説明

フィラメントワインディング装置

【課題】新旧ボビンを自動交換し、同時に新旧ボビンの糸条端を自動的に繋いで、フィラメントワインディング装置の全自動化と高速化を実現する。
【解決手段】フープ巻装置とヘリカル巻装置と、ヘリカル巻装置に一群の糸条を供給するフィラメント供給装置とを有する。フィラメント供給装置は、一群のボビンと、一群のボビン交換装置と、糸条を一時貯留するバッファ装置とからなる。ボビン交換装置は、新ボビンの複数個を保持するシュートと、シュートから受け取った新ボビンを支持するクレードルと、旧ボビンの糸条残量を検知する糸条残量センサーと、新旧ボビンの糸条端を繋ぐスプライサーと、新ボビンの糸条端を捕捉してスプライサーに渡す糸端処理装置と、クレードルから排出された旧ボビンを回収する回収装置を含む。クレードルは、糸条供給位置とボビン補充位置との間を往復変位して、両位置の間で旧ボビンを回収装置に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条巻付装置に対して一群の糸条を供給する供給装置を備えているフィラメントワインディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィラメントワインディング法で圧力容器を形成する場合には、繊維束をマンドレルに対してフープ巻きし、あるいはヘリカル巻きすることにより補強層を形成する。本出願人は、フープ巻装置とヘリカル巻装置とを個別に備えていて、フープ巻き処理とヘリカル巻き処理をそれぞれ専用装置で効率よく行えるフィラメントワインディング装置を提案している。このワインディング装置によれば、従来装置に比べてワインディング処理の自動化と高速化を実現できる。
【0003】
上記のワインディング装置では、フィラメント供給装置に設けた一群のボビンから糸条(繊維束)を供給するが、一連のワインディング処理の自動化を実現するうえで、ボビンの自動交換が不可欠となる。この種の関連技術として、リング紡績機におけるボビンの自動交換装置が公知である(特許文献1)。そこでは、糸条の残量が一定値以下になった旧ボビンを自動交換装置で懸垂保持体から取り外して回収ライン上の保持体へ渡し、糸条が満巻きされた状態の新ボビンを先の懸垂保持体に装填する。本発明のワインディング装置では、旧ボビン側の糸条端と新ボビンの糸条端とをスプライサーで繋ぐが、この種のスプライサーは例えば特許文献2に公知である。
【0004】
【特許文献1】特開平1−118634号公報(第5頁左下欄1行〜第6頁右上欄14行、図5〜図10)
【特許文献2】特開2006−52043号公報(段落番号0020、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先に説明したように、本発明装置では、フィラメント供給装置に設けた一群のボビンから糸条を供給するが、ボビンの自動交換を実現するには、以下の各事項を満足する必要がある。糸条残量を検知してボビンの適切な交換タイミングを決定すること、旧ボビンをボビン支持装置から取り外し、新ボビンを先の支持装置に装填すること、両ボビンの交換に並行して、旧ボビンの糸条端に新ボビンの糸条端を繋ぐこと、などである。特許文献1のボビンの自動交換装置は、基本的にリング紡績機用の糸条供給装置に適用するものである。そのため、特許文献1の自動交換装置を本発明のワインディング装置に適用したとしても、上記の必須事項を満足することは難しい。仮に適用できるとしても全体装置が極めて大掛かりになるのを避けられない。
【0006】
本発明の目的は、適切な交換タイミングで新旧ボビンを交換し、同時に新旧ボビンの糸条端を自動的に繋いで、ワインディング処理の全自動化と高速化を実現できるフィラメントワインディング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィラメントワインディング装置は、フープ巻装置およびヘリカル巻装置と、例えばヘリカル巻装置に一群の糸条を供給するフィラメント供給装置とを備えている。フィラメント供給装置は、一群のボビンと、旧ボビンと満巻き状態の新ボビンとを交換する一群のボビン交換装置と、旧ボビンから繰り出される糸条を一時貯留するバッファ装置とを備えている。
【0008】
ボビン交換装置は、満巻き状態の新ボビンの複数個を保持するボビン保持体と、ボビン保持体から受け取った新ボビンを回転自在に支持するクレードルと、旧ボビンの糸条残量が一定値以下になったことを検知する糸条残量センサーと、旧ボビンの糸条端と新ボビンの糸条端とを繋ぐスプライサーと、新ボビンの糸条端を捕捉してスプライサーに渡す糸端処理装置と、クレードルから排出された旧ボビンを回収する回収装置を含む。
