説明

フェライト焼結磁石及びその製造方法、並びにそれを用いたマグネットロール及び非可逆回路素子

【課題】従来より高Br、高配向度及び高HcJを有す新規で高性能なフェライト焼結磁石、その製造方法、それを用いた高性能マグネットロール、非可逆回路素子の提供。
【解決手段】M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種でありLaを必須に含むR元素、Ba、Fe、Coを必須元素とし、下記一般式:Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)[(1-x-y)、x、y、zは各々Ca、R元素、Ba、Coの含有量、nはモル比を表し、0.3≦1-x-y≦0.65、0.2≦x≦0.65、0.001≦y≦0.2、0.03≦z≦0.65、4≦n≦7、1-x-y>y、及び1-x-y>xを満たす数値。]組成のフェライト焼結磁石製造方法であって、原料混合、仮焼、粉砕、成形及び焼成各工程を有し、原料混合工程で配合する酸化鉄原料にミルスケール粉末を用いたことを特徴とするフェライト焼結磁石の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来のフェライト焼結磁石に比較して高い残留磁束密度Br、高い配向度及び高い固有保磁力HcJを有する新規で高性能なフェライト焼結磁石及びその製造方法、並びにそれを用いた高性能なマグネットロールに関する。
【0002】
また本発明は、La-Co-Sr系フェライト焼結磁石と同等以上の高い残留磁束密度Br、高い固有保磁力HcJを有する新規で高性能なフェライト焼結磁石の安価な製造方法に関する。
【0003】
また本発明は、従来のフェライト焼結磁石に比較して高い残留磁束密度Br、高い固有保磁力HcJ及び小さなHcJの温度依存性βを有する新規で高性能なフェライト焼結磁石を用いた、マイクロ波通信機器に使用されるアイソレータ、サーキュレータ等の非可逆回路素子に関する。
【背景技術】
【0004】
マグネトプランバイト型(M型)構造のフェライト焼結磁石は、モータ、発電機等の回転機を含む種々の用途に使用されている。最近では、自動車用回転機では小型・軽量化を目的とし、電気機器用回転機では高効率化を目的として、さらに高い磁気特性を有するフェライト焼結磁石が求められている。特に自動車用の回転機には、小型・軽量化の観点から、高いBrを保持しながら薄型にしたときに発生する反磁界により減磁しない高いHcJを有するフェライト焼結磁石が求められている。
【0005】
Srフェライト、Baフェライト等のM型フェライト焼結磁石は、(a)酸化鉄とSr及びBaの炭酸塩等を混合する工程、(b)仮焼によりフェライト化反応を行い、仮焼クリンカーを得る工程、(c)仮焼クリンカーを粗粉砕し、焼結挙動の制御のためのSiO2、SrCO3、CaCO3等必要に応じてHcJの制御のためのAl2O3又はCr2O3、及び水を添加し、平均粒径で0.5μm程度まで湿式微粉砕する工程、(d)フェライト微粒子のスラリーを磁場中成形し乾燥する工程、(e)焼成する工程、により製造される。焼結体はさらに使用目的に応じた形状に加工され、フェライト焼結磁石が製造される。
【0006】
前述の製造工程において、湿式微粉砕後のスラリー中の微粉末粒子の平均粒径が小さいと、磁場中成形工程における成形体からの水抜き時間が顕著に長くなるため、成形効率(単位時間あたりの成形個数)が大きく低下し、フェライト焼結磁石のコストアップを招く。特に平均粒径が0.7μm未満の場合に顕著である。平均粒径が比較的大きいと成形効率は向上するが、フェライト焼結磁石の磁気特性は逆に低下する。乾式成形においても同様に微粒子化により成形効率が悪化するため、ある程度大きな平均粒径を有する磁性体粉末が必要である。
【0007】
特許文献1は、六方晶フェライトを主相とし、一般式:Ca1-xRx(Fe12-yMy)zO19(Rは、Yを含む希土類元素及びBiから選択される少なくとも1種の元素であって、Laを必ず含み、MはCo及び/又はNiであり、x、y及びzはそれぞれ0.2≦x≦0.8、0.2≦y≦1.0、及び0.5≦z≦1.2の条件を満たす。)により表される組成を有するフェライト焼結磁石を開示している。段落[0018]及び実施例6には、特許文献1に記載のフェライト焼結磁石はSrフェライト(SrM)に比べて、約2%高い飽和磁化(4πIs)及び約10%高い異方性磁場(HA)を有すると記載されている。このような高い値を有するフェライト焼結磁石は、SrMでは実現できない高いポテンシャルが得られることが予測される。つまり4.6 kG(460 mT)以上のBrが得られ、HcJの最大値が約10%増加する可能性がある。しかし特許文献1の実施例2に記載されているサンプルNo.2の磁気特性(O2=20%焼成時)は、Br=4.4 kG(440 mT)及びHcJ=3.93 kOe(313 kA/m)であることが図2に示されており、この値は予想される値に比べて低く、改善の余地が大きい。また、このフェライト焼結磁石において、ミルスケールを酸化鉄原料として使用した場合の磁気特性の低下分を考慮すると、La-Co-Sr系フェライト焼結磁石と同等以上の磁気特性を得ることは困難である。特許文献1には本願発明に係る特定Ba量の添加による磁気特性の向上に関し、何ら記載は認められない。
【0008】
特許文献2は、六方晶マグネトプランバイト型フェライトを主相として有し、希土類元素(Yを含む)及びBiから選択される少なくとも1種の元素をRとし、Co又は(Co+Zn)をMとしたとき、Ba、R、Fe及びMの総計の構成比率が、下記一般式:Ba1-xRx(Fe12-yMy)zO19(ただし、0.04≦x≦0.9、0.3≦y≦0.8、0.7≦z≦1.2)により表わされる異方性焼結磁石を開示している。特許文献2の表1に示されている異方性焼結磁石に対応する各仮焼試料の組成は、本発明のフェライト焼結磁石の特定組成に対して特にCa量が少なく範囲外である。また得られたフェライト焼結体の磁気特性(図1に示されているBr及びHcJ)は、高性能化の要求に対して十分に満足のいくものではない。また、特許文献2においてミルスケールを酸化鉄原料として使用した場合に、La-Co-Sr系フェライト焼結磁石と同等以上の磁気特性を得ることは困難である。
【0009】
特許文献3は、M型フェライト構造を有し、Sr又はSr及びBaからなるA元素、Yを含む希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ca、Fe及びCoを必須元素とし、酸化物磁性材料を粉砕、成形及び焼成する工程により製造されるフェライト焼結磁石を開示している。前記酸化物磁性材料は下記一般式(1):A1-x-yCaxRyFe2n-zCozO19(原子比率)、前記フェライト焼結磁石は下記一般式(2):A1-x-y+aCax+bRy+cFe2n-zCoz+dO19(原子比率)[ただし、式(1)及び(2)において、x、y、z及びnはそれぞれCa、R元素及びCoの含有量及びモル比を表し、a、b、c及びdはそれぞれ前記粉砕工程で添加されたA元素、Ca、R元素及びCoの量を表し、0.03≦x≦0.4、0.1≦y≦0.6、0≦z≦0.4、4≦n≦10、x+y<1、0.03≦x+b≦0.4、0.1≦y+c≦0.6、0.1≦z+d≦0.4、0.50≦{(1-x-y+a)/(1-y+a+b)}≦0.97、1.1≦(y+c)/(z+d)≦1.8、1.0≦(y+c)/x≦20、及び0.1≦x/(z+d)≦1.2を満たす。]により表される。このフェライト焼結磁石はSrを必須に含み、かつSr又は(Sr+Ba)含有量がCa含有量より多い点で、本発明のフェライト焼結磁石の特定組成の範囲からはずれる。特許文献3に記載のフェライト焼結磁石は高い磁気特性を有するが、ユーザーからの高性能化の要求は益々厳しくなっており、十分に満足のいくものではなく、さらなる磁気特性の向上が求められている。また、このフェライト焼結磁石においても、ミルスケールを酸化鉄原料として使用した場合に、La-Co-Sr系フェライト焼結磁石と同等以上の磁気特性を得ることは困難である。
【0010】
特許文献4は、式:(1-x)CaO・(x/2)R2O3・(n-y/2)Fe2O3・yMO(RはLa、Nd、Prから選択される少なくとも一種の元素であってLaを必ず含み、MはCo、Zn、Ni、Mnから選択される少なくとも一種の元素であってCoを必ず含み、x、y、nはモル比を表わし、0.4≦x≦0.6、0.2≦y≦0.35、4≦n≦6、1.4≦x/y≦2.5を満足する。)で表される組成を有する六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライトを主相とする酸化物磁性材料を開示している。しかし特許文献4に記載の酸化物磁性材料は、Baを有さないため本発明のフェライト焼結磁石の特定組成の範囲からはずれ、磁気性能としても今日の高性能化の要求に対して十分に満足のいくものではない。また、ミルスケールを酸化鉄原料として使用した場合に、La-Co-Sr系フェライト焼結磁石と同等以上の磁気特性を得ることは困難である。
【0011】
特許文献5には、ミルスケールを平均粒度20μm以下に粉砕後、O2含有雰囲気中又は大気中で873〜1173Kにて一時酸化処理して、ミルスケールの酸化度を95%以上に変化させた後、Sr又はBaの酸化物又は炭酸塩を配合混合後、傾斜式回転炉にて、原料装入口側の雰囲気をO2濃度8〜10%の雰囲気となして973Kまで二次酸化処理した後、1548〜1573Kで焼成するフェライト磁石用原料の製造方法が開示されている。しかし特許文献5は、本発明のフェライト焼結磁石の組成を選択しかつこのような組成を有するフェライト焼結磁石に対し酸化鉄原料としてミルスケールの粉末を使用した場合に、Br等の低下が抑制されてLa-Co-Sr系フェライト焼結磁石と同等以上の磁気特性が得られることは記載されていない。さらに、ミルスケールの粉末がFe3O4を含む非完全酸化状態でも、優れた磁気特性が得られることは記載されておらず、示唆も認められない。
【0012】
特許文献6は本願発明の先願に該当し、電気的絶縁状態で交差配置された複数の中心導体の当該交差部に軟磁性基体を当接させるとともに、前記軟磁性基体に直流磁界を印加する永久磁石を設けた非可逆回路素子であって、前記永久磁石が六方晶構造を有するフェライト相が主相をなし、前記主相を構成する金属元素の構成比率が、組成式(1):LaxCamα1-x-m(Fe12-yCoy)zで表したとき、αはBa及びSrの1種又は2種、x、mは、図4に示される(x,m)座標において、(0.37,0.10)、(0.60,0.30)、(0.54,0.45)及び(0.37,0.37)で囲まれる領域内の値、1.15≦x/yz≦1.95、9.2≦12z≦11で表される組成のフェライト焼結磁石であることを開示している。そして、この非可逆回路素子によれば、挿入損失特性が規格からずれた場合でも、規格への挿入損失特性の調整が容易な非可逆回路素子を提供することができ、もって製品歩留まりを向上できるという効果を奏すると記載している。
【0013】
上記記載から明らかなように、特許文献6の図4中に示されるフェライト焼結磁石の組成領域は、m≦xであること、即ち、(Ca含有量)≦(La含有量)である点を特徴としている。これに対し、本願発明のフェライト焼結磁石の特定組成領域は、1-x-y>xであること、即ち、(Ca含有量)>(La含有量)である点を特徴とする点で特許文献6に記載のフェライト焼結磁石の組成領域から外れる。さらに、本願発明のフェライト焼結磁石は1-x-y>xである組成領域の採用により、従来に比べて顕著に高いBrとHcJを実現した点から特許文献6に記載のフェライト焼結磁石とは効果が大きく相違するものである。
【0014】
アイソレータ、サーキュレータ等の非可逆回路素子は、例えばマイクロ波帯、UHF帯で使用される携帯電話、自動車電話等の移動体通信機器の送受信回路部に用いられている。
【0015】
非可逆回路素子は、少なくともガーネット板と、ガーネット板に高周波磁界を印加する中心導体と、中心導体に直流磁界を印加する永久磁石とを備える。非可逆回路素子は、高周波信号を伝送方向のみに通過させ、逆方向への伝送を阻止する機能を有している。例えばアイソレータは、電力増幅器などと共にマザーボードに搭載され、マイクロ波回路の不整合などで生じた反射波による電力増幅器の動作不安定の防止や、破壊防止に用いられる重要なマイクロ波回路部品である。
【0016】
近年、携帯電話等のマイクロ波通信機器の小型、薄型化の要求は強く、種々の構成の非可逆回路素子、特に低コストで、かつ小型、薄型の表面実装型非可逆回路素子[例えば、特開2004-356745号(特許文献7)又は特開2005-130022号(特許文献8)に記載の非可逆回路素子]や集中定数型非可逆回路素子[例えば、特開2007-6100号(特許文献9)に記載の非可逆回路素子]が検討されてきている。
【0017】
特許文献7に記載の非可逆回路素子は3つのポートを有するものであるが、米国特許第4016510(特許文献10)、特開平9-232818号(特許文献11)には2つのポートで構成された非可逆回路素子が記載されている。これらの非可逆回路素子はジャイレータと呼ばれる場合もある。
【0018】
