説明

ファン組立体

【課題】静粛なファン組立体を提供する。
【解決手段】送風を生じさせるファン組立体(10)がベースに取り付けられたノズル(14)を有する。ベースは、外側ケーシング(16)、外側ケーシング内に収容された消音化部材、外側ケーシング内に配置されていて、空気入口(70)及び空気出口を備えた羽根車ハウジング(64)、羽根車ハウジング内の羽根車(52)及び羽根車を軸線回りに駆動して羽根車ハウジング中に空気流を生じさせるモータ(56)を有する。ノズルは、羽根車ハウジングの空気出口から空気流を受け入れる内部通路及び口(26)を有し、空気流はこの口を通ってファン組立体から放出される。消音化部材は、羽根車ハウジングの空気入口の下に配置され、上述の軸線に沿って空気入口から5〜60mmの距離だけ間隔を置いて位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン又は扇風機組立体に関する。特に、本発明は、部屋、オフィス又は他の家庭環境において空気の循環及び送風を生じさせる家庭用ファン、例えば卓上扇風機に関する(なお、本明細書において、ファンと扇風機は、用語として区別なく用いられている)。
【背景技術】
【0002】
従来の家庭用ファンは、典型的には、軸を中心に回転する一組の羽根又は翼と、空気流を生成するために一組の羽根を回転させるための駆動装置とを有する。空気流の動き及び循環は、風速冷却又はそよ風を精製し、その結果、使用者は対流および蒸発によって熱が発散されるので、冷却効果を得られる。
【0003】
かかるファンは、種々の寸法形状で入手できる。例えば、天井ファンは、直径が少なくとも1mの場合があり、通常、天井から吊り下げられた状態で取り付けられていて、下向きの空気流を生じさせ、それにより部屋を冷やすようになっている。他方、卓上ファンは、直径が約30cmの場合が多く、通常は自立型且つ携帯可能である。他形式のファンは、床に取り付け可能であり又は壁に設置できる。米国意匠特許第103,476号明細書及び米国特許第1,767,060号明細書に開示されているファンは、机又はテーブル上に立てて置くのに適している。
【0004】
この種の構成の欠点は、ファンの回転翼又は羽根により生じる空気流が一般的に言って一様ではないということにある。これは、ファンの羽根表面又は外方に向いた表面全体におけるばらつきに起因している。これらばらつきの程度は、製品毎に様々な場合があり、1つの個別ファンヒータと別の個別ファンヒータとでも異なる場合がある。これらのばらつきの結果として、むらのある又は「風向きの変わりやすい」空気流が発生し、かかる空気流は、空気の一連のパルスとして感じられる場合があると共にユーザにとって不快な場合がある。加うるに、この種のファンは、うるさく、生じた騒音は、家庭環境において長時間にわたる使用を邪魔するようになる場合がある。もう1つの欠点は、ファンにより生じる冷却効果がユーザからの距離につれて減少することにある。このことは、ユーザがファンの冷却効果を体験するにはファンをユーザに近接して配置しなければならないということを意味している。
【0005】
ファンの出口を回転させて空気流が部屋の広い領域にわたってスイープ(弧を描いて放出)されるようにするために揺動又は首振り機構体が採用される場合がある。このように、ファンからの空気流の方向を変えることができる。加うるに、駆動装置が、1組の羽根を様々な速度で回転させてファンにより出力される風量を最適化することができる。羽根速度調節及び揺動機構体は、ユーザの感じる空気流の質及び一様性を幾分改良することができるが、特徴的な「風向きの変わりやすい」空気流が生じることに変わりはない。
【0006】
空気循環機(エアサーキュレータ)と呼ばれる場合のあるファンの中には、回転羽根を用いないで空気のひんやりした流れを生じさせるものがある。例えば米国特許第2,488,467号明細書及び日本国特開昭56‐167897号公報に記載されたファンは、大型ベース部分を有し、かかる大型ベース部分は、ベース中に空気の流れを生じさせるモータ及び羽根車を収容している。空気流は、ベースから空気吐き出しスロットに送られ、空気流は、この空気吐き出しスロットからユーザに向かって前方に放出される。米国特許第2,488,467号明細書のファンは、一連の同心スロットから空気流を放出し、特開昭56‐167897号公報のファンは、単一の空気吐き出しスロットに通じるネック部品に空気流を送る。大型ベース本体部分、ネック及び1つ以上の空気吐き出しスロットは、前記ファンのコンポーネントの配置状態及び向きを制限する。
【0007】
回転羽根を用いないでスロットを通ってひんやりとした空気流を生じさせるようになったファンでは、ベース本体からスロットへの空気流の効率的な移送が必要である。空気流は、これがスロット中に送られているときに絞られ、この絞りにより、ファン中に圧力が生じ、空気流をスロットから放出するためには、モータ及び羽根車により生じる空気流は、かかる圧力に打ち勝たなければならない。システム中の非効率的要因、例えば、ファンハウジングを通る損失又は空気流路の妨害により、ファンからの空気流が減少する。高い効率のための要件により、空気流を生じさせるモータ及び他の手段の使用についてのオプションが制限される。この種のファンは、モータ及び羽根車により生じる振動及び空気流中の乱流が伝えられて増幅される傾向があるので、うるさい(騒音が大きい)場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国意匠特許第103,476号明細書
【特許文献2】米国特許第1,767,060号明細書
【特許文献3】米国特許第2,488,467号明細書
【特許文献4】特開昭56‐167897号公報
【発明の概要】
【0009】
第1の観点では、本発明は、送風を生じさせるファン組立体であって、少なくとも1つの空気入口が設けられた側壁を備えていて、空気入口及び空気出口を備えた羽根車ハウジングを収容した外側ケーシングと、羽根車ハウジング内に配置された羽根車と、羽根車を軸線回りに駆動して羽根車ハウジング中に空気流を生じさせるモータと、羽根車ハウジングの空気入口の下に軸線に沿って空気入口から5mm〜60mmの距離だけ間隔を置いて設けられた消音化部材とを有するベースと、ベースに取り付けられたノズルとを有し、ノズルは、羽根車ハウジングの空気出口からの空気流を受け入れる内部通路と、口とを有し、空気流は、口を通ってファン組立体から放出されることを特徴とするファン組立体を提供する。
【0010】
外側ケーシング及び羽根車ハウジングの内壁からは幾分かの騒音及びモータ振動が反射される。外側ケーシング内に配置される消音化部材は、特に羽根車ハウジングの空気入口の下に配置された場合、外側ケーシング内の騒音を含む音を吸収することができる。消音化部材を上述の軸線に沿って空気入口から5mm〜60mmの距離だけ間隔を置いて設けることにより、羽根車ハウジング内への空気の流れは制限されないで、消音化部材と羽根車ハウジングの空気入口との間の距離は最小限に抑えられる。かかる構成により、十分な空気をベース内に引き込むことができ、それにより羽根車及びファン組立体への空気の制約されない流入が可能になる。側壁は、好ましくは、複数個の空気入口を有する。空気入口をベース周りに設けることにより、ベース及びノズルの構成における融通性が得られると共に空気が種々の箇所からベース内に流入することができ、その結果、全体として多くの空気が組立体内に流入することができるようになる。
