説明

フォークリフト用油圧装置及び油圧ポンプ

【課題】動力損失を抑制可能であり、かつチルト操作時の流量を増減可能なフォークリフト用油圧装置及びそれに適した油圧ポンプを提供する。
【解決手段】油圧ポンプ1の制御シリンダ21には、主通孔21aと、制御ピストン22が最大容量位置から中間容量位置までの間にあれば油室23に対する圧力油の供給が可能な副通孔21bとが形成されている。油圧装置は、チルトシリンダ36内の圧力油を副通孔21bに導くチルト圧導入管路47と流路切替弁45とを備えている。流路切替弁45は、制御管路44に設けられ、チルトシリンダ36内の圧力によってパイロット操作され、油室23内への圧力油の供給と、油室23内の圧力油の排出の開始と、油室23に対する圧力油の給排の停止とを切り替え可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト用油圧装置及び油圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1の第10図及び第11図に開示されたフォークリフト用油圧装置が知られている。この油圧装置では、圧力油を吐出管路に吐出可能であり、容量可変機構により吐出容量を変更可能な油圧ポンプがエンジンによって駆動されるようになっている。容量可変機構は、特許文献1の第3図に示すように、制御シリンダと、制御シリンダに対して進退可能に設けられた制御ピストンと、制御ピストンと対抗して吐出容量を増大させる向きに付勢力を有する制御ばねとを有している。制御シリンダと制御ピストンとの間には油室が形成されている。また、制御シリンダには、制御ピストンの位置にかかわらずに油室に対する圧力油の給排が可能な通孔が形成されている。通孔から油室内に圧力油が供給されれば、制御ピストンが前進し、油圧ポンプの斜板の傾角が縮小し、吐出容量が減少する。
【0003】
また、この油圧装置では、特許文献1の第10図及び第11図に示すように、吐出管路に荷役制御弁が設けられている。荷役制御弁は、油圧ポンプから吐出された圧力油をパワーステアリング回路の所要流量と残余の荷役回路用流量とに分流する。荷役回路用流量は荷役回路であるリフトシリンダ及びチルトシリンダに供給される。
【0004】
荷役制御弁に至る吐出管路中には、荷役回路の圧力によってパイロット操作され、荷役制御弁に供給される圧力油の流量を絞る絞り切替弁が配設されている。また、絞り切替弁と荷役制御弁との間の吐出管路には下流圧パイロット管路が分岐されており、下流圧パイロット管路には下流圧導入管路が分岐されている。下流圧導入管路は流量制御弁に連通している。また、下流圧導入管路は絞りを介してドレンに連通している。絞り切替弁の上流側には上流圧パイロット管路が分岐されており、上流圧パイロット管路には上流圧導入管路が分岐されている。上流圧導入管路も流量制御弁に連通している。流量制御弁は、下流圧パイロット管路及び上流圧パイロット管路から導かれる絞り切替弁の前後の差圧によってパイロット操作されるようになっている。流量制御弁と流量可変機構の通孔との間には制御管路が配設されている。
【0005】
この油圧装置では、荷役時には、絞り切替弁の下流側の圧力が設定値を超えて高くなり、特許文献1の第10図に示すように、絞り切替弁は左方に押されて絞りのない通路が選択される。絞り切替弁では差圧が発生しないため、上流圧導入管路は制御管路に連通せず、制御管路はドレンに連通し、油室内の圧力油が下流圧導入管路を経てドレンに排出される。このため、制御ピストンが後退し、油圧ポンプの斜板の傾角が拡大し、吐出容量が増大する。
【0006】
また、非荷役時には、絞り切替弁の下流側の圧力が設定値よりも低くなり、特許文献1の第11図に示すように、絞り切替弁はばね力により絞りのある通路が選択される。容量制御弁は絞り切替弁の上流側と下流側との差圧が一定になるように、制御管路への圧力油の供給を制御する。このため、差圧が設定値になるまで制御ピストンが前進し、斜板の傾角が縮小し、吐出容量が減少する。
【0007】
