説明

フォトニック結晶、光反射装置、光反射装置組立体、及び、頭部装着型ディスプレイ

【課題】振り角の一層の拡大を達成し得るフォトニック結晶を用い、しかも、簡素な構成、構造を有する光反射装置を提供する。
【解決手段】光反射装置12は、光入射面13、光反射膜15が形成され、光入射面13から入射した光が反射される光反射面14、及び、光反射面14で反射された光が出射される光出射面16を備えており、断面形状が楕円形の空孔11が内部に配列された2次元以上のフォトニック結晶10から成り、空孔11の配列は面心配置であり、且つ、フォトニック結晶10のx軸方向に沿った空孔11の配列ピッチPTxとy軸方向に沿った空孔11の配列ピッチPTyとは異なっており、波数空間上での分散面の形状はアスペクト比4以上の長方形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶、光反射装置、光反射装置組立体、及び、頭部装着型ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトニック結晶による様々な応用が研究されているが、その1つに、スーパープリズム現象を用いたビーム偏向技術を挙げることができる。そして、ビーム偏向技術は、光偏向素子や表示装置、プリンタへの応用が期待されている。フォトニック結晶を用いることにより、非常に小型であって、可動部が少なく、信頼性の高い光学コンポーネントを実現することが可能となる。
【0003】
ところで、スーパープリズム現象が発現されるのはフォトニック結晶の内部のみである。それ故、フォトニック結晶によるスーパープリズム現象を用いた光偏向素子にあっては、フォトニック結晶における光出射面と光入射面とが平行であれば、フォトニック結晶への入射角とフォトニック結晶からの出射角とは等しくなってしまう(例えば、特開2201−013439参照。
【0004】
フォトニック結晶の光入射面及び光出射面が平面であり、且つ、光出射面と光入射面が平行でない構造を有する光走査装置が、例えば、特開2006−251106に開示されている。この光走査装置は、光源と、光源からの光を走査する走査手段と、走査手段によって走査される光の走査範囲を拡大する走査範囲拡大手段とを有し、走査範囲拡大手段は第1のフォトニック結晶と第2のフォトニック結晶から構成されている。そして、この光走査装置にあっては、入射位置を0〜84mm走査することで、出射位置を0〜210mm走査しており、走査範囲を2.5倍、拡大できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2201−013439
【特許文献2】特開2006−251106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光反射装置、係る光反射装置を組み込んだ光反射装置組立体、係る光反射装置組立体を組み込んだ頭部装着型ディスプレイ等の技術分野にあっては、光の入射角に対する出射角の割合である振り角(光偏向角度)を、特開2006−251106に開示された技術よりも一層拡大させたいという要請がある。また、特開2006−251106に開示された光走査装置にあっては、走査範囲拡大手段は第1のフォトニック結晶と第2のフォトニック結晶から構成されており、走査範囲拡大手段の構造、構成が複雑である。
【0007】
従って、本発明の目的は、振り角の一層の拡大を達成し得るフォトニック結晶、係るフォトニック結晶を用い、しかも、簡素な構成、構造を有する光反射装置、係る光反射装置を組み込んだ光反射装置組立体、及び、係る光反射装置組立体を組み込んだ頭部装着型ディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明のフォトニック結晶は、断面形状が楕円形の空孔が内部に配列された2次元以上のフォトニック結晶であって、
空孔の配列は面心配置であり、且つ、フォトニック結晶のx軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTxとy軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTyとは異なっており、
波数空間上での分散面の形状はアスペクト比4以上の長方形である。
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の光反射装置は、
光入射面、光反射膜が形成され、光入射面から入射した光が反射される光反射面、及び、光反射面で反射された光が出射される光出射面を備えており、
断面形状が楕円形の空孔が内部に配列された2次元以上のフォトニック結晶から成り、
空孔の配列は面心配置であり、且つ、フォトニック結晶のx軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTxとy軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTyとは異なっており、波数空間上での分散面の形状はアスペクト比4以上の長方形である。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の光反射装置組立体は、
(イ)光反射装置、及び、
(ロ)ミラー構造体、
を備えた光反射装置組立体であって、
光反射装置は、上記の本発明の光反射装置から成り、
ミラー構造体は、
(A)ミラー本体部、及び、該ミラー本体部の表面に設けられた光反射層を備えたミラー、
(B)ミラー本体部の裏面に上端部が固定された複数の支柱、
(C)それぞれの支柱の下端部に一端部が固定された変位部材、並びに、
(D)変位部材の他端部を固定する支持部、
から成る。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の頭部装着型ディスプレイは、
(A)観察者の頭部に装着される眼鏡型のフレーム、及び、
(B)画像表示装置、
を備えた頭部装着型ディスプレイであって、
画像表示装置は、
(B−1)画像生成装置、及び、
(B−2)画像生成装置に取り付けられており、画像生成装置から出射された光が入射され、導光され、観察者の瞳に向かって出射される導光手段、
から構成されており、
画像生成装置は、本発明の光反射装置組立体を含む。ここで、画像生成装置に備えられた光源から出射された光は、具体的には、ミラー構造体によって走査・反射され、光反射装置に入射し、光反射装置から出射され、導光手段に入射する。あるいは又、画像生成装置に備えられた光源から出射された光は、具体的には、光反射装置に入射し、光反射装置から出射され、ミラー構造体によって走査・反射され、光反射装置に再入射し、光反射装置から出射され、導光手段に入射する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフォトニック結晶、光反射装置、光反射装置組立体、あるいは、頭部装着型ディスプレイにあっては、フォトニック結晶の内部には、断面形状が楕円形の空孔が配列されており、空孔の配列は面心配置であり、且つ、フォトニック結晶のx軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTxとy軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTyとは異なっており、波数空間上での分散面の形状はアスペクト比4以上の長方形である。このようなフォトニック結晶にあっては、分散面の一様な領域を用いるため、入射角、波長分散に対する設計余裕が大きい。また、波数空間上での分散面の形状をアスペクト比4以上とすることで、振り角(光偏向角度)の拡大率(出射角/入射角の比)を例えば4倍以上と大きくすることができる。しかも、波数空間上での分散面の形状を長方形とすることで、入射角と出射角の関係に関して線形性を保つことができるし、光入射面のどの位置から光が入射しても、入射角と出射角の関係を或る関係に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1のフォトニック結晶の概念図、及び、実施例1の光反射装置の模式図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1のフォトニック結晶における波数空間上での分散面のグラフ、及び、実施例1の光反射装置における入射角と出射角の関係を示すグラフである。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1及び比較例1の光反射装置における振り角拡大範囲と振り角拡大率の関係をシミュレーションした結果、及び、振り角拡大範囲と振り角線形性の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図4】図4は、光反射装置の光入射面への入射光の入射角と光出射面からの出射光の出射角との関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【図5】図5の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例2及び実施例3の光反射装置組立体の概念図である。
【図6】図6の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例4のミラー構造体の模式的な一部端面図、及び、実施例4のミラー構造体を上方から眺めた模式図である。
【図7】図7は、実施例4のミラー構造体を構成する変位部材及び支柱の配置を模式的に示す図である。
【図8】図8は、実施例4にミラー構造体において、構造計算により変位部材の変位状態をシミュレーションした結果を示す図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例5のミラー構造体を構成する変位部材及び支柱の配置を模式的に示す図、並びに、ミラーと変位部材の変位の状態を模式的に示す図である。
【図10】図10は、実施例6のミラー構造体を構成する変位部材及び支柱の配置を模式的に示す図である。
【図11】図11は、実施例7のミラー構造体を構成する変位部材及び支柱の配置を模式的に示す図である。
【図12】図12の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例8のミラー構造体を構成する変位部材及び支柱の配置を模式的に示す図、並びに、ミラーと変位部材の変位の状態を模式的に示す図である。
【図13】図13は、実施例9のミラー構造体を構成する変位部材及び支柱の配置を模式的に示す図である。
【図14】図14の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例10のミラー構造体を上方から眺めた模式図、及び、実施例10のミラー構造体におけるミラーの一部を拡大して斜めから眺めた模式図である。
【図15】図15の(A)及び(B)は、それぞれ、図16の矢印P−P及び矢印Q−Qに沿った実施例11のミラー構造体の模式的な一部端面図である。
【図16】図16は、実施例11のミラー構造体を構成する変位部材及び支柱の配置を模式的に示す図である。
【図17】図17は、実施例11のミラー構造体を上方から眺めた模式図である。
【図18】図18は、実施例11のミラー構造体の変形例を上方から眺めた模式図である。
【図19】図19の(A)〜(C)は、実施例4のミラー構造体の製造方法を説明するための変位部材等の模式的な一部端面図である。
【図20】図20の(A)〜(C)は、図19の(C)に引き続き、実施例4のミラー構造体の製造方法を説明するための変位部材等の模式的な一部端面図である。
【図21】図21の(A)〜(C)は、図20の(C)に引き続き、実施例4のミラー構造体の製造方法を説明するための変位部材等の模式的な一部端面図である。
【図22】図22は、実施例12における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図である。
【図23】図23は、実施例12における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図である。
【図24】図24は、実施例12における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図である。
【図25】図25は、実施例12における頭部装着型ディスプレイを観察者の頭部に装着した状態を上方から眺めた図(但し、画像表示装置のみを示し、フレームの図示は省略)である。
【図26】図26は、実施例12における頭部装着型ディスプレイに組み込まれた画像表示装置の概念図である。
【図27】図27の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例13における頭部装着型ディスプレイに組み込まれた画像表示装置の概念図、及び、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【図28】図28は、実施例14における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図である。
【図29】図29は、実施例14における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図である。
【図30】図30は、実施例14における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図である。
【図31】図31は、実施例15における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図である。
【図32】図32は、実施例15における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図である。
【図33】図33は、実施例15における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図である。
【図34】図34は、本発明のミラー構造体を適用した表示装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。尚、フォトニック結晶の説明においては、座標系、座標軸をアルファベットの小文字、x軸,y軸で表し、ミラー構造体の説明においては、座標系、座標軸をアルファベットの大文字、X軸,Y軸で表す。
1.本発明のフォトニック結晶、光反射装置、光反射装置組立体、及び、頭部装着型ディスプレイ、全般に関する説明
2.実施例1(本発明のフォトニック結晶、光反射装置)
3.実施例2(本発明の光反射装置組立体)
4.実施例3(実施例2の別の変形)
5.実施例4(本発明の光反射装置組立体を構成するミラー構造体、第1Aの構成のミラー構造体)
6.実施例5(実施例4の変形)
7.実施例6(実施例4の別の変形)
8.実施例7(実施例4の別の変形)
9.実施例8(実施例4の別の変形、第1Bの構成のミラー構造体)
10.実施例9(実施例4の別の変形)
11.実施例10(実施例4の別の変形)
12.実施例11(第2の態様に係るミラー構造体)
13.実施例12(本発明の頭部装着型ディスプレイ)
14.実施例13(実施例12の変形)
15.実施例14(実施例12の別の変形)
16.実施例15(実施例12の別の変形、その他)
17.実施例16(本発明の光反射装置組立体を適用した表示装置、その他)
【0015】
[本発明のフォトニック結晶、光反射装置、光反射装置組立体、及び、頭部装着型ディスプレイ、全般に関する説明]
本発明の光反射装置組立体あるいは本発明の頭部装着型ディスプレイにあっては、
PTy>PTxの関係にあり、
光反射装置の光入射面はy軸と平行であり、
光反射装置の光出射面はx軸と平行であり、
光源から出射された光は、ミラーの光反射層で反射され、光反射装置の光入射面に入射し、光反射面で反射され、光出射面から出射される形態とすることができる。
【0016】
あるいは又、本発明の光反射装置組立体あるいは本発明の頭部装着型ディスプレイにあっては、
PTy>PTxの関係にあり、
光反射装置の光入射面はx軸と平行であり、
光反射装置の光出射面はy軸と平行であり、
光源から出射された光は、光反射装置の光入射面に入射し、光反射面で反射され、光出射面から出射され、ミラーの光反射層にて反射されて、光反射装置の光出射面から再入射し、光反射面で反射され、光源からの光入射面への入射方向とは異なる方向に、光入射面から出射される形態とすることができる。
【0017】
以上の好ましい形態を含む本発明の光反射装置組立体あるいは本発明の頭部装着型ディスプレイにあっては、あるいは又、本発明の光反射装置にあっては、
PTy>PTxの関係にあり、
入射光のx軸方向における波数ベクトルの大きさをkx、y軸方向における波数ベクトルの大きさをkyとし、(PTx・kx)/(PTy・ky)の値をm(但し、mは2以上の整数)、x軸方向と光反射面との成す角度をθとしたとき、
tan(θ)=m (1)
を満足する構成とすることが望ましい。即ち、(PTx・kx)/(PTy・ky)の値がmとなるように、PTx,PTy,kx,kyの値を設計し、且つ、式(1)を満足するように角度θを決定することが望ましい。そして、これによって、光反射装置に入射した光が光反射面で反射されるとき、反射前の角度と反射後の角度の差を90度とすることができる。即ち、光反射面への入射角θIと光反射面からの出射角θOとの和を90度とすることができる。但し、「m」の値は整数であることに限定されない。
【0018】
あるいは又、以上の好ましい形態、構成を含む本発明の光反射装置組立体、本発明の頭部装着型ディスプレイあるいは本発明の光反射装置にあっては、あるいは、本発明のフォトニック結晶にあっては、分散面の長辺の長さは、真空における分散面の直径の(1/2)1/2以上であることが望ましく、これによって、より一層大きな振り角を達成することができる。
【0019】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の光反射装置組立体あるいは本発明の頭部装着型ディスプレイにあっては、
ミラー構造体は、4本の支柱及び4つの変位部材を有し、
各支柱の上端部は、ミラーの重心の周りに固定されており、
