フラットパネルディスプレイ用ガラス基板及びその製造方法
【課題】セッター等の作業台の載置面上に載置した状態で位置ズレや姿勢の狂いが生じない形態のFPD用ガラス基板を提供する。
【解決手段】平均板厚が0.5〜3.0mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板1を、作業台2の平坦な載置面2a上に載置した状態で、載置面2aと対向するガラス面の一部領域または全領域が、一の辺1Aに沿う方向に山1xと谷1yとが交互に存在する波形の曲面部を有する形態になり、且つ、その曲面部の山1xと谷1yとが、一の辺1Aと直交する他の辺1Bに沿う方向にそれぞれ連続した形態になるようにする。
【解決手段】平均板厚が0.5〜3.0mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板1を、作業台2の平坦な載置面2a上に載置した状態で、載置面2aと対向するガラス面の一部領域または全領域が、一の辺1Aに沿う方向に山1xと谷1yとが交互に存在する波形の曲面部を有する形態になり、且つ、その曲面部の山1xと谷1yとが、一の辺1Aと直交する他の辺1Bに沿う方向にそれぞれ連続した形態になるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板及びその製造方法に係り、詳しくはフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を作業台上に載置する際の移載状態を良好にするための当該ガラス基板の形状の改良及びそれに適した当該ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(サーフェイスエミッションディスプレイを含む)、液晶ディスプレイ、及びエレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(以下、FPDともいう)は、FPD用ガラス基板を原板として製造された二枚のパネルガラスを対向させて製作される。その場合、原板となるFPD用ガラス基板(以下、単にガラス基板ともいう)の表面には、微細な電極や隔壁等の素子が形成されるが、その素子形成等に際しては、ガラス基板に対して熱処理を施すのが通例とされている。
【0003】
この熱処理は、セッターと称される作業台の平坦な載置面上にガラス基板を載置した状態で、加熱炉内に搬送するという手法により行われるのが一般的であるが、ガラス基板に対して適正な熱処理を施すには、セッターの載置面に対してガラス基板を適正な姿勢で正確に位置決めした状態を維持することが必要になる。このような要請は、セッターの載置面上にガラス基板を載置(移載)した時の当該ガラス基板の形状が不適切な場合に、載置面上を当該ガラス基板が移動することに依るところが大きい。
【0004】
この種の問題に対処すべく、例えば特許文献1によれば、セッターの載置面上にガラス基板を載置した状態で、当該ガラス基板の中央部が山(凸)となる形状、または中央部が谷(凹)となる形状とし、且つその反り量を0.003%以上で且つ0.050%以下になるように設定することが開示されている。詳述すると、同文献の図1及び図2には、ガラス基板が一方向に対してのみ円弧状に湾曲した形状を呈し且つ中央部が凸または凹となり、同文献の図3及び図4には、ガラス基板がお椀状に湾曲した形状を呈し且つ中央部が凸または凹となり、同文献の図5及び図6には、ガラス基板が基本的にお椀状であって断面S字状に湾曲した形状を呈し且つ中央部が基本的に凸または凹となることが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2008−7364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の図1〜図6に開示された載置状態下におけるガラス基板の形状は、何れもが適切でないことから、それらのガラス基板をセッターの載置面上に載置する時に、以下に詳述するように位置ズレや姿勢の狂いを招くという問題が生じ、特にガラス基板の大型化が推進されている現状に徴すれば、この種の問題が顕著となる。ここで、ガラス基板の姿勢の狂いとは、セッターの載置面にガラス基板が載置された状態で、載置面の4つの辺に対してガラス基板の4つの辺が本来ならば平行であるにも拘わらず傾斜していることを意味する(以下、同様)。
【0007】
この種の問題の発生原因は、ガラス基板をセッターの載置面上に載置した時点で、当該ガラス基板と載置面との間に空気層が形成されることに端を発している。その場合に、載置状態下でのガラス基板が、同文献の図1に示すような形状であると、セッターの載置面とガラス基板との接触状態は、当該ガラス基板の幅方向両端における二本のみの線接触となり、また同文献の図2に示すような形状であると、ガラス基板の幅方向中央部の一本のみの線接触となる。このような接触状態であると、載置直後にガラス基板が自重により平坦な形態に近づく変形の度合いが大きくなり、その変形時に上記の空気層にガラス基板から作用する押圧力が高くなることから、その空気層の圧力が瞬間的に上昇して、ガラス基板を浮上させようとする力が働くと考えられる。そして、このガラス基板を浮上させようとする力が、ガラス基板を載置直後の位置或いは姿勢に維持させようとする力に打ち勝つことにより、ガラス基板に滑りが生じて位置ズレや姿勢の狂いを来たすものと考えられる。特に、ガラス基板の厚さが薄く、重量が軽い場合には、ガラス基板の姿勢を維持する力が小さくなり、ガラス基板のサイズが大きくなる程、空気層の空気が抜けるのに時間を要するため、上記の位置ズレや姿勢の狂いの問題が顕著になる。
【0008】
また、同文献の図3に示すような形状であると、ガラス基板の周縁部が全周に亘って載置面に接触するものの、中央部の凸部に貯留した空気層が閉じ込められた状態になって空気の逃げる路が存在しなくなるため、載置直後のガラス基板の自重による大きな変形に伴ってその空気層の内圧が上昇する。そのため、ガラス基板を浮上させようとする力が大きくなり、これに起因して当該ガラス基板に滑りが生じて位置ズレや姿勢の狂いを来たすものと考えられる。一方、同文献の図4に示すような形状であると、載置時にはガラス基板の中央部のみが点接触して、その直後の自重による大きな変形によって空気層の圧力が上昇するため、この場合にもガラス基板を浮上させようとする力が大きくなり、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いが生じるものと考えられる。特に、この場合には、載置当初にガラス基板の中央部が点接触することから、その点接触部を支点として容易に水平旋回できることになり、姿勢の狂いが顕著になって現れ得る。
【0009】
更に、同文献の図5に示すような形状であっても、ガラス基板の中央部付近の凸部に貯留した空気層が閉じ込められた状態になるため、ガラス基板の自重による大きな変形によって空気層の内圧が上昇し、ガラス基板を浮上させようとする力が働き、その浮上させようとする力がガラス基板の一部に働いた場合であっても、当該ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いを招き得るものと考えられる。また、同文献の図6に示すような形状であれば、載置当初はガラス基板の中央部付近が点接触し、容易に水平旋回できる状態となり、これに加えて場合によってはガラス基板の一辺の付近が線接触するが、いずれにしても載置直後に自重による大きな変形が生じるため、空気層の圧力が上昇して、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いが生じるものと考えられる。
【0010】
以上の事項を勘案すれば、同文献の図1〜図6に示すセッターへの載置状態下におけるガラス基板の形状は、載置直後にガラス基板が自重により大きく変形して空気層の圧力を不当に上昇させる形状であるか、もしくは載置直後にガラス基板により空気層が閉じ込められた状態になるか、または載置当初にガラス基板が点接触して容易に水平旋回できる状態になるかの何れかであると言える。そして、このような形状であれば何れであっても、ガラス基板がセッターの載置面上で位置ズレ或いは姿勢の狂いを来たすことになる。
【0011】
一方、本発明者は、FPD用ガラス基板(素子形成等が行われる前のFPD用ガラス基板)の製造方法として、フロートバス内で溶融ガラスを帯状のガラス基板元材に成形する成形工程と、成形後のガラス基板元材を徐冷炉内で搬送しながら徐冷する徐冷工程とを有するフロート法を採用している。そして、上記の徐冷工程では、ガラス基板元材を幅方向全長に亘って下方から支持するローラにより搬送する搬送処理を行っている。