【0009】
糸端処理装置は、新ボビンの糸条端を吸引捕捉する捕捉アームを備えている。捕捉アームは、クレードルで糸条供給位置に保持された新ボビンの表面から糸条端を吸引捕捉する糸端捕捉位置と、吸引捕捉した糸条端をスプライサーに渡す中継位置と、待機位置との間を往復変位できるよう構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、フープ巻装置とヘリカル巻装置と、ヘリカル巻装置に一群の糸条を供給するフィラメント供給装置などでフィラメントワインディング装置を構成した。また、一群のボビンと、旧ボビンと満巻き状態の新ボビンとを交換する一群のボビン交換装置と、旧ボビンから繰り出される糸条を一時貯留するバッファ装置などでフィラメント供給装置を構成した。さらに、ボビン保持体と、ボビンを回転自在に支持するクレードルと、糸条残量センサーと、新旧ボビンの糸条端を繋ぐスプライサーと、新ボビンの糸条端を捕捉してスプライサーに渡す糸端処理装置などでボビン交換装置を構成した。以上のように構成したフィラメント供給装置によれば、新旧ボビンの交換タイミングを糸条残量センサーで適切に決定できる。また、バッファ装置に貯留した糸条をヘリカル巻装置に供給する間に、ボビン交換装置で新旧ボビンを自動的に交換し、新旧ボビンの糸条端どうしを自動的に繋ぐことができる。
【0011】
上記のように本発明のフィラメントワインディング装置によれば、適切な交換タイミングで新旧ボビンを交換し、同時に新旧ボビンの糸条端を自動的に繋いで、ワインディング処理の全自動化を実現できる。また、フープ巻き処理とヘリカル巻き処理をそれぞれ専用の装置で効率よく行って、ワインディング処理を高速化できる。したがって、本発明のフィラメントワインディング装置によれば、ワインディング処理の全自動化と高速化を同時に実現して、圧力容器に代表されるワインディング製品の生産性を向上し製造コストを削減できる。適切な交換タイミングで新旧ボビンを交換するので、旧ボビンに巻かれた糸状の無駄を最小限化できる利点もある。
【0012】
捕捉アームを含む糸端処理装置によれば、捕捉アームが糸端捕捉位置と待機位置との間を往復変位する間に、クレードルで保持された新ボビンの表面から糸条端を捕捉アームで吸引捕捉して、スプライサーに渡すことができる。糸条端を受け取ったスプライサーは、新旧ボビンの糸条端どうしを繋いで、両ボビンの糸状を連続させる。このような糸条の接続形態によれば、新ボビンの糸条をスプライサーに渡すだけの単純な動作で新旧ボビンの糸条端の接続を行えるので、両糸条端の自動接続を常に確実に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例) 図1ないし図7は、本発明に係るフィラメントワインディング装置の実施例を示す。図3において、フィラメントワインディング装置は、フィラメント供給装置1と、巻付装置2とで構成する。
【0014】
巻付装置2は、左右に長い基台3と、基台3の上部に配置されるマンドレルMの支持台4と、フープ巻装置5と、ヘリカル巻装置6と、図示していないマンドレル交換装置などで構成する。支持台4およびフープ巻装置5は、それぞれ図示していない駆動機構で基台3の長手方向に沿って往復動自在に駆動される。ヘリカル巻装置6は基台3の中央位置に基台3を跨ぐ状態で固定してあり、先のフィラメント供給装置1に設けた一群のボビン30から送給される糸条RをマンドレルMに巻き掛ける。
【0015】
最終製品が圧力容器である場合のマンドレルMは、高強度アルミニウム材、ステンレス材などの金属材、あるいは樹脂成形品などで容器状に構成する。この実施例では図3に示すように、マンドレルMが、中央の円筒部と、円筒部の両端に連続するドーム部と、ドーム部の頂部に突設される口部とを一体に備えている場合について説明する。糸条Rは、例えばガラス繊維や炭素繊維の束からなる。先のフィラメント供給装置1のボビン30に巻き込まれた糸条Rには、予め熱硬化性の樹脂が含浸させてある。なお、必要があればボビン30から繰り出した糸条Rに溶融した樹脂を含浸させた後、ヘリカル巻装置2に送給することができる。
【0016】
