説明

フェニルアルキルカルバメート組成物

本発明は、結果として向上した安定性を示すフェニルアルキルカルバメート化合物の組成物に関し、この組成物はフェニルアルキルカルバメート化合物を有効な量の1種以上の賦形剤と混ざり合っている状態で含有して成りかつ少なくとも1種の賦形剤は二塩基性燐酸カルシウム二水化物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結果として向上した安定性を示すフェニルアルキルカルバメート化合物の組成物に向けたものである。より詳細には、本組成物は、フェニルアルキルカルバメート化合物を結果として前記フェニルアルキルカルバメート化合物の安定性が向上するように二塩基性燐酸カルシウム二水化物と混ざり合っている状態で含有して成る。
【背景技術】
【0002】
記述しかつ本発明の範囲内に含めるフェニルアルキルカルバメートは特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13および14(これらは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0003】
このような化合物は中枢神経系疾患(けいれん、てんかん、卒中および筋けいれんを包含)の治療および予防で用いるに製薬学的に有用であり、中枢神経系疾患の治療に有用であり、特に抗けいれん薬、抗てんかん薬、神経保護薬および中枢性筋弛緩薬として有用であり、神経障害性痛、群発性および片頭痛による痛み、双極性障害、慢性および急性神経変性疾患、精神病性障害、運動障害、嗜癖障害、衝動調節障害、不安障害、抗てんかん発生の治療および予防に有用でありかつ痛みの治療に有用である。
【0004】
神経障害性痛は、末梢もしくは中枢神経系における異常な体性感覚プロセスによって引き起こされる痛みとして定義され、それには、痛みを伴う糖尿病性末梢神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、脳卒中後痛、多発性硬化症関連痛、神経障害関連痛、例えば突発性もしくは外傷後神経障害および単発神経炎などにおける痛み、HIV関連神経障害性痛、癌関連神経障害性痛、手根管関連神経障害性痛、脊髄損傷関連痛、複合性局所疼痛症候群、線維筋痛関連神経障害性痛、腰部および頸部の痛み、反射性交感神経性ジストロフィー、幻肢症候群および他の慢性および衰弱性疾患関連痛み症候群などが含まれる。
【0005】
群発頭痛(またレーダー症候群、ヒスタミン性頭痛およびちょう口蓋神経痛とも呼ばれる)は、比較的短い期間(例えば4から8週)の間ほとんど毎日一連の短期間の眼窩周囲の痛みの発作が起こった後に痛みのない時間が存在することを特徴とする。
【0006】
片頭痛もまた周期的に再発する障害であり、これは発作性痛、嘔吐および羞明を伴い得る。片頭痛には、これらに限定するものでないが、古典的片頭痛(前兆となる感覚、運動もしくは視覚症状に関連した前兆を伴う片頭痛)および普通型片頭痛(前兆を伴わない片頭痛)が含まれる。群発および片頭痛に関連した痛みもまた満たされていない重要な医学的必要性を有する臨床的適応である。
【0007】
記述するフェニルアルキルカルバメート化合物はpHが5以上になると分解を起こし易いことから、そのような化合物およびこれらの組成物の貯蔵寿命は限られている。従って、化合物の安定性が向上したフェニルアルキルカルバメート化合物を含有する頑強な組成物を開発する必要がある。本発明の目的は、そのような頑強な組成物を提供することにある。
【0008】
粒径が大きな二塩基性燐酸カルシウム二水化物(DCPD)をアスピリンと一緒にして錠剤として構築するとアスピリンが分解を起こしてサリチル酸と酢酸になる傾向が粒径がより小さいDCPDに比べて低下することが以前に開示された(非特許文献1、2)。アスピリンが分解を起こしてサリチル酸と酢酸が生じる機構は加水分解である(非特許文献3)。粉末状にしたDCPD材料を含有させた錠剤が示す安定性の方が凝集した材料を含
有させたそれよりも劣るのは粒径が小さいDCPDの方が水をより多く失う傾向が大きいことに起因していた(非特許文献1、2)。
【0009】
より大きなDCPDを用いて構築した錠剤、特にリシノプリルの量が少ない錠剤が示す貯蔵寿命が向上するようにリシノプリルの分解生成物であるDKP(ジケトピペラジン)の生成量を低下させる目的でリシノプリル製剤/組成物に粒径が大きなDCPD(圧縮もしくは製錠前の比表面積が1.5m−1未満であると記述)を用いることが特許文献15に記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,265,728号
【特許文献2】米国特許第3,313,692号
【特許文献3】米国特許第6,103,759号
【特許文献4】米国特許第6,562,867号
【特許文献5】米国特許第6,541,513号
【特許文献6】米国特許第6,589,985号
【特許文献7】米国特許第6,815,464号
【特許文献8】PCT公開WO02/067924
【特許文献9】PCT公開WO02/067925
【特許文献10】PCT公開WO02/067924
【特許文献11】PCT公開WO02/067923
【特許文献12】PCT公開WO02/07822
【特許文献13】PCT公開WO03/007934
【特許文献14】PCT公開WO03/007936
【特許文献15】米国特許第6,462,022号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Landin他、1994、Int.J.Pharm.107:247−249
【非特許文献2】Landin他、1995、Int.J.Pharm.123:143−144
【非特許文献3】LeesenおよびMattocks(1958)J.Am.Pharm.Sci.Ed.、67:329−333
【発明の概要】
【0012】
発明の要約
本発明は、フェニルアルキルカルバメート化合物の組成物に向けたものであり、この組成物は、前記化合物と有効な量の1種以上の賦形剤の混合物を含有して成りかつ少なくとも1種の賦形剤はこの組成物に入っているフェニルアルキルカルバメート化合物の分解を低下させる二塩基性燐酸カルシウム二水化物である。
【0013】
従って、1つの一般的面において、本発明は、式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、
フェニルは、Xの所がフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から成る群より独立して選択される1から5個のハロゲン原子で置換されており、そして
およびRは、独立して、水素およびC1−4アルキルから成る群より選択され、かつC1−4アルキルは場合によりフェニルで置換されていてもよく、かつフェニルは場合によりハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノから成る群より独立して選択される置換基で置換されていてもよい]
で表される化合物またはこれの形態物と有効な量の1種以上の賦形剤を含有して成りかつ少なくとも1種の賦形剤が二塩基性燐酸カルシウム二水化物である組成物を提供する。
【0016】
1つの態様において、本発明は、式(Ia):
【0017】
【化2】

【0018】
で表されるカルバミン酸2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物と有効な量の1種以上の賦形剤を含有して成りかつ少なくとも1種の賦形剤が二塩基性燐酸カルシウム二水化物である組成物を提供する。
【0019】
別の態様における本発明の組成物は、有効な量の二塩基性燐酸カルシウム二水化物と式(Ia)で表されるカルバミン酸2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物を含有して成る錠剤である。
【0020】
別の態様において、本発明は、式(Ib):
【0021】
【化3】

【0022】
で表されるカルバミン酸(2R)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物と有効な量の1種以上の賦形剤を含有して成りかつ少なくとも1種の賦形剤が二塩基性燐酸カルシウム二水化物である組成物を提供する。
【0023】
別の態様における本発明の組成物は、有効な量の二塩基性燐酸カルシウム二水化物と式(Ib)で表されるカルバミン酸(2R)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物を含有して成る錠剤である。
【0024】
別の態様では、式(Ib)で表されるカルバミン酸(2R)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物を約75%以上の範囲、または約90%以上の範囲、または約95%以上の範囲、または約98%以上の範囲、または約99%以上の範囲の主要量で存在させる。
【0025】
別の態様において、本発明は、式(Ic):
【0026】
【化4】