こうして、この油圧装置は、荷役時にはエンジンの回転数の上昇とともに流量を増大させることが可能であり、非荷役時にはエンジンの回転数にかかわらずに一定の小さい流量で運転を継続することが可能である。そして、この油圧装置は、荷役作業に必要な流量になるように流量を変更できるため、常に大きな流量で運転を継続する場合と比べ、無駄な動力損失を抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−186600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の油圧装置では、リフトシリンダとチルトシリンダとを荷役回路において区別していないため、一般に大きな吐出容量が必要なリフト操作と、大きな吐出容量が不要なチルト操作とで油圧ポンプが吐出容量を変更することができない。このため、この油圧装置では、大きな吐出容量が不要なチルト操作を行っている間に油圧ポンプが吐出容量を増大させている場合があり、大きな動力損失を生じてしまう。
【0010】
このため、特許文献1の第1図及び第2図に示すように、流量制御弁のばねの付勢力を電磁石で変更することも考えられる。例えば、チルト操作を行う場合には、流量制御弁のばねの付勢力を小さくする。これにより、上流圧導入管路内の圧力油が通孔から油室内に供給され、制御ピストンが前進し、斜板の傾角が縮小し、吐出容量が減少する。このため、チルト操作を行う場合にも、エンジンの回転数にかかわらずに一定の小さい流量で運転を継続することが可能になり、動力損失を抑制することが可能になる。
【0011】
しかしながら、その場合、チルト操作時の流量がエンジンの回転数にかかわらない常に小さな一定値になってしまい、運転者自らの意思等でチルト操作に加減を加えることができない。チルト操作の負荷が大きい場合には、エンストのおそれもある。
【0012】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、動力損失を抑制可能であり、かつチルト操作時の流量を増減可能なフォークリフト用油圧装置及びそれに適した油圧ポンプを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のフォークリフト用油圧装置は、圧力油を吐出管路に吐出可能であり、容量可変機構により吐出容量を変更可能な油圧ポンプと、
該吐出管路に設けられ、該圧力油をリフトシリンダとチルトシリンダとの所要流量に分流する荷役制御弁と、
該荷役制御弁に至る該吐出管路中に配設され、該チルトシリンダ又は該リフトシリンダの圧力によってパイロット操作され、前記荷役制御弁に供給される該圧力油の流量を絞る絞り切替弁と、
該絞り切替弁の前後の差圧によってパイロット操作され、該圧力油の給排を制御する流量制御弁とを備え、
前記容量可変機構は、制御シリンダと、該制御シリンダに対して進退可能に設けられ、該制御シリンダと自己との間に形成される油室内に前記圧力油が供給されて前進することにより吐出容量を減少させる制御ピストンとを有し、
該制御シリンダには、該制御ピストンの位置にかかわらずに該油室に対する該圧力油の給排が可能な主通孔と、該制御ピストンが最大容量位置から中間容量位置までの間にあれば該油室に対する該圧力油の供給が可能な副通孔とが形成され、
さらに、該主通孔と前記流量制御弁との間に配設された制御管路と、
前記チルトシリンダ内の該圧力油を該副通孔に導くチルト圧導入管路と、
該制御管路に設けられ、該チルトシリンダ内の圧力によってパイロット操作され、該油室内への該圧力油の供給と、該油室内の該圧力油の排出と、該油室に対する該圧力油の給排の停止とを切り替え可能な流路切替弁とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
【0014】
本発明の油圧装置では、リフト上昇時には、絞り切替弁の下流側の圧力が設定値を超えて高くなる。このため、流量制御弁は圧力油を油室に供給せず、油室内の圧力油が制御管路、流路切替弁及び流量制御弁を経て排出される。このため、制御ピストンが後退し、油圧ポンプの吐出容量が増大する。
