説明

フォトマスクの製造方法及びパターン転写方法

【課題】フォトマスク製造における欠陥の低減、及びスループットの向上を実現できるフォトマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板上に、互いに素材の異なる光半透過膜及び遮光膜を順次成膜したフォトマスクブランクを準備する工程と、該フォトマスクブランク上に所望のレジストパターンを形成する工程と、該レジストパターンをマスクとして、前記遮光膜及び前記光半透過膜を、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件にて連続的にエッチングして、前記遮光膜と前記光半透過膜のパターンを形成する工程と、を有するフォトマスクの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI等の半導体装置製造における微細パターン転写に用いられるフォトマスクの製造方法及びパターン転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚ものフォトマスクと呼ばれている基板が使用される。このフォトマスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、このフォトマスクの製造においてもフォトリソグラフィー法が用いられている。
【0003】
近年のフォトリソグラフィーにおける超解像技術の一つに位相シフトマスクが挙げられる。この位相シフトマスクには様々な種類のものが提案されているが、その中でも、パターン設計の段階で特別な工夫を要しないため比較的使い易く広く適用されているマスクとして、ハーフトーン型位相シフトマスクがある。
【0004】
このハーフトーン型位相シフトマスクは、透明基板上に光半透過膜を有する構造のもので、この光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜20%)を透過させ、所定の位相差を有するものであり、例えばモリブデンシリサイド化合物を含む材料等が用いられる。このハーフトーン型位相シフトマスクは、光半透過膜をパターニングした光半透過部と、光半透過膜が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回りこんだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0005】
従来のハーフトーン型位相シフトマスクの一般的な製造方法を図5に従って説明する。
合成石英ガラス基板等の透明基板1の上に、光半透過膜2及び遮光膜3を順に成膜したフォトマスクブランクを準備し、まずこのフォトマスクブランクの上に、電子線描画用のレジスト膜4を形成する(図5(a)参照)。上記光半透過膜2の材質としては、例えばMoSiN、MoSiON、或いはそれらの積層膜などが用いられ、上記遮光膜3の材質としては、例えばCr、CrO、或いはそれらの積層膜などが用いられる。
【0006】
次に、上記レジスト膜4に対して、電子線描画装置により所望のパターンを描画し、描画後、現像することにより、レジストパターン4aを形成する(同図(b)参照)。次いで、このレジストパターン4aをマスクとして、遮光膜3を塩素と酸素の混合ガスを用いてドライエッチングし、所定の遮光膜パターン3aを形成する(同図(c)参照)。続けて、このレジストパターン4aをマスクにして、光半透過膜2をフッ素系ガスを用いてドライエッチングし、光半透過膜パターン2aを形成する(同図(d)参照)。なお、上記遮光膜パターン3aを形成後、レジストパターン4aを剥離し、遮光膜パターン3aをマスクにして、光半透過膜2をエッチングしてもよい。
【0007】
上記レジストパターン4aを剥離して、フォトマスクが出来上がるが(同図(e)参照)、遮光帯付きマスクを作製する場合には、上記と同じレジスト膜5を基板上の全面に形成し(同図(f)参照)、遮光帯形成のための所定の領域を描画し、現像して、レジストパターン5aを形成する(同図(g)参照)。続けて、このレジストパターン5aをマスクにして、露出した遮光膜パターン3aをドライエッチング(ウエットエッチングでもよい)して除去し、遮光帯3bを作製する(同図(h)参照)。残存するレジストパターン5aを剥離して、遮光帯付きハーフトーン型位相シストマスクが出来上がる(同図(i)参照)。
【0008】
ところで、フォトマスク、またはそれを製造するための原版となるフォトマスクブランクについては、その特性、用途によって使い分けられ、これまでに様々な材料が提案されてきた。その中でも、クロム系化合物とモリブデンシリサイド系化合物が主流となっており、それぞれ主に遮光膜や光半透過膜として最適化されている。これら二つの系列の膜が主流となっているのは、第一に成膜性が良く、欠陥、光学特性の問題が少ないこと、第二に加工が容易であること、第三にエッチング選択性を利用してこれらの膜を組合わせて用いることが可能であること、という大きく三つの理由によるところが大きい。上述したハーフトーン型位相シフトマスクなどはその最たるもので、ワールドワイドでスタンダードとなっている。
【0009】
