フォトマスクのパターン寸法測定方法およびフォトマスク
【課題】SEMによるマスクパターン計測値を実際のマスクパターン転写に適応した値に補正することで、マスク転写特性の予想やOPCの調整を正確に行い、実用的に信頼性が高いフォトマスクのパターン寸法測定方法およびフォトマスクを提供する。
【解決手段】SEMで測定するフォトマスクのパターン寸法測定方法であって、各パターン寸法における回折光強度を測定するステップと、前記パターンをSEMで測定して測長値を得るステップと、電磁場解析シミュレーションを行い、回折光強度のシミュレーション値を得るステップと、前記回折光強度測定と前記シミュレーションとから算出されたパターン寸法値と前記SEMで測定した測長値とのオフセット量から補正値を決定するステップと、前記補正値を前記SEMで測定した他のパターン寸法値に適用するステップと、を含むことを特徴とする。
【解決手段】SEMで測定するフォトマスクのパターン寸法測定方法であって、各パターン寸法における回折光強度を測定するステップと、前記パターンをSEMで測定して測長値を得るステップと、電磁場解析シミュレーションを行い、回折光強度のシミュレーション値を得るステップと、前記回折光強度測定と前記シミュレーションとから算出されたパターン寸法値と前記SEMで測定した測長値とのオフセット量から補正値を決定するステップと、前記補正値を前記SEMで測定した他のパターン寸法値に適用するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影露光による半導体リソグラフィの光転写技術に使用されるフォトマスクのパターン寸法を走査型電子顕微鏡で計測するフォトマスクのパターン寸法測定方法およびフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
微細パターンを有する半導体デバイスを形成するためのフォトマスク(以後、単にマスクとも記す)は、原版としてのパターン線幅の微細化と共に高精度化が求められ、ゲートパターン線幅などの重要寸法はCD(Critical Dimension)として厳密に管理されている。マスクパターンの微細化が進んだ今日では、フォトマスクの微小寸法測定は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)が一般的に用いられ、測長用の走査型電子顕微鏡はCD−SEMとも呼ばれている(以後、本発明ではSEMと記す)。SEM画像からのエッジ検出手法は、測長再現性を高めることを求めてSEMの機種ごとに様々であり、マスク寸法(マスクCDとも記す)を絶対的に正しく評価することはあまり重要視されていない。したがって、実際には転写結果に対して整合性が取れるようにオフセット値を決めている。また、SEMの寸法のキャリブレーションはピッチが保証されたサンプルで行われ、パターン線幅の測長に対しての絶対的な基準は無いのが実情である。
【0003】
SEMを用いたパターンの測長においては、SEMの一次電子ビームに広がりがあることや、照射点近傍の表面から出る電子の散乱により二次電子が放出される領域に広がりがあること、ビーム走査信号がばらつくことなどの様々な原因によって、二次電子信号は電気的・数値的に変調を受ける。このため、現実にエッジ部分の信号には広がりが生じてしまう。
【0004】
その結果、従来のSEMによる計測では、ライン形状を示す輝線の外側をエッジとして検出してしまい、実際のパターンエッジよりも数nm〜数10nmだけ外側にある箇所をエッジと定義してしまうことも生じている。また、これらの現象はパターンの高さや幅、その断面形状、一次電子ビームの照射条件、パターンの材質などによっても変動する。特に、微細化が進む半導体やフォトマスクのパターンの計測では、パターンの断面形状における寸法計測位置が重要になっている。
【0005】
一方、上記のエッジ近傍の信号を変調させる要因を補正し、SEMによるパターン寸法の信頼性を高めるためにいくつかの測定方法が提案されている。例えば、高密度のライン/スペースパターンではSEM画像においてラインとスペースの判別が困難となることが指摘され、SEMの測長用の新しいアルゴリズムが提案されている(非特許文献1参照)。非特許文献1には、無限小でないガウシアン分布のビーム径を持つSEMのプロファイルはパターンエッジより外側でピークの傾きを持つという図解が示されている。また、隣接パターンとの距離によりSEM寸法値が変化する問題を解決するため、SEMプロファイルからのエッジ検出アルゴリズムが提案されている(特許文献1参照)。さらに、ウェハ上のレジスト測長に関して、断面形状変化に伴うSEM画像の変化をデータベースとして、レジストとウェハの接点に合うように測長結果を補正する半導体パターン計測方法が提案されている(特許文献2参照)。また、パターン側壁の傾斜角によるパターン寸法の計測誤差がパターン断面形状およびアルゴリズムに依存して変化していることが示されている(非特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3512621号公報
【特許文献2】特開2005−156436号公報
【非特許文献1】J.Matsumoto,et al.,Proc.SPIE 6349,634941−1〜6(2006)
【非特許文献2】J.S.Villarrubia,et al.,Proc.SPIE 5038,pp.138−149(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1および2、非特許文献1および2のいずれの方法を用いるにしろ、パターンの微細化とともにマスク寸法の変化に対して、フォトマスクを用いたウェハへのパターン転写におけるウェハ上のコントラストやマスク誤差増大因子(Mask Error Enhancement Factor;以後、MEEFと記す)などの転写特性の変化が大きくなるという問題が生じていた。上記のように、SEMが検出するエッジにより得られた測定値が、実際のフォトマスクパターンの膜構造のどこに相当しているかが不明瞭であるために、シミュレーションで最適とされたマスクの設計値が、実際のマスクの寸法がずれているために最適とならないといった問題が起きていた。従来、マスクCDのずれは、ウェハ転写工程での露光量の見積もりずれ程度の影響で済んでいたが、ウェハ上のハーフピッチ45nm以降においては、マスクCDによってウェハ転写工程でのコントラスト、MEEFなどの転写特性の変化が非常に厳しくなっている。
【0007】
例えば、図13は、透過率6%のハーフトーンフォトマスク(HT)でライン/スペースパターンを形成し、ウェハ上のハーフピッチ(hpで表わす)45nm、ライン幅40nmを目標とした場合(マスク上での目標寸法は160nm)、SEMによるマスクCDの読み取り値に誤差が生じた場合、フォトマスクの転写性能を示すコントラストとMEEFに与える影響の程度を、本発明者がシミュレーションにより評価した図である。図13(a)は、ライン(131)/スペース(132)パターンを有するマスクの平面模式図、図13(b)はマスクのSEM写真であり、ライン幅の読み取り値を3通り(x−1〜x−3)に変えた場合について、コントラストとMEEF値を求めた。
【0008】
図13(c)はシミュレーションによる評価結果であり、x軸がウェハ寸法に換算されたマスクのライン寸法、左のy軸がウェハ上のコントラスト、右のy軸がMEEF値である。図13(c)が示すように、SEM読み取り値が目標通りのウェハ上のパターン寸法の40nm(x−2)であるならば、MEEF値は2.5となるが、もしもSEM読み取り誤差が+10nm大きくなると(x−1)、MEEF値は3となり、逆に、SEM読み取り誤差が−10nmと小さくなると(x−3)、MEEF値は2.1となってしまう。上記のように、フォトマスクのパターン寸法の読み取り誤差は、MEEFなどのウェハ転写評価の誤った判断につながってしまうという問題があった。
【0009】
また、光近接効果補正(Optical Proximity Correction;以後、OPCと記す)のためにシミュレーションを行い、転写実験からさらにマスク設計の調整をしようとした場合、パターン寸法の読み取り誤差のためにマスク寸法をシミュレーション上からずれて見積もっていると、マスク設計の変更が予想通りの転写結果にならず、マスクの設計コストや時間がさらに増え、設計負荷が増大してしまうという問題があった。
【0010】
上記の問題点に対して、パターン寸法をSEMで測定したフォトマスクを用いてウェハ露光実験を実際に行い、その結果に基づいてSEM測定値を補正する方法は、露光装置の性能、レジスト特性、プロセス安定性、寸法測定精度などのプロセス要因に大きく左右され、客観性・信頼性に欠け、さらに時間、コストもかかってしまうという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、SEMによるマスクパターン計測値を実際のマスクパターン転写に適応した値に補正することで、マスク転写特性の予想やOPCの調整を正確に行い、実用的に信頼性が高いフォトマスクのパターン寸法測定方法および上記のパターン寸法測定方法を用いてパターンの品質保証をしたフォトマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、投影露光に用いられるフォトマスクのパターン寸法を走査型電子顕微鏡で測定するフォトマスクのパターン寸法測定方法であって、前記投影露光と同じ波長の照明光により前記投影露光で用いられる範囲内の入射角度で、前記フォトマスクのライン/スペースのパターンを照明して各パターン寸法における回折光強度を測定するステップと、前記ライン/スペースのパターンを前記走査型電子顕微鏡で測定して測長値を得るステップと、前記回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得るステップと、前記回折光強度測定と前記電磁場解析シミュレーションとから算出されたパターン寸法値と前記走査型電子顕微鏡で測定した測長値とのオフセット量から前記走査型電子顕微鏡で測定したパターン寸法の補正値を決定するステップと、前記補正値を前記走査型電子顕微鏡で測定した他のパターン寸法値に適用するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、請求項1に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法において、前記回折光強度の測定において、前記ライン/スペースのパターンが、前記照明光の入射領域内で単一ピッチ、単一線幅の繰り返しパターンであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、請求項1または請求項2に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法において、前記回折光のうち少なくとも0次光と1次光の回折光強度の測定をリソグラフィシミュレーション顕微鏡で行うことを