説明

フッ素化アイオノマー性架橋コポリマー

【課題】比較的低い水和を維持していながら、非常に高いイオン伝導度の組み合わせを有する低い当量重量のアイオノマーを提供すること。
【解決手段】一実施態様では、(1)950未満、好ましくは625〜850、最も好ましくは約700〜約800の低い当量重量、および(2)高い伝導度(0.15S/cmよりも大きい)を有するアイオノマーおよび該アイオノマーを形成する方法が提供される。別の態様では、アイオノマーは(1)950未満、好ましくは625〜850、最も好ましくは約700〜約800の低い当量重量、および(2)許容できる低さの水和(約75重量%未満)を有する。これらのアイオノマーは、許容できる物理的安定性を有する薄膜に加工するのに適する。したがって、それらは、低湿度または高温の燃料電池用途に非常に良く適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素化アイオノマーに関し、特に、比較的低い水和を有し、そして薄膜に加工することができる、低当量重量のフッ素化アイオノマーに関する。好ましくは、フッ素化アイオノマーは、低湿度環境におけるかなり高いイオン伝導度が望ましい用途に適するパーフルオロ化化合物である。そのような用途の1つが固体高分子電解質燃料電池である。
【背景技術】
【0002】
固体高分子イオン性膜またはフィルムは多年に亙り当業界でよく知られている。これらのポリマーは、一般に、比較的穏やかな温度、例えば、50〜90℃で、高イオン伝導度、すなわち、イオン種例えばプロトンの急速な輸送によって特徴づけられる。さらに、膜または薄いフィルムの形に作られることが、そのようなイオン伝導性ポリマーには望ましい。そうすることで、フィルム厚さの関数である、イオン輸送への抵抗を低下させることができる。フルオロポリマー組成物はそのような用途に特に望ましく、例えば、米国特許第3,282,875号、同第4,358,545号および同第4,940,525号明細書に開示されている。
【0003】
本発明はアイオノマーに関し、そしてそのアイオノマーは、本明細書で用いられる際、膜の形での酸型のポリマーが1×0-6S/cmよりも大きい室温イオン伝導度を有するように、酸基または酸基に容易に変えられる酸誘導体を含むパーフルオロ化ポリマーを意味する。本明細書に使用される際、酸型のアイオノマーは、実質的に全てのイオン交換基、例えばSO3-またはスルホン酸基がプロトン付加されることを意味する。アイオノマーを特徴づけるために使用される1つの重要なパラメータが当量重量である。本出願では、当量重量(EW)を、1当量のNaOHを中和するために要求される酸型ポリマーの重量であると定義する。当業界で知られているように、また、当量重量を役に立つことができる他のパラメータに変換することができる。例えば、1000を当量重量で割ったイオン交換容量、またはアイオノマーおよび非アイオノマーのコポリマー中のアイオノマーのモル分率もしくはモルパーセントがある。より高いEWは、存在している活性イオン種(例えばプロトン)がより少ないことを意味する。1当量の水酸イオンを中和するためにより多量のポリマーを要する場合、ポリマー中の活性イオン種はより少ないに違いない。イオン伝導度は一般にポリマー中の活性イオン種の数に比例するので、したがって、伝導率を増加させるためにEWを低下させることが望まれる。
【0004】
以前は、当量重量を下げることは、有用な膜を作ることへの実際的な方法ではなかった。これは、現在知られているフルオロポリマーでは、当量重量が下がるにしたがって、ポリマーが吸収する水(または溶剤)の量が増えるからである。ポリマーによって吸収された水の量は水和度または水和と呼ばれる。それは、与えられた条件設定下、例えば室温の水に2時間の浸漬の後で、ポリマーによって吸収された水の重量パーセントとして表わされる。より高い水和度は、膜のイオン伝導度を増加させる傾向があるので、ある程度望ましい。同様に、水和度を低下させることは、伝導度を減少させることを伝統的に意味した。しかし、そのようなフルオロポリマー膜が含むことのできる水または溶剤の量には限界がある。あまりに多量の水が存在する場合、フィルムは物理的な完全性の多くを失う可能性があり、剛性がほとんどまたは全くなくなりゲルのようになる。極端には、ポリマーは完全に崩壊する場合がある。さらに、厳しいポリマー組成によっては、低EWフルオロポリマーアイオノマーは部分的または完全に水に溶解さえする場合がある。その上、たとえフィルムが安定していたとしても、高過ぎる水和は伝導のために存在するイオンの数を希釈する傾向があり、その結果、伝導度を低下させる。したがって、最も高い適切な伝導度を提供するに十分高く、一方、水和された時にフィルムが物理的に不安定になるほど高くはない最適の水和度がある。
【0005】
したがって、それらの伝導度を増加させるためにこれらのフルオロポリマーの当量重量を減少させることが望まれるが、前述したように、水和度および/または水溶解性が実用的な膜を形成するには高過ぎるので、実際にはそうできなかった。
【0006】
各種の方法がこの制限を回避するために使用された。米国特許第5,654,109号、同第5,246,792号、同第5,981,097号、同第6,156,451号および同第5,082,472号明細書に、層状複合膜の各種形態が提案される。’109では、外側の1層または複数の層が改良された電気性能のためにより低い当量重量であり、一方、コアの層は強度を提供する、より高いEWを有する、二層または三層の複合イオン交換膜の使用が提案される。同様の方法が’792で提案されるが、フィルムはEWの代わりにそれらのガラス転位温度によって特徴づけられる層である。変化するイオン交換比(EWに比例しているパラメータ)を有する3またはそれ以上の層が’097で提案される。’472では、パーフルオロ化アイオノマーを多孔質の延伸膨張PTFE膜とラミネートし、引き続いてそのラミネートへ低当量重量のアイオノマー(例えば920〜950EW)を含浸することによる膜の形成方法が教示される。含浸は低固体含量(例えば、2%)の溶液で実行されるので、最終製品中の低当量重量材料の量は比較的少ない。これらの方法の各々は、一体構造の単一層のフルオロポリマー膜を超えて何らかの改良を提供することができるとはいえ、それらは皆、処理加工するに困難および/または高価である場合がある、かなり複雑で、複合した多層構造の使用を含む。
【0007】
また、フルオロポリマー自体を改変することへの方法は例えば、エゼル(Ezzell)への米国特許第4,358,545号明細書に教示された。これらのポリマーの特性はムーア(Moore)およびマーチン(Martin)の「ダウパーフルオロスルホン酸アイオノマーのモルホロジーと化学的性質(Morphology and Chemical Properties of the Dow Perfluorosulfonate Ionomers)」(マクロモレキュール、22巻、pp.3594−3599、1989年)およびムーア(Moore)およびマーチン(Martin)の「溶液キャスト法パーフルオロスルホン酸アイオノマーの化学的およびモルホロジー的特性(Chemical and Morphology Properties of Solution-Cast Perfluorosulfonate Ionomers」(マクロモレキュール、21巻、pp.1334−1339、1988年)に記載されている。これらの文献に説明された方法はより短い側鎖をポリマー主鎖に有するアイオノマーを作ることである。この方法は、塗布工程(例えば米国特許第4,661,411号および同第5,718,947号明細書に記載されるような)における使用には特に望ましいが、フルオロポリマーアイオノマー膜としての使用にはまだ制限を受ける。特に、これらのポリマーは溶液から許容できる薄さで強い膜に成形するにはまだ難しい場合がある。
【0008】
様々な著者によって説明される別の方法は周知の乳化重合(例えば米国特許第3,282,875号明細書に開示された方法)の変形を使用することでテトラフルオロエチレンとアイオノマーのコポリマーを形成することである。中山等の米国特許第5,608,022号明細書およびベカリアン(Bekarian)等の国際公開第WO00/52060号パンフレットには、伝統的なフッ素含有モノマー、例えばテトラフルオロエチレンと重合する前にフッ素化コモノマーの細かい小滴を分散することによって、官能基を有するフッ素化コポリマーを形成する方法が教示される。これらの方法では、コモノマーの細かい小滴の生成がポリマーの成功する作製の秘訣である。バーンズ(Barnes)等への国際公開第WO94/03503号パンフレットでは、アイオノマーエマルジョンへのテトラフルオロエチレンモノマーの添加割合が、重合中エマルジョンの濃度を変更するか、反応中テトラフルオロエチレンガスの圧力を変えるか、または反応混合物の撹拌を変えることによって、制御される。バーンズは、これらの方法が、核磁気共鳴によって測定されるEWに対する滴定によって測定されるEWの比として定義される当量重量分布の特性によって決定される、アイオノマーをより高く利用した製品を生じることを教示する。バーンズ等は、このより高い利用がより高い相対水和生成物およびより高い比伝導度を導くことを権利請求している。これらのパラメータの両方は2.5モル硫酸(2.5MのH2SO4)の存在下で評価された。したがって、水和された重合体(酸電解質の不存在下)だけが考慮される目下の用途には関連していない。
【0009】
国際公開第WO00/79629号パンフレットに教示されたさらに別の方法では、アイオノマー性ポリマーは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびビニリデンフルオリドのターポリマー(例えばダイネオン社(Dyneon Corp., Oakdale, MN)から入手可能なTHVシリーズ)などの構造的なフィルム形成ポリマーと十分に混合される。その後、低い当量重量のアイオノマーを使用して薄膜を満足に形成することが可能である。しかし、EWが800の原料アイオノマーが使用された場合(例えばWO00/79629の表1)、水和度はまだ比較的高く、80〜110%である。したがって、これらのフィルムは高い水和のために比較的弱いと予想することができる。
【0010】
最後に、また、非アイオノマー性フルオロポリマーを形成する方法を説明する多数の技術がある。大部分に関して、製造された製品が実質的にイオン伝導性を有しない、すなわち、これらの製品のイオン伝導度は室温で約1×10-6S/cm未満であるので、この技術は本明細書で説明される本発明に関連していない。
【0011】
フルオロポリマーのイオン伝導性膜は多くの異なった用途で利用された。広く提案された用途の一つが、例えば米国特許第4,358,545号、同第4,417,969号および同第4,478,695号明細書に記載されたような塩化ナトリウムの電解のための電解槽膜としてである。さらに、フルオロポリマーアイオノマーとして記述されたこの一般的な種類のポリマーは、マーチン(Martin)等の米国特許第4,661,411号明細書中で上述されたような塗布物として、電線絶縁材(例えばWO90/15828)として、オラー(Olah, G. A.),アイエル(Iyer P. S.)およびサーヤ(Surya P. G. K)による「合成におけるパーフルオロ化樹脂スルホン酸(ナフィオン−H(R))触媒(Perfluorinated Resin sulfonic Acid (Nafion-H (R)) Catalysis in Synthesis)」(雑誌:Synthesis (Stuttgart), 1986 (7) 513-531)およびヤマト(Yamato, T)による「有機合成におけるパーフルオロ化樹脂スルホン酸(ナフィオン−H)触媒(Perfluorinated Resin sulfonic Acid (Nafion-H) Catalysis in Organic Synthesis)」(有機合成化学協会/合成有機化学誌、53巻、6号、1995年6月、p487−499)に記載されているような、主として有機合成での酸触媒の代替として、応用電気化学誌、第10巻、1980年の741頁にイェン(Yen, R.S.)、マックブリーン(McBreen, J.)、キセル(Kissel, G.)、クレサ(Kulesa, F.)およびスリニバサン(Srinivasan, S.)によって説明されるような水の電解用膜として、例えばロードセップ(Raudsepp, R.)およびブローグデ(Vreugde, M.)による「塩化物溶液からの銅の電解採取におけるナフィオン−415膜の使用(The Use of Nation-415 Membrane in Copper Electrowinning from Chloride Solution)」(CIMブレティン、1982年、V75、N842、P122)の中で説明されているような電解採取用の膜として、ナフィオンパーフルオロ化膜事例史(デュポン社、ポリマー製品部、ウィルミントン、DE19898)の製品文献中に説明されるような金属イオン回収系で、湿潤ガス流を連続的にそして非常に選択的に乾燥するためのチューブとして(パーマピュア社(Perma Pure, Inc., Toms River, NJ)の製品文献参照)、および高分子電解質膜(PEM)燃料電池中の構成成分としての使用のために提案されていた。後者の場合では、例えば米国特許第5,547,551号および同第5,599,614号明細書中でバハール(Bahar)等によって説明されるような電解質またはそれの構成成分として、および/またはMEAの電極の一方または両方の構成成分としての両方で機能することができる。
【0012】
イオン伝導性ポリマー、即ちアイオノマーがPEM燃料電池の電解質として使用される場合、それらは一方の電極からもう一方の電極にプロトンを導く。そのような燃料電池に関連している一般的な問題は、一酸化炭素などの汚染物質がMEAに使用される触媒を損なう傾向があるということである。これらの汚染物質は電極間のイオンの流れを妨げて、その結果、燃料電池の性能を下げる場合がある。
【0013】
一酸化炭素の影響を減少させる1つの方法は上昇された温度で燃料電池を操作することである。これは潜在的汚染物質の生成を減らし、そして/またはその破壊速度を増加させて、その結果、より効率的な電極性能を許容する。
【0014】
しかしながら、高温で操作することによる問題は、燃料電池内で液体の水を蒸発させて、そうすることで膜の水和度を減少させる傾向があるということである。上述したように、水和の減少はイオン伝導性を低下させ、それによって、膜を通るイオン輸送の効率を減少させ、そして燃料電池の運転に不利に影響する。事実、より低温で従来のアイオノマーを使用するPEM燃料電池では、通常、入って来るガス流は比較的高い水和度を維持するために十分に加湿されている。単にガスに湿気の形態で追加水を加えることによって、長期間の効率的な燃料電池の運転を許容するに十分高い水和を保つことができる。しかしながら、温度が水の沸点に近づくか、または水の沸点以上になると、この方法は難しく効率が悪くなる。したがって、比較的低い水和および許容できるほど高いイオン伝導性を有するアイオノマーが、より少ない周囲水を必要としてPEM燃料電池の電解質として機能するだろう。それはより低温でのより低い湿度環境で、ならびに水の沸点に近い温度そして潜在的には実に水の沸点以上の温度の両方で効率的に機能することができるであろう。
【0015】
上述したように、既知の低い当量重量のアイオノマーは比較的高い水和を有する。その上、それらがまた、部分的にまたは完全に水に可溶であることも知られている。これらのファクターは水が作り出される環境、例えば水素−酸素燃料電池におけるそれらの使用に対して忠告するだろう。なぜなら、これらのポリマーはこれらの環境で物理的に不安定になる傾向があるからである。さらに、上述し、そして最近示されたように(国際公開第WO00/52060号パンフレットの表1)、水和の大きい増加に付随して当量重量が低下するので、イオン伝導度は減少する。対象のアイオノマーの当量重量が834から785まで減少する場合、WO’060に報告されたイオン伝導度は30%より多く減少する。
【0016】
従来の知識のこの背景に対して、出願人は、比較的低い水和を維持していながら、非常に高いイオン伝導度の組み合わせを有する低い当量重量のアイオノマーを発見した。その結果、本発明は、上述したものなどの既存の用途における固体フルオロポリマー膜のさらに効果的な使用を可能にする。さらに、これまで実用的でなかった新用途が、この新しくて、ユニークな特性の設定によって可能になり得る。本発明は電解質またはその構成成分として、または、高温または低湿度で運転する高分子電解質膜燃料電池の電極の構成成分として特に有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、(a)実質的にフッ素化された主鎖、(b)アイオノマー形成モノマー由来の下式からなるペンダント基、
【0018】
【化1】

