説明

フタロシアニン色素に基づいた色素調製物

本発明は、15、15:0、15:1、15:2、15:3、15:4及び15:6のC.I.ピグメントブルー群の銅フタロシアニン色素の少なくとも1つのタイプと、式(I)


(式中nが1、2、3又は4に等しい数である。)
の色素分散剤の少なくとも1つのタイプとを含むことを特徴とする色素調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン色素を基礎色素として含み、C.I.紫色素23から誘導される色素分散剤を含む新規の色素調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
色素調製物は、基礎色素と、特定の活性を有する基によって置換される色素である色素分散剤と呼ばれるものとの組み合わせである。前記色素分散剤は適用媒体、特に塗料及び印刷用インクにおいてそれらの分散を容易にし、前記色素の流体力学特性及び色彩特性を亢進するために、前記色素へ添加される。高度に着色された塗料及び印刷用インク濃縮物(ミルベース(millbase))の粘性は低下し、前記色素粒子の綿状沈殿は減少する。結果として、例えば色彩の濃さ、透明性及び光沢を増大させることができる。このことは、特に金属塗料に対して望ましい。
【0003】
WO 02/04563は、大多数の色素及び微量色素の固溶体と流体力学向上剤との混合物を含む分散剤を開示する。
【0004】
EP−A−1 130 065は、銅フタロシアニン及び第二有機色素から構成され、適宜、銅フタロシアニン誘導体を含んでもよい同様の混合物を開示する。
【0005】
公知の色素及び色素調製物は、前記産業の需要のすべてに必ずしも合致するとは限らない。特に青の色素について、色彩の濃さ、透明性、流体力学、及び光沢に関する改善のための必要性が存在してきた。
【0006】
本目的は、驚くべきことに、フタロシアニン基礎色素と特定の色素分散剤とを含む色素調製物によって達成されることが明らかとなった。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、C.I.ピグメントブルー15、15:0、15:1、15:2、15:3、15:4及び15:6の群から選択される少なくとも1つの、好ましくは1若しくは2の銅フタロシアニン色素と、式(I)
【0008】
【化2】

(式中nは1、2、3又は4の数であり、好ましくは1若しくは2である。)
の少なくとも1つの、好ましくは1、2又は3の色素分散剤も含む色素調製物を提供し、銅フタロシアニン色素と式(I)の色素分散剤との重量比は好ましくは(99.9:0.1)ないし(75:25)、より好ましくは(99:1)ないし(80:20)、特に好ましくは(98:2)ないし(85:15)、非常に特に好ましくは(97:2.5)ないし(90:10)である。
【0009】
式(I)の色素分散剤は公知の化合物であり、例えばEP−A−321 919に記載の公知の方法によって調製できる。
【0010】
前記銅フタロシアニン色素と前記色素分散剤のほかに、本発明の色素調製物は、さらに、例えば界面活性剤、非色素及び色素分散剤、賦形剤、標準化剤、樹脂、ワックス、消泡剤、防塵剤、増量剤、帯電防止剤、遮光着色料(例、P.V.23)、保存料、乾燥遅延剤、流体力学調節添加剤、湿潤剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤などの通例の補助剤又は添加剤を、前記色素調製物の総重量を基礎として、好ましくは0.1重量%ないし25重量%の量で、特に0.5重量%ないし15重量%の量で含むことができる。未置換の、単置換された及び二置換されたP.V.23の混合物の形態における前記色素分散剤を合成及び使用することも可能である。
【0011】
適切な界面活性剤には、陰イオン性若しくは陰イオン活性化物質、陽イオン性若しくは陽イオン活性化物質、及び非イオン性若しくは両性物質、又はこれらの物質の混合物が含まれる。
【0012】