【0027】
で表されるカルバミン酸(2S)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物と有効な量の1種以上の賦形剤を含有して成りかつ少なくとも1種の賦形剤が二塩基性燐酸カルシウム二水化物である組成物を提供する。
【0028】
別の態様における本発明の組成物は、有効な量の二塩基性燐酸カルシウム二水化物と式(Ic)で表されるカルバミン酸(2S)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物を含有して成る錠剤である。
【0029】
別の態様では、式(Ic)で表されるカルバミン酸(2S)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物を約75%以上の範囲、または約90%以上の範囲、または約95%以上の範囲、または約98%以上の範囲、または約99%以上の範囲の主要量で存在させる。
【0030】
本発明は、また、本発明の組成物の製造方法および使用方法も提供する。
【0031】
発明の詳細な説明
本明細書に引用する出版物は全部引用することによって本明細書に組み入れられる。特に明記しない限り、本明細書で用いる技術的および科学的用語の全部に本発明が関係する技術分野の通常の技術者が一般的に理解する意味と同じ意味を持たせる。
【0032】
本明細書で用いる以下の省略形に下記の意味を持たせる:用語“API”は製薬学的有効成分を意味し、“CNS”は中枢神経系を意味し、“HPLC”は高圧液クロを意味し
、そして“RH”は相対湿度を意味する。
【0033】
本明細書および添付請求項で用いる如き単数形“a”、“an”および“the”は本文で明らかに別の方法で示さない限り複数形を包含することを注目すべきである。このように、例えば“フェニルアルキルカルバメート”の言及は1種以上のフェニルアルキルカルバメートの言及であり、それには当業者に公知の相当物が含まれる、等々。
【0034】
説明をより簡潔にする目的で、本明細書に示す量的表現のいくつかには用語“約”による制限を受けさせていない。用語“約”を明確に用いるか否かに拘わらず、本明細書に示す量は全てが実際の所定値を指すことを意味しかつまた前記所定値の近似値(当該技術分野の通常の技術を基にして妥当であると推測される)[実験および/または測定条件による前記所定値の近似値を包含]も指すことを意味すると理解する。
【0035】
用語“含んで成る”、“含有する”、“有する”および“を包含する”を本明細書で用いる場合、それらを公然とした非限定意味で用いる。
【0036】
用語“組成物”を本明細書で用いる場合、これに、指定材料を指定量で含んで成る製品ばかりでなく指定材料を指定量で組み合わせる結果として直接または間接的にもたらされる如何なる生成物も包含させることを意図する。その上、用語“組成物”を用語“製剤”と互換的に用い、両方の用語に同様な意味を持たせることを意図し、かつそれらは両方とも前記定義に加えて当業者がそれらに与える通常の意味を持たせることを意図する。
【0037】
本明細書で用いる如き用語“二塩基性燐酸カルシウム二水化物”または“DCPD”は式CaHPO・2HOで表される化学化合物である。二塩基性燐酸カルシウム二水化物の同義語および商標には下記が含まれる:Cafos;オルト燐酸水素カルシウム二水化物;一水素燐酸カルシウム二水化物;Calstar;Calipharm;オルト燐酸ジカルシウム;Difos;DI−TAB;E341;Emcompress(R)(DCPDのブランド);燐酸塩(1:1)二水化物;第二燐酸カルシウム;燐酸カルシウム;および燐酸ジカルシウム(DCP)。後者の2つの用語は製薬学的技術分野で一般的に用いられる総称である。
【0038】
燐酸ジカルシウムはアルカリ性であると考えている(El−Shattaway、HH;Kildsig、DO;Peck、GE.Erythromycin direct compression excipients:preformulation stability screening using differential scanning calorimetry、Drug Dev.Ind.Pharm.、1982;86:937−947)。実際、燐酸ジカルシウムの表面のpHは、水和度、造粒、粒径(未製粉に対して製粉)などに応じて変化する。
【0039】
本発明では、表面のpHが若干酸性の燐酸ジカルシウムが式(Ib)で表されるカルバミン酸(2R)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物を安定にすることを立証する。我々は、表面のpHが高くなるにつれて式(Ib)で表される化合物が起こす加水分解および転位の両方による分解の度合も相当して高くなることを見いだした。
【0040】
このことを見いだした結果として、我々は、製剤で用いる燐酸ジカルシウムまたは他の賦形剤が示す表面のpHが理由で物理的および化学的分解を起こし易いAPIでは粒径に関係なくいろいろな形態の燐酸ジカルシウムを単独または他の賦形剤との組み合わせで用いるとそのようなAPIが起こす分解の度合が低くなり得ると現在考えている。
【0041】
DCPDは、市販グレードのDCPDを指し、これらは典型的に湿式造粒もしくはローラー圧縮製剤または乾式混合直接圧縮製剤として用いられる。製粉されたグレードのDCPDが示すpHは典型的に約6.5から約7のpHである。製粉されていないグレードのDCPDが示す平均的pHは典型的に約5.4である。
【0042】
DCPDは、室温で安定な無色無臭で非吸湿性の白色化合物である。DCPDは特定の温度および湿度条件下で100℃未満で結晶水を失う。その上、DCPD表面のpHも水和度、造粒(未製粉に対して製粉)などに応じて変化する。
【0043】
本発明では、市販の未製粉DCPDの使用を意図し、その未製粉のDCPDが示すpHは約5.0から約5.8のpHの範囲、またはpHは約5.1から約5.7のpHの範囲、またはpHは約5.2から約5.6のpHの範囲、またはpHは約5.3から約5.5のpHの範囲、またはpHは約5.4の値域である。
【0044】
本発明では、前記pHの範囲の中の1つ以上のpHを有する未製粉DCPDの使用がフェニルアルキルカルバメート化合物の分解を有意に低下させることで結果として前記化合物の安定性を向上させる機能を果たす。そのような未製粉DCPDが果たす機能は当該化合物の構造および反応性基の存在に依存する。
【0045】
DCPDは錠剤およびカプセル製剤の両方で使用可能である。DCPDはまた賦形剤としてかつ栄養補助剤に入れるカルシウム源としての両方で用いられ得る。DCPD、特に未製粉材料は錠剤用賦形剤として圧縮特性および良好な流動特性を有することからそれを用いる。
【0046】
用語“錠剤”は、APIを賦形剤と混合した後に圧縮して経口投薬形態物にしたものを意味する。
【0047】
“カプセル”は、場合により賦形剤と混ざり合っていてもよいAPIが入っている長楕円形容器の形状の経口投薬形態物である。
【0048】
“賦形剤”は、一般に、API用媒体として用いられる不活性な物質である。加うるに、賦形剤は、ある製品を製造する工程を補助する目的でも用いられ得る。しかしながら、賦形剤はAPIの物理および化学的安定性に応じて一般に不活性であるが、特定の賦形剤はAPIを分解させ得るか或はAPIを安定化させる目的で用いられ得る。ある組成物では、標準的配合技術を用いて、APIを任意の1種以上の賦形剤に溶解させるか或は混合してもよい。錠剤で用いられる賦形剤の種類には、これらに限定するものでないが、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑剤、被覆剤、甘味剤、風味剤および着色剤が含まれる。多くの場合、2種以上の機能を果たさせる目的で特別な1種の賦形剤を用いることができ、例えば結合剤を充填剤として用いてもよい。他の場合には、必ずしも全ての賦形剤が全てのAPIと物理的および化学的に適合するとは限らない。
【0049】
加うるに、当該薬剤または投薬形態物の投与経路、味に応じて、その組成物の製薬学的優雅さを向上させる目的でいろいろな賦形剤を用いることも可能である。
【0050】
“結合剤”は、一般に、錠剤に入れる材料を一緒に保持する目的で用いられる不活性な材料である。幅広く多様な結合剤を用いることができ、それには、これらに限定するものでないが、ゴム、ワックス、タピオカ澱粉(キャッサバ粉)、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、およびポリビニルピロリドンなどが含まれる。ある場合には、結合剤を充填剤として用いることも可能である。
【0051】
“充填剤”は、一般に、錠剤またはカプセルのサイズおよび形状を埋めることでそれの製造の実施を可能にしかつ消費者にとって使用を便利にする、即ち製品をより大きくするか或は取り扱いをより容易にする目的で用いられる不活性な物質である。充填剤の例には、これらに限定するものでないが、セルロース、ラクトース、スクロース、マンニトール、DCPD、微結晶性セルロース(MCC)、HPMC、大豆油、ヒマワリ油、ProSolv HD90(MCCとコロイド状二酸化ケイ素を一緒に加工した混合物のブランド)などが含まれる。ある場合には、結合剤を充填剤として用いることも可能であり、例えば結合剤であるセルロースまたはHPMCを錠剤または硬質ゼラチン製カプセルに入れる充填剤として用いてもよい。別の例として、大豆油またはヒマワリ油は軟質ゼラチン製カプセルに入れる充填剤として用いられる。
【0052】
“崩壊剤”は、一般に、水を容易に吸収することで錠剤が飲み込まれた後の分散に役立つように錠剤に添加される不活性な材料である。崩壊剤は湿ると膨張することで錠剤が消化管の中で起こす崩壊を促し、そのようにして、薬剤を放出して薬剤が吸収されるようにする。崩壊剤の例には、これらに限定するものでないが、澱粉グリコール酸ナトリウム(SSG)および架橋ポリプラスドン(polyplasdone)(クロスポビドン)が含まれる。ある種の結合剤、例えば澱粉などはまた崩壊剤としても用いられる。
【0053】
“滑剤”は、一般に、他の材料が一緒に凝集しないようにしかつ装置に粘着しないようにする目的で添加される不活性な材料である。滑剤の例には、これらに限定するものでないが、普通の鉱物、タルク、シリカ、ステアリン酸(ステアリン)、ステアリン酸マグネシウム(MS)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ステアリルフマル酸ナトリウム(SSF)およびコロイド状二酸化ケイ素(CSD)などが含まれる。
【0054】
“粉末流動促進剤”または“流動促進剤”は、一般に、その名称が暗示する如き機能を果たす不活性な材料である。粉末流動促進剤として機能する滑剤の例はCSDおよびタルクである。
【0055】
本発明の化合物を言及する時の用語“形態物”は、これらに限定するものでないが、それが塩、立体異性体、互変異性体、結晶、多形、非晶質、溶媒和物、水化物、エステル、プロドラッグまたは代謝産物形態物として存在し得ることを意味する(このような形態物が存在し得る場合)。本発明は、そのような化合物の形態物およびそれらの混合物の全部を包含する。
【0056】
本発明の化合物を言及する時の用語“孤立形態物”は、これらに限定するものでないが、それが鏡像異性体、ラセミ混合物、幾何異性体(例えばシスまたはトランス立体異性体)、幾何異性体の混合物などの如き本質的に高純度の状態で存在し得ることを意味する。本発明は、そのような化合物の形態物およびそれらの混合物の全部を包含する。
【0057】
本発明の化合物は製薬学的に許容される塩もしくはエステルの形態でも存在し得る。薬剤で用いる場合の用語“製薬学的に許容される塩もしくはエステル”は、本発明で用いる化合物の無毒の塩もしくはエステルを意味し、それらの調製を一般に遊離酸を適切な有機もしくは無機塩基と反応させることで実施する。そのような塩には、これらに限定するものでないが、下記が含まれる:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウム、エデト酸カルシウム、カムシレート、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシレート、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、しゅう酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、燐酸塩/二燐酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム、サリチル酸塩、ナトリウム、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、こはく酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、吉草酸塩など。
【0058】
本発明は化合物のいろいろな異性体およびこれらの混合物を包含する。用語“異性体”は、組成および分子量は同じであるが物理的および/または化学的特性が異なる化合物を指す。そのような物質は同じ種類の原子を同じ数で有するが構造が異なる。その構造の差は構成(幾何異性体)または偏光面を回転させる能力(光学異性体)の差であり得る。
【0059】
用語“光学異性体”は、構成は同じであるが基の空間的配置のみが異なる異性体を意味する。光学異性体は偏光面をいろいろな方向に回転させる。用語“光学活性”は、光学異性体が偏光面を回転させる度を有する。
【0060】
用語“ラセミ体”または“ラセミ混合物”は、2種類の鏡像異性体種が等モル量で存在していて孤立種の各々が偏光面を反対方向に回転させることで光学活性を示さない混合物を意味する。
【0061】
用語“鏡像異性体”は、鏡像が重なり合わない異性体を意味する。用語“ジアステレオマー”は、鏡像異性体ではない立体異性体を意味する。
【0062】
用語“キラル”は、所定配置において鏡像に重なり合わせることができない分子を意味する。これは、鏡像に重なり合わせることができるアキラル分子とは対照的である。
【0063】
また、キラル分子の異なる2種類の鏡像変形は、偏光を回転させる様式に応じて左旋性(左巻き)(省略形L)または右旋性(右巻き)(省略形D)としても知られる。記号“R”および“S”は、立体炭素原子1個または2個以上の回りの基の原子の配置を表し、それらを文献で定義されている如く用いることを意図する。
【0064】
ラセミ混合物から単離した鏡像異性体が豊富な形態の例には、右旋性鏡像異性体(この混合物には実質的に左旋性異性体が存在しない)が含まれる。これに関連して、実質的に存在しないは、左旋性異性体が当該混合物を構成する範囲が式:
【0065】
【数1】