【0015】
非荷役時でチルト操作を行っていない時、例えば、フォークリフトが非荷役で走行している間等には、絞り切替弁の下流側の圧力が設定値よりも低くなる。このため、流量制御弁は圧力油を油室に供給し、制御ピストンが前進し、油圧ポンプの吐出容量が減少する。
【0016】
チルト操作を行うと、流路切替弁は、チルトシリンダ内の圧力によってパイロット操作され、主通孔による油室に対する圧力油の給排を停止する。また、制御ピストンが中間容量位置手前にあれば、チルトシリンダ内の圧力油がチルト圧導入管路に導入され、副通孔から油室内に供給される。油室内への圧力油の供給によるピストンの前進に伴い、制御ピストンが中間容量位置を超えれば、圧力油は副通孔から油室内に供給されなくなる。このため、制御ピストンは中間容量位置以上に前進せず、油圧ポンプは中間容量となる。このため、この油圧装置は、チルト操作を行う場合に中間的な流量で運転を継続することが可能であり、動力損失を抑制することが可能になる。なお、チルトシリンダはリフトシリンダほどの油量を必要としないため、中間的な流量でも動作としては問題がない。
【0017】
また、チルト操作の際、油圧ポンプは中間容量で固定されるため、運転者自らの意思等で流量をエンジン等の回転数によって加減することが可能である。
【0018】
したがって、本発明の油圧装置によれば、動力損失を抑制可能であり、かつチルト操作時の流量を増減することが可能である。このため、この油圧装置は、動力損失を従来よりも抑制できるため、フォークリフトの燃費をより一層向上させることができるとともに、油温上昇等による劣化の防止も実現可能である。また、この油圧装置では、例えばエンジン駆動のフォークリフトにおいて、チルト操作時は油圧ポンプの吐出容量が小さく、負荷が軽減されるため、エンジン回転数を上げなくてもエンストを回避することが可能になる。
【0019】
また、この油圧装置は、流量制御弁に電磁石を採用する必要がないため、コストアップも回避することが可能である。
【0020】
荷役制御弁とチルトシリンダの底部とを繋ぐ供給管路からチルト圧パイロット管路が分岐していることが好ましい(請求項2)。この場合、前傾操作時に油圧ポンプを中間容量にすることができる。なお、前傾操作はゆっくり行われることが多いため、中間的な流量が適している。
【0021】
チルト圧導入管路はチルト圧パイロット管路から分岐していることが好ましい(請求項3)。この場合、チルトシリンダ周りの配管の取り回しが容易になる。
【0022】
チルト圧導入管路には、チルト圧パイロット管路との分岐点と副通孔との間に逆止弁が設けられていることが好ましい(請求項4)。この場合、流量制御弁、制御管路及び主通孔を経て供給される圧力油がチルト圧導入管路を逆流することによる不具合を防止することができる。
【0023】
本発明の油圧ポンプは、ハウジング及びエンドカバーによって形成される密閉空間内に支承された駆動軸と、該駆動軸の軸心と平行に複数のボアを有して該駆動軸と共に回転するシリンダブロックと、該ハウジングに揺動可能に枢支され、容量可変機構により傾角を変化させる斜板と、該斜板と回転摺動可能に係留されたシューを介し、該斜板の該傾角に応じて各該ボア内を往復動する複数のピストンとを備え、
前記容量可変機構は、制御シリンダと、該制御シリンダに対して進退可能に設けられ、該制御シリンダと自己との間に形成される油室内に前記圧力油が供給されて前進することにより吐出容量を減少させる制御ピストンとを有し、
該制御シリンダには、該制御ピストンの位置にかかわらずに該油室に対する該圧力油の給排が可能な主通孔と、該制御ピストンが最大容量位置から中間容量位置までの間にあれば該油室に対する該圧力油の供給が可能な副通孔とが形成され、
パイロット管路と接続され、該油室内への該圧力油の供給と、該油室内の該圧力油の排出と、該油室に対する該圧力油の給排の停止とを切り替え可能な流路切替弁とを備えていることを特徴とする(請求項5)。
