説明

フットエアバッグ装置

【課題】車両衝突時に乗員足首に作用する左右方向の曲げ荷重を抑制する。
【解決手段】車両の運転席における車幅方向外側のフットエアバッグ20の車両前後方向から見た膨張展開形状が、傾斜変形したダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aからの高さH2が、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって連続して小さくなる台形状となっている。このため、車両前面衝突時にダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aが傾斜変形しても、膨張展開したフットエアバッグ20の踏面支持部20Fが車両前後方向から見て略水平となるようになっている。この結果、ダッシュパネル12又はフロアパネル10の変形によって乗員足首に作用する左右方向の曲げ荷重を抑制できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフットエアバッグ装置に関し、特に、自動車等の車両の車室フロア部に配設されるフットエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両の前席前方に取り付けられ乗員の足部を保護する、所謂フットエアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、自動車の前席乗員の足元パネルにバッグを設け、該バッグを足元パネルの変形時に膨張させることで、足元パネルの変形による乗員の足への衝撃を緩和するようになっている。
【特許文献1】特開2000−190803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、車両衝突時に足元パネルが車幅方向に沿って車室内側方向へ傾斜変形した場合にも、足元パネルの変形による乗員の足への衝撃を緩和することができるものの、車両衝突時に乗員足首に作用する左右方向の曲げ荷重をさらに抑制できる装置が望まれている。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、車両衝突時に乗員足首に作用する左右方向の曲げ荷重を抑制できるフットエアバッグ装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明のフットエアバッグ装置は、乗員足部を載せる車室のフロア部と乗員足部踏面との間となる部位に膨張展開すると共に、前記乗員足部踏面を支持する踏面支持部の前記フロア部からの膨張展開高さが車幅方向に沿って異なる膨張展開形状となることで、前記フロア部の車両前後方向から見た傾斜変形にともなって発生する前記踏面支持部の傾斜変形を低減するようにしたフットエアバッグを有することを特徴とする。
【0006】
従って、車両衝突時に、フットエアバッグが乗員足部を載せる車室のフロア部と乗員足部踏面との間となる部位に膨張展開する。この際、フットエアバッグにおける乗員足部踏面を支持する踏面支持部の膨張展開時のフロア部からの膨張展開高さが車幅方向に沿って異なることで、フロア部が車両前後方向から見て傾斜変形した場合に、フロア部の傾斜変形にともなうフットエアバッグの踏面支持部の傾斜変形が低減される。このため、フロアパネルの傾斜変形によって乗員足首に作用する左右方向の曲げ荷重が抑制される。
【0007】
請求項2記載の本発明のフットエアバッグ装置は、乗員足部を載せる車室のフロア部と乗員足部踏面との間となる部位に膨張展開する左右一対の膨張展開部を備えたフットエアバッグと、前記左右一対の膨張展開部に設けられ、膨張展開時に前記左右一対の膨張展開部の内圧を調整することで、前記フロア部の車両前後方向から見た傾斜変形にともなって発生する前記踏面支持部の傾斜変形を低減する内圧調整手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
従って、車両衝突時に、フットエアバッグが乗員足部を載せる車室のフロア部と乗員足部踏面との間となる部位に膨張展開する。この際、フロア部が車両前後方向から見て傾斜変形した場合には、フットエアバッグにおける左右一対の膨張展開部に設けた内圧調整手段によって、傾斜変形によって車室内側へ移動したフロア部によって内圧が高くなる側の膨張展開部の内圧を下げる。このため、傾斜変形によって車室内側へ移動したフロア部と乗員足部踏面との間に位置する膨張展開部が収縮することでフロア部の傾斜変形にともなうフットエアバッグの踏面支持部の傾斜変形が低減される。このため、フロアパネルの傾斜変形によって乗員足首に作用する左右方向の曲げ荷重が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の本発明のフットエアバッグ装置は、車両衝突時に乗員足首に作用する左右方向の曲げ荷重を抑制できる。
【0010】
請求項2記載の本発明のフットエアバッグ装置は、車両衝突時に乗員足首に作用する左右方向の曲げ荷重を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明におけるフットエアバッグ装置の第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0012】