支持台4は、基台3上のレール7で移行案内されるベース8と、ベース8の両側端に立設される支持腕9・9と、支持腕9・9の上端対向面に設けられるチャック10・10などで構成する。マンドレルMの交換を容易化するために両支持腕9・9は、ベース8に対して起立姿勢から横臥姿勢へ切り換え可能に構成してある。
【0017】
マンドレルMの左右両側には一対の取付治具11が固定してあり、これらの取付治具11をチャック10で掴み支持することにより、マンドレルMを水平姿勢に支持できる。片方のチャック10は図示していない駆動構造で回転駆動される。図示していないマンドレル交換装置で左右の取付治具11を支持し、この状態でチャック10を開放状態にし、さらに左右の支持腕9を外開き状に横臥させることにより、巻き付け処理が終わったマンドレルMを取り出すことができる。また、逆の手順に従って新規なマンドレルMを支持台4に装填することができる。
【0018】
図3においてフープ巻装置5は、基台3上のレール14で移行案内されるフレーム15と、フレーム15で回転自在に支持される円盤状の巻掛テーブル16と、巻掛テーブル16を回転駆動する駆動機構などを主な構造体にして構成する。巻掛テーブル16の一側には、テーブル周縁に沿って均等配置される4個のボビン17と、ボビン17から繰り出される糸条RをマンドレルMへ移行案内するガイド部材などを設ける。巻掛テーブル16の中央には挿通穴が開口してあり、マンドレルMは挿通穴を貫通する状態で巻掛テーブル16と交差配置される。フープ巻装置5における糸条Rは、先に説明した糸条Rと同じであるが、ボビン17からマンドレルMへ糸条Rを供給する過程で、熱硬化性の溶融した樹脂を含浸させる点が異なる。そのための塗布装置などは図示省略している。
【0019】
図3および図4においてヘリカル巻装置6は、中央に円形の挿通穴20を有する門形のフレーム21と、挿通穴20の周縁に配置されるガイドリング22と、ガイドリング22の両側に配置される張力調整部23などで構成する。図示していないが、ガイドリング22の周囲には一群の補助ガイドが配置され、ガイドリング22には一群のガイド穴が貫通形成してある。さらに、各ガイド穴に対応する開繊ガイドが、ガイドリング22の内面側に設けてある。マンドレルM1はフレーム21と直交する状態で挿通穴20の中央部分に支持される。
【0020】
フィラメント供給装置1から送給される糸条Rは、フレーム21の外側方に配置したガイドローラー24(図3参照)で変向案内され、張力調整部23で所定の張力を付与されたのち、ガイドリング22のガイド穴へと案内される。先に説明したようにフレーム21は基台3の長手方向の中央部分に固定してある。したがって、マンドレルM1を往復操作しながら所定角度だけ回転操作することにより、ガイドリング22で案内された糸条RをマンドレルM1の周面の長手方向に沿って巻き付けることができる。
【0021】
フィラメント供給装置1は、一群のボビン30と、旧ボビン30aと満巻き状態の新ボビン30とを交換する一群のボビン交換装置31と、旧ボビン30aから繰り出される糸条Rを一時貯留するバッファ装置32などで構成する。図1および図2にボビン交換装置31の概略を示す。
【0022】
ボビン交換装置31は、フレーム34を基体にして構成してあり、その上部から順に、クレードル35と、ガイドローラー37と、スプライサー38と、糸端処理装置39と、糸条残量センサー40などを配置して構成する。フレーム34の上方一側には、満巻き状態の新ボビン30を貯留しておくストッカー(ボビン保持体)36が配置してある。また、フレーム34の上面には、旧ボビン30aを回収するコンベア(回収装置)41が配置され、フレーム34の下部に先のバッファ装置32が配置してある。コンベア41は各ボビン交換装置31の配列方向に沿って配置されている。ストッカー36に対する新ボビン30の補充は、手動であるいは図示していない補充装置で自動的に行われる。
【0023】
クレードル35は、フレーム34で往復揺動可能に支持される一対のL字状のアーム44と、両アーム44の先端に配置されて、両アーム44で回転自在に軸支される一対のチャック45と、図示していないアーム駆動構造などで構成する。アーム44の揺動中心軸を符号47で示す。クレードル35は、先のアーム駆動構造で往復揺動操作されて、図1に示す糸条供給位置と、図6に実線で示すボビン補充位置との間を往復変位できる。図2に示すように、対向配置される両チャック43の片方は、エアーシリンダー(操作器)46で出退操作可能に構成する。
【0024】