【0011】
好ましくは、軸線は、ベースが水平面上に置かれたとき、実質的に垂直である。好ましい実施形態では、消音化部材は、空気入口から10mm〜20mm、好ましくは約17mmだけ間隔を置いて位置する。これにより、騒音及び摩擦損失を最小限に抑える短く且つコンパクトな空気流路が得られる。かかる構成により、消音化部材は、ベースの下側部分の相当大きな容積を占めることができ、ベースの中から及びこれを横切って反響する騒音及び振動を吸収することができる。
【0012】
好ましくは、消音化部材は、吸音フォームから成る。かかる構成により、乱流空気流の発生及びかくしてベース内における騒音及び振動の発生を減少させるよう配置されたコンパクトな消音化部材が得られる。吸音フォーム構造体は、羽根車ハウジングの形状及び向きにマッチした騒音吸収特性を備える。第2の消音化部材は、羽根車ハウジング内に収容されるのが良い。この第2の消音化部材は、好ましくは、環状であり、好ましくはこれ又吸音フォームから成る。
【0013】
好ましくは、ベースは、実質的に円筒形である。この構成は、コンパクトであり、ベース寸法は、ノズルの寸法と比較して小さく且つファン組立体全体のサイズと比較して小さい。有利には、本発明は、先行技術のファンのフットプリントよりも小さなフットプリントから適当な冷却効果を送り出すファン組立体を提供することができる。
【0014】
好ましくは、ノズルは、ファン組立体の外部からの空気を口から放出された空気流により引き込むよう通す開口部を構成するようノズル軸線回りに延びる。好ましくは、ノズルは、開口部を包囲する。好ましくは、外側ケーシングの少なくとも1つの空気入口は、このノズル軸線に実質的に垂直に配置されている。羽根車ハウジングの空気入口からの空気の放出方向は、羽根車ハウジングへの空気流の流入方向に実質的に直角であり、距離及び角度は、空気流の部分が羽根車ハウジング中に差し向けられているときに空気流の部分の速度がそれほど低下することがないようなものである。
【0015】
より好ましくは、外側ケーシングの少なくとも1つの空気入口は、最初に述べた軸線に実質的に垂直な第2の軸線回りに延びる複数個の空気入口から成る。この構成では、ファン組立体は、外側ケーシングの各入口から羽根車ハウジングの空気入口まで延びる流路を有し、羽根車ハウジングの入口は、外側ケーシングの空気入口に実質的に垂直である。かかる構成により、システム内の騒音及び摩擦損失を最小限に抑える入口空気流路が得られる。
【0016】
好ましい実施形態では、側壁は、複数個の孔及び側壁ランド領域を備えたメッシュを有し、このメッシュは、複数個の孔及び側壁ランド領域の全面積から成る表面積を有する。複数個の孔が設けられたメッシュをファン組立体用に再現可能に且つ高信頼度で製造することができ、それにより、一様なファン性能の実現及び製造が可能である。好ましくは、メッシュは、実質的にベースの周囲に沿って延び、より好ましくは、複数個の孔がベース周りに等間隔を置いて設けられる。かかる構成により、多数の空気流路が得られ、ベース及び組立体内における騒音発生を全体として最小限に抑える壁領域が維持された状態で、空気は、これら空気流路を通ってファン組立体内に流入することができる。メッシュの複数個の孔は、好ましくは、上述の軸線に沿って羽根車ハウジングの空気入口から50mm以下の距離だけ間隔を置いて位置する。これにより、騒音及び摩擦損失を最小限に抑える短く且つコンパクトな空気流路が得られる。
【0017】
好ましい実施形態では、孔の開放面積は、メッシュの全表面積の少なくとも30%である。好ましくは、メッシュの開放面積は、メッシュの全表面積の33〜45%である。この構成により、ファン組立体の外部の環境への騒音及び振動の伝達を阻止する側壁構造体が形成された状態で、十分な空気をベース内に引き込んで羽根車ハウジング中に空気流を生じさせることができるようにする開放面積が得られる。
【0018】
ファン組立体は、好ましくは、羽根なしファン組立体の形態をしている。羽根なしファン組立体の使用により、羽根付きファンを用いないで送風を生じさせることができる。空気の流れをファン組立体から放出するための羽根付きファンを用いない場合、比較的一様な空気の流れを発生させて室内又はユーザに向かって案内することができる。空気の流れは、効率的に出口から出て行くことができ、失われるエネルギー及び速度が僅かであり、その結果、乱流が殆ど生じない。
【0019】
「羽根なし」という用語は、可動羽根を用いないで空気流をファン組立体から前方に放出し又は送り出すファン組立体を形容するために用いられている。それ故、羽根なしファン組立体は、空気流をユーザの方へ又は室内へ差し向ける可動羽根のない出力領域又は放出ゾーンを有するものであると考えることができる。羽根なしファン組立体の出力領域には、多種多様な源、例えば各種ポンプ、各種発生器、各種モータ又は各種流体輸送装置、例えばモータロータ及び(又は)空気流を発生させる羽根付きインペラのうちの1つによって生じる一次空気流を供給することができる。生じた一次空気流は、ファン組立体の外部に位置する室内空間又は他の環境からファン組立体に入り、そして出口を通って室内空間に送り出されて戻ることができる。
【0020】
それ故、ファン組立体を羽根なしとして説明することは、動力源及び例えば補助ファン機能に必要なコンポーネント、例えばモータの説明にまで及ぶものではない。補助ファン機能の例としては、ファン組立体の照明、調節及び揺動が挙げられる。
【0021】
ノズルは、口に隣接して位置するコアンダ(Coanda)面を有するのが良く、口は、この口から放出される空気流をかかるコアンダ面上でこれに沿って差し向けるよう配置されている。好ましくは、ノズルの内側ケーシング部分の外面は、コアンダ面を形成する。コアンダ面は、好ましくは、開口部の周りに延びる。コアンダ面は、表面に近接して位置する出力オリフィスを出た流体の流れがコアンダ効果を呈するようにする既知形式の表面である。流体は、表面上をこれに沿って密接し、ほぼ「くっついて」又は「貼りついて」流れようとする。コアンダ効果は、一次空気流をコアンダ面上でこれに沿って差し向ける既に証明されて調べが良くついている同伴方法である。コアンダ面の特徴及びコアンダ面上の流体の流れの効果に関する説明は、レバ(Reba)著,「サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)」,第214巻,1966年6月,p.84〜92の論文に見られる。コアンダ面の利用により、ファン組立体の外部からの増加した量の空気が、口から放出される空気によって開口部を通って引き込まれる。
【0022】
