フォトカプラ及びスイッチング電源回路
【課題】 部品実装面積及び周辺部品を小さくでき、出力電圧の誤差及び消費電力を抑制可能なスイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】 スイッチング電源回路1の2次側の出力電圧情報を1次側のスイッチング動作の制御用に光信号を介してフィードバックするためのフォトカプラ2が、スイッチング電源回路1の出力電圧情報に基づいて点滅する光信号を出射する発光素子4と、前記光信号を受光するフォトダイオードで構成された受光素子6、受光素子6の出力信号を増幅する増幅回路7、及び、スイッチング電源回路1のスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路8を、1チップに集積化した受光制御集積回路5とを備えてなり、発光素子4と受光制御集積回路5が、発光素子4から受光素子6へ前記光信号が伝達可能に、1つのパッケージ内に封止されている。
【解決手段】 スイッチング電源回路1の2次側の出力電圧情報を1次側のスイッチング動作の制御用に光信号を介してフィードバックするためのフォトカプラ2が、スイッチング電源回路1の出力電圧情報に基づいて点滅する光信号を出射する発光素子4と、前記光信号を受光するフォトダイオードで構成された受光素子6、受光素子6の出力信号を増幅する増幅回路7、及び、スイッチング電源回路1のスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路8を、1チップに集積化した受光制御集積回路5とを備えてなり、発光素子4と受光制御集積回路5が、発光素子4から受光素子6へ前記光信号が伝達可能に、1つのパッケージ内に封止されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源回路に使用するフォトカプラ、及び、フォトカプラを使用したスイッチング電源回路に関し、より詳細には、ACアダプタやLED照明等に使用される、商用交流電源から直流電圧を生成するスイッチング電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチング電源回路の一例として、下記の非特許文献1〜3に開示されているスイッチング電源がある。図15〜図17に、夫々、非特許文献1〜3に開示されたスイッチング電源の回路図を示す。
【0003】
図15に示すスイッチング電源回路(従来例1)は、高耐圧プロセスで作製されたスイッチング動作制御用ICと受光素子にフォトトランジスタを用いたフォトカプラを組み合わせて構成されている。以下、従来例1の動作を簡単に説明する。
【0004】
1対の直流供給端子HV+、HV−間に、AC電圧を整流、平滑した直流電圧が印加される(AC電圧の整流、平滑回路の図示は省略)。高耐圧プロセスで作られたスイッチング電源用ICであるIC101はD端子とS端子間のオンオフ動作(スイッチング動作)を開始し、トランスT101の1次側(1次巻き線L101)に鋸歯状の電流が流れる。トランスT101の2次側(2次巻き線L201)に交流電圧が発生し、ダイオードD102で整流されて脈流となり、コンデンサC103で平滑されて直流となり、直流出力端子DC+、DC−間に直流の出力電圧が発生する。
【0005】
出力電圧がダイオードD103のツェナー電圧を越えるとフォトカプラの発光ダイオードD104が点灯し、フォトカプラPC101のフォトトランジスタQ101で発光ダイオードD104の発光情報を受光し、出力電圧がツェナー電圧を越えたことが制御用IC101に伝えられる。制御用IC101は、出力電圧がツェナー電圧を越えた情報を受けるとスイッチング動作を停止する。その結果、トランスT101の1次側から2次側への電力伝達が停止するため、直流出力端子DC+、DC−間の出力電圧は低下する。出力電圧がツェナー電圧を下回ると、発光ダイオードD104は消灯し、再び制御用IC101のスイッチング動作が開始される。上記動作を繰り返すことによって、直流出力端子DC+、DC−間の出力電圧は一定に保たれる。
【0006】
尚、ダイオードD101、抵抗R101、コンデンサC101は、スナバ回路を構成し、制御用IC101のD端子とS端子間がオフした瞬間に発生する高電圧をクリップする。
【0007】
図16に示すスイッチング電源回路(従来例2)は、中低耐圧プロセスで作製されたスイッチング動作制御用ICと受光素子にフォトトランジスタを用いたフォトカプラと補助巻き線(3次巻き線)を組み合わせて構成されている。以下、従来例2の動作を簡単に説明する。
【0008】
1対の交流供給端子L、N間にAC電圧が印加されるとダイオードD201で整流されコンデンサC201で平滑されてコンデンサC201の両端子間に直流電圧が発生する。当該直流電圧が抵抗R201を通して制御用IC201の起動用入力端子VINに印加され、制御用IC201が起動し端子GATEに矩形波が発生する。トランジスタQ201は矩形波に合わせてドレインソース間をオンオフし(スイッチング動作)、トランジスタQ201に接続したトランスT201の1次側(1次巻き線L201)に鋸歯状の電流が流れる。一方、トランスT201の2次側(2次巻き線L202)に交流電圧が発生し、ダイオードD204で整流されて脈流となり、コンデンサC206、C207で平滑されて直流となり、直流出力端子VO+、VO−間に直流の出力電圧が発生する。
【0009】
従来例2では、トランスT201は、1次巻き線L201と2次巻き線L202に加えて3次巻き線L203を備え、3次巻き線L203に発生した交流電圧が、ダイオードD203で整流され、コンデンサC203で平滑され、制御用IC201の電源端子VDDに印加されて、制御用IC201への電力供給が行われる。
【0010】
出力電圧が抵抗R210と抵抗R211で分圧され、その分圧値(抵抗R210と抵抗R211の中間電圧)が、電圧検出用IC202の基準電圧を越えるとフォトカプラの発光ダイオードD206が点灯し、フォトカプラPC201のフォトトランジスタQ202で発光ダイオードD206の発光情報を受光し、上記分圧値が電圧検出用IC202の基準電圧を越えたことが制御用IC201に伝えられる。制御用IC201は、上記分圧値が基準電圧を越えた情報を受けるとスイッチング動作を停止する。その結果、トランスT201の1次側から2次側への電力伝達が停止するため、直流出力端子VO+、VO−間の出力電圧は低下する。上記分圧値が基準電圧を下回ると、発光ダイオードD206は消灯し、再び制御用IC201のスイッチング動作が開始される。上記動作を繰り返すことによって、上記分圧値が一定に保たれ、直流出力端子VO+、VO−間の出力電圧は一定に保たれる。
【0011】
尚、ダイオードD202、抵抗R202、コンデンサC202は、スナバ回路を構成し、トランジスタQ201のドレインソース間がオフした瞬間に発生する高電圧をクリップする。
【0012】
図17に示すスイッチング電源回路(従来例3)は、ディスクリート部品と受光素子にフォトトランジスタを用いたフォトカプラと補助巻き線(3次巻き線)を組み合わせて構成されている。以下、従来例3の動作を簡単に説明する。尚、従来例3は、RCC方式(Ringing Choke Converter)として一般に知られており、携帯電話等の充電器に広く用いられているスイッチング電源回路である。
【0013】
直流供給端子+Vinと接地端子V0間に、AC電圧を整流、平滑した直流電圧が印加される(AC電圧の整流、平滑回路の図示は省略)。これを初期状態とする。抵抗Rgを通してトランジスタQ301のベースに電流が流れ込み、トランジスタQ301のコレクタ−エミッタ間に電流が流れ、トランスT301の1次側(1次巻き線L301)に電流が流れ、トランスT301の3次巻き線L303に電圧が発生する。3次巻き線L303に発生した電圧はダイオードD301と抵抗R301を通って更にトランジスタQ301のベースに電流を流し込む。
【0014】
1次巻き線L301に流れる電流は1次巻き線L301のインダクタンス成分により時間とともに直線的に増加し、トランスT301内部の磁束も時間とともに直線的に増加する。3次巻き線L303に発生する電圧(起電力)は磁束の時間的変化に比例するため時間的に一定の電圧が発生する。従ってトランジスタQ301のベース電流は3次巻き線L303からの時間的に一定な電圧と抵抗Rgから流れ込む電流となり時間的に一定である。そのためトランジスタQ301のコレクタ電流はこの一定なベース電流のhfe倍の電流以上は流れない。コレクタ電流が該電流上限値に到達すると1次巻き線L301による電流の時間的変化がなくなるためトランスT301内部の磁束の時間的変化がなくなり3次巻き線L303の起電力もなくなり、トランジスタQ301のベース電流が減少し始め、1次巻き線L301の電流が減少し始める。その結果、トランスT301内部の磁束の時間的変化が上記とは逆に減少し始めるため、3次巻き線L303の起電力は上記とは逆の極性になり、トランジスタQ301のベース電流を減少させる方向に転じ、やがてトランジスタQ301のコレクタ電流はゼロになる。その結果、1次巻き線L301の電流はゼロになり3次巻き線L303の起電力はゼロになり、初期状態に戻る。
【0015】
以上の動作を繰り返すことにより、トランジスタQ301は発振し、コレクタ電流、すなわちトランスT301の1次側電流は増減を繰り返し、トランスT301の2次側の2次巻き線L302に交流電圧が発生する。2次巻き線L302に発生した交流電圧はダイオードD303で整流され、コンデンサC303で平滑され、直流出力端子Voutと接地端子V0の間に直流の出力電圧を発生する。
【0016】
出力電圧が抵抗Raと抵抗Rbで分圧されて電圧検出用IC301に入力される。その分圧値(抵抗Raと抵抗Rbの中間電圧)が、電圧検出用IC301の基準電圧を越えるとフォトカプラの発光ダイオードD304に電流が流れ点灯する。フォトカプラのフォトトランジスタQ303が発光ダイオードD304の発光を受光すると、3次巻き線L303からダイオードD302と抵抗R302を通してトランジスタQ302にベース電流が流れる。その結果、トランジスタQ302のコレクタからエミッタに電流が流れてトランジスタQ301に流れ込むベース電流が減少しトランジスタQ301のコレクタ電流が減少し、トランスT301の1次側電流が減少し、トランスT301の2次側への電力伝達が減少し、直流出力端子Voutと接地端子V0間の出力電圧が低下する。上記分圧値が電圧検出用IC301の基準電圧を下回ると発光ダイオードD304は消灯し、トランジスタQ301は発振を再開するため、直流出力端子Voutと接地端子V0間の出力電圧が上昇する。上記動作を繰り返すことによって、上記分圧値が一定に保たれ、直流出力端子Voutと接地端子V0間の出力電圧が一定に保たれる。
【0017】
【非特許文献1】“TNY274-280, TinySwitch-III Family, Energy Efficient, Offline Switcher with Enhanced Flexibility and Extended Power Range”、図1、[online]、[平成20年5月8日検索]、インターネット<URL:http://www.powerint.com/PDFFiles/tny274-280.pdf>
【非特許文献2】“Product Specification, Highly Integrated Green-Mode PWM Controller SG5841/J”、第1頁の図面、[online]、[平成20年5月8日検索]、インターネット<URL:http://pdf1.alldatasheet.com/datasheet-pdf/view/202762/FAIRCHILD/SG5841.html
【非特許文献3】“トランジスタ技術”、CQ出版、1997年3月号、275頁、図9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来のスイッチング電源回路においては、受光素子がフォトトランジスタのフォトカプラを用いており、1)部品実装面積が大きい、2)周辺部品(トランス、ダイオード、コンデンサ)が大きい、3)出力誤差(リップル)が大きい、4)フォトトランジスタの信号電流が大きく、消費電流が大きい、5)発光ダイオードの駆動電流が大きく、消費電流が大きいという、5つの問題点がある。
【0019】
第1の問題点(部品実装面積が大きい)については、上記3つの従来例(従来例1〜3)の何れにおいても、トランスの2次側の出力電圧情報を1次側の発振回路或いはスイッチング動作制御用ICへフィードバックするためにフォトカプラを用いており、更に、1次側にスイッチング動作制御用ICまたはスイッチング動作制御用のディスクリート部品が搭載されているため、部品実装面積が大きくなっていた。
【0020】
第2の問題点(周辺部品(トランス、ダイオード、コンデンサ)が大きい)については、従来のスイッチング電源回路において、フォトカプラは受光素子にフォトトランジスタ、発光素子に一般的なGaAsの発光ダイオードで構成されており、信号の立ち上がり時間、立下り時間が夫々5μ秒程度であり、実用周波数として100kHz程度であった。この立ち上がり時間、立下り時間は、フォトトランジスタの入力側からみた容量がミラー効果によって信号波形の高周波成分が伝達できないことで決まる。特に、受光感度を上げるためにはフォトトランジスタの利得を上げることになるが、その利得に応じてミラー効果が顕著になり、高周波信号の伝達が困難になる。この信号電圧速度の問題からスイッチング速度は100kHzまでとなり、周辺部品(トランス、ダイオード、コンデンサ)が大きくなっていた。
【0021】
第3の問題点(出力電圧の誤差(リップル)が大きい)については、上記第2の問題点で説明した通り、従来のスイッチング電源回路のスイッチング速度が100kHz程度までであり、リップルが大きかった。当該リップルを減らすべく平滑用のコンデンサ等を大きくすると、出力の変動による電源の追従速度が遅くなるという問題があった。
【0022】
第4の問題点(フォトトランジスタの信号電流が大きく、消費電流が大きい)については、従来のスイッチング電源回路では、フォトカプラの受光素子にフォトトランジスタが用いられているため、十分な受光感度を確保するために、また、ノイズの影響を抑制するために信号電流が1mA程度必要であった。つまり、制御用ICの駆動電圧が10V、出力が無負荷、発光ダイオードが80%のデューティ比で点灯する場合を想定すると、フォトトランジスタのコレクタに平均電流0.8mAが流れ、受光素子で8mWの損失が発生していた。
【0023】
第5の問題点(発光ダイオードの駆動電流が大きく、消費電流が大きい)については、従来のスイッチング電源回路では、フォトカプラの受光素子にフォトトランジスタが用いられており、発光ダイオードの駆動電流は10mA程度が必要であった。つまり、スイッチング電源回路の出力電圧が5V、出力が無負荷で、発光ダイオードが80%のデューティ比で点灯する場合を想定すると、発光ダイオードに平均電流8mAが流れ、発光ダイオードで40mWの損失が発生することになる。携帯電話の充電器等、常にコンセントに接続されている製品においては、無負荷時の消費電力は50〜100mWという市場の要望があり、発光ダイオードだけで40mWの損失が発生する従来のスイッチング電源回路では当該市場の要望を満たすことが困難であった。
【0024】
更に、上記5つの問題点に加えて6番目の問題点として、上記従来例1のスイッチング電源回路では、高耐圧プロセスで作製されたスイッチング動作制御用ICを使用するため、当該制御用ICの製造コストが高くなり、スイッチング電源回路全体のコスト高騰の要因となっていた。
【0025】
本発明は、上記従来のスイッチング電源回路における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品実装面積及び周辺部品を小さくでき、出力電圧の誤差及び消費電力を抑制可能なフォトカプラ及びスイッチング電源回路を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するための本発明に係るフォトカプラは、スイッチング電源回路の2次側の出力電圧情報を1次側のスイッチング動作の制御用に光信号を介してフィードバックするためのフォトカプラであって、前記スイッチング電源回路の前記出力電圧情報に基づいて点滅する光信号を出射する発光素子と、前記発光素子から出射された前記光信号を受光するフォトダイオードで構成された受光素子、前記受光素子の出力信号を増幅する増幅回路、及び、前記スイッチング電源回路の前記スイッチング動作を制御するスイッチング制御回路を、1つのチップに集積して構成された受光制御集積回路と、を備えてなり、前記受光制御集積回路が、直流電源電圧が供給される1対の電源供給端子と、前記スイッチング動作を制御するためのスイッチング制御信号を出力する出力端子を備え、前記発光素子と前記受光制御集積回路が、前記発光素子から前記受光素子へ前記光信号が伝達可能に、1つのパッケージ内に封止されていることを第1の特徴とする。
【0027】
上記第1の特徴のフォトカプラによれば、発光素子と受光素子からなるフォトカプラ部と、受光素子の出力信号を増幅する増幅回路、及び、スイッチング電源回路のスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路が、1つのパッケージに封止され一体化されているため、スイッチング電源回路を構成する部品点数が削減され、部品実装面積の縮小化が図れ、上記従来のスイッチング制御回路の第1の問題点が解消される。ここで、受光素子と増幅回路とスイッチング制御回路を1チップ化することで、パッケージサイズを小型化して、1つのパッケージに上記素子及び回路を封止することが実現可能となる。尚、部品実装面積の縮小化は、上記従来例1、2と比較すると、上記従来例1、2で使用されている制御用ICのパッケージ面積の約55〜65mm2が削減可能であり、上記従来例3と比較すると、ディスクリート部品の削減により、約100〜150mm2が削減可能である。
【0028】
更に、受光素子としてフォトダイオードを使用することで、従来のフォトトランジスタを受光素子として使用する場合と比較して、受光素子側での信号の立ち上がり及び立ち下がり時間を短くでき、スイッチング動作の高速化が可能となることから、スイッチング電源回路を構成する場合のトランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品の小型化が図れる。例えば、受光素子側での信号の立ち上がり及び立ち下がり時間を3n秒程度に短くでき、発光素子と組み合わせたフォトカプラ部で夫々0.7μ秒にまで短縮できるので、従来のフォトトランジスタを受光素子として使用する場合では、実用周波数が100kHzであったところを、7倍の700kHzまで高速化でき、トランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品が7分の1程度に小型化される。更に、トランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品が小型化されることで、スイッチング電源回路の2次側での出力の電圧変動に対する追従速度が速くなり、当該電圧変動をより効果的に抑制することが可能となる。以上より、上記従来のスイッチング制御回路の第2及び第3の問題点が解消される。特に、スイッチング電源回路を通信機器や音響機器に使用する場合は、誤動作やノイズの発生を抑制するために、電源電圧のリップルを低減し、ノイズが信号に混入するのを防止することが重要であるため、上記電圧変動抑制効果は上記用途においてより好適である。
【0029】
また、受光素子としてフォトダイオードを使用することで、低電流駆動が可能となり、従来のフォトトランジスタを受光素子として使用する場合と比較して受光素子での電力損失を大幅に抑制でき、低消費電力化が図れる。更に、受光素子としてフォトダイオードを使用し、その後段に受光素子の出力信号を増幅する増幅回路を設けて1チップ化しているため、従来のフォトトランジスタと比べて受光素子の受光感度が大幅に改善されるため、発光素子側の駆動電流を低減でき、低消費電力化が図れる。例えば、受光素子の後段の増幅回路として電圧利得が10000倍程度を想定した場合、受光素子に流れる電流が10μA程度となるため、増幅回路と合わせた消費電流を0.1mA程度に低減でき、無負荷時の受光素子周辺の消費電力を0.5mW程度に抑制でき、50〜100mWという市場の要望を満足できるようになる。以上より、上記従来のスイッチング制御回路の第4及び第5の問題点が解消される。
【0030】
本発明に係るフォトカプラは、上記第1の特徴に加えて、更に、前記受光制御集積回路が、前記1つのチップ内において、前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子間を流れる電源電流を制御する電流制御トランジスタを、前記1対の電源供給端子間に備え、前記1対の電源供給端子の端子間電圧が所定の電圧範囲内となるように前記電流制御トランジスタを流れる電流を制御する電流制御回路を更に備えることを第2の特徴とする。