上記のように、一方のチャック43をエアーシリンダー46で出退操作することにより、新旧のボビン30・30aを交換できる。詳しくは、両アーム44をボビン補充位置に変位したのち、エアーシリンダー46を出退操作することにより、ストッカー36の傾斜下端に位置する新ボビン30の巻芯を一対のチャック45で挟み保持できる。さらに、糸条供給位置とボビン補充位置との中途部において、エアーシリンダー46を出退操作することにより、旧ボビン30aの巻芯をコンベア41に排出できる。なお、ストッカー36は、クレードル35へ向かって下り傾斜する状態で支持されており、その上面には複数個の新ボビン30が、傾斜下端へ向かって転動可能な状態で収容してある。ボビン30の外径は糸条Rを繰り出すのに伴って徐々に小さくなる。このような場合でも、ボビン30から繰り出される糸条Rの糸道を一定にするために、ガイドローラー37を設けている。
【0025】
スプライサー38は、例えば空気交絡式のスプライサーからなり、その内部に、隣接する糸状Rを同時に抑え保持する一対のクランプと、加圧空気を隣接する糸状Rへ向かって噴出するノズルなどが配置してある。スプライサー38の上下には、旧ボビン30aの糸条Rを切断するカッター48と、新ボビン30の糸条を切断するカッター49が設けてある。先のノズルから噴出される加圧空気は高度に圧縮された空気、たとえばノズルから噴出される空気速度が音速に達する程度の圧縮空気であることが望ましい。
【0026】
図1および図2に示すように、糸端処理装置39は中空体として構成される捕捉アーム51と、捕捉アーム51に吸引力を作用させるブロアと、捕捉アーム51を往復揺動操作するアーム駆動構造(図示していない)などで構成する。捕捉アーム51は、基端アーム52と、先端アーム53と、糸条Rの端部を吸引捕捉する吸引ノズル54と、先端アーム53を基端アーム52に対して回転操作するノズル操作構造(図示していない)などで構成する。
【0027】
基端アーム52は、フレーム34の一側において揺動可能に軸支してあり、先端アーム53は基端アーム52に対して相対回転自在に接続してある。捕捉アーム51は、吸引ノズル54がフレーム34の退避凹部34a内に収容される待機位置(図1に示す状態)と、吸引ノズル54が新ボビン30の表面に臨む糸端捕捉位置(図7に想像線で示す状態)との間を、アーム駆動構造によって往復操作される。また、捕捉アーム51が待機位置へ復帰する直前の中継位置(図7の下方に想像線で示す状態)において、吸引ノズル54で捕捉した糸条Rの端部をスプライサー38に受け渡す。
【0028】
糸条残量センサー40は、回転自在な一対のローラー57・57と、一方のローラー57の回転動作を電気信号に変換する回転センサーとで構成してあり、両ローラー57・57で糸条Rを挟み保持している。新ボビン30に巻き付けられた糸条Rの全長は予め判っている。したがって、糸条残量センサー40からの出力信号によって、新ボビン30から繰り出し供給された糸条Rの長さを知り、糸条Rの全長と繰り出された糸条Rの長さから糸条残量を正確に把握することができる。なお、糸条残量センサー40からの出力信号は、後述するように、糸継ぎ動作が終了してスプライサー38が待機状態に復帰した時点で、ゼロにリセットされる。
【0029】
図1に示すようにバッファ装置32は、一群の固定ローラー59と、固定ローラー59に対して接離移動できるダンサーローラー60を要素にして構成する。固定ローラー59とダンサーローラー60には、糸条Rが各ローラー59・60ごとに反転する状態で巻き掛けしてある。したがって、図1に示すように、ダンサーローラー60を固定ローラー59から離れる側へ移動させることにより、両ローラー59・60に巻き掛けた分の糸状Rを貯留することができる。ボビン交換装置31によって、新旧のボビン30・30aが交換され、さらにスプライサー38によって糸継ぎが行われるまでの間、バッファ装置32からヘリカル巻装置6に糸条Rが供給される。このとき、ダンサーローラー60が固定ローラー59に近付くことで糸状Rを供給し、バッファ装置32から送り出された糸条Rはガイドローラー62(図3参照)を介して巻付装置2へと移行案内される。
【0030】
以上のように構成したフィラメントワインディング装置は、マンドレルMに対してフープ巻装置5によるフープ巻きと、ヘリカル巻装置6によるヘリカル巻きとを繰り返し行って、マンドレルMの周囲に補強層を形成する。詳しくは、マンドレルMの全体が、ヘリカル巻装置6の一側に突出するように支持台4を移動させ、この状態で巻掛テーブル16を高速回転しながら、支持台4を徐々にスライド移動させることにより、フープ巻き層を形成する。また、図3に示すようにフープ巻装置5をヘリカル巻装置6に近接させておき、支持台4を往復移動しながらマンドレルMをチャック10で僅かずつ回転変位させることによりヘリカル巻き層を形成できる。