好ましくは、空気流は、ベースからファン組立体のノズルに入る。以下の説明において、この空気流を一次空気流と称する。一次空気流は、ノズルの口から放出され、好ましくは、この一次空気流は、コアンダ面上をこれに沿って流れる。一次空気流は、ノズルの口の周りの空気を同伴し、これは、一次空気流と同伴空気の両方をユーザに送る空気増量手段(air amplifier )としての役目を果たす。かかる同伴空気を本明細書では二次空気流と称する。二次空気流は、ノズルの口の周りの室内空間、領域又は外部環境から引き込まれると共に押し退けによりファン組立体の周りの他の領域から引き込まれ、かかる二次空気流は、主として、ノズルによって構成された開口部を通過する。コアンダ面上でこれに沿って差し向けられた一次空気流と同伴二次空気流との組み合わせにより、ノズルにより構成された開口部から前方に放出され又は送り出される全空気流が得られる。好ましくは、ノズルの口の周りの空気の同伴は、主要空気流量が少なくとも5倍になり、より好ましくは少なくとも10倍になり、他方、滑らかな全体的出力が維持されるようなものである。
【0023】
好ましくは、ノズルは、コアンダ面の下流側に設けられたディフューザ面を有する。ノズルの内側ケーシング区分の外面は、好ましくは、ディフューザ面を構成するよう形作られる。
【0024】
羽根車は、好ましくは、混流型羽根車である。モータは、好ましくは、摩擦損失及び伝統的なブラシ付きモータで用いられているブラシからのカーボンデブリを回避するためにDCブラシレスモータである。カーボンデブリ及び排出物を減少させることは、清浄な又は汚染物に敏感な環境、例えば病院又はアレルギーのある人の周りでは有利である。一般にファンに用いられる誘導モータも又、ブラシを備えていないが、DCブラシレスモータは、誘導モータよりも非常に広い動作速度範囲を提供することができる。
【0025】
ファン組立体のベースは、好ましくは、羽根車ハウジングの空気出口からの空気流の一部分をノズルの内部通路の方に差し向ける手段を有する。
【0026】
羽根車ハウジングの空気出口からの空気の放出方向は、好ましくは、空気流が内部通路の少なくとも一部分を通る方向に対して実質的に直角である。内部通路は、好ましくは環状であり、好ましくは、空気流を開口部周りに互いに逆方向に流れる2つの空気部分流に分割するよう形作られている。好ましい実施形態では、空気流は、内部通路の少なくとも一部分中に側方に流入し、空気は、羽根車ハウジングの空気出口から前方に放出される。このことを考慮すると、羽根車ハウジングの空気出口からの空気流の一部分を差し向ける手段は、好ましくは、少なくとも1枚の湾曲したベーンを含む。湾曲したベーンは、好ましくは、空気流の方向を約90°変化させるよう形作られている。湾曲したベーンは、空気流が部分的に内部通路中に差し向けられているときに空気流のこれら部分の速度がそれほど減少しないように形作られている。
【0027】
ベースは、好ましくは、ファン組立体を制御する制御手段を有する。安全上の理由で且つ使用しやすくするため、制御要素をノズルから遠ざけて配置してファン作動中に、例えば揺動、傾動、照明又は速度設定の起動のような制御機能を作動させないようにすることが有利な場合がある。
【0028】
好ましくは、ノズルの口は、開口部周りに延び、かかる口は、好ましくは環状である。好ましくは、ノズルは、50〜250cmの距離だけ開口部周りに延びる。ノズルは、好ましくは、内部通路及び口を構成する少なくとも1つの壁を有し、かかる少なくとも1つの壁は、口を構成する対向した表面を有する。好ましくは、口は、出口を有し、口の出口のところの対向した表面相互間の間隔は、0.5mm〜5mm、より好ましくは0.5mm〜1.5mmである。ノズルは、好ましくは、内側ケーシング区分及び外側ケーシング区分を有し、これらケーシング区分は、ノズルの口を構成する。各区分は、好ましくは、それぞれ対応の環状部材で作られるが、各区分は、その区分を形成するよう互いに連結され又は違ったやり方で組み立てられた複数個の部材によって構成されるのが良い。外側ケーシング区分は、好ましくは、内側ケーシング区分と部分的にオーバーラップするよう形作られる。これにより、ノズルの内側ケーシング区分の外面とノズルの外側ケーシング区分の内面の互いにオーバーラップした部分相互間に口(マウス)の出口を構成することができる。ノズルは、ノズルの内側ケーシング区分及び外側ケーシング区分の互いにオーバーラップした部分を互いに押し離す複数のスペーサを有するのが良い。これは、開口部の周りに実質的に一様な出口幅を維持するのを助けることができる。スペーサは、好ましくは、出口に沿って等間隔に設けられる。
【0029】
ファン組立体により生じる送風の最大空気流量は、好ましくは、毎秒300〜800リットルであり、より好ましくは毎秒500〜800リットルである。
【0030】
第2の観点では、本発明は、送風を生じさせるファン組立体であって、複数個の孔が設けられたメッシュから成る側壁を備えた外側ケーシング、外側ケーシング内に配置されていて、空気入口及び空気出口を備えた羽根車ハウジング、羽根車ハウジング内に配置された羽根車及び羽根車を軸線回りに駆動して羽根車ハウジング中に空気流を生じさせるモータを有するベースを有し、メッシュの複数個の孔が、上述の軸線に沿って50mm以下の距離だけ羽根車ハウジングの空気入口から間隔を置いて位置し、ベースに取り付けられたノズルを更に有し、ノズルは、羽根車ハウジングの空気出口からの空気流を受け入れる内部通路及び口を有し、空気流がこの口を通ってファン組立体から放出されることを特徴とするファン組立体を提供する。
【0031】
本発明の第1の観点と関連して上述した特徴は、第2の観点に同じように適用でき、又その逆の関係が成り立つ。
【0032】
次に、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ファン組立体の正面図である。
【図2a】図1のファン組立体のベースの斜視図である。
【図2b】図1のファン組立体のノズルの斜視図である。
【図3】図1のファン組立体の断面図である。
【図4】図3の一部の拡大図である。
【図5(a)】図1のファン組立体の側面図であり、ファン組立体を非傾動位置で示す図である。
【図5(b)】図1のファン組立体の側面図であり、ファン組立体を第1の傾動位置で示す図である。
【図5(c)】図1のファン組立体の側面図であり、ファン組立体を第2の傾動位置で示す図である。
【図6】図1のファン組立体の上側ベース部材の平面側斜視図である。
【図7】図1のファン組立体の本体の背面側斜視図である。
【図8】図7の本体の分解組立て図である。
【図9(a)】ファン組立体が非傾動位置にあるときのベースに対する2つの断面の取り方を示す図である。
【図9(b)】図9(a)のA‐A線矢視断面図である。
【図9(c)】図9(a)のB‐B線矢視断面図である。
【図10(a)】ファン組立体が非傾動位置にあるときのベースに対する別の2つの断面の取り方を示す図である。
【図10(b)】図10(a)のC‐C線矢視断面図である。