【0031】
上記第2の特徴のフォトカプラによれば、受光制御集積回路の電流制御トランジスタと電流制御回路を除く部分の消費電流の変動が大きく、スイッチング電源回路の1次側に入力される高電圧の直流電圧を高抵抗素子等で降圧して受光制御集積回路の電源電圧として供給する場合であっても、高抵抗素子等で降圧される電圧の変動が抑制される、結果として受光制御集積回路の電源電圧の変動が抑制されるため、1チップ化された受光制御集積回路を、低中耐圧プロセスで作製可能となり、製造コストの低減が図れる。従って、上記従来のスイッチング制御回路の第6の問題点が解消される。
【0032】
更に、上記第2の特徴のフォトカプラによれば、1チップ化された受光制御集積回路を、低中耐圧プロセスで作製し、スイッチング電源回路の1次側に入力される高電圧の直流電圧を高抵抗素子等で降圧して受光制御集積回路の電源電圧として供給できるため、上記従来例2、3のようにトランスの3次巻き線による電源供給が不要となり、トランスの3次巻き線及びその整流平滑用のコンデンサ及びダイオード等の周辺部品が不要となる。
【0033】
尚、上記第2の特徴は、スイッチング電源回路の1次側に入力される直流電圧が、受光制御集積回路の耐圧に対して高いほど、また、受光制御集積回路の消費電流の変動が大きいほど、その効果がより十分に発揮される。
【0034】
本発明に係るフォトカプラは、上記第1または第2の特徴に加えて、更に、前記受光制御集積回路が、前記スイッチング制御回路の前記スイッチング制御信号を出力する出力駆動回路部と、前記受光素子と前記増幅回路からなる受光回路部が、前記1つのチップ内において、相互に離間して対向する2辺に分散配置され、前記両回路部の間に、前記両回路部以外の回路が配置されていることを第3の特徴とする。
【0035】
上記第3の特徴のフォトカプラによれば、受光素子としてフォトダイオードを使用しているため、従来のフォトトランジスタを使用する場合と比較してバイアス電流が小さいためノイズの影響を受け易くなっているが、受光制御集積回路内で大きなノイズを発生し易い出力駆動回路部とノイズの影響を受け易い受光回路部とを離間して配置することで、受光回路部がノイズの影響を受け難くなり、スイッチング動作の制御の安定化が図れる。
【0036】
本発明に係るフォトカプラは、上記何れかの特徴に加えて、更に、前記受光素子が、前記光信号を受光する第1受光素子と、前記光信号を受光しないように受光部が遮蔽された前記第1受光素子と暗電流特性が同じ第2受光素子の2つの受光素子で構成され、前記増幅回路が、前記第1受光素子の出力信号を増幅する第1増幅回路と、前記第2受光素子の出力信号を増幅する前記第1増幅回路と同じ回路構成の第2増幅回路と、前記第1増幅回路の出力と前記第2増幅回路の出力を差動増幅する差動増幅回路を備えて構成されていることを第4の特徴とする。
【0037】
上記第4の特徴のフォトカプラによれば、光信号を受光していないときの第1受光素子の暗電流が大きい場合であっても、第1受光素子の暗電流との差分によって光信号の検出を行うため、受光感度が向上し、発光素子の駆動電流をより低減でき低消費電流化が図れるとともに、差動増幅回路を使用しているため、第1受光素子と第1増幅回路、及び、第2受光素子と第2増幅回路の2系統に対して同相ノイズが重畳しても差動増幅回路で当該同相ノイズがキャンセルされるため、受光素子及び増幅回路の耐ノイズ性が向上する。この結果、受光素子としてフォトダイオードを使用しているため、従来のフォトトランジスタを使用する場合と比較してノイズの影響を受け易くなっているが、受光制御集積回路内で発生するノイズ或いは受光制御集積回路内に侵入するノイズに対する耐性が向上する。
【0038】
本発明に係るフォトカプラは、上記何れかの特徴に加えて、更に、前記受光制御集積回路が、チップ表面を覆うメタルシールド膜を備え、前記受光素子に前記光信号が入射可能に前記メタルシールド膜の一部が開口していることを第5の特徴とする。
【0039】
上記第5の特徴のフォトカプラによれば、受光素子としてフォトダイオードを使用しているため、従来のフォトトランジスタを使用する場合と比較して、受光制御集積回路のチップ表面の帯電に対する耐性が低く受光素子が当該帯電によって極性反転して誤動作する可能性があるところ、光信号が入射する受光部を除いてチップ表面がメタルシールド膜で覆われているため、当該帯電による影響を大幅に軽減することができ、受光素子の誤動作を排除できる。従って、スイッチング電源回路の1次側回路と2次側回路間に通常より高電圧が印加される可能性のある用途に使用され、1次−2次回路間の強化絶縁が必要とされる場合等で、例えば、商用交流電源と接続する場合に落雷等の影響で、1次−2次回路間に高電圧が印加される状況となっても、受光制御集積回路の受光素子が誤動作して、不適切なスイッチング動作制御に陥るのを回避できる。
【0040】
本発明に係るフォトカプラは、上記何れかの特徴に加えて、更に、前記発光素子を戴置し、前記発光素子の入力端子とワイヤーボンディングにより電気的に接続するリード端子を備える第1リードフレームと、前記受光制御集積回路を戴置し、前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子及び前記出力端子とワイヤーボンディングにより電気的に接続するリード端子を備える第2リードフレームが、前記1つのパッケージ内において夫々のチップ載置面が厚み方向に離間して設けられていることを第6の特徴とする。
【0041】
上記第6の特徴のフォトカプラによれば、発光素子と受光制御集積回路が、発光素子の光信号の出射する発光部と受光素子に光信号が入射する受光部が対向するように、1つのパッケージ内に封止でき、しかも、発光素子と受光制御集積回路がパッケージの厚み方向に重ねて収容されるため、パッケージを小型化できる。
【0042】
本発明に係るフォトカプラは、上記第6の特徴に加えて、更に、前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレーム側の前記受光制御集積回路の前記受光素子が、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを第7の特徴とする。
【0043】
上記第7の特徴のフォトカプラによれば、スイッチング電源回路の1次側回路と2次側回路間に通常より高電圧が印加されても、2次側回路に存在する発光素子のワイヤーボンディングと、1次側回路に存在する受光素子が近接するのを回避できるため、上記高電圧印加による強電界の影響を受光素子が直接受けないようにできる。
【0044】
本発明に係るフォトカプラは、上記第6の特徴に加えて、更に、前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレーム側の前記受光制御集積回路が、前記厚み方向に対向しないように、且つ、前記第2リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第1リードフレーム側の前記発光素子が、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを第8の特徴とする。
【0045】
本発明に係るフォトカプラは、上記第6の特徴に加えて、更に、前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレームが、前記厚み方向に対向しないように、且つ、前記第2リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第1リードフレームが、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを第9の特徴とする。
【0046】
上記第8または第9の特徴のフォトカプラによれば、上記第7の特徴のフォトカプラと同様に、スイッチング電源回路の1次側回路と2次側回路間に通常より高電圧が印加されても、上記高電圧印加による強電界の影響を受光素子が直接受けないようにできる。
【0047】
本発明に係るフォトカプラは、上記第1乃至第9の何れかの特徴に加えて、更に、前記発光素子が、GaAlAs化合物半導体からなる発光ダイオードで構成されていることを第10の特徴とする。
【0048】
上記第10の特徴のフォトカプラによれば、更に、発光素子側での信号の立ち上がり及び立ち下がり時間を短くでき、スイッチング動作の高速化が可能となることから、スイッチング電源回路を構成する場合のトランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品の更なる小型化が図れる。例えば、発光素子と受光素子のフォトカプラ部での信号の立ち上がり及び立ち下がり時間を夫々0.1μ秒にまで短縮できるので、実用周波数を5MHz程度まで高速化できる。これにより、スイッチング電源回路の小型化の阻害要因となっていたトランスの小型化が一層図れるため、携帯用機器用の充電器の小型化が可能となる。
【0049】
本発明に係るフォトカプラは、上記第1乃至第10の何れかの特徴に加えて、更に、前記発光素子と前記受光素子間の前記光信号が伝達する空間を含む前記1つのパッケージの樹脂封止部の内側部分が、前記受光素子の感度波長範囲の光を透過する透明樹脂で構成され、前記内側部分を囲む前記樹脂封止部の外側部分が、前記受光素子の感度波長範囲の光を透過しない不透明樹脂で構成されていることを第11の特徴とする。
【0050】
上記第11の特徴のフォトカプラによれば、前記発光素子と前記受光制御集積回路を、封止樹脂によって相互に電気的に絶縁して、発光素子から受光素子へ光信号が伝達可能に、1つのパッケージ内に封止でき、且つ、パッケージ外部からの不要な光が受光素子に入射するのを遮断できる。
【0051】
上記目的を達成するための本発明に係るスイッチング電源回路は、上記何れかの特徴のフォトカプラと、1次巻き線と2次巻き線を有するトランスと、前記1次巻き線の一方端に入力する直流電圧を降圧して、前記フォトカプラの前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の一方側に入力する降圧素子と、前記1次巻き線の他方端と前記フォトカプラの前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側の間に設けられ、前記受光制御集積回路の前記出力端子から出力される前記スイッチング制御信号によってオンオフが制御されるスイッチング動作用トランジスタと、前記2次巻き線の両端間に設けられた整流平滑回路と、前記整流平滑回路の出力電圧を検出し、前記出力電圧情報として前記発光素子に入力する電圧検出素子または電圧検出回路と、を備えて構成されることを第1の特徴とする。
【0052】
本発明に係るスイッチング電源回路は、上記第1の特徴に加えて、更に、前記降圧素子が、抵抗素子、ゲートが前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側に接続するデプレッション型FET、及び、ベースまたはゲートに前記1次巻き線の一方端と前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側との間の中間電圧が供給されるトランジスタの少なくとも何れか1つを備えて構成されることを第2の特徴とする。
【0053】
上記第1または第2の特徴のスイッチング電源回路によれば、上記第1の特徴のフォトカプラの作用効果を奏することができ、スイッチング電源回路を構成する部品点数が削減され、部品実装面積の縮小化が図れ、スイッチング動作の高速化が可能となることから、スイッチング電源回路を構成するトランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品の小型化が図れ、受光素子としてフォトダイオードを使用することで、低電流駆動が可能となり、従来のフォトトランジスタを受光素子として使用する場合と比較して受光素子での電力損失を大幅に抑制でき、低消費電力化が図れ、受光素子としてフォトダイオードを使用し、その後段に受光素子の出力信号を増幅する増幅回路を設けて1チップ化しているため、従来のフォトトランジスタと比べて受光素子の受光感度が大幅に改善されるため、発光素子側の駆動電流を低減でき、低消費電力化が図れ、結果として、上記従来のスイッチング制御回路の第1乃至第5の問題点が全て解消される。
【0054】
特に、上記第2の特徴のフォトカプラを使用する場合は、受光制御集積回路の電流制御トランジスタと電流制御回路を除く部分の消費電流の変動が大きく、スイッチング電源回路の1次側に入力される高電圧の直流電圧を高抵抗素子等で降圧して受光制御集積回路の電源電圧として供給する場合であっても、1チップ化された受光制御集積回路を、低中耐圧プロセスで作製可能となり、製造コストの低減が図れる。更に、1チップ化された受光制御集積回路を、低中耐圧プロセスで作製し、スイッチング電源回路の1次側に入力される高電圧の直流電圧を高抵抗素子等で降圧して受光制御集積回路の電源電圧として供給できるため、上記従来例2、3のようにトランスの3次巻き線による電源供給が不要となり、トランスの3次巻き線及びその整流平滑用のコンデンサ及びダイオード等の周辺部品が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
次に、本発明に係るフォトカプラ、及び、当該フォトカプラを使用したスイッチング電源回路の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0056】
〈第1実施形態〉
本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源回路1は、図1に示すように、1つのパッケージ内に封止されたフォトカプラ2と、1次巻き線L1と2次巻き線L2からなるトランス3と、1次巻き線L1の一方端に入力する直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する抵抗R1と、1次巻き線L1に流れる電流のスイッチング動作を行うトランジスタQ1と、2次巻き線L2の一方端にアノードが接続するダイオードD1と、ダイオードD1のカソードと2次巻き線L2の他方端の間に接続するコンデンサC1と、コンデンサC1の両端に出力される直流出力電圧Voutを検出するツェナーダイオードD2を備えて構成される。スイッチング電源回路1を構成する部品は、フォトカプラ2、抵抗R1、トランジスタQ1、トランス3、ダイオードD1、コンデンサC1、ツェナーダイオードD2の合計7点である。
【0057】
尚、スイッチング電源回路1をAC/DCアダプタとして構成するには、更に、全波整流用のダイオードブリッジ回路及び平滑用のコンデンサを、1次巻き線L1の前段に設ける必要があるが、スイッチング電源回路1は、AC/DCアダプタとしての用途に限定されず、直流電源から出力される直流電圧に対するDC/DCコンバータとしても利用できるので、ダイオードブリッジ回路及び平滑用のコンデンサの図示は敢えて省略している。スイッチング電源回路1を商用交流電源用のAC/DCアダプタとして構成する場合は、直流入力電圧Vinは、交流電圧が100Vの国内仕様では、約141Vとなる。尚、商用交流電源以外の交流電源(例えば、車載用の交流電源)では、交流電圧が100Vより低電圧となり、直流入力電圧Vinも低電圧となる。
【0058】
フォトカプラ2は、発光ダイオードで構成される発光素子4と受光制御集積回路5の2チップを1つのパッケージ内に封止して構成される。また、受光制御集積回路5は、フォトダイオードで構成された受光素子6、受光素子6の電流調整抵抗R2、電流調整抵抗R2と受光素子6からなる受光回路の出力信号を増幅する増幅回路7、スイッチング動作用のトランジスタQ1のオンオフを制御するスイッチング制御回路8、電流制御トランジスタQ2、及び、電流制御トランジスタを流れる電流を制御する電流制御回路9を、1つのチップに集積化して構成される。
【0059】
スイッチング制御回路8は、発振回路10、増幅回路7の出力に基づいて発振回路10の発振を制御する発振制御回路11、及び、発振制御回路11から出力されるスイッチング制御信号を駆動して、トランジスタQ1のゲートに出力する出力駆動回路12で構成される。尚、発振制御回路11は、論理回路等により周知の回路構成を用いて実現可能であるため、スイッチング制御回路8の回路構成の詳細については説明を省略する。
【0060】
電流制御トランジスタQ2は、受光制御集積回路5の瞬時的な消費電流を制御するためのトランジスタで、受光制御集積回路5の1対の電源供給端子(VDD、VSS)間に設けられ、増幅回路7、スイッチング制御回路8、電流制御回路9で消費される総電流の変動を打ち消すように、電流量が制御される。本実施形態では、直流入力電圧Vinと電源供給端子VDDの間に高圧用の抵抗R1が介装されているので、受光制御集積回路5の消費電流の変動は、電源供給端子VDDにおける電圧変動として現れるため、電流制御回路9が電源供給端子VDDの電圧が一定範囲内に収まるように、電流制御トランジスタQ2のゲート電圧を制御して電流量を調整する。具体的には、受光制御集積回路5の耐圧以下で、動作電圧範囲内となるように、電源供給端子VDDの電圧が高いほど電流制御トランジスタQ2の電流量を増加させる制御が行われる。この結果、受光制御集積回路5の動作状態に拘わらず、受光制御集積回路5の消費電流の変動が抑制されて、電源供給端子VDDの電圧が一定範囲内に抑制される。この結果、本実施形態では、受光制御集積回路5は、耐圧20V程度の中低耐圧の半導体製造プロセスで作製することができる。尚、電流制御回路9は、例えば、電源供給端子VDDの電圧と、所定の基準電圧との差分値に基づいて、電流制御トランジスタQ2のゲートに印加される電圧値をフィードバック制御する周知の回路構成を利用して実現できるので、回路構成の詳細な説明は省略する。
【0061】
次に、抵抗R1の設定例について説明する。フォトダイオードで構成された受光素子6を使用する受光制御集積回路5の消費電流は、電流制御トランジスタQ2の消費電流を除き、100kHz動作時において0.5〜1mA程度にすることが可能である。スイッチング動作用トランジスタQ1に、例えば、東芝製2SK2998を用いた場合、ゲート容量は75pF、オン時のゲート電圧は10V程度必要であり、100kHzでスイッチング動作する場合、ゲート容量の充放電電流は75μAとなる。従って、受光制御集積回路5の電流制御トランジスタQ2を除いた消費電流は0.575〜1.075mAとなる。電流制御トランジスタQ2はマージンを考慮して、0.125〜0.525mAの変動範囲で、上記消費電流の変動を相殺するように制御されるとすると、受光制御集積回路5の総消費電流、即ち、抵抗R1に流れる電流は、1.1mAの一定値となる。スイッチング電源回路1の直流入力電圧Vinを141V、受光制御集積回路5の電源供給端子VDDへの印加電圧を15Vと想定すると、抵抗R1の抵抗値は、(141V−15V)/1.1mA=114.5kΩとなる。尚、受光制御集積回路5の総消費電流は必ずしも一定値に制御されなくても良く、総消費電流の変動による電源供給端子VDDへの印加電圧の変動範囲が、受光制御集積回路5の耐圧以下で、動作電圧下限以上であれば問題ない。
【0062】
次に、スイッチング電源回路1の動作について説明する。スイッチング電源回路1に直流入力電圧Vinが印加されると、抵抗R1を介して受光制御集積回路5の電源供給端子VDDに電源電圧が印加され、受光制御集積回路5が動作を開始して、電源供給端子VDDに電源電圧が一定に維持されるとともに、スイッチング制御回路8の発振回路10が発振動作を開始する。その発振信号は、発振制御回路11でデューティ比が制御され、スイッチング制御信号として、出力駆動回路12で適正な振幅レベルに変換された後、スイッチング動作用トランジスタQ1のゲートに入力される。一方、直流入力電圧Vinが、1次巻き線L1を介してトランジスタQ1のドレインに印加されており、トランジスタQ1はゲートに入力されたスイッチング制御信号によりオンオフを繰り返すスイッチング動作を行う。この結果、1次巻き線L1に断続的に電流が流れ、2次巻き線L2の両端に交流電圧が発生し、当該交流電圧が、ダイオードD1で整流され、コンデンサC1で平滑化されて1対の出力端子OUT+、OUT−から直流の出力電圧Voutが出力される。
【0063】
出力端子OUT+、OUT−間には、ツェナーダイオードD2が逆バイアスに接続されており、出力電圧VoutがツェナーダイオードD2の降伏電圧を超えるとツェナーダイオードD2に電流が流れ、発光素子4が点灯して、出力電圧VoutがツェナーダイオードD2の降伏電圧を超えたことを示す光信号を出力する。受光素子6がその光信号を受光すると、その信号が電気信号に変換され増幅回路7で増幅され、発振制御回路11に入力される。発振制御回路11は、増幅回路7の出力に基づいて、トランジスタQ1がオフするようにスイッチング制御信号を制御するため、スイッチング動作が停止し、1次巻き線L1に電流が流れなくなるので、2次巻き線L2の両端に交流電圧が発生しなくなる。この結果、出力電圧Voutが低下して、ツェナーダイオードD2に電流が流れなくなるため、発光素子4が消灯し、発振制御回路11は再びスイッチング制御信号を出力駆動回路12からトランジスタQ1のゲートに出力し、トランジスタQ1は再びスイッチング動作を開始する。上記動作を繰り返すことで、出力端子OUT+、OUT−間の出力電圧が一定に保たれる。尚、上記動作において、ツェナーダイオードD2は、出力電圧Voutに対する電圧検出素子として機能しているが、出力電圧Voutの検出は、ツェナーダイオードD2のような単体の電圧検出素子に代えて、例えば、図16及び図17に例示した従来例2及び3の回路構成のように、出力電圧Voutの分圧値を電圧検出用ICを用いて検出するようにしても良い。
