説明

フィルム外装電気デバイスおよびその製造方法

【課題】電極積層体から延びた延出部をリード部と超音波溶接する際の延出部の損傷を防止しつつ、リード部が接合された電極積層体を外装フィルムで封止する際の外装フィルムの損傷を防止するフィルム外装デバイスを提供する。
【解決手段】電極積層体2の電極積層部からは、負極板を構成する金属箔の一部である複数の延出部11bが延びている。延出部11bは重ねて集められ、その上に保護シート6が載せられる。保護シート6は、折り曲げ部を電極積層部側に向けて2つに折り曲げられている。負極リード3a、複数の延出部11bおよび保護シート6は超音波溶接によって一体に接合される。負極リード3aおよび正極リードが接合された電極積層体は、外装フィルムの熱融着によって封止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学電池やキャパシタに代表される電気デバイスに関し、その中でも特に、電極積層体をフィルムからなる外装材で封止したフィルム外装電気デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型の化学電池やキャパシタといった電気デバイスは、シート状の複数の正極体と複数の負極体とをセパレータを介して交互に積層した電極積層体を、電解液とともに、金属缶やフィルムなどからなる外装材で気密封止(以下、単に「封止」という)した構成を有している。正極体および負極体(以下、正極と負極を区別しない場合は単に電極体という)は、金属箔の両面に電極材料が塗布された構成を有している。金属箔の一端部からは電極材料が塗布されていない部分である延出部が延びている。延出部は、正極体および負極体ごとに外部引き出し用のリード部上に重ねて集められて、リード部と超音波溶接されている。
【0003】
リード部への延出部の超音波溶接は、アンビル上で互いに重ねられて置かれたリード部および複数の延出部を、ホーンによって加圧しながら超音波振動を加えることで行う。この際、リード部はアンビル上に置かれ、ホーンは最上位置の延出部上に直接押し当てられる。延出部は、電極体を構成する金属箔の一部であり、その厚さは一般に10〜20μm程度と極めて薄い。
【0004】
したがって、延出部のホーンが押し当てられている部分は、超音波溶接の間、ホーンの超音波振動によって擦られ、ホーンのエッジ部で延出部に破れが生じることがある。また、超音波溶接後、ホーンを上昇させたときに、延出部のホーンが押し当てられていた領域がホーンと一緒に持ち上がり、これによって延出部に破れが生じることもある。延出部は、電極積層体とリード部との間の電流経路を構成するので、延出部に破れが生じると、電流の流れに支障をきたす。さらに、電気デバイスが自動車に用いられる場合は、自動車の走行中の振動によって延出部の破れが進行し、場合によっては延出部が破断してしまうおそれがある。こういった延出部の破れは、互いに重ねられた複数の延出部の中でも特に、超音波溶接時にホーンが直接押し当てられる延出部に生じることが多い。
【0005】
そこで、超音波溶接時の延出部(金属箔)の破れを防止するために、特許文献1には、積層された複数の金属箔を超音波溶接する際に、金属箔のホーンが押し当てられる面上に保護用の金属板を配することが記載されている。特許文献1には、保護用の金属板として、50μm以上200μm以下の厚さのものが好ましいことも記載されている。これにより、接合すべき金属箔にはホーンが直接押し当てられなくなるので、超音波溶接時の金属箔の破れが防止される。
【0006】
また、特許文献2には、電池のリード部と延出部との接合に関する技術ではないが、銅板のような第1の金属板上に金属箔のような極薄の第2の金属板を超音波溶接する際に、第2の金属板を折り返して2枚重ねとし、この第2の金属板が2枚重ねとされた部分にホーンを押し当て、第1の金属板と第2の金属板とを超音波溶接することが記載されている。このように、第2の金属板を折り返すことで、この折り返した部分は特許文献1における保護用の金属板と同様に作用する。
【特許文献1】特開平10−244380号公報
【特許文献2】特開平9−206963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、特許文献1,2に記載されている技術は、電気デバイスの製造工程においてリード部と延出部とを超音波溶接する際の延出部の破れを防止するのに効果的である。しかし、リード部が接合された電極積層体を外装フィルムで封止したフィルム外装電気デバイスの製造時にこれらの技術を用いようとした場合、新たな問題が生じる。
【0008】
特許文献1で用いている保護用の金属板は、実際にはサイズの大きな金属板を切断加工することによって作製すると考えられる。また、特許文献2で用いている折り返し構造においても、保護用に折り返す金属板の部分の先端は切断加工によって形成されると考えられる。そのため、保護用の金属板の部分の電極積層体側の端縁は、切断によって鋭利に形成されている。この端縁には、切断加工によってバリが生じている場合もある。
