フォトマスクおよび半導体装置の製造方法
【課題】 コスト上昇を招くことのない方法によってウェーハ上に形成される露光ショットの配列誤差を低減し、ショットエリアの大きさが異なる露光装置を混用しても上下のマスクパターンの重ね合わせ精度が向上できるフォトリソ工程を提供する。
【解決手段】 露光装置に露光ショットの配列誤差測定用マークを備えたフォトマスクを装着し、ウェーハ上に前記マークのレジストパターンを形成した後、前記マークを用いて露光ショット配列誤差に基づくズレに関する量を測定する。次に測定した量を上下パターンレイヤの重ね合わせ誤差と見なした時の誤差成分を算出し、さらにこの誤差成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出する。次にこの結果を判定し、誤差成分値が所定の基準を満たさない場合は算出した露光ショット配列に関する誤差成分値を用いて露光装置のパラメータを補正し、基準を満たすようにする。
【解決手段】 露光装置に露光ショットの配列誤差測定用マークを備えたフォトマスクを装着し、ウェーハ上に前記マークのレジストパターンを形成した後、前記マークを用いて露光ショット配列誤差に基づくズレに関する量を測定する。次に測定した量を上下パターンレイヤの重ね合わせ誤差と見なした時の誤差成分を算出し、さらにこの誤差成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出する。次にこの結果を判定し、誤差成分値が所定の基準を満たさない場合は算出した露光ショット配列に関する誤差成分値を用いて露光装置のパラメータを補正し、基準を満たすようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の一連の製造工程のうちフォトリソ工程に関し、特にウェーハ上への露光ショット配列精度を向上させる方法およびそのためのフォトマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置や、液晶表示板に代表される表示素子デバイス等の製造にはフォトリソ工程が含まれている。特に半導体集積回路のフォトリソ工程を構成する露光工程においては、フォトマスク(レチクル)上に形成された回路素子パターンを、露光装置を用いて半導体基板(ウェーハ)上のレジスト膜に縮小投影し、露光ショットの逐次繰り返し(ステップ・アンド・リピート)を行うことで転写している。露光を行うに際しては、1枚のウェーハから最大数の半導体集積回路チップが採れるようにウェーハ上のチップ配置(チップレイアウト)が予め決められ、これに基づいてショットエリア(露光装置により1回の露光で露光されるウェーハ上の領域)の配置(ショットレイアウト)が決定される。
【0003】
現在半導体製造に使用されている主要な縮小投影型露光装置にはステップ・アンド・リピートタイプの装置(ステッパ)とステップ・アンド・スキャンタイプの装置(スキャナ)がある。ステッパは投影光学系を介してレチクルを搭載するレチクルステージおよび被露光ウェーハを搭載するウェーハステージの相対位置を固定して露光するのに対して、スキャナは投影光学系を介してレチクルステージとウェーハステージとを同期を取って相対的に移動させながら露光する。これによりスキャナのショットエリアの方がステッパより広くなるという相違を生ずる。
【0004】
従来の露光工程は、半導体集積回路の最初の回路パターンレイヤの露光から最後の回路パターンレイヤの露光まで終始一貫して同一タイプの露光装置を用い、同一のショット配列で行うのが普通であった。しかし近年例えば量産現場においては、生産設備の運用効率などから、1種類の半導体デバイスの製造に対してもショットエリアの大きさが異なる露光装置を混用して使用したいという要請が大きい。しかしこのような場合は、露光ショット配列誤差が原因となって上下層のマスクパターンレイヤの高精度重ね合わせに困難をきたす等の問題点の発生が予想され、これを回避するための方法が特許文献1に記載されている。
【0005】
以下に特許文献1に記載された方法の概要を簡単に説明する。図11〜図13は特許文献1に記載された図面であり、図11はショットエリアの異なる2台の露光装置を使用して露光したデバイスパターンのウェーハ上の位置関係を示す図である。露光装置に用いる1枚のフォトマスク上には普通、同一のデバイスパターンが繰り返し複数個形成され、1露光ショットで複数個のデバイスパターンを同時に形成し、露光工程の生産効率を向上させている。図11のパターン群13、14はショットエリアの大きい露光装置で形成されたパターンであり、その中に3つのデバイスパターン6が同時に形成される。パターン群15、16、17はショットエリアの小さい露光装置で形成されたパターンであり、その中に2つのデバイスパターン8が同時に形成される。
【0006】
図11に示される例では、1回目の露光工程によりパターン群13、14がパターニングされるが、パターン群13の底辺とパターン群14の上辺が一致しないショット配列誤差が生じている。この状態で2回目の露光工程においてデバイスパターン6にデバイスパターン8ができるだけ正確に重ね合わさるように露光される。この時、パターン群15および17のデバイスパターン8はそれぞれパターン群13および14のデバイスパターン6に正確に重ね合わせることが可能であるが、パターン群16のデバイスパターン8はパターン群13、14のいずれのデバイスパターン6にも正確に重ね合わせられない。
【0007】
この問題に対応するために、特許文献1の技術では露光工程に図12に示すレチクルを用いる。図12はレチクルのショットエリア5内の平面図であり、中央部に3つのデバイスパターン6を具える。またショット配列誤差を測定するための組み合わせとなるアウターマークとインナーマークの2対(アウターマーク1とインナーマーク3、アウターマーク2とインナーマーク4)をデバイスパターン6の外部であって且つショットエリア5の各辺近傍に有している。
【0008】
図13は、レジストが塗布されたウェーハ上に図12に示したレチクルのパターンを、露光装置のステッピングにより順次露光するときの、ショットエリア配列の設計位置を示す図である。図13に示すようにショットエリアA〜Dのうち、隣接するショットエリア内のインナーマーク、アウターマークが形成された領域が重なるようにショットエリアが配列される。例えばショットエリアDに注目すると、ショットエリアDのアウターマーク1の中心点PD1とショットエリアBのインナーマーク3の中心点PB3は一致するように設計され、ショットエリアDのアウターマーク2の中心点PD2とショットエリアCのインナーマーク4の中心点PC4は一致するように設計され、他のショットエリアおよびマークについても同様に設計されている。
【0009】
しかし、実際の露光工程によるショット配列ではアウターマークおよびインナーマークの中心点がショット配列誤差に起因して一致せず、多少にかかわらずズレが発生するので、特許文献1の方法では1つのショットエリア内に設けられた2対のマークについて上記中心点間のズレ量を計測し、計測したズレ量を簡単な四則演算式に直接入力してショット配列誤差を回転誤差成分、倍率誤差成分、非直交誤差成分に分解して算出する。そして算出した誤差成分を用いて露光装置のパラメータを補正した後再度露光を行う。以上のようにして特許文献1の技術は、上下層のパターンレイヤ重ね合わせ誤差の許容範囲の小さい露光工程に、ショットエリアの大きさが異なる露光装置を混用できるように、露光ショットの配列誤差の低減を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−15419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1が開示するような従来の方法によれば、四則演算式にアウターマークとインナーマークとのズレ量測定値を入力して得られる露光ショット配列の各誤差成分の値は、ウェーハ上に配列された1つの特定ショットについて得られた値である。現実に露光ショット配列誤差の補正を行うにおいては、例えばウェーハ上の複数ショットに対して露光ショット配列誤差成分値のそれぞれを算出し、露光装置のパラメータを補正して露光ショット配列誤差を最小とするような1組の誤差成分補正値を得ることが必要であり、そのために前記算出した複数の誤差成分値に、少なくとも簡単ではない何らかの統計的演算を施すべきものと考えられる。
【0012】
しかしながら特許文献1にはこの点についての開示がない。もし上記のような統計的処理を施そうとするならば、専用の演算プログラム作成、場合によっては当該演算プログラムを実行するシステムを導入することが必要でありコスト増加に繋がるので、特に半導体集積回路装置などの生産現場においては途中から採用しにくい。生産現場にあっては既存の設備やソフトウェアで対応できることが望ましい。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、コストをほとんど上昇させることなく露光ショット配列誤差を低減させることができる露光工程、およびそのためのフォトマスクを提供し、これにより1つの半導体装置の製造にショットエリアの大きさが異なる異種の露光装置を用いても、上下層のパターンレイヤの高精度な重ね合わせを実現させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために用いられる本発明に係るフォトマスクは、ガラス基板上の、露光光が照射されるショットエリアに、半導体装置の回路パターン形成領域と、前記ショットエリアの内側の周辺部に形成された露光ショットの配列誤差測定用マークとを備えたフォトマスクであって、前記露光ショットの配列誤差測定用マークは、互いに寸法または形状が異なるマークの対からなると共に、前記ショットエリア内に3対以上形成され、1対の前記マークのそれぞれが形成される前記ショットエリアにおける位置は、被処理基板上に2つの露光ショットを、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが形成された前記ショットエリアの所定部分が重なるように隣接して形成した時に、前記1対のマークのそれぞれが互いに重なる位置となる構成を有する。
【0015】
本フォトマスクのさらに具体的な形態においては、前記露光ショットの配列誤差測定用マークを構成する1対のマークのそれぞれが、前記半導体装置の回路パターン形成領域を挟んで互いに反対側の、対向する位置に形成される。
【0016】
また、前記半導体装置の回路パターン形成領域は、場合により前記ショットエリアに複数形成され、それぞれが同一の回路パターンを有する。
【0017】
本フォトマスクの望ましい形態は、前記ショットエリアが矩形であり、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが前記ショットエリア内に4対形成され、前記4対のマークを構成するそれぞれのマークは前記ショットエリアのコーナー部近傍に形成されているものである。そして、前記露光ショットの配列誤差測定用マークを構成する1対のマークをボックス・イン・ボックス構造またはバーズ・イン・バーズ構造とすることができる。
【0018】
次に上記課題を解決するための本発明に係る半導体装置の製造方法は、露光装置に上述の構成を有するフォトマスクを装着する工程と、前記露光装置を用いて被処理基板上に塗布されたレジスト膜に、互いに隣接する露光ショットを、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが形成された前記ショットエリアの所定部分が重なるように配列して露光し、現像により前記レジスト膜に前記露光ショットの配列誤差測定用マークを形成する工程と、前記レジスト膜に形成された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量を測定する工程と、前記測定された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量を上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差と見なし、測定された当該ズレに関する量に基づいて前記重ね合わせ誤差に関する誤差成分を算出する工程と、前記算出された重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出する工程とを含むものである。
【0019】
本発明に係る半導体装置の製造方法の一形態においては、前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量の測定を、前記被処理基板上に形成された露光ショットから選択された複数の露光ショットに対して行い、前記重ね合わせ誤差に関する誤差成分の算出を、上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせを行うEGA法の露光ショット配列計算モデル式を用いて行う。
【0020】
さらに、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の算出に用いる前記重ね合わせに関する誤差成分は露光ショットに関する重ね合わせ誤差成分であり、前記露光ショットに対するX−Y直交座標系を用いた時、回転誤差X成分Cy(rots)、回転誤差Y成分Cx(rots)、倍率誤差X成分Cx(mags)、倍率誤差Y成分Cy(mags)とすることができる。
【0021】
この時、前記重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出するための式は、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分を回転誤差X成分Xrot、回転誤差Y成分Yrot、倍率誤差X成分Xmag、倍率誤差Y成分Ymagとして、
Xrot=−(Cy(mags)−Cy(rots))/2
Yrot=−(Cx(mags)−Cx(rots))/2
Xmag=(Cx(mags)+Cx(rots))/2
Ymag=(Cy(mags)+Cy(rots))/2
である。
【0022】
また、本発明に係る製造方法において、前記レジスト膜に形成された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量の測定は、上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差に関する量を測定するために設けられた測定装置を用いて行うことができる。
【0023】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記算出された露光ショット配列誤差に関する各誤差成分の値が予め定められた基準を満たすか否かを判定する工程と、前記判定の結果、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値が前記基準を満たさない時は、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値に基づいて前記露光装置の露光ショット配列に関する制御パラメータを補正することにより、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値が前記基準を満たした状態で、前記露光装置が露光できるようにする工程とを含む形態とすることができる。
【0024】
本発明に係る半導体装置の製造方法はさらに、前記露光ショット配列誤差に関する各誤差成分の値が前記基準を満たした状態で露光できるようにされた前記露光装置および上記のフォトマスクを用いて、被処理基板上に塗布されたレジスト膜を露光した後現像して第1のパターンを形成する工程と、前記第1のパターンが形成されたレジスト膜を用いて前記被処理基板を加工し、前記被処理基板に前記第1のパターンを形成する工程と、上記のフォトマスクより上層の前記半導体装置の回路パターンの形成領域を備えた第2のフォトマスクを用いて、前記第1のパターンが形成された前記被処理基板上に塗布されたレジスト膜を露光した後現像して第2のパターンを形成する工程とを含む形態とすることができる。
【0025】
この形態においては、最初に述べたフォトマスクに対して用いる前記露光装置と前記第2のフォトマスクに対して用いる露光装置のショットエリアの大きさが互いに異なるものであってよい。あるいは、最初に述べたフォトマスクおよび前記第2のフォトマスクのそれぞれは、同一の回路パターンから構成される複数の前記半導体装置の回路パターン形成領域を有し、最初に述べたフォトマスクが備える前記半導体装置の回路パターン形成領域の数と前記第2のフォトマスクが備える前記半導体装置の回路パターン形成領域の数とは互いに異なるものであってよい。
【0026】
また、最初に述べたフォトマスクを用いて前記被処理基板上に塗布された前記レジスト膜を露光する工程を前記被処理基板に対する最初の露光工程とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明による製造方法のうち、露光ショット配列誤差測定用マークを用いて測定されたズレに関する量に基づいて重ね合わせ誤差に関する誤差成分を算出する工程は、重ね合わせ誤差の算出、評価用として製造ラインに常設されているシステム、演算プログラムを利用して行うことができ、従って上記ズレに関する量の測定も製造ラインに常設されている重ね合わせ誤差測定用の装置を利用することができる。また重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出する式は、具体的には簡単な四則演算式である。
【0028】