【0019】
(ここで、XはF、ClまたはBrもしくはそれらの混合物であり、nは0、1または2に等しい整数であり、RfおよびRf’は独立にF、Cl、パーフルオロアルキル基、およびクロロパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれ、Yは酸基または酸基に変換できる官能基であり、aは0または0より大きい整数であり、そしてbは0より大きい整数である。)
【0020】
および(c)CA2=CB−O−の形態からなる少なくとも2つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルモノマー由来のペンダント基(ここで前記ビニル基は4つより多い原子によって隔てられており、Aは独立にF、ClおよびHを含む群から選ばれ、そしてBは独立にF、Cl、HおよびORiから選ばれ、ここでRiは部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化もしくは塩素化されることができる分岐鎖状または直鎖状アルカンである)を含んでなるフッ素化アイオノマー性コポリマーであって、アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度は最終生成物の約10モル%と約45モル%との間にあり、そしてビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度は最終生成物中に約0.05と約2モル%との間にある。
【発明の効果】
【0021】
これらのアイオノマーは、許容できる物理的安定性を有する薄膜に加工処理されるのに適する。したがって、それらは低湿度または高温燃料電池用途に極めて適切である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】室温イオン伝導度装置の模式図である。
【図2】高温伝導度セルの模式図である。
【図3】本発明アイオノマーの典型的態様の動的な機械的解析検討結果を示す図で、せん断速度の関数として複素粘度を示している。
【図4】本発明の典型的態様に従ったアイオノマーから成形された膜の断面図である。
【図5】本発明の典型的態様に従ったアイオノマーを使用して成形された複合膜の断面図である。
【図6】本発明の典型的態様に従ったアイオノマーを使用して成形された膜電極アッセンブリの断面図である。
【図7】本発明の典型的態様に従ったアイオノマーを含む燃料電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、2つまたはそれ以上のモノマーから成るコポリマーを製造するために、ミニエマルジョン重合工程での分岐形成剤の低レベルの添加を記載する。コポリマーは実質的にフッ素化された主鎖および1つまたは複数のアイオノマーを含み、その結果、生成物は著しく高いイオン伝導度および比較的低い水和を有する。分岐形成剤は、不溶性ゲルを生成するために必要とされるレベル未満で添加され、しかも最終生成物に驚異的で実質的な影響を有する。
【0024】
本明細書で使用される方法は、例えば、「乳化重合および乳化ポリマー(Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers)」(P. A. Loweli および M. S. El-Aasser編集, John Wiley and Sons, Ltd, New Fork, 1997)中の第20章、E.デヴィッド・スドール(E. David Sudol)およびモハメドS.El−Aasser(Mohamed S. El-Aasser)による「ミニエマルジョン重合」に記載されるように、一般に、ミニエマルジョン重合として当業界で知られている。これらの方法では、本明細書では50〜500nmのエマルジョン中の液滴直径によって定義されるミニエマルジョンが、オイル(ここではアイオノマー)/水/界面活性剤/補助界面活性剤系を、超音波、マントンゴーリンホモジナイザー、またはマイクロフルーイダイザーによって生じるような高せん断混合に掛けることによって形成される。その後、このミニエマルジョンを重合反応に掛ける。本発明のこれらの方法によって生じる工程および製品は、例えば中山等の米国特許第5,608,022号明細書およびベカリアン(Bekarian)等の国際公開第WO00/52060号パンフレットに記載されているような従来技術と、補助界面活性剤の存在のために実質的に異なっている。ミニエマルジョンの達成を促進する補助界面活性剤の使用は、界面活性剤の使用量がより少ないという利点を示す。界面活性剤の使用量がより少ないということは、高濃度の界面活性剤が最終製品に有害な影響を有する可能性があるので、利点であることができる。
【0025】
フルオロポリマーのマイクロエマルジョン重合における補助界面活性剤の使用は当業界で知られていたが(例えばウー(Wu)等の米国特許第6,046,271号明細書参照)、本明細書に記載されたアイオノマー性ポリマーの作製のための補助界面活性剤を用いたミニエマルジョンプロセスの使用は新規である。例えば、’271においてウーは、少なくとも1種の液体パーフルオロ化炭化水素化合物のマイクロエマルジョンを形成すること、そのマイクロエマルジョンに少なくとも1種のガス状のラジカル重合可能なポリマーを添加すること、そして混合物にラジカル開始剤を加えることによって重合を開始することからなる重合方法を開示している。ウーは、アイオノマーでない製品を与える、特に直鎖のフルオロもしくはクロロフルオロアルケンまたはビニルエーテルだけを開示して(例えば、4欄の20−28行参照)、本明細書に記載されている酸性末端基を有するモノマーの使用を予期しなかった。さらに、本明細書で使用されるような分岐形成剤の添加もまた予期しなかった。我々が発見した特に驚異的な結果は、非常に低いレベルの分岐形成剤を伴う補助界面活性剤の存在中でのミニエマルジョン重合(以前に開示された直鎖アルケンのマイクロエマルジョンの代わりに)にアイオノマー形成モノマーを使用することによって、我々が異常に高いイオン伝導度を有するポリマーを生産することができるということである。得られるポリマーの同様に意外な比較的低い水和と結びついたこの全く予期されない結果は、非常に価値のあるイオン伝導膜の生産を可能にする。
【0026】
ウー等の係属中の出願「低当量重量アイオノマー」には、実質的にフッ素化された主鎖および1種または複数のアイオノマーからなり、2種またはそれ以上のモノマーを用いたコポリマーを製造するために、水系ミニエマルジョン重合手順が記載されており、その結果、その生成物は非常に高いイオン伝導度を有する。その出願は、得られるポリマーの特性をさらに改良するために分岐形成剤を低レベルで使用することが可能であることを予期しなかった。我々が発見した特に驚異的な結果は、実質的にフッ素化された主鎖および1種または複数のアイオノマーを有するコポリマーの重合中に分岐形成をもたらすに必要なレベル未満の分岐形成剤を添加することによって、我々が優れた性能を有するポリマーを製造することができるということである。特に、非常に高い室温イオン導電度、比較的低い水和、および許容できる物理的安定性の組み合わせを有するフィルムに、ポリマーを容易に成形することができる。この全く予期されない結果は非常に価値のある膜を生産した。
【0027】
本発明の1つの態様では、以下にさらに詳細に説明するミニエマルジョン重合工程における補助界面活性剤としてパーフルオロ化炭化水素を使用する。分岐形成剤は低レベルで重合反応の中に導入され、驚いたことに、得られるアイオノマーに一組の非常に望ましい特性をもたらす。そのように生成されたポリマー粒子は、室温で約0.15S/cmより大きい異常に高いイオン伝導度を有する薄膜に容易に形成することができる。さらに、これらのフィルムは、従来技術によって作製された同様のフィルムと比べると、比較的低い水和、および比較的高い物理的安定性を有する。
【0028】
アルコール、アミンまたは他の両親媒性分子、もしくは塩などの当業界で知られている補助界面活性剤の中から補助界面活性剤を選ぶことができる。ミニエマルジョンの形成を容易にするために、単一または複数の補助界面活性剤を使うことができる。特に望ましい補助界面活性剤は、重合が行なわれる温度で液体である、低分子量のパーフルオロ化炭化水素類から引き出されたものである。分子量は望ましくは2000未満である。パーフルオロ化炭化水素は、望ましくは沸点が300℃未満である。パーフルオロ化炭化水素は、パーフルオロ化アルカンなどのパーフルオロ化飽和脂肪族化合物であることができる。また、それはパーフルオロ化ベンゼンなどのパーフルオロ化芳香族化合物、パーフルオロ化トリアルキルアミンなどのパーフルオロ化アルキルアミン、デカリンまたはパーフルオロテトラデカヒドロフェナントレンなどのパーフルオロ化環状脂肪族、またはパーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランなどの環中に酸素または硫黄を含む複素環式脂肪族化合物であることができる。パーフルオロ化炭化水素の具体例は、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリン、パーフルオロジメチルデカリン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ(1、3−ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロジメチルデカヒドロナフタレン、パーフルオロフルオレン、パーフルオロテトラコサン、パーフルオロケロセン、オクタフルオロナフタレン、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)のオリゴマー、パーフルオロ(トリプロピルアミン)、パーフルオロ(トリブチルアミン)、またはパーフルオロ(トリペンチルアミン)などのパーフルオロ(トリアルキルアミン)、オクタフルオロトルエン、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロエーテルもしくはパーフルオロ化ポリエーテル、および3Mによって生産されるフルオリナート(Fluorinert)FC−77もしくはFC−75などの市販のフッ素化溶剤を含む。フッ素化アルカンは、炭素原子数が3〜20個の直鎖または分岐鎖状であることができる。また、酸素、窒素または硫黄原子が分子中に存在することができる。
【0029】
フッ素化界面活性剤は、構造RgEXを有する。ここで、Rgは炭素原子数が4〜16であるフッ素化アルキル基またはフッ素化ポリエーテル基であり、Eは炭素原子数が0〜4であるアルキレン基であり、そしてXは、COOM、SO3M、SO4Mなどのアニオン性塩、第四アンモニウム塩などのカチオン性部分、アミノオキシドなどの両性部分、または(CH2CH2O)mHなどの非イオン性部分であり、Mは、H、Li、Na、K、またはNH4であり、mは2〜40の基数である。1つの好ましいフッ素化界面活性剤はアンモニウムパーフルオロオクタノエイトである。
【0030】
本発明の実質的にフッ素化された主鎖は、高いフッ素濃度を有する多くの異なったモノマーまたはコモノマーから作製されたポリマーであることができる。これらは、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロメチルビニルエーテルならびにエチレンの群から選ばれた1つまたは複数のモノマーとテトラフルオロエチレンとの混合物を包含することができるが、これらに限定されない。実質的にフッ素化された主鎖を形成するために使用される好ましいモノマーの一つはテトラフルオロエチレンである。
【0031】
重合反応に使用されるアイオノマー形成モノマーは、少なくとも1つのイオン性官能基を有する部分および少なくとも1つの重合可能な基を含む実質的にフッ素化された有機化合物である。あるいは、分子は、重合工程が完了した後にイオン性官能基に変換することができる先駆体を保持することができる。これらのアイオノマーを形成するために適当なモノマーの具体例は、下式を有する化合物および
【0032】
【化2】