【0012】
このような製造方法により得られたガラス基板が、既述のようにセッターの載置面上に載置された場合に位置ズレや姿勢の狂いを来たさないようにするには、その製造方法に改良を加える必要があるが、具体的にどのような改良を加えるのが適切であるかについては、何ら対策が講じられていないのが実情である。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、セッター等の作業台の載置面上に載置した状態で位置ズレや姿勢の狂いが生じない形態のFPD用ガラス基板を提供すること、並びにそれに適した製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記技術的課題を解決するために創案された本発明は、平均板厚が0.5〜3mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであり、且つ作業台の平坦な載置面上に載置されて所定の処理が施されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板であって、前記載置面上に載置された状態における該載置面と対向するガラス面の一部領域または全領域が、一の辺に沿う方向に山と谷とが交互に存在する波形の曲面部を有する形態になり、且つ、該曲面部の山と谷とが、前記一の辺と直交する他の辺に沿う方向にそれぞれ連続した形態になることに特徴づけられる。
【0015】
このような構成によれば、セッター等の作業台の載置面上に載置された状態におけるガラス基板の表裏両ガラス面のうち、載置面と対向するガラス面の一部領域または全領域が曲面部を有しており、その曲面部の形態は、一の辺に沿う方向に山(凸)と谷(凹)とが交互に存在する波形を呈し、その山と谷とは、一の辺と直交する他の辺に沿う方向にそれぞれ連続している。したがって、載置直後にガラス基板と載置面とは複数箇所で線接触し且つその線接触する位置はガラス基板の一の辺に沿う方向の両端以外に必ず存在することになる。このような接触状態であれば、載置面に対してガラス基板が、前記一の辺に沿う方向については、両端以外の箇所と、それから離隔した少なくとも1箇所とで接触し得ることになると共に、前記他の辺に沿う方向については、全ての接触箇所が全長に亘って接触し得ることになる。これにより、前記一の辺に沿う方向については、各接触箇所の間隔が短くなり、前記他の辺に沿う方向については、各接触箇所の長さが最大限に長くなるため、ガラス基板の自重による変形を小さくすることが可能となる。その結果、載置直後にガラス基板が自重により変形しても、ガラス基板と載置面との間の空気層の圧力上昇が軽減され、ガラス基板を浮上させるのに必要な力が発生し難くなり、ガラス基板の滑り及びこれに起因する位置ズレや姿勢の狂いの発生確率が極めて小さくなる。しかも、ガラス基板の山と谷とは、前記他の辺に沿う方向に連続していることから、空気層が閉じ込められた状態にはならず、空気が自由に逃げることができるため、ガラス基板を浮上させようとする力がより一層発生し難くなり、上記の変形の縮小と相俟って、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いの発生が確実に抑止される。なお、ガラス基板は載置当初から複数箇所で線接触するため、点接触することによるガラス基板の水平旋回及びこれに起因する姿勢の狂いは生じ得なくなる。
【0016】
この場合、前記曲面部は、山と谷とが交互にそれぞれ2以上存在していることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、ガラス基板の前記一の辺に沿う方向の接触箇所を3箇所以上とすることができるため、ガラス基板の載置直後の変形をより一層小さくして、空気層の圧力上昇を的確に抑えることが可能となる。
【0018】
更に、前記載置面と対向するガラス面における前記一の辺に沿う方向の全長に亘るあらゆる任意の400mm区間に、前記曲面部が存在していることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、ガラス基板の前記一の辺に沿う方向の接触箇所を適切な数にして、当該ガラス基板の全域に亘って均等に上記の変形抑止効果及び空気層の圧力上昇抑止効果を得ることが可能となる。
【0020】
また、前記曲面部の隣り合う山と谷において、前記載置面から前記山の最上点までの離隔寸法と前記載置面から前記谷の最下点までの離隔寸法との差が、0.01〜0.15mmであり、前記載置面から前記曲面部の全ての山の最上点までの最大離隔寸法が0.15mm以下であることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、ガラス基板の山の高さ及び谷の深さを適切な範囲内に収めることにより、当該ガラス基板の全域に亘る変形抑止効果及び空気層の圧力上昇抑止効果を的確に確保できることに加えて、曲面部の波形状を良好な形態にできることから、フラットパネルディスプレイ用途としてのガラス基板自体の品位低下を招くおそれもなくなる。
【0022】
更に、前記一の辺の長さをLとし、前記載置面から前記ガラス面までの離隔寸法の最大値をhとした場合に、h/Lが0.003%未満であることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、曲面部の山の最大高さを適切化することにより、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いの抑止効果を確実に確保した上で、ガラス基板の品位低下をも阻止することができる。
【0024】
前記作業台の代表例としては、加熱炉内に搬送されるセッターを挙げることができる。この場合、セッターとしては、載置面がガラス基板よりも面積の大きな矩形をなす結晶化ガラスからなる直方体状物品であることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、ガラス基板への素子形成等を何ら支障なく円滑に行うことができ、生産効率の向上が図られる。
【0026】
一方、上記技術的課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、平均板厚が0.5〜3mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を製造すべく、フロートバス内で溶融ガラスを板状のガラス基板元材に成形する成形工程と、成形後のガラス基板元材を徐冷炉内で搬送しながら徐冷する徐冷工程とを有し、該徐冷工程にて前記ガラス基板元材を幅方向全長に亘って下方から支持するローラにより搬送する搬送処理が行われるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法であって、前記ローラの外周面における軸方向複数箇所に凸部を配設し、前記ガラス基板元材の下面に前記凸部を当接させた状態で該ガラス基板元材を前記ローラにより搬送することに特徴づけられる。
【0027】
このような方法によれば、徐冷炉内で適度に軟化した状態にあるガラス基板元材(帯状のガラス基板元材)の下面に、ローラの軸方向複数箇所に形成された凸部が当接した状態で、そのローラによりガラス基板元材が搬送されることになるので、ガラス基板元材の下面は、ローラの凸部に当接した面部分が山(凸)となり、その他の面部分は谷(凹)または谷の底に連続する平坦部となり、且つそれらの山及び谷等は搬送方向に連続した形態で形成される。このような形状のガラス基板元材を搬送方向の所定長さ位置で順次切断することにより、最終的には、既述の曲面部を有するガラス基板を得ることができる。
【0028】
この場合、前記ローラにおけるガラス基板元材の支持部位の軸方向全長に亘るあらゆる任意の500mm区間に、前記凸部(軸方向1箇所の凸部)が形成されていることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、最終的には、ガラス基板の下面における一の辺に沿う方向の全長に亘るあらゆる任意の500mm区間に山を形成することができる。なお、この場合のガラス基板の下面が、既述の載置面に対向するガラス面となる。
【0030】
また、前記凸部(軸方向複数箇所の全ての凸部)の前記外周面からの突出寸法が、0.5〜30mmであることが好ましい。