対向する第1の支柱及び第3の支柱は、ミラー構造体におけるX軸上に配置され、残りの第2の支柱及び第4の支柱は、ミラー構造体におけるY軸上に配置されており、
第1の支柱の下端部は第1の変位部材の一端部に固定されており、第2の支柱の下端部は第2の変位部材の一端部に固定されており、第3の支柱の下端部は第3の変位部材の一端部に固定されており、第4の支柱の下端部は第4の変位部材の一端部に固定されている態様とすることができる。尚、このような態様を、便宜上、『第1の態様に係るミラー構造体』と呼ぶ。ここで、X軸とY軸が交差する原点は、ミラーの重心と一致することが好ましい。
【0020】
そして、上述した第1の態様に係るミラー構造体にあっては、
ミラー構造体におけるX軸に沿って、第3の変位部材の他端部、第3の変位部材の一端部、第1の変位部材の一端部、及び、第1の変位部材の他端部が、この順で配置されており、
ミラー構造体におけるY軸に沿って、第4の変位部材の他端部、第4の変位部材の一端部、第2の変位部材の一端部、及び、第2の変位部材の他端部が、この順で配置されている構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『第1Aの構成のミラー構造体』と呼ぶ。
【0021】
即ち、第1Aの構成のミラー構造体にあっては、ミラーの重心を原点としたガウス座標を想定し、
第1の支柱の固定中心座標を(X1,0)、
第2の支柱の固定中心座標を(0,Y2)、
第3の支柱の固定中心座標を(X3,0)、
第4の支柱の固定中心座標を(0,Y4)、
第1の変位部材の他端部の固定中心座標を(X’1,Y’1)、
第2の変位部材の他端部の固定中心座標を(X’2,Y’2)、
第3の変位部材の他端部の固定中心座標を(X’3,Y’3)、
第4の変位部材の他端部の固定中心座標を(X’4,Y’4)としたとき、
X’3<X3<0<X1<X’1
Y’4<Y4<0<Y2<Y’2
の関係にある。尚、
1 =−X3
X’1=−X’3
Y’1= Y’3
2 =−Y4
Y’2=−Y’4
X’2= X’4
を満足することが好ましい。
【0022】
ここで、第1Aの構成のミラー構造体にあっては、
各変位部材の外形形状は二等辺三角形であり、
変位部材の一端部は、該二等辺三角形の頂角の近傍に相当し、
変位部材の他端部は、該二等辺三角形の底辺に相当する構成とすることができる。但し、各変位部材の外形形状は、二等辺三角形に限定されず、例えば、矩形、長方形、台形等、任意の形状とすることもできる。
【0023】
あるいは又、第1Aの構成のミラー構造体にあっては、
各変位部材は、二等辺三角形部と、二等辺三角形の頂角に該当する二等辺三角形部の部分から突出した突出部とから成り、
二等辺三角形の頂角に該当する二等辺三角形部の部分の近傍には、二等辺三角形の底辺と平行に延びる溝部が設けられており、
変位部材の一端部は、突出部から構成されており、
変位部材の他端部は、二等辺三角形の底辺に相当する二等辺三角形部の部分から構成されている構成とすることができる。そして、このような構成において、溝部は、二等辺三角形の底辺に相当する二等辺三角形部の部分まで延びている構成とすることもできる。即ち、二等辺三角形の頂角に該当する二等辺三角形部の部分は繋がっているが、二等辺三角形部の他の部分は溝部によって分離されている構造とすることができる。但し、各変位部材の外形形状は、このような疑似二等辺三角形に限定されず、例えば、疑似矩形、疑似長方形、疑似台形等とすることもできる。そして、このように溝部を設けることで、より小さい駆動力で大きな振り角を実現することができる。
【0024】
ラスタースキャンを行う場合、高速でのX軸周りのミラーの回動を共振に基づき行い、低速でのY軸周りのミラーの回動を非共振に基づき行うことが好ましい。そのため、高速でのX軸周りのミラーの回動を生じさせるための第2の変位部材及び第4の変位部材には、高い固有周波数が求められ、一方、低速でのY軸周りのミラーの回動を生じさせるための第1の変位部材及び第3の変位部材には、非共振でも大きな変位が得られるような大きな駆動力が求められる。
【0025】
そして、このような要請に対処するために、第1Aの構成のミラー構造体にあっては、
第1の変位部材及び第3の変位部材はミアンダ構造を有し、
第2の変位部材及び第4の変位部材は片持ち梁構造(板バネ構造、カンチレバー構造)を有する構成とすることが好ましい。そして、この場合、第1の変位部材及び第3の変位部材は、第2の変位部材及び第4の変位部材よりも低い周波数で駆動される構成とすることができる。また、このような構成の第1Aの構成のミラー構造体にあっては、第1の変位部材の他端部は、2箇所において支持部に固定されており、第3の変位部材の他端部は、2箇所において支持部に固定されている構成とすることができる。即ち、第1の変位部材の他端部は、固定中心座標(X’1,Y’11),(X’1,Y’12)の2箇所で支持部に固定されており、第3の変位部材の他端部は、固定中心座標(X’3,Y’31),(X’1,Y’32)の2箇所で支持部に固定されており、第2の変位部材の他端部は、固定中心座標(X’2,Y’2)の1箇所で支持部に固定されており、第4の変位部材の他端部は、固定中心座標(X’4,Y’4)の1箇所で支持部に固定されているとした場合、
X’1 =−X’3
Y’11= Y’31
Y’12= Y’32
Y’2 =−Y’4
X’2 = X’4
を満足することが好ましい。
【0026】
あるいは又、上述した第1の態様に係るミラー構造体にあっては、
ミラー構造体におけるX軸に沿って、第3の変位部材の他端部、第1の変位部材の一端部、第3の変位部材の一端部、及び、第1の変位部材の他端部が、この順で配置されており、
ミラー構造体におけるY軸に沿って、第4の変位部材の他端部、第2の変位部材の一端部、第4の変位部材の一端部、及び、第2の変位部材の他端部が、この順で配置されている構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『第1Bの構成のミラー構造体』と呼ぶ。
【0027】
即ち、第1Bの構成のミラー構造体にあっては、ミラーの重心を原点としたガウス座標を想定し、
第1の支柱の固定中心座標を(X1,0)、
第2の支柱の固定中心座標を(0,Y2)、
第3の支柱の固定中心座標を(X3,0)、
第4の支柱の固定中心座標を(0,Y4)、
第1の変位部材の他端部の固定中心座標を(X’1,Y’1)、
第2の変位部材の他端部の固定中心座標を(X’2,Y’2)、
第3の変位部材の他端部の固定中心座標を(X’3,Y’3)、並びに、
第4の変位部材の他端部の固定中心座標を(X’4,Y’4)としたとき、
X’3<X1<0<X3<X’1
Y’4<Y2<0<Y4<Y’2
の関係にある。尚、
3 =−X1
X’3=−X’1
Y’3= Y’1
4 =−Y2
Y’4=−Y’2
X’4= X’2
を満足することが好ましい。
【0028】
以上に説明した各種の構成、形態を含む第1の態様に係るミラー構造体において、支柱の下端部が固定された変位部材の部分よりも変位部材の他端部側に位置する変位部材の領域には、ヒンジ部が設けられている構成とすることができる。また、このような構成を含む以上に説明した各種の構成、形態を含む第1の態様に係るミラー構造体において、支柱の下端部が固定された変位部材の部分よりも変位部材の他端部側に位置する変位部材の領域は、ミアンダ構造を有する構成とすることができる。
【0029】
更には、以上に説明した各種の構成、形態を含む第1の態様に係るミラー構造体にあっては、
各支柱の上端部が固定されたミラーの部分の周囲には、トーションバーで分離された分離溝が設けられており、
第1の支柱の上端部が固定されたミラーの部分とミラーのその他の部分とは、X軸に沿って延びる第1のトーションバーによって連結されており、
第2の支柱の上端部が固定されたミラーの部分とミラーのその他の部分とは、Y軸に沿って延びる第2のトーションバーによって連結されており、
第3の支柱の上端部が固定されたミラーの部分とミラーのその他の部分とは、X軸に沿って延びる第3のトーションバーによって連結されており、
第4の支柱の上端部が固定されたミラーの部分とミラーのその他の部分とは、Y軸に沿って延びる第4のトーションバーによって連結されている構成とすることができる。
【0030】
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の光反射装置組立体あるいは本発明の頭部装着型ディスプレイにあっては、
ミラー構造体は、4本の支柱及び4つの変位部材を有し、
各支柱の上端部は、ミラー本体部の外周部に固定されており、
第1の支柱の下端部は第1の変位部材の一端部に固定されており、第2の支柱の下端部は第2の変位部材の一端部に固定されており、第3の支柱の下端部は第3の変位部材の一端部に固定されており、第4の支柱の下端部は第4の変位部材の一端部に固定されている態様とすることができる。尚、このような態様を、便宜上、『第2の態様に係るミラー構造体』と呼ぶ。
【0031】
そして、このような第2の態様に係るミラー構造体にあっては、
ミラー本体部は、第1の辺、及び、該第1の辺と対向した第3の辺がX方向に延び、第2の辺、及び、該第2の辺と対向した第4の辺がY方向に延びる矩形形状を有し、
第1の支柱の上端部は、ミラー本体部の第3の辺と第4の辺が交差する第4コーナー部近傍に固定されており、
第2の支柱の上端部は、ミラー本体部の第2の辺と第3の辺が交差する第3コーナー部近傍に固定されており、
第3の支柱の上端部は、ミラー本体部の第1の辺と第2の辺が交差する第2コーナー部近傍に固定されており、
第4の支柱の上端部は、ミラー本体部の第4の辺と第1の辺が交差する第1コーナー部近傍に固定されており、
第1の支柱の下端部に一端部が固定された第1の変位部材の他端部、及び、第2の支柱の下端部に一端部が固定された第2の変位部材の他端部は、第1の辺に相当するミラー本体部の部分に固定されており、
第3の支柱の下端部に一端部が固定された第3の変位部材の他端部、及び、第4の支柱の下端部に一端部が固定された第4の変位部材の他端部は、第3の辺に相当するミラー本体部の部分に固定されている構成とすることができる。
【0032】
ここで、ミラーの重心を原点としたガウス座標を想定し、原点を通り、ミラーにおけるX方向をX軸、原点を通り、ミラーにおけるY方向をY軸としたとき、ミラー本体部における第1の支柱の上端部の固定位置とミラー本体部における第2の支柱の上端部の固定位置、ミラー本体部における第3の支柱の上端部の固定位置とミラー本体部における第4の支柱の上端部の固定位置とは、Y軸に対して対称に位置し、ミラー本体部における第1の支柱の上端部の固定位置とミラー本体部における第4の支柱の上端部の固定位置、ミラー本体部における第2の支柱の上端部の固定位置とミラー本体部における第3の支柱の上端部の固定位置とは、X軸に対して対称に位置していることが望ましい。
【0033】
また、第1の辺及び第3の辺の長さをL1、第2の辺及び第4の辺の長さをL2としたとき、第1の支柱の上端部はミラー本体部の第3の辺と第4の辺が交差する第4コーナー部『近傍』に固定されているとは、第3の辺、第4の辺、第4コーナー部からX方向に沿ってc1・L1だけ離れた境界、及び、第4コーナー部からY方向に沿ってc2・L2だけ離れた境界によって囲まれた領域内に第1の支柱の上端部が固定されていることを意味する。同様に、第2の支柱の上端部はミラー本体部の第2の辺と第3の辺が交差する第3コーナー部『近傍』に固定されているとは、第2の辺、第3の辺、第3コーナー部からX方向に沿ってc1・L1だけ離れた境界、及び、第3コーナー部からY方向に沿ってc2・L2だけ離れた境界によって囲まれた領域内に第2の支柱の上端部が固定されていることを意味する。同様に、第3の支柱の上端部はミラー本体部の第1の辺と第2の辺が交差する第2コーナー部『近傍』に固定されているとは、第1の辺、第2の辺、第2コーナー部からX方向に沿ってc1・L1だけ離れた境界、及び、第2コーナー部からY方向に沿ってc2・L2だけ離れた境界によって囲まれた領域内に第3の支柱の上端部が固定されていることを意味する。同様に、第4の支柱の上端部はミラー本体部の第4の辺と第1の辺が交差する第1コーナー部『近傍』に固定されているとは、第4の辺、第1の辺、第1コーナー部からX方向に沿ってc1・L1だけ離れた境界、及び、第1コーナー部からY方向に沿ってc2・L2だけ離れた境界によって囲まれた領域内に第4の支柱の上端部が固定されていることを意味する。ここで、c1は0乃至0.2の範囲内のいずれかの値であり、c2も0乃至0.2の範囲内のいずれかの値であることが望ましい。但し、これに限定するものではないし、場合によっては、支柱の上端部は、ミラー本体部のコーナー部近傍に固定されていなくともよい。
【0034】
そして、このような構成を含む第2の態様に係るミラー構造体にあっては、第1の変位部材、第2の変位部材、第3の変位部材及び第4の変位部材はミアンダ構造を有する構成とすることができる。
【0035】
以上に説明した各種の構成、形態、第1の態様、第2の態様を含むミラー構造体において、変位部材を、バイモルフ型、ユニモルフ型、モノモルフ型又は積層型(マルチモルフ型)の圧電アクチュエータから構成することができるが、これに限定するものではなく、その他、変位部材を、静電駆動アクチュエータ、熱駆動アクチュエータ、磁界を印加したときに形状が変化するジュール効果を有する磁歪材料から構成された電磁駆動アクチュエータ、磁気トルクを利用した電磁駆動アクチュエータ、あるいは、高分子ゲルから構成された電気化学駆動アクチュエータから構成することもできる。
【0036】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の光反射装置組立体、頭部装着型ディスプレイ、光反射装置あるいはフォトニック結晶(以下、これらを総称して、単に、『本発明』と呼ぶ場合がある)において、2次元以上のフォトニック結晶、即ち、2次元フォトニック結晶あるいは3次元フォトニック結晶を構成する材料は、入射光に対して透明であり、しかも、比誘電率の高い材料(例えば、誘電体材料)から構成することが好ましく、具体的には、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、五酸化タンタル(Ta25)、酸化ジルコニウム(ZrO2)を例示することができる。空孔の断面とは、xy平面で空孔を切断したときの断面である。空孔内には、例えば、空気が充填されている。空孔の断面形状は楕円形であるが、楕円の長軸(長さ:VDL)はy軸と平行であり、短軸(長さ:VDS)はx軸と平行であることが、波数空間における等周波数面のアスペクト比(ky/kx)をより大きくできるといった理由から好ましい。空孔はz軸と平行にフォトニック結晶の内部を延びている。空孔の配列は面心配置であるが、ここで、「面心配置」とは、例えば、x軸と平行な辺を短辺、y軸と平行な辺を長辺とした長方形の4つの頂点に空孔が配置され、しかも、長方形の中心に更に1つの空孔が配置された状態を指す。光入射面、光反射面及び光出射面は、平面であり、光入射面のどの位置から光が入射しても、入射角と出射角の関係を或る所定の関係に維持することができる。
【0037】
波数空間(逆格子ベクトルによって構成された空間のことであり、逆格子空間とも呼ばれる)上での分散面は、結晶中の光伝搬を決定する等周波数面とも呼ばれるが、その形状は、アスペクト比4以上の長方形である。尚、長方形の長辺は、長方形の中心に向かって凸状に湾曲し、長方形の短辺は、長方形の中心から離れる方向に凸状に湾曲している場合もあるが、係る形状も長方形に包含される。但し、湾曲は小さければ小さいほど、好ましい。
【0038】
一般に、フォトニック結晶における光が入射する面(光入射面)及び出射する面(光出射面)には、反射防止膜を形成する必要がある。しかしながら、本発明のフォトニック結晶に関しては、反射防止膜が無くとも、光透過率70%以上を確保できるため、必ずしも反射防止膜は必要ではない。但し、一層高い光透過率が要求される場合には、反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜は、酸化シリコン膜(SiOX)、酸窒化シリコン膜(SiON)、酸化ニオブ膜(NbOx)、窒化チタン膜(TiO2)、酸窒化チタン膜(TiON)、低屈折率材料と高屈折率材料とから成る多層積層膜(例えば、酸化シリコン膜と酸化ニオブ膜とから成る多層積層膜、酸化シリコン膜と酸化チタン膜の多層積層膜)から構成することができ、例えば、各種の塗布法やスパッタリング法等の物理的気相成長法によって形成することができるし、フィルム状の反射防止膜を配置(例えば、接着)してもよい。
【0039】
光反射面には光反射膜が形成されているが、光反射膜は、金属膜あるいは合金膜から構成することができ、例えば、各種の物理的気相成長法(PVD法)や各種の化学的気相成長法(CVD法)にて形成することができる。光反射膜を構成する材料として、具体的には、金(Au)、銀(Au)、アルミニウム(Al)を例示することができる。あるいは又、フィルム状の光反射膜を光反射面に配置(例えば、接着)してもよい。
【0040】
ミラー構造体における変位部材を構成するユニモルフ型の圧電アクチュエータは、例えば、長さ方向に伸縮する1枚の圧電材料薄膜が変位部材を構成する基層(支持構造体)上に形成された構造を有する。また、バイモルフ型の圧電アクチュエータは、例えば、長さ方向に伸縮する2枚の圧電材料薄膜が変位部材を構成する基層(支持構造体)を介して積層された構造を有し、一方の圧電材料薄膜が伸びたとき、他方の圧電材料薄膜が縮む。尚、2枚の圧電材料薄膜を、分極方向を対称に配置した形式(シリーズ・タイプ)と、分極方向を非対称に(同一方向に)配置した形式(パラレル・タイプ)とがある。積層型の圧電アクチュエータは、例えば、長さ方向に伸縮する多数の圧電材料薄膜と基層とが積層された構造を有する。そして、これらの構造を有する変位部材にあっては、長さ方向に伸縮する圧電材料薄膜の動きによって、その一端部が駆動(上下動)される。基層(支持構造体)は、例えば、シリコン層、あるいは、酸化シリコン層、あるいは、シリコン層と酸化シリコン層との積層構造から構成することができる。
【0041】