なお、図中矢印UPは車両上方方向を示し、図中矢印FRは車両前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0013】
図5には、本実施形態におけるフットエアバッグ装置が適用された車両の車室前下部が車両斜め後方から見た斜視図で示されている。
【0014】
図5に示される如く、本実施形態では、車室の前端下部がフロア部としてのフロアパネル10の前部10Aと、フロアパネル10の前端から斜め前方に立ち上がるフロア部としてのダッシュパネル12の下部12Aとにより構成されている。
【0015】
図1には、本実施形態に係るフットエアバッグ装置のエアバッグ展開前の状態が車両斜め内側後方から見た斜視図で示されている。また、図2には図1の2−2断面線に沿った拡大断面図が示されており、図3には図2の3−3断面線に沿った拡大断面図が示されている。さらに、図4には図5の4−4断面線に沿った拡大断面図が示されている。
【0016】
図4に示される如く、ダッシュパネル12の下部12Aは、車両後方下側から車両斜め前方に立ち上がる傾斜壁部となっており、前席(運転席及び助手席)に着座した乗員足部14の乗員足部踏面(靴底面)15を支持するようになっている。
【0017】
図5に示される如く、運転席側のダッシュパネル12の下部12Aの車室内側面には、フットエアバッグ装置16の一部を構成する車幅方向内側(運転者の左足を支持する側)のフットエアバッグ18と、車幅方向外側(運転者の右足を支持する側)のフットエアバッグ20とがそれぞれ配置されている。
【0018】
なお、図5の符号11はブレーキペダルを示しており、符号13はアクセルペダルを示している。
【0019】
図4に示される如く、フットエアバッグ20はシート状に折り畳まれた状態でダッシュパネル12の下部12Aに沿って配設されている。なお、図示を省略したが左足用のフットエアバッグ18もシート状に折り畳まれた状態でダッシュパネル12の下部12Aに沿って配設されている。
【0020】
図1に示される如く、フットエアバッグ18、20の各上端部には車幅方向に沿って所定の間隔を開けて取付部18A、20Aが突出形成されており、フットエアバッグ18、20の下端部には車幅方向に沿って所定の間隔を開けて取付部18B、20Bが突出形成されている。
【0021】
図4に示される如く、フットエアバッグ20の取付部20Bには貫通孔21がそれぞれ穿設されており、ダッシュパネル12の下部12Aに設けた凹部23の底部には取付孔22が穿設されている。貫通孔21及び取付孔22には、車室内側から固定部材としての例えば、ボルト24の螺子部24Aが挿通されており、ボルト24の螺子部24Aは、ダッシュパネル12の下部12Aの車室外側面12Bに固定されたウエルドナット26に螺合している。また、フットエアバッグ20の取付部20Bには貫通孔28がそれぞれ穿設されており、フロアパネル10の前部10Aに設けた凹部25の底部には取付孔30が穿設されている。貫通孔28及び取付孔30には、車室内側から固定部材としての例えば、ボルト32の螺子部32Aが挿通されており、ボルト32の螺子部32Aは、フロアパネル10の車室外側面10Bに固定されたウエルドナット34に螺合している。
【0022】
なお、フットエアバッグ18もフットエアバッグ20と同様に固定されている。
【0023】
図1に示される如く、フロントピラー36の下部36Aには、フットエアバッグ装置16の一部を構成する円筒状のインフレータ40が上下方向に沿って固定されており、このインフレータ40はピラーガーニッシュ42によって覆われているため、車室内側から見えないようになっている。また、インフレータ40の下部から延びるガス導入管43がフットエアバッグ18、20のフロントピラー36側の側面18C、20Cにそれぞれ連結されている。
【0024】
なお、インフレータ40は、図示を省略したエアバッグ装置制御回路に連結されており、エアバッグ装置制御回路には、周知の衝突検知センサが連結されている。従って、車両の衝突により所定の高荷重作用が衝突検知センサ作用すると、衝突検知センサがこれを感知してエアバッグ装置制御回路がインフレータ40を作動する。この結果、インフレータ40から大量のガスが発生し、このガスがガス導入管43を通ってフットエアバッグ18、20内に供給され、フットエアバッグ18、20を膨張展開されるようになっている。
【0025】
フットエアバッグ18、20は、それぞれ複数枚の基布44によって構成されており、これらの基布44は夫々の外周縁部が縫合、接着等により密着され袋状になっている。
【0026】
図2に示される如く、車幅方向外側(運転者の右足を支持する側)のフットエアバッグ20の車両側方(車幅方向)から見た膨張展開形状は、フロアパネル10の前部10Aに沿った下壁部20Dと、ダッシュパネル12の下部12Aに沿った前壁部20Eと、乗員足部14の踏面15を支持する踏面支持部20Fを三辺とする三角形状となっている。また、踏面支持部20Fの前壁部20Eからの垂直方向の展開高さH1は、車両前方側に向かって小さくなっている。