【0031】
上記のように、フープ巻きとヘリカル巻きを、それぞれ専用のフープ巻装置5、およびヘリカル巻装置6で行うと、マンドレルMの外周面に補強層を短時間で能率よく形成できる。ワインディング処理が終了したマンドレルMは、支持台4から取り外されて次の加熱工程へと送られる。支持台4には、新たなマンドレルMが装填されて再び糸条Rが巻き掛けられる。加熱工程では、糸条Rに含浸ないし付着された樹脂を熱硬化させて、補強層を硬化させる。最後に、取付治具11をマンドレルMから取り外して圧力容器の前段体を得ることができる。
【0032】
次に、ボビン交換装置31による新旧ボビン30・30aの自動交換動作と、両ボビン30・30aの糸継ぎ動作を説明する。糸条Rを送給している旧ボビン30aの糸条残量が所定量にまで減少すると、そのことを糸条残量センサー40からの出力信号で検知して、図5に示すように旧ボビン30aから繰り出される糸条Rがカッター48で切断される。以後は、バッファー装置32に貯留された糸条Rがヘリカル巻装置6に供給される。同時にクレードル35が糸条供給位置から揺動操作されて、図6に想像線で示すように旧ボビン30aをコンベア41の真上に位置させる。この状態で、エアーシリンダー46を退避操作することにより、両チャック45で保持していた旧ボビン30aの巻芯をコンベア41に排出できる。
【0033】
旧ボビン30aを放出したのちのクレードル35は、図6に実線で示すようにボビン補充位置へとさらに揺動操作される。この状態でエアーシリンダー46を進出操作することにより、ストッカー36に保持された新ボビン30の巻芯を一対のチャック45で捕捉固定できる。この後、クレードル35は復帰揺動操作されて糸条供給位置へと戻される。クレードル35が糸条供給位置へ復帰するのに並行して、糸端処理装置39の捕捉アーム51が待機位置から糸端捕捉位置へと揺動操作される。
【0034】
図7に示すように、捕捉アーム51の揺動軌跡はスプライサー38で捕捉された糸条Rの糸道と交差している。この糸道を避けるために、先端アーム53と吸引ノズル54は、図7の下方に想像線で示すように、ノズル操作構造で基端アーム52の筒軸心の回りに90度旋回操作される。次に、捕捉アーム51を揺動中心軸47を中心にして糸端捕捉位置へと揺動操作することにより、先の糸道を乗り越えることができる。引き続き、捕捉アーム51を上方揺動操作しながら、先端アーム53と吸引ノズル54を基端アーム52の筒軸心の回りに90度逆向きに旋回操作することにより、吸引ノズル54を糸端捕捉位置に変位操作できる。この状態では、吸引ノズル54のノズル口54aが新ボビン30の表面に対向するので、自由状態の糸状Rの端部を吸引捕捉できる。糸状Rの端部が捕捉されたことは、吸引ノズル54の内部に設けた捕捉センサーで知ることができる。
【0035】
先の捕捉センサーからの捕捉信号を開始信号にして、捕捉アーム51が糸端捕捉位置から中継位置へ向かって復帰揺動操作され、その間に先端アーム53と吸引ノズル54が基端アーム52の筒軸心の回りに90度旋回操作されて糸道を乗り越える。これにより、吸引ノズル54で捕捉された糸条Rはスプライサー38に渡される。スプライサー38の内部では、新ボビン30の糸条Rの中途部が旧ボビン30aの糸条Rに隣接するように案内され、両糸条R・Rの上下がクランプで挟持固定される。これにより糸継ぎの準備が完了するので、下側のカッター49を作動させて余分な糸条Rを切断し、吸引ノズル54によって機外へ排出する。さらに、先端アーム53と吸引ノズル54を復帰旋回させて捕捉アーム51を待機位置へ復帰させる。
【0036】
上記の状態で、スプライサー38のノズルから加圧空気を隣接する糸状Rへ向かって噴出することにより、両糸状R・Rの単繊維をランダムな方向に激しく振動させて、単繊維どうしを絡ませることにより新旧ボビン30・30aの糸条端を繋ぐことができる。こののち、クランプによる糸状Rの拘束を開放することにより、新ボビン30に巻き込まれた糸状Rを繰り出し供給できる。なお、バッファー装置32において糸条Rを貯留するのは、糸条Rがヘリカル巻装置6に供給されている最中であっても支障なく行える。また、フープ巻装置5が稼動している間にダンサーローラー60を稼動して糸条Rを貯留してもよい。以後、上記の手順を繰り返し行うことにより、新旧ボビン30・30aの自動交換と、両ボビン30・30aの糸条端の自動接続を行って、ワインディング処理の全自動化と高速化を実現することができる。
