説明

フッ素樹脂フィルム

【課題】
透明性に優れ、紫外線遮断性に優れたフッ素樹脂フィルムの提供すること。
【解決手段】
平均粒子径が0.01〜0.05μmのルチル型の酸化チタン粒子を含有するフッ素樹脂フィルムであって、該粒子は酸化チタンの表面に酸化ケイ素、酸化アルミニウム、オルガノポリシロキサンが順次被覆されており、該粒子を0.05〜2.0重量%含有していることを特徴とするフッ素樹脂フィルムを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂に配合された紫外線遮断材料の分散性に優れ、かつ透明性、紫外線遮断性に優れたフッ素樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂、特にテトラフルオロエチレン系共重合体は、耐候性、透明性、および耐汚染性が屋外暴露20年以上にわたり維持される材料として、農業用ハウスフィルムや屋根材料として使用されている。
フッ素樹脂フィルムを軟質塩化ビニル樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ABS樹脂、ポリカーボネートなどのプラスチックやステンレス鋼板、アルミニウム板、亜鉛メッキ鋼板などの金属板とラミネートして屋外建材に用いる場合、接着剤を介してラミネートする必要がある。しかし、フッ素樹脂フィルム自体は紫外線を透過するため、接着剤の紫外線による劣化を防ぐために最外層のフッ素樹脂フィルムが紫外線を遮断するという工夫、たとえば、フッ素樹脂に顔料を分散させ紫外線を遮断する方法が採られている。
【0003】
しかし、この方法ではフッ素樹脂フィルムの透明性が損なわれ、たとえば、フッ素樹脂フィルムを表面被覆材とした太陽電池として使う場合、可視光も遮断してしまう問題がある。これに対処するために、フッ素樹脂フィルムが400〜700nmの可視光線の透過率を高く維持し、かつ表面被覆材として用いられるフッ素樹脂フィルムとセルとを接着するEVAなどの充填剤や、その他接着剤の光劣化を生じさせる360nm以下の波長の紫外線を遮断することが好ましい。
【0004】
フッ素樹脂フィルムを農業用ハウスフィルムとして用いる場合、栽培する果実、花、野菜などの色、糖度、収穫量を向上させるため、それぞれに対応して紫外線透過率を調節したフィルムが要求されている。また、特に近年、アザミウマなどの害虫の被害が大きく、これらの害虫の農業ハウスでの活動を防止するため、紫外線を遮断した農業用ハウスフィルムの開発が待たれている。
【0005】
従来、フッ素樹脂フィルムに紫外線遮断機能を付与する方法として、たとえばエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、ETFEという)に0.02μm程度の粒子径の酸化チタンや酸化亜鉛を配合する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法では酸化チタンなどの微粒子の分散が悪く、微粒子が凝集してフィルムが白化する問題と、長期にわたる光と雨による酸化チタンの光触媒によりETFEフィルム自体の劣化が促進されフィルムが空洞化する問題が生ずる。
【0006】
また、ケイ素原子に結合したメチル基を有するオルガノポリシロキサンで表面被覆処理した酸化チタン微粒子をETFEに分散、混練して紫外線遮断フィルムを製造する方法が開示されている(特許文献2)。しかし、表面処理した酸化チタンの分散性が改良されずヘイズの小さいフィルムは得られない。また、酸化チタンなどの微粒子を表面処理したオルガノポリシロキサンの被覆厚みはわずかに数nm程度であり、ETFEに対する光触媒作用を低減できにくい。
【0007】
酸化チタンの添加量が少ないETFEフィルムは、少なくとも波長300nm以下の紫外線を遮断できるが、360nm以下の紫外線を遮断するために酸化チタン添加量を多くする必要があり、その結果ETFEフィルムの透明性が著しく損なわれる。
【0008】
酸化亜鉛は紫外線遮断性能が酸化チタンより優れているため、酸化亜鉛の添加量が少なくてもETFEフィルムは波長360nm以下の紫外線を遮断できる。しかし、酸化亜鉛は屋外暴露中にフッ素樹脂から遊離したフッ素化合物と反応し紫外線遮断機能を有しないフッ化亜鉛に変質し、その結果ETFEフィルムの紫外線遮断機能が低下しやすい問題が生ずる。また、酸化亜鉛微粒子をETFEに混練しフィルムを成形する際においても、発生するフッ素化合物により変質しやすい。
【0009】