【0066】
に従って当該混合物の25%未満、10%未満、5%未満、2%未満またはl%未満であることを意味する。
【0067】
同様に、ラセミ混合物から単離した鏡像異性体が豊富な形態の例には、左旋性鏡像異性体(この混合物には実質的に右旋性異性体が存在しない)が含まれる。これに関連して、実質的に存在しないは、右旋性異性体が当該混合物を構成する範囲が式:
【0068】
【数2】

【0069】
に従って当該混合物の25%未満、10%未満、5%未満、2%未満またはl%未満であることを意味する。
【0070】
本発明の化合物は異性体に特異的な合成を用いて個別の異性体として調製可能であるか或は異性体混合物から分割可能である。
【0071】
その上、本発明の化合物は少なくとも1種の結晶、多形または非晶質形態を取り得る。そのような多数の形態を本発明の範囲に包含させることを意図する。加うるに、本化合物の数種は水との溶媒和物(即ち水化物)または一般的有機溶媒との溶媒和物(例えば有機エステル、例えばエタノラートなど)も形成し得る。そのような多数の溶媒和物もまた本発明の範囲内に包含させることを意図する。
【0072】
用語“アルキル”は、直鎖もしくは分枝配列している炭素原子を1から8個有する飽和脂肪分枝もしくは直鎖炭化水素基もしくは連結基を意味する。用語“アルキル”にはまた炭素原子数がそれぞれ1から4の“低級アルキル”基もしくは連結基、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、t−ブチル、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、1−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、1−オクチル、2−オクチル、3−オクチルなども含まれる。アルキル基は中心分子と結合していてもよくかつ更に有効結合価が許容する時にはいずれかの原子が置換されていてもよい。
【0073】
用語“アルコキシ”は、直鎖もしくは分枝配列している炭素原子を1から8個有しかつ式:−O−アルキルで示されるように連結用酸素原子を通して結合しているアルキル基もしくは連結基を意味する。用語“アルコキシ”にはまた炭素原子数がそれぞれ1から4の“低級アルコキシ”基もしくは連結基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなども含まれる。アルコキシ基は中心分子と結合していてもよくかつ更に有効結合価が許容する時にはいずれかの炭素原子が置換されていてもよい。
【0074】
用語“ハロゲン”は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を意味する。
【0075】
“錠剤被覆剤”は、錠剤の材料または錠剤の一体性が空気中の水分によって劣化しないように保護するものであり、多くの場合、錠剤を飲み込み易くするものである。ある種の被覆剤は、色を与えるか或は滑らかな仕上げにする目的でか、或は錠剤への印刷を容易にする目的で用いられる(特殊なパンチを用いると文字および記号を錠剤にエンボス加工するのは容易であるが)。
【0076】
1つの態様では、糖も潜在的にアレルギーを引き起こす可能性のある物質も含有しないセルロース膜被覆剤を用いる。別の態様では、トウモロコシ澱粉(ゼイン)または木から抽出した液(製薬学的グレイズ)などの如き他の被覆剤材料を用いる。
【0077】
ある種の錠剤には腸溶性被膜と呼ばれる特殊な被膜を持たせるが、そのような腸溶性被膜は胃酸に抵抗しかつ腸の高いpHで溶解する。そのような被膜の目的は、胃酸によって有効成分が分解を起こす可能性がある場合にか或はそれを通過する時間によってそれの有
効性が危うくなる可能性がある場合に有効成分がより良好に吸収される小腸の中で溶解するのが助長されるように錠剤が胃の中で溶解しないようにすることにある。
【0078】
“リリースコーティング(release coating)”は、薬剤が放出される速度を制御するか或は具体的には薬剤が消化管の中に放出される時の放出速度を制御するものである。コーティングはまた製品を識別および区別する目的でも用いられる。
【0079】
本明細書で用いる如き“周囲条件”は、本発明の組成物を取り巻く隣接区域の中で測定した条件である。この用語は測定単位、例えば温度、圧力、湿度、光強度などのいずれにも適用可能である。例えば、所定温度と相対湿度の組み合わせ、例えば25℃と20%RHの組み合わせなどを指す目的で周囲条件を用いてもよい。
【0080】
温度と相対湿度が高い特定の条件、例えば25℃で40%RH、25℃で60%RH、25℃で80%RH、45℃で20%RH、45℃で40%RH、45℃で60%RH、45℃で80%RHまたは40℃で75%RHなどの条件下にさらされた化合物もしくは組成物は分解を起こす可能性がある。促進分解試験により、式(I)で表される化合物はpHが高くなればなるほど(pH5以上)カルバメートの転位および加水分解を起こし易くかつその速度はpHが高くなるにつれて速くなることが分かった。
【0081】
本発明では、未製粉DCPDがそのような加水分解および転位による分解に対する保護を与えることを見いだした。
【0082】
【化5】