前記非可逆回路素子では、ガーネット板と、これに直流磁界を与える永久磁石とを積み重ねて配置するのを基本的な構成としているため、ガーネット板と永久磁石の寸法によって非可逆回路素子自体の寸法がおよそ決定されてしまう。非可逆回路素子の小型化・薄型化のためには、ガーネット板と永久磁石の小型化・薄型化が必要不可欠であるが、好適なガーネット板の寸法は、非可逆回路素子の動作周波数やガーネットの実効透磁率、誘電率、直流磁界の大きさ等でほぼ決定されるものであり、単純に小型なガーネット板等を用いたとしても損失、帯域幅等の電気的特性の劣化を招くばかりである。
【0019】
そこで特許文献7等では、Brの温度係数とガーネットの飽和磁化の温度係数との差が小さく、かつ優れた磁気特性を有するフェライト焼結磁石を用いるなどして非可逆回路素子の小型化を図っていた。
【0020】
フェライト焼結磁石は薄肉形状になるほど、そのHcJにもよるが、パーミアンス係数が小さくなり、常温から低温に冷却して再び常温に戻すと大きな減磁(低温減磁)を生じることはよく知られている。このような大きな減磁が生じると非可逆回路素子の電気的特性が著しく劣化するため、従来のフェライト焼結磁石の厚み寸法を小さくして使用することには限界があった。即ち、ガーネット板の小型化のために、従来よりも厚み寸法を小としたフェライト焼結磁石を使用する場合において、従来と同等以上の高性能の非可逆回路素子を構成することが可能な新規で高性能なフェライト焼結磁石が求められていた。
【0021】
永久磁石の改良による非可逆回路素子の小型、薄型化は従来から検討されている。特開2000-223911号(特許文献12)には、従来のSrフェライト焼結磁石に替えてフェリ磁性体との相性の良い、(A1-xRx)O・n[(Fe1-yMy)2O3](原子比率)[ただし、AはSr及び/又はBa、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種であり、MはCo、Mn、Ni及びZnからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、0.01≦x≦0.4、{x/(2.6n)} ≦y≦{x/(1.6n)}、5≦n≦6]で表される基本組成を有し、実質的にマグネトプランバイト型結晶構造を有するフェライト焼結磁石を用いた集中定数型非可逆回路素子が開示されているが、磁気特性のさらなる向上により、非可逆回路素子をより小型、薄型化にするというニーズを十分に満たすものではない。
【特許文献1】特許第3181559号
【特許文献2】特開平11-97225号
【特許文献3】国際公開第05/027153号
【特許文献4】国際公開第06/028185号
【特許文献5】特許第3611872号
【特許文献6】特願2006-78377
【特許文献7】特開2004-356745号
【特許文献8】特開2005-130022号
【特許文献9】特開2007-6100号
【特許文献10】米国特許第4016510号
【特許文献11】特開平9-232818号
【特許文献12】特開2000-223911号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、本発明の目的は、従来に比べて高いBr、高い配向度及び高いHcJを有する新規で高性能なフェライト焼結磁石及びその製造方法並びにそれを用いた高性能なマグネットロールを提供することにある。
【0023】
また本発明の他の目的は、酸化鉄原料として安価なミルスケール粉末を用いて、La-Co-Sr系フェライト焼結磁石と同等以上の高い磁気特性を有する、新規で高性能なフェライト焼結磁石の製造方法を提供することにある。
【0024】
また本発明のさらに他の目的は、小型化、薄型化が可能でかつ高性能な非可逆回路素子、特に中心導体の上下にガーネットとグラウンドとなる金属薄板が配置される構造を有する、分布定数型又は集中定数型非可逆回路素子(アイソレータ又はサーキュレータなど)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とするフェライト焼結磁石が、高いBr、高いHcJ及び小さなHcJの温度依存性を有することを見出した(国際特許出願PCT/JP2006/304805、PCT/JP2007/052525を参照)。
【0026】
本発明者らは、この新規なフェライト焼結磁石の組成を採用することにより、安価な酸化鉄原料ではあるがBrの顕著な低下を招くために、高性能フェライト焼結磁石用として従来は不適であったミルスケール(鋼塊の熱間圧延工程時や鋼材の圧延時等に発生・回収される酸化鉄)を使用した場合でも、高性能材であるLa-Co-Sr系フェライト焼結磁石と同等以上の磁気特性が得られることを見出した。特に、完全酸化せずに得られたα-Fe2O3又はα-Fe2O3とFe3O4からなるミルスケールの粉末を酸化鉄原料として用いた場合にも、十分に磁気特性を改善できることを見出した。
【0027】
すなわち、フェライト焼結磁石を製造する本発明の第一の方法は、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を製造する方法であって、原料の混合工程、仮焼工程、粉砕工程、成形工程及び焼成工程を有し、原料の混合工程において配合する酸化鉄原料としてミルスケールの粉末を用いたことを特徴とする。
【0028】
ミルスケールの粉末粒子は、大気中又は酸素過剰雰囲気中、973〜1273Kにおいて熱処理をしたものであり、酸化鉄(α-Fe2O3とFe3O4の合計)の含有量が97〜99質量%、Al含有量(Al2O3換算値)が0.2質量%以下、Si含有量(SiO2換算値)が0.03〜0.25質量%、Ca含有量(CaO換算値)が0.03〜0.25質量%及びCr含有量(Cr2O3換算値)が0.05質量%以下であることが、高い磁気特性を得るために好ましい。
【0029】
また本発明者らは、この新規なフェライト焼結磁石の製造に際し、極力低い圧力で磁場中圧縮成形を行うことにより成形体の配向度が向上し、もってBr及び配向度をさらに高めた異方性フェライト焼結磁石が得られることを見出した。さらに磁場中押出成形により高い配向度の成形体が得られ、マグネットロールに好適なことを見出した。
【0030】
すなわち、フェライト焼結磁石を製造する本発明の第二の方法は、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を製造するに際し、原料の混合工程、仮焼工程、粉砕工程、縦磁場の磁場中圧縮成形工程及び焼成工程を有し、縦磁場の磁場中圧縮成形の圧力を4.9〜39.2 MPaで行うことを特徴とする。
【0031】
またフェライト焼結磁石を製造する本発明の第三の方法は、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を製造するに際し、原料の混合工程、仮焼工程、粉砕工程、横磁場の磁場中圧縮成形工程及び焼成工程を有し、横磁場の磁場中圧縮成形の圧力を4.9〜49 MPaで行うことを特徴とする。
【0032】
本発明のフェライト焼結磁石は、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有し、異方性を有し、異方性付与方向の残留磁束密度(Br//)及び異方性付与方向に垂直な方向の残留磁束密度(Br⊥)により、[(Br//)/(Br//+Br⊥)]×100%で定義される配向度が85%以上であることを特徴とする。
【0033】
本発明のフェライト焼結磁石は、ラジアル異方性又は平行異方性を付与したアークセグメント形状のフェライト焼結磁石や、極異方性を付与したリング形状のフェライト焼結磁石として有用である。
【0034】
本発明のフェライト焼結磁石は、異方性付与方向に沿うM型結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以上であり、293Kにおける残留磁束密度(Br)が460 mT以上及び固有保磁力(HcJ)が278 kA/m以上であり、縦磁場の磁場中圧縮成形体を焼成したものが好ましい。
【0035】
本発明のフェライト焼結磁石は、異方性付与方向に沿うM型結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以上であり、293Kにおける残留磁束密度(Br)が470 mT以上及び固有保磁力(HcJ)が278 kA/m以上であり、横磁場の磁場中圧縮成形体を焼成したものが好ましい。
【0036】
表面に被覆層を設けたフェライト焼結磁石は、磁石粉末粒子の脱落を抑制できるので、VCM(ボイスコイルモータ)用等の磁石粉末粒子の汚染を嫌う分野に好適である。前記被覆層は合成樹脂等の高分子材料、セラミックス材料、合金材料等により形成するのが好ましく、フェライト焼結磁石体の電気抵抗を高めることが可能な高分子材料(例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等)又はセラミックス材料により、平均膜厚で5〜500μm程度に形成するのが特に好ましい。平均膜厚が5μm未満では十分な被覆効果が得られず、500μm超では磁気ギャップの狭い用途に使用できないことがある。
【0037】
本発明のマグネットロールは、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を、少なくとも1つの磁極部に用いたマグネットロールであって、前記フェライト焼結磁石は異方性を有し、異方性付与方向の残留磁束密度(Br//)及び異方性付与方向に垂直な方向の残留磁束密度(Br⊥)により、[(Br//)/(Br//+Br⊥)]×100%で定義される配向度が85%以上であることを特徴とする。
【0038】
本発明のマグネットロールにおいて、前記フェライト焼結磁石は、異方性付与方向に沿うM型結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以上であり、293Kにおける残留磁束密度(Br)が460 mT以上及び固有保磁力(HcJ)が278 kA/m以上であり、押出成形体を焼成したものが好ましい。
【0039】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とするフェライト焼結磁石を用いることにより、非可逆回路素子の高性能を保持しつつ小型化・薄型化が可能となることを見出し、本発明に想到した。
【0040】
すなわち、本発明の非可逆回路素子は、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を用いたことを特徴とする。
【0041】
本発明の第一の非可逆回路素子は、少なくともガーネット板と、前記ガーネット板に高周波磁界を印加する中心導体と、前記中心導体に直流磁界を印加する前記フェライト焼結磁石とを有し、前記中心導体が導体板及び基板からなり、前記導体板が少なくとも3つのポート部を有し、前記ポート部の少なくとも2つに導体棒を接続したことを特徴とする。
【0042】
本発明の第二の非可逆回路素子は、少なくともガーネット板と、前記ガーネット板に高周波磁界を印加する中心導体と、前記中心導体に直流磁界を印加する前記フェライト焼結磁石とを有し、少なくとも3個の突起を有する金属板で前記ガーネット板の外周を係止したことを特徴とする。
【0043】
本発明の第三の非可逆回路素子は、フェライトからなる2枚の円板と、前記2枚の円板の間に120°回転対称に挿入された複数の導線からなる3組の信号電極と、前記2枚の円板を挾む2枚の接地電極と、前記2枚の接地電極を挾む2枚のヨークと、前記2枚のヨークを挾む2枚の前記フェライト焼結磁石を備えたことを特徴とする。
【0044】
本発明において、前記フェライト焼結磁石は、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCozOα(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比、αはOの含有量を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。ただし、x=zでかつn=6のときの化学量論組成比を示した場合はα=19である。]により表わされる組成を有することが、高い磁気特性を得るために好ましい。
【0045】
前記フェライト焼結磁石は、1≦x/z≦3を満たす組成を有し、異方性の付与方向に沿うM型結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以上であり、M型結晶粒のアスペクト比(c面の最大径/c軸方向の厚み、以後同じ意味である。)が3以下のものを30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上含む場合に、高い配向度を具備できる。
【0046】
前記フェライト焼結磁石は、混合工程及び/又は粉砕工程においてSr化合物を添加することにより、Baの一部をSrで置換してもよい。
【0047】
本発明のフェライト焼結磁石は、M型フェライト構造を有するLaCo置換Caフェライト化合物のCaサイトを上記特定量のBaによって置換してなる。X線回折により、少なくともM型フェライト構造の回折パターンが主相として観察される。磁気特性を高めるために、M型フェライト構造の回折パターンのみが観察される実質的にM型フェライト単相のものが好ましい。