【0033】
重合の後に、実質的にフッ素化された主鎖に下式のペンダント基を形成する同様のものを含む。
【0034】
【化3】

【0035】
上式の中で、Xは、F、ClまたはBrもしくはそれらの混合物であり、nは1または2に等しい整数であり、RfおよびRf’はF、Cl、パーフルオロアルキル基、およびクロロパーフルオロアルキル基の群から独立に選択され、Yは酸基または酸基に変換可能な官能基であり、aはゼロまたはゼロよりも大きい整数であり、そしてbはゼロよりも大きい整数である。酸基を含むYの具体例は、スルホン酸またはその塩型(−SO3Z)、スルフォンアミド(−SO2N(R1)−)、スルホンイミド(−SO2N(R1)SO22)、カルボン酸(−CO2Z)、燐酸(−PO32)、および同様のものを含むがこれらに限定されない。ここで、ZはH、またはアンモニウムイオン、金属イオンもしくは有機アンモニウムイオンを含むがこれらに限定されないカチオンの任意の組み合わせであり、R1はH、炭素原子数が1〜10のアルキル基、または炭素原子数が2〜10の部分的にフッ素化されたアルキル基であり、そしてR2は、酸素または遊離基に対して安定な他の原子もしくは基を必要に応じて含むことができる、炭素原子数が1〜8のパーフルオロ化アルキル鎖、または酸素または遊離基に対して安定な他の原子もしくは基を必要に応じて含むことができ、そして末端が上記に定義されたYであるパーフルオロアルキル基である。酸基に変換可能な官能基であるYの具体例は、スルホニルハライド(−SO2W)、エステル(−COOR)および同様のものを含むがこれらに限定されない。ここで、WはF、Cl、またはBrであり、Rは炭素原子数が1〜20のアルキル基である。一つの好ましいアイオノマー形成モノマーは、式−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2Fを有するペンダント基を形成するCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2Fである。コモノマーとしてTFEを有するこの特定のアイオノマーに関して、アイオノマーの当量重量とモルパーセントとの間の変換は、近似的に、アイオノマーのモル%=100/(n+1)で与えられる。ここで、nはアイオノマー単位あたりの主鎖単位の数であり、n=(ポリマーの当量重量−446)/100によって与えられる。他の官能性モノマーおよび他のコモノマーに関してさらに一般的には、nは下式によって与えられる。
【0036】
【数1】