【0083】
ここに化合物A1として示す式(Ib)で表されるカルバミン酸2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物の場合、製剤のpHがpH5より高くなると平衡が化合物A1からカルバメート基が開裂して加水分解生成物である1−(2−クロロ−フェニル)−エタン−1,2−ジオール化合物A2とホルムアミド化合物A3の混合物が生じる方向に不可逆的にシフトする。
【0084】
【化6】

【0085】
製剤のpHがpH5より高くなると化合物A1はまたインシトゥで転位も起こす結果としてカルバミン酸1−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物A4が生じる。
【0086】
組成物に未製粉DCPDを含有させるとその組成物に入っている式(I)で表される化
合物の貯蔵寿命が改善される可能性があることは理解されるであろう。従って、1つの一般的面において、本発明は、有効な量の未製粉二塩基性燐酸カルシウム二水化物および式(I)で表される化合物を含有して成る組成物を提供する。
【0087】
本明細書で用いる如き“有効な量の二塩基性燐酸カルシウム二水化物”は、DCPDを組成物中の式(I)で表される化合物を安定にする量で前記組成物に添加することを意味する。例えば、“有効な量の二塩基性燐酸カルシウム二水化物”は、DCPDを組成物中の式(I)で表される化合物が起こす物理的もしくは化学的分解の度合を低下させる量で前記組成物に添加することであり得る。DCPDの有効な量は式(I)で表される個々の化合物、前記化合物の用量範囲および当該組成物に存在する他の賦形剤などに応じて変わり得ることは容易に理解されるであろう。“DCPDの有効な量”を決定する方法は当該技術分野で公知である。例えば、当業者は式(I)で表される化合物、DCPDおよび他の賦形剤を含有する混合物を作成し、前記混合物に高い温度と相対湿度の貯蔵を受けさせることで分解を促進させそして分解した化合物の量を測定することなどでDCPDの有効な量を実験的に決定することができるであろう。
【0088】
本発明の利点を得ようとする時の“DCPDの有効な量”は当該組成物の約4%(重量/重量)である。その上、本発明の範囲内に含めることを意図する態様には、“DCPDの有効な量”が当該組成物の約4%(重量/重量)、6%(重量/重量)、8%(重量/重量)、10%(重量/重量)、12%(重量/重量)、14%(重量/重量)、16%(重量/重量)、18%(重量/重量)、20%(重量/重量)、22%(重量/重量)、24%(重量/重量)、26%(重量/重量)、28%(重量/重量)、30%(重量/重量)、32%(重量/重量)、34%(重量/重量)、36%(重量/重量)、38%(重量/重量)、40%(重量/重量)、42%(重量/重量)、44%(重量/重量)、46%(重量/重量)、48%(重量/重量)、50%(重量/重量)、60%(重量/重量)、70%(重量/重量)などである態様が含まれる。
【0089】
本発明の態様には、DCPDの有効な量が約4%(重量/重量)から約40%(重量/重量)の範囲、約4%(重量/重量)から約35%(重量/重量)の範囲、約4%(重量/重量)から約30%(重量/重量)の範囲、約4%(重量/重量)から約25%(重量/重量)の範囲、約4%(重量/重量)から約20%(重量/重量)の範囲、約4%(重量/重量)から約10%(重量/重量)の範囲および約4%の値域である態様が含まれる。
【0090】
本明細書で用いる如き用語“安定”は、ある化合物もしくは組成物を周囲条件下で6カ月の期間、または1年の期間、または2年の期間、または3年の期間、または4年の期間、または5年の期間に渡って貯蔵した時にそれが物理的および化学的に実質的に同じ形態のままである傾向を指す。
【0091】
本発明の態様は、約6カ月から約5年の範囲、または約1年から約5年の範囲、または約2年から約5年の範囲、または約3年から約5年の範囲、または約4年から約5年、または約5年の値域の期間に渡って周囲条件下で貯蔵した時に安定なままである組成物を包含する。
【0092】
別の態様において、本発明は、式(I)で表される化合物および有効な量のDCPDを含有して成る錠剤を提供する。本発明を製錠方法で限定するものでない。本発明の錠剤の製造は湿式造粒方法または乾式混合直接圧縮製錠方法のいずれかで実施可能である。
【0093】
更に別の態様において、本発明は、式(I)で表される化合物および有効な量の商業的に入手可能な未製粉DCPDを含有して成っていて乾式造粒および直接圧縮製錠方法で作
られた錠剤を提供する。
【0094】
本発明の組成物に場合により更に追加的希釈剤もしくは賦形剤および他の治療薬を含有させることも可能である。
【0095】
本発明の態様は、更に微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、マンニトール、澱粉グリコール酸ナトリウム、架橋ポリプラスドン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムまたはコロイド状二酸化ケイ素から選択した追加的賦形剤も含有して成る組成物を包含する。
【0096】
本発明の1つの態様は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、澱粉グリコール酸ナトリウム、架橋ポリプラスドン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムまたはコロイド状二酸化ケイ素から選択した追加的賦形剤も含有して成る組成物を包含する。
【0097】
本発明の1つの態様は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは澱粉グリコール酸ナトリウムから選択した追加的賦形剤も含有して成る組成物を包含する。
【0098】
例えば、本発明の組成物は、APIとしての式(Ib)で表されるカルバミン酸(2R)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物、DCPD、HPMCまたはPEGおよびSSGまたはクロスポビドンを含有して成っていてもよい。そのような錠剤に更に場合によりSLSまたはCSDの中の1種以上を含有させてもよい。
【0099】
本発明の別の態様は、HPMCまたはクロスポビドンから選択した賦形剤の中の1種以上を含有して成る組成物を包含する。
【0100】
本発明は、また、本発明の組成物を製造する方法も提供し、この方法は、少なくとも1種の賦形剤がDCPDである有効な量の1種以上の賦形剤を式(I)で表される化合物と混合する段階を含んで成る。この組成物を便利には単位投薬形態物として提供し、そしてこれの調製は薬学技術で公知の方法のいずれかを用いて実施可能である。
【0101】
本発明の製薬学的組成物を調製する時、式(I)で表される1種以上の化合物またはこれらの塩を有効成分として有効な量のDCPDおよび製薬学的に許容される担体と一緒に通常の薬剤配合技術に従って密に混合する。担体は一般に必要な不活性な製薬学的賦形剤であり、それには、これらに限定するものでないが、結合剤、充填剤、崩壊剤、懸濁剤、滑剤、風味剤、甘味剤、防腐剤、染料および被覆剤が含まれる。経口投薬形態の組成物を調製する時、安定な投薬形態物をもたらす通常の製薬学的担体のいずれも使用可能である。例えば、固体状の経口用製剤に適した担体および添加剤には、澱粉、糖、希釈剤、造粒剤、滑剤、結合剤、崩壊剤などが含まれる。
【0102】
本発明では式(I)で表される化合物の如何なる固体形態物も使用可能であり、それには、これらに限定するものでないが、塩、立体異性体(例えば鏡像異性体またはラセミ混合物)、互変異性体、結晶、多形体、非晶質、溶媒和物、水化物、エステル、プロドラッグまたは代謝産物の形態が含まれる。本発明はそのような化合物の形態物およびこれらの混合物の全部を包含する。
【0103】
市販グレードの未製粉DCPDが直接的圧縮/圧密または乾式造粒技術で一般的に用いられており、それらを本発明でも用いる。
【0104】
式(I)で表される化合物の合成は米国特許第3,265,728号、米国特許第3,313,692号、米国特許第6,103,759号、米国特許第6,562,867号、米国特許第6,541,513号、米国特許第6,589,985号および米国特許第6,815,464号およびPCT公開WO02/067924、WO02/067925、WO02/067924、WO02/067923、WO02/07822、WO03/007934およびWO03/007936(これらは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている如き当業者に公知の方法を用いて実施可能である。
【0105】
式(I)で表される化合物の塩およびエステルの製造は、前記化合物に酸を用いた処理を適切な溶媒中で受けさせるか或は当業者に良く知られた手段を用いて実施可能である。
【0106】
本発明は、また、本発明の組成物を例えばCNS障害などの治療で用いることも提供する。用語“CNS障害”は、痛み、鬱病、不安、てんかん、卒中、認知症およびパーキンソン病などの如きCNS障害から選択される障害を意味する。
【0107】
本発明は、更に、有効な量のDCPDおよび式(I)で表される化合物をCNS障害治療用薬剤の製造で用いることも提供する。
【0108】