【図10(c)】図10(a)のD‐D線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、ファン組立体10の正面図である。ファン組立体10は、好ましくは、ベース12と、ベース12に取り付けられると共にこれによって支持されたノズル14とを有する羽根なしファン組立体の形態をしている。図2aを参照すると、ベース12は、実質的に円筒形の外側ケーシング16を有し、この外側ケーシングは、外側ケーシング16に設けられている孔の形態をした複数個の空気入口18を有し、一次空気流は、外部環境からこれら空気入口を通ってベース12内に引き込まれる。ベース12は、ファン組立体10の動作を制御する複数個のユーザにより操作可能なボタン20及びユーザにより操作可能なダイヤル22を更に有している。この例では、ベース12の高さは、200〜300mmであり、外側ケーシング16の外径は、100〜200mmである。
【0035】
更に図2bを参照すると、ノズル14は、環状の形をしており、このノズルは、中央開口部24を画定又は構成している。ノズル14の高さは、200〜400mmである。ノズル14は、ファン組立体10の後部寄りに設けられていて、空気をファン組立体10から開口部24を通って放出する口(マウス)26を有している。口26は、開口部24周りに少なくとも部分的に延びている。ノズル14の内周部は、口26に隣接して設けられたコアンダ面28を有し、口26は、ファン10から放出された空気をコアンダ面28上でこれに沿って差し向け、ノズル14の内周部は更に、コアンダ面28の下流側に位置するディフューザ面30及びディフューザ面30の上流側に位置する案内面32を有している。ディフューザ面30は、ファン組立体10から放出される空気の流れを助けるために開口部24の中心軸線Xから遠ざかってテーパするよう配置されている。ディフューザ面30と開口部24の中心軸線Xとのなす角度は、5°〜25°であり、この例では約15°である。案内面32は、ファン組立体10からの冷却用空気流の効率的な送り出しを一段と助けるようディフューザ面30に対して角度をなして配置されている。案内面32は、好ましくは、実質的に平らで且つ実質的に滑らかなフェースを口26から放出された空気流に提供するよう開口部24の中心軸線Xに実質的に平行に配置されている。見栄えの良いテーパ付き表面34が、案内面32から見て下流側に設けられており、開口部24の中心軸線Xに実質的に垂直に位置する先端面36で終端している。テーパ面34と開口部24の中心軸線Xとのなす角度は、好ましくは約45°である。開口部24の中心軸線Xに沿って延びる方向におけるノズル24の全深さは、100〜150mmであり、この例では、約110mmである。
【0036】
図3は、ファン組立体10の断面図である。ベース12は、下側ベース部材38、下側ベース部材38に取り付けられた中間ベース部材40及び中間ベース部材40に取り付けられた上側ベース部材40を有する。下側ベース部材38は、実質的に平らな底面43を有している。中間ベース部材40は、図1及び図2に示されたユーザにより操作可能なボタン20の押し下げ及び/又はユーザにより操作可能なダイヤル22の操作に応答してファン組立体10の動作を制御するコントローラ44を収容している。中間ベース部材40は、中間ベース部材40及び上側ベース部材40を下側ベース部材38に対して揺動させる揺動機構体46を更に収容するのが良い。上側ベース部材42の各揺動サイクルの範囲は、好ましくは60°〜120°であり、この例では、約90°である。この例では、揺動機構体46は、毎分約3〜5回の揺動サイクルを実施するよう構成されている。電源ケーブル48が、電力をファン組立体10に供給するために下側ベース部材38に形成された孔を貫通している。
【0037】
ベース12の上側ベース部材42は、開放上端部を有する。上側ベース部材42は、孔のアレイが形成された円筒形グリルメッシュ50を有している。各孔相互間には、「ランド」と呼ばれる側壁領域が存在している。孔は、ベース12の空気入口18となる。円筒形ベースの全表面積の一部は、孔の全表面積に等しい開放面積である。図示の実施形態では、開放面積は、全メッシュ面積の33%であり、各孔の直径は、1.2mmであり、孔の中心間距離は1.8mmであり、各孔相互間には0.6mmのランドが形成されている。孔開放面積は、空気流がファン組立体中に入るのに必要であるが、孔が大きいと、モータからの振動及び騒音が外部環境に伝わる場合がある。開放面積を約30%〜45%とすることが騒音の放出を阻止するためのランドとファン組立体中への空気の自由で制約されない流入のための開口部との間の妥協策である。
【0038】
上側ベース部材42は、グリルメッシュ50の孔を通って主要空気流量をベース12中に引き込むための羽根車52を収容している。好ましくは、羽根車52は、混流型羽根車の形態をしている。羽根車52は、モータ56から外方に延びる回転シャフト54に連結されている。この例では、モータ56は、ダイヤル22のユーザによる操作に応答して速度がコントローラ44によって変化するDCブラシレスモータである。モータ56の最大速度は、好ましくは、5,000〜10,000rpmである。モータ56は、モータバケット内に収容され、このモータバケットは、上側部分58を下側部分60に連結したものである。モータバケットは、モータバケットリテーナ63により上側ベース部材42内に保持されている。上側ベース部材42の上端部は、円筒形外面65を有している。モータバケットリテーナ63は、例えばスナップ嵌め連結方式により上側ベース部材42の開放上端部に連結されている。モータ56及びそのモータバケットは、モータバケットリテーナ63にはしっかりとは連結されておらず、上側ベース部材42内におけるモータ56の或る程度の運動が可能である。
【0039】
モータバケットリテーナ63は、モータバケットリテーナ63の上端部から内方に延びる湾曲したベーン部分65a,65bを有している。各湾曲ベーン65a,65bは、モータバケットの上方部分58の一部とオーバーラップしている。かくして、モータバケットリテーナ63及び湾曲ベーン65a,65bは、モータバケットを移動及び取り扱い中、固定すると共にこれを定位置に保持するよう働く。特に、モータバケットリテーナ63は、ファン組立体10が逆さまになった場合でも、モータバケットが外れてノズル14に向かって落下するのを阻止する。
【0040】
モータバケットの上側部分58及び下側部分60のうちの一方は、螺旋フィン62aを備えた静止円板の形態をしていて、羽根車52から見て下流側に配置されたディフューザ62を有する。螺旋フィン62aのうちの1つは、上側ベース部材42を垂直に通る線に沿って断面で見て、実質的に逆U字形断面を有する。この螺旋フィン62aは、電力接続ケーブルがフィン62aを貫通することができるよう形作られている。
【0041】
