説明

フォトクロミック液状組成物

【課題】 従来のフォトクロミック液状組成物では成し得なかった耐光性の向上と共に、発色濃度の向上、更には耐水性も付与できるため、製造時の制約が少なく、あらゆる分野に使用できる応用性に優れたフォトクロミック液状組成物を提供する。
【解決手段】 スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物を、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーに溶解してなるフォトクロミック材料と、樹脂を含むビヒクルとからなる塗料、印刷用インキ、筆記用インキ、化粧用ラッカー、繊維用着色液、絵具等のフォトクロミック液状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトクロミック液状組成物に関する。更に詳細には、含有されるフォトクロミック化合物の耐光堅牢性及び発色濃度を向上させたフォトクロミック液状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、耐光堅牢性を向上させたフォトクロミック材料としては、フォトクロミック化合物にN−ニトロソフェニル系化合物を添加したもの(例えば、特許文献1参照)、有機亜リン酸エステル化合物及びヒンダードフェノールを添加したもの(例えば、特許文献2参照)、特定3級アミン化合物を添加したもの(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【特許文献1】特開平5−25472号公報
【特許文献2】特開平7−216350号公報
【特許文献3】特許第2724031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のフォトクロミック化合物について実用性を確認したところ、耐光堅牢性を向上させる効果を有する反面、色濃度が低下するといった不具合を生じ易く、実用性を損なうものであり、それを含む液状組成物も同様の不具合を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は耐光性改良検討を行った結果、特定のスチレン系オリゴマーにフォトクロミック化合物を溶解させたフォトクロミック材料と、樹脂を含むビヒクルとからなるフォトクロミック液状組成物は耐光性が向上し、且つ、発色濃度を向上させることを見出した。
即ち、本発明は、スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物を、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーに溶解してなるフォトクロミック材料と、樹脂を含むビヒクルとからなるフォトクロミック液状組成物を要件とする。
更には、前記フォトクロミック化合物と、スチレン系オリゴマーの重量比が1:1〜1:10000であること、前記スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が200乃至4000であること、前記フォトクロミック材料中に、水酸基、エステル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一以上の官能基を有し、沸点が150℃以上であり、且つ、融点又は軟化点が150℃以下の有機化合物をスチレン系オリゴマー100重量部に対し、50重量部以下の割合で添加してなること、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでなること、前記ヒンダードアミン系光安定剤が下記一般式(1)で示される化合物であること、
【化1】

(式中、R1 は炭素数1乃至30のアルキル基を示し、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ炭素数1乃至5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、R6 はn価の有機残基を示す。)
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーを微小カプセルに内包してなる、或いは、樹脂粒子中に分散してなること、前記フォトクロミック液状組成物が塗料、印刷用インキ、筆記用インキ、化粧用ラッカー、繊維用着色液、絵具から選ばれること等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、従来のフォトクロミック材料では成し得なかった耐光性の向上と共に、発色濃度の向上、更には耐水性も付与できるため、製造時の制約が少なく、あらゆる分野に使用できる応用性に優れたフォトクロミック液状組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物は、スチレン系オリゴマーに溶解して用いられる。
前記スチレン系オリゴマーは重量平均分子量が200乃至6000、好ましくは200乃至4000のものが用いられる。
スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が200未満の場合、含有モノマーが多くなり、安定性に欠けるため耐光性向上効果を発現し難くなる。
また、重量平均分子量が6000を越えると、光照射により色残りが発生し、且つ、発色濃度が低くなり、変色感度は鈍くなる。
なお、重量平均分子量は、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法)により測定する。
【0007】
前記スチレン系オリゴマーとしては、低分子量ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体、α−メチルスチレン重合体、α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、d−リモネン重合体等が挙げられる。
低分子量ポリスチレンとしては、三洋化成工業(株)製、商品名:ハイマーSB−75(重量平均分子量2000)、ハイマーST−95(重量平均分子量4000)等が用いられる。
スチレン−α−メチルスチレン系共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスチックA5(重量平均分子量317)、ピコラスチックA75(重量平均分子量917)等が用いられる。
α−メチルスチレン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:クリスタレックス3085(重量平均分子量664)、クリスタレックス3100(重量平均分子量1020)、クリスタレックス1120(重量平均分子量2420)等が用いられる。
α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコテックスLC(重量平均分子量950)、ピコテックス100(重量平均分子量1740)等が用いられる。
α−ピネン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコライトA115(重量平均分子量833)が用いられる。
β−ピネン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコライトS115(重量平均分子量1710)が用いられる。
d−リモネン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコライトC115(重量平均分子量902)が用いられる。
前記ポリスチレン系オリゴマーは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0008】