適切な陰イオン性物質の例には、脂肪酸タウリド(tauride)、脂肪酸N−メチルタウリド、脂肪酸イセチオン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸を例とするアルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルフェノールポリグリコールエーテル硫酸、脂肪アルコールポリグリコールエーテル硫酸、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル硫酸、アルキルスルホスクシンアマート、アルケニルコハク酸モノエステル、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルホコハク酸、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸グルタミン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸サルコシドが含まれ、脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸;これらの陰イオン性物質の塩及び石鹸、例えば脂肪酸のアルカリ金属塩、例えばアビエチン酸であるナフテン酸及び樹脂酸、例えば松脂により修飾されるマレイン酸樹脂であるアルカリ可溶性樹脂、及び塩化シアヌル、タウリン、N,N’−ジエチルアミノプロピルアミン及びp−フェニレンジアミンに基づいた濃縮製剤が含まれる。好ましくは樹脂石鹸、すなわち樹脂酸のアルカリ金属塩である。
【0013】
適切な陽イオン性物質の例には、四級アンモニウム塩、脂肪アミンオキサルキレート(fatty amine oxalkylate)、ポリオキシアルキレンアミン、オキサルキレート化した(oxalkylated)ポリアミン、脂肪アミンポリグリコールエーテル、一級、二級又は三級アミン、例はアルキルアミン、シクロアルキルアミン又は環化アルキルアミン、特に脂肪アミン、ジアミン及び、脂肪アミン若しくは脂肪アルコールから誘導されるポリアミン、及び前記アミンのオキサルキレート(oxalkylate)、脂肪酸から誘導されるイミダゾリン、ポリアミノアミド又はポリアミノ化合物又は、ポリアミノアミド若しくはポリアミノ化合物の1g当たりKOHの100ないし800mgのアミン指数(amine index)を有する樹脂、及び例えば酢酸塩若しくは塩化物などのこれらの陽イオン性物質の塩が含まれる。
【0014】
適切な非イオン性及び両性物質の例には、脂肪アミンカルボキシグリシン酸塩、アミンオキシド(amine oxide)、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミドN−プロピルベタインなどのベタイン、脂肪族及び芳香族アルコールのリン酸エステル、脂肪アルコール若しくは脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸アミドエトキシラート(ethoxylate)、脂肪アルコール−酸化アルキレン(alkylene oxide)付加体及びアルキルフェニルポリグリコールエーテルが含まれる。
【0015】
非色素分散剤とは、構造的に有機色素に由来しない物質を意味する。非色素分散剤は、色素を実際に調製する間に分散剤として添加されるが、しばしば、着色される適用媒体中に色素を取り込む間に分散剤として添加され、例えば、ニス若しくは印刷用インクの調製の間に、前記対応する結合剤に前記色素を分散することによって添加される。構造的に有機色素に由来しない物質はポリマー物質であってもよく、例は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミン、ポリアクリル酸塩、ポリイソシアン酸塩、それらのブロック共ポリマー、前記対応する単量体の共ポリマー、又は異なるクラス由来の数個の単量体で修飾される1つのクラスのポリマーである。これらのポリマー物質は、例えばヒドロキシル、アミノ、イミノ及びアンモニウム基、カルボン酸及びカルボン酸塩基、スルホン酸及びスルホン酸塩基又はリン酸及びリン酸塩基などの極性アンカー基を保有し、芳香族非色素性物質で修飾されることもできる。非色素分散剤はさらに、官能基で化学的に修飾され、有機色素に由来しない芳香族物質であってもよい。この種の非色素分散剤は当業者に公知であり、いくつかの場合において商業的に入手可能である(例、Avecia社のSolsperse(R)、Byk−Chemie社のDisperbyk(R)、Efka社のEfka(R))。多くのタイプが、以下に例示される。原則として、記載されている望ましい任意の他の物質を使用することも可能であるが、例示されるのは、イソシアン酸塩及びアルコールの濃縮製剤、ジオール若しくはポリオール、アミノアルコール又はジアミン若しくはポリアミン、ヒドロキシカルボン酸のポリマー、オレフィン単量体若しくはビニル単量体の共ポリマー及びエチレン的に不飽和のカルボン酸及びカルボン酸エステル、エチレン的に不飽和の単量体のウレタン含有ポリマー、ウレタンにより修飾されるポリエステル、ハロゲン化シアヌルに基づいた濃縮製剤、ニトロキシル化合物を含有するポリマー、ポリエステルアミド、修飾されたポリアミド、修飾されたアクリル酸ポリマー、ポリエステルとアクリル酸ポリマーとを含むくし型構造を有する分散剤、リン酸エステル、トリアジン由来のポリマー、修飾されたポリエーテル、又は芳香族非色素性物質由来の分散剤である。これらの親構造は、多くの場合、例えば官能基を保有するさらなる物質との化学反応によって、又は塩形成によってさらに修飾される。