本発明は、更に、CNS障害の治療を必要としている被験体におけるそれを治療する方法も提供し、この方法は、前記被験体に有効な量の二塩基性燐酸カルシウム二水化物および式(I)で表される化合物を含有して成る組成物を治療的もしくは予防的に有効な量で投与することを含んで成る。本方法は、また、前記被験体に有効な量の二塩基性燐酸カルシウム二水化物および式(I)で表される化合物を含有して成る組成物を予防的に有効な量で投与することも含んで成る。
【0109】
用語“被験体”および“患者”を本明細書では互換的に用い、それらを本明細書で用いる場合、それらは治療、観察または実験の対象である動物、好適には哺乳動物、最も好適にはヒトを指す。用語“哺乳動物”には、ヒトである患者およびヒト以外の霊長類ばかりでなく実験動物、例えばウサギ、ラット、マウスまたは他の同様な動物も含まれる。
【0110】
従って、本明細書で用いる如き用語“治療を必要としている被験体”は、CNS障害を現在発症しているか或は発症する可能性のある被験体もしくは患者を指し、そのようなCNS障害には、治療薬によって治療可能な全ての気分障害、または式(I)で表される1種以上の化合物を単独でか或は別の治療的診療行為(これらに限定するものでないが、別の治療薬を包含)と組み合わせて施すことによって患者に存在する臨床的状態または予後が改善され得る他の障害のいずれも含まれる。
【0111】
本明細書で用いる如き用語“治療的に有効な量”は、本発明の化合物の中の1種以上がそのような治療を必要としている被験体もしくは患者にこの上で定義した如き治療効果をもたらすに充分な量を意味する。
【0112】
用語“予防的に有効な量”は、研究者、獣医、医者または他の臨床医が探求している薬剤が組織もしくは系、動物またはヒトに関して予防することを求めている生物学的もしくは医学的イベントが発症する危険性を防止するか或は低下させる量を意味することを意図する。
【0113】
本製薬学的組成物の治療的および予防的に有効な投与量を決定する方法は当該技術分野で公知である。例えば、本化合物をCNS障害を治療する時の補助薬として用いる場合、それを平均的成人に対して1日当たりに用いる投与量は約0.1mgから400mgの範
囲内であってもよく、それを通常は1日当たり1から2回の計画で投与する。しかしながら、有効な量は、使用する個々の化合物、投与様式、製剤の濃度および病気状態の進行に応じて変わり得る。加うるに、治療すべき個々の患者に関連した要因の結果として用量を調整する必要もあるが、そのような要因には、患者の年齢、体重、食事、投与時間および治療に対する反応が含まれる。
【0114】
投与が容易なことから錠剤およびカプセルが本発明の組成物に最も有利な経口投薬単位形態物に相当する。必要ならば、錠剤に糖による被覆または腸溶性被膜による被覆を標準的技術を用いて受けさせてもよい。作用が長期に渡ると言った利点を与える投薬形態が得られるように錠剤またはカプセルに被覆を受けさせてもよいか或は他の様式の配合を受けさせてもよい。例えば、そのような錠剤またはピルに内部の投薬成分と外側の投薬成分を含めて、その後者が前者の上を覆う形態にしてもよい。この2成分を腸溶性層[これは胃の中で起こる崩壊に抵抗して前記内部成分が無傷のまま十二指腸の中に運ばれるようにするか或は放出が遅れるようにする働きをする]で分離しておいてもよい。そのような腸溶性層または被膜ではいろいろな材料が使用可能であり、そのような材料には数多くの高分子量酸に加えてシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの如き材料が含まれる。
【0115】
本発明の組成物は単位投薬形態物、例えば錠剤、カプセル、粉末または顆粒などとして使用可能である。
【0116】
本明細書に示す製薬学的組成物に有効成分を投薬単位、例えば錠剤、カプセルまたは粉末などがそれを上述した如き治療的もしくは予防的に有効な投与量で送達するに必要な量で含有させる。例えば、本明細書に示す製薬学的組成物に含有させる治療的もしくは予防的に有効な投与量は単位投薬単位当たりの有効成分が約25から約400mgの範囲内の量または有効成分が約50から約200mgの範囲内の量になるような量であり得る。
【0117】
本発明のいくつかの態様では、本発明の組成物を他の1種以上の化合物もしくは治療薬、例えば他の抗鬱薬などと一緒にした組み合わせ製品として単独にか或は同時に投与してもよい。そのような態様において、本発明は、ある患者におけるCNS障害を治療もしくは予防する方法を提供する。この方法は、治療を必要としている患者に本明細書に開示する式(I)で表される化合物の中の1種を治療的もしくは予防的に有効な量で本発明の化合物が示す治療効果を増強もしくは相乗的に増強する能力を有する有効な量の他の1種以上の化合物もしくは治療薬と組み合わせて投与する段階を包含する。
【0118】
本発明の組成物とある化合物、治療薬または公知薬剤の“同時投与”または“組み合わせ投与”は、本発明の1種以上の組成物に加えて他の1種以上の治療薬の投与を式(I)で表される化合物と他の治療薬の両方が治療効果をもたらすような時期に実施することを意味する。ある場合の治療効果は相乗的である。そのような同時投与は、本発明の化合物の投与に関してそのような治療薬を同時(即ち同じ時間)にか、先行してか或は後に投与することを伴い得る。通常の当業者は、個々の治療薬と本発明の化合物の投与に関して適切な時期、順および投与量を困難なく決定するであろう。
【0119】
加うるに、いくつかの態様では、補助療法を必要としている患者もしくは被験体にそのような療法を施すための薬剤を製造する目的で本発明の組成物を単独で用いてもよいか或は上述した如き他の1種以上の治療薬もしくはそれらの塩もしくはエステルと組み合わせて用いてもよい。
【0120】
[実施例]
以下の実施例を参照することで本発明がより良好に理解されるであろう。当業者は、本
実施例は本発明の単に例であることを容易に理解するであろう。従って、本発明の製薬学的組成物を本明細書に示すいろいろなブレンド物の調製で示す方法および条件で限定するとして解釈されるべきでない。当業者は、そのような方法および条件を常規通り変えることで本製薬学的組成物を調製する方法を認識するであろう。本発明の製薬学的組成物を本明細書の以下に示す請求項でより詳細に記述する。
【実施例1】
【0121】
分解生成物:
スキームAに示したように、化合物A1、即ち式(Ib)で表されるカルバミン酸(2R)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物のサンプルをpHが9の炭酸塩緩衝液に溶解させた。その溶液を室温で分解生成物である1−(2−クロロ−フェニル)−エタン−1,2−ジオール化合物A3、ホルムアミド化合物A4およびカルバミン酸1−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物A5がかなりの量で生じるまで放置した。
【0122】
前記サンプルにLC−MSによる分析を正イオンESIおよびAPCI検出を用いた逆相条件下で受けさせた。化合物A1はm/z 216の[M+H]ピークを示した。主要な転位分解生成物である化合物A5もまたm/z 216の[M+H]ピークを示し、このことは、それは化合物A1の異性体であることを示している。主要ではない加水分解生成物である化合物A3はシグナルを示さなかった、と言うのは、化合物A3は強い塩基性部位を全く持たないことで正イオンESIもしくはAPCI実験でシグナルを生じる可能性がないからである。
【実施例2】
【0123】
分解試験
分解試験を異なる2種類の様相、即ちマスブレンド(Mass Blends)およびN−1デザインで実施した。マスブレンド試験は、本発明の製薬学的有効成分(API)と混合した提案する賦形剤任意選択の全部を安定性に関して応力のかかった条件下に置いた時に分解生成物を示さないであろうように考案した試験であった。そのような賦形剤任意選択に必要ないろいろな種類の賦形剤、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、流動剤、湿潤剤および滑剤などを含めた。提案する賦形剤にDCPDを固体状の投与用充填剤として含めた。DCPDはアルカリ性であることから関心事であった。
【0124】
従って、DCPDの使用が分解生成物全体に対して示す影響が否定的であることを示す目的でその賦形剤を分離して特定のマスブレンド物に入れた。驚くべきことに、DCPDを入れたマスブレンド物がもたらした分解生成物の量の方がDCPDを入れなかったマスブレンド物のそれよりも少なかった。
【0125】
このような結果は予想と反対であったことから、N−1統計学的デザインを用いた2番目の賦形剤適合性試験を実施した。N−1デザイン試験は、各賦形剤の貢献度が肯定的であるか或は否定的であるかを区別することを可能にし、かつ複数の賦形剤とAPIを含有するブレンド物の中に存在する相互作用をAPIと個々の賦形剤の伝統的2者ブレンド物の試験と比較して示すものである。
【0126】
N−1デザインを用いて、DCPDを入れたブレンド物が示す分解の度合の方がこの試験に含めた他の充填剤任意選択を用いた時よりも低いことを立証した。データをMini
Tab(統計学的プログラム)で分析した結果、そのデータは、DCPDがブレンド物のpHを低下させることで本発明のAPIが分解を起こさないようにそれを保護することを示唆している。
【0127】
実施した試験を以下に示す:
マスブレンドおよびN−1デザイン試験の配合:
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
【表4】