前記フォトクロミック化合物のうち、スピロオキサジン誘導体を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
インドリノスピロベンゾオキサジン系化合物としては、
1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−クロロ−5−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−1−エチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5,7−ジフルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−シアノ−3,3−ジメチル−1−(メトキシカルボニル)メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチル−5′−ニトロジスピロ〔シクロペンタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,5′−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−フルオロ−1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1−ベンジル−6′−クロロ−3,3−ジメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−ブロモ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−ヨード−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−トリフルオロメチル−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジエチル−1−メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,6′−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5′−フルオロ−1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−シアノ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−エトキシカルボニル−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
4′,6′−ジフルオロ−1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−1−(メトキシカルボニル)メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−1−フェニルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,5−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
7′−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,7′−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
7′−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−クロロ−5−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−クロロ−1,3−ジメチル−3−エチル−5′−メトキシスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジエチル−1−メチル−5−ニトロスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′,6′−ジメチルスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
9″−ブロモ−1′−メトキシカルボニルメチル−5′−トリフルオロメチルジスピロ〔シクロペンタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′〔1′H〕,3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1−ベンジル−3,3−ジ−nブチル−7′−エチル−5−メトキシスピロ〔2H−インドール−1,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−n−ブチル−6′−ヨードジスピロ〔シクロヘプタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−9′−ヨード−1−ナフチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
4′−シアノ−1′−(2−(メトキシカルボニル)エチル)ジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
7−メトキシカルボニル−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
4−ブロモ−3,3−ジエチル−9′−エトキシ−1−(2−フェニル)エチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−エチル−9−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−ベンジル−6″−ヨードジスピロ〔シクロペンタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−エトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチル−5′−トリクロロメチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3−ジエチル−3−メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メトキシカルボニルメチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H)−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕等、インドリノスピロベンゾオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0009】
インドリノスピロナフトオキサジン系化合物としては、