圧電材料薄膜を構成する材料として、PbZrO3とPbTiO3の固溶体であるPZT[ジルコン酸チタン酸鉛、Pb(Zr,Ti)O3];PZTにNb、Co、Mnを添加したPZT系セラミックス材料;PZTにペロブスカイトABO3を加えた3成分系のPZT系セラミックス材料;PbTiO3系セラミックス材料;LiNbO3系セラミックス材料;BaTiO3−SiO2−Al23やBaTiO3−Nb25といったBaTiO3系セラミックス材料;マグネシウム・ニオブ酸鉛[Pb(Mg,Nb)O3]系セラミックス材料;ZnO;AlNを例示することができる。
【0042】
圧電材料薄膜は、例えば、
(1)RFマグネトロンスパッタリング法等を含むスパッタリング法や、エキシマレーザ等を用いたレーザアブレーション法といった各種物理的気相成長法(PVD法)
(2)原料として、例えば、Pb(C254、Zr(DPM)4、Ti(i−C37O)4等の有機金属化合物を用いたMOCVD法
(3)例えば、酢酸鉛[Pb(CH3COOH)2]、チタンイソプロポキシド[Ti(OCH(CH324]、及び、ジルコンイソプロポキシド[Zr(OCH2CH2CH34]を金属原料として用い、係る原料溶液をスピンコーティング法等で成膜し、熱処理することによって緻密化、結晶化させて圧電材料薄膜を得るゾル・ゲル法
(4)PZT系セラミックス材料粉末をスラリー化し、スピンコーティング法等に基づき圧電材料薄膜を成膜するコンポジット法を含む、スピンコーティング法
(5)スクリーン印刷法
(6)メッキ法、
(7)ジルコニウム、チタン等の水溶液を圧力容器内に入れ、加熱、加圧することで圧電材料薄膜を成膜する水熱合成法
(8)サブミクロンサイズの原料粉末を合すと混合してエアロゾルとし、吹き付けることで圧電材料薄膜を成膜するエアロゾルデポジッション法
等によって成膜することができる。
【0043】
変位部材を構成する基層(支持構造体)と圧電材料薄膜との間には下部電極を設け、圧電材料薄膜の上には上部電極を設ける。下部電極として、Pt/Ti積層構造を挙げることができる。尚、Ti層が基層と接し、Ti層は密着層として機能する。また、上部電極を構成する材料として、白金(Pt)、金(Au)、酸化ルテニウム(RuOX)、酸化イリジウム(IrOX)、又は酸化イリジウム−ハフニウム(Ir−Hf−O系材料)、Ru、Ru2/Ruの積層構造、Ir、IrO2/Irの積層構造、Pt、Pd、Pt/Tiの積層構造、Pt/Taの積層構造、Pt/Ti/Taの積層構造、La0.5Sr0.5CoO3(LSCO)、Pt/LSCOの積層構造、YBa2Cu37を例示することができる。電極の成膜は、スパッタリング法やパルスレーザアブレーション法にて行うことができる。また、電極のパターニングは、例えばイオンミーリング法やRIE法にて行うことができる。
【0044】
変位部材を静電駆動アクチュエータから構成する場合、変位部材に可動電極を設け、変位部材の下方に駆動電極を設け、変位部材の可動電極と駆動電極との間に生じる静電力によって、変位部材を駆動(上下動)させればよい。
【0045】
変位部材を熱駆動アクチュエータから構成する場合、熱膨張係数の異なる2種類の材料層(例えば、Si層とAu層の積層構造、Si層とAl層の積層構造、熱膨張係数の異なるポリイミド層の積層構造)を積層した熱バイモルフ型とし、これらの2種類の材料層に例えば電流を流すことで温度変化を生じさせる。その結果、変位部材が撓み、これによって、変位部材が駆動(上下動)される。あるいは、厚さの異なる2本の梁を先端で結合したU字型とし、電流を流すと、細い梁構造の方が太い梁構造よりも抵抗値が高いので発熱量が多く、その結果、変位部材が太い梁構造に向かって曲がり、変位部材が駆動(上下動)される。あるいは又、変位部材を、例えばTiとNiの合金から成る形状記憶合金から構成してもよい。
【0046】
ミラーを構成する光反射層は、ミラー本体部の表面(おもてめん)に形成された金属膜あるいは合金膜から構成することができ、例えば、各種の物理的気相成長法(PVD法)や各種の化学的気相成長法(CVD法)にて形成することができる。光反射層を構成する材料として、具体的には、金(Au)、銀(Au)、アルミニウム(Al)を例示することができる。ミラー本体部は、具体的には、例えば、シリコン層、あるいは、酸化シリコン層、あるいは、シリコン層と酸化シリコン層との積層構造から構成することができる。ミラー本体部の外形形状は、円形、楕円形、長円形(半円と2本の線分が組み合わされた形状)、正方形、長方形、台形等を含む矩形等、本質的に任意の形状とすることができる。また、光反射層の外形形状も、円形、楕円形、長円形、正方形、長方形、台形等を含む矩形等、本質的に任意の形状とすることができる。ミラー本体部と光反射層とを、同じ、あるいは、類似、あるいは、相似した外形形状としてもよいし、異なる外形形状としてもよい。更には、ミラー本体部と光反射層とを大きさとしてもよいし、光反射層よりもミラー本体部を大きくしてもよい。場合によっては、ミラー本体部を、光反射層支持部、及び、光反射層支持部を取り囲む可動フレームから構成してもよく、この場合、可動フレームの四隅近傍の可動フレーム裏面に複数の支柱の上端部を固定すればよく、また、可動フレームと光反射層支持部とを連結した状態で一体的に形成すればよい。支柱は、基本的に伸縮することの無い、剛体から構成されており、より具体的には、例えば、シリコン、あるいは、酸化シリコン、あるいは、シリコンと酸化シリコンとの組合せから構成することができる。支柱の軸線に垂直な面で支柱を切断したときの支柱の断面形状は、円形、楕円形、長円形、正方形、長方形、台形等を含む矩形等、本質的に任意の形状とすることができる。支柱及び変位部材の数は、上述したとおり、4であることが好ましいが、これに限定するものではなく、3、あるいは、5以上であってもよい。
【0047】
支柱の上端部はミラー本体部の裏面に固定されているが、具体的には、支柱とミラー本体部とを、例えば、周知の接合技術(ボンディング技術)によって接合すればよい。ここで、接合技術(ボンディング技術)として、エポキシ系接着剤、BCB(Benzo-CycloButene)、CYTOP等の有機系材料、ガラスフリット、水ガラス等を接着層として用いる方法だけでなく、ハンダ層等を接着層として用いる方法、陽極接合法、酸素等のプラズマによってウエハ表面を処理する方法を含むウエハ直接接合法、表面活性化常温接合法を挙げることもできる。支柱の下端部は変位部材の一端部に固定されているが、具体的には、例えば、支柱を変位部材上に形成すればよい。変位部材の他端部は支持部に固定されているが、具体的には、例えば、支持部を変位部材の他端部上に形成すればよい。トーションバーは周知の加工方法に基づくミラーの加工によって形成することができる。
【0048】
本発明の頭部装着型ディスプレイにあっては、画像表示装置を、1つ備えていてもよいし(片眼型)、2つ備えていてもよい(両眼型)。
【0049】
本発明の頭部装着型ディスプレイにおいて、フレームは観察者の正面に配置されるフロント部と、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部と、各テンプル部の先端部に取り付けられたモダン部から成り、更には、ノーズパッドを備えている。フレーム及びノーズパッドの組立体は、リムが無い点を除き、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。フレームを構成する材料は、金属や合金、プラスチック、これらの組合せといった、通常の眼鏡を構成する材料と同じ材料から構成することができる。
【0050】
そして、頭部装着型ディスプレイのデザイン上、あるいは、頭部装着型ディスプレイの装着の容易性といった観点から、1あるいは2の画像生成装置からの配線(信号線や電源線等)が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部から外部に延び、外部回路(制御回路)に接続されている形態とすることが望ましい。更には、各画像生成装置はヘッドホン部を備えており、各画像生成装置からのヘッドホン部用配線が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部からヘッドホン部へと延びている形態とすることが一層望ましい。ヘッドホン部として、例えば、インナーイヤー型のヘッドホン部、カナル型のヘッドホン部を挙げることができる。ヘッドホン部用配線は、より具体的には、モダン部の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部へと延びている形態とすることが好ましい。
【0051】
本発明の頭部装着型ディスプレイにおいて、撮像装置は、フロント部の中央部分に取り付けられている形態とすることができる。撮像装置は、具体的には、例えば、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズから構成されている。撮像装置からの配線は、例えば、フロント部の裏面を通し、一方の画像表示装置に接続すればよく、更には、画像生成装置から延びる配線に含ませればよい。
【0052】
本発明の頭部装着型ディスプレイにおいて、導光手段は、
(a)全体として画像生成装置よりも観察者の顔の中心側に配置され、画像生成装置から出射された光が入射され、導光され、観察者の瞳に向かって出射される導光板、
(b)導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を偏向させる第1偏向手段、及び、
(c)導光板の内部を全反射により伝播した光を導光板から出射させるために、導光板の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段、
から構成されている形態とすることができる。尚、「全反射」という用語は、内部全反射、あるいは、導光板内部における全反射を意味する。以下においても同様である。
【0053】
そして、本発明の頭部装着型ディスプレイにおけるこのような形態において、第1偏向手段は、導光板に入射された光を反射し;第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する構成とすることができる。更には、この場合、第1偏向手段は反射鏡として機能し、第2偏向手段は半透過鏡として機能する構成とすることができる。
【0054】
このような構成において、第1偏向手段は、例えば、合金を含む金属から構成され、導光板に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、導光板に入射された光を回折させる回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。また、第2偏向手段は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体や、ハーフミラー、偏光ビームスプリッター、ホログラム回折格子膜から構成することができる。そして、第1偏向手段や第2偏向手段は、導光板の内部に配設されている(導光板の内部に組み込まれている)が、第1偏向手段においては、導光板に入射された平行光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された平行光が反射又は回折される。一方、第2偏向手段においては、導光板の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射又は回折され、導光板から平行光の状態で出射される。
【0055】
あるいは又、本発明の頭部装着型ディスプレイにおけるこのような形態において、第1偏向手段は、導光板に入射された光を回折し;第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段及び第2偏向手段は回折格子素子から成る形態とすることができ、更には、回折格子素子は、反射型回折格子素子から成り、あるいは又、透過型回折格子素子から成り、あるいは又、一方の回折格子素子は反射型回折格子素子から成り、他方の回折格子素子は透過型回折格子素子から成る構成とすることができる。尚、反射型回折格子素子として、反射型体積ホログラム回折格子を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材』と呼ぶ場合がある。
【0056】
第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、異なるP種類(例えば、P=3であり、赤色、緑色、青色の3種類)の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応させるために、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。尚、各回折格子層には1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されている。あるいは又、異なるP種類の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応するために、1層の回折格子層から成る第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材にP種類の干渉縞が形成されている構成とすることもできる。あるいは又、画角を例えば三等分して、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、各画角に対応する回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。そして、これらの構成を採用することで、各波長帯域(あるいは、波長)を有する光が第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材において回折反射されるときの回折効率の増加、回折受容角の増加、回折角の最適化を図ることができる。
【0057】
第1回折格子部材及び第2回折格子部材を構成する材料として、フォトポリマー材料を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材及び第2回折格子部材の構成材料や基本的な構造は、従来の反射型体積ホログラム回折格子の構成材料や構造と同じとすればよい。反射型体積ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折反射するホログラム回折格子を意味する。回折格子部材には、その内部から表面に亙り干渉縞が形成されているが、係る干渉縞それ自体の形成方法は、従来の形成方法と同じとすればよい。具体的には、例えば、回折格子部材を構成する部材(例えば、フォトポリマー材料)に対して一方の側の第1の所定の方向から物体光を照射し、同時に、回折格子部材を構成する部材に対して他方の側の第2の所定の方向から参照光を照射し、物体光と参照光とによって形成される干渉縞を回折格子部材を構成する部材の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体光及び参照光の波長を適切に選択することで、回折格子部材の表面における干渉縞の所望のピッチ、干渉縞の所望の傾斜角(スラント角)を得ることができる。干渉縞の傾斜角とは、回折格子部材(あるいは回折格子層)の表面と干渉縞の成す角度を意味する。第1回折格子部材及び第2回折格子部材を、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層の積層構造から構成する場合、このような回折格子層の積層は、P層の回折格子層をそれぞれ別個に作製した後、P層の回折格子層を、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用して積層(接着)すればよい。また、粘着性を有するフォトポリマー材料を用いて1層の回折格子層を作製した後、その上に順次粘着性を有するフォトポリマー材料を貼り付けて回折格子層を作製することで、P層の回折格子層を作製してもよい。
【0058】
あるいは又、本発明の頭部装着型ディスプレイにおいて、導光手段は、画像生成装置よりも観察者の顔の中心側に配置され、画像生成装置から出射された光が入射され、観察者の瞳に向かって出射される半透過ミラーから構成されている形態とすることができる。尚、画像生成装置から出射された光は、空気中を伝播して半透過ミラーに入射する構造としてもよいし、例えば、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材(具体的には、後述する導光板を構成する材料と同様の材料から成る部材)の内部を伝播して半透過ミラーに入射する構造としてもよい。尚、半透過ミラーを、この透明な部材を介して画像生成装置に取り付けてもよいし、半透過ミラーを、この透明な部材とは別の部材を介して画像生成装置に取り付けてもよい。
【0059】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の頭部装着型ディスプレイにおいて、画像生成装置は、
(イ)光源、
(ロ)光源から出射された光を平行光とするコリメート光学系、
(ハ)コリメート光学系から出射された平行光を走査する走査手段、及び、
(ニ)走査手段によって走査された平行光をリレーし、出射するリレー光学系、
から構成されている形態とすることができる。
【0060】
ここで、走査手段が、本発明の光反射装置組立体に相当する。即ち、コリメート光学系から出射された平行光は、光反射装置組立体を構成するミラー構造体によって走査・反射され、光反射装置に入射し、光反射装置から出射され、リレー光学系を経由して導光手段に入射する。あるいは又、コリメート光学系から出射された平行光は、光反射装置に入射し、光反射装置から出射され、ミラー構造体によって走査・反射され、光反射装置に再入射し、光反射装置から出射され、導光手段に入射する。ミラー構造体の数は、例えば、1である。
【0061】
このような構成の画像生成装置における光源として発光素子を挙げることができ、具体的には、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができる。また、発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。このような構成の画像生成装置における画素(仮想の画素)の数も、頭部装着型ディスプレイに要求される仕様に基づき決定すればよく、画素(仮想の画素)の数の具体的な値として、320×240、640×480、854×480、1024×768、1920×1080を例示することができる。また、光源を赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から構成する場合、例えば、クロスプリズムを用いて色合成を行うことが好ましい。リレー光学系は、周知のリレー光学系から構成すればよい。