また、フォトリソグラフィーにおける超解像技術として発展目覚しい位相シフトマスクの中でも現在のところ、上述のハーフトーン型位相シフトマスクが主流となっているが、その他にも新しいタイプの位相シフトマスクが提案されている。例えば、特許文献1(国際公開2005−124454号公報)には、所望の透過率を有するとともにゼロ付近の位相シフト量を有し、比較的薄い膜厚の光半透過膜、この光半透過膜を利用した新規な位相シフトマスク及びフォトマスクブランクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開2005−124454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のハーフトーン型位相シフトマスクでは、例えばMoSiN等により構成された光半透過膜は、使用露光波長に対する所望の透過率や位相差が得られるように、膜質や膜厚が調整されている。これに対し、特許文献1に開示された光半透過膜は、ゼロ付近の位相差を必要とする用途に用いることが可能なように、使用露光波長に対する所望の透過率に調整されつつ位相差はゼロ付近となるようにしたものである。同文献には、例えば、負の位相差を持つモリブデンとシリコンからなる位相差低減層と、正の位相差を持つモリブデン、シリコン及び窒素からなる反射防止層を積層させて光半透過膜とし、膜厚も比較的薄い膜厚(通常のハーフトーン型位相シフト膜と比べても半分以下となっている)で、位相差をゼロ度付近に抑えつつ、5〜15%の透過率範囲に収めることができることが記載されている。さらに、光半透過膜にMoSi系の材料を使用したことから、遮光帯付きフォトマスクを製造する際に、光半透過膜とクロム系の遮光膜とは互いにエッチング選択性が高く、選択エッチングが可能であり、遮光膜をマスクに光半透過膜のエッチングを行うことが記載されている。したがって、クロム系遮光膜を塩素と酸素の混合ガス系でエッチングした後に、フッ素系ガスを用いてMoSi系光半透過膜のエッチングを行うことができる。
【0012】
しかしながら、上述したような従来のハーフトーン型位相シフトマスクや特許文献1に開示された位相シフトマスクの製造方法には以下のような問題点があることが発明者によって認識された。
フォトマスクを用いて半導体基板上にデバイスパターンを形成する場合、被転写体である半導体基板上に所望のデバイスパターンが設計通りに転写されるように、フォトマスクには無欠陥化が求められる。フォトマスクの製造工程の中で欠陥の発生要因は多数存在するが、その中でもドライエッチング工程におけるダスト発生による欠陥発生確率が高く、その対策が課題となってきた。特に、遮光膜として塩素と酸素の混合ガス系でエッチングを行うCr系膜を用い、光半透過膜としてフッ素系ガスでエッチングを行うMoSi系膜を用いる一般的なハーフトーン型位相シフトマスクの製造工程においては、1つのパターンを形成するために2回の異なったガス種でのエッチングを施す必要がある。ガス種が異なる場合にはエッチング装置において別々のチャンバにて処理を行うのが一般的であり、Cr系膜のエッチングの後で引き続きMoSi系膜をエッチングする場合には、チャンバからチャンバへの搬送中のダスト発生や、各エッチング放電中または放電開始直前後のダスト発生、舞い上げと付着による欠陥発生確率が高いことが致命的な問題点となってきた。また、Cr系膜のエッチング後に一旦基板を装置から取り出して、レジストを除去し、CrパターンをマスクにMoSi系膜をエッチングする場合でも、欠陥発生機会が2回あることには変わりが無く、同様の問題点があった。更に、パターンの微細化、密集化の動向が著しく、従来は修正可能であった欠陥であっても、パターンの密度が高いため修正不可能となり、或いは、修正に要する時間が課題となる不都合が生じてきた。
【0013】
以上のことから、異なった膜種でも一つのチャンバ内で、しかも連続してエッチングできることが、欠陥発生要因の低減、マスク製造のスループット向上の観点から好ましいことが発明者によって見出された。
【0014】
そこで本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、その目的とするところは、フォトマスク製造における欠陥の低減、及びスループットの向上を実現できるフォトマスクの製造方法、およびかかる製造方法により得られるフォトマスクを用いるパターン転写方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従来は、異なる膜種を組合わせて用いたフォトマスク、例えば遮光膜としてCr系膜を用い、光半透過膜としてMoSi系膜を用いたハーフトーン型位相シフトマスクの製造においては、異なるガス種で2回のエッチングを施す必要があることは当業者にとって合理的な技術であった。
【0016】
本発明者は、従来の課題を解決するべく、従来のハーフトーン型位相シフトマスク等のフォトマスクの製造技術について見直しを行い、改善の方策について種々の観点から鋭意検討した結果、異なる膜種を組合わせて用いるフォトマスクを製造する場合、従来の当業者にとって最も適切であると認識していた既存の技術とは異なり、条件を整えれば、同一のガス種を用いても異なる膜種に対して連続的にエッチングを施してパターニングすることが可能であることを見い出した。
本発明者は、以上の解明事実に基づき、さらに鋭意研究を続けた結果、本発明を完成したものである。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0017】