【0031】
このようにすれば、最終的に得られるガラス基板の下面に、適切な高さの複数の山を形成することができる。
【0032】
この場合、前記凸部(軸方向1箇所の凸部)は、前記ローラの全周に亘って点在する複数の突起であってもよく、また前記ローラの全周に亘って連続する環状突起であってもよい。
【0033】
すなわち、前記凸部は、最終的に得られるガラス基板の下面に、山及び谷が一方向に連続して形成することが可能なものであればよいが、そのためには、前記凸部を、上述の複数の突起または環状突起とすることが製作上の観点から好都合である。
【0034】
また、前記ローラは、徐冷炉内の上流側部位に配設されていることが好ましい。
【0035】
すなわち、徐冷炉内の上流側部位は、内部温度がガラス基板元材の下面に山及び谷等を形成する上で適切な温度、つまりガラス基板元材の軟化状態が好都合となる温度であることから、その部位にローラを配設しておけば、最終的に得られるガラス基板の下面が良好な曲面部を有することになる。
【0036】
更に、前記ローラは、搬送方向の複数箇所に配設されていることが好ましい。
【0037】
このようにすれば、軸方向の同一箇所に凸部が配設された複数のローラによって、ガラス基板元材の下面に山及び谷等が形成されるので、それらの山及び谷等が適正に搬送方向に連続した形態となる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように本発明に係るガラス基板によれば、セッター等の作業台の載置面上にガラス基板を載置した場合に、当該ガラス基板の一の辺に沿う方向については、各接触箇所の間隔が短くなり、これに直角な他の辺に沿う方向については、各接触箇所の長さが最大限に長くなるため、ガラス基板の自重による変形を小さくすることが可能となる。したがって、載置直後にガラス基板が自重により変形しても、ガラス基板と載置面との間の空気層の圧力上昇が軽減され、ガラス基板を浮上させるに必要な力が発生し難くなり、ガラス基板の滑り及びこれに起因する位置ズレや姿勢の狂いの発生確率が極めて小さくなる。加えて、ガラス基板を載置面上に載置した当初に点接触することは有り得ないため、ガラス基板の水平旋回による姿勢の狂いも生じ得なくなる。しかも、ガラス基板の山と谷とは、前記他の辺に沿う方向に連続していることから、空気層が閉じ込められた状態にはならず、空気が自由に逃げることができるため、ガラス基板を浮上させようとする力がより一層発生し難くなり、上記の変形の縮小と相俟って、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いの発生が確実に抑止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を図面を参照しつつ説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス基板1を誇張して示す概略斜視図である。同図に示すガラス基板1は、平均板厚が1.0〜3.0mm、一の辺(長辺)1Aの寸法が1000〜3000mm、これに直角な他の辺(短辺)1Bの寸法が800〜2000mmであって、矩形をなすプラズマディスプレイ用ガラス基板である。このガラス基板1は、作業台としてのセッター2の平坦な載置面2a上に載置された状態で、その載置面2aと対向するガラス面(下面)の全領域が、長辺1Aに沿う方向に山1xと谷1yとが交互に存在する波形状となり、且つ短辺1Bに沿う方向に山1xと谷1yとがそれぞれ全長に亘って連続した形態となっている。具体的には、ガラス基板1の下面は、長辺1Aに沿う方向に山1xと谷1yとがそれぞれ2または3以上(好ましくは5または6以上)連続し、且つ4または6以上(好ましくは10または12以上)の変曲点を有して滑らかに湾曲している(図2参照)。この場合、それらの谷1yのうちの全部または一部としての複数の谷1yの底端部は、載置面2aに接触しており、したがってガラス基板1は、2箇所または3箇所以上(好ましくは5箇所または6箇所以上)で載置面2aに線接触している。なお、それらの線接触箇所は、例えば50〜200mmのピッチとされていることが好ましい。
【0041】
この場合、図3に示すように、ガラス基板1の下面は、長辺1Aに沿う方向の全長に亘るあらゆる任意の400mm区間A1,A2,A3…に、山1xと谷1yとがそれぞれ1または2以上存在している。換言すれば、ガラス基板1の下面の長辺1Aに沿う方向の全ての長さ領域中、何れの400mm区間をとっても、その区間内に、山1xと谷1yとが1または2以上存在している。また、任意の隣り合う山1xと谷1yにおいて、載置面2aから前記山1xの最上点までの離隔寸法B1、B3と載置面2aから前記谷1yの最下点までの離隔寸法B2については、それらの差が0.01〜0.15mmとなっていると共に、載置面2aから全ての山1xの最上点までの最大離隔寸法は0.15mm以下となっている。更に、ガラス基板1の長辺の寸法Lと、載置面2aからガラス基板1の下面までの離隔寸法の最大値hとについては、h/Lが0.003%未満となっている。
【0042】
ガラス基板1の下面がセッター2の載置面2a上に載置された状態で、上記のような形態となっていれば、その長辺1Aに沿う方向については、谷1yの存在する各箇所つまりガラス基板1と載置面2aとの各接触箇所の間隔が短くなると共に、これに直角な短辺1Bに沿う方向については、上記各接触箇所の長さが最大限に長くなるため、ガラス基板1の自重による変形を小さくすることが可能となる。したがって、セッター2への載置直後にガラス基板1が自重により変形しても、ガラス基板1と載置面2aとの間に介在する空気層は、ガラス基板1の変形が小さいために過度に圧縮されることはない。そのため、空気層には、ガラス基板1を浮上させるに必要な力が発生し難くなり、ガラス基板1の載置面2a上での滑り及びこれに起因する位置ズレや姿勢の狂いの発生確率が極めて小さくなる。
【0043】
しかも、ガラス基板1の下面の山1xと谷1yとは、短辺1Bに沿う方向に全長に亘って連続していることから、上記の空気層が閉じ込められた状態にはならず、空気が自由に逃げることができるため、ガラス基板1を浮上させようとする力がより一層発生し難くなり、上述のガラス基板1の自重による変形の抑制と相俟って、ガラス基板1の載置面2a上での位置ズレや姿勢の狂いの発生が確実に抑止される。また、ガラス基板1がこのような形態であると、ガラス基板1を載置面2a上に載置した当初に点接触することは有り得ないため、ガラス基板1が水平旋回することによる姿勢の狂いが生じる余地はない。
【0044】
なお、図3に示すガラス基板1の形態は、各変曲点を境として山1xと谷1yとに区分できるものであるが、変曲点が明確に認識できないような場合であっても、山1xと谷1yとを把握できるものであって且つ谷1yが載置面2aに線接触するものであれば、同様の作用効果が得られる。
【0045】
そして、以上のような形態でセッター2の載置面2a上に載置されたガラス基板1は、素子形成等のために加熱炉に搬送されて熱処理を受けるが、その間において、ガラス基板1はセッター2上の正確な位置に正確な姿勢で載置された状態を維持できるため、適正な熱処理を受け得ることになる。なお、ガラス基板1を載置させる作業台は、上記のセッター2以外のものであってもよく、またその作業台は可動式と非可動式とを問わず、更にガラス基板1に対して施される処理も熱処理以外に、冷却処理や露光処理等の各種処理が含まれる。
【0046】
図4は、上記のガラス基板1を製造するために適した製造方法の実施状況を例示するものである。すなわち、上記のガラス基板1を製造する方法は、所謂フロート法を利用したものであって、フロートバス内で溶融ガラスを帯状のガラス基板元材10に成形する成形工程と、成形後のガラス基板元材を徐冷炉内で搬送しながら徐冷する徐冷工程とを有している。そして、同図に示すように、徐冷工程においては、徐冷炉内の上流側部位に、帯状のガラス基板元材10を幅方向全長に亘って下方から支持するローラ11が、搬送方向に所定間隔を隔てて複数配設されている。
【0047】