【0037】
低レベルで添加される分岐形成剤はビニルエーテル化合物の群から選択されたモノマーを含む。本出願では、そのような薬剤の低レベルは、得られる生成物の実質的なゲル化または網目形成を引き起こさないレベルとして定義される。分岐形成剤は、CA2=CB−O−の形態からなる少なくとも2つのビニルエーテル基を有し、その結果ビニル基が4つよりも多い原子によって隔てられているモノマーを含むがこれらに限定されない。ここで、AはF、Cl、Hを含む群から独立に選択され、そしてBはF、Cl、H、およびORjから独立に選択され、ここでRjは、部分的、実質的または完全にフッ素化もしくは塩素化されてもよい分岐したまたは直鎖のアルカンである。この種の特に望ましい分岐形成剤はパーフルオロ化ビニルエーテル化合物、CF2=CFO−Rh−O−CF=CF2である。ここでRh基は炭素原子数が3〜15の範囲であるパーフルオロ化アルカンである。Rhアルカンの炭素は、必要に応じて分岐していることができ、および/または例えば−CF2−O−CF2−などのいくつかのエーテル結合、例えばスルホンイミドなどの硫黄結合、もしくは重合に加わらない他の結合などによって挿入されることができる。ヘキサフルオロプロピレンオキシドおよびパーフルオロ化二酸フッ化物から当業界で知られている方法によってパーフルオロ化ビニルエーテル化合物を製造することができる。
【0038】
如何なる特定の理論によって縛られることなしに、低レベルにおけるビニルエーテル化合物の存在が得られるポリマー中に長鎖の分岐を導入すると思われる。低レベルでそれを加えることによって、架橋の生成は最小にされる。高水準の架橋は、ポリマーから望ましい膜の形態に容易に形成されないポリマーを生成することが予想されるので望ましくないであろう。低レベルでは、薬剤の濃度は、たとえあるにしても、多量に架橋させるには十分ではない。その代わりに、この薬剤は、アイオノマー形成コモノマーの長鎖の分岐を形成するために作用し、そしてそれは次に伝導度および水和度において驚異的で予期されない改良をもたらす。
【0039】
本明細書で使用される分岐形成剤の作製は当業界でよく知られており、例えば米国特許第3,291,843号明細書に開示され、それは参照することによってそっくりそのまま本明細書に含まれる。’843の実施例XVIIIは、本明細書で開示した分岐形成剤の一つ、すなわち、F2C=CFO(CF25OCF=CF2を作製するための1つの手順を説明している。異なった分岐形成剤の形成のための別の方法は、2,2−ジフルオロマロン酸フッ化物(O=CF−CF2−CF=O)およびヘキサフルオロプロピレンオキシドを用いて出発することである。2,2−ジフルオロマロン酸フッ化物はF2ガスによるマロン酸の直接フッ素化によって作製される。1分子の2,2−ジフルオロマロン酸フッ化物および2分子のヘキサフルオロプロピレンオキシドの付加反応は、1分子のO=CF−CF(CF3)−O−CF2CF2CF2−O−CF(CF3)CF=Oを生成し、それは標準の脱炭酸反応(例えば、’843の実施例Vまたは米国特許第5,463,005号明細書の9欄の24−38行参照)の後に、所望の分岐形成モノマーになる。もし望むならば、長期保存のために、より安定した形態、例えばビニル基が臭素で飽和された臭素化形態にその生成物を反応させることができ、この場合、例えばBrCF2CFBrOCF2CF2CF2OCFBrCF2Brになる。その後、標準方法による使用の前に、例えば、臭素化された形態を亜鉛金属上に流すことによって、ビニル形態に再生することができる。
【0040】
本発明の生成物の重合中に添加される分岐形成剤の量は、当業界における通常の慣行にしたがって少なく、生成物中の量が5重量%未満、望ましくは2.5重量%未満であるように添加される。例えば、好ましいパーフルオロ化ビニルエーテル化合物を使用する場合、約0.3重量%から約5.0重量%、好ましくは約2.5重量%未満の量でフッ素化アイオノマー中に存在している。
【0041】
ミニエマルジョンの調製は成分の慎重な選択による。ミニエマルジョンは、水、パーフルオロ化炭化水素、フッ素化界面活性剤、アイオノマー、補助界面活性剤または無機塩、およびビニルエーテル化合物を混合することによって調製される。用いられる量は、0.1〜40重量パーセント、好ましくは0.1〜20重量パーセントのパーフルオロ化炭化水素、1〜40重量パーセント、好ましくは0.1〜25重量パーセントの界面活性剤および補助界面活性剤、1〜20重量パーセント、望ましくは5〜15重量パーセントのアイオノマー、残りは水で0.3〜5重量パーセント、望ましくは2.5重量パーセント未満である。この混合物は、サブミクロンサイズの液滴に油相を壊すために、例えば機械的なせん断および/またはキャビテーションなどの当業界で知られている方法を用いて高せん断力混合に掛けられる。そのようなミキサーを通る複数のパスが、ミニエマルジョンを得るために必要とされるであろう。得られるミニエマルジョンは、マイクロエマルジョンで観測されるように完全に透明であるというわけではなく、(マクロ)エマルジョン中のように乳白色でもない。むしろ、それはしばしば僅かに色づいた、例えば青味のある実質的に半透明である。如何なる特定の理論によっても縛られず、得られるパーフルオロ化炭化水素のミニエマルジョンは、フッ素化モノマーが入って、そして重合するミニ反応槽として作用すると考えられる。
【0042】
重合を開始するために、ミニエマルジョンの温度を0〜150℃、望ましくは40〜100℃に調整する。重合開始剤は、過硫酸塩、アゾ系開始剤、過酸化物、または紫外線またはガンマ線によってフリーラジカルを発生させることができる光開始剤などのフリーラジカル開始剤を含む。存在する開始剤の量は、最終ポリマー含有量に基づいて、0.001〜5重量%の範囲であることができる。フッ素化モノマーを気相または液相のどちらかで反応槽の水性液体中へ導入する。位相間の十分な混合が物質移動を促進するために重要である。
【0043】
当該技術分野の熟練者によって理解されるように、他の重合手順もまた用いることができる。特に、低レベルの分岐形成剤がまだ用いられている限り、重合混合物の一部としての低分子量のパーフルオロ化炭化水素の使用が必ず必要であるというわけではない。特に、低レベルの分岐形成剤が重合の間、適切に用いられている限り、米国特許第3,282,875号、同第4,358,545号明細書およびベカリアン(Bekarian)等の国際公開第WO/00/52060号パンフレットに記載された一般的な重合方法を用いることができる。
【0044】
上記重合から生成される製品は低い当量重量および比較的低い水和を有するイオン伝導性ポリマーである。それにもかかわらず得られるアイオノマーは有機溶媒の中で可溶性であり、そして単独(図4に示される典型的な態様のフィルム50を参照)で、または複合膜(図5に示される典型的な態様で複合膜62を形成する基板60およびアイオノマー61を参照)を形成するために他の基板と複合して、薄膜に成形することが可能である。そのような他の基板は、例えば延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などの多孔質材料の支持体を含むことができる。本明細書に使用される場合、「多孔質」は多数の相互に連結した管路および小管を有することを意味する。アイオノマーの溶液は、例えば、バハール(Bahar)等の米国特許第5,547,551号および同第5,599,614号明細書に記載されているような当業界で知られている方法によって多孔質支持体中に含浸することができる。
【0045】
そのようなフィルムは膜電極アッセンブリ(MEA)の分離膜として有用である。図6で示された典型的な態様に示されるように、MEA73を形成するために膜72の両側に電極70、71を接着するか、または別の方法で取り付ける。引き続いて、MEA73は、図7で示された典型的な態様に示されるように、燃料電池83に有用である。ガス拡散媒体80および81を電極に必要に応じて取り付けるか、または別の方法で接着することができ、そして電流コレクター(図示されていない)を必要に応じて正端子84および負端子85に接続することができる。運転中、燃料がセルに入って、アノードで反応し、電子を発生し、それは負端子85に集められる。電子は外部負荷(図示されていない)を通ってカソード端子84に流れる。電子はカソードで酸化種と共に使用される。燃料のタイプおよび酸化種のタイプによって、アノード室、カソード室または両方で生成物を形成することができる。もし存在するならば、これらの生成物は、入口ガス中に必要に応じて用いることができる如何なる過剰な燃料および/または酸化種と共にセルから掃き出される。他の別の態様では、MEAにおける電極もまた多成分電極系の1つの構成成分として本発明品を含むことができる。また、本発明のポリマーは他の電解槽において有用である。
【0046】
以下の手順が、上述の記載にしたがって作製されたアイオノマーを特徴づけるために用いられた。
【0047】
(膜の形成)
膜を必要とする以下の実施例の場合、そして以下に記載した当量重量測定の前に、以下の手順を行なった。当業界でよく知られている方法を使用して、スルホニルフルオリド型ポリマーから酸型のポリマーを得た。ここでは、スルホニルフルオリド型ポリマーをKOH中で完全に加水分解し、次に、HNO3中で完全に再酸性化することによって、それを行なった。それぞれ約0.05gの重さがある酸型の固体アイオノマー断片の約2gを、2枚のカプトンポリイミドフィルム(デュポン高性能材料、サークルビル、OH(DuPont High Performance Materials, Circleville, OH))の間に一定の山で置いた。そのサンドイッチ状の材料を、マーシュインストルメント(Marsh Instruments)のPHI空気圧プレスの予熱された完全に開いている64in2のプラテンの間に置いた。互いに接触した場合の上下プラテンの間で読む温度が165℃であるように、プラテン温度を設定した。それから、カプトンフィルムの上側のシートが上部プラテンに接触するまで、下部プラテンを上げた。その後、アイオノマーのサンプルを15分間置いた。そして、10秒間の約1トンおよび10秒間の約ゼロトンの間の3〜5回の圧力サイクルによって、そのサンドイッチを圧縮した。それから、圧力を5トンまで増加し、次に、90〜120秒掛けてゆっくりと10トンまで増加した。それから最後に、圧力を20トンまで増加し、そしてサンプルを20トンの下で120秒間、165℃に保持して、厚さが概して約5ミルの一定の、透明なフィルムを製造した。
【0048】
(水和度)
大きさが約1cm×約1.5cmのサンプルを膜から切り、圧力を維持するために窒素ブリードを使用して、水銀柱約3インチの圧力の真空オーブン中に120℃で約70時間置いた。サンプルを取り出して、冷やして(約1分またはそれ以下)秤量し、乾燥重量を得た。それから、サンプルを室温で2時間脱イオン水中に置いた。本明細書で使用する限り、室温は23℃±2℃である。サンプルを水から取り出して、紙の布で軽くたたいて水気を取り、すぐに秤量して、水和された重量を得た。パーセント表示の水和度を下式のとおり計算する。
【0049】
【数2】

【0050】
各膜に関して4つのサンプルを試験し、そして報告された水和は4つの測定の算術平均である。
【0051】
(当量重量)
当量重量を測定するために本明細書で用いた方法は、乾燥固体アイオノマーの重量を測定し、そして滴定曲線のpH7近くの最初の変曲点に基づいて酸当量重量を計算する。特に各サンプルに関しては、それぞれ0.05g以下の重さの固体アイオノマー断片の約5gを80℃の完全な真空(水銀柱約2インチ)下のオーブンで少なくとも2時間乾燥した。乾燥した断片をオーブンから取り出し、湿気の取り込みを最小にするためにふた付きの容器に置いた。乾燥試料をふた付き容器中で室温まで冷却させた後、約0.15gを100mlの滴定カップ中に素早く秤り取った。それから、既知の乾燥重量のサンプルを滴定カップ中で15分間5mlの脱イオン水および5mlのエタノール中に浸漬させた。次に、浸漬されたサンプルに55mlの2.0NNaCl溶液を添加した。そして、TIM900滴定マネージャ(TIM900 Titration Manager)(ラジオメーターアナリティカルS.A.(Radiometer Analytical S.A., Lyon, France))を使用する逆滴定方法を5mlの0.05NNaOH溶液の添加によって開始した。そして、0.01NHCl水溶液による酸滴定の前に、混合物全体を窒素ブランケット下で15分間撹拌した。pH7近くの終点を用いて、下式にしたがってサンプルのイオン交換容量(IEC)および酸当量重量(EW)の両者を計算した。
【0052】
【数3】

【0053】
それぞれの膜の2つの異なったサンプルからの測定結果の算術平均を当量重量として報告する。
【0054】
(室温イオン伝導度)
大きさが約1.5インチ×約2インチの膜サンプルを、最初に、21℃、相対湿度61%の室内条件で24時間平衡した。それから、室温の脱イオン水を入れたプラスチックのビーカー中に浸漬した。1回が30分毎である3回の測定を90分掛けて行なった。測定を行なうために、膜サンプルを水から取り出して、ティッシュペーパーによって軽くたたいて水気を取った。それからすぐに、ハイデンハイン(Heidenhain)ND281Bデジタルディスプレイに取り付けられたMT12Bハイデンハイン(Heidenhain (Schaurnburg, Illinois))シックネスゲージを使用して、厚さを測定した。平板の上に垂直にゲージを取り付け、そして、サンプルの角および中央をカバーするサンプル上の9つの異なった位置で測定をした。各測定が圧縮を最小にするように、ゲージのバネで止めてあるプローブをフィルム上にゆっくりと下げた。サンプルの厚さとして9つの値の平均を使用した。それから、図1に示した4点プローブ伝導度セルを使用して、膜(11)のイオン抵抗を測定した。伝導度セル(10)の検出プローブ(5)は長さが約1インチであり、そして間隔が約1インチである。プレキシガラス製のスペーサ1が電流プローブ4と検出プローブ5との間の絶縁を提供する。セルはナイロンねじ2によって一緒に保持され、そして、穴3を通してプローブに電気接触がなされる。測定中、良好な接触を確保するために、500gの重り(図示されていない)をセルの上に載せた。抵抗値は伝導度セル10上の更なる圧力の影響を受けないことが分かった。スクリブナーアソシエイツ(Scribner Associates)によって作成されたZプロット(ZPlot)ソフトウェアによって制御されたソラートロン(Solartron)SI1280Bよって適用される1000Hzの周波数で10mVの交流振幅を使用して、穴3を通る接続リード(図示されていない)によって抵抗を測定した。定電位方式で測定を行なった。これらの条件下では、位相角は測定全体を通して重要でないことが分かった。各測定に関して、S/cmで表わした室温イオン伝導度を下式から計算した。
【0055】
【数4】