【0024】
この油圧ポンプを採用すれば、流路切替弁を別個に用意する必要なく、本発明のフォークリフト用油圧装置の効果を奏することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1のフォークリフト用油圧装置に係り、リフト上昇又はチルト後傾時の回路図である。
【図2】実施例1のフォークリフト用油圧装置に係る油圧ポンプの断面図である。
【図3】実施例1のフォークリフト用油圧装置の容量可変機構及び流路切替弁に係り、リフト上昇、チルト後傾又は非荷役走行時の断面図である。
【図4】実施例1のフォークリフト用油圧装置の容量可変機構及び流路切替弁に係り、チルト前傾時の断面図である。
【図5】実施例1のフォークリフト用油圧装置に係り、非荷役走行時の回路図である。
【図6】実施例1のフォークリフト用油圧装置に係り、チルト前傾時の回路図である。
【図7】実施例1のフォークリフト用油圧装置に係り、エンジンの回転数と流量との関係を示すグラフである。
【図8】比較例のフォークリフト用油圧装置に係り、エンジンの回転数と流量との関係を示すグラフである。
【図9】実施例2のフォークリフト用油圧装置に係る油圧ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(実施例1)
実施例1のフォークリフト用油圧装置は図示しないエンジン駆動のフォークリフトに搭載されている。この油圧装置は、図1に示すように、容量可変型の油圧ポンプ1がエンジンによって駆動されるようになっている。
【0028】
油圧ポンプ1は、図2に示すように、フロントハウジング2、センターハウジング3及びエンドカバー4が締結されることによって内部に密閉空間5を形成している。密閉空間5内には、フロントハウジング2に軸受装置6及び軸封装置7によって軸支され、エンドカバー4に軸受装置8によって軸支された駆動軸9が回転可能に設けられている。フロントハウジング2及びセンターハウジング3がハウジングである。
【0029】
駆動軸9にはスプライン9aが形成されており、スプライン9aには軸心Oと平行に複数のボア10aを有するシリンダブロック10が軸心Oに沿って変位可能に嵌合されている。また、フロントハウジング2には案内面2aが形成されており、案内面2aによって軸心Oと直交する方向を中心として揺動するように斜板11が設けられている。
【0030】
斜板11の背面には回転摺動可能に複数個のシュー12が係留されている。各シュー12にはそれぞれピストン13が係留されている。各ピストン13はシリンダブロック10の各ボア10a内を往復動可能に収納されている。
【0031】
シリンダブロック10とエンドカバー4との間では、吸入ポート14a及び吐出ポート14bを備えた弁板14がエンドカバー4に固定されている。吸入ポート14aは吸入行程の各ボア10aと連通し、吐出ポート14bは吐出行程の各ボア10aと連通している。エンドカバー4には吸入ポート14a及び吐出ポート14bとそれぞれ連通する吸入口4a及び吐出口4bが形成されている。吸入口4aは図1に示す吸入管路31を介してタンク32に連通しており、吐出口4bは吐出管路33に連通している。
【0032】
図2に示すように、シリンダブロック10の前端には複数本の圧縮ばね15が等角度間隔で配設されている。圧縮ばね15の前端にはピボット16が配設されている。圧縮ばね15は、シリンダブロック10を軸心Oに沿ってエンドカバー4側に付勢しているとともに、ピボット16を軸心Oに沿ってシリンダブロック10とは逆に付勢している。ピボット16は各シュー12を径方向に摺動可能に係留するシューリテーナ17と揺動可能に係留されている。
【0033】