【0064】
次に、フォトカプラ2の構造について説明する。図2は、フォトカプラ2を構成する発光素子4と受光制御集積回路5を2種類の樹脂で封止したパッケージの断面構造を模式的に示す断面図である。
【0065】
図2に示すように、発光素子4は、第1リードフレーム21に戴置され、発光素子4のアノード電極AEとカソード電極CEは夫々、ボンディングワイヤー22によって第1リードフレーム21の対応する各リード端子AE、CEに電気的に接続し、受光制御集積回路5は、第2リードフレーム23に戴置され、受光制御集積回路5の電源供給端子VDD、VSS及びスイッチング制御信号を出力する出力端子SCは夫々、ボンディングワイヤー24によって第2リードフレーム23の対応する各リード端子VDD、VSS、SCに電気的に接続している。
【0066】
第1リードフレーム21と第2リードフレーム23は、夫々のチップ載置面がパッケージ内部において厚み方向に離間して設けられ、発光素子4と受光制御集積回路5は、当該厚み方向に対向して位置しており、発光素子4から出力される光信号を、受光制御集積回路5の受光素子6が受光可能な位置に夫々配置されている。
【0067】
図2に示すように、発光素子4と受光制御集積回路5間の光信号が伝達する空間を含むパッケージの樹脂封止部の内側部分が、受光素子6の感度波長範囲の光を透過する透明エポキシ樹脂25で構成され、該内側部分を囲む樹脂封止部の外側部分が、受光素子6の感度波長範囲の光を透過しない不透明な黒色エポキシ樹脂26で構成されている。尚、受光素子5の感度波長範囲は、受光素子6を構成するフォトダイオードの半導体材料のバンドギャップエネルギによって規定され、発光素子4の発光波長は、受光素子6の感度波長範囲に適合するように、発光素子4を構成する半導体材料のバンドギャップエネルギが設定される。尚、半導体材料のバンドギャップエネルギは、GaAlAs等の3元化合物半導体の場合には、GaAlAsの組成比によって決定される。
【0068】
図3に、受光制御集積回路5内の受光素子6の断面構造を模式的に示す。図3に示すように、受光制御集積回路5は、P型基板上に形成されており、受光素子6のP+、N+、Nの各不純物拡散領域は、一般的な半導体製造工程のイオン注入で形成される。受光制御集積回路5のメタル配線層を用いて、N型不純物拡散領域と接続したカソード電極27に、受光制御集積回路5の電源から抵抗または定電流回路を通して正電位を、P型不純物拡散領域と接続したアノード電極28に接地電位を夫々供給し、逆バイアス状態にしておくと、発光素子4からの光信号が、カソード電極27及びアノード電極28の上部に形成された保護絶縁膜29の開口部と、反射防止膜30を介して、PN接合部に到達すると、カソード電極27からアノード電極28に電流が流れて、カソード電極27の電位が変化する。カソード電極27と増幅回路7の入力を受光制御集積回路5のメタル配線層を用いて接続することにより、カソード電極27の電位変化が、増幅回路7で増幅され検出される。尚、保護絶縁膜29の開口部からPN接合部に至る光信号の入射経路が受光部に相当する。
【0069】
次に、受光制御集積回路5のチップレイアウトについて、図4を参照して説明する。上述の如く、スイッチング電源回路1を商用交流電源用のAC/DCアダプタとして構成する場合は、直流入力電圧Vinは約141Vとなるため、トランジスタQ1のスイッチング動作によって大きなノイズが発生する。当該ノイズは、トランジスタQ1のゲート−ドレイン間容量を経由してゲートに現れ、スイッチング制御回路8の出力駆動回路12に伝達する。受光素子としてフォトトランジスタを用いた従来のフォトカプラでは、受光素子の信号電流が大きいため(1mA程度)、ノイズ耐性が高く誤動作し難かったが、本実施形態では、受光素子6にフォトダイオードを使用しているため、信号電流が小さく(10μA程度)、ノイズの影響を受け易くなり誤動作し易くなる。そこで、本実施形態では、受光素子6の実質的なノイズ耐性を向上させるべく、受光素子6と電流調整抵抗R2と増幅回路7からなる受光回路部と、出力駆動回路12とをチップ内において、相互に離間して対向する2辺に分散配置して、出力駆動回路12に伝達するノイズが、受光回路部に侵入し難いチップレイアウトとしている。尚、その他の電流制御トランジスタQ2、電流制御回路9、発振回路10、及び、発振制御回路11は、出力駆動回路12と受光回路部の間のチップ中央部に配置している。
【0070】
図4に示す受光制御集積回路5のチップレイアウトでは、増幅回路7から発振制御回路11及び発振回路10への信号の流れを重視した回路配置となっているが、図5に示すように、出力駆動回路12と受光回路部の間に、低インピーダンスの電流制御トランジスタQ2や電流制御回路9を配置して、両回路を分離することで、受光回路部へのノイズの侵入を更に抑制することができる。
【0071】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源回路1について説明する。第2実施形態に係るスイッチング電源回路1は、フォトカプラ2を構成する受光制御集積回路5の回路構成が、第1実施形態と異なる。フォトカプラ2の構成及びパッケージ構造、及び、スイッチング電源回路1のフォトカプラ2を用いた回路構成は、第1実施形態と同じであり、重複する説明は割愛する。以下、第2実施形態に係る受光制御集積回路5の回路構成について、図6を参照して説明する。
【0072】
本実施形態では、受光制御集積回路5は、1対のフォトダイオードで構成された受光素子6、6a(第1受光素子6と第2受光素子6a)、受光素子6、6aの電流調整抵抗R2、R3(第1電流調整抵抗R2と第2電流調整抵抗R3)、第1電流調整抵抗R2と第1受光素子6からなる第1受光回路の出力信号を増幅する第1増幅回路7、第2電流調整抵抗R3と第2受光素子6aからなる第2受光回路の出力信号を増幅する第2増幅回路7a、第1増幅回路7と第2増幅回路7aの出力信号を差動増幅する差動増幅回路7b、スイッチング動作用のトランジスタQ1のオンオフを制御するスイッチング制御回路8、電流制御トランジスタQ2、及び、電流制御トランジスタを流れる電流を制御する電流制御回路9を、1つのチップに集積化して構成される。従って、受光素子と負荷回路と増幅回路からなる受光回路部の構成が、第1実施形態と異なる。しかし、スイッチング制御回路8、電流制御トランジスタQ2、及び、電流制御回路9の回路構成は、第1実施形態と同じである。但し、第1実施形態とは異なり、スイッチング制御回路8の発振制御回路11は、増幅回路7の出力ではなく、差動増幅回路7bの出力に基づいて発振回路10の発振を制御する。
【0073】
1対の受光素子6、6aは、同じ受光特性を備える同じフォトダイオードで構成されるが、一方の第1受光素子6だけが、第1実施形態の受光制御集積回路5の受光素子6と同様に、発光素子4から出力される光信号を受光可能に、図3に例示したPN接合部の上部が保護絶縁膜29に覆われずに開口しており、他方の第2受光素子6aは、発光素子4から出力される光信号を受光しないように、PN接合部の上部がメタル層等によって遮蔽されている。尚、第2受光素子6aは、発光素子4から出力される光信号を受光しないので、1対の受光素子6、6aは、少なくとも光を受光していないときの暗電流特性が同じであれば良い。
【0074】
受光制御集積回路5の上記回路構成によって、発光素子4から光信号が出力されると、第1受光素子6がその光信号を受光して電気信号に変換され、第1増幅回路7で増幅される。一方、第2受光素子6aは、遮光されており光信号を受光することなく、第1受光素子6が光信号を受光していないときの電気信号と同じ信号が出力され、第2増幅回路7aで増幅される。差動増幅回路7bは、第1増幅回路7と第2増幅回路7aの両出力信号を差動入力として受け付けて、その差分を増幅する。従って、発光素子4からの光信号が微弱であっても差動増幅回路7bでは、高感度に光信号を検出することができる。この結果、発光素子4の駆動電流をより低減でき低消費電流化が図れるとともに、差動増幅回路7bを使用しているため、第1受光回路と第2受光回路の2系統に対して同相ノイズが重畳しても差動増幅回路7bで当該同相ノイズがキャンセルされるため、受光素子及び増幅回路の耐ノイズ性が向上する。
【0075】
〈第3実施形態〉
次に、本発明の第3実施形態に係るスイッチング電源回路1について説明する。第3実施形態に係るスイッチング電源回路1は、第1実施形態及び第2実施形態からの変形例で、フォトカプラ2を構成する受光制御集積回路5の素子構造が、第1実施形態及び第2実施形態と異なる。フォトカプラ2の構成及びパッケージ構造、受光制御集積回路5の回路構成、及び、スイッチング電源回路1のフォトカプラ2を用いた回路構成は、第1実施形態または第2実施形態と同じであり、重複する説明は割愛する。以下、第3実施形態に係る受光制御集積回路5の素子構造について、図7を参照して説明する。図7は、第3実施形態における受光制御集積回路5内の受光素子6の断面構造を模式的に示す断面図である。
【0076】
スイッチング電源回路の1次側回路と2次側回路間に通常より高電圧が印加される可能性のある用途に使用され、1次−2次回路間の強化絶縁が要求される場合があり、本実施形態では、当該要求に合わせて、フォトカプラ2の1次−2次回路間、つまり、発光素子4と受光制御集積回路5間の絶縁耐圧を強化している。具体的には、発光素子4側と受光制御集積回路5側に高電圧が印加されると、発光素子4と受光制御集積回路5間に強電界が発生し、受光制御集積回路5の表面が帯電して、極性反転が生じて、受光制御集積回路5の受光素子6が誤動作する可能性があるので、当該誤動作を防止するために、図7に示すように、受光制御集積回路5の表層の保護絶縁膜29の表面に当該帯電を防止するためのメタルシールド膜31を設けている。尚、メタルシールド膜31は、保護絶縁膜29の開口部には設けられていないので、発光素子4からの光信号は、当該開口部と反射防止膜30を介して、受光素子6のPN接合部にまで入射可能に構成されている。
【0077】
尚、発光素子4と受光制御集積回路5間の絶縁耐圧を強化する方法としては、図7に示す受光制御集積回路5の保護絶縁膜29の表面にメタルシールド膜31を設ける方法に代えて、或いは、追加して、以下の図8〜図10に示すように、フォトカプラ2のパッケージ内における第1リードフレーム21、第2リードフレーム23、発光素子4、及び、受光制御集積回路5の配置を調整するのも好ましい。
【0078】
図8に示す実施例では、第1リードフレーム21側のボンディングワイヤー22と、第2リードフレーム23側の受光制御集積回路5の受光素子6が、パッケージの厚み方向に対向しないように、第1リードフレーム21、第2リードフレーム23、発光素子4、及び、受光制御集積回路5の配置を調整することで、発光素子4と受光制御集積回路5間に強電界が発生しても、ボンディングワイヤー22からの当該強電界の受光素子6に対する影響が緩和される。
【0079】
更に、図9に示す実施例では、第1リードフレーム21側のボンディングワイヤー22と、第2リードフレーム23側の受光制御集積回路5が、パッケージの厚み方向に対向しないように、且つ、第2リードフレーム23側のボンディングワイヤー24と、第1リードフレーム21側の発光素子4が、パッケージの厚み方向に対向しないように、発光素子4の第1リードフレーム21上における載置個所をボンディングワイヤー22側に近づけ、受光制御集積回路5の第2リードフレーム23上における載置個所をボンディングワイヤー24側に近づけることで、発光素子4と受光制御集積回路5間に強電界が発生しても、ボンディングワイヤー22からの当該強電界の受光素子6に対する影響が緩和され、ボンディングワイヤー24からの当該強電界の発光素子4に対する影響が緩和される。
【0080】
更に、図10に示す実施例では、第1リードフレーム21側のボンディングワイヤー22と第2リードフレーム23がパッケージの厚み方向に対向しないように、且つ、第2リードフレーム23側のボンディングワイヤー24と第1リードフレーム21がパッケージの厚み方向に対向しないように、各リードフレーム21、23が、夫々を固定している黒色エポキシ樹脂26側にオフセットして、つまり、第1リードフレーム21とボンディングワイヤー24、第2リードフレーム23とボンディングワイヤー22が、夫々のチップ載置面と平行な方向に離間するように配置されることで、発光素子4と受光制御集積回路5間に強電界が発生しても、ボンディングワイヤー22からの当該強電界の受光素子6に対する影響が緩和され、ボンディングワイヤー24からの当該強電界の発光素子4に対する影響が緩和される。
【0081】
〈別実施形態〉
以下に、上記第1乃至第3実施形態の別実施形態を説明する。
【0082】
〈1〉上記各実施形態では、発光素子4を構成する半導体材料は、受光素子6の感度波長範囲に適合する材料であれば、特定の材料に限定されるものではないが、スイッチング電源回路1の周辺部品であるトランス3、ダイオードD1、コンデンサC1等の更なる小型化と、出力電圧Voutの変動を抑制するために、発光素子4としてGaAlAsで構成される発光ダイオードを用いて、スイッチング速度を向上させるのが好ましい。
【0083】
発光素子4としてGaAsで構成される発光ダイオードを用いた場合は、フォトトランジスタと組み合わせた信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、夫々5μ秒程度であり、実用周波数として100kHz程度であるが、GaAlAsで構成される発光ダイオードを用いることで、立ち上がり時間及び立ち下がり時間を夫々0.1μ秒にまで短縮できるので、実用周波数を5MHz程度まで高速化できる。この結果、スイッチング電源回路1の小型化の阻害要因となっていたトランスの小型化が一層図れるため、携帯用機器用の充電器の小型化が可能となる。
【0084】
〈2〉上記各実施形態では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1を使用したが、図11に示すように、抵抗R1に代えて、デプレッション型高耐圧FET(電界効果トランジスタ)Q3を用いるのも好ましい。トランジスタQ3は、ドレインが1次巻き線L1の一方端に、ソースがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ゲートがフォトカプラ2の他方の電源供給端子VSSに夫々接続しており、ゲートには常時接地電圧の0Vが印加されている。当該トランジスタQ3の使用によって、フォトカプラ2の電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するとともに、スイッチング電源回路1の起動時間の短縮化が図れる。抵抗R1がトランジスタQ3に置き換わっている以外は、上記各実施形態と同じである。以下、図11に示すスイッチング電源回路1における受光制御集積回路5への電源電圧供給動作について説明する。
【0085】
電源供給端子VDDの端子電圧が0Vである初期状態において、1次巻き線L1の一方端に直流入力電圧Vinが入力すると、トランジスタQ3のゲート電圧及びソース電圧が0Vで、トランジスタQ3がデプレッション型であるため、トランジスタQ3のドレイン側からソース側に向けてドレイン電流が流れ始める。このドレイン電流により電源供給端子VDDの端子電圧が上昇すると、トランジスタQ3のソース電圧が上昇するため、トランジスタQ3のソースから見たゲート‐ソース間電圧が徐々に低下し、当該ゲート‐ソース間電圧がトランジスタQ3のピンチオフ電圧に達するとトランジスタQ3はオフしてドレイン電流は流れなくなる。以上より、電源供給端子VDDの端子電圧はトランジスタQ3のピンチオフ電圧を超えて上昇することはなく、当該ピンチオフ電圧以下のドレイン電流と受光制御集積回路5の消費電流が等しくなる電圧に固定される。
【0086】
また、上記各実施形態のように、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、トランジスタQ3のドレイン電流を大きくすることにより、ドレイン電流が流れ始める初期段階で起動電流を大きくすることが可能となり、受光制御集積回路5の電源供給端子VDDの端子電圧の上昇速度が速くなり、スイッチング電源回路1の起動時間が短縮化される。
【0087】
尚、上述の如く、電源供給端子VDDの端子電圧はトランジスタQ3のピンチオフ電圧を超えて上昇することはないため、受光制御集積回路5の消費電流が変動しても、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧の変動は抑制されることになる。このため、上記各実施形態では、受光制御集積回路5に受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を設けていたが、電源供給端子VDDの端子電圧の変動が、受光制御集積回路5が動作電圧範囲内に収まっている場合には、当該電源供給端子VDDの端子電圧安定化用の回路を省略することができる。
【0088】
〈3〉上記各実施形態では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1を使用したが、図12に示すように、抵抗R1に代えて、NPN型のバイポーラトランジスタQ4を用いるのも好ましい。トランジスタQ4は、コレクタが1次巻き線L1の一方端に、エミッタがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ベースが1次巻き線L1の一方端とフォトカプラ2の他方の電源供給端子VSSの間に接続された分圧抵抗R4、R5の中間点N1に、夫々接続しており、ベースには直流入力電圧Vinに分圧抵抗R4、R5の分圧比を乗じた中間電圧Vm1が印加されている。当該トランジスタQ4の使用によって、フォトカプラ2の電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するとともに、スイッチング電源回路1の起動時間の短縮化が図れる。抵抗R1がトランジスタQ4に置き換わり、分圧抵抗R4、R5を追加している以外は、上記各実施形態と同じである。以下、図12に示すスイッチング電源回路1における受光制御集積回路5への電源電圧供給動作について説明する。
【0089】
1次巻き線L1の一方端に直流入力電圧Vinが入力すると、トランジスタQ4のベースに直流入力電圧Vinに分圧抵抗R4、R5の分圧比を乗じた中間電圧Vm1が印加され、電源供給端子VDDの端子電圧が0Vである初期状態において、エミッタ電圧が0Vであるため、トランジスタQ4のコレクタ側からエミッタ側に向けてコレクタ電流が流れ始める。このコレクタ電流により電源供給端子VDDの端子電圧が上昇すると、トランジスタQ4のエミッタ電圧が上昇するため、トランジスタQ4のエミッタから見たベース‐エミッタ間電圧が徐々に低下し、当該ベース‐エミッタ間電圧が約0.7Vに近づくとトランジスタQ4はベース電流が遮断され、コレクタ電流が流れなくなる。以上より、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm1から約0.7Vを下回った中間電圧Vm2を超えて上昇することはなく、当該中間電圧Vm2以下のコレクタ電流と受光制御集積回路5の消費電流が等しくなる電圧に固定される。尚、トランジスタQ4は、バイポーラトランジスタに代えて、ドレインが1次巻き線L1の一方端に、ソースがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ゲートが中間点N1に、夫々接続した高耐圧のN型MOSFETであっても良い。N型MOSFETの場合でも、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm1からN型MOSFETの閾値電圧を下回った中間電圧Vm2を超えて上昇することはなく、当該中間電圧Vm2以下のコレクタ電流と受光制御集積回路5の消費電流が等しくなる電圧に固定される。
【0090】
また、上記各実施形態のように、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、トランジスタQ4のコレクタ電流を大きくすることにより、コレクタ電流が流れ始める初期段階で起動電流を大きくすることが可能となり、受光制御集積回路5の電源供給端子VDDの端子電圧の上昇速度が速くなり、スイッチング電源回路1の起動時間が短縮化される。
