説明

フォトニック結晶を用いた導波路素子

電磁波の伝搬方向に垂直な二方向以上に屈折率周期性を有するフォトニック結晶からなるコアと、電磁波をコア内に閉じ込めるために、コアに接して設置されているクラッドとを有するフォトニック結晶を用いた導波路素子において、コア部分におけるフォトニックバンド構造のブリルアンゾーン境界面上もしくはその近傍に属するバンドに結合してコアを伝搬する電磁波を、コアに入射する入射側位相変調部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電磁波を制御する導波路素子に関し、特に光通信システム等に用いられるフォトニック結晶構造を用いた導波路素子に関するものである。
【背景技術】
近年、ホーリーファイバ、フォトニック結晶ファイバ(PCF)、あるいはフォトニックバンドギャップファイバ(PBF)などと呼ばれる新しい光ファイバの研究開発が急速に進展している。従来の光ファイバでは単純な屈折率差によりコア部分に光を閉じ込めているのに対して、これらのファイバはその断面内に複雑な2次元構造を有することを特徴としている。
つまり、クラッド部分に空孔を配置することにより実効屈折率を小さくして、コア部分との屈折率差をつける(ホーリーファイバ、PCF)こと、または、クラッド部分をフォトニック結晶として、コア部分の伝搬光に対してフォトニックバンドギャップを形成する(PBF)ことなどの手段によって行なわれている。
PCFやPBFでは、構造によってその特性を大きく変えることができるので、「波長分散を大きくした分散補償光ファイバ」、「非線形光学効果の大きい光ファイバ」および「可視域でのゼロ分散光ファイバ」などの応用が提案されている。また、複雑な2次元構造は、例えば、多数の石英ガラスパイプを束ねた状態で加熱延伸することによってつくることができる(例えば、大橋正治、「通信用光ファイバの最新技術動向」、オー・プラス・イー、2001年、第23巻、第9号、p.1061−1066参照)。また、最近になってフォトニック結晶部分をコアとして利用するファイバも提案されている(例えば、J・C・ナイト(J.C.Knight)、外3名、オプティカル・ソサエティ・オブ・アメリカ、アニュアル・ミーティング・2002、コンファレンズ・プログラム(Optical Society of America Annual Meeting 2002,Conference Program)、2002年、(米国)、WA3、p.94参照)。
このような現在提案されているほとんどのPCFやPBFでは、コア部分を伝搬する電磁波として、0次モードによる単一モード伝搬を利用している。単一モード伝搬は、多モード伝搬による波長分散を防ぐためには必須の条件であるものの、コアの大きさや光ファイバ性能に対する制約条件ともなっている。
一方、フォトニック結晶内を伝搬する電磁波には、「特異なバンド構造による非常に大きな波長分散」および、「伝搬光の群速度異常」という特徴的な性質があることはよく知られている。ところが、前記0次モードによる伝搬光は、上記これらの性質があまり強くない。したがって、上記これらの性質を利用した機能を発揮するためには導波路長を長くする必要があり、製作コストが増大するとともに伝搬中の損失が問題となってくる。
本発明者らは、フォトニック結晶内部の電磁波伝搬について研究してきた。例えば、伝搬方向に周期性のない1次元フォトニック結晶の端面に入射電磁波として平面波状の光を垂直に入射すると、入射光の周波数によっては複数のフォトニックバンドによる伝搬光が発生する。このうち、最低次ではないバンドによる伝搬光(以下、高次バンド伝搬光と呼ぶ)は、上述した非常に大きな波長分散や群速度以上といった特徴を有するので各種光学素子に応用することができる。
しかし、周波数にかかわらず入射光のエネルギーの一部は必ず最低次のバンドによる伝搬光(従来の光ファイバにおいては0次モードに相当する。以下、第1バンド伝搬光と呼ぶ)となって伝搬する。第1バンド伝搬光は上述した「非常に大きい波長分散」、「群速度異常」といった効果がほとんどないので、高次バンド伝搬光を利用する場合には単なるノイズでしかなく、入射光エネルギーの利用効率を大きく低下させてしまうのみならず、迷光として導波路のS/N比を低下させる原因となっている。
【発明の開示】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、フォトニック結晶に特有の効果を十分に発揮するように構成された、ファイバを含む導波路素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、電磁波の伝搬方向に垂直な二方向以上に屈折率周期性を有するフォトニック結晶からなるコアと、前記電磁波を前記コア内に閉じ込めるために、前記コアに接して設置されているクラッドとを有するフォトニック結晶を用いた導波路素子において、前記コア部分におけるフォトニックバンド構造のブリルアンゾーン境界面上もしくはその近傍に属するバンドに結合して前記コアを伝搬する電磁波を、前記コアに入射する入射側位相変調部を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
図1Aは、1次元フォトニック結晶内での、Z軸方向における第1バンド伝搬光の電場の強さを模式的に表した断面図である。
図1Bは、1次元フォトニック結晶内での、Z軸方向における高次バンド伝搬光の電場の強さを模式的に表した断面図である。
図2は、1次元フォトニック結晶の入射端側に、位相格子を設置した導波路素子における高次バンド伝搬光の電場の強さを模式的に表した断面図である。
図3は、X軸方向およびY軸方向に周期性を有し、Z軸方向には周期性のない2次元フォトニック結晶の構成を示した斜視図である。
図4は、図3のフォトニック結晶におけるバンド図を示す。
図5は、図3のフォトニック結晶のブリルアンゾーンにおける規格化周波数の等しいバンド面の形状を模式的に示したバンド図である。
図6は、図3に示したフォトニック結晶への入射光も含むYZ平面での模式的なバンド図である。
図7Aは、図3に示したフォトニック結晶におけるブリルアンゾーンを示すXY平面図である。
図7Bは、図3に示したフォトニック結晶におけるブリルアンゾーンを示す斜視図である。
図8Aは、本実施の形態に係る4方向に回折波を生じる位相格子を示す斜視図である。
図8Bは、本実施の形態に係る4方向に回折波を生じる他の位相格子を示す斜視図である。
図9Aは、本実施の形態に係るフォトニック結晶を用いた導波路素子の構成を示す斜視図である。
図9Bは、図9Aに示した導波路素子の導波路部分のXY平面断面図である。
図9Cは、本実施の形態に係る他のフォトニック結晶を用いた導波路素子の構成を示す斜視図である。
図9Dは、本実施の形態に係る他のフォトニック結晶を用いた導波路素子の構成を示す斜視図である。
図10Aは、図9Bに示したフォトニック結晶におけるブリルアンゾーンを示すXY平面図である。
図10Bは、図9Bに示したフォトニック結晶におけるブリルアンゾーンを示す斜視図である。
図11は、互いに隣接するフォトニック結晶同士のYZ平面におけるバンド図を、波長λに対して模式的に示したものである。
図12は、反射層を設けたフォトニック結晶の構成を示す断面図である。
図13は、基本的な2次元フォトニック結晶光ファイバの構成を示す斜視図である。
図14Aは、本実施の形態に係るファイバ状のフォトニック結晶を用いた導波路素子の構造を示す斜視図である。
図14Bは、図14Aの導波路素子に用いることができる他の光ファイバの構成を示す斜視図である。
図15Aは、図14Aに示した光ファイバのXY平面における空洞の配置を示す図である。