このため、本発明はコストをほとんど上昇させることなく露光ショット配列誤差を低減させることができ、1種類の半導体装置の製造にショットエリアの大きさが異なる露光装置を用いても上下のマスクパターンレイヤの高精度な重ね合わせが実現できる。また本発明に係るフォトマスクはショットエリア内に3対以上の露光ショット配列誤差測定用マークを備えているので、露光ショット内の重ね合わせ誤差と見なした時の誤差成分を容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るフォトマスク上のパターンレイアウトを示す平面図。
【図2】本発明に係るフォトマスクを用いた露光ショット配列を示す図。
【図3】露光ショット配列誤差または重ね合わせ誤差の誤差成分を説明する図。
【図4】露光ショット配列の回転誤差X成分と露光ショット配列誤差測定用マークのズレとの関係を示す図。
【図5】露光ショット配列の回転誤差Y成分と露光ショット配列誤差測定用マークのズレとの関係を示す図。
【図6】露光ショット配列の倍率誤差X成分と露光ショット配列誤差測定用マークのズレとの関係を示す図。
【図7】露光ショット配列の倍率誤差Y成分と露光ショット配列誤差測定用マークのズレとの関係を示す図。
【図8】本発明に係る露光ショット配列誤差の各誤差成分算出法の検証結果を示す図。
【図9】本発明に係る露光ショット配列誤差の各誤差成分算出法の検証結果を示す図。
【図10】本発明に係るフォトリソ工程を示すフローチャート。
【図11】露光ショット配列誤差に起因する問題点を示す図。
【図12】従来のレチクルの平面図。
【図13】従来のショットエリア配列を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るフォトリソ工程の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
(フォトマスク)
図1は本発明に係るフォトリソ工程で使用するフォトマスク上のパターンレイアウトの一例を示す図である。このパターンはガラス基板上に形成されており、露光光が照射されるフォトマスク上の矩形をした領域101はウェーハに形成されたレジストが1回の露光で露光されるショットエリアに対応するので、以降便宜的にショットエリア101ということにする。このフォトマスクの例ではショットエリア101内の中央部に、完成品として機能する半導体デバイスの回路全体が形成される回路パターン形成領域102が3行1列で繰り返し配置される。この3個の半導体デバイスの回路パターン形成領域102からなる群の周囲であり、またショットエリア101の周辺部でもある位置の各辺に沿って露光ショット配列誤差測定用のマークが複数設けられる。なお図示していないが上層および下層マスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差測定用のマークは別途これとは異なる箇所に設けられる。
【0032】
露光ショット配列誤差測定用のマークは、上層と下層のフォトマスクパターンの重ね合わせズレ量を測定するための、一般的に知られたマークと同一の構造、いわゆるボックス・イン・ボックス構造を有するものであり、アウターマークOM1、OM2、OM3、OM4、およびインナーマークIM1、IM2、IM3、IM4で構成される。本フォトマスクは、3個の回路パターン形成領域102の群を挟んで互いに対向するアウターマークとインナーマークの対4組(OM1、IM3)、(OM2、IM4)、(OM3、IM1)、(OM4、IM2)を有する。
【0033】
これらのマークは少なくとも矩形、通常正方形であり、図のように正方形の対角線の交点をその中心とする。本発明の実施形態ではマークをボックス・イン・ボックス構造としているが、いわゆるバーズ・イン・バーズ構造など他の形態を有するものでもよい。
【0034】
アウターマークおよびインナーマークの各位置は、ショットエリア101の辺に平行な軸を有するX−Y座標系(図1参照)を設定し、各マークの中心座標で表すと下記の通りとなる。
【0035】
アウターマーク インナーマーク
OM1 (X4、Y3) IM1 (X4、Y2)
OM2 (X2、Y4) IM2 (X3、Y4)
OM3 (X1、Y2) IM3 (X1、Y3)
OM4 (X3、Y1) IM4 (X2、Y1)
各マークの中心位置の座標が以上のようになることから、インナーマークIM2の中心とアウターマークOM4の中心を結んだ直線、およびインナーマークIM4の中心とアウターマークOM2の中心を結んだ直線はショットエリア101のY軸方向の辺と平行である。また、インナーマークIM3の中心とアウターマークOM1の中心を結んだ直線、およびインナーマークIM1の中心とアウターマークOM3の中心を結んだ直線はショットエリア101のX軸方向の辺と平行である。従って上記4本の直線で形成される四辺形はショットエリア101と平行な辺を有する矩形となる。
【0036】
また、インナーマークIM2の中心とアウターマークOM2の中心を結んだ直線、およびインナーマークIM4の中心とアウターマークOM4の中心を結んだ直線はショットエリア101のX軸方向の辺と平行であり、インナーマークIM3の中心とアウターマークOM3の中心を結んだ直線、およびインナーマークIM1の中心とアウターマークOM1の中心を結んだ直線はショットエリア101のY軸方向の辺と平行である。従って上記4本の直線で形成される四辺形はショットエリア101と平行な辺を有する矩形となる。インナーマーク、アウターマークとも図1に示すようにショットエリア101の各コーナー部近傍に配置するのが望ましい。
【0037】
次にフォトマスクに形成された各パターンの相対的位置関係を説明すると、回路パターン形成領域102間のY軸方向の間隔はdで等しい。またインナーマーク1M2またはアウターマークOM2の中心と回路パターン形成領域102との距離d1、およびインナーマークIM4またはアウターマークOM4と回路パターン形成領域102との距離d2の和d1+d2はdとなるように設計されている。このことにより、例えば図1のショットにおけるアウターマークOM4およびインナーマークIM4の中心が、それぞれ当該ショットの下方に隣接するショットにおけるインナーマークIM2およびアウターマークOM2の中心に一致するよう配列された場合には、当該ショットの回路パターン形成領域102と下方に隣接するショットの回路パターン形成領域102との距離がdとなる。このようにして、ウェーハ全面に渡ってすべての回路パターン形成領域102をY軸方向に等距離dで配置することができる。
【0038】
また、回路パターン形成領域102とインナーマークIM3の中心およびアウターマークOM3の中心との距離はw1、アウターマークOM1の中心およびインナーマークIM1の中心との距離はw2に設定されている。従って図1のショットにおけるアウターマークOM1およびインナーマークIM1の中心が、それぞれ例えば当該ショットの右側に隣接するショットにおけるインナーマークIM3およびアウターマークOM3の中心に一致するように配列された場合は、当該ショットの回路パターン形成領域102と右側に隣接するショットの回路パターン形成領域102との距離はw1+w2となる。このようにしてウェーハ全面に渡ってすべての回路パターン102をX軸方向に等距離w1+w2で配置することができる。
【0039】
(露光工程におけるショット配列方法)
図2は、図1に示したフォトマスクを用いてウェーハ表面上に塗布されたレジストを露光する時、どのように露光ショットを配列していくか、その露光ショットの設計上の配列を示す図である。図2では注目する露光ショットsとその四方に配置する露光ショットa、b、c、dのみを示し、また煩雑性を避けるために重要性の低いマークの符号は省略している。必要な場合は図1を参照することによって理解できる。図2に示すようにショット配列誤差測定用マークが形成されたショットエリアの部分を各ショットエリアについて互いに重ねて露光し、露光ショットを配列する。
【0040】
具体的に説明すると、露光ショットsの上方に隣接する露光ショットaの配列については、露光ショットsのインナーマークIM2(s)の中心と露光ショットaのアウターマークOM4(a)の中心が一致し、且つ露光ショットsのアウターマークOM2(図1)の中心と露光ショットaのインナーマークIM4の中心が一致するように配列する。露光ショットsの左に隣接する露光ショットbの配列については、露光ショットsのインナーマークIM3(s)の中心と露光ショットbのアウターマークOM1(b)の中心が一致し、且つ露光ショットsのアウターマークOM3(図1)の中心と露光ショットbのインナーマークIM1の中心が一致するように配列する。
【0041】
露光ショットsの下方に隣接する露光ショットcの配列については、露光ショットsのインナーマークIM4(s)の中心と露光ショットcのアウターマークOM2(c)の中心が一致し、且つ露光ショットsのアウターマークOM4(図1)の中心と露光ショットcのインナーマークIM2の中心が一致するように配列する。露光ショットsの右に隣接する露光ショットdの配列については、露光ショットsのインナーマークIM1(s)の中心と露光ショットdのアウターマークOM3(d)の中心が一致し、且つ露光ショットsのアウターマークOM1(図1)の中心と露光ショットdのインナーマークIM3の中心が一致するように配列する。
【0042】
上記ショット配列で露光し、現像したレジストパターンも図2と同じショット配列を有する。こうして形成されるレジストパターン上の露光ショット配列誤差測定用マークは8個すべてがアウターマークにインナーマークを内蔵する形状となり、どの露光ショット間の重ね合わせによって形成されたかは見かけ上特定できないが、後に説明する通り、予め決定した図2に示す円内の4箇所のマーク対を露光ショット配列誤差測定に使用する。
【0043】
以上の露光ショット配列方法から分かるように、本発明によるフォトマスクの露光ショット配列誤差測定用マークは次のような特徴を有する。すなわち露光ショット配列誤差測定用マークは互いにサイズや形状が異なる2個のマークの対を構成する。そして図2に示したように、露光ショット配列誤差測定用マークが形成されたショットエリアの所定部分が重なるように隣接する露光ショットが被処理基板上に配列されるのであるが、この時前記マークの対のそれぞれが互いに重ね合わさるようにフォトマスク上に配置される。さらにフォトマスクにはこの対が3対以上設けられる。
【0044】
(露光ショット配列誤差の算出方法)
図2に示す露光ショット配列は理想としての設計上の配列であるからすべてのアウターマークとインナーマークの中心が一致するが、現実の露光ショット配列ではト配列誤差が存在するために中心が一致せず、アウターマークとインナーマークの中心にズレが生ずる。本発明に係る露光ショット配列誤差の算出方法は第1に、図2に示すような所定のアウターマークとインナーマークの複数(4つ)の組み合わせ(IM2(s)、OM4(a))、(IM3(s)、OM1(b))、(IM4(s)、OM2(c))、(IM1(s)、OM3(d))につきそれらマークの中心の相対的位置ズレ量を測定するステップを含む。
【0045】
測定された相対的位置ズレ量は当然のことながら露光ショット配列誤差に起因するものであるが、本発明による露光ショット配列誤差の算出方法は第2に、このズレ量を上層および下層のマスクパターンレイヤ間の重ね合わせズレ量とみて、上記相対的位置ズレ量の測定値から重ね合わせ誤差に関する複数の誤差成分を求めるステップを含む。この複数の誤差成分は、それらを合成することによって元の誤差を再現できるものである。図2を参照すると、露光ショットa、b、c、dを下層のマスクパターンレイヤとみなし、露光ショットsを下層マスクパターンレイヤに重ね合わせるべき上層マスクパターンレイヤとみなすことができる。フォトマスクパターンの重ね合わせを行う時、例えば下層のマスクパターンレイヤのアウターマークに上層のマスクパターンレイヤのインナーマークを合わせるのが普通であり、従って重ね合わせズレ量とみなして測定するときは、露光ショットsのインナーマーク位置にある円内のマークの組み合わせを使用することになる。
【0046】
また、重ね合わせズレ量とした測定結果から重ね合わせ誤差に関する複数の誤差成分を求める方法として、本発明においては例えば露光工程において上層および下層のマスクパターンレイヤ間の重ね合わせを行うエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)の手法を用いることができる。EGA方式の基本的な考え方は、ウェーハ上に2次元状に配列形成された下層マスクパターンレイヤに関する露光ショットのうち、複数の露光ショットを選択し、選択された露光ショットについて実測した重ね合わせズレ結果を統計処理してウェーハ上の全露光ショットの配列を求め、この配列に従って上層マスクパターンレイヤに関する露光ショットの位置合わせを行うものである。
【0047】
最も基本的なEGA方式では、ウェーハ自体の露光装置ステージ上での回転誤差、ステージ座標系またはショット配列の直交度誤差(配列の菱形変形誤差)、ウェーハの伸縮誤差(倍率誤差)、ウェーハのオフセット(ウェーハの露光装置ステージ上での所定位置からの平行位置ズレ)など、ウェーハ上全体としての配列、および設計上の配列からの配列誤差成分を求めることができる。しかしながら露光工程において、ショットエリアの大きさが異なる露光装置を混用したときには、実際にはウェーハ全体としての露光ショット配列誤差よりも露光ショット領域自体の変形に基づいて隣接する露光ショットとの間で発生する相対的配列ズレのほうが、上層マスクパターンレイヤの重ね合わせズレに対する影響が大きいと考えられる。
【0048】
このことから上記ウェーハレベルの誤差に加えて、本発明では少なくとも重ね合わせ誤差成分として露光ショット領域自体の回転誤差、直交度誤差(露光ショット領域自体の菱形変形)、線形伸縮誤差(倍率誤差)をも考慮したEGA方式の手法を用いる。本発明に係るフォトマスクは図2に示したように、アウターマークおよびインナーマークの中心の相対的位置ズレ量の測定に円内の4個の露光ショット配列誤差測定用マーク、すなわち少なくともショットエリア101内に3個のマーク対を備えているので露光ショット領域自体の誤差も考慮したEGA方式を用いることが可能である。
【0049】
このEGA方式において、重ね合わせ誤差としての各種誤差成分を求めるための代表的なモデルが10パラメータ線形モデルである。計算式は以下のように表される。ズレ量や各マークの中心の位置はX−Y直交座標系で表される。
【0050】
ΔX=Cx(magw)Xw+Cx(rotw)Yw+Cx(mags)Xs+Cx(rots)Ys+Cx00 ・・・・・ (1)
ΔY=Cy(rotw)Xw+Cy(magw)Yw+Cy(rots)Xs+Cy(mags)Ys+Cy00 ・・・・・ (2)
【0051】
ここで
ΔX、ΔY:露光ショット配列誤差測定用マークで測定した相対的位置ズレ量のX成分およびY成分
Xw、Yw:ウェーハ中心を原点としたマーク中心位置のX座標およびY座標
Xs、Ys:露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のX座標およびY座標
Cx(magw):ウェーハレベルの倍率誤差のX成分
Cx(rotw):ウェーハレベルの回転誤差のY成分
Cx(mags):露光ショットの倍率誤差のX成分
Cx(rots):露光ショットの回転誤差のY成分
Cx00:オフセットのX成分
Cy(magw):ウェーハレベルの倍率誤差のY成分
Cy(rotw):ウェーハレベルの回転誤差のX成分
Cy(mags):露光ショットの倍率誤差のY成分
Cy(rots):露光ショットの回転誤差のX成分
Cy00:オフセットのY成分
【0052】
ウエハレベルの直交度誤差についてはCx(rotw)、Cy(rotwf)、露光ショットの直交度誤差についてはCx(rots)、Cy(rots)により計算される。上記の式(1)、(2)の10個のパラメータ、Cx(magw)、Cx(rotw)、Cx(mags)、Cx(rots)、Cx00、Cy(magw)、Cy(rotw)、Cy(mags)、Cy(rots)、Cy00が重ね合わせに対する誤差成分となる。これら誤差成分はEGA方式によれば次のようにして具体的に求められる。
【0053】
すなわち、ウェーハ上に塗布したレジストに形成された露光ショットのうち、予め決められた露光ショットを複数個選択し、それぞれの露光ショットについてアウターマークおよびインナーマークの中心の相対的位置ズレ量のX成分ΔX、Y成分ΔYを、図2に示す円内の4個の組み合わせマークに対して測定する。測定の対象とした全ての露光ショット内マークの中心位置のX座標およびY座標Xw、Yw、Xs、Ysは既知であるから、これらの位置座標と対応するΔX、ΔYとを式(1)および(2)に代入して連立方程式を構成し、ΔX、ΔYの二乗の総和が最小となる条件下で演算を行い、10個のパラメータ値(誤差成分値)を決定する。
【0054】
以上、重ね合わせ誤差に関する各種誤差成分を求めるための計算モデル式としての10パラメータ線形モデル式および当該式を用いた誤差成分算出方法を述べた。しかしこれ以外のモデル式として、マーク中心位置に関するウェーハレベルのX座標およびY座標の2次以上の項を含むより精密な高次非線形計算モデルも、露光ショットに関する誤差成分としてのパラメータを含むものであれば使用することができる。
【0055】
このように決定される上下層マスクパターンレイヤの重ね合わせに関する10個の誤差成分のうち、回転誤差成分Cx(rots)、Cy(rots)、倍率誤差成分Cx(mags)、Cy(mags)は露光ショット内の重ね合わせ誤差を支配する成分である。これらの量の意味は式(1)、(2)の形から理解されるが定性的に説明すると次のようになる。図3は露光ショットの回転誤差成分および倍率誤差成分の概念を図式的に示したものであり、点線の矩形は下層のパターンに正確に重ね合わせが実現したときの上層のパターンに関する設計上のショットエリア配置を示す。図においてX−Y座標軸の原点を露光ショットの中心にとっている。