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法において、前記電磁場解析シミュレーションをあらかじめ行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得てデータベース化し、前記データベース化したシミュレーション値を前記電磁場解析シミュレーションのシミュレーション値として用いることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、前記投影露光のプロセス条件および前記フォトマスクの製造条件に変更がない限りにおいて、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法により決定された前記補正値を、前記走査型電子顕微鏡を用いた他のフォトマスクの同一のパターンの寸法測定の補正値として用いることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6の発明に係るフォトマスクは、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法により前記フォトマスク面内のパターンのオフセット量を算出し、前記算出したオフセット量が所定の基準値内に入るかどうかを検証することで、前記フォトマスク面内のパターンの断面形状および光学特性を品質保証したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項7の発明に係るフォトマスクは、請求項6に記載のフォトマスクにおいて、前記オフセット量が、前記フォトマスク面内の5箇所以上で算出されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法によれば、ウェハ転写条件と同じ波長の照明光によりウェハ転写で用いられる範囲の入射角度で、フォトマスクのパターンを照明して回折光強度を測定することにより、フォトマスクの断面形状による誤差などのうち転写に影響するものだけを含んだ実効的なマスク寸法を得ることが可能となり、本発明のパターン寸法測定方法を用いてSEM測長値を補正することで、マスク転写特性の予想やOPCの調整を正確に行うことが可能となる。
【0020】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法は、従来のようにマスク断面を切断し、その断面形状を調べるような困難な作業が不要となり、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法によりマスク面内のオフセット量を算出し、所定の基準値と比較することにより、従来は保証されていなかったマスクパターンの断面形状や遮光膜や位相シフト膜の光学特性をも品質保証したフォトマスクを提供することが可能となる。
【0021】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いたパターンを有するフォトマスクは、ウェハへのパターン転写において正確なコントラストやMEEF値を得ることが可能となり、その結果、ウェハ転写露光工程における品質、生産性を向上させるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(フォトマスクのパターン寸法測定方法)
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法の工程の一例を示すフロー図である。先ず、寸法測定すべきパターンを有するフォトマスクを準備する。パターンとしては、複数種類のピッチ、線幅の組合せがある通常の半導体用フォトマスクのライン/スペースのパターンが用いられる。それぞれの測定では、照明光の入射領域内でライン/スペースのパターンが単一ピッチ、線幅の繰り返しパターンであることが、回折光の解析を複雑にすることが無くより好ましい。
【0024】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法の一例としての図1に示す工程は、先ず投影露光と同じ波長の照明光により投影露光で用いられる範囲内の入射角度で、フォトマスクのライン/スペースのパターンを照明し、各パターン寸法における回折光強度を測定する(第1のステップ)。回折光強度の測定は、リソグラフィシミュレーション顕微鏡あるいはエリプソメータを用いて行うことができるが、リソグラフィシミュレーション顕微鏡が種々の条件設定が容易でより好ましい。本発明の好ましい形態としては、ライン/スペースパターンによる回折光のうち少なくとも0次光と1次光の回折光強度の測定をリソグラフィシミュレーション顕微鏡で行うものである。リソグラフィシミュレーション顕微鏡としては、例えば、エアリアルイメージ測定システム(Aerial Image Measurement System:以後、AIMS(登録商標)と記す)が挙げられる。本発明においては、AIMSを用いた実施形態について述べる。
【0025】
図2は、フォトマスクのライン/スペ−スパターンによる回折光の強度測定に用いたリソグラフィシミュレーション顕微鏡(AIMS)の光学系の概略説明図であり、コノスコープ観察が可能な透過型顕微鏡である。照明用光源としてはウェハ投影露光と同じ露光波長の光源が用いられ、本発明ではArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いた。図2に示すように、照明系に実際のウェハ投影露光で用いられる二重極、四重極、輪帯などの瞳フィルタの一部に相当する位置にσアパーチャ21(図2はモノポールの場合を示す)を用いることによって、実際のウェハ投影露光で用いられる範囲内の入射角度で照明し、CCDもしくはフォトディテクターよりなる光検出部25により回折光の強度を測定した。通常のAIMSの光学系ではウェハ転写像がそのまま出力されるが、本発明ではベルトランズレンズ24を挿入することにより回折光の強度測定を可能としている。光検出部25は、照明光の入射角、マスクパターンのピッチなどに応じて位置を変えることができる。
【0026】
次に、上記のフォトマスクの回折光強度測定と同じ領域のライン/スペースパターンをSEMで測定して測長値を得る(第2のステップ)。
【0027】
次に、上記の回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得る(第3のステップ)。マスクパターンの転写特性を見積もるためのシミュレーション・ソフトウェアとしては、例えば、EM−Suite(商品名:Panoramic Technology社製)が用いられ、また、フォトマスクの三次元電磁界シミュレーションにはTEMPESTpr2(EM−Suiteオプション)によるFDTD法(時間領域差分法、有限差分時間領域法とも称する。)で、Non−constant scattering coefficientモデルを用いることにより回折光強度のシミュレーション値が得られる。
【0028】
本発明において、電磁場解析シミュレーションは独立した工程であり、本発明の別な実施形態においては、上記の第1のステップのリソグラフィ顕微鏡などによる回折光強度測定、第2のステップのSEM測定および第3のステップの電磁場解析シミュレーションの順番をそれぞれ入れ替えることも可能である。例えば、回折光強度測定、電磁場解析シミュレーション、SEM測定の順番、あるいは電磁場解析シミュレーション、回折光強度測定、SEM測定の順番、あるいはSEM測定、回折光強度測定、電磁場解析シミュレーションの順番などが例示できる。しかし、通常、SEM測定を行うと清浄なマスク表面が汚染されるおそれがあるので再度洗浄しないと光学測定に適さないことがある。したがって、SEM測定は回折光強度測定の後に行う方がより好ましい。
【0029】
上記のように、電磁場解析シミュレーションは独立した工程であるので、別な実施形態として、電磁場解析シミュレーションをあらかじめ行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得てデータベース化しておき、このデータベース化したシミュレーション値を電磁場解析シミュレーションのシミュレーション値として用いることも可能である。
【0030】
次に、上記の回折光強度測定および電磁場解析シミュレーションとから算出されるパターン寸法値とSEMによる測長値とのオフセット量からSEMで計測したパターン寸法の補正値を決定する(第4のステップ)。
【0031】
次いで、上記の補正値をSEMで測定した他のパターン寸法値に適用する(第5のステップ)ことにより、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いた実用的なフォトマスクが得られる。
【0032】
本発明の別な実施形態として、フォトマスクを使用する投影露光のプロセス条件およびフォトマスクのパターンの膜質や断面形状に影響するマスク製造条件に変更がない限りにおいて、上記のフォトマスクのパターン寸法測定方法により決定された補正値を、同じ走査型電子顕微鏡を用いた他のフォトマスクの上記の補正値を算出したパターンと同一のパターンの寸法測定の補正値として用いることができる。
【0033】
(フォトマスク)
次に、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法によりパターンの品質を保証したフォトマスクについて説明する。
【0034】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法において、1枚のフォトマスクの面内数箇所で各々のパターンのオフセット量が異なるということは、投影露光のプロセス条件およびマスク製造条件を同じくしているのだから、オフセット量の差異はパターンの断面形状、あるいは遮光膜や位相シフト膜の光学特性が異なるということを意味するものである。
【0035】
従来、マスクパターンの断面形状を調べるに際し、実際に露光に使用するマスクを事前に切断して調べることはできなかった。仮に、マスクを切断してその断面形状を調べようとしても、マスクのように厚い材料を正確に切断するのは困難であった。本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法は、マスク断面を切断し、その断面形状を調べるような困難な作業が不要となり、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法によりマスク面内のオフセット量を算出し、所定の基準値と比較することにより、従来は保証されていなかったマスクパターンの断面形状や遮光膜や位相シフト膜の光学特性をも品質保証したフォトマスクを提供することが可能となる。上記の所定の基準値としては、あらかじめパターン寸法を測定して得られた数値を基準にして設定すればよい。
【0036】
上記のオフセット量を測定する箇所としては、オフセット量のマスク面内分布を把握するために、フォトマスク面内の5箇所以上で算出するのが好ましい。例えば、面内中央と左右の上下の計5箇所などが示される。