上記の各ローラ11の外周面11aには、軸方向の複数箇所(好ましくは2箇所または3箇所以上:図例では7箇所)に、例えば50〜200mmのピッチで凸部12が形成されている。なお、この凸部12は、ローラ11におけるガラス基板元材10の支持部位の軸方向全長に亘るあらゆる任意の400mm区間に、少なくとも1つ形成されていることが好ましい。そして、これらの凸部12は、ローラ11の全周に亘って点在する多数の突起12xからなるものであり、これらの突起12xの外周面11aからの突出寸法は、0.5〜30mm、より好ましくは下限値が3mm、上限値が10mmとされている。したがって、各ローラ11は、ガラス基板元材10の下面に凸部12を当接させながらそのガラス基板元材10を下流側に搬送する。その場合、ガラス基板元材10の下面には、凸部12に対応する位置に山10xが形成され、その他の部位に谷10yが形成されることになる。そして、この形態のガラス基板元材10を、搬送方向の所定長さ位置で順次切断することにより、最終的には、図1に示すようなガラス基板1が得られる。
【0048】
この場合、ガラス基板元材10の下面には、硫酸塩の膜を形成するためにSO2ガスが噴霧されるようになっており、その噴霧ノズルは、ローラ11の周辺においてローラ11の軸と平行に延びる軸方向の複数箇所に配列されている。それらの噴霧ノズルの配列ピッチを、ガラス基板元材10の山10xの形成箇所に対応させれば、ローラ11の軸方向における噴霧ノズルの配列箇所に対応する部位に、硫酸塩が堆積して上記の全周に亘って点在する多数の突起12xが形成される。したがって、この実施形態では、そのような現象を有効利用して、ガラス基板元材10に山10xと谷10yとを形成していることになる。
【0049】
ここで、ローラ11の凸部12の形状は、上記のように全周に亘って点在する多数の突起12xからなるもの以外に、例えば図5に示すように、ローラ11の軸方向複数箇所に円環状突起13xを一体形成または別体として固定するようにしてもよい。この場合にも、円環状突起13xの外周面11aからの突出寸法は、上記と同様とされる。
【0050】
なお、本発明に係るガラス基板1は、図1〜図3に例示する形態に限られるものではなく、種々のバリエーションが可能である。すなわち、図6に示すガラス基板1の下面は、山1xと谷1yとをそれぞれ1つ有し、載置面2aとの線接触箇所が2箇所に存在している場合を例示している。また、図7に示すガラス基板1の下面は、山1xと谷1yとをそれぞれ2つ有し、載置面2aとの線接触箇所が3箇所に存在している場合を例示している。
【0051】
加えて、図8に示すガラス基板1の下面は、山1xと谷1yとのうちの谷1yについては平坦面部分1zを有している場合を例示し、また図9に示すガラス基板1の下面は、山1xと谷1yとのうちの山1xについて平坦面部分1zを有している場合を例示している。更に、図10に示すように、ガラス基板1の下面における中央部に谷とも山とも把握できないような領域1wが存在する場合であっても、ガラス基板1の一部領域(図例では両端の領域)に2つの曲面部として山1xと谷1yとが交互に存在している部位が存在していればよい。また、図11に示すように、1つの山1x及び1つの谷1yがそれぞれ複数の変曲点R(微分値の正負が変化する点)を有している場合でも、これらは1つの山1x及び1つの谷1yと認められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態の要部を示す概略縦断正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態の要部を示す概略縦断正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法の実施状況を示す概略斜視図である。
【図5】上記製造方法で使用するローラの変形例を示す単体斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略斜視図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略正面図である。
【図9】本発明の第五実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略正面図である。
【図10】本発明の第六実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略正面図である。
【図11】本発明の第七実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態の要部を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ガラス基板
1A 一の辺(長辺)
1B 他の辺(短辺)
1x 山(凸)
1y 谷(凹)
2 作業台(セッター)
2a 載置面
10 ガラス基板元材
11 ローラ
11a ローラの外周面
12 ローラの凸部
12x 複数の突起
13x 環状突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板及びその製造方法に係り、詳しくはフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を作業台上に載置する際の移載状態を良好にするための当該ガラス基板の形状の改良及びそれに適した当該ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(サーフェイスエミッションディスプレイを含む)、液晶ディスプレイ、及びエレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(以下、FPDともいう)は、FPD用ガラス基板を原板として製造された二枚のパネルガラスを対向させて製作される。その場合、原板となるFPD用ガラス基板(以下、単にガラス基板ともいう)の表面には、微細な電極や隔壁等の素子が形成されるが、その素子形成等に際しては、ガラス基板に対して熱処理を施すのが通例とされている。
【0003】
この熱処理は、セッターと称される作業台の平坦な載置面上にガラス基板を載置した状態で、加熱炉内に搬送するという手法により行われるのが一般的であるが、ガラス基板に対して適正な熱処理を施すには、セッターの載置面に対してガラス基板を適正な姿勢で正確に位置決めした状態を維持することが必要になる。このような要請は、セッターの載置面上にガラス基板を載置(移載)した時の当該ガラス基板の形状が不適切な場合に、載置面上を当該ガラス基板が移動することに依るところが大きい。
【0004】
この種の問題に対処すべく、例えば特許文献1によれば、セッターの載置面上にガラス基板を載置した状態で、当該ガラス基板の中央部が山(凸)となる形状、または中央部が谷(凹)となる形状とし、且つその反り量を0.003%以上で且つ0.050%以下になるように設定することが開示されている。詳述すると、同文献の図1及び図2には、ガラス基板が一方向に対してのみ円弧状に湾曲した形状を呈し且つ中央部が凸または凹となり、同文献の図3及び図4には、ガラス基板がお椀状に湾曲した形状を呈し且つ中央部が凸または凹となり、同文献の図5及び図6には、ガラス基板が基本的にお椀状であって断面S字状に湾曲した形状を呈し且つ中央部が基本的に凸または凹となることが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2008−7364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の図1〜図6に開示された載置状態下におけるガラス基板の形状は、何れもが適切でないことから、それらのガラス基板をセッターの載置面上に載置する時に、以下に詳述するように位置ズレや姿勢の狂いを招くという問題が生じ、特にガラス基板の大型化が推進されている現状に徴すれば、この種の問題が顕著となる。ここで、ガラス基板の姿勢の狂いとは、セッターの載置面にガラス基板が載置された状態で、載置面の4つの辺に対してガラス基板の4つの辺が本来ならば平行であるにも拘わらず傾斜していることを意味する(以下、同様)。
【0007】
この種の問題の発生原因は、ガラス基板をセッターの載置面上に載置した時点で、当該ガラス基板と載置面との間に空気層が形成されることに端を発している。その場合に、載置状態下でのガラス基板が、同文献の図1に示すような形状であると、セッターの載置面とガラス基板との接触状態は、当該ガラス基板の幅方向両端における二本のみの線接触となり、また同文献の図2に示すような形状であると、ガラス基板の幅方向中央部の一本のみの線接触となる。このような接触状態であると、載置直後にガラス基板が自重により平坦な形態に近づく変形の度合いが大きくなり、その変形時に上記の空気層にガラス基板から作用する押圧力が高くなることから、その空気層の圧力が瞬間的に上昇して、ガラス基板を浮上させようとする力が働くと考えられる。そして、このガラス基板を浮上させようとする力が、ガラス基板を載置直後の位置或いは姿勢に維持させようとする力に打ち勝つことにより、ガラス基板に滑りが生じて位置ズレや姿勢の狂いを来たすものと考えられる。特に、ガラス基板の厚さが薄く、重量が軽い場合には、ガラス基板の姿勢を維持する力が小さくなり、ガラス基板のサイズが大きくなる程、空気層の空気が抜けるのに時間を要するため、上記の位置ズレや姿勢の狂いの問題が顕著になる。