【0027】
なお、図示を省略したが、車幅方向内側(運転者の左足を支持する側)のフットエアバッグ18の車両側方(車幅方向)から見た膨張展開形状もフットエアバッグ20と同じ形状となっている。
【0028】
図1に二点鎖線で示される如く、車幅方向内側のフットエアバッグ18の車両前後方向から見た膨張展開形状(膨張展開断面形状)S1は、車幅方向を長手方向とする長方形状となっている。一方、図1に二点鎖線で示される如く、車幅方向外側のフットエアバッグ20の車両前後方向から見た膨張展開形状(膨張展開断面形状)S2は台形状となっている。
【0029】
図3に示される如く、車幅方向外側のフットエアバッグ20の車両前後方向から見た膨張展開形状S2は、車幅方向内側壁部20Gと車幅方向外側壁部20Hとが、傾斜変形したダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aから車両上方に向って立ち上がる形状になっている。また、傾斜したダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aからのフットエアバッグ20の踏面支持部20Fの高さH2は、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって連続して小さくなっており、フットエアバッグ20の車幅方向内側壁部20Gの上下幅W1に比べて、フットエアバッグ20の車幅方向外側壁部20Hの上下幅W2が小さくなっている。
【0030】
即ち、フットエアバッグ20が膨張展開した際に乗員足部踏面15を支持する(に当接する)踏面支持部20Fは、傾斜変形したダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aからの膨張展開高さH2が車幅方向に沿って異なっており、踏面支持部20Fの傾斜角度θ1(高さH2の変化率)は、車両衝突時に発生すると考えられるダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aの変形傾斜角度θ2に基づいて設定されている。
【0031】
より、具体的に説明すると、車両が所定の条件下(衝突速度、衝突角度、衝突体の構造等)で前面衝突した場合に、車両前方からの衝突荷重を受ける車両の骨格部材の構造等に応じて、ダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aの変形傾斜角度θ2を予測し、この変形傾斜角度θ2に対して、フットエアバッグ20の踏面支持部20Fの膨張展開時の傾斜角度θ1を予め造り込んでおく。この結果、ダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aの傾斜変形に対して、膨張展開したフットエアバッグ20の踏面支持部20Fが車両前後方向から見て略水平となる(水平に近づく)ようにしている。
【0032】
なお、略水平とは水平と水平に近い角度とを含む。
【0033】
従って、図3に示される如く、車両衝突時にダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aが車両前後方向から見て傾斜した場合に、フットエアバッグ20の踏面支持部20Fが車両前後方向から見て略水平となる。このため、乗員足部14の足首14Aに作用する左右方向の曲げ荷重(図3の矢印G)が抑制されるようになっている。
【0034】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0035】
本実施形態では、前面衝突等の車両衝突時に、図示しない衝突検知センサがこれを感知してインフレータ40が作動する。このため、大量のガスが発生し、ガス導入管43を通ってフットエアバッグ18、20内にガスが送り込まれる。この結果、図1又は図2に示される如く、フットエアバッグ18、20が乗員足部14の踏面15とダッシュパネル12の下部12Aとの間に膨張展開する。この結果、車両衝突時に発生する側面視状態でのダッシュパネル12の下部12Aの立ち上がり変形(図2の矢印U方向の変形)によって、乗員足部14の乗員足部踏面15に加わる荷重をフットエアバッグ18、20によって吸収できる。また、図3に示される如く、車両前後方向から見た状態でのダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aの傾斜変形によって、乗員足部14の乗員足部踏面15に加わる荷重をフットエアバッグ20によって吸収できる。
【0036】
さらに、本実施形態では、車幅方向外側(運転者の右足を支持する側)のフットエアバッグ20における車両前後方向から見た膨張展開形状が、傾斜変形したダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aからの高さH2が、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって連続して小さくなる台形状となっている。即ち、フットエアバッグ20が膨張展開した際のフットエアバッグ20における乗員足部踏面15を支持する踏面支持部20Fの傾斜角度θ1が、車両衝突時に発生すると考えられるダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aの変形傾斜角度θ2に基づいて設定されている。