以下、実施例によりさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0037】
(実施例1)ハーフトーンマスク
測定対象のフォトマスクとして、モリブデンシリサイド系6%ハーフトーンマスク(ブランクスはHOYA社製商品名A61Aを使用)を用意した。このマスクは測長評価用として、27×27μmのチップ領域にウェハ上の寸法に換算してハーフピッチ(hp)40nm〜70nmの1:1のライン/スペースパターンが複数形成されたものである。
【0038】
先ず、リソグラフィシミュレーション顕微鏡(カールツァイス社製AIMS45−193i)を用い、照明用光源としてはウェハ投影露光と同じ露光波長の光源として、ArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いた。ハーフピッチ45nmのライン/スペースパターンを測定対象の中心にして、照明系は、実際のウェハ転写条件と同じ照明光の入射条件として、クォードラポールの瞳フィルタを用いた場合に相当する位置にモノポールの瞳フィルタを設置し、照明光を入射し、光検出部にCCDを用いて回折光の強度を測定した。
【0039】
次に、上記のフォトマスクの回折光強度測定に用いたハーフピッチ45nmのライン/スペースパターンをSEMで測定して測長値を得た。SEMは製造メーカ、装置ごとにオフセット量が異なるが、本実施例で用いたSEMはKLA8100XPR(KLA−Tencor社製)である。以下の実施例においても同じSEMを用いた。
【0040】
次に、上記の回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得た。シミュレーション・ソフトウェアとしては、EM−Suite(商品名:Panoramic Technology社製)を用いた。また、フォトマスクの三次元電磁界シミュレーションにはTEMPESTpr2(EM−Suiteオプション)によるFDTD法(時間領域差分法、有限差分時間領域法とも称する。)で、Non−constant scattering coefficientモデルを用いた。
【0041】
図3は、実施例1のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。図3は、上記のSEMにより測定したマスクライン寸法(本発明ではマスクCDとも記す)としての各測長値(横軸)に対し、各々の測長値におけるAIMSによる回折光強度の測定結果(点で表示)を示し、同時に、シミュレーションによりマスクCDに対する回折光強度の結果(曲線で表示)を示すものである。マスクCDは、ウェハにおける寸法(nm)に換算されている。回折光強度は、マスクパターンのないガラス部をあらかじめ測定して1として規格化している。そのため、光学系のアポダイゼーションやCCDの受光感度エラーは打ち消されている。図3の各々のSEM測長値に対するAIMS測定による回折光強度を示す各点において、1次光、0次光、解像に寄与しない回折光の各々を、順にaimsTE 1st、aimsTE 0th、aimsy−TEで示す。図3のシミュレーションによる各回折光強度の結果を示す各曲線において、1次光、0次光、解像に寄与しない回折光の各々を、順にsimTE 1st、simTE 0th、simy−TEで示す。
【0042】
図3が示すように、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果は大きくずれており、マスクCDを基準とした回折光強度が、AIMSとシミュレーションで大きく異なり、AIMSの方がシミュレーションよりも全体に図面右側にシフトしていることが示されている。
【0043】
そこで、図3を基にして、SEMによるマスクCD測定値から一定量の数値をオフセット量として減じてみる。図4は、図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−10nmとして補正した図であり、図5は、図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図であり、図6は、図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−30nmとして補正した図である。図4〜図6に用いている記号は図3と同じである。なお、マスクCDはウェハ上の寸法に換算してあるので、4倍レチクルであるフォトマスク上の実際のパターン寸法は、図中から読み取れる寸法数値の4倍に相当する。本実施例では、−5nm×4=−20nmと算出した。
【0044】
図4〜図6において、オフセット量を−20nmとした図5は、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果がほぼ完全に一致している。すなわち、SEMで計測したパターン寸法の補正値を−20nmとすることにより、マスクCDによらず、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られることが示された。
【0045】
次いで、上記の補正値−20nmをSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いてマスクCDが保証された実用的なフォトマスクを得た。
【0046】
(実施例2)バイナリマスク
本実施例は、パターン形成膜の種類を変えた場合の測定例である。フォトマスクとして多用されているクロム系バイナリマスク(ブランクスはHOYA社製商品名NTAR7を使用)を用意した。実施例1と同様に、このマスクは測長評価用として、27×27μmのチップ領域にウェハ上の寸法に換算してハーフピッチ40〜70nmの1:1のライン/スペースパターンが複数形成されたものである。
【0047】
実施例1と同様に、先ず、AIMSを用い、照明用光源にArFエキシマレーザを用い、照明系は、実際のウェハ転写条件と同じ照明光の入射条件として、ハーフピッチ45nmのライン/スペースパターンを測定対象の中心にして、クォードラポールの瞳フィルタを用いた場合に相当する位置にモノポールの瞳フィルタを設置し、照明光を入射し、結像光学系にベルトランズレンズを挿入し、光検出部にCCDを用いて回折光の強度を測定した。
【0048】
次に、上記のフォトマスクの回折光強度測定に用いたライン/スペースパターンをSEMで測定して測長値を得た。
【0049】
次に、実施例1と同様にして、上記の回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得た。
【0050】
図7は、実施例2のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。図7は、図3と同様に、上記のSEMにより測定したマスクライン寸法(マスクCD)としての各測長値(横軸)に対し、各々の測長値におけるAIMSによる回折光強度の測定結果(点で表示)を示し、同時に、シミュレーションによりマスクCDに対する回折光強度の結果(曲線で表示)を示す。マスクCDは、ウェハにおける寸法(nm)に換算されている。回折光強度は、マスクパターンのないガラス部をあらかじめ測定して1として規格化している。図7の各々のSEM測長値に対するAIMS測定による回折光強度を示す各点において、1次光、0次光、解像に寄与しない回折光の各々を、順にaimsTE 1st、aimsTE 0th、aimsy−TEで示す。図7のシミュレーションによる各回折光強度の結果を示す各曲線において、1次光、0次光、解像に寄与しない回折光の各々を、順にsimTE 1st、simTE 0th、simy−TEで示す。
【0051】
図7が示すように、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果はずれており、マスクCDを基準とした回折光強度が、AIMSとシミュレーションで異なり、AIMSの方がシミュレーションよりも全体に図面右側にシフトしていることが示されている。
【0052】
そこで、図7の数値を比較し、SEMによるマスクCD測定値から一定量の数値を減じてみた。図8は、SEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。図8に用いている記号は図7と同じである。上記と同様に、マスクCDはウェハ上の寸法に換算してあるので、4倍レチクルであるフォトマスク上の実際のパターン寸法は、図中から読み取れる寸法数値の4倍に相当する。
【0053】
図7における測定値に対し、オフセット量を−20nmとした図8は、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果がほぼ完全に一致している。すなわち、SEMで計測したパターン寸法の補正値を−20nmとすることにより、マスクCDによらず、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られることが示された。
【0054】
次いで、上記の補正値−20nmをSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いてマスクCDが保証された実用的なフォトマスクを得た。
【0055】
実施例1および実施例2が示すように、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法は、たとえフォトマスクの膜の種類が異なったとしても、オフセット量を適切に選定して補正量とすることにより、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られるものである。
【0056】
(実施例3)狭ピッチ:hp40nm
本実施例はパターンが狭ピッチのライン/スペースパターンの測定例である。測定対象のフォトマスクは、実施例1と同じマスクであるが、測定パターンがハーフピッチ(hp)40nmのライン/スペースパターンである。
【0057】
実施例1と同様にして、図9に示すように、実施例3のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図を得た。図9に用いている記号は図3と同じである。
【0058】
図9が示すように、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果はずれており、マスクCDを基準とした回折光強度が、AIMSとシミュレーションで異なり、AIMSの方がシミュレーションよりも全体に図面右側にシフトしていることが示されている。
【0059】
そこで、図9の数値を比較し、SEMによるマスクCD測定値から一定量の数値を減じてみた。図10は、SEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。図10に用いている記号は図9と同じである。上記と同様に、マスクCDはウェハ上の寸法に換算してあるので、4倍レチクルであるフォトマスク上の実際のパターン寸法は、図中から読み取れる寸法数値の4倍に相当する。本実施例では、−5nm×4=−20nmと算出した。