【0056】
ここで、σは室温イオン伝導度であり、L2は検出プローブ間の距離であり、ここでは2.5654cmと等しく、L1は検出プローブの長さであり、ここでは2.5603cmで、Dはcmで表わした膜の測定厚さであり、そしてRはオームで表わした測定抵抗である。結果は、室温イオン伝導度が試験された全てのサンプルに関して30〜90分の間で浸漬時間に影響されないことを示した。報告された値は3回の測定から計算された平均である。
【0057】
(高温イオン伝導度)
また、80および120℃の温度における高温イオン伝導度を測定した。この場合、雰囲気の温度および相対湿度をより正確に制御することができる異なった装置を使用して伝導度を測定した。これらの測定は、室温の水に浸漬されて、室温で測定されたサンプルの伝導度が、より高い温度で測定されそして決められた相対湿度条件で平衡されたサンプルと材料間で同じ傾向を示すことを確認するために行なわれた。シュローダー(Schroder)のパラドックス(P. Schroder, Z. Physik Chem., Vol. 75, pg. 75 (1903))がパーフルオロスルホン酸型アイオノマー膜に観察される(例えば、T. A. Zawodzinski, T. E. Springer, F. Uribe および S. Gottesfeld、固体アイオニクス(Solid State Ionics)、60巻、199頁(1993年)ならびにG. Blumenthal, M. Cappadonia および M. Lehrnann、アイオニクス、2巻、102頁(1996年)参照)ことがよく知られているので、これらの測定は特に意味がある。したがって、本発明の膜の測定された伝導度が、液体の水の中で測定された場合、同じ温度で100%の相対湿度で測定されたそれと比べて、たとえ水の活性が理論上両方の場合において等しいとしても、異なるであろうと予想される。したがって、本発明のアイオノマーが、液体の水の中に浸漬された場合と同様に水蒸気によって平衡された場合に、本当に改良された伝導度を有することを確認するために、相対湿度と温度が制御されたところで高温伝導度試験を行なった。
【0058】
この試験を以下のとおり行なった。テストされるべき3つの異なった厚さのサンプル膜を上述したように準備した。イーテック社(E- TEK Inc.)から入手可能な、2つの直径0.5インチのエーラト(ELAT(商標))ガス拡散媒体(GDM)をダイカットした。そのGDMの表面にウー(Wu)等の係属中の出願における実施例2にしたがって作製したアイオノマーの約1mg/cm2をブラシで塗り、そして次に約1.5インチ×約1.5インチのサンプル膜に対してサンドイッチを形成するように置いた。それから、上部プラテンが160℃に加熱された水圧機の約18インチ×約18インチのプラテンに15トンの圧力を適用することによってこのサンドイッチを3分間ラミネートした。冷却後、GDM/サンプル/GDMサンドイッチを試験のために図2に示したような高温イオン伝導度装置20に置いた。
【0059】
装置20はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のセル22を有する分割されたアルミボディー21から成る。セル22は、運転中、120psiの空気作動圧力で一緒に固定される。40%多孔質の316Lステンレス鋼製の白金被覆された小球24がその端に溶接された2つの電極リード23がセンターを通してセル22に入って、その間に試験サンプル25が置かれる2つの電極を形成する。試験サンプル25は、上述したように作製された、両側にGDM27を有するサンプル膜26からなる。下部電極リード23は、下部電極リードに決められた圧力を適用することができる空気作動シリンダ(図示されていない)に取り付けられる。本明細書に記載した全ての試験に150psiの圧力を使用した。2つのライン、即ち各半セルに対して1つのラインを通して窒素ガスがセルに流される。各入口ガス流の湿度は、温度が固定されている水のボトルを通してガスを流すことによって制御される。また、各調湿ボトルの後のガスラインは、凝縮を防ぐために加熱される。セル温度、調湿ボトルの温度、およびガスラインは、スクリブナーアソシエイツの膜テストシステム(Scribner Associates, North Carolina)によって制御される。両方の入口ガス流の湿度は、バイサラ(Vaisala)HM138湿度プローブ(Vaisala Group, Vantaa, フィンランド)で測定される。ここでの全ての試験において、両方の半セルの測定湿度は3〜5%相対湿度以内で同一であった。
【0060】
試験サンプル25をセルに置き、セルを閉じ、そしてセルおよび電極リードに圧力を適用した後、乾燥ガスを流すことによって、セルを最低試験温度まで加熱した。その温度の乾燥ガス下で30分間セルを平衡にした。それから、湿度を10%の相対湿度に進めた。それから、ソラートロン(Solartron)1280Bインピーダンスアナライザー(Solartron Analytical, Hampshire, England)を使用して、約1Hzから約20kHzまで周波数掃引することで定電位方式でインピーダンスを測定することによって、測定のための周波数を決定した。測定された位相角が約ゼロであった周波数を決定した。全てのその後の測定において、この周波数を使用した。通常、この周波数は7〜l5kHzの範囲にあった。次に、湿度が低温で以下の値、約10、20、40、50、60、80、および90%の相対湿度に変更されるコンピュータ制御の下で一連の試験を開始した。各相対湿度段階でのインピーダンスの大きさを、インピーダンスの変化が1ミリΩ未満になるまで5秒間隔で記録した。この定常状態のインピーダンス(位相角がゼロである時の抵抗と等しい)をその温度および相対湿度でのセル抵抗として記録した。次に、セルを新たなより高い温度に進め、10%の相対湿度に戻し、そして上記工程を繰り返した。より高い温度に関しては、セルを加圧下で運転しなかったので、高い相対湿度を達成することはできなかった。したがって、達成可能な最大の相対湿度は、より高い温度では低かった。この場合、10%とその温度で達成可能な最大の相対湿度との間で6段階の相対湿度にした。ここでは相対湿度および温度を、各半セル中の相対湿度および熱電対プローブから得られた2つの値の平均として、記録した。
【0061】
全抵抗値の重要な部分である場合がある接触抵抗の影響を除去するために、如何なる与えられた温度/相対湿度条件でも、抵抗は3つの異なった厚さのサンプルについて測定した。これらの抵抗を厚さの関数としてプロットし、回帰直線をそのデータへ適合し、そして外挿した厚さゼロの抵抗値をそのサンプルの接触抵抗として使用した。そして、真のサンプル抵抗を得るために測定された抵抗からこの値を引き算した。高温イオン伝導度を下式から計算した。
【0062】
【数5】