図15Bは、図15Aに示す構造おけるブリルアンゾーンを示すXY平面図である。
図15Cは、図15Aに示す構造おけるブリルアンゾーンを示す斜視図である。
図16は、シミュレーションにおける計算モデルを示す図である。
図17は、計算例のシミュレーションによる電場の強度分布を示す図である。
図18は、比較例のシミュレーションによる電場の強度分布を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施の形態に係るフォトニック結晶を用いた導波路素子は、入射光に位相変調を加えることにより、伝搬光にフォトニックバンドを利用し、特に、ブリルアンゾーン境界上に存在するバンドを積極的に利用する。ブリルアンゾーン境界上に存在する伝搬光は、最低次のバンドであっても高次バンド伝搬光と同様な特徴を有する。そのため、ブリルアンゾーン境界上に存在するバンドを、各種光学素子に利用することができる。また、光だけでなく、他の電磁波を伝搬光としてもよく、電磁波制御素子として用いることもできる。
また、本実施の形態に係るフォトニック結晶を用いた導波路素子において、前記入射側位相変調部は、全部もしくは大部分が単一のフォトニックバンドに属して前記コア内を伝搬する電磁波を、前記コアに入射する。それにより、例えば、光遅延素子や光通信における分散補償素子などの光制御素子として用いることができる。
また、前記コアである前記フォトニック結晶は前記電磁波の伝搬方向には屈折率周期性を有さないこととしてもよい。
また、好ましくは、前記入射側位相変調部は、前記コアの入射面に対して、傾き角を有する略平面波を、前記コアに入射してもよい。それにより、フォトニック結晶中のブリルアンゾーン境界上にあるバンドの伝搬光を利用した導波路素子を実現することができる。そのため、伝搬光の群速度異常に起因する分散補償、光学非線形性の増強効果などを利用した素子として広く応用することができる。
また、好ましくは、前記コアの入射面は、前記電磁波の伝搬方向に垂直な面に対して傾斜していて、前記入射側位相変調部は略平面波を前記コアに入射してもよい。それにより、フォトニック結晶中のブリルアンゾーン境界上にあるバンドの伝搬光を利用した導波路素子を実現することができる。そのため、伝搬光の群速度異常に起因する分散補償、光学非線形性の増強効果などを利用した素子として広く応用することができる。
また、好ましくは、前記入射側位相変調部は、前記コアの入射面において、前記入射面と平行な面内方向に周期的に位相変調された電磁波を前記コアに入射する。それにより、フォトニック結晶中のブリルアンゾーン境界上にあるバンドの伝搬光を利用した導波路素子を実現することができる。そのため、伝搬光の群速度異常に起因する分散補償、光学非線形性の増強効果などを利用した素子として広く応用することができる。
また、好ましくは、前記入射側位相変調部は、前記コアの入射面に複数の略平面波を入射させ、前記複数の略平面波を前記入射面において干渉させることで、位相変調された電磁波を前記コアに入射する。それにより、フォトニック結晶中のブリルアンゾーン境界上にあるバンドの伝搬光を利用した導波路素子を実現することができる。そのため、伝搬光の群速度異常に起因する分散補償、光学非線形性の増強効果などを利用した素子として広く応用することができる。
また、好ましくは、前記入射側位相変調部は、前記コアの前記入射面に近接または接触する位置に配置された位相格子と、前記位相格子に電磁波を入射する入射部とを備えている。それにより、容易に、フォトニック結晶中にブリルアンゾーン境界上にあるバンドの伝搬光を生じさせることができる。
また、好ましくは、前記位相格子は、前記コアと一体形成されている。それにより、容易に作製することができる。
また、好ましくは、電磁波が出射される前記コアの出射面に、近接もしくは接触する位置に設置された出射側位相変調部をさらに備えていて、前記出射側位相変調部は、前記コアから出射される電磁波を略平面波に変換する。それにより、平面波を出射することができる。
また、好ましくは、前記出射側位相変調部は、前記コアと一体形成されている。それにより、容易に作製することができる。
また、前記出射側位相変調部は、前記入射側位相変調部と同一の構造であり、入射端と出射端の方向が、前記入射側位相変調部とは逆になる位置に設置される構成としてもよい。
また、好ましくは、前記クラッドは、前記コア内を伝搬する電磁波の伝搬方向に垂直な少なくとも1方向に屈折率周期性を有するフォトニック結晶である。それにより、導波光が漏れることがなく、低損失の導波路素子を実現できる。
また、好ましくは、前記クラッドは、前記コア内を伝搬する電磁波の伝搬方向には屈折率周期性を有さないフォトニック結晶であるとしてもよい。
また、好ましくは、前記コアおよび前記クラッドで構成される導波路部分は、複数の周期を有する多層体に平行な複数の溝が形成された構成であり、前記溝は前記多層体の各層に対して垂直であり、かつ前記電磁波の伝搬方向に沿っている。それにより、コアおよびクラッドを容易に作製することができる。
また、好ましくは、前記コアは、電磁波の伝搬方向に沿って伸びる複数の空孔が形成された均質物質であり、前記電磁波の伝搬方向に垂直な面において、一定の周期を有するように前記空孔が配置されている。それにより、容易にフォトニック結晶を作製することができる。
また、前記複数の空孔の全部もしくは一部に流動性物質が充填されていてもよい。
また、前記複数の空孔の全部もしくは一部に光学的非線形作用を有する活性物質が充填されていてもよい。
また、好ましくは、前記コアは、断面が略円形であるファイバ状である。それにより、フォトニック光ファイバを用いた導波路素子が実現される。
本発明者らの研究により、Y軸方向に周期性があり、X軸およびZ軸方向に周期構造のない1次元フォトニック結晶の場合には、「周期bの多層膜層に対して、同じ方向に周期bを有する適当な位相変調波を入射すると、特定の高次バンドに属する伝搬光のみを得ることができる」ということが明らかになっている。また、光路を逆に考えると、高次バンド伝搬光が多層膜層の端面から出射された後に適当な位相変調手段を設置することにより平面波に戻すこともできる。位相変調波により高次バンド伝搬光のみをフォトニック結晶中に伝搬させる方法について、次に説明する。なお、周期bとは、周期的に配置された多層膜層の基本単位となる周期構造体の厚さである。
図1Aおよび図1Bは、1次元フォトニック結晶1内での伝搬光の電場の強さを模式的に表した断面図である。図1Aは、1次元フォトニック結晶1内での、Z軸方向における第1バンド伝搬光の電場の強さを模式的に表した断面図である。また、図1Bは、1次元フォトニック結晶1内での、Z軸方向における高次バンド伝搬光の電場の強さを模式的に表した断面図である。図1Aおよび図1Bにおいて、1次元フォトニック結晶1は、物質5aおよび物質5bが交互に積層された周期的多層体であり、1次元フォトニック結晶1の左側から入射光2が入射し、右側から出射光3が出射している。フォトニック結晶1において、その屈折率周期方向はY軸方向であり、伝搬光の伝搬方向であるZ軸方向には屈折率は一様である。
光の電場は波で表される。図1Aおよび図1Bにおいて、電場の山4aを実線、電場の谷4bを破線で表している。また、振幅の大きさはそれぞれの線の太さで表され、線が太い方が振幅は大きいことを表している。なお、伝搬光の波長はλである。
図1Aに示すように、第1バンド伝搬光は、電場の振幅が物質5a内と物質5b内で異なるものの、電場の山4aと谷4bはそれぞれZ軸と垂直な平面となるので、平面波に近い伝搬となる。