【0016】
色素分散剤とは、有機色素性親構造に由来し、前記親構造を化学的に修飾することによって調製される色素分散剤を意味し、その例は、サッカリン含有色素分散剤、ピペリジル含有色素分散剤、ナフタレン若しくはペリレン由来の色素分散剤、メチレン基を介して前記色素親構造へ結合する官能基を有する色素分散剤、ポリマーにより化学的に修飾される色素親構造、スルホ酸、スルホンアミド又はスルホ酸エステル基を含有する色素分散剤、エーテル若しくはチオエーテル基を含有する色素分散剤、又はカルボン酸、カルボン酸エステル又はカルボキサミド基を含有する色素分散剤である。
【0017】
補助剤として使用される非色素分散剤及び色素分散剤、界面活性剤又は樹脂の陰イオン基も、例えばCa、Mg、Ba、Sr、Mn若しくはAlイオンを使用して又は四級アンモニウムイオンを使用してレーキ化できる。
【0018】
賦形剤及び/又は増量剤とは、DIN 55943及びDIN EN 971−1に記載の複数の物質を意味し、例は滑石、カオリン、雲母、ドロマイト、石灰、硫酸バリウム又は二酸化チタンのさまざまなタイプである。これに関連して、前記乾燥した色素調製物の粉砕の前に添加することは特に適切であることが明らかとなっている。
【0019】
本発明の色素調製は、好ましくは水性圧縮ケーキとして又は湿性顆粒として使用できるが、一般に、自由流動の固体系、粉体、顆粒を含む。
【0020】
本発明は、本発明の色素調製物を調製するための方法も提供し、式(I)の色素分散剤及び前記銅フタロシアニン色素を互いに混合すること、又はそれらを調製する作業中の任意の望ましい時点で互いに作用させることを含む。例えば、顆粒形態又は粉末形態の前記無水成分は、粉砕前又は粉砕後に混合することが可能であり、ある成分は、例えば湿性圧縮ケーキの形態の前記成分を混合することなどによって、湿性形態又は乾性形態の他の成分へ添加できる。
【0021】
混合は、酸糊化(acid pasting)、酸膨潤によって、乾性形態、湿性形態において粉砕することによって、例えば捏ねることによって、又は懸濁液中で、又はこれらの方法の組み合わせによって達成できる。粉砕は、水、溶媒、酸又は塩などの粉砕補助剤の添加によって実施できる。
【0022】
混合は、前記色素分散剤を、前記銅フタロシアニン色素へ、前記銅フタロシアニン色素を調製する操作の間に添加することによっても達成できる。
【0023】
前記色素分散剤は、好ましくは前記フタロシアニン環系が前記対応するフタル酸誘導体から化学的に形成された後、前記フタロシアニンへ添加される。
【0024】
前記化学合成由来の粗結晶形態において共通して得られる粗フタロシアニン色素は、例えば酸ペースト化、酸膨潤又は乾式粉砕若しくは湿式粉砕によって粉砕される。粉砕の過程において形成される細かい結晶のフタロシアニンは、例えば水及び/又は溶媒中で、一般に上昇した温度で、例えば200℃後で、及び、所望であれば、上昇した圧力下での仕上げとして一般に言及される後処理へ通常供与されうる。前記色素分散剤はもちろん、異なる回数で一部添加することも可能である。
【0025】
湿性色素調製物の乾燥は、乾燥オーブン、バケットホイール乾燥機(bucket−wheel dryer)、タンブル乾燥機、接触乾燥機、及び特にスピンフラッシュ乾燥機及びスプレー乾燥機などの公知の乾燥組み立て品を使用して実行できる。適切な乾燥組み立て品の選択を通じて、埃が少なく且つ自由流動する粉末又は顆粒を生じることも可能である。
【0026】
好ましくは、前記色素調製物は乾性形態、湿性形態又は懸濁液中で前記成分を粉砕することによって、特に前記成分の塩混練によって調製され、さらに好ましい調製プロセスは、仕上げの間又は仕上げの後に、前記色素分散剤を前記銅フタロシアニン色素へ添加することを包含する。第三の好ましい製剤の変異形は、粉砕前に乾性形態で混合するものである。
【0027】