【0056】
重ね合わせの回転誤差成分は図3(a)左端図のように座標軸の原点を中心にして設計上の配置から微小な回転がかかったとみなされる位置ズレである。この回転誤差は回転誤差X成分と回転誤差Y成分に分解され、回転誤差X成分は図3(a)中央図のようにX軸のみがX‘軸の位置まで回転することによってY軸方向に菱形変形を起こす成分である。従って露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のX座標をXsとすると回転誤差X成分によるマーク中心位置のY軸方向へのズレ量はCy(rots)Xsとなる。
【0057】
また回転誤差Y成分は図3(a)右端図のようにY軸のみがY‘軸の位置まで回転することによってX軸方向に菱形変形を起こす成分である。従って露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のY座標をYsとすると回転誤差Y成分によるマーク中心位置のX軸方向へのズレ量はCx(rots)Ysとなる。これで分かるようにCx(rots)、Cy(rots)は角度の単位(rad)を持つ。なお、上記モデル式から計算される回転誤差X成分およびY成分を合成しても図3(a)左端図に示すような真の回転誤差とならない場合があるが、それはX成分、Y成分いずれかに余分な誤差が含まれているためであり、この余剰誤差が純粋な菱形変形である直交度誤差とみなされる。
【0058】
次に重ね合わせの倍率誤差は図3(b)左端図のように設計上のサイズから座標軸の原点を中心にして伸縮がかかったものとみなされるズレである。この倍率誤差は倍率誤差X成分と倍率誤差Y成分とに分解されることは明らかである。露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のX座標をXsとすると倍率誤差X成分によるマーク中心位置のX軸方向へのズレ量はCx(mags)Xsとなり、また露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のY座標をYsとすると倍率誤差Y成分によるマーク中心位置のY軸方向へのズレ量はCy(mags)Ysとなる。従ってCx(mags)、Cy(mags)は倍率の単位(例えばppm)を持つことが分かる。
【0059】
以上は重ね合わせ誤差成分についての説明であるが、図3(a)、(b)に示した回転誤差成分、倍率誤差成分は露光ショット配列誤差の誤差成分についても成り立つ。露光ショット配列誤差の場合、図の点線で示す矩形はウェーハ上のレジストに露光された設計上の露光ショット領域となる。そして回転誤差は図3(a)では露光ショットの設計上の配置からX−Y座標軸の原点を中心にして微小回転ズレを起こして配置される誤差であり、この誤差を有したまま露光ショットが一定のピッチでウェーハ全面に縦横に配列されることになる。
【0060】
回転誤差成分はX成分およびY成分で構成され、それぞれ露光ショット領域の菱形変形である。回転誤差X成分が現れると露光ショット領域の左右の辺は露光ショット領域の中心を原点とし、Y軸に沿って互いに反対方向へ同距離だけずれる。従って例えば注目している露光ショットの右辺とその右側に隣接する露光ショットの左辺とは相対的に反対方向にずれ、その相対的ズレ量はX軸に対する辺のズレ量の2倍である。回転誤差Y成分が現れたときもX軸に沿って露光ショットの上下の辺が同様なずれ方をする。
【0061】
露光ショット配列の倍率誤差は図3(b)によればX−Y座標軸の原点を中心にして設計上の配置から露光ショット領域の伸縮ズレを起こして配置される誤差であり、この誤差を有したまま露光ショットが一定のピッチでウェーハ全面に縦横に配列されることになる。倍率誤差成分はX成分およびY成分で構成され、それぞれ露光ショット領域のX軸方向、Y軸方向への伸縮である。倍率誤差X成分が現れると露光ショット領域の左右の辺は露光ショット領域の中心を原点とし、X軸に沿って互いに反対方向へ同距離だけ伸縮する。従って例えば注目している露光ショットの右辺とその右側に隣接する露光ショットの左辺とは相対的に反対方向にずれ、その相対的ズレ量はY軸に対する辺のズレ量の2倍である。倍率誤差Y成分が現れたときもY軸に沿って露光ショットの上下の辺が同様なずれ方をする。
【0062】
本発明に係る露光工程では、重ね合わせ誤差に関するモデル計算式からその誤差に対応する誤差成分を求めることを述べたが、本発明に係るフォトマスクに配置された露光ショット配列誤差測定用のマークの計測から求められる重ね合わせに関する回転、倍率などの誤差成分と露光ショット配列に関する回転、倍率などの誤差成分はその値が異なるため、上記計算式から得られた各誤差成分から露光ショット配列の各誤差成分に換算しなければならない。露光ショット配列に関する、回転誤差X成分:Xrot、回転誤差Y成分:Yrot、倍率誤差X成分:Xmag、倍率誤差Y成分:Ymagを求める式は結果として、
Xrot=−(Cy(mags)−Cy(rots))/2 ・・・・・(3)
Yrot=−(Cx(mags)−Cx(rots))/2 ・・・・・(4)
Xmag=(Cx(mags)+Cx(rots))/2 ・・・・・(5)
Ymag=(Cy(mags)+Cy(rots))/2 ・・・・・(6)
となる。次にこれらの式につき図4〜図7を用いて説明する。
【0063】
図4は、露光ショット配列に回転誤差X成分のみが生じた場合にレジスト上に転写された露光ショット配列誤差測定用のインナーマークおよびアウターマークの位置ズレ状態を示す図である。図は位置ズレを明確にするためにマーク寸法を強調した模式図であり、現実のパターンを示すものではない。またこの図は、図2において配列の回転誤差X成分が生じた状態を示すもので、注目する露光ショットsの左右上下に隣接して図2の露光ショットa、b、c、dが配列されている。これらは図5〜図7についても同様である。
【0064】
図4において回転誤差X成分がある場合、露光ショットsは設計上の露光ショット103から菱形変形をし、それに伴い、露光ショットsの中心Cを中心としてインナーマークIM1(s)、IM2(s)はX−Y座標系のY軸の正方向、IM3(s)、IM4(s)はY軸の負方向へ設計位置から移動する。露光ショット配列においては露光ショットsの右側に隣接する露光ショットd、左側に隣接する露光ショットbも同様に変形するのでアウターマークOM3(d)はY軸の負方向に、OM1(b)はY軸の正方向に移動し、IM1(s)の中心P1とOM3(d)の中心Q1、およびIM3(s)の中心P3とOM1(b)の中心Q3にそれぞれ相対的位置ズレが生じる。
【0065】
また、露光ショットsの上側に隣接する露光ショットa、および下側に隣接する露光ショットcも同様に変形するが、露光ショットsのIM2(s)と露光ショットaのOM4(a)は共にY軸の正方向に同量移動し、また露光ショットsのIM4(s)と露光ショットcのOM2(c)は共にY軸の負方向に同量移動する。このためIM2(s)の中心P2とOM4(a)の中心Q2、およびIM4(s)の中心P4とOM2(c)の中心Q4は一致したままとなる。
【0066】
これに対し、露光ショットsに重ね合わせに関する回転誤差X成分が生じたと想定した場合は、下層パターンレイヤのマークとみなされるOM3(d)、OM4(a)それぞれに対し、IM1(s)、IM2(s)が共にY軸の正方向に移動し、OM1(b)、OM2(c)それぞれに対しIM3(s)、IM4(s)が共にY軸の負方向に移動する。このように同じ誤差成分であっても露光ショット配列誤差と重ね合わせ誤差ではマークの相対的位置ズレの挙動が異なるのである。
【0067】
図4のマーク配置を重ね合わせによって生じた誤差とみなした場合、下層パターンレイヤ(露光ショットa、b、c、d)の4つのマークの中心で構成される四角形Q1Q2Q3Q4(四角形104)の各頂点に上層パターンレイヤ(露光ショットs)の4つのマークの中心を合わせるようにすべきところ、四角形P1P2P3P4(四角形105)で示される重ね合わせ誤差が生じたことになる。式(1)および(2)はこのようなインナーマークの中心P1、P2、P3、P4の重ね合わせ誤差分布に対応したパラメータ、すなわち誤差成分を算出するものである。四角形105の4辺は四角形104の4辺に対して回転角を有しているため露光ショット配列に関する回転誤差X成分は重ね合わせ誤差の反時計回りの回転誤差X成分Cy(rots)を含む。しかし四角形104の辺Q1Q2、辺Q3Q4に対し四角形105の辺P1P2、辺P3P4がY軸方向に収縮していることから、露光ショット配列に関する回転誤差X成分は重ね合わせに関する負の倍率誤差Y成分Cy(mags)を含む。従って露光ショット配列の回転誤差X成分はCy(rots)−Cy(mags)に比例し、この値は図3を参照して説明したように露光ショット配列の回転誤差X成分の2倍であるから、
Xrot=−(Cy(mags)−Cy(rots))/2
となる。
【0068】
図5は、露光ショット配列に回転誤差Y成分のみが生じた場合にレジスト上に転写された露光ショット配列誤差測定用のインナーマークおよびアウターマークの位置ズレ状態を示す図であり、回転誤差X成分と同様に説明できる。図5において露光ショットsはX軸方向の菱形変形をし、露光ショットsの中心Cを中心としてインナーマークIM2(s)、IM3(s)はX軸の負方向、IM1(s)、IM4(s)はX軸の正方向へ設計位置から移動する。露光ショットsの上側に隣接する露光ショットa、下側に隣接する露光ショットcも同様に変形し、アウターマークOM4(a)はX軸の正方向に、OM2(c)はX軸の負方向に移動し、点P2と点Q2、および点P4と点Q4にそれぞれ相対的位置ズレが生じる。
【0069】
また、露光ショットsの右側に隣接する露光ショットd、および左側に隣接する露光ショットbも同様に変形するが、露光ショットsのIM1(s)と露光ショットdのOM3(d)は共にX軸の正方向に同量移動し、また露光ショットsのIM3(s)と露光ショットbのOM1(b)は共にX軸の負方向に同量移動する。このため点P1と点Q1、および点P3と点Q3は一致したままとなる。
【0070】
図5のマーク配置を重ね合わせによって生じた誤差とみなした場合、下層パターンレイヤ(露光ショットa、b、c、d)の4つのマークの中心で構成される四角形Q1Q2Q3Q4(四角形106)に対して上層パターンレイヤ(露光ショットs)の4つのマークの中心で構成される四角形P1P2P3P4(四角形107)の重ね合わせ誤差が生じたことになる。四角形107の4辺は四角形106の4辺に対して回転角を有しているため露光ショット配列に関する回転誤差Y成分は重ね合わせ誤差の反時計回りの回転誤差Y成分Cx(rots)を含む。しかし辺Q2Q3、辺Q4Q1に対し辺P2P3、辺P4P1がX軸方向に収縮していることから、露光ショット配列に関する回転誤差Y成分は重ね合わせに関する負の倍率誤差X成分Cx(mags)を含む。従って露光ショット配列の回転誤差Y成分はCx(rots)−Cx(mags)に比例し、この値は図3を参照して説明したように露光ショット配列の回転誤差Y成分の2倍であるから、
Yrot=−(Cx(mags)−Cx(rots))/2
となる。
【0071】
図6は、露光ショット配列に倍率誤差X成分のみが生じた場合にレジスト上に転写された露光ショット配列誤差測定用のインナーマークおよびアウターマークの位置ズレ状態を示す図である。図6において、露光ショットsは設計上の露光ショット103から露光ショットsの中心Cを中心としてX軸に沿い互いに反対方向に伸縮するが、図は伸張する場合を示す。これに伴い、前記中心Cを中心としてインナーマークIM1(s)、IM2(s)はX軸の正方向、IM3(s)、IM4(s)はX軸の負方向へ設計位置から移動する。露光ショットsの右側に隣接する露光ショットd、左側に隣接する露光ショットbも同様に伸張するのでアウターマークOM3(d)はX軸の負方向に、OM1(b)はX軸の正方向に移動し、点P1と点Q1、および点P3と点Q3にそれぞれ相対的位置ズレが生じる。
【0072】
また、露光ショットsの上側に隣接する露光ショットa、および下側に隣接する露光ショットcも同様な伸張をするが、露光ショットsのIM2(s)と露光ショットaのOM4(a)は共にX軸の正方向に同量移動し、また露光ショットsのIM4(s)と露光ショットcのOM2(c)は共にX軸の負方向に同量移動する。このため点P2と点Q2、および点P4と点Q4は一致したままとなる。
【0073】
図6のマーク配置を重ね合わせによって生じた誤差とみなした場合、下層パターンレイヤ(露光ショットa、b、c、d)の4つのマークの中心で構成される四角形Q1Q2Q3Q4(四角形108)に対して上層パターンレイヤ(露光ショットs)の4つのマークの中心で構成される四角形P1P2P3P4(四角形109)の重ね合わせ誤差が生じたものと考えることができる。四角形108の辺Q2Q3、辺Q1Q4の長さに対し四角形109の辺P2P3、辺P1P4の長さがX軸方向に伸張しており、露光ショット配列に関する倍率誤差X成分は重ね合わせに関する倍率誤差X成分Cx(mags)を含む。しかし四角形109の4辺は四角形108の4辺に対して回転角を有しているため、露光ショット配列に関する倍率誤差X成分は重ね合わせ誤差に関する反時計回りの回転誤差Y成分Cx(rots)を含む。従って露光ショット配列に関する倍率誤差X成分はCx(mags)+Cx(rots)に比例し、この値は図3を参照して説明したように露光ショット配列の回転誤差X成分の2倍であるから、
Xmag=(Cx(mags)+Cx(rots))/2
となる。
【0074】
図7は、露光ショット配列に倍率誤差Y成分のみが生じた場合にレジスト上に転写された露光ショット配列誤差測定用のインナーマークおよびアウターマークの位置ズレ状態を示す図であり、倍率誤差X成分と同様に説明できる。この場合露光ショットsは露光ショットsの中心Cを中心としてY軸に沿い互いに反対方向に伸縮するが、図は伸張する場合を示す。インナーマークIM2(s)、IM3(s)はY軸の正方向、IM1(s)、IM4(s)はY軸の負方向へ設計位置から移動する。露光ショットsの上側に隣接する露光ショットa、下側に隣接する露光ショットcのそれぞれにおいてアウターマークOM4(a)はY軸の負方向に、OM2(c)はY軸の正方向に移動し、こうして点P2と点Q2、および点P4と点Q4にはそれぞれ倍率誤差Y成分による相対的位置ズレが生じる。
【0075】
また、露光ショットsの右側に隣接する露光ショットd、および左側に隣接する露光ショットbも同様に伸張をするが、露光ショットsのIM1(s)と露光ショットdのOM3(d)は共にY軸の負方向に同量移動し、また露光ショットsのIM3(s)と露光ショットbのOM1(b)は共にY軸の正方向に同量移動する。このため点P1と点Q1、および点P3と点Q3は一致したままとなる。
【0076】
図7のマーク配置を重ね合わせによって生じた誤差とみなした場合、下層パターンレイヤ(露光ショットa、b、c、d)の4つのマークの中心で構成される四角形Q1Q2Q3Q4(四角形110)に対して上層パターンレイヤ(露光ショットs)の4つのマークの中心で構成される四角形P1P2P3P4(四角形111)の重ね合わせ誤差が生じたことになる。四角形110の辺Q1Q2、辺Q3Q4の長さに対し四角形111の辺P1P2、辺P3P4の長さがY軸方向に伸張していることから、露光ショット配列に関する倍率誤差Y成分は重ね合わせに関する倍率誤差Y成分Cy(mags)を含む。しかし四角形111の4辺は四角形110の4辺に対して回転角を有しているため、露光ショット配列に関する倍率誤差Y成分は重ね合わせ誤差に関する反時計回りの回転誤差X成分Cy(rots)を含む。従って露光ショット配列の倍率誤差y成分はCy(mags)+Cy(rots)に比例し、この値は図3を参照して説明したように露光ショット配列の回転誤差X成分の2倍であるから、
Ymag=(Cy(mags)+Cy(rots))/2
となる。
【0077】
(露光ショット配列誤差の算出方法の検証)
図8および図9は、本発明による露光ショット配列誤差算出方法の検証結果を示すグラフである。図8は、露光装置に露光ショット配列制御パラメータとしてその配列に関する回転誤差X成分(Xrot0)、Y成分(Yrot0)、倍率誤差X成分(Xmag0)、Y成分(Ymag0)の値を故意に入力して設定することにより配列誤差が生じるようにした後、前述の本発明に係るフォトマスクを用いて形成したレジストパターン上の露光ショット配列誤差測定用マークにより上記誤差に基づくマークのズレ量を測定し、測定されたマークのズレ量からEGA方式のモデル計算式を用いて重ね合わせに関する回転誤差X成分(Cy(rots))、Y成分(Cx(rots))、倍率誤差X成分(Cx(mags))、Y成分(Cy(mags))を求めた結果を示す。
【0078】
図8の横軸は露光装置の配列誤差設定条件であり、縦軸は求められた各誤差成分値である。各誤差成分値のプロットはその垂直下方に示された露光装置設定条件表の4つの誤差成分の1つの組み合わせに対応する。図からわかるように設定された露光ショット配列に関する誤差成分と重ね合わせとしてみた誤差成分とは必ずしも一致しない。
【0079】
図9は、求められた重ね合わせに関する各誤差成分(図8)を用い、上に説明した式(3)〜(6)を用いて算出した露光ショット配列誤差成分Xmag、Ymag、Xrot、Yrotと、露光装置に故意に入力・設定した露光ショット配列誤差成分の組み合わせとの関係を示す。横軸は図8と同じであり、縦軸は算出された露光ショット配列誤差成分値である。図9のように配列誤差の設定値と算出された値との一致は良好であり、本発明に係るフォトマスクおよび算出方法によって露光ショット配列誤差の各成分をほぼ正しく求めることができる。