【0062】
このような構成の画像生成装置において、コリメート光学系にて複数の平行光とされた光を導光板に入射させるが、このような、平行光であることの要請は、これらの光が導光板へ入射したときの光波面情報が、第1偏向手段と第2偏向手段を介して導光板から出射された後も保存される必要があることに基づく。尚、複数の平行光を生成させるためには、具体的には、コリメート光学系における焦点距離の所(位置)に、例えば、クロスプリズムにおける光出射部を位置させればよい。コリメート光学系は、画素の位置情報を導光手段の光学系における角度情報に変換する機能を有する。コリメート光学系として、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面プリズム、ホログラムレンズを、単独、若しくは、組み合わせた、全体として正の光学的パワーを持つ光学系を例示することができる。
【0063】
導光板は、導光板の軸線(Y’方向)と平行に延びる2つの平行面(第1面及び第2面)を有している。光が入射する導光板の面を導光板入射面、光が出射する導光板の面を導光板出射面としたとき、第1面によって導光板入射面及び導光板出射面が構成されていてもよいし、第1面によって導光板入射面が構成され、第2面によって導光板出射面が構成されていてもよい。導光板を構成する材料として、石英ガラスやBK7等の光学ガラスを含むガラスや、プラスチック材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、非晶性のポリプロピレン系樹脂、AS樹脂を含むスチレン系樹脂)を挙げることができる。導光板の形状は、平板に限定するものではなく、湾曲した形状を有していてもよい。
【0064】
本発明の頭部装着型ディスプレイを両眼型とする場合、
導光手段は、全体として画像生成装置よりも観察者の顔の中心側に配置されており、
2つの画像表示装置を結合する結合部材を更に有し、
結合部材は、観察者の2つの瞳の間に位置するフレームの中央部分の観察者に面する側に取り付けられており、
結合部材の射影像は、フレームの射影像内に含まれる構成とすることが好ましい。
【0065】
このように、結合部材を、観察者の2つの瞳の間に位置するフレームの中央部分に取り付けられている構造とすることによって、即ち、画像表示装置は、フレームに、直接、取り付けられた構造とはなっていなければ、観察者がフレームを頭部に装着したとき、テンプル部が外側に向かって広がった状態となり、その結果、フレームが変形したとしても、係るフレームの変形によって、画像生成装置あるいは導光手段の変位(位置変化)が生じることがないか、生じたとしても、極僅かである。それ故、左右の画像の輻輳角が変化してしまうことを確実に防止することができる。しかも、フレームのフロント部の剛性を高める必要がないので、フレームの重量増加、デザイン性の低下、コストの増加を招くことがない。また、画像表示装置は、眼鏡型のフレームに、直接、取り付けられていないので、観察者の嗜好によってフレームのデザインや色等を自由に選択することが可能であるし、フレームのデザインが受ける制約も少なく、デザイン上の自由度が高い。加えて、結合部材は、観察者とフレームとの間に配置されており、しかも、結合部材の射影像は、フレームの射影像内に含まれる。云い換えれば、観察者の正面から頭部装着型ディスプレイを眺めたとき、結合部材はフレームによって隠されている。従って、高いデザイン性、意匠性を頭部装着型ディスプレイに与えることができる。
【0066】
尚、結合部材は、観察者の2つの瞳の間に位置するフロント部の中央部分(通常の眼鏡におけるブリッジの部分に相当する)の観察者に面する側に取り付けられている構成とすることが好ましい。
【0067】
結合部材によって2つの画像表示装置が結合されているが、具体的には、結合部材の各端部に、画像生成装置が、取付け状態調整可能に取り付けられている形態とすることができる。そして、この場合、各画像生成装置は、観察者の瞳よりも外側に位置している構成とすることが好ましい。更には、このような構成にあっては、一方の画像生成装置の取付部中心とフレームの一端部(一方の智、ヨロイ)との間の距離をα、結合部材の中心からフレームの一端部(一方の智)までの距離をβ、他方の画像生成装置の取付部中心とフレームの一端部(一方の智)との間の距離をγ、フレームの長さをLとしたとき、0.01×L≦α≦0.30×L、好ましくは、0.05×L≦α≦0.25×L、0.35×L≦β≦0.65×L、好ましくは、0.45×L≦β≦0.55×L、0.70×L≦γ≦0.99×L、好ましくは、0.75×L≦γ≦0.95×Lを満足することが望ましい。結合部材の各端部への画像生成装置の取付けは、具体的には、例えば、結合部材の各端部の3箇所に貫通孔を設け、貫通孔に対応した螺合部を画像生成装置に設け、各貫通孔にビスを通し、画像生成装置に設けられた螺合部に螺合させる。ビスと螺合部との間にはバネを挿入しておく。こうして、ビスの締め付け状態によって、画像生成装置の取付け状態(結合部材に対する画像生成装置の傾き)を調整することができる。
【0068】
ここで、画像生成装置の取付部中心とは、画像生成装置が結合部材に取り付けられている状態において、画像生成装置及びフレームを仮想平面に射影したときに得られる画像生成装置の射影像が、フレームの射影像の重なっている部分のフレームの軸線方向に沿った二等分点を指す。また、結合部材の中心とは、結合部材がフレームに取り付けられている状態において、結合部材がフレームに接している部分のフレームの軸線方向に沿った二等分点を指す。フレームの長さとは、フレームが湾曲している場合、フレームの射影像の長さである。尚、射影方向は、観察者の顔に対して垂直な方向とする。
【0069】
あるいは又、結合部材によって2つの画像表示装置が結合されているが、具体的には、結合部材が、2つの導光手段を結合している形態とすることもできる。尚、2つの導光手段が一体的に作製されている場合があり、このような場合、係る一体的に作製された導光手段に結合部材が取り付けられているが、係る形態も、結合部材が2つの導光手段を結合している形態に包含される。一方の画像生成装置の中心とフレームの一端部との間の距離をα’他方の画像生成装置の中心とフレームの一端部との間の距離をγ’としたとき、α’,γ’の値も上述したα,γの値と同様とすることが望ましい。尚、画像生成装置の中心とは、画像生成装置が導光手段に取り付けられている状態において、画像生成装置及びフレームを仮想平面に射影したときに得られる画像生成装置の射影像が、フレームの射影像の重なっている部分のフレームの軸線方向に沿った二等分点を指す。
【0070】
結合部材の形状は、結合部材の射影像がフレームの射影像内に含まれる限りにおいて、本質的に任意であり、例えば、棒状、細長い板状を例示することができる。結合部材を構成する材料も、金属や合金、プラスチック、これらの組合せを挙げることができる。
【実施例1】
【0071】
実施例1は、本発明のフォトニック結晶及び光反射装置に関する。実施例1のフォトニック結晶の概念図を図1の(A)に示すが、実施例1のフォトニック結晶は、断面形状が楕円形の空孔11が内部に配列された2次元以上のフォトニック結晶10である。そして、空孔11の配列は面心配置であり、且つ、フォトニック結晶10のx軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTxとy軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTyとは異なっている。また、図2の(A)に波数空間上での分散面を示すように、分散面の形状はアスペクト比4以上の長方形である。尚、図2の(A)において、分散面のx方向の長さをDx、y方向の長さをDyで示す。ここで、アスペクト比4以上の長方形とは、Dy/Dxの値が4以上であることを意味する。また、図2の(A)において、円形は、真空における分散面を示す。
【0072】
また、実施例1の光反射装置12は、図1の(B)に模式図を示すように、光入射面13、光反射膜15が形成され、光入射面13から入射した光が反射される光反射面14、及び、光反射面14で反射された光が出射される光出射面16を備えた実施例1のフォトニック結晶10(あるいはフォトニック結晶体)から成る。尚、光入射面13、光反射面14及び光出射面16は、平面である。
【0073】
ここで、実施例1において、フォトニック結晶10は、2次元フォトニック結晶であり、屈折率2.5を有する酸化チタン(TiO2)から成る。空孔11の断面形状、即ち、xy平面で空孔11を切断したときの断面形状は楕円形である。空孔11内には、空気(屈折率:1.0)が充填されている。空孔11の断面形状において、楕円の長軸(長さ:VDL)はy軸と平行であり、短軸(長さ:VDS)はx軸と平行である。空孔11はz軸と平行にフォトニック結晶10の内部を延びている。x軸と平行な辺を短辺、y軸と平行な辺を長辺とした長方形の4つの頂点のそれぞれに空孔11が配置されており、しかも、長方形の中心に更に1つの空孔11が配置されている。尚、フォトニック結晶10、あるいは、光反射装置12、それ自体は、周知の方法で作製することができる。
【0074】
具体的には、
PTy=1.35PTx
VDL=0.75PTx
VDS=0.40PTx
であり、入射光の波長を640nm(赤色)とする場合、PTx=198.4μm、入射光の波長を520nm(緑色)とする場合、PTx=161.2μm、入射光の波長を450nm(青色)とする場合、PTx=139.5μmである。
【0075】
そして、図2の(A)に示すように、フォトニック結晶10にあっては、分散面の長辺の長さDxは、真空における分散面の直径の(1/2)1/2以上である。
【0076】
また、入射光のx軸方向における波数ベクトルの大きさをkx、y軸方向における波数ベクトルの大きさをkyとし、(PTx・kx)/(PTy・ky)の値をm(但し、mは2以上の整数)、x軸方向と光反射面14との成す角度をθとしたとき、
tan(θ)=m (1)
を満足する。具体的には、
x=1.70
y=0.32
m =4
θ =76.0(度)
である。このような構成とすることで、光反射装置12に入射した光が光反射面14で反射されるとき、反射前の角度と反射後の角度の差を90度とすることができる。即ち、光反射面への入射角θIと光反射面からの出射角θOとの和を90度とすることができる。
【0077】
実施例1の光反射装置12における入射角と出射角の関係を求めた結果を,図2の(B)のグラフに示す。また、実施例1の光反射装置12における振り角拡大範囲(単位:任意)と振り角拡大率の関係をシミュレーションした結果を図3の(A)に示し、振り角拡大範囲(単位:任意)と振り角線形性の関係をシミュレーションした結果を図3の(B)に示す。ここで、振り角拡大範囲とは、所望の入射光角度変化(実施例1の例では±10度)に対する、振り角拡大が可能となる入射光角度範囲であり、波数空間上では、真空の等周波数面の半径をRとすると、下記のように表される。
y/(2R・sin10°)
また、振り角拡大率とは、入射光の角度変化に対する出射光の角度変化の比率を表し、波数空間上ではDx/Dyで表される。更には、振り角線形性とは、入射光角度と出射光角度の関係がどの程度線形であるかを表す指標であり、ミラー反射による波数ベクトルの境界条件(図2の(A)の斜め線参照)の傾きと、等周波数面の長辺の最大傾きとの比率で表される。尚、x軸と平行な辺を短辺、y軸と平行な辺を長辺とした長方形の4つの頂点にのみ空孔が配置されているフォトニック結晶を比較例1のフォトニック結晶として、同様のシミュレーションを行った。その結果を、図3の(A)及び(B)に示す。尚、図3の(A)及び(B)において、実施例1の結果を黒三角印で示し、比較例1の結果を黒菱形印で示す。また、各特性における所望の範囲を「In spec」で表示した範囲で示す。
【0078】
図2の(B)から、入射角と出射角との間には良い線形性があり、図3の(A)及び(B)から、実施例1のフォトニック結晶10の特性は、比較例1のフォトニック結晶の特性よりも優れていることが判る。
【0079】
更には、光反射装置12の光入射面13への入射光の入射角と、光出射面16からの出射光の出射角との関係をシミュレーションした結果を図4に示す。図4から、入射角が−10度から+10度の範囲において、出射角は−41度から+42度の範囲に拡大されていることが判る。即ち、振り角(光偏向角度)の拡大率(出射角/入射角の比)は約4倍となっていることが判る。尚、Dy/Dxの値が大きいほど、振り角の拡大率を増大させることができるし、Dxの値が大きいほど、振り角の拡大範囲の増大を図ることができるし、分散面の長辺が直線に近づくほど、入射角と出射角の関係の線形性が良好となる。
【0080】
このように、実施例1のフォトニック結晶あるいは光反射装置にあっては、分散面の一様な領域を用いるが故に、入射角、波長分散に対する設計余裕が大きい。また、波数空間上での分散面の形状をアスペクト比4以上としているので、振り角(光偏向角度)の拡大率(出射角/入射角の比)を4倍以上と大きくすることができる。しかも、波数空間上での分散面の形状を長方形とすることで、入射角と出射角の関係に関して良好な線形性を保つことができる。
【実施例2】
【0081】
実施例2は、本発明の光反射装置組立体に関する。概念図を図5の(A)に示す実施例2の光反射装置組立体17は、
(イ)光反射装置12、及び、
(ロ)ミラー構造体20A、
を備えた光反射装置組立体である。そして、光反射装置12は、上述した実施例1の光反射装置12から成る。
【0082】
一方、ミラー構造体20Aは、
(A)ミラー本体部23、及び、ミラー本体部23の表面に設けられた光反射層22を備えたミラー21、
(B)ミラー本体部23の裏面24に上端部30Aが固定された複数の支柱30、
(C)それぞれの支柱30の下端部30Bに一端部40Aが固定された変位部材40、並びに、
(D)変位部材40の他端部40Bを固定する支持部60、
から成る。
【0083】
実施例2の光反射装置組立体17にあっては、実施例1と同様に、PTy>PTxの関係にある。また、光反射装置12の光入射面13はy軸と平行であり、光反射装置12の光出射面16はx軸と平行である。そして、光源から出射された光は、ミラー21の光反射層22で反射され、光反射装置12の光入射面13に入射し、光反射面14で反射され、光出射面16から出射される。
【0084】
更には、ミラー21の角度を|θM|だけ変化させると、ミラー21に入射し、ミラー21から出射する光の角度は、|2θM|、変化する。また、実施例1にて説明したとおり、振り角(光偏向角度)の拡大率(出射角/入射角の比)は約4倍となっている。従って、ミラー21に入射し、最終的に光反射装置12から出射される光は、ミラー21の角度が|θM|だけ変化したとき、約|8θM|、変化する。このように、実施例2の光反射装置組立体17にあっては、ミラー21の角度変化の約8倍の大きさの振り角(光偏向角度)を得ることができる。
【実施例3】
【0085】
実施例3は、実施例2の変形である。概念図を図5の(B)に示す実施例3の光反射装置組立体18にあっても、実施例1と同様に、PTy>PTxの関係にある。また、光反射装置12Aの光入射面13Aはx軸と平行であり、光反射装置12Aの光出射面16Aはy軸と平行である。そして、光源から出射された光は、光反射装置12Aの光入射面13Aに入射し、光反射膜15Aが形成された光反射面14Aで反射され、光出射面16Aから出射され、ミラー21の光反射層22にて反射されて、光反射装置12Aの光出射面16Aから再入射し、光反射面14Aで反射され、光源からの光入射面13Aへの入射方向とは異なる方向に、光入射面13Aから出射される。
【0086】
例えば、ミラー21がy軸と平行に配置されている場合を想定する。このような場合、入射角−20度で光反射装置12に入射した光は、光出射面16Aから−5度の出射角で出射し、ミラー21によって反射され、光反射装置12に入射角+5度で光出射面16Aから再入射する。そして、最終的に、光反射装置12から出射角+20度で出射される。そして、実施例3にあっても、ミラー21の角度を|θM|だけ変化させると、実施例2と同様に、最終的に光反射装置12から出射される光は、約|8θM|、変化する。このように、実施例3の光反射装置組立体18にあっても、ミラー21の角度変化の約8倍の大きさの振り角(光偏向角度)を得ることができる。
【実施例4】
【0087】
実施例4、あるいは後述する実施例5〜実施例11は、実施例2あるいは実施例3の光反射装置組立体17,18を構成するミラー構造体(2次元MEMSスキャナ)に関する。
【0088】
実施例4は、第1の態様に係るミラー構造体(2次元MEMSスキャナ)、より具体的には、第1Aの構成のミラー構造体に関する。実施例4のミラー構造体の模式的な一部端面図、及び、実施例4のミラー構造体を上方から眺めた模式図を、それぞれ、図6の(A)及び(B)に示し、実施例4のミラー構造体を構成する変位部材及び支柱の配置を模式的に図7に示す。
【0089】
実施例4のミラー構造体20Aは、実施例2にて説明したとおり、
(A)ミラー本体部23、及び、このミラー本体部23の表面に設けられた光反射層22を備えたミラー21、
(B)ミラー本体部23の裏面24に上端部30Aが固定された複数の支柱30、
(C)それぞれの支柱30の下端部30Bに一端部40Aが固定された変位部材40、並びに、
(D)変位部材40の他端部40Bを固定する支持部60、
から成る。
【0090】