【0008】
また、同文献の図3に示すような形状であると、ガラス基板の周縁部が全周に亘って載置面に接触するものの、中央部の凸部に貯留した空気層が閉じ込められた状態になって空気の逃げる路が存在しなくなるため、載置直後のガラス基板の自重による大きな変形に伴ってその空気層の内圧が上昇する。そのため、ガラス基板を浮上させようとする力が大きくなり、これに起因して当該ガラス基板に滑りが生じて位置ズレや姿勢の狂いを来たすものと考えられる。一方、同文献の図4に示すような形状であると、載置時にはガラス基板の中央部のみが点接触して、その直後の自重による大きな変形によって空気層の圧力が上昇するため、この場合にもガラス基板を浮上させようとする力が大きくなり、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いが生じるものと考えられる。特に、この場合には、載置当初にガラス基板の中央部が点接触することから、その点接触部を支点として容易に水平旋回できることになり、姿勢の狂いが顕著になって現れ得る。
【0009】
更に、同文献の図5に示すような形状であっても、ガラス基板の中央部付近の凸部に貯留した空気層が閉じ込められた状態になるため、ガラス基板の自重による大きな変形によって空気層の内圧が上昇し、ガラス基板を浮上させようとする力が働き、その浮上させようとする力がガラス基板の一部に働いた場合であっても、当該ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いを招き得るものと考えられる。また、同文献の図6に示すような形状であれば、載置当初はガラス基板の中央部付近が点接触し、容易に水平旋回できる状態となり、これに加えて場合によってはガラス基板の一辺の付近が線接触するが、いずれにしても載置直後に自重による大きな変形が生じるため、空気層の圧力が上昇して、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いが生じるものと考えられる。
【0010】
以上の事項を勘案すれば、同文献の図1〜図6に示すセッターへの載置状態下におけるガラス基板の形状は、載置直後にガラス基板が自重により大きく変形して空気層の圧力を不当に上昇させる形状であるか、もしくは載置直後にガラス基板により空気層が閉じ込められた状態になるか、または載置当初にガラス基板が点接触して容易に水平旋回できる状態になるかの何れかであると言える。そして、このような形状であれば何れであっても、ガラス基板がセッターの載置面上で位置ズレ或いは姿勢の狂いを来たすことになる。
【0011】
一方、本発明者は、FPD用ガラス基板(素子形成等が行われる前のFPD用ガラス基板)の製造方法として、フロートバス内で溶融ガラスを帯状のガラス基板元材に成形する成形工程と、成形後のガラス基板元材を徐冷炉内で搬送しながら徐冷する徐冷工程とを有するフロート法を採用している。そして、上記の徐冷工程では、ガラス基板元材を幅方向全長に亘って下方から支持するローラにより搬送する搬送処理を行っている。
【0012】
このような製造方法により得られたガラス基板が、既述のようにセッターの載置面上に載置された場合に位置ズレや姿勢の狂いを来たさないようにするには、その製造方法に改良を加える必要があるが、具体的にどのような改良を加えるのが適切であるかについては、何ら対策が講じられていないのが実情である。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、セッター等の作業台の載置面上に載置した状態で位置ズレや姿勢の狂いが生じない形態のFPD用ガラス基板を提供すること、並びにそれに適した製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記技術的課題を解決するために創案された本発明は、平均板厚が0.5〜3mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであり、且つ作業台の平坦な載置面上に載置されて所定の処理が施されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板であって、前記載置面上に載置された状態における該載置面と対向するガラス面の一部領域または全領域が、一の辺に沿う方向に山と谷とが交互に存在する波形の曲面部を有する形態になり、且つ、該曲面部の山と谷とが、前記一の辺と直交する他の辺に沿う方向にそれぞれ連続した形態になることに特徴づけられる。
【0015】
このような構成によれば、セッター等の作業台の載置面上に載置された状態におけるガラス基板の表裏両ガラス面のうち、載置面と対向するガラス面の一部領域または全領域が曲面部を有しており、その曲面部の形態は、一の辺に沿う方向に山(凸)と谷(凹)とが交互に存在する波形を呈し、その山と谷とは、一の辺と直交する他の辺に沿う方向にそれぞれ連続している。したがって、載置直後にガラス基板と載置面とは複数箇所で線接触し且つその線接触する位置はガラス基板の一の辺に沿う方向の両端以外に必ず存在することになる。このような接触状態であれば、載置面に対してガラス基板が、前記一の辺に沿う方向については、両端以外の箇所と、それから離隔した少なくとも1箇所とで接触し得ることになると共に、前記他の辺に沿う方向については、全ての接触箇所が全長に亘って接触し得ることになる。これにより、前記一の辺に沿う方向については、各接触箇所の間隔が短くなり、前記他の辺に沿う方向については、各接触箇所の長さが最大限に長くなるため、ガラス基板の自重による変形を小さくすることが可能となる。その結果、載置直後にガラス基板が自重により変形しても、ガラス基板と載置面との間の空気層の圧力上昇が軽減され、ガラス基板を浮上させるのに必要な力が発生し難くなり、ガラス基板の滑り及びこれに起因する位置ズレや姿勢の狂いの発生確率が極めて小さくなる。しかも、ガラス基板の山と谷とは、前記他の辺に沿う方向に連続していることから、空気層が閉じ込められた状態にはならず、空気が自由に逃げることができるため、ガラス基板を浮上させようとする力がより一層発生し難くなり、上記の変形の縮小と相俟って、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いの発生が確実に抑止される。なお、ガラス基板は載置当初から複数箇所で線接触するため、点接触することによるガラス基板の水平旋回及びこれに起因する姿勢の狂いは生じ得なくなる。
【0016】
この場合、前記曲面部は、山と谷とが交互にそれぞれ2以上存在していることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、ガラス基板の前記一の辺に沿う方向の接触箇所を3箇所以上とすることができるため、ガラス基板の載置直後の変形をより一層小さくして、空気層の圧力上昇を的確に抑えることが可能となる。
【0018】
更に、前記載置面と対向するガラス面における前記一の辺に沿う方向の全長に亘るあらゆる任意の400mm区間に、前記曲面部が存在していることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、ガラス基板の前記一の辺に沿う方向の接触箇所を適切な数にして、当該ガラス基板の全域に亘って均等に上記の変形抑止効果及び空気層の圧力上昇抑止効果を得ることが可能となる。
【0020】
また、前記曲面部の隣り合う山と谷において、前記載置面から前記山の最上点までの離隔寸法と前記載置面から前記谷の最下点までの離隔寸法との差が、0.01〜0.15mmであり、前記載置面から前記曲面部の全ての山の最上点までの最大離隔寸法が0.15mm以下であることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、ガラス基板の山の高さ及び谷の深さを適切な範囲内に収めることにより、当該ガラス基板の全域に亘る変形抑止効果及び空気層の圧力上昇抑止効果を的確に確保できることに加えて、曲面部の波形状を良好な形態にできることから、フラットパネルディスプレイ用途としてのガラス基板自体の品位低下を招くおそれもなくなる。