特許文献3には、酸化セリウム微粒子を混練した農業用ETFEフィルムが提案されている。酸化セリウムは、酸化チタンに比べ光触媒機能が小さく、また酸化亜鉛と同様に屋外暴露中にフッ素樹脂から遊離したフッ素化合物と反応し紫外線遮断機能を有しないフッ化セリウムに変質し、次第にフィルムの紫外線遮断機能が低下しやすい問題が生ずる。また、酸化セリウムの添加量が少ないETFEフィルムは、波長300nm以下の紫外線を遮断できるが、360nm以下を遮断するために酸化セリウム添加量を多くする必要があり、その結果ETFEフィルムの透明性が著しく損なわれる。
【0010】
また、特許文献4では粒子径1〜30μmの不定形シリカで被覆した酸化亜鉛粒子が集合してなる複合体粒子を混練したフッ素樹脂フィルムが提案されているが、太陽電池用部材シートや農業用被覆シートとして用いた際には更なる透過性が求められる。また、本方法で得られるフッ素樹脂フィルムは粒子径が1〜30μmの複合粒子をフッ素樹脂と混練する際に発生する二次凝集によって可視光の透過性が大きく損なわれる。そこで、二次凝集を防ぐ目的から、フィルタを用いたとしても複合粒子が1〜30μmであるために、目詰まりが発生し、これがゲルや炭化物となり透明性を損なう問題が生じる。
【0011】
また、特許文献5では、表面をシリカで被覆した金属酸化物微粉末を0.05〜10重量%含有している屋外構築物用樹脂フィルムが開示されている。太陽電池用部材シートや農業用被覆シートして用いるためには、特に酸化チタンにおいては光触媒効果を抑制することが重要であり、シリカを被覆するのみでは十分な抑制効果が得られない。更に樹脂中への金属酸化物微粉末の分散性が優れないなどの問題を生じる。仮に、光触媒効果の抑制力を高めるために、シリカ被覆量を増やす方法を用いた場合においても、シリカ量を増やすことで吸着する水分量も増えるため、フィルム製造中の気泡や、光触媒効果によって樹脂分解を招くラジカルが発生する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−3047号公報
【特許文献2】特開平7−304924号公報
【特許文献3】特開平8−37942号公報
【特許文献4】特開2007−162029号公報
【特許文献5】特開平8−259731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、優れた透明性を有し、360nm以下の紫外線遮断に優れたフッ素樹脂フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を特徴とするものである。
すなわち、平均粒子径が0.01〜0.05μmのルチル型の酸化チタン粒子を含有するフッ素樹脂フィルムであって、該粒子は酸化チタンの表面に酸化ケイ素、酸化アルミニウム、オルガノポリシロキサンが順次被覆されており、該粒子を0.05〜2.0重量%含有していることを特徴とするフッ素樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0015】
透明性に優れ、かつ長期にわたる紫外線遮断性を有するフッ素樹脂フィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の紫外線遮断能を有するフッ素樹脂フィルムは表面活性を抑制した酸化チタン粒子組成物を、0.05〜2.0重量%含有してなるものであり、該酸化チタン粒子組成物は酸化チタン粒子の表面に酸化ケイ素からなる第1の被覆層、酸化アルミニウムからなる第2の被覆層、オルガノポリシロキサンからなる第3の被覆層をこの順に有することを特徴とする。
【0017】
本発明で用いる酸化チタン粒子組成物の核となる酸化チタン粒子は、その製造方法において何ら限定されず、硫酸法によって得られた酸化チタンでもよく、塩素法によって得られた酸化チタンでもよい。その結晶形は、耐候性及び耐光性の点からルチル型であることが必要である。また、酸化チタン粒子組成物の核となる酸化チタン粒子はフィルムとしたときの透明度を確保する目的から、平均粒子径が0.01〜0.05μmであることが必要であり、0.01〜0.03μmの範囲にあることが好ましい。粒子径が0.05μmより大きい場合、フィルムとしたときに透明性を損なうため好ましくない。また、粒子径が0.01μmより小さい場合は、粒子同士の凝集力が非常に強くなって、それぞれの粒子に均一な表面処理をすることが難しくなり、好ましくない。本発明に用いる酸化チタンの粒子径は、透過型電子顕微鏡で測定し、扁平状に存在する粒子の長径と短径の平均値として算出したものである。