【0132】
ブレンド
マスブレンド試験とN−1デザイン試験の間で異なる2種類のブレンド方法を用いた。マスブレンドには数種の液状材料(ポリソルベート80およびGelucire 44/14)を含めた。Gelucireは室温でワックス状の材料であることから、この材料を適切に混合することができることが確保されるように前記材料を60℃に加熱して溶融させることで液体の状態にする必要があった。以下の2章にブレンド方法を詳述する。
【0133】
マスブレンド調製:
1.以下の段階に明記する添加順を用いて前以て重量を測定しておいた材料の全部を乳鉢
と乳棒でブレンドする。
2.下記のあらゆる乾燥材料を下記の順で各添加後にブレンドしながら添加した:式(I
b)で表されるカルバミン酸(2R)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロ
キシ−エチルエステル化合物、微結晶性セルロース、澱粉グリコール酸ナトリウム、
ステアリン酸マグネシウム、ラクトース、二塩基性燐酸カルシウム二水化物そしてラ
ウリル硫酸ナトリウム。乾燥材料をブレンドする。
3.ポリソルベート80を添加した後にブレンドを継続する。
4.前以て加熱して溶融させておいたGelucire 44/14を添加してブレンド
を継続する。
【0134】
N−1デザインブレンド調製:
1.下記の材料を測り取る:式(Ib)で表されるカルバミン酸(2R)−2−(2−ク
ロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステル化合物、充填剤、崩壊剤、結合
剤、湿潤剤、流動剤および滑剤。下記の段階を用いてあらゆる材料を乳鉢と乳棒でブ
レンドする:
2.あらゆる材料を乳鉢と乳棒に下記の順で各添加後にブレンドしながら添加する:式(
Ib)で表されるカルバミン酸(2R)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒド
ロキシ−エチルエステル化合物、充填剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、流動剤そして滑
剤。
3.ブレンド物を160mm X 10mmのガラス管に入れる。
【0135】
N−1デザイン試験
APIといろいろな賦形剤の間に存在し得る不適合性を決定することは固体状経口投薬形態物を開発する時の重要な面である。頑強な組成物を生じさせる目的で賦形剤適合性試験を考案して実施した。
【0136】
賦形剤適合性試験の一般的デザインは、個々のAPI毎に選択した賦形剤の可能なあらゆる組み合わせの計画的選択を試験する実験を伴う。各組成のブレンド物に1種類の賦形剤を除いて選択した賦形剤を含有させ、最終的に、選択した賦形剤のあらゆる組み合わせに試験を式:
【0137】
【数3】

【0138】
[式中、kは賦形剤の種類の数を定義するものであり、そして各賦形剤の種類はレベルlを有し、かつレベルjは級数:1、2、…、kである]に従って受けさせた。本ケースにおける総数kは4であり、かつ賦形剤の選択は充填剤、崩壊剤、滑剤および流動促進剤に相当する。
【0139】
錠剤製剤の典型的な組成をAPIおよび賦形剤、例えば結合剤、充填剤、崩壊剤および粉末流動促進剤もしくは滑剤などで構成させる。本明細書で用いる実験方法をいろいろなAPIといろいろな賦形剤を含有して成る組成物に容易に適用することができると理解する。
【0140】
試験を受けさせたあらゆる賦形剤を下記の商業源から入手した:DCPD(JRS Pharma、Patterson、NY);ラクトース(Foremost、Rothschild、WI);MCC(FMC Bioploymer、Philadelphia、PA);クロスポビドン(ISP Technologies、Kalvert City、KY);澱粉グリコール酸ナトリウム(JRS Pharma、Patterson、NY);ステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt、St.Louis、MO);コロイド状二酸化ケイ素(Cabot、Tuscola、IL);ラウリル硫酸ナトリウム(Mutchler Inc.Cayey、PR.);ポリソルベート80(EM Science、Gibbstown、NJ.);Gelucire 44/14(Gattefosse、Westwood、NJ.);HPMC(The Dow Chemical Company、Midland、MI.)およびポリエチレングリコール(BASF、Florham Park、NJ.)。
【0141】
N−1デザインブレンド
賦形剤適合性試験を30種類の組成のブレンド物で構成させた。1つの組成のブレンド物には有効成分のみを含有させそして他の1つのブレンド物にはAPIのみを含有させた。この2種類の組成のブレンド物を対照として用いた。ブレンド物の組成は250mg量の錠剤が基になっていた。
【0142】
【表5】

【0143】
【表6】

【0144】
【表7】

【0145】
安定性プロトコル
安定性用サンプルの調製
バルクブレンド物を160mm X 10mmのガラス管に分与(約88−92mg)した。重量を測定した後、34個のブレンド物から成る各組をプラスチック製試験管ラックの中に入れた。各ラックの中の開放試験管上部を試験管内部の湿気が容易に平衡状態になるように1層の薄ペーパータオルの大きな片で覆った。6個の試験ラックを60℃/75%RH下に置き、6個を40℃/75%RH下に置き、4個を25℃/60%RH下に置きそして2個を4℃下に置いた。
【0146】
前以て決めておいた時間点でサンプルを指定チャンバから取り出し、室温で2時間平衡状態にし、目で検査した後、HPLCで化学的分解に関して分析した。時間点ゼロおよび各間隔毎に実施した試験は外観、重量上昇または損失、分析値および不純物、および対照であった。
【0147】
マスブレンドプロトコル
3種類のマスブレンドサンプル(11種類の賦形剤のプラセボ、11種類の賦形剤の有効成分、10種類の賦形剤の有効成分およびN−1デザイン)を24カ月の安定性試験下に置いた。約10gのサンプルの各々を1オンスの開放型黄褐色ガラス瓶に入れて、空気を透過するダストカバーを取り付けて貯蔵した。貯蔵条件および試験間隔を表7に示す。
【0148】
【表8】

【0149】
N−1デザインプロトコル
表6に示した30個のブレンドサンプルを24カ月の安定性試験下に置いた。約88-92mgのサンプルの各々を160mm X 10mmの開放型ガラス管に入れて、空気を透過するダストカバーを取り付けて貯蔵した。貯蔵条件および試験間隔を表8に示す。
【0150】
【表9】