【0048】
仮焼体が上記特定組成を有するとき、M型フェライト構造のフェライト結晶粒の一次粒子の結晶成長率が非常に高く、板状(好ましくは六角板状)組織を呈する。これはBa固有の置換(添加)効果であり、前記一次粒子はアスペクト比が5以下のものを30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上含む。この仮焼体組織の形状異方性を反映し、もって従来に比べて非常に高い磁気特性を有するフェライト焼結磁石を実現したものである。
【発明の効果】
【0049】
(1) 本発明のフェライト焼結磁石は、高いBr及びHcJを有し、かつHcJの温度依存性[温度係数(β)]が小さいので、このフェライト焼結磁石を組み込むことにより、低温減磁量が少ない磁石応用製品(回転機やマグネットロール等)の高性能化、小型化に貢献することができる。
(2) 本発明の方法は、安価なミルスケールを酸化鉄原料に使用するので製造原価を低減することができる。
(3) 本発明の非可逆回路素子に使用するフェライト焼結磁石は、従来のフェライト焼結磁石に比べて、Brの温度係数は同等であり、HcJとBrが高く、かつHcJの温度係数βが低いので良好な熱安定性を有する。このため従来のフェライト焼結磁石よりもさらに小型化・薄肉化しても所望の直流磁界が得られるとともに、厚みを薄くすることによって生じる低温減磁を低減することができる。さらにBrが高いため、従来のフェライト焼結磁石よりも大きな直流磁界をガーネット板に与えることができるため、動作点をガーネットの磁気共鳴より離れたところに設定することにより、挿入損失が少ない非可逆回路素子(特に分布定数型又は集中定数型非可逆回路素子)を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
[1] 組成
(A) 酸化物磁性材料の組成
本発明のフェライト焼結磁石の原料は、六方晶構造を有するフェライトを主とし、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とする酸化物磁性材料であって、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.6、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、及び
4≦n≦7
を満たす数値である。]により表わされる基本組成を有するものが好ましい。酸化物磁性材料は仮焼体であることが好ましい。
【0051】
Ca含有量(1-x-y)は、0.3〜0.6であるのが好ましく、0.35〜0.55であるのがより好ましく、0.4〜0.5であるのがさらに好ましい。(1-x-y)が0.3未満ではM相が安定して生成せず、余剰のR元素によりオルソフェライトが生成するため磁気特性が低下する。(1-x-y)が0.6を超えるとCaFeO3-x等の好ましくない相が生成する。
【0052】
R元素とCoのモル比x/zの値は、0.31≦x/z≦21.7であるのが好ましく、1≦x/z≦3であるのがより好ましく、1.05≦x/z≦2であるのがさらに好ましく、1.2≦x/z≦2であるのが特に好ましい。x/zが0.31未満ではCoを多く含む異相の発生が顕著になり、角形比(Hk/HcJ)が著しく悪化する。x/zが21.7を超えるとオルソフェライト等の異相の発生が顕著になり、磁気特性が大きく低下する。
【0053】
RはLa、Ce、Nd、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含む。高い磁気特性を付与するために、R元素中のLaの比率は50原子%以上であるのが好ましく、70原子%以上であるのがより好ましく、La単独(ただし、不可避的不純物は許容される。)であるのが特に好ましい。R元素の中でLaがM相に最も固溶し易いため、Laの比率が大きいほど磁気特性の向上効果が大きい。R含有量(x)は、0.2〜0.65であるのが好ましく、0.3〜0.6であるのがより好ましく、0.35〜0.55であるのがさらに好ましく、0.4〜0.5であるのが特に好ましい。xが0.2未満ではM相へのCoの置換量が不十分なため、M型フェライト構造が不安定になり、CaO・Fe2O3、CaO・2Fe2O3等の異相を生成して磁気特性が大きく低下する。xが0.65を超えると未反応のR元素の酸化物が増加し、さらにオルソフェライト等の好ましくない相が生じる。
【0054】
Ba含有量(y)は、0.001〜0.2であるのが好ましく、0.005〜0.2であるのがより好ましく、0.01〜0.2であるのがさらに好ましく、0.02〜0.15であるのが特に好ましく、0.02〜0.12であるのが最も好ましい。yが0.001未満ではBaの添加による磁気特性の向上効果が得られない。yが0.2を超えると逆に磁気特性が低下する。
【0055】
Co含有量(z)は、0.03〜0.65であるのが好ましく、0.1〜0.55であるのがより好ましく、0.2〜0.4であるのが特に好ましい。zが0.03未満ではCoの添加による磁気特性の向上効果が得られない。また仮焼体に未反応のα-Fe2O3が残存するので、湿式成形時に成形型のキャビティからスラリー漏れが発生する。zが0.65を超えるとCoを多く含む異相が生成して磁気特性が大きく低下する。
【0056】
モル比nは、(Ca+R+Ba)と(Fe+Co)のモル比を反映する値で、2n=(Fe+Co)/(Ca+R+Ba)で表される。モル比nは4〜7であるのが好ましく、4〜6であるのがより好ましく、4.6〜5.8であるのがさらに好ましく、4.9〜5.6であるのが特に好ましい。nが4未満では非磁性部分の比率が多くなる。酸化物磁性材料が仮焼体である場合は、仮焼体粒子の形態が過度に扁平になりHcJが大きく低下してしまう。nが7を超えると仮焼体に未反応のα-Fe2O3が残存し、湿式成形時の成形型のキャビティからスラリー漏れが発生する。
【0057】
酸化物磁性材料が仮焼体である場合、磁気特性を高めるためB2O3の換算値で0.05〜0.2質量%のB又はSiO2の換算値で0.05〜0.2質量%のSiを含有するのが好ましい。B又はSi含有量が0.05質量%未満では磁気特性の向上効果が得られず、0.2質量%超では逆に磁気特性が低下する。
【0058】
(B) フェライト焼結磁石の組成
本発明のフェライト焼結磁石は、M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
{ただし、(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。}により表わされる基本組成を有する。
【0059】
本発明のフェライト焼結磁石は、M型結晶粒が六角板状になりにくいという従来のCa-R-Co系フェライト焼結磁石の欠点を改良したものである。すなわち本発明のフェライト焼結磁石が異方性を有する場合は、相対的に厚みのある(アスペクト比が小さい)M型結晶粒からなるミクロ組織を有し、かつ高い配向度を有する。もって、4πIsから予測される値に近い極めて高いBr、HAに対応する高いHcJ、及び低いHcJの温度依存性[温度係数(β)]を具備する。
【0060】
Ca含有量(1-x-y)は、0.3〜0.65であり、0.3〜0.6であるのが好ましく、0.4〜0.55であるのがより好ましく、0.46〜0.55であるのがさらに好ましい。(1-x-y)が0.3未満ではM相が不安定になり、余剰のR元素によりオルソフェライトが生成して磁気特性が低下する。(1-x-y)が0.65を超えるとM相を生成しなくなり、CaFeO3-x等の好ましくない相が生成する。
【0061】
RはLa、Ce、Nd、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含む。高い磁気特性を付与するために、R元素中のLaの比率は50原子%以上であるのが好ましく、70原子%以上であるのがさらに好ましく、La単独(ただし、不可避的不純物は許容される。)が特に好ましい。R含有量(x)は、0.2〜0.65であり、0.3〜0.55であるのが好ましく、0.35〜0.5であるのがより好ましい。xが0.2未満では、M相へのCoの置換量が不十分になり、M型フェライト構造が不安定になる。xが0.65を超えると未反応のR元素の酸化物が増加し、オルソフェライト等の好ましくない相が生じる。
【0062】
Ba含有量(y)は、0.001〜0.2であり、0.005〜0.2であるのが好ましく、0.01〜0.2であるのがより好ましく、0.02〜0.15であるのがさらに好ましく、0.02〜0.12であるのが特に好ましい。yが0.001未満ではBaの添加による磁気特性の向上効果が得られない。yが0.2を超えると磁気特性が低下する。
【0063】
Co含有量(z)は、0.03〜0.65であり、0.1〜0.55であるのが好ましく、0.2〜0.4であるのがより好ましい。zが0.03未満ではCoの添加による磁気特性の向上効果が得られない。zが0.65を超えるとCoを多く含む異相が生成して磁気特性が大きく低下する。
【0064】
モル比nは前述の酸化物磁性材料におけるモル比nと同じ意味であり、4〜7であり、4〜6であるのが好ましく、4.5〜5.5であるのがより好ましく、4.6〜5.4がさらに好ましい。nが4未満では非磁性部分の比率が多くなり、磁気特性が低下する。nが7を超えると、未反応のα-Fe2O3が増加して磁気特性が大きく低下する。
【0065】
R元素とCoのモル比x/zの値は、0.73≦x/z≦15.62であるが、1≦x/z≦3であるのが好ましく、1.05≦x/z≦2であるのがさらに好ましく、1.2≦x/z≦2であるのが特に好ましい。これらの値を満たす組成を選択することにより、磁気特性が顕著に向上する。
【0066】
(R元素含有量)>(Co含有量)>(Ba含有量)であるとき、すなわち、x>z>yであるとき、磁気特性の向上効果が大きい。また(Ca含有量)>(Ba含有量)であるとき、すなわち、1-x-y>yであるとき、高い磁気特性を有する。
【0067】
本発明のフェライト焼結磁石は、(Ca含有量)>(R元素含有量)、すなわち、1-x-y>xである組成を有する。特に(Ca含有量)>(R元素含有量)>(Ba含有量)、すなわち、1-x-y>x>yである組成を有するのが好ましい。このような組成を有する場合に、M型フェライト結晶粒が特有のミクロ組織を呈し、もって従来に比べて非常に高いBr、HcJ及びβ等を具備する。
【0068】
B2O3の換算値で0.05〜0.2質量%のBを含有することが好ましく、0.08〜0.15質量%を含有することがさらに好ましい。これらの量のBを含有することにより高い磁気特性が得られる。0.05質量%未満ではBの含有効果が得られず、0.2質量%を超えると逆に磁気特性が低下する。
【0069】
本発明のフェライト焼結磁石は、基本組成物全量に対して0.1〜3質量%のCr2O3又はAl2O3を粉砕工程で添加し、その後成形及び焼成することにより、さらに高いHcJが得られる。Cr2O3又はAl2O3の添加量が0.1質量%未満ではHcJの向上効果が得られず、3質量%を超えるとBrが大きく低下する。
【0070】
本発明のフェライト焼結磁石は、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCozOα(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比、αはOの含有量を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。ただし、x=zでかつn=6のときの化学量論組成比を示した場合はα=19である。]により表わされる組成を有することが高い磁気特性を持つために好ましい。
即ち、R元素の含有量xとCo含有量zとの関係がx=zでかつモル比n=6のときに酸素のモル数αは19となる。Fe及びCoの価数、n値、R元素の種類、仮焼又は焼成雰囲気によって酸素のモル数は異なる。還元性雰囲気で焼成した場合の酸素の欠損(ベイカンシー)、M型フェライト中におけるFeの価数の変化、Coの価数の変化等により金属元素に対する酸素の比率は変化する。従って、実際の酸素のモル数αは19からずれる場合がある。
【0071】
[2] 酸化物磁性材料及びフェライト焼結磁石の製造方法
(A) 酸化物磁性材料の製造
酸化物磁性材料(仮焼体)は、固相反応法、共沈法、水熱合成法等の液相法、ガラス析出化法、噴霧熱分解法、気相法、又はそれらの組み合わせにより製造できる。これらのうち固相反応法が、実用性が高く好ましい。酸化物磁性材料として、仮焼条件及び/又は仮焼体組成の異なる2種以上の仮焼体をそれぞれ粗粉砕しブレンドして用いても良い。例えばn=4及びn=7の組成を有する仮焼粉を混合して、本発明で使用する酸化物磁性材料として使用してもよい。さらに成形体又は焼結体の不良品や加工屑材等のリサイクル材を酸化物磁性材料として使用してもよい。
【0072】
固相反応法では、酸化物の粉末、仮焼により酸化物となる化合物(Ca化合物、R元素の化合物、Ba化合物、ミルスケール等の鉄化合物の粉末、及び必要に応じてSr化合物の粉末を原料として使用する。これらの原料粉末を所定の組成に配合し、得られた混合物を仮焼(フェライト化)することにより仮焼体(通常顆粒状又はクリンカー)を製造する。