【0022】
更に、前記一の辺の長さをLとし、前記載置面から前記ガラス面までの離隔寸法の最大値をhとした場合に、h/Lが0.003%未満であることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、曲面部の山の最大高さを適切化することにより、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いの抑止効果を確実に確保した上で、ガラス基板の品位低下をも阻止することができる。
【0024】
前記作業台の代表例としては、加熱炉内に搬送されるセッターを挙げることができる。この場合、セッターとしては、載置面がガラス基板よりも面積の大きな矩形をなす結晶化ガラスからなる直方体状物品であることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、ガラス基板への素子形成等を何ら支障なく円滑に行うことができ、生産効率の向上が図られる。
【0026】
一方、上記技術的課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、平均板厚が0.5〜3mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を製造すべく、フロートバス内で溶融ガラスを板状のガラス基板元材に成形する成形工程と、成形後のガラス基板元材を徐冷炉内で搬送しながら徐冷する徐冷工程とを有し、該徐冷工程にて前記ガラス基板元材を幅方向全長に亘って下方から支持するローラにより搬送する搬送処理が行われるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法であって、前記ローラの外周面における軸方向複数箇所に凸部を配設し、前記ガラス基板元材の下面に前記凸部を当接させた状態で該ガラス基板元材を前記ローラにより搬送することに特徴づけられる。
【0027】
このような方法によれば、徐冷炉内で適度に軟化した状態にあるガラス基板元材(帯状のガラス基板元材)の下面に、ローラの軸方向複数箇所に形成された凸部が当接した状態で、そのローラによりガラス基板元材が搬送されることになるので、ガラス基板元材の下面は、ローラの凸部に当接した面部分が山(凸)となり、その他の面部分は谷(凹)または谷の底に連続する平坦部となり、且つそれらの山及び谷等は搬送方向に連続した形態で形成される。このような形状のガラス基板元材を搬送方向の所定長さ位置で順次切断することにより、最終的には、既述の曲面部を有するガラス基板を得ることができる。
【0028】
この場合、前記ローラにおけるガラス基板元材の支持部位の軸方向全長に亘るあらゆる任意の500mm区間に、前記凸部(軸方向1箇所の凸部)が形成されていることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、最終的には、ガラス基板の下面における一の辺に沿う方向の全長に亘るあらゆる任意の500mm区間に山を形成することができる。なお、この場合のガラス基板の下面が、既述の載置面に対向するガラス面となる。
【0030】
また、前記凸部(軸方向複数箇所の全ての凸部)の前記外周面からの突出寸法が、0.5〜30mmであることが好ましい。
【0031】
このようにすれば、最終的に得られるガラス基板の下面に、適切な高さの複数の山を形成することができる。
【0032】
この場合、前記凸部(軸方向1箇所の凸部)は、前記ローラの全周に亘って点在する複数の突起であってもよく、また前記ローラの全周に亘って連続する環状突起であってもよい。
【0033】
すなわち、前記凸部は、最終的に得られるガラス基板の下面に、山及び谷が一方向に連続して形成することが可能なものであればよいが、そのためには、前記凸部を、上述の複数の突起または環状突起とすることが製作上の観点から好都合である。
【0034】
また、前記ローラは、徐冷炉内の上流側部位に配設されていることが好ましい。
【0035】
すなわち、徐冷炉内の上流側部位は、内部温度がガラス基板元材の下面に山及び谷等を形成する上で適切な温度、つまりガラス基板元材の軟化状態が好都合となる温度であることから、その部位にローラを配設しておけば、最終的に得られるガラス基板の下面が良好な曲面部を有することになる。
【0036】
更に、前記ローラは、搬送方向の複数箇所に配設されていることが好ましい。
【0037】
このようにすれば、軸方向の同一箇所に凸部が配設された複数のローラによって、ガラス基板元材の下面に山及び谷等が形成されるので、それらの山及び谷等が適正に搬送方向に連続した形態となる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように本発明に係るガラス基板によれば、セッター等の作業台の載置面上にガラス基板を載置した場合に、当該ガラス基板の一の辺に沿う方向については、各接触箇所の間隔が短くなり、これに直角な他の辺に沿う方向については、各接触箇所の長さが最大限に長くなるため、ガラス基板の自重による変形を小さくすることが可能となる。したがって、載置直後にガラス基板が自重により変形しても、ガラス基板と載置面との間の空気層の圧力上昇が軽減され、ガラス基板を浮上させるに必要な力が発生し難くなり、ガラス基板の滑り及びこれに起因する位置ズレや姿勢の狂いの発生確率が極めて小さくなる。加えて、ガラス基板を載置面上に載置した当初に点接触することは有り得ないため、ガラス基板の水平旋回による姿勢の狂いも生じ得なくなる。しかも、ガラス基板の山と谷とは、前記他の辺に沿う方向に連続していることから、空気層が閉じ込められた状態にはならず、空気が自由に逃げることができるため、ガラス基板を浮上させようとする力がより一層発生し難くなり、上記の変形の縮小と相俟って、ガラス基板の位置ズレや姿勢の狂いの発生が確実に抑止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を図面を参照しつつ説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス基板1を誇張して示す概略斜視図である。同図に示すガラス基板1は、平均板厚が1.0〜3.0mm、一の辺(長辺)1Aの寸法が1000〜3000mm、これに直角な他の辺(短辺)1Bの寸法が800〜2000mmであって、矩形をなすプラズマディスプレイ用ガラス基板である。このガラス基板1は、作業台としてのセッター2の平坦な載置面2a上に載置された状態で、その載置面2aと対向するガラス面(下面)の全領域が、長辺1Aに沿う方向に山1xと谷1yとが交互に存在する波形状となり、且つ短辺1Bに沿う方向に山1xと谷1yとがそれぞれ全長に亘って連続した形態となっている。具体的には、ガラス基板1の下面は、長辺1Aに沿う方向に山1xと谷1yとがそれぞれ2または3以上(好ましくは5または6以上)連続し、且つ4または6以上(好ましくは10または12以上)の変曲点を有して滑らかに湾曲している(図2参照)。この場合、それらの谷1yのうちの全部または一部としての複数の谷1yの底端部は、載置面2aに接触しており、したがってガラス基板1は、2箇所または3箇所以上(好ましくは5箇所または6箇所以上)で載置面2aに線接触している。なお、それらの線接触箇所は、例えば50〜200mmのピッチとされていることが好ましい。
【0041】
この場合、図3に示すように、ガラス基板1の下面は、長辺1Aに沿う方向の全長に亘るあらゆる任意の400mm区間A1,A2,A3…に、山1xと谷1yとがそれぞれ1または2以上存在している。換言すれば、ガラス基板1の下面の長辺1Aに沿う方向の全ての長さ領域中、何れの400mm区間をとっても、その区間内に、山1xと谷1yとが1または2以上存在している。また、任意の隣り合う山1xと谷1yにおいて、載置面2aから前記山1xの最上点までの離隔寸法B1、B3と載置面2aから前記谷1yの最下点までの離隔寸法B2については、それらの差が0.01〜0.15mmとなっていると共に、載置面2aから全ての山1xの最上点までの最大離隔寸法は0.15mm以下となっている。更に、ガラス基板1の長辺の寸法Lと、載置面2aからガラス基板1の下面までの離隔寸法の最大値hとについては、h/Lが0.003%未満となっている。
【0042】