【実施例3】
【0151】
安定性試験の結果
物理的外観
ブレンド物が入っている試験管を個別に明るい光に対面するようにして目で検査して、ブレンド物の色を記録した。ブレンド物の可視的外観を表1−Aから1−Dに記録する。HPLC分析
HPLC装置: Agilent 1100 HPLC装置(または同等物)を用い
て211nmの紫外線で検出しかつ注入体積を25μLにした
HPLCカラム: Waters Symmetry C18、4.6x250mm、
5μm(または同等物)
カラム温度: 30℃
流量: 1.5mL/分
検出: 211−nm
流す時間: 20分
注入体積: 25μL
濯ぎ用溶媒: 水/アセトニトリル、82/18(体積/体積)
可動相: 0.170Mの燐酸ナトリウム緩衝液/アセトニトリル、82/1
8(体積/体積)緩衝液のpH3.0
滞留時間: 約12.6分
アセトニトリル: HPLCグレード
水: 18 Mohm(最低)Milli−Q(R)
メタノール: HPLCグレード
o−燐酸、85% ACSグレード
燐酸二水素カリウム N.F.Foodグレード
(KHPO、無水)
【0152】
装置の安定性
1.RWJ−333369−000ピークの滞留時間は約12.6分である。
2.Sensitivity Solution中のRWJ−333369−000 ピ
ークのノイズに対するシグナルの比率は10以上でなければならない。
3.現在のUSP方法で計算した時のRWJ−333369−000のテーリング係数は
2.0未満でなければならない。
【0153】
統計学的分析
この試験の結果の統計学的分析を各ANOVAが実験のサブセット(各サブセットは1種類の賦形剤が取り除かれていることを特徴とする)に相当する一連の非独立(non−indepenent)ANOVAを用いて実施した。例えば、レベルljがkの場合の賦形剤の種類の数はkである。この場合、賦形剤の種類は4種類であり、結果として4つのANOVAを実施した。誤差項を残差から推定した。結果を科学的に解釈することができるようにグラフ方法を用いた。
【0154】
可視的外観
可視的外観の試験では、試験を受けさせるべきブレンド物を安定性用瓶から少量取り出して、個別に白色紙の上に置いた。可視的外観を表9に記録する。NDは、指定貯蔵条件下で貯蔵したブレンド物の可視的外観を測定しなかったことを意味する。
【0155】
【表10】

【0156】
分析試験
サンプルにHPLCによる分析を上述したようにして受けさせ、そしてマスブレンド物が示した主要ではない加水分解生成物(化合物A3)および主要な転位生成物(化合物A5)の結果を表10に記録する。N−1デザインブレンド物に関してもまた加水分解生成物と転位生成物の合計を表11から15の中の(総量)縦列に記録した。
マスブレンド試験−分析値および不純物
【0157】
【表11】

【0158】
このデータは、驚くべきことに、11種類の賦形剤と有効成分のブレンド物(DCPDが入っている)の方がDCPDが入っていない10種類の賦形剤と有効成分のブレンド物に比べて両方の分解生成物の濃度が有意に低いことを予想外に示していた。
【0159】
N−1デザイン試験−分析値および不純物
【0160】
【表12】

【0161】
【表13】

【0162】
【表14】

【0163】
【表15】

【0164】
【表16】

【0165】
N−1デザイン試験−賦形剤の比較
以下の表に、ブレンド物を指定安定性条件下で貯蔵した時の平均分解生成物総量を示す。平均分解生成物総量は、当該賦形剤を含有させたブレンド物または含有させていないブレンド物が示した加水分解生成物である化合物A3のパーセントの合計と転位生成物である化合物A5のパーセントの合計である。
【0166】
【表17】

【0167】
表16では、当該材料を用いた時の平均分解生成物総量と当該材料を用いない時の分解生成物総量を比較し、その結果は、F1およびF2(2種類の充填剤)に関してF1を含有させたあらゆるブレンド物が示した平均分解生成物濃度は約2.1%でありそしてF2の場合の濃度は約1.4%であったことを示している。従って、このデータは、当業者は本発明の製剤を生じさせようとする時にF1ではなくF2を選択するであろうことを示していることになるであろう。同様に、崩壊剤を比較した時にも、本製剤を生じさせようとする時にはD2ではなくD1を選択することになるであろう。
【0168】
【表18】

【0169】
表17では、当該材料を用いた時の平均分解生成物総量と当該材料を用いない時の分解生成物総量を比較し、その結果は、2種類の充填剤に関してF2を含有させたあらゆるブレンド物が示した平均分解生成物濃度の方がF1を含有させたブレンド物が示した濃度よりも若干高かったことを示している。崩壊剤を比較した時、D2を用いた時の濃度の方が
D1を用いた時の濃度よりも若干低かった。得たデータのスケールは低い方の濃度から高い方の濃度が97.65%から98.50%の範囲である。
【0170】
【表19】

【0171】
表18と表16を比較して、当該材料を用いた時のブレンド物および用いない時のブレンド物の各々が示した平均分解生成物総量は同様である。F2を用いたブレンド物が示した分解生成物濃度の方がF1を用いたブレンド物が示したそれよりも低かった。D1を用いたブレンド物が示した分解生成物濃度の方がD2を用いたブレンド物のそれよりも低かった。B1を用いたブレンド物が示した分解生成物濃度の方がB2を用いたブレンド物が示したそれよりも低かった。Wを用いたブレンド物が示した分解生成物濃度の方がWを用いなかったブレンド物が示したそれよりも若干高かった。Faを用いたブレンド物は実際上差を示さなかった。基礎ブレンド物(Aベース)の場合の分解生成物濃度を高純度のAPIを単独で用いた時の濃度と比較する。
【0172】
【表20】

【0173】
表19と表17を比較して、当該材料を用いた時のブレンド物および用いない時のブレンド物の各々が示した平均分解生成物総量は同様であった。F2を用いたブレンド物が示した分解生成物濃度の方がF1を含有させたブレンド物が示した濃度よりも若干高かった。D1を用いた時の濃度の方がD1を用いた時の濃度よりも若干高かった。Wを用いなかったブレンド物が示した分解生成物濃度の方がWを用いたブレンド物が示したそれよりも若干高かった。B2を用いたブレンド物が示した分解生成物濃度の方がB1を用いたブレンド物が示したそれよりも若干低かった。Faを用いたブレンド物は実際上差を示さなかった。基礎ブレンド物(Aベース)の場合の分解生成物濃度を高純度のAPIを単独で用いた時の濃度と比較する。得たデータのスケールは低い方の濃度から高い方の濃度が99.03%から99.64%の範囲である。
【0174】
この上で行った本発明およびいろいろな実施例の説明は特定の面を強調したものであると理解されるべきである。それでもなお、具体的に詳しく述べることも考察も行わなかった他の数多くの均等物が本発明または以下の請求項の精神および範囲内に入る可能性があり、それらも包含させることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルアルキルカルバメート化合物の組成物であって、前記化合物と有効な量の1種以上の賦形剤の混合物を含有して成りかつ少なくとも1種の賦形剤が該組成物に入っている前記フェニルアルキルカルバメート化合物の分解を低下させる二塩基性燐酸カルシウム二水化物である組成物。
【請求項2】
前記化合物が式(I):
【化1】