【0063】
ここで、Lは装置に置かれる前に測定されたサンプルの厚さであり、Aは電極リードと接触するサンプルの面積、すなわち、二乗して4で割られた直径をπ倍したものであり、Rは厚さゼロの外挿から決定した接触抵抗を差し引いた測定抵抗である。
【0064】
以下の実施例は、本発明の化合物およびそれらを作る方法を説明することを意図するものであり、制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
2,2−ジフルオロマロン酸フルオリド(O=CF−CF2−CF=O)およびヘキサフルオロプロピレンオキシドを反応させることによってジビニルエーテル化合物を作製した。2,2−ジフルオロマロン酸フルオリドはF2ガスによるマロン酸の直接フッ素化によって作製した。1分子の2,2−ジフルオロマロン酸フルオリドおよび2分子のヘキサフルオロプロピレンオキシドの付加反応が、標準の脱炭酸反応の後に所望の分岐形成モノマー、CF2=CF−O−CF2CF2CF2−O−CF=CF2になる1分子のO=CF−CF(CF3)−O−CF2CF2CF2−O−CF(CF3)CF=Oを生成した。ビニル基を臭素で飽和するために、その生成物を通して臭素ガスを流してCF2BrCFBrOCF2CF2CF2OCFBrCF2Brを形成することによって、その生成物を長期保管のためにさらに安定な形に反応させた。次の手順にしたがって、使用の数日前にビニル型に再生した。120グラムの亜鉛粉末および200mlのテトラグリムを、撹拌機、温度計、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた1リットルフラスコに入れた。100℃に加熱した後、フラスコ中の撹拌溶液に分岐薬剤の臭素化体200mlを滴下漏斗を通して約2時間掛けて滴状で添加した。水銀柱150mlの減圧下、49℃で生成物を蒸留した。205グラムのビニルエーテル分岐剤、CF2=CF−O−CF2CF2CF2−O−CF=CF2が約90%の収率で得られた。
【0066】
1650グラムの脱イオン水、50グラムの20重量%アンモニウムパーフルオロオクタノエイト(3Mによって製造されたパーフルオロオクタン酸のアンモニウム塩)水溶液、82.5重量%の式CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2Fを有するスルホニルフルオリドモノマーならびに17.5重量%のフルオリナート(Fluorinert)FC−77(3Mによって製造されたパーフルオロ化炭化水素)の194グラム、および上述のビニルエーテル化合物である1グラムのCF2=CF−O−CF2CF2CF2−O−CF=CF2を含む混合物の前混合および均質化によって、水系ミニエマルジョンを調製した。ミニエマルジョンは、マイクロフルーイダイザーの均質化モジュールを使用して形成した。約40psiの圧縮空気を使用するエアモータが均質化モジュールを通して混合物を送った。全体の混合物が均質化モジュールを6回通された。最終混合物は非常に淡い青色の半透明の水系ミニエマルジョンであった。4リットルの加圧反応槽において、水系ミニエマルジョンを反応槽に添加した。それから、反応槽を3回開けて、その都度、テトラフルオロエチレンガスによってパージした。水溶液の酸素含量は、テトラフルオロエチレンガスを入れる直前、約20ppmであった。
【0067】
反応槽の撹拌速度は反応全体を通して700rpmに設定した。水系ミニエマルジョンはジャケットから約70℃の温度に加熱した。次に、テトラフルオロエチレンガスを加圧反応槽に導入し、圧力を約0.5MPaに上げた。400mlの脱イオン水にあらかじめ溶解した約0.1グラムのアンモニウムパーサルフェイトを反応槽にポンプで送って反応を開始した。反応温度は69〜71℃に維持した。テトラフルオロエチレンの圧力は、共重合によるテトラフルオロエチレンの消費を補うための反応槽へのテトラフルオロエチレンガスの連続投入によって、重合反応の最初の2時間の間比較的一定の0.48〜0.55MPaに維持した。重合反応の2時間後にテトラフルオロエチレンの供給を止め、そして反応槽へのテトラフルオロエチレンの更なる投入なしで反応を続けた。反応圧力は約90分で0.48MPaから0.20MPaまで徐々に落ちた。次に、反応温度を50℃未満に下げ、そして反応系を大気に開放した。反応は約2.29kgの水系分散液を生じた。沈殿および単離によって得られた総ポリマーは、分散生成物の約5.4重量%であった。ポリマー中にジビニルモノマーが完全に組み込まれたと仮定して、最終ポリマーはジビニルエーテル化合物を約0.8重量%(0.47モル%)含むと計算された。このサンプルの当量重量は約690であった。アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度は約20%である。
【0068】
(実施例2)
1650グラムの脱イオン水、50グラムの20重量%アンモニウムパーフルオロオクタノエイト(パーフルオロオクタン酸のアンモニウム塩)水溶液、85重量%のCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2Fモノマーならびに15重量%のフルオリナートFC−77(3Mによって製造されたパーフルオロ化炭化水素)の186グラム、および実施例1に記載されたように作製された1グラムのCF2=CF−O−CF2CF2CF2−O−CF=CF2を含む混合物の前混合および均質化によって、水系ミニエマルジョンを調製した。4リットルの加圧反応槽において、水系ミニエマルジョンを反応槽に添加した。それから、反応槽を3回開けて、その都度、テトラフルオロエチレンガスによってパージした。水溶液の酸素含量は、テトラフルオロエチレンガスを入れる直前、約20ppmであった。
【0069】
反応槽の撹拌速度は反応全体を通して700rpmに設定した。水系ミニエマルジョンはジャケットから約60℃の温度に加熱した。次に、テトラフルオロエチレンガスを加圧反応槽に導入し、圧力を約0.5MPaに上げた。400mlの脱イオン水にあらかじめ溶解した約0.1グラムのアンモニウムパーサルフェイトを反応槽にポンプで送って反応を開始した。30分後に反応温度を上げて、65〜66℃に維持した。テトラフルオロエチレンの圧力は、共重合によるテトラフルオロエチレンの消費を補うための反応槽へのテトラフルオロエチレンガスの連続投入によって、反応の次の90分の間比較的一定の0.52〜0.56MPaに維持した。次に、反応温度を再び増加して、69〜71℃に維持した。テトラフルオロエチレンの圧力は、共重合によるテトラフルオロエチレンの消費を補うための反応槽へのテトラフルオロエチレンガスの連続投入によって、反応の次の150分の間比較的一定の0.49〜0.57MPaに維持した。最後に、テトラフルオロエチレンの供給を止め、そして反応槽へのテトラフルオロエチレンの更なる投入をせずに、約70℃の温度で反応を続けた。反応圧力は約20分で0.48MPaから0.45MPaまで徐々に落ちた。次に、反応温度を50℃未満に下げ、そして反応系を大気に開放した。反応は約2.32kgの水系分散液を生じた。沈殿および単離によって得られた総ポリマーは、分散生成物の約5.4重量%であった。ポリマー中にジビニルモノマーが完全に組み込まれたと仮定して、最終ポリマーはジビニルエーテル化合物を約0.8重量%(0.47モル%)含むと計算された。このサンプルの当量重量は約690であった。アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度は約20%である。
【0070】
(実施例3)
1650グラムの脱イオン水、50グラムの20重量%アンモニウムパーフルオロオクタノエイト(パーフルオロオクタン酸のアンモニウム塩)水溶液、160グラムのCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2Fモノマー、40グラムのフルオリナートFC−77(3Mによって製造されたパーフルオロ化炭化水素)、および実施例1に記載されたように作製された1グラムのCF2=CF−O−CF2CF2CF2−O−CF=CF2を含む混合物の前混合および均質化によって、水系ミニエマルジョンを調製した。4リットルの加圧反応槽において、上記水系ミニエマルジョンを反応槽に添加した。それから、反応槽を3回開けて、その都度、テトラフルオロエチレンガスによってパージした。水溶液の酸素含量は、テトラフルオロエチレンガスを入れる直前、約20ppmであった。
【0071】
反応槽の撹拌速度は反応全体を通して700rpmに設定した。水系ミニエマルジョンはジャケットから約70℃の温度に加熱した。次に、テトラフルオロエチレンガスを加圧反応槽に導入し、圧力を約0.5MPaに上げた。400mlの脱イオン水にあらかじめ溶解した約0.1グラムのアンモニウムパーサルフェイトを反応槽にポンプで送って反応を開始した。反応温度を69〜71℃に維持した。テトラフルオロエチレンの圧力は、共重合によるテトラフルオロエチレンの消費を補うための反応槽へのテトラフルオロエチレンガスの連続投入によって、反応の最初の3時間の間比較的一定の0.48〜0.51MPaに維持した。重合反応の3時間後にテトラフルオロエチレンの供給を止め、そして反応槽へのテトラフルオロエチレンの更なる投入なしで反応を続けた。反応圧力は約3時間で0.48MPaから0.20MPaまで徐々に落ちた。次に、反応温度を50℃未満に下げ、そして反応系を大気に開放した。反応は約2.31kgの水系分散液を生じた。沈殿および単離によって得られた総ポリマーは、分散生成物の約8.0重量%であった。ポリマー中にジビニルモノマーが完全に組み込まれたと仮定して、最終ポリマーはジビニルエーテル化合物を約0.5重量%(0.30モル%)含むと計算された。このサンプルの当量重量は約690であった。アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度は約20%である。
【0072】
(実施例4)
1650グラムの脱イオン水、50グラムの20重量%アンモニウムパーフルオロオクタノエイト(パーフルオロオクタン酸のアンモニウム塩)水溶液、160グラムのCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2Fモノマー、40グラムのフルオリナートFC−77(3Mによって製造されたパーフルオロ化炭化水素)、および実施例1に記載されたように作製された2.5グラムのCF2=CF−O−CF2CF2CF2−O−CF=CF2を含む混合物の前混合および均質化によって、水系ミニエマルジョンを調製した。4リットルの加圧反応槽において、上記水系ミニエマルジョンを反応槽に添加した。それから、反応槽を3回開けて、その都度、テトラフルオロエチレンガスによってパージした。水溶液の酸素含量は、テトラフルオロエチレンガスを入れる直前、約13ppmであった。
【0073】
反応槽の撹拌速度は反応全体を通して700rpmに設定した。水系ミニエマルジョンはジャケットから約70℃の温度に加熱した。次に、テトラフルオロエチレンガスを加圧反応槽に導入し、圧力を約0.5MPaに上げた。400mlの脱イオン水にあらかじめ溶解した約0.1グラムのアンモニウムパーサルフェイトを反応槽にポンプで送って反応を開始した。反応温度を69〜71℃に維持した。テトラフルオロエチレンの圧力は、共重合によるテトラフルオロエチレンの消費を補うための反応槽へのテトラフルオロエチレンガスの連続投入によって、反応の最初の3時間の間比較的一定の0.45〜0.51MPaに維持した。重合反応の3時間後にテトラフルオロエチレンの供給を止め、そして反応槽へのテトラフルオロエチレンの更なる投入なしで反応を続けた。反応圧力は約1時間で0.47MPaから0.31MPaまで徐々に落ちた。次に、反応温度は50℃未満に下げ、そして反応系は大気に開放した。反応は約2.30kgの水系分散液を生じた。沈殿および単離によって得られた総ポリマーは、分散生成物の約5.0重量%であった。ポリマー中にジビニルモノマーが完全に組み込まれたと仮定して、最終ポリマーはジビニルエーテル化合物を約2.2重量%(1.29モル%)含むと計算された。このサンプルの当量重量は約710であった。アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度は約19%である。
【0074】
(実施例5)
上述したフィルム形成手順を用いて、実施例2のフッ素化アイオノマー性コポリマー生成物から膜を形成した。上述した手順にしたがって、このフィルムの当量重量、水和度および室温伝導度を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例6)
165℃の代わりに120℃の温度を使用してフィルムをプレスしたことを除いて、上述したフィルム形成手順を用いて、実施例2のフッ素化アイオノマー性コポリマー生成物から膜を形成した。上述した手順にしたがって、このフィルムの当量重量、水和度およびイオン伝導度を測定した。結果を表1に示す。実施例5および6の結果を比較して、フィルム形成方法が得られる膜の特性に実質的に影響しないことが分かる。
【0076】
(比較例A)
デェポン社からナフィオン112膜を購入した。当量重量および水和を測定するために、受け取ったまま試験した。伝導度は、1つのフィルム片について30および60分での2回の測定を機械方向で行ない、そして90分での3回目の測定を2つ目のフィルム片の横方向で行なったことを除いて、上述したように試験した。先行文献(例えば、G. Blumenthal, M. Cappadonia, M. Lehmanの「方向、温度および相対湿度の関数としてのナフィオン膜のプロトン輸送の研究(Investigation of the Proton Transport in Nafion Membranes as a Function of Direction, Temperature and Relative Humidity)」、アイオニクス、2巻、102〜106頁(1996))から予想されるように、2つの方向の伝導度間に大きな差は観察されなかった。室温イオン伝導度を上述したように測定し、そして報告した室温イオン伝導度はこれらの3つの測定値の平均(表1)である。高温イオン伝導度を、GDM上にブラシで塗布したアイオノマーが上述したものの代わりにナフィオン1100であったことを除いて、上述したとおり測定した。伝導度および水和の結果は、この市販材料についての文献(例えば、T. Zawodinski, C. Derouin, S. Radzinski, R. Sherman, V. Smith, T. Springer および S. Gottesfeld、電気化学協会誌(Journal of the Electrochemical Society)、140巻、第4号、1041〜1047頁(1993))で広く報告されているものと一致しており、測定手法が満足できることを確認した。
【0077】
(比較例B〜F)
当量重量1100、980、834、および785について、国際公開第WO00/52060号パンフレットの表1からのデータをそのまま比較例B、C、D、およびEとしてそれぞれ報告する。表1の比較例Fは、国際公開第WO00/52060号パンフレットの発明実施例9からのデータをそのまま報告する。国際公開第WO00/52060号パンフレットで報告された伝導度と水摂取量は、本明細書で使用したものと同じ手順を本質的に用いて得られており、したがってそのデータは実施例5および6と直接比較できる。これらの比較例の従来技術に比較してこの出願の本発明は、伝導度が実質的により高く、水和度が実質的により低い。
【0078】
(比較例G)
名称が「低当量重量アイオノマー(Low Equivalent Weight Ionomers)」であるウー(Wu)等の係属中の出願の実施例1で与えられた手順にしたがって、サンプルを作製した。上述の手順を用いて、このポリマーから膜を形成した。実施例5および6でのものと比べて、この膜は非常に脆かった。この膜の当量重量、水和度および室温伝導度を測定した(表1)。この比較例の当量重量は、実施例5および6で例証した本発明とほとんど同じである。これらの結果は、与えられた当量重量に対して、本出願の本発明品が、この比較例で例証された従来技術と比較して、水和された際の改良された物理的安定性、実質的により高い伝導度および実質的により低い水和度を有することを示す。
【0079】
【表1】

【0080】
(比較例H)
名称が「低当量重量アイオノマー(Low Equivalent Weight Ionomers)」であるウー(Wu)等の係属中の出願の実施例2に記載の手順にしたがって、サンプルを作製した。このポリマーの膜を上述したように作製した。このポリマーは810の当量重量および42.3%の水和度を有することが分かった。このサンプルの高温伝導度を測定し、実施例6および比較例Aのそれと比較した。結果は、本明細書に開示した本発明ポリマーの伝導度が両比較例よりも全ての測定条件下で高いことを示す。
【0081】
【表2】