1,3,3−トリメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−クロロ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−ブロモ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3,5−テトラメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−n−プロピル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−iso−ブチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−n−プロポキシ−スピロナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−シアノ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−エチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−プロピル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−iso−ブチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−オクチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−オクタデシル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−8′−スルホン酸ナトリウム−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−9′−メトキシスピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−トリフルオロ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−ベンジル−3,3−ジメチル−スピロナフトオキサジン、
1−(4′−メチルフェニル)−3,3−ジメチル−スピロナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−6′−(2,3−ジヒドロ−1−インドリノ)−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−6′−(1−ピペリジニル)−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−6′−(1−ピペリジニル)−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−ベンジル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(4−メトキシベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(4−クロロベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−エチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、1−イソプロピル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(2−フェノキシエチル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3−ジメチル−3−エチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−9′−ヒドロキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3−ジメチル−3−エチル−8′−ヒドロキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、1,3,3,5−テトラメチル−9′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3,5,6−ペンタメチル−9′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−4−トリフルオロメチル−5′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5′−メトキシ−6′−トリフルオロメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−4−トリフルオロメチル−9′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,5,6−テトラメチル−3−エチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3,5,6−ペンタメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−メチル−3,3−ジフェニル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(4−メトキシベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(3,5−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(2−フルオロベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン等、インドリノスピロナフトオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0010】
インドリノスピロフェナントロオキサジン系化合物の例としては、1,3,3−トリメチル−スピロインドリンフェナントロオキサジン、1,3,3−トリメチル−5−クロロ−スピロインドリンフェナントロオキサジン等、インドリノスピロフェナントロオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0011】
インドリノスピロキノリノオキサジン系化合物としては、1,3,3−トリメチル−スピロインドリンキノリノオキサジン等、インドリノスピロキノリノオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0012】
前記フォトクロミック化合物のうち、スピロピラン誘導体を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1,3,3−トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−ブロモベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−8′−メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−ニトロベンゾピリロスピラン等を例示することができる。
【0013】
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーの重量比は、1:1〜1:10000であることが好ましく、より好ましくは1:5〜1:500である。
前記重量比を満たすことによって、耐光性向上効果に優れ、且つ、フォトクロミック化合物は十分な発色濃度を示すことができる。
【0014】
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーからなるフォトクロミック材料中には、水酸基、エステル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一以上の官能基を有し、沸点が150℃以上であり、且つ、融点又は軟化点が150℃以下の有機化合物をスチレン系オリゴマー100重量部に対し、50重量部以下の割合で添加することにより、耐光堅牢性及び発色濃度を阻害するとなく発消色時の変色時間を調節することができる。
前記有機化合物としては、炭素数8以上の脂肪族一価アルコール、炭素数8以上の脂肪族二価アルコール、炭素数7以上の芳香族アルコール、炭素数7以上の脂肪族エステル、炭素数7以上の芳香族エステル、炭素数6以上の脂肪族カルボン酸、炭素数6以上の芳香族カルボン酸が挙げれる。