【0091】
尚、上述の如く、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm2を超えて上昇することはないため、受光制御集積回路5の消費電流が変動しても、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧の変動は抑制されることになる。このため、上記各実施形態では、受光制御集積回路5に受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を設けていたが、電源供給端子VDDの端子電圧の変動が、受光制御集積回路5が動作電圧範囲内に収まっている場合には、当該電源供給端子VDDの端子電圧安定化用の回路を省略することができる。
【0092】
〈4〉上記各実施形態では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1を使用したが、図13に示すように、抵抗R1に代えて、NPN型のバイポーラトランジスタQ4を用いるのも好ましい。トランジスタQ4は、コレクタが1次巻き線L1の一方端に、エミッタがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ベースが1次巻き線L1の一方端とフォトカプラ2の他方の電源供給端子VSSの間に接続された抵抗R6とツェナーダイオードD3の直列回路の中間点N2に、夫々接続しており、ベースにはツェナーダイオードD3の降伏電圧で規定される中間電圧Vm3が印加されている。当該トランジスタQ4の使用によって、フォトカプラ2の電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するとともに、スイッチング電源回路1の起動時間の短縮化が図れる。抵抗R1がトランジスタQ4に置き換わり、抵抗R6とツェナーダイオードD3を追加している以外は、上記各実施形態と同じである。尚、トランジスタQ4は、上記別実施形態〈3〉と同様に、バイポーラトランジスタに代えて、ドレインが1次巻き線L1の一方端に、ソースがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ゲートが中間点N2に、夫々接続した高耐圧のN型MOSFETであっても良い。以下、図13に示すスイッチング電源回路1における受光制御集積回路5への電源電圧供給動作について説明する。
【0093】
1次巻き線L1の一方端に直流入力電圧Vinが入力すると、トランジスタQ4のベースにツェナーダイオードD3の降伏電圧で規定される中間電圧Vm3が印加され、電源供給端子VDDの端子電圧が0Vである初期状態において、エミッタ電圧が0Vであるため、トランジスタQ4のコレクタ側からエミッタ側に向けてコレクタ電流が流れ始める。このコレクタ電流により電源供給端子VDDの端子電圧が上昇すると、トランジスタQ4のエミッタ電圧が上昇するため、トランジスタQ4のエミッタから見たベース‐エミッタ間電圧が徐々に低下し、当該ベース‐エミッタ間電圧が約0.7Vに近づくとトランジスタQ4はベース電流が遮断され、コレクタ電流が流れなくなる。以上より、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm3から約0.7Vを下回った中間電圧Vm4を超えて上昇することはなく、当該中間電圧Vm4以下のコレクタ電流と受光制御集積回路5の消費電流が等しくなる電圧に固定される。
【0094】
また、上記各実施形態のように、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、トランジスタQ4のコレクタ電流を大きくすることにより、コレクタ電流が流れ始める初期段階で起動電流を大きくすることが可能となり、受光制御集積回路5の電源供給端子VDDの端子電圧の上昇速度が速くなり、スイッチング電源回路1の起動時間が短縮化される。
【0095】
尚、上述の如く、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm4を超えて上昇することはないため、受光制御集積回路5の消費電流が変動しても、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧の変動は抑制されることになる。このため、上記各実施形態では、受光制御集積回路5に受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を設けていたが、電源供給端子VDDの端子電圧の変動が、受光制御集積回路5が動作電圧範囲内に収まっている場合には、当該電源供給端子VDDの端子電圧安定化用の回路を省略することができる。
【0096】
〈5〉上記別実施形態〈2〉〜〈4〉では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1に代えて、ゲートが接地されたデプレッション型高耐圧電界効果トランジスタQ3、または、ベースに中間電圧が印加される高耐圧のNPN型のバイポーラトランジスタQ4またはゲートに中間電圧が印加される高耐圧N型MOSFETを用いることで、当該降圧素子として高抵抗の抵抗R1を用いる場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するため、受光制御集積回路5に設けていた受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を省略できる旨の説明を行った。
【0097】
ここで、当該降圧素子として高抵抗の抵抗R1を用いた場合であっても、受光制御集積回路5の消費電流の変動が予め抑制されている場合には、当該降圧素子として高抵抗の抵抗R1に代えて、上記トランジスタQ3、Q4を使用せずとも電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を省略できることになる。
【0098】
更に、受光制御集積回路5の消費電流の変動が十分に抑制されていない場合であっても、当該降圧素子として高抵抗の抵抗R1を用いても、図14に示すように、補助巻き線である3次巻き線L3をトランス3に設けることで、スイッチング電源回路1の起動時には、直流入力電圧Vinを抵抗R1で降圧して電源電圧供給するとともに、スイッチング電源回路1が一旦スイッチング動作を開始して、3次巻き線L3に交流電圧が発生して、ダイオードD4とコンデンサC2で整流、平滑化された直流電圧を電源供給端子VDDに供給することで、スイッチング動作開始後の消費電流を3次巻き線L3側から賄うことが可能となるため、受光制御集積回路5の消費電流の変動が、抵抗R1の端子間電圧として現れないため、電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するため、受光制御集積回路5に設けていた受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を省略できる。
【0099】
尚、図14に示す回路構成における抵抗R1の設定は、上記第1実施形態の場合より、より高抵抗に設定する。つまり、スイッチング電源回路1の起動時における受光制御集積回路5の消費電流が小さい場合に合わせて、電源供給端子VDDの端子電圧が受光制御集積回路5の耐圧以下となるように、抵抗R1の抵抗値を設定すれば十分であり、スイッチング動作開始後の消費電流の増分は、3次巻き線L3側から賄うことが可能であるためである。
【0100】
〈6〉上記別実施形態〈2〉〜〈4〉では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1に代えて、ゲートが接地されたデプレッション型高耐圧電界効果トランジスタQ3、または、ベースに中間電圧が印加される高耐圧のNPN型のバイポーラトランジスタQ4またはゲートに中間電圧が印加される高耐圧N型MOSFETを使用する場合の説明を行ったが、上記のように降圧素子を高耐圧の単体素子で構成するのに代えて、抵抗R1と、ゲートが接地されたデプレッション型高耐圧電界効果トランジスタQ3、ベースに中間電圧が印加される高耐圧のNPN型のバイポーラトランジスタQ4、または、ゲートに中間電圧が印加される高耐圧N型MOSFETとの直列回路で構成するようにしても良い。更に、直流入力電圧Vinを抵抗R1で予備的に降圧できるため、上記各トランジスタを中低耐圧プロセスで作製し、受光制御集積回路5内に集積化するのも好ましい。降圧素子を抵抗R1と上記各トランジスタの直列回路で構成する場合も、上記別実施形態〈2〉〜〈4〉の場合と同様に、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm2またはVm4を超えて上昇することはないため、受光制御集積回路5の消費電流が変動しても、抵抗R1だけで直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧の変動は抑制されることになる。このため、上記各実施形態では、受光制御集積回路5に受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を設けていたが、電源供給端子VDDの端子電圧の変動が、受光制御集積回路5が動作電圧範囲内に収まっている場合には、当該電源供給端子VDDの端子電圧安定化用の回路を省略することができる。
【0101】
〈7〉上記各実施形態では、トランジスタQ1は電界効果型トランジスタとして説明してきたが、バイポーラトランジスタを使用することでも同等の効果が期待できる。バイポーラトランジスタを用いる場合、電界効果型トランジスタのゲート、ドレイン、ソースを、夫々バイポーラトランジスタのベース、コレクタ、エミッタに置換すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、フォトカプラを使用したスイッチング電源回路に利用可能であり、ACアダプタ、LED照明、液晶テレビ、パーソナルコンピュータ等、商用交流電源から直流電圧を生成する必要のあるシステムに搭載でき、システムの小型化、出力電圧の高精度化、電源の低消費電力化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第1実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図2】図1に示すフォトカプラを構成する発光素子と受光制御集積回路を2種類の樹脂で封止したパッケージの断面構造を模式的に示す断面図
【図3】図1に示す受光制御集積回路内の受光素子の断面構造を模式的に示す断面図
【図4】図1に示す受光制御集積回路のチップレイアウトの一例を示す図
【図5】図1に示す受光制御集積回路のチップレイアウトの他の一例を示す図
【図6】本発明に係るフォトカプラの第2実施形態における受光制御集積回路の概略の回路構成を示す回路図
【図7】本発明に係るフォトカプラの第3実施形態における受光制御集積回路内の受光素子の断面構造を模式的に示す断面図
【図8】本発明に係るフォトカプラの第3実施形態におけるパッケージ内における第1リードフレーム、第2リードフレーム、発光素子、及び、受光制御集積回路の配置関係を説明する断面図
【図9】本発明に係るフォトカプラの第3実施形態におけるパッケージ内における第1リードフレーム、第2リードフレーム、発光素子、及び、受光制御集積回路の他の配置関係を説明する断面図
【図10】本発明に係るフォトカプラの第3実施形態におけるパッケージ内における第1リードフレーム、第2リードフレーム、発光素子、及び、受光制御集積回路の更に他の配置関係を説明する断面図
【図11】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第1の別実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図12】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第2の別実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図13】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第3の別実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図14】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第4の別実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図15】スイッチング電源回路の第1の従来例の回路構成を示す回路図
【図16】スイッチング電源回路の第2の従来例の回路構成を示す回路図
【図17】スイッチング電源回路の第1の従来例の回路構成を示す回路図
【符号の説明】
【0104】
1: 本発明に係るスイッチング電源回路
2: 本発明に係るフォトカプラ
3: トランス
4: 発光素子(発光ダイオード)
5: 受光制御集積回路
6: 受光素子(第1受光素子)
6a: 第2受光素子
7: 増幅回路(第1増幅回路)
7a: 第2増幅回路
7b: 差動増幅回路
8: スイッチング制御回路
9: 電流制御回路
10: 発振回路
11: 発振制御回路
12: 出力駆動回路
21: 第1リードフレーム
22、24: ボンディングワイヤー
23: 第2リードフレーム
25: 透明エポキシ樹脂
26: 黒色エポキシ樹脂
27: 受光素子のカソード電極
28: 受光素子のアノード電極
29: 保護絶縁膜
30: 反射防止膜
31: メタルシールド膜
AE: 発光素子のアノード電極
CE: 発光素子のカソード電極
C1、C2: 平滑用コンデンサ
D1、D4: 整流用ダイオード
D2、D3: ツェナーダイオード
L1: 1次巻き線
L2: 2次巻き線
L3: 3次巻き線
N1、N2: 中間点
OUT+、OUT−: スイッチング電源回路の出力端子
Q1: スイッチング動作用のトランジスタ
Q2: 電流制御トランジスタ
Q3: デプレッション型高耐圧FET(降圧素子)
Q4: NPN型のバイポーラトランジスタ(降圧素子)
R1: 抵抗(降圧素子)
R2: 受光素子の電流調整抵抗(第1電流調整抵抗)
R3: 第2受光素子の電流調整抵抗(第2電流調整抵抗)
R4、R5: 分圧抵抗
R6: 抵抗
SC: 受光制御集積回路の出力端子
Vin: 直流入力電圧
Vout: 直流出力電圧
Vm1〜Vm4: 中間電圧
VDD: 電源供給端子
VSS: 電源供給端子(接地端子)
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源回路に使用するフォトカプラ、及び、フォトカプラを使用したスイッチング電源回路に関し、より詳細には、ACアダプタやLED照明等に使用される、商用交流電源から直流電圧を生成するスイッチング電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチング電源回路の一例として、下記の非特許文献1〜3に開示されているスイッチング電源がある。図15〜図17に、夫々、非特許文献1〜3に開示されたスイッチング電源の回路図を示す。
【0003】
図15に示すスイッチング電源回路(従来例1)は、高耐圧プロセスで作製されたスイッチング動作制御用ICと受光素子にフォトトランジスタを用いたフォトカプラを組み合わせて構成されている。以下、従来例1の動作を簡単に説明する。
【0004】
1対の直流供給端子HV+、HV−間に、AC電圧を整流、平滑した直流電圧が印加される(AC電圧の整流、平滑回路の図示は省略)。高耐圧プロセスで作られたスイッチング電源用ICであるIC101はD端子とS端子間のオンオフ動作(スイッチング動作)を開始し、トランスT101の1次側(1次巻き線L101)に鋸歯状の電流が流れる。トランスT101の2次側(2次巻き線L201)に交流電圧が発生し、ダイオードD102で整流されて脈流となり、コンデンサC103で平滑されて直流となり、直流出力端子DC+、DC−間に直流の出力電圧が発生する。
【0005】
出力電圧がダイオードD103のツェナー電圧を越えるとフォトカプラの発光ダイオードD104が点灯し、フォトカプラPC101のフォトトランジスタQ101で発光ダイオードD104の発光情報を受光し、出力電圧がツェナー電圧を越えたことが制御用IC101に伝えられる。制御用IC101は、出力電圧がツェナー電圧を越えた情報を受けるとスイッチング動作を停止する。その結果、トランスT101の1次側から2次側への電力伝達が停止するため、直流出力端子DC+、DC−間の出力電圧は低下する。出力電圧がツェナー電圧を下回ると、発光ダイオードD104は消灯し、再び制御用IC101のスイッチング動作が開始される。上記動作を繰り返すことによって、直流出力端子DC+、DC−間の出力電圧は一定に保たれる。
【0006】
尚、ダイオードD101、抵抗R101、コンデンサC101は、スナバ回路を構成し、制御用IC101のD端子とS端子間がオフした瞬間に発生する高電圧をクリップする。
【0007】
図16に示すスイッチング電源回路(従来例2)は、中低耐圧プロセスで作製されたスイッチング動作制御用ICと受光素子にフォトトランジスタを用いたフォトカプラと補助巻き線(3次巻き線)を組み合わせて構成されている。以下、従来例2の動作を簡単に説明する。
【0008】
1対の交流供給端子L、N間にAC電圧が印加されるとダイオードD201で整流されコンデンサC201で平滑されてコンデンサC201の両端子間に直流電圧が発生する。当該直流電圧が抵抗R201を通して制御用IC201の起動用入力端子VINに印加され、制御用IC201が起動し端子GATEに矩形波が発生する。トランジスタQ201は矩形波に合わせてドレインソース間をオンオフし(スイッチング動作)、トランジスタQ201に接続したトランスT201の1次側(1次巻き線L201)に鋸歯状の電流が流れる。一方、トランスT201の2次側(2次巻き線L202)に交流電圧が発生し、ダイオードD204で整流されて脈流となり、コンデンサC206、C207で平滑されて直流となり、直流出力端子VO+、VO−間に直流の出力電圧が発生する。
【0009】
従来例2では、トランスT201は、1次巻き線L201と2次巻き線L202に加えて3次巻き線L203を備え、3次巻き線L203に発生した交流電圧が、ダイオードD203で整流され、コンデンサC203で平滑され、制御用IC201の電源端子VDDに印加されて、制御用IC201への電力供給が行われる。
【0010】
出力電圧が抵抗R210と抵抗R211で分圧され、その分圧値(抵抗R210と抵抗R211の中間電圧)が、電圧検出用IC202の基準電圧を越えるとフォトカプラの発光ダイオードD206が点灯し、フォトカプラPC201のフォトトランジスタQ202で発光ダイオードD206の発光情報を受光し、上記分圧値が電圧検出用IC202の基準電圧を越えたことが制御用IC201に伝えられる。制御用IC201は、上記分圧値が基準電圧を越えた情報を受けるとスイッチング動作を停止する。その結果、トランスT201の1次側から2次側への電力伝達が停止するため、直流出力端子VO+、VO−間の出力電圧は低下する。上記分圧値が基準電圧を下回ると、発光ダイオードD206は消灯し、再び制御用IC201のスイッチング動作が開始される。上記動作を繰り返すことによって、上記分圧値が一定に保たれ、直流出力端子VO+、VO−間の出力電圧は一定に保たれる。
【0011】
尚、ダイオードD202、抵抗R202、コンデンサC202は、スナバ回路を構成し、トランジスタQ201のドレインソース間がオフした瞬間に発生する高電圧をクリップする。
【0012】
図17に示すスイッチング電源回路(従来例3)は、ディスクリート部品と受光素子にフォトトランジスタを用いたフォトカプラと補助巻き線(3次巻き線)を組み合わせて構成されている。以下、従来例3の動作を簡単に説明する。尚、従来例3は、RCC方式(Ringing Choke Converter)として一般に知られており、携帯電話等の充電器に広く用いられているスイッチング電源回路である。
【0013】
直流供給端子+Vinと接地端子V0間に、AC電圧を整流、平滑した直流電圧が印加される(AC電圧の整流、平滑回路の図示は省略)。これを初期状態とする。抵抗Rgを通してトランジスタQ301のベースに電流が流れ込み、トランジスタQ301のコレクタ−エミッタ間に電流が流れ、トランスT301の1次側(1次巻き線L301)に電流が流れ、トランスT301の3次巻き線L303に電圧が発生する。3次巻き線L303に発生した電圧はダイオードD301と抵抗R301を通って更にトランジスタQ301のベースに電流を流し込む。
【0014】