本発明の色素調製物は、例えばプラスチック、樹脂、ニス、塗料、電子写真トナー及び現像液、エレクトレット材料、カラーフィルター、印刷用インクを含むインク、及びシード(seed)などの天然源又は合成源の高分子量有機材料を着色するために使用できる。
【0028】
本発明の色素調製物で着色できる高分子量有機材料は、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース又は酪酸セルロースなどのセルロースエーテル及びセルロースエステルなどのセルロース化合物、例えば脂肪酸、脂肪油、樹脂などの天然結合剤及びそれらの変換生成物又は例えばポリ縮合物(polycondensate)、ポリ付加体、添加ポリマーなどの合成樹脂、及び例えばアミノ樹脂、特に尿素及びメラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂などの共ポリマー、ノボラック若しくはレゾールなどのフェノール類樹脂、尿素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、酢酸ポリビニル又はポリビニルエーテルなどのポリビニル、ポリ炭酸塩、ポリスチレン、塩化ポリビニル、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル若しくはポリアクリロニトリルなどのポリ(メト)アクリル酸塩及びその共ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、クマロン−インデン樹脂及び炭化水素樹脂、エポキシ樹脂、異なる硬化メカニズムを有する不飽和合成樹脂(ポリエステル、アクリル酸塩)、ワックス、アルデヒド及びケトン樹脂、ガム、ゴム及びその誘導体及びラテックス、カゼイン、シリコン及びシリコン樹脂であり、個別に又は混合物で存在する。
【0029】
前述の高分子量有機化合物が、プラスチック塊若しくはプラスチック溶解物の形態で、又は紡糸溶液、分散剤、ニス、塗料若しくは印刷用インクの形態で存在するか否かは重要ではない。企図される使用に応じて、配合物の形態で又は調製される生成物若しくは分散剤の形態で、本発明の色素調製を利用することは有利であることは明らかである。
【0030】
高分子量有機媒体への組み込み時に前記色素調製物を調製することのみも可能である。
【0031】
本発明はその結果としてさらに、本発明の色素調製物の着色に効果的な量を含む高分子量有機材料を提供する。
【0032】
本発明の色素調製物は、通常、着色するよう企図される高分子量有機材料を基準として、0.01重量%ないし30重量%の、好ましくは0.1重量%ないし15重量%の量で使用される。
【0033】
特定の場合において、本発明の粉砕した及び/又は仕上げた色素調製物の替わりに、2m/g、好ましくは5m/gよりも大きなBET表面積を有する対応する粗生成物を使用することも可能である。この粗生成物は、5重量%ないし99重量%の濃度における液体形態若しくは固体形態で、単独で、又は、適宜、他の粗生成物若しくは即座に産生される(ready−produced)色素との混合で、色素濃縮物を生成するのに使用できる。
【0034】
本発明の色素調製物は、例えば、1成分若しくは2成分の粉末トナー(1成分若しくは2成分の現像液とも呼ばれる。)、磁気トナー、液状トナー、重合化トナー、及び専門トナーなどの電子写真トナー及び現像液における着色料として使用するのにも適している。典型的なトナー結合剤は、個別の又は組み合わされた、スチレン、スチレン−アクリル酸塩、スチレン−ブタジエン、アクリル酸塩、ポリエステル、フェノール類−エポキシ樹脂、ポリスルホン、ポリウレタン、並びに、電荷調節剤、ワックス又は流動補助剤などの更なる成分も含むことができるか、又はこれらの付加される成分によってその後も修飾され得るポリエチレン及びポリプロピレンなど付加−重合化樹脂、ポリ付加樹脂及びポリ濃縮樹脂である。
【0035】
本発明の色素調製物は、さらに、粉末及び粉末コーティング材料、特に例えば金属、木、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、繊維材料、紙又はゴムから作られる物品の表面をコーティングするのに使用される摩擦電気的に若しくは動電学的にスプレー可能な粉末コーティング材料における着色料として使用するのに適している。
【0036】