【0080】
(フォトリソ工程)
以上に説明した本発明に係る露光ショット配列誤差成分算出方法を一工程として含むフォトリソ工程を次に説明する。図10は本発明によるフォトリソ工程を示す代表的な工程フロー図である。まず、図1に示したフォトマスク(レチクル)を準備し、露光装置のレチクルステージに装着する(工程S1)。露光装置はステップ・アンド・スキャン方式の縮小投影型露光装置(スキャナ)であり、フォトマスクはウェーハに最初の露光工程を行うための最下層(第1層)パターンレイヤのものとする。次に未だ半導体集積回路パターンが形成されていないシリコンからなるウェーハ上にレジスト膜を塗布し、図1のフォトマスク上に繰り返し配列された複数の回路パターン形成領域102および8個の露光ショット配列誤差測定用マーク(IM1〜IM4、OM1〜OM4)をスキャナを用いてレジスト膜に転写し、現像する(工程S2)。この時のウェーハはロットを構成する複数のウェーハのうちの少なくとも特定の一つとする。
【0081】
またこの工程では図2に示すように、露光ショット上の各マークが互いに隣接して配列される露光ショットの対応するマークと重なるように露光することによって露光ショットを配列していく。これによりショットエリアの各マークが形成された領域は通常スクライブレーンとなる。
【0082】
次に、パターン形成されたウェーハを例えばコータ・デベロパ内に配置された重ね合わせ測定装置に搬送し、この重ね合わせ測定装置で例えば図2に示す円内の4個の露光ショット配列誤差測定用マークの組のそれぞれについて、露光ショット配列誤差に起因して発生した相対的位置ズレに関する量を測定する(工程S3)。この重ね合わせ測定装置は、フォトリソ工程において上層および下層のマスクパターンレイヤ間の例えばアライメントマーク位置ズレ量のような重ね合わせ誤差に関する量を測定するためにフォトリソ工程ラインに標準的に設けられたものである。
【0083】
マークの相対的位置ズレ量を測定するための露光ショットの数およびウェーハ上の位置は予め決められており、露光ショット数は5ショット以上、望ましくは10ショット〜30ショット程度であり、ウェーハ上にできる限り均一に分布するように選択する。また重ね合わせ測定装置はこの例ではコータ・デベロパにインライン接続されたものであるが、露光系のラインと切離されたオフラインの装置であってもよい。
【0084】
次いで、マークの相対的位置ズレ量の測定データをLANなどを通じて例えば露光装置が具備する露光制御装置に伝達し、測定データを元に式(1)、(2)などのEGAの計算式を用いた複雑な演算を露光制御装置を通じて実施し、上下のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差に関する回転誤差X成分Cy(rots)、Y成分Cx(rots)、倍率誤差X成分Cx(mags)、Y成分Cy(mags)を求める(工程S3)。続いて露光制御装置により、求めた重ね合わせに関する各種誤差成分値を式(3)〜(6)に代入して1組の露光ショット配列誤差成分Xmag、Ymag、Xrot、Yrotを算出する(工程S4)。
【0085】
次に得られた配列誤差の各成分を、半導体集積回路の製造歩留りや電気特性の許容範囲などから予め定められた露光ショット配列誤差成分の基準値と比較して露光ショット配列の良否を判定する(工程S5)。そして算出した誤差成分のすべてが基準値以下となっていれば、露光装置の露光ショット配列を制御するパラメータを補正せずに少なくとも前記露光ショット配列誤差成分算出に用いたウェーハ以外の、そのロットに属する残り全ウェーハに露光・現像処理を施してフォトリソ工程を終了する(工程S8)。さらに必要に応じてこのようにウェーハ上に形成されたレジストパターンを用いて次工程の処理(例えば、エッチング工程やイオン注入工程など)を行なう。
【0086】
反対に算出された配列誤差の各成分のうち一成分でも基準値を超えていれば、その配列誤差成分値の正負の符号反転値を露光装置に入力し、露光ショット配列に関する制御パラメータを補正する(工程S6)。この制御パラメータは、露光装置がその光学系や機械系などのハードウェアを通じて、露光ショットを、設定されたとおりの回転成分、倍率成分などを有する状態で露光できるようにするパラメータである。この後ウェーハからレジスト膜を剥離し(工程S7)、工程S2に戻って再度工程S2〜工程S5を行い、露光ショット配列の良否を判定する。そして算出される配列誤差成分値が基準値以下になるまで工程S2〜工程S7を繰り返す。
【0087】
こうして最終的に露光ショット配列誤差成分値が全て基準値以下となれば、そのロットに属し、少なくとも前記露光所と配列誤差成分算出に用いたウェーハ以外の残り全ウェーハに露光・現像処理を施してフォトリソ工程を終了する。その後ウェーハ上に形成された第1層目の回路パターンを有するレジスト膜をマスクとして例えばエッチング工程やイオン注入工程など次工程の処理によりウェーハ表面に加工を施す。
【0088】
次に、第2層目の回路パターンを形成するための2回目のフォトリソ工程を行う。2回目のフォトリソ工程に用いる露光装置は、スキャナよりショットエリアが小さいステップ・アンド・リピート方式の縮小投影型露光装置(ステッパ)とする。従って用いるフォトマスクに繰り返し形成される回路パターン形成領域の数は、最初(第1回目)の回路パターン形成に用いたフォトマスクより少ないものとする。
【0089】
ウェーハ表面には第1回目のフォトリソ工程後の加工により、第1層目のパターンレイヤに対応する回路パターンが形成され、また従来の重ね合わせ用のアライメントマークが露光ショット配列誤差測定用マークとは別に形成されており、2回目のフォトリソ工程において基本的には、このアライメントマークと第2層目のフォトマスク上のアライメントマークが重なるようにショットエリア位置を調整して露光する。実際には第1層目のアライメントマーク位置を読み、その結果に基づいて重ね合わせるべきショット領域の位置を演算によって算出し、ショット領域の位置が算出された位置となるようにステッパの重ね合わせを補正する前述のEGA法を採用することができる。これにより第1層目のパターンレイヤに属する回路パターンに対して第2層目のパターンレイヤに属する回路パターンを精度良く合わせることができる。
【0090】
上記EGA法における演算で算出された重ね合わせ誤差成分がすべて重ね合わせ精度に関する基準値以下であればステッパを補正することなくエッチング工程やイオン注入工程などの次工程に進む。この露光工程において、先行ウェーハで重ね合わせズレ量を測定しているならば、ロットの残りウェーハについても同条件でレジスト塗布から現像処理までを行う。もし重ね合わせ誤差成分のうち一成分でも基準値を超えていれば、ウェーハからレジスト膜を剥離し、ステッパの露光ショット配列制御パラメータとして前記算出された重ね合わせ誤差成分の符号反転値をステッパに入力して補正し、再度レジストパターンを形成する。最終的に重ね合わせ誤差成分値の全てが基準値以下となったならば、その条件でロットの残りウェーハに露光・現像を施す。以降、所定の半導体集積回路装置の製造工程フローに基づいて第2層目以上のパターンレイヤのフォトリソ工程と加工工程等を順次繰返し、半導体装置を製造する。
【0091】
以上が本発明に係るフォトリソ工程の実施形態であるが、本発明では(1)重ね合わせ測定装置を用い、ウェーハ上から選択された複数の露光ショットについて露光ショット配列誤差測定用マークの相対的位置ズレに関する量を測定し、(2)測定された複数の相対的位置ズレに関する量とEGA法において用いられているモデル式を利用して演算を行い、重ね合わせに関する誤差成分を求め、(3)求めた重ね合わせに関する誤差成分を露光ショット配列に関する誤差成分に換算するものである。
【0092】
(1)の重ね合わせ測定装置および相対的位置ズレに関する量を測定するプログラム、(2)の演算プログラムは最近のフォトリソ工程ラインには標準装備されているものであり、新たな追加労力やコストが不要である。また、(3)の換算式は式(3)〜(6)の通り簡単な四則演算であるので、極めて容易にフォトリソ工程ラインの何らかの設備、例えば露光装置の露光制御装置に内蔵する演算プログラムの変更・追加を行って換算可能にすることができる。このように本発明は、コストをほとんど上昇させることなく露光ショット配列誤差を低減させることができる露光工程、フォトリソ工程を実現でき、また本発明に係るフォトマスクはその実現に寄与するものである。
【0093】
最初に述べたように(図1参照)ショットエリアの大きさの異なる露光装置を用いる場合は、第2層目のショットエリアの一部は第1層目の2つのショットエリアに跨って配置される。本発明によれば第1層目パターンレイヤの露光ショットが配列誤差成分の基準値を満たすように精度よく配列されるので、ショットエリアの大きさが異なる露光装置を採用しても第2層目以降のパターンレイヤの重ね合わせ精度をコスト上昇をほとんど伴うことなく向上させることができる。
【0094】
上記フォトリソ工程例では第1層目のパターンレイヤをスキャナで形成し、第2層目のパターンレイヤをステッパで形成した。一般的にもウェーハ上に半導体集積回路装置の回路パターンを配列する基準となる最初の露光工程はショットエリアが大きく配列精度のよいスキャナを用いることが多い。しかし下層のパターンレイヤにステッパを、上層のパターンレイヤにスキャナ用いてもよい。また第1層目のパターンレイヤに対して露光ショット配列誤差を補正する工程を採用したが、露光ショット配列誤差が影響するパターンレイヤあれば第2層目以上のレイヤを本発明による方法で補正してもよい。その場合下層パターンレイヤとの重ね合わせ誤差と合わせて補正を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明にかかる技術は主として半導体集積回路のフォトリソ工程に用いるが、その他液晶表示素子などフォトリソ工程を必要とする各種のデバイスの製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
101 ショットエリア
102 半導体集積回路装置の回路パターン形成領域
103 設計上の露光ショット
104、106、108、110 4つのアウターマークの中心を結んでできる四角形
105、107、109、111 4つのインナーマークの中心を結んでできる四角形
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の一連の製造工程のうちフォトリソ工程に関し、特にウェーハ上への露光ショット配列精度を向上させる方法およびそのためのフォトマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置や、液晶表示板に代表される表示素子デバイス等の製造にはフォトリソ工程が含まれている。特に半導体集積回路のフォトリソ工程を構成する露光工程においては、フォトマスク(レチクル)上に形成された回路素子パターンを、露光装置を用いて半導体基板(ウェーハ)上のレジスト膜に縮小投影し、露光ショットの逐次繰り返し(ステップ・アンド・リピート)を行うことで転写している。露光を行うに際しては、1枚のウェーハから最大数の半導体集積回路チップが採れるようにウェーハ上のチップ配置(チップレイアウト)が予め決められ、これに基づいてショットエリア(露光装置により1回の露光で露光されるウェーハ上の領域)の配置(ショットレイアウト)が決定される。
【0003】
現在半導体製造に使用されている主要な縮小投影型露光装置にはステップ・アンド・リピートタイプの装置(ステッパ)とステップ・アンド・スキャンタイプの装置(スキャナ)がある。ステッパは投影光学系を介してレチクルを搭載するレチクルステージおよび被露光ウェーハを搭載するウェーハステージの相対位置を固定して露光するのに対して、スキャナは投影光学系を介してレチクルステージとウェーハステージとを同期を取って相対的に移動させながら露光する。これによりスキャナのショットエリアの方がステッパより広くなるという相違を生ずる。
【0004】
従来の露光工程は、半導体集積回路の最初の回路パターンレイヤの露光から最後の回路パターンレイヤの露光まで終始一貫して同一タイプの露光装置を用い、同一のショット配列で行うのが普通であった。しかし近年例えば量産現場においては、生産設備の運用効率などから、1種類の半導体デバイスの製造に対してもショットエリアの大きさが異なる露光装置を混用して使用したいという要請が大きい。しかしこのような場合は、露光ショット配列誤差が原因となって上下層のマスクパターンレイヤの高精度重ね合わせに困難をきたす等の問題点の発生が予想され、これを回避するための方法が特許文献1に記載されている。
【0005】
以下に特許文献1に記載された方法の概要を簡単に説明する。図11〜図13は特許文献1に記載された図面であり、図11はショットエリアの異なる2台の露光装置を使用して露光したデバイスパターンのウェーハ上の位置関係を示す図である。露光装置に用いる1枚のフォトマスク上には普通、同一のデバイスパターンが繰り返し複数個形成され、1露光ショットで複数個のデバイスパターンを同時に形成し、露光工程の生産効率を向上させている。図11のパターン群13、14はショットエリアの大きい露光装置で形成されたパターンであり、その中に3つのデバイスパターン6が同時に形成される。パターン群15、16、17はショットエリアの小さい露光装置で形成されたパターンであり、その中に2つのデバイスパターン8が同時に形成される。
【0006】
図11に示される例では、1回目の露光工程によりパターン群13、14がパターニングされるが、パターン群13の底辺とパターン群14の上辺が一致しないショット配列誤差が生じている。この状態で2回目の露光工程においてデバイスパターン6にデバイスパターン8ができるだけ正確に重ね合わさるように露光される。この時、パターン群15および17のデバイスパターン8はそれぞれパターン群13および14のデバイスパターン6に正確に重ね合わせることが可能であるが、パターン群16のデバイスパターン8はパターン群13、14のいずれのデバイスパターン6にも正確に重ね合わせられない。
【0007】
この問題に対応するために、特許文献1の技術では露光工程に図12に示すレチクルを用いる。図12はレチクルのショットエリア5内の平面図であり、中央部に3つのデバイスパターン6を具える。またショット配列誤差を測定するための組み合わせとなるアウターマークとインナーマークの2対(アウターマーク1とインナーマーク3、アウターマーク2とインナーマーク4)をデバイスパターン6の外部であって且つショットエリア5の各辺近傍に有している。
【0008】
図13は、レジストが塗布されたウェーハ上に図12に示したレチクルのパターンを、露光装置のステッピングにより順次露光するときの、ショットエリア配列の設計位置を示す図である。図13に示すようにショットエリアA〜Dのうち、隣接するショットエリア内のインナーマーク、アウターマークが形成された領域が重なるようにショットエリアが配列される。例えばショットエリアDに注目すると、ショットエリアDのアウターマーク1の中心点PD1とショットエリアBのインナーマーク3の中心点PB3は一致するように設計され、ショットエリアDのアウターマーク2の中心点PD2とショットエリアCのインナーマーク4の中心点PC4は一致するように設計され、他のショットエリアおよびマークについても同様に設計されている。
【0009】
しかし、実際の露光工程によるショット配列ではアウターマークおよびインナーマークの中心点がショット配列誤差に起因して一致せず、多少にかかわらずズレが発生するので、特許文献1の方法では1つのショットエリア内に設けられた2対のマークについて上記中心点間のズレ量を計測し、計測したズレ量を簡単な四則演算式に直接入力してショット配列誤差を回転誤差成分、倍率誤差成分、非直交誤差成分に分解して算出する。そして算出した誤差成分を用いて露光装置のパラメータを補正した後再度露光を行う。以上のようにして特許文献1の技術は、上下層のパターンレイヤ重ね合わせ誤差の許容範囲の小さい露光工程に、ショットエリアの大きさが異なる露光装置を混用できるように、露光ショットの配列誤差の低減を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−15419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1が開示するような従来の方法によれば、四則演算式にアウターマークとインナーマークとのズレ量測定値を入力して得られる露光ショット配列の各誤差成分の値は、ウェーハ上に配列された1つの特定ショットについて得られた値である。現実に露光ショット配列誤差の補正を行うにおいては、例えばウェーハ上の複数ショットに対して露光ショット配列誤差成分値のそれぞれを算出し、露光装置のパラメータを補正して露光ショット配列誤差を最小とするような1組の誤差成分補正値を得ることが必要であり、そのために前記算出した複数の誤差成分値に、少なくとも簡単ではない何らかの統計的演算を施すべきものと考えられる。
【0012】