モータバケットは、羽根車ハウジング64内に配置されると共にこれに取り付けられている。羽根車ハウジング64は、ベース12の上側ベース部材42内に配置されている複数個の角度間隔を置いた支持体66、この例では3つの支持体に取り付けられている。全体として切頭円錐形のシュラウド68が、羽根車ハウジング64内に設けられている。シュラウド68は、羽根車52の外縁部がシュラウド68の内面に密接するが、これには接触しないよう形作られている。実質的に環状の入口部材70が、一次空気流を羽根車ハウジング64内に案内するために羽根車ハウジング64の底部に連結されている。グリルメッシュ50の頂部は、入口部材70よりも約5mmだけ上方に間隔を置いて位置している。グリルメッシュ50の高さは、好ましくは、約25mmであるが、15〜35mmであっても良い。羽根車ハウジング64の頂部は、羽根車ハウジング64から放出された空気流をノズル14に向かって案内する実質的に環状の空気出口71を有している。
【0042】
好ましくは、ベース12は、ベース12から出る騒音を減少させる消音化部材を更に有する。この例では、ベース12の上側ベース部材42は、上側ベース部材42のベース寄りに配置された円板形フォーム部材72及び羽根車ハウジング64内に配置された実質的に環状のフォーム部材74を有している。グリルメッシュ50の底部は、円板形フォーム部材72の上面と実質的に同一の高さに且つこれに密接して配置されている。
【0043】
この実施形態では、空気入口部材70は、円板形フォーム部材72から約17〜20mmの距離だけ間隔を置いて位置している。上側ベース部材42の空気入口領域の表面積は、空気入口部材70の周長に空気入口部材70から円板形フォーム部材72の上面までの距離を乗算して得られた値であると考えられる。図示の実施形態における空気入口領域の表面積は、モータからの反射騒音及び振動を吸収するのに必要なフォームの体積と毎秒最高30リットルの主要流量を可能にするよう寸法決めされた空気入口領域のバランスを取っている。フォームの体積が大きいファン組立体は、空気入口領域を必然的に減少させ、それにより、羽根車中への空気流の絞り又はつまみが生じる。羽根車及びモータへの空気の流量を制限することにより、モータは、チョークし又は歪を起こし、過度の騒音を発生させる。
【0044】
可撓性密封部材が、羽根車ハウジング64に取り付けられている。可撓性密封部材は、外部環境から引き込まれた主要空気流を羽根車52の空気出口71及びディフューザ62から放出された空気流から分離することにより、外側ケーシング16と羽根車ハウジング64との間に延びる経路に沿う空気入口部材70への空気の戻りを阻止する。密封部材は、好ましくは、リップシール76から成る。密封部材は、形状が環状であり、羽根車ハウジング64から外側ケーシング16に向かって外方に延びる状態で羽根車ハウジング64を包囲している。図示の実施形態では、密封部材の直径は、羽根車ハウジング64から外側ケーシング16までの半径方向距離よりも大きい。かくして、密封部材の外側部分77は、外側ケーシング16に押し付けられ、それにより、外側ケーシング16の内面又は内側フェースに沿って延び、リップを形成している。好ましい実施形態のリップシール76は、これが羽根車ハウジング64から遠ざかって外側ケーシング16に向かって延びるにつれて、先端部78までテーパすると共に細まっている。リップシール76は、好ましくは、ゴムで作られている。
【0045】
リップシール76は、電力接続ケーブルをモータ56まで案内する案内部分を更に有している。図示の実施形態の案内部分79は、カラーの形態をしており、この案内部分は、グロメットであるのが良い。
【0046】
図4は、ノズル14の断面図である。ノズル14は、環状の外側ケーシング区分80を有し、この外側ケーシング区分は、環状の内側ケーシング区分82に連結された状態でこの周りに延びている。これら区分の各々は、複数個の互いに連結された部品で形成されても良いが、この実施形態では、外側ケーシング区分80及び内側ケーシング区分82の各々は、それぞれ単一の成形部品で作られている。内側ケーシング区分82は、ノズル14の中央開口部24を構成し、この内側ケーシング区分は、コアンダ面28、ディフューザ面30、案内面32及びテーパ面34を備えるよう形作られた外周面84を備えている。
【0047】
外側ケーシング区分80と内側ケーシング区分82は一緒になって、ノズル14の環状内部通路86を構成している。かくして、内部通路86は、開口部24周りに延びている。内部通路86は、外側ケーシング区分80の内周面88及び内側ケーシング区分82の内周面90によって画定又は構成されている。外側ケーシング区分80は、例えばスナップ嵌め連結方式によってスタンド12の上側ベース部材42の開放上端部に連結されると共にこれを覆っているベース92を有する。外側ケーシング区分80のベース92は、一次空気流がベース12の上側ベース部材42の上端部及びモータバケットリテーナ63の開放上端部からノズル14の内部通路86に流入するようかかる一次空気流を通す孔を有している。
【0048】
ノズル14の口26は、ファン組立体10の後部寄りに配置されている。口26は、外側ケーシング区分80の内周面88及び内側ケーシング区分82の外周面84のそれぞれの互いにオーバーラップした又は向かい合った部分94,96によって画定されている。この例では、口26は、実質的に環状であり、図4に示されているように、この口は、ノズル14を直径方向に通る線に沿って見て実質的にU字形の断面を有する。この例では、外側ケーシング区分80の内周面88及び内側ケーシング区分82の外周面84の互いにオーバーラップした部分94,96は、口26が一次空気流をコアンダ面28上でこれに沿って差し向けるよう構成された出口98に向かってテーパするよう形作られている。出口98は、好ましくは0.5〜5mmの比較的一定の幅を有する環状スロットの形態をしている。この例では、出口98の幅は、約1.0mmである。外側ケーシング区分80の内周面88及び内側ケーシング区分82の外周面84の互いにオーバーラップした部分94,96を互いに押し離して出口98の幅を所望のレベルに維持するためのスペーサが口26の周りに間隔を置いて設けられるのが良い。これらスペーサは、外側ケーシング区分80の内周面88か内側ケーシング区分82の外周面84かのいずれかと一体であるのが良い。
【0049】
次に、図5(a)、図5(b)及び図5(c)を参照すると、上側ベース部材42は、ベース12の中間ベース部材40及び下側ベース部材38に対して、図5(b)に示されている第1の完全傾動位置と図5(c)に示されている第2の完全傾動位置との間で動くことができる。この軸線Xは、好ましくは、本体を図5(a)に示されている非傾動位置からこれら2つの完全傾動位置のうちの一方に動かすと、約10°の角度だけ傾けられる。上側ベース部材42及び中間ベース部材40の外面は、上側ベース部材42が非傾動位置にあるとき、上側ベース部材42及びベース12のこれら外面の隣接部分が互いに実質的に面一をなすよう形作られている。
【0050】
図6を参照すると、中間ベース部材40は、下側ベース部材38に取り付けられた環状下面100、実質的に円筒形の側壁102及び湾曲した上面104を有している。側壁102は、複数個の孔106を有している。ユーザにより操作可能なダイヤル22は、孔106のうちの1つから突き出ており、これに対し、ユーザにより操作可能なボタン20は、他の孔106を介して接近可能である。中間ベース部材40の湾曲した上面104は、形状が凹状であり、全体として鞍形であると形容できる。モータ56から延びる電気ケーブル110(図3に示されている)を受け入れる孔108が、中間ベース部材40の上面104に形成されている。