【0082】
(比較例I)
名称が「低当量重量アイオノマー(Low Equivalent Weight Ionomers)」であるウー(Wu)等の係属中の出願の実施例5に記載の手順にしたがって、サンプルを作製した。このポリマーは838の当量重量および36.7%の水和度を有することが分かった。
【0083】
(実施例7および比較例JならびにK)
燃料電池での使用のための本発明の有用性を実証するために、膜電極アセンブリ(MEA)を作製し、そして試験した。また、2つの対応する比較例も準備した。第一の比較例Jは、本明細書で作製したものに類似の市販MEAを使用した。第二のMEAの比較例Kは、比較例Iのアイオノマーを使用して作製した。比較例Kおよび実施例7を、前者が比較例Hからの、後者が実施例2からの異なったアイオノマーを使用することを除いて、同じ方法で作製した。これらの2個のサンプルのMEAを試験用に以下のとおり作製した。加水分解し、そして酸型にしたアイオノマーを先ずエタノールに溶解して、10%のアイオノマーを含有する溶液を形成した。次に、バハール(Bahar)等の米国特許第RE37,307号明細書の教示にしたがって、この溶液を厚さ22.5μmのePTFE支持体に含浸した。ePTFEを10インチの刺繍用フープに固定した。アイオノマー溶液をePTFEの両側に塗布し、次にヘアドライヤで乾燥して、溶剤を除去した。塗布および乾燥工程をもう2回繰り返した。それから、ePTFEと刺繍用フープを180℃の溶剤オーブンに8分間置いた。その後、サンプルを取り出し、室温に冷やした。アイオノマー溶液の被覆をもう1回両側に塗布した。サンプルを180℃のオーブンへ8分間戻した。それから、サンプルをオーブンから取り出し、刺繍フープから取りはずした。ePTFE/アイオノマー複合膜は透明であり、支持体へのアイオノマーによる実質的に完全な含浸を示した。
【0084】
プリメア(Primea(商標))5510(ジャパンゴアテックス社(Japan Gore-Tex Inc., Japan)から入手可能)の名称のMEAの一部としてW.L.ゴア&アソシエイツ社(W. L. Gore & Associates, Inc.)から入手可能な、Ptを0.4mg/cm2含有する電極を上記複合膜の両面にラミネートした。先ず、電極を厚さ0008インチのePTFE製ボトムシートの上に置いた。次に、複合膜を電極の上に置き、そして別の電極をその膜の上に置いた。そして、厚さ0.005インチのePTFE製トップシートを電極の上に置いた。アセンブリを160℃、15トンの圧力で3分間プレスし、その後、トップおよびボトムのePTFEシートを剥き取って捨てた。
【0085】
比較例Jは、W.L.ゴア&アソシエイツから市販されているPRIMEA(商標)膜電極アセンブリシリーズ5510を使用した。このアセンブリは、実施例7および比較例Kと同じ電極ならびに電解質中での類似のePTFE補強材を使用した。そして、実施例7と比較例IおよびJとの間の唯一の実質的な差は電解質中のアイオノマーであった。
【0086】
3つのMEAを使用したセルは、最初にアノード側を組み立てた。燃料電池テクノロジー(Fuel Cell Technologies)から入手可能な四重蛇紋石黒鉛(quadruple serpentine graphite)製アノード流領域(燃料電池テクノロジーから入手可能な50cm2の8本ボルトの燃料電池テストハードウェアを用いた)の上面に、52.5cm2の内側窓がある厚さ0.007インチのシリコーン被覆ガラス繊維製ガスケットを先ず置いた。シリコーン被覆ガラス繊維製ガスケットの上面に、52.5cm2の内側窓がある厚さ0.0012インチのOL−12スペーサ(デュポンから入手可能なマイラーフィルム)をシリコーン被覆ガラス繊維製ガスケットの内側窓と整列させて置いた。次に、イーテック(E-Tek)から入手可能な、面積が52cm2で厚さが約0.014〜0.015インチの片面イーラート(Elat)ガス拡散媒体(GDM)を、シリコーン被覆ガラス繊維製ガスケットおよびスペーサの内側窓の内部に炭素面を上に向けて置いた。次に、45cm2の内側窓を有する厚さ0.0012インチのOL−12サブガスケットをGDMの上面に置き、その上にMEAを置いた。このガスケットはセルの作用面積を0.45cm2に減少させた。MEAの上面で上記工程を反対の順番で繰り返した。MEA「サンドイッチ」を一旦作製すると、カソード流領域(上記アノード流領域と同じ)を一番上に置いた。ボルトをクリトックス(Krytox)グリース(デュポンから入手可能)で滑らかにし、そして5インチポンドのボルト増分で各ボルトのトルクが75インチポンドに達するまでスターパターンで締めた。使用した構成要素は150〜200psiの作用面積圧縮を生じた。
【0087】
使用したテストステーションはスクリブナー(Scribner)890負荷器を有するグローブテック(Globe Tech)のガスユニットであった。3リットルの調湿ボトルをアノードおよびカソードに使用し、そしてセルに入る全ての配管をヒートトレースした(それらの長さに沿って加熱される)。セルを一旦テストステーションに接続すると、燃料ガスが適用された(アノード上に1.3化学量論量の水素とカソード上に2.0化学量論量の空気)。次に、セルを60℃に設定し、そしてアノードおよびカソードボトルの両方も同様に60℃に設定した。バックプレッシャーを両側で0psigに保った。温度が一旦それぞれの設定点に達すると、自動サイクルプログラムが作動して、セルを「ブレークイン」した。このサイクルプログラムのための条件を表3に示した。
【0088】
【表3】

【0089】
表3のサイクルの終了に続いて、80℃のセル温度、83℃のアノード調湿温度、51℃のカソード調湿温度、および7psigのアノードおよびカソード両方でのバックプレッシャーにセルを設定した。これは、アノード加湿器の効率が65%であり、カソード加湿器の効率が85%であると仮定して、75%のアノード入口相対湿度(RH)および25%のカソード入口相対湿度を生じた。一旦、温度と圧力がそれぞれの設定点に達したら、自動「感度プロトコル」が各種湿度でMEAの試験を開始した。「感度プロトコル」はMEAが湿度条件を変えることにどのように応じるかを決定するように設計されたプログラムである。それは、比較的乾燥した状態でのセル運転の影響を示すように特に設計されている。
【0090】
【表4】

【0091】
表4に示したプロトコルに従った。表4の湿度条件の各設定のために、セルを800mA/cm2の一定電流密度で2時間運転した。この間の電圧を記録し、そしてこの2時間の電圧−時間データの平均を計算して記録した。2時間の一定電流保持に続いて、分極曲線を記録した(ここでは報告されていない)。次の電流密度、即ち0.8、1.0、1.2、1.4A/cm2の連続した段階にしたがって、10または20分(乾燥したカソード状態のために、より長い時間)後に定常状態電圧を測定することによって、分極曲線を得た。次に、電流密度を0.8A/cm2にして、開路電圧(即ち、セルに全く負荷が適用されない)を1.5分後に測定した。それから、0.6、0.4、0.2A/cm2の連続した段階にしたがって、10または20分(乾燥したカソード状態のために、より長い時間)後に定常状態電圧を測定することによって、残りの分極曲線を得た。最後に、0.1A/cm2で5または13分(乾燥したカソード状態のために、より長い時間)後に定常状態電圧を測定した。それから、次の相対湿度の条件を得るために、アノードおよびカソード調湿ボトルの温度を表4に示した次の条件に変えた。800mA/cm2の一定電流を適用して、前記と同様に、電圧−時間データを記録し、平均電圧を計算し、そして分極曲線を取った。表4に示したプロトコルにおける各工程でこの手順を繰り返した。
【0092】
表4の全ての5つの湿度条件のもとで試験した場合、本発明のアイオノマーから作製したセルについて観測された平均電圧は、例えば比較例JおよびKで用いたアイオノマーを使用する、以前に入手可能な電圧よりもかなり大きい。相対湿度が100%未満の条件のもとで本発明を使用することで得られた劇的な改良は、アイオノマーがMEAの一部を構成する場合の当該アイオノマーの有用性を実証する。
【0093】
(実施例8〜9および比較例L)
本発明のアイオノマー性ポリマー間の重要な差を実証するために、動的な機械的解析(DMA)検討を行なった。出発ポリマーが酸型の代わりにスルホニルフルオリド型であることを除いて、上述したようにフィルムを作製した。実施例1、2および比較例Gに記載したポリマー生成物から形成したフィルムを作製した。以下に説明したような標準歪み制御レオメーターを用いて、これらのフィルムを試験して、実施例8、9および比較例Lとしてそれぞれここで記載した結果を得た。
【0094】
ポリマー粘弾性に関する多くの標準のテキスト、例えばJ.Dフェリーの「ポリマーの粘弾性特性(Viscoelastic Properties of Polymers)」、第3版(J. Wiley& Son, 1980)で説明されるように、標準の時間−温度重ね合わせ手法を使用して、レオメトリクスサイエンティフィックアレスLS−Mレオメーター(Rheometrics Scientific Ares LS-M Rheometer)(Piscataway, NJ)で動的機械的応答を試験した。特に、厚さが約1〜2mmで直径が25mmの固体薄膜を平行平板構造で窒素雰囲気中で試験した。70℃未満の温度について5%のひずみで、90℃より高い温度について10%のひずみで、0.1〜100rad/秒の周波数掃引を20℃の間隔で行なった。計器変換器の範囲内にデータがあるように、最小および最高の温度をサンプル毎に調整した。これらの実施例で試験した3個のサンプルに関しては、最低温度は実施例8、9および比較例Lについてそれぞれ30、30、および10℃であり、一方最高温度は150、150、および90℃であった。各温度からのデータは、レオメトリクスサイエンティフィックオーケストレイター(Rheometrics Scientific Orchestrator)ソフトウェアのバージョン6.5.6を用いて、30℃で参照される単一のマスターカーブにまとめた。せん断速度の関数として複素粘度の単位で図3にプロットされた結果は、本明細書に記載された本発明のポリマーが低せん断速度でかなり高い粘度を有することを示す。如何なる特定の理論によっても縛られないが、これらの結果は、本発明の材料中の分岐する長鎖の存在と一致する(決定的証拠でないとはいえ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)実質的にフッ素化された主鎖、(b)アイオノマー形成モノマー由来の下式からなるペンダント基、
【化1】