しかしながら特許文献1にはこの点についての開示がない。もし上記のような統計的処理を施そうとするならば、専用の演算プログラム作成、場合によっては当該演算プログラムを実行するシステムを導入することが必要でありコスト増加に繋がるので、特に半導体集積回路装置などの生産現場においては途中から採用しにくい。生産現場にあっては既存の設備やソフトウェアで対応できることが望ましい。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、コストをほとんど上昇させることなく露光ショット配列誤差を低減させることができる露光工程、およびそのためのフォトマスクを提供し、これにより1つの半導体装置の製造にショットエリアの大きさが異なる異種の露光装置を用いても、上下層のパターンレイヤの高精度な重ね合わせを実現させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために用いられる本発明に係るフォトマスクは、ガラス基板上の、露光光が照射されるショットエリアに、半導体装置の回路パターン形成領域と、前記ショットエリアの内側の周辺部に形成された露光ショットの配列誤差測定用マークとを備えたフォトマスクであって、前記露光ショットの配列誤差測定用マークは、互いに寸法または形状が異なるマークの対からなると共に、前記ショットエリア内に3対以上形成され、1対の前記マークのそれぞれが形成される前記ショットエリアにおける位置は、被処理基板上に2つの露光ショットを、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが形成された前記ショットエリアの所定部分が重なるように隣接して形成した時に、前記1対のマークのそれぞれが互いに重なる位置となる構成を有する。
【0015】
本フォトマスクのさらに具体的な形態においては、前記露光ショットの配列誤差測定用マークを構成する1対のマークのそれぞれが、前記半導体装置の回路パターン形成領域を挟んで互いに反対側の、対向する位置に形成される。
【0016】
また、前記半導体装置の回路パターン形成領域は、場合により前記ショットエリアに複数形成され、それぞれが同一の回路パターンを有する。
【0017】
本フォトマスクの望ましい形態は、前記ショットエリアが矩形であり、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが前記ショットエリア内に4対形成され、前記4対のマークを構成するそれぞれのマークは前記ショットエリアのコーナー部近傍に形成されているものである。そして、前記露光ショットの配列誤差測定用マークを構成する1対のマークをボックス・イン・ボックス構造またはバーズ・イン・バーズ構造とすることができる。
【0018】
次に上記課題を解決するための本発明に係る半導体装置の製造方法は、露光装置に上述の構成を有するフォトマスクを装着する工程と、前記露光装置を用いて被処理基板上に塗布されたレジスト膜に、互いに隣接する露光ショットを、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが形成された前記ショットエリアの所定部分が重なるように配列して露光し、現像により前記レジスト膜に前記露光ショットの配列誤差測定用マークを形成する工程と、前記レジスト膜に形成された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量を測定する工程と、前記測定された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量を上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差と見なし、測定された当該ズレに関する量に基づいて前記重ね合わせ誤差に関する誤差成分を算出する工程と、前記算出された重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出する工程とを含むものである。
【0019】
本発明に係る半導体装置の製造方法の一形態においては、前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量の測定を、前記被処理基板上に形成された露光ショットから選択された複数の露光ショットに対して行い、前記重ね合わせ誤差に関する誤差成分の算出を、上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせを行うEGA法の露光ショット配列計算モデル式を用いて行う。
【0020】
さらに、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の算出に用いる前記重ね合わせに関する誤差成分は露光ショットに関する重ね合わせ誤差成分であり、前記露光ショットに対するX−Y直交座標系を用いた時、回転誤差X成分Cy(rots)、回転誤差Y成分Cx(rots)、倍率誤差X成分Cx(mags)、倍率誤差Y成分Cy(mags)とすることができる。
【0021】
この時、前記重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出するための式は、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分を回転誤差X成分Xrot、回転誤差Y成分Yrot、倍率誤差X成分Xmag、倍率誤差Y成分Ymagとして、
Xrot=−(Cy(mags)−Cy(rots))/2
Yrot=−(Cx(mags)−Cx(rots))/2
Xmag=(Cx(mags)+Cx(rots))/2
Ymag=(Cy(mags)+Cy(rots))/2
である。
【0022】
また、本発明に係る製造方法において、前記レジスト膜に形成された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量の測定は、上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差に関する量を測定するために設けられた測定装置を用いて行うことができる。
【0023】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記算出された露光ショット配列誤差に関する各誤差成分の値が予め定められた基準を満たすか否かを判定する工程と、前記判定の結果、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値が前記基準を満たさない時は、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値に基づいて前記露光装置の露光ショット配列に関する制御パラメータを補正することにより、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値が前記基準を満たした状態で、前記露光装置が露光できるようにする工程とを含む形態とすることができる。
【0024】
本発明に係る半導体装置の製造方法はさらに、前記露光ショット配列誤差に関する各誤差成分の値が前記基準を満たした状態で露光できるようにされた前記露光装置および上記のフォトマスクを用いて、被処理基板上に塗布されたレジスト膜を露光した後現像して第1のパターンを形成する工程と、前記第1のパターンが形成されたレジスト膜を用いて前記被処理基板を加工し、前記被処理基板に前記第1のパターンを形成する工程と、上記のフォトマスクより上層の前記半導体装置の回路パターンの形成領域を備えた第2のフォトマスクを用いて、前記第1のパターンが形成された前記被処理基板上に塗布されたレジスト膜を露光した後現像して第2のパターンを形成する工程とを含む形態とすることができる。
【0025】
この形態においては、最初に述べたフォトマスクに対して用いる前記露光装置と前記第2のフォトマスクに対して用いる露光装置のショットエリアの大きさが互いに異なるものであってよい。あるいは、最初に述べたフォトマスクおよび前記第2のフォトマスクのそれぞれは、同一の回路パターンから構成される複数の前記半導体装置の回路パターン形成領域を有し、最初に述べたフォトマスクが備える前記半導体装置の回路パターン形成領域の数と前記第2のフォトマスクが備える前記半導体装置の回路パターン形成領域の数とは互いに異なるものであってよい。
【0026】
また、最初に述べたフォトマスクを用いて前記被処理基板上に塗布された前記レジスト膜を露光する工程を前記被処理基板に対する最初の露光工程とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明による製造方法のうち、露光ショット配列誤差測定用マークを用いて測定されたズレに関する量に基づいて重ね合わせ誤差に関する誤差成分を算出する工程は、重ね合わせ誤差の算出、評価用として製造ラインに常設されているシステム、演算プログラムを利用して行うことができ、従って上記ズレに関する量の測定も製造ラインに常設されている重ね合わせ誤差測定用の装置を利用することができる。また重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出する式は、具体的には簡単な四則演算式である。
【0028】
このため、本発明はコストをほとんど上昇させることなく露光ショット配列誤差を低減させることができ、1種類の半導体装置の製造にショットエリアの大きさが異なる露光装置を用いても上下のマスクパターンレイヤの高精度な重ね合わせが実現できる。また本発明に係るフォトマスクはショットエリア内に3対以上の露光ショット配列誤差測定用マークを備えているので、露光ショット内の重ね合わせ誤差と見なした時の誤差成分を容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るフォトマスク上のパターンレイアウトを示す平面図。
【図2】本発明に係るフォトマスクを用いた露光ショット配列を示す図。
【図3】露光ショット配列誤差または重ね合わせ誤差の誤差成分を説明する図。
【図4】露光ショット配列の回転誤差X成分と露光ショット配列誤差測定用マークのズレとの関係を示す図。
【図5】露光ショット配列の回転誤差Y成分と露光ショット配列誤差測定用マークのズレとの関係を示す図。
【図6】露光ショット配列の倍率誤差X成分と露光ショット配列誤差測定用マークのズレとの関係を示す図。
【図7】露光ショット配列の倍率誤差Y成分と露光ショット配列誤差測定用マークのズレとの関係を示す図。
【図8】本発明に係る露光ショット配列誤差の各誤差成分算出法の検証結果を示す図。
【図9】本発明に係る露光ショット配列誤差の各誤差成分算出法の検証結果を示す図。
【図10】本発明に係るフォトリソ工程を示すフローチャート。
【図11】露光ショット配列誤差に起因する問題点を示す図。
【図12】従来のレチクルの平面図。
【図13】従来のショットエリア配列を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るフォトリソ工程の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
(フォトマスク)
図1は本発明に係るフォトリソ工程で使用するフォトマスク上のパターンレイアウトの一例を示す図である。このパターンはガラス基板上に形成されており、露光光が照射されるフォトマスク上の矩形をした領域101はウェーハに形成されたレジストが1回の露光で露光されるショットエリアに対応するので、以降便宜的にショットエリア101ということにする。このフォトマスクの例ではショットエリア101内の中央部に、完成品として機能する半導体デバイスの回路全体が形成される回路パターン形成領域102が3行1列で繰り返し配置される。この3個の半導体デバイスの回路パターン形成領域102からなる群の周囲であり、またショットエリア101の周辺部でもある位置の各辺に沿って露光ショット配列誤差測定用のマークが複数設けられる。なお図示していないが上層および下層マスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差測定用のマークは別途これとは異なる箇所に設けられる。
【0032】
露光ショット配列誤差測定用のマークは、上層と下層のフォトマスクパターンの重ね合わせズレ量を測定するための、一般的に知られたマークと同一の構造、いわゆるボックス・イン・ボックス構造を有するものであり、アウターマークOM1、OM2、OM3、OM4、およびインナーマークIM1、IM2、IM3、IM4で構成される。本フォトマスクは、3個の回路パターン形成領域102の群を挟んで互いに対向するアウターマークとインナーマークの対4組(OM1、IM3)、(OM2、IM4)、(OM3、IM1)、(OM4、IM2)を有する。
【0033】
これらのマークは少なくとも矩形、通常正方形であり、図のように正方形の対角線の交点をその中心とする。本発明の実施形態ではマークをボックス・イン・ボックス構造としているが、いわゆるバーズ・イン・バーズ構造など他の形態を有するものでもよい。
【0034】
アウターマークおよびインナーマークの各位置は、ショットエリア101の辺に平行な軸を有するX−Y座標系(図1参照)を設定し、各マークの中心座標で表すと下記の通りとなる。
【0035】
アウターマーク インナーマーク
OM1 (X4、Y3) IM1 (X4、Y2)
OM2 (X2、Y4) IM2 (X3、Y4)
OM3 (X1、Y2) IM3 (X1、Y3)
OM4 (X3、Y1) IM4 (X2、Y1)
各マークの中心位置の座標が以上のようになることから、インナーマークIM2の中心とアウターマークOM4の中心を結んだ直線、およびインナーマークIM4の中心とアウターマークOM2の中心を結んだ直線はショットエリア101のY軸方向の辺と平行である。また、インナーマークIM3の中心とアウターマークOM1の中心を結んだ直線、およびインナーマークIM1の中心とアウターマークOM3の中心を結んだ直線はショットエリア101のX軸方向の辺と平行である。従って上記4本の直線で形成される四辺形はショットエリア101と平行な辺を有する矩形となる。
【0036】
また、インナーマークIM2の中心とアウターマークOM2の中心を結んだ直線、およびインナーマークIM4の中心とアウターマークOM4の中心を結んだ直線はショットエリア101のX軸方向の辺と平行であり、インナーマークIM3の中心とアウターマークOM3の中心を結んだ直線、およびインナーマークIM1の中心とアウターマークOM1の中心を結んだ直線はショットエリア101のY軸方向の辺と平行である。従って上記4本の直線で形成される四辺形はショットエリア101と平行な辺を有する矩形となる。インナーマーク、アウターマークとも図1に示すようにショットエリア101の各コーナー部近傍に配置するのが望ましい。
【0037】
次にフォトマスクに形成された各パターンの相対的位置関係を説明すると、回路パターン形成領域102間のY軸方向の間隔はdで等しい。またインナーマーク1M2またはアウターマークOM2の中心と回路パターン形成領域102との距離d1、およびインナーマークIM4またはアウターマークOM4と回路パターン形成領域102との距離d2の和d1+d2はdとなるように設計されている。このことにより、例えば図1のショットにおけるアウターマークOM4およびインナーマークIM4の中心が、それぞれ当該ショットの下方に隣接するショットにおけるインナーマークIM2およびアウターマークOM2の中心に一致するよう配列された場合には、当該ショットの回路パターン形成領域102と下方に隣接するショットの回路パターン形成領域102との距離がdとなる。このようにして、ウェーハ全面に渡ってすべての回路パターン形成領域102をY軸方向に等距離dで配置することができる。
【0038】
また、回路パターン形成領域102とインナーマークIM3の中心およびアウターマークOM3の中心との距離はw1、アウターマークOM1の中心およびインナーマークIM1の中心との距離はw2に設定されている。従って図1のショットにおけるアウターマークOM1およびインナーマークIM1の中心が、それぞれ例えば当該ショットの右側に隣接するショットにおけるインナーマークIM3およびアウターマークOM3の中心に一致するように配列された場合は、当該ショットの回路パターン形成領域102と右側に隣接するショットの回路パターン形成領域102との距離はw1+w2となる。このようにしてウェーハ全面に渡ってすべての回路パターン102をX軸方向に等距離w1+w2で配置することができる。
【0039】
(露光工程におけるショット配列方法)
図2は、図1に示したフォトマスクを用いてウェーハ表面上に塗布されたレジストを露光する時、どのように露光ショットを配列していくか、その露光ショットの設計上の配列を示す図である。図2では注目する露光ショットsとその四方に配置する露光ショットa、b、c、dのみを示し、また煩雑性を避けるために重要性の低いマークの符号は省略している。必要な場合は図1を参照することによって理解できる。図2に示すようにショット配列誤差測定用マークが形成されたショットエリアの部分を各ショットエリアについて互いに重ねて露光し、露光ショットを配列する。
【0040】
具体的に説明すると、露光ショットsの上方に隣接する露光ショットaの配列については、露光ショットsのインナーマークIM2(s)の中心と露光ショットaのアウターマークOM4(a)の中心が一致し、且つ露光ショットsのアウターマークOM2(図1)の中心と露光ショットaのインナーマークIM4の中心が一致するように配列する。露光ショットsの左に隣接する露光ショットbの配列については、露光ショットsのインナーマークIM3(s)の中心と露光ショットbのアウターマークOM1(b)の中心が一致し、且つ露光ショットsのアウターマークOM3(図1)の中心と露光ショットbのインナーマークIM1の中心が一致するように配列する。
【0041】
露光ショットsの下方に隣接する露光ショットcの配列については、露光ショットsのインナーマークIM4(s)の中心と露光ショットcのアウターマークOM2(c)の中心が一致し、且つ露光ショットsのアウターマークOM4(図1)の中心と露光ショットcのインナーマークIM2の中心が一致するように配列する。露光ショットsの右に隣接する露光ショットdの配列については、露光ショットsのインナーマークIM1(s)の中心と露光ショットdのアウターマークOM3(d)の中心が一致し、且つ露光ショットsのアウターマークOM1(図1)の中心と露光ショットdのインナーマークIM3の中心が一致するように配列する。