【0051】
図3に戻ってこれを参照すると、電気ケーブル110は、接合部112のところでモータに取り付けられたリボンケーブルである。モータ56から延びる電気ケーブル110は、モータバケットの下側部分60から出て螺旋フィン62aを貫通している。電気ケーブル110の通過経路は、羽根車ハウジング64の形状を辿り、リップシール76の案内部分79は、電気ケーブル110が可撓性密封部材を貫通することができるよう形作られている。リップシール76のカラーにより、電気ケーブルを上側ベース部材42内にクランプしてこれを保持することができる。カフ114が、電気ケーブル110を上側ベース部材42の下側部分内に収容している。
【0052】
中間ベース部材40は、上側ベース部材42を中間ベース部材40上に支持する4つの支持部材120を更に有している。支持部材120は、中間ベース部材40の上面104から上方に突き出ており、これら支持部材は、これらが互いに実質的に等距離を置くと共に上面104の中心から実質的に等距離を置いて位置するよう配置されている。第1の対をなす支持部材120は、図9(a)にB‐B線に沿って配置され、第2の対をなす支持部材120は、第1の対をなす支持部材120と平行である。さらに図9(b)及び図9(c)を参照すると、各支持部材120は、円筒形外壁122、開放上端部124及び閉鎖下端部126を有している。支持部材120の外壁122は、ボールベアリング(球状支承体)の形態の転動要素128を包囲している。転動要素128は、好ましくは、円筒形外壁122の半径よりも僅かに小さい半径を有し、従って、転動要素128は、支持部材120によって保持された状態でこの中で動くことができるようになっている。転動要素128は、支持部材120の閉鎖下端部126と転動要素128との間に設けられた弾性要素130により中間ベース部材40の上面104から押し離されており、その結果、転動要素128の一部が支持部材120の開放上端部124を越えて突き出るようになっている。この実施形態では、弾性部材130は、コイルばねの形態をしている。
【0053】
図6に戻ってこれを参照すると、中間ベース部材40は、上側ベース部材42を中間ベース部材40上に保持する複数本のレールを更に有している。レールは又、中間ベース部材40に対する上側ベース部材42の運動を案内するのに役立ち、従って、上側ベース部材42を傾動位置から動かし又は傾動位置に動かしているときに、中間ベース部材40に対する上側ベース部材42の捩り又は回転が実質的に生じないようになっている。レールの各々は、軸線Xに実質的に平行な方向に延びている。例えば、レールのうちの1本は、図10(a)に示されたD‐D線に沿って位置している。この実施形態では、複数本のレールは、1対の比較的短い外側レール142相互間に位置した1対の比較的長い内側レール140を有している。さらに図9(b)及び図10(b)を参照すると、内側レール140の各々は、逆L字形の形態の断面を有し、各内側レールは、それぞれの1対の支持部材120相互間に延び、中間ベース部材40の上面104に連結された状態でこれから直立した壁144を有している。内側レール140の各々は、壁144の長さに沿って延びると共に壁144の頂部から隣接の外側案内レール142に向かって直角に突き出た湾曲フランジ146を更に有している。外側レール142の各々も又、逆L字形の形態の断面を有し、各外側レールは、中間ベース部材40の上面に連結された状態でこれから直立した壁148及び壁148の長さに沿って延びると共に壁148の頂部から直角に隣接の内側案内レール140から突き出た湾曲フランジ150を有している。
【0054】
次に図7及び図8を参照すると、上側ベース部材42は、実質的に円筒形の側壁160、環状の下端部162及び凹部を構成するよう上側ベース部材42の下端部162から間隔を置いて位置した湾曲ベース164を有している。グリルメッシュ50は、好ましくは、側壁160と一体である。上側ベース部材42の側壁160は、中間ベース部材40の側壁102と実質的に同一の外径を有している。ベース164は、形状が凸状であり、一般に逆鞍形を有するものとして形容可能である。ケーブル110が上側ベース部材42のベース164からカフ114内に延びることができるようにする孔166がベース164に形成されている。2対の停止部材168が、ベース164の周囲から上方に延びている(図8に示されている)。停止部材168の各対は、軸線Xに実質的に平行な方向に延びる線に沿って位置している。複数の対をなす停止部材168のうちの1対の停止部材は、図10(a)に示されたD‐D線に沿って位置している。
【0055】
凸状チルトプレート又は傾動板170が、上側ベース部材42のベース164に連結されている。傾動板170は、上側ベース部材42の凹部内に配置されており、この傾動板は、上側ベース部材42のベース164と実質的に同一の曲率を有している。停止部材168の各々は、傾動板170の周囲に沿って設けられた複数個の孔172の各々からそれぞれ突き出ている。傾動板170は、中間ベース部材40の転動要素128に係合する1対の凸状レース174を構成するよう形作られている。各レース174は、軸線Xに実質的に平行な方向に延びており、各レースは、図9(c)に示されているように、対応のそれぞれ1対の支持部材120の転動要素128を受け入れるよう配置されている。
【0056】
傾動板170は、複数個のランナを更に有し、これらランナの各々は、中間ベース部材40のそれぞれ対応のレールの下に少なくとも部分的に配置され、かくして、そのレールと協働して上側ベース部材42を中間ベース部材40上に保持すると共に中間ベース部材40に対する上側ベース部材42の運動を案内するよう構成されている。かくして、ランナの各々は、軸線Xに実質的に平行な方向に延びている。例えば、ランナのうちの1つは、図10(a)に示されたD‐D線に沿って位置している。この実施形態では、複数個のランナは、1対の比較的短い外側ランナ182相互間に位置した1対の比較的長い内側ランナ180を含む。さらに図9(b)及び図10(b)を参照すると、内側ランナ180の各々は、逆L字形の形態の断面を有し、各内側ランナは、実質的に垂直の壁184及び壁184の頂部の一部から直角に且つ内方に突き出た湾曲フランジ186を有している。各内側ランナ180の湾曲フランジ186の曲率は、各内側レール140の湾曲フランジ146の曲率と実質的に同一である。外側ランナ182の各々も又、逆L字形の形態の断面を有し、各外側ランナは、実質的に垂直な壁188及び湾曲フランジ190を有し、この湾曲フランジは、壁188の長さに沿って延びると共に壁188の頂部から直角に且つ内方に突き出ている。この場合も又、各外側ランナ182の湾曲フランジ190の曲率は、各外側レール142の湾曲フランジ150の曲率と実質的に同一である。傾動板170は、電気ケーブル110を受け入れる孔192を更に有している。
【0057】