(構成1)透明基板上に、薄膜をパターニングしてなる転写パターンを有するフォトマスクの製造方法であって、前記透明基板上に、互いに素材の異なる光半透過膜及び遮光膜を順次成膜したフォトマスクブランクを準備する工程と、該フォトマスクブランク上に所望のレジストパターンを形成する工程と、該レジストパターンをマスクとして、前記遮光膜及び前記光半透過膜を、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件にて連続的にエッチングして、前記遮光膜と前記光半透過膜のパターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
【0018】
(構成2)前記光半透過膜の膜厚は、50nm以下であることを特徴とする構成1に記載のフォトマスクの製造方法である。
(構成3)前記遮光膜及び前記光半透過膜を連続的にエッチングする際に塩素を主成分とするガスを用いることを特徴とする構成1又は2に記載のフォトマスクの製造方法である。主成分とは、塩素の含有量がもっとも多く、好ましくは塩素が含有率50%を超える。
【0019】
(構成4)前記遮光膜の材質としてクロムを主成分として含む材料を用い、前記光半透過膜の材質としてモリブデンシリサイド化合物を含む材料を用いることを特徴とする構成1乃至3のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法である。
(構成5)更に前記フォトマスクに所定の深さの掘り込みエッチングを施すことにより位相シフタを形成する工程を含むことを特徴とする構成1乃至4のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0020】
(構成6)前記光半透過膜の露光光に対する位相差の絶対値が30度以下であることを特徴とする構成1乃至5のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法である。
(構成7)前記光半透過膜の露光光透過率は、40%以下であることを特徴とする構成1乃至6のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法である。
(構成8)前記形成された遮光膜のパターンの一部又は全部を除去する工程を含むことを特徴とする構成1乃至7のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法である。
【0021】
(構成9)構成1乃至8のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法により得られるフォトマスクを用い、露光機によって前記転写パターンを被転写体上に転写することを特徴とするパターン転写方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、透明基板上に互いに異なる素材からなる光半透過膜及び遮光膜を順次成膜したフォトマスクブランク上に形成したレジストパターンをマスクとして、前記遮光膜及び前記光半透過膜を、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件にて連続的にエッチングして、遮光膜と光半透過膜のパターンを形成するため、途中で放電を止めることなく異なる膜種の遮光膜と光半透過膜を一度にエッチングできるので欠陥発生確率を低減でき、しかも同一チャンバで連続的にエッチングするため製造時間が短縮できてスループットが向上する。また、従来のような異なるガス種を用いる場合のミキシングによる不純物発生やエッチングレートの変化を抑えられる。
【0023】
また、本発明により得られる欠陥の低減されたフォトマスクを用いて、半導体基板等の被転写体上にパターン転写を行うことにより、パターン欠陥の少ない、高精細の微細パターンを被転写体上に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例2に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例3に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例4に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
【図5】従来のハーフトーン型位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
本発明は、構成1の発明にあるように、透明基板上に、薄膜をパターニングしてなる転写パターンを有するフォトマスクの製造方法であって、前記透明基板上に、互いに素材の異なる光半透過膜及び遮光膜を順次成膜したフォトマスクブランクを準備する工程と、該フォトマスクブランク上に所望のレジストパターンを形成する工程と、該レジストパターンをマスクとして、前記遮光膜及び前記光半透過膜を、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件にて連続的にエッチングして、前記遮光膜と前記光半透過膜のパターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
【0026】
本発明は、例えば波長200nm以下の短波長の露光光(ArFエキシマレーザー(波長193nm)など)を露光光源とする露光装置を用いて半導体基板等の被転写体上にパターン転写を行い、半導体装置の製造等に用いられるフォトマスクの製造に好適である。