それに比べて、高次バンド伝搬光は、例えば、図1Bに示すように電場振幅が0となる「節4c」が物質5aおよび物質5bの境界付近に生じる。そのため、隣接する物質5aおよび物質5bで形成される積層構造の1周期は山と谷の2つの領域に分割される。隣り合う領域(物質5aおよび物質5b)では波動の位相が半波長ずれているため、山と谷が入れ違いに現われる。このように1周期あたり2個の節4cが生じるのは第2もしくは第3バンドの場合である。図示はしていないが、さらに高次のバンドによる導波光では、1周期内の節の数がさらに増えて、1周期内での半波長ずれが何回も起こるようになる。
したがって、第1バンドと高次バンドとがともに関与する波長の入射光2に対する伝搬光は両者が重なって、複雑な電場パターンを示すこととなる。
また、図2は、1次元フォトニック結晶1の入射端側に、位相格子を設置した導波路素子における高次バンド伝搬光の電場の強さを模式的に表した断面図である。位相格子6は、Y方向に周期bで半波長差を生じる位相変調手段である。図2に示すように、位相格子6に平面波7(実線は電場の山を、破線は電場の谷を表し、線の太さは振幅の大きさを表している)を入射すると、図1Bにおける高次バンド伝搬光に類似した電場パターン8(実線は電場の山を表し、破線は電場の谷を表し、線の太さは振幅の大きさを表している)を空間9に作ることができる。この空間9の位置に1次元フォトニック結晶(周期的多層膜)1の端面1aが設置されるようにしてある。このような場合は、図2に示しているように第1バンド伝搬光は発生せず、高次バンド伝搬光のみが生じることが、本発明者らのシミュレーションにより明らかとなっている。
また、光路を逆に考えると、高次バンド伝搬光が1次元フォトニック結晶の出射側端面1bから出射された後に適当な位相変調手段を設置することにより、端面1bから出射された光を平面波に戻すこともできることがわかる。
また、本発明者らの研究によると「周期bの1次元フォトニック結晶(周期的多層膜)に対して、同じ方向に2倍の周期である周期2bを有する適当な位相変調波を入射すると、ブリルアンゾーン境界上にあるバンドの伝搬光のみ得ることができる」ということが明らかになっている。また、ブリルアンゾーン境界上にあるバンドは、最低次の第1バンドも含めて、前述した「高次バンド伝搬光」と同様な特性を有する。
そこで、本実施の形態では、上述した「伝搬方向に周期性を有さない1次元フォトニック結晶」による、ブリルアンゾーン境界上のバンドによる伝搬と位相変調を組み合わせた手法を、2次元あるいはそれ以上のフォトニック結晶に拡張する。
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図3は、X軸方向およびY軸方向に周期性を有し、Z軸方向には周期性のない2次元フォトニック結晶11の構成を示した斜視図である。2次元フォトニック結晶11は、複数の円筒形状の物質15aがZ軸に沿って配置されていて、それら各物質15a同士の間には、屈折率nの物質15bが配置されている。物質15aは、半径R、屈折率nである。XY面において、物質15aは、周期aの正方形配列をなしている。Z軸方向には、屈折率は一様であるが、X軸およびY軸方向には屈折率周期構造を有する。
図3において、フォトニック結晶11の端面11aから真空中の波長λの平面波を入射させたとき、この光がフォトニック結晶11内でどのように伝搬するかは、フォトニックバンドを計算し図示することにより知ることができる。なお、端面11aはZ軸に対して垂直である。バンド計算の方法は、例えば”Photonic Crystals”,Princeton University Press(1995)あるいは、Physical Review B 44巻、16号、p.8565、1991年、などに詳しく述べられている。
バンド計算に際しては、図3に示すフォトニック結晶11はX方向およびY方向には無限に続く周期構造を有し、Z方向には無限に広がっているものと仮定する。図4は、図3のフォトニック結晶11におけるバンド図を示す。図4における条件を以下に示す。ただし、半径Rは、フォトニック結晶11の周期aを用いて表している。
屈折率n=1.00
半径R=0.30a(周期aの0.30倍)
屈折率n=1.45
の場合について、XY平面におけるバンド計算(平面波法)の結果を、TE偏光の第1、第2および第3バンドについて第1ブリルアンゾーンの半分(Y方向の上半分)の範囲内で示している。Y方向の下半分は上半分と対称である。
バンド図は規格化周波数ωa/2πcが同じ値となる点を結ぶことによって等高線状となり、図中の添字はωa/2πcの値を意味する。ここで、ωは入射する光の角振動数、aは構造の周期、cは真空中での光速である。
規格化周波数は、真空中の入射光波長λを用いて、a/λとも表すことができるので、以下ではa/λと記述する。ブリルアンゾーンのX軸およびY軸方向の幅は2π/aである。TE偏光は電場の向きがX軸方向である偏光を表わす。図3の場合については、対称性からTM偏光(磁場の向きがX軸方向)のバンド図が同じ形状となることは明らかである。
また、フォトニックバンド構造はZ軸方向にも広がっている。図5は、図3のフォトニック結晶11のブリルアンゾーン13における規格化周波数a/λの等しいバンド面12の形状を模式的に示したバンド図である。Z軸方向には周期性がないのでブリルアンゾーンの境界が存在せず、どこまでも広がっている。
このような図3に示すフォトニック結晶11の垂直端面11aに平面波を入射させた場合について、フォトニック結晶内での伝搬光を考える。
図6は、図3に示したフォトニック結晶11への入射光も含むYZ平面での模式的なバンド図である。具体的には、規格化周波数a/λの平面波を、図3に示すフォトニック結晶11の端面11a(XY平面と平行)から入射角θで、斜めに入射した場合の伝搬をバンド図上であらわした模式図である。単純化のために、入射光の傾きはYZ平面内に限られるものとする。入射端面11aに接する均質物質(例えば空気)の屈折率をnとすると、均質物質のバンド21は、
半径=n・(a/λ)(2π/a)
の球(YZ平面においては円)で表すことができる。作図によってフォトニック結晶11側の結合バンドを求めることができる。図6において、第1バンド23および第2バンド22上に対応点27および28があるので、フォトニック結晶11内ではそれぞれのバンドに対応した電磁波が伝搬することになる。図6において、矢印24は入射光の向きであり、矢印25は伝搬光の第2バンドのエネルギー伝搬の向きであり、矢印26は伝搬光の第1バンドのエネルギー伝搬の向きである。また、図5では、エネルギーの進行方向はバンド面12の法線方向となる。
図5より、伝搬する電磁波エネルギーの進行方向をZ軸と平行とするには、バンド面12の傾斜がXY平面と平行となる、例えば点12aを伝搬に用いる必要があることがわかる。図7および図7Bは、図3に示したフォトニック結晶11におけるブリルアンゾーンを示す図である。図7Aおよび図7Bは、図5に示すようなバンド図のバンド面12の傾斜がXY平面と平行となる位置を示している。図7Aは、XY平面図であり、図7Bは斜視図である。図7Aおよび図7Bに示すように、図5に示すようなバンド図のバンド面12の傾斜がXY平面と平行となる点は、対称性からブリルアンゾーン内のA、B1、B2、B3、B4、C1、C2、C3およびC4の各線上に存在する。本実施の形態では、この中でもブリルアンゾーン境界上にあるB1、B2、B3、B4、C1、C2、C3およびC4による伝搬を利用する。
例えば、B1線上の点に対応する入射平面波の波数ベクトルkは、
=(kx,ky,kz
kx=π/a
ky=π/a
kz=kz(正の実数)
となる。平面波の真空における波長λは、
λ=2πn/(kx+ky+kz0.5