【0042】
上記ショット配列で露光し、現像したレジストパターンも図2と同じショット配列を有する。こうして形成されるレジストパターン上の露光ショット配列誤差測定用マークは8個すべてがアウターマークにインナーマークを内蔵する形状となり、どの露光ショット間の重ね合わせによって形成されたかは見かけ上特定できないが、後に説明する通り、予め決定した図2に示す円内の4箇所のマーク対を露光ショット配列誤差測定に使用する。
【0043】
以上の露光ショット配列方法から分かるように、本発明によるフォトマスクの露光ショット配列誤差測定用マークは次のような特徴を有する。すなわち露光ショット配列誤差測定用マークは互いにサイズや形状が異なる2個のマークの対を構成する。そして図2に示したように、露光ショット配列誤差測定用マークが形成されたショットエリアの所定部分が重なるように隣接する露光ショットが被処理基板上に配列されるのであるが、この時前記マークの対のそれぞれが互いに重ね合わさるようにフォトマスク上に配置される。さらにフォトマスクにはこの対が3対以上設けられる。
【0044】
(露光ショット配列誤差の算出方法)
図2に示す露光ショット配列は理想としての設計上の配列であるからすべてのアウターマークとインナーマークの中心が一致するが、現実の露光ショット配列ではト配列誤差が存在するために中心が一致せず、アウターマークとインナーマークの中心にズレが生ずる。本発明に係る露光ショット配列誤差の算出方法は第1に、図2に示すような所定のアウターマークとインナーマークの複数(4つ)の組み合わせ(IM2(s)、OM4(a))、(IM3(s)、OM1(b))、(IM4(s)、OM2(c))、(IM1(s)、OM3(d))につきそれらマークの中心の相対的位置ズレ量を測定するステップを含む。
【0045】
測定された相対的位置ズレ量は当然のことながら露光ショット配列誤差に起因するものであるが、本発明による露光ショット配列誤差の算出方法は第2に、このズレ量を上層および下層のマスクパターンレイヤ間の重ね合わせズレ量とみて、上記相対的位置ズレ量の測定値から重ね合わせ誤差に関する複数の誤差成分を求めるステップを含む。この複数の誤差成分は、それらを合成することによって元の誤差を再現できるものである。図2を参照すると、露光ショットa、b、c、dを下層のマスクパターンレイヤとみなし、露光ショットsを下層マスクパターンレイヤに重ね合わせるべき上層マスクパターンレイヤとみなすことができる。フォトマスクパターンの重ね合わせを行う時、例えば下層のマスクパターンレイヤのアウターマークに上層のマスクパターンレイヤのインナーマークを合わせるのが普通であり、従って重ね合わせズレ量とみなして測定するときは、露光ショットsのインナーマーク位置にある円内のマークの組み合わせを使用することになる。
【0046】
また、重ね合わせズレ量とした測定結果から重ね合わせ誤差に関する複数の誤差成分を求める方法として、本発明においては例えば露光工程において上層および下層のマスクパターンレイヤ間の重ね合わせを行うエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)の手法を用いることができる。EGA方式の基本的な考え方は、ウェーハ上に2次元状に配列形成された下層マスクパターンレイヤに関する露光ショットのうち、複数の露光ショットを選択し、選択された露光ショットについて実測した重ね合わせズレ結果を統計処理してウェーハ上の全露光ショットの配列を求め、この配列に従って上層マスクパターンレイヤに関する露光ショットの位置合わせを行うものである。
【0047】
最も基本的なEGA方式では、ウェーハ自体の露光装置ステージ上での回転誤差、ステージ座標系またはショット配列の直交度誤差(配列の菱形変形誤差)、ウェーハの伸縮誤差(倍率誤差)、ウェーハのオフセット(ウェーハの露光装置ステージ上での所定位置からの平行位置ズレ)など、ウェーハ上全体としての配列、および設計上の配列からの配列誤差成分を求めることができる。しかしながら露光工程において、ショットエリアの大きさが異なる露光装置を混用したときには、実際にはウェーハ全体としての露光ショット配列誤差よりも露光ショット領域自体の変形に基づいて隣接する露光ショットとの間で発生する相対的配列ズレのほうが、上層マスクパターンレイヤの重ね合わせズレに対する影響が大きいと考えられる。
【0048】
このことから上記ウェーハレベルの誤差に加えて、本発明では少なくとも重ね合わせ誤差成分として露光ショット領域自体の回転誤差、直交度誤差(露光ショット領域自体の菱形変形)、線形伸縮誤差(倍率誤差)をも考慮したEGA方式の手法を用いる。本発明に係るフォトマスクは図2に示したように、アウターマークおよびインナーマークの中心の相対的位置ズレ量の測定に円内の4個の露光ショット配列誤差測定用マーク、すなわち少なくともショットエリア101内に3個のマーク対を備えているので露光ショット領域自体の誤差も考慮したEGA方式を用いることが可能である。
【0049】
このEGA方式において、重ね合わせ誤差としての各種誤差成分を求めるための代表的なモデルが10パラメータ線形モデルである。計算式は以下のように表される。ズレ量や各マークの中心の位置はX−Y直交座標系で表される。
【0050】
ΔX=Cx(magw)Xw+Cx(rotw)Yw+Cx(mags)Xs+Cx(rots)Ys+Cx00 ・・・・・ (1)
ΔY=Cy(rotw)Xw+Cy(magw)Yw+Cy(rots)Xs+Cy(mags)Ys+Cy00 ・・・・・ (2)
【0051】
ここで
ΔX、ΔY:露光ショット配列誤差測定用マークで測定した相対的位置ズレ量のX成分およびY成分
Xw、Yw:ウェーハ中心を原点としたマーク中心位置のX座標およびY座標
Xs、Ys:露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のX座標およびY座標
Cx(magw):ウェーハレベルの倍率誤差のX成分
Cx(rotw):ウェーハレベルの回転誤差のY成分
Cx(mags):露光ショットの倍率誤差のX成分
Cx(rots):露光ショットの回転誤差のY成分
Cx00:オフセットのX成分
Cy(magw):ウェーハレベルの倍率誤差のY成分
Cy(rotw):ウェーハレベルの回転誤差のX成分
Cy(mags):露光ショットの倍率誤差のY成分
Cy(rots):露光ショットの回転誤差のX成分
Cy00:オフセットのY成分
【0052】
ウエハレベルの直交度誤差についてはCx(rotw)、Cy(rotwf)、露光ショットの直交度誤差についてはCx(rots)、Cy(rots)により計算される。上記の式(1)、(2)の10個のパラメータ、Cx(magw)、Cx(rotw)、Cx(mags)、Cx(rots)、Cx00、Cy(magw)、Cy(rotw)、Cy(mags)、Cy(rots)、Cy00が重ね合わせに対する誤差成分となる。これら誤差成分はEGA方式によれば次のようにして具体的に求められる。
【0053】
すなわち、ウェーハ上に塗布したレジストに形成された露光ショットのうち、予め決められた露光ショットを複数個選択し、それぞれの露光ショットについてアウターマークおよびインナーマークの中心の相対的位置ズレ量のX成分ΔX、Y成分ΔYを、図2に示す円内の4個の組み合わせマークに対して測定する。測定の対象とした全ての露光ショット内マークの中心位置のX座標およびY座標Xw、Yw、Xs、Ysは既知であるから、これらの位置座標と対応するΔX、ΔYとを式(1)および(2)に代入して連立方程式を構成し、ΔX、ΔYの二乗の総和が最小となる条件下で演算を行い、10個のパラメータ値(誤差成分値)を決定する。
【0054】
以上、重ね合わせ誤差に関する各種誤差成分を求めるための計算モデル式としての10パラメータ線形モデル式および当該式を用いた誤差成分算出方法を述べた。しかしこれ以外のモデル式として、マーク中心位置に関するウェーハレベルのX座標およびY座標の2次以上の項を含むより精密な高次非線形計算モデルも、露光ショットに関する誤差成分としてのパラメータを含むものであれば使用することができる。
【0055】
このように決定される上下層マスクパターンレイヤの重ね合わせに関する10個の誤差成分のうち、回転誤差成分Cx(rots)、Cy(rots)、倍率誤差成分Cx(mags)、Cy(mags)は露光ショット内の重ね合わせ誤差を支配する成分である。これらの量の意味は式(1)、(2)の形から理解されるが定性的に説明すると次のようになる。図3は露光ショットの回転誤差成分および倍率誤差成分の概念を図式的に示したものであり、点線の矩形は下層のパターンに正確に重ね合わせが実現したときの上層のパターンに関する設計上のショットエリア配置を示す。図においてX−Y座標軸の原点を露光ショットの中心にとっている。
【0056】
重ね合わせの回転誤差成分は図3(a)左端図のように座標軸の原点を中心にして設計上の配置から微小な回転がかかったとみなされる位置ズレである。この回転誤差は回転誤差X成分と回転誤差Y成分に分解され、回転誤差X成分は図3(a)中央図のようにX軸のみがX‘軸の位置まで回転することによってY軸方向に菱形変形を起こす成分である。従って露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のX座標をXsとすると回転誤差X成分によるマーク中心位置のY軸方向へのズレ量はCy(rots)Xsとなる。
【0057】
また回転誤差Y成分は図3(a)右端図のようにY軸のみがY‘軸の位置まで回転することによってX軸方向に菱形変形を起こす成分である。従って露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のY座標をYsとすると回転誤差Y成分によるマーク中心位置のX軸方向へのズレ量はCx(rots)Ysとなる。これで分かるようにCx(rots)、Cy(rots)は角度の単位(rad)を持つ。なお、上記モデル式から計算される回転誤差X成分およびY成分を合成しても図3(a)左端図に示すような真の回転誤差とならない場合があるが、それはX成分、Y成分いずれかに余分な誤差が含まれているためであり、この余剰誤差が純粋な菱形変形である直交度誤差とみなされる。
【0058】
次に重ね合わせの倍率誤差は図3(b)左端図のように設計上のサイズから座標軸の原点を中心にして伸縮がかかったものとみなされるズレである。この倍率誤差は倍率誤差X成分と倍率誤差Y成分とに分解されることは明らかである。露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のX座標をXsとすると倍率誤差X成分によるマーク中心位置のX軸方向へのズレ量はCx(mags)Xsとなり、また露光ショット中心を原点としたマーク中心位置のY座標をYsとすると倍率誤差Y成分によるマーク中心位置のY軸方向へのズレ量はCy(mags)Ysとなる。従ってCx(mags)、Cy(mags)は倍率の単位(例えばppm)を持つことが分かる。
【0059】
以上は重ね合わせ誤差成分についての説明であるが、図3(a)、(b)に示した回転誤差成分、倍率誤差成分は露光ショット配列誤差の誤差成分についても成り立つ。露光ショット配列誤差の場合、図の点線で示す矩形はウェーハ上のレジストに露光された設計上の露光ショット領域となる。そして回転誤差は図3(a)では露光ショットの設計上の配置からX−Y座標軸の原点を中心にして微小回転ズレを起こして配置される誤差であり、この誤差を有したまま露光ショットが一定のピッチでウェーハ全面に縦横に配列されることになる。
【0060】
回転誤差成分はX成分およびY成分で構成され、それぞれ露光ショット領域の菱形変形である。回転誤差X成分が現れると露光ショット領域の左右の辺は露光ショット領域の中心を原点とし、Y軸に沿って互いに反対方向へ同距離だけずれる。従って例えば注目している露光ショットの右辺とその右側に隣接する露光ショットの左辺とは相対的に反対方向にずれ、その相対的ズレ量はX軸に対する辺のズレ量の2倍である。回転誤差Y成分が現れたときもX軸に沿って露光ショットの上下の辺が同様なずれ方をする。
【0061】
露光ショット配列の倍率誤差は図3(b)によればX−Y座標軸の原点を中心にして設計上の配置から露光ショット領域の伸縮ズレを起こして配置される誤差であり、この誤差を有したまま露光ショットが一定のピッチでウェーハ全面に縦横に配列されることになる。倍率誤差成分はX成分およびY成分で構成され、それぞれ露光ショット領域のX軸方向、Y軸方向への伸縮である。倍率誤差X成分が現れると露光ショット領域の左右の辺は露光ショット領域の中心を原点とし、X軸に沿って互いに反対方向へ同距離だけ伸縮する。従って例えば注目している露光ショットの右辺とその右側に隣接する露光ショットの左辺とは相対的に反対方向にずれ、その相対的ズレ量はY軸に対する辺のズレ量の2倍である。倍率誤差Y成分が現れたときもY軸に沿って露光ショットの上下の辺が同様なずれ方をする。
【0062】
本発明に係る露光工程では、重ね合わせ誤差に関するモデル計算式からその誤差に対応する誤差成分を求めることを述べたが、本発明に係るフォトマスクに配置された露光ショット配列誤差測定用のマークの計測から求められる重ね合わせに関する回転、倍率などの誤差成分と露光ショット配列に関する回転、倍率などの誤差成分はその値が異なるため、上記計算式から得られた各誤差成分から露光ショット配列の各誤差成分に換算しなければならない。露光ショット配列に関する、回転誤差X成分:Xrot、回転誤差Y成分:Yrot、倍率誤差X成分:Xmag、倍率誤差Y成分:Ymagを求める式は結果として、
Xrot=−(Cy(mags)−Cy(rots))/2 ・・・・・(3)
Yrot=−(Cx(mags)−Cx(rots))/2 ・・・・・(4)
Xmag=(Cx(mags)+Cx(rots))/2 ・・・・・(5)
Ymag=(Cy(mags)+Cy(rots))/2 ・・・・・(6)
となる。次にこれらの式につき図4〜図7を用いて説明する。
【0063】
図4は、露光ショット配列に回転誤差X成分のみが生じた場合にレジスト上に転写された露光ショット配列誤差測定用のインナーマークおよびアウターマークの位置ズレ状態を示す図である。図は位置ズレを明確にするためにマーク寸法を強調した模式図であり、現実のパターンを示すものではない。またこの図は、図2において配列の回転誤差X成分が生じた状態を示すもので、注目する露光ショットsの左右上下に隣接して図2の露光ショットa、b、c、dが配列されている。これらは図5〜図7についても同様である。
【0064】
図4において回転誤差X成分がある場合、露光ショットsは設計上の露光ショット103から菱形変形をし、それに伴い、露光ショットsの中心Cを中心としてインナーマークIM1(s)、IM2(s)はX−Y座標系のY軸の正方向、IM3(s)、IM4(s)はY軸の負方向へ設計位置から移動する。露光ショット配列においては露光ショットsの右側に隣接する露光ショットd、左側に隣接する露光ショットbも同様に変形するのでアウターマークOM3(d)はY軸の負方向に、OM1(b)はY軸の正方向に移動し、IM1(s)の中心P1とOM3(d)の中心Q1、およびIM3(s)の中心P3とOM1(b)の中心Q3にそれぞれ相対的位置ズレが生じる。
【0065】
また、露光ショットsの上側に隣接する露光ショットa、および下側に隣接する露光ショットcも同様に変形するが、露光ショットsのIM2(s)と露光ショットaのOM4(a)は共にY軸の正方向に同量移動し、また露光ショットsのIM4(s)と露光ショットcのOM2(c)は共にY軸の負方向に同量移動する。このためIM2(s)の中心P2とOM4(a)の中心Q2、およびIM4(s)の中心P4とOM2(c)の中心Q4は一致したままとなる。
【0066】
これに対し、露光ショットsに重ね合わせに関する回転誤差X成分が生じたと想定した場合は、下層パターンレイヤのマークとみなされるOM3(d)、OM4(a)それぞれに対し、IM1(s)、IM2(s)が共にY軸の正方向に移動し、OM1(b)、OM2(c)それぞれに対しIM3(s)、IM4(s)が共にY軸の負方向に移動する。このように同じ誤差成分であっても露光ショット配列誤差と重ね合わせ誤差ではマークの相対的位置ズレの挙動が異なるのである。
【0067】
図4のマーク配置を重ね合わせによって生じた誤差とみなした場合、下層パターンレイヤ(露光ショットa、b、c、d)の4つのマークの中心で構成される四角形Q1Q2Q3Q4(四角形104)の各頂点に上層パターンレイヤ(露光ショットs)の4つのマークの中心を合わせるようにすべきところ、四角形P1P2P3P4(四角形105)で示される重ね合わせ誤差が生じたことになる。式(1)および(2)はこのようなインナーマークの中心P1、P2、P3、P4の重ね合わせ誤差分布に対応したパラメータ、すなわち誤差成分を算出するものである。四角形105の4辺は四角形104の4辺に対して回転角を有しているため露光ショット配列に関する回転誤差X成分は重ね合わせ誤差の反時計回りの回転誤差X成分Cy(rots)を含む。しかし四角形104の辺Q1Q2、辺Q3Q4に対し四角形105の辺P1P2、辺P3P4がY軸方向に収縮していることから、露光ショット配列に関する回転誤差X成分は重ね合わせに関する負の倍率誤差Y成分Cy(mags)を含む。従って露光ショット配列の回転誤差X成分はCy(rots)−Cy(mags)に比例し、この値は図3を参照して説明したように露光ショット配列の回転誤差X成分の2倍であるから、
Xrot=−(Cy(mags)−Cy(rots))/2
となる。