ここで、実施例4のミラー構造体20Aは4本の支柱30及び4つの変位部材40を有し、各支柱30の上端部30Aはミラー21の重心の周りに固定されており、対向する第1の支柱31及び第3の支柱33はX軸上に配置されており、残りの第2の支柱32及び第4の支柱34はY軸上に配置されている。尚、図7、後述する図9〜図13において、各支柱30(31,32,33,34)の固定中心を「+」印で示し、ミラー21の重心を、4本の支柱30(31,32,33,34)で囲まれた「×」印で示す。更には、各変位部材40(41,42,43,44)の固定中心は、変位部材40(41,42,43,44)の外側に記した白抜き四角の中心に「+」印を配して記号を付した部分に隣接して位置する。そして、第1の支柱31の下端部30Bは第1の変位部材41の一端部40Aに固定されており、第2の支柱32の下端部30Bは第2の変位部材42の一端部40Aに固定されており、第3の支柱33の下端部30Bは第3の変位部材43の一端部40Aに固定されており、第4の支柱34の下端部30Bは第4の変位部材44の一端部40Aに固定されている。X軸とY軸が交差する原点は、ミラー21の重心と一致している。
【0091】
そして、X軸に沿って、第3の変位部材43の他端部40B、第3の変位部材43の一端部40A、第1の変位部材41の一端部40A、及び、第1の変位部材41の他端部40Bが、この順で配置されている。一方、Y軸に沿って、第4の変位部材44の他端部40B、第4の変位部材44の一端部40A、第2の変位部材42の一端部40A、及び、第2の変位部材42の他端部40Bが、この順で配置されている。即ち、実施例4のミラー構造体20Aにあっては、ミラー21の重心を原点としたガウス座標を想定し、
第1の支柱31の固定中心座標を(X1,0)、
第2の支柱32の固定中心座標を(0,Y2)、
第3の支柱33の固定中心座標を(X3,0)、
第4の支柱34の固定中心座標を(0,Y4)、
第1の変位部材41の他端部40Bの固定中心座標を(X’1,Y’1)、
第2の変位部材42の他端部40Bの固定中心座標を(X’2,Y’2)、
第3の変位部材43の他端部40Bの固定中心座標を(X’3,Y’3)、
第4の変位部材44の他端部40Bの固定中心座標を(X’4,Y’4)としたとき、
X’3<X3<0<X1<X’1
Y’4<Y4<0<Y2<Y’2
の関係にある。更には、
1 =−X3
X’1=−X’3
Y’1= Y’3
2 =−Y4
Y’2=−Y’4
X’2= X’4
を満足する。
【0092】
また、実施例4のミラー構造体20Aにあっては、各変位部材40(41,42,43,44)の外形形状は二等辺三角形であり、変位部材40(41,42,43,44)の一端部40Aは、この二等辺三角形の頂角の近傍に相当し、変位部材40(41,42,43,44)の他端部40Bは、この二等辺三角形の底辺に相当する。
【0093】
実施例4あるいは後述する実施例5〜実施例11にあっては、変位部材40は、ユニモルフ型の圧電アクチュエータ、より具体的には、長さ方向に伸縮する1枚の圧電材料薄膜53が変位部材40を構成する基層(支持構造体)51,52上に形成された構造を有する。そして、長さ方向に伸縮する圧電材料薄膜53の動きによって、変位部材40の一端部40Aが駆動(上下動)される。ここで、圧電材料薄膜53は、PbZrO3とPbTiO3の固溶体であるPZT[ジルコン酸チタン酸鉛、Pb(Zr,Ti)O3]から成る。基層(支持構造体)は、シリコン層51と酸化シリコン層(具体的には、SiO2層)52の積層構造を有する。光反射層22は、アルミニウム(Al)層から構成されている。ミラー本体部23は、シリコン層と酸化シリコン層(具体的には、SiO2層)との積層構造から構成されている、支柱30は、シリコン層と、その表面に形成された酸化シリコン層(具体的には、SiO2層)との組合せから構成されている。支柱の軸線に垂直な面で支柱を切断したときの支柱30の断面形状を円形としたが、これに限定するものではない。また、ミラー本体部23及び光反射層22の外形形状を円形としたが、これに限定するものではないし、ミラー本体部23と光反射層22とを同じ大きさとしたが、このような形態に限定するものではない。変位部材40を構成する基層(支持構造体)と圧電材料薄膜53との間には下部電極(図示せず)が設けられており、圧電材料薄膜53の上には上部電極(図示せず)が設けられている。ここで、下部電極はPt/Ti積層構造を有する。尚、Ti層が基層を構成するシリコン層51と接し、Ti層は密着層として機能する。上部電極は白金(Pt)から成る。
【0094】
以下、図19の(A)〜(C)、図20の(A)〜(C)、図21の(A)〜(C)を参照して、実施例4のミラー構造体の製造方法を説明する。
【0095】
[工程−400]
先ず、SOI基板を準備する。このSOI基板は、シリコン半導体基板から成る支持層80、SiO2から成る酸化シリコン層(ボックス層)52、シリコン層(活性層)51の周知の3層構造を有する。支持層80、酸化シリコン層(ボックス層)52、シリコン層(活性層)51の厚さとして、それぞれ、0.3mm以上、1μm、30μmを例示することができる。そして、シリコン層(活性層)51の上に、下部電極、圧電材料薄膜53、上部電極を周知の方法で成膜する(図19の(A)参照)。次いで、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき、上部電極、圧電材料薄膜53、下部電極をパターニングし、更には、シリコン層(活性層)51、酸化シリコン層(ボックス層)52をパターニングする。こうして、支持層80上に変位部材40を得ることができる(図19の(B)参照)。変位部材40の一部は、一種の配線として支持層80上を延在している。
【0096】
[工程−410]
その後、変位部材40を含む支持層80の全面に、周知の方法に基づき、保護膜としてのレジスト層81を形成し(図19の(C)参照)、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき、支持層80を裏面からパターニングすることで、支持部60及び支柱30を得る(図20の(A)参照)。その後、残された支持層80(支持部60及び支柱30)に熱酸化処理を施し、支持層80(支持部60及び支柱30)の表面に酸化膜82を形成する(図20の(B)参照)。尚、酸化膜82は、図20の(B)〜(C)、及び、図21の(A)〜(C)にのみ図示している。
【0097】
[工程−420]
一方、ミラー形成のために、別のSOI基板を準備する。このSOI基板も、シリコン半導体基板から成る基板83、酸化シリコン層84、シリコン層85の周知の3層構造を有する。そして、SOI基板のシリコン層85と酸化膜82とを重ね合わせて、周知の接合技術(ボンディング技術)によって接合する(図20の(C)、図21の(A)参照)。尚、酸化シリコン層84、シリコン層85は、図20の(C)、及び、図21の(A)〜(C)にのみ図示している。
【0098】
[工程−430]
その後、例えば、ウエットエッチング法に基づき基板83を除去し、露出した酸化シリコン層84上に、周知のスパッタリング法に基づきアルミニウム層22’を形成する(図21の(B)参照)。
【0099】
[工程−440]
次いで、周知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき、アルミニウム層22’、酸化シリコン層84、シリコン層85をパターニングすることで、光反射層22及びミラー本体部23から構成されたミラー21を得ることができる(図21(C)参照)。
【0100】
[工程−450]
その後、レジスト層81を除去し、スペーサ61を接着することで、図6の(A)等に示した実施例4のミラー構造体20Aを得ることができる。
【0101】
例えば、第1の変位部材41の一端部40Aを上方に変位させ、第3の変位部材43の一端部40Aを下方に変位させれば、ミラー21が、図6の(A)において左手側が下方に傾いた状態を得ることができる。即ち、ミラー21をY軸の周りで反時計回りに回転させることができる。また、第1の変位部材41の一端部40Aを下方に変位させ、第3の変位部材43の一端部40Aを上方に変位させれば、ミラー21が、図6の(A)において右手側が下方に傾いた状態を得ることができる。即ち、ミラー21をY軸の周りで時計回りに回転させることができる。一方、第2の変位部材42の一端部40Aを上方に変位させ、第4の変位部材43の一端部40Aを下方に変位させれば、ミラー21が、図6の(A)において手前側が下方に傾いた状態を得ることができる。即ち、ミラー21をX軸の周りで或る方向に回転させることができる。また、第2の変位部材42の一端部40Aを下方に変位させ、第4の変位部材43の一端部40Aを上方に変位させれば、ミラー21が、図6の(A)において手前側が上方に傾いた状態を得ることができる。即ち、ミラー21をX軸の周りで或る方向とは反対の方向に回転させることができる。更には、第1の変位部材41、第2の変位部材42、第3の変位部材43、第4の変位部材44の上方あるいは下方への変位を独立して制御することで、ミラー21の法線を任意の方向に制御することができる。尚、X軸周りのミラーの回動を共振に基づき行ってもよいし、非共振に基づき行ってもよい。同様に、Y軸周りのミラーの回動を共振に基づき行ってもよいし、非共振に基づき行ってもよい。
【0102】
実施例4のミラー構造体20Aにおいて、ミラー本体部23及び光反射層22の外形形状を直径1.3mmの円形とし、支柱30の高さを400μm、支柱30の断面を直径40μmの円形とし、支柱30の固定中心をミラー21の中心(重心)から40μmの所とし、変位部材40における二等辺三角形の底辺の長さを2.0mm、変位部材40における二等辺三角形の底辺から支柱30の固定位置までの距離を1.0mmとして、構造計算により変位部材40の変位状態をシミュレーションした結果を図8に示す。尚、2つの電極に対して80ボルト及び−80ボルトの正弦波を逆位相で印加した。シミュレーションの結果、共振駆動時のミラー21の振り角は±6.3度、共振周波数は23.4kHzであり、例えば、後述する表示装置において十分に使用できる特性を示した。
【0103】
実施例4のミラー構造体20Aにあっては、複数の支柱30は、その上端部30Aがミラー本体部23の裏面24に固定されており、その下端部30Bが変位部材40の一端部40Aに固定されており、変位部材40の他端部40Bは支持部60に固定されている。そして、図示しない駆動回路から上部電極及び下部電極に電圧を印加し、圧電材料薄膜53を伸縮させることによって、ミラー21へ近づく方向及びミラー21から離れる方向への複数の変位部材40の独立した変位を生じさせることができる。即ち、ミラー21を回動(駆動)するための変位部材40とミラー21を支持(保持)する支柱30とが別の構造体であるが故に、変位部材40の駆動力増大とミラー21の角度変位の容易さとを両立させることができる。また、ミラー21と支柱30が連結されているため、ミラー21を回動方向にのみ動作させることが容易であるし、支柱30以外にミラー21を支持する構造は必要ない。従って、構造、構成が簡素であるにも拘わらず、ミラー21へ近づく方向及びミラー21から離れる方向への複数の変位部材40の独立した変位によって、ミラー21をより大きな角度で傾けることが可能となる。しかも、各々の支柱30が独立に駆動(上下動)されるため、X方向及びY方向の2方向への駆動の際、クロストークが生じ難い。また、或る軸周りのミラー21の回動に寄与する変位部材40と、別の軸周りの回動に寄与する変位部材40との設計を独立して行えば、ラスタースキャン動作に好適なミラー構造体20Aを容易に実現することができる。そして、ミラー21の角度を偏向させるミラー構造体20A(2次元MEMSスキャナ)において、変位部材等の構造をミラー21の下側に配置することができるので、ミラー構造体20Aの小型化を図ることができる結果、表示装置等の小型化を実現することができる。このようにして、従来のミラー構造体では実現が難しい、小型・高速・大振り角の3要素を全て満たすMEMSスキャナを実現することができる。
【実施例5】
【0104】
実施例5は、実施例4の変形である。実施例5のミラー構造体を構成する変位部材及び支柱の配置を模式的に図9の(A)に示し、ミラーと変位部材の変位の状態を模式的に図9の(B)に示す。実施例5のミラー構造体において、各変位部材40は、二等辺三角形部40Cと、二等辺三角形の頂角に該当する二等辺三角形部40Cの部分から突出した突出部40Dとから成る。そして、二等辺三角形の頂角に該当する二等辺三角形部40Cの部分の近傍には、二等辺三角形の底辺と平行に延びる溝部45が設けられている。更には、変位部材40の一端部40Aは、突出部40Dから構成されており、変位部材40の他端部40Bは、二等辺三角形の底辺に相当する二等辺三角形部40Cの部分から構成されている。尚、図9の(B)において、溝部45を丸印で示した。
【0105】
ところで、実施例4のような構造を採用する場合、ミラー21が傾く方向と変位部材が変位する方向とが一致しない。即ち、例えば、Y軸周りにミラー21が反時計回りに傾くとき、第1の変位部材41及び第3の変位部材43は、ミラー21とは反対の方向、即ち、Y軸周りに時計回りに回転する。尚、このような現象を、便宜上、『変位部材の反対方向の回転』と呼ぶ。そして、その結果、変位部材40と支柱30の接続部、支柱30とミラー21の接続部に、望ましくない応力が発生する虞がある。この応力は、ミラー21の駆動を制限する上、接続部の破壊等の原因となる可能性がある。
【0106】
実施例5にあっては、溝部45(ジョイント構造)を設けることにより、図9の(B)に概念図を示すように、支柱30の角度変化がより容易に生じるため、変位部材40等に不所望の応力が発生することを低減することができる。それ故、より小さい駆動力で大きな振り角を実現でき、更には、より信頼性の高いミラー構造体を得ることができる。
【実施例6】
【0107】
実施例6は、実施例5の変形である。図10に、実施例6のミラー構造体を構成する変位部材40及び支柱30の配置を模式的に示す。実施例6にあっては、溝部45は、二等辺三角形の底辺に相当する二等辺三角形部40Cの部分まで延びている。即ち、二等辺三角形の頂角に該当する二等辺三角形部40Cの部分は繋がっているが、二等辺三角形部40Cの他の部分は溝部45によって分離されている。即ち、1本の支柱30に対して、2つの圧電材料薄膜53が備えられた構造を有する。
【0108】
例えば、図10において、ミラー21がY軸の周りに時計回りに傾いているとき、第2の変位部材42を構成する二等辺三角形部401の圧電材料薄膜53に印加する電圧と、二等辺三角形部402の圧電材料薄膜53に印加する電圧とを僅かに変えて、二等辺三角形部401の方をより下側(−Z方向)に変位させる。すると、第2の変位部材42を構成する突出部40DがY軸周りに時計回りに更に傾き、結果として第2の支柱32も同様に傾く。このように実施例6のミラー構造体にあっては、ミラーの傾き(回動)をより細かく制御することができ、X軸及びY軸周りのクロストークがより少なく、より振り角の大きなミラー構造体を得ることができる。
【実施例7】
【0109】
実施例7も実施例4の変形である。図11に、実施例7のミラー構造体を構成する変位部材40及び支柱30の配置を模式的に示す。
【0110】
ラスタースキャンを行う場合、高速でのX軸周りのミラー21の回動を共振に基づき行い、低速でのY軸周りのミラー21の回動を非共振に基づき行うが、そのために、高速でのX軸周りのミラー21の回動を生じさせるための第2の変位部材42及び第4の変位部材44には、高い固有周波数が求められ、一方、低速でのY軸周りのミラー21の回動を生じさせるための第1の変位部材41及び第3の変位部材43には、非共振でも大きな変位が得られるような大きな駆動力が求められる。
【0111】
実施例7のミラー構造体にあっては、第1の変位部材41及び第3の変位部材43は、低速でのY軸周りのミラー21の回動ではあるが、大きな駆動力が得られるようにミアンダ構造を有する。一方、第2の変位部材42及び第4の変位部材44は、高速でのX軸周りのミラー21の回動を可能とする片持ち梁構造(板バネ構造、カンチレバー構造)を有する。そして、第1の変位部材41及び第3の変位部材43は、第2の変位部材42及び第4の変位部材44よりも低い周波数で駆動される。また、第1の変位部材41の他端部40Bは、2箇所において支持部60に固定されており、第3の変位部材43の他端部40Bは、2箇所において支持部60に固定されている。
【0112】
具体的には、第1の変位部材41の他端部40Bは、固定中心座標(X’1,Y’11),(X’1,Y’12)の2箇所で支持部60に固定されており、第3の変位部材43の他端部40Bは、固定中心座標(X’3,Y’31),(X’1,Y’32)の2箇所で支持部60に固定されており、第2の変位部材42の他端部40Bは、固定中心座標(X’2,Y’2)の1箇所で支持部60に固定されており、第4の変位部材44の他端部40Bは、固定中心座標(X’4,Y’4)の1箇所で支持部60に固定されているとした場合、
X’1 =−X’3
Y’11= Y’31
Y’12= Y’32
Y’2 =−Y’4
X’2 = X’4
を満足する。
【0113】
実施例7にあっては、X軸周りのミラー21の駆動に寄与する第2の変位部材42及び第4の変位部材44と、Y軸周りのミラー21の駆動に寄与する第1の変位部材41及び第3の変位部材43の構造を異なるものとすることで、ミラーのラスタースキャン動作をより容易に行うことができる。尚、第1の変位部材41、第2の変位部材42、第3の変位部材43及び第4の変位部材44の形状、構造、構成については、図11に示した形状、構造、構成に限定されるものではなく、各変位部材41,42,43,44の駆動に求められる仕様に合わせればよい。
【実施例8】
【0114】
実施例8は、実施例4の変形であるが、第1Bの構成のミラー構造体に関する。実施例8のミラー構造体を構成する変位部材40及び支柱30の配置を模式的に図12の(A)に示し、ミラー21と変位部材40の変位の状態を模式的に図12の(B)に示す。
【0115】
実施例8のミラー構造体にあっては、X軸に沿って、第3の変位部材43の他端部40B、第1の変位部材41の一端部40A、第3の変位部材43の一端部40A、及び、第1の変位部材41の他端部40Bが、この順で配置されており、Y軸に沿って、第4の変位部材44の他端部40B、第2の変位部材42の一端部40A、第4の変位部材44の一端部40A、及び、第2の変位部材42の他端部40Bが、この順で配置されている。
【0116】
即ち、実施例8のミラー構造体にあっては、ミラー21の重心を原点としたガウス座標を想定し、