【0009】
一方、電極積層体を封止する外装フィルムには、熱融着樹脂層と金属層とを積層したラミネートフィルムが一般に用いられる。ラミネートフィルムによる電極積層体の封止は、電極積層体の外周でラミネートフィルムを熱融着することによって行う。ラミネートフィルムの熱融着時には、ラミネートフィルムの熱融着樹脂層は、熱融着される部位だけでなくその周囲でも軟化している。
【0010】
そのため、熱融着樹脂層がまだ軟化している状態で、保護用の金属板の部分の電極積層体側の端縁が熱融着樹脂層に接触すると、この端縁によって熱融着樹脂層が傷付けられてしまう。熱融着樹脂層は、端縁によって傷付けられた箇所ではその厚さが薄くなり、他の部分に比べて電解液が染み込みやすい。外装フィルムは、熱融着樹脂層の外側に金属層が存在しているので、熱融着樹脂層への電解液の染み込みは、絶縁不良の原因となる。また、保護用の金属板の部分は電極板の延出部と超音波溶接されているので、保護用の金属板の部分の端縁が熱融着樹脂層内を貫通して金属層まで達すると、電極積層体と外装フィルムとがショートしてしまう。
【0011】
なお、外装フィルムとして、熱融着樹脂層のみの単層フィルムを用いることもできる。しかし、その場合は、絶縁不良は発生しないが、保護用の金属板の端縁による傷から、電池内部に収容されている電解液が漏れてしまう危険性が高くなる。
【0012】
そこで本発明は、電極積層体から延びた延出部をリード部と超音波溶接する際の延出部の損傷を防止しつつ、リード部が接合された電極積層体を外装フィルムで封止する際の外装フィルムの損傷を防止することができる、フィルム外装電気デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明のフィルム外装電気デバイスは、金属箔からなる複数の延出部が互いに重ねられた状態で延出した電気デバイス要素と、複数の延出部と電気的に接続されたリードと、電気デバイス要素を封止している外装フィルムと、を有する。外装フィルムは、電気デバイス要素をその厚さ方向両側から挟んで包囲しその周囲で熱融着されることによって、リードを突出させて電気デバイス要素を封止している。そして、本発明のフィルム外装電気デバイスは、延出部の最表面上に配置された少なくとも1つのシート部をさらに有している。シート部は、その端面が電気デバイス要素側と反対側を向くように折り曲げられて、複数の延出部と接合されている。
【0014】
このように、複数の延出部の最表面上にシート部を配置することで、複数の延出部同士の接合時に、金属箔からなる延出部に超音波溶接用のツールが直接押し当てられることがなくなり、ツールによる延出部の損傷が防止される。しかも、シート部は、その端面が電気デバイス要素側と反対側を向くように折り曲げられているので、電気デバイス要素を封止するために外装フィルムを熱融着する際に、軟化した外装フィルムの内面をシート部の電気デバイス要素側のエッジで傷つけることが防止される。
【0015】
また本発明のフィルム外装電気デバイスの製造方法は、金属箔からなる複数の延出部が互いに重ねられた状態で延出している電気デバイス要素を用意する工程と、複数の延出部の最表面上に、端面が前記電気デバイス要素側と反対側向くように折り曲げられた少なくとも1つのシート部を載せる工程と、複数の延出部およびシート部を、シート部の上から接合用のツールを押し当てて接合する工程と、延出部とシート部との接合と同時または接合後に、外部引き出し用のリードを延出部に電気的に接続する工程と、延出部とシート部との接合後、電気デバイス要素を外装フィルムで封止する工程と、を有する。外装フィルムは、電気デバイス要素をその厚さ方向両側から挟んで包囲し、電気デバイス要素の周囲で前記外装フィルムを熱融着することによって、リードを突出させて電気デバイス要素を封止する。
【0016】
以上の各工程を経ることによって、上記本発明のフィルム外装電気デバイスが製造される。
【0017】
本発明のフィルム外装電気デバイスでは、特に、シート部を載せる工程が、延出部を、その長手方向中間の第1の位置で電気デバイス要素側へ折り返す第1折り返し工程と、電気デバイス要素側へ折り返された延出部を、第1の位置よりも電気デバイス要素側の第2の位置で電気デバイス要素から離れる側へ折り返す第2折り返し工程と、第2折り返し工程の後に、第1の位置よりも電気デバイス要素から離れた位置で延出部を折り返し部分も含めて切断する工程と、を有していることが好ましい。この製造方法によれば、延出部の一部からシート部が形成される。また、切断位置によってはシート部を延出部と連続した部分として形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のようにシート部を設けることで、リードと延出部との超音波溶接時の、超音波溶接用のツールによる延出部の損傷を防止しつつ、外装フィルムの熱融着時における、外装フィルムの熱融着樹脂層の損傷を防止することができる。その結果、電気デバイス要素とリードとの間での電流の流れが阻害されるのを防止し、かつ、熱融着樹脂層の損傷による絶縁不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による電気デバイスであるフィルム外装電池の分解斜視図である。