により計算することができる。ここで、B1線上にa/λに相当するバンドが存在するように、kzの値はある程度大きくする必要がある。
すなわち、フォトニック結晶11のXY平面における端面11aに対して、特定の入射角を有する平面波を入射させれば、XY平面上において電磁波の位相が周期的に変化するので、ブリルアンゾーン境界面上のバンドによる伝搬を実現することができる。また、同様な効果は、入射端面11aをXY平面に対して傾ける、すなわち入射端面11aが伝搬方向(Z軸方向)と垂直ではない構成とすることによっても得ることができる。
また、複数の平面波による干渉を利用することによる、ブリルアンゾーン境界面上のバンドによる伝搬の実現について説明する。
波数ベクトルkに相当する平面波だけを入射すると、B1線上にある複数のバンドによる伝搬が同時に生じたり、端面での反射損失が大きくなることがある。したがって、単一のバンドによる伝搬を効率よく起こすためには、図7Aおよび図7Bに示すB2、B3およびB4線上に相当する3つの平面波(波数ベクトルk、kおよびk)も組み合わせて入射するとよい。以下に、波数ベクトルk、kおよびkを示す。
=(kx,ky,kz
kx=−π/a
ky=π/a
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=−π/a
ky=−π/a
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=π/a
ky=−π/a
kz=kz
ただし、各平面波の進行方向が同じままでその波長を変えると上記の数式が完全には成り立たなくなり、エネルギー伝搬の方向もZ軸からずれてしまう。つまり、光学素子としての特性が維持できる波長域に制限が生じることもある。
図7Aおよび図7BにおけるC1、C2、C3およびC4線の組も、B1、B2、B3およびB4線と同様に利用することができる。また、A線(Z軸と一致)は、垂直入射する平面波に対応する。ただし、上述したように、A線上の第1バンドは波長分散や群速度異常などの特性が弱いという問題点がある。
次に、位相格子を利用することによる、ブリルアンゾーン境界面上のバンドによる伝搬の実現について説明する。
図8Aは、本実施の形態に係る4方向に回折波を生じる位相格子16aを示す斜視図である。位相格子16aは、複数の方向(X軸およびY軸をそれぞれ45°回転させた方向)に屈折率周期性を有している。このような位相格子16aに、平面波30を垂直入射する(Z軸方向に入射する)と、回折光の干渉により、前述の複数の平面波の干渉で説明した、波数ベクトルkに相当する回折波31、波数ベクトルkに相当する回折波32、波数ベクトルkに相当する回折波33および波数ベクトルkに相当する回折波34を発生させることができる。したがって、このような位相格子16aの直後に図3に示したフォトニック結晶11の端面11aを設置すれば、B1、B2、B3およびB4線上のZ軸方向の伝搬光を得ることができる。なお、位相格子16aによる余分な回折光が混入するとフォトニック結晶11の特定バンドと効果的に結合しないので、位相格子16aは必要な回折光ができるだけ強くなるように最適化した形状であることが望ましい。
また、特定の波長で最適化した位相格子16aは、入射する平面波の波長が多少変わっても1次回折光の効率は急激に低下せず、高いレベルに留まるので、使用できる波長域を広くとることができる。もちろん、位相格子16aの形状や周期を最適化すれば、図7Aおよび図7Bに示すC1、C2、C3およびC4線の組に対応した波面とすることができる。具体的には、図8Bに示す位相格子17aとすればよい。図8Bは、本実施の形態に係る4方向に回折波を生じる他の位相格子17aを示す斜視図である。位相格子17aは、X軸およびY軸方向に屈折率周期性を有している。このような位相格子17aに、平面波70を垂直入射する(Z軸方向に入射する)と、回折光の干渉により、波数ベクトルk´に相当する回折波71、波数ベクトルk´に相当する回折波72、波数ベクトルk´に相当する回折波73および波数ベクトルk´に相当する回折波74を発生させることができる。したがって、このような位相格子17aの直後に図3に示したフォトニック結晶11の端面11aを設置すれば、C1、C2、C3およびC4線上のZ軸方向の伝搬光を得ることができる。以下に、波数ベクトルk´、k´、k´およびk´を示す。
´=(kx´,ky´,kz´)
kx´=π/a
ky´=0
kz´=kz´(正の実数)
´=(kx´,ky´,kz´)
kx´=0
ky´=π/a
kz´=kz´
´=(kx´,ky´,kz´)
kx´=−π/a
ky´=0
kz´=kz´
´=(kx´,ky´,kz´)
kx´=0
ky´=−π/a
kz´=kz´
上述した方法以外にも、「位相格子16aまたは位相格子17aに対して、平面波を斜めに入射する」および「位相格子16aまたは位相格子17aを設置せずに、フォトニック結晶11の入射端面11a自体に加工を施し、位相格子16aまたは位相格子17aと同一の機能を持たせる」などの方法を単独もしくは組み合わせて位相変調を行なうこともできる。
前述の方法で、フォトニック結晶11中にブリルアンゾーン境界面上のバンドによる伝搬を実現させた場合に、フォトニック結晶11の出射端面からの出射光は著しい回折を生じる。そこで、フォトニック結晶11からの出射光に位相変調を加えると平面波状の出射光を得ることができる。位相変調の方法としては、例えば、上述の図8Aまたは図8Bに示した位相格子16aまたは位相格子17aをそのまま、入出力端を逆向きに設置すればよい。フォトニック結晶11の入射側と出射側の両方に同じ位相格子を対称に設置すれば、どちらの方向の伝搬光に対しても同じ作用となるので、例えば、両端に光ファイバなどをそのまま結合させることができる。
以上述べた方法により、フォトニック結晶11内に高次バンド伝搬光を効率よく形成することができる。以下に、これらの方法を用いて形成された光学素子である、実施の形態に係るフォトニック結晶を用いた導波路素子の構成について説明する。なお、導波路部分をファイバ状とした場合についても後述する(図13)。図9Aは、本実施の形態に係るフォトニック結晶を用いた導波路素子40の構成を示す斜視図である。また、図9Bは、導波路素子40の導波路部分47のXY平面断面図である。
図9Aおよび図9Bにおいて、適当な基板49上に2次元フォトニック結晶41を含む導波路部分47が形成されている。フォトニック結晶41は、光の伝搬方向であるZ方向においては一様な屈折率を有し、光の伝搬方向に対して、垂直方向であるX軸およびY軸方向には、屈折率周期性を有している。具体的には、図9Bに示しているように、フォトニック結晶41の上下面(XZ面に平行な端面)には、フォトニック結晶57aおよびフォトニック結晶57cが設置されている。また、フォトニック結晶41の左右面(YZに平行な端面)には、フォトニック結晶57bがそれぞれ形成されている。これら、フォトニック結晶57a、57bおよび57cは、導波路部分47におけるクラッドであり、コアに当たるフォトニック結晶41とは異なる屈折率周期または材質であり、光がフォトニック結晶41に閉じ込められるように働く。
光が伝搬するフォトニック結晶41は、Y軸方向には、物質45aおよび物質45bが交互に周期的に積層されている個所と、物質45cが設置されている個所とがある。また、X軸方向には、物質45cおよび物質45aが交互に周期的に積層された層と、物質45cおよび物質45bが交互に周期的に積層された層とがある。また、物質45a、物質45bおよび物質45cはZ軸方向に延びている。なお、本実施の形態では物質45cは空気としている。このように、フォトニック結晶41は光の伝搬方向以外の方向に屈折率周期性を有する。なお、図9Bに示すように、フォトニック結晶41のY軸方向の周期はayであり、X軸方向の周期はaxである。