【0073】
仮焼は大気中(実質的に酸素分圧が0.05〜0.2 atm程度に相当する。)で行うのが実用的であるが、酸素過剰雰囲気中(例えば酸素分圧が0.2 atm超1 atm以下)、特に酸素100%雰囲気中で行ってもよい。仮焼温度は1373〜1623 Kが好ましく、1423〜1573 Kがさらに好ましい。仮焼の時間は1秒間〜10時間が好ましく、0.1〜3時間がさらに好ましい。仮焼体は実質的にM相からなるものが好ましい。
【0074】
仮焼前の混合物100質量部に対し、0.05〜0.2質量部のホウ素化合物又はSiO2を添加することにより高い磁気特性が得られる。ホウ素化合物又はSiO2の添加量が、0.05質量部未満では添加効果が得られず、0.2質量部超では逆に磁気特性が低下する。ホウ素化合物として、H3BO3、B2O3、メタホウ酸塩[Ca(BO2)2]等が好ましい。
【0075】
Ca化合物としては、Caの炭酸塩、酸化物、塩化物等を使用する。
【0076】
R元素の化合物としては、La2O3等の酸化物、La(OH)3等の水酸化物、La2(CO3)3・8H2O等の炭酸塩、及びLa(CH3CO2)3・1.5H2O、La2(C2O4)3・10H2O等の有機酸塩等を使用する。特に混合希土類(La、Nd、Pr、Ce等)の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩等は、安価なためコストを低減できる。
【0077】
Ba化合物としては、Baの炭酸塩、酸化物、塩化物等を使用する。
【0078】
鉄化合物としては、酸化鉄、水酸化鉄、塩化鉄、ミルスケール等を使用する。ミルスケールの粉末は、大気中又は酸素過剰雰囲気中、973〜1273Kにおいて熱処理をすることにより、表面から芯部までα-Fe2O3に酸化したものが理想的であるが、α-Fe2O3とFe3O4とが混在したものも許容できる。熱処理は大気中(実質的に酸素分圧が0.05〜0.2 atm程度に相当する。)で行うのが実用的であるが、酸素過剰雰囲気中(例えば酸素分圧が0.2 atm超1 atm以下)、特に酸素100%雰囲気中で行ってもよい。973K未満では熱処理による酸化効果がほとんど得られない。1273Kを超えるとミルスケールの粉末粒子相互の凝集、焼付きが顕著となり、後述の粉砕が困難になる。熱処理時間は0.2〜10時間が好ましく、0.5〜3時間がさらに好ましい。
【0079】
熱処理に供するミルスケールの粗粉の平均粒径(走査型電子顕微鏡(SEM)観察により決定する。)は、酸化反応を促進するために、1〜15μmにするのが好ましく、5〜12μmにするのがより好ましい。1μm未満にすることは工業生産上困難であり、15μm超では熱処理による酸化効果が不十分になる。
【0080】
仮焼反応(フェライト化反応)を促進するために、熱処理後のミルスケールの粗粉を微粉砕して平均粒径0.5〜2μm(SEM観察により決定する。)にするのが好ましく、0.7〜2.0μmにするのがより好ましい。0.5μm未満にすることは実用性に乏しく、2μm超ではフェライト焼結磁石の磁気特性が低下する。
【0081】
ミルスケールの成分は、酸化鉄(α-Fe2O3とFe3O4の合計)の含有量が97〜99質量%、Al含有量(Al2O3換算値)が0.2質量%以下、Si含有量(SiO2換算値)が0.03〜0.25質量%、Ca含有量(CaO換算値)が0.03〜0.25質量%及びCr含有量(Cr2O3換算値)含有量が0.05質量%以下であるのが好ましい。酸化鉄の含有量が下限値より低下するか、あるいはAl、Si、Ca及びCrの含有量が上限値を超えるとBrが大きく低下する。酸化鉄の上限値、Al、Si、Ca及びCrの含有量の下限値は、ミルスケールの発生源である鋼塊や鋼材等の組成に依存する。ミルスケールの粉末の成分は、酸化鉄(α-Fe2O3とFe3O4の合計)の含有量が97.5〜99質量%、Al含有量(Al2O3換算値)が0.01〜0.20質量%、Si含有量(SiO2換算値)が0.03〜0.20質量%、Ca含有量(CaO換算値)が0.03〜0.20質量%及びCr含有量(Cr2O3換算値)が0.01〜0.05質量%であるのがより好ましい。
【0082】
Co化合物としては、CoO、Co3O4等の酸化物、CoOOH、Co(OH)2、Co3O4・m1H2O(m1は正の数である。)等の水酸化物、CoCO3等の炭酸塩、及びm2CoCO3・m3Co(OH)2・m4H2O等の塩基性炭酸塩(m2、m3、m4は正の数である。)を使用するのが好ましい。
【0083】
(B) 仮焼体の粉砕
仮焼体の粉砕は、必要に応じてジョークラッシャ、ハンマーミル等で粗砕後、振動ミル、ローラーミル等で乾式粗粉砕を行う。後工程の湿式又は乾式微粉砕の負荷低減のため、粗粉砕粉の平均粒径は2〜5μmが好ましい。平均粒径は空気透過法(測定装置:Fischer Sub-Sieve Sizer、以後、F.S.S.S.と略す。)により嵩密度65%基準で測定できる。次に、湿式微粉砕又は乾式微粉砕を行う。成形体を粉砕する場合は、粗砕及び粗粉砕を省略し、湿式又は乾式の微粉砕を直接行うのが実用的であり好ましい。
【0084】
湿式微粉砕は、乾式粗粉砕後に水を加えてアトライタ、ボールミル等の湿式微粉砕機で行う。工業生産性(脱水特性等)及び磁気特性の向上のために、微粉砕粉の平均粒径は0.4〜1.3μm(F.S.S.S.により嵩密度65%基準で測定。)が好ましい。平均粒径が0.4μm未満まで粉砕すると、焼成時の異常な結晶粒成長によるHcJの低下、湿式成形時の成形体の脱水特性の著しい悪化を招く。平均粒径が1.3μmを超えるとフェライト焼結体中の粗大結晶粒の比率が増大するためHcJが大きく低下する。微粉砕粉の平均粒径は、0.7〜1.3μmがより好ましく、0.8〜1.3μmがさらに好ましく、0.8〜1.2μmが特に好ましい。
【0085】
湿式微粉砕時に、投入した乾式粗粉砕粉(仮焼粉)の総量に対し、SiO2を0.1〜1.5質量%添加するのが好ましく、0.2〜1質量%添加するのがより好ましい。SiO2の添加により、高いHcJを安定して得ることができる。SiO2の添加量が0.1質量%未満では添加効果が得られず、1.5質量%を超えると粒成長の抑制効果が過大となりBrが低下する。
【0086】
湿式微粉砕時に、仮焼粉の総量に対し、CaCO3を0.2〜1.5質量%添加するのが好ましく、0.3〜1.3質量%添加するのがより好ましい。CaCO3を添加することにより、焼成時のM型フェライト粒子の粒成長が促進されてBrが向上する。CaCO3の添加量が0.2質量%未満では添加効果が得られず、1.5質量%を超えると焼成時の粒成長が過度に進行してHcJが大きく低下する。
【0087】
湿式微粉砕時に、仮焼粉100質量部に対し0.05〜30質量部の工業用酸化鉄を添加することにより、磁気特性を劣化させないでフェライト焼結磁石のモル比nを調整することができる。工業用酸化鉄の添加量が0.05質量部未満では添加効果が得られず、30質量部超では湿式成形時において成形型からのスラリー漏れが顕著になる。後述の表1に例示するように、工業用酸化鉄は、通常、Fe2O3の含有量が99.0質量%以上、Al含有量(Al2O3換算値)が0.10質量%以下、Si含有量(SiO2換算値)が0.10質量%以下、Ca含有量(CaO換算値)が0.10質量%以下及びCr含有量(Cr2O3換算値)含有量が0.05質量%以下程度のグレードである。
【0088】
湿式微粉砕時にミルスケールの粉末を添加する場合は、仮焼粉100質量部に対し0.05〜10質量部のミルスケールの粉末を添加することにより、磁気特性を劣化させないでモル比nを調整することができる。
【0089】
湿式微粉砕後、得られたスラリーは必要に応じて濃縮し、成形を行う。濃縮は遠心分離、フィルタープレス等により行う。
【0090】
(C) 成形
成形は乾式又は湿式で行うことができる。磁場を印加せずに加圧成形した場合、等方性のフェライト焼結磁石用成形体が得られる。磁場を印加して加圧成形した場合、高い磁気特性を有する異方性フェライト焼結磁石用成形体が得られる。成形体の配向度を高めるには乾式磁場中成形よりも湿式磁場中成形が好ましい。
【0091】
成形体の配向度を高めるために、磁場中圧縮成形又は磁場中押出成形を行うのが好ましい。特に、極力低い成形圧力で湿式磁場中圧縮成形を行うことにより、高い配向度及び高いBrを有する異方性フェライト焼結磁石用成形体が得られる。
【0092】
高い配向度(異方性)を有するフェライト焼結磁石用成形体を得るために、成形型のキャビティにおいて印加される配向磁場の方向と成形圧力の加圧方向とが事実上一致する縦磁場圧縮成形を採用する場合、成形圧力は4.9〜39.2 MPaとするのが好ましく、4.9〜34.3 MPaとするのがより好ましく、9.8〜29.4 MPaとするのがさらに好ましい。成形圧力が4.9 MPa未満では健全な成形体が得られず、39.2 MPa超では成形体の配向度が大きく低下する。
【0093】
アークセグメント形状のラジアル異方性を有するフェライト焼結磁石用成形体や、リング形状の極異方性を有するフェライト焼結磁石用成形体を得るために、ラジアル配向磁場中又は極異方性配向磁場中で圧縮成形する場合も、健全で高い配向度を有する成形体を得るために、成形圧力は4.9〜39.2 MPaとするのが好ましく、4.9〜34.3 MPaとするのがより好ましく、9.8〜29.4 MPaとするのがさらに好ましい。
【0094】
高い配向度を有する異方性フェライト焼結磁石用成形体を得るために、成形型のキャビティにおいて印加される配向磁場の方向と成形圧力の加圧方向とが事実上直交する横磁場圧縮成形を採用する場合、成形圧力は4.9〜49 MPaとするのが好ましく、4.9〜39.2 MPaとするのがより好ましく、9.8〜34.3 MPaとするのがさらに好ましい。成形圧力が4.9 MPa未満では健全な成形体が得られない。成形圧力が49 MPa超では成形体の配向度が大きく低下し、縦磁場成形体の焼成品に比べて高いBr及び高い配向度が得られるという横磁場成形体の焼成品のメリットが消失する。
【0095】
縦磁場圧縮成形又は横磁場圧縮成形のいずれの場合も、印加磁場強度は398〜1194 kA/mであるのが好ましい。398 kA/m未満では異方性の付与が困難であり、1194 kA/m超では配向度の改善効果はほぼ飽和する。
【0096】
乾式成形の場合は、(a)スラリーを室温又は加熱(323〜373 K程度)して乾燥し、アトマイザー等で解砕して成形する方法、(b)スラリーを磁場中成形して得られた成形体をクラッシャー等により砕いた後、平均粒径が100〜700μm程度にふるいにより分級して得られた磁場配向顆粒を乾式磁場中成形する方法、(c)乾式粗粉砕及び乾式微粉砕により得られた微粉末を乾式磁場中成形又は乾式無磁場成形する方法等により行う。乾式成形の圧力は9.8〜49 MPa程度が好ましく、磁場を印加する場合、印加磁場強度は398〜1194 kA/m程度が好ましい。
【0097】
本発明のマグネットロール用の、高い配向度を有する異方性フェライト焼結磁石用成形体を得るために、磁場中押出成形の印加磁場強度は398〜1194 kA/mにするのが好ましい。398 kA/m未満では異方性の付与が困難であり、1194 kA/m超では配向度の改善効果はほぼ飽和する。
【0098】
(D) 焼成
成形体は、大気中での自然乾燥、又は大気中若しくは窒素雰囲気中での加熱(373〜773 K)乾燥により水分及び分散剤等を除去した後、焼成することによりフェライト焼結磁石となる。焼成は大気中(実質的に酸素分圧が0.05〜0.2 atm程度)で行うのが実用的である。酸素過剰雰囲気中(例えば酸素分圧が0.2 atm超1 atm以下)、特に酸素100%雰囲気中で焼成してもよい。焼成は1423〜1573 K、好ましくは1433〜1543 Kの温度で、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間行う。本発明のフェライト焼結磁石の密度は5.05〜5.10 g/cm3であるのが好ましい。
【0099】
[3] 異方性フェライト焼結磁石の特性
本発明の異方性フェライト焼結磁石のc軸に平行な断面を、SEM観察し測定したc軸方向の平均結晶粒径(50個のM型結晶粒について測定。)は、1μm以上であるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましく、0.9〜2μmであるのがさらに好ましく、1.0〜1.6μmであるのが特に好ましい。本発明の異方性フェライト焼結磁石は平均結晶粒径が1μm以上でも高いBr、高い配向度及び高いHcJを発揮する。異方性フェライト焼結磁石のc軸方向とは、異方性付与方向(磁場中成形における磁場印加方向に事実上一致する方向)を意味するものとする。
【0100】
本発明の異方性フェライト焼結磁石は、高いBr、高い配向度及び高いHcJを有するために、M型結晶粒のアスペクト比が3以下のものを好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上含む。
【0101】