[式中、
フェニルは、Xの所がフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から成る群より独立して選択される1から5個のハロゲン原子で置換されており、そして
およびRは、独立して、水素およびC1−4アルキルから成る群より選択され、かつC1−4アルキルは場合によりフェニルで置換されていてもよく、かつフェニルは場合によりハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノから成る群より独立して選択される置換基で置換されていてもよい]
で表される化合物またはこれの形態物である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記化合物がカルバミン酸2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステルである請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物がカルバミン酸(2R)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステルである請求項2記載の組成物。
【請求項5】
前記化合物が約75%以上の範囲、または約90%以上の範囲、または約95%以上の範囲、または約98%以上の範囲、または約99%以上の範囲の主要量で存在する請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物がカルバミン酸(2S)−2−(2−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルエステルである請求項2記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物が約75%以上の範囲、または約90%以上の範囲、または約95%以上の範囲、または約98%以上の範囲、または約99%以上の範囲の主要量で存在する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物が製粉されていない請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物が示すpHが約5.0から約5.8のpHの範囲、またはpHが約5.1から約5.7のpHの範囲、またはpHが約5.2から約5.6のpHの範囲、またはpHが約5.3から約5.5のpHの範囲、またはpHが約5.4の値域である請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約40%(重量/重量)の範囲内である請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約35%(重量/重量)の範囲内である請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約30%(重量/重量)の範囲内である請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約25%(重量/重量)の範囲内である請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約20%(重量/重量)の範囲内である請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約10%(重量/重量)の範囲内である請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)である請求項1記載の組成物。
【請求項17】
周囲条件下で貯蔵した時に約6カ月から約5年の範囲、または約1年から約5年の範囲、または約2年から約5年の範囲、または約3年から約5年の範囲、または約4年から約5年、または約5年の値域の期間に渡って安定なままである請求項1記載の組成物。
【請求項18】
1種以上の賦形剤が微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、マンニトール、澱粉グリコール酸ナトリウム、架橋ポリプラスドン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムまたはコロイド状二酸化ケイ素から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項19】
1種以上の賦形剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース、澱粉グリコール酸ナトリウム、架橋ポリプラスドン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムまたはコロイド状二酸化ケイ素から選択される請求項18記載の組成物。
【請求項20】
1種以上の賦形剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは澱粉グリコール酸ナトリウムから選択される請求項1記載の組成物。
【請求項21】
錠剤である請求項1記載の組成物。
【請求項22】
1種以上の賦形剤が微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、マンニトール、澱粉グリコール酸ナトリウム、架橋ポリプラスドン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムまたはコロイド状二酸化ケイ素から選択される請求項21記載の組成物。
【請求項23】
1種以上の賦形剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース、澱粉グリコール酸ナトリウム、架橋ポリプラスドン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムまたはコロイド状二酸化ケイ素から選択される請求項21記載の組成物。
【請求項24】
1種以上の賦形剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは澱粉グリコール酸ナトリウムから選択される請求項21記載の組成物。
【請求項25】
前記化合物が請求項3記載の化合物である請求項21記載の組成物。
【請求項26】
前記化合物が請求項4記載の化合物である請求項21記載の組成物。
【請求項27】
前記化合物が約75%以上の範囲、または約90%以上の範囲、または約95%以上の範囲、または約98%以上の範囲、または約99%以上の範囲の主要量で存在する請求項26記載の組成物。
【請求項28】
更に1種以上の治療薬も含有して成る請求項1記載の組成物。
【請求項29】
組成物の製造方法であって、式(I):
【化2】

[式中、
フェニルは、Xの所がフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から成る群より独立して選択される1から5個のハロゲン原子で置換されており、そして
およびRは、独立して、水素およびC1−4アルキルから成る群より選択され、かつC1−4アルキルは場合によりフェニルで置換されていてもよく、かつフェニルは場合によりハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノから成る群より独立して選択される置換基で置換されていてもよい]
で表される化合物またはこれの形態物と有効な量の1種以上の賦形剤を混合する段階を含んで成り、かつ少なくとも1種の賦形剤が二塩基性燐酸カルシウム二水化物である、上記方法。
【請求項30】
前記化合物が請求項3記載の化合物である請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記化合物が請求項4記載の化合物である請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記化合物を約75%以上の範囲、または約90%以上の範囲、または約95%以上の範囲、または約98%以上の範囲、または約99%以上の範囲の主要量で存在させる請求項31記載の方法。
【請求項33】
CNS障害の治療を必要としている被験体におけるそれを治療する方法であって、前記被験体に式(I):
【化3】

[式中、
フェニルは、Xの所がフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から成る群より独立して選択される1から5個のハロゲン原子で置換されており、そして
およびRは、独立して、水素およびC1−4アルキルから成る群より選択され、かつC1−4アルキルは場合によりフェニルで置換されていてもよく、かつフェニルは場合
によりハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノから成る群より独立して選択される置換基で置換されていてもよい]
で表される化合物またはこれの形態物と有効な量の1種以上の賦形剤を含有して成りかつ少なくとも1種の賦形剤が二塩基性燐酸カルシウム二水化物である組成物を有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【請求項34】
前記化合物が請求項3記載の化合物である請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記化合物が請求項4記載の化合物である請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記化合物を約75%以上の範囲、または約90%以上の範囲、または約95%以上の範囲、または約98%以上の範囲、または約99%以上の範囲の主要量で存在させる請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記CNS障害がけいれん、てんかん、卒中および筋けいれんから選択され、中枢神経系疾患の治療に有用であり、特に抗けいれん薬、抗てんかん薬、神経保護薬および中枢性筋弛緩薬として有用であり、神経障害性痛、群発性および片頭痛による痛み、双極性障害、慢性および急性神経変性疾患、精神病性障害、運動障害、嗜癖障害、衝動調節障害、不安障害、抗てんかん発生の治療および予防に有用でありかつ痛みの治療に有用である請求項33記載の方法。
【請求項38】
組成物であって、式(I):
【化4】

[式中、
フェニルは、Xの所がフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から成る群より独立して選択される1から5個のハロゲン原子で置換されており、そして
およびRは、独立して、水素およびC1−4アルキルから成る群より選択され、かつC1−4アルキルは場合によりフェニルで置換されていてもよく、かつフェニルは場合によりハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノから成る群より独立して選択される置換基で置換されていてもよい]
で表される化合物またはこれの形態物と有効な量の1種以上の賦形剤を混合する段階を含んで成りかつ少なくとも1種の賦形剤が二塩基性燐酸カルシウム二水化物である製造方法の結果としてもたらされた組成物。
【請求項39】
前記化合物が請求項3記載の化合物である請求項38記載の組成物。
【請求項40】
前記化合物が請求項4記載の化合物である請求項38記載の組成物。
【請求項41】
前記化合物が約75%以上の範囲、または約90%以上の範囲、または約95%以上の範囲、または約98%以上の範囲、または約99%以上の範囲の主要量で存在する請求項40記載の組成物。
【請求項42】
錠剤であって、式(I):
【化5】

[式中、
フェニルは、Xの所がフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から成る群より独立して選択される1から5個のハロゲン原子で置換されており、そして
およびRは、独立して、水素およびC1−4アルキルから成る群より選択され、かつC1−4アルキルは場合によりフェニルで置換されていてもよく、かつフェニルは場合によりハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アミノ、ニトロおよびシアノから成る群より独立して選択される置換基で置換されていてもよい]
で表される化合物またはこれの形態物と有効な量の二塩基性燐酸カルシウム二水化物と微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、マンニトール、澱粉グリコール酸ナトリウム、架橋ポリプラスドン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムまたはコロイド状二酸化ケイ素から選択される1種以上の賦形剤を含有して成る錠剤。
【請求項43】
前記化合物が請求項3記載の化合物である請求項42記載の錠剤。
【請求項44】
前記化合物が請求項4記載の化合物である請求項42記載の錠剤。
【請求項45】
前記化合物が約75%以上の範囲、または約90%以上の範囲、または約95%以上の範囲、または約98%以上の範囲、または約99%以上の範囲の主要量で存在する請求項44記載の錠剤。
【請求項46】
1種以上の賦形剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース、澱粉グリコール酸ナトリウム、架橋ポリプラスドン、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムまたはコロイド状二酸化ケイ素から選択される請求項42記載の錠剤。
【請求項47】
1種以上の賦形剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは澱粉グリコール酸ナトリウムから選択される請求項42記載の錠剤。
【請求項48】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約40%(重量/重量)の範囲内である請求項42記載の錠剤。
【請求項49】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約35%(重量/重量)の範囲内である請求項42記載の錠剤。
【請求項50】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約30%(重量/重量)の範囲内である請求項42記載の錠剤。
【請求項51】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約25%(重量/重量)の範囲内である請求項42記載の錠剤。
【請求項52】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約20%(重量/重量)の範囲内である請求項42記載の錠剤。
【請求項53】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)から約10%(重量/重量)の範囲内である請求項42記載の錠剤物。
【請求項54】
前記二塩基性燐酸カルシウム二水化物の有効な量が約4%(重量/重量)である請求項42記載の錠剤。
【請求項55】
CNS障害治療用薬剤の製造における、請求項1記載化合物の使用。
【請求項56】
前記CNS障害がけいれん、てんかん、卒中および筋けいれんから選択され、中枢神経系疾患の治療に有用であり、特に抗けいれん薬、抗てんかん薬、神経保護薬および中枢性筋弛緩薬として有用であり、神経障害性痛、群発性および片頭痛による痛み、双極性障害、慢性および急性神経変性疾患、精神病性障害、運動障害、嗜癖障害、衝動調節障害、不安障害、抗てんかん発生の治療および予防に有用でありかつ痛みの治療に有用である請求項55記載の使用。

【公表番号】特表2010−506846(P2010−506846A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532515(P2009−532515)
【出願日】平成19年10月8日(2007.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/080677
【国際公開番号】WO2008/048802
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】