また、密閉空間5内にはピストン13の上死点側に容量可変機構20が設けられている。容量可変機構20は、エンドカバー4に固定された制御シリンダ21と、制御シリンダ20内で軸心O方向に進退可能に設けられた制御ピストン22とを有している。制御シリンダ21と制御ピストン22との間には油室23が形成されている。制御ピストン22は、油室23内に圧力油が供給されれば前進するようになっている。制御ピストン22はボール24を介して斜板11の背面と当接している。一方、斜板11を挟んだ対称位置では、フロントハウジング2に制御ばね25の前端が固定されている。制御ばね25の後端は当接部材26を介して斜板11の前面と当接している。
【0034】
制御シリンダ21には、制御ピストン22の位置にかかわらずに油室23に対する圧力油の給排が可能な主通孔21aが形成されている。主通孔21aはエンドカバー4に形成された第1通孔4cに連通している。また、制御シリンダ21には、制御ピストン22の周面まで延びる副通孔21bが形成されている。副通孔21bはエンドカバー4に形成された第2通孔4dに連通している。制御ピストン22の周面には環状の導圧溝22aが凹設されており、導圧溝22aは通孔22bによって油室23に連通している。制御ピストン22が後退端から中間容量位置まで前進するまで、副通孔21bが導圧溝22aに連通するようになっている。
【0035】
また、この油圧装置では、図1に示すように、吐出管路33に分流弁を含む荷役制御弁34が設けられている。荷役制御弁34には供給管路34a、34b、34cが接続されている。荷役制御弁34は、油圧ポンプ1から吐出された圧力油を供給管路34aによってリフトシリンダ35の所要流量に分流するとともに、その圧力油を供給管路34b又は供給管路34cによってチルトシリンダ36の所要流量に分流する。供給管路34bはチルトシリンダ36の底部に繋がれており、供給管路34cは絞り36aを介してチルトシリンダ36の頂部に繋がれている。なお、荷役制御弁34は、その圧力油を図示しないパワーステアリング回路の所要流量にも分流する。
【0036】
荷役制御弁34はリフトシリンダ35又はチルトシリンダ36の圧力をパイロット管路37によって導出できるようになっている。荷役制御弁34に至る吐出管路33中には絞り切替弁38が配設されている。絞り切替弁38は、前後に差圧を生じさせないポジションと、前後に差圧を生じさせるポジションとをとり得るスプールを有している。このスプールはパイロット管路37によるパイロット圧とばね38aの付勢力とにより移動するように設けられている。
【0037】
また、絞り切替弁38と荷役制御弁34との間の吐出管路33には下流圧パイロット管路39が分岐されている。また、絞り切替弁38の上流側には上流圧パイロット管路40が分岐されており、上流圧パイロット管路40には上流圧導入管路41が分岐されている。上流圧導入管路41は流量制御弁42に連通している。流量制御弁42はドレン管路43を介してタンク32に連通しているとともに、制御管路44に連通している。
【0038】
流量制御弁42は、上流圧導入管路41を制御管路44に連通させず、制御管路44をドレン管路43に連通させるポジションと、上流圧導入管路41を制御管路44に連通させるポジションとをとり得るスプールを有している。このスプールは、下流圧パイロット管路39から導かれる絞り切替弁38の下流側のパイロット圧P2及びばね42aの付勢力と、上流圧パイロット管路40から導かれる絞り切替弁38の上流側のパイロット圧P1とにより移動するように設けられている。
【0039】
制御管路44は油圧ポンプ1の第1通孔4cを介して主通孔21aに連通している。制御管路44には流路切替弁45が設けられている。また、供給管路34bにはチルト圧パイロット管路46が分岐されており、チルト圧パイロット管路46にはチルト圧導入管路47が分岐されている。チルト圧導入管路47には逆止弁48が設けられており、その先は油圧ポンプ1の第2通孔4dを介して副通孔21bに連通している。
【0040】