【0027】
かかるフォトマスクとしては、透明基板上に光半透過膜を有する形態のものであって、該光半透過膜をパターニングしてシフタ部を設けるタイプであるハーフトーン型位相シフトマスクがある。
上記光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である)を透過させるものであって、所定の位相差を有するものであり、この光半透過膜をパターニングした光半透過部と、光半透過膜が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0028】
また、他の位相シフトマスクとしては、透明基板上に遮光膜や光半透過膜を有する形態のものであって、該フォトマスクは、エッチング等により形成した掘り込みにより、シフタ部を備えた掘り込みタイプの位相シフトマスクが挙げられる。
更に、他の位相シフトマスクとして、ステッパによる露光を繰り返した時に、光半透光膜からなる転写パターンの周縁部に対応する被転写体上において、意図しない多重の露光によるレジストの感光を防止するために、転写パターンを取り囲む位置に、遮光膜による遮光帯を設けたものが挙げられる。
【0029】
次に、本発明のフォトマスクの製造方法について説明する。
まず、透明基板上に、互いに素材の異なる光半透過膜及び遮光膜を順次成膜したフォトマスクブランクを準備する。
透明基板は、使用する露光装置の露光波長に対して透明性を有するものであれば特に制限されない。本発明では、例えば石英基板を用いることができるが、この石英基板は、ArFエキシマレーザー又はそれよりも短波長の領域で透明性が高いので特に好適である。
【0030】
たとえば位相シフトマスクにおいては、上記遮光膜の材質としてクロムを主成分として含む材料を用い、上記光半透過膜の材質としてモリブデンシリサイド化合物を含む材料を用いることができる。上記遮光膜は、例えばCr膜の表面に反射防止層として、Crの酸化物や窒化物といったCr系化合物の層を有することが好ましく、転写パターンの描画時の精度を向上させ、マスク使用時の不要な反射迷光の発生を抑止することができる。また、上記光半透過膜を構成するモリブデンシリサイド化合物としては、MoSixのほか、MoSiの窒化物、酸化物、酸化窒化物、炭化物など、或いはこれらの積層膜が使用できる。
【0031】
透明基板上に上記遮光膜や光半透過膜を形成する方法としては、例えばスパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、スパッタ成膜法に限定する必要はない。
【0032】
次に、上記フォトマスクブランク上に所望のレジストパターンを形成する。すなわち、上記フォトマスクブランク上に、例えば電子線描画用ポジ型レジスト膜を形成し、電子線描画機を用いて所望のデバイスパターンの描画を行う。描画後、レジスト膜を現像処理することにより、レジストパターンを形成する。パターンに応じてネガ型レジストを用いても何ら差し支えなく、また描画にレーザー描画装置を用いてもよい。
【0033】
次いで、上記レジストパターンをマスクとして、前記遮光膜及び前記光半透過膜を、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件にて連続的にエッチングして、前記遮光膜と前記光半透過膜のパターンを形成する。
【0034】
従来の製造方法においては、まずクロム系遮光膜を塩素と酸素の混合ガス系でエッチングした後に、フッ素系ガスを用いてMoSi系光半透過膜のエッチングを行っていた。その際、エッチングによりCr膜が減膜して下層の光半透過膜が露出した時点をジャストエッチング時間とし、その時間に対してあるパーセンテージの時間だけエッチングを続けて行う(オーバーエッチング)。これは、Cr膜のエッチングが充分でないとパターンエッジがCr膜の裾引きにより良好なパターン形状及び断面形状とならないためである。従来のCrエッチング条件にてオーバーエッチングを実施した場合に、Crの裾引き部分をエッチングしながら、同時に露出しているMoSi光半透過膜に対してもダメージが発生しているが、従来は引き続きフッ素系ガスにて光半透過膜のエッチングを行うため、エッチング工程については特に問題視されていなかった。
【0035】
本発明者は、この遮光膜及び光半透過膜のエッチング工程におけるエッチング条件や、膜厚、膜素材を最適化することにより、Cr膜のオーバーエッチングによってMoSi光半透過膜に発生するダメージを積極的に進行させることにより光半透過膜のエッチングを行うことが可能であることを見い出した。すなわち、本発明においては、フォトマスクブランク上に形成したレジストパターンをマスクとして、前記遮光膜及び前記光半透過膜を、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件にて連続的にエッチングして、遮光膜と光半透過膜のパターンを形成するようにする。
このため、膜厚は50nm以下とすることが好ましく、膜質は、MoSi系の光半透過膜の場合、窒素や、酸素の含有率によって、最適化を行うこともできる。
【0036】
本発明における、この場合の主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件とは、例えば次のような条件である。