【0021】
図1に示すフィルム外装電池1は、複数の正極板および複数の負極板が、電解液を含浸させたセパレータを介して積層された構造を有する、電気デバイス要素である電極積層体2と、電極積層体2を電解液とともに封止する2枚の外装フィルム4,5と、外装フィルム4,5から先端部を延出させた状態で電極積層体2の正極板および負極板にそれぞれ電気的に接続された負極リード3aおよび正極リード3bと、を有する。
【0022】
外装フィルム4,5は、電極積層体2をその厚み方向(正極板と負極板との積層方向)両側から挟んで包囲するため、電極積層体2の平面寸法よりも大きな平面寸法を有するものであり、電極積層体2の周囲で重なり合った対向面同士を熱融着することで、電極積層体2が封止される。図1では、外装フィルム4,5の熱融着された領域を、熱融着部6として斜線で示している。一方の外装フィルム4には、電極積層体2を包囲する空間を形成するために、中央領域にカップ部4aを有する。熱融着部6は、このカップ部4aの全周に亘って形成されている。カップ部4aの加工は、深絞り成形によって行うことができる。本実施形態では一方の外装フィルム4のみにカップ部4aを形成しているが、両方の外装フィルム4,5にカップ部を形成してもよいし、また、カップ部を形成せずに外装フィルム4,5の柔軟性を利用して電極積層体2を包囲してもよい。
【0023】
外装フィルム4,5としてはラミネートフィルムを用いることができる。外装フィルム4,5を構成するラミネートフィルムとしては、柔軟性を有しており、かつ電解液が漏洩しないように熱融着によって電極積層体2を封止できるものであれば、その種類は問わない。本発明に適用し得る代表的なラミネートフィルムとしては、熱融着性樹脂からなる熱融着樹脂層と、金属薄膜などからなる金属層と、保護層とをこの順に積層したものが挙げられる。外装フィルム4,5は、これらのうち少なくとも熱融着樹脂層と金属層とを有していればよく、保護層は必要に応じて設けられる。電極積層体2を封止するに際しては、熱融着樹脂層を対向させて電極積層体2を包囲する。
【0024】
金属層は、外装フィルム4,5にガスバリア性を持たせるためのものである。金属層を構成する金属薄膜としては、例えば、厚さが10〜100μmのAl、Ti、Ti合金、Fe、ステンレス、Mg合金などの箔を用いることができる。熱融着樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル等、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用できる。熱融着性樹脂層の厚さは10μm〜200μmが好ましく、より好ましくは30μm〜100μmである。保護層としては、ナイロンなどのポリアミド、PETやポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、およびポリプロピレンなどを用いることができる。
【0025】
次に、電極積層体2について図2を参照して詳しく説明する。
【0026】
図2に示すように、電極積層体2は、複数の負極板11と、複数の正極板12とを、負極板11が最上面および最下面に位置するように、交互に積層した構造を有する。
【0027】
負極板11は、負極を構成する金属箔の両面に負極活物質を塗布した実質的に長方形の部材である。負極活物質は、金属箔の一端部を除いた領域に矩形状に塗布されており、これによって負極板11は、負極活物質が塗布された矩形状の負極材料塗布部11aと、負極材料塗布部11aの1辺からそのまま延びた何も塗布されていない延出部11bとに区画されている。正極板12も、正極を構成する金属箔の両面に正極活物質を塗布した実質的に長方形の部材である。正極活物質は、金属箔の一端部を除いた領域に矩形状に塗布されており、これによって正極板12は、正極活物質が塗布された矩形状の正極材料塗布部12aと、正極材料塗布部12aの1辺からそのまま延びた何も塗布されていない延出部12bとに区画される。延出部11b,12bは、金属箔の一部分であるので、導電性を有している。
【0028】