1次巻き線L301に流れる電流は1次巻き線L301のインダクタンス成分により時間とともに直線的に増加し、トランスT301内部の磁束も時間とともに直線的に増加する。3次巻き線L303に発生する電圧(起電力)は磁束の時間的変化に比例するため時間的に一定の電圧が発生する。従ってトランジスタQ301のベース電流は3次巻き線L303からの時間的に一定な電圧と抵抗Rgから流れ込む電流となり時間的に一定である。そのためトランジスタQ301のコレクタ電流はこの一定なベース電流のhfe倍の電流以上は流れない。コレクタ電流が該電流上限値に到達すると1次巻き線L301による電流の時間的変化がなくなるためトランスT301内部の磁束の時間的変化がなくなり3次巻き線L303の起電力もなくなり、トランジスタQ301のベース電流が減少し始め、1次巻き線L301の電流が減少し始める。その結果、トランスT301内部の磁束の時間的変化が上記とは逆に減少し始めるため、3次巻き線L303の起電力は上記とは逆の極性になり、トランジスタQ301のベース電流を減少させる方向に転じ、やがてトランジスタQ301のコレクタ電流はゼロになる。その結果、1次巻き線L301の電流はゼロになり3次巻き線L303の起電力はゼロになり、初期状態に戻る。
【0015】
以上の動作を繰り返すことにより、トランジスタQ301は発振し、コレクタ電流、すなわちトランスT301の1次側電流は増減を繰り返し、トランスT301の2次側の2次巻き線L302に交流電圧が発生する。2次巻き線L302に発生した交流電圧はダイオードD303で整流され、コンデンサC303で平滑され、直流出力端子Voutと接地端子V0の間に直流の出力電圧を発生する。
【0016】
出力電圧が抵抗Raと抵抗Rbで分圧されて電圧検出用IC301に入力される。その分圧値(抵抗Raと抵抗Rbの中間電圧)が、電圧検出用IC301の基準電圧を越えるとフォトカプラの発光ダイオードD304に電流が流れ点灯する。フォトカプラのフォトトランジスタQ303が発光ダイオードD304の発光を受光すると、3次巻き線L303からダイオードD302と抵抗R302を通してトランジスタQ302にベース電流が流れる。その結果、トランジスタQ302のコレクタからエミッタに電流が流れてトランジスタQ301に流れ込むベース電流が減少しトランジスタQ301のコレクタ電流が減少し、トランスT301の1次側電流が減少し、トランスT301の2次側への電力伝達が減少し、直流出力端子Voutと接地端子V0間の出力電圧が低下する。上記分圧値が電圧検出用IC301の基準電圧を下回ると発光ダイオードD304は消灯し、トランジスタQ301は発振を再開するため、直流出力端子Voutと接地端子V0間の出力電圧が上昇する。上記動作を繰り返すことによって、上記分圧値が一定に保たれ、直流出力端子Voutと接地端子V0間の出力電圧が一定に保たれる。
【0017】
【非特許文献1】“TNY274-280, TinySwitch-III Family, Energy Efficient, Offline Switcher with Enhanced Flexibility and Extended Power Range”、図1、[online]、[平成20年5月8日検索]、インターネット<URL:http://www.powerint.com/PDFFiles/tny274-280.pdf>
【非特許文献2】“Product Specification, Highly Integrated Green-Mode PWM Controller SG5841/J”、第1頁の図面、[online]、[平成20年5月8日検索]、インターネット<URL:http://pdf1.alldatasheet.com/datasheet-pdf/view/202762/FAIRCHILD/SG5841.html
【非特許文献3】“トランジスタ技術”、CQ出版、1997年3月号、275頁、図9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来のスイッチング電源回路においては、受光素子がフォトトランジスタのフォトカプラを用いており、1)部品実装面積が大きい、2)周辺部品(トランス、ダイオード、コンデンサ)が大きい、3)出力誤差(リップル)が大きい、4)フォトトランジスタの信号電流が大きく、消費電流が大きい、5)発光ダイオードの駆動電流が大きく、消費電流が大きいという、5つの問題点がある。
【0019】
第1の問題点(部品実装面積が大きい)については、上記3つの従来例(従来例1〜3)の何れにおいても、トランスの2次側の出力電圧情報を1次側の発振回路或いはスイッチング動作制御用ICへフィードバックするためにフォトカプラを用いており、更に、1次側にスイッチング動作制御用ICまたはスイッチング動作制御用のディスクリート部品が搭載されているため、部品実装面積が大きくなっていた。
【0020】
第2の問題点(周辺部品(トランス、ダイオード、コンデンサ)が大きい)については、従来のスイッチング電源回路において、フォトカプラは受光素子にフォトトランジスタ、発光素子に一般的なGaAsの発光ダイオードで構成されており、信号の立ち上がり時間、立下り時間が夫々5μ秒程度であり、実用周波数として100kHz程度であった。この立ち上がり時間、立下り時間は、フォトトランジスタの入力側からみた容量がミラー効果によって信号波形の高周波成分が伝達できないことで決まる。特に、受光感度を上げるためにはフォトトランジスタの利得を上げることになるが、その利得に応じてミラー効果が顕著になり、高周波信号の伝達が困難になる。この信号電圧速度の問題からスイッチング速度は100kHzまでとなり、周辺部品(トランス、ダイオード、コンデンサ)が大きくなっていた。
【0021】
第3の問題点(出力電圧の誤差(リップル)が大きい)については、上記第2の問題点で説明した通り、従来のスイッチング電源回路のスイッチング速度が100kHz程度までであり、リップルが大きかった。当該リップルを減らすべく平滑用のコンデンサ等を大きくすると、出力の変動による電源の追従速度が遅くなるという問題があった。
【0022】
第4の問題点(フォトトランジスタの信号電流が大きく、消費電流が大きい)については、従来のスイッチング電源回路では、フォトカプラの受光素子にフォトトランジスタが用いられているため、十分な受光感度を確保するために、また、ノイズの影響を抑制するために信号電流が1mA程度必要であった。つまり、制御用ICの駆動電圧が10V、出力が無負荷、発光ダイオードが80%のデューティ比で点灯する場合を想定すると、フォトトランジスタのコレクタに平均電流0.8mAが流れ、受光素子で8mWの損失が発生していた。
【0023】
第5の問題点(発光ダイオードの駆動電流が大きく、消費電流が大きい)については、従来のスイッチング電源回路では、フォトカプラの受光素子にフォトトランジスタが用いられており、発光ダイオードの駆動電流は10mA程度が必要であった。つまり、スイッチング電源回路の出力電圧が5V、出力が無負荷で、発光ダイオードが80%のデューティ比で点灯する場合を想定すると、発光ダイオードに平均電流8mAが流れ、発光ダイオードで40mWの損失が発生することになる。携帯電話の充電器等、常にコンセントに接続されている製品においては、無負荷時の消費電力は50〜100mWという市場の要望があり、発光ダイオードだけで40mWの損失が発生する従来のスイッチング電源回路では当該市場の要望を満たすことが困難であった。
【0024】
更に、上記5つの問題点に加えて6番目の問題点として、上記従来例1のスイッチング電源回路では、高耐圧プロセスで作製されたスイッチング動作制御用ICを使用するため、当該制御用ICの製造コストが高くなり、スイッチング電源回路全体のコスト高騰の要因となっていた。
【0025】
本発明は、上記従来のスイッチング電源回路における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品実装面積及び周辺部品を小さくでき、出力電圧の誤差及び消費電力を抑制可能なフォトカプラ及びスイッチング電源回路を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するための本発明に係るフォトカプラは、スイッチング電源回路の2次側の出力電圧情報を1次側のスイッチング動作の制御用に光信号を介してフィードバックするためのフォトカプラであって、前記スイッチング電源回路の前記出力電圧情報に基づいて点滅する光信号を出射する発光素子と、前記発光素子から出射された前記光信号を受光するフォトダイオードで構成された受光素子、前記受光素子の出力信号を増幅する増幅回路、及び、前記スイッチング電源回路の前記スイッチング動作を制御するスイッチング制御回路を、1つのチップに集積して構成された受光制御集積回路と、を備えてなり、前記受光制御集積回路が、直流電源電圧が供給される1対の電源供給端子と、前記スイッチング動作を制御するためのスイッチング制御信号を出力する出力端子を備え、前記発光素子と前記受光制御集積回路が、前記発光素子から前記受光素子へ前記光信号が伝達可能に、1つのパッケージ内に封止されていることを第1の特徴とする。
【0027】
上記第1の特徴のフォトカプラによれば、発光素子と受光素子からなるフォトカプラ部と、受光素子の出力信号を増幅する増幅回路、及び、スイッチング電源回路のスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路が、1つのパッケージに封止され一体化されているため、スイッチング電源回路を構成する部品点数が削減され、部品実装面積の縮小化が図れ、上記従来のスイッチング制御回路の第1の問題点が解消される。ここで、受光素子と増幅回路とスイッチング制御回路を1チップ化することで、パッケージサイズを小型化して、1つのパッケージに上記素子及び回路を封止することが実現可能となる。尚、部品実装面積の縮小化は、上記従来例1、2と比較すると、上記従来例1、2で使用されている制御用ICのパッケージ面積の約55〜65mm2が削減可能であり、上記従来例3と比較すると、ディスクリート部品の削減により、約100〜150mm2が削減可能である。
【0028】
更に、受光素子としてフォトダイオードを使用することで、従来のフォトトランジスタを受光素子として使用する場合と比較して、受光素子側での信号の立ち上がり及び立ち下がり時間を短くでき、スイッチング動作の高速化が可能となることから、スイッチング電源回路を構成する場合のトランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品の小型化が図れる。例えば、受光素子側での信号の立ち上がり及び立ち下がり時間を3n秒程度に短くでき、発光素子と組み合わせたフォトカプラ部で夫々0.7μ秒にまで短縮できるので、従来のフォトトランジスタを受光素子として使用する場合では、実用周波数が100kHzであったところを、7倍の700kHzまで高速化でき、トランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品が7分の1程度に小型化される。更に、トランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品が小型化されることで、スイッチング電源回路の2次側での出力の電圧変動に対する追従速度が速くなり、当該電圧変動をより効果的に抑制することが可能となる。以上より、上記従来のスイッチング制御回路の第2及び第3の問題点が解消される。特に、スイッチング電源回路を通信機器や音響機器に使用する場合は、誤動作やノイズの発生を抑制するために、電源電圧のリップルを低減し、ノイズが信号に混入するのを防止することが重要であるため、上記電圧変動抑制効果は上記用途においてより好適である。
【0029】
また、受光素子としてフォトダイオードを使用することで、低電流駆動が可能となり、従来のフォトトランジスタを受光素子として使用する場合と比較して受光素子での電力損失を大幅に抑制でき、低消費電力化が図れる。更に、受光素子としてフォトダイオードを使用し、その後段に受光素子の出力信号を増幅する増幅回路を設けて1チップ化しているため、従来のフォトトランジスタと比べて受光素子の受光感度が大幅に改善されるため、発光素子側の駆動電流を低減でき、低消費電力化が図れる。例えば、受光素子の後段の増幅回路として電圧利得が10000倍程度を想定した場合、受光素子に流れる電流が10μA程度となるため、増幅回路と合わせた消費電流を0.1mA程度に低減でき、無負荷時の受光素子周辺の消費電力を0.5mW程度に抑制でき、50〜100mWという市場の要望を満足できるようになる。以上より、上記従来のスイッチング制御回路の第4及び第5の問題点が解消される。
【0030】
本発明に係るフォトカプラは、上記第1の特徴に加えて、更に、前記受光制御集積回路が、前記1つのチップ内において、前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子間を流れる電源電流を制御する電流制御トランジスタを、前記1対の電源供給端子間に備え、前記1対の電源供給端子の端子間電圧が所定の電圧範囲内となるように前記電流制御トランジスタを流れる電流を制御する電流制御回路を更に備えることを第2の特徴とする。
【0031】
上記第2の特徴のフォトカプラによれば、受光制御集積回路の電流制御トランジスタと電流制御回路を除く部分の消費電流の変動が大きく、スイッチング電源回路の1次側に入力される高電圧の直流電圧を高抵抗素子等で降圧して受光制御集積回路の電源電圧として供給する場合であっても、高抵抗素子等で降圧される電圧の変動が抑制される、結果として受光制御集積回路の電源電圧の変動が抑制されるため、1チップ化された受光制御集積回路を、低中耐圧プロセスで作製可能となり、製造コストの低減が図れる。従って、上記従来のスイッチング制御回路の第6の問題点が解消される。
【0032】
更に、上記第2の特徴のフォトカプラによれば、1チップ化された受光制御集積回路を、低中耐圧プロセスで作製し、スイッチング電源回路の1次側に入力される高電圧の直流電圧を高抵抗素子等で降圧して受光制御集積回路の電源電圧として供給できるため、上記従来例2、3のようにトランスの3次巻き線による電源供給が不要となり、トランスの3次巻き線及びその整流平滑用のコンデンサ及びダイオード等の周辺部品が不要となる。
【0033】
尚、上記第2の特徴は、スイッチング電源回路の1次側に入力される直流電圧が、受光制御集積回路の耐圧に対して高いほど、また、受光制御集積回路の消費電流の変動が大きいほど、その効果がより十分に発揮される。
【0034】
本発明に係るフォトカプラは、上記第1または第2の特徴に加えて、更に、前記受光制御集積回路が、前記スイッチング制御回路の前記スイッチング制御信号を出力する出力駆動回路部と、前記受光素子と前記増幅回路からなる受光回路部が、前記1つのチップ内において、相互に離間して対向する2辺に分散配置され、前記両回路部の間に、前記両回路部以外の回路が配置されていることを第3の特徴とする。
【0035】
上記第3の特徴のフォトカプラによれば、受光素子としてフォトダイオードを使用しているため、従来のフォトトランジスタを使用する場合と比較してバイアス電流が小さいためノイズの影響を受け易くなっているが、受光制御集積回路内で大きなノイズを発生し易い出力駆動回路部とノイズの影響を受け易い受光回路部とを離間して配置することで、受光回路部がノイズの影響を受け難くなり、スイッチング動作の制御の安定化が図れる。
【0036】
本発明に係るフォトカプラは、上記何れかの特徴に加えて、更に、前記受光素子が、前記光信号を受光する第1受光素子と、前記光信号を受光しないように受光部が遮蔽された前記第1受光素子と暗電流特性が同じ第2受光素子の2つの受光素子で構成され、前記増幅回路が、前記第1受光素子の出力信号を増幅する第1増幅回路と、前記第2受光素子の出力信号を増幅する前記第1増幅回路と同じ回路構成の第2増幅回路と、前記第1増幅回路の出力と前記第2増幅回路の出力を差動増幅する差動増幅回路を備えて構成されていることを第4の特徴とする。
【0037】
上記第4の特徴のフォトカプラによれば、光信号を受光していないときの第1受光素子の暗電流が大きい場合であっても、第1受光素子の暗電流との差分によって光信号の検出を行うため、受光感度が向上し、発光素子の駆動電流をより低減でき低消費電流化が図れるとともに、差動増幅回路を使用しているため、第1受光素子と第1増幅回路、及び、第2受光素子と第2増幅回路の2系統に対して同相ノイズが重畳しても差動増幅回路で当該同相ノイズがキャンセルされるため、受光素子及び増幅回路の耐ノイズ性が向上する。この結果、受光素子としてフォトダイオードを使用しているため、従来のフォトトランジスタを使用する場合と比較してノイズの影響を受け易くなっているが、受光制御集積回路内で発生するノイズ或いは受光制御集積回路内に侵入するノイズに対する耐性が向上する。
【0038】
本発明に係るフォトカプラは、上記何れかの特徴に加えて、更に、前記受光制御集積回路が、チップ表面を覆うメタルシールド膜を備え、前記受光素子に前記光信号が入射可能に前記メタルシールド膜の一部が開口していることを第5の特徴とする。
【0039】
上記第5の特徴のフォトカプラによれば、受光素子としてフォトダイオードを使用しているため、従来のフォトトランジスタを使用する場合と比較して、受光制御集積回路のチップ表面の帯電に対する耐性が低く受光素子が当該帯電によって極性反転して誤動作する可能性があるところ、光信号が入射する受光部を除いてチップ表面がメタルシールド膜で覆われているため、当該帯電による影響を大幅に軽減することができ、受光素子の誤動作を排除できる。従って、スイッチング電源回路の1次側回路と2次側回路間に通常より高電圧が印加される可能性のある用途に使用され、1次−2次回路間の強化絶縁が必要とされる場合等で、例えば、商用交流電源と接続する場合に落雷等の影響で、1次−2次回路間に高電圧が印加される状況となっても、受光制御集積回路の受光素子が誤動作して、不適切なスイッチング動作制御に陥るのを回避できる。
【0040】
本発明に係るフォトカプラは、上記何れかの特徴に加えて、更に、前記発光素子を戴置し、前記発光素子の入力端子とワイヤーボンディングにより電気的に接続するリード端子を備える第1リードフレームと、前記受光制御集積回路を戴置し、前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子及び前記出力端子とワイヤーボンディングにより電気的に接続するリード端子を備える第2リードフレームが、前記1つのパッケージ内において夫々のチップ載置面が厚み方向に離間して設けられていることを第6の特徴とする。
【0041】
上記第6の特徴のフォトカプラによれば、発光素子と受光制御集積回路が、発光素子の光信号の出射する発光部と受光素子に光信号が入射する受光部が対向するように、1つのパッケージ内に封止でき、しかも、発光素子と受光制御集積回路がパッケージの厚み方向に重ねて収容されるため、パッケージを小型化できる。
【0042】
本発明に係るフォトカプラは、上記第6の特徴に加えて、更に、前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレーム側の前記受光制御集積回路の前記受光素子が、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを第7の特徴とする。
【0043】
上記第7の特徴のフォトカプラによれば、スイッチング電源回路の1次側回路と2次側回路間に通常より高電圧が印加されても、2次側回路に存在する発光素子のワイヤーボンディングと、1次側回路に存在する受光素子が近接するのを回避できるため、上記高電圧印加による強電界の影響を受光素子が直接受けないようにできる。
【0044】
本発明に係るフォトカプラは、上記第6の特徴に加えて、更に、前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレーム側の前記受光制御集積回路が、前記厚み方向に対向しないように、且つ、前記第2リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第1リードフレーム側の前記発光素子が、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを第8の特徴とする。
【0045】
本発明に係るフォトカプラは、上記第6の特徴に加えて、更に、前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレームが、前記厚み方向に対向しないように、且つ、前記第2リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第1リードフレームが、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを第9の特徴とする。
【0046】
上記第8または第9の特徴のフォトカプラによれば、上記第7の特徴のフォトカプラと同様に、スイッチング電源回路の1次側回路と2次側回路間に通常より高電圧が印加されても、上記高電圧印加による強電界の影響を受光素子が直接受けないようにできる。
【0047】
本発明に係るフォトカプラは、上記第1乃至第9の何れかの特徴に加えて、更に、前記発光素子が、GaAlAs化合物半導体からなる発光ダイオードで構成されていることを第10の特徴とする。
【0048】