第1の支柱31の固定中心座標を(X1,0)、
第2の支柱32の固定中心座標を(0,Y2)、
第3の支柱33の固定中心座標を(X3,0)、
第4の支柱34の固定中心座標を(0,Y4)、
第1の変位部材41の他端部40Bの固定中心座標を(X’1,Y’1)、
第2の変位部材42の他端部40Bの固定中心座標を(X’2,Y’2)、
第3の変位部材43の他端部40Bの固定中心座標を(X’3,Y’3)、並びに、
第4の変位部材44の他端部40Bの固定中心座標を(X’4,Y’4)としたとき、
X’3<X1<0<X3<X’1
Y’4<Y2<0<Y4<Y’2
の関係にある。尚、
3 =−X1
X’3=−X’1
Y’3= Y’1
4 =−Y2
Y’4=−Y’2
X’4= X’2
を満足する。
【0117】
ところで、実施例5において説明したと同様に、実施例4のように、
X’3<X3<0<X1<X’1
Y’4<Y4<0<Y2<Y’2
の関係にあるとき、『変位部材の反対方向の回転』が生じる。一方、実施例8にあっては、
X’3<X1<0<X3<X’1
Y’4<Y2<0<Y4<Y’2
の関係にあるが故に、ミラー21が傾く方向と変位部材が変位する方向とが一致する。即ち、例えば、Y軸周りにミラー21が反時計回りに傾くとき、第1の変位部材41及び第3の変位部材43も、ミラー21と同じ方向、即ち、Y軸周りに反時計回りに回転する。その結果、変位部材40と支柱30の接続部、支柱30とミラー21の接続部に、望ましくない応力が発生することが無く、高い信頼性を有し、より小さい駆動力で大きな振り角を実現するミラー構造体を得ることができる。
【実施例9】
【0118】
実施例9も実施例4の変形である。実施例9のミラー構造体を構成する変位部材40及び支柱30の配置を図13に模式的に示す。
【0119】
実施例9のミラー構造体にあっては、支柱30の下端部30Bが固定された変位部材40の部分よりも変位部材40の他端部40B側に位置する変位部材40の領域には、ヒンジ部46が設けられている。あるいは又、実施例9のミラー構造体にあっては、支柱30の下端部30Bが固定された変位部材40の部分よりも変位部材40の他端部40B側に位置する変位部材40の領域は、ミアンダ構造を有する。即ち、ヒンジ部46はミアンダ構造を有する。
【0120】
実施例9にあっては、実施例4と同様に『変位部材の反対方向の回転』が生じるが、ミアンダ構造を有するヒンジ部46が設けられているが故に、不所望の応力の影響を少なくすることができる。また、各支柱に対応する変位部材を2段構造とすることで、X軸及びY軸周りのクロストークがより少なく、より振り角の大きなミラー構造体を得ることができる。尚、実施例9にて説明したヒンジ部46を、必要に応じて、あるいは、構造上、可能ならば、他の実施例のミラー構造体に適用することができることは、云うまでもない。
【実施例10】
【0121】
実施例10も実施例4の変形である。実施例10のミラー構造体を上方から眺めた模式図、及び、実施例10のミラー構造体におけるミラー21の一部を拡大して斜めから眺めた模式図を、図14の(A)及び(B)に示す。
【0122】
実施例10のミラー構造体にあっては、各支柱30の上端部30Aが固定されたミラー21の部分の周囲には、トーションバー47で分離された分離溝48が設けられている。そして、第1の支柱31の上端部30Aが固定されたミラー21の部分とミラー21のその他の部分とは、X軸に沿って延びる第1のトーションバー47によって連結されており、第2の支柱32の上端部30Aが固定されたミラー21の部分とミラー21のその他の部分とは、Y軸に沿って延びる第2のトーションバー47によって連結されており、第3の支柱33の上端部30Aが固定されたミラー21の部分とミラー21のその他の部分とは、X軸に沿って延びる第3のトーションバー47によって連結されており、第4の支柱34の上端部30Aが固定されたミラー21の部分とミラー21のその他の部分とは、Y軸に沿って延びる第4のトーションバー47によって連結されている。即ち、トーションバー47の延びる方向の射影像は、このトーションバー47に対応して設けられた変位部材40の変位によってミラー21に生じる回動における回動軸の射影像と直交している。
【0123】
実施例5にて説明したように、例えば、Y軸周りに反時計回りにミラー21が傾いた状態では、第1の変位部材41と第3の変位部材43は、ミラー21と反対の方向、即ち、Y軸周りに時計回りに回転している。即ち、『変位部材の反対方向の回転』が生じる。実施例10においては、各支柱30の上端部30Aが固定されたミラー21の部分の周囲には、トーションバー47で分離された分離溝48が設けられている。従って、例えば、Y軸周りに反時計回りにミラー21が傾いた状態であっても、微小なトーションバー47がこのミラー21の傾きを吸収し、第2の支柱32や第4の支柱34は反時計回りにそれほど傾かない。このように、ミラー21と支柱30の接続部にミラー21を回動させることができる機構(具体的には、トーションバー47)を設けることにより、X軸及びY軸周りのクロストークがより少なく、より振り角の大きなミラー構造体を得ることができる。尚、トーションバー47の長さが長いほど、変位部材の反対方向の回転に起因した不所望の応力の発生を抑制することができるが、トーションバー47の長さが長すぎると各支柱の上下方向の駆動も吸収してしまうため、好適な長さに設定する必要がある。
【実施例11】
【0124】
実施例11も、実施例4の変形であるが、第2の態様に係るミラー構造体(2次元MEMSスキャナ)に関する。図16の矢印P−P及び矢印Q−Qに沿った実施例11のミラー構造体20Bの模式的な一部端面図を、それぞれ、図15の(A)及び(B)に示す。また、実施例11のミラー構造体を構成する変位部材140及び支柱130の配置を図16に模式的に示す。更には、実施例11のミラー構造体を上方から眺めた模式図を図17に示す。
【0125】
実施例11のミラー構造体20Bにあっては、4本の支柱130(131,132,133,134)及び4つの変位部材140(141,142,143,144)を有している。そして、各支柱130の上端部130Aは、ミラー本体部123の外周部に固定されており、第1の支柱131の下端部130Bは第1の変位部材141の一端部140Aに固定されており、第2の支柱132の下端部130Bは第2の変位部材142の一端部140Aに固定されており、第3の支柱133の下端部130Bは第3の変位部材143の一端部140Aに固定されており、第4の支柱134の下端部130Bは第4の変位部材144の一端部140Aに固定されている。より具体的には、ミラー本体部123は、第1の辺、及び、この第1の辺と対向した第3の辺がX方向に延び、第2の辺、及び、この第2の辺と対向した第4の辺がY方向に延びる矩形形状を有する。そして、第1の支柱131の上端部130Aは、ミラー本体部123の第3の辺と第4の辺が交差する第4コーナー部近傍に固定されており、第2の支柱132の上端部130Aは、ミラー本体部123の第2の辺と第3の辺が交差する第3コーナー部近傍に固定されており、第3の支柱133の上端部130Aは、ミラー本体部123の第1の辺と第2の辺が交差する第2コーナー部近傍に固定されており、第4の支柱134の上端部130Aは、ミラー本体部123の第4の辺と第1の辺が交差する第1コーナー部近傍に固定されており、第1の支柱131の下端部130Bに一端部140Aが固定された第1の変位部材141の他端部140B、及び、第2の支柱132の下端部130Bに一端部140Aが固定された第2の変位部材142の他端部140Bは、第1の辺に相当するミラー本体部123の部分に固定されており、第3の支柱133の下端部130Bに一端部140Aが固定された第3の変位部材143の他端部140B、及び、第4の支柱134の下端部130Bに一端部140Aが固定された第4の変位部材144の他端部140Bは、第3の辺に相当するミラー本体部123の部分に固定されている。
【0126】
ここで、ミラー121の重心を原点としたガウス座標を想定し、原点を通り、ミラー121におけるX方向をX軸、原点を通り、ミラー121におけるY方向をY軸としたとき、ミラー本体部123における第1の支柱131の上端部130Aの固定位置とミラー本体部123における第2の支柱132の上端部130Aの固定位置、ミラー本体部123における第3の支柱133の上端部130Aの固定位置とミラー本体部123における第4の支柱134の上端部130Aの固定位置とは、Y軸に対して対称に位置している。また、ミラー本体部123における第1の支柱131の上端部130Aの固定位置とミラー本体部123における第4の支柱134の上端部130Aの固定位置、ミラー本体部123における第2の支柱132の上端部130Aの固定位置とミラー本体部123における第3の支柱133の上端部130Aの固定位置とは、X軸に対して対称に位置している。
【0127】
より具体的には、第1の辺及び第3の辺の長さをL1、第2の辺及び第4の辺の長さをL2としたとき、第3の辺、第4の辺、第4コーナー部(図16において、白抜きの丸印の中央に「D」を記した印で示す)からX方向に沿ってc1・L1だけ離れた境界、及び、第4コーナー部からY方向に沿ってc2・L2だけ離れた境界によって囲まれた領域内に第1の支柱131の上端部130Aが固定されている。同様に、第2の辺、第3の辺、第3コーナー部(図16において、白抜きの丸印の中央に「C」を記した印で示す)からX方向に沿ってc1・L1だけ離れた境界、及び、第3コーナー部からY方向に沿ってc2・L2だけ離れた境界によって囲まれた領域内に第2の支柱132の上端部130Aが固定されている。同様に、第1の辺、第2の辺、第2コーナー部(図16において、白抜きの丸印の中央に「B」を記した印で示す)からX方向に沿ってc1・L1だけ離れた境界、及び、第2コーナー部からY方向に沿ってc2・L2だけ離れた境界によって囲まれた領域内に第3の支柱133の上端部130Aが固定されている。同様に、第4の辺、第1の辺、第1コーナー部(図16において、白抜きの丸印の中央に「A」を記した印で示す)からX方向に沿ってc1・L1だけ離れた境界、及び、第1コーナー部からY方向に沿ってc2・L2だけ離れた境界によって囲まれた領域内に第4の支柱134の上端部130Aが固定されている。ここで、例えば、c1=0.2、c2=0.2である。
【0128】
そして、実施例11のミラー構造体20Bにあっては、第1の変位部材141、第2の変位部材142、第3の変位部材143及び第4の変位部材144は、限定するものではないが、ミアンダ構造を有する。
【0129】
以上に説明した点を除き,実施例11のミラー構造体20Bの構成、構造は、実施例4のミラー構造体20Aの構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0130】
尚、図18に実施例11のミラー構造体の変形例を上方から眺めた模式図を示すように、ミラー本体部123を、光反射層支持部123A、及び、光反射層支持部123Aを取り囲む可動フレーム123Bから構成してもよく、この場合、可動フレーム123Bの四隅近傍の可動フレーム裏面に複数の支柱130の上端部を固定すればよく、また、可動フレーム123Bと光反射層支持部123Aとを連結した状態で一体的に形成すればよい。
【実施例12】
【0131】
実施例12は、本発明の頭部装着型ディスプレイ(HMD,Head Mounted Display)に関する。実施例12の頭部装着型ディスプレイにあっては、実施例2〜実施例3にて説明した光反射装置組立体、実施例4〜実施例11にて説明したミラー構造体を適用している。
【0132】
実施例12における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図を図22に示し、頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図を図23に示す。また、頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図を図24に示し、頭部装着型ディスプレイを観察者240の頭部に装着した状態を上方から眺めた図を図25に示す。更には、実施例12における頭部装着型ディスプレイに組み込まれた画像表示装置の概念図を図26に示す。尚、図25においては、便宜上、画像表示装置のみを示し、フレームの図示は省略しており、図26あるいは後述する図27においては、光反射装置組立体17が組み込まれた例を図示している。
【0133】
実施例12における頭部装着型ディスプレイは、
(A)観察者240の頭部に装着される眼鏡型のフレーム210、及び、
(B)2つの画像表示装置300、
を備えている。
【0134】
ここで、各画像表示装置300は、
(イ)光源351、
(ロ)光源351から出射された光を平行光とするコリメート光学系352、
(ハ)コリメート光学系352から出射された平行光を走査する走査手段353、及び、
(ニ)走査手段353によって走査された平行光をリレーし、出射するリレー光学系354、
から構成されている。尚、画像生成装置310全体が筐体313(図26では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体313には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介してリレー光学系354から光が出射される。そして、各筐体313が、結合部材220の端部分に、ビスあるいは接着剤(図示せず)を用いて取り付けられている。また、筐体313に、導光手段320が取り付けられている。
【0135】
光源351は、赤色を発光する赤色発光素子351R、緑色を発光する緑色発光素子351G、青色を発光する青色発光素子351Bから構成されており、各発光素子は半導体レーザ素子や固体レーザから成る。光源351から出射された3原色の光は、クロスプリズム355を通過することで色合成が行われ、光路が一本化され、全体として正の光学的パワーを持つコリメート光学系352に入射し、平行光として出射される。そして、この平行光は、全反射ミラー356で反射され、入射した平行光を2次元的に走査する実施例2〜実施例3にて説明した光反射装置組立体17,18から成る走査手段353によって水平走査及び垂直走査が行われ、即ち、X方向及びY方向のラスタースキャンが行われ、一種の2次元画像化され、仮想の画素が生成される。そして、仮想の画素からの光は、周知のリレー光学系から構成されたリレー光学系354を通過し、平行光とされた光束が導光手段320に入射する。
【0136】
尚、場合によっては、赤色発光素子351Rから出射された赤色光、緑色発光素子351Gから出射された緑色光、青色発光素子351Bから出射された青色光のそれぞれに最適化された3種類の光反射装置12を備えており(具体的には、入射光の波長に対する、例えば、PTx,PTy,VDL,VDSの最適化)、更には、これらの3種類の光反射装置12から出射された赤色光、緑色光及び青色光の光路を一本化し、リレー光学系354へと出射するための光合成手段を備えていてもよい。
【0137】
頭部装着型ディスプレイは、上述したとおり、2つの画像表示装置300を結合する結合部材220を有している。結合部材220は、観察者240の2つの瞳241の間に位置するフレーム210の中央部分210Cの観察者に面する側に(即ち、観察者240とフレーム210との間に)、例えば、ビス(図示せず)を用いて取り付けられている。更には、結合部材220の射影像は、フレーム210の射影像内に含まれる。即ち、観察者240の正面から頭部装着型ディスプレイを眺めたとき、結合部材220はフレーム210によって隠されており、結合部材220は視認されない。
【0138】
具体的には、一方の画像生成装置310Aの取付部中心310ACとフレーム210の一端部(一方の智)210Aとの間の距離をα、結合部材220の中心220Cからフレームの一端部(一方の智)210Aまでの距離をβ、他方の画像生成装置310Bの取付部中心310BCとフレームの一端部(一方の智)210Aとの間の距離をγ、フレームの長さをLとしたとき、
α=0.1×L
β=0.5×L
γ=0.9×L
である。
【0139】
そして、結合部材220によって2つの画像表示装置300が結合されているが、具体的には、結合部材220の各端部に、画像生成装置310A,310Bが、取付け状態調整可能に取り付けられている。各画像生成装置310A,310Bは、観察者240の瞳241よりも外側に位置している。ここで、結合部材220の各端部への画像生成装置(具体的には、画像生成装置310A,310B)の取付けは、具体的には、例えば、結合部材の各端部の3箇所に貫通孔(図示せず)を設け、貫通孔に対応したタップ付きの孔部(螺合部。図示せず)を画像生成装置310A,310Bに設け、各貫通孔にビス(図示せず)を通し、画像生成装置310A,310Bに設けられた孔部に螺合させる。ビスと孔部との間にはバネを挿入しておく。こうして、ビスの締め付け状態によって、画像生成装置の取付け状態(結合部材に対する画像生成装置の傾き)を調整することができる。取付け後、蓋(図示せず)によってビスを隠す。尚、図23、図29、図32において、結合部材220,230を明示するために、結合部材220,230に斜線を付した。
【0140】
フレーム210は、観察者240の正面に配置されるフロント部210Bと、フロント部210Bの両端に蝶番211を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部212と、各テンプル部212の先端部に取り付けられたモダン部(先セル、耳あて、イヤーパッドとも呼ばれる)213から成り、結合部材220は、観察者240の2つの瞳241の間に位置するフロント部210Bの中央部分210C(通常の眼鏡におけるブリッジの部分に相当する)に取り付けられている。そして、結合部材220の観察者240に面する側にノーズパッド214が取り付けられている。尚、図24、図30あるいは図33においては、ノーズパッド214の図示を省略している。フレーム210及び結合部材220は金属や合金、プラスチック、あるいは、これらの組合せから作製されており、結合部材220の形状は湾曲した棒状である。尚、結合部材220の形状は、結合部材220の射影像がフレーム210の射影像内に含まれる限りにおいて、本質的に任意であり、例えば、棒状の他、細長い板状を例示することができる。