【0018】
本発明で用いる酸化チタン粒子組成物の核となる酸化チタン粒子は、酸化チタン粒子全体に占める粒子径0.02μm以下の粒子の比率が95重量%以上であることが好ましい。
【0019】
本発明で用いる酸化チタン粒子組成物は、核である酸化チタン粒子の表面が緻密な膜厚0.1〜25nmの酸化ケイ素で被覆されている。ここでいう「緻密」とは、形成された酸化ケイ素からなる第1の被覆層の屈折率が1.435以上であることをいう。一般に酸化ケイ素の緻密性と屈折率は正の相関があるとされており、通常のゾルーゲル法で得られる酸化ケイ素膜(シリカ膜)は焼成を行えば屈折率は1.435以上になるが、焼成を行わなければ1.435未満であり緻密性が低い。しかし、本発明で用いる酸化チタン粒子組成物は焼成を行わずに、この値を達成しているものを用いることを特徴としている。
【0020】
本発明において、酸化チタン粒子組成物の核となる酸化チタン粒子表面への酸化ケイ素の被覆方法としては、特開平11−302015号公報によって開示されている方法が挙げられる。具体的には、酸化チタン粒子の水性懸濁液に酸化チタンの重量に対してSiO2 として1〜50重量%の水溶性ケイ酸塩を加え、温度を60℃以上に保持しつつ、40分以上の時間をかけて酸を加えて、pH6.0〜8.0の範囲となるまで、懸濁液を中和して、酸化チタン粒子の表面に酸化ケイ素からなる高密度の被覆層を形成することができる。
【0021】
また、別の方法として、酸化チタン粒子の水性懸濁液に、温度を60℃以上に保持すると共に、pHを9〜10.5の範囲に保持しつつ、酸化チタンの重量に対してSiO2 として1〜50重量%の水溶性ケイ酸塩と酸とを40分以上の時間をかけて同時に加えた後、更に、酸を加えて、pHが6.0〜8.0の範囲となるまで、懸濁液を中和して、酸化チタン粒子の表面に酸化ケイ素からなる高密度の被覆層を形成することができる。
【0022】
酸化チタン粒子表面への酸化ケイ素の被覆量としては、核である酸化チタン100重量部に対してSiO2として3〜15重量部、特に5〜10重量部が好ましい。酸化ケイ素の被覆量が15重量部以上であれば、吸着水分の量が増し、フィルム製造時に発泡するなどの問題が生じる。また、3重量部未満の場合は、光触媒作用の抑制力が弱いため好ましくない。
このような酸化ケイ素からなる高密度の被覆層は酸化チタン粒子を媒体から隔絶するので、酸化チタン本来の性質である化学反応性を著しく抑制することができ、更には、光触媒能をもほぼ完全に抑制することができ、特に、超微粒子酸化チタンの表面活性を実質的に抑制することができる。
【0023】
本発明においては、上述したように酸化チタン粒子の表面に酸化ケイ素からなる第1の被覆層を形成した後、酸化アルミニウムを主成分とする第2の被覆層を形成する必要がある。第2の被覆層には主成分である酸化アルミニウムの他にTi、Zr、Sn、Sb及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含有してもよい。希土類元素としては、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム等を挙げることができる。
【0024】
第2の被覆層の被覆方法としては、酸化ケイ素からなる第1の被覆層を有する酸化チタン粒子の水性懸濁液を調製し、これに酸化アルミニウムの水溶性化合物の水溶液を加え、酸又はアルカリを中和剤として加えて、アルミニウム化合物を中和して、上記第1の被覆層を有する酸化チタン粒子の表面に酸化アルミニウムからなる第2の被覆層を形成する方法を挙げることができる。Alの水溶性化合物としては、例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等を挙げることができる。前記中和剤である酸としては、硫酸等の無機酸や、酢酸、シュウ酸等の有機酸が好ましく用いられる。
酸化ケイ素からなる第1の被覆層を有する酸化チタン粒子に酸化アルミニウムを主成分とする第2の被覆層を形成するに際して、酸化アルミニウムの他に、Ti、Zr、Sn、Sb及び希土類元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含有する第2の被覆層を形成する場合、アルミニウムの水溶性化合物の他にこれらの元素の水溶性化合物の水溶液も用いて、一度に複数の元素の酸化物の混合物からなる被覆層を形成してもよい。また、個々の元素の水溶性化合物の水溶液を用いて、一層ずつ、酸化物からなる被覆層を形成して、第2の被覆層を多層とすることもできる。第2の被覆層を多層とする場合には、酸化アルミニウムからなる被覆層を最後に形成することが好ましい。