上記第10の特徴のフォトカプラによれば、更に、発光素子側での信号の立ち上がり及び立ち下がり時間を短くでき、スイッチング動作の高速化が可能となることから、スイッチング電源回路を構成する場合のトランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品の更なる小型化が図れる。例えば、発光素子と受光素子のフォトカプラ部での信号の立ち上がり及び立ち下がり時間を夫々0.1μ秒にまで短縮できるので、実用周波数を5MHz程度まで高速化できる。これにより、スイッチング電源回路の小型化の阻害要因となっていたトランスの小型化が一層図れるため、携帯用機器用の充電器の小型化が可能となる。
【0049】
本発明に係るフォトカプラは、上記第1乃至第10の何れかの特徴に加えて、更に、前記発光素子と前記受光素子間の前記光信号が伝達する空間を含む前記1つのパッケージの樹脂封止部の内側部分が、前記受光素子の感度波長範囲の光を透過する透明樹脂で構成され、前記内側部分を囲む前記樹脂封止部の外側部分が、前記受光素子の感度波長範囲の光を透過しない不透明樹脂で構成されていることを第11の特徴とする。
【0050】
上記第11の特徴のフォトカプラによれば、前記発光素子と前記受光制御集積回路を、封止樹脂によって相互に電気的に絶縁して、発光素子から受光素子へ光信号が伝達可能に、1つのパッケージ内に封止でき、且つ、パッケージ外部からの不要な光が受光素子に入射するのを遮断できる。
【0051】
上記目的を達成するための本発明に係るスイッチング電源回路は、上記何れかの特徴のフォトカプラと、1次巻き線と2次巻き線を有するトランスと、前記1次巻き線の一方端に入力する直流電圧を降圧して、前記フォトカプラの前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の一方側に入力する降圧素子と、前記1次巻き線の他方端と前記フォトカプラの前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側の間に設けられ、前記受光制御集積回路の前記出力端子から出力される前記スイッチング制御信号によってオンオフが制御されるスイッチング動作用トランジスタと、前記2次巻き線の両端間に設けられた整流平滑回路と、前記整流平滑回路の出力電圧を検出し、前記出力電圧情報として前記発光素子に入力する電圧検出素子または電圧検出回路と、を備えて構成されることを第1の特徴とする。
【0052】
本発明に係るスイッチング電源回路は、上記第1の特徴に加えて、更に、前記降圧素子が、抵抗素子、ゲートが前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側に接続するデプレッション型FET、及び、ベースまたはゲートに前記1次巻き線の一方端と前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側との間の中間電圧が供給されるトランジスタの少なくとも何れか1つを備えて構成されることを第2の特徴とする。
【0053】
上記第1または第2の特徴のスイッチング電源回路によれば、上記第1の特徴のフォトカプラの作用効果を奏することができ、スイッチング電源回路を構成する部品点数が削減され、部品実装面積の縮小化が図れ、スイッチング動作の高速化が可能となることから、スイッチング電源回路を構成するトランス、ダイオード、コンデンサ等の周辺部品の小型化が図れ、受光素子としてフォトダイオードを使用することで、低電流駆動が可能となり、従来のフォトトランジスタを受光素子として使用する場合と比較して受光素子での電力損失を大幅に抑制でき、低消費電力化が図れ、受光素子としてフォトダイオードを使用し、その後段に受光素子の出力信号を増幅する増幅回路を設けて1チップ化しているため、従来のフォトトランジスタと比べて受光素子の受光感度が大幅に改善されるため、発光素子側の駆動電流を低減でき、低消費電力化が図れ、結果として、上記従来のスイッチング制御回路の第1乃至第5の問題点が全て解消される。
【0054】
特に、上記第2の特徴のフォトカプラを使用する場合は、受光制御集積回路の電流制御トランジスタと電流制御回路を除く部分の消費電流の変動が大きく、スイッチング電源回路の1次側に入力される高電圧の直流電圧を高抵抗素子等で降圧して受光制御集積回路の電源電圧として供給する場合であっても、1チップ化された受光制御集積回路を、低中耐圧プロセスで作製可能となり、製造コストの低減が図れる。更に、1チップ化された受光制御集積回路を、低中耐圧プロセスで作製し、スイッチング電源回路の1次側に入力される高電圧の直流電圧を高抵抗素子等で降圧して受光制御集積回路の電源電圧として供給できるため、上記従来例2、3のようにトランスの3次巻き線による電源供給が不要となり、トランスの3次巻き線及びその整流平滑用のコンデンサ及びダイオード等の周辺部品が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
次に、本発明に係るフォトカプラ、及び、当該フォトカプラを使用したスイッチング電源回路の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0056】
〈第1実施形態〉
本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源回路1は、図1に示すように、1つのパッケージ内に封止されたフォトカプラ2と、1次巻き線L1と2次巻き線L2からなるトランス3と、1次巻き線L1の一方端に入力する直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する抵抗R1と、1次巻き線L1に流れる電流のスイッチング動作を行うトランジスタQ1と、2次巻き線L2の一方端にアノードが接続するダイオードD1と、ダイオードD1のカソードと2次巻き線L2の他方端の間に接続するコンデンサC1と、コンデンサC1の両端に出力される直流出力電圧Voutを検出するツェナーダイオードD2を備えて構成される。スイッチング電源回路1を構成する部品は、フォトカプラ2、抵抗R1、トランジスタQ1、トランス3、ダイオードD1、コンデンサC1、ツェナーダイオードD2の合計7点である。
【0057】
尚、スイッチング電源回路1をAC/DCアダプタとして構成するには、更に、全波整流用のダイオードブリッジ回路及び平滑用のコンデンサを、1次巻き線L1の前段に設ける必要があるが、スイッチング電源回路1は、AC/DCアダプタとしての用途に限定されず、直流電源から出力される直流電圧に対するDC/DCコンバータとしても利用できるので、ダイオードブリッジ回路及び平滑用のコンデンサの図示は敢えて省略している。スイッチング電源回路1を商用交流電源用のAC/DCアダプタとして構成する場合は、直流入力電圧Vinは、交流電圧が100Vの国内仕様では、約141Vとなる。尚、商用交流電源以外の交流電源(例えば、車載用の交流電源)では、交流電圧が100Vより低電圧となり、直流入力電圧Vinも低電圧となる。
【0058】
フォトカプラ2は、発光ダイオードで構成される発光素子4と受光制御集積回路5の2チップを1つのパッケージ内に封止して構成される。また、受光制御集積回路5は、フォトダイオードで構成された受光素子6、受光素子6の電流調整抵抗R2、電流調整抵抗R2と受光素子6からなる受光回路の出力信号を増幅する増幅回路7、スイッチング動作用のトランジスタQ1のオンオフを制御するスイッチング制御回路8、電流制御トランジスタQ2、及び、電流制御トランジスタを流れる電流を制御する電流制御回路9を、1つのチップに集積化して構成される。
【0059】
スイッチング制御回路8は、発振回路10、増幅回路7の出力に基づいて発振回路10の発振を制御する発振制御回路11、及び、発振制御回路11から出力されるスイッチング制御信号を駆動して、トランジスタQ1のゲートに出力する出力駆動回路12で構成される。尚、発振制御回路11は、論理回路等により周知の回路構成を用いて実現可能であるため、スイッチング制御回路8の回路構成の詳細については説明を省略する。
【0060】
電流制御トランジスタQ2は、受光制御集積回路5の瞬時的な消費電流を制御するためのトランジスタで、受光制御集積回路5の1対の電源供給端子(VDD、VSS)間に設けられ、増幅回路7、スイッチング制御回路8、電流制御回路9で消費される総電流の変動を打ち消すように、電流量が制御される。本実施形態では、直流入力電圧Vinと電源供給端子VDDの間に高圧用の抵抗R1が介装されているので、受光制御集積回路5の消費電流の変動は、電源供給端子VDDにおける電圧変動として現れるため、電流制御回路9が電源供給端子VDDの電圧が一定範囲内に収まるように、電流制御トランジスタQ2のゲート電圧を制御して電流量を調整する。具体的には、受光制御集積回路5の耐圧以下で、動作電圧範囲内となるように、電源供給端子VDDの電圧が高いほど電流制御トランジスタQ2の電流量を増加させる制御が行われる。この結果、受光制御集積回路5の動作状態に拘わらず、受光制御集積回路5の消費電流の変動が抑制されて、電源供給端子VDDの電圧が一定範囲内に抑制される。この結果、本実施形態では、受光制御集積回路5は、耐圧20V程度の中低耐圧の半導体製造プロセスで作製することができる。尚、電流制御回路9は、例えば、電源供給端子VDDの電圧と、所定の基準電圧との差分値に基づいて、電流制御トランジスタQ2のゲートに印加される電圧値をフィードバック制御する周知の回路構成を利用して実現できるので、回路構成の詳細な説明は省略する。
【0061】
次に、抵抗R1の設定例について説明する。フォトダイオードで構成された受光素子6を使用する受光制御集積回路5の消費電流は、電流制御トランジスタQ2の消費電流を除き、100kHz動作時において0.5〜1mA程度にすることが可能である。スイッチング動作用トランジスタQ1に、例えば、東芝製2SK2998を用いた場合、ゲート容量は75pF、オン時のゲート電圧は10V程度必要であり、100kHzでスイッチング動作する場合、ゲート容量の充放電電流は75μAとなる。従って、受光制御集積回路5の電流制御トランジスタQ2を除いた消費電流は0.575〜1.075mAとなる。電流制御トランジスタQ2はマージンを考慮して、0.125〜0.525mAの変動範囲で、上記消費電流の変動を相殺するように制御されるとすると、受光制御集積回路5の総消費電流、即ち、抵抗R1に流れる電流は、1.1mAの一定値となる。スイッチング電源回路1の直流入力電圧Vinを141V、受光制御集積回路5の電源供給端子VDDへの印加電圧を15Vと想定すると、抵抗R1の抵抗値は、(141V−15V)/1.1mA=114.5kΩとなる。尚、受光制御集積回路5の総消費電流は必ずしも一定値に制御されなくても良く、総消費電流の変動による電源供給端子VDDへの印加電圧の変動範囲が、受光制御集積回路5の耐圧以下で、動作電圧下限以上であれば問題ない。
【0062】
次に、スイッチング電源回路1の動作について説明する。スイッチング電源回路1に直流入力電圧Vinが印加されると、抵抗R1を介して受光制御集積回路5の電源供給端子VDDに電源電圧が印加され、受光制御集積回路5が動作を開始して、電源供給端子VDDに電源電圧が一定に維持されるとともに、スイッチング制御回路8の発振回路10が発振動作を開始する。その発振信号は、発振制御回路11でデューティ比が制御され、スイッチング制御信号として、出力駆動回路12で適正な振幅レベルに変換された後、スイッチング動作用トランジスタQ1のゲートに入力される。一方、直流入力電圧Vinが、1次巻き線L1を介してトランジスタQ1のドレインに印加されており、トランジスタQ1はゲートに入力されたスイッチング制御信号によりオンオフを繰り返すスイッチング動作を行う。この結果、1次巻き線L1に断続的に電流が流れ、2次巻き線L2の両端に交流電圧が発生し、当該交流電圧が、ダイオードD1で整流され、コンデンサC1で平滑化されて1対の出力端子OUT+、OUT−から直流の出力電圧Voutが出力される。
【0063】
出力端子OUT+、OUT−間には、ツェナーダイオードD2が逆バイアスに接続されており、出力電圧VoutがツェナーダイオードD2の降伏電圧を超えるとツェナーダイオードD2に電流が流れ、発光素子4が点灯して、出力電圧VoutがツェナーダイオードD2の降伏電圧を超えたことを示す光信号を出力する。受光素子6がその光信号を受光すると、その信号が電気信号に変換され増幅回路7で増幅され、発振制御回路11に入力される。発振制御回路11は、増幅回路7の出力に基づいて、トランジスタQ1がオフするようにスイッチング制御信号を制御するため、スイッチング動作が停止し、1次巻き線L1に電流が流れなくなるので、2次巻き線L2の両端に交流電圧が発生しなくなる。この結果、出力電圧Voutが低下して、ツェナーダイオードD2に電流が流れなくなるため、発光素子4が消灯し、発振制御回路11は再びスイッチング制御信号を出力駆動回路12からトランジスタQ1のゲートに出力し、トランジスタQ1は再びスイッチング動作を開始する。上記動作を繰り返すことで、出力端子OUT+、OUT−間の出力電圧が一定に保たれる。尚、上記動作において、ツェナーダイオードD2は、出力電圧Voutに対する電圧検出素子として機能しているが、出力電圧Voutの検出は、ツェナーダイオードD2のような単体の電圧検出素子に代えて、例えば、図16及び図17に例示した従来例2及び3の回路構成のように、出力電圧Voutの分圧値を電圧検出用ICを用いて検出するようにしても良い。
【0064】
次に、フォトカプラ2の構造について説明する。図2は、フォトカプラ2を構成する発光素子4と受光制御集積回路5を2種類の樹脂で封止したパッケージの断面構造を模式的に示す断面図である。
【0065】
図2に示すように、発光素子4は、第1リードフレーム21に戴置され、発光素子4のアノード電極AEとカソード電極CEは夫々、ボンディングワイヤー22によって第1リードフレーム21の対応する各リード端子AE、CEに電気的に接続し、受光制御集積回路5は、第2リードフレーム23に戴置され、受光制御集積回路5の電源供給端子VDD、VSS及びスイッチング制御信号を出力する出力端子SCは夫々、ボンディングワイヤー24によって第2リードフレーム23の対応する各リード端子VDD、VSS、SCに電気的に接続している。
【0066】
第1リードフレーム21と第2リードフレーム23は、夫々のチップ載置面がパッケージ内部において厚み方向に離間して設けられ、発光素子4と受光制御集積回路5は、当該厚み方向に対向して位置しており、発光素子4から出力される光信号を、受光制御集積回路5の受光素子6が受光可能な位置に夫々配置されている。
【0067】
図2に示すように、発光素子4と受光制御集積回路5間の光信号が伝達する空間を含むパッケージの樹脂封止部の内側部分が、受光素子6の感度波長範囲の光を透過する透明エポキシ樹脂25で構成され、該内側部分を囲む樹脂封止部の外側部分が、受光素子6の感度波長範囲の光を透過しない不透明な黒色エポキシ樹脂26で構成されている。尚、受光素子5の感度波長範囲は、受光素子6を構成するフォトダイオードの半導体材料のバンドギャップエネルギによって規定され、発光素子4の発光波長は、受光素子6の感度波長範囲に適合するように、発光素子4を構成する半導体材料のバンドギャップエネルギが設定される。尚、半導体材料のバンドギャップエネルギは、GaAlAs等の3元化合物半導体の場合には、GaAlAsの組成比によって決定される。
【0068】
図3に、受光制御集積回路5内の受光素子6の断面構造を模式的に示す。図3に示すように、受光制御集積回路5は、P型基板上に形成されており、受光素子6のP+、N+、Nの各不純物拡散領域は、一般的な半導体製造工程のイオン注入で形成される。受光制御集積回路5のメタル配線層を用いて、N型不純物拡散領域と接続したカソード電極27に、受光制御集積回路5の電源から抵抗または定電流回路を通して正電位を、P型不純物拡散領域と接続したアノード電極28に接地電位を夫々供給し、逆バイアス状態にしておくと、発光素子4からの光信号が、カソード電極27及びアノード電極28の上部に形成された保護絶縁膜29の開口部と、反射防止膜30を介して、PN接合部に到達すると、カソード電極27からアノード電極28に電流が流れて、カソード電極27の電位が変化する。カソード電極27と増幅回路7の入力を受光制御集積回路5のメタル配線層を用いて接続することにより、カソード電極27の電位変化が、増幅回路7で増幅され検出される。尚、保護絶縁膜29の開口部からPN接合部に至る光信号の入射経路が受光部に相当する。
【0069】
次に、受光制御集積回路5のチップレイアウトについて、図4を参照して説明する。上述の如く、スイッチング電源回路1を商用交流電源用のAC/DCアダプタとして構成する場合は、直流入力電圧Vinは約141Vとなるため、トランジスタQ1のスイッチング動作によって大きなノイズが発生する。当該ノイズは、トランジスタQ1のゲート−ドレイン間容量を経由してゲートに現れ、スイッチング制御回路8の出力駆動回路12に伝達する。受光素子としてフォトトランジスタを用いた従来のフォトカプラでは、受光素子の信号電流が大きいため(1mA程度)、ノイズ耐性が高く誤動作し難かったが、本実施形態では、受光素子6にフォトダイオードを使用しているため、信号電流が小さく(10μA程度)、ノイズの影響を受け易くなり誤動作し易くなる。そこで、本実施形態では、受光素子6の実質的なノイズ耐性を向上させるべく、受光素子6と電流調整抵抗R2と増幅回路7からなる受光回路部と、出力駆動回路12とをチップ内において、相互に離間して対向する2辺に分散配置して、出力駆動回路12に伝達するノイズが、受光回路部に侵入し難いチップレイアウトとしている。尚、その他の電流制御トランジスタQ2、電流制御回路9、発振回路10、及び、発振制御回路11は、出力駆動回路12と受光回路部の間のチップ中央部に配置している。
【0070】
図4に示す受光制御集積回路5のチップレイアウトでは、増幅回路7から発振制御回路11及び発振回路10への信号の流れを重視した回路配置となっているが、図5に示すように、出力駆動回路12と受光回路部の間に、低インピーダンスの電流制御トランジスタQ2や電流制御回路9を配置して、両回路を分離することで、受光回路部へのノイズの侵入を更に抑制することができる。
【0071】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源回路1について説明する。第2実施形態に係るスイッチング電源回路1は、フォトカプラ2を構成する受光制御集積回路5の回路構成が、第1実施形態と異なる。フォトカプラ2の構成及びパッケージ構造、及び、スイッチング電源回路1のフォトカプラ2を用いた回路構成は、第1実施形態と同じであり、重複する説明は割愛する。以下、第2実施形態に係る受光制御集積回路5の回路構成について、図6を参照して説明する。
【0072】
本実施形態では、受光制御集積回路5は、1対のフォトダイオードで構成された受光素子6、6a(第1受光素子6と第2受光素子6a)、受光素子6、6aの電流調整抵抗R2、R3(第1電流調整抵抗R2と第2電流調整抵抗R3)、第1電流調整抵抗R2と第1受光素子6からなる第1受光回路の出力信号を増幅する第1増幅回路7、第2電流調整抵抗R3と第2受光素子6aからなる第2受光回路の出力信号を増幅する第2増幅回路7a、第1増幅回路7と第2増幅回路7aの出力信号を差動増幅する差動増幅回路7b、スイッチング動作用のトランジスタQ1のオンオフを制御するスイッチング制御回路8、電流制御トランジスタQ2、及び、電流制御トランジスタを流れる電流を制御する電流制御回路9を、1つのチップに集積化して構成される。従って、受光素子と負荷回路と増幅回路からなる受光回路部の構成が、第1実施形態と異なる。しかし、スイッチング制御回路8、電流制御トランジスタQ2、及び、電流制御回路9の回路構成は、第1実施形態と同じである。但し、第1実施形態とは異なり、スイッチング制御回路8の発振制御回路11は、増幅回路7の出力ではなく、差動増幅回路7bの出力に基づいて発振回路10の発振を制御する。
【0073】
1対の受光素子6、6aは、同じ受光特性を備える同じフォトダイオードで構成されるが、一方の第1受光素子6だけが、第1実施形態の受光制御集積回路5の受光素子6と同様に、発光素子4から出力される光信号を受光可能に、図3に例示したPN接合部の上部が保護絶縁膜29に覆われずに開口しており、他方の第2受光素子6aは、発光素子4から出力される光信号を受光しないように、PN接合部の上部がメタル層等によって遮蔽されている。尚、第2受光素子6aは、発光素子4から出力される光信号を受光しないので、1対の受光素子6、6aは、少なくとも光を受光していないときの暗電流特性が同じであれば良い。
【0074】