前記化合物として具体的には、n−オクチルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、n−ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクタデカン−2−オール、シクロドデカノール、ヘキサン1,6−ジオール、コレステロール、p−クロロベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、エチレングリコール#4000、ポリエチレングリコール#6000、オレイルアルコール、ポリオール(水酸基を有するオリゴマー)、水酸基を有するロジン系樹脂オリゴマー〔荒川化学工業(株)、商品名:パインクリスタルD−6011、同KR−1840〕等のアルコール類。
カプロン酸n−オクチル、カプロン酸ミリスチル、カプリル酸n−ヘプチル、カプリル酸n−ブチル、ラウリン酸n−ブチル、ラウリン酸ラウリル、ミリスチン酸n−ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸n−アミル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸n−ヘキシル、ステアリン酸n−オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸セチル、ベヘン酸n−ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸3−メチルブチル、ベヘン酸2−メチルペンチル、ステアリン酸ネオペンチル、ステアリン酸イソブチル、ピバリン酸ステアリル、ベヘン酸ベンジル、パルミチン酸4−メチルベンジル、安息香酸セチル、安息香酸ステアリル、フェノキシ酢酸ステアリル、サリチル酸ミリスチル、2−ナフトエ酸ステアリル、p−メトキシ安息香酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシル、プロピオン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、オクタメチレンジカルボン酸ジミリスチル、オクタメチレンジカルボン酸ジブチル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジステアリル、セバシン酸ジミリスチル、テレフタル酸ジエチル、レブリン酸ステアリル、ステアリン酸テトラヒドロフルフリル、12−ヒドロキシステアリン酸n−ブチル、ブタン−1,2,3,4−テトラドデシルエステル、リンゴ酸ジラウリル、酒石酸ジ−n−オクチル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、エステル基を有するアクリル樹脂オリゴマー〔荒川化学工業(株)、商品名:パインクリスタルKE−100〕等のエステル類。
カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、2−エチル−ヘキサデカン酸、p−tert−ブチル安息香酸、ベンジル酸、p−アミノ安息香酸、1,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸、セバシン酸、カルボキシル基を有するロジン系樹脂オリゴマー〔荒川化学工業(株)、商品名:パインクリスタルKE−604、同KR−85〕等のカルボン酸類を例示できる。
【0015】
本発明のフォトクロミック材料には、ヒンダードアミン系光安定剤を添加して耐光性を更に向上させることもできる。
ヒンダードアミン系化合物としては下記一般式(1)で示される化合物が好適であるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【化2】

(式中、R1 は炭素数1乃至30のアルキル基を示し、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ炭素数1乃至5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、R6 はn価の有機残基を示す。)
一般式(1)で示される化合物としては、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、
2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び1−トリデカノールとの混合エステル化物、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、
N,N′,N′′,N′′′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、
N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペレジニル)ピロリジン−2,5−ジオン等を例示することができる。
【0016】
前記フォトクロミック材料は、微小カプセルに内包させて可逆光変色性微小カプセル顔料を形成したり、熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散して可逆光変色性樹脂粒子を形成することもできる。
なお、前記微小カプセルは、平均粒子径0.5〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは、1〜30μmの範囲が実用性を満たす。
前記微小カプセルの平均粒子径が100μmを越えると、インキ、塗料、或いは熱可塑性樹脂中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠ける。
一方、平均粒子径が0.5μm未満では、高濃度の発色性を示し難くなる。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更に微小カプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0017】
本発明においては、前記フォトクロミック材料を樹脂を含むビヒクル中に添加して液状組成物が得られる。
本発明で使用されるビヒクルは樹脂、溶剤、必要により各種添加剤等の成分から構成される。
前記樹脂としては、アイオノマー樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリリックススチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルスチレン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール樹脂変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合樹脂、ポリイソブチレン、ブチルゴム、環化ゴム、塩素化ゴム、ポリビニルアルキルエーテル、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂、ケトン樹脂、トルエン樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、メタクリル酸エステル系共重合体エマルジョン、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、塩化ビニル系共重合体エマルジョン、塩化ビニリデン系共重合体エマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン、ロジンエステルエマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ポリウレタン系エマルジョン、合成ゴムラテックス等の合成樹脂。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリスチレン、クマロンプラスチック、ポリブテン、フェノキシプラスチック、液状ポリブタジエン、液状ゴム、石油系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂等の合成中分子ポリマー。