流路切替弁45は、図3及び図4に示すように、弁ケース50、51内に弁室51aが形成されている。弁室51a内にはスプール52が移動可能に収納されており、スプール52はばね45aによって弁ケース50側に付勢されている。弁ケース50には外部から弁室51aに連通する通孔50aが貫設されている。通孔50aにはチルト圧パイロット管路46が接続されている。また、弁ケース51には、弁室51aと連通する通孔51b、51cが貫設されている。通孔51bは弁ケース50側で弁室51a内に連通しており、通孔51bはチルト圧導入通路47により第2通孔4dに連通している。通孔51cは、通孔51bよりも弁ケース50から離れた位置で弁室51a内に連通し、かつ外部にも連通している。通孔51cには制御管路44が接続されている。なお、弁ケース51には、弁室51aをタンク32に接続するドレン孔51dも形成されている。
【0041】
スプール52の周面には環状の連通溝52aが凹設されている。通孔51cは、スプール52の位置によって、制御管路44と第1通孔4cとを連通溝52aにより連通させたり、制御管路44と第1通孔4cとを遮断したりすることができるようになっている。つまり、スプール52はチルト圧パイロット管路46によるパイロット圧Ptとばね45aの付勢力とにより移動するようになっている。
【0042】
この油圧装置では、図1に示すように、リフト上昇又はチルト後傾時には、絞り切替弁38の下流側のパイロット圧P2が設定値を超えて高くなる。この際、流路切替弁45は、パイロット圧Ptが高くないため、図3に示すように、制御管路44と第1通孔4cとを連通溝52aにより連通させている。このため、図1に示すように、流量制御弁42は、上流圧導入管路41を制御管路44に連通させず、圧力油を油室23(図2参照)に供給しない。逆に、流量制御弁42が制御管路44をドレン管路43に連通させるため、油室23内の圧力油が制御管路44、流路切替弁45、流量制御弁42及びドレン管路43を経てタンク32に排出される。このため、図2に示す制御ピストン22が後退し、斜板11の傾角が拡大し、油圧ポンプ1の吐出容量が最大容量まで増大する。この状態では、図7に示すように、エンジンの回転数をアイドリングから上昇させるとともに流量を増大させることが可能である。リフト上昇時に十分な流量を確保できるのであれば、エンジンの回転数が一定回転を超えれば、その流量を上限として動力損失を抑制することも可能である。
【0043】
非荷役時でリフト操作及びチルト操作を行っていない時、例えば、フォークリフトが非荷役で走行している間等には、絞り切替弁38の下流側のパイロット圧P2が設定値よりも低くなる。この際も、流路切替弁45は、パイロット圧Ptが高くないため、図3に示すように、制御管路44と第1通孔4cとを連通溝52aにより連通させている。通孔51bはスプール52によって閉じられており、逆止弁48の機能も発揮する。このため、図5に示すように、流量制御弁42は、上流圧導入管路41を制御管路44に連通させ、圧力油を油室23(図2参照)に供給する。逆に、流量制御弁42が制御管路44をドレン管路43に連通させないため、油室23内の圧力油は排出されない。このため、図2に示す制御ピストン22が前進し、斜板11の傾角が縮小し、油圧ポンプ1の吐出容量が減少する。この状態では、図7に示すように、エンジンの回転数にかかわらずに一定の小さい流量で運転を継続することが可能である。
【0044】
チルト前傾操作を行うと、パイロット圧Ptが高くなる。このため、流路切替弁45は、図4に示すように、制御管路44と第1通孔4cとを遮断し、主通孔21aによる油室23(図2参照)に対する圧力油の給排を停止する。また、制御ピストン22が最大容量位置から中間容量位置までの間にあれば、チルトシリンダ36内の圧力油がチルト圧導入管路47に導入され、副通孔21bから油室23内に供給される。油室23内への圧力油の供給による制御ピストン22の前進に伴い、制御ピストン23が中間容量位置を超えれば、圧力油は副通孔21bから油室23内に供給されなくなる。このため、図2に示す制御ピストン23は中間容量位置以上に前進せず、油圧ポンプ1は中間容量となる。
【0045】