【0060】
図9における測定値に対し、オフセット量を−20nmとした図10は、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果がほぼ完全に一致している。すなわち、SEMで計測したパターン寸法の補正値を−20nmとすることにより、マスクCDによらず、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られることが示された。
【0061】
次いで、上記の補正値−20nmをSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いてマスクCDが保証された実用的なフォトマスクを得た。
【0062】
(実施例4)大ピッチ:hp70nm
本実施例はパターンが大ピッチのライン/スペースパターンの測定例である。測定対象のフォトマスクは、実施例1および実施例3と同じマスクであるが、測定パターンがハーフピッチ(hp)70nmのライン/スペースパターンである。
【0063】
実施例1と同様にして、図11に示すように、実施例4のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図を得た。図11に用いている記号は図3と同じである。
【0064】
図11が示すように、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果はずれており、マスクCDを基準とした回折光強度が、AIMSとシミュレーションで異なり、AIMSの方がシミュレーションよりも全体に図面右側にシフトしていることが示されている。
【0065】
そこで、図11の数値を比較し、SEMによるマスクCD測定値から一定量の数値を減じてみた。図12は、SEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。図12に用いている記号は図11と同じである。上記と同様に、マスクCDはウェハ上の寸法に換算してあるので、4倍レチクルであるフォトマスク上の実際のパターン寸法は、図中から読み取れる寸法数値の4倍に相当する。本実施例では、−5nm×4=−20nmと算出した。
【0066】
図11における測定値に対し、オフセット量を−20nmとした図12は、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果がほぼ完全に一致している。すなわち、SEMで計測したパターン寸法の補正値を−20nmとすることにより、マスクCDによらず、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られることが示された。
【0067】
次いで、上記の補正値−20nmをSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いてマスクCDが保証された実用的なフォトマスクを得た。
【0068】
実施例1、実施例3および実施例4が示すように、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法はライン/スペースパターンの狭ピッチ、大ピッチに依存せずに同じ補正量で対応することができ、適用範囲の広い測定方法であることが示された。
上記の実施例1〜4では、オフセット量がいずれもSEM測定値より減じる場合を例示したが、本発明のパターン寸法測定方法においては、オフセット量がSEM測定値より増す場合、あるいはSEM測定値と一致する場合もあり得るものである。
【0069】
(実施例5)
実施例1で算出した電磁場解析シミュレーションによる各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値をデータベース化した。次いで実施例1と同様のハーフピッチ(hp)40nm〜70nmの1:1のライン/スペースパターンが複数形成されたハーフトーンマスクを準備し、実施例1と同様にして、AIMSによりマスクパターンによる回折光強度を測定し、次に、マスクパターンをSEMで測定して測長値を得た。電磁場解析シミュレーションによる回折光強度のシミュレーション値には上記のデータベース化したシミュレーション値を用いた。
【0070】
次に、上記の回折光解析とシミュレーション値とから算出されたパターン寸法値とSEMで測定した測長値とのオフセット量からSEMで測定したパターン寸法の補正値を決定し、この補正値をSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、パターン寸法測定を行った。本実施例では、回折光強度のシミュレーション値のデータベースを使用することにより、パターン寸法測定時間が大幅に短縮された。
【0071】
(実施例6)
実施例1のパターン寸法測定方法により決定された補正値−20nmを用い、実施例1と同じSEMを用いて、他の実施例1と同種のハーフトーンマスクの上記の補正値を算出したパターンと同じハーフピッチ(hp)40nm〜70nmの1:1のライン/スペースパターンの寸法測定に適用した。フォトマスクを使用する投影露光のプロセス条件およびフォトマスクのパターンの膜質や断面形状に影響するマスク製造条件に変更がない限りにおいて、同じSEMを用いて異なるフォトマスクの同一のパターンの寸法測定に適用できることを確認した。
【0072】
(実施例7)
実施例1で得られたパターン寸法の補正値−20nmを基にして、マスクパターンの品質を管理する基準値を−20nm±2nmと設定した。次に、実施例1で使用したハーフトーンマスクの面内5箇所(中央と左右の上下)のパターンのオフセット量を求めたところ、いずれの箇所のオフセット量も基準値内に入っていることが確認された。したがって、本実施例に用いたハーフトーンマスクは、マスク面内において、マスクパターンの断面形状に台形や逆台形のような異常が無く、ハーフトーン位相シフト膜の光学特性が適切であることが保証され、パターン寸法測定と共に高品質のフォトマスクであることを保証することができた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法の工程の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明の回折光強度測定に用いたリソグラフィシミュレーション顕微鏡(AIMS)の光学系の概略説明図である。
【図3】実施例1のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。
【図4】図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−10nmとして補正した図である。
【図5】図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。
【図6】図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−30nmとして補正した図である。
【図7】実施例2のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。
【図8】図7に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。
【図9】実施例3のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。
【図10】図9に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。
【図11】実施例4のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。
【図12】図9に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。
【図13】SEMによるマスクCDの読み取り値の誤差が生じた場合のコントラストとMEEFに与える影響をシミュレーションにより評価した図である。
【符号の説明】
【0074】
21 σアパーチャ
22 マスク
23 NAアパーチャ
24 ベルトランレンズ
25 光検出部(CCDまたはフォトディテクター)
131 ライン
132 スペース
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影露光による半導体リソグラフィの光転写技術に使用されるフォトマスクのパターン寸法を走査型電子顕微鏡で計測するフォトマスクのパターン寸法測定方法およびフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
微細パターンを有する半導体デバイスを形成するためのフォトマスク(以後、単にマスクとも記す)は、原版としてのパターン線幅の微細化と共に高精度化が求められ、ゲートパターン線幅などの重要寸法はCD(Critical Dimension)として厳密に管理されている。マスクパターンの微細化が進んだ今日では、フォトマスクの微小寸法測定は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)が一般的に用いられ、測長用の走査型電子顕微鏡はCD−SEMとも呼ばれている(以後、本発明ではSEMと記す)。SEM画像からのエッジ検出手法は、測長再現性を高めることを求めてSEMの機種ごとに様々であり、マスク寸法(マスクCDとも記す)を絶対的に正しく評価することはあまり重要視されていない。したがって、実際には転写結果に対して整合性が取れるようにオフセット値を決めている。また、SEMの寸法のキャリブレーションはピッチが保証されたサンプルで行われ、パターン線幅の測長に対しての絶対的な基準は無いのが実情である。
【0003】
SEMを用いたパターンの測長においては、SEMの一次電子ビームに広がりがあることや、照射点近傍の表面から出る電子の散乱により二次電子が放出される領域に広がりがあること、ビーム走査信号がばらつくことなどの様々な原因によって、二次電子信号は電気的・数値的に変調を受ける。このため、現実にエッジ部分の信号には広がりが生じてしまう。
【0004】
その結果、従来のSEMによる計測では、ライン形状を示す輝線の外側をエッジとして検出してしまい、実際のパターンエッジよりも数nm〜数10nmだけ外側にある箇所をエッジと定義してしまうことも生じている。また、これらの現象はパターンの高さや幅、その断面形状、一次電子ビームの照射条件、パターンの材質などによっても変動する。特に、微細化が進む半導体やフォトマスクのパターンの計測では、パターンの断面形状における寸法計測位置が重要になっている。
【0005】
