が保持されるため、入力電圧に忠実に追従しており、急峻なパルス波形のピーク値も確実に検出できることが判る。
なお、図3のように出力されたピーク値は、更に一定期間の平均値を求める等の方法により、最終的な油膜検出結果として出力される。このように一定期間にわたって高速に油膜を検出し、その結果得られた大量の有意なデータを信号処理によって圧縮し、適当なデータサイズに変換することにより、解析や報告に適した検出結果を得ることができ、油膜検出装置としての有用性、信頼性、優位性を高めることができる。
【実施例2】
【0035】
図5は、実施例2として、パルスモータにより300[pps]のパルスを発生させ、このパルスを用いて駆動した波からの反射光量に比例する入力電圧のピーク値を、図1のピークホールド回路を用いて測定した場合の出力電圧を示し、図6は、同様の条件のもとで上記従来技術により測定した場合の出力電圧である。
この場合、図6の従来技術では入力電圧に対する追従性がないのはもとより、長期間にわたってピーク値が保持されない不感期間が発生しているが、図5の本発明によれば、不感期間の発生頻度も少なく、入力電圧のピーク値が実用上十分な程度に検出され、保持されているのが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、油膜検出装置だけなく、変動するアナログ入力電圧のピーク値を検出して保持する種々の用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10:ピーク検出部
11:入力端子
12:比較器
13:オア回路
14:アナログスイッチ
15:コンデンサ
16:バッファ
17:中間端子
20:ピークホールド部
21:アナログスイッチ
22:コンデンサ
23:バッファ
24:出力端子
30:A/D変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧のピーク値を検出するピーク検出部と、このピーク検出部の後段に接続されて前記ピーク値を保持するピークホールド部と、このピークホールド部の後段に接続されて前記ピークホールド部のアナログ出力電圧を周期的にディジタル信号に変換するA/D変換手段と、を備えたピークホールド回路において、
前記ピーク検出部は、
前記入力電圧が前記ピーク検出部の出力電圧より大きくなったときにアクティブとなる信号を出力する比較手段と、この比較手段の出力信号によりオンする第1のスイッチと、オン状態の前記第1のスイッチを介して前記入力電圧により充電され、かつ、両端電圧が前記ピーク検出部の出力電圧となる第1のコンデンサと、を有し、
前記ピークホールド部は、
前記A/D変換手段の動作を開始させるトリガ信号によりオンする第2のスイッチと、オン状態の前記第2のスイッチを介して前記ピーク検出部の出力電圧により充電され、かつ、両端電圧が前記ピークホールド部のアナログ出力電圧となる第2のコンデンサと、を有することを特徴とするピークホールド回路。
【請求項2】
請求項1に記載したピークホールド回路において、
前記A/D変換手段の動作終了時に発生する終了信号により前記第1のスイッチをオンさせる手段を更に備えたことを特徴とするピークホールド回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載したピークホールド回路において、
前記第1のスイッチのオン抵抗を小さくし、第2のスイッチのオフ抵抗を大きくしたことを特徴とするピークホールド回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−187092(P2010−187092A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28563(P2009−28563)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】