本発明の異方性フェライト焼結磁石の配向度は、異方性付与方向の残留磁束密度(Br//)及び異方性付与方向に垂直な方向の残留磁束密度(Br⊥)により、[(Br//)/(Br//+Br⊥)]×100%で定義される。(Br//)及び(Br⊥)はいずれも293 Kにおける測定値である。本発明の異方性フェライト焼結磁石の配向度は85%以上となり、好ましくは85〜95%、より好ましくは86〜95%、さらに好ましくは88〜95%、最も好ましくは90〜95%という高い配向度が得られる。
【0102】
本発明の異方性フェライト焼結磁石は高い配向度を有するとともに、233〜413 KにおけるHcJの温度係数(β)(%/K)が、次式:0<β≦−0.0009×HcJ+0.445[ただしHcJは293 Kにおける固有保磁力(kA/m)]を満たし、大気中焼成品で、293Kにおいて、460 mT以上のBr、278 kA/m以上のHcJ及び80%以上の角形比(Hk/HcJ)を有する。さらに460〜480 mTのBr、278〜478 kA/mのHcJ及び80〜95%の角形比(Hk/HcJ)を有する。特に465〜480 mTのBr、278〜478 kA/mのHcJ及び80〜95%の角形比(Hk/HcJ)を有する。ここで角形比(Hk/HcJ)を求めるのに測定するパラメータのHkは、4πI(磁化の強さ)−H(磁界の強さ)曲線の第二象限において4πIが0.95Brの値になる位置のH軸の読み値である。
【0103】
本発明のマグネットロールにおいて、少なくとも1つの磁極部を構成する本発明の異方性フェライト焼結磁石が顕著に高いBr及び高い配向度を有することから、従来のフェライト焼結磁石又はフェライトボンド磁石と同一寸法の磁石を使用した場合は、マグネットロールの性能を従来品よりも向上できる。また従来のフェライト焼結磁石又はフェライトボンド磁石よりも小さい寸法の磁石を使用した場合でも、従来と同等のマグネットロールの性能を得られる。
【0104】
本発明のマグネットロールは、外径D=10〜60 mm、軸方向長さL=200〜350 mm及びL/D≧5の中空円筒状に形成したものが実用性に富む。さらに小型の複写機又はプリンターの用途には、D=10〜30 mm、特にD=10〜20 mmでL/D≧5の小径とするのが好ましい。
【0105】
本発明の第一の方法により得られるフェライト焼結磁石は、酸化鉄原料としてミルスケールを用いているが、大気中焼成した異方性フェライト焼結磁石の場合で、室温(293K)において、400〜470 mTのBr、278〜478 kA/mのHcJ及び80%以上の角形比(Hk/HcJ)を有する。さらに420〜470 mTのBr、278〜478 kA/mのHcJ及び80%以上の角形比(Hk/HcJ)を有する。特に430〜470 mTのBr、278〜478 kA/mのHcJ及び80%以上の角形比(Hk/HcJ)を有する。
【0106】
[4] 磁石応用品
本発明のフェライト焼結磁石は、例えば回転機に有用であり、自動車用のスタータ、パワーステアリング、電制スロットル等のモータ又は発電機に好適である。また複写機用の現像ロール用マグネットロールにも好適である。
【0107】
(A) マグネットロール
本発明のフェライト焼結磁石を使用する好ましい態様はマグネットロールである。本発明のマグネットロールにおいて、少なくとも1つの磁極[例えば図7(b)におけるS1極]は本発明のフェライト焼結磁石5により構成される。図7(a)及び図7(b)に示すように、フェライト焼結磁石5は、本発明のマグネットロール80の軸方向に長く伸びた一体ものの長尺板状体であり、永久磁石部材11の外周面の軸方向に沿う溝8に配置し、固着される。この場合、S1極を現像磁極とすれば、高性能のマグネットロール80を構成することができる。
【0108】
他の例として、図7(c)に示す本発明のマグネットロール90において、スリーブ82にエアギャップ83を介して組み込まれた円筒状磁石15は、C字型の断面形状で極異方性を有する従来のSrフェライトボンド磁石13と、アークセグメントの断面形状で直径方向に沿ってラジアル異方性が付与され、高い配向度及び高いBrを有する本発明のフェライト焼結磁石12とが、接合面14a,14bにおいて貼り合わされた構造を有する。この場合も、S1極を現像磁極とすれば、高性能のマグネットロールとなる。
【0109】
(B) 非可逆回路素子
本発明の非可逆回路素子の構成及び特性について説明する。
(1)第一の非可逆回路素子
図8に、本発明の第一の非可逆回路素子(分布定数型)の一実施形態を示す。非可逆回路素子は、磁気回転効果を生起するガーネット板と、ガーネット板に高周波電磁界を供給する中心導体と、ガーネット板に直流磁界を供給する永久磁石(フェライト焼結磁石)を有する。この実施形態では、上ガーネット板41と下ガーネット板42の2つのガーネット板で構成する。
【0110】
中心導体は、伝送線路を形成しインダクタンス成分として機能する導体板51、及び導体板51を保持して高周波電流を供給する回路を形成し非可逆回路素子における静電容量成分を構成する基板61からなる。フェライト焼結磁石31は、それ単体でも使用できるが、この実施形態では上ガーネット板41に対向する面側に磁性体板32を接合して磁束分布を均一化して有効利用している。磁化状態をさらに均一化することにより非可逆回路素子としての特性が向上する。
【0111】
上ケース21と下ケース22は、磁気回路を閉磁路にして磁気効率を高めるとともに、磁束の外部への漏れ出しを防止して、他の電子部品への悪影響を防いでいる。本発明の非可逆回路素子としては必須のものではなく、非可逆回路素子が組み込まれる電気機器の筐体などをケースの代わりとして用いることができる場合には不要である。
【0112】
上ガーネット板41及び下ガーネット板42の2枚のガーネット板を用いたトリプレート構造にすることにより、中心導体の導体板51を流れる電流による高周波磁界が上下2枚のガーネット41,42に作用するのでインダクタンスが増加し、帯域幅や挿入損失が改善される。
【0113】
しかし、本発明の非可逆回路素子はトリプレート構造に限定されるものではなく、1枚のガーネット板で磁気回転効果を起こし非可逆伝送特性を得ることもできる。例えば、所定の角度で交差するように重ね合わされた互いに絶縁されている3組のストリップライン、及び3組のストリップラインが一方の主面上に配置された1枚のガーネット板からなる非可逆回路素子にも適用できる。
【0114】
上ガーネット板41及び下ガーネット板42の材質は、磁気回転効果を呈するものなら使用でき、YIG(イットリウム鉄ガーネット)、GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)等のガーネット系磁性体が使用できる。この実施形態では、円板状のものを用いたが、それに限定されない。長方形、三角形、六角形等が利用できる。円板状の場合は、磁性体材料の歩留まりが低下し材料コストが高くなる。長方形の磁性体を用いることにより、磁性体の材料コスト及び製造コストを低減して低コスト化を図るとともに磁性組立体の小型化を実現し、かつ端子ケースへの各構成部材の配置においても、磁性体周囲の面積利用効率を高めることができ、全体の小型化を実現できる。
【0115】
この実施形態では、フェライト焼結磁石31は円板状であるが、それに限定されるものではなく、四角形、長方形等にすることができる。
【0116】
磁性体板32は鉄板等からなり、フェライト焼結磁石31とガーネット41の間に入れて磁束を均一化する。磁性体板32として大きな透磁率を有するパーマロイ等を用いて、フェライト焼結磁石31に対する大きさを調節し、ガーネットに加わる磁束を調整することもできる。温度特性の補償のために整磁鋼を用いても良い。
【0117】
導体板51は、導電性を有していればどのような材質でも良いが、特に銀又は銅等の導電率の高い材質が好ましい。導電性の高い材質を用いることにより、小型化及び低損失化が達成できる。なお、黄銅、燐青銅、ベリリウム銅等に銀メッキを施した材料や、銀を一体化させた銀クラッド材は、銅や銀に匹敵する低損失が実現できるため好ましく用いることができる。電流は高周波になればなるほど、金属の表面付近に集中する性質がある(表皮効果)ため、表面部分はできるだけ損失の小さい材質にするのが好ましい。例えば、下地を銅板として光沢銀メッキを施し、最表層を銀被膜にすることにより、非可逆回路素子の挿入損失を低くすることができる。
【0118】
上ケース21及び下ケース22の材質は、効率よく均一性に優れた磁気回路を構成できるものならばどのようなものでも使用できる。例えば、ニッケルメッキ処理仕上げの鉄板を用いることができる。また、鉄に銀メッキを施したものでもよい。Fe-Si合金(Si含有量3.5 質量%)、Fe-Ni合金(Ni含有量65質量%)、Fe-Si-Al合金(Si含有量9質量%,Al含有量5質量%)等の合金を用いることもできる。
【0119】
基板61の材質は、ガラス、エポキシ、セラミック、フッ化樹脂等であり、両面銅張基板や多層基板として使用する。この実施形態では、両面銅張基板を用いて整合用の静電容量を形成するパターン電極を設けた。基板に高誘電率の材料を用いたり、基板の厚さをさらに薄くしたりすることにより小型で必要な静電容量を形成できる。又は積層型チップコンデンサなどを外付けすることもできる。
【0120】
図9に、本発明の非可逆回路素子における中心導体の一実施形態を示す。中心導体50は導体板51と基板61とで形成される。導体板51は高周波電流の伝送路を構成してガーネット板の磁気回転効果を発現させる。銀メッキした銅板などでなり、導体板51の中心部52を中心にして放射状に延在する導体板51の電極部53,54,55を有する。導体板51の電極部53,54,55の端部は導体板51のポート部57,58,59を形成する。この実施形態では、導体板51のポート部58は入力ポート、導体板51のポート部59は出力ポート、導体板51のポート部57はアイソレータとして用いる場合の負荷ポートである。導体板51の電極部54,55の端部付近に設けた導体板51の切欠部56は、インピーダンス整合用の切欠でありインピーダンス変換によりVSWR(電圧定在波比)を改善する機能がある。
【0121】
この実施形態では、導体板51のポート部57,58,59の端部に孔570,580,590を配設している。孔570,580,590は、導体棒77,78,79を挿入してはんだ付けなどにより固着するために用いられる。孔570,580,590によりポート部57,58,59のはんだ接合時のはんだフィレット面積を増大して、接合部の信頼性を向上できる。固着する手段は限定されないが、はんだ付け又ははんだ付けと接着剤の併用が好ましい。はんだ付けと接着剤の併用により固着強度は向上して、振動や温度サイクルを受けた場合の信頼性もさらに向上する。接着剤は、エポキシ系、シリコン系、ポリイミド系、ポリアミド系が好ましい。しかし、リフローはんだに耐える473K程度の耐熱性があれば、フェノール系、ポリエチレン系、尿素系、ビニール系等の他の接着剤でもよい。固着する手段として、電子ビーム溶接、ロウ付けなどの手段を用いることもできる。これにより環境問題(作業環境及び地球環境)の点から制約のあるはんだ付けをなくすことができる。
【0122】
基板61は導体板51を保持するとともに、非可逆回路素子として機能させるための整合用の静電容量を形成する電極パターンを配設したものである。パターン電極63,64は整合用の静電容量を形成する電極パターンであり、基板61の裏面に形成されたグランド電極パターン(図示しない)との間で静電容量を形成する。パターン電極62はアイソレータとして使う場合のダミー抵抗をはんだ付けする電極パターンである。
【0123】
(2)第二の非可逆回路素子
図10に本発明の第二の非可逆回路素子(分布定数型)の一例を示す。少なくとも、フェリ磁性のガーネット板150a,150bと、ガーネット板150a,150bに高周波磁界を印加する中心導体140と、中心導体140に直流磁界を印加するフェライト焼結磁石130とを備える。さらに、フェライト焼結磁石130の磁束密度分布を均一化するためにフェライト焼結磁石130の上下に、上鉄板120a及び下鉄板120bが配置され、上ガーネット板150aとの間にトリプレート構造を形成するために、アース板135が配置される。下ガーネット板150bの下には、上ガーネット板150a、中心導体140及び下ガーネット板150bの位置決めを行うための金属板160が配置される。以上の部品を、上ケース110aと下ケース110bとで形成される空洞部に収納して非可逆回路素子180が構成される。
【0124】
なお、図10に例示した非可逆回路素子180は、中心導体140を上ガーネット板150aと下ガーネット板150bとで挟む、所謂トリプレート構造のものであるが、それに限定されるものではなく、ガーネット板を1枚にした構造のものも本発明に包含される。
【0125】
図10に例示したトリプレート構造の非可逆回路素子の組立について説明する。下ガーネット板150b、中心導体140、及び上ガーネット板150aを保持するための少なくとも3つの突起161a〜161cを有する金属板160を治具にセットする。次に、金属板160の中央部に下ガーネット板150b、中心導体140、及び上ガーネット板150aの順に載置すると、下ガーネット板150b、中心導体140、及び上ガーネット板150aが突起161a〜161cにしっかりと保持されて良好に位置決めされる。さらに、アース板135、上鉄板120a及び下鉄板120bで挟まれたフェライト焼結磁石130を載置し、上ケース110aと下ケース110bとで形成される空洞部に収納する。