上側ベース部材42を中間ベース部材40に連結するために、傾動板170を図7及び図8に示された向きから逆さまにし、傾動板170のレース174を中間ベース部材40の支持部材120の真後ろにこれと一線をなして配置する。上側ベース部材42の孔166を通って延びている電気ケーブル110を傾動板170及び中間ベース部材40のそれぞれの孔108,192に通し、次に図3に示されているようにコントローラ44に接続するのが良い。次に、傾動板170を中間ベース部材40上でこれに沿って滑らせて転動要素128が図9(b)及び図9(c)に示されているようにレース174に係合するようにし、各外側ランナ182の湾曲フランジ190が図9(b)及び図10(b)に示されているようにそれぞれの外側レール142の湾曲フランジ150の下に配置し、各内側ランナ180の湾曲フランジ186を図9(b)、図10(b)及び図10(c)に示されているようにそれぞれの内側レール140の湾曲フランジ146の下に配置するようにする。
【0058】
傾動板170を中間ベース部材40上の中央に位置決めした状態で、上側ベース部材42を傾動板170上に下降させ、停止部材168が傾動板170の孔172内に配置されると共に傾動板170が上側ベース部材42の凹部内に収容されるようにする。次に、中間ベース部材40及び上側ベース部材42を逆さまにし、ベース部材40を軸線Xの方向に沿って変位させて傾動板170に設けられている第1の複数個の孔194aが現われるようにする。これら孔194aの各々を上側ベース部材42のベース164に設けられている管状突出部196aに位置合わせする。セルフタッピンねじを孔194aの各々にねじ込んでこれが下に位置する突出部196aに入るようにし、それにより傾動板170を上側ベース部材42に部分的に連結する。次に、中間ベース部材40を逆方向に変位させて傾動板170に設けられている第2の複数個の孔194bが現われるようにする。これら孔194bの各々も又、上側ベース部材42のベース164に設けられている管状突出部196bに位置合わせする。セルフタッピンねじを孔194bの各々にねじ込んでこれが下に位置する突出部196に入り、それにより上側ベース部材42に対する傾動板170の連結を完了させる。
【0059】
上側ベース部材42を中間ベース部材40に取り付け、下側ベース部材38の底面43を支持面上に位置決めすると、上側ベース部材42は、支持部材120の転動要素128によって支持される。支持部材120の弾性要素130は、上側ベース部材42を傾動させたときに、中間ベース部材40の上面の擦りを阻止するのに十分な距離だけ転動要素128を支持部材120の閉鎖下端部126から押し離す。例えば、図9(b)、図9(c)、図10(b)及び図10(c)の各々に示されているように、上側ベース部材42の下端部162は、上側ベース部材42を傾動させたときに、中間ベース部材40の上面104との接触が阻止されるようかかる上面から押し離される。さらに、弾性要素130の作用により、ランナの湾曲フランジ186,190の凹状上面がレールの湾曲フランジ146,150の凸状下面に押し付けられる。
【0060】
上側ベース部材42を中間ベース部材40に対して傾動させるため、ユーザは、上側ベース部材42を軸線Xに平行な方向に滑らせて上側ベース部材42を図5(b)及び図5(c)に示された完全傾動位置のうちの一方に向かって動かし、それにより転動要素128がレース174に沿って動くようにする。上側ベース部材42がいったん所望の位置になると、ユーザは、上側ベース部材42を解除し、この上側ベース部材は、ランナの湾曲フランジ186,190の凹状上面と重力の作用で図5(a)に示された非傾動位置に向かう上側ベース部材42の運動に抵抗するよう作用するレールの湾曲フランジ146,150の凸状下面との間の接触により生じた摩擦力によって所望の位置に保持されている。上側ベース部材42の完全傾動位置は、各対の停止部材168のうちの1つと対応の内側レール140の相互当接によって定められる。
【0061】
ファン組立体10を作動させるため、ユーザは、ベース12のボタン20のうちの適当な1つを押し、これに応答して、コントローラ44は、モータ56を作動させて羽根車52を回す。羽根車52の回転により、一次空気流が空気入口18を通ってベース12内に引き込まれる。一次空気流は、モータの速度に応じて、毎秒20〜30リットルであるのが良い。一次空気流は、羽根車ハウジング64及び上側ベース部材42の上端部及びモータバケットリテーナ63の開放上端部を順次通ってノズル14の内部通路86に入る。空気出口71からの一次空気流の放出方向は、前方且つ上方の方向である。ノズル14内において、一次空気流は、ノズル14の中央開口部24周りに互いに逆方向に進む2つの部分空気流に分割される。ノズル14に側方から流入した一次空気流の一部は、それほど案内されることなく、内部通路86中に側方に入り、ノズル14にX軸線に平行な方向で流入した一次空気流の別の一部は、モータバケットリテーナ63の湾曲ベーン65a,65bによって案内され、それにより一次空気流は、内部通路86中に側方に流入することができる。ベーン65a,65bにより、空気流をX軸線に平行な方向から遠ざかる方向に差し向けることができる。部分空気流は、内部通路86を通過する際、空気は、ノズル14の口26に流入する。口26内への空気流は、好ましくは、ノズル14の開口部24周りにおいて実質的に均等である。口26の各区分内において、部分空気流の一部分の流れ方向が実質的に逆になる。部分空気流の一部分は、口26のテーパ付き区分により絞られ、出口98を通って放出される。
【0062】
口26から放出された一次空気流は、ノズル14のコアンダ面28上でこれに沿って差し向けられ、それにより外部環境からの、特に口26の出口98周りの領域及びノズル14の後部周りからの空気の同伴によって二次空気流が生じる。この二次空気流は、ノズル14の中央開口部24を通り、ここで、二次空気流は、一次空気流と合流し、それによりノズル14から前方に放出される全空気流又は風が生じる。モータ56の速度に応じて、ファン組立体10から前方に放出される空気の流れの質量流量は、毎秒最大400リットル、好ましくは毎秒最大600リットルになる場合があり、送風の最大速度は、2.5〜4m/sになる場合がある。
【0063】
ノズル14の口26に沿う一次空気流の均等な分布により、空気流は、ディフューザ面30上でこれに沿って一様に流れるようになる。ディフューザ面30により、空気流が膨張の制御された領域を通って動くようになるので空気流の平均速度が減少する。開口部24の中心軸線Xに対するディフューザ面30の比較的浅い角度により、空気流の膨張は、徐々に起こることができる。もしそうでなければ、強烈な又は迅速な広がりにより空気流は、乱れて膨張領域中に渦が生じる。かかる渦により、空気流中に生じる乱流及び関連の騒音が増大する場合があり、このことは、特に家庭用製品、例えばファンでは望ましくない場合がある。ディフューザ面30を越えて前方に放出された空気流は、引き続き広がる傾向がある。開口部30の中心軸線Xに実質的に平行に延びる案内面32が設けられているので、空気流は一段と収斂又は集中する。その結果、空気流は、効率的にノズル14から出て行くことができ、それによりファン組立体10から数メートルの距離を置いたところで空気流を迅速に受けることができる。