粉末コーティング樹脂として、典型的には、エポキシ樹脂、カルボキシル含有及びヒドロキシル含有ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びアクリル樹脂が、通例の硬化剤とともに使用される。樹脂の組み合わせも使用される。例えば、エポキシ樹脂は、カルボキシル含有及びヒドロキシル含有ポリエステル樹脂との組み合わせで頻繁に使用される(前記樹脂系に依存する。)。典型的な硬化剤要素は、例えば酸無水物、イミダゾールであり、並びにジシアンジアミド及びその誘導体、マスクされたイソシアン酸塩、ビスアシルウレタン、フェノール類樹脂及びメラミン樹脂、トリグリシジルイソシアヌル酸塩、オキサゾリン、及びジカルボン酸である。
【0037】
さらに、本発明の色素調製物は、水性基礎及び非水性基礎の両者に関するインクジェットインクにおける着色料として使用するのに適しており、前記ホットメルトプロセスに従って作用するインクにおける着色料として使用するのにも適している。
【0038】
インクジェットインクは、一般に、本発明の色素調製物の1つ以上の(無水ベースに基づいて計算される。)総計0.5重量%ないし15重量%、好ましくは1.5重量%ないし8重量%を含有する。
【0039】
マイクロエマルジョンは、有機溶媒、水、及び、適宜、さらなる屈水性物質(界面介在物質)に基づいている。マイクロエマルジョンインクは、本発明の色素調製物の1つ以上を0.5重量%ないし15重量%、好ましくは1.5重量%ないし8重量%、水を5重量%ないし99重量%、並びに有機溶媒及び/又は屈水性化合物を0.5重量%ないし94.5重量%含有する。「溶媒に基づいた」インクジェットインクは、本発明の色素調製物の1つ以上を好ましくは0.5重量%ないし15重量%、有機溶媒及び/又は屈水性化合物を85重量%ないし99.5重量%含有する。
【0040】
通常、ホットメルトインクは、室温で固体であり加熱すると液化し、好ましい溶解範囲が約60℃ないし約140℃であるワックス、脂肪酸、脂肪アルコール又はスルホンアミドに基づいている。ホットメルトインクジェットインクは、例えば、ワックスの20重量%ないし90重量%及び本発明の色素調製物の1つ以上の1重量%ないし10重量%から実質に構成される。ホットメルトインクジェットインクは、さらに、(「染料溶解剤」としての)付加ポリマーの0ないし20重量%、分散補助剤の0ないし5重量%、粘性修飾剤の0ないし20重量%、可塑剤の0ないし20重量%、粘性付加剤の0ないし10重量%(例えば、ワックスの結晶化を防止する。)、透明性安定剤の0ないし10重量%、及び抗酸化剤の0ないし2重量%が含まれてもよい。
【0041】
さらに、本発明の色素調製物は、順に能動的(ねじれたネマティックな)若しくは受動的(高度にねじれたネマティックな)強誘電性ディスプレイ若しくは発光ダイオードであり得るテレビスクリーン、LCD(液晶ディスプレイ)、電荷結合デバイス、プラズマディスプレイ又は電気発光ディスプレイなどの電気光学システムなどにおける加法的及び減法的色彩発生の両者のための色彩フィルターのための着色料として、及び電子インク(又はe−インク)又は電子ペーパー(e−ペーパー)のための着色料として使用することにも適している。
【0042】
反射性色彩フィルター及び透過性色彩フィルターの両者の色彩フィルターとして公知のものの製造において、色素は、ペーストの形態で、又は個々のLCD部品(例えば、TFT−LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)又は、例えば(S)TN−LCD((高度に)ねじれたネマティックなLCD))に対する適切な結合剤(アクリル酸塩、アクリルエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エポキシド、ポリエステル、メラミン、ゼラチン、カゼイン)において着色されたフォトレジストとして適用される。高温安定性のほかに、高い色素純度が、安定したペースト及び/又は着色されたフォトレジストのための必要条件である。さらに、着色された色彩フィルターは、インクジェット印刷プロセス又は他の適切な印刷プロセスによっても適用できる。
【0043】
本発明の色素調製物の赤みがかった青の色相は、色彩フィルター色セットである赤−緑−青(R.G.B)に特に適している。これらの3つの色彩は互いに並んだ個別の色彩地点として、及び逆光が全色画像をつくるときに存在する。
【0044】
赤色点のための典型的な着色剤は、例えばP.R.254、P.R.209、P.R.175及びP.O.38などの個別に又は混合されたピロロピロール、キナクリドン及びアゾ色素である。緑色点の場合には、例えばP.G.36及びP.G.7などのフタロシアニン着色料が典型的に採用される。
【0045】