このフォトニック結晶41の両端には、位相変調部である位相格子46aおよび46bが設置されている。さらに、位相格子46aに入射光42を入射するロッドレンズ52a等の入射部が設置されている。このロッドレンズ52aにより位相格子46aの端面に入射光42が集光される。このようにすることで、位相格子46aに対して、光を垂直入射することができる。また、位相格子46bの出射端側には、出射手段であるロッドレンズ52bが設置されている。位相格子46aは、前述したように、例えば、波数ベクトルkに相当する回折波、波数ベクトルkに相当する回折波、波数ベクトルkに相当する回折波および波数ベクトルkに相当する回折波を発生させることができる構造となるように設計する。それにより、フォトニック結晶41中には、ブリルアンゾーン境界面上のバンドによる伝搬が実現する。なお、位相格子46aおよび位相格子46bはそれぞれ、フォトニック結晶41の端面近傍に設置されるが、フォトニック結晶41に接触していてもよい。また、フォトニック結晶41と位相格子46aおよび位相格子46bのそれぞれとは一体形成されていてもよい。それにより、作製が容易になる。
このような導波路素子40では、例えば、光ファイバなどからの入射光42は、入射部であるロッドレンズ52aにより集光され、ビームウエスト位置に設置された位相格子46aに入射する。位相格子46aによって位相変調された入射光42は、導波路部分47のコアであるフォトニック結晶41に入射して、特定の高次バンド伝搬光となる。つまり、フォトニック結晶41において、ブリルアンゾーン境界における伝搬が実現され、「非常に大きい波長分散」、「群速度異常」などを生じさせることができる。
伝搬光は、フォトニック結晶41の出射端面に設置された位相格子46bによって再び平面波に変換されてから、ロッドレンズ52bに入射され出射光43となり光ファイバ等に結合する。
高次バンド伝搬光は前述したように入射光の波長によって群速度が大きく変化する。そのため、導波路素子40は、光遅延素子や光通信における分散補償素子などの光制御素子として用いることができる。
また、前述したように群速度の遅い伝搬光には非線形光学効果を増強する作用があるので、フォトニック結晶41に、非線形光学作用を示す物質を微粒子状にしてドープすることで、さらに大きな非線形光学効果を有する素子を得ることができる。なお、導波路素子40は、ブリルアンゾーン境界面近傍に属するバンドに結合しさえすれば、前述の効果を有する。
また、非線形光学効果を大きくするためには、例えば、フォトニック結晶41の1周期ごとに、非線形光学作用を示す物質を含む薄膜層を設置する方法およびフォトニック結晶41を形成する物質そのものを、非線型作用のあるものとする方法等がある。
図9Bに示したフォトニック結晶41を含む導波路部分47を製造するための手順について説明する。まず、基板49上に物質45aおよび物質45bを交互にY軸方向に成膜して、周期的多層膜を形成する。次に、物質45aおよび物質45bからなる多層膜のXZ平面に縞状パターンのマスクをつけ、エッチングにより、Y軸方向を深さ方向とする溝を形成する。この溝を形成することで、空気である物質45cが設置される。
導波路部分47を製造する際に、Y軸方向に積層する多層膜の材質や膜厚のパターンおよび溝の幅と周期のパターン等を変化させることにより、導波路部分47の構成を変更することができる。
例えば、図10Aおよび図10Bは、図9Bに示したフォトニック結晶41におけるブリルアンゾーンを示す図である。図10AはXY平面図であり、図10Bは斜視図である。図10Aおよび図10Bに示すように、XY平面でのブリルアンゾーン形状は長方形となる。この場合は、入射する平面波の組み合わせとしては、B1、B2、B3およびB4線上に相当する平面波である。以下にこれらの平面波の波数ベクトルk、k、kおよびkを示す。
=(kx,ky,kz
kx=π/ax
ky=π/ay
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=−π/ax
ky=π/ay
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=−π/ax
ky=−π/ay
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=π/ax
ky=−π/ay
kz=kz
ただし、kzは真空中の波長をλとすると、
λ=2πn/(kx+ky+kz0.5
より計算することができる。
また、図10Aおよび図10Bに示す、Cx1、Cx2線上に相当する平面波の場合の波数ベクトルkおよびkは、
=(kx,ky,kz
kx=π/ax
ky=0
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=−π/ax
ky=0
kz=kz
となる。
同様に、Cy1、Cy2線上に相当する平面波の場合の波数ベクトルkおよびkは、
=(kx,ky,kz
kx=0
ky=π/ay
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=0
ky=−π/ay
kz=kz
となる。kzの値の計算方法は上記のものと同じである。
また、本実施の形態の導波路素子40を実用化するためには、フォトニック結晶41のX軸方向およびY軸方向への、光の閉じ込めが不可欠である。
フォトニック結晶41内を伝搬する高次バンド伝搬光(角周波数ω)の周期をλとする。角周波数ωの電磁波の真空中における周期はλ=2πc/ωであることから、λ/λの値を実効屈折率と定義する。フォトニック結晶41の側面に接している媒体の屈折率をnとして、
λ/λ>n
の条件が満たされると、伝搬光はフォトニック結晶41の側面に接している媒体側に波面を作り、漏れ出すことができない。したがって、フォトニック結晶41内に伝搬光が閉じ込められる。
しかし、フォトニックバンドの特異な形状によっては、実効屈折率が1未満となることもあり、そのような場合は外側の媒体を真空としても閉じ込めができない。そこで、伝搬光の逃げ出しを防ぐ必要が生じる。そのような場合には、図9Bにおいて、フォトニック結晶41の周りに、設置されているフォトニック結晶57a、57bおよび57cのそれぞれの屈折率周期あるいは構造をフォトニック結晶41と異なるようにし、伝搬光の閉じ込めを実現することができる。すなわち、コアであるフォトニック結晶41の周囲を周期の異なるフォトニック結晶57a、57bおよび57cで囲むようにすることにより、伝搬光をフォトニック結晶41内に閉じ込めることができる。
図11は、互いに隣接するフォトニック結晶同士のYZ平面におけるバンド図を、波長λに対して模式的に示したものである。図11のフォトニック結晶は、それぞれ周期cおよび周期dである(d>c)。周期cのフォトニック結晶の内部には、ブリルアンゾーン境界におけるZ方向の伝搬光(第1バンドによる)が伝搬しているものとする。図11において、矢印500は伝搬光のエネルギーの向きを示す。また、波長λに対するバンド501も図示されている。フォトニック結晶クラッド11においては、Z方向にバンドの存在しない領域(バンドギャップ502)が生じており、フォトニック結晶(周期c)内部の伝搬に対応するバンドが存在しない。したがって、フォトニック結晶(周期c)の伝搬光はフォトニック結晶(周期d)に結合しない。すなわち、閉じ込めがなされていることになる。
このようにして、異なる周期を有するフォトニック結晶を用いて、フォトニック結晶からの光の漏れを防ぐことができる。