受光制御集積回路5の上記回路構成によって、発光素子4から光信号が出力されると、第1受光素子6がその光信号を受光して電気信号に変換され、第1増幅回路7で増幅される。一方、第2受光素子6aは、遮光されており光信号を受光することなく、第1受光素子6が光信号を受光していないときの電気信号と同じ信号が出力され、第2増幅回路7aで増幅される。差動増幅回路7bは、第1増幅回路7と第2増幅回路7aの両出力信号を差動入力として受け付けて、その差分を増幅する。従って、発光素子4からの光信号が微弱であっても差動増幅回路7bでは、高感度に光信号を検出することができる。この結果、発光素子4の駆動電流をより低減でき低消費電流化が図れるとともに、差動増幅回路7bを使用しているため、第1受光回路と第2受光回路の2系統に対して同相ノイズが重畳しても差動増幅回路7bで当該同相ノイズがキャンセルされるため、受光素子及び増幅回路の耐ノイズ性が向上する。
【0075】
〈第3実施形態〉
次に、本発明の第3実施形態に係るスイッチング電源回路1について説明する。第3実施形態に係るスイッチング電源回路1は、第1実施形態及び第2実施形態からの変形例で、フォトカプラ2を構成する受光制御集積回路5の素子構造が、第1実施形態及び第2実施形態と異なる。フォトカプラ2の構成及びパッケージ構造、受光制御集積回路5の回路構成、及び、スイッチング電源回路1のフォトカプラ2を用いた回路構成は、第1実施形態または第2実施形態と同じであり、重複する説明は割愛する。以下、第3実施形態に係る受光制御集積回路5の素子構造について、図7を参照して説明する。図7は、第3実施形態における受光制御集積回路5内の受光素子6の断面構造を模式的に示す断面図である。
【0076】
スイッチング電源回路の1次側回路と2次側回路間に通常より高電圧が印加される可能性のある用途に使用され、1次−2次回路間の強化絶縁が要求される場合があり、本実施形態では、当該要求に合わせて、フォトカプラ2の1次−2次回路間、つまり、発光素子4と受光制御集積回路5間の絶縁耐圧を強化している。具体的には、発光素子4側と受光制御集積回路5側に高電圧が印加されると、発光素子4と受光制御集積回路5間に強電界が発生し、受光制御集積回路5の表面が帯電して、極性反転が生じて、受光制御集積回路5の受光素子6が誤動作する可能性があるので、当該誤動作を防止するために、図7に示すように、受光制御集積回路5の表層の保護絶縁膜29の表面に当該帯電を防止するためのメタルシールド膜31を設けている。尚、メタルシールド膜31は、保護絶縁膜29の開口部には設けられていないので、発光素子4からの光信号は、当該開口部と反射防止膜30を介して、受光素子6のPN接合部にまで入射可能に構成されている。
【0077】
尚、発光素子4と受光制御集積回路5間の絶縁耐圧を強化する方法としては、図7に示す受光制御集積回路5の保護絶縁膜29の表面にメタルシールド膜31を設ける方法に代えて、或いは、追加して、以下の図8〜図10に示すように、フォトカプラ2のパッケージ内における第1リードフレーム21、第2リードフレーム23、発光素子4、及び、受光制御集積回路5の配置を調整するのも好ましい。
【0078】
図8に示す実施例では、第1リードフレーム21側のボンディングワイヤー22と、第2リードフレーム23側の受光制御集積回路5の受光素子6が、パッケージの厚み方向に対向しないように、第1リードフレーム21、第2リードフレーム23、発光素子4、及び、受光制御集積回路5の配置を調整することで、発光素子4と受光制御集積回路5間に強電界が発生しても、ボンディングワイヤー22からの当該強電界の受光素子6に対する影響が緩和される。
【0079】
更に、図9に示す実施例では、第1リードフレーム21側のボンディングワイヤー22と、第2リードフレーム23側の受光制御集積回路5が、パッケージの厚み方向に対向しないように、且つ、第2リードフレーム23側のボンディングワイヤー24と、第1リードフレーム21側の発光素子4が、パッケージの厚み方向に対向しないように、発光素子4の第1リードフレーム21上における載置個所をボンディングワイヤー22側に近づけ、受光制御集積回路5の第2リードフレーム23上における載置個所をボンディングワイヤー24側に近づけることで、発光素子4と受光制御集積回路5間に強電界が発生しても、ボンディングワイヤー22からの当該強電界の受光素子6に対する影響が緩和され、ボンディングワイヤー24からの当該強電界の発光素子4に対する影響が緩和される。
【0080】
更に、図10に示す実施例では、第1リードフレーム21側のボンディングワイヤー22と第2リードフレーム23がパッケージの厚み方向に対向しないように、且つ、第2リードフレーム23側のボンディングワイヤー24と第1リードフレーム21がパッケージの厚み方向に対向しないように、各リードフレーム21、23が、夫々を固定している黒色エポキシ樹脂26側にオフセットして、つまり、第1リードフレーム21とボンディングワイヤー24、第2リードフレーム23とボンディングワイヤー22が、夫々のチップ載置面と平行な方向に離間するように配置されることで、発光素子4と受光制御集積回路5間に強電界が発生しても、ボンディングワイヤー22からの当該強電界の受光素子6に対する影響が緩和され、ボンディングワイヤー24からの当該強電界の発光素子4に対する影響が緩和される。
【0081】
〈別実施形態〉
以下に、上記第1乃至第3実施形態の別実施形態を説明する。
【0082】
〈1〉上記各実施形態では、発光素子4を構成する半導体材料は、受光素子6の感度波長範囲に適合する材料であれば、特定の材料に限定されるものではないが、スイッチング電源回路1の周辺部品であるトランス3、ダイオードD1、コンデンサC1等の更なる小型化と、出力電圧Voutの変動を抑制するために、発光素子4としてGaAlAsで構成される発光ダイオードを用いて、スイッチング速度を向上させるのが好ましい。
【0083】
発光素子4としてGaAsで構成される発光ダイオードを用いた場合は、フォトトランジスタと組み合わせた信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、夫々5μ秒程度であり、実用周波数として100kHz程度であるが、GaAlAsで構成される発光ダイオードを用いることで、立ち上がり時間及び立ち下がり時間を夫々0.1μ秒にまで短縮できるので、実用周波数を5MHz程度まで高速化できる。この結果、スイッチング電源回路1の小型化の阻害要因となっていたトランスの小型化が一層図れるため、携帯用機器用の充電器の小型化が可能となる。
【0084】
〈2〉上記各実施形態では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1を使用したが、図11に示すように、抵抗R1に代えて、デプレッション型高耐圧FET(電界効果トランジスタ)Q3を用いるのも好ましい。トランジスタQ3は、ドレインが1次巻き線L1の一方端に、ソースがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ゲートがフォトカプラ2の他方の電源供給端子VSSに夫々接続しており、ゲートには常時接地電圧の0Vが印加されている。当該トランジスタQ3の使用によって、フォトカプラ2の電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するとともに、スイッチング電源回路1の起動時間の短縮化が図れる。抵抗R1がトランジスタQ3に置き換わっている以外は、上記各実施形態と同じである。以下、図11に示すスイッチング電源回路1における受光制御集積回路5への電源電圧供給動作について説明する。
【0085】
電源供給端子VDDの端子電圧が0Vである初期状態において、1次巻き線L1の一方端に直流入力電圧Vinが入力すると、トランジスタQ3のゲート電圧及びソース電圧が0Vで、トランジスタQ3がデプレッション型であるため、トランジスタQ3のドレイン側からソース側に向けてドレイン電流が流れ始める。このドレイン電流により電源供給端子VDDの端子電圧が上昇すると、トランジスタQ3のソース電圧が上昇するため、トランジスタQ3のソースから見たゲート‐ソース間電圧が徐々に低下し、当該ゲート‐ソース間電圧がトランジスタQ3のピンチオフ電圧に達するとトランジスタQ3はオフしてドレイン電流は流れなくなる。以上より、電源供給端子VDDの端子電圧はトランジスタQ3のピンチオフ電圧を超えて上昇することはなく、当該ピンチオフ電圧以下のドレイン電流と受光制御集積回路5の消費電流が等しくなる電圧に固定される。
【0086】
また、上記各実施形態のように、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、トランジスタQ3のドレイン電流を大きくすることにより、ドレイン電流が流れ始める初期段階で起動電流を大きくすることが可能となり、受光制御集積回路5の電源供給端子VDDの端子電圧の上昇速度が速くなり、スイッチング電源回路1の起動時間が短縮化される。
【0087】
尚、上述の如く、電源供給端子VDDの端子電圧はトランジスタQ3のピンチオフ電圧を超えて上昇することはないため、受光制御集積回路5の消費電流が変動しても、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧の変動は抑制されることになる。このため、上記各実施形態では、受光制御集積回路5に受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を設けていたが、電源供給端子VDDの端子電圧の変動が、受光制御集積回路5が動作電圧範囲内に収まっている場合には、当該電源供給端子VDDの端子電圧安定化用の回路を省略することができる。
【0088】
〈3〉上記各実施形態では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1を使用したが、図12に示すように、抵抗R1に代えて、NPN型のバイポーラトランジスタQ4を用いるのも好ましい。トランジスタQ4は、コレクタが1次巻き線L1の一方端に、エミッタがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ベースが1次巻き線L1の一方端とフォトカプラ2の他方の電源供給端子VSSの間に接続された分圧抵抗R4、R5の中間点N1に、夫々接続しており、ベースには直流入力電圧Vinに分圧抵抗R4、R5の分圧比を乗じた中間電圧Vm1が印加されている。当該トランジスタQ4の使用によって、フォトカプラ2の電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するとともに、スイッチング電源回路1の起動時間の短縮化が図れる。抵抗R1がトランジスタQ4に置き換わり、分圧抵抗R4、R5を追加している以外は、上記各実施形態と同じである。以下、図12に示すスイッチング電源回路1における受光制御集積回路5への電源電圧供給動作について説明する。
【0089】
1次巻き線L1の一方端に直流入力電圧Vinが入力すると、トランジスタQ4のベースに直流入力電圧Vinに分圧抵抗R4、R5の分圧比を乗じた中間電圧Vm1が印加され、電源供給端子VDDの端子電圧が0Vである初期状態において、エミッタ電圧が0Vであるため、トランジスタQ4のコレクタ側からエミッタ側に向けてコレクタ電流が流れ始める。このコレクタ電流により電源供給端子VDDの端子電圧が上昇すると、トランジスタQ4のエミッタ電圧が上昇するため、トランジスタQ4のエミッタから見たベース‐エミッタ間電圧が徐々に低下し、当該ベース‐エミッタ間電圧が約0.7Vに近づくとトランジスタQ4はベース電流が遮断され、コレクタ電流が流れなくなる。以上より、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm1から約0.7Vを下回った中間電圧Vm2を超えて上昇することはなく、当該中間電圧Vm2以下のコレクタ電流と受光制御集積回路5の消費電流が等しくなる電圧に固定される。尚、トランジスタQ4は、バイポーラトランジスタに代えて、ドレインが1次巻き線L1の一方端に、ソースがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ゲートが中間点N1に、夫々接続した高耐圧のN型MOSFETであっても良い。N型MOSFETの場合でも、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm1からN型MOSFETの閾値電圧を下回った中間電圧Vm2を超えて上昇することはなく、当該中間電圧Vm2以下のコレクタ電流と受光制御集積回路5の消費電流が等しくなる電圧に固定される。
【0090】
また、上記各実施形態のように、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、トランジスタQ4のコレクタ電流を大きくすることにより、コレクタ電流が流れ始める初期段階で起動電流を大きくすることが可能となり、受光制御集積回路5の電源供給端子VDDの端子電圧の上昇速度が速くなり、スイッチング電源回路1の起動時間が短縮化される。
【0091】
尚、上述の如く、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm2を超えて上昇することはないため、受光制御集積回路5の消費電流が変動しても、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧の変動は抑制されることになる。このため、上記各実施形態では、受光制御集積回路5に受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を設けていたが、電源供給端子VDDの端子電圧の変動が、受光制御集積回路5が動作電圧範囲内に収まっている場合には、当該電源供給端子VDDの端子電圧安定化用の回路を省略することができる。
【0092】
〈4〉上記各実施形態では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1を使用したが、図13に示すように、抵抗R1に代えて、NPN型のバイポーラトランジスタQ4を用いるのも好ましい。トランジスタQ4は、コレクタが1次巻き線L1の一方端に、エミッタがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ベースが1次巻き線L1の一方端とフォトカプラ2の他方の電源供給端子VSSの間に接続された抵抗R6とツェナーダイオードD3の直列回路の中間点N2に、夫々接続しており、ベースにはツェナーダイオードD3の降伏電圧で規定される中間電圧Vm3が印加されている。当該トランジスタQ4の使用によって、フォトカプラ2の電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するとともに、スイッチング電源回路1の起動時間の短縮化が図れる。抵抗R1がトランジスタQ4に置き換わり、抵抗R6とツェナーダイオードD3を追加している以外は、上記各実施形態と同じである。尚、トランジスタQ4は、上記別実施形態〈3〉と同様に、バイポーラトランジスタに代えて、ドレインが1次巻き線L1の一方端に、ソースがフォトカプラ2の電源供給端子VDDに、ゲートが中間点N2に、夫々接続した高耐圧のN型MOSFETであっても良い。以下、図13に示すスイッチング電源回路1における受光制御集積回路5への電源電圧供給動作について説明する。
【0093】
1次巻き線L1の一方端に直流入力電圧Vinが入力すると、トランジスタQ4のベースにツェナーダイオードD3の降伏電圧で規定される中間電圧Vm3が印加され、電源供給端子VDDの端子電圧が0Vである初期状態において、エミッタ電圧が0Vであるため、トランジスタQ4のコレクタ側からエミッタ側に向けてコレクタ電流が流れ始める。このコレクタ電流により電源供給端子VDDの端子電圧が上昇すると、トランジスタQ4のエミッタ電圧が上昇するため、トランジスタQ4のエミッタから見たベース‐エミッタ間電圧が徐々に低下し、当該ベース‐エミッタ間電圧が約0.7Vに近づくとトランジスタQ4はベース電流が遮断され、コレクタ電流が流れなくなる。以上より、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm3から約0.7Vを下回った中間電圧Vm4を超えて上昇することはなく、当該中間電圧Vm4以下のコレクタ電流と受光制御集積回路5の消費電流が等しくなる電圧に固定される。
【0094】
また、上記各実施形態のように、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、トランジスタQ4のコレクタ電流を大きくすることにより、コレクタ電流が流れ始める初期段階で起動電流を大きくすることが可能となり、受光制御集積回路5の電源供給端子VDDの端子電圧の上昇速度が速くなり、スイッチング電源回路1の起動時間が短縮化される。
【0095】
尚、上述の如く、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm4を超えて上昇することはないため、受光制御集積回路5の消費電流が変動しても、抵抗R1で直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧の変動は抑制されることになる。このため、上記各実施形態では、受光制御集積回路5に受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を設けていたが、電源供給端子VDDの端子電圧の変動が、受光制御集積回路5が動作電圧範囲内に収まっている場合には、当該電源供給端子VDDの端子電圧安定化用の回路を省略することができる。
【0096】
〈5〉上記別実施形態〈2〉〜〈4〉では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1に代えて、ゲートが接地されたデプレッション型高耐圧電界効果トランジスタQ3、または、ベースに中間電圧が印加される高耐圧のNPN型のバイポーラトランジスタQ4またはゲートに中間電圧が印加される高耐圧N型MOSFETを用いることで、当該降圧素子として高抵抗の抵抗R1を用いる場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するため、受光制御集積回路5に設けていた受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を省略できる旨の説明を行った。
【0097】
ここで、当該降圧素子として高抵抗の抵抗R1を用いた場合であっても、受光制御集積回路5の消費電流の変動が予め抑制されている場合には、当該降圧素子として高抵抗の抵抗R1に代えて、上記トランジスタQ3、Q4を使用せずとも電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を省略できることになる。
【0098】
更に、受光制御集積回路5の消費電流の変動が十分に抑制されていない場合であっても、当該降圧素子として高抵抗の抵抗R1を用いても、図14に示すように、補助巻き線である3次巻き線L3をトランス3に設けることで、スイッチング電源回路1の起動時には、直流入力電圧Vinを抵抗R1で降圧して電源電圧供給するとともに、スイッチング電源回路1が一旦スイッチング動作を開始して、3次巻き線L3に交流電圧が発生して、ダイオードD4とコンデンサC2で整流、平滑化された直流電圧を電源供給端子VDDに供給することで、スイッチング動作開始後の消費電流を3次巻き線L3側から賄うことが可能となるため、受光制御集積回路5の消費電流の変動が、抵抗R1の端子間電圧として現れないため、電源供給端子VDDの端子電圧が安定化するため、受光制御集積回路5に設けていた受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を省略できる。
【0099】
尚、図14に示す回路構成における抵抗R1の設定は、上記第1実施形態の場合より、より高抵抗に設定する。つまり、スイッチング電源回路1の起動時における受光制御集積回路5の消費電流が小さい場合に合わせて、電源供給端子VDDの端子電圧が受光制御集積回路5の耐圧以下となるように、抵抗R1の抵抗値を設定すれば十分であり、スイッチング動作開始後の消費電流の増分は、3次巻き線L3側から賄うことが可能であるためである。
【0100】
〈6〉上記別実施形態〈2〉〜〈4〉では、直流入力電圧Vinを降圧してフォトカプラ2に電源供給する降圧素子として高抵抗の抵抗R1に代えて、ゲートが接地されたデプレッション型高耐圧電界効果トランジスタQ3、または、ベースに中間電圧が印加される高耐圧のNPN型のバイポーラトランジスタQ4またはゲートに中間電圧が印加される高耐圧N型MOSFETを使用する場合の説明を行ったが、上記のように降圧素子を高耐圧の単体素子で構成するのに代えて、抵抗R1と、ゲートが接地されたデプレッション型高耐圧電界効果トランジスタQ3、ベースに中間電圧が印加される高耐圧のNPN型のバイポーラトランジスタQ4、または、ゲートに中間電圧が印加される高耐圧N型MOSFETとの直列回路で構成するようにしても良い。更に、直流入力電圧Vinを抵抗R1で予備的に降圧できるため、上記各トランジスタを中低耐圧プロセスで作製し、受光制御集積回路5内に集積化するのも好ましい。降圧素子を抵抗R1と上記各トランジスタの直列回路で構成する場合も、上記別実施形態〈2〉〜〈4〉の場合と同様に、電源供給端子VDDの端子電圧は中間電圧Vm2またはVm4を超えて上昇することはないため、受光制御集積回路5の消費電流が変動しても、抵抗R1だけで直流入力電圧Vinを降圧する場合と比較して、電源供給端子VDDの端子電圧の変動は抑制されることになる。このため、上記各実施形態では、受光制御集積回路5に受光制御集積回路5の消費電流の変動を抑制して電源供給端子VDDの端子電圧を安定化させるための電流制御トランジスタQ2と電流制御回路9を設けていたが、電源供給端子VDDの端子電圧の変動が、受光制御集積回路5が動作電圧範囲内に収まっている場合には、当該電源供給端子VDDの端子電圧安定化用の回路を省略することができる。