【0141】
更には、一方の画像生成装置310Aから延びる配線(信号線や電源線等)215が、テンプル部212、及び、モダン部213の内部を介して、モダン部213の先端部から外部に延び、外部回路(制御回路)に接続されている。更には、各画像生成装置310A,310Bはヘッドホン部216を備えており、各画像生成装置310A,310Bから延びるヘッドホン部用配線217が、テンプル部212、及び、モダン部213の内部を介して、モダン部213の先端部からヘッドホン部216へと延びている。ヘッドホン部用配線217は、より具体的には、モダン部213の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部216へと延びている。このような構成にすることで、ヘッドホン部216やヘッドホン部用配線217が乱雑に配置されているといった印象を与えることがなく、すっきりとした頭部装着型ディスプレイとすることができる。
【0142】
また、フロント部210Bの中央部分210Cには、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズ(これらは図示せず)とから構成された撮像装置218が取り付けられている。具体的には、中央部分210Cには貫通孔が設けられており、中央部分210Cに設けられた貫通孔と対向する結合部材220の部分には凹部が設けられており、この凹部内に撮像装置218が配置されている。中央部分210Cに設けられた貫通孔から入射した光が、レンズによって固体撮像素子に集光される。固体撮像素子からの信号は、撮像装置218から延びる配線(図示せず)を介して、画像生成装置310Aに送出される。尚、配線は、結合部材220とフロント部210Bとの間を通り、一方の画像生成装置310Aに接続されている。このような構成にすることで、撮像装置が頭部装着型ディスプレイに組み込まれていることを、視認させ難くすることができる。
【0143】
実施例12にあっては、図26に示すように、リレー光学系354にて平行光とされた光束が入射され、導光され、出射される導光手段320は、
(a)全体として画像生成装置310よりも観察者240の顔の中心側に配置され、画像生成装置310から出射された光が入射され、導光され、観察者240の瞳241に向かって出射される導光板321、
(b)導光板321に入射された光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射された光を偏向させる第1偏向手段330、及び、
(c)導光板321の内部を全反射により伝播した光を導光板321から出射させるために、導光板321の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段340、
から構成されている。
【0144】
第1偏向手段330及び第2偏向手段340は導光板321の内部に配設されている。そして、第1偏向手段330は、導光板321に入射された光を反射し、第2偏向手段340は、導光板321の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する。即ち、第1偏向手段330は反射鏡として機能し、第2偏向手段340は半透過鏡として機能する。より具体的には、導光板321の内部に設けられた第1偏向手段330は、アルミニウムから成り、導光板321に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)から構成されている。一方、導光板321の内部に設けられた第2偏向手段340は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体から構成されている。誘電体積層膜は、例えば、高誘電率材料としてのTiO2膜、及び、低誘電率材料としてのSiO2膜から構成されている。誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体に関しては、特表2005−521099に開示されている。図面においては6層の誘電体積層膜を図示しているが、これに限定するものではない。誘電体積層膜と誘電体積層膜との間には、導光板321を構成する材料と同じ材料から成る薄片が挟まれている。尚、第1偏向手段330においては、導光板321に入射された平行光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射された平行光が反射(又は回折)される。一方、第2偏向手段340においては、導光板321の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射(又は回折)され、導光板321から平行光の状態で出射される。
【0145】
第1偏向手段330は、導光板321の第1偏向手段330を設ける部分324を切り出すことで、導光板321に第1偏向手段330を形成すべき斜面を設け、係る斜面に光反射膜を真空蒸着した後、導光板321の切り出した部分324を第1偏向手段330に接着すればよい。また、第2偏向手段340は、導光板321を構成する材料と同じ材料(例えば、ガラス)と誘電体積層膜(例えば、真空蒸着法にて成膜することができる)とが多数積層された多層積層構造体を作製し、導光板321の第2偏向手段340を設ける部分325を切り出して斜面を形成し、係る斜面に多層積層構造体を接着し、研磨等を行って、外形を整えればよい。こうして、導光板321の内部に第1偏向手段330及び第2偏向手段340が設けられた導光手段320を得ることができる。
【0146】
導光板321は、導光板321の軸線と平行に延びる2つの平行面(第1面322及び第2面323)を有している。第1面322と第2面323とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面322から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面322から出射される。
【0147】
このように、実施例12における頭部装着型ディスプレイ(HMD)にあっては、結合部材220が2つの画像表示装置300を結合しており、この結合部材220は、観察者240の2つの瞳241の間に位置するフレーム210の中央部分210Cに取り付けられている。即ち、各画像表示装置300は、フレーム210に、直接、取り付けられた構造とはなっていない。従って、観察者240がフレーム210を頭部に装着したとき、テンプル部212が外側に向かって広がった状態となり、その結果、フレーム210が変形したとしても、このようなフレーム210の変形によって、画像生成装置310A,310Bの変位(位置変化)が生じないか、生じたとしても、極僅かである。それ故、左右の画像の輻輳角が変化してしまうことを確実に防止することができる。しかも、フレーム210のフロント部210Bの剛性を高める必要がないので、フレーム210の重量増加、デザイン性の低下、コストの増加を招くことがない。また、画像表示装置300は、眼鏡型のフレーム210に、直接、取り付けられていないので、観察者の嗜好によってフレーム210のデザインや色等を自由に選択することが可能であるし、フレーム210のデザインが受ける制約も少なく、デザイン上の自由度が高い。加えて、観察者の正面から頭部装着型ディスプレイを眺めたとき、結合部材220はフレーム210に隠れている。従って、高いデザイン性、意匠性を頭部装着型ディスプレイに与えることができる。
【実施例13】
【0148】
実施例13は実施例12の変形である。実施例13における頭部装着型ディスプレイに組み込まれた画像表示装置400の概念図を図27の(A)に示す。また、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図を図27の(B)に示す。実施例13にあっては、画像生成装置310は、実施例12と同様の構成、構造を有する。また、導光手段420は、第1偏向手段及び第2偏向手段の構成、構造が異なる点を除き、基本的な構成、構造、即ち、
(a)全体として画像生成装置310よりも観察者240の顔の中心側に配置され、画像生成装置310から出射された光が入射され、導光され、観察者240の瞳241に向かって出射される導光板421、
(b)導光板421に入射された光が導光板421の内部で全反射されるように、導光板421に入射された光を偏向させる第1偏向手段、及び、
(c)導光板421の内部を全反射により伝播した光を導光板421から出射させるために、導光板421の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段、
から構成されている点は、実施例12の導光手段320と同じである。
【0149】
実施例13にあっては、第1偏向手段及び第2偏向手段は導光板421の表面(具体的には、導光板421の第2面423)に配設されている。そして、第1偏向手段は、導光板421に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板421の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する。ここで、第1偏向手段及び第2偏向手段は、回折格子素子、具体的には反射型回折格子素子、より具体的には反射型体積ホログラム回折格子から成る。以下の説明において、反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材430』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材440』と呼ぶ。
【0150】
そして、実施例13にあっては、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440を、異なるP種類(具体的には、P=3であり、赤色、緑色、青色の3種類)の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応させるために、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層が積層されて成る構成としている。尚、フォトポリマー材料から成る各回折格子層には、1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されており、従来の方法で作製されている。より具体的には、赤色の光を回折反射する回折格子層と、緑色の光を回折反射する回折格子層と、青色の光を回折反射する回折格子層とが積層された構造を、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440は有する。回折格子層(回折光学素子)に形成された干渉縞のピッチは一定であり、干渉縞は直線状であり、Z’軸方向に平行である。尚、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440の軸線方向をY’軸方向、法線方向をX’軸方向とする。ここで、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440のY’軸方向はミラーのX軸の方向に相当し、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440のZ’軸方向はミラーのY軸の方向に相当する。図27の(A)及び(B)においては、第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440を1層で示した。このような構成を採用することで、各波長帯域(あるいは、波長)を有する光が第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440において回折反射されるときの回折効率の増加、回折受容角の増加、回折角の最適化を図ることができる。
【0151】
第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440を構成する材料として、上述したとおり、フォトポリマー材料を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440の構成材料や基本的な構造は、従来の反射型体積ホログラム回折格子の構成材料や構造と同じとすればよい。反射型体積ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折反射するホログラム回折格子を意味する。回折格子部材には、その内部から表面に亙り干渉縞が形成されているが、係る干渉縞それ自体の形成方法は、従来の形成方法と同じとすればよい。具体的には、例えば、回折格子部材を構成する部材(例えば、フォトポリマー材料)に対して一方の側の第1の所定の方向から物体光を照射し、同時に、回折格子部材を構成する部材に対して他方の側の第2の所定の方向から参照光を照射し、物体光と参照光とによって形成される干渉縞を回折格子部材を構成する部材の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体光及び参照光の波長を適切に選択することで、回折格子部材の表面における干渉縞の所望のピッチ、干渉縞の所望の傾斜角(スラント角)を得ることができる。干渉縞の傾斜角とは、回折格子部材(あるいは回折格子層)の表面と干渉縞の成す角度を意味する。第1回折格子部材430及び第2回折格子部材440を、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層の積層構造から構成する場合、このような回折格子層の積層は、P層の回折格子層をそれぞれ別個に作製した後、P層の回折格子層を、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用して積層(接着)すればよい。また、粘着性を有するフォトポリマー材料を用いて1層の回折格子層を作製した後、その上に順次粘着性を有するフォトポリマー材料を貼り付けて回折格子層を作製することで、P層の回折格子層を作製してもよい。
【0152】
図27の(B)に反射型体積ホログラム回折格子の拡大した模式的な一部断面図を示す。反射型体積ホログラム回折格子には、傾斜角φを有する干渉縞が形成されている。ここで、傾斜角φとは、反射型体積ホログラム回折格子の表面と干渉縞の成す角度を指す。干渉縞は、反射型体積ホログラム回折格子の内部から表面に亙り、形成されている。干渉縞は、ブラッグ条件を満たしている。ここで、ブラッグ条件とは、以下の式(A)を満足する条件を指す。式(A)中、mは正の整数、λは波長、dは格子面のピッチ(干渉縞を含む仮想平面の法線方向の間隔)、Θは干渉縞へ入射する角度の余角を意味する。また、入射角ψにて回折格子部材に光が侵入した場合の、Θ、傾斜角φ、入射角ψの関係は、式(B)のとおりである。
【0153】
m・λ=2・d・sin(Θ) (A)
Θ=90°−(φ+ψ) (B)
【0154】
第1回折格子部材430は、上述したとおり、導光板421の第2面423に配設(接着)されており、第1面422から導光板421に入射されたこの平行光が導光板421の内部で全反射されるように、導光板421に入射されたこの平行光を回折反射する。更には、第2回折格子部材440は、導光板421の第2面423に配設(接着)されており、導光板421の内部を全反射により伝播したこの平行光を、複数回、回折反射し、導光板421から平行光のまま第1面422から出射する。
【0155】
そして、導光板421にあっても、赤色、緑色及び青色の3色の平行光が内部を全反射により伝播した後、出射される。このとき、導光板421が薄く導光板421の内部を進行する光路が長いため、各画角によって第2回折格子部材440に至るまでの全反射回数は異なっている。より詳細に述べれば、導光板421に入射する平行光のうち、第2回折格子部材440に近づく方向の角度をもって入射する平行光の反射回数は、第2回折格子部材440から離れる方向の角度をもって導光板421に入射する平行光の反射回数よりも少ない。これは、第1回折格子部材430において回折反射される平行光であって、第2回折格子部材440に近づく方向の角度をもって導光板421に入射する平行光の方が、これと逆方向の角度をもって導光板421に入射する平行光よりも、導光板421の内部を伝播していく光が導光板421の内面と衝突するときの導光板421の法線と成す角度が小さくなるからである。また、第2回折格子部材440の内部に形成された干渉縞の形状と、第1回折格子部材430の内部に形成された干渉縞の形状とは、導光板421の軸線に垂直な仮想面に対して対称な関係にある。
【0156】
実施例13における頭部装着型ディスプレイは、上述したとおり、導光手段420が異なる点を除き、実質的に、実施例12における頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例14】
【0157】
実施例14も、実施例12の変形である。実施例14における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図を図28に示し、実施例14における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図を図29に示す。また、実施例14における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図を図30に示す。
【0158】
実施例14にあっては、導光手段は、画像生成装置310A,310Bよりも観察者240の顔の中心側に配置され、画像生成装置310A,310Bから出射された光が入射され、観察者240の瞳241に向かって出射される半透過ミラー520から構成されている。尚、実施例14にあっては、画像生成装置310A,310Bから出射された光は、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材521の内部を伝播して半透過ミラー520に入射する構造としているが、空気中を伝播して半透過ミラー520に入射する構造としてもよい。
【0159】