【0126】
金属板160には、ガーネット板150a、150bを係止して保持するための突起161a〜161cが切り起こして形成されている。突起161a〜161cの間に下ガーネット板150b、中心導体140及び上ガーネット板150aを挿入するだけで突起161a〜161cにガイドされて所定の位置に容易に位置決めされ、位置ズレが生じることがない。
【0127】
金属板160の中央部は、ガーネット板150a,150bの外径とほぼ同一径の円板になっている。従って、下ガーネット板150bと全面に亘って良好に接触する。金属板160の中央部に穴を形成して、穴の周縁部にガーネット板150a、150bの位置決め用の突起161a〜161cを形成することもできるが、その場合には、突起161a〜161cを有する金属板160を打ち抜きなどで形成する必要があるためコストが高くなる。またガーネット板150a、150bの位置決め用の突起161a〜161cを、金属板160ではなく中心導体140に設けることも可能だが、その場合には、ホットライン(高電位線)である中心導体140に突起161a〜161cを設けることなり、突起161a〜161cの先端とケースなどの導電体との間で放電を起こすおそれが生じる。
【0128】
金属板160の厚みは、好ましくは0.1〜0.3 mm程度である。0.1 mm未満だと強度が弱く位置決め精度が出しにくく、0.3 mmを超えると打抜いて曲げ加工する際に精度を出しにくい。
【0129】
金属板160の材質としては、純鉄、Fe-Co合金等の鉄合金、JIS-G3140b「冷間圧延鋼鈑及び鋼帯」に規定されたいわゆるSPCC材(冷間圧延鋼鈑)、40a合金(Fe-40a%Ni)等が挙げられる。板材を打ち抜き、曲げ加工した後、導電性被覆をするのが好ましい。例えば、銀メッキ処理することにより、表面の電気抵抗が低下して表皮効果による遮へい効果が高まり、挿入損失も減少する。高周波電流は、表皮効果により金属板表面からある程度の深さに流れるため、銀メッキの厚みはその程度とすることにより導体損失を抑えられる。メッキ処理の硫化による変色防止用として脂肪酸有機化合物などを用いた変色防止処理を行うこともできる。導電性被覆の材質は銀に限定されるものではなく、例えば金、錫、ニッケル、又はそれらの合金を選択できる。導電性の被覆を形成する方法は、メッキに限定されるものではなく、金属ペーストの印刷法でも良い。
【0130】
(3)第三の非可逆回路素子
本発明の第三の非可逆回路素子(集中定数型)を、サーキュレータ210を例にして説明する。サーキュレータ210は、図12に示すように、銅板203a,フェライト板201a,3組の導線202a,202b,202c,202d、フェライト板201b及び銅板203bを積層一体化させてなるフェライト体205の両側に、純鉄を削り出して作製した一対のヨーク206、さらにその両側にバイアス磁界を印加する一対のフェライト焼結磁石207が設けられてなる。
【0131】
図11に示すように、下側のフェライト板201bの上面には、4本のポリウレタン製の導線202a,202b,202c,202dを一組とした3組の導線パターンが、120度回転対称位置に接着された導体電極パターンが設けられている。下側のフェライト板201bに、導体電極パターンを挟むように上側のフェライト板201aが接着されている。上側のフェライト板201aの上面及び下側のフェライト板201bの下面には、接地電極となる銅板203a及び203bがそれぞれ接着剤にて接着されている。導体電極パターンの各組の4本の導線の一端がそれぞれ束ねられ、途中に共振用のコンデンサとしてのトリマコンデンサ204が設けられて(図13参照)、上下の銅板203a,203bにはんだで接続されている。
【0132】
次に、本発明のサーキュレータ210の動作について説明する。図13に示すように、導体電極パターンである3組の導線の接地されていない他端が、入力端子又は出力端子として機能する3個のポート1、ポート2及びポート3となる。インダクタとなる導体とトリマコンデンサ204とで磁気共鳴が起こり、その共鳴周波数は例えば13.56 MHzに設定されている。図14に示すように、フェライト板201a,201bにフェライト焼結磁石207により静磁界を印加し(図14で紙面の表から裏方向)、磁化を一方向に揃えた状態で、静磁界と直角方向に高周波磁界を印加した場合、静磁界の方向に対して右回りにフェライト板201a,201bの磁化が才差運動する。この結果、ポート1を入力端子とした場合、ポート2に対応する導線は磁界と鎖交するのでポート2に信号が出力されるが、ポート3に対応する導線は磁界方向と平行になって鎖交する磁界がないのでポート3には信号が出力されない。この結果、図15(a)に示すように、ポート1から入力された信号は、ポート2にのみ出力されてポート3には出ない。また、図15(b)に示すように、ポート2から入力された信号は、ポート3にのみ出力されてポート1には出ない。つまり、伝達ロスなく信号を所望方向に切り換えて伝送できる。よって、本発明のサーキュレータ210は、方向性結合器として機能する。
【0133】
サーキュレータにおける導体電極パターンは、一般的に金属箔を使用して形成されるが、本発明では導線を用いている。これは、導体に飛び込む磁束による渦電流の発生を抑制するためであり、順方向伝達ロスを改善できる。
【0134】
フェライト板としてキュリー温度の高いLi系フェライトを使用することにより、YIGフェライトを使用する場合に比べて、室温での動作安定性を高めることができる。Li系フェライトを使用して飽和磁化にならない状態で動作させると、印加磁界による共鳴周波数の変化が大きくなるので、印加磁界を均一にして安定化させる必要がある。そこで図12に示すように、フェライト体205を挟むようにヨーク206を設け、フェライト焼結磁石207により印加される磁界を均一にしている。この結果、順方向の伝達ロスの増大及びF/B比の低下を防いでいる。
【実施例】
【0135】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0136】
実施例1
<ミルスケールの熱処理とフェライト焼結磁石の磁気特性>
CaCO3粉末(純度98.8%、不純物としてMgOを含む。)、La(OH)3粉末(純度99.9%)、BaCO3粉末(純度98.1%、不純物としてSrCO3を1.45%含む。)、ミルスケールの粉末及びCo3O4粉末(純度99%)を用いて、Ca1-x-yLaxBayFe2n-zCozO19(x=0.475、y=0.050、z=0.30、n=5.2)の組成になるように配合した。使用したミルスケールの粉末は、表1の成分及び平均粒径1.4μm(SEM観察による。)のミルスケールの粗粉を、大気中で表2の熱処理条件(加熱温度、加熱保持時間)で熱処理後、湿式微粉砕(平均粒径1μm;SEM観察による。)した原料酸化鉄である。熱処理前後のミルスケールの粗粉をX線回折した結果、熱処理前の試料ではα-Fe2O3+FeOのX線回折ピークが観察され、熱処理後の試料ではα-Fe2O3のX線回折ピークのみが認められた。前記配合物100質量部に対し、0.1質量部のH3BO3粉末を添加して湿式混合し、乾燥後、1473 Kで1時間、大気中で仮焼した。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
この仮焼体を粗砕後、振動ミルで乾式粗粉砕し、平均粒径5μm(F.S.S.S.による)の粗粉を得た。45質量%の粗粉及び55質量%の水をボールミルに投入して、100質量部の粗粉に対し0.28質量部のSiO2粉末(純度92.1%、残部はほぼ水)及び0.50質量部のCaCO3粉末を焼結助剤として添加し湿式微粉砕を行い、平均粒径が0.9μm(F.S.S.S.による)のフェライト微粒子を含むスラリーを得た。
【0140】
微粉砕後のスラリーを、796 kA/mの平行磁場中で圧縮成形した。得られた成形体を大気中、1493 Kの温度で1時間焼成して異方性フェライト焼結磁石を得た。得られた焼結体の磁気特性を、B-Hトレーサーにより室温(293K)で測定した結果、高い磁気特性が得られた(表2参照)。
【0141】
実施例2〜6
表1の成分を有し、平均粒径を3.1〜30.8μmとした熱処理前のミルスケールの粗粉(表2参照、SEM観察による。)を使用した以外は、実施例1と同様にして異方性フェライト焼結磁石を作製した。室温の磁気特性を測定した結果、高い磁気特性を有するのがわかった(表2参照)。
【0142】
実施例2〜6の熱処理前後のミルスケールの粗粉をX線回折した。その結果、熱処理前の試料ではいずれの場合もα-Fe2O3+FeOのX線回折ピークが観察された。また熱処理後の試料ではいずれの場合もα-Fe2O3(主相)+Fe3O4(副相)のX線回折ピークが観察され、ミルスケール粒子は完全にα-Fe2O3に酸化されていないことがわかった。一例として、実施例4の熱処理後のミルスケールの粗粉のSEM写真を図1に、その微粉砕粉のSEM写真を図2に示す。
【0143】
実施例7
酸化鉄原料として、実施例4の熱処理前のミルスケールの粗粉(平均粒径12.3μm)を微粉砕して得られたミルスケールの微粉(平均粒径1μm、SEM観察による。)を用いた以外は、実施例1と同様にして異方性フェライト焼結磁石を作製した。室温の磁気特性を測定した結果、表2に示すように、実施例1〜6に比べてBrが低いことがわかった。
【0144】
比較例1
実施例1と同じSrCO3粉末、及び工業用酸化鉄粉末(表1の成分を有し、平均粒径が1μm未満のもの。)を用いて、SrO・5.9Fe2O3の基本組成に湿式混合後、1523Kで2時間大気中で仮焼した。得られた仮焼体の粗粉(平均粒径4μm(F.S.S.S))45質量%及び水55質量%をボールミルに投入し、さらにLa(OH)3粉末、Co3O4粉末及び前記工業用酸化鉄粉末を所定量ボールミルに投入した。さらに焼結助剤として、粗粉質量を基準にして0.1質量%のSrCO3粉末、1.0質量%のCaCO3粉末及び0.3質量%のSiO2粉末をボールミルに投入し、湿式微粉砕を行って平均粒径0.9μm(F.S.S.S.)の微粉を分散したスラリーを得た。このスラリーを、796 kA/mの平行磁場中で圧縮成形し、得られた成形体を1493Kで2時間焼成した。得られた異方性フェライト焼結磁石の組成は、(Sr0.15La0.85)O・5.55[(Fe0.986Co0.014)2O3]であった。室温の磁気特性を測定した結果、表2に示すように、実施例1〜7とほぼ同等の高い磁気特性が得られた。
【0145】
比較例2
特許文献1の実施例2のサンプルNo.2の作製条件において、実施例4の熱処理前のミルスケールの粗粉(平均粒径12.3μm)を微粉砕して得られた微粉(平均粒径1μm、SEM観察による。)を、α-Fe2O3粉末(工業用)に替えて、用いた以外は、サンプルNo.2と同様にして、比較実験を行った。Ca1-x-yLaxBayFe2n-zCozO19(x=0.500、y=0、z=0.43、n=5.1)の基本組成を有し、0.4質量%のSiO2粉末を添加した混合物を作製し、1473Kで3時間、大気中で仮焼した。得られた仮焼体を粗砕及び粗粉砕して仮焼体の粗粉を得た。水を媒体としたボールミルにより、粗粉に対して0.6質量%のSiO2及び1.0質量%のCaCO3を添加し、湿式微粉砕を行い、平均粉砕0.9μm(F.S.S.S.)の微粉を分散したスラリーを得た(特許文献1のサンプルNo.2の微粉砕平均粒径が不明なので、実施例1の微粉砕粉の平均粒径0.9μmに合わせた。)。以降は実施例1と同様にして異方性フェライト焼結磁石を作製し、室温の磁気特性を測定した。その結果、上記実施例に近い高い磁気特性が得られた(表2参照)。
【0146】
<仮焼体の組織>
実施例4の仮焼体(x=0.475、y=0.050、z=0.30、n=5.2)の破面のSEM写真を図3に示す。板状の一次粒子(M型結晶粒)の形態が明瞭であり、M型結晶粒の成長率が高いことがわかる。
【0147】
比較例2の仮焼体(x=0.500、y=0、z=0.43、n=5.1)の破面のSEM写真を図4に示す。一次粒子は不定形状であり、板状のものは見られない。
【0148】
図3及び図4の比較から、Baを所定量添加した実施例4の仮焼体は、一次粒子が板状でかつ厚みのある明瞭な形態を有することがわかる。また図3を含むSEM観察から、実施例4の仮焼体はM型フェライト結晶粒の一次粒子のアスペクト比(c面の最大径/c軸方向の厚み)が5以下のものを60%程度含むことがわかった。
【0149】
実施例4のフェライト焼結磁石及び比較例2のフェライト焼結磁石のM型結晶粒をSEM観察した結果、実施例4の場合はほぼ健全な(成長した)六角板状のM型フェライト結晶粒から構成されることがわかった。これに対し、比較例2の場合は、実施例4に比べてM型フェライト結晶粒の成長率が低く六角板状を呈しないM型フェライト結晶粒を多く含むことがわかった。このようなミクロ組織の差異に主因し、実施例4と比較例2のフェライト焼結磁石の磁気特性の差異を生じているものと考えられる。
【0150】
実施例8〜12
<熱処理条件とフェライト焼結磁石の磁気特性>