【0037】
上記の実施例では、クレードル35を糸条供給位置とボビン補充位置との間で往復揺動操作したがその必要はなく、クレードル35を直線状に往復変位操作して、糸条供給位置とボビン補充位置とに切り換えることができる。同様に、糸端処理装置39は往復揺動操作する必要はなく、吸引ノズル54を上下に往復操作し、さらに上下の各位置において出退操作して、新ボビン30の糸条Rの端部を吸引捕捉し、スプライサー38に渡すことができる。その場合には、糸端処理装置39の全体を、スプライサー38で捕捉された糸条Rの糸道の外側方に沿って配置することにより、糸端処理装置39の全体構造を簡素化できる。
【0038】
ボビン保持退36はシュート状に形成する必要はなく、例えばホッパー状に構成することができる。回収装置41はコンベア41である必要はなく、旧ボビン30aを自重で落下案内するシュートで構成することができる。その場合には、個々のボビン交換装置31ごとにシュートを設ける。上記の実施例では、フィラメント供給装置からフープ巻装置に対し糸条Rを送給したが、フィラメント供給装置はヘリカル巻装置に対して糸条Rを送給するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ボビン交換装置の側面図である。
【図2】ボビン交換装置の正面図である。
【図3】フィラメントワインディング装置の概略平面図である。
【図4】図3におけるA−A線矢視図である。
【図5】ボビン交換の初期状態を示すボビン交換装置の側面図である。
【図6】新ボビンの捕捉動作を示すボビン交換装置の側面図である。
【図7】糸継ぎ動作を示すボビン交換装置の側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 フィラメント供給装置
2 巻付装置
5 フープ巻装置
6 ヘリカル巻装置
30 ボビン
30a 旧ボビン
31 ボビン交換装置
32 バッファ装置
35 クレードル
36 シュート(ボビン保持体)
38 スプライサー
39 糸端処理装置
40 糸条残量センサー
41 コンベア(回収装置)
R 糸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フープ巻装置及び/又はヘリカル巻装置と、前記フープ巻装置及び/又は前記ヘリカル巻装置に一群の糸条を供給するフィラメント供給装置とを備えているフィラメントワインディング装置であって、
前記フィラメント供給装置は、一群のボビンと、旧ボビンと満巻き状態の新ボビンとを交換する一群のボビン交換装置と、旧ボビンから繰り出される糸条を一時貯留するバッファ装置とを備えていることを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記ボビン交換装置が、満巻き状態の新ボビンの複数個を保持するボビン保持体と、前記ボビン保持体から受け取った新ボビンを回転自在に支持するクレードルと、旧ボビンの糸条残量が一定値以下になったことを検知する糸条残量センサーと、旧ボビンの糸条端と新ボビンの糸条端とを繋ぐスプライサーと、新ボビンの糸条端を捕捉して前記スプライサーに渡す糸端処理装置と、前記クレードルから排出された旧ボビンを回収する回収装置を含む請求項1記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記糸端処理装置が、新ボビンの糸条端を吸引捕捉する捕捉アームを供えており、
前記捕捉アームが、前記クレードルで前記糸条供給位置に保持された新ボビンの表面から糸条端を吸引捕捉する糸端捕捉位置と、吸引捕捉した糸条端をスプライサーに渡す中継位置と、待機位置との間を往復変位できるよう構成されている請求項2記載のフィラメントワインディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−66917(P2009−66917A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237932(P2007−237932)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】