一方、上記のエッジ近傍の信号を変調させる要因を補正し、SEMによるパターン寸法の信頼性を高めるためにいくつかの測定方法が提案されている。例えば、高密度のライン/スペースパターンではSEM画像においてラインとスペースの判別が困難となることが指摘され、SEMの測長用の新しいアルゴリズムが提案されている(非特許文献1参照)。非特許文献1には、無限小でないガウシアン分布のビーム径を持つSEMのプロファイルはパターンエッジより外側でピークの傾きを持つという図解が示されている。また、隣接パターンとの距離によりSEM寸法値が変化する問題を解決するため、SEMプロファイルからのエッジ検出アルゴリズムが提案されている(特許文献1参照)。さらに、ウェハ上のレジスト測長に関して、断面形状変化に伴うSEM画像の変化をデータベースとして、レジストとウェハの接点に合うように測長結果を補正する半導体パターン計測方法が提案されている(特許文献2参照)。また、パターン側壁の傾斜角によるパターン寸法の計測誤差がパターン断面形状およびアルゴリズムに依存して変化していることが示されている(非特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3512621号公報
【特許文献2】特開2005−156436号公報
【非特許文献1】J.Matsumoto,et al.,Proc.SPIE 6349,634941−1〜6(2006)
【非特許文献2】J.S.Villarrubia,et al.,Proc.SPIE 5038,pp.138−149(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1および2、非特許文献1および2のいずれの方法を用いるにしろ、パターンの微細化とともにマスク寸法の変化に対して、フォトマスクを用いたウェハへのパターン転写におけるウェハ上のコントラストやマスク誤差増大因子(Mask Error Enhancement Factor;以後、MEEFと記す)などの転写特性の変化が大きくなるという問題が生じていた。上記のように、SEMが検出するエッジにより得られた測定値が、実際のフォトマスクパターンの膜構造のどこに相当しているかが不明瞭であるために、シミュレーションで最適とされたマスクの設計値が、実際のマスクの寸法がずれているために最適とならないといった問題が起きていた。従来、マスクCDのずれは、ウェハ転写工程での露光量の見積もりずれ程度の影響で済んでいたが、ウェハ上のハーフピッチ45nm以降においては、マスクCDによってウェハ転写工程でのコントラスト、MEEFなどの転写特性の変化が非常に厳しくなっている。
【0007】
例えば、図13は、透過率6%のハーフトーンフォトマスク(HT)でライン/スペースパターンを形成し、ウェハ上のハーフピッチ(hpで表わす)45nm、ライン幅40nmを目標とした場合(マスク上での目標寸法は160nm)、SEMによるマスクCDの読み取り値に誤差が生じた場合、フォトマスクの転写性能を示すコントラストとMEEFに与える影響の程度を、本発明者がシミュレーションにより評価した図である。図13(a)は、ライン(131)/スペース(132)パターンを有するマスクの平面模式図、図13(b)はマスクのSEM写真であり、ライン幅の読み取り値を3通り(x−1〜x−3)に変えた場合について、コントラストとMEEF値を求めた。
【0008】
図13(c)はシミュレーションによる評価結果であり、x軸がウェハ寸法に換算されたマスクのライン寸法、左のy軸がウェハ上のコントラスト、右のy軸がMEEF値である。図13(c)が示すように、SEM読み取り値が目標通りのウェハ上のパターン寸法の40nm(x−2)であるならば、MEEF値は2.5となるが、もしもSEM読み取り誤差が+10nm大きくなると(x−1)、MEEF値は3となり、逆に、SEM読み取り誤差が−10nmと小さくなると(x−3)、MEEF値は2.1となってしまう。上記のように、フォトマスクのパターン寸法の読み取り誤差は、MEEFなどのウェハ転写評価の誤った判断につながってしまうという問題があった。
【0009】
また、光近接効果補正(Optical Proximity Correction;以後、OPCと記す)のためにシミュレーションを行い、転写実験からさらにマスク設計の調整をしようとした場合、パターン寸法の読み取り誤差のためにマスク寸法をシミュレーション上からずれて見積もっていると、マスク設計の変更が予想通りの転写結果にならず、マスクの設計コストや時間がさらに増え、設計負荷が増大してしまうという問題があった。
【0010】
上記の問題点に対して、パターン寸法をSEMで測定したフォトマスクを用いてウェハ露光実験を実際に行い、その結果に基づいてSEM測定値を補正する方法は、露光装置の性能、レジスト特性、プロセス安定性、寸法測定精度などのプロセス要因に大きく左右され、客観性・信頼性に欠け、さらに時間、コストもかかってしまうという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、SEMによるマスクパターン計測値を実際のマスクパターン転写に適応した値に補正することで、マスク転写特性の予想やOPCの調整を正確に行い、実用的に信頼性が高いフォトマスクのパターン寸法測定方法および上記のパターン寸法測定方法を用いてパターンの品質保証をしたフォトマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、投影露光に用いられるフォトマスクのパターン寸法を走査型電子顕微鏡で測定するフォトマスクのパターン寸法測定方法であって、前記投影露光と同じ波長の照明光により前記投影露光で用いられる範囲内の入射角度で、前記フォトマスクのライン/スペースのパターンを照明して各パターン寸法における回折光強度を測定するステップと、前記ライン/スペースのパターンを前記走査型電子顕微鏡で測定して測長値を得るステップと、前記回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得るステップと、前記回折光強度測定と前記電磁場解析シミュレーションとから算出されたパターン寸法値と前記走査型電子顕微鏡で測定した測長値とのオフセット量から前記走査型電子顕微鏡で測定したパターン寸法の補正値を決定するステップと、前記補正値を前記走査型電子顕微鏡で測定した他のパターン寸法値に適用するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、請求項1に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法において、前記回折光強度の測定において、前記ライン/スペースのパターンが、前記照明光の入射領域内で単一ピッチ、単一線幅の繰り返しパターンであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、請求項1または請求項2に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法において、前記回折光のうち少なくとも0次光と1次光の回折光強度の測定をリソグラフィシミュレーション顕微鏡で行うことを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法において、前記電磁場解析シミュレーションをあらかじめ行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得てデータベース化し、前記データベース化したシミュレーション値を前記電磁場解析シミュレーションのシミュレーション値として用いることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5の発明に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法は、前記投影露光のプロセス条件および前記フォトマスクの製造条件に変更がない限りにおいて、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法により決定された前記補正値を、前記走査型電子顕微鏡を用いた他のフォトマスクの同一のパターンの寸法測定の補正値として用いることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6の発明に係るフォトマスクは、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法により前記フォトマスク面内のパターンのオフセット量を算出し、前記算出したオフセット量が所定の基準値内に入るかどうかを検証することで、前記フォトマスク面内のパターンの断面形状および光学特性を品質保証したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項7の発明に係るフォトマスクは、請求項6に記載のフォトマスクにおいて、前記オフセット量が、前記フォトマスク面内の5箇所以上で算出されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法によれば、ウェハ転写条件と同じ波長の照明光によりウェハ転写で用いられる範囲の入射角度で、フォトマスクのパターンを照明して回折光強度を測定することにより、フォトマスクの断面形状による誤差などのうち転写に影響するものだけを含んだ実効的なマスク寸法を得ることが可能となり、本発明のパターン寸法測定方法を用いてSEM測長値を補正することで、マスク転写特性の予想やOPCの調整を正確に行うことが可能となる。
【0020】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法は、従来のようにマスク断面を切断し、その断面形状を調べるような困難な作業が不要となり、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法によりマスク面内のオフセット量を算出し、所定の基準値と比較することにより、従来は保証されていなかったマスクパターンの断面形状や遮光膜や位相シフト膜の光学特性をも品質保証したフォトマスクを提供することが可能となる。
【0021】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いたパターンを有するフォトマスクは、ウェハへのパターン転写において正確なコントラストやMEEF値を得ることが可能となり、その結果、ウェハ転写露光工程における品質、生産性を向上させるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(フォトマスクのパターン寸法測定方法)
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るフォトマスクのパターン寸法測定方法について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法の工程の一例を示すフロー図である。先ず、寸法測定すべきパターンを有するフォトマスクを準備する。パターンとしては、複数種類のピッチ、線幅の組合せがある通常の半導体用フォトマスクのライン/スペースのパターンが用いられる。それぞれの測定では、照明光の入射領域内でライン/スペースのパターンが単一ピッチ、線幅の繰り返しパターンであることが、回折光の解析を複雑にすることが無くより好ましい。