ガラス基板1の下面がセッター2の載置面2a上に載置された状態で、上記のような形態となっていれば、その長辺1Aに沿う方向については、谷1yの存在する各箇所つまりガラス基板1と載置面2aとの各接触箇所の間隔が短くなると共に、これに直角な短辺1Bに沿う方向については、上記各接触箇所の長さが最大限に長くなるため、ガラス基板1の自重による変形を小さくすることが可能となる。したがって、セッター2への載置直後にガラス基板1が自重により変形しても、ガラス基板1と載置面2aとの間に介在する空気層は、ガラス基板1の変形が小さいために過度に圧縮されることはない。そのため、空気層には、ガラス基板1を浮上させるに必要な力が発生し難くなり、ガラス基板1の載置面2a上での滑り及びこれに起因する位置ズレや姿勢の狂いの発生確率が極めて小さくなる。
【0043】
しかも、ガラス基板1の下面の山1xと谷1yとは、短辺1Bに沿う方向に全長に亘って連続していることから、上記の空気層が閉じ込められた状態にはならず、空気が自由に逃げることができるため、ガラス基板1を浮上させようとする力がより一層発生し難くなり、上述のガラス基板1の自重による変形の抑制と相俟って、ガラス基板1の載置面2a上での位置ズレや姿勢の狂いの発生が確実に抑止される。また、ガラス基板1がこのような形態であると、ガラス基板1を載置面2a上に載置した当初に点接触することは有り得ないため、ガラス基板1が水平旋回することによる姿勢の狂いが生じる余地はない。
【0044】
なお、図3に示すガラス基板1の形態は、各変曲点を境として山1xと谷1yとに区分できるものであるが、変曲点が明確に認識できないような場合であっても、山1xと谷1yとを把握できるものであって且つ谷1yが載置面2aに線接触するものであれば、同様の作用効果が得られる。
【0045】
そして、以上のような形態でセッター2の載置面2a上に載置されたガラス基板1は、素子形成等のために加熱炉に搬送されて熱処理を受けるが、その間において、ガラス基板1はセッター2上の正確な位置に正確な姿勢で載置された状態を維持できるため、適正な熱処理を受け得ることになる。なお、ガラス基板1を載置させる作業台は、上記のセッター2以外のものであってもよく、またその作業台は可動式と非可動式とを問わず、更にガラス基板1に対して施される処理も熱処理以外に、冷却処理や露光処理等の各種処理が含まれる。
【0046】
図4は、上記のガラス基板1を製造するために適した製造方法の実施状況を例示するものである。すなわち、上記のガラス基板1を製造する方法は、所謂フロート法を利用したものであって、フロートバス内で溶融ガラスを帯状のガラス基板元材10に成形する成形工程と、成形後のガラス基板元材を徐冷炉内で搬送しながら徐冷する徐冷工程とを有している。そして、同図に示すように、徐冷工程においては、徐冷炉内の上流側部位に、帯状のガラス基板元材10を幅方向全長に亘って下方から支持するローラ11が、搬送方向に所定間隔を隔てて複数配設されている。
【0047】
上記の各ローラ11の外周面11aには、軸方向の複数箇所(好ましくは2箇所または3箇所以上:図例では7箇所)に、例えば50〜200mmのピッチで凸部12が形成されている。なお、この凸部12は、ローラ11におけるガラス基板元材10の支持部位の軸方向全長に亘るあらゆる任意の400mm区間に、少なくとも1つ形成されていることが好ましい。そして、これらの凸部12は、ローラ11の全周に亘って点在する多数の突起12xからなるものであり、これらの突起12xの外周面11aからの突出寸法は、0.5〜30mm、より好ましくは下限値が3mm、上限値が10mmとされている。したがって、各ローラ11は、ガラス基板元材10の下面に凸部12を当接させながらそのガラス基板元材10を下流側に搬送する。その場合、ガラス基板元材10の下面には、凸部12に対応する位置に山10xが形成され、その他の部位に谷10yが形成されることになる。そして、この形態のガラス基板元材10を、搬送方向の所定長さ位置で順次切断することにより、最終的には、図1に示すようなガラス基板1が得られる。
【0048】
この場合、ガラス基板元材10の下面には、硫酸塩の膜を形成するためにSO2ガスが噴霧されるようになっており、その噴霧ノズルは、ローラ11の周辺においてローラ11の軸と平行に延びる軸方向の複数箇所に配列されている。それらの噴霧ノズルの配列ピッチを、ガラス基板元材10の山10xの形成箇所に対応させれば、ローラ11の軸方向における噴霧ノズルの配列箇所に対応する部位に、硫酸塩が堆積して上記の全周に亘って点在する多数の突起12xが形成される。したがって、この実施形態では、そのような現象を有効利用して、ガラス基板元材10に山10xと谷10yとを形成していることになる。
【0049】
ここで、ローラ11の凸部12の形状は、上記のように全周に亘って点在する多数の突起12xからなるもの以外に、例えば図5に示すように、ローラ11の軸方向複数箇所に円環状突起13xを一体形成または別体として固定するようにしてもよい。この場合にも、円環状突起13xの外周面11aからの突出寸法は、上記と同様とされる。
【0050】
なお、本発明に係るガラス基板1は、図1〜図3に例示する形態に限られるものではなく、種々のバリエーションが可能である。すなわち、図6に示すガラス基板1の下面は、山1xと谷1yとをそれぞれ1つ有し、載置面2aとの線接触箇所が2箇所に存在している場合を例示している。また、図7に示すガラス基板1の下面は、山1xと谷1yとをそれぞれ2つ有し、載置面2aとの線接触箇所が3箇所に存在している場合を例示している。
【0051】
加えて、図8に示すガラス基板1の下面は、山1xと谷1yとのうちの谷1yについては平坦面部分1zを有している場合を例示し、また図9に示すガラス基板1の下面は、山1xと谷1yとのうちの山1xについて平坦面部分1zを有している場合を例示している。更に、図10に示すように、ガラス基板1の下面における中央部に谷とも山とも把握できないような領域1wが存在する場合であっても、ガラス基板1の一部領域(図例では両端の領域)に2つの曲面部として山1xと谷1yとが交互に存在している部位が存在していればよい。また、図11に示すように、1つの山1x及び1つの谷1yがそれぞれ複数の変曲点R(微分値の正負が変化する点)を有している場合でも、これらは1つの山1x及び1つの谷1yと認められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態の要部を示す概略縦断正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態の要部を示す概略縦断正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法の実施状況を示す概略斜視図である。
【図5】上記製造方法で使用するローラの変形例を示す単体斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略斜視図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略正面図である。
【図9】本発明の第五実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略正面図である。
【図10】本発明の第六実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態を示す概略正面図である。
【図11】本発明の第七実施形態に係るフラットパネルディスプレイ用ガラス基板が作業台の載置面上に載置された状態の要部を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ガラス基板
1A 一の辺(長辺)
1B 他の辺(短辺)
1x 山(凸)
1y 谷(凹)
2 作業台(セッター)
2a 載置面
10 ガラス基板元材
11 ローラ
11a ローラの外周面
12 ローラの凸部
12x 複数の突起
13x 環状突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均板厚が0.5〜3.0mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであり、且つ作業台の平坦な載置面上に載置されて所定の処理が施されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板であって、
前記載置面上に載置された状態における該載置面と対向するガラス面の一部領域または全領域が、一の辺に沿う方向に山と谷とが交互に存在する波形の曲面部を有する形態になり、且つ、該曲面部の山と谷とが、前記一の辺と直交する他の辺に沿う方向にそれぞれ連続した形態になることを特徴とするフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項2】