セルロース誘導体、アルギン酸誘導体、ロジン誘導体、デンプン類、多糖類、ガム類、天然ゴム、セラック、寒天、ガゼイン、ニカワ、ゼラチン、ポリテルペン等の天然又は半合成樹脂等が挙げられる。
【0018】
これらの樹脂は樹脂エマルジョン、一部の中分子量ポリマー、及びエポキシ樹脂等の一部の反応型樹脂を除き、室温では固体状態であるため、水、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、グリコール類、グリコール誘導体類エステル類、ケトン類等の溶剤に溶解又は分散することにより、液状となすことができ、必要により各種添加剤を添加して液状組成物が調製される。
前記添加剤としては、非熱変色性着色剤、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、防かび剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
【0019】
前記フォトクロミック材料をビヒクル中に分散した液状組成物は、塗料、印刷インキ、筆記具又は塗布具用インキ、絵の具、化粧料、繊維用着色液等の液状物に利用できる。
前記ビヒクルとして塗料形成用ビヒクルを用いればフォトクロミック塗料となる。
塗装方法には、刷毛塗り、スプレー塗装、静電気塗装、浸漬塗装、流し塗り、ローラー塗装、光重合塗装等があり、これらの塗装方法、塗装対象素材に応じて蒸発乾燥型、浸透乾燥型、エマルジョン型、酸化重合型、熱硬化樹脂型、光硬化樹脂型等から選ばれる塗料が調製される。
ビヒクルとして印刷インキ用ビヒクルを用いればフォトクロミック印刷インキが調製される。
印刷方法には、凹版、凸版、平版、孔版、コーター、インクジェット等による印刷方法があり、これらの印刷方法、印刷対象素材に応じて蒸発乾燥型、浸透乾燥型、エマルジョン型、酸化重合型、熱硬化樹脂型、光硬化樹脂型等から選ばれる印刷インキが調製される。
ビヒクルとして筆記具又は塗布具インキ用ビヒクルを用いればフォトクロミック筆記具インキ又は塗布具インキが調製される。
ビヒクルとして化粧料用ラッカーを用いればフォトクロミック化粧料が得られる。
化粧料には、マニキュア用化粧料、メイクアップ用化粧料、毛髪用化粧料等があり、化粧対象に応じて、各種の組成の化粧料が調製される。
ビヒクルとして繊維処理用バインダーを用いればフォトクロミック繊維用着色液が得られる。
繊維着色処理方法としては、浸漬、スプレー塗装等があり、処理方法、対象素材に応じて、適宜の組成の繊維用着色液が調製される。
前記した液状組成物を用いて、紙、合成紙、繊維、布帛、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁材、金属、木材、石材等の各種材質及び各種形状の支持体上にフォトクロミック層を設けて積層体が形成される。
【実施例】
【0020】
実施例1
フォトクロミック材料の調製
1,3,3−トリメチル−6─トリフルオロメチル−インドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン1重量部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティクA5、重量平均分子量317〕10重量部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
【0021】
以下の表に実施例1乃至13のフォトクロミック材料の組成を示す。
なお、表中の括弧内の数字は重量部を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
以下の表に比較例1乃至12のフォトクロミック材料の組成を示す。
なお、表中の括弧内の数字は重量部を示す。
【0024】
【表2】

【0025】
試験試料の作製
前記のようにして得られた実施例1乃至13、比較例1乃至12のフォトクロミック材料をメチルエチルケトン100部に溶解して液状組成物を得た。
前記液状組成物を用いて、白色合成紙にバーコーターにてウェット膜が厚み90μmになるように塗工した後、乾燥させて試験試料を得た。
【0026】
初期発色濃度試験
前記各試験試料を光源〔東芝ライテック(株)製、電球形蛍光ランプ、商品名:ネオボール5ブラックライトEFD15BLB〕から10cm離して1分間光照射した後、色差計〔東京電色(株)製、TC−3600)にて、明度値(Y値から換算)を測定した。
なお、明度値は数字が大きい程、色濃度が低く、小さい程、色濃度が高い。
初期消色速度試験
前記初期発色濃度試験と同様に光照射した各試験試料を、直ちに暗所(25℃)で放置し、光照射前の色濃度になる迄の時間を測定した。
なお、測定は1分毎に室内(25℃、照度300lux)で確認した。
耐光性試験 各試験試料を卓上型耐光性試験機(ヘレウス社製、SUNTEST CPS)を用いて照度140000luxにて1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、光照射した後、前記色差計にて、明度値を測定した。
【0027】
以下の表に各試験試料の初期発色濃度試験、初期消色速度試験、及び、耐光性試験結果を示す。
【0028】
【表3】

【0029】
なお、表中の耐光性試験の評価に関する記号は以下のとおりである。
◎:初期と比較して100〜80%の色濃度を保持している。
○:初期と比較して80〜60%の色濃度を保持している。
△:初期と比較して60〜40%の色濃度を保持している。
▲:初期と比較して40〜20%の色濃度を保持している。
×:初期と比較して20〜0%の色濃度を保持している。
【0030】
応用例1
フォトクロミック液状組成物の調製
実施例6で得られたフォトクロミック材料30重量部を、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン45.0部、消泡剤1.0部、希釈水23.0部からなるビヒクル中に均一分散し、180メッシュスクリーンで濾過してフォトクロミック液状組成物(スプレー塗料)を得た。
前記塗料は太陽光に晒す前は無色であったが、太陽光に晒したところ、ピンク色に発色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記塗料にて塗装した立体物も同様の色変化を示す。
【0031】
応用例2
フォトクロミック液状組成物の調製
実施例4で得られたフォトクロミック材料15重量部を、50%アクリル樹脂/キシレン溶液20.0部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂10.0部、メチルイソブブチルケトン、30.0部、シクロヘキサノン30.0部からなるビヒクル中に攪拌混合してフォトクロミック液状組成物(スプレー塗料)を得た。
前記塗料は、太陽光に晒す前は無色であったが、太陽光に晒したところ、ピンク色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記塗料にて塗装した立体物も同様の色変化を示す。
【0032】
応用例3
フォトクロミック液状組成物の調製
実施例4で得られたフォトクロミック材料35重量部、及び、青色顔料1重量部を、軟質エポキシ樹脂45.0部、低粘度エポキシ樹脂20.0部、ヒンダードアミン系光安定剤6.0部、揺変性付与剤2.0部、消泡剤0.3部からなるビヒクル中に均一に分散混合した後、常温硬化型の脂肪族ポリアミン40.0部を添加し、均一に攪拌混合してフォトクロミック液状組成物(軟質エポキシインキ)を得た。