必要な場合、前記個々の色彩点は、遮光の目的のために更なる色と混合することもできる。赤及び青の色相については、黄色、例えばP.Y.138、139、150、151、180及び213との配合を実施することが好ましい。
【0046】
本発明の色素調製物においては、それらの傑出した色彩特性及び流体力学的特性、特に高い綿状沈殿安定性、迅速な分散性、良好な流体力学、高い色の濃さ、透明性、及び彩度(クロマ)について注目すべきである。数多くの適用媒体において、本発明の色素調製物は簡単にかつ高度な精細さへと分散できる。この種の色素分散は、塗料若しくは印刷用インクの濃縮物の色素沈着の高いレベルでさえ傑出した流体力学的特性を呈する。例えば光沢、保護膜に対する堅牢度、溶解の堅牢度、アルカリ及び酸堅牢度、日光及び天候堅牢度、及び色相の高い清浄度などの他の特性も非常に良好である。さらに、本発明の色素調製物を使用して、色彩フィルターにおいて使用するための需要にある赤みがかった青の範囲における色相を得ることができる。それらは高いコントラストを確実にし、さらに、高温安定性又は急で狭い吸収帯域などの、色彩フィルターの使用の場合に与えられる他の必要条件も満たす。本発明の色素調製物は、高純度及び低イオン含有量で製造できる。
【0047】
塗料セクタ、無水溶媒ベースのニス系における前記色素の特性を査定するため、公知のニス、媒体油アルキド樹脂に基づいた、及びブタノールエーテル化メラミン樹脂(AM)に基づいたアルキド−メラミン樹脂ニスの複数のうちからの選択がなされた。
【0048】
前記色彩特性をDIN 55986に従って決定した。
【0049】
分散後のミルベース(millbase)の流体力学を次の5地点尺度に基づいて視覚的に評価した。すなわち、
5 高度に流動的である
4 液状である
3 粘性がある
2 わずかに固定している
1 固定している
である。
【0050】
Erichsen社製Rossman viscospatula301型を使用して、前記粘性をミルベース(millbase)の最終色素濃度への希釈後に決定した。
【0051】
以下の実施例において、部分及び割合は特段に示されているものを除き重量によるものである。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
塩化ナトリウムの450部、商業的C.I.ピグメントブルー15:6の75部、n=1の式(I)の色素分散剤3.75部、及びジエチレングリコール110mlを40℃で16時間練り合わせる。前記練り合わせた組成物を5%強度の塩酸の2500部分中に40℃で2時間撹拌し、前記懸濁液を吸引ろ過し、前記圧縮ケーキを脱塩洗浄し、乾燥した。
【0053】
これにより色素調製物の75.8部が得られる。
【0054】
前記AMニスにおいて、前記色素調製物は赤みがかった青の色調を有する濃い色の透明なコーティングを呈する。前記ミルベース(millbase)の流体力学は非常に良好であり、前記上色(masstone)ニスの粘性は低い。
【0055】
(比較例A)
商業的な粗C.I.ピグメントブルー15の80gを97%強度の硫酸800gに室温で溶解する。前記溶液を、氷2500g及び水1500gの混合物へ注ぐ。前記混合物を80℃へ加熱し、前記温度で30分間撹拌する。前記懸濁液を吸引ろ過し、洗浄を実施する。このことにより21.6%の固体含有量を有する水で湿った圧縮ケーキが得られる。
【0056】
前記圧縮ケーキ188gを、tert−アミルアルコール266g、水110g、及び97%強度の硫酸8.2g中で撹拌する。塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの30%強度水溶液4.1gを添加した後、前記系を130℃へ加熱し、130℃で3時間撹拌する。次に、蒸気蒸留によって前記アルコールを除去し、前記懸濁液を吸引ろ過し、前記圧縮ケーキを洗浄し、80℃で乾燥させる。このことにより(X線分光により決定される。)α相における銅フタロシアニン色素35.7gが得られる。
【0057】
(実施例2)
130℃での加熱前に、n=1、24.5%の固体含有量の式(I)の色素分散剤の水で湿った圧縮ケーキ8.1gを添加することを除き、比較例Aと同様に実施される。これにより、色素調製物35.8gが得られる。前記色素調製物中の銅フタロシアニンはα相にある。
【0058】
(実施例3)
粗C.I.ピグメントブルー80g、n=1の式(I)の色素分散剤15.2gが硫酸に溶解されることを除き、比較例Aと同様に実施する。これにより、色素調製物37.8gが得られる。前記色素調製物中の銅フタロシアニンはα相にある。