1.エッチング工程の最初から最後まで同じエッチングガスを使用し、ドライエッチング装置のRFパワーを高くして上記連続エッチングを行う。例えば、上述の従来のMoSi系光半透過膜に10W程度を適用していた場合、20〜50%上げて、12〜15Wにすることで、膜に対するエッチング特性を変化させることができる。
2.エッチング工程の最初から最後まで同じエッチングガスを使用し、ドライエッチング装置のRFパワーを途中で変更する。例えば、Cr系遮光膜とMoSi系光半透過膜のエッチングにおいて、塩素と酸素の混合ガス(但し、塩素ガスを主成分とする)を使用し、例えば遮光膜のエッチングがほぼ終了する段階で、RFパワーを例えば20〜50%程度上げて、引き続き、連続して光半透過膜のエッチングを行う。
【0037】
3.エッチング工程の最初から最後まで主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いるが、途中で混合比を変更する。例えば、Cr系遮光膜とMoSi系光半透過膜のエッチングにおいて、塩素と酸素の混合ガス(但し、塩素ガスを主成分とする)を使用し、例えば遮光膜のエッチングがほぼ終了する段階で、酸素ガスの比率を下げて(あるいはゼロとする)、引き続き、連続して光半透過膜のエッチングを行う。
【0038】
なお、上記1〜3の条件を組合わせて、たとえば途中でRFパワーとエッチングガスの混合比の両方を変更するようにしてもよい。
また、RFパワーやエッチングガスの混合比の変更は、エッチング工程の途中で連続的に行ってもよいし、段階的に行ってもよい。
【0039】
また、ここに挙げた条件は、本発明における主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件の一例を挙げたものであり、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、Cr系遮光膜及びMoSi系光半透過膜の組成によっても、エッチング条件の設定は異なるため、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件の下でエッチング条件を最適化することが望ましい。
【0040】
本発明は、上記光半透過膜の膜厚が、50nm以下であるフォトマスクの製造に好適である。光半透過膜の膜厚が50nm以下、より好ましくは30nm以下の薄膜であると、主成分とするエッチングガス種を変更しないで、且つ比較的緩やかなエッチング条件で、遮光膜と光半透過膜を連続的にエッチングすることができる。たとえば、光半透過膜が薄膜で構成され、光半透過膜の露光光に対する位相差の絶対値が30度以下であるような位相シフトマスクの製造に好適である。位相差は、得ようとするフォトマスクの要求仕様によって異なるが、本発明を適用するフォトマスクとしては、位相差の絶対値が30度以下、好ましくは20度以下、さらに好ましくは10度以下が望まれる。このような位相差である場合には、エッチング条件の選択が、比較的容易である。
【0041】
本発明のフォトマスクの製造方法は、更にフォトマスクに所定の深さの掘り込みエッチングを施して位相シフタを形成する工程を含むことができる。
また、本発明は、遮光帯付きフォトマスクとするため、形成された遮光膜のパターンの一部又は全部を除去する工程を含むことができる。
【0042】
以上は、Cr系遮光膜とMoSi系光半透過膜を用いた位相シフトマスクの製造について説明したが、遮光膜と光半透過膜の材料はこれらに限定されるものではなく、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件にて遮光膜と光半透過膜を連続してエッチングでき、また最後に、形成された遮光膜のパターンの一部又は全部を除去する工程を含む場合には、それに加えて光半透過膜にはダメージを与えずに遮光膜を選択的に除去することも可能な、各々の材料の組み合わせを選択することができる。
【0043】
例えば遮光膜について塩素系ガスでエッチング可能な材料として、クロムの他に、タンタル、チタン、アルミニウム、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム等の金属、またはこれらの一種又は二種以上の合金、あるいはこれらの金属又は合金に酸素、窒素、炭素、フッ素等の一種又は二種以上含有された金属化合物の単層膜あるいは積層膜を例示することができる。また、光半透過膜について例えば塩素系ガスでエッチング可能な材料としては、モリブデンシリサイドの他に、高融点金属のシリサイド、例えばタングステン、タンタル等のシリサイド、またはこれらに酸素、窒素、炭素、フッ素等の一種又は二種以上含有された化合物の単層膜あるいは積層膜を例示することができる。
【0044】
以上説明したように、本発明のフォトマスクの製造方法によれば、透明基板上に互いに素材の異なる光半透過膜及び遮光膜を順次成膜したフォトマスクブランク上に形成したレジストパターンをマスクとして、前記遮光膜及び前記光半透過膜を、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件にて連続的にエッチングして、遮光膜と光半透過膜のパターンを形成するため、途中で基板を移動させる必要がなく、放電を止めることも必要とせず異なる素材の遮光膜と光半透過膜を同一のチャンバー内で、連続的にエッチングできるので欠陥発生確率を低減でき、しかも同一チャンバで連続的にエッチングするため製造時間が短縮できてスループットが向上する。また、従来のような異なるガス種を用いる場合のミキシングによる不純物発生やエッチングレートの変化を抑えられる。