負極板11および正極板12は、延出部11b,12bを互いに反対側に向けて、かつ延出部11b,12bを延出させて積層される。負極板11の延出部11bは、負極リード3a(図1参照)の上面に集められ、負極リード3aと部分的に重ねられて超音波溶接によって一括して溶接される。これによって、負極リード3aは各負極板11と電気的に接続される。正極板12の延出部12bは、正極リード3b(図1参照)の上面に集められ、正極リード3bと部分的に重ねられて超音波溶接によって一括して溶接される。これによって、正極リード3aは各正極板12と電気的に接続される。これら正極および負極での延出部とリードとの接合部の詳しい構造については後述する。
【0029】
負極板11、正極板12、電解液等の材料は、この電極積層体2の用途、すなわちフィルム外装電池1の種類に応じて適宜選択される。フィルム外装電池1の種類は特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池あるいは二次電池、リチウムポリマー電池など、種々の化学電池が挙げられる。例えば、電極積層体2がリチウムイオン二次電池用である場合、正極板12としては、リチウム・マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム等の正極活物質を、厚さ3〜50μmのアルミニウム箔の両面に塗付したものを用いることができ、負極板11としては、リチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料を、厚さ3〜50μmの銅箔の両面に塗布したものを用いることができる。この場合、電解液としては、リチウム塩を含む電解液を用いることができる。さらに、正極の金属箔にアルミニウム箔を用いた場合、正極リード3bにはアルミニウム板を用いることができ、負極の金属箔に銅箔を用いた場合、負極リード3aにはニッケル板または銅板を用いることができる。負極リード3aを銅板で構成する場合、その表面にニッケルめっきを施してもよい。これら金属箔、活物質、電解液等の材料は、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるものなので、詳細な説明は省略する。
【0030】
セパレータ13は、正極板11と負極板12との間に配置され、その面積は正極材料塗布部11aの面積および負極材料塗布部12aの面積よりも大きい。セパレータ13としては、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂から作られた、マイクロポーラスフィルム(微多孔フィルム)、不織布あるいは織布など、電解液を含浸することのできる部材を用いることができる。
【0031】
ここで、前述した延出部とリードとの接合部の構造について説明する。延出部とリードとの接合部は、正極と負極とでは各部材の材料が異なるだけで構造としては同じなので、以下では正極および負極を代表して負極側について説明する。
【0032】
図3に、電極積層体2と負極リード3aとの接合部の平面図を示す。また、図4に、電極積層体2と負極リード3aとの超音波溶接時の、負極板11の延出部11bの延びる方向に沿った断面図を示す。図3では、電極積層体2を封止する外装フィルムの位置を一点鎖線で示し、外装フィルムの熱融着部を斜線で示している。
【0033】
負極側では、複数の延出部11bが負極リード3aに向かって延びており、その先端部は負極リード3a上に位置している。負極リード3a上では、複数の延出部11bがその厚さ方向に重ねられている。この複数の延出部11bが重ねられた位置で、その最表面となる最上位置の延出部11bの上には保護シート6がさらに配置されている。
【0034】
保護シート6は、その端面が電極積層体2側、具体的には負極板11と正極板12とが重ねられている部分(以下、電極積層部ともいう)と反対側を向き、折り曲げ部6aが電極積層部を向くように2つに折り曲げられている。また、保護シート6は、図3に示すように、電極積層体2を外装フィルムで封止したとき、外装フィルムの熱融着部で囲まれた領域に位置する。すなわち、保護シート6も電極積層体2とともに外装フィルムで封止される。保護シート6としては、負極板11に用いる金属箔と同じ金属箔が好ましく用いられるが、延出部11bと超音波溶接が可能な部材であれば他の部材を用いることもできる。
【0035】
延出部11bと負極リード3aとの超音波溶接は、以下のようにして行うことができる。まず、負極板11と正極板12とがセパレータ13を介して積層され、負極板11および正極板12からそれぞれ延びた延出部11b,12bを有する電極積層体2を用意する。この段階では、延出部11b、12bは、正極側および負極側のそれぞれにおいて互いに重ねられた状態となっているが、接合はされていない。次いで、アンビル9b上に負極リード3aを置き、その上に、複数の延出部11bを重ねて置く。さらにその上に、保護シート6を、折り曲げ部6aが電極積層部を向けて載せる。この状態で、保護シート6の上から超音波溶接用のツールであるホーン9aを押し当て、超音波振動を加える。これによって、負極リード3aと、複数の延出部11bと、保護シート6とが一括して溶接される。つまり、保護シート6は、複数の延出部11bと負極リード3aとの接合部において、複数の延出部11bを挟んで負極リード3aと対向する位置に配置されて、負極リード3aおよび複数の延出部11bとともに溶接されている。