【0025】
上述した第2の被覆層の被覆量としては、核である酸化チタン100重量部に対して酸化アルミニウム(Al)として3〜10重量部、特に3〜8重量部が好ましい。酸化アルミニウムの被覆量が3重量部未満であれば、光触媒作用の抑制が不十分であり樹脂の劣化を招くため好ましくない。また、10重量部よりも多い場合は、フィラー同士の凝集力が高まり、フィルムの透明性が損なわれるため好ましくない。
【0026】
本発明における酸化チタン組成物はオルガノポリシロキサンからなる第3の被覆層をさらに有する。本第3の被覆層の被覆方法については、特に限定されないが、上記の如く、酸化チタン粒子の表面に酸化ケイ素、酸化アルミニウムの層を有した後、本粒子組成物をオルガノポリシロキサンで表面処理することが好ましい。このような表面処理に用いるオルガノポリシロキサンは、酸化チタン100重量部に対して、通常、1〜20重量部の範囲であり、好ましくは、3〜10重量部の範囲である。オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチコン−ジメチコン共重合体等が好ましく用いられる。このようなオルガノポリシロキサンが酸化チタン100重量部に対して1重量部よりも少ないときは、樹脂中の分散性の改善効果に乏しく、他方、20重量部を越えても、フィラーの凝集を招き、透明性が劣る問題が生じる場合がある。また、オルガノポリシロキサンを被覆する前にシランカップリング剤を被覆してもよく、これにより、オルガノポリシロキサンがより均一に被覆できる。
【0027】
このように、オルガノポリシロキサンによる表面処理のほか、例えば、ステアリン酸等の高級脂肪酸、パルミチン酸オクチル等の高級脂肪酸エステル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン化合物で表面処理することもできる。
【0028】
本発明で用いる酸化チタン粒子組成物は、核である酸化チタン粒子の表面に酸化ケイ素、酸化アルミニウム層からなる高密度の層、オルガノポリシロキサンからなる層をこの順に被覆し、光触媒機能が抑制されている一方、A領域紫外線の遮蔽能と透明性においてすぐれているので、該酸化チタン粒子組成物を含有する本発明のフッ素樹脂フィルムは、紫外線遮蔽能を有する透明フッ素樹脂フィルムとして好適に用いることができる。酸化チタンは380nm付近に鋭い吸収端を有するので、地表に到達する紫外線である短波長(B領域)の紫外線(280〜320nm)とより長波長(A領域)の紫外線(320〜400nm)のうち、A領域の紫外線に対する遮蔽効果が高い。更に、本発明ではフッ素樹脂フィルムに含有させる酸化チタン組成物の核となる酸化チタン粒子を超微粒子とすることで、B領域からA領域の広い波長域にわたる紫外線を遮蔽でき、酸化亜鉛や酸化セリウムなど一般的な紫外線遮断能を有する無機顔料に比べて少ない添加量で高い透明性を得ることができる。
【0029】
本発明のフッ素樹脂フィルムにおける酸化チタン粒子組成物の含有量は0.05〜2.0重量%であることが必要であり0.05〜1.5重量%であることがより好ましい。2.0重量%より多く含有した場合には、フィルムを製造時にスジや異物が発生しハンドリング性に劣るため好ましくない。また、0.05重量%より少ない場合は、要求に達する紫外線遮断能を付与できないため好ましくない。ここでいう要求とは紫外線を50%以上カットすることであり、具体的には波長360nmの紫外線をいう。
【0030】
本発明のフッ素樹脂フィルムに要求される紫外線遮断機能は、そのフィルムを使用する用途によって異なる。たとえば、ラミネートして用いる場合、接着剤を保護するために330〜360nmの紫外線を70%以上遮断し、基材表面の印刷を見やすくするために400〜700nmの可視光を70%以上透過させることが好ましい。
【0031】
また、農業ハウスに用いる場合、穀物、花、野菜、果物の種類に適した紫外線遮断機能を有することが必要であり、330〜360nmの紫外線を100%遮断するフィルム、80%遮断するフィルム、50%遮断するフィルムなどが用いられる。また、アザミウマなどの害虫の活動を防止するため、特に330〜360nmの紫外線を70%以上遮断するフィルムが用いられる。同時に、光合成に必要な可視光線(380〜720nm)の高い透過性も求められる。
【0032】