【0037】
このため、車両衝突時にダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aが車室内側(図7の矢印Y方向)へ傾斜変形しても、フットエアバッグ20が膨張展開することで、フットエアバッグ20における乗員足部踏面15に当接する踏面支持部20Fが車両前後方向から見て略水平となる。
【0038】
この結果、本実施形態では、車両衝突時にフロア部の変形によって乗員足部14の足首14Aに作用する左右方向の曲げ荷重を抑制できる。
【0039】
なお、上記実施形態では、ダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aの車両前突時に予測される変形形状に合わせて右足用のフットエアバッグ20の車両前後方向から見た膨張展開形状を、傾斜変形したダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aからの高さH2が、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって連続して小さくなる台形状にしたが、ダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aの車両前突時に予測される変形形状によっては、フットエアバッグ20の車両前後方向から見た膨張展開形状を台形状以外に三角形状等の他の膨張展開形状としてもよい。また、ダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aの車両前突時に予測される変形形状によっては、車幅方向内側(運転者の左足を支持する側)のフットエアバッグ18における車両前後方向から見た膨張展開形状を調整した構成としてもよい。
【0040】
また、上記実施形態ではフロントピラー36の下部36Aにインフレータ40を配設したが、インフレータ40の配設位置は、フロントピラー36の下部36Aに限定されず、インストルメントパネル内、トンネル部内等の他の部位でも良い。
【0041】
次に、本発明におけるフットエアバッグ装置の第2実施形態を図6及び図7に従って説明する。
【0042】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図6には、本実施形態に係るフットエアバッグ装置の膨張展開状態が車両斜め後方から見た斜視図で示されており、図7には図3に対応する本実施形態に係る断面図が示されている。
【0044】
図6に示される如く、本実施形態では、フットエアバッグ装置16の一部を構成する右足用(車幅方向外側)のフットエアバッグ50が設けられている。このフットエアバッグ50には、第1実施形態のフットエアバッグ20と同様に取付部50A、取付部50Bが突出形成されており、フットエアバッグ50はダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aに取付けられている。
【0045】
図7に示される如く、フットエアバッグ50は左右一対の膨張展開部52、54を備えており、これらの膨張展開部52、54は、フットエアバッグ50における車幅方向中央部に設けた仕切り布58で仕切られている。また、左右一対の膨張展開部52、54はそれぞれが別々にガス導入管43によって、インフレータ56に連結されており、インフレータ56はダッシュパネル12の下部12Aの車室外側面12Bに取り付けられている。
【0046】
即ち、フットエアバッグ50は仕切り布58で仕切られ、車幅方向内側に配置された内側膨張展開部52と、車幅方向外側に配置された外側膨張展開部54によって構成されており、内側膨張展開部52と外側膨張展開部54とがインフレータ56からのガスによって同時に膨張展開するようになっている。
【0047】
図6に示される如く、フットエアバッグ50の車両側方(車幅方向)から見た膨張展開形状は、第1実施形態で説明したフットエアバッグ20と同様にフロアパネル10の前部10Aに沿った下壁部50Cと、ダッシュパネル12の下部12Aに沿った前壁部50Dと、乗員足部の踏面を支持する踏面支持部50Eを三辺とする三角形状となっている。
【0048】
図7に二点鎖線で示すように、フットエアバッグ50の車両前後方向から見た膨張展開形状は、二点鎖線で示す変形前のダッシュパネル12の下部12Aからの高さ(厚さ)H3が車幅方向に沿って略一定の矩形状となっている。
【0049】
図6及び図7に示される如く、フットエアバッグ50における車幅方向内側部に位置する内側膨張展開部52の車幅方向内側壁部52Aには、車両前後方向に沿って所定の間隔で内圧調整手段としての複数のスリット60が形成されており、これらのスリット60は、内側膨張展開部52の内圧が所定値を超えた場合に、開口して内部ガスを排気することで内側膨張展開部52の内圧を所定値に調整するようになっている。