【0024】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法の一例としての図1に示す工程は、先ず投影露光と同じ波長の照明光により投影露光で用いられる範囲内の入射角度で、フォトマスクのライン/スペースのパターンを照明し、各パターン寸法における回折光強度を測定する(第1のステップ)。回折光強度の測定は、リソグラフィシミュレーション顕微鏡あるいはエリプソメータを用いて行うことができるが、リソグラフィシミュレーション顕微鏡が種々の条件設定が容易でより好ましい。本発明の好ましい形態としては、ライン/スペースパターンによる回折光のうち少なくとも0次光と1次光の回折光強度の測定をリソグラフィシミュレーション顕微鏡で行うものである。リソグラフィシミュレーション顕微鏡としては、例えば、エアリアルイメージ測定システム(Aerial Image Measurement System:以後、AIMS(登録商標)と記す)が挙げられる。本発明においては、AIMSを用いた実施形態について述べる。
【0025】
図2は、フォトマスクのライン/スペ−スパターンによる回折光の強度測定に用いたリソグラフィシミュレーション顕微鏡(AIMS)の光学系の概略説明図であり、コノスコープ観察が可能な透過型顕微鏡である。照明用光源としてはウェハ投影露光と同じ露光波長の光源が用いられ、本発明ではArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いた。図2に示すように、照明系に実際のウェハ投影露光で用いられる二重極、四重極、輪帯などの瞳フィルタの一部に相当する位置にσアパーチャ21(図2はモノポールの場合を示す)を用いることによって、実際のウェハ投影露光で用いられる範囲内の入射角度で照明し、CCDもしくはフォトディテクターよりなる光検出部25により回折光の強度を測定した。通常のAIMSの光学系ではウェハ転写像がそのまま出力されるが、本発明ではベルトランズレンズ24を挿入することにより回折光の強度測定を可能としている。光検出部25は、照明光の入射角、マスクパターンのピッチなどに応じて位置を変えることができる。
【0026】
次に、上記のフォトマスクの回折光強度測定と同じ領域のライン/スペースパターンをSEMで測定して測長値を得る(第2のステップ)。
【0027】
次に、上記の回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得る(第3のステップ)。マスクパターンの転写特性を見積もるためのシミュレーション・ソフトウェアとしては、例えば、EM−Suite(商品名:Panoramic Technology社製)が用いられ、また、フォトマスクの三次元電磁界シミュレーションにはTEMPESTpr2(EM−Suiteオプション)によるFDTD法(時間領域差分法、有限差分時間領域法とも称する。)で、Non−constant scattering coefficientモデルを用いることにより回折光強度のシミュレーション値が得られる。
【0028】
本発明において、電磁場解析シミュレーションは独立した工程であり、本発明の別な実施形態においては、上記の第1のステップのリソグラフィ顕微鏡などによる回折光強度測定、第2のステップのSEM測定および第3のステップの電磁場解析シミュレーションの順番をそれぞれ入れ替えることも可能である。例えば、回折光強度測定、電磁場解析シミュレーション、SEM測定の順番、あるいは電磁場解析シミュレーション、回折光強度測定、SEM測定の順番、あるいはSEM測定、回折光強度測定、電磁場解析シミュレーションの順番などが例示できる。しかし、通常、SEM測定を行うと清浄なマスク表面が汚染されるおそれがあるので再度洗浄しないと光学測定に適さないことがある。したがって、SEM測定は回折光強度測定の後に行う方がより好ましい。
【0029】
上記のように、電磁場解析シミュレーションは独立した工程であるので、別な実施形態として、電磁場解析シミュレーションをあらかじめ行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得てデータベース化しておき、このデータベース化したシミュレーション値を電磁場解析シミュレーションのシミュレーション値として用いることも可能である。
【0030】
次に、上記の回折光強度測定および電磁場解析シミュレーションとから算出されるパターン寸法値とSEMによる測長値とのオフセット量からSEMで計測したパターン寸法の補正値を決定する(第4のステップ)。
【0031】
次いで、上記の補正値をSEMで測定した他のパターン寸法値に適用する(第5のステップ)ことにより、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いた実用的なフォトマスクが得られる。
【0032】
本発明の別な実施形態として、フォトマスクを使用する投影露光のプロセス条件およびフォトマスクのパターンの膜質や断面形状に影響するマスク製造条件に変更がない限りにおいて、上記のフォトマスクのパターン寸法測定方法により決定された補正値を、同じ走査型電子顕微鏡を用いた他のフォトマスクの上記の補正値を算出したパターンと同一のパターンの寸法測定の補正値として用いることができる。
【0033】
(フォトマスク)
次に、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法によりパターンの品質を保証したフォトマスクについて説明する。
【0034】
本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法において、1枚のフォトマスクの面内数箇所で各々のパターンのオフセット量が異なるということは、投影露光のプロセス条件およびマスク製造条件を同じくしているのだから、オフセット量の差異はパターンの断面形状、あるいは遮光膜や位相シフト膜の光学特性が異なるということを意味するものである。
【0035】
従来、マスクパターンの断面形状を調べるに際し、実際に露光に使用するマスクを事前に切断して調べることはできなかった。仮に、マスクを切断してその断面形状を調べようとしても、マスクのように厚い材料を正確に切断するのは困難であった。本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法は、マスク断面を切断し、その断面形状を調べるような困難な作業が不要となり、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法によりマスク面内のオフセット量を算出し、所定の基準値と比較することにより、従来は保証されていなかったマスクパターンの断面形状や遮光膜や位相シフト膜の光学特性をも品質保証したフォトマスクを提供することが可能となる。上記の所定の基準値としては、あらかじめパターン寸法を測定して得られた数値を基準にして設定すればよい。
【0036】
上記のオフセット量を測定する箇所としては、オフセット量のマスク面内分布を把握するために、フォトマスク面内の5箇所以上で算出するのが好ましい。例えば、面内中央と左右の上下の計5箇所などが示される。
以下、実施例によりさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0037】
(実施例1)ハーフトーンマスク
測定対象のフォトマスクとして、モリブデンシリサイド系6%ハーフトーンマスク(ブランクスはHOYA社製商品名A61Aを使用)を用意した。このマスクは測長評価用として、27×27μmのチップ領域にウェハ上の寸法に換算してハーフピッチ(hp)40nm〜70nmの1:1のライン/スペースパターンが複数形成されたものである。
【0038】
先ず、リソグラフィシミュレーション顕微鏡(カールツァイス社製AIMS45−193i)を用い、照明用光源としてはウェハ投影露光と同じ露光波長の光源として、ArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いた。ハーフピッチ45nmのライン/スペースパターンを測定対象の中心にして、照明系は、実際のウェハ転写条件と同じ照明光の入射条件として、クォードラポールの瞳フィルタを用いた場合に相当する位置にモノポールの瞳フィルタを設置し、照明光を入射し、光検出部にCCDを用いて回折光の強度を測定した。
【0039】
次に、上記のフォトマスクの回折光強度測定に用いたハーフピッチ45nmのライン/スペースパターンをSEMで測定して測長値を得た。SEMは製造メーカ、装置ごとにオフセット量が異なるが、本実施例で用いたSEMはKLA8100XPR(KLA−Tencor社製)である。以下の実施例においても同じSEMを用いた。
【0040】
次に、上記の回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得た。シミュレーション・ソフトウェアとしては、EM−Suite(商品名:Panoramic Technology社製)を用いた。また、フォトマスクの三次元電磁界シミュレーションにはTEMPESTpr2(EM−Suiteオプション)によるFDTD法(時間領域差分法、有限差分時間領域法とも称する。)で、Non−constant scattering coefficientモデルを用いた。
【0041】
図3は、実施例1のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。図3は、上記のSEMにより測定したマスクライン寸法(本発明ではマスクCDとも記す)としての各測長値(横軸)に対し、各々の測長値におけるAIMSによる回折光強度の測定結果(点で表示)を示し、同時に、シミュレーションによりマスクCDに対する回折光強度の結果(曲線で表示)を示すものである。マスクCDは、ウェハにおける寸法(nm)に換算されている。回折光強度は、マスクパターンのないガラス部をあらかじめ測定して1として規格化している。そのため、光学系のアポダイゼーションやCCDの受光感度エラーは打ち消されている。図3の各々のSEM測長値に対するAIMS測定による回折光強度を示す各点において、1次光、0次光、解像に寄与しない回折光の各々を、順にaimsTE 1st、aimsTE 0th、aimsy−TEで示す。図3のシミュレーションによる各回折光強度の結果を示す各曲線において、1次光、0次光、解像に寄与しない回折光の各々を、順にsimTE 1st、simTE 0th、simy−TEで示す。
【0042】
図3が示すように、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果は大きくずれており、マスクCDを基準とした回折光強度が、AIMSとシミュレーションで大きく異なり、AIMSの方がシミュレーションよりも全体に図面右側にシフトしていることが示されている。
【0043】