【0068】
図5は、露光ショット配列に回転誤差Y成分のみが生じた場合にレジスト上に転写された露光ショット配列誤差測定用のインナーマークおよびアウターマークの位置ズレ状態を示す図であり、回転誤差X成分と同様に説明できる。図5において露光ショットsはX軸方向の菱形変形をし、露光ショットsの中心Cを中心としてインナーマークIM2(s)、IM3(s)はX軸の負方向、IM1(s)、IM4(s)はX軸の正方向へ設計位置から移動する。露光ショットsの上側に隣接する露光ショットa、下側に隣接する露光ショットcも同様に変形し、アウターマークOM4(a)はX軸の正方向に、OM2(c)はX軸の負方向に移動し、点P2と点Q2、および点P4と点Q4にそれぞれ相対的位置ズレが生じる。
【0069】
また、露光ショットsの右側に隣接する露光ショットd、および左側に隣接する露光ショットbも同様に変形するが、露光ショットsのIM1(s)と露光ショットdのOM3(d)は共にX軸の正方向に同量移動し、また露光ショットsのIM3(s)と露光ショットbのOM1(b)は共にX軸の負方向に同量移動する。このため点P1と点Q1、および点P3と点Q3は一致したままとなる。
【0070】
図5のマーク配置を重ね合わせによって生じた誤差とみなした場合、下層パターンレイヤ(露光ショットa、b、c、d)の4つのマークの中心で構成される四角形Q1Q2Q3Q4(四角形106)に対して上層パターンレイヤ(露光ショットs)の4つのマークの中心で構成される四角形P1P2P3P4(四角形107)の重ね合わせ誤差が生じたことになる。四角形107の4辺は四角形106の4辺に対して回転角を有しているため露光ショット配列に関する回転誤差Y成分は重ね合わせ誤差の反時計回りの回転誤差Y成分Cx(rots)を含む。しかし辺Q2Q3、辺Q4Q1に対し辺P2P3、辺P4P1がX軸方向に収縮していることから、露光ショット配列に関する回転誤差Y成分は重ね合わせに関する負の倍率誤差X成分Cx(mags)を含む。従って露光ショット配列の回転誤差Y成分はCx(rots)−Cx(mags)に比例し、この値は図3を参照して説明したように露光ショット配列の回転誤差Y成分の2倍であるから、
Yrot=−(Cx(mags)−Cx(rots))/2
となる。
【0071】
図6は、露光ショット配列に倍率誤差X成分のみが生じた場合にレジスト上に転写された露光ショット配列誤差測定用のインナーマークおよびアウターマークの位置ズレ状態を示す図である。図6において、露光ショットsは設計上の露光ショット103から露光ショットsの中心Cを中心としてX軸に沿い互いに反対方向に伸縮するが、図は伸張する場合を示す。これに伴い、前記中心Cを中心としてインナーマークIM1(s)、IM2(s)はX軸の正方向、IM3(s)、IM4(s)はX軸の負方向へ設計位置から移動する。露光ショットsの右側に隣接する露光ショットd、左側に隣接する露光ショットbも同様に伸張するのでアウターマークOM3(d)はX軸の負方向に、OM1(b)はX軸の正方向に移動し、点P1と点Q1、および点P3と点Q3にそれぞれ相対的位置ズレが生じる。
【0072】
また、露光ショットsの上側に隣接する露光ショットa、および下側に隣接する露光ショットcも同様な伸張をするが、露光ショットsのIM2(s)と露光ショットaのOM4(a)は共にX軸の正方向に同量移動し、また露光ショットsのIM4(s)と露光ショットcのOM2(c)は共にX軸の負方向に同量移動する。このため点P2と点Q2、および点P4と点Q4は一致したままとなる。
【0073】
図6のマーク配置を重ね合わせによって生じた誤差とみなした場合、下層パターンレイヤ(露光ショットa、b、c、d)の4つのマークの中心で構成される四角形Q1Q2Q3Q4(四角形108)に対して上層パターンレイヤ(露光ショットs)の4つのマークの中心で構成される四角形P1P2P3P4(四角形109)の重ね合わせ誤差が生じたものと考えることができる。四角形108の辺Q2Q3、辺Q1Q4の長さに対し四角形109の辺P2P3、辺P1P4の長さがX軸方向に伸張しており、露光ショット配列に関する倍率誤差X成分は重ね合わせに関する倍率誤差X成分Cx(mags)を含む。しかし四角形109の4辺は四角形108の4辺に対して回転角を有しているため、露光ショット配列に関する倍率誤差X成分は重ね合わせ誤差に関する反時計回りの回転誤差Y成分Cx(rots)を含む。従って露光ショット配列に関する倍率誤差X成分はCx(mags)+Cx(rots)に比例し、この値は図3を参照して説明したように露光ショット配列の回転誤差X成分の2倍であるから、
Xmag=(Cx(mags)+Cx(rots))/2
となる。
【0074】
図7は、露光ショット配列に倍率誤差Y成分のみが生じた場合にレジスト上に転写された露光ショット配列誤差測定用のインナーマークおよびアウターマークの位置ズレ状態を示す図であり、倍率誤差X成分と同様に説明できる。この場合露光ショットsは露光ショットsの中心Cを中心としてY軸に沿い互いに反対方向に伸縮するが、図は伸張する場合を示す。インナーマークIM2(s)、IM3(s)はY軸の正方向、IM1(s)、IM4(s)はY軸の負方向へ設計位置から移動する。露光ショットsの上側に隣接する露光ショットa、下側に隣接する露光ショットcのそれぞれにおいてアウターマークOM4(a)はY軸の負方向に、OM2(c)はY軸の正方向に移動し、こうして点P2と点Q2、および点P4と点Q4にはそれぞれ倍率誤差Y成分による相対的位置ズレが生じる。
【0075】
また、露光ショットsの右側に隣接する露光ショットd、および左側に隣接する露光ショットbも同様に伸張をするが、露光ショットsのIM1(s)と露光ショットdのOM3(d)は共にY軸の負方向に同量移動し、また露光ショットsのIM3(s)と露光ショットbのOM1(b)は共にY軸の正方向に同量移動する。このため点P1と点Q1、および点P3と点Q3は一致したままとなる。
【0076】
図7のマーク配置を重ね合わせによって生じた誤差とみなした場合、下層パターンレイヤ(露光ショットa、b、c、d)の4つのマークの中心で構成される四角形Q1Q2Q3Q4(四角形110)に対して上層パターンレイヤ(露光ショットs)の4つのマークの中心で構成される四角形P1P2P3P4(四角形111)の重ね合わせ誤差が生じたことになる。四角形110の辺Q1Q2、辺Q3Q4の長さに対し四角形111の辺P1P2、辺P3P4の長さがY軸方向に伸張していることから、露光ショット配列に関する倍率誤差Y成分は重ね合わせに関する倍率誤差Y成分Cy(mags)を含む。しかし四角形111の4辺は四角形110の4辺に対して回転角を有しているため、露光ショット配列に関する倍率誤差Y成分は重ね合わせ誤差に関する反時計回りの回転誤差X成分Cy(rots)を含む。従って露光ショット配列の倍率誤差y成分はCy(mags)+Cy(rots)に比例し、この値は図3を参照して説明したように露光ショット配列の回転誤差X成分の2倍であるから、
Ymag=(Cy(mags)+Cy(rots))/2
となる。
【0077】
(露光ショット配列誤差の算出方法の検証)
図8および図9は、本発明による露光ショット配列誤差算出方法の検証結果を示すグラフである。図8は、露光装置に露光ショット配列制御パラメータとしてその配列に関する回転誤差X成分(Xrot0)、Y成分(Yrot0)、倍率誤差X成分(Xmag0)、Y成分(Ymag0)の値を故意に入力して設定することにより配列誤差が生じるようにした後、前述の本発明に係るフォトマスクを用いて形成したレジストパターン上の露光ショット配列誤差測定用マークにより上記誤差に基づくマークのズレ量を測定し、測定されたマークのズレ量からEGA方式のモデル計算式を用いて重ね合わせに関する回転誤差X成分(Cy(rots))、Y成分(Cx(rots))、倍率誤差X成分(Cx(mags))、Y成分(Cy(mags))を求めた結果を示す。
【0078】
図8の横軸は露光装置の配列誤差設定条件であり、縦軸は求められた各誤差成分値である。各誤差成分値のプロットはその垂直下方に示された露光装置設定条件表の4つの誤差成分の1つの組み合わせに対応する。図からわかるように設定された露光ショット配列に関する誤差成分と重ね合わせとしてみた誤差成分とは必ずしも一致しない。
【0079】
図9は、求められた重ね合わせに関する各誤差成分(図8)を用い、上に説明した式(3)〜(6)を用いて算出した露光ショット配列誤差成分Xmag、Ymag、Xrot、Yrotと、露光装置に故意に入力・設定した露光ショット配列誤差成分の組み合わせとの関係を示す。横軸は図8と同じであり、縦軸は算出された露光ショット配列誤差成分値である。図9のように配列誤差の設定値と算出された値との一致は良好であり、本発明に係るフォトマスクおよび算出方法によって露光ショット配列誤差の各成分をほぼ正しく求めることができる。
【0080】
(フォトリソ工程)
以上に説明した本発明に係る露光ショット配列誤差成分算出方法を一工程として含むフォトリソ工程を次に説明する。図10は本発明によるフォトリソ工程を示す代表的な工程フロー図である。まず、図1に示したフォトマスク(レチクル)を準備し、露光装置のレチクルステージに装着する(工程S1)。露光装置はステップ・アンド・スキャン方式の縮小投影型露光装置(スキャナ)であり、フォトマスクはウェーハに最初の露光工程を行うための最下層(第1層)パターンレイヤのものとする。次に未だ半導体集積回路パターンが形成されていないシリコンからなるウェーハ上にレジスト膜を塗布し、図1のフォトマスク上に繰り返し配列された複数の回路パターン形成領域102および8個の露光ショット配列誤差測定用マーク(IM1〜IM4、OM1〜OM4)をスキャナを用いてレジスト膜に転写し、現像する(工程S2)。この時のウェーハはロットを構成する複数のウェーハのうちの少なくとも特定の一つとする。
【0081】
またこの工程では図2に示すように、露光ショット上の各マークが互いに隣接して配列される露光ショットの対応するマークと重なるように露光することによって露光ショットを配列していく。これによりショットエリアの各マークが形成された領域は通常スクライブレーンとなる。
【0082】
次に、パターン形成されたウェーハを例えばコータ・デベロパ内に配置された重ね合わせ測定装置に搬送し、この重ね合わせ測定装置で例えば図2に示す円内の4個の露光ショット配列誤差測定用マークの組のそれぞれについて、露光ショット配列誤差に起因して発生した相対的位置ズレに関する量を測定する(工程S3)。この重ね合わせ測定装置は、フォトリソ工程において上層および下層のマスクパターンレイヤ間の例えばアライメントマーク位置ズレ量のような重ね合わせ誤差に関する量を測定するためにフォトリソ工程ラインに標準的に設けられたものである。
【0083】
マークの相対的位置ズレ量を測定するための露光ショットの数およびウェーハ上の位置は予め決められており、露光ショット数は5ショット以上、望ましくは10ショット〜30ショット程度であり、ウェーハ上にできる限り均一に分布するように選択する。また重ね合わせ測定装置はこの例ではコータ・デベロパにインライン接続されたものであるが、露光系のラインと切離されたオフラインの装置であってもよい。
【0084】
次いで、マークの相対的位置ズレ量の測定データをLANなどを通じて例えば露光装置が具備する露光制御装置に伝達し、測定データを元に式(1)、(2)などのEGAの計算式を用いた複雑な演算を露光制御装置を通じて実施し、上下のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差に関する回転誤差X成分Cy(rots)、Y成分Cx(rots)、倍率誤差X成分Cx(mags)、Y成分Cy(mags)を求める(工程S3)。続いて露光制御装置により、求めた重ね合わせに関する各種誤差成分値を式(3)〜(6)に代入して1組の露光ショット配列誤差成分Xmag、Ymag、Xrot、Yrotを算出する(工程S4)。
【0085】
次に得られた配列誤差の各成分を、半導体集積回路の製造歩留りや電気特性の許容範囲などから予め定められた露光ショット配列誤差成分の基準値と比較して露光ショット配列の良否を判定する(工程S5)。そして算出した誤差成分のすべてが基準値以下となっていれば、露光装置の露光ショット配列を制御するパラメータを補正せずに少なくとも前記露光ショット配列誤差成分算出に用いたウェーハ以外の、そのロットに属する残り全ウェーハに露光・現像処理を施してフォトリソ工程を終了する(工程S8)。さらに必要に応じてこのようにウェーハ上に形成されたレジストパターンを用いて次工程の処理(例えば、エッチング工程やイオン注入工程など)を行なう。
【0086】
反対に算出された配列誤差の各成分のうち一成分でも基準値を超えていれば、その配列誤差成分値の正負の符号反転値を露光装置に入力し、露光ショット配列に関する制御パラメータを補正する(工程S6)。この制御パラメータは、露光装置がその光学系や機械系などのハードウェアを通じて、露光ショットを、設定されたとおりの回転成分、倍率成分などを有する状態で露光できるようにするパラメータである。この後ウェーハからレジスト膜を剥離し(工程S7)、工程S2に戻って再度工程S2〜工程S5を行い、露光ショット配列の良否を判定する。そして算出される配列誤差成分値が基準値以下になるまで工程S2〜工程S7を繰り返す。
【0087】
こうして最終的に露光ショット配列誤差成分値が全て基準値以下となれば、そのロットに属し、少なくとも前記露光所と配列誤差成分算出に用いたウェーハ以外の残り全ウェーハに露光・現像処理を施してフォトリソ工程を終了する。その後ウェーハ上に形成された第1層目の回路パターンを有するレジスト膜をマスクとして例えばエッチング工程やイオン注入工程など次工程の処理によりウェーハ表面に加工を施す。
【0088】
次に、第2層目の回路パターンを形成するための2回目のフォトリソ工程を行う。2回目のフォトリソ工程に用いる露光装置は、スキャナよりショットエリアが小さいステップ・アンド・リピート方式の縮小投影型露光装置(ステッパ)とする。従って用いるフォトマスクに繰り返し形成される回路パターン形成領域の数は、最初(第1回目)の回路パターン形成に用いたフォトマスクより少ないものとする。
【0089】
ウェーハ表面には第1回目のフォトリソ工程後の加工により、第1層目のパターンレイヤに対応する回路パターンが形成され、また従来の重ね合わせ用のアライメントマークが露光ショット配列誤差測定用マークとは別に形成されており、2回目のフォトリソ工程において基本的には、このアライメントマークと第2層目のフォトマスク上のアライメントマークが重なるようにショットエリア位置を調整して露光する。実際には第1層目のアライメントマーク位置を読み、その結果に基づいて重ね合わせるべきショット領域の位置を演算によって算出し、ショット領域の位置が算出された位置となるようにステッパの重ね合わせを補正する前述のEGA法を採用することができる。これにより第1層目のパターンレイヤに属する回路パターンに対して第2層目のパターンレイヤに属する回路パターンを精度良く合わせることができる。
【0090】
上記EGA法における演算で算出された重ね合わせ誤差成分がすべて重ね合わせ精度に関する基準値以下であればステッパを補正することなくエッチング工程やイオン注入工程などの次工程に進む。この露光工程において、先行ウェーハで重ね合わせズレ量を測定しているならば、ロットの残りウェーハについても同条件でレジスト塗布から現像処理までを行う。もし重ね合わせ誤差成分のうち一成分でも基準値を超えていれば、ウェーハからレジスト膜を剥離し、ステッパの露光ショット配列制御パラメータとして前記算出された重ね合わせ誤差成分の符号反転値をステッパに入力して補正し、再度レジストパターンを形成する。最終的に重ね合わせ誤差成分値の全てが基準値以下となったならば、その条件でロットの残りウェーハに露光・現像を施す。以降、所定の半導体集積回路装置の製造工程フローに基づいて第2層目以上のパターンレイヤのフォトリソ工程と加工工程等を順次繰返し、半導体装置を製造する。
【0091】
以上が本発明に係るフォトリソ工程の実施形態であるが、本発明では(1)重ね合わせ測定装置を用い、ウェーハ上から選択された複数の露光ショットについて露光ショット配列誤差測定用マークの相対的位置ズレに関する量を測定し、(2)測定された複数の相対的位置ズレに関する量とEGA法において用いられているモデル式を利用して演算を行い、重ね合わせに関する誤差成分を求め、(3)求めた重ね合わせに関する誤差成分を露光ショット配列に関する誤差成分に換算するものである。
【0092】
(1)の重ね合わせ測定装置および相対的位置ズレに関する量を測定するプログラム、(2)の演算プログラムは最近のフォトリソ工程ラインには標準装備されているものであり、新たな追加労力やコストが不要である。また、(3)の換算式は式(3)〜(6)の通り簡単な四則演算であるので、極めて容易にフォトリソ工程ラインの何らかの設備、例えば露光装置の露光制御装置に内蔵する演算プログラムの変更・追加を行って換算可能にすることができる。このように本発明は、コストをほとんど上昇させることなく露光ショット配列誤差を低減させることができる露光工程、フォトリソ工程を実現でき、また本発明に係るフォトマスクはその実現に寄与するものである。
【0093】
最初に述べたように(図1参照)ショットエリアの大きさの異なる露光装置を用いる場合は、第2層目のショットエリアの一部は第1層目の2つのショットエリアに跨って配置される。本発明によれば第1層目パターンレイヤの露光ショットが配列誤差成分の基準値を満たすように精度よく配列されるので、ショットエリアの大きさが異なる露光装置を採用しても第2層目以降のパターンレイヤの重ね合わせ精度をコスト上昇をほとんど伴うことなく向上させることができる。