図9Bに示したように、閉じ込め用のフォトニック結晶57a、57bおよび57cの材料や構造は、伝搬用のフォトニック結晶41と異なったものであっても構わないが、多層膜の作製の手間を考えれば同じ材料を用いて周期を変えることが望ましい。図9Bでは、例えば、2次元フォトニック結晶41の上側には、フォトニック結晶41と周期の異なる2次元フォトニック結晶57aとしている。また、2次元フォトニック結晶41の左右には、フォトニック結晶41とは幅の異なる2次元フォトニック結晶57bが設置されている。また、2次元フォトニック結晶41の下側には、フォトニック結晶41とは周期の異なる1次元フォトニック結晶57cが設置されている。
もちろん、フォトニック結晶41で使用する波長域と伝搬バンドにおいて伝搬光の波数ベクトルに対応するバンドがフォトニック結晶57a、57bおよび57c側に存在しないことは、バンド計算によって確認して設計する必要がある。
なお、図11に示したバンド図による光の閉じ込めの判定は、閉じ込め用のフォトニック結晶(周期d)が無限周期構造を有することを前提としたものであるから、閉じ込め用フォトニック結晶の周期数がたとえば3周期くらいであると、閉じ込めが不充分となり伝搬光が外部に漏れてしまうことはあり得る。また、不必要に周期数を多くすることはコストと多層膜の耐久性や精度の点から好ましくない。そこで、実際に必要な最低限の周期数は、実験や電磁波シミュレーションにより決定することが望ましい。
また、本発明者らのシミュレーションによると、高次バンド伝搬光は電場の山と谷が互い違いになって進行するので、表面からの波面を作りにくく、漏れにくいという特徴がある。したがって、図9Aおよび図9Bに示す導波路素子40において、フォトニック結晶57a、57bおよび57cを設置せず、フォトニック結晶41の側面が空気層などの均質物質に直接接触しているような構成としてもよい。
また、図12は、反射層51を設けたフォトニック結晶41の構成を示す断面図である。図9Bに示したフォトニック結晶41の周りには、フォトニック結晶57a、57bおよび57cが設置されているが、その代わりに、図12に示すように、フォトニック結晶41の周囲に金属膜等の反射層51を形成してもよい。それにより、伝搬光はフォトニック結晶41内から外へ漏れずに伝搬し得る。
しかし、フォトニック結晶41の周りに、反射層51を設置する場合には、多層膜強度の低下や反射率の不足による伝搬光の減衰等の問題が生じることもある。
以上、導波路素子40について説明してきたが、フォトニック結晶41中には、ブリルアンゾーン境界面上のバンドによる伝搬が実現させるのであれば、特に、位相格子46aを用いずに、前述のように、フォトニック結晶41の入射端面に対して、斜めから光を入射してもよい。それにより、フォトニック結晶41中に、ブリルアンゾーン境界面上のバンドによる伝搬が実現する。図9Cは、本実施の形態に係る他のフォトニック結晶を用いた導波路素子40aの構成を示す斜視図である。図9Cの導波路素子40aは、図9Aの導波路素子40と異なり、位相格子46aを備えておらず、入射部であるロッドレンズ52aが入射端面に対して、垂直ではなく傾いた角度(入射角θ)で、光を入射させる。なお、入射端面は、Z軸に対して垂直である。この場合は、入射端面に対して傾いた光を入射させるロッドレンズ52aが位相変調部である。
また、フォトニック結晶の入射端面を伝搬方向に対して傾けることで、入射端面に対して斜めに光が入射するようにし、フォトニック結晶41中に、ブリルアンゾーン境界面上のバンドによる伝搬が実現させてもよい。具体的には、図9Dに示す導波路素子40bとすればよい。図9Dは、本実施の形態に係る他のフォトニック結晶を用いた導波路素子40bの構成を示す斜視図である。図9Dの導波路素子40bの導波路部分47aは、図9Cに示された導波路素子40aの導波路部分47と異なり、入射端面が伝搬光の伝搬方向(Z方向)に対して垂直ではない。それ以外の点は、図9Dの導波路素子40bと図9Cの導波路素子とは同一である。このように、導波路部分47aの入射端面が傾斜していて、導波路部分47aのコアにあたるフォトニック結晶の入射端面も伝搬方向(Z方向)に対して垂直ではなく傾斜している。そして、入射端面に対して、θの入射角で光が入射するように、ロッドレンズ52aが設置されている。
以上、本実施の形態に係るフォトニック結晶を用いた導波路素子について説明してきたが、光が伝搬する2次元フォトニック結晶の断面が略矩形である場合を例にして説明してきた。しかし、本実施の形態はこれに限定されるわけではなく、2次元フォトニック結晶の断面が略円形状であり、フォトニック結晶自体が円筒形状(ファイバ状)である、いわゆるフォトニック結晶ファイバであっても同様の効果を有する。
以下にフォトニック結晶がファイバ状である場合について説明する。
基本的な2次元フォトニック結晶光ファイバの構成を示す斜視図を図13に示す。円筒状の光ファイバ130は、その中心軸の周りに2次元周期構造を有するコア部131を有し、その周囲を周期性のないクラッド部分132が囲んでいる。
図14Aは、本実施の形態に係るファイバ状のフォトニック結晶を用いた導波路素子145の構造を示す斜視図である。光ファイバ140は、2次元周期構造を有するコア部141と、その周囲のクラッド部分142から構成される。光ファイバ140の両端には、位相格子146aおよび146bがそれぞれ設置されている。平面波である入射光が、入射部であるロッドレンズ143aにより位相格子146aに入射すると、位相変調がなされる。位相変調がなされた光が、コア部分141に入射し、コア部分141を高次バンド光として伝搬し、出射される。出射された光は回折光であるが、位相格子146bで再び平面波に復元され、出射部であるロッドレンズ143bに入射する。両端の位相格子146aおよび146bは同一の形状であり、これらは、入射および出射のどちらの方向にも用いることができる。位相格子146aは、前述したように、フォトニック結晶41中に、ブリルアンゾーン境界面上のバンドによる伝搬が実現するように、平面波を位相変調する構成とする。
導波路素子145はファイバ状であるので、用途の幅が広がる。
クラッド部142およびコア部141それぞれのフォトニック結晶ではあるが、異なる周期や構造を有し、コア部141の伝搬光をフォトニックバンドギャップによって閉じ込める役割をする。
また、図14Bは、図14Aの導波路素子145に用いることができる他の光ファイバ150の構成を示す斜視図である。図14Bに示すように、光ファイバ150のコア部151は、図14Aの光ファイバ140のコア部141と同様の構成である。しかし、図14Bのように、クラッド部152は、半径方向に周期性を有する同心円状のフォトニック結晶構造としてもよい。このようなクラッド構造は、例えば、文献、Photonics West 2003 Technical summary digest、p.383、講演番号C4993−04、に提案されているように、屈折率の異なる2層からなる薄膜を巻きつけてから固定し、紡糸して延伸する、といった方法によって作製することができる。この場合の構造は、正確には同心円ではなく螺旋状となるが、閉じ込めの効果は充分に発揮できる。なお、図14Bの光ファイバ150の入出力端に、図14Aで示した位相格子146aおよび146bを設置すればよい。
前述と同様に、位相格子146aにより、平面波を位相変調してから、光ファイバ140または光ファイバ150と結合させることで、光ファイバ140または光ファイバ150内部には、高次バンドが伝搬する。そのため、最低次バンドによる単一モード伝搬を用いる従来の光ファイバよりもはるかに大きい群速度異常が発生する。したがって、強力な分散補償効果や非線形光学効果を発揮することができる。