そこで、図3を基にして、SEMによるマスクCD測定値から一定量の数値をオフセット量として減じてみる。図4は、図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−10nmとして補正した図であり、図5は、図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図であり、図6は、図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−30nmとして補正した図である。図4〜図6に用いている記号は図3と同じである。なお、マスクCDはウェハ上の寸法に換算してあるので、4倍レチクルであるフォトマスク上の実際のパターン寸法は、図中から読み取れる寸法数値の4倍に相当する。本実施例では、−5nm×4=−20nmと算出した。
【0044】
図4〜図6において、オフセット量を−20nmとした図5は、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果がほぼ完全に一致している。すなわち、SEMで計測したパターン寸法の補正値を−20nmとすることにより、マスクCDによらず、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られることが示された。
【0045】
次いで、上記の補正値−20nmをSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いてマスクCDが保証された実用的なフォトマスクを得た。
【0046】
(実施例2)バイナリマスク
本実施例は、パターン形成膜の種類を変えた場合の測定例である。フォトマスクとして多用されているクロム系バイナリマスク(ブランクスはHOYA社製商品名NTAR7を使用)を用意した。実施例1と同様に、このマスクは測長評価用として、27×27μmのチップ領域にウェハ上の寸法に換算してハーフピッチ40〜70nmの1:1のライン/スペースパターンが複数形成されたものである。
【0047】
実施例1と同様に、先ず、AIMSを用い、照明用光源にArFエキシマレーザを用い、照明系は、実際のウェハ転写条件と同じ照明光の入射条件として、ハーフピッチ45nmのライン/スペースパターンを測定対象の中心にして、クォードラポールの瞳フィルタを用いた場合に相当する位置にモノポールの瞳フィルタを設置し、照明光を入射し、結像光学系にベルトランズレンズを挿入し、光検出部にCCDを用いて回折光の強度を測定した。
【0048】
次に、上記のフォトマスクの回折光強度測定に用いたライン/スペースパターンをSEMで測定して測長値を得た。
【0049】
次に、実施例1と同様にして、上記の回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得た。
【0050】
図7は、実施例2のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。図7は、図3と同様に、上記のSEMにより測定したマスクライン寸法(マスクCD)としての各測長値(横軸)に対し、各々の測長値におけるAIMSによる回折光強度の測定結果(点で表示)を示し、同時に、シミュレーションによりマスクCDに対する回折光強度の結果(曲線で表示)を示す。マスクCDは、ウェハにおける寸法(nm)に換算されている。回折光強度は、マスクパターンのないガラス部をあらかじめ測定して1として規格化している。図7の各々のSEM測長値に対するAIMS測定による回折光強度を示す各点において、1次光、0次光、解像に寄与しない回折光の各々を、順にaimsTE 1st、aimsTE 0th、aimsy−TEで示す。図7のシミュレーションによる各回折光強度の結果を示す各曲線において、1次光、0次光、解像に寄与しない回折光の各々を、順にsimTE 1st、simTE 0th、simy−TEで示す。
【0051】
図7が示すように、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果はずれており、マスクCDを基準とした回折光強度が、AIMSとシミュレーションで異なり、AIMSの方がシミュレーションよりも全体に図面右側にシフトしていることが示されている。
【0052】
そこで、図7の数値を比較し、SEMによるマスクCD測定値から一定量の数値を減じてみた。図8は、SEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。図8に用いている記号は図7と同じである。上記と同様に、マスクCDはウェハ上の寸法に換算してあるので、4倍レチクルであるフォトマスク上の実際のパターン寸法は、図中から読み取れる寸法数値の4倍に相当する。
【0053】
図7における測定値に対し、オフセット量を−20nmとした図8は、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果がほぼ完全に一致している。すなわち、SEMで計測したパターン寸法の補正値を−20nmとすることにより、マスクCDによらず、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られることが示された。
【0054】
次いで、上記の補正値−20nmをSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いてマスクCDが保証された実用的なフォトマスクを得た。
【0055】
実施例1および実施例2が示すように、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法は、たとえフォトマスクの膜の種類が異なったとしても、オフセット量を適切に選定して補正量とすることにより、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られるものである。
【0056】
(実施例3)狭ピッチ:hp40nm
本実施例はパターンが狭ピッチのライン/スペースパターンの測定例である。測定対象のフォトマスクは、実施例1と同じマスクであるが、測定パターンがハーフピッチ(hp)40nmのライン/スペースパターンである。
【0057】
実施例1と同様にして、図9に示すように、実施例3のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図を得た。図9に用いている記号は図3と同じである。
【0058】
図9が示すように、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果はずれており、マスクCDを基準とした回折光強度が、AIMSとシミュレーションで異なり、AIMSの方がシミュレーションよりも全体に図面右側にシフトしていることが示されている。
【0059】
そこで、図9の数値を比較し、SEMによるマスクCD測定値から一定量の数値を減じてみた。図10は、SEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。図10に用いている記号は図9と同じである。上記と同様に、マスクCDはウェハ上の寸法に換算してあるので、4倍レチクルであるフォトマスク上の実際のパターン寸法は、図中から読み取れる寸法数値の4倍に相当する。本実施例では、−5nm×4=−20nmと算出した。
【0060】
図9における測定値に対し、オフセット量を−20nmとした図10は、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果がほぼ完全に一致している。すなわち、SEMで計測したパターン寸法の補正値を−20nmとすることにより、マスクCDによらず、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られることが示された。
【0061】
次いで、上記の補正値−20nmをSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いてマスクCDが保証された実用的なフォトマスクを得た。
【0062】
(実施例4)大ピッチ:hp70nm
本実施例はパターンが大ピッチのライン/スペースパターンの測定例である。測定対象のフォトマスクは、実施例1および実施例3と同じマスクであるが、測定パターンがハーフピッチ(hp)70nmのライン/スペースパターンである。
【0063】
実施例1と同様にして、図11に示すように、実施例4のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図を得た。図11に用いている記号は図3と同じである。
【0064】
図11が示すように、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果はずれており、マスクCDを基準とした回折光強度が、AIMSとシミュレーションで異なり、AIMSの方がシミュレーションよりも全体に図面右側にシフトしていることが示されている。
【0065】
そこで、図11の数値を比較し、SEMによるマスクCD測定値から一定量の数値を減じてみた。図12は、SEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。図12に用いている記号は図11と同じである。上記と同様に、マスクCDはウェハ上の寸法に換算してあるので、4倍レチクルであるフォトマスク上の実際のパターン寸法は、図中から読み取れる寸法数値の4倍に相当する。本実施例では、−5nm×4=−20nmと算出した。
【0066】
図11における測定値に対し、オフセット量を−20nmとした図12は、AIMSによる結果とシミュレーションによる結果がほぼ完全に一致している。すなわち、SEMで計測したパターン寸法の補正値を−20nmとすることにより、マスクCDによらず、信頼性のある実効的なマスク寸法が得られることが示された。
【0067】
次いで、上記の補正値−20nmをSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、実際のマスクパターン転写に適応した本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法を用いてマスクCDが保証された実用的なフォトマスクを得た。
【0068】
実施例1、実施例3および実施例4が示すように、本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法はライン/スペースパターンの狭ピッチ、大ピッチに依存せずに同じ補正量で対応することができ、適用範囲の広い測定方法であることが示された。
上記の実施例1〜4では、オフセット量がいずれもSEM測定値より減じる場合を例示したが、本発明のパターン寸法測定方法においては、オフセット量がSEM測定値より増す場合、あるいはSEM測定値と一致する場合もあり得るものである。
【0069】
(実施例5)