【0064】
本発明は、上述の詳細な説明には限定されない。当業者には変形例が明らかであろう。
【0065】
例えば、消音化部材及び消音化コンポーネント、例えば消音化フォーム又は吸音フォームは、任意の形状に形成でき又は任意適当な構造のものであって良い。例えば、フォームの密度及び種類を変更しても良い。モータバケットリテーナ及び密封部材は、上述した寸法形状とは異なる寸法形状を有して良く、これらは、ファン組立体内に別の位置に配置されても良い。密封部材で気密シールを形成する技術は、別の仕方であっても良く、かかる技術としては、追加の要素、例えばグルー又は取り付け具の使用が挙げられる。密封部材、案内部分、ベーン及びモータバケットリテーナは、適当な強度及び適当な可撓性又は剛性を備えた任意の材料、例えば、フォーム、プラスチック、金属又はゴムで形成できる。ベースに対する上側ベース部材42の運動を電動化し、ユーザがボタン20のうちの1つを押すことによって作動されても良い。
【0066】
本発明は、以下のような態様であっても良い。
(1)外側ケーシングは、少なくとも1つの空気入口が設けられた側壁を備えている。
(2)ベースは、羽根車ハウジングの空気入口の下に軸線に沿って空気入口から5mm〜60mmの距離だけ間隔を置いて設けられた消音化部材を有する。
(3)消音化部材は、空気入口から10mm〜20mmの距離だけ間隔を置いて位置している。
(4)消音化部材は、吸音フォームから成る。
(5)ファン組立体は、羽根なしである。
(6)ノズルは、口に隣接して設けられたコアンダ面を有し、口は、空気流をコアンダ面上でこれに沿って差し向けるよう構成されている。
【符号の説明】
【0067】
10 ファン組立体
12 ベース
14 ノズル
24 開口部
26 口又はマウス
28 コアンダ面
30 ディフューザ面
32 案内面
46 揺動機構体
52 羽根車
56 モータ
64 羽根車ハウジング
70 空気入口
72,74 フォーム部材
86 内部通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風を生じさせるファン組立体であって、複数の孔を備えた空気入口を有するとともに、空気入口及び空気出口を備えた羽根車ハウジングを収容した外側ケーシングと、前記羽根車ハウジング内に配置された羽根車と、前記羽根車を軸線回りに駆動して前記羽根車ハウジング中に空気流を生じさせるモータとを有するベースであって、前記羽根車ハウジングの前記空気入口が、前記外側ケーシングの前記空気入口の上端と下端との間に位置する、ベースと、
前記ベースに取り付けられたノズルと、を有し、
前記ノズルは、前記羽根車ハウジングの前記空気出口からの前記空気流を受け入れる内部通路と、口であって、前記空気流が前記口を通って前記ファン組立体から放出される口と、前記ファン組立体の外部からの空気を前記口から放出された空気流により引き込むよう通る開口部と、を有する、ファン組立体。
【請求項2】
前記羽根車が駆動される前記軸線は、前記ベースが水平面上に置かれると、実質的に垂直である、請求項1に記載のファン組立体。
【請求項3】
前記ベースは、実質的に円筒形である、請求項1または2に記載のファン組立体。
【請求項4】
前記ノズルは、開口部を構成するようノズル軸線回りに延び、前記ファン組立体の外部からの空気は、前記口から放出された前記空気流により前記開口部を通って引き込まれる、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のファン組立体。
【請求項5】
前記外側ケーシングの各孔は、前記ノズル軸線に実質的に垂直に配置されている、請求項4記載のファン組立体。
【請求項6】
前記複数の孔は、前記ノズル軸線に実質的に垂直な第2の軸線回りに延びる、請求項4又は5記載のファン組立体。
【請求項7】
前記外側ケーシングの各孔から前記羽根車ハウジングの前記空気入口まで延びる流路を有し、前記羽根車ハウジングの前記空気入口は、前記外側ケーシングの各孔に実質的に垂直である、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のファン組立体。
【請求項8】
前記ベースは、下側ベース部材と、前記下側ベース部材に取り付けられた上側ベース部材とを有し、前記複数の孔は、前記上側ベース部材に形成され、前記羽根車ハウジング、前記羽根車、及び前記モータは、前記上側ベース部材内に配置されている、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のファン組立体。
【請求項9】
前記上側ベース部材を前記下側ベース部材に対して揺動させる揺動機構体を有する、請求項8に記載のファン組立体。
【請求項10】
前記上側ベース部材のベース寄りに配置された第1の消音化部材を有する、請求項8または9に記載のファン組立体。
【請求項11】
前記ケーシングの前記空気入口の底部は、前記第1の消音化部材の上面と実質的に同一の高さに配置されている、請求項10に記載のファン組立体。
【請求項12】
前記羽根車ハウジング内に配置された第2の消音化部材を有する、請求項1〜11のうちいずれか一に記載のファン組立体。
【請求項13】
前記第2の消音化部材は、環状である、請求項12記載のファン組立体。
【請求項14】
前記第2の消音化部材は、吸音フォームから成る、請求項12または13記載のファン組立体。
【請求項15】
前記羽根車ハウジングに取り付けられた可撓性密封部材を有する、請求項1〜14のうちいずれか一に記載のファン組立体。
【請求項16】
前記羽根車ハウジング内で且つ前記羽根車の下流側に配置されたディフューザを有する、請求項1〜15のうちいずれか一に記載のファン組立体。
【請求項17】
前記ベースは、前記羽根車ハウジングの前記空気出口からの空気流の一部分を、前記ノズルの前記内部通路の方に差し向ける手段を有する、請求項1〜16のうちいずれか一に記載のファン組立体。
【請求項18】
前記羽根車ハウジングの前記空気入口は、前記ケーシングの前記空気入口の底部よりも、前記ケーシングの前記空気入口の頂部により近く配置されている、請求項1〜17のうちいずれか一に記載のファン組立体。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【公開番号】特開2012−197797(P2012−197797A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140126(P2012−140126)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2010−65064(P2010−65064)の分割
【原出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(508032310)ダイソン テクノロジー リミテッド (286)
【Fターム(参考)】