実施例4の熱処理前のミルスケールの粗粉(平均粒径12.3μm)に対し、大気中において、熱処理条件を変化させた場合の、フェライト焼結磁石の磁気特性に与える影響を調査した。表3の熱処理の加熱条件とした以外は、実施例4と同様にして異方性フェライト焼結磁石を作製した。得られたフェライト焼結磁石の室温の磁気特性を表3に示す。実施例4、8、9及び10より、熱処理温度973〜1273Kにおいて高い磁気特性が得られることがわかる。また、実施例4、11及び12より、熱処理温度1173Kおける加熱保持は0.2時間で効果があり、10時間でほぼ飽和していることがわかる。
【0151】
【表3】

【0152】
実施例1〜5で得られたフェライト焼結磁石から、縦3mm×横3mm×厚さ3mmのサンプルを切り出し、VSMにより233〜413KにおけるHcJの温度係数(β)を測定した結果、β=0.11〜0.13(%/K)程度の非常に小さな値が得られた。これに対し、比較例1、2のフェライト焼結磁石のβは0.15(%/K)を超えており、低温減磁が大きいことがわかった。
【0153】
上記実施例では、酸化鉄原料としてミルスケールを100%使用した場合を記載したが特に限定されない。例えば、(ミルスケールの粉末):(工業用酸化鉄粉末;一般品)=5〜100質量部:95〜0質量部とした配合条件とするのが実用性に富み、本発明の有用な効果を奏することができる。
【0154】
また、上記実施例では湿式微粉砕したスラリーを磁場中圧縮成形した場合を記載したが特に限定されない。本発明の方法は、配向磁場を印加する場合だけでなく、配向磁場を印加しない他の公知の湿式成形方法(押し出し成形等)や、乾式成形方法(圧縮成形等)に適用可能である。
【0155】
実施例13及び比較例3
<縦磁場の磁場中圧縮成形の加圧力と配向度>
CaCO3粉末(純度98.8%、不純物としてMgOを含む。)、La(OH)3粉末(純度99.9%)、BaCO3粉末(純度98.1%、不純物としてSrCO3を1.45%含む。)、Fe2O3粉末(工業用)及びCo3O4粉末(純度99%)を、Ca1-x-yLaxBayFe2n-zCozO19(x=0.475、y=0.050、z=0.30、n=5.2)の組成になるように配合した。この配合物100質量部に対し、0.1質量部のH3BO3粉末を添加して湿式混合し、乾燥後、1473 Kで1時間、大気中で仮焼した。
【0156】
この仮焼体を粗砕後、振動ミルで乾式粗粉砕し、平均粒径5μm(F.S.S.S.による)の粗粉を得た。45質量%の粗粉及び55質量%の水をボールミルに投入して、100質量部の粗粉に対し0.40質量部のSiO2粉末(純度92.1%、残部はほぼ水)及び0.50質量部のCaCO3粉末を焼結助剤として添加し湿式微粉砕を行い、平均粒径が0.9μm(F.S.S.S.による)のフェライト微粒子を含むスラリーを得た。
【0157】
微粉砕後のスラリーを、成形圧力を4.9〜78.4 MPaの範囲で変化させて、縦磁場の磁場中圧縮成形(印加磁場強度796 kA/m)を行い、外径40mm×厚み15mmの円板状成形体を得た。各成形体の成形体密度を測定した結果を表1に示す。各成形体を大気中、1493 Kの温度で1時間焼成して異方性フェライト焼結磁石を得た。得られたフェライト焼結磁石の磁気特性を、B-Hトレーサーにより、室温(293K)において測定した。測定結果を表4に示す。
【0158】
従来例1
特許文献1のサンプルNo.2のトレース実験を行った。実施例13と同じCaCO3粉末、La(OH)3粉末、Fe2O3粉末及びCo3O4粉末を用いて、Ca1-xLaxFe2n-zCozO19(x=0.500、z=0.43、n=5.1)の組成を有する配合物に、0.4質量%のSiO2を添加した混合物を作製し、1473 Kで3時間、大気中で仮焼した。この仮焼体を粗砕及び粗粉砕した後、粗粉に対して0.6質量%のSiO2及び1.0質量%のCaCO3を添加し、水を媒体としてボールミルで湿式微粉砕を行い、平均粒径0.9μmの微粉を分散したスラリーを得た(特許文献1のサンプルNo.2の微粉砕平均粒径が不明なので、実施例1の微粉砕粉の平均粒径0.9μmに合わせた。)。
【0159】
このスラリーにより、39.2 MPaで縦磁場の磁場中圧縮成形(印加磁場強度796 kA/m)を行い、外径40mm×厚み15mmの円板状成形体を得た。成形体密度を表4に示す。以降は実施例1と同様にして異方性フェライト焼結磁石を作製し、磁気特性を測定した。測定結果を表4に示す。
【0160】
【表4】

【0161】
表4より、縦磁場の磁場中圧縮成形において、成形の加圧力を4.9〜39.2 MPaとして得られた実施例13のフェライト焼結磁石は、成形の加圧力を78.4 MPaとして得られた比較例3のフェライト焼結磁石に比べて、Br及び配向度が向上していることがわかる。また従来例1のフェライト焼結磁石は、Br及びHcJが本発明に比べて劣っていた。
【0162】
実施例13及び従来例1のフェライト焼結磁石(焼結体)の焼結体組成の分析値を表5及び表6に示す。
【0163】
【表5】

【0164】
【表6】

【0165】
<仮焼体の組織>
実施例13の仮焼体(x=0.475、y=0.050、z=0.30、n=5.2)の破面のSEM写真を図5に示す。六角板状の一次粒子(M型結晶粒)が多数存在しており、M型結晶粒の成長率が高いことがわかる。このSEM写真から、c面の最大径は3〜9μm程度であり、c軸方向の厚みは1.3〜4.3μm程度であり、アスペクト比(前記最大径/前記厚み)は1.5〜4.2程度であることがわかる。
【0166】
従来例1の仮焼体(x=0.500、z=0.43、n=5.1)の破面のSEM写真を図6に示す。一次粒子は不定形状であり、六角板状のものは見られない。
【0167】
図5及び図6の比較から、Baを所定量添加した実施例13の仮焼体は、一次粒子が六角板状でかつ厚みのある形状を有することがわかる。また実施例13の仮焼体はアスペクト比が5以下のものを60%程度含んでいた。このような仮焼体のミクロ組織の差異に起因して、実施例13と従来例1のフェライト焼結磁石の磁気特性及び成形体密度の差が生じているものと考えられる。
【0168】
実施例14及び比較例4
<横磁場の磁場中圧縮成形の加圧力と配向度>
実施例13と同じ条件で作製した微粉砕後のスラリーにより、表7に示すように成形圧力を4.9〜78.4 MPaの範囲で変化させて、横磁場の磁場中圧縮成形(印加磁場強度796 kA/m)を行い、VCM磁石用の成形体を得た。これらの成形体の密度を表7に示す。以降は実施例13と同様にして異方性フェライト焼結磁石を作製した。得られたフェライト焼結磁石の磁気特性を、室温(293K)において、B-Hトレーサーにより、測定した結果を表7に示す。
【0169】
【表7】

【0170】
表7より、横磁場の磁場中圧縮成形において、成形の加圧力を4.9〜49 MPaとして得られた実施例14のフェライト焼結磁石は、78.4 MPaという高圧成形により得られた比較例4のフェライト焼結磁石に比べて、Br及び配向度が向上していることがわかる。
【0171】
実施例15
実施例14のフェライト焼結磁石を洗浄後、エポキシ樹脂の吹き付け、乾燥及び加熱硬化処理を行って、平均膜厚20μmのエポキシ樹脂層をコーティングしたVCM用磁石を得た。このVCM用磁石をクリーンルームにおいてVCMに組み込み、当該VCMを所定時間連続駆動したところ、下地からの磁石体粒子の脱落は認められず、汚染を嫌う用途に使用できることがわかった。
【0172】
実施例16
<マグネットロール>
実施例13と同様にして作製した微粉砕後のスラリーを加熱して、スラリー中の仮焼体粒子の濃度を85質量%に濃縮した。この濃縮したスラリーと、このスラリー中の仮焼体粒子の総質量に対し0.5質量%相当のポリカルボン酸アンモニウム塩(分散剤)を混練機に投入して十分混練した。得られた混練物をそのまま磁場中押出成形装置に投入し、断面が平板状の長尺成形体を押出成形した。押出成形時の印加磁場強度は796 kA/mとし、前記成形体の厚み方向に異方性を付与した。得られた長尺成形体はマグネットロール用の所定寸法に切断した。切断後の成形体を大気中、1493 Kの温度で2時間焼成して焼結体素材を得た。この素材を研磨加工後、洗浄及び乾燥してマグネットロール用の異方性フェライト焼結磁石を得た。この焼結磁石の、室温(293K)の磁気特性は、Br=462 mT、HcJ=348 kA/m、及び配向度=86.2%であった。このフェライト焼結磁石を、図7(b)のマグネットロール80を構成する長尺磁石体5として組み込んだ。このものは、従来例1のフェライト焼結磁石を使用したマグネットロールに比べて、現像磁極(S1磁極)直上の空隙磁束密度の最大値が約5%高い、高性能マグネットロールであることがわかった。上記の濃縮混練及び分散剤の添加は、押出成形を容易にし、及び成形体(焼結体)の配向度を向上する目的で行う。分散剤の添加量は0.2〜2質量%とすることが好ましい。分散剤の添加量が0.2質量%未満では配向度の向上効果が得られず、2質量%超では逆に磁気特性が低下する。
【0173】
実施例16では、異方性を付与した平板長尺形状の押出成形体の場合を記載したが、特に限定されない。例えば、図7(c)に示すように、ラジアル異方性を付与した長尺形状の押出成形体を焼成してなるラジアル異方性を有するフェライト焼結磁石のセグメントを配置した場合も従来に比べて高性能なマグネットロールを構成することができる。また一体円筒状の極異方性を付与した押出成形体を焼成してなる、一体円筒状の極異方性を有するフェライト焼結磁石を永久磁石部材として用いたマグネットロールは従来に比べて高性能なマグネットロールになる。また、図7(b)のフェライト焼結磁石5及び図7(c)のフェライト焼結磁石12を、いずれも無磁場で押出成形して所定長さの長尺成形体を得た後、これを焼成して得られた等方性フェライト焼結磁石は着磁性に富むので、マグネットロールに組み込んだ場合の磁極直上の空隙磁束密度分布を自在に調整できるという長所を具備する。
【0174】
実施例17
CaCO3粉末(純度98.8%、不純物としてMgOを含む。)、La(OH)3粉末(純度99.9%)、BaCO3粉末(純度98.1%、不純物としてSrCO3を1.45%含む。)、Fe2O3粉末(工業用)及びCo3O4粉末(純度99%)を、Ca1-x-yLaxBayFe2n-zCozO19(x=0.475、y=0.050、z=0.30、n=5.2)の組成になるように配合した。この配合物100質量部に対し、0.1質量部のH3BO3粉末を添加して湿式混合し、乾燥後、1473 Kで1時間、大気中で仮焼した。
【0175】
この仮焼体を粗砕後、振動ミルで乾式粗粉砕し、平均粒径5μm(F.S.S.S.による)の粗粉を得た。45質量%の粗粉及び55質量%の水をボールミルに投入して、100質量部の粗粉に対し0.40質量部のSiO2粉末(純度92.1%、残部はほぼ水)及び0.50質量部のCaCO3粉末を焼結助剤として添加し湿式微粉砕を行い、平均粒径が0.9μm(F.S.S.S.による)のフェライト微粒子を含むスラリーを得た。
【0176】
微粉砕後のスラリーを磁場中圧縮成形(印加磁場強度796 kA/m)し、円板状成形体を得た。この成形体を大気中、1493 Kの温度で1時間焼成して異方性フェライト焼結磁石の素材を得た。得られた素材の室温(293K)における磁気特性は、Br=465 mT、HcJ=354 kA/mであった。この素材から縦3 mm×横3 mm×厚さ3 mmのサンプルを切り出し、VSMにより測定した233K〜413Kにおけるβは0.12%/Kという非常に小さな値であった。
【0177】
前記素材を厚み1mmの円板状(厚み方向に異方性が付与されている)に加工し、図11に示す本発明の集中定数型非可逆回路素子用のフェライト焼結磁石207,207とした。このフェライト焼結磁石207,207を組み込んでなる図11の非可逆回路素子を、室温(293K)から233Kに強制冷却し、233Kにおいて所定時間保持後、室温(293K)に戻したところ、フェライト焼結磁石207,207の減磁による当該非可逆回路素子の性能劣化は小さかった。
【0178】
従来例2
従来例1で作製したスラリーにより、以降は実施例17と同様にして円板状(厚み1mm)の非可逆回路素子用フェライト焼結磁石を作製した。この磁石の室温(293K)におけるBr=430 mT,HcJ=320 kA/mであった。βは0.18 %/Kと大きな値であった。
【0179】
得られた前記円板状磁石を、図11に示す非可逆回路素子用の比較材のフェライト焼結磁石207',207'とした。このフェライト焼結磁石207',207'を組み込んでなる図11の非可逆回路素子を、実施例17と同様にして強制冷却し、低温減磁による当該非可逆回路素子の性能劣化を測定したところ、実施例17の場合に比べて約2.3%劣化が大きいことがわかった。
【0180】
実施例17のフェライト焼結磁石(焼結体)の焼結体組成の分析値は表5、6中の実施例13と同一であった。また従来例2のフェライト焼結磁石(焼結体)の焼結体組成の分析値は表5及び表6中の従来例1と同一であった。
【0181】
<仮焼体の組織>
実施例17の仮焼体(x=0.475、y=0.050、z=0.30、n=5.2)の破面は図5に示すSEM写真と同様、六角板状の一次粒子(M型結晶粒)が多数存在しており、M型結晶粒の成長率が高いものであった。
【0182】