実施例1で算出した電磁場解析シミュレーションによる各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値をデータベース化した。次いで実施例1と同様のハーフピッチ(hp)40nm〜70nmの1:1のライン/スペースパターンが複数形成されたハーフトーンマスクを準備し、実施例1と同様にして、AIMSによりマスクパターンによる回折光強度を測定し、次に、マスクパターンをSEMで測定して測長値を得た。電磁場解析シミュレーションによる回折光強度のシミュレーション値には上記のデータベース化したシミュレーション値を用いた。
【0070】
次に、上記の回折光解析とシミュレーション値とから算出されたパターン寸法値とSEMで測定した測長値とのオフセット量からSEMで測定したパターン寸法の補正値を決定し、この補正値をSEMで測定した他のパターン寸法値に適用し、パターン寸法測定を行った。本実施例では、回折光強度のシミュレーション値のデータベースを使用することにより、パターン寸法測定時間が大幅に短縮された。
【0071】
(実施例6)
実施例1のパターン寸法測定方法により決定された補正値−20nmを用い、実施例1と同じSEMを用いて、他の実施例1と同種のハーフトーンマスクの上記の補正値を算出したパターンと同じハーフピッチ(hp)40nm〜70nmの1:1のライン/スペースパターンの寸法測定に適用した。フォトマスクを使用する投影露光のプロセス条件およびフォトマスクのパターンの膜質や断面形状に影響するマスク製造条件に変更がない限りにおいて、同じSEMを用いて異なるフォトマスクの同一のパターンの寸法測定に適用できることを確認した。
【0072】
(実施例7)
実施例1で得られたパターン寸法の補正値−20nmを基にして、マスクパターンの品質を管理する基準値を−20nm±2nmと設定した。次に、実施例1で使用したハーフトーンマスクの面内5箇所(中央と左右の上下)のパターンのオフセット量を求めたところ、いずれの箇所のオフセット量も基準値内に入っていることが確認された。したがって、本実施例に用いたハーフトーンマスクは、マスク面内において、マスクパターンの断面形状に台形や逆台形のような異常が無く、ハーフトーン位相シフト膜の光学特性が適切であることが保証され、パターン寸法測定と共に高品質のフォトマスクであることを保証することができた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のフォトマスクのパターン寸法測定方法の工程の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明の回折光強度測定に用いたリソグラフィシミュレーション顕微鏡(AIMS)の光学系の概略説明図である。
【図3】実施例1のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。
【図4】図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−10nmとして補正した図である。
【図5】図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。
【図6】図3に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−30nmとして補正した図である。
【図7】実施例2のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。
【図8】図7に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。
【図9】実施例3のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。
【図10】図9に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。
【図11】実施例4のSEM測定値に対するAIMSおよびシミュレーションの相関関係を示す図である。
【図12】図9に示されたSEMによるマスクCD測定値からオフセット量を−20nmとして補正した図である。
【図13】SEMによるマスクCDの読み取り値の誤差が生じた場合のコントラストとMEEFに与える影響をシミュレーションにより評価した図である。
【符号の説明】
【0074】
21 σアパーチャ
22 マスク
23 NAアパーチャ
24 ベルトランレンズ
25 光検出部(CCDまたはフォトディテクター)
131 ライン
132 スペース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影露光に用いられるフォトマスクのパターン寸法を走査型電子顕微鏡で測定するフォトマスクのパターン寸法測定方法であって、
前記投影露光と同じ波長の照明光により前記投影露光で用いられる範囲内の入射角度で、前記フォトマスクのライン/スペースのパターンを照明して各パターン寸法における回折光強度を測定するステップと、
前記ライン/スペースのパターンを前記走査型電子顕微鏡で測定して測長値を得るステップと、
前記回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得るステップと、
前記回折光強度測定と前記電磁場解析シミュレーションとから算出されたパターン寸法値と前記走査型電子顕微鏡で測定した測長値とのオフセット量から前記走査型電子顕微鏡で測定したパターン寸法の補正値を決定するステップと、
前記補正値を前記走査型電子顕微鏡で測定した他のパターン寸法値に適用するステップと、
を含むことを特徴とするフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項2】
前記回折光強度の測定において、前記ライン/スペースのパターンが、前記照明光の入射領域内で単一ピッチ、単一線幅の繰り返しパターンであることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項3】
前記回折光のうち少なくとも0次光と1次光の回折光強度の測定をリソグラフィシミュレーション顕微鏡で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項4】
前記電磁場解析シミュレーションをあらかじめ行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得てデータベース化し、前記データベース化したシミュレーション値を前記電磁場解析シミュレーションのシミュレーション値として用いることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項5】
前記投影露光のプロセス条件および前記フォトマスクの製造条件に変更がない限りにおいて、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法により決定された前記補正値を、前記走査型電子顕微鏡を用いた他のフォトマスクの同一のパターンの寸法測定の補正値として用いることを特徴とするフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法により前記フォトマスク面内のパターンのオフセット量を算出し、前記算出したオフセット量が所定の基準値内に入るかどうかを検証することで、前記フォトマスク面内のパターンの断面形状および光学特性を品質保証したことを特徴とするフォトマスク。
【請求項7】
前記オフセット量が、前記フォトマスク面内の5箇所以上で算出されたものであることを特徴とする請求項6に記載のフォトマスク。
【請求項1】
投影露光に用いられるフォトマスクのパターン寸法を走査型電子顕微鏡で測定するフォトマスクのパターン寸法測定方法であって、
前記投影露光と同じ波長の照明光により前記投影露光で用いられる範囲内の入射角度で、前記フォトマスクのライン/スペースのパターンを照明して各パターン寸法における回折光強度を測定するステップと、
前記ライン/スペースのパターンを前記走査型電子顕微鏡で測定して測長値を得るステップと、
前記回折光強度の測定と同じ光学条件で電磁場解析シミュレーションを行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得るステップと、
前記回折光強度測定と前記電磁場解析シミュレーションとから算出されたパターン寸法値と前記走査型電子顕微鏡で測定した測長値とのオフセット量から前記走査型電子顕微鏡で測定したパターン寸法の補正値を決定するステップと、
前記補正値を前記走査型電子顕微鏡で測定した他のパターン寸法値に適用するステップと、
を含むことを特徴とするフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項2】
前記回折光強度の測定において、前記ライン/スペースのパターンが、前記照明光の入射領域内で単一ピッチ、単一線幅の繰り返しパターンであることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項3】
前記回折光のうち少なくとも0次光と1次光の回折光強度の測定をリソグラフィシミュレーション顕微鏡で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項4】
前記電磁場解析シミュレーションをあらかじめ行い、各パターン寸法における回折光強度のシミュレーション値を得てデータベース化し、前記データベース化したシミュレーション値を前記電磁場解析シミュレーションのシミュレーション値として用いることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項5】
前記投影露光のプロセス条件および前記フォトマスクの製造条件に変更がない限りにおいて、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法により決定された前記補正値を、前記走査型電子顕微鏡を用いた他のフォトマスクの同一のパターンの寸法測定の補正値として用いることを特徴とするフォトマスクのパターン寸法測定方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のフォトマスクのパターン寸法測定方法により前記フォトマスク面内のパターンのオフセット量を算出し、前記算出したオフセット量が所定の基準値内に入るかどうかを検証することで、前記フォトマスク面内のパターンの断面形状および光学特性を品質保証したことを特徴とするフォトマスク。
【請求項7】
前記オフセット量が、前記フォトマスク面内の5箇所以上で算出されたものであることを特徴とする請求項6に記載のフォトマスク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−163185(P2009−163185A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3175(P2008−3175)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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