【0059】
(実施例4)
実施例2及び3の比較例Aとのコーティング比較。
【0060】
前記AMニスにおいて、実施例2及び3の色素調製物は保護膜に対する非常に良好な堅牢度(DIN53221に従って決定される保護膜堅牢度)を有する濃く着色された透明なコーティングを呈する。比較例Aと比較すると、前記コーティングは実質的に色が濃く、有意により透明であり、前記光沢は高く(光沢測定は、DIN67530にしたがって20℃のある角度でフィルムを引きおろして実施した。)、前記色相はより清浄であり、前記上色(mastone)ニスの粘性は低い。
【0061】
(実施例5)
市販の粗トリ/テトラクロロフタロシアニン青80gを、97%強度の硫酸800gに室温で溶解する。前記溶液を、氷2500g及び水1500gの混合物へ注ぐ。前記混合物を80℃へ加熱し、前記温度で30分間撹拌する。前記懸濁液を吸引ろ過し、洗浄を実施する。これにより、23.1%の固体含有量を有する水で湿った圧縮ケーキが得られる。
【0062】
前記圧縮ケーキ170.8gをtert−アミルアルコール262g、水122.8g及び100%強度のNaOH7.9gに撹拌する。塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの30%強度水溶液4.1gの添加及び、n=1、24.5%の固体含有量を有する式(I)の色素分散剤の水で湿った圧縮ケーキ8.1gの添加後、前記系を130℃へ加熱し、130℃で3時間撹拌する。次に前記アルコールを蒸気蒸留により除去し、前記懸濁液を吸引ろ過し、前記圧縮ケーキを洗浄し80℃で乾燥させる。このことにより色素調製物39.5gが得られる。
【0063】
(実施例6)
商業的な粗トリ/テトラクロロフタロシアニン青80g及び、n=1の式(I)の色素分散剤2gを97%強度の硫酸800gに室温で溶解する。前記溶液を、氷2500g及び水1500gの混合物へと注ぐ。前記混合物を80℃へ加熱し、前記温度で30分間撹拌する。前記懸濁液を吸引ろ過し、洗浄を実施する。これにより、23.1%の固体含有量を有する水で湿った圧縮ケーキが得られる。
【0064】
前記圧縮ケーキ170.8gをtert−アミルアルコール262g、水122.8g及び100%強度のNaOH7.9gに撹拌する。塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの30%強度の水溶液4.1gの添加後、前記系を130℃へ加熱し、130℃で3時間撹拌する。次に前記アルコールを蒸気蒸留により除去し、前記懸濁液を吸引ろ過し、前記圧縮ケーキを洗浄し80℃で乾燥させる。これにより、色素調製物37.4gを得る。
【0065】
(実施例7)
実施例5及び6のコーティング
非水性分散(HS)に基づいたニスを焼灼する硬質固体(high−solid)のアクリル樹脂において、実施例5及び6の色素調製物は透明な上色(masstone)コーティングを呈し、前記光沢は高い。前記金属コーティングは深く着色されて明るく、色相(色彩フロップ)の角度による依存性を呈する。前記上色(masstone)ニスの粘性は低い。
【0066】
(実施例8)
商業的なC.I.ピグメントブルー15:1の30gを、n=1の式(I)の色素分散剤1.5gと機械的に混合した。
【0067】
前記AMニスにおいて高い光沢を有し濃く着色された透明なコーティングが得られ、前記上色(masstone)ニスの粘性は低い。
【0068】
アセト酪酸セルロース及びメラミン樹脂に基づいたポリエステルニス(PE)において、及び前記HSニスにおいて、前記色素調製物は同様に、透明な濃い着色のコーティングを呈する。前記金属コーティングは深く着色され明るい。前記上色(masstone)ニスの粘性は低い。前記HSニスにおける光沢は高い。
【0069】
水性ポリウレタンベースのニス(PUR)において同様に、深く着色され明るい金属コーティングを有する濃く着色され透明なコーティングが得られる。
【0070】
印刷インクの分野における前記色素調製物の特性を査定するため、公知の印刷系、すなわちニトロセルロース−アルコールグラビア印刷系(NC−A)、水性アクリル樹脂ベースのフレキソ印刷系(FD)、及びアルキド樹脂ベースのオフセット系(OD)の複数のうちからの選択がなされた。
【0071】
前記色素調製物を使用して、濃く着色され透明な印刷物が前記NC−A、FD、及びPD印刷系において得られ、前記印刷インクの粘性は低い。
【0072】
(実施例9)