【0045】
また、本発明により得られる欠陥の低減されたフォトマスクを用いて、半導体基板等の被転写体上にパターン転写を行うことにより、パターン欠陥の少ない、高精細の微細パターンを被転写体上に形成することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図である。
透明基板11としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、表面は鏡面研磨を施し、研磨後、所定の洗浄を行ったものである。
【0047】
透明基板11上に、MoSiとMoSiONの積層膜からなる光半透過膜12を成膜した。具体的には、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=10mol%:90mol%)を用い、アルゴン(Ar)ガス雰囲気で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、MoSi膜を14nmの膜厚で形成した。引き続き、同じターゲットを用い、ArとOとNとHeとの混合ガス雰囲気で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、MoSiON膜を11nmの膜厚で形成した。なお、このMoSiとMoSiONの積層膜は、ArFエキシマレーザーにおいて、透過率は9%、位相差が5度となっていた。
【0048】
次に、光半透過膜12上に、CrとCrOの積層膜からなる遮光膜13を成膜した。具体的には、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス雰囲気で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、Cr膜を30nmの膜厚で形成した。引き続き、同じターゲットを用い、ArとOとの混合ガス雰囲気で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、CrO膜を18nmの膜厚で形成した。
以上のようにして、フォトマスクブランク(位相シフトマスクブランク)10を作製した。
【0049】
次に、上記フォトマスクブランク10上に、レジスト膜14として、電子線描画用ポジ型レジスト膜を250nmの膜厚に形成した(図1(a)参照)。レジスト膜14の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。
【0050】
次に上記フォトマスクブランク10上に形成されたレジスト膜14に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン14aを形成した(同図(b)参照)。
【0051】
次に、上記レジストパターン14aをマスクとして、遮光膜13及び光半透過膜12のドライエッチングを連続して一度に行い、遮光膜パターン13a及び光半透過膜パターン12aを形成した(同図(c)参照)。ドライエッチングガスとして、ClとOの混合ガス(Cl:O=20:1)を用い、ドライエッチング装置のRFパワーを、最初は10Wに設定し、遮光膜のエッチングがほぼ終了した時点で、15Wに上げた。
次に、残存したレジストパターン14aを剥離して、フォトマスクが完成した(同図(d)参照)。
【0052】
また、用途に応じて、最後に上記遮光膜パターン13aをウエットエッチングして除去し、光半透過膜パターン12aのみのフォトマスク(位相シフトマスク)20としてもよい(同図(e)参照)。もちろんドライエッチングを適用してもよい。
【0053】
(実施例2)
図2は、本発明の実施例2に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図である。本実施例は、遮光帯付きフォトマスクとした例である。
まず、図1の(a)〜(d)とまったく同様にしてフォトマスクを作製する。
次に、このフォトマスクの全面に電子線描画用ポジ型のレジスト膜15を400nmの膜厚に形成した(図2(a)参照)。レジスト膜15の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。
【0054】
次に、電子線描画装置を用いて遮光帯形成のための所定の領域を描画し、現像して、レジストパターン15aを形成した(同図(b)参照)。続けて、このレジストパターン15aをマスクにして、露出した遮光膜パターン13aをウエットエッチングして除去し、遮光帯13bを作製した(同図(c)参照)。
残存するレジストパターン15aを剥離して、遮光帯付き位相シストマスク21が出来上がる(同図(d)参照)。
【0055】
(実施例3)
図3は、本発明の実施例3に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図である。本実施例は、透明基板に所定の深さの掘り込みエッチングを施して位相シフト層を形成するフォトマスクとした例である。
まず、図1の(a)〜(d)とまったく同様にしてフォトマスクを作製する。