イチゴを栽培する上では、受粉目的として使用されるセイヨウマルハナバチや、クロマルハナバチが飛行することが重要であり、その為には紫外線を100%カットすることは好ましくない。また、マルハナバチはハウス内の温度が40℃以上になると飛行しない性質を有していることから、必要に応じて赤外線遮断能を付与してもよい。赤外線遮断能を付与する具体的な方法としては、無機酸化物をフッ素樹脂中に練りこむ方法や、有機化合物を塗剤として本発明のフッ素樹脂フィルムにコーティングする方法が挙げられる。
【0033】
また、農業ハウスにおいてナスを栽培する場合には、その鮮やかな紫調をだすために、360〜380nmの領域の透過率が必要となる。この場合、一般的な無機顔料である酸化亜鉛に比べて本発明で用いる酸化チタン組成物は優れた透過率を有している。
【0034】
本発明における光線透過率とは、JIS−K7105に準拠した測定法によって求めたものであり、拡散光線と平行光線の総量、すなわち全光線透過率をいう。この方法に用いる光源はJIS−Z8720に準処し、300〜830nmに分布した標準光である。
【0035】
本発明において、330〜360nmの光を70%以上遮断するとは、この波長全域にわたり70%以上遮断することをいう。また、400〜700nmの光を70%以上透過するとは、この波長全域にわたり70%以上透過することをいう。
【0036】
本発明で用いるフッ素樹脂は特に限定されないが、フッ化ビニル重合体、フッ化ビニリデン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−プロピレン共重合体、ETFE、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、またはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフロロエチレン重合体樹脂などが挙げられる。
【0037】
これらのフッ素樹脂のうち、特にETFE、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフロロエチレン重合体が好ましい。
【0038】
本発明のフッ素樹脂フィルムを製造する方法としては、前記したフッ素樹脂に、上述した酸化チタン粒子組成物を所定割合で配合した後に製膜してフィルムとする方法が挙げられる。かかる製膜法については、特に制限を受けないが、カレンダ法、インフレーション法、Tダイ法など公知の方法を用いることができる。フィルム厚みの均一性や平面性の点からTダイ法が好適に採用される。
【0039】
すなわち、1台の押出機を用いて、本発明で定めた粒径及び含量の酸化チタン粒子をフッ素樹脂に配合し、その後、フッ素樹脂が流動性を有する温度、好ましくはフッ素樹脂の融点+50℃以下の温度で溶融押し出し、続いてキャストロールで冷却固化し、フッ素樹脂フィルムとする。キャストロールの温度は20〜200℃の範囲が好ましく、用いるフッ素樹脂の種類、結晶性によって異なるが、80〜200℃の範囲が得られるフィルムの結晶化度が高くなるためより好ましい。
【0040】
本発明のフッ素樹脂フィルムの厚みは特に制限はないが、通常6〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲である。
【0041】
かくして得られた本発明のフッ素樹脂フィルムは、透明性と長期に渡る紫外線遮断能を兼ね備えたものとなる。その結果、屋外における期待耐用年数が数年を越える各種用途、例えば太陽電池用部材シートやビニルハウスシート等の農業被覆用シートや建築用屋根材料などに長期間好適に使用できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例で利用した種々の性状の測定は特にことわらない限り次のようにして実施した。
【0043】
(1)平均粒子径
得られたサンプルフィルムの断面を日立社製透過型電子顕微鏡(H−7100FA)を用いて、加速電圧100kVで、500000倍に拡大し、その写真の単位視野内に観察される粒子の数(n=20)、及び粒子径(鱗片状な粒子の長径と短径の平均値)から、数平均をとって平均粒子径を算出した。
【0044】
(2)耐候性試験
耐候性はサンプルフィルムを作成し、20cm×20cmの大きさにサンプリングしたものをサンシャインウェザーメーターにて5000時間試験した。
【0045】
(3)分光透過率測定