【0050】
一方、フットエアバッグ50における車幅方向外側部に位置する外側膨張展開部54の車幅方向外側壁部54Aには、車両前後方向に沿って所定の間隔で内圧調整手段としての複数のスリット62が形成されており、これらのスリット62は、外側膨張展開部54の内圧が所定値を超えた場合に、開口して内部ガスを排気することで外側膨張展開部54の内圧を所定値に調整するようになっている。
【0051】
従って、図7に実線で示すように、車両衝突時に、ダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aが車室内側(図7の矢印Y方向)へ傾斜変形した場合には、このダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aの車室内側方向(図7の矢印Y方向)への傾斜変形によって、外側膨張展開部54が乗員足部踏面15側に押し上げられる。このため、内側膨張展開部52の内圧P1に比べて外側膨張展開部54の内圧P2が高くなる。この際、外側膨張展開部54の車幅方向外側壁部54Aに形成したスリット62が開口して、ガス(図7の矢印G)を排気するようになっている。
【0052】
このため、外側膨張展開部54の内圧が所定値に調整される(下がる)ことで、外側膨張展開部54が収縮変形し、フットエアバッグ50における乗員足部踏面15に当接する踏面支持部50Eが車両前後方向から見て略水平に保持されるようになっている。
【0053】
従って、車両衝突時にダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aが車両前後方向から見て傾斜しても、フットエアバッグ50の踏面支持部50Eが車両前後方向から見て略水平となる。このため、乗員足部14の足首14Aに作用する左右方向の曲げ荷重(図7の矢印G)が抑制されるようになっている。
【0054】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0055】
本実施形態では、車両衝突時に、図示しない衝突検知センサがこれを感知してインフレータ40、56が作動する。このため、大量のガスが発生し、ガス導入管43を通ってフットエアバッグ18、50内にガスが送り込まれる。この結果、フットエアバッグ18、50が乗員足部14の乗員足部踏面15とダッシュパネル12の下部12Aとの間に膨張展開する。この結果、第1実施形態と同様に、車両衝突時に発生する側面視状態でのダッシュパネル12の下部12Aの立ち上がり変形によって、乗員足部14の乗員足部踏面15に加わる荷重をフットエアバッグ18、50によって吸収できる。また、図7に示される如く、車両前後方向から見た状態でのダッシュパネル12の下部12A又はフロアパネル10の前部10Aの傾斜変形によって、乗員足部14の乗員足部踏面15に加わる荷重をフットエアバッグ50によって吸収できる。
【0056】
さらに、本実施形態では、車幅方向外側のフットエアバッグ50における内側膨張展開部52に設けたスリット60と外側膨張展開部54に設けたスリット62によって、内側膨張展開部52と外側膨張展開部54との各内圧が調整される。
【0057】
具体的には、車両衝突時に、ダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aが図7に実線で示す位置から二点鎖線で示す位置へ傾斜変形した場合には、このダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aの車室内側方向(図7の矢印Y方向)への傾斜変形によって、外側膨張展開部54が乗員足部踏面15側に押し上げられるため、内側膨張展開部52の内圧P1に比べて外側膨張展開部54の内圧P2が高くなる。この結果、外側膨張展開部54の車幅方向外側壁部54Aに形成したスリット62が開口して、外側膨張展開部54内のガス(図7の矢印G)を排気する。このため、外側膨張展開部54の内圧が所定値に調整される(下がる)ことで、フットエアバッグ50における乗員足部踏面15に当接する踏面支持部50Eが車両前後方向から見て略水平に保持される。
【0058】
従って、車両衝突時にダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aが車両前後方向から見て傾斜しても、フットエアバッグ20の踏面支持部20Fが車両前後方向から見て略水平となる。このため、ダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aの変形によって乗員足部14の足首14Aに作用する左右方向の曲げ荷重(図7の矢印G)を抑制できる。
【0059】