また、コア部分141またはコア部分151は周期構造であり大きさに制限がないので、大口径のコアを容易に実現することができ、ファイバ間接続を簡略にすることもできる。
ファイバ状のフォトニック結晶は、ファイバ状均質物質内に、その長手方向に沿って複数の空洞を形成し、かつ、その複数の空洞を長手方向に平行な軸に対して対称な周期性をもって配置することによって実現することができる。この空洞部分の全部もしくは一部に、例えば流動性物質を充填することも可能である。
これら複数の空洞の配置として、作りやすい三角配列について説明する。図15Aは、図14Aに示した光ファイバ140のXY平面におけるコア部141の空洞の配置を示す図である。図15Aに示すように、均質物質162に、空洞161が形成されている。この場合の周期eは、各空洞161間の距離である。さらに、図15Bおよび図15Cは、図15Aに示す構造おけるブリルアンゾーンを示している。図15BはXY平面図であり、図15Cは斜視図である。図15Bよりわかるように、XY平面におけるブリルアンゾーンは六角形となる。この場合は、入射する平面波の組み合わせとしては、例えば、B1、B2、B3、B4、B5、B6線上に相当する平面波の重ね合わせ、もしくはC1〜C6線上に相当する平面波の重ね合わせとすればよい。
また、高次伝搬バンドによる伝搬光ではいわゆる「フォトニック結晶における群速度異常」が生じるため、非線形光学効果の増強作用を起こすことなどが期待されている。本実施の形態では群速度異常がほとんど起こらない第1バンド光にエネルギーを取られることがない。そのため、例えば、多層膜やフォトニック結晶光ファイバのコア部分に非線形光学物質を含ませることによってより大きい光学的非線形性の増強効果を得ることができる(例えば、Optical Fiber Communication 2002/Conference and Exhibit Technical Digest、ThK4、p.468、参照)。
以上説明した、本実施の形態に係るフォトニック結晶を用いた導波路素子において、フォトニック結晶の材料としては、使用波長域における透明性が確保できるものであれば特に限定はないが、一般的に多層膜の材料として用いられていて耐久性や製膜コストの点で優れたシリカ、シリコン、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、フッ化マグネシウム、窒化シリコンなどが適する材料である。また、上記材料は、スパッタリング、真空蒸着、イオンアシスト蒸着、およびプラズマCVDなどの良く知られた方法により、容易に多層膜とすることができる。また、図9Aに示す導波路素子40は、基板49を用いない、いわゆるエアーブリッジ構造としてもよい。
また、フォトニック結晶を構成する複数の材料間の屈折率比は大きくなるほど、波長分散なども大きくなる傾向があるので、そのような特性が必要な用途に対しては高屈折率材料と低屈折率材料を組合せることが望ましい。実用的に実現できる屈折率比は、例えば、低屈折率材料として空気(屈折率1)、高屈折率材料としてInSb(屈折率n=4.21)を用いると、屈折率比を4以上にすることができる(「微小光学ハンドブック」、朝倉書店、1995年、p.224、参照)。
フォトニック結晶ファイバは、石英ガラスパイプを束ねて紡糸するという一般的に良く知られた方法で作製することができる。この場合は、石英と空気孔との組合わせにより屈折率周期構造を形成するが、充分な効果を得ることができる。
フォトニック結晶を構成する各材料の屈折率比が小さくなると、偏光方向による特性の違いが小さくなる傾向がある。したがって、偏波無依存を実現するためには屈折率比を小さくすることも有用である。
材料を適切に選定すれば、本実施の形態に係るフォトニック結晶を用いた導波路素子は、通常使用される200nm〜20μm程度の波長範囲の光素子で特にその効果を発揮することができる。しかしながら、フォトニック結晶の原理は電磁波一般に適用できるものなので、より波長の長い電波や、波長の短いX線やガンマ線に応用することもできる。つまり、光だけでなく、電磁波全般において、本実施の形態のフォトニック結晶を用いた導波路素子を適用できる。
なお、本実施の形態のフォトニック結晶を用いた導波路素子の電磁波を伝搬させるフォトニック結晶において、電磁波の伝搬方向の屈折率周期性は必要条件ではない。しかし、例えば、伝搬方向にわずかな屈折率差のあるブラッグ回折格子を設けることで、特定の波長の電磁波のみ反射させるといったことも可能である。
(計算例)
具体例として、図3に示す2次元フォトニック結晶11の端面11aから平面波を入射させた場合について、以下の条件での電磁波シミュレーション(有限要素法)を実施した。以下の計算例では、長さはすべて屈折率周期である周期aを基準として規格化している。
(1)フォトニック結晶の構造
物質15bの中に、円柱空孔である物質15aが正方形配列されている。
(物質15b) 屈折率n=1.45
(物質15a) 屈折率n=1.00、半径Rが0.3aの円柱形状である。
円柱の中心の座標は、(x,y)=(pa,qa)、p、qは整数
フォトニックバンド図(TE偏光)は図4に示すものと同じである。
(2)入射光
(真空中の波長) λ=a (a/λ=1.00)
図7Aおよび図7bに示すB1、B2、B3およびB4上の点に対応する平面波として、波数ベクトルとして、以下に示す波数ベクトルk、k、kおよびkを設定した。
=(kx,ky,kz
kx=π/a
ky=π/a
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=−π/a
ky=π/a
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=π/a
ky=−π/a
kz=kz
=(kx,ky,kz
kx=−π/a
ky=−π/a
kz=kz
ただし、kzの値は、
λ=2π/(kx+ky+kz0.5
の関係より求めた。入射端面と接する個所の屈折率nは1としている。
入射する平面波は、互いに振幅と位相のそろった
A・exp(iωt)exp(−ik・r)
A・exp(iωt)exp(−ik・r)
A・exp(iωt)exp(−ik・r)
A・exp(iωt)exp(−ik・r)
で表される4種類である。ただし、Aは振幅、iは虚数単位、ωは角周波数、r=(x,y,z)は位置をあらわすベクトルである。
(3)シミュレーション
フォトニック結晶内部の伝搬を、有限要素法によりシミュレーションした結果を以下に示す。使用したソフトウェアは日本総合研究所製のJMAGである。
図16は、シミュレーションにおける計算モデルを示している。また、図17は、計算例のシミュレーションによる電場の強度分布である。図16のように、計算モデルは、XY方向へ無限に広がったものであるが、実際の計算では図17に示すように入射平面波の1周期部分のみを計算した。周期的境界条件を設定しているので、無限周期構造と等価になる。入射端面では、上記の4波長を重ね合わせてz=0とおいた下記式
E=2Acos(ωt){cos(πx/2+πy/2)
+cos(πx/2−πy/2)}
に従った電場Eの変調を境界条件として設定した。
シミュレーション結果として、電場の強度分布を図17に示す。黒い部分は電場が強く、174は電場の山、173は電場の谷を意味する。以下に、図17に示された電場パターンについて説明する。XY平面上では中央の円柱が電場の山、四隅の円柱(一部のみ図示)が谷となる。電場は物質15aの円柱部分に局在し、物質15bの部分では弱くなる。隣り合う円柱(物質15a)では、位相は半周期ずれるという特徴があり、高次バンドによる伝搬であることがわかる。