特に、この油圧装置では、チルト圧パイロット管路46を供給管路34bから分岐しているため、前傾操作時に油圧ポンプ1を中間容量にすることができる。つまり、油圧装置は図6に示す状態となる。このため、この油圧装置は、チルト前傾操作を行う場合に中間的な流量で運転を継続することが可能であり、動力損失を抑制することが可能になる。なお、前傾操作はゆっくり行われることが多いため、中間的な流量が適している。
【0046】
特許文献1の油圧装置では、チルト前傾をリフト上昇又はチルト後傾と同様に扱っているため、図8に示す関係を生じることがある。図8に示す関係では、大きな吐出容量が不要なチルト前傾操作を行っている間に油圧ポンプがエンジンの回転数の上昇によって吐出容量を増大させ、明らかに大きな動力損失を生じてしまっている。
【0047】
この点、実施例1の油圧装置では、チルト前傾操作の際、油圧ポンプ1は中間容量になるため、運転者自らの意思等で流量をエンジン等の回転数によって加減することが可能である。この状態では、図7に示すように、リフト上昇又はチルト後傾時ほどの流量でなく、運転者の意思でエンジンの回転数の上昇とともに流量を増大させることが可能である。
【0048】
したがって、この油圧装置によれば、動力損失を抑制可能であり、かつチルト前傾操作時の流量を増減することが可能である。また、この油圧装置は、動力損失を従来よりも抑制できるため、フォークリフトの燃費をより一層向上させることができるとともに、油温上昇も抑え、劣化防止も実現可能である。そして、この油圧装置では、チルト前傾時はチルトシリンダ36内の圧力油を絞り36aを介して逃すため、チルトシリンダ36内の圧力が高くなりがちであるが、このときには油圧ポンプ1の吐出容量が小さくなっており、アイドリングのままでもエンストを回避することが可能である。
【0049】
また、この油圧装置では、チルト圧導入管路47をチルト圧パイロット管路46から分岐しているため、チルトシリンダ36周りの配管の取り回しが容易である。
【0050】
さらに、この油圧装置では、チルト圧導入管路47に逆止弁48を設けているため、流量制御弁42、制御管路44及び主通孔21aを経て供給される圧力油がチルト圧導入管路47を逆流することによる不具合を防止することができる。
【0051】
また、この油圧装置は、流量制御弁42に電磁石を採用する必要がないため、コストアップも回避している。
【0052】
(実施例2)
実施例2のフォークリフト用油圧装置は、図9に示すように、流路切替弁45を備えた油圧ポンプ100を採用している。
【0053】
すなわち、油圧ポンプ100のエンドカバー4に弁室4iが形成され、弁室4i内にスプール52が移動可能に収納されている。また、エンドカバー4には、弁室4iと連通する通孔4f、4hが貫設されている。通孔4fは弁ケース50側で弁室4i内に連通しており、通孔4fは第2通孔4eを介して副通孔21bに連通している。通孔4fと第2通孔4eとは栓材4gにより外部と遮断されている。通孔4hは、通孔4fよりも弁ケース50から離れた位置で弁室4i内に連通し、かつ外部にも連通している。通孔4hには制御管路44が接続されている。なお、エンドカバー4には、弁室4iを密閉空間5に接続するドレン孔4jも形成されている。通孔4f及び第2通孔4eが実施例1のチルト圧導入通路47に対応し、弁ケース50とスプール52との接触面が実施例1の逆止弁48に対応する。他の構成は実施例1と同一であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
この油圧ポンプ100を採用すれば、流路切替弁45を別個に用意する必要なく、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明はフォークリフトに利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
33…吐出管路
20…容量可変機構
1…油圧ポンプ
36…チルトシリンダ
34…荷役制御弁
38…絞り切替弁
45…流量制御弁
21…制御シリンダ
23…油室
22…制御ピストン
25…制御ばね
21a…主通孔
21b…副通孔
44…制御管路