商業的なC.I.ピグメントブルー15:6の30gを、n=1の式(I)の色素分散剤3gと機械的に混合した。
【0073】
(実施例10)
商業的なC.I.ピグメントブルー15:6の30gを、n=1の式(I)の色素分散剤1.5gと機械的に混合した。
【0074】
(実施例11)
商業的なC.I.ピグメントブルー15:6の30gを、n=1の式(I)の色素分散剤0.75gと機械的に混合した。
【0075】
(実施例12)
実施例9、10及び11のコーティング。
【0076】
前記HSニス及びPURニスにおいて、濃く着色され透明なコーティングが得られ、前記金属コーティングは深く着色され明るく、前記HS上色(masstone)ニスの粘性は低く、前記HSコーティングの光沢は高い。
【0077】
(実施例13)
実施例10の印刷物。
【0078】
実施例10からの色素調製物を使用して、清浄な色相による濃く着色され透明な印刷物が前記NC−A、FD及びOD印刷系において得られ、前記印刷用インクの粘性は低い。前記OD印刷系において、良好な焼き入れ(scorch)挙動が観察される。
【0079】
(実施例14)
商業的なC.I.ピグメントブルー15:3の30gをn=1の式(I)の色素分散剤1.5gと機械的に混合した。
【0080】
前記色素調製物を使用して、清浄な色相を有する濃く着色され透明な印刷物が前記NC−A、FD及びOD印刷系において得られ、印刷用インクの粘性は低い。OD印刷系において良好な焼き入れ(scorch)挙動が観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントブルー15、15:0、15:1、15:2、15:3、15:4及び15:6の群から選択される少なくとも1つの銅フタロシアニン色素を含み、式(I)
【化1】

(式中nは1、2、3又は4の数である。)
の少なくとも1つの色素分散剤も含む色素調製物。
【請求項2】
銅フタロシアニン色素と式(I)の色素分散剤との重量比が(99.9:0.1)ないし(75:25)である、請求項1に記載の色素調製物。
【請求項3】
銅フタロシアニン色素と式(I)の色素分散剤との重量比が(99:1)ないし(80:20)である、請求項1又は2に記載の色素調製物。
【請求項4】
銅フタロシアニン色素と式(I)の色素分散剤との重量比が(97:2.5)ないし(90:10)である、請求項1ないし3の少なくとも1つに記載の色素調製物。
【請求項5】
nが1、2又は3の数である、請求項1ないし4のうちの1つ以上に記載の色素調製物。
【請求項6】
nが1又は2の数である、請求項1ないし5のうちの1つ以上に記載の色素調製物。
【請求項7】
界面活性剤、非色素及び色素分散剤、賦形剤、標準化剤、樹脂、ワックス、消泡剤、防塵剤、増量剤、帯電防止剤、遮光着色料、保存料、乾燥遅延剤、流体力学調節添加剤、湿潤剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤並びに光安定剤の群から選択される補助剤又は添加剤を含む、請求項1ないし6のうちの少なくとも1つに記載の色素調製物。
【請求項8】
前記銅フタロシアニン色素及び式(I)の色素分散剤、及び、適宜、前記補助剤又は添加剤を互いに混合することを含む、請求項1ないし7のうちの1つ以上に記載の色素調製物を調製するための方法。
【請求項9】
天然源若しくは合成源の高分子量有機材料、特にプラスチック、樹脂、ニス、塗料、電子写真トナー及び現像液、エレクトレット材料、カラーフィルター、印刷用インクを含むインク、及びシード(seed)を着色するための、請求項1ないし8のうちの少なくとも1つに記載の色素調製物の使用。
【請求項10】
請求項1ないし7のうちの1つ以上に記載の色素調製物の着色的に効果的な量を含む高分子量有機材料。

【公表番号】特表2007−527936(P2007−527936A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501163(P2007−501163)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001800
【国際公開番号】WO2005/085366
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(598109501)クラリアント・プロドゥクテ(ドイチュラント)ゲーエムベーハー (45)
【氏名又は名称原語表記】Clariant Produkte (Deutschland)GmbH
【Fターム(参考)】