製造直後のサンプルフィルムと、(2)の耐候性試験後のサンプルフィルムの波長360〜1000nmの分光透過率(t%)を日立社製ダブルビーム分光光度計U2001を用い、JIS R3106「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に準拠して、紫外線、及び可視光線透過率の測定を行った。
【0046】
可視光として、640〜550nmを、また紫外線として360nm〜330nmの光線透過率と、経時変化を測定し、下記の判定をした。
【0047】
1)可視光透過率
○: 640〜550nmの透過率が80%以上
△: 640〜550nmの透過率が70%以上80%未満
×: 640〜550nmの透過率が70%未満
2)紫外線透過率
○: 360nm〜330nmの透過率が35%未満
△: 360nm〜330nmの透過率が35%以上50%未満
×: 360nm〜330nmの透過率が50%以上
尚、本発明のフッ素樹脂フィルムの紫外線遮断程度はこの実施例に特に限定されない。
【0048】
(実施例1)
スクリュー径45mmの二軸押出機に、平均粒径0.03μmのルチル型酸化チタン粒子100重量部に対して酸化ケイ素からなる高密度被覆層5重量部、酸化アルミニウムからなる被覆層6重量部、メチコン−ジメチコン共重合体からなる被覆層4重量部をこの順に積層した酸化チタン粒子組成物[堺化学工業製NANOFINE(登録商標)50−LP]10.0重量部とエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)[旭硝子製、アフロン(登録商標)COP88AXP]90.0重量部のブレンド原料を投入し、バレル温度300℃で溶融混練し、ガット状に押出し、水冷後カットして平均粒径0.03μm粒子のマスタチップAを得た。
【0049】
その後、酸化チタン粒子組成物が0.1重量%になるように上記マスタチップAおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ80μm、幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを実施例1とした。
【0050】
フィルムの製造時のハンドリングに優れ、かつ透明性、及び紫外線遮断性に優れたフッ素樹脂フィルムが得られた。本フィルムの特性を表1に記す。本フィルムは3年間の屋外暴露試験後もほぼ同等の紫外線カット能と透明度を維持していた。
【0051】
(実施例2)
スクリュー径45mmの二軸押出機に、平均粒径0.03μmのルチル型酸化チタン粒子100重量部に対して酸化ケイ素からなる高密度被覆層7重量部、酸化アルミニウムからなる被覆層4重量部、メチコン−ジメチコン共重合体からなる被覆層4重量部をこの順に積層した酸化チタン粒子組成物10.0重量部とエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)[旭硝子製、アフロン(登録商標)COP88AXP]90.0重量部のブレンド原料を投入し、バレル温度300℃で溶融混練し、ガット状に押出し、水冷後カットして平均粒径0.03μm粒子のマスタチップBを得た。
【0052】
その後、酸化チタン粒子組成物が0.25重量%になるように上記マスタチップBおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ80μm、幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを実施例2とした。
【0053】
フィルムの製造時のハンドリングに優れ、かつ透明性、及び紫外線遮断性に優れたフッ素樹脂フィルムが得られた。本フィルムの特性を表1に記す。本フィルムは耐光性試験後もほぼ同等の紫外線カット能と透明度を維持していた。
【0054】
(実施例3)
スクリュー径45mmの二軸押出機に、平均粒径0.03μmのルチル型酸化チタン粒子100重量部に対して酸化ケイ素からなる高密度被覆層9重量部、酸化アルミニウムからなる被覆層8重量部、メチコン−ジメチコン共重合体からなる被覆層4重量部をこの順に積層した酸化チタン粒子組成物10.0重量部とエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)[旭硝子製、アフロン(登録商標)COP88AXP]90.0重量部のブレンド原料を投入し、バレル温度300℃で溶融混練し、ガット状に押出し、水冷後カットして平均粒径0.03μm粒子のマスタチップCを得た。
【0055】