前記曲面部は、山と谷とが交互にそれぞれ2以上存在していることを特徴とする請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項3】
前記ガラス面における前記一の辺に沿う方向の全長に亘るあらゆる任意の400mm区間に、前記曲面部が存在していることを特徴とする請求項1または2に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項4】
前記曲面部の隣り合う山と谷において、前記載置面から前記山の最上点までの離隔寸法と前記載置面から前記谷の最下点までの離隔寸法との差が、0.01〜0.15mmであり、前記載置面から前記曲面部の全ての山の最上点までの最大離隔寸法が0.15mm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項5】
前記一の辺の長さをLとし、前記載置面から前記ガラス面までの離隔寸法の最大値をhとした場合に、h/Lが0.003%未満であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項6】
前記作業台が、加熱炉内に搬送されるセッターであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項7】
平均板厚が0.5〜3.0mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を製造すべく、フロートバス内で溶融ガラスを板状のガラス基板元材に成形する成形工程と、成形後のガラス基板元材を徐冷炉内で搬送しながら徐冷する徐冷工程とを有し、該徐冷工程にて前記ガラス基板元材を幅方向全長に亘って下方から支持するローラにより搬送する搬送処理が行われるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法であって、
前記ローラの外周面における軸方向複数箇所に凸部を配設し、前記ガラス基板元材の下面に前記凸部を当接させた状態で該ガラス基板元材を前記ローラにより搬送することを特徴とするフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記ローラにおけるガラス基板元材の支持部位の軸方向全長に亘るあらゆる任意の400mm区間に、前記凸部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記凸部の前記外周面からの突出寸法が、0.5〜30mmであることを特徴とする請求項7または8に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記凸部は、前記ローラの全周に亘って点在する複数の突起であることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
前記凸部は、前記ローラの全周に亘って連続する環状突起であることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
前記ローラは、徐冷炉内の上流側部位に配設されていることを特徴とする請求項7〜11の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項13】
前記ローラは、搬送方向の複数箇所に配設されていることを特徴とする請求項7〜12の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項1】
平均板厚が0.5〜3.0mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであり、且つ作業台の平坦な載置面上に載置されて所定の処理が施されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板であって、
前記載置面上に載置された状態における該載置面と対向するガラス面の一部領域または全領域が、一の辺に沿う方向に山と谷とが交互に存在する波形の曲面部を有する形態になり、且つ、該曲面部の山と谷とが、前記一の辺と直交する他の辺に沿う方向にそれぞれ連続した形態になることを特徴とするフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項2】
前記曲面部は、山と谷とが交互にそれぞれ2以上存在していることを特徴とする請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項3】
前記ガラス面における前記一の辺に沿う方向の全長に亘るあらゆる任意の400mm区間に、前記曲面部が存在していることを特徴とする請求項1または2に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項4】
前記曲面部の隣り合う山と谷において、前記載置面から前記山の最上点までの離隔寸法と前記載置面から前記谷の最下点までの離隔寸法との差が、0.01〜0.15mmであり、前記載置面から前記曲面部の全ての山の最上点までの最大離隔寸法が0.15mm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項5】
前記一の辺の長さをLとし、前記載置面から前記ガラス面までの離隔寸法の最大値をhとした場合に、h/Lが0.003%未満であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項6】
前記作業台が、加熱炉内に搬送されるセッターであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
【請求項7】
平均板厚が0.5〜3.0mm、直角をなす2つの辺の寸法がそれぞれ400〜5000mm及び800〜5000mmであるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を製造すべく、フロートバス内で溶融ガラスを板状のガラス基板元材に成形する成形工程と、成形後のガラス基板元材を徐冷炉内で搬送しながら徐冷する徐冷工程とを有し、該徐冷工程にて前記ガラス基板元材を幅方向全長に亘って下方から支持するローラにより搬送する搬送処理が行われるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法であって、
前記ローラの外周面における軸方向複数箇所に凸部を配設し、前記ガラス基板元材の下面に前記凸部を当接させた状態で該ガラス基板元材を前記ローラにより搬送することを特徴とするフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記ローラにおけるガラス基板元材の支持部位の軸方向全長に亘るあらゆる任意の400mm区間に、前記凸部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記凸部の前記外周面からの突出寸法が、0.5〜30mmであることを特徴とする請求項7または8に記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記凸部は、前記ローラの全周に亘って点在する複数の突起であることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
前記凸部は、前記ローラの全周に亘って連続する環状突起であることを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
前記ローラは、徐冷炉内の上流側部位に配設されていることを特徴とする請求項7〜11の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【請求項13】
前記ローラは、搬送方向の複数箇所に配設されていることを特徴とする請求項7〜12の何れかに記載のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−227471(P2009−227471A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64646(P2008−64646)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]