次に、このフォトマスクの全面に電子線描画用ポジ型のレジスト膜16を400nmの膜厚に形成した(図3(a)参照)。レジスト膜16の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。
【0056】
次に、電子線描画装置を用いて所望のパターンを描画し、現像して、レジストパターン16aを形成した(同図(b)参照)。
次に、このレジストパターン16aをマスクとして、透明基板11を、CFとOとの混合ガス(CF:O=95:5)を用いてドライエッチングして、所定の深さを掘り込み、基板の掘り込みパターン11aを形成した(同図(c)参照)。
残存するレジストパターン16aを剥離して、位相シストマスク22が出来上がる(同図(d)参照)。
【0057】
(実施例4)
図4は、本発明の実施例4に係るフォトマスクの製造工程を示す断面図である。本実施例は、遮光帯付きフォトマスクとした例である。
まず、図1の(a)〜(d)及び図3の(a)〜(d)とまったく同様にして、基板を掘り込んだ位相シフトマスク22を作製する。
次に、この位相シフトマスク22の全面に電子線描画用ポジ型のレジスト膜17を400nmの膜厚に形成した(図4(a)参照)。レジスト膜17の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。
【0058】
次に、電子線描画装置を用いて遮光帯形成のための所定の領域を描画し、現像して、レジストパターン17aを形成した(同図(b)参照)。続けて、このレジストパターン17aをマスクにして、露出した遮光膜パターン13aをウエットエッチングして除去し、遮光帯13bを作製した(同図(c)参照)。
残存するレジストパターン17aを剥離して、基板掘り込みタイプの遮光帯付き位相シストマスク23が出来上がる(同図(d)参照)。
【0059】
なお、上述の実施例においては、遮光膜13と光半透過膜12を連続してエッチングする際に、塩素と酸素の混合ガスを使用し、遮光膜13のエッチングがほぼ終了する段階で、RFパワーを例えば20〜50%程度上げて、引き続き、光半透過膜12のエッチングを行うようにしたが、これに限らず、たとえば同じく塩素と酸素の混合ガスを使用し、遮光膜のエッチングがほぼ終了する段階で、酸素ガスの比率を下げて(あるいはゼロとする)、引き続き、光半透過膜のエッチングを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 透明基板
2 光半透過膜
3 遮光膜
4 レジスト膜
10 フォトマスクブランク(位相シフトマスクブランク)
11 透明基板
12 光半透過膜
13 遮光膜
14〜17 レジスト膜
20〜23 フォトマスク(位相シフトマスク)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、薄膜をパターニングしてなる転写パターンを有するフォトマスクの製造方法であって、
前記透明基板上に、互いに素材の異なる光半透過膜及び遮光膜を順次成膜したフォトマスクブランクを準備する工程と、該フォトマスクブランク上に所望のレジストパターンを形成する工程と、該レジストパターンをマスクとして、前記遮光膜及び前記光半透過膜を、主成分とするエッチングガス種を変更しないで用いる条件にて連続的にエッチングして、前記遮光膜と前記光半透過膜のパターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記光半透過膜の膜厚は、50nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記遮光膜及び前記光半透過膜を連続的にエッチングする際に塩素を主成分とするガスを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記遮光膜の材質としてクロムを主成分として含む材料を用い、前記光半透過膜の材質としてモリブデンシリサイド化合物を含む材料を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
更に前記フォトマスクに所定の深さの掘り込みエッチングを施すことにより位相シフタを形成する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項6】
前記光半透過膜の露光光に対する位相差の絶対値が30度以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項7】
前記光半透過膜の露光光透過率は、40%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項8】
前記形成された遮光膜のパターンの一部又は全部を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法により得られるフォトマスクを用い、露光機によって前記転写パターンを被転写体上に転写することを特徴とするパターン転写方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−197799(P2010−197799A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43739(P2009−43739)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】