【0036】
なお、本実施形態では、ホーン9aは、延出部11bの幅方向に沿って互いに間隔をあけて配置された複数の凸部を有しており、これら凸部が保護シート6に押圧される。したがって、本実施形態では、延出部11bと負極リード3aとの接合部において、ホーン9aの凸部が押圧された位置には、図3に示すように溶接痕7が形成される。溶接痕7は、ホーン9aの凸部に対応して、延出部11bの幅方向に沿って互いに間隔をあけて形成される。また、電極積層体2は、負極板11、正極板12およびセパレータ13を単に積層しただけであるので、相互の位置ずれが生じないように、これらの積層状態をクリップまたはテープ等の固定具を用いて保持することが好ましい。
【0037】
ホーン9aによって超音波振動を加えている間、超音波振動するホーン9aによって保護シート6に破れが生じることがある。また、超音波溶接後、ホーン9aを上昇させたときに、保護シート6のホーン9aが押し当てられていた領域がホーン9aと一緒に持ち上がり、これによって保護シート6に破れが生じることがある。しかし、保護シート6は、電極積層体2と負極リード3aとの間での電流経路を構成する部分ではなく、破れが生じたとしても、フィルム外装電池1としての電気的特性に何ら影響を与えるものではない。
【0038】
以上、負極側のリードと延出部との接続について説明したが、正極側についても負極側と同様に、正極リード3b上に重ねて置かれた複数の延出部12bのうち最上位置の延出部12bの上に保護シート6を載せ、この状態で超音波溶接を行う。この保護シート6による効果は、負極側と同様である。
【0039】
以上のようにして負極リード3aおよび正極リード3bが接続された電極積層体2は、次に、電解液とともに外装フィルム4,5で封止される。
【0040】
電極積層体2の封止は、以下のようにして行うことができる。
【0041】
まず、2枚の外装フィルム4,5で、負極リード3aおよび正極リード3bが接続された電極積層体2を、負極リード3aおよび正極リード3bが外装フィルム4,5から延出するようにして挟み、外装フィルム4,5の周囲の3辺を熱融着する。このとき、電極積層体2の積層状態を保持している固定具がクリップである場合は、外装フィルム4,5を熱融着する前にクリップを取り外す。固定具がテープである場合は、テープを装着したままでもよい。その後、熱融着されていない残りの1辺から電解液を注入し、電極積層体2に含浸させる。電極積層体2に電解液を含浸させたアセンブリを真空チャンバ内に入れ、減圧雰囲気中で外装フィルム4,5の残りの1辺を熱融着する。これによって、電極積層体2が封止される。
【0042】
外装フィルム4,5の残りの1辺を熱融着した後、真空チャンバ内を大気圧に戻すと、外装フィルム4,5が大気圧によって電極積層体2に密着し、これによって外装フィルム4,5内での電極積層体2の位置が固定されたフィルム外装電池1が作製される。
【0043】
ここでは電極積層体2を減圧雰囲気中で封止する例を説明したが、この工程を大気圧中で行ってもよい。また、外装材として2枚の外装フィルム4,5を用いた例を示したが、1枚の外装フィルムを2つ折りにして電極積層体2を挟んでもよい。
【0044】
外装フィルム4,5の熱融着中、外装フィルム4,5の熱融着樹脂層は、熱融着される部位だけでなく、その周囲、例えば保護シート6と対向する部位も軟化しており、他の部材の鋭利な部分が接触することによって損傷しやすい状態となっている。保護シート6は、延出部11b,12b上に位置しており、特にその電極積層部側の端縁が、熱融着樹脂層と接触しやすい。しかし、保護シート6の電極積層部側の端縁は折り曲げ部6aとなっており、切断によって形成されたような鋭利な部分は存在しない。
【0045】
したがって、外装フィルム4,5の熱融着時に熱融着樹脂層が保護シート6に接触したとしても、熱融着樹脂層が損傷するのを防止することができる。その結果、電解液が熱融着樹脂層に染み込みやすくなることによる不具合や、保護シート6の端縁が熱融着樹脂層を貫通することによる不具合を防止することができる。
【0046】
前述したように、保護シート6は金属箔で構成するのが好ましい。最も好ましいのは、負極側の保護シート6は負極板11を構成する金属箔と同じ金属箔で構成し、かつ、正極側の保護シート6は正極板12を構成する金属箔と同じ金属箔で構成することである。この場合は、保護シート6の作製および延出部11b,12b上への配置を簡単に行うことができる。以下に、そのことについて図5を参照して説明する。なお、図5では負極側について説明するが、正極側については以下の説明を正極に置き換えたものと同じなので、正極側についての説明は省略する。