また、本実施形態では、ダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aの変形位置や変形量(傾斜角度)に応じて、内側膨張展開部52に設けたスリット60と外側膨張展開部54に設けたスリット62とが、内側膨張展開部52の内圧P1又は外側膨張展開部54の内圧P2の上昇によって適宜開いて、内側膨張展開部52の内圧P1と外側膨張展開部54の内圧P2とを調整することで、フットエアバッグ20の踏面支持部20Fが車両前後方向から見て略水平とする。このため、車両衝突時に発生するダッシュパネル12の下部12Aとフロアパネル10の前部10Aの変形位置や変形量(傾斜角度)が変化した場合にも、乗員足部14の足首14Aに作用する左右方向の曲げ荷重(図7の矢印G)を抑制できる。
【0060】
なお、上記実施形態では、フットエアバッグ50の内側膨張展開部52の車幅方向内側壁部52Aに内圧調整手段としての複数のスリット60を形成し、外側膨張展開部54の車幅方向外側壁部54Aに内圧調整手段としての複数のスリット62を形成したが、内圧調整手段はスリット60、62に限定されず、孔や所定の内圧で開放する弁等の他の内圧調整手段としてもよい。
【0061】
また、内圧調整手段の配置位置は、内側膨張展開部52の車幅方向内側壁部52Aや外側膨張展開部54の車幅方向外側壁部54Aに代えて、仕切り布58や内側膨張展開部52と外側膨張展開部54とへの各ガス供給部に設けてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、運転席用の車幅方向外側(右足用)のフットエアバッグ50に本発明のフットエアバッグ装置を適用したが、本発明のフットエアバッグ装置は運転席の車幅方向内側(左足用)のフットエアバッグにも適用可能である。
【0063】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記各実施形態では、運転席側に本発明のフットエアバッグ装置を配設した構成について説明したが、図5に示される如く、本発明のフットエアバッグ装置10は、助手席側に配設しても良い。
【0064】
また、上記各実施形態では、フットエアバッグをダッシュパネルと乗員足部の踏面との間に設けたが、フットエアバッグをダッシュパネルやフロアパネルに取り付けたフットレストと乗員足部の踏面との間等の他の位置に設け構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフットエアバッグ装置のエアバッグ展開状態を示す車両斜め内側後方から見た斜視図である。
【図2】図1の2−2断面線に沿った拡大断面図である。
【図3】図2の3−3断面線に沿った拡大断面図である。
【図4】図5の4−4断面線に沿った拡大断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るフットエアバッグ装置が適用された車室前部を示す車両斜め後方から見た斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るフットエアバッグ装置のエアバッグ展開状態を示す車両斜め内側後方から見た斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るフットエアバッグ装置の図3に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 フロアパネル
12A フロアパネルの下部(フロア部)
12 ダッシュパネル
12A ダッシュパネルの下部(フロア部)
14 乗員足部
15 乗員足部踏面
16 フットエアバッグ装置
18 フットエアバッグ
20 フットエアバッグ
20F フットエアバッグの踏面支持部
40 インフレータ
43 ガス導入管
50 フットエアバッグ
50E フットエアバッグの踏面支持部
52 フットエアバッグの内側膨張展開部
54 フットエアバッグの外側膨張展開部
56 インフレータ
58 フットエアバッグの仕切り布
60 スリット(内圧調整手段)
62 スリット(内圧調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員足部を載せる車室のフロア部と乗員足部踏面との間となる部位に膨張展開すると共に、前記乗員足部踏面を支持する踏面支持部の前記フロア部からの膨張展開高さが車幅方向に沿って異なる膨張展開形状となることで、前記フロア部の車両前後方向から見た傾斜変形にともなって発生する前記踏面支持部の傾斜変形を低減するようにしたフットエアバッグを有することを特徴とするフットエアバッグ装置。
【請求項2】
乗員足部を載せる車室のフロア部と乗員足部踏面との間となる部位に膨張展開する左右一対の膨張展開部を備えたフットエアバッグと、
前記左右一対の膨張展開部に設けられ、膨張展開時に前記左右一対の膨張展開部の内圧を調整することで、前記フロア部の車両前後方向から見た傾斜変形にともなって発生する前記踏面支持部の傾斜変形を低減する内圧調整手段と、
を有することを特徴とするフットエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−260376(P2008−260376A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103930(P2007−103930)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】