46…チルト圧パイロット管路
47…チルト圧導入管路
45…流路切替弁
34c…供給管路
48…逆止弁
2、3…ハウジング(2…フロントハウジング、3…センターハウジング)
4…エンドカバー
5…密閉空間
9…駆動軸
O…軸心
10a…ボア
15…圧縮ばね
10…シリンダブロック
11…斜板
12…シュー
13…ピストン
16…ピボット
17…シューリテーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力油を吐出管路に吐出可能であり、容量可変機構により吐出容量を変更可能な油圧ポンプと、
該吐出管路に設けられ、該圧力油をリフトシリンダとチルトシリンダとの所要流量に分流する荷役制御弁と、
該荷役制御弁に至る該吐出管路中に配設され、該チルトシリンダ又は該リフトシリンダの圧力によってパイロット操作され、前記荷役制御弁に供給される該圧力油の流量を絞る絞り切替弁と、
該絞り切替弁の前後の差圧によってパイロット操作され、該圧力油の給排を制御する流量制御弁とを備え、
前記容量可変機構は、制御シリンダと、該制御シリンダに対して進退可能に設けられ、該制御シリンダと自己との間に形成される油室内に前記圧力油が供給されて前進することにより吐出容量を減少させる制御ピストンとを有し、
該制御シリンダには、該制御ピストンの位置にかかわらずに該油室に対する該圧力油の給排が可能な主通孔と、該制御ピストンが最大容量位置から中間容量位置までの間にあれば該油室に対する該圧力油の供給が可能な副通孔とが形成され、
さらに、該主通孔と前記流量制御弁との間に配設された制御管路と、
前記チルトシリンダ内の該圧力油を該副通孔に導くチルト圧導入管路と、
該制御管路に設けられ、該チルトシリンダ内の圧力によってパイロット操作され、該油室内への該圧力油の供給と、該油室内の該圧力油の排出と、該油室に対する該圧力油の給排の停止とを切り替え可能な流路切替弁とを備えていることを特徴とするフォークリフト用油圧装置。
【請求項2】
前記荷役制御弁と前記チルトシリンダの底部とを繋ぐ供給管路からチルト圧パイロット管路が分岐している請求項1記載のフォークリフト用油圧装置。
【請求項3】
前記チルト圧導入管路は前記チルト圧パイロット管路から分岐している請求項2記載のフォークリフト用油圧装置。
【請求項4】
前記チルト圧導入管路には、前記チルト圧パイロット管路との分岐点と前記副通孔との間に逆止弁が設けられている請求項3記載のフォークリフト用油圧装置。
【請求項5】
ハウジング及びエンドカバーによって形成される密閉空間内に支承された駆動軸と、該駆動軸の軸心と平行に複数のボアを有して該駆動軸と共に回転するシリンダブロックと、該ハウジングに揺動可能に枢支され、容量可変機構により傾角を変化させる斜板と、該斜板と回転摺動可能に係留されたシューを介し、該斜板の該傾角に応じて各該ボア内を往復動する複数のピストンとを備え、
前記容量可変機構は、制御シリンダと、該制御シリンダに対して進退可能に設けられ、該制御シリンダと自己との間に形成される油室内に前記圧力油が供給されて前進することにより吐出容量を減少させる制御ピストンとを有し、
該制御シリンダには、該制御ピストンの位置にかかわらずに該油室に対する該圧力油の給排が可能な主通孔と、該制御ピストンが最大容量位置から中間容量位置までの間にあれば該油室に対する該圧力油の供給が可能な副通孔とが形成され、
パイロット管路と接続され、該油室内への該圧力油の供給と、該油室内の該圧力油の排出と、該油室に対する該圧力油の給排の停止とを切り替え可能な流路切替弁とを備えていることを特徴とする油圧ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−1162(P2011−1162A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145098(P2009−145098)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】