【0047】
図5は、負極板11と正極板12とをセパレータ13を介して積層した後、延出部11bを所定の長さに切断する前の段階での断面図を示している。図5に示すように、電極積層部から延びた、それぞれ金属箔からなる複数の延出部11bは、所定の寸法よりも長い寸法とされ、支持台21上に重ねられて置かれている。複数の延出部11bのうち最上位置の延出部11bは、その長手方向中間位置で電極積層部側へ折り返された後、この第1の折り返し位置F1よりも電極積層部側の位置(第2の折り返し位置F2)でさらにもう1度、電極積層部から離れる側に折り返されて、ジグザグ状とされている。これによって、最上位置の延出部11bは、第1の折り返し位置F1と第2の折り返し位置F2との間で3重となっている。
【0048】
この状態で重なり合っている複数の延出部11bは、カッタ(不図示)で切断されて、所定の長さに切り揃えられる。この際、複数の延出部11bを、第1の折り返し位置F1と第2の折り返し位置F2との間の切断位置Aで、折り返し部分も含めて切断する。この位置では最上位置の延出部11bは3重になっているので、最上位置の延出部11bは、電極積層部から延びた部分と、他の3つの小片に分断される。分断された3つの小片のうち、切断位置Aよりも電極積層部側に位置する小片は、電極積層部側に折り返し部を有して2つ折りにされた金属箔である。この金属箔の部分が、図4に示す保護シート6となる。
【0049】
このように、最上位置の延出部11bの折り曲げを利用して保護シート6を形成することにより、保護シート6を別に作製する必要はないし、別に作製した保護シート6を複数の延出部11bが重なり合った部分の上にハンドリングする必要もなくなる。その結果、延出部11bと負極リード3aとの接合工程、ひいてはフィルム外装電池1の製造工程を簡略化することができる。
【0050】
また、保護シート6を上述のようにして形成した場合、切断位置Aにおいて保護シート6の切断面にバリが生じることがある。この場合でも、支持台21上に重ねられた複数の延出部11bの上方から支持台21に向かって切断することで、図6に示すように、保護シート6の切断面でのバリ6bは、下側のエッジに形成される。外装フィルムの熱融着時、このバリ6bが延びる側には負極リード3aが存在しているので、バリ6bが外装フィルムの熱融着樹脂層に接触して熱融着樹脂層を傷つけることはない。
【0051】
一方、図5において、重なり合っている複数の延出部11bを所定の長さに切り揃える際に、第1の折り返し位置F1よりも電極積層部から離れた位置である切断位置Bで複数の延出部11bを、折り返し部分も含めて切断してもよい。この場合は、保護シートは延出部11bと連続して形成されるので、延出部11bを切断した後、負極リード3aと接合するまでの間の電極積層体2のハンドリング中に保護シートが脱落するのを防止できる。
【0052】
上述した実施形態では、1枚の保護シート6を用いた例を示したが、電極板の延出部と外部引き出し用のリードとの超音波溶接時の延出部の破れをより確実に防止するために複数の保護シート6を用いることもできる。図7および図8にその例を示す。なお、図7および図8でも負極側について説明するが、正極側については以下の説明を正極に置き換えたものと同じなので、正極側についての説明は省略する。
【0053】
図7に示す例は、2枚の保護シート6を入れ子状に重ねた例である。また、図8に示す例は、折り曲げられた2枚の保護シート6を単純に重ねた例である。これらの例においても、保護シート6は、延出部11bと別体の部材であってもよいし、延出部11bの折り返しを利用して延出部11bの一部から形成してもよい。
【0054】
保護シート6を延出部11bと別体の部材とする場合、図7に示す構成は、予め所定のサイズに裁断された2枚の保護シート6を重ねておき、その状態で2枚の保護シートを一緒に折り曲げることによって形成することができる。また、図8に示す構成は、予め折り曲げられた2枚の保護シート6を、1枚ずつ重ねることによって形成することができる。いずれの例においても、保護シート6はその折り曲げ部を電極積層部側に向けて配置され、他の延出部11bと一緒に超音波溶接されている。
【0055】
一方、保護シート6を延出部11bの一部から形成する場合、図7に示す構成は、図5において最上位置の延出部11bだけでなくその直下の延出部11bも一緒にジグザグ状に折り返し、不要な先端部分を切断することによって形成することができる。延出部11bの切断の際、図5に示す切断位置Aで切断すれば、図7に示す構成が得られる。切断位置Bで切断すれば、延出部11bと連続した保護シート6が形成される。また、図8に示す構成は、図5において、最上位置の延出部11bの、折り返し位置F1と折り返し位置F2との間での折り返しをさらに繰り返し、不要な先端部分を切断することによって形成することができる。本例でも、延出部1bの切断の際、図5に示す切断位置Aで切断すれば、図8に示す構成が得られる。切断位置Bで切断すれば、延出部11bと連続した保護シート6が形成される。