前記インキは、太陽光に晒す前は青色であったが、太陽光に晒したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の青色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記インキにて彩色した立体物も同様の色変化を示す。
【0033】
応用例4
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例2で得られたフォトクロミック材料を均一に溶融し内包液とする。
これとは別に、エチレン−無水マレイン酸共重合体(米国モンサント化学社製、商品名:EMA−31、分子量75000〜90000)の10%水溶液100重量部に、尿素10重量部、レゾルシン1重量部、水55重量部を添加し、水酸化ナトリウムの20%水溶液を添加してpHを3.5に調整した後、前記内包液50重量部を攪拌しながら投入し、油滴の平均粒子径が約3μmになるまで乳化した。
前記溶液に37%ホルムアルデヒド水溶液25重量部を加え、温度を65℃にして2時間放置してカプセル化反応を行なった。
前記溶液を遠心分離して約150重量部の含水マイクロカプセルスラリーを分取した。前記マイクロカプセルを脱水し、乾燥させ、フォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0034】
フォトクロミック液状組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料40.0部を、硬質液状エポキシ樹脂60.0部、ヒンダードアミン系光安定剤2.0部、揺変性付与剤2.0部、消泡剤0.5部からなるビヒクル中に均一に分散混合した後、常温硬化型の脂肪族ポリアミン35.0部を添加し、均一に分散混合してフォトクロミック液状組成物(エポキシインキ)を得た。
前記インキは、太陽光に晒す前は無色であったが、太陽光に曝露したところ、青色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、青色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記インキにて彩色した立体物も同様の色変化を示す。
【0035】
応用例5
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例6で得られたフォトクロミック材料を均一に溶融し内包液とする。
これとは別に、エチレン−無水マレイン酸共重合体(米国モンサント化学社製、商品名:EMA−31、分子量75000〜90000)の10%水溶液100重量部に、尿素10重量部、レゾルシン1重量部、水55重量部を添加し、水酸化ナトリウムの20%水溶液を添加してpHを3.5に調整した後、前記内包液50重量部を攪拌しながら投入し、油滴の平均粒子径が約3μmになるまで乳化した。
前記溶液に37%ホルムアルデヒド水溶液25重量部を加え、温度を65℃にして2時間放置してカプセル化反応を行なった。
前記溶液を遠心分離して約150重量部の含水マイクロカプセルスラリーを分取した。
前記マイクロカプセルを脱水し、乾燥させ、フォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0036】
フォトクロミック液状組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料40.0部を、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン58.0部、消泡剤3.0部、増粘剤(アルギン酸ナトリウム)1.0部、レベリング剤3.0部、防腐剤1.0部からなるビヒクル中に均一に混合してフォトクロミック液状組成物(スクリーンインキ)を得た。
前記インキは、太陽光に晒す前は無色であったが、太陽光に曝露したところ、ピンク色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記インキにて印刷した印刷物も同様の色変化を示す。
【0037】
応用例6
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例3で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー30重量部、酢酸エチル70重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0038】
フォトクロミック液状組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料30.0重量部を、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン80.0部、水分散型ヒンダードアミン系光安定剤1.5部からなるビヒクル中に均一分散してフォトクロミック液状組成物(水性コーティング溶液)を得た。
前記コーティング溶液は、太陽光に晒す前は、無色であったが、太陽光に曝露したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記コーティング溶液を付着させた立体物も同様の色変化を示す。
【0039】
応用例7
フォトクロミック液状組成物の調製
実施例2で得たフォトクロミック材料15.0部、及び、蛍光ピンク顔料3.0部を、50%アクリル樹脂/キシレン溶液40.0部、ヒンダードアミン系光安定剤1.0部、キシレン30.0部、メチルイソブチルケトン30.0部、イソシアネート系硬化剤10.0部からなるビヒクル中に均一に混合してフォトクロミック液状組成物(つけ爪用スプレーインキ)を得た。
前記インキは、太陽光に晒す前はピンク色であったが、太陽光に曝露したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元のピンク色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記インキを塗布したつけ爪も同様の色変化を示す。
【0040】
応用例8
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例9で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー30重量部、酢酸エチル70重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0041】
フォトクロミック液状組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料25.0重量部を、水7.0重量部、グリセリン50.0重量部、プロピレングリコール10重量部、オレイン酸ジエタノールアミド7.0重量部、消泡剤0.5重量部、防腐剤0.5重量部、浸透剤1.0重量部からなるビヒクル中に均質に混合してフォトクロミック液状組成物(スタンプ用インキ)を得た。
前記インキは、太陽光に晒す前は無色であったが、太陽光に曝露したところ、ピンク色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記インキを印面に付着させたスタンプにより形成された印像も同様の色変化を示す。
【0042】
応用例9
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例9で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー30重量部、酢酸エチル70重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0043】