(比較例)
次に、上記計算例と同じモデルを用い、入射光をZ軸方向の単一な平面波とした場合のシミュレーションを行なった。入射端面の電場Eは
E=2Acos(ωt)
で表され、XY平面上で一様になる。
図18は、比較例のシミュレーションによる電場の強度分布である。図18において、黒い部分は電場が強く、174は電場の山、173は電場の谷を意味する。図18に示す、シミュレーションの結果得られた電場の強度分布によると、電場パターンは複雑なものとなり、複数のバンドによる伝搬が重なっていることがわかる。また、XY平面での位相がそろっていることもわかる。
以上説明したように、本実施の形態に係るフォトニック結晶を用いた導波路素子によれば、フォトニック結晶中の高次バンド伝搬光を利用した光導波路型素子として用いることができる。したがって、高次バンド伝搬光の群速度異常に起因する分散補償、光学非線形性の増強効果などを利用した光学素子として広く応用することができる。また、光学素子としてだけでなく、すべての波長の電磁波を制御することが可能であり、電磁は制御素子として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
本発明のフォトニック結晶を用いた導波路素子は、広い波長範囲に対応した電磁波制御素子として用いることができる。


【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】







【図11】

【図12】

【図13】




【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の伝搬方向に垂直な二方向以上に屈折率周期性を有するフォトニック結晶からなるコアと、前記電磁波を前記コア内に閉じ込めるために、前記コアに接して設置されているクラッドとを有するフォトニック結晶を用いた導波路素子において、
前記コア部分におけるフォトニックバンド構造のブリルアンゾーン境界面上もしくはその近傍に属するバンドに結合して前記コアを伝搬する電磁波を、前記コアに入射する入射側位相変調部を備えたことを特徴とするフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項2】
前記入射側位相変調部は、全部もしくは大部分が単一のフォトニックバンドに属して前記コア内を伝搬する電磁波を、前記コアに入射する請求の範囲1に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項3】
前記コアである前記フォトニック結晶は前記電磁波の伝搬方向には屈折率周期性を有さない請求の範囲1に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項4】
前記入射側位相変調部は、前記コアの入射面に対して、傾き角を有する略平面波を、前記コアに入射する請求の範囲1に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項5】
前記コアの入射面は、前記電磁波の伝搬方向に垂直な面に対して傾斜していて、前記入射側位相変調部は略平面波を前記コアに入射する請求の範囲1に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項6】
前記入射側位相変調部は、前記コアの入射面において、前記入射面と平行な面内方向に周期的に位相変調された電磁波を前記コアに入射する請求の範囲1に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項7】
前記入射側位相変調部は、前記コアの入射面に複数の略平面波を入射させ、前記複数の略平面波を前記入射面において干渉させることで、位相変調された電磁波を前記コアに入射する請求の範囲6に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項8】
前記入射側位相変調部は、前記コアの前記入射面に近接または接触する位置に配置された位相格子と、
前記位相格子に電磁波を入射する入射部とを備えた請求の範囲6に記載のフォトニック結晶用いた導波路素子。
【請求項9】
前記位相格子は、前記コアと一体形成されている請求の範囲8に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項10】
電磁波が出射される前記コアの出射面に、近接もしくは接触する位置に設置された出射側位相変調部をさらに備えていて、
前記出射側位相変調部は、前記コアから出射される電磁波を略平面波に変換する請求の範囲1に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項11】
前記出射側位相変調部は、前記コアと一体形成されている請求の範囲10に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項12】
前記出射側位相変調部は、前記入射側位相変調部と同一の構造であり、入射端と出射端の方向が、前記入射側位相変調部とは逆になる位置に設置されている請求の範囲10に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項13】
前記クラッドは、前記コア内を伝搬する電磁波の伝搬方向に垂直な少なくとも1方向に屈折率周期性を有するフォトニック結晶である請求の範囲1に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項14】
前記クラッドは、前記コア内を伝搬する電磁波の伝搬方向には屈折率周期性を有さないフォトニック結晶である請求の範囲13に記載の導波路素子。
【請求項15】
前記コアおよび前記クラッドで構成される導波路部分は、複数の周期を有する多層体に平行な複数の溝が形成された構成であり、
前記溝は前記多層体の各層に対して垂直であり、かつ前記電磁波の伝搬方向に沿って請求の範囲1に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項16】
前記コアは、電磁波の伝搬方向に沿って伸びる複数の空孔が形成された均質物質であり、
前記電磁波の伝搬方向に垂直な面において、一定の周期を有するように前記空孔が配置されている請求の範囲1に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項17】
前記複数の空孔の全部もしくは一部に流動性物質が充填されている請求の範囲16に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項18】
前記複数の空孔の全部もしくは一部に光学的非線形作用を有する活性物質が充填されている請求の範囲16に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。
【請求項19】
前記コアは、断面が略円形であるファイバ状である請求の範囲16に記載のフォトニック結晶を用いた導波路素子。

【国際公開番号】WO2004/081626
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【発行日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503495(P2005−503495)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002749
【国際出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】