【0094】
上記フォトリソ工程例では第1層目のパターンレイヤをスキャナで形成し、第2層目のパターンレイヤをステッパで形成した。一般的にもウェーハ上に半導体集積回路装置の回路パターンを配列する基準となる最初の露光工程はショットエリアが大きく配列精度のよいスキャナを用いることが多い。しかし下層のパターンレイヤにステッパを、上層のパターンレイヤにスキャナ用いてもよい。また第1層目のパターンレイヤに対して露光ショット配列誤差を補正する工程を採用したが、露光ショット配列誤差が影響するパターンレイヤあれば第2層目以上のレイヤを本発明による方法で補正してもよい。その場合下層パターンレイヤとの重ね合わせ誤差と合わせて補正を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明にかかる技術は主として半導体集積回路のフォトリソ工程に用いるが、その他液晶表示素子などフォトリソ工程を必要とする各種のデバイスの製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
101 ショットエリア
102 半導体集積回路装置の回路パターン形成領域
103 設計上の露光ショット
104、106、108、110 4つのアウターマークの中心を結んでできる四角形
105、107、109、111 4つのインナーマークの中心を結んでできる四角形
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上の、露光光が照射されるショットエリアに、
半導体装置の回路パターン形成領域と、
前記ショットエリアの内側の周辺部に形成された露光ショットの配列誤差測定用マークとを備えたフォトマスクであって、
前記露光ショットの配列誤差測定用マークは、互いに寸法または形状が異なるマークの対からなると共に、前記ショットエリア内に3対以上形成され、
1対の前記マークのそれぞれが形成される前記ショットエリアにおける位置は、被処理基板上に2つの露光ショットを、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが形成された前記ショットエリアの所定部分が重なるように隣接して形成した時に、前記1対のマークのそれぞれが互いに重なる位置であることを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記露光ショットの配列誤差測定用マークを構成する1対のマークのそれぞれは、前記半導体装置の回路パターン形成領域を挟んで互いに反対側の、対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記半導体装置の回路パターン形成領域は前記ショットエリアに複数形成され、それぞれが同一の回路パターンを有することを特徴とする請求項1または2に記載のフォトマスク。
【請求項4】
前記ショットエリアが矩形であり、前記露光ショットの配列誤差測定用マークは前記ショットエリア内に4対形成され、前記4対のマークを構成するそれぞれのマークは前記ショットエリアのコーナー部近傍に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフォトマスク。
【請求項5】
前記露光ショットの配列誤差測定用マークを構成する1対のマークはボックス・イン・ボックス構造またはバーズ・イン・バーズ構造であることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトマスク。
【請求項6】
露光装置に請求項1に記載のフォトマスクを装着する工程と、
前記露光装置を用いて被処理基板上に塗布されたレジスト膜に、互いに隣接する露光ショットを、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが形成された前記ショットエリアの所定部分が重なるように配列して露光し、現像により前記レジスト膜に前記露光ショットの配列誤差測定用マークを形成する工程と、
前記レジスト膜に形成された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量を測定する工程と、
前記測定された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量を上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差と見なし、測定された当該ズレに関する量に基づいて前記重ね合わせ誤差に関する誤差成分を算出する工程と、
前記算出された重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出する工程
とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量の測定は、前記被処理基板上に形成された露光ショットから選択された複数の露光ショットに対して行い、前記重ね合わせ誤差に関する誤差成分の算出は、上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせを行うEGA法の露光ショット配列計算モデル式を用いて行うことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の算出に用いる前記重ね合わせに関する誤差成分は露光ショットに関する重ね合わせ誤差成分であり、前記露光ショットに対するX−Y直交座標系を用いた時、回転誤差X成分Cy(rots)、回転誤差Y成分Cx(rots)、倍率誤差X成分Cx(mags)、倍率誤差Y成分Cy(mags)であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出するための式は、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分を回転誤差X成分Xrot、回転誤差Y成分Yrot、倍率誤差X成分Xmag、倍率誤差Y成分Ymagとして、
Xrot=−(Cy(mags)−Cy(rots))/2
Yrot=−(Cx(mags)−Cx(rots))/2
Xmag=(Cx(mags)+Cx(rots))/2
Ymag=(Cy(mags)+Cy(rots))/2
であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記レジスト膜に形成された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量の測定は、上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差に関する量を測定するために設けられた測定装置を用いて行うことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記算出された露光ショット配列誤差に関する各誤差成分の値が予め定められた基準を満たすか否かを判定する工程と、
前記判定の結果、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値が前記基準を満たさない時は、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値に基づいて前記露光装置の露光ショット配列に関する制御パラメータを補正することにより、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値が前記基準を満たした状態で、前記露光装置が露光できるようにする工程とを含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記露光ショット配列誤差に関する各誤差成分の値が前記基準を満たした状態で露光できるようにされた前記露光装置および請求項1に記載のフォトマスクを用いて、被処理基板上に塗布されたレジスト膜を露光した後現像して第1のパターンを形成する工程と、
前記第1のパターンが形成されたレジスト膜を用いて前記被処理基板を加工し、前記被処理基板に前記第1のパターンを形成する工程と、
請求項1に記載のフォトマスクより上層の前記半導体装置の回路パターンの形成領域を備えた第2のフォトマスクを用いて、前記第1のパターンが形成された前記被処理基板上に塗布されたレジスト膜を露光した後現像して第2のパターンを形成する工程と
を含むことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載のフォトマスクに対して用いる前記露光装置と前記第2のフォトマスクに対して用いる露光装置のショットエリアの大きさは互いに異なることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のフォトマスクおよび前記第2のフォトマスクのそれぞれは、同一の回路パターンから構成される複数の前記半導体装置の回路パターン形成領域を有し、請求項1に記載のフォトマスクが備える前記半導体装置の回路パターン形成領域の数と前記第2のフォトマスクが備える前記半導体装置の回路パターン形成領域の数とは互いに異なることを特徴とする請求項12または13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のフォトマスクを用いて前記被処理基板上に塗布された前記レジスト膜を露光する工程は前記被処理基板に対する最初の露光工程であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
ガラス基板上の、露光光が照射されるショットエリアに、
半導体装置の回路パターン形成領域と、
前記ショットエリアの内側の周辺部に形成された露光ショットの配列誤差測定用マークとを備えたフォトマスクであって、
前記露光ショットの配列誤差測定用マークは、互いに寸法または形状が異なるマークの対からなると共に、前記ショットエリア内に3対以上形成され、
1対の前記マークのそれぞれが形成される前記ショットエリアにおける位置は、被処理基板上に2つの露光ショットを、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが形成された前記ショットエリアの所定部分が重なるように隣接して形成した時に、前記1対のマークのそれぞれが互いに重なる位置であることを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記露光ショットの配列誤差測定用マークを構成する1対のマークのそれぞれは、前記半導体装置の回路パターン形成領域を挟んで互いに反対側の、対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記半導体装置の回路パターン形成領域は前記ショットエリアに複数形成され、それぞれが同一の回路パターンを有することを特徴とする請求項1または2に記載のフォトマスク。
【請求項4】
前記ショットエリアが矩形であり、前記露光ショットの配列誤差測定用マークは前記ショットエリア内に4対形成され、前記4対のマークを構成するそれぞれのマークは前記ショットエリアのコーナー部近傍に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフォトマスク。
【請求項5】
前記露光ショットの配列誤差測定用マークを構成する1対のマークはボックス・イン・ボックス構造またはバーズ・イン・バーズ構造であることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトマスク。
【請求項6】
露光装置に請求項1に記載のフォトマスクを装着する工程と、
前記露光装置を用いて被処理基板上に塗布されたレジスト膜に、互いに隣接する露光ショットを、前記露光ショットの配列誤差測定用マークが形成された前記ショットエリアの所定部分が重なるように配列して露光し、現像により前記レジスト膜に前記露光ショットの配列誤差測定用マークを形成する工程と、
前記レジスト膜に形成された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量を測定する工程と、
前記測定された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量を上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差と見なし、測定された当該ズレに関する量に基づいて前記重ね合わせ誤差に関する誤差成分を算出する工程と、
前記算出された重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出する工程
とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量の測定は、前記被処理基板上に形成された露光ショットから選択された複数の露光ショットに対して行い、前記重ね合わせ誤差に関する誤差成分の算出は、上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせを行うEGA法の露光ショット配列計算モデル式を用いて行うことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の算出に用いる前記重ね合わせに関する誤差成分は露光ショットに関する重ね合わせ誤差成分であり、前記露光ショットに対するX−Y直交座標系を用いた時、回転誤差X成分Cy(rots)、回転誤差Y成分Cx(rots)、倍率誤差X成分Cx(mags)、倍率誤差Y成分Cy(mags)であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記重ね合わせ誤差に関する誤算成分から露光ショット配列誤差に関する誤差成分を算出するための式は、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分を回転誤差X成分Xrot、回転誤差Y成分Yrot、倍率誤差X成分Xmag、倍率誤差Y成分Ymagとして、
Xrot=−(Cy(mags)−Cy(rots))/2
Yrot=−(Cx(mags)−Cx(rots))/2
Xmag=(Cx(mags)+Cx(rots))/2
Ymag=(Cy(mags)+Cy(rots))/2
であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記レジスト膜に形成された前記露光ショットの配列誤差測定用マークのズレに関する量の測定は、上層と下層のマスクパターンレイヤの重ね合わせ誤差に関する量を測定するために設けられた測定装置を用いて行うことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記算出された露光ショット配列誤差に関する各誤差成分の値が予め定められた基準を満たすか否かを判定する工程と、
前記判定の結果、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値が前記基準を満たさない時は、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値に基づいて前記露光装置の露光ショット配列に関する制御パラメータを補正することにより、前記露光ショット配列誤差に関する誤差成分の値が前記基準を満たした状態で、前記露光装置が露光できるようにする工程とを含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記露光ショット配列誤差に関する各誤差成分の値が前記基準を満たした状態で露光できるようにされた前記露光装置および請求項1に記載のフォトマスクを用いて、被処理基板上に塗布されたレジスト膜を露光した後現像して第1のパターンを形成する工程と、
前記第1のパターンが形成されたレジスト膜を用いて前記被処理基板を加工し、前記被処理基板に前記第1のパターンを形成する工程と、
請求項1に記載のフォトマスクより上層の前記半導体装置の回路パターンの形成領域を備えた第2のフォトマスクを用いて、前記第1のパターンが形成された前記被処理基板上に塗布されたレジスト膜を露光した後現像して第2のパターンを形成する工程と
を含むことを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載のフォトマスクに対して用いる前記露光装置と前記第2のフォトマスクに対して用いる露光装置のショットエリアの大きさは互いに異なることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のフォトマスクおよび前記第2のフォトマスクのそれぞれは、同一の回路パターンから構成される複数の前記半導体装置の回路パターン形成領域を有し、請求項1に記載のフォトマスクが備える前記半導体装置の回路パターン形成領域の数と前記第2のフォトマスクが備える前記半導体装置の回路パターン形成領域の数とは互いに異なることを特徴とする請求項12または13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のフォトマスクを用いて前記被処理基板上に塗布された前記レジスト膜を露光する工程は前記被処理基板に対する最初の露光工程であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−221451(P2011−221451A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93236(P2010−93236)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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