【0101】
〈7〉上記各実施形態では、トランジスタQ1は電界効果型トランジスタとして説明してきたが、バイポーラトランジスタを使用することでも同等の効果が期待できる。バイポーラトランジスタを用いる場合、電界効果型トランジスタのゲート、ドレイン、ソースを、夫々バイポーラトランジスタのベース、コレクタ、エミッタに置換すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、フォトカプラを使用したスイッチング電源回路に利用可能であり、ACアダプタ、LED照明、液晶テレビ、パーソナルコンピュータ等、商用交流電源から直流電圧を生成する必要のあるシステムに搭載でき、システムの小型化、出力電圧の高精度化、電源の低消費電力化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第1実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図2】図1に示すフォトカプラを構成する発光素子と受光制御集積回路を2種類の樹脂で封止したパッケージの断面構造を模式的に示す断面図
【図3】図1に示す受光制御集積回路内の受光素子の断面構造を模式的に示す断面図
【図4】図1に示す受光制御集積回路のチップレイアウトの一例を示す図
【図5】図1に示す受光制御集積回路のチップレイアウトの他の一例を示す図
【図6】本発明に係るフォトカプラの第2実施形態における受光制御集積回路の概略の回路構成を示す回路図
【図7】本発明に係るフォトカプラの第3実施形態における受光制御集積回路内の受光素子の断面構造を模式的に示す断面図
【図8】本発明に係るフォトカプラの第3実施形態におけるパッケージ内における第1リードフレーム、第2リードフレーム、発光素子、及び、受光制御集積回路の配置関係を説明する断面図
【図9】本発明に係るフォトカプラの第3実施形態におけるパッケージ内における第1リードフレーム、第2リードフレーム、発光素子、及び、受光制御集積回路の他の配置関係を説明する断面図
【図10】本発明に係るフォトカプラの第3実施形態におけるパッケージ内における第1リードフレーム、第2リードフレーム、発光素子、及び、受光制御集積回路の更に他の配置関係を説明する断面図
【図11】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第1の別実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図12】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第2の別実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図13】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第3の別実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図14】本発明に係るフォトカプラとスイッチング電源回路の第4の別実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図15】スイッチング電源回路の第1の従来例の回路構成を示す回路図
【図16】スイッチング電源回路の第2の従来例の回路構成を示す回路図
【図17】スイッチング電源回路の第1の従来例の回路構成を示す回路図
【符号の説明】
【0104】
1: 本発明に係るスイッチング電源回路
2: 本発明に係るフォトカプラ
3: トランス
4: 発光素子(発光ダイオード)
5: 受光制御集積回路
6: 受光素子(第1受光素子)
6a: 第2受光素子
7: 増幅回路(第1増幅回路)
7a: 第2増幅回路
7b: 差動増幅回路
8: スイッチング制御回路
9: 電流制御回路
10: 発振回路
11: 発振制御回路
12: 出力駆動回路
21: 第1リードフレーム
22、24: ボンディングワイヤー
23: 第2リードフレーム
25: 透明エポキシ樹脂
26: 黒色エポキシ樹脂
27: 受光素子のカソード電極
28: 受光素子のアノード電極
29: 保護絶縁膜
30: 反射防止膜
31: メタルシールド膜
AE: 発光素子のアノード電極
CE: 発光素子のカソード電極
C1、C2: 平滑用コンデンサ
D1、D4: 整流用ダイオード
D2、D3: ツェナーダイオード
L1: 1次巻き線
L2: 2次巻き線
L3: 3次巻き線
N1、N2: 中間点
OUT+、OUT−: スイッチング電源回路の出力端子
Q1: スイッチング動作用のトランジスタ
Q2: 電流制御トランジスタ
Q3: デプレッション型高耐圧FET(降圧素子)
Q4: NPN型のバイポーラトランジスタ(降圧素子)
R1: 抵抗(降圧素子)
R2: 受光素子の電流調整抵抗(第1電流調整抵抗)
R3: 第2受光素子の電流調整抵抗(第2電流調整抵抗)
R4、R5: 分圧抵抗
R6: 抵抗
SC: 受光制御集積回路の出力端子
Vin: 直流入力電圧
Vout: 直流出力電圧
Vm1〜Vm4: 中間電圧
VDD: 電源供給端子
VSS: 電源供給端子(接地端子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源回路の2次側の出力電圧情報を1次側のスイッチング動作の制御用に光信号を介してフィードバックするためのフォトカプラであって、
前記スイッチング電源回路の前記出力電圧情報に基づいて点滅する光信号を出射する発光素子と、
前記発光素子から出射された前記光信号を受光するフォトダイオードで構成された受光素子、前記受光素子の出力信号を増幅する増幅回路、及び、前記スイッチング電源回路の前記スイッチング動作を制御するスイッチング制御回路を、1つのチップに集積して構成された受光制御集積回路と、を備えてなり、
前記受光制御集積回路が、直流電源電圧が供給される1対の電源供給端子と、前記スイッチング動作を制御するためのスイッチング制御信号を出力する出力端子を備え、
前記発光素子と前記受光制御集積回路が、前記発光素子から前記受光素子へ前記光信号が伝達可能に、1つのパッケージ内に封止されていることを特徴とするフォトカプラ。
【請求項2】
前記受光制御集積回路が、前記1つのチップ内において、前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子間を流れる電源電流を制御する電流制御トランジスタを、前記1対の電源供給端子間に備え、前記1対の電源供給端子の端子間電圧が所定の電圧範囲内となるように前記電流制御トランジスタを流れる電流を制御する電流制御回路を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のフォトカプラ。
【請求項3】
前記受光制御集積回路が、前記スイッチング制御回路の前記スイッチング制御信号を出力する出力駆動回路部と、前記受光素子と前記増幅回路からなる受光回路部が、前記1つのチップ内において、相互に離間して対向する2辺に分散配置され、前記両回路部の間に、前記両回路部以外の回路が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトカプラ。
【請求項4】
前記受光素子が、前記光信号を受光する第1受光素子と、前記光信号を受光しないように受光部が遮蔽された前記第1受光素子と暗電流特性が同じ第2受光素子の2つの受光素子で構成され、
前記増幅回路が、前記第1受光素子の出力信号を増幅する第1増幅回路と、前記第2受光素子の出力信号を増幅する前記第1増幅回路と同じ回路構成の第2増幅回路と、前記第1増幅回路の出力と前記第2増幅回路の出力を差動増幅する差動増幅回路を備えて構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項5】
前記受光制御集積回路が、チップ表面を覆うメタルシールド膜を備え、前記受光素子に前記光信号が入射可能に前記メタルシールド膜の一部が開口していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項6】
前記発光素子を戴置し、前記発光素子の入力端子とワイヤーボンディングにより電気的に接続するリード端子を備える第1リードフレームと、前記受光制御集積回路を戴置し、前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子及び前記出力端子とワイヤーボンディングにより電気的に接続するリード端子を備える第2リードフレームが、前記1つのパッケージ内において夫々のチップ載置面が厚み方向に離間して設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項7】
前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレーム側の前記受光制御集積回路の前記受光素子が、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを特徴とする請求項6に記載のフォトカプラ。
【請求項8】
前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレーム側の前記受光制御集積回路が、前記厚み方向に対向しないように、且つ、前記第2リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第1リードフレーム側の前記発光素子が、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを特徴とする請求項6に記載のフォトカプラ。
【請求項9】
前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレームが、前記厚み方向に対向しないように、且つ、前記第2リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第1リードフレームが、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを特徴とする請求項6に記載のフォトカプラ。
【請求項10】
前記発光素子が、GaAlAs化合物半導体からなる発光ダイオードで構成されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項11】
前記発光素子と前記受光素子間の前記光信号が伝達する空間を含む前記1つのパッケージの樹脂封止部の内側部分が、前記受光素子の感度波長範囲の光を透過する透明樹脂で構成され、前記内側部分を囲む前記樹脂封止部の外側部分が、前記受光素子の感度波長範囲の光を透過しない不透明樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載のフォトカプラと、
1次巻き線と2次巻き線を有するトランスと、
前記1次巻き線の一方端に入力する直流電圧を降圧して、前記フォトカプラの前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の一方側に入力する降圧素子と、
前記1次巻き線の他方端と前記フォトカプラの前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側の間に設けられ、前記受光制御集積回路の前記出力端子から出力される前記スイッチング制御信号によってオンオフが制御されるスイッチング動作用トランジスタと、
前記2次巻き線の両端間に設けられた整流平滑回路と、
前記整流平滑回路の出力電圧を検出し、前記出力電圧情報として前記発光素子に入力する電圧検出素子または電圧検出回路と、を備えて構成されることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項13】
前記降圧素子が、抵抗素子、ゲートが前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側に接続するデプレッション型FET、及び、ベースまたはゲートに前記1次巻き線の一方端と前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側との間の中間電圧が供給されるトランジスタの少なくとも何れか1つを備えて構成されることを特徴とする請求項12に記載のスイッチング電源回路。
【請求項1】
スイッチング電源回路の2次側の出力電圧情報を1次側のスイッチング動作の制御用に光信号を介してフィードバックするためのフォトカプラであって、
前記スイッチング電源回路の前記出力電圧情報に基づいて点滅する光信号を出射する発光素子と、
前記発光素子から出射された前記光信号を受光するフォトダイオードで構成された受光素子、前記受光素子の出力信号を増幅する増幅回路、及び、前記スイッチング電源回路の前記スイッチング動作を制御するスイッチング制御回路を、1つのチップに集積して構成された受光制御集積回路と、を備えてなり、
前記受光制御集積回路が、直流電源電圧が供給される1対の電源供給端子と、前記スイッチング動作を制御するためのスイッチング制御信号を出力する出力端子を備え、
前記発光素子と前記受光制御集積回路が、前記発光素子から前記受光素子へ前記光信号が伝達可能に、1つのパッケージ内に封止されていることを特徴とするフォトカプラ。
【請求項2】
前記受光制御集積回路が、前記1つのチップ内において、前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子間を流れる電源電流を制御する電流制御トランジスタを、前記1対の電源供給端子間に備え、前記1対の電源供給端子の端子間電圧が所定の電圧範囲内となるように前記電流制御トランジスタを流れる電流を制御する電流制御回路を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のフォトカプラ。
【請求項3】
前記受光制御集積回路が、前記スイッチング制御回路の前記スイッチング制御信号を出力する出力駆動回路部と、前記受光素子と前記増幅回路からなる受光回路部が、前記1つのチップ内において、相互に離間して対向する2辺に分散配置され、前記両回路部の間に、前記両回路部以外の回路が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトカプラ。
【請求項4】
前記受光素子が、前記光信号を受光する第1受光素子と、前記光信号を受光しないように受光部が遮蔽された前記第1受光素子と暗電流特性が同じ第2受光素子の2つの受光素子で構成され、
前記増幅回路が、前記第1受光素子の出力信号を増幅する第1増幅回路と、前記第2受光素子の出力信号を増幅する前記第1増幅回路と同じ回路構成の第2増幅回路と、前記第1増幅回路の出力と前記第2増幅回路の出力を差動増幅する差動増幅回路を備えて構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項5】
前記受光制御集積回路が、チップ表面を覆うメタルシールド膜を備え、前記受光素子に前記光信号が入射可能に前記メタルシールド膜の一部が開口していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項6】
前記発光素子を戴置し、前記発光素子の入力端子とワイヤーボンディングにより電気的に接続するリード端子を備える第1リードフレームと、前記受光制御集積回路を戴置し、前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子及び前記出力端子とワイヤーボンディングにより電気的に接続するリード端子を備える第2リードフレームが、前記1つのパッケージ内において夫々のチップ載置面が厚み方向に離間して設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項7】
前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレーム側の前記受光制御集積回路の前記受光素子が、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを特徴とする請求項6に記載のフォトカプラ。
【請求項8】
前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレーム側の前記受光制御集積回路が、前記厚み方向に対向しないように、且つ、前記第2リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第1リードフレーム側の前記発光素子が、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを特徴とする請求項6に記載のフォトカプラ。
【請求項9】
前記第1リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第2リードフレームが、前記厚み方向に対向しないように、且つ、前記第2リードフレーム側の前記ワイヤーボンディングと、前記第1リードフレームが、前記厚み方向に対向しないように、前記第1リードフレーム、前記第2リードフレーム、前記発光素子、及び、前記受光制御集積回路の前記1つのパッケージ内における配置が設定されていることを特徴とする請求項6に記載のフォトカプラ。
【請求項10】
前記発光素子が、GaAlAs化合物半導体からなる発光ダイオードで構成されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項11】
前記発光素子と前記受光素子間の前記光信号が伝達する空間を含む前記1つのパッケージの樹脂封止部の内側部分が、前記受光素子の感度波長範囲の光を透過する透明樹脂で構成され、前記内側部分を囲む前記樹脂封止部の外側部分が、前記受光素子の感度波長範囲の光を透過しない不透明樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のフォトカプラ。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載のフォトカプラと、
1次巻き線と2次巻き線を有するトランスと、
前記1次巻き線の一方端に入力する直流電圧を降圧して、前記フォトカプラの前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の一方側に入力する降圧素子と、
前記1次巻き線の他方端と前記フォトカプラの前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側の間に設けられ、前記受光制御集積回路の前記出力端子から出力される前記スイッチング制御信号によってオンオフが制御されるスイッチング動作用トランジスタと、
前記2次巻き線の両端間に設けられた整流平滑回路と、
前記整流平滑回路の出力電圧を検出し、前記出力電圧情報として前記発光素子に入力する電圧検出素子または電圧検出回路と、を備えて構成されることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項13】
前記降圧素子が、抵抗素子、ゲートが前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側に接続するデプレッション型FET、及び、ベースまたはゲートに前記1次巻き線の一方端と前記受光制御集積回路の前記1対の電源供給端子の他方側との間の中間電圧が供給されるトランジスタの少なくとも何れか1つを備えて構成されることを特徴とする請求項12に記載のスイッチング電源回路。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図7】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図7】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−284618(P2009−284618A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132646(P2008−132646)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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