その後、酸化チタン粒子組成物が1.5重量%になるように上記マスタチップCおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ40μm、幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを実施例3とした。
【0056】
フィルムの製造時のハンドリングに優れ、かつ透明性、及び紫外線遮断性に優れたフッ素樹脂フィルムが得られた。本フィルムの特性を表1に記す。本フィルムは耐光性試験後もほぼ同等の紫外線カット能と透明度を維持していた。
【0057】
(実施例4)
スクリュー径45mmの二軸押出機に、平均粒径0.03μmのルチル型酸化チタン粒子100重量部に対して酸化ケイ素からなる高密度被覆層14重量部、酸化アルミニウムからなる被覆層4重量部、メチコン−ジメチコン共重合体からなる被覆層4重量部をこの順に積層した酸化チタン粒子組成物10.0重量部とエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)[旭硝子製、アフロン(登録商標)COP88AXP]90.0重量部のブレンド原料を投入し、バレル温度300℃で溶融混練し、ガット状に押出し、水冷後カットして平均粒径0.03μm粒子のマスタチップDを得た。
【0058】
その後、酸化チタン粒子組成物が0.05重量%になるように上記マスタチップDおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ250μm、幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを実施例4とした。フィルムの製造時のハンドリングに優れ、かつ透明性、及び紫外線遮断性に優れたフッ素樹脂フィルムが得られた。本フィルムの特性を表1に記す。 本フィルムは耐光性試験後もほぼ同等の紫外線カット能と透明度を維持していた。
【0059】
(比較例1)
実施例1と同様に酸化チタン粒子組成物が3.0重量%になるように上記マスタチップAおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ80μm、幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを比較例1とした。得られたフィルムは透明性に優れなかった。
【0060】
(比較例2)
酸化チタン粒子組成物が0.02重量%になるように上記マスタチップAおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ250μm、幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを比較例2とした。
得られたフィルムは、透明性に優れる反面、紫外線の遮断率が低く不適と判断した。
【0061】
(比較例3)
酸化チタン粒子組成物が3重量%になるように上記マスタチップAおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ40μm、幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを比較例3とした。
得られたフィルムは、透明性に優れず、不適と判断した。
【0062】
(比較例4)
スクリュー径45mmの二軸押出機に、平均粒径0.05μmのルチル型酸化チタン粒子100重量部に対して、酸化ケイ素を32重量部被覆した酸化チタン粒子(昭和電工(株)製 マックスライト)を10.0重量部、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)[旭硝子製、アフロン(登録商標)COP88AXP] 90.0重量部のブレンド原料を投入し、バレル温度300℃で溶融混練し、ガット状に押出し、水冷後カットして平均粒径0.05μm粒子のマスタチップEを得た
その後、上記積層被覆された酸化チタン粒子が0.2重量%になるように上記マスタチップEおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ80μmの幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。酸化チタンが0.2重量%のものを比較例4とした。
【0063】
フィルムの製造時のハンドリング、及び紫外線遮断性に優れているが、透明性が不十分なフッ素樹脂フィルムが得られた。本フィルムの特性を表1に記す。本フィルムは耐光性試験後、透明度の低下が認められた。
【0064】
(比較例5)