【0056】
図7および図8では、2枚の保護シート6を有する例を示したが、3枚以上であってもよい。また、延出部11bの折り返しを利用して保護シート6を形成する場合、延出部11bの数、すなわち電極積層体における電極板の数によっては、全ての延出部11bをまとめて折り返して複数の保護シートを形成してもよい。
【0057】
以上、本発明について代表的な幾つかの例を挙げて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更することができる。
【0058】
例えば、上述した例では、リードへの延出部およびシート部の接合を、超音波溶接によって行うものとして説明したが、この他にも抵抗溶接やレーザ溶接などによる接合も本発明に含まれる。これら抵抗溶接やレーザ溶接によっても、溶接箇所にはツールによる溶接痕が形成され、溶接痕の境界に沿って、または溶接痕の境界から放射状に延びて、金属箔の破れが生じる可能性がある。本発明によれば、こういった金属箔の破れが生じたとしても、この破れはシート部に生じるので、フィルム外装電気デバイスとしての電気的特性に何ら影響を与えるものではない。なお、これら各種の接合方法の中でも特に、超音波溶接は、金属箔の破れが生じやすく、本発明の効果を最も発揮できる。
【0059】
リードと電気デバイス要素との電気的接続は、リード、延出部およびシート部を一括して接合するのではなく複数の工程に分けて行うこともできる。例えば、まず、正極および負極ごとに、複数の延出部同士を接合する。次いで、接合によって一体化した正極および負極の延出部を、それぞれ正極および負極のリードと電気的に接続する。この場合は、延出部同士の接合時に、最上位置の延出部の上にさらに保護用のシート部を載置し、各延出部とシート部とを一緒に接合する。延出部とシート部との接合には、上述した超音波溶接等の接合方法が用いられる。延出部とリードとの電気的接続には、超音波溶接等の接合方法はもちろん、カシメといった機械的な圧着による方法など、複数の電気部品同士を電気的に接続するのに一般に用いられる任意の方法を用いることができる。
【0060】
リードは、例えばインナーリードおよびアウターリードというように複数の部材で構成されていてもよい。この場合は、インナーリードを電気デバイス要素の延出部と電気的に接続し、その後、インナーリードとアウターリードとを電気的に接続する、という工程、あるいはこの逆の工程を経て、リードと電気デバイス要素との電気的接続を行うことができる。電気デバイス要素が外装フィルムで封止された後は、アウターリードのみが外装フィルムから突出している。
【0061】
延出部とインナーリードとの接続は、シート部と延出部との接合と同時に行ってもよいし、延出部とシート部との接合後に行ってもよい。延出部とインナーリードとの電気的接続、およびインナーリードとアウターリードとの電気的接続には、上述した、リードと延出部との電気的接続方法と同様の方法を用いることができる。
【0062】
厳密な意味では、外装フィルムから突出している部材のみがリード、言い換えれば外部接続用の端子であると考えることもできる。このように考える場合、上記の構成は、リードと延出部とは中間部材を介して電気的に接続されているという見方もできる。
【0063】
また、上述した例では、外装フィルムとしてラミネートフィルムを示したが、単に熱融着樹脂層のみを有する外装フィルムを用いて電気デバイス要素を封止してもよい。本発明によれば、外装フィルムを熱融着する際の外装フィルムの傷が発生しにくいので、外装フィルムとして熱融着樹脂層のみの単層フィルムを用いた場合でも、電気デバイス要素を電解液とともに良好に封止することができる。
【0064】
さらに、上述した例では化学電池を例に挙げたが、本発明は、電気二重層キャパシタなどのキャパシタや電解コンデンサなどに例示されるキャパシタ要素のような、電気エネルギーを内部に蓄積する電極積層体を外装材で封止した電気デバイスに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態による電気デバイスであるフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図2】図1に示す電極積層体の分解斜視図である。
【図3】図1に示す電極積層体と負極リードとの接合部の平面図である。
【図4】電極積層体と負極リードとの超音波溶接時の、負極板の延出部の延びる方向に沿った断面図である。
【図5】負極板の延出部の、切断前の断面図である。
【図6】図5の切断位置Aで切断することによって形成された保護シートの拡大断面図である。
【図7】本発明に用いられる保護シートの他の例を示す、電極積層体と負極リードとの接合部の断面図である。