フォトクロミック液状組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料5.5重量部、青色顔料0.5重量部、カルボキシ変性ポリオレフィン系自己乳化型エマルジョン(固形分4〜25%)30.0部、ポリグリセリルアクリレート系湿潤剤5.0部、トリエタノールアミン1.0部、メチルセルロース0.5部。防腐剤0.2部、消泡剤0.3部、水57.0部からなるビヒクル中に均質に混合してフォトクロミック液状組成物(マーキングペン用インキ)を得た。
前記インキは、太陽光に晒す前は青色であったが、太陽光に曝露したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の青色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記インキを充填したマーキングペンにより形成された筆跡も同様の色変化を示す。
【0044】
応用例10
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例12で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー30重量部、酢酸エチル70重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0045】
フォトクロミック液状組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料25.7重量部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.2重量部、尿素5.5重量部、グリセリン7.5重量部、ノニオン系浸透性付与剤〔サンノプコ(株)社製、商品名:ノプコSW−WET−366〕0.03重量部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.15重量部、防腐剤〔ゼネカ(株)製、商品名:プロキセルXL−2〕0.1部、潤滑剤〔第一工業製薬( 株) 製プライサーフA212C〕0.5重量部、トリエタノールアミン0.5重量部、水59.82重量部からなるフォトクロミック液状組成物(ボールペン用インキ)を調製した。
前記インキは、太陽光に晒す前は無色であったが、太陽光に曝露したところ、ピンク色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記インキを充填したボールペンにより形成された筆跡も同様の色変化を示す。
【0046】
応用例11
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例8で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー20重量部、酢酸エチル50重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0047】
前記マイクロカプセル顔料39.0重量部、及び、青色顔料1.0重量部、炭酸カルシウム5.0重量部を、アラビアガム14.0重量部、グリセリン10.0重量部、増性調整剤5.0重量部、防腐剤25.0重量部、水25.0重量部からなるビヒクル中に均一に混合してフォトクロミック液状組成物(絵の具)を調製した。
前記絵の具は、太陽光に晒す前は青色であったが、太陽光に曝露したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の青色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記絵の具を用いてキャンバス上に形成された絵柄も同様の色変化を示す。
【0048】
応用例12
フォトクロミック樹脂粒状体の調製
実施例10で得たフォトクロミック材料60重量部に酢酸エチル50重量部、トルエン10重量部、ポリスチレン樹脂5重量部を加えて溶解した溶液を、15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間撹拌を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、樹脂粒状体分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミック樹脂粒状体を得た。
【0049】
前記粒状体40.0部を、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン58.0部、消泡剤3.0部、増粘剤(アルギン酸ナトリウム)1.0部、レベリング剤3.0部、防腐剤1.0部からなるビヒクル中に均一に混合してフォトクロミック液状組成物(スクリーンインキ)を得た。
前記インキは、太陽光に晒す前は無色であったが、太陽光に曝露したところ、ピンク色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記インキにて印刷した印刷物も同様の色変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物を、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーに溶解してなるフォトクロミック材料と、樹脂を含むビヒクルとからなるフォトクロミック液状組成物。
【請求項2】
前記フォトクロミック化合物と、スチレン系オリゴマーの重量比が1:1〜1:10000である請求項1記載のフォトクロミック液状組成物。
【請求項3】
前記スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が200乃至4000である請求項1又は2記載のフォトクロミック液状組成物。
【請求項4】
前記フォトクロミック材料中に、水酸基、エステル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一以上の官能基を有し、沸点が150℃以上であり、且つ、融点又は軟化点が150℃以下の有機化合物をスチレン系オリゴマー100重量部に対し、50重量部以下の割合で添加してなる請求項1乃至3のいずれかに記載のフォトクロミック液状組成物。
【請求項5】
ヒンダードアミン系光安定剤を含んでなる請求項1乃至4いずれかに記載のフォトクロミック液状組成物。
【請求項6】
前記ヒンダードアミン系光安定剤が下記一般式(1)で示される化合物である請求項5記載のフォトクロミック液状組成物。
【化1】

(式中、R1 は炭素数1乃至30のアルキル基を示し、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ炭素数1乃至5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、R6 はn価の有機残基を示す。)
【請求項7】
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーを微小カプセルに内包してなる、或いは、樹脂粒子中に分散してなる請求項1乃至6のいずれかに記載のフォトクロミック液状組成物。
【請求項8】
塗料、印刷用インキ、筆記用インキ、化粧用ラッカー、繊維用着色液、絵具から選ばれる組成物である請求項1乃至7のいずれかに記載のフォトクロミック液状組成物。

【公開番号】特開2006−22202(P2006−22202A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201406(P2004−201406)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】