実施例17及び従来例2の対比から明らかなように本発明の非可逆回路素子は、図11に示すような、中心導体をガーネットフェライトで挟む構造(いわゆる集中定数型)に好適である。集中定数型であっても図11の構成を採用した場合、使用するフェライト焼結磁石の電気抵抗率がSrフェライト焼結磁石に比べて低いことは実用上問題にならない。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】実施例4の熱処理直後のミルスケールの粗粉を示すSEM写真である。
【図2】実施例4の熱処理したミルスケールの微砕微粉を示すSEM写真である。
【図3】本発明に係る実施例4の仮焼体の破面を示すSEM写真である。
【図4】Baを添加していない比較例2の仮焼体の破面を示すSEM写真である。
【図5】実施例13のフェライト焼結磁石用仮焼体の破面を示すSEM写真である。
【図6】従来例1の仮焼体の破面を示すSEM写真である。
【図7(a)】円筒状磁石を組み込んだマグネットロールを示す縦断面図である。
【図7(b)】図7 (a)のマグネットロールを示す横断面図である。
【図7(c)】従来の磁石と本発明のフェライト焼結磁石とを貼り合わせてなる円筒状磁石を組み込んだマグネットロールを示す横断面図である。
【図8】本発明の第一の非可逆回路素子の一例を示す展開斜視図である。
【図9】本発明の第一の非可逆回路素子の中心導体の一例を示す展開斜視図である。
【図10】本発明の第二の非可逆回路素子の一例を示す展開斜視図である。
【図11】本発明の第三の非可逆回路素子(サーキュレータ)の一例を示す展開斜視図である。
【図12】本発明の第三の非可逆回路素子(サーキュレータ)の一例を示す側面図である。
【図13】本発明の第三の非可逆回路素子(サーキュレータ)の一例を示す等価回路図である。
【図14】本発明の第三の非可逆回路素子(サーキュレータ)の動作を説明するための図である。
【図15】本発明の第三の非可逆回路素子(サーキュレータ)の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0184】
5,12・・・フェライト焼結磁石
8・・・溝
11・・・永久磁石部材
13・・・フェライトボンド磁石
15・・・円筒状磁石体
80,90・・・マグネットロール
81・・・軸(シャフト)
82・・・スリーブ
83・・・エアギャップ(磁気空隙)
21・・・上ケース
22・・・下ケース
31・・・フェライト焼結磁石
32・・・磁性体板
41・・・上ガーネット板
42・・・下ガーネット板
50・・・中心導体
51・・・導体板
53,54,55・・・電極部
56・・・切欠部
57,58,59・・・ポート部
570,580,590・・・孔
61・・・基板
62,63,64・・・パターン電極
77,78,79・・・導体棒
110a・・・上ケース
110b・・・下ケース
120a・・・上鉄板
120b・・・下鉄板
130・・・フェライト焼結磁石
135・・・アース板
140・・・中心導体
150a・・・上ガーネット板
150b・・・下ガーネット板
160・・・金属板
161a,161b,161c・・・突起
180・・・非可逆回路素子
201a,201b・・・フェライト板
202a,202b,202c,202d・・・導線
203a,203b・・・銅板
204・・・トリマコンデンサ
205・・・フェライト体
206・・・ヨーク
207・・・フェライト焼結磁石
210・・・サーキュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を製造する方法であって、原料の混合工程、仮焼工程、粉砕工程、成形工程及び焼成工程を有し、原料の混合工程において配合する酸化鉄原料としてミルスケールの粉末を用いたことを特徴とするフェライト焼結磁石の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフェライト焼結磁石の製造方法において、ミルスケールの粉末粒子は、大気中又は酸素過剰雰囲気中、973〜1273Kにおいて熱処理をしたものであり、酸化鉄(α-Fe2O3又はα-Fe2O3とFe3O4からなる)の含有量が97〜99質量%、Al含有量(Al2O3換算値)が0.2質量%以下、Si含有量(SiO2換算値)が0.03〜0.25質量%、Ca含有量(CaO換算値)が0.03〜0.25質量%及びCr含有量(Cr2O3換算値)が0.05質量%以下であることを特徴とするフェライト焼結磁石の製造方法。
【請求項3】
M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を製造する方法であって、原料の混合工程、仮焼工程、粉砕工程、縦磁場の磁場中圧縮成形工程及び焼成工程を有し、縦磁場の磁場中圧縮成形の圧力を4.9〜39.2 MPaで行うことを特徴とするフェライト焼結磁石の製造方法。
【請求項4】
M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を製造する方法であって、原料の混合工程、仮焼工程、粉砕工程、横磁場の磁場中圧縮成形工程及び焼成工程を有し、横磁場の磁場中圧縮成形の圧力を4.9〜49 MPaで行うことを特徴とするフェライト焼結磁石の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフェライト焼結磁石の製造方法において、前記フェライト焼結磁石が、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCozOα(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比、αはOの含有量を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。ただし、x=zでかつn=6のときの化学量論組成比を示した場合はα=19である。]により表わされる組成を有することを特徴とするフェライト焼結磁石の製造方法。
【請求項6】
M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石であって、
異方性を有し、異方性付与方向の残留磁束密度(Br//)及び異方性付与方向に垂直な方向の残留磁束密度(Br⊥)により、[(Br//)/(Br//+Br⊥)]×100%で定義される配向度が85%以上であることを特徴とするフェライト焼結磁石。
【請求項7】
請求項6に記載のフェライト焼結磁石において、異方性付与方向に沿うM型結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以上であり、293Kにおける残留磁束密度(Br)が460 mT以上及び固有保磁力(HcJ)が278 kA/m以上であり、縦磁場の磁場中圧縮成形体を焼成したものであることを特徴とするフェライト焼結磁石。
【請求項8】
請求項6に記載のフェライト焼結磁石において、異方性付与方向に沿うM型結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以上であり、293Kにおける残留磁束密度(Br)が470 mT以上及び固有保磁力(HcJ)が278 kA/m以上であり、横磁場の磁場中圧縮成形体を焼成したものであることを特徴とするフェライト焼結磁石。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載のフェライト焼結磁石において、表面に被覆層を有することを特徴とするフェライト焼結磁石。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかに記載のフェライト焼結磁石において、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCozOα(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比、αはOの含有量を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。ただし、x=zでかつn=6のときの化学量論組成比を示した場合はα=19である。]により表わされる組成を有することを特徴とするフェライト焼結磁石。
【請求項11】
M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を、少なくとも1つの磁極部に用いたマグネットロールであって、
前記フェライト焼結磁石は異方性を有し、異方性付与方向の残留磁束密度(Br//)及び異方性付与方向に垂直な方向の残留磁束密度(Br⊥)により、[(Br//)/(Br//+Br⊥)]×100%で定義される配向度が85%以上であることを特徴とするマグネットロール。
【請求項12】
請求項11に記載のマグネットロールにおいて、前記フェライト焼結磁石の異方性付与方向に沿うM型結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以上であり、293Kにおける残留磁束密度(Br)が460 mT以上及び固有保磁力(HcJ)が278 kA/m以上であり、押出成形体を焼成したものであることを特徴とするフェライト焼結磁石。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のマグネットロールにおいて、前記フェライト焼結磁石が、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCozOα(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比、αはOの含有量を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。ただし、x=zでかつn=6のときの化学量論組成比を示した場合はα=19である。]により表わされる組成を有することを特徴とするマグネットロール。
【請求項14】
M型フェライト構造を有し、Ca、希土類元素の少なくとも1種であってLaを必須に含むR元素、Ba、Fe及びCoを必須元素とし、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCoz(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。]により表わされる組成を有するフェライト焼結磁石を用いたことを特徴とする非可逆回路素子。
【請求項15】
請求項14に記載の非可逆回路素子において、少なくともガーネット板と、前記ガーネット板に高周波磁界を印加する中心導体と、前記中心導体に直流磁界を印加する前記フェライト焼結磁石とを有し、前記中心導体が導体板及び基板からなり、前記導体板が少なくとも3つのポート部を有し、前記ポート部の少なくとも2つに導体棒を接続したことを特徴とする非可逆回路素子。
【請求項16】
請求項14に記載の非可逆回路素子において、少なくともガーネット板と、前記ガーネット板に高周波磁界を印加する中心導体と、前記中心導体に直流磁界を印加する前記フェライト焼結磁石とを有し、少なくとも3個の突起を有する金属板で前記ガーネット板の外周を係止したことを特徴とする非可逆回路素子。
【請求項17】
請求項14に記載の非可逆回路素子において、フェライトからなる2枚の円板と、前記2枚の円板の間に120°回転対称に挿入された複数の導線からなる3組の信号電極と、前記2枚の円板を挾む2枚の接地電極と、前記2枚の接地電極を挾む2枚のヨークと、前記2枚のヨークを挾む2枚の前記フェライト焼結磁石を備えたことを特徴とする非可逆回路素子。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれかに記載の非可逆回路素子において、前記フェライト焼結磁石は異方性を有し、異方性付与方向に沿うM型結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以上であることを特徴とする非可逆回路素子。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれかに記載の非可逆回路素子において、前記フェライト焼結磁石が、下記一般式:
Ca1-x-yRxBayFe2n-zCozOα(原子比率)
[(1-x-y)、x、y及びzはそれぞれCa、R元素、Ba及びCoの含有量、nはモル比、αはOの含有量を表し、
0.3≦1-x-y≦0.65、
0.2≦x≦0.65、
0.001≦y≦0.2、
0.03≦z≦0.65、
4≦n≦7、
1-x-y>y、及び
1-x-y>x
を満たす数値である。ただし、x=zでかつn=6のときの化学量論組成比を示した場合はα=19である。]により表わされる組成を有することを特徴とする非可逆回路素子。

【図7(a)】
image rotate

【図7(b)】
image rotate

【図7(c)】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−1476(P2009−1476A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84461(P2008−84461)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】