スクリュー径45mmの二軸押出機に、平均粒径0.10μmのルチル型酸化チタン粒子100重量部に対して、酸化ケイ素を31重量部、メチコン−ジメチコン共重合体を3重量部、この順に被覆したものを10.0重量部とエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)[旭硝子製、アフロン(登録商標)COP88AXP]90.0重量部のブレンド原料を投入し、バレル温度300℃で溶融混練し、ガット状に押出し、水冷後カットして平均粒径0.10μm粒子のマスタチップFを得た。
【0065】
その後、上記積層被覆された酸化チタン粒子が0.1重量%になるように上記マスタチップFおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ80μmの幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを比較例5とした。
本フィルムは酸化チタン粒子の分散性が悪く、斑模様になり、不透明なフィルムが得られた。
【0066】
(比較例6)
スクリュー径45mmの二軸押出機に、平均粒径0.10μmのルチル型酸化チタン粒子100重量部に対してメチコン−ジメチコン共重合体からなる被覆層4重量部を被覆した酸化チタン粒子組成物10.0重量部とエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)[旭硝子製、アフロン(登録商標)COP88AXP]90.0重量部のブレンド原料を投入し、バレル温度300℃で溶融混練し、ガット状に押出し、水冷後カットして平均粒径0.10μm粒子のマスタチップGを得た。
【0067】
その後、マスタチップGを、積層被覆された酸化チタン粒子が0.2重量%になるようETFEチップと混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ80μmの幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを比較例6とした。
本フィルムは酸化チタン粒子の分散性が悪く、斑模様になり、不透明なフィルムが得られた。紫外線遮断能に優れる一方、可視光の透過性が優れなかった。
【0068】
(比較例7)
スクリュー径45mmの二軸押出機に、平均粒径0.005μmのルチル型酸化チタン粒子100重量部に対して酸化ケイ素からなる高密度被覆層7重量部、酸化アルミニウムからなる被覆層4重量部、メチコン−ジメチコン共重合体からなる被覆層4重量部をこの順に積層した酸化チタン粒子組成物10.0重量部とエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)[旭硝子製、アフロン(登録商標)COP88AXP]90.0重量部のブレンド原料を投入し、バレル温度300℃で溶融混練し、ガット状に押出し、水冷後カットして平均粒径0.005μm粒子のマスタチップHを得た。
【0069】
その後、酸化チタン粒子組成物が0.2重量%になるように上記マスタチップHおよびETFEチップを混合し、スクリュー式一軸押出機に投入、300℃で溶融押出し、続いて冷却ロールで冷却固化し、厚さ80μm、幅900mmのフッ素樹脂フィルムを得た。このフッ素樹脂フィルムを比較例7とした。
本フィルムは分散性、透明性に優れるが、耐光性試験後、白濁してしまった。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.01〜0.05μmのルチル型の酸化チタン粒子を含有するフッ素樹脂フィルムであって、該粒子は酸化チタンの表面に酸化ケイ素、酸化アルミニウム、オルガノポリシロキサンが順次被覆されており、該粒子を0.05〜2.0重量%含有していることを特徴とするフッ素樹脂フィルム。
【請求項2】
太陽電池用部材シートに用いられる請求項1記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項3】
農業用ハウスシートに用いられる請求項1記載のフッ素樹脂フィルム。
【請求項4】
建築用屋根材料に用いられる請求項1記載のフッ素樹脂フィルム。

【公開番号】特開2011−157492(P2011−157492A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20944(P2010−20944)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】