【図8】本発明に用いられる保護用シートのさらに他の例を示す、電極積層体と負極リードとの接合部の断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 フィルム外装電池
2 電極積層体
3a 負極リード
3b 正極リード
4,5 外装フィルム
11 負極板
11b,12b 延出部
12 正極板
13 セパレータ
6 保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔からなる複数の延出部が互いに重ねられた状態で延出した電気デバイス要素と、
前記複数の延出部と電気的に接続されたリードと、
前記電気デバイス要素をその厚さ方向両側から挟んで包囲しその周囲で熱融着されることによって、前記リードを突出させて前記電気デバイス要素を封止している外装フィルムと、
前記複数の延出部の最表面上に配置された少なくとも1つのシート部と、
を有し、
前記シート部は、その端面が前記電気デバイス要素側と反対側を向くように折り曲げられて、前記複数の延出部と接合されている、
フィルム外装電気デバイス。
【請求項2】
複数の前記シート部が互いに重ねられて配置されている、請求項1に記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項3】
前記複数のシート部は入れ子状に重ねられている、請求項2に記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項4】
前記シート部は、該シート部が接合されている前記延出部と同じ部材からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項5】
前記シート部は、該シート部が接合されている前記延出部のうち少なくとも1つからさらに延びた部分である、請求項4に記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項6】
少なくとも前記延出部と前記シート部との接合は超音波溶接によってなされている、請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項7】
前記外装フィルムは、少なくとも金属層と熱融着樹脂層とが積層されたラミネートフィルムであり、前記熱融着樹脂層を内面として前記電気デバイス要素を包囲している、請求項1から6のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項8】
金属箔からなる複数の延出部が互いに重ねられた状態で延出している電気デバイス要素を用意する工程と、
前記複数の延出部の最表面上に、端面が前記電気デバイス要素側と反対側を向くように折り曲げられた少なくとも1つのシート部を載せる工程と、
前記複数の延出部および前記シート部を、前記シート部の上から接合用のツールを押し当てて接合する工程と、
前記延出部と前記シート部との接合と同時または接合後に、外部引き出し用のリードを前記延出部に電気的に接続する工程と、
前記延出部と前記シート部との接合後、前記電気デバイス要素を、その厚さ方向両側から外装フィルムで挟んで包囲し、前記電気デバイス要素の周囲で前記外装フィルムを熱融着することによって前記電気デバイス要素を封止する工程と、
を有するフィルム外装電気デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記シート部を載せる工程は、
前記延出部を、その長手方向中間の第1の位置で前記電気デバイス要素側へ折り返す第1折り返し工程と、
前記電気デバイス要素側へ折り返された延出部を、前記第1の位置よりも前記電気デバイス要素側の第2の位置で前記電気デバイス要素から離れる側へ折り返す第2折り返し工程と、
前記第2折り返し工程の後に、前記第1の位置よりも前記電気デバイス要素から離れた位置で前記延出部を折り返し部分も含めて切断する工程と、
を有する、請求項6に記載のフィルム外装電気デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記接合する工程は、超音波溶接によって接合することを含む、請求項8または9に記載のフィルム外装電気デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−250310(P2007−250310A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70793(P2006−70793)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(302036862)NECラミリオンエナジー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】