(ここで、XはF、ClまたはBrもしくはそれらの混合物であり、nは0、1または2に等しい整数であり、RfおよびRf’は独立にF、Cl、パーフルオロアルキル基、およびクロロパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれ、Yは酸基または酸基に変換できる官能基であり、aは0または0より大きい整数であり、そしてbは0より大きい整数である。)
および(c)CA2=CB−O−の形態からなる少なくとも2つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルモノマー由来のペンダント基(ここで前記ビニル基は4つより多い原子によって隔てられており、Aは独立にF、ClおよびHを含む群から選ばれ、そしてBは独立にF、Cl、HおよびORiから選ばれ、ここでRiは部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化もしくは塩素化されることができる分岐鎖状または直鎖状アルカンである)を含んでなるフッ素化アイオノマー性コポリマーであって、アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度が最終生成物の約10モル%と約45モル%との間にあり、そしてビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度が最終生成物中に約0.05と約2モル%との間にあるフッ素化アイオノマー性コポリマー。
【請求項2】
ビニルエーテルモノマー由来のペンダント基を形成するビニルエーテルモノマーがCA2=CB−O−R−O−CB=CA2(ここでAは独立にF、ClおよびHを含む群から選ばれ、そしてBは独立にF、Cl、HおよびORiから選ばれ、ここでRiは部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化もしくは塩素化されることができる分岐鎖状または直鎖状アルカンであり、そしてRは部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化もしくは塩素化されることができる3〜15の炭素原子を有する直鎖状アルカンである)の形態の式を有する請求項1に記載のフッ素化アイオノマー。
【請求項3】
ビニルエーテルモノマー由来のペンダント基が生成物中に約0.05と約1モル%との間の量で存在する請求項1に記載のフッ素化アイオノマー。
【請求項4】
アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度が最終生成物の約30モル%と約40モル%との間である請求項1のフッ素化アイオノマー。
【請求項5】
ビニルエーテルモノマーが式CF2=CF−O−CF2−CF2−CF2−O−CF=CF2を有する請求項4のフッ素化アイオノマー。
【請求項6】
ビニルモノマー由来のペンダント基が生成物中に約0.05と約1モル%との間の量で存在する請求項5に記載のフッ素化アイオノマー。
【請求項7】
該アイオノマーから形成され、室温で水和された膜の酸型のイオン伝導度が室温で約0.15S/cmより大きい請求項1に記載のフッ素化アイオノマー。
【請求項8】
(i)脱イオン水、パーフルオロ化界面活性剤(必要に応じて水溶液中に溶解されている)、分子量2000未満の液体パーフルオロ化炭化水素およびアイオノマー形成モノマーからなる混合物のミニエマルジョンを形成すること、(ii)該ミニエマルジョンを撹拌された反応器中で少なくとも1種の実質的にフッ素化されたアルケンガスによって加圧すること、(iii)該反応器中でフリーラジカル開始剤によって重合を開始すること、(iv)実質的にフッ素化されたアルケンガスの既知圧力を一定期間維持すること、および(v)(i)から(iv)までの製造工程の1または複数中で、CA2=CB−O−の形態からなる少なくとも2つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルモノマー(ここで前記ビニル基は4つより多い原子によって隔てられており、Aは独立にF、ClおよびHを含む群から選ばれ、そしてBは独立にF、Cl、HおよびORiから選ばれ、ここでRiは部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化もしくは塩素化されることができる分岐鎖状または直鎖状アルカンである)を添加することの各工程を含んでなるフッ素化ポリマーの製造方法。
【請求項9】
ビニルエーテル化合物がCA2=CB−O−R−O−CB=CA2(ここでAは独立にF、ClおよびHを含む群から選ばれ、そしてBは独立にF、Cl、HおよびORiから選ばれ、ここでRiは部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化もしくは塩素化されることができる分岐鎖状または直鎖状アルカンであり、そしてRは部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化もしくは塩素化されることができる3〜15の炭素原子を有する直鎖状アルカンである)の形態の式を有する請求項8の方法。
【請求項10】
アイオノマー形成モノマーが式CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2−SO2Fを有する請求項9の方法。
【請求項11】
ビニル化合物が式CF2=CF−O−CF2CF2CF2−O−CF=CF2を有する請求項10の方法。
【請求項12】
界面活性剤がアンモニウムパーフルオロオクタノエイトである請求項11の方法。
【請求項13】
開始剤がアンモニウムパーサルフェイトである請求項12の方法。
【請求項14】
水溶液中のアンモニウムパーフルオロオクタノエイトの濃度が約0.5重量%未満であり、アイオノマー形成モノマー濃度が約10重量%未満であり、ビニルエーテル化合物の濃度が約0.1重量%未満であり、そしてアンモニウムパーサルフェイトの濃度が約0.004重量%である請求項13の方法。
【請求項15】
(i)脱イオン水、パーフルオロ化界面活性剤(必要に応じて水溶液中に溶解されている)、分子量2000未満の液体パーフルオロ化炭化水素およびアイオノマー形成モノマーからなる混合物のミニエマルジョンを形成すること、(ii)該ミニエマルジョンを撹拌された反応器中で少なくとも1種の実質的にフッ素化されたアルケンガスによって加圧すること、(iii)該反応器中でフリーラジカル開始剤によって重合を開始すること、(iv)実質的にフッ素化されたアルケンガスの既知圧力を一定期間維持すること、および(v)(i)から(iv)までの製造工程の1または複数中で、CA2=CB−O−の形態からなる少なくとも2つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルモノマー(ここで前記ビニル基は4つより多い原子によって隔てられており、Aは独立にF、ClおよびHを含む群から選ばれ、そしてBは独立にF、Cl、HおよびORiから選ばれ、ここでRiは部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化もしくは塩素化されることができる分岐鎖状または直鎖状アルカンである)を添加することからなる工程によって製造された製品。
【請求項16】
該製品が約600と約950との間の当量重量を有し、そして該製品から作製されて室温で水和された膜の酸型のイオン伝導度が室温で約0.15S/cmより大きい請求項15の製品。
【請求項17】
請求項1のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項18】
請求項2のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項19】
請求項3のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項20】
請求項4のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項21】
請求項5のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項22】
請求項6のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項23】
請求項7のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項24】
請求項15のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項25】
請求項16のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項26】
多孔質支持体および該多孔質支持体内に含浸された請求項1のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項27】
多孔質支持体および該多孔質支持体内に含浸された請求項2のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項28】
多孔質支持体および該多孔質支持体内に含浸された請求項3のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項29】
多孔質支持体および該多孔質支持体内に含浸された請求項4のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項30】
多孔質支持体および該多孔質支持体内に含浸された請求項5のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項31】
多孔質支持体および該多孔質支持体内に含浸された請求項6のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項32】
多孔質支持体および該多孔質支持体内に含浸された請求項7のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項33】
多孔質支持体および該多孔質支持体内に含浸された請求項15のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項34】
多孔質支持体および該多孔質支持体内に含浸された請求項16のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜。
【請求項35】
該多孔質支持体が延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンである請求項26に記載の膜。
【請求項36】
該多孔質支持体が延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンである請求項27に記載の膜。
【請求項37】
該多孔質支持体が延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンである請求項28に記載の膜。
【請求項38】
該多孔質支持体が延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンである請求項29に記載の膜。
【請求項39】
該多孔質支持体が延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンである請求項30に記載の膜。
【請求項40】
該多孔質支持体が延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンである請求項31に記載の膜。
【請求項41】
該多孔質支持体が延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンである請求項32に記載の膜。
【請求項42】
該多孔質支持体が延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンである請求項33に記載の膜。
【請求項43】
該多孔質支持体が延伸膨張ポリテトラフルオロエチレンである請求項34に記載の膜。
【請求項44】
該フッ素化アイオノマーが実質的に完全に該多孔質支持体に含浸している請求項26に記載の膜。
【請求項45】
該フッ素化アイオノマーが実質的に完全に該多孔質支持体に含浸している請求項27に記載の膜。
【請求項46】
該フッ素化アイオノマーが実質的に完全に該多孔質支持体に含浸している請求項28に記載の膜。
【請求項47】
該フッ素化アイオノマーが実質的に完全に該多孔質支持体に含浸している請求項29に記載の膜。
【請求項48】
該フッ素化アイオノマーが実質的に完全に該多孔質支持体に含浸している請求項30に記載の膜。
【請求項49】
該フッ素化アイオノマーが実質的に完全に該多孔質支持体に含浸している請求項31に記載の膜。
【請求項50】
該フッ素化アイオノマーが実質的に完全に該多孔質支持体に含浸している請求項32に記載の膜。
【請求項51】
該フッ素化アイオノマーが実質的に完全に該多孔質支持体に含浸している請求項33に記載の膜。
【請求項52】
該フッ素化アイオノマーが実質的に完全に該多孔質支持体に含浸している請求項34に記載の膜。
【請求項53】
請求項26に記載の膜をサンドイッチ状に挟むアノードおよびカソードを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項54】
請求項33に記載の膜をサンドイッチ状に挟むアノードおよびカソードを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項55】
請求項35に記載の膜をサンドイッチ状に挟むアノードおよびカソードを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項56】
請求項44に記載の膜をサンドイッチ状に挟むアノードおよびカソードを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項57】
酸化種を含むカソード供給物、カソード供給物中のそれに対応する還元種を含むアノード供給物を有する電気化学セルであって、請求項53に記載の膜電極アッセンブリを含んでなる電気化学セル。
【請求項58】
酸化種を含むカソード供給物、カソード供給物中のそれに対応する還元種を含むアノード供給物を有する電気化学セルであって、請求項54に記載の膜電極アッセンブリを含んでなる電気化学セル。
【請求項59】
酸化種を含むカソード供給物、カソード供給物中のそれに対応する還元種を含むアノード供給物を有する電気化学セルであって、請求項55に記載の膜電極アッセンブリを含んでなる電気化学セル。
【請求項60】
酸化種を含むカソード供給物、カソード供給物中のそれに対応する還元種を含むアノード供給物を有する電気化学セルであって、請求項56に記載の膜電極アッセンブリを含んでなる電気化学セル。
【請求項61】
請求項33に記載の膜を含んでなる電解槽。
【請求項62】
アノード、カソードおよび膜を含んでなる膜電極アッセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも一つが請求項1のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項63】
アノード、カソードおよび膜を含んでなる膜電極アッセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも一つが請求項2のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項64】
アノード、カソードおよび膜を含んでなる膜電極アッセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも一つが請求項3のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項65】
アノード、カソードおよび膜を含んでなる膜電極アッセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも一つが請求項4のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項66】
アノード、カソードおよび膜を含んでなる膜電極アッセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも一つが請求項5のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項67】
アノード、カソードおよび膜を含んでなる膜電極アッセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも一つが請求項6のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項68】
アノード、カソードおよび膜を含んでなる膜電極アッセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも一つが請求項7のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項69】
アノード、カソードおよび膜を含んでなる膜電極アッセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも一つが請求項15のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜電極アッセンブリ。
【請求項70】
アノード、カソードおよび膜を含んでなる膜電極アッセンブリであって、該アノードおよびカソードの少なくとも一つが請求項16のフッ素化アイオノマーを含んでなる膜電極アッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−84149(P2010−84149A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−278622(P2009−278622)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【分割の表示】特願2003−551173(P2003−551173)の分割
【原出願日】平成14年11月19日(2002.11.19)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】