各画像生成装置310A,310Bは、結合部材220の両端部分に、例えば、ビスを用いて取り付けられている。また、部材521が各画像生成装置310A,310Bに取り付けられ、半透過ミラー520が部材521に取り付けられている。実施例14における頭部装着型ディスプレイは、以上の相違点を除き、実質的に、実施例12における頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例15】
【0160】
実施例15も、実施例12の変形である。実施例12における頭部装着型ディスプレイを正面から眺めた模式図を図31に示し、実施例15における頭部装着型ディスプレイ(但し、フレームを除去したと想定したときの状態)を正面から眺めた模式図を図32に示す。また、実施例15における頭部装着型ディスプレイを上方から眺めた模式図を図33に示す。
【0161】
実施例15における頭部装着型ディスプレイにあっては、棒状の結合部材230が、実施例12と異なり、2つの画像生成装置310A,310Bを結合する代わりに、2つの導光手段320を結合している。尚、2つの導光手段320を一体的に作製し、係る一体的に作製された導光手段320に結合部材230が取り付けられている形態とすることもできる。
【0162】
ここで、実施例15における頭部装着型ディスプレイにあっても、結合部材230は、観察者240の2つの瞳241の間に位置するフレーム210の中央部分210Cに、例えば、ビスを用いて取り付けられており、各画像生成装置310は、観察者240の瞳241よりも外側に位置している。尚、各画像生成装置310は、導光手段320の端部に取り付けられている。結合部材230の中心230Cからフレーム210の一端部までの距離をβ、フレーム210の長さをLとしたとき、β=0.5×Lを満足している。尚、実施例15においても、α’の値、γ’の値は、実施例12のαの値、γの値と同じ値である。
【0163】
実施例15にあっては、フレーム210、各画像表示装置300、画像生成装置310、導光手段320は、実施例12において説明したフレーム210、画像表示装置300、画像生成装置310、導光手段320と同じ構成、構造を有する。それ故、これらの詳細な説明は省略する。また、実施例15における頭部装着型ディスプレイも、以上の相違点を除き、実質的に、実施例12における頭部装着型ディスプレイと同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【0164】
また、実施例15における棒状の結合部材230が2つの導光手段320を結合している構成、構造を、実施例13〜実施例14において説明した頭部装着型ディスプレイに適用することができる。
【実施例16】
【0165】
実施例16は、実施例2〜実施例3にて説明した光反射装置組立体、実施例4〜実施例11にて説明したミラー構造体を適用した表示装置、より具体的には、画像表示装置に関する。図34に実施例16の表示装置の概念図を示す。実施例16の表示装置は、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザといった発光素子から成る光源、光源から出射された光を平行光とし、コリメートするレンズ群(図34では、1枚のレンズで示す)、レンズ群から出射された平行光が入射され、この平行光をX方向及びY方向にラスタースキャンする実施例2〜実施例3にて説明した光反射装置組立体17,18、及び、光反射装置組立体17,18から出射された光が衝突し、最終的に画像が表示されるスクリーンから構成された画像表示装置、具体的には、画像表示用のプロジェクターである。
【0166】
表示装置における画素の数は、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、640×480、854×480、1024×768、1920×1080を例示することができる。ミラー構造体の数は、例えば、1である。
【0167】
表示装置においてカラー表示を行う場合、光源は、赤色を出射する赤色発光素子、緑色を出射する緑色発光素子、青色を出射する青色発光素子、これらの発光素子から出射された光を1本の光に纏めるためのダイクロイックプリズムから構成されていてもよい。あるいは又、光源を、白色光を出射する1つの発光素子から構成し、この発光素子から出射された白色光を、赤色、緑色及び青色のカラーフィルターを、逐次、通過させ、赤色、緑色、青色の光の三原色を取り出す構成とすることもできる。あるいは又、光源を、白色光を出射する1つの発光素子、ダイクロイックプリズム及び波長選択を行う狭帯域フィルタから構成することで、赤色、緑色、青色の光の三原色を取り出す構成とすることもできる。但し、カラー表示の方法は、以上に説明した方法に限定するものではなく、本質的に任意の方法とすることができる。また、光源として、その他、有機EL(Electro Luminescence)発光素子、無機EL発光素子、発光ダイオード(LED)を用いることもできる。
【0168】
尚、場合によっては、赤色発光素子から出射された赤色光、緑色発光素子から出射された緑色光、青色発光素子から出射された青色光のそれぞれに最適化された3種類の光反射装置12を備えており(具体的には、入射光の波長に対する、例えば、PTx,PTy,VDL,VDSの最適化)、更には、これらの3種類の光反射装置12から出射された赤色光、緑色光及び青色光の光路を一本化し、スクリーンへと出射するための光合成手段を備えていてもよい。
【0169】
ラスタースキャンを行う場合、前述したとおり、高速でのX軸周りのミラーの回動を共振に基づき行い、低速でのY軸周りのミラーの回動を非共振に基づき行うことが好ましい。そして、この場合には、低速でのY軸周りのミラーの回動によって表示装置の垂直方向のスキャンが行われ、高速でのX軸周りのミラーの回動によって表示装置の水平方向のスキャンが行われる。尚、表示装置、それ自体の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0170】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明したフォトニック結晶、光反射装置、光反射装置組立体、頭部装着型ディスプレイ、ミラー構造体の構成、構造、各部の形状、使用した材料、製造方法は例示であり、適宜変更することができる。場合によっては、ミラー構造体の代わりに、電気光学素子や音響光学素子と光反射装置とを組み合わせて光反射装置組立体を構成してもよい。フォトニック結晶や光反射装置、光反射装置組立体に入射する光は可視光だけでなく、赤外線やミリ波といった電磁波とすることもできる。
【0171】
実施例12〜実施例15に説明した頭部装着型ディスプレイにおいて、例えば、導光板に表面レリーフ型ホログラム(米国特許第20040062505A1参照)を配置してもよい。実施例6あるいは実施例7、実施例15の導光手段320にあっては、回折格子素子を透過型回折格子素子から構成することもできるし、あるいは又、第1偏向手段及び第2偏向手段の内のいずれか一方を反射型回折格子素子から構成し、他方を透過型回折格子素子から構成する形態とすることもできる。あるいは又、回折格子素子を、反射型ブレーズド回折格子素子とすることもできる。また、実施例にあっては、専ら、画像表示装置を2つ備えた両眼型としたが、画像表示装置を1つ備えた片眼型としてもよい。
【符号の説明】
【0172】
10・・・フォトニック結晶、11・・・空孔、12・・・光反射装置、13・・・光入射面、14・・・光反射面、15・・・光反射膜、16・・・光出射面、17,18・・・光反射装置組立体、20,20B・・・ミラー構造体、21,121・・・ミラー、22・・・光反射層、22’・・・アルミニウム層、23,123・・・ミラー本体部、24・・・裏面、30,130・・・支柱、30A,130A・・・上端部、30B,130B・・・下端部、31,131・・・第1の支柱、32,132・・・第2の支柱、33,133・・・第3の支柱、34,134・・・第4の支柱、40,140・・・変位部材、40A,140A・・・一端部、40B,140B・・・他端部、40C・・・二等辺三角形部、40D・・・突出部、41,141・・・第1の変位部材、42,142・・・第2の変位部材、43,143・・・第3の変位部材、44,144・・・第4の変位部材、45・・・溝部、46・・・ヒンジ部、47・・・トーションバー、48・・・分離溝、51・・・シリコン層(活性層)、52・・・酸化シリコン層(ボックス層)、53・・・圧電材料薄膜、60・・・支持部、61・・・スペーサ、80・・・支持層、81・・・レジスト層、82・・・酸化膜、83・・・基板、84・・・酸化シリコン層、85・・・シリコン層、210・・・フレーム、210A・・・フレームの一端部、210B・・・フロント部、210C・・・フレームの中央部分、211・・・蝶番、212・・・テンプル部、313・・・モダン部、214・・・ノーズパッド、215・・・配線(信号線や電源線等)、216・・・ヘッドホン部、217・・・ヘッドホン部用配線、218・・・撮像装置、220,230・・・結合部材、240・・・観察者、241・・・瞳、300,400・・・画像表示装置、310・・・画像生成装置、313・・・筐体、320,420・・・導光手段、321,421・・・導光板、322,422・・・導光板の第1面、323,423・・・導光板の第2面、324,325・・・導光板の一部分、330・・・第1偏向手段、340・・・第2偏向手段、430・・・第1偏向手段(第1回折格子部材)、440・・・第2偏向手段(第2回折格子部材)、352・・・コリメート光学系、353・・・走査手段、354・・・リレー光学系、355・・・クロスプリズム、356・・・全反射ミラー、520・・・半透過ミラー、521・・・部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)光反射装置、及び、
(ロ)ミラー構造体、
を備えた光反射装置組立体であって、
光反射装置は、
光入射面、光反射膜が形成され、光入射面から入射した光が反射される光反射面、及び、光反射面で反射された光が出射される光出射面を備えており、
断面形状が楕円形の空孔が内部に配列された2次元以上のフォトニック結晶から成り、
空孔の配列は面心配置であり、且つ、フォトニック結晶のx軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTxとy軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTyとは異なっており、波数空間上での分散面の形状はアスペクト比4以上の長方形であり、
ミラー構造体は、
(A)ミラー本体部、及び、該ミラー本体部の表面に設けられた光反射層を備えたミラー、
(B)ミラー本体部の裏面に上端部が固定された複数の支柱、
(C)それぞれの支柱の下端部に一端部が固定された変位部材、並びに、
(D)変位部材の他端部を固定する支持部、
から成る光反射装置組立体。
【請求項2】
PTy>PTxの関係にあり、
光反射装置の光入射面はy軸と平行であり、
光反射装置の光出射面はx軸と平行であり、
光源から出射された光は、ミラーの光反射層で反射され、光反射装置の光入射面に入射し、光反射面で反射され、光出射面から出射される請求項1に記載の光反射装置組立体。
【請求項3】
PTy>PTxの関係にあり、
光反射装置の光入射面はx軸と平行であり、
光反射装置の光出射面はy軸と平行であり、
光源から出射された光は、光反射装置の光入射面に入射し、光反射面で反射され、光出射面から出射され、ミラーの光反射層にて反射されて、光反射装置の光出射面から再入射し、光反射面で反射され、光源からの光入射面への入射方向とは異なる方向に、光入射面から出射される請求項1に記載の光反射装置組立体。
【請求項4】
PTy>PTxの関係にあり、
入射光のx軸方向における波数ベクトルの大きさをkx、y軸方向における波数ベクトルの大きさをkyとし、(PTx・kx)/(PTy・ky)の値をm(但し、mは2以上の整数)、x軸方向と光反射面との成す角度をθとしたとき、
tan(θ)=m
を満足する請求項1に記載の光反射装置組立体。
【請求項5】
分散面の長辺の長さは、真空における分散面の直径の(1/2)1/2以上である請求項1に記載の光反射装置組立体。
【請求項6】
ミラー構造体は、4本の支柱及び4つの変位部材を有し、
各支柱の上端部は、ミラーの重心の周りに固定されており、
対向する第1の支柱及び第3の支柱は、ミラー構造体におけるX軸上に配置され、残りの第2の支柱及び第4の支柱は、ミラー構造体におけるY軸上に配置されており、
第1の支柱の下端部は第1の変位部材の一端部に固定されており、第2の支柱の下端部は第2の変位部材の一端部に固定されており、第3の支柱の下端部は第3の変位部材の一端部に固定されており、第4の支柱の下端部は第4の変位部材の一端部に固定されている請求項1に記載の光反射装置組立体。
【請求項7】
ミラー構造体におけるX軸に沿って、第3の変位部材の他端部、第3の変位部材の一端部、第1の変位部材の一端部、及び、第1の変位部材の他端部が、この順で配置されており、
ミラー構造体におけるY軸に沿って、第4の変位部材の他端部、第4の変位部材の一端部、第2の変位部材の一端部、及び、第2の変位部材の他端部が、この順で配置されている請求項6に記載の光反射装置組立体。
【請求項8】
第1の変位部材及び第3の変位部材はミアンダ構造を有し、
第2の変位部材及び第4の変位部材は片持ち梁構造を有する請求項7に記載の光反射装置組立体。
【請求項9】
ミラー構造体におけるX軸に沿って、第3の変位部材の他端部、第1の変位部材の一端部、第3の変位部材の一端部、及び、第1の変位部材の他端部が、この順で配置されており、
ミラー構造体におけるY軸に沿って、第4の変位部材の他端部、第2の変位部材の一端部、第4の変位部材の一端部、及び、第2の変位部材の他端部が、この順で配置されている請求項6に記載の光反射装置組立体。
【請求項10】
ミラー構造体は、4本の支柱及び4つの変位部材を有し、
各支柱の上端部は、ミラー本体部の外周部に固定されており、
第1の支柱の下端部は第1の変位部材の一端部に固定されており、第2の支柱の下端部は第2の変位部材の一端部に固定されており、第3の支柱の下端部は第3の変位部材の一端部に固定されており、第4の支柱の下端部は第4の変位部材の一端部に固定されている請求項1に記載の光反射装置組立体。
【請求項11】
変位部材は、バイモルフ型、ユニモルフ型又は積層型の圧電アクチュエータである請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の光反射装置組立体。
【請求項12】
(A)観察者の頭部に装着される眼鏡型のフレーム、及び、
(B)画像表示装置、
を備えた頭部装着型ディスプレイであって、
画像表示装置は、
(B−1)画像生成装置、及び、
(B−2)画像生成装置に取り付けられており、画像生成装置から出射された光が入射され、導光され、観察者の瞳に向かって出射される導光手段、
から構成されており、
画像生成装置は光反射装置組立体を含み、
光反射装置組立体は、
(イ)光反射装置、及び、
(ロ)ミラー構造体、
を備えており、
光反射装置は、
光入射面、光反射膜が形成され、光入射面から入射した光が反射される光反射面、及び、光反射面で反射された光が出射される光出射面を備えており、
断面形状が楕円形の空孔が内部に配列された2次元以上のフォトニック結晶から成り、
空孔の配列は面心配置であり、且つ、フォトニック結晶のx軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTxとy軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTyとは異なっており、波数空間上での分散面の形状はアスペクト比4以上の長方形であり、
ミラー構造体は、
(A)ミラー本体部、及び、該ミラー本体部の表面に設けられた光反射層を備えたミラー、
(B)ミラー本体部の裏面に上端部が固定された複数の支柱、
(C)それぞれの支柱の下端部に一端部が固定された変位部材、並びに、
(D)変位部材の他端部を固定する支持部、
から成る頭部装着型ディスプレイ。
【請求項13】
光入射面、光反射膜が形成され、光入射面から入射した光が反射される光反射面、及び、光反射面で反射された光が出射される光出射面を備えており、
断面形状が楕円形の空孔が内部に配列された2次元以上のフォトニック結晶から成り、
空孔の配列は面心配置であり、且つ、フォトニック結晶のx軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTxとy軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTyとは異なっており、波数空間上での分散面の形状はアスペクト比4以上の長方形である光反射装置。
【請求項14】
PTy>PTxの関係にあり、
入射光のx軸方向における波数ベクトルの大きさをkx、y軸方向における波数ベクトルの大きさをkyとし、(PTx・kx)/(PTy・ky)の値をm(但し、mは2以上の整数)、x軸方向と光反射面との成す角度をθとしたとき、
tan(θ)=m
を満足する請求項13に記載の光反射装置。
【請求項15】
分散面の長辺の長さは、真空における分散面の直径の(1/2)1/2以上である請求項13に記載の光反射装置。
【請求項16】
断面形状が楕円形の空孔が内部に配列された2次元以上のフォトニック結晶であって、
空孔の配列は面心配置であり、且つ、フォトニック結晶のx軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTxとy軸方向に沿った空孔の配列ピッチPTyとは異なっており、
波数空間上での分散面の形状はアスペクト比4以上の長方形であるフォトニック結晶。
【請求項17】
分散面の長辺の長さは、真空における分散面の直径の(1/2)1/2以上である請求項16に記載のフォトニック結晶。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−2490(P2011−2490A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143117(P2009−143117)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】